JP2941796B2 - 耐蝕性の原子炉構成部材、核燃料棒被覆管、水性環境に使用するためのジルコニウム合金、および原子炉燃料集成体用構造部材 - Google Patents
耐蝕性の原子炉構成部材、核燃料棒被覆管、水性環境に使用するためのジルコニウム合金、および原子炉燃料集成体用構造部材Info
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Description
りいっそう詳述すれば、核燃料棒のための核燃料棒クラ
ッディングおよび核燃料集成部材または原子炉の炉心に
使用するための構造部材に関する。
出され、核燃料棒クラッディング、核燃料集成部材およ
び原子炉の炉心部材を含めて原子炉の分野において広範
に使用されている。このような合金は、クロムおよび鉄
が添加され、酸素、珪素および炭素の制御量を有する希
薄なジルコニウム−錫合金であるジルカロイ(Zircalo
y)−2およびジルカロイ(Zircaloy)−4を含み、さ
らにジルカロイ−2の場合には、ニッケルを含んでい
る。ジルカロイ−2およびジルカロイ−4は、主に米国
および欧州で設計された軽水炉、特に沸騰水形原子炉
(BWR)および加圧水形原子炉(PWR)の場合に使用され
ている。
る他のジルコニウム合金は、通常、ロシアおよびカナダ
の原子炉の場合に使用された。典型的にニオビウム1%
を含有する二元ジルコニウム−ニオビウム合金は、ロシ
アの原子炉の場合には、大規模に使用され、ニオビウム
2.5〜2.8%で合金を構成するジルコニウムは、カ
ナダで設計された原子炉の場合の圧力管に使用されてい
る。二元ジルコニウム−ニオビウム合金は、結節状の腐
蝕の形式に対して過敏であることが示され、この場合1
00μmまたはそれ以上の厚手の酸化物のパッチは、典
型的には20〜30μm以下の著しく薄手の酸化物を有
する面積で展開される。この結節状の腐蝕は、最初、中
位ないし高い燃焼度で前記合金から形成された燃料棒ク
ラッディング上に現れ、冷却水中の溶解された酸素の存
在によって増大される。結節状領域中で展開される著し
く高い腐蝕速度は、全く望ましくないものである。それ
というのも、原子炉中でさらに照射した際に燃料棒およ
び他の構造部材の保全性を脅かしうるからである。BW
Rは、一般に冷却材中に比較的に高濃度で溶解された酸
素を用いて運転され、かつPWRは、場合によっては運
転の間に冷却材の酸素の暴走を受けるので、二元ジルコ
ニウム−ニオビウム合金は、米国または欧州の原子炉の
場合には、商業的に使用されていない。最近、ジルコニ
ウム、錫、ニオビウムおよび第3の合金元素、典型的に
は鉄からなる四元ジルコニウム合金は、ジルカロイ−2
およびジルカロイ−4ほどではないが、米国および欧州
のPWRの場合ならびにロシアの原子炉の場合に核燃料
棒被覆管および核燃料集成部材のための構造部材に使用
された。
十分に役立っている。しかし、核燃料集成部材および原
子炉の炉心部材、特に核燃料棒、詳述すれば60〜70
MWd/KgUおよびそれ以上の燃焼度を達成するため
に核燃料棒クラッディングに対する要求が増大するにつ
れて、前記合金の耐蝕能力は、不適当なものになりつつ
ある。特に、60〜70MWd/KgUの高い燃焼度で
の前記合金の結節状の腐蝕、均一な腐蝕および/または
加速された腐蝕は、前記耐蝕能力を望ましくないものに
する。更に、前記合金の耐蝕能力が悪化することによ
り、現在の燃料に課された核燃料サイクルの効率に対す
る要求はますます高いものになっている。核燃料サイク
ルの長さは、最近の原子の炉心の管理図によれば、典型
的に数年前の10または12カ月から約18カ月または
24カ月までにさえ増加した。平均的な冷却材の温度
は、幾つかの原子力発電所の場合には、上昇し、より長
い核燃料サイクル、原子力蒸気発生設備におけるステン
レス鋼の管および部材の応力腐蝕による亀裂からの保護
ならびに照射からの個人の保護を考慮した場合には、冷
却材の水の化学におけるあらゆる変化が要求されてい
る。
過剰量での高い燃焼度の際の加速された腐蝕および酸素
化された原子炉冷却材中のジルカロイの結節状腐蝕に対
する過敏性ならびに二元ジルコニウム−ニオビウム合金
の約45MWd/KgUを上廻る燃焼度の際の結節状腐
蝕に対する過敏性により、前記合金の能力は、60〜7
0MWd/KgUの高い燃焼度の際に限界となり受け入
れることができなくなる。
度の際に核燃料棒のクラッディングおよび核燃料集成構
造部材に対して通常使用される合金は、酸化物の厚さを
急速に増大させかつ水素化物の形成に基づく受け入れる
ことができない延性損失をまねきうる材料による高い水
素吸収を生じる加速された腐蝕に晒される。特殊な合金
組成、製造の間に受け入れられた熱処理および原子炉の
運転条件に依存して、腐蝕率は、急速に高くなる可能性
があり、前記合金から形成された核燃料棒の被覆管、核
燃料集成構造部材および他の原子炉の炉心部材は、60
〜70MWd/KgUまたはそれ以上の高い燃焼度の際
の使用にとって不適当なものとなる。
度の間に腐蝕率が増大する結果として、ジルカロイの加
速された腐蝕が起こる。軽水炉に使用されるジルコニウ
ム合金の耐蝕性は、部分的に合金中に第2相の粒子また
は析出物が存在することに依存する。例えば、ジルカロ
イは、ジルコニウム中の錫およびジルコニウム遷移金属
の金属間化合物の第2相析出物の固溶体からなる。ジル
カロイ−2中の通常見い出される析出物は、Zr2(F
e,Ni)、いわゆるジントル相(Zintl phase)であ
り、これは、Zr2Niから誘導されかつZr2Niの
結晶構造を有し、この場合ニッケルの一部は、鉄によっ
て代替されており、金属間化合物を形成させる。ジルカ
ロイ−2中ならびにジルカロイ−4中の別の通常見い出
される析出物は、Zr(Cr,Fe)2、いわゆるラー
ヴェス相(Laves phase)であり、これは、ZrCr2
から誘導されかつZrCr2の結晶構造を有し、この場
合クロムの一部は、鉄によって代替されている。同様
に、四元ジルコニウム−錫−ニオビウム−鉄合金は、ジ
ルコニウム、ニオビウムおよび鉄の種々の組成および組
合せを有する析出物を含有する。熱処理および可能な他
の処理変法に依存して、次の析出物を生じることが公知
である:オルト斜方晶(orthorhombic)(ZrNb)3
Fe、体心四方晶(ZrNb)2Fe、最密充填六方晶
Zr(FeNb)2および(ZrNb)3Feならびに
β−ジルコニウム(ニオビウム約19%およびジルコニ
ウム81%の固溶体)およびβ−ニオビウム(ジルコニ
ウム約7.8%およびニオビウム92.2%の固溶
体)。それぞれニオビウムを1%および2.5%有する
二元ジルコニウム−ニオビウム合金は、熱処理に依存し
てβ−ジルコニウムまたはβ−ニオビウムの析出物を含
有する。
腐蝕挙動において重要な役割を演じる。更に、析出物の
平均寸法および析出物の分布(即ち、結晶粒間の空間)
は、上記合金の腐蝕特性に著しく効果を生じる。通常、
原子炉運転温度でジルコニウム以外の金属との組合せ物
で鉄を含有する上記ジルコニウム合金中のそれぞれの第
2相析出物は、中性子照射場中で不安定である。十分に
長い原子炉内滞留時間後に、第2相析出物は、合金マト
リックス中で溶解し、析出物の平均寸法の減少および結
晶粒間空間の増大を生じ、かつ合金元素、特にマトリッ
クス中に溶解された鉄の濃度を上昇させる。
変化し、かつ増大された燃焼度を伴う析出物からマトリ
ックス中への合金を構成する溶解された元素の量が増大
することにより、ジルカロイの腐蝕速度が増大し、四元
ジルコニウム−錫−ニオビウム−鉄合金の場合には、中
位ないし高い燃焼度で増大する。特殊な合金組成、原子
炉運転条件および合金または製造の間に合金から形成さ
れた原子炉部材によって受け入れられた熱処理に依存し
て、前記合金の腐蝕速度は、極めて高くなる可能性があ
り、核燃料棒クラッディング、核燃料集成部材および前
記合金から形成された原子炉の炉心部材を高い燃焼度で
の使用にとって不適当なものにする。
よび析出物の平均寸法が約300℃で加圧水形原子炉内
で照射されたジルカロイ−4に対するフルエンスの1つ
の関数としてプロットされている図1および図2によっ
て証明されている。析出物の平均寸法は、照射前に0.
19〜0.34μmであった。金属間第2相析出物の約
50%が溶解した場合には、フルエンス1cm2当たり
約10×1021個(n/cm2)の中性子で腐蝕の増
大(約50MWd/KgU)が起こり、この場合析出物
の平均寸法は、著しく小さくなった。
手の酸化物層のみが形成されるのに対して、材料の表面
が局部的に攻撃され、重要な酸化物の僅かな厚さまたは
深さのレンズ状のポスツールズ(postules)または結節
を形成させる場合に高温水または蒸気による腐蝕の形で
ある結節状の腐蝕は、沸騰水形原子炉内のジルカロイの
場合ならびに沸騰水形原子炉、加圧水形原子炉およびロ
シアの原子炉中で水冷却材を含有する酸素ガスに晒され
るジルコニウム−ニオビウム合金の場合にしばしば観察
された。高い燃焼度で結節状の腐蝕を展開するジルカロ
イの傾向を減少させうる熱処理は、公知であるけれど
も、このような熱処理は、能力の問題、特に上記の加速
された均一な腐蝕の早期開始を導きうる。二元ジルコニ
ウム−ニオビウム合金は、錫を含有せず、したがってこ
の理由のために、酸素含有冷却材中、特にBWR、なら
びに場合によっては酸素の暴走を蒙りうるPWR中で結
節または結節状の腐蝕に対して僅かな耐性を有してい
る。更に、二元ジルコニウム−ニオビウム合金の結節状
腐蝕の攻撃を回避するために、如何なる熱処理も公知で
はない。
使用した場合にジルカロイ−4は、しばしば高い均一な
腐蝕率を受ける。ジルカロイ−4生成物をアメリカン・
ソサイエティ・フォア・テスティング・アンド・マテリ
アルズ・スタンダード(American Society for Test an
d Materials Standard) B350-93(1993)に規定された
1.2〜1.7重量%の許容範囲の上限、典型的には約
1.5重量%の過剰量での錫濃度で製造する場合には、
特に低い中性子漏れ核燃料サイクルが使用されている高
い冷却材温度の加圧水形原子炉内で使用される際に、材
料は、高い均一な腐蝕率を受ける。また、高い均一な腐
蝕率は、上記したように加速された腐蝕の早期開始を生
じうることが観察される。均一な腐蝕の程度は、錫含量
を許容しうる範囲の下限付近に制限することによって部
分的に制限されうるけれども、それでもなお高い燃料率
でこのように低い錫含量を有するジルカロイの腐蝕率
は、高すぎ、かつ多くの場合に不適当な設計限界を生じ
る。
克服しかつ軽水炉中での均一の加速された結節状の腐蝕
に対する耐性を高い燃焼度にまで改善する、核燃料棒ク
ラッディング、核燃料集成部材および原子炉の炉心部材
に使用するための1つの合金を提供することは、公知技
術水準を超える程に有利なことであろう。
0.3〜1.8重量%、鉄0.1〜0.65重量%、珪
素0.003〜0.015重量%、炭素0.005〜
0.02重量%および酸素0.09〜0.22重量%か
ら構成されている合金を有し、この合金の残余は、本質
的に偶発的な不純物を有する核等級ジルコニウムであ
り、かつ高いフルエンスで照射された際にジルカロイの
場合に対して水性腐蝕に対する増大された耐性を生じる
程度に、合金マトリックス中に耐放射線性第2相析出物
を形成する均一に結晶粒内および結晶粒間に分布された
Zr3Fe第2相析出物の微細構造が付与されており、
合金中の第2相Zr3Fe析出物が約40nm〜300
nmの平均直径を有していることによって特徴付けられ
る耐蝕性の原子炉構成部材に関する。
的に錫0.3〜1.8重量%、鉄0.1〜0.65重量
%から構成されている合金を有し、この合金の残余は、
本質的に偶発的な不純物を有する核等級ジルコニウムで
あり、かつ高いフルエンスで照射された際にジルカロイ
の場合に対して水性腐蝕に対する増大された耐性を生じ
る程度に、合金マトリックス中に耐放射線性第2相析出
物を形成する均一に結晶粒内および結晶粒間に分布され
たZr3Fe第2相析出物の微細構造を有する、核燃料
棒のための核燃料棒被覆管が提供される。
いフルエンスに晒されかつ改善された耐蝕性を示す、水
性環境に使用するためのジルコニウム合金が提供され、
この場合この合金は、本質的に錫0.3〜1.8重量
%、鉄0.1〜0.65重量%から構成されており、こ
の合金の残余は、本質的に偶発的な不純物を有する核等
級ジルコニウムであり、かつ高いフルエンスで照射され
た際にジルカロイの場合に対して水性腐蝕に対する増大
された耐性を生じる程度に、合金マトリックス中に耐放
射線性第2相析出物を形成するために均一に結晶粒内お
よび結晶粒間に分布されたZr3Fe第2相析出物の微
細構造を有している。
質的に錫0.3〜1.8重量%、鉄0.1〜0.65重
量%から構成されているジルコニウム合金を有し、この
合金の残余は、本質的に偶発的な不純物を有する核等級
ジルコニウムであり、かつ高いフルエンスで照射された
際にジルカロイの場合に対して水性腐蝕に対する増大さ
れた耐性を生じる程度に、合金マトリックス中に耐放射
線性第2相析出物を形成する均一に結晶粒内および結晶
粒間に分布されたZr3Fe第2相析出物の微細構造を
有していることによって特徴付けられる、原子炉燃料集
成体用構造部材が提供される。
ルコニウム−ニオブ二元合金群およびジルコニウム−ニ
オブ四元合金群の上記の制限を克服するため、特に高い
燃焼度に対して卓越した耐蝕性を有する軽水炉の保守の
ための部材についての材料を提供するために、核燃料棒
のクラッディングに使用することが意図されている、ジ
ルコニウムを基礎とする新規の合金、ならびに微細構造
の特徴が付与されかつ特殊な第2相析出物を有する核燃
料集成部材の構造部材および他の炉心部材は、高い燃焼
度を含めて、これまでの核燃料の用途に使用するための
上記合金の欠点を克服するために開発された。ジルコニ
ウムを基礎とする前記の新規合金は、沸騰水型原子炉お
よび加圧水型原子炉の場合に一般に低い腐蝕率を有しか
つ高い燃焼度になるまで加速された腐蝕および結節状腐
蝕の発生に抵抗する能力を有することが証明された。
1.8重量%、鉄0.1〜0.65重量%を含有し、こ
の場合このジルコニウム合金の残余は、偶発的な不純物
を有する核等級ジルコニウムであり、かつ高い燃焼度に
なるまで、腐蝕、加速された腐蝕および結節状の腐蝕に
対する耐性を備えているZr3Feの小さな第2相析出
物の均一な結晶粒内および結晶粒間での分布を有する。
更に、下記に記載されているように、合金中の錫の存在
は、結節状の腐蝕から保護し、合金中の鉄の存在は、高
い燃焼度または大量の中性子のフルエンスの蓄積で均一
な低い腐蝕率を維持する目的で安定な析出物を提供す
る。この合金は、痕跡または不純物量以外に、他の元
素、例えばクロム、モリブデン、バナジウム、銅、ニッ
ケル、タングステンまたは高い燃焼度の際に不安定であ
る第2相析出物の形成を生じる可能性がありかつ高い燃
焼度の際に受け入れることのできないレベルの腐蝕を生
じる可能性がある合金元素を含有していてはならない。
るまで使用するための望ましい改善された耐蝕能力を得
るために、合金または合金製品は、加工されかつ熱処理
され、したがって第2相析出物は、合金または合金製品
を通じて結晶粒内および結晶粒間の双方で均一に分布さ
れている。合金または合金製品の熱処理および加工は、
本発明によれば、粒界またはフォーマ粒界で発生する析
出物の不均一な分布および結晶粒間析出物の不在を生じ
るにすぎない他の熱処理および加工とは異なり、第2相
析出物粒子の結晶粒内および結晶粒間での均一な分布を
生じる。
ために第2相析出物の結晶粒内および結晶粒間での均一
な分布を得るために、合金材料は、β範囲内で約100
0℃を上廻る温度に加熱され、第2相析出物を含有しな
い固溶体を形成し、かつ次いで急速に焼入れされ、拡散
のないマルテンサイト変態を達成する。ジルコニウム−
錫−鉄合金を約1000℃を上廻るβ範囲の温度に加熱
した場合には、合金元素の鉄および錫は、体心立方晶の
構造を有するジルコニウムと一緒の固溶体の形である。
この合金を前記のβ範囲の温度から急速に焼入れした場
合には、拡散のないマルテンサイトの変態は、焼入れ速
度が最大である材料の表面で少なくとも発生し、この表
面は、腐蝕反応に晒され、体心立方晶構造の相は、最密
充填六方晶構造を有するα相に変態させられる。マルテ
ンサイト変態は、拡散の少ない性質を有しているので、
合金元素は、α+β変態温度ないしα変態温度未満の温
度(約820〜880℃)へ急速に冷却した際にα相で
超飽和準安定溶液中に留まる。高温β相範囲からの迅速
な焼入れ後の約800℃未満の温度でα相範囲内でのそ
の後の焼鈍熱処理により、合金中の鉄からZr3Fe粒
子の析出物の形成が生じ、その後にジルコニウム−錫固
溶体マトリックス中での均一な結晶粒内および結晶粒間
での分布を保持しながら、よりいっそう大きな寸法の析
出物へと成長する。Zr3Fe析出物の存在および均一
な結晶粒内および結晶粒間での分布により、卓越した耐
蝕性の性質が合金に付与され、軽水炉中で通常出くわす
全ての温度の際に中性子照射場中でZr3Feが安定性
であることにより、高い燃焼度または高い中性子フルエ
ンスレベルで合金の耐蝕性の性質の劣化は存在しない。
材料は、最初に20〜120分間1050℃±20℃に
加熱され、固溶体が形成され、この場合鉄は、完全にβ
ジルコニウム錫マトリックス中に溶解されている。次
に、この材料は、水浴、散水、溶融金属浴中でかまたは
任意の他の普通の公知方法によって500K/秒を上廻
る速度で約250℃未満の温度に迅速に焼入れされ、マ
ルテンサイト構造が形成され、この場合鉄は、超飽和溶
液中に留まる。次に、この材料は、α範囲内(約800
℃未満)、好ましくは550℃〜750℃の温度で1〜
2時間熱間または冷間での作業および熱処理に施こさ
れ、均一に結晶粒内および結晶粒間に分布されているZ
r3Fe析出物が形成される。更に、この材料は、57
5℃〜700℃の温度で2〜12時間熱処理されること
ができ、析出物の寸法が増大される。全熱処理時間は、
規定された時間の間、単独の熱処理工程で実施されるこ
とができるか、または規定された時間の間、多重の熱処
理工程の全体に亘って実施されることができる。熱処理
により、鉄原子がクラスタに拡散し、ジルコニウム−錫
マトリックス中に微細で均一に結晶粒内および結晶粒間
で分布したZr3Fe析出物が形成される。微細で均一
に結晶粒内および結晶粒間で分布したZr3Fe析出物
は、前記のα相焼鈍熱処理工程の間にαジルコニウム−
錫マトリックス中に形成される。
でβ焼入れせず、かつ次いで規定された時間の間および
温度で焼鈍に施こした場合には、第2相粒子は、体心六
方晶構造のβ相から最密充填六方晶構造のα相への拡散
制御変態により粒界または先にβ粒界で不均一に沈殿
し、このα相の場合には、所謂バスケット織または平行
板の構造が形成される。この拡散制御変態は、バスケッ
ト織または平行板の微細構造で粒界、先のβ相粒界また
は他の核生成部位に対する第2相合金化元素の拡散およ
び偏析を増大させる。
晶粒微細化の目的のために珪素を約0.015重量%ま
で含有することができた。1つの好ましい実施態様の場
合には、最少の珪素含量は、0.008〜0.012重
量%(80〜120ppm)であるべきである。また、こ
の合金は、結晶粒度の制御のために炭素約0.005〜
0.02重量%(50および200ppm)を含有するこ
とができた。前記合金中での酸素濃度は、低温強度を合
金に付与するために、0.09〜0.22重量%(90
0〜2200ppm)の範囲内、好ましくは0.11〜
0.14重量%(1100〜1400ppm)の範囲内に
調節することができた。Zr3Fe析出物は、珪素、炭
素または酸素の存在によって影響を及ぼされることもな
いし、中性子照射場での前記析出物の安定性は、決して
危険にさらされることもない。
組成から選択された望ましい組成のジルコニウム合金イ
ンゴットは、組成の均一性を得るために、ジルコニウム
および合金元素を、好ましくは二重または三重の溶融イ
ンゴットの形で溶融することによって形成される。この
インゴットから、最初にこのインゴットをβ相で100
0〜1100℃の温度で0.1〜1時間スラブまたは丸
棒(または素材および小片へ切断されたもの)に熱間鍛
造することによって原子炉の保守のための構造部材また
は燃料棒クラッディングのための中空管が形成される。
鍛造は、1回の工程または多重工程でα+β範囲または
α範囲で完結させることができる。中実であってもよい
し、穿孔を有していてもよいスラブまたは切断棒または
小片は、20〜120分間1050℃±20℃の温度に
加熱することによってβ焼入れされ、次いで毎秒500
Kを上廻る速度または500Kに等しい速度で250℃
未満の温度に迅速に焼入れされる。高い急冷速度を得る
ことを簡易化するために、β焼入れ工程は、インゴット
と最終生成物との間の中間製造段階で薄手の横断面の部
分で実施されることができる。
めには、β焼入れされたスラブは、シートの製造のため
に750℃未満で熱間圧延される。構造部材は、700
℃未満の中間焼鈍を伴なうその後の冷間圧延工程によっ
て最終的寸法にもたらされる。
は、β焼入れされた小片は、単層被覆管を押出すために
機械加工されかつ製造されているかまたは多層のか、合
せたか、または複合の被覆管を同時押出するために機械
加工されかつ製造されている。単層の被覆管を製造する
ためには、β焼入れされた小片は、600℃〜750℃
に加熱され、かつ押出され、約40〜100mmの範囲
の外径を有する中空材料を形成させる。多層の被覆管の
ためには、複合被覆管または合わせた被覆管、内壁また
はライニングの材料の中空小片は、外壁の材料の別の中
空小片中に挿入されている。これらの中空小片の片方ま
たは両方は、本発明の合金から形成されたβ焼入れされ
た小片からなることができる。2つの集成された中空小
片は、所定の位置に置かれて電子ビーム溶接を用いて一
緒に溶接されることができ、次いで600〜750℃に
加熱されることができ、かつ40〜100mmの範囲の
外径を有する中空材料を形成させることができる。次
に、押出された中空管または同時押出しされた複合のか
もしくは合わせた中空管は、望ましい析出物の寸法に依
存して数時間700℃またはそれ未満に加熱されること
によって最適に焼鈍される。更に、中空管または同時押
出された中空管は、700℃またはそれ未満で交互の鍛
造工程および焼鈍工程の一連の作業周期に施こされ、直
径約10mmの管を形成させる。鍛造の最後の作業周期
後に、緩和されたか、部分的に再結晶されたかまたは再
結晶された応力としての管の望ましい条件により700
℃またはそれ未満の最終的な熱処理または焼鈍が管に施
こされる。
明の錫および鉄を含有するジルコニウム合金中に得られ
た金属間析出物の均一な結晶粒内および結晶粒間での分
布は、図4に示されている。図4は、本発明により、前
記合金を500K/秒の速度で1000℃を上廻る温度
(即ち、β範囲)で迅速に焼入れし、この合金をマルテ
ンサイト変態させ、次に8時間750℃で焼鈍させ、金
属間第2相粒子を沈殿させることによって得られる金属
間析出物の典型的な均一な結晶粒内および結晶粒間での
分布を示す透過電子顕微鏡写真である。図5および6
は、前記合金を低い速度(それぞれ50K/秒および5
K/秒)で焼入れし、引続き750℃で8時間焼鈍させ
ることにより生じる析出物の分布を示す透過電子顕微鏡
写真である。この顕微鏡写真から判断した場合には、こ
の例の第2相粒子は、体心立方晶構造のβ相から最密充
填六方晶構造のα相への拡散制御された変態に基づき、
粒界(図5)または粒界および先のβ粒界(図6)で不
均一に沈殿している。拡散制御変態は、粒界、先のβ相
粒界または他の核生成部位に対して第2相合金化元素の
拡散および分離を増大させ、かつ金属間析出物の不均一
な分布を生じる。
金から形成された被覆管または構造部材に照射により誘
発される成長を付与することは、望ましいことである。
本発明の別の視点によれば、約1000℃を上廻る温度
で30分間、好ましくは2〜15分間β焼鈍させ、引続
き空気中または水中で50K/秒を上廻る制御された速
度で焼入れすることは、不規則な組織を有する材料を製
造するために使用することができ、軸方向へのクラッデ
ィングの成長ならびに核燃料集成部材および原子炉の炉
心の構造部材の軸方向への成長を減少させることがで
き、さもなければこれらの成長は、高い燃焼度の間に起
こりうる。β焼鈍は、最後の冷間作業工程または鍛造工
程の前または後に実施されることができるか;または中
間の冷間作業工程または鍛造工程の間に実施されること
ができる。β焼鈍を最終的な冷間作業工程後に実施する
場合には、575℃〜700℃の温度でα焼鈍を続ける
ことができ、望ましい析出物寸法を有する材料を提供す
ることができる。
性の雰囲気に対する耐蝕性を最適化するために、合金材
料中の1つの析出物寸法を生じることは望ましいことで
ある。冷却材/減速材の環境が酸素不含化学である場合
の加圧水型原子炉の場合には、核燃料棒クラッディン
グ、核燃料集成部材の構造部材および原子炉の炉心部材
は、典型的には、大きな析出物を有する合金材料から形
成されている。1つの好ましい実施態様の場合には、析
出物の寸法は、加圧水型原子炉の場合の用途のための核
燃料棒クラッディング、核燃料集成部材の構造部材およ
び原子炉の炉心部材へと形成される合金にとって100
〜300nm、好ましくは200nmである。冷却材/
減速材の環境が酸素に富んだ化学である場合の沸騰水型
原子炉の場合には、核燃料棒クラッディング、核燃料集
成部材の構造部材および原子炉の炉心部材は、典型的に
はより小さい析出物40〜100nm、好ましくは80
nmを有する合金材料から形成されている。
い実施態様を表わすけれども、当業者であれば、本発明
の実際の精神および範囲を逸脱することなく、種々の変
更および変法を形成させることができることは明らかで
ある。
間のジルカロイ−4の析出物の寸法および密度に対する
照射効果を示す線図。
間のジルカロイ−4の腐蝕に対する照射効果を示す線
図。
間のジルカロイ−4の誘発成長に対する照射効果を示す
線図。
明により製造された析出物の均一な結晶粒内および結晶
粒間での分布を示す透過電子顕微鏡写真。
界および粒界とフォーマβ粒界での析出物の分布の非均
一性を示す透過電子顕微鏡写真。
界および粒界とフォーマβ粒界での析出物の分布の非均
一性を示す透過電子顕微鏡写真。
Claims (15)
- 【請求項1】 本質的に錫0.3〜1.8重量%、鉄
0.1〜0.65重量%、珪素0.003〜0.015
重量%、炭素0.005〜0.02重量%および酸素
0.09〜0.22重量%から構成されている合金を有
し、この合金の残余は、本質的に偶発的な不純物を有す
る核等級ジルコニウムであり、かつ高いフルエンスで照
射された際にジルカロイの場合に対して水性腐蝕に対す
る増大された耐性を生じる程度に、合金マトリックス中
に耐放射線性第2相析出物を形成する均一に結晶粒内お
よび結晶粒間に分布されたZr3Fe第2相析出物の微
細構造が付与されており、合金中の第2相Zr3Fe析
出物が約40nm〜300nmの平均直径を有している
ことを特徴とする、耐蝕性の原子炉構成部材。 - 【請求項2】 本質的に錫0.3〜1.8重量%、鉄
0.1〜0.65重量%から構成されている合金を有
し、この合金の残余は、本質的に偶発的な不純物を有す
る核等級ジルコニウムであり、かつ高いフルエンスで照
射された際にジルカロイの場合に対して水性腐蝕に対す
る増大された耐性を生じる程度に、合金マトリックス中
に耐放射線性第2相析出物を形成する均一に結晶粒内お
よび結晶粒間に分布されたZr3Fe第2相析出物の微
細構造を有することを特徴とする、原子炉燃料棒のため
の核燃料棒被覆管。 - 【請求項3】 合金がさらに本質的に珪素0.008〜
0.015重量%、炭素0.005〜0.02重量%お
よび酸素0.09〜0.22重量%から構成されてい
る、請求項2記載の核燃料棒被覆管。 - 【請求項4】 合金中の析出物が約40nm〜300n
mの平均直径を有している、請求項3記載の核燃料棒被
覆管。 - 【請求項5】 水減速原子炉の高いフルエンスに晒され
かつ改善された耐蝕性を示し、本質的に錫0.3〜1.
8重量%、鉄0.1〜0.65重量%から構成されてお
り、この合金の残余は、本質的に偶発的な不純物を有す
る核等級ジルコニウムであり、かつ高いフルエンスで照
射された際にジルカロイの場合に対して水性腐蝕に対す
る増大された耐性を生じる程度に、合金マトリックス中
に耐放射線性第2相析出物を形成するために均一に結晶
粒内および結晶粒間に分布されたZr3Fe第2相析出
物の微細構造を有していることを特徴とする、水性環境
に使用するためのジルコニウム合金。 - 【請求項6】 さらに本質的に珪素約0.015重量%
まで、炭素0.005〜0.02重量%および酸素0.
09〜0.22重量%から構成されている、請求項5記
載の合金。 - 【請求項7】 合金中のβニオビウム第2相析出物が約
40nm〜300nmの平均直径を有している、請求項
5記載の合金。 - 【請求項8】 平均直径が約100〜300nmであ
る、請求項7記載の合金。 - 【請求項9】 平均直径が約200nmである、請求項
8記載の合金。 - 【請求項10】 平均直径が約40〜100nmであ
る、請求項7記載の合金。 - 【請求項11】 平均直径が約80nmである、請求項
10記載の合金。 - 【請求項12】 さらに本質的に珪素約0.015重量
%まで、炭素0.005〜0.02重量%および酸素
0.09〜0.22重量%から構成されている、請求項
9記載の合金。 - 【請求項13】 さらに本質的に珪素約0.015重量
%まで、炭素0.005〜0.02重量%および酸素
0.09〜0.22重量%から構成されている、請求項
11記載の合金。 - 【請求項14】 本質的に錫0.3〜1.8重量%、鉄
0.1〜0.65重量%から構成されているジルコニウ
ム合金を有し、この合金の残余は、本質的に偶発的な不
純物を有する核等級ジルコニウムであり、かつ高いフル
エンスで照射された際にジルカロイの場合に対して水性
腐蝕に対する増大された耐性を生じる程度に、合金マト
リックス中に耐放射線性第2相析出物を形成する均一に
結晶粒内および結晶粒間に分布されたZr3Fe第2相
析出物の微細構造を有していることを特徴とする、原子
炉燃料集成体用構造部材 - 【請求項15】 ジルコニウム合金がさらに本質的に珪
素0.008〜0.012重量%、炭素0.005〜
0.02重量%および酸素0.09〜0.22重量%か
ら構成されており、合金中の第2相βニオビウム析出物
が約40nm〜300nmの平均直径を有している、請
求項14記載の構造部材。
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