JP2996905B2 - 多層盛エレクトロガスアーク溶接方法及び凸形摺動銅板 - Google Patents

多層盛エレクトロガスアーク溶接方法及び凸形摺動銅板

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JP2996905B2
JP2996905B2 JP7276761A JP27676195A JP2996905B2 JP 2996905 B2 JP2996905 B2 JP 2996905B2 JP 7276761 A JP7276761 A JP 7276761A JP 27676195 A JP27676195 A JP 27676195A JP 2996905 B2 JP2996905 B2 JP 2996905B2
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哲哉 橋本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アーク安定性及び溶接
金属の靱性が良好な多層盛エレクトロガスアーク溶接方
法及び凸形摺動銅板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、エレクトロガスアーク溶接
は、立向溶接等に適用されている。エレクトロガスアー
ク溶接は高能率であるものの大入熱であるため、この溶
接方法には溶接金属の靱性が劣化するという問題点があ
る。この問題点を解消する技術として、凸形及び凹形の
摺動銅板を使用して溶接を実施する多層盛エレクトロガ
スアーク溶接が提案されている(特開昭55−5428
9号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
従来方法には、以下に示す問題点がある。即ち、施工面
では、開先内溶接時に摺動銅板の摺動性が低下するとい
う欠点がある。また、溶融池にスラグが溜まった場合
に、アークが不安定となるので、これを防止するために
竹べら等でスラグを除去する作業が必要であるという難
点がある。一方、溶接用ワイヤの性能面については、溶
接金属再熱部の靱性が低下するという問題点ある。この
ため、衝撃試験において、満足な結果を得ることができ
ていない。これらの理由により、多層盛エレクトロガス
アーク溶接は実用化に至っていない。このため、実際に
は炭酸ガス溶接、被覆アーク溶接又は炭酸ガスアーク溶
接により下盛を施した後、エレクトロガスアーク溶接等
の低入熱の溶接を施すことになるので、能率が極めて低
かった。
【0004】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、アーク安定性及び溶接金属の靱性が良好な
多層盛エレクトロガスアーク溶接方法及び凸形摺動銅板
を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る多層盛エレ
クトロガスアーク溶接方法は、開先内に凸形摺動銅板
凸部を挿入し、フラックス入りワイヤを使用して溶接す
る多層盛エレクトロガスアーク溶接方法であって、前記
凸形摺動銅板の凸部と前記開先面との溶接板面に平行の
方向に対する距離dを2乃至8mm、前記凸形摺動銅板
の凸部の先端側の表面に形成されたスラグ逃がし用溝上
端と溶融池表面上端との距離Hを25乃至35mmの範
囲内で設定し、前記凸部の前記先端側の表面の幅W、前
記スラグ逃がし用溝の上端側の幅W1、下端側の幅W2
び深さtが、W1≦W−4(mm)、W2≦W−4(m
m)、W1≦W2及び1≦t≦5(mm)の関係を満た
し、前記フラックス入りワイヤのフラックスは、ワイヤ
全重量に対し、Ti:0.01乃至0.50重量%、
B:0.002乃至0.010重量%、Mo:0.50
重量%以下、C:外皮中に含有されるCとの総量で0.
01乃至0.10重量%、Si:外皮中に含有されるS
iとの総量で0.10乃至0.90重量%及びMn:外
皮中に含有されるMnとの総量で0.80乃至3.00
重量%を含有することを特徴とする。
【0006】前記フラックスは、ワイヤ全重量に対し、
更にNi:0.10乃至3.00重量%及びMg:0.
10乃至2.00重量%の1種又は2種を含有すること
が好ましい。
【0007】また、前記フラックスは、ワイヤ全重量に
対し、更にスラグ形成剤:0.5乃至3.0重量%を含
有することが好ましい。
【0008】本発明に係る凸形摺動銅板は、請求項1乃
至3のいずれか1項に記載の多層盛エレクトロガスアー
ク溶接方法に使用される凸形摺動銅板であって、前記凸
形摺動銅板の凸部と前記開先面との溶接板面に平行の方
向に対する距離dが2乃至8mm、前記凸形摺動銅板の
凸部表面に形成されたスラグ逃がし用溝上端と溶融池表
面上端との距離Hが25乃至35mmであることを特徴
とする。
【0009】
【作用】本願発明者等が鋭意検討した結果、凸形摺動銅
板の摺動性を良好とするためには、凸形摺動銅板の凸部
と開先面との距離を適切な範囲内に維持すること、また
凸形摺動銅板からスラグを円滑に逃がし、アークの安定
性を良好とするためには、スラグ逃がし用溝上端と溶融
池表面上端との距離Hが適切な範囲内であることが重要
であることを見出した。また、再熱部の靱性を確保する
ためには、フラックス入りワイヤのフラックスのTi、
B及びMo含有量を適切な範囲内とすることが極めて重
要であること、またC、Mn及びSiの含有量を適切な
範囲内とすることが必要であることを見出した。
【0010】本発明に係る多層盛エレクトロガスアーク
溶接方法においては、開先内に凸形摺動銅板を挿入し、
この摺動銅板を母材に摺動させつつ、フラックス入りワ
イヤを送給しながら、開先を溶接する。そうすると、凸
形摺動銅板の凸部と開先面との溶接板面に平行の方向に
対する距離dが適切であるため、溶接中スパッタが開先
内に付着して、このスパッタにより摺動銅板が停止した
り、開先と摺動銅板との摩擦により摺動銅板の円滑な上
昇が阻害されたり、更に摺動銅板凸部と開先面との隙間
から溶接金属が溶け落ちるといった虞がない。また、凸
形摺動銅板の凸部表面に形成されたスラグ逃がし用溝上
端と溶融池表面上端との距離Hが適切であるため、凸形
摺動銅板の焼き付き、溶融金属の溶け落ち及びアークの
不安定が生じる虞がない。これにより、靱性が良好な溶
接金属が得られる。
【0011】次に、本発明における凸形摺動銅板の凸部
と開先面との溶接板面に平行の方向に対する距離d、凸
形摺動銅板の凸部表面に形成されたスラグ逃がし用溝上
端と溶融池表面上端との距離H及びフラックス入りワイ
ヤの化学成分に対する数値限定の理由について説明す
る。
【0012】凸形摺動銅板の凸部と開先面との溶接板面
に平行の方向に対する距離d:2乃至8mm、好ましく
は4乃至8mm 凸形摺動銅板の凸部と開先面との溶接板面に平行の方向
に対する距離dは、開先のギャップが変動した場合に、
開先と凸形摺動銅板が擦れ合ったり、また凸形摺動銅板
と開先との隙間から溶接金属が垂れ落ちたりするといっ
た虞がないように設定する必要がある。dが2mm未満
では、溶接中にスパッタが開先内に付着し、この付着物
により凸形摺動銅板が停止する虞がある。また、開先の
ギャップが変動した場合に、開先と凸形摺動銅板とが擦
れ合い、凸形摺動銅板の円滑な移動が阻害される。一
方、dが8mmを超える場合は、凸形摺動銅板の凸部と
開先面との距離が離れ過ぎるため隙間が生じ、この隙間
から溶接金属が溶け落ちるか、又は垂れる虞がある。従
って、凸形摺動銅板の凸部と開先面との溶接板面に平行
の方向に対する距離dは2乃至8mmとする。但し、大
粒スパッタの開先内への付着及び開先のギャップの変動
等に対応するためには、dは4乃至8mm以上であるこ
とが好ましい。
【0013】凸形摺動銅板の凸部表面に形成されたスラ
グ逃がし用溝上端と溶融池表面上端との距離H:25乃
至35mm 凸形摺動銅板の凸部表面に形成されたスラグ逃がし用溝
上端と溶融池表面上端との距離Hは、摺動銅板が焼き付
いたり、溶接金属が溶け落ちたりすることがなく、且つ
アークが安定するように設定する必要がある。Hが25
mm未満では、溶接速度によっては、逃げるスラグの量
が過大となり、摺動銅板が焼き付いたり、溶接金属が抜
け落ちたりする。一方、Hが35mmを超える場合は、
逃げるスラグの量は、スラグ逃がし用溝が形成されてい
ない摺動銅板を使用した場合よりも若干多いものの、十
分とはいえず、スラグが溜まることによってアークが不
安定となる。従って、凸形摺動銅板の凸部表面に形成さ
れたスラグ逃がし用溝上端と溶融池表面上端との距離H
は25乃至35mmとする。
【0014】Ti(チタン):0.01乃至0.50重
量% Tiは、溶接金属の靱性向上に効果的な元素である。ま
た、TiをBと複合添加することにより、Ti−Bの靱
性強化機構が作用することが知られている。しかしなが
ら、Tiの含有量が0.01重量%未満では、このTi
−Bの靱性強化機構が十分に機能しない。一方、Ti含
有量が0.50重量%を超える場合は、スパッタが多量
に発生する。また、溶接金属の強度が高くなり過ぎて、
低温割れが生じやすくなる。従って、Tiの含有量は
0.01乃至0.50重量%とする。
【0015】なお、Ti源としては、Fe−Ti等があ
る。
【0016】B(ホウ素):0.002乃至0.010
重量% Bは、上述のTiと共に溶接金属の靱性を向上させる効
果がある。Bの含有量が、0.002重量%未満では、
Ti−Bの靱性強化機構が十分に機能しない。一方、B
の含有量が0.010重量%を超える場合は、高温割れ
が発生しやすくなる。よって、Bの含有量は0.002
乃至0.010重量%とする。
【0017】なお、B源としては、Fe−B等を挙げる
ことができる。
【0018】Mo(モリブデン):0.50重量%以下 Moは、溶接金属の靱性確保のために有効な成分であ
る。但し、Moの含有量が0.50重量%を超える場合
は、溶接金属再熱部の焼入性が低下するために、かえっ
て靱性が低下してしまう。従って、Moの含有量は0.
50重量%以下とする。
【0019】なお、Mo源としては、Fe−Mo等が挙
げられる。
【0020】C(炭素):外皮中に含有されるCとの総
量で0.01乃至0.10重量% Cは、強度及び焼入性を向上させることによって、溶接
金属の靱性を確保するために必要な添加元素である。ま
た、Cはアーク集中性を促進することによって、溶込み
深さを安定させる効果がある。Cの含有量が0.01重
量%未満では、十分な強度及び靱性を得ることができな
い。また、溶込みも不安定になる。一方、Cの含有量が
0.10重量%を超える場合は、スパッタの発生量が増
大し、溶接作業性が劣化する。従って、Cの含有量は外
皮中に含有されるCとの総量で0.01乃至0.10重
量%とする。
【0021】Mn(マンガン):外皮中に含有されるM
nとの総量で0.80乃至3.00重量% Mnは脱酸剤として有効な成分であると共に、溶接金属
の強度調整及び焼入性向上による靱性改善に有効な成分
である。但し、Mnは外皮中のMn含有量を考慮して添
加する必要がある。Mnの含有量が0.80重量%未満
では、軟鋼用としても十分な強度の溶接金属を得ること
ができない。一方、Mnの含有量が3.00重量%を超
える場合は、溶接金属の強度が過大となるため、低温割
れが発生しやすくなる。従って、Mnの含有量は、外皮
中に含有されるMnとの総量で0.80乃至3.00重
量%とする。
【0022】なお、Mn源としては、Mn並びにFe−
Mn及びFe−Si−Mn等の合金が挙げられる。
【0023】Si(珪素):外皮中に含有されるSiと
の総量で0.10乃至0.90重量% SiはMnと同様の作用効果を及ぼす。しかし、Siの
含有量が0.10重量%未満では、脱酸剤としての作用
及び靱性改善効果が十分に得られない。また、その含有
量が0.90重量%を超える場合は、溶接金属中のSi
含有量が過剰となり、かえって靱性及び延性が低下す
る。従って、Siの含有量は外皮中に含有されるSiと
の総量で0.10乃至0.90重量%とする。
【0024】なお、Si源としては、Si並びにFe−
Si、Fe−Si−Mn及びFe−Si−Mg等の合金
を挙げることができる。
【0025】Ni(ニッケル):好ましくは0.10乃
至3.00重量% Niは、溶接金属の低温での靱性向上及び延性向上に効
果的な添加元素である。しかし、Niの含有量が0.1
0重量%未満では、十分な低温靱性を得ることが困難で
ある。一方、Niの含有量が3.00重量%を超える場
合は、溶接金属の強度が過大となり、低温割れが発生し
やすくなる。よって、Niを添加する場合は、その含有
量は0.10乃至3.00重量%とすることが好まし
い。
【0026】なお、Ni源としては、金属Ni及びNi
−Mg等の合金が挙げられる。
【0027】Mg(マグネシウム):好ましくは0.1
0乃至2.00重量% Mgは、スラグの粘性を低下させ、スラグを流れやすく
するために、添加することができる。Mgの含有量が
0.10重量%未満では、このスラグを流れやすくする
効果が不十分である。一方、Mgの含有量が2.00重
量を超える場合は、ヒューム及びスパッタの発生量が増
大し、溶接作業性が劣化する。従って、Mgを添加する
場合は、その含有量は0.10乃至2.00重量%とす
ることが好ましい。
【0028】スラグ形成剤:好ましくは0.5乃至3.
0重量% スラグ形成剤は、良好なビード外観及び形状を得るため
に、また摺動銅板を保持するために有効な成分である。
スラグ形成剤の含有量が0.5重量%未満では、摺動銅
板が焼付きを起こしたり、ビードが垂れやすくなる。一
方、スラグ形成剤の含有量が3.0重量%を超える場合
は、摺動銅板の形状を調整した場合であっても、溶融池
にスラグが過剰に溜まり、アークが不安定となりやす
い。従って、スラグ形成剤を必要に応じて添加する場合
は、その添加量は0.5乃至3.0重量%とすることが
好ましい。
【0029】
【実施例】次に、本発明の実施例について、添付の図面
を参照して具体的に説明する。図1は本実施例に係る多
層盛エレクトロガスアーク溶接方法を示す図であって、
(a)は本実施例における凸形摺動銅板を示す模式図、
(b)は凸形摺動銅板が開先に挿入された様子を示す断
面図である。図1(a)に示すように、凸形摺動銅板1
の母材に接触する側の面の中央部には、地面に対して垂
直に凸部2が設けられている。凸部2の断面形状は、図
1(b)に示すように、等脚台形状であり、台形の上底
に相当する上面3が開先5内に挿入できるように、台形
の斜辺に相当する斜面4は、開先5の開先面6に整合す
る形状となっている。この上面3の開先5の垂直の方向
に対する長さをWと定義する。また、この斜面4と開先
面6との溶接板面に平行の方向に対する距離をdと定義
する。凸部2の下端側には、下端から凸部2の中央部に
向かって、溶融池からスラグを逃がすためのスラグ逃が
し用溝7が設けられている。スラグ逃がし用溝7の上端
9側の幅をW1、下端側の幅をW2、そして深さをtと定
義する。
【0030】このように構成された凸形摺動銅板1の凸
部2を開先5内に挿入した後、凸形摺動銅板1を母材に
摺動させ、適切な化学成分のフラックス入りワイヤを使
用しつつ、エレクトロガスアーク溶接を開先5内に施
す。そうすると、図2に示すように、このスラグ逃がし
用溝7にスラグ8が逃げ込む。この場合に、距離dを適
切な値に設定すれば、溶接中スパッタが開先4内に付着
して、このスパッタにより凸形摺動銅板1が停止した
り、凸形摺動銅板1の円滑な上昇が阻害されたり、凸形
摺動銅板1の凸部2と開先4との隙間から溶接金属が溶
け落ちるといった虞がない。また、逃げ込んだスラグ8
の上端9、即ちスラグ逃がし用溝7の上端9と湯面上端
(溶融池表面上端)との距離をHと定義し、この距離H
が適切である場合は、凸形摺動銅板1の焼き付き、溶接
金属の溶け落ち及びアークの不安定が生じる虞がない。
これにより、靱性が良好な溶接金属が得られる。
【0031】上述のように、良好な溶接を施すために
は、d、H及びフラックス入りワイヤの化学成分が適切
である必要がある。これらの値を決めるために実施した
実験の結果について説明する。先ず、dと溶接作業性と
の関係を調査した実験の結果について説明する。
【0032】下記表1の溶接条件において、下記表2に
示す化学成分を有するフラックス入りワイヤを使用し、
開先に溶接を施して、初層を形成した。dを1乃至9m
mの範囲で変化させた場合(実施例No.A1〜A4及
び比較例No.A1、A2)について、得られた結果を
下記表3に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】 なお、表2中のC、Si及びMnの含有量は、夫々、フ
ラックス入りワイヤ外皮中に含有されるものとの総量で
ある。
【0035】
【表3】
【0036】なお、図3(a)は、溶接作業性が良好で
あった実施例No.A3の溶接金属の断面形状を示すマ
クロ金属組織写真である。また、図3(b)は、溶落及
び垂れが生じた比較例No.A2の溶接金属の断面形状
を示すマクロ金属組織写真である。
【0037】上記表3に示すように、dが本発明にて規
定した範囲内であった実施例No.A1〜A4において
は、いずれも良好に溶接することができた。
【0038】dが1mmと本発明にて規定した値より小
さかった比較例No.A1においては、溶接中にスパッ
タが開先内に付着し、この付着したスパッタによって凸
形摺動銅板が停止した。また開先のギャップ変動等によ
り、開先と凸形摺動銅板とが擦れ合い、凸形摺動銅板の
円滑な上昇が阻害された。一方、dが9mmと本発明に
て規定した値より大きかった比較例No.A2において
は、凸形摺動銅板の凸部と開先面の距離とが大きくなり
過ぎたため、これによって生じた隙間から溶接金属が抜
け落ちたり、垂れたりした。以上より、dは2乃至8m
mの範囲内で設定する。
【0039】次に、凸形摺動銅板の凸部表面に形成され
たスラグ逃がし用溝上端と溶融池表面上端との距離H
が、溶接作業性に及ぼす影響を調査した実験の結果につ
いて説明する。上記表2に示す化学成分のフラックス入
りワイヤを使用し、下記表4に示す溶接条件で、下記表
5に示すように、Hを20乃至40mmの範囲で変化さ
せてV字形開先を立向溶接した。なお、dは6mmに固
定した。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】図4は横軸に溶接速度(cm/min)を
とり、縦軸に凸形摺動銅板の凸部表面に形成されたスラ
グ逃がし用溝上端と溶融池表面上端との距離H(mm)
をとって、両者の関係を示すグラフ図である。図4に示
すように、溶接速度が4乃至8cm/分の範囲内におい
て、溶接作業性が良好なHの範囲は、本発明にて規定し
た25乃至35mmである。Hが25mm未満では、溶
接速度を変化させた場合に、逃げるスラグの量が過大と
なったため、凸形摺動銅板が焼き付いたり、また溶接金
属が抜け落ちたりした。一方、Hが35mmを超える場
合は、逃げるスラグの量は、スラグ逃がし用溝が形成さ
れていない摺動銅板を使用した場合に比して若干多かっ
たものの、溶融池にスラグが溜まることによってアーク
が不安定となった。以上より、Hは25乃至35mmに
設定する。
【0043】なお、図1及び2に示すように、凸部2の
上面3の開先5に垂直の方向に対する長さW、スラグ逃
がし用溝7の上端9側の幅W1、下端側の幅W2及び深さ
tは、W1≦W−4mm、W2≦W−4、W1≦W2及び1
≦t≦5の関係を満たすことが好ましい。
【0044】次に、フラックス入りワイヤの化学成分の
うち、溶接金属の再熱部の靱性を確保するために特に重
要なTi、B及びMoの含有量を変化させた実験の結果
(実施例No.B1〜B5及び比較例No.B1〜B
3)について説明する。下記表6に示す化学組成の各フ
ラックス入りワイヤを使用し、凸形摺動銅板のdを6m
m及びHを30mmとして、上記表1の溶接条件で溶接
を実施した。
【0045】
【表6】
【0046】なお、C、Si及びMnの含有量は、フラ
ックス入りワイヤ外皮中に含有されるものとの総量であ
る。また、表中のワイヤ欄は、図5中の各ワイヤのN
o.を示す。
【0047】図5は、横軸に試験温度(℃)をとり、縦
軸にシャルピー吸収エネルギー(J)をとって、両者の
関係を示すグラフ図である。図5に示すように、実施例
No.B1〜5(ワイヤNo.2、3、4、7及び8)
は、Ti、B、Moの含有量がいずれも本発明にて規定
した範囲内であるため、シャルピー吸収エネルギーが高
く、靱性が良好であった。
【0048】比較例No.B1(ワイヤNo.1)で
は、Ti及びBの含有量が、夫々、0.008重量%、
0.001重量%と本発明にて規定した量よりも少ない
ために、Ti−Bによる靱性強化が不十分であり、シャ
ルピー吸収エネルギーが小さくなった。
【0049】比較例No.B2(ワイヤNo.5)にお
いては、Ti及びBの含有量が、夫々、0.60重量
%、0.012重量%と本発明にて規定した量よりも多
いため、シャルピー吸収エネルギーは大きいものの、ス
パッタが発生した。また、溶接金属の強度が過大となっ
たため、低温割れ及び高温割れが生じた。
【0050】比較例No.B3(ワイヤNo.9)で
は、Moの添加量が、0.80重量%と本発明にて規定
した量よりも多いため、靱性が低下し、シャルピー吸収
エネルギーが減少した。
【0051】次に、下記表7に示す凸形摺動銅板を使用
し、下記表8に示す溶接条件で多層盛エレクトロガスア
ーク溶接を実施した場合の実施例(実施例No.1〜2
0)をその比較例(比較例No.1〜13)と比較して
説明する。下記表9に、各実施例及び各比較例の化学成
分を示す。
【0052】
【表7】
【0053】
【表8】
【0054】
【表9】
【0055】各実施例及び各比較例について、凸形摺動
銅板の摺動性、アークの安定性及びスパッタの発生量と
いった溶接作業性並びに再熱部及び低温における靱性を
調査した。凸形摺動銅板の摺動性及び作業性は、官能評
価により評価した。また、再熱部の靱性は、JIS Z
3313に準じて評価した。各項目について、優良で
あったものは◎、優良と良好との中間であったものは○
◎、良好であったものは○、普通であったものは△、そ
して不良であったものは×で示した。結果を下記表10
に示す。
【0056】
【表10】
【0057】実施例No.1〜20においては、凸形摺
動銅板の凸部形状、スラグ逃がし用溝及びフラックスの
成分調整が適切であるため、溶接作業性が良好で、溶接
金属の再熱部の靱性も確保されている。
【0058】特に、実施例No.13、14のフラック
スには、適正量のNiが添加されているため、溶接金属
の再熱部の靱性及び低温における靱性が極めて良好とな
っている。また、実施例No.16、18〜20におい
ては、Mgが適正量添加されているため、スラグの粘性
が適切であった。
【0059】なお、スラグ形成剤の含有量が0.4重量
%と少量であった実施例No.8及びスラグ形成剤の含
有量が3.2重量%と多量であった実施例No.11
は、総合評価が△(普通)であった。この結果から、ス
ラグ形成剤の含有量は、0.5乃至3.0重量%に設定
することが好ましいことがわかる。
【0060】一方、比較例No.1では、凸形摺動銅板
と開先面との溶接板面に平行の方向に対する距離dが1
mmであり、本発明にて規定した値よりも小さいため
に、凸形摺動銅板が溶接途中で停止した。また、比較例
No.2では、dが9mmと本発明にて規定した値より
大きいため、溶落が生じた。
【0061】比較例No.3では、凸形摺動銅板の凸部
表面に形成されたスラグ逃がし用溝と溶融池表面上端と
の距離Hが20mmであり、本発明にて規定した値より
小さいために、溶落が生じた。一方、比較例No.4に
おいては、このHが40mmと本発明にて規定した値よ
り大きいため、アークが不安定となり、スパッタの発生
量が増大した。
【0062】比較例No.5では、Ti及びBの含有量
が、夫々、0.008重量%及び0.001重量%とい
ずれも本発明にて規定した含有量よりも少ないために、
靱性が不良であった。一方、比較例No.6において
は、Ti及びBの含有量が、夫々、0.55重量%及び
0.012重量%といずれも本発明にて規定した含有量
を超えているため、高温及び低温において割れが発生し
た。
【0063】比較例No.7のフラックスはMoの含有
量が、0.60重量%と本発明にて規定したものより多
いため、靱性が不良であった。
【0064】比較例No.8では、Cの含有量が、0.
008重量%と本発明にて規定した含有量より少ないた
め、靱性が不良であると共に強度が不足した。また、比
較例No.9においては、Cの含有量が、0.12重量
%と本発明にて規定した含有量を超えているため、スパ
ッタの発生量が増加した。
【0065】比較例No.10においては、Siの含有
量が、0.08重量%と本発明にて規定した含有量より
少ないため、靱性が必ずしも良好ではなかった。一方、
比較例No.11では、Siの含有量が、0.95重量
%と本発明にて規定した範囲を超えて多かったため、延
性が低下した。
【0066】比較例No.12では、Mnの含有量が
0.65重量%と本発明にて規定した範囲を外れて少な
かったので、靱性の改善が見られないと共に溶接金属の
強度が不足した。また、比較例No.13においては、
Mnの含有量が3.20重量%と本発明にて規定した含
有量よりも多かったため、低温割れが発生した。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る多層
盛エレクトロガスアーク溶接方法は、凸形摺動銅板の凸
部と開先面との溶接板面に平行の方向に対する距離d、
凸形摺動銅板の凸部表面に形成されたスラグ逃がし用溝
上端と溶融池表面上端との距離H及びフラックス成分を
適切な値としたので、溶接作業性が優れていると共に靱
性が優れた溶接金属を得ることができるという効果を奏
する。
【0068】また、本発明に係る凸形摺動銅板は、凸形
摺動銅板の凸部と開先面との溶接板面に平行の方向に対
する距離d及び凸形摺動銅板の凸部表面に形成されたス
ラグ逃がし用溝上端と溶融池表面上端との距離Hが適切
であるので、摺動性が良好であると共に溶融金属の溶け
落ちを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る多層盛エレクトロガスアーク溶
接方法を示す図であって、(a)は本実施例における凸
形摺動銅板を示す模式図、(b)は凸形摺動銅板が開先
に挿入された様子を示す断面図である。
【図2】凸形摺動銅板にスラグが逃げ込んだ様子を示す
模式図である。
【図3】(a)は実施例の溶接金属の断面形状を示すマ
クロ金属組織写真、(b)は比較例の溶接金属の断面形
状を示すマクロ金属組織写真である。
【図4】横軸に溶接速度(cm/min)をとり、縦軸
に凸形摺動銅板の凸部表面に形成されたスラグ逃がし用
溝上端と溶融池表面上端との距離H(mm)をとって、
両者の関係を示すグラフ図である。
【図5】横軸に試験温度(℃)をとり、縦軸にシャルピ
ー吸収エネルギー(J)をとって、両者の関係を示すグ
ラフ図である。
【符号の説明】
1;凸形摺動銅板 2;凸部 3;上面 4;斜面 5;開先 6;開先面 7;スラグ逃がし用溝 8;スラグ 9;上端
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−54289(JP,A) 特開 昭63−140798(JP,A) 特開 昭59−189097(JP,A) 特開 平5−261593(JP,A) 特開 平5−261532(JP,A) 特開 平3−294096(JP,A) 実開 昭59−68696(JP,U) 実開 昭57−111488(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/173 B23K 35/368 B23K 37/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 開先内に凸形摺動銅板の凸部を挿入し、
    フラックス入りワイヤを使用して溶接する多層盛エレク
    トロガスアーク溶接方法であって、前記凸形摺動銅板の
    凸部と前記開先面との間の溶接板面に平行の方向に対す
    る距離dを2乃至8mm、前記凸形摺動銅板の凸部の先
    端側の表面に形成されたスラグ逃がし用溝上端と溶融池
    表面上端との距離Hを25乃至35mmの範囲内で設定
    し、前記凸部の前記先端側の表面の幅W、前記スラグ逃
    がし用溝の上端側の幅W1、下端側の幅W2及び深さt
    が、W1≦W−4(mm)、W2≦W−4(mm)、W1
    ≦W2及び1≦t≦5(mm)の関係を満たし、前記フ
    ラックス入りワイヤのフラックスは、ワイヤ全重量に対
    し、Ti:0.01乃至0.50重量%、B:0.00
    2乃至0.010重量%、Mo:0.50重量%以下、
    C:外皮中に含有されるCとの総量で0.01乃至0.
    10重量%、Si:外皮中に含有されるSiとの総量で
    0.10乃至0.90重量%及びMn:外皮中に含有さ
    れるMnとの総量で0.80乃至3.00重量%を含有
    することを特徴とする多層盛エレクトロガスアーク溶接
    方法。
  2. 【請求項2】 前記フラックスは、ワイヤ全重量に対
    し、更にNi:0.10乃至3.00重量%及びMg:
    0.10乃至2.00重量%の1種又は2種を含有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の多層盛エレクトロガ
    スアーク溶接方法。
  3. 【請求項3】 前記フラックスは、ワイヤ全重量に対
    し、更にスラグ形成剤:0.5乃至3.0重量%を含有
    することを特徴とする請求項1又は2に記載の多層盛エ
    レクトロガスアーク溶接方法。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    多層盛エレクトロガスアーク溶接方法に使用される凸形
    摺動銅板であって、前記凸形摺動銅板の凸部と前記開先
    面との溶接板面に平行の方向に対する距離dが2乃至8
    mm、前記凸形摺動銅板の凸部表面に形成されたスラグ
    逃がし用溝上端と溶融池表面上端との距離Hが25乃至
    35mmであることを特徴とする凸形摺動銅板。
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