JP2984584B2 - ラッカーゼiiおよびその生産方法 - Google Patents

ラッカーゼiiおよびその生産方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は芳香族アミンへの作
用性に優れかつ、フェノール化合物にも作用する、耐熱
性の良いラッカーゼIIおよびこのようなラッカーゼIIを
担子菌培養物から生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ラッカーゼは、ウルシオールオキシダー
ゼまたはリグニン分解酵素とも呼ばれ、酸素の存在下、
フェノール性化合物を酸化する酵素である。ラッカーゼ
は、リグニン分解作用、ウルシオールやラッコール等の
芳香族化合物の酸化重合作用を有する為、例えば、毒性
の強い芳香族アミンを含む廃液の処理、パルプ製造処理
等におけるリグニン除去、人工漆の製造、コンクリート
混和剤の合成(日経バイオテク、1993年10月25日)、ココ
ア、コーヒー及び紅茶の褐変処理(元田ら、日本食品工
業学会誌、第29巻、第1号、p11-15、(1982))、化粧品
用メラニン製造(特開平6-90776号公報)、臨床検査試薬
(特開昭59-227300号公報)など様々な用途が期待されて
いる。人工漆製造には、漆の指触乾燥の効果を高めるた
め、酸化力が強く、かつ耐熱性の良好なラッカーゼが、
特に必要である(寺田ら、塗装工学、Vol.26、No.6、(1
991))。また、パルプ製造処理におけるリグニン除去お
よび芳香族アミン廃液処理でも、屋外で夏期に実施する
場合には高温となるため、熱安定性に優れるラッカーゼ
が必要とされる。特に芳香族アミンは、微生物を使った
活性汚泥法では除去困難であるため、芳香族アミンに作
用性の高い酵素を使った処理が望まれる。
【0003】他方、従来から、種々の微生物等に由来す
るラッカーゼが知られている。例えば、木材腐朽菌であ
る、シゾフィラン・コミューン、コリオラス・ベルシカ
ラー(特開昭62-220190号公報)、レンチテス・ベツリ
ナ(特公平7-46989号公報)、ピクノポラス・コクシネ
ウス(寺田ら、塗装工学、Vol.26,No.6,(1991))、不完
全菌類のボツリチス・シネレア(インダストリアル・バ
イオプロセシング、6月号(1994))に由来するラッカー
ゼが知られている。この他、動物、植物にもラッカーゼ
の存在が知られている。
【0004】しかしながら、いずれのラッカーゼも芳香
族アミン類に特異性が低いこと、耐熱性が低い等の理由
から、上記用途、特に芳香族アミンを含む廃液の処理へ
の実用化がなされていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
課題を解決するものであり、その目的とするところは、
芳香族アミンへの作用性が高くかつフェノール化合物に
も作用する耐熱性の良好なラッカーゼII、その生産方法
および生産菌を提供することである。これまで芳香族ア
ミン類に作用性の高い耐熱性のラッカーゼおよびこれを
生産する微生物は知られていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ホウロク
タケ(Trametes)属に属する、新たに単離した担子菌か
ら、新規なラッカーゼIIを誘導し、本発明を完全するに
至った。
【0007】本発明のラッカーゼIIは、次の特性を有す
る。 (1)分子量:約62,000である。 (2)作用適温の範囲:至適温度は78℃以上である。 (3)熱安定性:pH7.8で30分間保持した場合に、約55
℃まで安定である。 (4)至適pH:約5.0である。 (5)安定pH範囲:30℃で3時間処理する場合におい
て、pH5.0〜10.0である。 (6)等電点:約5.9である。 このことによって上記目的が達成される。
【0008】本発明のラッカーゼIIは、ホウロクタケ属
の担子菌、特に平成6年8月12日に工業技術院生命工学
工業技術研究所(生命研と略称する)に寄託したTramet
es sp. Ha1株(生命研菌寄第14472号;FERM P-14472)
により生産される。このことによって上記目的が達成さ
れる。
【0009】上記担子菌より生産される本発明のラッカ
ーゼIIは銅分子を有する青緑色のタンパク質であって、
さらに阻害剤、メルカプトエタノール、システィン、ジ
チオスレイトール、アジ化ナトリウム、シアン化カリウ
ム、およびα−ナフトールで阻害される。
【0010】上記特性を有する、ホウロクタケ属担子菌
由来のラッカーゼは、これまで知られていない。
【0011】本発明のラッカーゼIIの生産方法は、上記
生産菌をp−キシリジンの存在下で培養し、培養物より
該ラッカーゼIIを分離精製する工程を包含する。このこ
とによって上記目的が達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】本発明のラッカーゼIIは、ホウロクタケ属
の担子菌、特にTrametes sp. Ha1株(生命研菌寄第1447
2号;FERM P-14472)により生産される。この菌株は、
発明者らが土壌、海水および淡水、ならびに腐朽物から
ラッカーゼを生産する微生物を広くスクリーニングした
結果、新たに竹の枯葉から単離された新菌株である。
【0014】(1)形態および培養 本発明のラッカーゼII生産菌(以下、本菌という)は、
リグニン分解能を有する白色腐朽菌であること、培養菌
糸に骨格菌糸およびかすがい連結(clamp connection)
を有するがシスチジアおよび剛毛状菌糸などの異形細胞
は存在しないこと、ならびに培養菌糸に分生胞子が形成
されないこと、等の菌学的性質を有することにより、ホ
ウロクタケ(Trametes)属に属する担子菌と同定され、
Trametessp. Ha1と命名した。
【0015】本菌のさらに詳細な菌学的性質は、以下の
通りである。
【0016】(ポテト・グルコース寒天培地)培養開始
後7日目において、コロニーの表面および裏面は共に白
色であり、直径5〜10mmに成長し、気中菌糸は短く
密で綿毛状である。菌糸は、特徴的な結合菌糸を伴い、
少数の骨格菌糸が認められ、かすがい連結を有する。菌
糸の表面は、平坦であり、幅は2〜6μmである。シス
チジアおよび剛毛状菌糸は認められない。分生胞子の形
成は認められない。
【0017】(サブロー寒天培地)培養開始後7日目に
おいて、コロニーの表面は白色、裏面は薄茶色であり、
直径3〜7mmに成長し、気中菌糸は短く疎である。菌
糸は、特徴的な結合菌糸を伴い、少数の骨格菌糸が認め
られ、かすがい連結を有する。菌糸の表面は、平坦であ
り、幅1〜4μmである。分生胞子の形成は認められな
い。
【0018】(フェノールオキシダーゼ反応)0.5%
の没食子酸または0.5%のタンニン酸を含むサブロー
寒天培地に本菌を接種し、30℃で培養条件下、菌体の
周囲が褐変する反応陽性が認められる。従って、本菌は
リグニン分解性木材腐朽菌(白色腐朽菌)の一種であ
る。
【0019】本菌の生育範囲は、ポテトグルコース寒天
培地(ポテトエキス末4g、ブドウ糖20gおよび寒天2
0gを、1リットルの蒸留水中に溶解する。)におい
て、約4〜40℃、pHは約2〜12であり、生育好適
温度は25〜35℃、生育好適pHは4.0〜8.0であ
る。特に好ましい生育条件は、30℃でpHが約5.5
である。
【0020】次に、本菌から本発明のラッカーゼを生産
するための条件について説明する。本菌は、液体培養ま
たは固体培養のいずれでも培養し得る。本菌を生育させ
る培地としては、特に限定されず、通常の液体培地また
は固体培地が用いられる。炭素源としては、本菌が同化
し得るものなら何でもよく、グルコース、ショ糖、糖蜜
等の糖類、澱粉、木粉、麩(フスマ)などが用いられ得
る。窒素源としては、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキ
ス、肉エキス、大豆分解物、尿素、アミノ酸などの有機
窒素源の他、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム等の無
機窒素源も使用し得る。必要に応じてリン酸塩、硫酸マ
グネシウム、カリウム、カルシウム、銅、ナトリウム、
マンガン、亜鉛等の無機塩類、ビタミン類、核酸関連化
合物類等が添加され得る。これら培地成分は、本菌の生
育を阻害しない濃度であればよく、炭素源は0.1〜2
0重量%、好ましくは5〜10重量%、窒素源は0.0
1〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0021】培地のpHを、2.0〜12.0、好ましく
は4.0〜8.0に調製し、滅菌して使用する。培養温度
は、担子菌類が生育し得る温度であればよく、実用上、
10〜40℃、好ましくは25〜35℃である。本菌を
液体培養する場合は、通気培養または振盪培養が好まし
い。培養時間は、種々の培養条件によって異なるが、通
気または振盪培養の場合は、通常2〜10日間が好まし
い。
【0022】本発明のラッカーゼIIは、p−キシリジン
により誘導後菌体外に分泌生産され、培養液中に蓄積さ
れる。p−キシリジンは培地に最終濃度が1mM〜20mM、
より好ましくは1mM〜5mMとなるように添加される。
【0023】(2)培養液からのラッカーゼIIの分離精
製 本菌の培養液から本発明のラッカーゼII(以下、本ラッ
カーゼIIという)を分離精製するには、既知の精製法、
例えば透析、塩析、各種カラムクロマトグラフィー、等
電点沈澱、ゲル濾過、電気泳動が単独もしくは併用して
利用され得る。培養後、菌体等の不溶物を遠心分離、濾
紙または濾布などによる濾過等により除去し、本ラッカ
ーゼIIを含む培養液(粗酵素液)を回収する。濃縮、硫
安分画(塩析)、透析、各種クロマトグラフィー、ゲル
濾過などの一般的に用いられる酵素の精製方法により、
得られた粗酵素液から本ラッカーゼIIが精製され得る。
例えば、上記得られた粗酵素液を濃縮後、透析、各種ク
ロマトグラフィー、限外濾過、等電点電気泳動に順次供
試することにより、精製された高活性の本ラッカーゼII
を含有する画分が得られる。
【0024】(3)ラッカーゼ活性の測定 本発明において本ラッカーゼII活性は、本ラッカーゼII
が触媒する、4-アミノアンチピリンと、水素供与体との
酸化縮合による発色反応で測定する。水素供与体として
はフェノール、N,N-ジエチルアニリン(DEA)が挙げら
れる。酸化縮合による発色反応系において、505nm(フ
ェノール)あるいは555nm(DEA)における吸光度を測定
した。本願においては、7.5マイクロモルのフェノール
および1.25マイクロモルの4-アミノアンチピリンを含む
190mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)520μlを30℃にて
1分間プレインキュベートした後、酵素液20μlを混
合して、505nmの吸光度の変化を測定した。1分間に吸
光度を0.01増加させる酵素活性を1単位(U;ユニッ
ト)とする。
【0025】以下の実施例にて、本発明をさらに詳細に
説明するが、これらはなんら本発明を限定するものでは
ない。
【0026】
【実施例】
実施例1 (Trametes sp. Ha1の培養)以下の種培養用培地で500m
Lを含有する2L容坂口フラスコ(2本)で28℃、7日間
振盪培養する(130r.p.m.,往復振盪)。
【0027】
【表1】
【0028】2本とも、培養4日目に2%となるようグ
ルコースを添加し、更に一方には20mMとなるようp-キ
シリジンを添加する。
【0029】次いで、これらの培養液500mL2本を30Lの
以下の本培養用培地を含む50L容培養タンクに植菌し28
℃で10日間、通気攪拌培養(攪拌回数300r.p.m.)し
た。
【0030】
【表2】
【0031】但し、無機塩類とプルロニックは別殺菌し
た後、殺菌済培地へ添加した。培養5日目からは培養液
のpHが下がったが、0.5M苛性ソーダにて、5.5〜6.0にな
るよう調整した。この様に培養した結果、タンクの培養
液は、8日目で94(U/mL)と活性は最高値を示し、10日目
で71(U/mL)と減少した。
【0032】実施例2 (本ラッカーゼIIの精製)上記実施例1で得られた培養
液を遠心処理(8,000r.p.m.,20min)して得た上清を濾
紙で濾過し、回収した濾液を粗酵素液とした。
【0033】この粗酵素液を0.5M苛性ソーダでpH7に調
整し限外濾過により濃縮後、20mMトリス−塩酸緩衝液
(pH7.5)で透析し、凍結した(−80〜−20℃)。これ
を融解し不溶物を遠心分離により除去して、上清を得
た。
【0034】上記上清を、10mMトリス−塩酸緩衝液(pH
7.5)で平衡化したDEAE−セファセルカラム(5.5×18.7
cm;Pharmacia社製)に供試した。上記カラムを同緩衝
液で洗浄後、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH5.7)によ
り、上記カラムに吸着された本ラッカーゼIIを溶出し、
分画回収した。本ラッカーゼIIは、カラムでの溶出移動
中、緑青色のバンドとなって現れるので、分画回収は、
カラム溶出口から本ラッカーゼIIが溶出される直前から
始めた。
【0035】得られた各画分の一部を本ラッカーゼII活
性の測定に供試し、比活性(活性値(U/mL)/OD280)を
測定した。比活性がが45以上であった画分を合わせ、限
外濾過により濃縮した。濃縮液を0.5M塩化ナトリウム含
有20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5;以下、STHBと略
記)に対して透析し、透析内液を得た。
【0036】上記透析内液を、STHBで平衡化したConA-
セファロースカラム(5.5×6cm;Pharmacia社製)に供
試した。非吸着物質を洗浄溶出後、1M D-グルコースを
含む上記緩衝液を用いて本ラッカーゼIIを溶出したが、
活性のテーリングがみられたので0.1Mホウ酸含有リン酸
カリウム緩衝液で完全に溶出した。本ラッカーゼIIを含
む液は0.5M苛性ソーダでpH7に調整後、限外濾過により
濃縮し、そして10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で透
析した。透析内液に生じた不溶物を遠心分離で除いた。
得られた上清についてはポアサイズが0.2μmのフィルタ
ーで濾過した。濾液を分取用等電点電気泳動装置(ロト
フォア;Bio-Rad社製)に供試し、更に分画精製し、酵
素精製液を得た。
【0037】上記の各精製工程における本ラッカーゼII
の精製度およびタンパク質溶液当たりの比活性を表3に
示す。
【0038】
【表3】
【0039】実施例3 (本ラッカーゼIIの分子量)SDSポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動(SDS-PAGE)法(Laemli,U.K., Nature,227,
680(1970))で本ラッカーゼIIの分子量を測定した。
【0040】上記実施例2で得られた精製ラッカーゼII
および分子量マーカーとして既知の6種のタンパク質
(分子量約97,400、66,300、42,400、30,000、20,100お
よび14,400)を同時に泳動した。泳動終了後、クーマシ
ーブリリアントブルーで染色し、本ラッカーゼIIと各分
子量マーカーとの相対泳動距離より本ラッカーゼIIの分
子量を測定した。
【0041】本SDS-PAGEにより、本ラッカーゼIIは、単
一バンドを示した。本ラッカーゼIIのSDS-PAGEにおける
分子量は、約62,000である。
【0042】実施例4 (本ラッカーゼIIの作用適温範囲および熱安定性) (1)作用適温の範囲 上記実施例2で得られた精製された本ラッカーゼIIの活
性を、上記発色反応系において種々の温度条件(15、2
0、30、40、50、60、70、78℃)下で測定した。結果を
図1に示す。図中の横軸は反応温度(℃)を表し、縦軸
は最大活性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本
ラッカーゼIIの至適温度は78℃以上である。
【0043】(2)熱安定性 上記実施例2で得られた精製された本ラッカーゼIIを種
々の温度条件(0、30、40、45、50、55、60、65、70、
95℃)下、リン酸緩衝液(pH7.8)中で30分間インキュ
ベートした後、活性を測定した。結果を図2に示す。図
中の横軸は処理温度(℃)を表し、縦軸は最大活性値を
100とした場合の相対残存活性(%)を表す。本ラッカーゼ
IIは処理温度が60℃の場合においても酵素活性の70%以
上が保持され、安定である。本ラッカーゼIIは、処理温
度条件が55℃では、酵素活性は100%保持される。
【0044】実施例5 (本ラッカーゼIIの至適pHおよび安定pH範囲) (1)至適pH pH領域に応じて、50mM酢酸緩衝液、50mMリン酸緩衝液ま
たは50mMトリス塩酸緩衝液を用いて、pHを1.5〜7.8(1.
5、3.0、4.0、4.5、5.0、5.5、6.1、7.1、7.3、7.5、7.
8)に調整し、上記実施例2で得られた精製された本ラ
ッカーゼIIの活性を測定した。結果を図3に示す。図中
の横軸は反応pHを表し、縦軸は最大活性値を100とした
場合の相対活性(%)を表す。本ラッカーゼIIの至適pH
は、約5.0である。
【0045】(2)安定pH範囲 実施例2で得られたラッカーゼII溶液のpHを1.5〜12.0
(1.5、3.0、4.0、4.6、5.0、5.5、6.1、7.1、7.3、7.
5、7.8、8.9、9.0、10.3、11.3、12.0)に調整し、30℃
で3時間インキュベートした。次いで、各pH処理液中の
活性を測定した。結果を図4に示す。図中の横軸は処理
pHを表し、縦軸は最大活性値を100とした場合の相対残
存活性(%)を表す。本ラッカーゼIIの安定pH範囲は、5.0
〜10.0である。
【0046】実施例6 (本ラッカーゼIIの等電点)等電点電気泳動法により本
ラッカーゼIIの等電点を測定した。測定の結果、本ラッ
カーゼIIの等電点は、約5.9である。
【0047】実施例7 (本ラッカーゼIIの基質特異性)上記実施例2で精製さ
れた本ラッカーゼIIの基質特異性を検討した。基質とし
て、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カフ
ェイン酸、ヒドロカフェイン酸、グアヤコール、ピロガ
ロール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、
p-ヒドロキシ安息香酸、フェノール、2,6-ジメトキシフ
ェノール、p-フェニレンジアミン、p-トルイジン、ジメ
チルアニリン、ジエチルアニリン、TOOS(N-エチル-N-
(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリ
ン)、ABTS(2,2'-アジノ−ビス(3-エチルベンゾチアゾ
リン-6-スルホン酸))、3-インドール酢酸、3-インド
ールアセトニトリル、L(+)-アスコルビン酸、3-メチル
カテコール、4-メチルカテコールまたは4-クロロカテコ
ールを用いた。測定は基質の酸化に伴う酸素消費量を酸
素電極により電気信号に変換する酸素電極法によった。
詳細には、10マイクロモルの上記基質を含む200mM酢酸
ナトリウム緩衝液(pH4.5)1980μlを、30℃で、10分
間、空気中で平衡化した後、酵素液20μlを添加するこ
とで反応を開始し、クラーク型酸素電極で酸素の消費量
を測定した。本ラッカーゼIIの他に、比較の為に、ピク
ノポラス・コクシネウスおよびコリオラス・ベルシカラ
ー由来のラッカーゼについても同様に調べた。カテコー
ルを基質とした場合の測定値を100とした、相対値(%)を
表4に示す。
【0048】
【表4】
【0049】本ラッカーゼIIは、ヒドロカフェイン酸や
2,6-ジヒドロキシフェノールといった一部のフェノール
化合物や、p-トルイジン、ジメチルアニリン、ジエチル
アニリン、TOOSなどの芳香族アミンに対して特に高い特
異性を示した。L(+)-アスコルビン酸に対する特異性も
他のラッカーゼと異なる。
【0050】実施例8 (本ラッカーゼIIの阻害剤)上記実施例2で精製された
本ラッカーゼIIの阻害剤を検討した。阻害剤として、
α,α-ジピリジル、アセチルアセトン、システィン、ジ
チオスレイトール、シアン化カリウム、ネオクプロイ
ン、メルカプトエタノール、α-ナフトール、チオシア
ン酸バリウム、フェニルヒドラジンまたはアジ化ナトリ
ウムを用いて、これらの阻害剤による酵素活性阻害度を
測定することにより阻害活性を調べた。詳細には分光光
度計内で30℃恒温条件下マイクロセル中で行い、0.6マ
イクロモルの上記阻害剤を含む218mM酢酸ナトリウム緩
衝液(pH5.0)550μlを入れ、酵素液20μlを添加した。
3分間反応させた後、0.1M p-フェニレンジアミン溶液
を30μl添加し、460nmの波長における吸光度の変化を調
べた。阻害剤を添加しない時の1分間当たりの吸光度の
増加量を100として、阻害活性を表した。その結果を表
5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】本ラッカーゼIIは、ジスルフィド結合還元
化合物(システィン、ジチオスレイトール、メルカプト
エタノールなど)および電子伝達系阻害剤(シアン化カ
リウム、α-ナフトール、アジ化ナトリウムなど)に強
く阻害された。これは、従来知られているラッカーゼの
阻害剤と同じであった。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、耐熱性の良好な新規ラ
ッカーゼ、およびその生産方法が提供される。本ラッカ
ーゼIIは、従来のラッカーゼに比べ、芳香族アミン類へ
の作用が高くフェノール化合物にも作用し、かつ、耐熱
性も良好である。そのため、本ラッカーゼIIは、芳香族
アミンやフェノールを含有する廃液の処理、人工漆の生
産、パルプ製造処理工程、有用ポリフェノールの合成等
に有用である。本ラッカーゼIIは、担子菌の培養によっ
て生産されるため、安価に大量に本ラッカーゼIIを提供
することができ、試薬または工業用途に広く利用され得
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】15〜78℃の範囲で本ラッカーゼII活性を測定し
た場合の相対活性を示す。
【図2】本ラッカーゼIIを0〜95℃の条件下、30分イン
キュベーション後に測定した相対残存活性を示す。
【図3】pH1.5〜7.8の範囲で本ラッカーゼII活性を測定
した場合の相対活性を示す。
【図4】本ラッカーゼIIをpH1.5〜12.0の条件下、30℃
で3時間インキュベーション後に測定した相対残存活性
を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の特性 (1)分子量:約62,000; (2)作用適温の範囲:至適温度は78℃以上である; (3)熱安定性:pH7.8で30分間保持した場合
    に、約55℃まで安定である; (4)至適pH:約5.0;および(5)基質特異性:フェノール化合物および芳香族アミ
    ンと作用する; を有するラッカーゼII。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のラッカーゼIIであっ
    て、以下の特性(6)安定pH範囲:30℃で3時間処
    理する場合において、pH5.0〜10.0;および (7)等電点:約5.9; をさらに有する、ラッカーゼII。
  3. 【請求項3】 ホウロクタケ(Trametes)属に
    属する担子菌Trametes sp. Hal株(生
    命研菌寄託第14472号)が生産する、請求項1また
    は2に記載のラッカーゼII。
  4. 【請求項4】 以下の特性: (1)分子量:約62,000; (2)作用適温の範囲:至適温度は78℃以上である; (3)熱安定性:pH7.8で30分間保持した場合
    に、約55℃まで安定である; (4)至適pH:約5.0;および(5)基質特異性:フェノール化合物および芳香族アミ
    ンと作用する; を有するラッカーゼIIを生産する方法であって、該ラ
    ッカーゼIIを生産するホウロクタケ属に属する担子菌
    をp−キシリジンの存在下で培養する工程、及び、培養
    物より該ラッカーゼIIを分離精製する工程を包含す
    る、方法。
  5. 【請求項5】 前記ラッカーゼIIが、以下の特性: (6)安定pH範囲:30℃で3時間処理する場合にお
    いて、pH5.0〜10 .0;および (7)等電点:約5.9; をさらに有する、請求項4に記載の方法。
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