JP3003026B2 - 金属板ガスケット - Google Patents

金属板ガスケット

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、１枚の金属板を使
用したガスケット、特に小面積の場所は勿論、シリンダ
ヘッドガスケットのような広い面積の場所にも使用でき
る金属板ガスケットを提供するものである。
【０００２】
【従来の技術】例えばシリンダヘッドガスケットに金属
板を使用したガスケットを適用する際に重要な事項とし
ては、シリンダボア等の流体孔の周りの部分を如何に確
実にシールするかということに重点を置いて開発設計が
なされている。もし、エンジンのシリンダボアの周りの
部分が適切にシールされていないと、燃焼ガスが漏洩し
てエンジンの性能を最大限に発揮させることができな
い。そこで複数枚の金属板を使用し、個々の金属板にビ
ードを形成したり、ビードに対応して中間板を介在させ
ることによってビードの異常変形を防止する金属積層形
ガスケットが一般に使用されている。
【０００３】例えば、特開平８−１００８５９号公報に
よって提案された金属積層形ガスケットは、並列する孔
に沿ってビードをそれぞれ形成した弾性金属板からなる
一対のビード基板の間に前記ビード基板よりも厚い板厚
の中間板を配置して３枚構成のガスケットとし、この中
間板にビードの両側に位置して一方のビード基板に向か
ってこの保障部を形成し、この保障部によって締め付け
時のビード基板の全圧縮を防止し、シリンダヘッドはシ
リンダブロックの対向取付面の不整を吸収すると共に、
保障部の間の両面に対向するビードのシール性を発揮す
るようにしたものである。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】前記金属積層形ガスケ
ットは、厚い中間板１枚と、薄いビード基板２枚からな
る３枚構成のもので、中間板のシリンダボア回りに、エ
ンジンに組立てた際に変形しない保障部を二重に形成
し、この二重の保障部の間の平坦な部分の両面にビード
基板に形成したビードを配置することによって、このビ
ードが全圧縮されてシール性が劣化するのを防止する構
成のものである。
【０００５】しかし、この金属積層形ガスケットは３枚
の金属板を必須の構成とするものであり、１枚物として
は成立せず、エンジンのシリンダヘッドガスケットのよ
うな大型の金属積層形ガスケットとして使用することが
できるが、これより小型のガスケットには適していな
い。
【０００６】また、このガスケットはそれぞれに別の機
能を持たせた３枚の金属板を１組として相互に作用を発
揮させることによってガスケットとしての機能を果たす
ものであるから、１枚の金属板でガスケットを製作しよ
うとしても、所定のシール性を発揮きないと言う本質的
な問題がある。このようなことから、排気マニホールド
の部分に使用するような小径の部分に使用する金属板ガ
スケットの場合には、この構造のガスケットを使用する
ことができない。
【０００７】更に、金属板の端部を折返して保障部を形
成する構造のものも提案されているが、この構造のもの
は保障部を端部にしか形成することができないために、
ビードを効果的に保障することができないと言う問題が
ある。
【０００８】本発明は、１枚の金属板を使用したガスケ
ットであって、小径の流体孔の周囲をシールする小面積
のものは勿論、エンジンのシリンダヘッドガスケットの
シリンダボアのように大径の流体孔の周囲をシールする
比較的大面積のガスケットにも適用できる金属板ガスケ
ットを提供することを目的とするものである。
【０００９】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明に係る金属板ガスケットは、次のように構成さ
れている。
【００１０】１）１枚の金属板に流体孔を開口し、この
金属板の一面側の前記流体孔の周囲に一次シール部と、
この一次シール部に隣接し、この一次シール部より圧縮
力が弱い二次シールビードを併設した金属板ガスケット
であって、前記一次シール部は、２本の脚部と、この脚
部の端部間を連結する頭部からなる断面コ字形の突起部
をエンボス加工で膨出形成し、次いでこの突起部の頭部
を押圧して脚部を曲げることなく高さを減少させて正確
な高さに形成する共に肉厚を増加させて押圧力に対する
抵抗力を強化し、前記二次シールビードは断面円弧状で
あって、その高さは前記一次シール部の高さより高く、
そして二つの被シール部材の間で押圧された際に、前記
一次シールビードが保護部として作用してこの二次シー
ルビードが全圧縮されることを防止するように構成した
ことを特徴としている。
【００１１】２）また、１枚の金属板に流体孔を開口
し、この金属板の一面側の前記流体孔の周囲に一次シー
ル部と、この一次シール部に隣接し、この一次シール部
より圧縮力が弱い二次シールビードを併設した金属ガス
ケットであって、前記一次シール部は、２本の脚部と、
この脚部の端部間を連結する頭部からなる断面コ字形の
突起部をエンボス加工で膨出形成し、次いでこの突起部
の頭部を一方の脚部側に向けて押圧し、この一方の脚部
側に頭部が重なり、他方の脚部が前記一方の脚部側に倒
れて折り畳んだ状態に変形させて一方の脚部側の金属板
を３層に折り畳むことによって正確な厚さに形成すると
共に押圧力に対する抵抗力を強化し、前記二次シールビ
ードは断面円弧状であって、その高さは前記一次シール
部の高さより高く、そして二つの被シール部材の間で押
圧された際に、前記一次シールビードが保護部として作
用してこの二次シールビードが全圧縮されることを防止
するように構成したことを特徴としている。
【００１２】３）更に、シールすべき流体孔を開口した
１枚の金属板の一面側に、前記流体孔の囲りに保護部を
形成する一次シール部と、この一次シール部に隣接平行
してこの一次シール部より圧縮力が弱く、断面円形の二
次シールビードを併設した金属ガスケットであって、前
記一次シール部は二次シールビードに平行し、且つ間欠
的に形成されていることを特徴としている。４）更に、
シールすべき孔部がシリンダボアであることを特徴とし
ている。
【００１４】
【発明の実施の形態】次に図面を参照して本発明に係る
金属板ガスケットを説明する。
【００１５】図１は、図１１のＸ−Ｘ部分を断面した金
属板ガスケットＧの要部を示す断面図であり、この金属
ガスケットＧは、金属板１に例えば燃焼室孔や排気ガス
孔、あるいはオイル孔や水孔等の流体孔２が開口されて
いる。なお、図１１においては流体孔として燃焼室孔２
とオイル孔２ａの部分を示している。
【００１６】そして前記流体孔２の全周を囲むか、ある
いは間欠的に、更には一部に、一次シール部３が形成さ
れ、そしてこの一次シール部３より平坦部６を隔てた外
周側に二次シールビード４が形成され、更にこの二次シ
ールビード４より平坦部６ａを隔てた外周側に段部５が
形成されている。
【００１７】この一次シール部３は二次シールビード４
に隣接して平行に形成されており、この二次シールビー
ド４が全圧縮されないように、押圧荷重を負担して保護
する機能を持つものである。
【００１８】図２は第２の形式の金属板ガスケットＧの
要部を示す断面図で、一次シール部３の両側に二次シー
ルビード４，４ａが形成されたものを示している。この
構造のガスケットＧにおいても、一次シール部３と二次
シールビード４あるいは４ａが一対として形成されてい
る。
【００１９】図３，図４及び図５は一次シール部３の成
型工程を示すもので、金属板１に形成する二次シールビ
ード４の近傍の所定の箇所に、前記二次シールビード４
側と同側に裏面のＰ側より押圧膨出して一次シール部３
の原形である突起部３Ａを形成する。この突起部３Ａは
断面がコ字形であって、２本の脚部とこれらの脚部の間
を結ぶ頭部で構成されている。
【００２０】一次シール部３は、図３〜図５に示すよう
に断面コ字形に形成した元の突起部の高さＨを、Ｈａを
経由してＨｂまで減少させるように圧縮する。この圧縮
工程においては、脚部が横に倒れることなく、図３〜５
に示すように脚部の厚さが次第に増大して加工硬化させ
ながら圧縮する。
【００２１】別の形状の一次シール部３として、図８〜
図１０に示すような第２の断面形状のものもある。即
ち、この第２の断面形状のものは、図８に示す原形であ
る断面コ字形の突起部３Ａから、図９に示すような斜め
方向に潰すように３Ｃへと変形させ、更に図１０に示す
ように一方の脚部Ｆを金属板１上に折畳み、他方の脚部
Ｆａを伸ばして頭部を脚部Ｆ側に重ねて３枚重ねの状態
の突起部３Ｄとしたものである。
【００２２】本発明の第１の構造の一次シール部３は、
図３に示すように原形の高さがＨの突起部３Ａをプレス
成型し、この原形の高さＨを図４及び図５に示すように
高さＨａ〜Ｈｂと次第に低めることによって圧縮しよう
とする押圧力に対して大きく抵抗させるようにすると共
に、正確な高さにした突起部に形成している。そしてこ
の断面コ字形の突起部の脚部Ｆをその高さ方向に、脚部
Ｆを曲げることなく正確に圧縮することによって次第に
肉厚を増加させ、その際、この脚部Ｆは加工硬化してお
り、本来のシール効果を発揮するために弾性変形できる
二次シールビード４に対する保護機能（ヘタリを防止す
る機能）を与えるように構成している。
【００２３】本発明に係る金属板ガスケットは、要する
に、エンジン部品の間に介在させない前は一次シール部
３（保護部）よりも二次シールビード４の高さが高く、
この金属板ガスケットを押圧した状態では二次シールビ
ード４の高さを低め、そして所定の高さ（Ｈｂ）の一次
シール部３によって、それ以上の圧縮がされないように
保護するものである。
【００２４】図６は１個の流体孔２の周囲に配置された
一次シール部３と、この一次シール部３の外周に配置さ
れた二次シールビード４と、更に平坦部６ａを置いて配
置された段部５を同心円状に形成した排気管用の金属板
ガスケットＧを示している。なお、この段部５に取付け
孔８を開口している。
【００２５】図６に示すように一次シール部３は、二次
シールビード４の圧縮度を調整し、保護するものである
から、円弧状のものを間欠的に形成するだけで良いが、
必要に応じてリング状に形成してシール機能も同時に与
えることもできる。
【００２６】また、この一次シール部３は、二次シール
ビード４の形状や寸法等の諸条件に応じて任意の位置
に、任意の大きさのものを形成することができる。その
場合、一次シール部３が小型のものであると二次シール
ビード４に対する保護機能を持つが、それ自身ではシー
ル機能は充分でない場合も発生するので、シールすべき
対象物とその大きさ等を考慮して設計する必要がある。
【００２７】図７は本発明の金属板ガスケットＧを、エ
ンジン部品（被シール部材）ＥａとＥｂとの間に挟持さ
せて所定の締付力で締付けた状態を状態を示す断面図で
あって、一次シール部３を形成する突起部の高さＨｂ
（図５）、あるいはこれより若干低い状態に押圧され、
二次シールビード４と段部５は変形されて所定のシール
面圧を発生させている。
【００２８】従って、一次シール部３の部分にはシール
圧Ｐ3 が、二次シールビード部４にはシール圧Ｐ4 が、
更に段部５にはシール圧Ｐ5 がそれぞれ発生してエンジ
ン部品Ｅａ，Ｅｂの流体孔２の周囲に効果的なシール面
圧を発生させている。
【００２９】一次シール部３の第１の構造のものは、図
３〜図５に示すように元の突起部の元の高さＨを、Ｈａ
を経由してＨｂまで脚部の肉厚を太らせながら減少させ
る圧縮工程のものの他、図８〜図１０に示すような第２
の断面形状のものもある。
【００３０】即ち、この第２の断面形状のものは、図８
に示す断面コ字形をした原形の突起部３Ａから、図９に
示すように斜め方向に潰すように３Ｃへと変形させ、更
に図１０に示すように一方の脚部Ｆを金属板１上に折畳
み、他方の脚部Ｆａを伸ばした状態の突起部３Ｄとした
ものである。
【００３１】この構造の一次シール部３を構成する突起
部３Ｄによると、金属板１上に脚部Ｆと頭部Ｃと、更に
別の脚部Ｆａが重なった状態となり、この部分では恰も
３枚の金属板１を重ねた状態となる。従って、二つのエ
ンジン部品Ｅａ，Ｅｂの間に挟持されて圧縮に対して大
きな応力を発生して隣接して配置された二次シールビー
ド部４の過度の圧縮変形を防止することができる。
【００３２】
【発明の効果】本発明は、請求項１の発明のように、１
枚の金属板に流体孔を開口し、この金属板の一面側の前
記流体孔の周囲に一次シール部と、この一次シール部に
隣接し、この一次シール部より圧縮力が弱い二次シール
ビードを併設した金属板ガスケットであって、前記一次
シール部は、２本の脚部と、この脚部の端部間を連結す
る頭部からなる断面コ字形の突起部をエンボス加工で膨
出形成し、次いでこの突起部の頭部を押圧して脚部を曲
げることなく高さを減少させて正確な高さに形成する共
に肉厚を増加させて押圧力に対する抵抗力を強化し、前
記二次シールビードは断面円弧状であって、その高さは
前記一次シール部の高さより高く、そして二つの被シー
ル部材の間で押圧された際に、前記一次シールビードが
保護部として作用してこの二次シールビードが全圧縮さ
れることを防止するように構成している。
【００３３】従って、この断面コ字形で脚部を太くする
と共に正確な高さに形成した一次シール部が、圧縮に対
して大きな抵抗力を発生し、隣接して圧縮力が一次シー
ル部より弱い二次シールビードが全圧縮状態となること
なく、弾性力を持った状態に確実に保護してシール性を
発揮させることができる。
【００３４】また、請求項２の発明のように、１枚の金
属板に流体孔を開口し、この金属板の一面側の前記流体
孔の周囲に一次シール部と、この一次シール部に隣接
し、この一次シール部より圧縮力が弱い二次シールビー
ドを併設した金属ガスケットであって、前記一次シール
部は、２本の脚部と、この脚部の端部間を連結する頭部
からなる断面コ字形の突起部をエンボス加工で膨出形成
し、次いでこの突起部の頭部を一方の脚部側に向けて押
圧し、この一方の脚部側に頭部が重なり、他方の脚部が
前記一方の脚部側に倒れて折り畳んだ状態に変形させて
一方の脚部側の金属板を３層に折り畳むことによって正
確な厚さに形成すると共に押圧力に対する抵抗力を強化
し、前記二次シールビードは断面円弧状であって、その
高さは前記一次シール部の高さより高く、そして二つの
被シール部材の間で押圧された際に、前記一次シールビ
ードが保護部として作用してこの二次シールビードが全
圧縮されることを防止するように構成している。
【００３５】従って、この３枚重ねの一次シール部によ
って押圧力に対する抵抗力を強化して二次シールビード
が全圧縮されることを確実に防止することができる。更
に、請求項３の発明のように、一次シール部を二次シー
ルビードに平行させながら、これを間欠的に形成するこ
とによっても十分な二次シールビードを保護して全圧縮
を防止する機能を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態に係る１枚の金属板からな
るガスケットの要部の断面図である。
【図２】他の実施の形態に係る金属板ガスケットの断面
図である。
【図３】一次シール部を構成する突起部の原形の断面図
である。
【図４】一次シール部を構成する突起部の変形状態を示
す断面図である。
【図５】一次シール部を構成する突起部の最終的な変形
状態を示す断面図である。
【図６】金属板ガスケットの正面図である。
【図７】エンジン部品に使用した金属板ガスケットの状
態を示す説明図である。
【図８】別の形式の突起部の原形を示す断面図である。
【図９】突起部の変形状態を示す断面図である。
【図１０】突起部の変形状態を示す断面図である。
【図１１】金属板ガスケットの一部を示す平面図であ
る。
【符号の説明】 １ 金属板 ２ 孔部 ３ 一次シール部３Ａ，３
Ｂ，３Ｃ，３Ｄ 突起部４，４ａ 二次シールビード
５ 段部 ６ａ 平坦部

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 １枚の金属板に流体孔を開口し、この金
    属板の一面側の前記流体孔の周囲に一次シール部と、こ
    の一次シール部に隣接し、この一次シール部より圧縮力
    が弱い二次シールビードを併設した金属板ガスケットで
    あって、 前記一次シール部は、２本の脚部と、この脚部の端部間
    を連結する頭部からなる断面コ字形の突起部をエンボス
    加工で膨出形成し、次いでこの突起部の頭部を押圧して
    脚部を曲げることなく高さを減少させて正確な高さに形
    成する共に肉厚を増加させて押圧力に対する抵抗力を強
    化し、前記二次シールビードは断面円弧状であって、そ
    の高さは前記一次シール部の高さより高く、そして二つ
    の被シール部材の間で押圧された際に、前記一次シール
    ビードが保護部として作用してこの二次シールビードが
    全圧縮されることを防止するように構成した金属板ガス
    ケット。
  2. 【請求項２】 １枚の金属板に流体孔を開口し、この金
    属板の一面側の前記流体孔の周囲に一次シール部と、こ
    の一次シール部に隣接し、この一次シール部より圧縮力
    が弱い二次シールビードを併設した金属ガスケットであ
    って、 前記一次シール部は、２本の脚部と、この脚部の端部間
    を連結する頭部からなる断面コ字形の突起部をエンボス
    加工で膨出形成し、次いでこの突起部の頭部を一方の脚
    部側に向けて押圧し、この一方の脚部側に頭部が重な
    り、他方の脚部が前記一方の脚部側に倒れて折り畳んだ
    状態に変形させて一方の脚部側の金属板を３層に折り畳
    むことによって正確な厚さに形成すると共に押圧力に対
    する抵抗力を強化し、前記二次シールビードは断面円弧
    状であって、その高さは前記一次シール部の高さより高
    く、そして二つの被シール部材の間で押圧された際に、
    前記一次シールビードが保護部として作用してこの二次
    シールビードが全圧縮されることを防止するように構成
    した金属板ガスケット。
  3. 【請求項３】 シールすべき流体孔を開口した１枚の金
    属板の一面側に、前記流体孔の囲りに保護部を形成する
    一次シール部と、この一次シール部に隣接平行してこの
    一次シール部より圧縮力が弱く、断面円形の二次シール
    ビードを併設した金属ガスケットであって、 前記一次シール部は二次シールビードに平行し、且つ間
    欠的に形成されている請求項１あるいは２に記載の金属
    板ガスケット。
  4. 【請求項４】 シールすべき孔部がシリンダボアである
    請求項１ないし３の何れかに記載の金属板ガスケット。
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