JP2996158B2 - ギヤポンプ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、主として石油化学
工業で使用される高分子ポリマや化学薬品等の移送用の
内軸受形ギヤポンプに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】すべり軸受においては、軸受と軸の潤滑
をはかるため、一般に軸受と軸の間になんらかの潤滑用
油溝が設けられる。特に高粘度液移送用のギヤポンプ等
に使用されるすべり軸受においては、横断面が部分円弧
状をなす潤滑用油溝を設けるのが通常である。そして、
例えば実公昭６３−２５４４０号公報にみられるよう
に、吐出圧力を直接潤滑用油溝に導くことによって強制
的に潤滑を行い、さらには老廃物等の異物混入に対して
もそれらを排出する細い油溝を該潤滑用油溝の先端部分
に設けることによって潤滑性能の向上をはかっていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが高い吐出圧力
で液体を移送したり、高回転でポンプを使用するなど軸
受に対する負荷が更に大きい場合、従来技術で述べたよ
うな潤滑用油溝では十分でなく、軸受と軸の摺動による
傷が発生したり、焼き付きが生じたりしてポンプの耐久
性や耐負荷性が低下し問題となる。これは高負荷の場
合、通常の潤滑用油溝では軸受内の潤滑液入れ替えが十
分に行えず、摩擦により生じた発熱量増加分を吸収する
ことができないため潤滑液温度が上昇し潤滑液の低粘度
化や液変質が発生することに起因する。このような不具
合を解決し、軸受の耐久性や耐負荷性を向上させるため
に、軸受隙間（軸受内径と軸外径の差）を大きくすれ
ば、潤滑液量を増加させ潤滑液入れ替えを促進できるた
め上記不具合を解決することが見込めるが、軸にガタを
生じたり、容積効率の低下が生じて吐出性能が安定しな
いなど、ポンプの構造上別の問題が生じ、ある一定以上
軸受隙間を大きくすることができない。

【０００４】本発明はこれらの課題を解決し、すべり軸
受の耐久性や耐負荷性を向上させることを目的としてい
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、かかる目的を
達成するために、次のような構成を採用したものであ
る。

【０００６】すなわち本発明に係るギヤポンプは、軸受
に設けられた潤滑液流入口に臨む位置であって軸受の回
転軸と接する面の逆くさび領域に軸方向に沿って潤滑用
油溝が設けられ、かつ該油溝の軸回転方向に沿った断面
形状が、溝最深部から軸回転方向に対し順次小さくな
り、かつ該断面積が溝最深部からみて軸回転方向側の方
が逆側より大きい非対称形をなしていることを特徴とす
る。このような構成のものであると、かかる溝形状に起
因して潤滑用油溝に導入された潤滑液が軸回転方向に回
り込み易く、また回り込んで潤滑作用を果たした潤滑液
が再度潤滑用油溝に排出され易くなり、潤滑液入れ替え
が促進され潤滑性能が改善されるため、軸受と軸の摺動
による傷や焼き付きの発生を防止できてポンプの耐久性
能が向上し、またポンプ吐出圧力を高くできるなど高負
荷運転が可能となりポンプの耐負荷性能も向上する。さ
らにはポンプの吐出圧力や耐久に関する要求が従来のも
のと同じであれば、軸受け隙間を小さくすることが可能
となりポンプの吐出性能の安定、向上がはかれる。

【０００７】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説
明する。

【０００８】図１、図２に示す軸受は、例えば高分子ポ
リマや化学薬品等の移送用の内軸受形ギヤポンプに適用
されるもので、潤滑液入れ替えを促進し軸に対する潤滑
性能を改善する潤滑用油溝１を備えたものである。

【０００９】詳述すると、潤滑用油溝１は図１、図２に
示すようにポンプ吐出側に開設された潤滑液流入口１１
に連通し回転軸と接する逆くさび領域に軸方向に沿って
設けられた太い潤滑用油溝１２、及びその末端に開設さ
れた細溝１３から構成される。

【００１０】太い潤滑用油溝１２についてさらに詳述す
ると、該油溝１２の軸回転方向に沿った断面形状は、図
３〜図５に示すように、軸回転方向Ｘに対し順次小さく
なるテーパ状となるように切り欠き部１２２が設けられ
ている。そして、該断面積が溝最深部１２１からみて軸
回転方向側の方が逆側より大きい非対称形となってい
る。比較のため説明すると、図７〜図９に示すように従
来の潤滑用油溝５２にはテーパ部は設けられておらず、
溝最深部から見て回転側及び逆回転側に対称形状をなし
ている。

【００１１】上記油溝１２の末端に開設された細溝１３
は、従来技術と同様に老廃等の異物除去のために設けら
れたものである。

【００１２】次に逆くさび領域について説明すると、図
６に示すように、すべり軸受けにおいては軸３３にＷ方
向に負荷がかけられ、軸３３の回転方向がＸＸである場
合、軸中心Ｏ´は軸受け中心Ｏから偏心し、その時負荷
方向側に油膜３５が形成される。一般的に軸受けと軸の
隙間に形成されるこの油膜３５の部分をくさび領域と称
し、これと軸中心に対して反対側の軸受隙間部分３６を
逆くさび領域と称する。そして潤滑用油溝はこの逆くさ
び領域に設けられる。本実施例においては図１に示すよ
うに軸にかかる負荷の方向は略Ｚ１、Ｚ２方向となりこ
れと軸中心に対して反対側たる逆くさび領域内に潤滑用
油溝１２が設けられている。

【００１３】上述した構成により、潤滑液はポンプ吐出
圧を受け、液流入口１１より太い潤滑用油溝１２を通じ
て軸受隙間に導かれる。この時、該油溝１２の軸回転方
向に沿った面形状が溝最深部１２１を基準にして逆方向
よりも断面積が大きく且つ軸回転方向２に対し順次小さ
くなるテーパ状となるよう設けられた切り欠き部１２２
によって潤滑液入れ替えが促進され、本実施例において
潤滑性能が約３０％改善される。また、太い潤滑用油溝
１２が軸受を貫通せず、その末端が細溝１３となってい
ることにより、逆くさび領域内で太い潤滑用油溝１２の
断面積を大きくしても、潤滑液の漏れ量は細溝１３で制
限されるため、ポンプの容積効率が悪化しない。またこ
の細溝１３は潤滑液入れ替えの促進にも寄与する。

【００１４】この結果、軸受と軸の摺動による傷や焼き
付きの発生が防止できポンプの耐久性能が向上し、また
ポンプ吐出圧力を高くできるなど高負荷運転が可能とな
りポンプの耐負荷性能も向上する。さらにはポンプの吐
出圧力や耐久に関する要求が従来のものと同じであれ
ば、軸受け隙間を小さくすることが可能となりポンプの
吐出性能の安定、向上がはかれる。

【００１５】以上、本発明の一実施例について説明した
が、各部の具体的な構成は実施例のものに限定されるも
のではない。例えば太い潤滑用油溝１２の位置は逆くさ
び領域内ならば任意であり、軸受面に沿って曲線状にす
る事も可能である。この他具体的な構成などは本発明の
趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。

【００１６】

【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に記載されるような効果を有する。

【００１７】すなわち本発明に係るギヤポンプは、軸受
に設けられた潤滑液流入口に臨む位置であって軸受の回
転軸と接する面の逆くさび領域に軸方向に沿って潤滑用
油溝が設けられ、かつ該油溝の軸回転方向に沿った断面
形状が、軸回転方向に対し順次小さくなり、かつ該断面
積が溝最深部からみて軸回転方向側の方が逆側より大き
い非対称形をなしていることを特徴とするすべり軸受を
具備してなる。このような構成のものであると、潤滑液
入れ替えが促進され潤滑性能が改善されるため、軸受と
軸の摺動による傷や焼き付きの発生が防止できポンプの
耐久性能が向上し、またポンプ吐出圧力を高くできるな
ど高負荷運転が可能となりポンプの耐負荷性能も向上す
る。さらにはポンプの吐出圧力や耐久に関する要求が従
来のものと同じであれば、軸受け隙間を小さくすること
が可能となりポンプの吐出性能の安定、向上がはかれ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す、軸受けの正面図であ
る。

【図２】図１におけるＡ−Ｂ−Ｃ−Ｄ線断面図である。

【図３】図１におけるＹ方向からみたＧ部詳細図であ
る。

【図４】図１におけるＦ部詳細図である。

【図５】図２におけるＨ−Ｈ線端面図である。

【図６】逆くさび領域について説明した図面である。

【図７】従来品の図１におけるＥ方向からみたＧ部詳細
図である。

【図８】従来品の図１におけるＦ部詳細図である。

【図９】従来品の図２におけるＨ−Ｈ線端面図である。

【符号の説明】

１…潤滑用油溝 １２１…溝最深部

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】軸受に設けられた潤滑液流入口に臨む位置
   であって軸受の回転軸と接する面の逆くさび領域に軸方
   向に沿って潤滑用油溝が設けられ、かつ該油溝の軸回転
   方向に沿った断面形状が、溝最深部から軸回転方向に対
   し順次小さくなり、かつ該断面積が溝最深部からみて軸
   回転方向側の方が逆側より大きい非対称形をなしている
   ことを特徴とするギヤポンプ。