JP2958574B2 - ワブルプレート型コンプレッサの回転バランス調節装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は、冷房サイクル等に用いられるワブルプレ
ート型の可変容量コンプレッサに係り、特に回転要素の
重心を調整する装置に関する。

（従来の技術） 従来のワブルプレート型の可変容量コンプレッサは、
第５図に示されるように、コンプレッサ内部のクランク
室４に、駆動軸７と共に回転する動力伝達用の回転部材
９と、この回転部材９とリンク機構を介して連結され、
駆動軸７に外嵌されたヒンジボール10を介して揺動角度
を可変できると共に、前記動力伝達用の回転部材９の回
転に伴って回転するワブルプレート支持用の回転部材11
とを有し、この回転部材11にピストン23と連動するワブ
ルプレート19が揺動のみを許すようにベアリングを介し
て取りつけられている。

ワブルプレート19の揺動角度、即ち、ワブルプレート
支持用の回転部材11の揺動角度が大きい場合にはピスト
ン23のストローク量が大きく、逆に、ワブルプレート19
の揺動角度が小さい場合にはストローク量が小さくな
り、この回転部材11の揺動角は、圧力制御弁32によって
クランク室内の圧力を調節することにより変更されるよ
うになっている。

（発明が解決しようとする課題） しかしながら、一般にこの種のコンプレッサにおいて
は、回転部材9,11全体の重心を駆動軸７の軸心上におく
ために、例えば、動力伝達用の回転部材９の駆動軸７に
対してリンク機構と反対側にバランサ9aを設けたりする
が、このような固定したバランサ9aを設けても、ピスト
ン23のストロークの変化、即ち、ワブルプレート支持用
の回転部材11の揺動角の変化に対して、重心を常に駆動
軸７の軸心上に維持しておくのは困難である。

実際にストローク量（最大ストローク量を100％とす
る。）に対する回転部材のバランス状態を測定した結果
によれば、第４図（ａ）に示すように、リンク機構があ
る側（Ａ）と駆動軸７に対してリンク機構と反対の側
（Ｂ）のモーメントは、ストローク量の増加に伴ってほ
ぼ線形的にそれぞれ大きくなるが、その変化のしかたは
同じではなく、これらを合計した場合に、第４図（ｂ）
に示すように、ストローク量が大きくなるに従って回転
部材9,11全体の重心がリンク機構のある側からこれと反
対側へ移行してゆき、すべてのストローク域で回転バラ
ンスをとるのは不可能であった。

このため、回転部材の重心が駆動軸７の軸心上からず
れることによりコンプレッサ自体に振動が発生し、特に
このコンプレッサを自動車用空調装置に用いる場合に
は、コンプレッサの振動数がエンジンのアイドル時の回
転数と一致し、共振を起こして車両のフロアを振動させ
る欠点があった。

そこで、この発明においては、上記欠点を解消し、回
転部材全体の重心のずれを、ストローク量に応じて補正
することによりコンプレッサ自体の振動を防止または小
さくすることができるワブルプレート型コンプレッサの
回転バランス調節装置を提供することを課題としてい
る。

（課題を解決するための手段） しかして、この発明の要旨とするところは、内部に形
成されたクランク室内に、駆動軸の回転を伝達する回転
部材と、これに揺動可能に連結し、ロッドを介してピス
トンと接続されたワブルプレートを支持すると共にこの
ワブルプレートに対して回転する回転部材とを設け、前
記クランク室内の圧力を圧力制御弁にて調節することに
より前記ワブルプレートの揺動角を可変させるワブルプ
レート型コンプレッサにあって、前記駆動軸と共に回転
し且つ該駆動軸に対してその周方向に相対的に移動可能
な複数のカウンタウエイトを設け、この複数のカウンタ
ウエイトを前記ワブルプレートの揺動角の変更に応じて
前記駆動軸の周囲を相反する方向に移動させる調節手段
を具備したことにある。

（作用） したがって、ワブルプレートの揺動角が変更されると
回転部材全体の重心が変更されようとするが、この場合
にはカウンタウエイトが駆動軸の周囲を移動して慣性モ
ーメントが変えられるので、回転中心と回転部材全体の
重心を一致させることができ、このため、上記課題を達
成することができるものである。

（実施例） 以下、この発明の実施例を図面により説明する。

第１図において、ワブルプレート型の可変容量コンプ
レッサ１は、有底筒状のハウジング２を有し、このハウ
ジング２の開口端にシリンダブロック３が固定され、ハ
ウジング２とシリンダブロック３の一端とに囲まれてク
ランク室４が構成されている。また、シリンダブロック
３の他端には、シリンダヘッド５がバルブプレート６を
挾んで固定されている。

駆動軸７は、上記ハウジング２とシリンダブロック３
とに回転自在に支持されており、この駆動軸７には、ハ
ウジング２にラジアルベアリング８を介して回転自在に
支持された動力伝達用の回転部材９がクランク室４内で
固定されている。また駆動軸７には、これに緩く外嵌さ
れたヒンジボール10を介して、同じくクランク室４内で
後述のワブルプレート19を支持するための回転部材11が
回動、揺動自在に支持されている。そして、この支持用
の回転部材11は、前記動力伝達用の回転部材９にリンク
機構を介して連結されている。

リンク機構は、前記動力伝達用の回転部材９に設けら
れたラグ板12の長孔13に、前記支持用の回転部材11に設
けられたアーム14のピン15を摺動可能に係止して構成さ
れており、長孔13は、回転部材11の最大傾斜状態から最
小傾斜状態にわたってピン15の摺動が妨げられないよう
に設けられ、特にこの実施例においては、最大傾斜状態
においてピン15と駆動軸７との距離が最大となり、最小
傾斜状態において、ピン15と駆動軸７との距離が最小に
なるように設けられている。

そして、これら回転部材9,11は、例えば動力伝達用の
回転部材９の駆動軸７に対してリンク機構と反対側にバ
ランサ9aを設ける等して、回転部材全体の重心が駆動軸
７の軸心上にほぼ位置するよう予め形状が決定されてい
る。

ワブルプレート19は、クランク室４内でワブルプレー
ト支持用の回転部材11に対してラジアル及びスラストベ
アリング20,21を介して回転自在に支持され、ハウジン
グ２に対してはスライダ22を介して係合し、前記ヒンジ
ボール10を支点として揺動のみが許されるようになって
いる。

このワブルプレート19には、複数のピストン23（例え
ば７気筒のコンプレッサにおいては７ケ）がロッド24を
介して連結されている。これらピストン23は、前記シリ
ンダブロック３に形成されたシリンダボア25に摺動自在
に挿入されており、ピストン23の端部とシリンダボア25
とに囲まれた空間で圧縮室が形成されるようになってい
る。

圧縮室は、ピストン23が吸入行程にある場合には、吸
入弁26が開かれてバルブプレート６に形成された吸入孔
27を介してシリンダヘッド５内の低圧室28と連通し、ま
た、ピストン23が吐出行程にある場合には、吐出弁29が
開かれて同じくバルブプレート６に形成された吐出孔30
を介してシリンダヘッド５内に画成された高圧室31と連
通するようになっている。上記低圧室28と高圧室31と
は、シリンダヘッド５に形成された吸入口と吐出口（図
示せず。）にそれぞれ接続されている。

前記駆動軸７には、ヒンジボール10と一体に形成され
た筒体50が緩く外嵌され、更にこの筒体50には、以下述
べる２つのカウンタウエイト51,52が並んで緩く外嵌さ
れている。

カウンタウエイト51,52は、第２図にも示すように、
環状のリング部51a,52aとこのリング部51a,52aの周縁の
一部から径方向に突出して成るウエイト部51b,52bとか
ら構成され、それぞれのカウンタウエイト51,52の重心
は回転中心（駆動軸７の軸心上）から等しい距離だけず
らしてある。そして、駆動軸７の先端近くに固定された
固定リング53と一方のカウンタウエイト51との間には、
位置決め部材54が介在され、固定リング53と位置決め部
材54とに形成された挿通孔53a,54a及びカウンタウエイ
トのリング部51a,52aに形成された弧状孔51c,52cに挿通
された組付ロッド55にナット56を螺合させることによ
り、２つのカウンタウエイト51,52が駆動軸７の軸方向
に対して常に所定位置に維持されるようになっている。

なお、駆動軸７と固定リング53との固定手段は、駆動
軸７と固定リング53とにキー溝7b,53bを形成し、駆動軸
７に固定リング53を嵌めたのちにそれぞれキー溝7b,53b
を合わせ、そこにキー57を嵌め込むことで構成されてい
る。また、固定リング53の挿通孔53aは、駆動軸７に対
してリンク機構と同じ側にあり、組付ロッド55がリンク
機構と駆動軸７とを含む平面上に配置されるようになっ
ている。

カウンタウエイト51,52に形成された弧状孔51c,52c
は、例えば、ウエイト部51b,52bの中央に臨む位置から
リング部51a,52aに沿って1/4周する長さに形成され、一
方のカウンタウエイト51の弧状孔51cにあっては、固定
リング53から向かって時計回りに、他方のカウンタウエ
イト52の弧状孔52cにあっては、固定リング53から向か
って反時計回りにそれぞれ形成されている。

しかして、カウンタウエイト51,52は、駆動軸７の回
転に伴って回転すると共に、一方のカウンタウエイト51
は、固定リング53か見た場合に、リンク機構を境にして
そこから反時計方向に90度の範囲で駆動軸に対して相対
的に移動可能であり、他方のカウンタウエイト52は、逆
に時計回りに90度の範囲で駆動軸７に対して相対的に移
動できるようになっている。

カウンタウエイト51,52の駆動軸７との相対位置を調
節する手段は、前記筒体50に軸方向に前後する２つの螺
旋溝58a,58bを形成し、一方の螺旋溝58aに一方のカウン
タウエイト51の側面から挿通孔51dを介して挿入されて
内面より突出するピン59aを係合させると共に、他方の
螺旋溝58bに他方のカウンタウエイト52の側面から挿通
孔52dを介して挿入されて内面より突出するピン59bを係
合させることにより構成されている。この実施例におい
て、螺旋溝58a,58bは、駆動軸７に対してカウンタウエ
イトのウエイト部51b,52bと反対側の位置に臨む部位を
始点とし、そこからヒンジボール10から遠ざかるよう周
面に沿って1/4周する長さに形成され、一方の螺旋溝58a
は、固定リング53から向かって時計回りに、他方の螺旋
溝58bは、固定リング53から向かって反時計回りにそれ
ぞれ形成されている。そして、ヒンジボール10がカウン
タウエイト51,52から最も遠ざかる状態において、カウ
ンタウエイトのピン59a,59bは螺旋溝58a,58bのヒンジボ
ール10から最も遠ざかる部位に位置し、この状態におい
てそれぞれのカウンタウエイトのウエイト部51b,52bが
軸方向で重なり合うようになっている。

なお、16aは、前記ヒンジボール10と動力伝達用の回
転部材９との間に介在された第１の弾性部材、16bは、
前記筒体50と固定リング53との間に介在された第２の弾
性部材であり、ヒンジボール10と筒体50とを軸方向に両
側から押圧している。

また、コンプレッサ１には、圧力制御弁32がシリンダ
ブロック３とシリンダヘッド５との間に画成された制御
弁挿入孔33に挿入固定されている。制御弁挿入孔33は、
圧力制御弁32を介して前記シリンダブロック３に形成さ
れた連通孔34によりクランク室４に接続され、吸入室35
を介して前記低圧室28に接続されている。

圧力制御弁32は、前記吸入室35とクランク室４との連
通状態を調節する弁体36と、吸入室35内の圧力に応じて
前記弁体36を動かす圧力応動部材37と、前記弁体36を電
磁コイル38への通電量により強制的に動かすソレノイド
39とを備えており、電磁コイル38に流れる電流が上昇し
てソレノイド39の磁力が増大すると、クランク室４と吸
入室35との連通を絞る方向に弁体36が動くようになって
いる。

しかして、電磁コイル38に流れる電流が小さい時に
は、クランク室４から吸入室35へ漏れるガスが多くな
り、クランク室４の圧力が減少してピストン23の背面に
作用する力が小さくなり、ワブルプレート19が回転部材
11と共にヒンジボール10を支点として揺動角度が大きく
なる方向に回動し、ピストン23のストローク、即ち、コ
ンプレッサ１の吐出容量が大きくなる。このような場合
には、ヒンジボール10が動力伝達用の回転部材９に近づ
き、各カウンタウエイト51,52のピン59a,59bが螺旋溝58
a,58bのヒンジボール10から遠ざかる部位に位置し、カ
ウンタウエイト51,52のウエイト部51a,52bがクランク機
構のある側において軸方向で重なる。このため、２つの
カウンタウエイト51,52だけを見れば、その重心Ｇは、
第３図（ａ）に示すように、駆動軸７の軸心からずれて
いる。

これに対して、電磁コイル38に流れる電流が大きい時
には、クランク室４から吸入室35へ漏れるガスが少なく
なり、ピストン23とシリンダボア25との間からクランク
室４へ漏れるいわゆるブローバイガスによりクランク室
４の圧力が増大する。そして、このクランク室４の圧力
の上昇に伴ってピストン23の背面に作用する力が大きく
なり、ワブルプレート19が回転部材11と共にヒンジボー
ル10を支点として揺動角度が小さくなる方向に回動し、
ピストン23のストローク、即ち、コンプレッサ１の吐出
容量が小さくなる。このような場合には、ヒンジボール
10が動力伝達用の回転部材９から遠ざかり、各カウンタ
ウエイト51,52のピン59a,59bが螺旋溝58a,58bに案内さ
れて駆動軸７に対してリンク機構と反対側に移動してい
き、カウンタウエイト51,52のウエイト部51b,52bが相反
する方向に回動していく。このため、２つのカウンタウ
エイトだけを見れば、各ウエイト部51b,52bが駆動軸７
に対して対称の位置にあると、カウンタウエイトの重心
Ｇは、第３図（ｂ）に示すように、駆動軸７の軸心上に
位置するようになる。

このため、ワブルプレート19の最大揺動角状態におい
て回転部材9,11とカウンタウエイト51,52とを合わせた
回転要素全体の重心を駆動軸７の軸心上に一致させてお
けば、ワブルプレート19の揺動角が小さい状態におい
て、回転部材9,11の重心が第４図（ｂ）のように駆動軸
７に対してリンク機構と反対側に移動したとしても、カ
ウンタウエイト51,52の重心の移動によって回転要素全
体の重心を、第４図（ｂ）の一点鎖線で示すように、駆
動軸７の軸心上もしくはこれに近い位置に維持させるこ
とができる。その結果、重心の偏りによって生じるコン
プレッサの振動を抑えることができるものである。

（発明の効果） 以上述べたように、この発明によれば、ピストンのス
トローク、即ち、ワブルプレートの揺動角の変更に伴っ
て回転部材全体の重心が回転中心からずれるのを、駆動
軸に対して周方向に相対的に移動可能なカウンタウエイ
トの移動量を調節することによって補償し、回転要素全
体の重心と回転中心とをストローク量にかかわらずほぼ
一致させることができるので、コンプレッサの振動を防
止または小さくすることができるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明に係るワブルプレート型コンプレッサ
を示す断面図、第２図は同上におけるコンプレッサに用
いられるカウンタウエイトとその近傍を示す分解斜視
図、第３図は第１図におけるＩ−Ｉ線の断面図を示し、
（ａ）はワブルプレートの揺動角が大きい場合（ピスト
ンストロークが大きい場合）を示し、（ｂ）はワブルプ
レートの揺動角が小さい場合（ピストンストロークが小
さい場合）を示す。第４図はピストンストロークと回転
部材のバランス状態を示す特性線図、第５図は従来のワ
ブルプレート型コンプレッサを示す断面図である。 １……コンプレッサ、４……クランク室、9,11……回転
部材、19……ワブルプレート、23……ピストン、24……
ロッド、51,52……カウンタウエイト。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】内部に形成されたクランク室内に、駆動軸
   の回転を伝達する回転部材と、これに揺動可能に連結
   し、ロッドを介してピストンと接続されたワブルプレー
   トを支持すると共にこのワブルプレートに対して回転す
   る回転部材とを設け、前記クランク室内の圧力を圧力制
   御弁にて調節することにより前記ワブルプレートの揺動
   角を可変させるワブルプレート型コンプレッサにあっ
   て、 前記駆動軸と共に回転し且つ該駆動軸に対してその周方
   向に相対的に移動可能な複数のカウンタウエイトを設
   け、この複数のカウンタウエイトを前記ワブルプレート
   の揺動角の変更に応じて前記駆動軸の周囲を相反する方
   向に移動させる調節手段を具備することを特徴とするワ
   ブルプレート型コンプレッサの回転バランス調節装置。