JP2993169B2 - 直流アーク炉 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【技術分野】本発明は、スクラップ鋼材等の溶解材料を
溶解せしめるための溶解炉として好適に用いられる直流
アーク炉に関するものである。

【０００２】

【背景技術】一般に、よく知られているように、直流ア
ーク炉は、容器状の炉体の底部において、その略中央部
に炉底電極ピンが配設されており、かかる炉底電極ピン
と、炉体上方より挿入され、垂下される電極棒との間で
発生せしめられる直流アークの熱により、炉体内に収容
されるスクラップ鋼材等の溶解材料を溶解せしめるよう
にされた溶解炉である。

【０００３】ところで、かかる直流アーク炉における炉
底電極ピンは、通常、該電極ピンを流れる電流によるジ
ュール発熱等の熱負荷が大きく、また高温度に加熱され
た溶鋼等の金属溶湯と接触することとなるところから、
損耗が著しい問題があり、またそのような電極の周囲を
構成する炉体の底部は、通常、粉末状の耐火物、例えば
マグネシア等からなるスタンプ材或いはキャスタブル材
にて形成されているところから、炉の操業時における炉
体内の金属溶湯との接触により、そのような粉体からな
る耐火物において、特に炉底電極ピンの周囲近傍に著し
い損耗が生じることとなり、そのような炉底電極ピン周
囲の損耗が、更には炉底電極ピン自体にも悪影響を与え
てしまうという問題をも、内在していた。

【０００４】

【解決課題】ここにおいて、本発明は、上述の如き事情
を背景にして為されたものであって、その解決すべき課
題とするところは、炉底電極ピンの周囲近傍における炉
床（耐火物）の著しい損耗を抑制して、該炉床の損耗に
よる炉底電極ピンへの悪影響を効果的に回避し、ひいて
は該炉底電極ピン自体の損耗をも有利に低減せしめ得る
一方、電極ピンの挿入を容易と為し、また電極ピンの熱
膨張に基因するところの周囲耐火物への作用を軽減する
ようにした直流アーク炉を提供することにある。

【０００５】

【解決手段】そこで、本発明者らが、かかる課題を解決
するために種々検討したところ、溶損の激しい炉底電極
ピンの周囲の炉床を構成するスタンプ材に代えて、該電
極ピンの周囲に、機密構造の故に耐溶損性の良好な耐火
材成形物からなる一体的な耐火介装体を設けることによ
り、炉底電極ピン周囲の耐火物の溶損を抑制し、以て該
炉底電極ピン自体の損耗を低減し得ることを見い出した
のである。

【０００６】そして、本発明者らが更に検討を進めた結
果、そのような耐火介装体が炉底電極ピンの周囲に密接
した状態で配設される場合には、炉底電極ピンへの通電
開始による該電極ピンの熱膨張、特に横方向への膨張に
より、耐火介装体に応力がかかるようになるところか
ら、該応力によって惹起される耐火介装体の割れや拘束
吊り切れ等を防止すべく、炉底電極ピンと耐火介装体と
の間に所定の間隙を設ける必要があることを見い出し、
しかも、かかる炉底電極ピンの炉内側部位は外側部位よ
り熱膨張率が大となるために、炉外側部位の熱膨張を吸
収し得る程度に間隙を設定して設けた場合には、電極ピ
ンの炉内側部位が熱膨張により耐火介装体を押圧して、
上記と同様な割れや拘束吊り切れ等の問題を惹起するよ
うになることが明らかとなったのである。

【０００７】 而して、本発明は、かかる知見に基づい
て完成されたものであって、炉床の略中央部に炉底電極
ピンを配すると共に、該炉底電極ピンを、耐火材成形物
からなる一体的な耐火介装体の挿入孔内に配置して、そ
の頂面が炉内に露出する状態で埋め込み、かかる炉底電
極ピンと上方より炉内に垂下される電極棒との間におけ
るアーク放電により、スクラップ鋼材等の溶解材料を溶
解せしめるようにした直流アーク炉において、該炉底電
極ピンと前記耐火介装体の挿入孔内周面との間に、炉内
に開口せる形態において、所定の間隙を設けると共に、
該耐火介装体の挿入孔を、その直径が炉内側に向って漸
次大となるように、テーパー形状に形成して、前記炉底
電極ピンとの間の間隙が炉内側に向かって漸次大となる
ように構成したことを、その特徴とするものである。

【０００８】

【発明の効果】従って、このような本発明に係る直流ア
ーク炉にあっては、炉底電極ピンが、緻密な耐火材成形
物からなる耐火介装体の挿入孔内に挿入，配置されると
ころから、該炉底電極ピン周囲の耐火物の耐溶損性が効
果的に向上せしめられ得て、炉底電極ピンへの悪影響を
良好に回避し得、ひいては炉底電極ピン自体の溶損を低
減せしめることをも、図り得るのである。

【０００９】また、そのような耐火介装体の挿入孔の直
径が、炉内側に向って漸次大となるように形成されてい
るところから、耐火介装体と炉底電極ピンとの間の間隙
により、通電開始時における炉底電極ピンの熱膨張を良
好に吸収乃至は緩和し得、耐火介装体の割れや吊り切れ
等を防止し得ると共に、該間隙内に溶鋼等の金属溶湯が
流れ込んだ場合にも、かかる間隙における炉底電極ピン
下方部位において、そのような金属溶湯のそれ以上の浸
潤（差込み）を有利に阻止し得るのであり、加えて、該
耐火介装体の挿入孔内への炉底電極ピンの挿入に際して
も、それを容易に行なうことが出来るのである。

【００１０】

【具体的構成・実施例】以下に、本発明を更に具体的に
明らかにするために、本発明の代表的な実施例を、図面
を参照しつつ、詳細に説明することとする。

【００１１】先ず、図１には、本発明に従う直流アーク
炉の一例が概略的に示されており、そこにおいて、直流
アーク炉２は、公知の耐火物からなる側壁３と緩やかに
湾曲した凹面状の底壁４とを有する炉体を備えており、
そしてこの炉体の底壁４の略中央部には、かかる底壁４
を貫通するように、鉄等の金属からなる公知の炉底電極
ピン６と、耐火材成形物にて一体的に構成される耐火介
装体としてのスリーブ８とを備えた炉底電極装置１０が
配設されているのである。なお、本実施例において、ス
リーブ８は、炉底電極ピン６と共に、炉底電極装置１０
を構成する一部材とされているが、該炉底電極装置１０
とは別体として配設されるものであっても、何等差支え
ない。

【００１２】そして、炉体の底壁４上において、炉底電
極ピン６及びスリーブ８から構成される炉底電極装置１
０の周囲には、好適には、スタンプ材や煉瓦等の耐火物
１４が、適当な耐火性粉末からなる耐火物層（スタンプ
材）１２上に位置するように底壁４の形状に対応して配
設されており、以て炉床面が形成されているのである。

【００１３】また、この炉体内には、図示はしないが、
よく知られているように、上方より電極棒が垂下されて
配置せしめられるようになっており、この電極棒と炉底
電極ピン６との間において直流アークが発生せしめられ
て、その熱によって、スクラップ鋼材等の鉄原料が溶解
されるようになっている。

【００１４】ところで、このような構成の直流アーク炉
２において、その炉床に配設された炉底電極装置１０を
構成するスリーブ８は、ＭｇＯ−Ｃ質等の材質の粉末状
耐火材料のプレス成形によって形成されたものであっ
て、その中央部に、直径が炉内側に向って漸次大となる
ように、テーパー形状とされた挿入孔１６を有してお
り、かかる挿入孔１６内に、該挿入孔１６の内周面との
間に所定の間隙をもって、炉底電極ピン６が挿入され、
その頂面が炉内に露出するように配置せしめられてい
る。また、このようなスリーブ８に対する炉底電極ピン
６の配置により、それらの間のクリアランスは、炉内側
に向って漸次大となる間隙となっているのである。

【００１５】なお、それらスリーブ８の挿入孔１６の内
周面と炉底電極ピン６との間に形成される間隙の寸法
は、炉底電極ピン６の材質や直径、またスリーブ８の材
質等に応じて、適宜に設定されるものであるが、該間隙
において、炉底電極ピン６の下部に位置する部位が大き
過ぎると、溶鋼等の金属溶湯の侵入、所謂地金差しが生
じた場合に、炉底電極装置１０の下方への浸潤を許容す
ることとなって好ましくないところから、該炉底電極ピ
ン６の下部に位置する部位は、好適には、該炉底電極ピ
ン６の横方向の熱膨張代を実質的に吸収し得る寸法にお
いて設定されることが望ましく、また炉内側に向って直
径が漸次大となるように設けられる挿入孔１６は、電極
ピンが一般構造用圧延鋼材（ＪＩＳ ＳＳ材）の場合、
一般に、１〜３％程度のテーパー形状において形成され
ることとなる。

【００１６】そして、このような構成の直流アーク炉に
おいて、スクラップ鋼材等を溶解せしめるに際しては、
常法に従って、容器状の炉体内に所定の溶解材料を充填
し、該炉体開口部の上方より黒鉛電極等の電極棒を挿入
し、垂下せしめて、かかる開口部を図示しない所定の蓋
部材により覆蓋した状態で、該電極棒と炉底電極ピン６
との間で通電を行ない、それによって発生する直流アー
クの熱により、溶解材料を溶解せしめるのである。

【００１７】 従って、本発明にあっては、このように
一体的な耐火成形物からなる緻密な構造のスリーブ８に
て炉底電極ピン６の周囲を構成することによって、該炉
底電極ピン６の周囲に位置する炉床面の耐溶損性を著し
く向上せしめ、以て該電極ピン６自体への悪影響を有利
に回避し得たのであり、更に炉底電極ピン６とスリーブ
８の挿入孔１６の内周面との間の間隙内に、溶鋼等の金
属溶湯が差し込むようなことが万一あった場合にあって
も、かかる間隙が炉内側に向かって漸次大となる、換言
すれば炉外側に向かって漸次小となるように形成されて
いるために、該炉底電極ピン６に沿った間隙深さの全体
に亘って、かかる金属溶湯が差し込むことが有効に防止
されると共に、その差し込んだ金属溶湯が固化して、そ
の固化金属が電極ピン６と一体化し、熱膨張によりスリ
ーブ８を押圧するような場合にも、スリーブ８の挿入孔
１６の内周面がテーパー形状とされているところから、
そのようなスリーブ８に対する押圧力が緩和されて、ス
リーブ８の割れや吊り切れ等が有利に回避され得るので
ある。

【００１８】以上、本発明を、その実施例に基づいて具
体的に説明してきたが、本発明は、かかる記述によって
何等限定的に解釈されるものでは決してなく、本発明の
趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づい
て、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものである
ことが、理解されるべきである。

【００１９】例えば、前記実施例においては、炉底電極
ピンとして、単一の電極ピン（６）構造を採用している
が、本発明にあっては、複数本の電極ピンを剣山状に構
成してなる炉底電極ピンであっても、同様に採用可能で
あり、そしてその場合には、それら電極ピンが挿入され
る耐火介装体としては、電極ピンの数に対応して、各電
極ピンとの間に所定の間隙を形成する、テーパー形状の
通孔が複数設けられた煉炭状の耐火材成形物が用いられ
ることとなり、そしてそのような間隙を設けることによ
って、各電極ピンの熱膨張を良好に吸収し得る一方、地
金が差し込んだ場合にも、炉底電極ピンの耐火材成形物
への応力を良好に緩和することが出来るのである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に従う直流アーク炉の一例を概略的に示
す縦断面説明図である。

【符号の説明】

２ 直流アーク炉 ４ 底壁 ６ 炉底電極ピン ８ スリーブ １０ 炉底電極装置

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 炉床の略中央部に炉底電極ピンを配する
   と共に、該炉底電極ピンを、耐火材成形物からなる一体
   的な耐火介装体の挿入孔内に配置して、その頂面が炉内
   に露出する状態で埋め込み、かかる炉底電極ピンと上方
   より炉内に垂下される電極棒との間におけるアーク放電
   により、スクラップ鋼材等の溶解材料を溶解せしめるよ
   うにした直流アーク炉にして、 該炉底電極ピンと前記耐火介装体の挿入孔内周面との間
   に、炉内に開口せる形態において、所定の間隙を設ける
   と共に、該耐火介装体の挿入孔を、その直径が炉内側に
   向って漸次大となるように、テーパー形状に形成して、
   前記炉底電極ピンとの間の間隙が炉内側に向かって漸次
   大となるように構成したことを特徴とする直流アーク
   炉。