JP2965440B2 - 反芻動物用飼料およびそれを用いた飼育方法 - Google Patents

反芻動物用飼料およびそれを用いた飼育方法

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JP2965440B2 JP5212276A JP21227693A JP2965440B2 JP 2965440 B2 JP2965440 B2 JP 2965440B2 JP 5212276 A JP5212276 A JP 5212276A JP 21227693 A JP21227693 A JP 21227693A JP 2965440 B2 JP2965440 B2 JP 2965440B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、反芻動物用飼料および
それを用いた反芻動物の飼育方法に関する。
【0002】
【従来の技術】家畜用飼料には、種々の添加剤が添加さ
れている。例えば、特開昭58−155050号公報に
は、クエン酸、酒石酸、フマル酸などのオキシカルボン
酸や多塩基カルボン酸又はその塩を鶏に投与すると、鶏
の産卵率および卵質が改善することが開示されている。
【0003】また、特開昭56−121436号公報に
は、嗜好性を増進させると共に、子牛の発育を促進させ
るため、代用乳に炭素数4〜6のカルボン酸又はその塩
を添加した家畜用配合飼料が開示されている。幼齢牛用
の酸性代用乳について、代用乳にフマル酸を0.2%添
加した酸性代用乳を用いると、自由哺乳が可能であり、
下痢の発生を抑制できるなどの利点があることや、保育
育成期の発育が改善されることも報告されている[千葉
県畜産センター研究報告第13号(1989)第119
頁〜第121頁、および千葉県畜産センター研究報告第
14号(1990)第29頁〜第34頁]。
【0004】さらに、飼料にフマル酸を添加すると、牛
の***炎を予防および治療できることが報告されている
[日本獣医師会雑誌39(臨時増刊)(1985)]。
【0005】一方、乳牛や肥育牛などの反芻胃が発達し
た反芻動物の飼育には、粗飼料および濃厚飼料が使用さ
れている。反芻動物の第一胃内における飼料の化学的分
解は、動物自体だけではなく、第一胃内の細菌と原生動
物の酵素作用によっても嫌気的に行われ、第一胃内の微
生物により代謝された炭水化物は、最終的に、酢酸、プ
ロピオン酸、酪酸などの揮発性脂肪酸(VFA)、二酸
化炭素およびメタンとなる。前記VFAは主に第一胃か
ら吸収される。また、前記第一胃において、前記飼料は
部分的に分解され、微生物、微生物細胞成分及び未分解
飼料成分は、第四胃から小腸へと移行する。この小腸
で、細胞成分は分泌酵素により消化され、消化生成物は
腸から吸収される。さらに、VFAにより、第一胃液の
pHは、正常時にはpH5.5〜6.5程度に維持され
ている。
【0006】そして、前記VFAのうち、酢酸およびプ
ロピオン酸の吸収量が増大すると、体内の脂肪合成が高
くなり、乳脂率の高い乳を生産させることができる。ま
た、酢酸の吸収量を増加させると、脂肪量の増加を促進
し肉質を高めることができる。そのため、高泌乳や、増
体の促進のみならず脂肪交雑を安定かつ確実に向上させ
るためには、泌乳牛や肥育牛に、栄養要求量を考慮して
設計された濃厚飼料を多給するのが有用である。特に、
高産歴牛や悪い気候条件の下で飼育した牛では、乳中蛋
白質や脂肪の含量が低下するので、濃厚飼料の給与によ
り、VFA中の酢酸及びプロピオン酸の生成量を多くす
るのが有用である。
【0007】しかし、反芻胃の発達した反芻動物に、濃
厚飼料を多給すると、第一胃内液の泡沫形成度が大きく
なり、泡沫性鼓脹症が生じ易くなるとともに、第一胃液
のpHも不安定となり易い。特に濃厚飼料を多給する
と、VFAの組成において、酢酸の割合が低下する。そ
のため、濃厚飼料を多給しても、乳や肉の生産効率を高
めたり、肉質を改善するには限界がある。
【0008】また、粗飼料の割合が多く、セルロース成
分に富んだ配合飼料を給与すると、酢酸の多い酸混合物
が生成するものの、セルロースの消化率が低下する。そ
のため、粗飼料及び濃厚飼料を含む飼料を用いると、飼
料を有効利用できず、反芻動物による乳及び肉の生産性
が低下する。
【0009】なお、幼齢牛などの幼動物の飼料組成物用
添加剤として、特公平3−31422号公報には、粒子
の大きさが100メッシュ又はそれより細かい酸(例え
ばフマル酸など)の微粉砕物を代用乳に添加して酸性代
用乳とすると、乳蛋白の凝集及び凝固が生じないことが
開示されている。
【0010】しかし、幼齢牛などと異なり、反芻胃が発
達した反芻動物に100メッシュ又はそれより細かい酸
の微粉砕物を与えても、酸が第一胃内で迅速に溶解する
だけでなく、嗜好性も低下する。そのため、飼料の摂取
量も少なくなり、乳や肉の生産効率を高めることが困難
である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、VFA中の酢酸及びプロピオン酸の割合を高め、乳
や肉の生産効率を高めるとともに、肉質を改善できる反
芻動物用飼料および反芻動物の飼育方法を提供すること
にある。
【0012】本発明の他の目的は、良質の乳および霜降
り肉などの良質の肉を生産する上で有用な反芻動物用飼
料および反芻動物の飼育方法を提供することにある。
【0013】本発明のさらに他の目的は、VFA中の酢
酸及びプロピオン酸の割合を長期に亘り高めることがで
きる反芻動物用飼料および反芻動物の飼育方法を提供す
ることにある。
【0014】本発明の他の目的は、飼料を有効利用で
き、乳及び肉の生産性を高めることがれできる反芻動物
用飼料および反芻動物の飼育方法を提供することにあ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
の結果、濃厚飼料及び粗飼料に特定のフマル酸又はその
塩を添加した飼料を反芻動物に摂取させると、前記目的
を達成できることを見いだし、本発明を完成した。
【0016】すなわち、本発明の反芻動物用飼料は、濃
厚飼料及び粗飼料とフマル酸又はその塩とを含んでい
る。濃厚飼料は、穀類を含む場合が多く、配合飼料であ
ってもよい。濃厚飼料は、粗飼料とともに反芻動物に与
えることができる。フマル酸又はその塩としては、粉粒
状、より具体的には平均粒径が75メッシュ又はそれよ
り粗い粒状のフマル酸又はその塩が使用できる
【0017】本発明の方法において、前記飼料を反芻動
物に給与して飼育すると、VFA中の酢酸及びプロピオ
ン酸の割合を高め、乳や肉の生産効率を高めることがで
きると共に、肉質を改善でき、霜降り肉などの良質の肉
を生産できる。粉粒状のフマル酸又はその塩を含む飼料
を用いると、フマル酸又はその塩の胃内での滞留時間を
長くでき、VFA中の酢酸及びプロピオン酸の割合を長
期に亘り高めることができる。
【0018】本発明の飼料は、反芻動物、例えば、乳牛
及び肥育牛などの牛、山羊及び緬羊などの羊などに適用
される。本発明は、代用乳が与えられる幼齢の反芻動物
ではなく、乳用又は肉用などの反芻動物に好適に適用さ
れる。
【0019】以下に、本発明を詳細に説明する。
【0020】前記飼料は少なくとも濃厚飼料を含んでい
る。この濃厚飼料は、乳牛及び肥育牛などの反芻胃が発
達した反芻動物に与えられるので、幼齢の反芻動物に与
えられる酸性代用乳とは区別される。反芻動物が肥育牛
などの肉用反芻動物である場合、濃厚飼料は、出荷前の
数ヵ月間、例えば、3ケ月間与えることができる。
【0021】この濃厚飼料は、穀類を主体とする慣用の
成分で構成できる。濃厚飼料の成分としては、例えば、
トウモロコシ、マイロ、小麦、大麦、ライ麦、エン麦、
小麦粉、玄米、アワ、大豆、キナコ、キャッサバなどの
穀類;大豆油粕、脱皮大豆油粕、ナタネ油粕、ラッカセ
イ油粕、アマニ油粕、ゴマ油粕、ヤシ油粕、ヒマワリ油
粕、サフラワー油粕、パーム核油粕、カポック油粕など
の油粕類;米ヌカ、大麦ヌカ、フスマなどのぬか類;グ
ルンフィード、グルテンミール、澱粉粕、精蜜、醤油
粕、ビール粕、ビートパルプ、バガス、豆腐粕、麦芽
根、ミカン皮、蜜柑ジュース粕などの製造粕類;魚粉、
フィッシュミール、フィッシュソリュブル、肉粉、肉骨
粉、血粉、フェザーミール、蚕蛹油粕、脱脂粉乳、ホエ
ー、動物油脂(牛油、豚油、骨油など)、ビール酵母、
トルラ酵母などの動物質飼料;食塩、カルシウム源(炭
酸カルシウム、石灰石粉末、カキ殻など)、リン源(リ
ン酸二石灰、リン酸三石灰など)などの鉱物質飼料;ビ
タミン類、アミノ酸類、ミネラル類などが挙げられる。
【0022】濃厚飼料は、必要に応じて、例えば、抗生
物質、抗菌剤、酵素、防黴剤、抗酸化剤、色素、甘味
料、香料、バインダーなどの他の添加剤を含んでいても
よい。
【0023】前記濃厚飼料において、穀類は、通常、3
0〜80重量%、好ましくは40〜80重量%程度の割
合で含まれている。前記濃厚飼料は混合飼料であっても
よいが、通常配合飼料である場合が多い。配合飼料の形
態は特に制限されず、例えば、マッシュ状、ペレット
状、クランブル状、キューブ状やフレーク状などの固形
状であってもよい。なお、飼料成分の割合については、
反芻動物の種類に応じて、「日本飼養標準」中央畜産会
(1987)を参照できる。
【0024】濃厚飼料は、粗飼料とともに給与する場合
が多い。粗飼料は、アルファルファミール、チモシー乾
草、牧草、野草、青刈、藁、樹葉などの茎葉類;粗繊維
(例えば、前記製造粕のビートパルプなど)などの繊維
素を主体として含んでいる。
【0025】濃厚飼料と粗飼料との割合は、広い範囲で
選択でき、通常、濃厚飼料/粗飼料=90〜10/10
〜90(重量%)、好ましくは70〜20/30〜80
(重量%)程度である。なお、濃厚飼料の割合が多いと
一般的に泡沫性鼓腸症が生じ易くなり、少ないと繊維の
消化率が低下し易くなるが、フマル酸又はその塩を添加
することにより、このような問題は解決される。
【0026】本発明の特色は、前記濃厚飼料及び粗飼料
を含む飼料に加えて、平均粒径が75メッシュ又はそれ
より粗いフマル酸又はその塩を含む点にある。フマル酸
はそのまま又は塩として使用してもよい。フマル酸塩と
しては、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩、
カルシウム、バリウム、マグネシウムなどのアルカリ土
類金属塩、アンモニウム塩などが例示される。なお、フ
マル酸の少なくとも1つのカルボキシル基が塩を形成し
ていればよい。また、フマル酸とその塩は、混合して用
いてもよい。
【0027】フマル酸又はその塩の添加により、次のよ
うな効果が生じる。
【0028】飼料中の濃厚飼料の割合が増加すると、
VFA中の酢酸及びプロピオン酸の割合が低下し易い
が、フマル酸又はその塩を添加することにより、VFA
中の酢酸及びプロピオン酸の割合が増加し、酪酸、イソ
酪酸などの割合が低下する。そのため、乳用反芻動物に
おいては蛋白質や脂肪含量の多い乳を生産できるととも
に、肉用反芻動物においては、筋肉内の脂肪量を増加さ
せ、良質の肉、例えば霜降り肉を生産できる。
【0029】反芻動物の胃、特に第一胃内での繊維の
消化を促進するので、粗飼料を併用しても、飼料の利用
効率を高めることができる。そのため、前記の効果と
相まって、反芻動物からの乳、肉の生産性を高めること
ができる。
【0030】フマル酸又はその塩の添加により、第一
胃内の微生物の増加に起因して、生成するアンモニア態
窒素濃度も増加する。一方、第一胃内の微生物は徐々に
第四胃・小腸に移行して消化され、消化された微生物の
蛋白質は、乳蛋白質合成の素材として極めて良質の蛋白
質である。そのため、乳や肉の生産効率が増大し、肉質
も良好となる。
【0031】濃厚飼料を多給すると泡沫性鼓脹症を生
じ易くなるが、フマル酸又はその塩の添加により第一胃
内液の泡沫形成を抑制できる。そのため、高泌乳期の乳
用反芻動物においては濃厚飼料を多給でき、濃厚飼料を
多給することが多い肉用反芻動物においても、安心して
濃厚飼料を食させることができる。
【0032】フマル酸又はその塩を添加すると、その
酸味による採食時の唾液分泌の促進や唾液の緩衝作用に
よって、反芻動物の胃内のpHを安定化できるととも
に、pHの低下を抑制できる。特に、飼料中の濃厚飼料
の割合が大きくなるにつれて、その傾向が大きくなる。
【0033】フマル酸又はその塩は、粉粒状の形態で使
用でき、VFAの生成、特に酢酸及びプロピオン酸の含
量が多いVFAの生成を長時間持続させるため、粉粒
状、好ましくは粒状で使用される。粒状のフマル酸又は
その塩の平均粒径は、反芻動物の胃内での滞留時間を長
くするため、75メッシュ又はそれより粗く(すなわ
ち、約75メッシュのフルイを通過しない平均粒径に相
当し、約190μm以上である)、好ましくは70〜1
0メッシュ、さらに好ましくは50〜10メッシュ程度
である。なお、フマル酸又はその塩の粒体は前記平均粒
径を有していればよく、不可避的に混入する微粒子及び
粗大粒子を含んでいてもよい。不可避的に混入するフマ
ル酸又はその塩の粒子の割合は、例えば、20重量%以
下である場合が多い。
【0034】フマル酸又はその塩の含有量は、飼料の形
態および粗飼料の併用の有無により大きく変動するが、
通常、反芻動物が摂取する最終的な飼料において、0.
1〜10重量%、好ましくは0.5〜7.5重量%、さ
らに好ましくは1〜5重量%程度である。フマル酸又は
その塩の含有量が0.1重量%であると、さほど効果が
発現せず、10重量%を越えると、嗜好性が低下する場
合がある。
【0035】フマル酸又はその塩の含有量は、飼料が粗
飼料と濃厚飼料との混合飼料である場合、粗飼料と濃厚
飼料との割合に応じて、前記の範囲となるように選択で
きる。濃厚飼料が混合飼料や固形状の配合飼料である場
合、濃厚飼料中のフマル酸又はその塩の含有量は、通
常、0.2〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、
さらに好ましくは2〜10重量%程度の範囲である。
【0036】なお、本発明の飼料は、慣用の方法で調製
することができる。すなわち、混合飼料や配合飼料は、
前記飼料の成分とフマル酸又はその塩を混合することに
より調製でき、固形状の配合飼料は、前記飼料の成分と
フマル酸又はその塩を混合して、前記形状とすることに
より調製できる。また、固形状の配合飼料は、慣用の造
粒法などにより、フマル酸又はその塩を粒状で含有させ
てもよい。
【0037】本発明の方法では、少なくとも濃厚飼料と
フマル酸又はその塩とを含む飼料を給与して反芻動物を
飼育すればよい。前記濃厚飼料は、前記のような割合
で、粗飼料とともに給与する場合が多い。
【0038】フマル酸またはその塩の一日当りの投与量
は、反芻動物の種類や体重などを考慮して適当に選択で
き、例えば、通常、体重600kgの牛の場合、12〜
1800g/日、好ましくは60〜1200g/日、さ
らに好ましくは120〜600g/日程度である。フマ
ル酸又はその塩は、前記飼料とともに、一日当り複数回
に亘り投与することができ、一回当りの投与量は、例え
ば、1日2回給餌の場合、60〜300g程度である。
【0039】
【発明の効果】本発明の飼料を用いて反芻動物を飼育す
ると、VFA中の酢酸及びプロピオン酸の割合を高め、
乳や肉の生産効率を高めることができると共に、肉質を
改善できる。
【0040】さらに、粒状のフマル酸又はその塩を含む
飼料を用いると、フマル酸又はその塩の胃内での滞留時
間を長くでき、VFA中の酢酸及びプロピオン酸の割合
を長期に亘り高めることができる。
【0041】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明する。
【0042】比較例1、実施例1及び2 濃厚飼料20重量%(粉砕トウモロコシ180重量部)
と、粗飼料80重量%(チモシー乾草600重量部及び
ビートパルプ120重量部)とからなる飼料900重量
部に、フマル酸(武田薬品工業(株)製、48メッシュ
オン)を0%(比較例1)、2.5重量%(実施例
1)、5重量%(実施例2)添加した。
【0043】これらの飼料を、ルーメン・カニュラを装
着した3頭の山羊に、自動給餌法により、6時間毎に2
25g、一日当り合計4回給与し、この操作を3週間継
続した。最後の週に、6時間毎に採食直前のルーメン内
容物を採取し、VFA成分の割合(モル比)、アンモニ
ア態窒素濃度及びルーメン内容物のpHを測定した。ま
たルーメン内容物における泡沫の生成度についても観察
した。
【0044】比較例2、実施例3及び4 濃厚飼料50重量%(粉砕トウモロコシ450重量部)
と、粗飼料50重量%(チモシー乾草380重量部及び
ビートパルプ70重量部)とからなる飼料900重量部
に、フマル酸(武田薬品工業(株)製、48メッシュオ
ン)を0%(比較例2)、2.5重量%(実施例3)、
5重量%(実施例4)添加した。
【0045】これらの飼料を、前記比較例及び実施例と
同様にして、ルーメン・カニュラを装着した3頭の山羊
に給与し、VFA成分の割合(モル比)、アンモニア態
窒素濃度およびルーメン内容物のpHを測定し、泡沫の
生成度を観察した。
【0046】前記比較例および実施例の結果は次の通り
であった。なお、測定値については統計的に有意差検定
を行ない、表中に、平均値±標準偏差を示した。
【0047】(1)VFA成分の生成割合(モル比) VFA成分とその生成割合を、表1及び表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】 表1及び表2から明らかなように、実施例1〜4のいず
れにおいても、フマル酸の添加量が増加するにつれて、
酢酸及びプロピオン酸の割合が増加し、イソ酪酸の割合
が低下する。また、粗飼料の含有量の高い飼料を用いた
実施例1及び2では、酪酸、吉草酸、カプロン酸の生成
割合も低下する。
【0050】このことから、濃厚飼料の多給により低脂
肪乳(乳脂率規格3.5%以下)を生産し易い乳牛に対
して、フマル酸を含む飼料を摂取させると、酢酸及びプ
ロピオン酸の吸収量を増加させ、高い乳脂率の乳を生産
させることができる。また、濃厚飼料を多給する肥育牛
においては、酢酸の吸収量を増加させ、肉質を高めるこ
とができる。
【0051】(2)アンモニア態窒素濃度 アンモニア態窒素濃度の測定結果を表3に示す。
【0052】
【表3】 比較例1及び2に比べて、実施例1〜4、特に濃厚飼料
を多給した実施例3及び4においては、フマル酸の添加
量に応じて、アンモニア態窒素濃度が有意に増加した。
第一胃内のアンモニアが主に微生物によって生成される
から、このアンモニア濃度の増加は、微生物の数が増大
したことを示す。そして、第一胃から第四胃・小腸に移
行して消化された微生物の蛋白質は、乳蛋白質合成の素
材として極めて良質の蛋白質であり、乳生産に有効に利
用される。
【0053】(3)pH ルーメン内容物のpHを表4に示す。
【0054】
【表4】 表4から明らかなように、比較例1及び2に比べて実施
例1〜4では、酸を添加しているにも拘らず、いずれ
も、フマル酸の添加量が増加するにつれて、ルーメンp
Hが上昇する。特に、濃厚飼料の割合が大きな実施例3
及び4では、統計学的にも有意にpHが上昇する。この
ことは、フマル酸の酸味により採食時の唾液分泌が促進
され、かつ唾液の緩衝作用によりpHが安定化し、pH
の低下が抑制されるためと考えられる。
【0055】(4)泡沫の生成 ルーメン内容物における泡沫の生成割合を目視にて判断
したところ、比較例1よりも濃厚飼料の割合が大きな比
較例2では、第一胃内液は微細泡沫を含んでいた。これ
に対して、フマル酸を含む飼料を与えた系では、濃厚飼
料の割合が大きな実施例3及び4であっても、第一胃内
液の泡沫量は低下し、フマル酸を5重量%添加した実施
例4では、泡沫量は極めて僅であった。
【0056】なお、濃厚飼料の含有量が少ない飼料から
濃厚飼料の含有量が大きな飼料に急激に変えると、ルー
メン内の恒常性の撹乱により、泡沫が生成する可能性が
ある。そのため、濃厚飼料/粗飼料=20/80(重量
%)の飼料を給与した後、一定期間内に、濃厚飼料/粗
飼料=30/70(重量%)の飼料と、濃厚飼料/粗飼
料=40/60(重量%)の飼料とを順次給与し、約1
週間で濃厚飼料/粗飼料=50/50(重量%)の飼料
へ変更したが、フマル酸を添加しない場合には、前記比
較例1及び2と同様な結果であった。
【0057】実施例5 比較例1及び2、実施例1〜4の飼料を、前記実施例と
同様にして給与し、採取した第一胃内液50mlを、3
9℃の恒温水槽中のコニカル・ビーカー(容積100m
l)に収容し、ビーカー底から炭酸ガスをバブリングさ
せ、泡沫形成度を調べた。結果を表5に示す。なお、泡
沫形成度は以下の基準で評価した。
【0058】×:ビーカー内の気層に泡沫が泡解するこ
となく成長して充満し、ビーカーから溢れ出る △:泡沫を形成するが、気層中で泡解する ○:泡沫を形成しない
【0059】
【表5】 表5に示されるように、粗飼料の割合が大きな飼料(比
較例1、実施例1及び2)では泡沫の形成は観察されな
かったが、濃厚飼料の割合が大きな飼料のうち、フマル
酸無添加の飼料(比較例2)では、泡沫がビーカーから
溢れ出るのに対して、フマル酸を2.5重量%添加した
飼料(実施例3)では、若干の泡沫が観察されるもの
の、ビーカーの気層中で泡解し、フマル酸を5重量%添
加した飼料(実施例4)では、泡沫が観察されなかっ
た。
【0060】従って、フマル酸を飼料に添加することに
より、対症療法的に消泡剤を投与することなく、泡沫の
生成を抑制又は防止できる。また、高泌乳期の乳牛など
の乳用反芻動物に濃厚飼料を何ら支障なく多給できると
共に、濃厚飼料を多給することが多い肥育牛などの肉用
反芻動物においては、鼓脹症の懸念なしに飼料を給与さ
せることができる。
【0061】実施例6および参考例 実施例1の飼料を、前記実施例と同様にして給与し、採
取した食前のルーメン内溶液200mlをin vitroで嫌
気培養した。それぞれの培養液100ml(総VFA濃
度5ミリモル/dl)に、粒径が100メッシュより細
かいフマル酸(参考例)と、50〜10メッシュのフマ
ル酸(実施例6)を、232mg(2ミリモル)投入
し、その後のVFA生成量を調べたところ、図1に示す
結果を得た。
【0062】図1から明らかなように、100メッシュ
より細かいフマル酸は短時間内に溶解し、VFAの生成
が早期に行なわれ、その代謝時間は約150分であるの
に対して、50〜10メッシュのフマル酸を添加する
と、ルーメン内でフマル酸が徐々に溶解し、それに伴っ
てVFAの生成が徐々に行なわれ、フマル酸代謝が約2
40分以上持続する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例6での代謝時間と総VFA濃度の
変化との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23K 1/16 301 A23K 1/18

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 濃厚飼料、粗飼料、および平均粒子径が
    75メッシュ又はそれより粗いフマル酸又はその塩を
    む反芻動物用飼料。
  2. 【請求項2】 濃厚飼料が穀類30〜80重量%を含む
    請求項1記載の反芻動物用飼料。
  3. 【請求項3】 濃厚飼料が配合飼料である請求項1記載
    の反芻動物用飼料。
  4. 【請求項4】 濃厚飼料と粗飼料とを90〜10/10
    〜90(重量%)の割合で含む請求項記載の反芻動物
    用飼料。
  5. 【請求項5】 フマル酸又はその塩0.1〜10重量%
    を含む請求項1記載の反芻動物用飼料。
  6. 【請求項6】 穀類30〜80重量%を含む濃厚飼料9
    0〜10重量%、および粗飼料10〜90重量%で構成
    された飼料100重量部に対して、フマル酸又はその塩
    0.1〜10重量部を含む請求項1記載の反芻動物用飼
    料。
  7. 【請求項7】 濃厚飼料で構成された配合飼料中に0.
    2〜20重量%のフマル酸又はその塩を含む請求項
    載の反芻動物用飼料。
  8. 【請求項8】 70〜10メッシュのフマル酸を含む請
    求項記載の反芻動物用飼料。
  9. 【請求項9】 濃厚飼料、粗飼料、および平均粒子径が
    75メッシュ又はそれより粗いフマル酸又はその塩を
    む飼料を与える反芻動物の飼育方法。
  10. 【請求項10】 濃厚飼料90〜10重量%および粗飼
    料10〜90重量%で構成された飼料100重量部に対
    して、フマル酸又はその塩0.1〜10重量部を含む飼
    料を与える請求項記載の反芻動物の飼育方法。
  11. 【請求項11】 フマル酸またはその塩を、体重600
    kgの牛換算で、一日当り12〜1800g/日投与す
    る請求項記載の反芻動物の飼育方法。
  12. 【請求項12】 フマル酸又はその塩を飼料とともに、
    一回当り60〜300g投与する請求項記載の反芻動
    物の飼育方法。
  13. 【請求項13】 飼料を乳牛又は肥育牛に与える請求項
    記載の反芻動物の飼育方法。
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