JP3008823B2 - 金属の塑性加工用潤滑剤組成物 - Google Patents

金属の塑性加工用潤滑剤組成物

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JP3008823B2 JP18573995A JP18573995A JP3008823B2 JP 3008823 B2 JP3008823 B2 JP 3008823B2 JP 18573995 A JP18573995 A JP 18573995A JP 18573995 A JP18573995 A JP 18573995A JP 3008823 B2 JP3008823 B2 JP 3008823B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧延用ロールまたは塑
性加工用工具への金属の焼付きを防止するための金属の
塑性加工用潤滑剤組成物に関する。本発明の潤滑剤組成
物は、安定性に優れているため、圧延時または塑性加工
時の金属のロールまたは工具への焼付きを有効に防止す
ることができ、ロールまたは工具の研削頻度減少による
作業性や生産性の向上や金属製品表面品質の向上を実現
することができる。
【0002】
【従来の技術】各種金属を冷間あるいは熱間加工する際
に、圧延用ロールもしくは塑性加工用工具 (以後、これ
らを単に工具と総称する) に該金属が焼付くと、工具表
面に焼付き疵が発生し、これが金属製品表面にもプリン
トされ、疵となる。
【0003】この表面疵が発生した金属製品は研磨によ
り手入れをするが、疵発生の激しいものはスクラップに
せざるを得ないため、かなりのコスト高を招くことにな
る。一方、焼付き疵が発生した工具についても表面を研
削して手入れを行うが、この工具表面の研削頻度の増加
は、作業性や生産性を阻害すると共に、工具寿命を著し
く低下させる原因にもなっている。
【0004】このような焼付きに起因して発生する金属
製品表面の疵は、例えば、チタンおよびチタン合金、ア
ルミおよびアルミ合金、ステンレス鋼等の、表面に酸化
膜が形成され難いかもしくは薄い金属の冷間および熱間
での塑性加工 (板圧延、管圧延、条鋼圧延、線材圧延、
押出し、引抜き、鍛造) 時に、特に問題となっている。
【0005】例えば、ステンレス鋼は、一般に重量で13
%以上のCrを含有する化学組成をもち、鋼の表面に安定
なクロム酸化保護膜が生成して表面を不動態化すること
により優れた耐食性、耐酸化性を発揮する。しかし、こ
の表面酸化膜は炭素鋼のそれに比べると著しく薄く、し
かも熱間の変形抵抗が高い。したがって、熱間圧延時に
工具と金属間接触をおこし易く、その結果、焼付きが発
生して、肌荒れと鋼材表面疵を生じるのである。このよ
うにステンレス鋼材は、焼付きが起こり易い上、ステン
レス鋼製品には特に美麗な表面肌が要求されることもあ
って、工具との焼付きがステンレス鋼の熱間圧延で問題
になるのである。
【0006】しかし、この焼付きの問題は、何もステン
レス鋼の熱間圧延に限ったことではなく、全ての金属の
冷間〜熱間加工においても生じる。すなわち、近年の高
生産性、高品質化、低コスト化が指向される中、これま
で以上に高速、高圧下加工が実施されるようになり、負
荷が増大し、塑性加工時に焼付きを発生し易くなってい
るのである。さらに、最近では、スケジュールフリー圧
延や新加工方法、高炭素系ハイスロールや超硬工具に代
表されるような新耐摩耗工具の開発などにより、これま
で以上に焼付き防止が重要な問題となっている。
【0007】金属の塑性加工時の焼付き防止方法として
は、潤滑剤の使用、塑性加工用工具(例、圧延ロール、
鍛造用金型など) の冷却の最適化、加工負荷条件の見直
し等が従来から実施されている。特に、塑性加工用工具
と被加工金属との間の摩擦力を低減させ、塑性加工用工
具の肌荒れ防止と摩耗低減により、金属製品品質を向上
させる目的で、塑性加工用工具に潤滑剤を供給すること
が有効であるとされてきた。
【0008】これに関して、本発明者は、特開平5−30
6397号公報、特開平5−306399号公報、および特開平7
−3279号公報において、高塩基性金属スルホネートや高
塩基性金属フェネートが熱間鋼材の圧延用ロールへの焼
付き防止に顕著な効果を示すことを明らかにした。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これらの高塩基性金属
塩は、熱間鋼材の焼付き防止に従来にない極めて優れた
効果を発揮するが、これを焼付き防止以外の潤滑特性改
善のために潤滑油基油と混合して潤滑剤組成物として使
用した場合、組成物の安定性が低く、混合から時間が経
過すると潤滑性能が劣化する場合があることが判明し
た。この不安定化による潤滑性能の劣化は、特に混合す
る潤滑油基油が脂肪酸やそのエステルなどの酸価の高い
成分である場合に顕著であった。
【0010】本発明の一般的な目的は、金属を冷間また
は熱間加工する際の金属の工具への焼付を防止し、工具
の研削頻度減少による作業性、生産性向上や金属製品表
面品質の向上を実現することができる、安定性に優れた
金属の塑性加工用潤滑剤組成物を提供することである。
【0011】本発明のより具体的な目的は、前述した高
塩基性金属スルホネートや高塩基性金属フェネートが示
す顕著な焼付き防止効果を利用し、これに脂肪酸やその
エステルなどの成分を配合しても安定性が高く、長時間
経過後も性能劣化が起こりにくい、金属の焼付き防止効
果に優れた金属の塑性加工用潤滑剤組成物を提供するこ
とである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は検討の結果、
高塩基性金属スルホネートや高塩基性金属フェネートに
脂肪酸やそのエステルなど成分を混合した場合の不安定
性の原因が、これらの成分が高塩基性金属塩の高い塩基
性によりケン化反応を受けることに原因があることを究
明した。
【0013】そして、さらに検討を進めたところ、高塩
基性金属塩をホスファチジルコリン(一般的にレシチン
と称されるリン脂質の1種) と一緒に添加すると、脂肪
酸やそのエステルのケン化反応が抑制され、安定性が向
上して、高塩基性金属塩に固有の高い金属の焼付き防止
効果を長時間にわたって発揮することができる、金属の
組成物加工用潤滑剤組成物が得られることを知見したの
である。
【0014】ここに、本発明は、高塩基性金属スルホネ
ートおよび高塩基性金属フェネートから選ばれた1種も
しくは2種以上の高塩基性金属塩10〜70重量%と、ホス
ファチジルコリン 0.1〜30重量%と、脂肪酸および脂肪
酸エステルから選ばれた1種または2種以上を含む潤滑
油基油残部とを含有することを特徴とする、金属の塑性
加工用潤滑剤組成物である。
【0015】
【0016】ここで、「高塩基性」とは、JIS K2501(電
位差滴定法) により測定した塩基価が40 mgHOH/g以上で
あることを意味する。金属塩の金属は、Ca、Mg、Ba等の
アルカリ土類金属とNa等のアルカリ金属とを包含する。
【0017】
【作用】本発明で用いる高塩基性金属スルホネートおよ
び高塩基性金属フェネートは、例えば前掲の特開平5−
306397号、同5−306399号、および同7−3279号各公報
に記載されているものと同様でよい。
【0018】高塩基性金属スルホネートは、長鎖アルキ
ル芳香族のスルホン化物を金属化合物で中和した後、溶
液状で炭酸ガスの存在下にさらにアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の炭酸塩または水酸化物と反応させるこ
とにより製造される。
【0019】一方、高塩基性金属フェネートは、長鎖ア
ルキルフェノール誘導体 (硫化物)を溶液状で過剰のア
ルカリまたはアルカリ土類金属化合物 (例、炭酸塩、酸
化物または水酸化物) と反応させることにより製造され
る。
【0020】高塩基性金属スルホネートおよび高塩基性
金属フェネートは、いずれも製造過程で自然に液中から
析出した過剰の塩基性の金属化合物 (例、CaCO3 などの
炭酸塩、またはCa(OH)2 などの水酸化物) を、通常は粒
径150 Å以下という超微粒子状態で含有している。好ま
しくは、この金属化合物はCaCO3 などの炭酸塩であるの
で、以下の説明では「炭酸塩」で代表させる。この製造
過程で生成した超微細粒の炭酸塩の存在が、工具と被加
工金属との金属間直接接触の抑制とスリップ防止のため
の摩擦界面の高摩擦化に寄与するため、各種の金属の冷
間または熱間塑性加工において金属の工具への焼付きを
防止できるという、従来の潤滑剤には見られないような
優れた潤滑効果を発揮するのである。
【0021】例えば特開平3−151101号公報に提案され
ているように、別途に用意した粒径0.05〜0.50μm程度
の粉末状のCaCO3 を潤滑油と混合分散させても、上記の
高塩基性金属塩で達成されるような焼付き防止効果を得
ることはできない。
【0022】本発明の塑性加工用潤滑剤組成物において
は、この高塩基性スルホネートおよび高塩基性金属フェ
ネートから選んだ1種もしくは2種以上を、合計で10〜
70重量%の割合で存在させる。この含有量が10重量%未
満では、金属の工具への焼付きを十分に防止することが
できず、金属製品の表面品質が劣化する。一方、この含
有量が70重量%を超えると、前記効果が飽和し、経済的
に得策ではない。高負荷時の焼付き防止効果にとって、
より好ましい含有量は20〜60重量%である。
【0023】高塩基性金属スルホネートと高塩基性金属
フェネートは、いずれも塩基価が40mgKOH/g以上であれ
ば金属の焼付き防止に効果があるが、塩基価が100 mgKO
H/g以上のものが好ましい。塩基価が高いほど、超微細
固体粒子状の金属炭酸塩 (CaCO3 等) の含有量が多くな
り、金属間 (工具と被加工金属間) の直接接触を物理的
に防止するのに十分な炭酸塩を摩擦界面に導入できるた
め、焼付き防止能が高くなる。その意味では塩基価が 2
00〜500 mgKOH/g のものが特に焼付き防止効果が高く、
有利である。従って、高負荷条件で塑性加工を行う場合
には、塩基価が200〜500 mgKOH/g の高塩基性金属塩を
使用することが好ましい。塩基価が500mgKOH/g を超え
る高塩基性金属塩は、潤滑剤として適切な粘度等の性質
を有するものが現状技術レベルでは製造できないが、製
造技術上可能になれば、塩基価が500 mgKOH/g 以上のも
のも使用できる。
【0024】塩基価が200 mgKOH/g より低い高塩基性金
属塩は、潤滑剤組成物中の含有量を高くするか、組成物
を高粘度あるいは原液に近い状態で供給するか、または
低負荷圧延条件下で使用することが好ましい。ただし、
塩基価が40 mgKOH/g未満では、このような条件下でも焼
付き防止効果が不十分となる。なお、塩基価が40 mgKOH
/g以下の低塩基性の金属スルホネートまたは金属フェネ
ートは、単独では使用することができないが、これを高
塩基性の金属スルホネートまたはフェネートと混合し
て、全体として塩基価が40 mgKOH/g以上、好ましくは20
0 mgKOH/g 以上となるようにすれば、低塩基性金属塩も
使用できる。
【0025】金属塩の種類はアルカリ金属塩とアルカリ
土類金属塩のいずれでもよいが、アルカリ土類金属塩、
中でもCa塩が効果が高く、好ましい。従って、高塩基性
Caスルホネートまたはフェネートを単独で、またはこれ
を他の高塩基性金属塩と混合して使用することが好まし
い。
【0026】本発明で用いる高塩基性金属塩に含まれる
超微細粒の炭酸塩は、前述したように焼付き防止を含む
潤滑性能にとって不可欠のものであるが、この炭酸塩が
示す塩基性により、これに脂肪酸や脂肪酸エステル等を
潤滑油基油として混合した場合に、得られる潤滑剤組成
物が不安定化し、性能が劣化する原因ともなる。
【0027】本発明の潤滑剤組成物においては、高塩基
性金属スルホネートおよび高塩基性金属フェネートから
選んだ1種もしくは2種以上の高塩基性金属塩10〜70重
量%に対して、ホスファチジルコリンを 0.1〜30重量%
の量で配合する。それにより、上記の潤滑剤組成物の不
化と性能劣化が著しく抑制される。
【0028】ホスファチジルコリンはレシチンとも称さ
れ、動物、植物、酵母、カビ類に広く分布する代表的は
なリン脂質であって、下記構造式で示される物質であ
る。
【0029】
【化1】
【0030】上記式中、OCOR1 基とOCOR2 基は
それぞれ脂肪酸残基であり、互いに同一でも異なるもの
でもよい。ホスファチジルコリンは、例えば、乳化作用
(特に、食品分野) 、抗酸化作用(油脂の酸化防止) 、
離型作用 (パンの離型剤) タンパク質との結合 (食品分
野) 、テンプンとの結合 (食品分野) などの作用を示す
ことが知られており、従来は主に食品分野において使用
されてきた。
【0031】本発明では、高塩基性金属スルホネートお
よびフェネートから選ばれた高塩基性金属塩にホスファ
チジルコリンを共存させると、脂肪酸またはそのエステ
ルと混合した場合に高塩基性金属塩がこれらの成分と反
応して高塩基性金属塩の性能が劣化する現象が防止でき
る。その理由については完全には解明されていないが、
現状では次のように推定される。
【0032】ホスファチジルコリンは、疎水基 (脂肪酸
残基) および親水基 (ホスファチジル基)を有する両性
電解質性の有機溶媒に可溶な物質である。この物質が脂
肪酸または脂肪酸エステル中に共存すると、脂肪酸また
は脂肪酸エステル中の親水基がホスファチジルコリンの
親水基と結びつき、一方で脂肪酸またはエステルの疎水
性部分 (脂肪相) とホスファチジルコリンの疎水基と結
びつくことによって、この脂肪酸またはエステル成分が
ホスファチジルコリンにいわば保護されてしまう。その
ため、高塩基性の金属スルホネートまたはフェネートを
この潤滑油基油と一緒に配合しても、この脂肪酸または
脂肪酸エステルが高塩基性金属塩に含まれる塩基性の炭
酸塩 (例、CaCO3)と反応することができず、この反応に
よる潤滑剤組成物の不安定化と性能劣化が防止される。
【0033】ホスファチジルコリンの含有量が0.1 重量
%以下ではこの効果が十分ではなく、潤滑剤組成物の安
定性が低下し、潤滑性能の劣化を来す。一方、この含有
量が30重量%を超えると、上記効果が飽和する上、ホス
ファチジルコリン自身の潤滑性は特に高くないため、潤
滑剤組成物全体の潤滑性を行う恐れがある。したがっ
て、ホスファチジルコリンの含有量は 0.1〜30重量%と
する。好ましい含有量は0.1〜20重量%である。
【0034】本発明の塑性加工用潤滑剤組成物は、高塩
基性金属スルホネートおよび高塩基性金属フェネートの
1種あるいは2種以上とホスファチジルコリンのみから
なることもできるが、通常はこれに一般に潤滑油に使用
される潤滑油基油をさらに配合する。さらに、必要に応
じて、他の固体潤滑剤、極圧添加剤、酸化防止剤、流動
点降下剤、粘度指数向上剤等の潤滑油に添加することが
知られている各種の添加剤の1種もしくは2種以上を配
合することができる。
【0035】潤滑油基油の例としては、鉱物油、合成潤
滑油、ナタネ油、ラードオイル油の油脂類、高級脂肪酸
とそのエステル等が挙げられる。本発明においては、特
に脂肪酸および脂肪酸エステルを潤滑油基油として使用
した場合、高塩基性金属塩との反応が抑制されるため、
潤滑剤組成物の安定性が維持され、その焼付き防止をは
じめとする潤滑性能を最大限に利用することが可能とな
る。従って、潤滑油基油は脂肪酸および酸価を有する脂
肪酸エステルを含むものであることが好ましい。潤滑油
基油は、本発明の潤滑剤組成物の残部を構成するので、
その含有量の上限は89.5重量%となり、より好ましくは
79.5重量%以下である。
【0036】脂肪酸エステルとしては、ペンタエリスリ
トール、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレ
ングリコールなどの多価アルコールを不完全に脂肪酸
(例、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、リノ
ール酸など) でエステル化したものが好ましい。なお、
潤滑油基油は、脂肪酸および脂肪酸エステルから選ばれ
た1種もしくは2種以上のみから構成することもできる
が、これと他の潤滑油基油成分 (例、鉱物油、合成潤滑
油等) とを混合して用いることが好ましい。その場合、
本発明の潤滑剤組成物中における脂肪酸および脂肪酸エ
ステルの合計量は50重量%以下、特に40重量%以下とす
ることが好ましい。
【0037】本発明の潤滑剤組成物において任意成分と
して使用できる固体潤滑剤の例としては、黒鉛、二硫化
モリブデン、窒化硼素、雲母、タルク等が挙げられる。
一般に、黒鉛を含有させると摩擦係数が極端に低下し、
スリット等のかみ込み不良の原因になる。しかし、本発
明にかかる潤滑剤組成物では、上記の高塩基性金属塩が
摩擦係数を極端に低下させない効果を示すため、一定量
以下の黒鉛を添加してもスリップ等のかみ込み不良を発
生させることなく、工具の焼付きを防止し、金属の表面
品質を向上することができるのである。そのような黒鉛
の量は20重量%以下であるので、黒鉛を添加する場合に
は 0.5〜20重量%の範囲で添加することが好ましい。黒
鉛の添加量が20重量%を超えると、分散性、安定性が悪
くなり、圧延摩擦面でスリップ等のかみ込み不良を発生
しやすくなる。低圧下率側での低負荷圧延における圧延
安定性を考慮すると、より好ましい黒鉛の添加量は 0.5
〜15重量%である。黒鉛の添加は、特に鍛造等の高負荷
条件での塑性加工において有効である。黒鉛以外の固体
潤滑剤を添加する場合、その添加量は約1〜10重量%程
度が好ましい。
【0038】極圧添加剤の例としては、硫化油脂、硫化
鉱油、ジノニルポリサルファイド等の硫黄系極圧添加
剤、トリクレジルホスフェート、リン酸ジオクチル等の
リン酸系極圧添加剤が挙げられる。極圧添加剤の含有量
としては、高温下での摩擦係数低減効果により 0.1〜20
重量%が好ましい。
【0039】酸化防止剤の例としては、メチレン−4−
4−ビス (2,6 −ジターシャリ−ブチルフェノール) 等
のビスフェノール類、ジターシャリ−ブチルクレゾール
等のアルキルフェノール類、ナフチルアミン類等が挙げ
られる。その好ましい添加量が約0.01〜1.0 重量%であ
る。流動点降下剤、粘度指数向上剤の例としては、ポリ
メタクリレート、ポリオレフィン等が挙げられる。これ
は一般に約1〜5重量%の量で添加される。
【0040】本発明の塑性加工用潤滑剤組成物の供給手
段としては、要求される粘度や濃度に応じて、圧縮空気
と混合して噴霧状にして供給するエアーアトマイズ法
や、水と混合して要求するウォーターインジェクション
法、さらには加熱蒸気で噴霧化して供給するスチームア
トマイズ法、予め水に分散させ、エマルジョンとして供
給する方法等、従来より公知の各種の方法から適宜に選
択すればよい。もちろん、原液 (ニート) のまま供給す
る方法でも良いことは言うまでもない。原液で供給する
場合には、必要に応じて、本発明の潤滑剤組成物を水溶
性タイプにするなどして不燃性化して用いてもよい。ま
た、本発明の塑性加工用潤滑剤組成物は、工具 (圧延用
ロール、鍛造用金型等) に上記方法で直接供給しても良
いし、間接的に (例、支持ロールを介して) 供給しも本
発明の効果に変わりはない。
【0041】本発明にかかる金属の塑性加工用潤滑剤組
成物は、熱間、冷間を問わず優れた効果を発揮する。金
属としては、ステンレス鋼などの鋼をはじめとして、チ
タンやチタン合金、アルミおよびアルミ合金、銅および
銅合金などの非鉄金属を含む各種の金属に対して有効で
ある。また、塑性加工の種類も限定されず、板圧延、管
圧延、条鋼圧延、押出し、引抜き、鍛造などの各種の塑
性加工時に効果を発揮する。
【0042】
【実施例】高塩基性金属スルホネートおよび/またはフ
ェネートを、ホスファチジルコリン、脂肪酸エステル、
および鉱物油と一緒にホモミキサーにより攪拌して、表
1に示す試験No.1〜9の潤滑剤組成物を調合した。比較
のために、ホスファチジルコリンを含有しないか、その
含有量が30重量%を超えた、表1の試験No. 10〜13の潤
滑剤組成物も同様にして調合した。
【0043】使用したホスファチジルコリンは、前記構
造式においてR1 、R2 ともにステアリル (C18の直鎖
炭化水素) であるものであった。脂肪酸エステルとして
は、ペンタエリスリトールトリオレエートを使用し、鉱
物油はJIS VG 46 で規定されるものを使用した。
【0044】各潤滑剤組成物を調合してから室温で24時
間放置した後の組成物の状態を目視で調べた結果を表2
に示す。ホスファチジルコリンを添加した潤滑剤組成物
は、いずれも組成物の状態が調合時と変化せず、半透明
の外観を保持し、濁りや粘度上昇は認められなかった。
これに対し、ホスファチジルコリンを添加しなかった比
較例のNo. 10〜12の潤滑剤組成物では、濁りが発生し、
明らかに粘度が上昇していた。
【0045】次に、調合した各潤滑剤組成物を調合から
少なくとも 240時間経過後に下記の試験1〜5に記載の
ように金属の塑性加工に使用し、塑性加工後の工具およ
び各金属表面の焼付き状態を目視で調べ、各潤滑剤組成
物の性能を評価した。結果を表2に示す。
【0046】(試験1)熱延仕上げタンデムミルによるステンレス鋼板 (SUS43
0) の圧延加工 各潤滑剤組成物は、ウォータインジェクション方式によ
り水中に強制的に分散させて (濃度0.5 重量%) 、圧延
用ロールに潤滑剤組成物の量として150cc/分で直接供給
した。圧延用ロール材にはハイスを使用し、圧延量は 5
00トンであった。
【0047】(試験2)ピルガーミルによるステンレス鋼管 (SUS304) の冷間圧
延加工 各潤滑剤組成物は原液のままロールとマンドレルにそれ
ぞれ づつ供給した。使用したロールダイスおよび
マンドレルの化学成分は、それぞれ1.0%C-1.7%Cr-0.3%
Mo、および1.5%C-12.0%Cr-1.0%Mo であった。圧延量は
200トンであった。
【0048】(試験3)センジミアミル (小径多段ロールを有した圧延機) によ
るチタン板の冷間圧延加工 各潤滑剤組成物は予め水に分散させて、濃度2重量%の
エマルジョン状態で圧延用ロールに潤滑剤組成物として
200cc/分の量を直接供給した。チタン板 (JIS2種の熱
延焼鈍酸洗板、サイズは2.5 mm厚×50mm幅×2000mm長
さ) を1パス圧延(圧下率25%) した。
【0049】(試験4)熱間回転鍛造によるアルミ合金のホィール成形 本試験で使用した各潤滑剤組成物は、表1の組成におい
て、鉱物油の10重量%を黒鉛粉末に変更した10重量%の
黒鉛を含有する組成物であった。この潤滑剤組成物をマ
シン油と1:1で希釈して、潤滑剤組成物として20 cc/
分の量を金型に供給した。
【0050】(試験5) プラネタリミルによる銅板の冷間加工 銅板 (1.5 mm厚×20mm幅×300 mm長さ) を1パス圧延
(20%) した。各潤滑剤組成物は原液のまま圧延入り側
の圧延用ロールと銅板にそれぞれ50 cc/分の量を直接供
給した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】表2に示した各種金属の塑性加工の試験結
果から、高塩基性金属塩と共に 0.1〜30重量%のホスフ
ァチジルコリンを含有する本発明の潤滑剤組成物は、比
較例の潤滑剤組成物に比べて、総合的に焼付き防止能に
優れていることが明らかである。
【0054】具体的には、No.3、6、7、13などの比較
から、ホスファチジルコリンの含有量が 0.1〜30重量%
のものが焼付き防止効果が優れていること、さらに0.1
〜20重量%のものがより優れていることがわかる。
【0055】また、No.1と試験No.2〜9との比較によ
り、高塩基性Caスルホネートおよび高塩基性Caフェネー
トの含有量が30〜60重量%のもの、No.8とNo.1〜7との
比較によりそれらの塩基価が200 mgKOH/g 以上のもの、
No.2とNo.5、6との比較により金属がCaであるものが焼
付き防止能に優れることも確認された。また、No.3と9
との比較から高塩基性Caスルホネートおよび高塩基性Ca
フェネートの含有量が70重量%を超えると効果が飽和す
ることもわかる。
【0056】なお、圧延用工具として高炭素系高速度鋼
(ハイス、セミハイス) 、高合金グレン鋳鉄、高Cr鋳
鉄、アダマイト、黒鉛鋳鉄、鍛鋼ロールなど冷延および
熱延で一般に使用される圧延用ロールのいずれを使用し
た場合でも、同様の結果が得られることを確認した。
【0057】また、熱延などの熱間での塑性加工におい
ては、本発明の潤滑剤組成物は工具の酸価抑制にも効果
があり、工具の肌荒れが抑制され、工具の交換寿命の延
長を実現できる。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の金属の塑
性加工用潤滑剤組成物は高塩基性金属塩 (スルホネート
および/またはフェネート) に特有の優れた焼付き防止
能を発揮することができ、またホスファチジルコリンの
共存により、潤滑油基油として脂肪酸や脂肪酸エステル
を使用した場合にも、高塩基性金属塩が経時的に不安定
になることが避けられ、高塩基性金属塩が示す焼付き防
止能を含む潤滑性能の劣化が防止され、塑性加工が長時
間に及んでも優れた潤滑性能を発揮し続けることができ
る。それにより金属の圧延用ロールまたは塑性加工用工
具への焼付きが効果的に防止され、工具の研削頻度減少
による作業性、生産性向上や金属製品表面品質の向上を
実現することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C10M 159/24 C10M 159/24 163/00 163/00 // C10N 10:02 10:04 30:04 30:06 30:08 40:24 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C10M 159/20 - 159/24 C10M 105/22 C10M 105/32 C10M 105/40 C10M 137/04 C10M 163/00 C10N 40:24

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高塩基性金属スルホネートおよび高塩基
    性金属フェネートから選ばれた1種もしくは2種以上の
    高塩基性金属塩10〜70重量%と、ホスファチジルコリン
    0.1〜30重量%と、脂肪酸および脂肪酸エステルから選
    ばれた1種または2種以上を含む潤滑油基油残部とを含
    有することを特徴とする、金属の塑性加工用潤滑剤組成
    物。
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