JP3022112B2 - 摩擦車式無段変速機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、摩擦車式無段変速機
の、変速制御精度の向上を狙った改良提案に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】摩擦車式無段変速機は通常、例えば実開
平１−１７３５５２号公報に記載の如く、同軸に対向配
置した入出力ディスクと、これら入出力ディスク間で摩
擦係合により動力の受渡しを行うよう、該入出力ディス
クの回転軸線周りに配置された複数の摩擦車と、各摩擦
車を回転自在に支持した摩擦車支持部材と、これら摩擦
車支持部材の隣合う端部同士を相互に、摩擦車支持部材
が摩擦車の回転軸線と直交する首振り軸線方向へ同期し
てストロークされるよう、球面継手を介して連結するリ
ンクとを具え、摩擦車支持部材のストロークにより摩擦
車の首振り軸線周りの傾転を生起させて変速を行うよう
構成するのが普通である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記に代表さ
れる従来の摩擦車式無段変速機では、摩擦車支持部材と
リンクとを図８に示すように相関させていたため、以下
の問題を生じていた。この図において、ａは摩擦車支持
部材、ｂはリンクを示し、摩擦車支持部材ａはこれに嵌
合した軸受ｃによりリンクｂに対して回転自在に支持
し、更に、軸受ｃ上に嵌合した球面継手ｄによりリンク
ｂに対し傾動可能に連結する。なお、ｅはリンクｂを中
央において変速機ケースに傾動自在に支持するためのリ
ンクサポートである。

【０００４】ところで、図８（ａ）にｆで示すように摩
擦車支持部材ａとリンクｂとが、変速を行わない中立位
置で平面接触しているため、同図（ｂ），（ｃ）に示す
ように摩擦車支持部材ａをストロークさせてアップシフ
ト変速またはダウンシフト変速を行う時に、摩擦車支持
部材ａがリンクｂに対し交角をもって、リンクサポート
（ｅ）寄りの内側点ｇまたは逆寄りの外側点ｈでリンク
ｂにエッジ当たりする。

【０００５】従って変速時には、当該内側のエッジ当た
り点ｇまたは外側のエッジ当たり点ｈを支点にして摩擦
車支持部材ａとリンクｂとの間の上記した交角が発生す
ることとなり、このため変速時に球面継手ｄは、リンク
ｂに設けた球面継手嵌合孔ｉの内周面を摺動しつつ摩擦
車支持部材ａの軸線方向へリンクｂに対し相対変位す
る。

【０００６】ここで当該相対変位の量について考察する
に、図８（ｂ），（ｃ）に示すようにエッジ当たり点
ｇ，ｈから球面継手嵌合孔ｉのリンクサポート（ｅ）寄
りにおける内側内周面部位（球面継手ｄの内側外周面部
位）までの内側アーム長をＬ_inとし、エッジ当たり点
ｇ，ｈから球面継手嵌合孔ｉの直径方向逆側における外
側内周面部位（球面継手ｄの外側外周面部位）までの外
側アーム長をＬ_out とすると、図８（ｂ）に示す内側の
エッジ当たり点ｇを発生する変速時、図示の摩擦車支持
部材ａについてはＬ_out ＞Ｌ_inであるため、球面継手ｄ
は球面継手嵌合孔ｉの外側内周面部位との接触部におい
て内側内周面部位との接触部におけるよりも大きく摺動
し、図８（ｃ）に示す外側のエッジ当たり点ｈを発生す
る変速時、図示の摩擦車支持部材ａについてはＬ_in＞Ｌ
_out であるため、球面継手ｄは球面継手嵌合孔ｉの内側
内周面部位との接触部において外側内周面部位との接触
部におけるよりも大きく摺動する。

【０００７】ところで摩擦車支持部材ａは、摩擦車が入
出力ディスク間で動力伝達を行い得るよう伝達トルク対
応の力で当該入出力ディスク間に挟圧されているため、
常時リンクサポートｅから遠ざかる外側方向の力を受け
ており、球面継手ｄは球面継手嵌合孔ｉの外側内周面部
位に対し強力に押圧されている。従って、図８（ｂ）に
示すように球面継手ｄが球面継手嵌合孔ｉの外側内周面
部位との接触部において大きく摺動する変速時において
は、対応する摩擦車支持部材ａの矢で示すストロークに
大きな抵抗が作用する。一方で、図８（ｃ）に示すよう
に球面継手ｄが球面継手嵌合孔ｉの内側内周面部位との
接触部において大きく摺動する変速時においては、図示
する摩擦車支持部材ａの場合、球面継手ｄが球面継手嵌
合孔ｉの外側内周面部位との接触部において僅かしか摺
動しないために上記の問題を生じない。しかして図８
（ｃ）に示す変速時においても、図示する摩擦車支持部
材ａとは反対側における摩擦車支持部材が当該図示する
摩擦車支持部材ａとは非対称に内側のエッジ当たり点を
支点にしてリンクｂとの間に上記した交角を発生し、当
該反対側の摩擦車支持部材に係わる球面継手が球面継手
嵌合孔の外側内周面部位との接触部において大きく摺動
するため、当該反対側の摩擦車支持部材のストロークに
大きな抵抗が作用するという上記の問題を生ずる。

【０００８】以上のことから明らかなように何れのリン
クｂにおいても、その両端における摩擦車支持部材のう
ち一方の摩擦車支持部材は必ず、変速時に上記した内側
のエッジ当たり点を生じ、これを支点にしてリンクとの
間に交角を発生し、球面継手を球面継手嵌合孔の外側内
周面部位との接触部において大きく摺動させる結果、無
段変速機全体としては、摩擦車支持部材のストロークに
より行う変速操作に大きな抵抗が作用するのを免れなか
った。従って、従来の摩擦車式無段変速機にあっては当
該大きな抵抗が、変速指令に対する変速比の変化状況を
示す図７（ａ）から明らかなように、変速制御特性のヒ
ステリシスを大きくし、変速制御精度を低下させるとい
う問題を発生していた。

【０００９】請求項１に記載の第１発明は、摩擦車支持
部材の何れ方向のストローク時も、これとリンクとの接
触位置が不変に保たれるようにすれば、この接触位置の
選択次第で各リンクごとに全ての摩擦車支持部材に係わ
る球面継手がともに、リンクに設けた球面継手嵌合孔の
外側内周面部位との接触部における前記の摺動量を小さ
くされ得るとの事実認識に基づき、この着想を具体化し
て当該摺動量を総体的に小さくし得るような構成にする
ことで、上述の問題を解消可能にした摩擦車式無段変速
機を提案することを目的とする。

【００１０】また請求項２に記載の第２発明は、リンク
に設けた球面継手嵌合孔の外側内周面部位との接触部に
おける球面継手の上記摺動量を確実に小さくし得る摩擦
車支持部材とリンクとの上記接触位置を提案することを
目的とする。

【００１１】更に請求項３に記載の第３発明は、リンク
に設けた球面継手嵌合孔の外側内周面部位との接触部に
おける球面継手の上記摺動量がほとんど０になる摩擦車
支持部材とリンクとの上記接触位置を提案することを目
的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】これらの目的のため先ず
第１発明は、同軸に対向配置した入出力ディスクと、こ
れら入出力ディスク間で摩擦係合により動力の受渡しを
行うよう、該入出力ディスクの回転軸線周りに配置され
た複数の摩擦車と、各摩擦車を回転自在に支持した摩擦
車支持部材と、該摩擦車支持部材の隣合う端部同士を相
互に、摩擦車支持部材が摩擦車の回転軸線と直交する首
振り軸線方向へ同期してストロークされるよう、球面継
手を介して連結するリンクとを具え、該摩擦車支持部材
のストロークにより前記摩擦車の首振り軸線周りの傾転
を生起させて変速を行うようにした摩擦車式無段変速機
において、前記摩擦車支持部材の何れ方向のストローク
時も、該摩擦車支持部材と前記リンクとの間の交角に係
わらず、これら摩擦車支持部材およびリンク間の接触位
置を不変に保つための突起をリンクに設けたことを特徴
とするものである。

【００１３】また第２発明は、上記第１発明において、
上記の突起を、上記首振り軸線方向に見たとき前記球面
継手の外周縁上で隣の摩擦車支持部材から最も遠い側に
配置したことを特徴とするものである。

【００１４】更に第３発明は、上記第１発明において、
上記摩擦車支持部材のストロークに伴う該摩擦車支持部
材および前記リンク間の交角変化中に生ずる前記球面継
手の回動中心上に前記突起を配置したことを特徴とする
ものである。

【００１５】

【作用】第１発明において、複数の摩擦車は入出力ディ
スク間で摩擦係合により動力の受渡しを行う。また、各
摩擦車を回転自在に支持した摩擦車支持部材を個々に、
摩擦車の回転軸線と直交する首振り軸線方向へストロー
クさせると、摩擦車は首振りを生起されて入出力ディス
ク間の伝動比を無段階に変化させることができる。な
お、この変速中にリンクは、摩擦車支持部材の上記スト
ロークを同期させるよう機能し、変速制御を正確になし
得る。

【００１６】ところで、上記摩擦車支持部材のストロー
ク中、該摩擦車支持部材と上記リンクとの間の交角に係
わらず、これら摩擦車支持部材およびリンク間の接触位
置を不変に保つための突起をリンクに設けたから、摩擦
車支持部材のストローク中、これとリンクとが常時上記
の突起で接触して接触位置が不変に保たれることとな
り、当該接触位置の選択次第で、全ての摩擦車支持部材
に係わる球面継手について、隣接する球面継手から遠い
側の外側外周面部位とリンクとの間における摩擦車支持
部材の軸線方向への摺動量を小さくすることが可能で、
結果として、前記した根拠から摩擦力が大きくなる当該
球面継手の外側外周面部位における摩擦車支持部材の軸
線方向への摺動量を総体的に小さくし得る。従って、当
該球面継手の外側外周面部位の大きな摺動に伴い発生す
る抵抗力に起因して、従来の摩擦車式無段変速機で生じ
ていた変速制御特性の大きなヒステリシスを小さくする
ことができる。

【００１７】また第２発明では、上記第１発明における
突起を特に、首振り軸線方向に見たとき上記球面継手の
外周縁上で隣の摩擦車支持部材から最も遠い側に配置し
たから、突起が上記球面継手外側外周面部位の摺動量を
確実に小さくする摩擦車支持部材とリンクとの上記接触
位置を提供して第１発明の作用効果を更に確実なものに
すると共に、突起が、リンクに形成すべき球面継手嵌合
孔に掛からず、該球面継手嵌合孔の加工時に、突起の存
在故に孔の加工性が低下するといった弊害をなくすこと
ができる。

【００１８】更に第３発明は、上記摩擦車支持部材のス
トロークに伴う該摩擦車支持部材および前記リンク間の
交角変化中に生ずる前記球面継手の回動中心上に、上記
第１発明における突起を配置したから、当該突起により
提供される摩擦車支持部材とリンクとの間の不変の接触
位置が上記の回動中心上に存在することとなり、結果と
して理論上、球面継手とリンクとの間で首振り軸線方向
への摺動を惹起するようなことがほとんどなくなり、従
って、上記球面継手外側外周面部位の首振り軸線方向へ
の摺動量をほとんど０にし得て第１発明の作用効果を第
２発明よりも更に確実なものにすることができる。

【００１９】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。図１乃至図３は、本発明による摩擦車式無段
変速機の一実施例を示し、図１において１は変速機ケー
ス、２は主軸、３は、主軸２を挟んでその両側に対向さ
せて配置した一対のパワーローラ（摩擦車）である。

【００２０】図示しなかったが、主軸２上に入出力コー
ンディスク（ディスク）を対向させて回転自在に支持
し、入力コーンディスクを動力源に駆動結合し、出力コ
ーンディスクを出力軸に駆動結合する。パワーローラ３
は、これら入出力コーンディスク間で摩擦係合により動
力伝達を行うもので、これがため各パワーローラ３を個
々のトラニオン（摩擦車支持部材）４に回転自在に支持
する。

【００２１】各トラニオン４はアッパリンク５およびロ
アリンク６により変速機ケース１に支持する。これがた
めアッパリンク５の中央に図２（ａ），（ｂ）に示す如
く透孔５ａを穿ち、これに球面嵌合するリンクサポート
７によりアッパリンク５を変速機ケース１に揺動可能に
支持し、ロアリンク６の中央に図３（ａ），（ｂ）に示
す如く透孔６ａを穿ち、これに球面嵌合するリンクサポ
ート８によりロアリンク６を変速機ケース１に揺動可能
に支持する。

【００２２】そして、アッパリンク５の両端にそれぞれ
図２（ａ），（ｂ）に示す如く透孔５ｂを穿ち、これら
に球面嵌合する球面継手９および該球面継手内に嵌合す
る軸受１０を介して両トラニオン４の上端をアッパリン
ク５の両端に夫々揺動可能および回転自在に支持する。

【００２３】また、ロアリンク６の両端にそれぞれ図３
（ａ），（ｂ）に示す如く透孔６ｂを穿ち、これらに球
面嵌合する球面継手１１および該球面継手内に嵌合する
軸受１２を介して両トラニオン４の下端をロアリンク６
の両端に夫々揺動可能および回転自在に支持する。

【００２４】なお、軸受１０，１２で規定される各トラ
ニオン４の回転軸線は、パワーローラ３の回転軸線に直
交させる。

【００２５】各トラニオン４の下端には更にピストン１
３を同軸に結合して設け、これらピストンをコントロー
ルバルブ１４により、同時に逆向きにストロークさせて
周知の変速制御を行うものとし、かかる両トラニオンの
ストロークの同期を、リンク５，６により補償するもの
とする。

【００２６】本例においては、図１にも示すが、特に図
２および図３に明示するように、アッパリンク５および
ロアリンク６の球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂの周縁上で、
隣の球面継手嵌合孔とは反対の側に配して突起５ｃ，６
ｃを形成し、これら突起は夫々、図２（ｂ）および図３
（ｂ）に示すようにリンク５，６の幅方向に延在させ
る。

【００２７】ここで、突起５ｃ，６ｃをかかる位置に決
定した理由は、以下の理由によるものである。即ち、摩
擦車式無段変速機においてパワーローラ３は、入出力コ
ーンディスク間での動力伝達を可能にするためこれら入
出力コーンディスク間に挟圧されており、このため図４
にαで示すような力がトラニオン４を経てリンク５，６
の球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂに作用している。その結果
として、球面継手９，１１から球面継手嵌合孔５ｂ，６
ｂへの応力分布はβで示すようなものになり、この応力
分布に応じた摩擦力が球面継手９，１１と球面継手嵌合
孔５ｂ，６ｂとの間における楕円状の接触部に作用す
る。ところで応力分布がβで示すようなものであること
から、球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂのリンク中央部に近い
半円周部においては球面継手９，１１からの押し付け力
が作用しないため当該球面継手９，１１との間に摩擦力
が発生することがなく、これを無視することができる。

【００２８】一方で、トラニオン４のストロークに伴い
これとリンク５，６との間に交角変化を生ずる時は、上
記楕円状の接触部において球面継手９，１１が球面継手
嵌合孔５ｂ，６ｂの内周面上を滑りながら上記の交角変
化を吸収する。この時上記楕円状の接触部における各点
の摩擦力は、当該各点における法線方向の押し付け力
（応力分布βで決まる）が強いほど大きくなって、球面
継手９，１１を球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂの内周面上で
滑りにくくし、逆に上記の法線方向押し付け力が弱いほ
ど小さくなって、球面継手９，１１を球面継手嵌合孔５
ｂ，６ｂの内周面上で滑り易くする。

【００２９】ここで、上記摩擦力が最も大きくなる両球
面継手嵌合孔５ｂ，６ｂの相互に最も遠い側の周縁部に
おける接線と、これに平行でトラニオン回転軸線と直交
する線との間に挟まれ、これらに平行な例えば図４にδ
で示す線から、上記摩擦力が作用する上記楕円状接触部
の各点までの距離（アーム長）に当該各点の上記摩擦力
を掛けて算出した回転モーメントの総和を求め、この総
和が最低になるような線δの、図４に例示する位置が、
トラニオン４のストロークに伴って生ずる球面継手嵌合
孔５ｂ，６ｂ内での（上記楕円状接触部上での）球面継
手９，１１の回動中心である。なお当該球面継手９，１
１の回動中心δは、上記の事実から応力分布β（摩擦力
分布）の形状によって決まり、この分布の中高傾向が強
くなるほど球面継手９，１１の回動中心δはリンク中央
部から遠ざかること勿論である。

【００３０】上記球面継手９，１１の回動中心δは、ト
ラニオン４およびリンク５，６間の交角変化中もリンク
５，６および球面継手９，１１間の首振り軸線方向にお
ける相対変位を生じない球面継手９，１１の回動中心で
ある。従って上記の突起５ｃ，６ｃは前記本発明の目的
に照らして、回動中心δの近くに位置させるのが良く、
本実施例においては突起５ｃ，６ｃを回動中心δに近い
上記の位置、つまり図２および図３に明示するように、
アッパリンク５およびロアリンク６の球面継手嵌合孔５
ｂ，６ｂの周縁上で、隣の球面継手嵌合孔とは反対の側
に決定した。

【００３１】なお本実施例における突起５ｃ，６ｃの位
置によれば、これら突起が球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂに
掛からず、球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂの切削加工に際
し、その加工性が低下するのを回避することができて好
適である。

【００３２】ところで、かかる球面継手嵌合孔５ｂ，６
ｂの切削加工性についての低下が許容される場合、図５
および図６に示すように突起５ｃ，６ｃは、図４の回動
中心δ上に位置させるのが機能上最適である。

【００３３】上記実施例の作用を次に説明する。図１に
おいて、パワーローラ３は主軸２上の図示せざる入出力
コーンディスク間で動力の受渡しを行うよう回転され、
この伝動中ピストン１３によりトラニオン４を、パワー
ローラ回転軸線と直交する首振り軸線の方向に、同期し
て同位相でストロークさせると、パワーローラ３が主軸
２からオフセットされて首振り軸線周りの分力を受け、
当該軸線周りに首振り回動される。これによりパワーロ
ーラ３は入出力コーンディスクに対する摩擦係合円径を
連続的に変化され、入出力コーンディスク間の伝動比、
つまり変速比を無段階に変化させることができる。そし
て、変速比が所定比になったところで、周知のフィード
バック制御によりピストン１３は、トラニオン４を介し
パワーローラ３を、コーンディスク回転軸線からのオフ
セットが０となるようなストローク位置に復帰せしめ、
当該所定変速比を保つ。

【００３４】ところで、かかる変速に際して行うトラニ
オン４の上記ストローク中、トラニオン４と、アッパリ
ンク５およびロアリンク６との間の交角に係わらず、こ
れらは突起５ｃ，６ｃにおいて接触し続け、これら突起
５ｃ，６ｃを支点として相対的に傾動する。よって、ト
ラニオン４の上記ストローク中、トラニオン４とアッパ
リンク５およびロアリンク６との接触位置がそれぞれ、
アッパリンク５およびロアリンク６との間の交角に係わ
らず、不変に保たれることとなる。

【００３５】そして当該接触位置（突起５ｃ，６ｃの位
置）を、図１乃至図３に示す如くアッパリンク５および
ロアリンク６の球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂの周縁上で、
隣の球面継手嵌合孔とは反対の側の位置にして、図４に
おける回動中心δの近辺に決定する場合、トラニオン４
とアッパリンク５およびロアリンク６との間の交角に係
わらず、全ての球面継手９，１１について、隣接する球
面継手から遠い側の外側外周面部位とリンク５，６との
間におけるトラニオン軸線方向への摺動量を小さくする
ことが可能で、結果として、前記した根拠から摩擦力が
大きくなる当該球面継手９，１１の外側外周面部位にお
ける摺動量を総体的に小さくし得る。従って、当該球面
継手９，１１の外側外周面部位の大きな摺動に伴い発生
する抵抗力に起因して、従来の摩擦車式無段変速機で図
７（ａ）に示すごとくに生じていた変速制御特性の大き
なヒステリシスを、同図（ｂ）に示すように大幅に小さ
くすることができる。

【００３６】また突起５ｃ，６ｃを図１乃至図３に示す
如くアッパリンク５およびロアリンク６の球面継手嵌合
孔５ｂ，６ｂの周縁上で、隣の球面継手嵌合孔とは反対
の側に配置し、換言すれば突起５ｃ，６ｃを、首振り軸
線方向に見たとき球面継手９，１１の外周縁上で隣のト
ラニオン４から最も遠い側に配置する場合、突起５ｃ，
６ｃは上記の作用効果を奏する他に、リンク５，６に形
成すべき球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂに掛からず、該球面
継手嵌合孔５ｂ，６ｂの加工時に、突起５ｃ，６ｃの存
在故に孔５ｂ，６ｂの加工性が低下するといった弊害を
なくすことができる。

【００３７】なお、突起５ｃ，６ｃの位置を図５および
図６に示す如く、図４に示す球面継手９，１１の回動中
心δ上に決定する場合、図１乃至図３に示す例において
得られた上記加工上の有利性がなくなる反面、理論上、
変速中における球面継手９，１１とリンク５，６との間
のトラニオン軸線方向における摺動をほとんど生じなく
することができ、従って、球面継手９，１１の上記外側
外周面部位の首振り軸線方向への摺動量をほとんど０に
し得て、上記の作用効果を更に顕著なものにして変速制
御特性のヒステリシスを図７（ｂ）よりも更に一層低下
させることができる点で有利である。

【００３８】

【発明の効果】かくして第１発明の摩擦車式無段変速機
は、請求項１に記載の如く、変速に際して行う摩擦車支
持部材４のストローク中、該摩擦車支持部材と、これら
摩擦車支持部材の隣接端部同士を連結するリンク５，６
との間の交角に係わらず、これら摩擦車支持部材４およ
びリンク５，６間の接触位置を不変に保つための突起５
ｃ，６ｃを、リンク５，６に設けたから、摩擦車支持部
材４の上記ストローク中、これとリンク５，６とが常時
上記の突起５ｃ，６ｃで接触して接触位置が不変に保た
れることとなり、当該接触位置（突起５ｃ，６ｃの位
置）の選択次第で、全ての摩擦車支持部材４に係わる球
面継手９，１１について、隣接する球面継手から遠い側
の外側外周面部位とリンク５，６との間における摩擦車
支持部材４の軸線方向への摺動量を小さくすることが可
能で、結果として、前記した根拠で摩擦力が大きくなる
当該球面継手９，１１の外側外周面部位における上記摺
動量を総体的に小さくすることができる。従って、球面
継手９，１１の外側外周面部位の大きな摺動に伴い発生
する抵抗力に起因して、従来の摩擦車式無段変速機で生
じていた変速制御特性の大きなヒステリシスを小さくす
ることができる。

【００３９】また第２発明の摩擦車式無段変速機は、請
求項２に記載の如く、上記第１発明における突起５ｃ，
６ｃを特に、摩擦車支持部材４の軸線方向に見たとき球
面継手９，１１の外周縁上で隣の摩擦車支持部材から最
も遠い側に配置したから、突起５ｃ，６ｃが上記の摺動
量を確実に小さくする摩擦車支持部材４とリンク５，６
との上記接触位置を提供して上記第１発明の作用効果を
更に確実なものにすると共に、突起５ｃ，６ｃが、リン
ク５，６に形成すべき球面継手嵌合孔５ｂ，６ｂに掛か
らず、該球面継手嵌合孔の加工時に、突起５ｃ，６ｃが
その加工性が低下させるといった弊害をなくすことがで
きる。

【００４０】更に第３発明の摩擦車式無段変速機は、請
求項３に記載の如く、摩擦車支持部材４のストロークに
伴う該摩擦車支持部材および前記リンク５，６間の交角
変化中に生ずる球面継手９，１１の回動中心δ上に、上
記第１発明における突起５ｃ，６ｃを配置したから、当
該突起により提供される摩擦車支持部材４とリンク５，
６との間の不変の接触位置が、上記の回動中心δ上に存
在することとなり、結果として理論上、球面継手９，１
１とリンク５，６との間で首振り軸線方向への摺動を惹
起するようなことがほとんどなくなり、従って、上記球
面継手外側外周面部位の首振り軸線方向への摺動量をほ
とんど０にし得て第１発明の作用効果を第２発明よりも
更に確実なものにすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による摩擦車式無段変速機の一実施例を
示す横断正面図である。

【図２】（ａ）は同例におけるアッパリンクの縦断側面
図、 （ｂ）は同じくその底面図である。

【図３】（ａ）は同例におけるロアリンクの縦断側面
図、 （ｂ）は同じくその平面図である。

【図４】摩擦車式無段変速機におけるトラニオンからリ
ンクへの応力分布を示すリンクの平面図である。

【図５】（ａ）は本発明の他の例を示すアッパリンクの
縦断側面図、 （ｂ）は同じくその底面図である。

【図６】（ａ）は同例におけるロアリンクの縦断側面
図、 （ｂ）は同じくその平面図である。

【図７】（ａ）は従来の摩擦車式無段変速機における変
速制御特性を示す線図、 （ｂ）は図１乃至図３に示す摩擦車式無段変速機の変速
制御特性を示す線図である。

【図８】従来型摩擦車式無段変速機の動作説明図であ
る。

【符号の説明】

１ 変速機ケース ２ 主軸 ３ パワーローラ（摩擦車） ４ トラニオン（摩擦車支持部材） ５ アッパリンク ５_C 突起 ６ ロアリンク ６_C 突起 ７ リンクサポート ８ リンクサポート ９ 球面継手 δ 同球面継手の回動中心 10 軸受 11 球面継手 12 軸受 13 ピストン

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 同軸に対向配置した入出力ディスクと、 これら入出力ディスク間で摩擦係合により動力の受渡し
   を行うよう、該入出力ディスクの回転軸線周りに配置さ
   れた複数の摩擦車と、 各摩擦車を回転自在に支持した摩擦車支持部材と、 該摩擦車支持部材の隣合う端部同士を相互に、摩擦車支
   持部材が摩擦車の回転軸線と直交する首振り軸線方向へ
   同期してストロークされるよう、球面継手を介して連結
   するリンクとを具え、 該摩擦車支持部材のストロークにより前記摩擦車の首振
   り軸線周りの傾転を生起させて変速を行うようにした摩
   擦車式無段変速機において、 前記摩擦車支持部材のストローク中、該摩擦車支持部材
   と前記リンクとの間の交角に係わらず、これら摩擦車支
   持部材およびリンク間の接触位置を不変に保つための突
   起をリンクに設けたことを特徴とする摩擦車式無段変速
   機。
2. 【請求項２】 請求項１において、前記突起を、前記首
   振り軸線方向に見たとき前記球面継手の外周縁上で隣の
   摩擦車支持部材から最も遠い側に配置したことを特徴と
   する摩擦車式無段変速機。
3. 【請求項３】 請求項１において、前記摩擦車支持部材
   のストロークに伴う該摩擦車支持部材および前記リンク
   間の交角変化中に生ずる前記球面継手の回動中心上に前
   記突起を配置したことを特徴とする摩擦車式無段変速
   機。