JP2922417B2 - ワックス状物質 - Google Patents

ワックス状物質

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JP2922417B2 JP6044182A JP4418294A JP2922417B2 JP 2922417 B2 JP2922417 B2 JP 2922417B2 JP 6044182 A JP6044182 A JP 6044182A JP 4418294 A JP4418294 A JP 4418294A JP 2922417 B2 JP2922417 B2 JP 2922417B2
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  • Molds, Cores, And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば鋳造用や彫刻用
等に使用されるワックス状物質およびこれを用いた造形
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば、高精細な模様を有す
る装飾物や、複雑で立体的な形状を有するアクセサリー
等の造形物の造形方法としては、いわゆる蝋型鋳造法が
行われている。
【0003】上記の蝋型鋳造法とは、以下に示すような
手順でワックス状物質を用いて造形物を製造する方法で
ある。即ち、先ず、彫刻刀やカッター、鋸、鑢等の木工
用の加工工具等を転用してブロック形状等のワックス状
物質を所望の形状に加工する。次に、上記加工により出
来上がった原型を、脱蝋および鋳込みのための湯道が形
成された耐熱性の型材にて覆う。次いで、この型材に外
部から熱を加えて原型であるワックス状物質を溶融さ
せ、湯道から流し出す(脱蝋)。続いて、残留するワッ
クス状物質を気化させ、内部が空洞となった型材(鋳
型)に所望の金属を湯道から流し込む。その後、金属を
型材と共に冷却して固化させる。その後、型材を破壊し
て金属からなる造形物を取り出す。これにより、ワック
ス状物質を用いて所望の造形物を製造することができ
る。
【0004】ところで、上記ワックス状物質の加工のし
易さや、脱蝋の容易さ等のいわゆる使い勝手には、ワッ
クス状物質が備えている諸物性(物理的性質)が密接に
関連している。そして、上記の諸物性が微妙に変化する
と、ワックス状物質の加工のし易さや、脱蝋の容易さ等
は大きく変化する。つまり、上記のワックス状物質が備
えている諸物性が、或る範囲、即ち、良好な使い勝手が
得られる適正な範囲を逸脱した場合には、ワックス状物
質を用いて造形物を製造する際に、以下に示すような問
題点が発生することとなる。
【0005】即ち、 ワックス状物質の粘度が適正な粘度範囲よりも高い
場合には、ワックス状物質を加工して原型を作成する際
に、加工により発生する削り屑や切り屑が粘り気を有す
ることとなる。このため、加工工具である彫刻刀の刃
先、或いは鋸や鑢等の目に削り屑や切り屑が詰まり易く
なる。つまり、ワックス状物質の加工性が低下する。
【0006】 ワックス状物質の融点が適正な温度範
囲よりも高い場合には、型材からワックス状物質(原
型)を脱蝋する際に型材をより高温に加熱しなければな
らないので、脱蝋作業が困難となる。また、型材を高温
に加熱するので、型材にクラックが発生し易くなる。ク
ラックが発生して型材が壊れると、造形物を製造するこ
とが不可能となる。
【0007】 ワックス状物質の硬度が適正な硬度範
囲よりも小さい場合には、加工により出来上がった原型
が型崩れし易い。また、出来上がった原型の表面を磨く
ことができない。尚、この場合には、原型の型崩れを防
止するために、作業場の温度を一定に保つ等、作業環境
を整える必要がある。
【0008】 ワックス状物質の硬度が適正な硬度範
囲よりも高い場合には、粘度が適正な粘度範囲よりも低
くなり易い。このため、ワックス状物質は、加工性が低
下する。
【0009】上記の蝋型鋳造法に用いられる従来のワッ
クス状物質としては、例えば、蜜蝋やパラフィンワック
ス等が知られている。そして、上記のパラフィンワック
スは、例えば、日本精蝋株式会社やフェリス社(Ferri
s;米国)等から市販されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のワックス状物質(即ち、市販されているパラフィン
ワックス)が備えている諸物性(物理的性質)は、温度
差による変化率が大きい。このため、上記従来のワック
ス状物質は、例えば冬季や夏季等において、その諸物性
が、良好な使い勝手が得られる適正な範囲を逸脱し易い
ものとなっている。つまり、上記従来のワックス状物質
は、加工のし易さや、脱蝋の容易さ等のいわゆる使い勝
手が不良となっている。
【0011】また、上記従来のワックス状物質は、加熱
および冷却を繰り返すと変質し、その物理的性質が変化
する。このため、削り屑や切り屑、脱蝋して回収したワ
ックス状物質を溶融させて再びブロック形状等に固化し
ても、物理的性質が変化しているため、再使用すること
ができない。
【0012】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされ
たものであり、その目的は、繰り返して使用でき、加工
性に優れると共に、型材からの脱蝋が容易な、即ち、い
わゆる使い勝手が良好なワックス状物質を提供すること
にある。また、他の目的は、上記のワックス状物質を用
いた造形方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明のワ
ックス状物質は、上記の課題を解決するために、原料物
質である合成樹脂と、燃料とからなる原料を燃焼用バス
ケットに投入し、該燃料を燃焼させることで合成樹脂を
溶融させると共に、その一部を熱分解させることで低分
子化して液化し、それらの混合物である溶融物を酸欠状
態の触媒槽に滴下させることにより、溶融物における熱
分解されていない合成樹脂や熱分解の不充分な合成樹脂
熱分解し、低分子化してワックス状物質を得る一方、
溶融状態となっているワックス状物質の一部が気化して
発生した可燃性の高熱ガスを上記燃焼用バスケットで燃
焼させることにより、燃焼用バスケット内の温度を所定
温度に制御するという方法によって得られる、造形物の
製造用のワックス状物質であって、主成分が飽和鎖式炭
化水素からなり、炭素と水素との重量比(C/H)が
5.839〜6.018 であり、炭素および水素の合計の重量%
が98.5%〜100 %であり、数平均分子量(Mn)が 3.0
×10 3 〜 1.0×10 4 であり、重量平均分子量(Mw)が
1.0 ×10 4 〜 5.0×10 4 であり、Mw/Mnが 1.0〜5.
0 であり、かつ、融解ピーク温度が100 ℃〜120 ℃であ
り、粘度が60℃で 2.0×10 6 poise〜 8.0×10 6 poise、80
℃で 2.0×10 4 poise〜 1.0×10 5 poise、100 ℃で 1.0×
10 3 poise〜 7.0×10 3 poiseであり、溶融開始温度が90℃
〜110 ℃であり、硬さが40HDD〜60HDDであり、引
張強さが80 kgf/cm 2 〜100kgf/cm 2 であり、曲げ強さが0.
6kgf/mm 2 〜0.9kgf/mm 2 であり、曲げ弾性率が40 kgf/mm 2
〜60 kgf/mm 2 であり、破壊までの押込量が0.7 mm〜0.9
mmであることを特徴としている。
【0014】
【0015】
【作用】請求項1記載の構成によれば、ワックス状物質
は、主成分が飽和鎖式炭化水素からなり、炭素と水素と
の重量比(C/H)が 5.839〜6.018 であり、炭素およ
び水素の合計の重量%が98.5%〜100 %である。このた
め、例えば120 ℃以下の低温加熱および冷却を繰り返し
ても、ワックス状物質は変質せず、安定性に優れる。か
つ、ワックス状物質は、数平均分子量(Mn)が 3.0×
103 〜 1.0×104であり、重量平均分子量(Mw)が1.0
×104 〜 5.0×104 であり、Mw/Mnが 1.0〜5.0
である。このため、ワックス状物質が備える物理的性
質、例えば、融点や粘度、硬さ等の諸物性は、加工性に
優れると共に、鋳型である型材からの脱蝋が容易となる
適正な範囲に収まる。つまり、ワックス状物質は、簡単
に加工を施すことができ、かつ、容易に軟化または型崩
れしない。
【0016】これにより、繰り返して使用でき、加工性
に優れると共に、型材からの脱蝋が容易な、即ち、いわ
ゆる使い勝手が良好なワックス状物質を提供することが
できる。
【0017】
【0018】
【0019】
【実施例】本発明の一実施例について図1および図2に
基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0020】本実施例にかかるワックス状物質は、例え
ば、加熱溶融させた原料物質である合成樹脂を熱分解反
応させることにより得られる。上記の合成樹脂として
は、例えば、無架橋や低架橋、或いは高架橋のポリエチ
レン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィンやポ
リスチレン樹脂等を挙げることができる。また、上記の
合成樹脂は、熱分解反応させることによりワックス状物
質を得ることが可能な樹脂であれば、特に限定されるも
のではない。例えば、ワックス状物質は、ポリエチレン
樹脂やポリプロピレン樹脂等の合成樹脂廃棄物から低コ
ストで製造可能である。尚、ワックス状物質の製造方法
については、後段で詳述する。
【0021】次に、本実施例にかかるワックス状物質に
ついて、従来のワックス状物質との比較を適宜行いなが
ら、以下に説明する。
【0022】先ず、ワックス状物質が備えている諸物性
等について述べる。ワックス状物質の元素分析を、以下
に示す方法により行った。また、ワックス状物質の分子
量および分子量分布を、以下に示す方法により測定し
た。さらに、ワックス状物質が備えている諸物性(物理
的性質)を測定した。即ち、ワックス状物質の融点およ
び比重を、以下に示す方法により測定すると共に、流れ
試験、硬さ試験、引張試験、曲げ試験を、以下に示す方
法により行った。そして、ワックス状物質と、従来のワ
ックス状物質である日本精蝋株式会社製ワックス(以
下、従来品Aと称する)およびフェリス社(Ferris;米
国)製ワックス(以下、従来品Bと称する)とを比較す
るために、これら従来品Aおよび従来品Bが備えている
諸物性等を併せて測定した。得られた結果をまとめて表
1に示す。
【0023】〔元素分析〕炭素、水素、窒素および硫黄
の各重量% (wt%) と、総クロム、カドミウムおよび鉛
の各含有量 (μg/g)とを測定した。炭素、水素および窒
素の各重量%は、C,H,N計により測定した。硫黄の
重量%は、JIS K 2541に基づき、燃焼管式石
英管酸素法で燃焼後、比濁法により測定した。総クロ
ム、カドミウムおよび鉛の各含有量は、原子吸光法によ
り測定した。また、各測定は、試験室温19℃の条件下で
行った。
【0024】〔分子量および分子量分布〕GPC法によ
り数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)とを
測定した。測定条件は、 カラム : AD80M/S 移動相 : o−ジクロロベンゼン 検出器 : IR (3.42 μm) 温 度 : 140 ℃ 流 量 : 1.0 ml/min. 試料濃度: 2.0 mg/ml また、測定は、試験室温22℃の条件下で行った。
【0025】〔融点〕JIS K 7122に基づき、
DSC法により融解ピーク温度 (℃) を測定した。試験
機は、セイコー電子工業株式会社製 DSS−220C
を使用した。測定条件は、 昇温速度: 10℃/min. また、測定は、試験室温21℃の条件下で行った。
【0026】〔比重〕JIS K 7112に基づき、
水中置換法により測定した。また、測定は、試験室温21
℃の条件下で行った。
【0027】〔流れ試験〕JIS K 7210に基づ
き、高化式フローテスターを使用して、粘度(poise)
と、溶融開始温度 (℃) とを測定した。粘度は、40℃,
60℃,80℃,100 ℃における値を定温試験により測定し
た。測定条件は、 ダイ径 : 1mm 試験荷重: 10 kgf〜500 kgf 溶融開始温度は、昇温試験により測定した。測定条件
は、 ダイ径 : 1mm 試験荷重: 10 kgf 昇温速度: 3℃/min. また、測定は、試験室温21℃の条件下で行った。
【0028】〔硬さ試験〕JIS K 7215に基づ
き、硬さ(HDD)を測定した。また、測定は、試験室
温21℃の条件下で行った。
【0029】〔引張試験〕JIS K 7113に基づ
き、引張強さ(kgf/cm2) を測定した。測定条件は、 試験片 : 1号型 試験速度: 50 mm/min. また、測定は、試験室温21℃の条件下で行った。
【0030】〔曲げ試験〕JIS K 7203に基づ
き、曲げ強さ(kgf/mm2) と、曲げ弾性率(kgf/mm2) と、
破壊までの押込量(mm)と、降伏までの押込量(mm)とを測
定した。測定条件は、 試験片 : 80mm×10mm×2(t)mm 試験速度 : 1mm/min. 支点間距離: 30mm また、測定は、試験室温21℃の条件下で行った。
【0031】
【表1】
【0032】上記の各測定結果について以下に考察す
る。つまり、本実施例のワックス状物質が備えている諸
物性等と、従来のワックス状物質である従来品Aおよび
従来品Bが備えている諸物性等とを比較し、それぞれの
物性等の差異について考察する。
【0033】先ず、元素分析の分析結果について考え
る。飽和鎖式炭化水素(パラフィン系炭化水素)の分子
式は、Cn 2n+2で表される。炭素の原子量は12.011、
水素の原子量は1.00794 であるから、炭素と水素との重
量比(C/H)は、ほぼ5.958となる。
【0034】ワックス状物質の重量比は 5.909である。
また、炭素および水素の合計の重量%は98.8%である。
つまり、ワックス状物質は、その主成分が、飽和鎖式炭
化水素からなっていることがわかる。
【0035】これに対して、従来品Bの重量比は 6.252
である。重量比が大きいのは、炭素の重量に対して水素
の重量が小さいことを示している。また、炭素および水
素の合計の重量%は97.9%である。つまり、従来品B
は、飽和鎖式炭化水素以外に、例えばカルボニル基やカ
ルボキシル基、水酸基等の酸素を含んだ置換基を有する
鎖式炭化水素を不純物として含有しているものと思われ
る。また、重量比の大きさから、不飽和炭化水素が混入
している可能性も考えられる。
【0036】次に、分子量および分子量分布の測定結果
について考える。ワックス状物質は、数平均分子量(M
n)が 6.1×103 、重量平均分子量(Mw)が 2.8×10
4 、Mw/Mnが 4.5である。また、図示しないが、分
子量分布曲線のピークは、低分子量側に若干偏ってい
る。これに対して、従来品Aは、Mnが 1.9×103 、M
wが 2.1×103 である。つまり、従来品Aは、ワックス
状物質と比較して明らかに分子量が小さいことがわか
る。また、従来品Bは、Mnが 8.0×103 、Mwが4.7
×104 であり、ワックス状物質の分子量とほぼ等しい分
子量を備えているが、Mw/Mnが 5.9であるので、ワ
ックス状物質の分子量分布の幅よりも若干、その分子量
分布の幅が広いことがわかる。
【0037】ワックス状物質(または従来品Aや従来品
B)は、組成、分子量および分子量分布が異なると、物
理的性質も異なる。また、ワックス状物質は、各種飽和
鎖式炭化水素の混合物であり、その諸物性は、成分であ
る炭化水素の複雑な結晶構造の総合結果として現れる。
従って、ワックス状物質が備える物性と従来品A・Bが
備える物性との相違は、組成、分子量および分子量分布
がそれぞれ微妙に異なることに起因しているものと思わ
れる。
【0038】次に、融点の測定結果について考える。ワ
ックス状物質は、融解ピーク温度が109 ℃である。これ
に対して、従来品Aは、分子量が小さいため、融解ピー
ク温度が50℃である。つまり、従来品Aは、例えば夏季
等、気温や室温が高い場合に、加工により出来上がった
原型が型崩れし易いことがわかる。このため、従来品A
を用いて原型を作成する際には、作業場の温度を一定に
保つ等、作業環境を整える必要がある。
【0039】また、ワックス状物質は、融解した状態で
無臭であった。これに対して、従来品Bは、融解すると
不快なにおいを発生した。このことからも、従来品B
は、飽和鎖式炭化水素以外に、上記の不純物を含有して
いることがわかる。
【0040】次に、流れ試験の試験結果について考え
る。ワックス状物質は、粘度が60℃で4.3×106poise、8
0℃で 5.3×104poise、100 ℃で 3.5×103poise、溶融
開始温度が97℃である(40℃における粘度は、ワックス
状物質が全く溶融しないために測定不能であった)。
【0041】これに対して、従来品Aは、融解ピーク温
度が低いため、粘度が40℃で 4.2×105poise、60℃で9
3、80℃で 7.2、溶融開始温度が46℃である(100 ℃に
おける粘度は、従来品Aが完全に溶融しているため、上
記の測定方法では測定不可であった)。つまり、従来品
Aは、前記したように、加工により出来上がった原型が
型崩れし易いことがわかる。また、従来品Bは、粘度が
60℃で 3.4×106poise、80℃で 2.2×105poise、100 ℃
で 5.4×103poise、溶融開始温度が98℃である(40℃に
おける粘度は、従来品Bが全く溶融しないために測定不
能であった)。
【0042】通常、ワックス状物質(または従来品Aや
従来品B)を、例えば彫刻刀やカッター、鋸、鑢等の加
工工具を用いて加工する場合に、ワックス状物質におけ
る加工工具との接触部分は、摩擦熱により加熱される。
このため、例えば80℃付近の粘度が高いと、ワックス状
物質を加工して原型を作成する際に、加工により発生す
る削り屑や切り屑が摩擦熱により加熱されて粘り気を有
し、加工工具にまとわりつく。つまり、彫刻刀の刃先、
或いは鋸や鑢等の目に削り屑や切り屑が詰まり易くな
り、ワックス状物質の加工性が低下する。80℃における
粘度は、ワックス状物質が 5.3×104poiseであるのに対
して、従来品Bが 2.2×105poiseと高くなっている。こ
のことから、ワックス状物質は、従来品Bよりも加工し
易いことがわかる。尚、80℃におけるワックス状物質の
粘度が従来品Bの粘度よりも低いのは、ワックス状物質
の分子量分布曲線のピークが低分子量側に若干偏ってい
ることに起因していると思われる。
【0043】また、100 ℃における粘度は、ワックス状
物質の方が従来品Bよりも低い。つまり、100 ℃では、
ワックス状物質は、従来品Bよりも流れ易くなる。この
ため、ワックス状物質は、従来品Bよりも鋳型である型
材からの脱蝋が容易であることがわかる。
【0044】次に、硬さ試験の試験結果について考え
る。ワックス状物質は、硬さが51HDDである。これに
対して、従来品Bは、硬さが48HDDである。このこと
からも、ワックス状物質は、従来品Bよりも原型が型崩
れし難いことがわかる。
【0045】次に、引張試験の試験結果について考え
る。ワックス状物質は、引張強さが92kgf/cm2である。
これに対して、従来品Bは、引張強さが79 kgf/cm2であ
る。
【0046】ワックス状物質(または従来品Aや従来品
B)を加工して原型を作成する際に、引張強さが小さい
と、例えば微小なひび割れが生じる等して加工部分が綺
麗に仕上がらない。つまり、原型が所望の綺麗さに仕上
がらない。引張強さは、従来品Bよりもワックス状物質
の方が大きい。このことから、ワックス状物質は、従来
品Bよりも、綺麗な原型を作成可能であることがわか
る。
【0047】次に、曲げ試験の試験結果について考え
る。ワックス状物質は、曲げ強さが0.74 kgf/mm2、曲げ
弾性率が52 kgf/mm2である。これに対して、従来品B
は、曲げ強さが1.03 kgf/mm2、曲げ弾性率が31 kgf/mm2
である。また、ワックス状物質は、破壊までの押込量が
0.82mmである(降伏までの押込量は、0.82mmの時点で試
験片が破壊されたため、測定不能であった)。これに対
して、従来品Bは、降伏までの押込量が5.12mmである
(破壊までの押込量は、試験片が破壊されなかったた
め、測定不能であった)。
【0048】ワックス状物質(または従来品Aや従来品
B)を加工して原型を作成する際に、曲げ強さが大きい
と、例えば切り屑がワックス状物質本体から切り離され
るときに、切り屑とワックス状物質本体との結合部分が
延びる等して加工部分が綺麗に仕上がらない。また、曲
げ弾性率が小さいと、例えば彫刻刀やカッター等でワッ
クス状物質を切ったときに、彫刻刀やカッターの刃先付
近で切り屑が細かく割れてしまい、加工部分が綺麗に仕
上がらない。つまり、原型が所望の綺麗さに仕上がらな
い。曲げ強さは、従来品Bよりもワックス状物質の方が
小さい。また、曲げ弾性率は、従来品Bよりもワックス
状物質の方が大きい。このことから、ワックス状物質
は、従来品Bと比較して、より綺麗な原型を作成可能で
あることがわかる。
【0049】また、ワックス状物質、従来品Aおよび従
来品Bを用いて原型を作成し、このときの加工性の差、
つまり、使い勝手をそれぞれ比較した。その結果、ワッ
クス状物質には、彫刻等の加工を簡単に施すことができ
た。これに対し、従来品Bには、彫刻刀に削り屑が付着
するため、彫刻等の加工を施すのに手間と時間が掛かっ
た。また、ワックス状物質を加工して作成した原型は、
型崩れしなかった。これに対し、従来品Aを加工して作
成した原型は、型崩れした。尚、ワックス状物質は、従
来品Bよりも硬いが脆くはなく、上記加工を施す際に不
都合は生じなかった。
【0050】以上の結果から明らかなように、ワックス
状物質は、彫刻等の加工作業中および作業後に容易に軟
化または型崩れしない。このため、ブロック形状等のワ
ックス状物質は、彫刻刀等の木工用の加工工具を用い
て、素人でも簡単に彫刻加工等できる。そして、ワック
ス状物質は、素人でも取り扱いが容易であるので、例え
ば鋳造用や彫刻用等、即ち、造形物の製造(つまり、造
形方法)に好適に使用することが可能となる。
【0051】ワックス状物質と従来品A・Bとの使い勝
手の差は、上記互いの諸物性が微妙に異なることに起因
しているものと思われる。つまり、上記使い勝手の差
は、主に、炭素と水素との重量比、炭素および水素の合
計の重量%、分子量および分子量分布の差異に由来する
ものと推定される。
【0052】そこで、本願発明者は、ワックス状物質に
おける、良好な使い勝手が得られる各物性の範囲につい
て鋭意検討した。その結果、ワックス状物質から原型を
作成する際の加工のし易さに対して、上記のどの物性が
大きく関わっているのかは明らかではないが、各物性が
以下に示す範囲内であれば、ワックス状物質の加工性が
良好となることがわかった。
【0053】即ち、炭素と水素との重量比(C/H)
は、 5.839〜6.018 が好ましい。炭素および水素の合計
の重量%は、98.5%〜100 %が好ましい。数平均分子量
(Mn)は、 3.0×103 〜 1.0×104 が好ましく、重量
平均分子量(Mw)は、1.0 ×104 〜 5.0×104 が好ま
しく、Mw/Mnは、 1.0〜5.0 が好ましい。融解ピー
ク温度は、100 ℃〜120 ℃が好ましい。粘度は、60℃で
2.0×106poise〜 8.0×106poise、80℃で 2.0×104poi
se〜 1.0×105poise、100 ℃で 1.0×103poise〜7.0×1
03poiseが好ましく、溶融開始温度は、90℃〜110 ℃が
好ましい。硬さは、40HDD〜60HDDが好ましい。引
張強さは、80 kgf/cm2〜100kgf/cm2が好ましい。曲げ強
さは、0.6kgf/mm2〜0.9kgf/mm2が好ましく、曲げ弾性率
は、40 kgf/mm2〜60 kgf/mm2が好ましい。破壊までの押
込量は、0.7 mm〜0.9 mmが好ましい。また、弾性や復元
力は、殆ど備えていない方が好ましい。尚、各物性が以
上に示す範囲外であれば、ワックス状物質の加工性が不
良となる。
【0054】以上のように、本実施例にかかるワックス
状物質は、主成分が飽和鎖式炭化水素からなり、炭素と
水素との重量比(C/H)がほぼ5.958 であり、炭素お
よび水素の合計の重量%が98.8%である。このため、例
えば120 ℃以下の低温加熱および冷却を繰り返しても、
ワックス状物質は変質せず、安定性に優れる。かつ、ワ
ックス状物質は、数平均分子量(Mn)が 6.1×103
あり、重量平均分子量(Mw)が 2.8×104 であり、M
w/Mnが 4.5である。このため、ワックス状物質が備
える物理的性質、例えば、融点や粘度、硬さ等の諸物性
は、加工性に優れると共に、鋳型である型材からの脱蝋
が容易となる適正な範囲に収まる。つまり、ワックス状
物質は、簡単に加工を施すことができ、かつ、容易に軟
化または型崩れしない。
【0055】これにより、繰り返して使用でき、加工性
に優れると共に、型材からの脱蝋が容易な、即ち、いわ
ゆる使い勝手が良好なワックス状物質となっている。
【0056】上記のワックス状物質を用いた造形物の造
形方法(いわゆる蝋型鋳造法)について、図1を参照し
ながら以下に手順を説明する。
【0057】先ず、例えば彫刻刀やカッター、鋸、鑢等
の木工用の加工工具等を転用して、製造すべき造形物の
大きさに応じた大きさのブロック形状等のワックス状物
質を、所望の形状、即ち、造形物の形状となるように加
工する。この際、ワックス状物質に造形物の下書きをし
た後、ワックス状物質を加工してもよく、或いは、下書
きをしないで直ちにワックス状物質を加工してもよい。
また、ワックス状物質の表面は、必要に応じて紙鑢や布
等を用いて研磨してもよい。ワックス状物質の表面を磨
いておくと、造形物の表面が滑らかに仕上がる。これに
より、金属からなる造形物を研磨する時間が短縮される
と共に、労力も低減される。
【0058】尚、ワックス状物質から作成される原型
は、型崩れしないので、作業環境(例えば、作業場の温
度を一定に保つ等)を整える必要がない。従って、ワッ
クス状物質を加工する際の作業場所は、特に限定される
ものではない。また、加工前のワックス状物質の形状
は、上記のブロック形状に限定されるものではない。例
えば、製造すべき造形物が、例えば皿やカップ等の食器
類等の場合には、ワックス状物質を、皿やカップの形状
に近い形状とすればよい。
【0059】次に、図1(a)に示すように、上記加工
により出来上がった原型10の適当な位置に鋳込み口
(図示せず)を取り付けた後、原型10を耐熱性の材
料、例えば石膏等のスラリにて覆う。その後、石膏を硬
化させ、鋳込み口を取り除く。つまり、原型10を、耐
熱性の型材11にて覆う。尚、型材11には、上記鋳込
み口が取り付けられていた位置に、脱蝋および鋳込みの
ための湯道11aが形成される。
【0060】次いで、同図(b)に示すように、上記の
型材11に外部から熱を加えて原型10であるワックス
状物質を溶融させ、この溶融ワックス状物質10’を湯
道11aから流し出す(脱蝋)。尚、型材11を加熱す
る際には、例えばオートクレーブ等を用いればよい。ま
た、加熱温度は120 ℃以下で充分である。このため、脱
蝋作業時に、型材11にクラックが発生するおそれはな
く、また、上記の脱蝋作業が容易となっている。
【0061】その後、例えば電気炉やガス炉等を用いて
型材11を焼成し、型材11内部に残留する溶融ワック
ス状物質10’を完全に気化させる。これにより、型材
11内部は空洞となる。次いで、鋳型となった型材11
を、鋳造に適した鋳型温度となるまで徐冷する。
【0062】続いて、同図(c)に示すように、造形物
12(同図(d))となる溶融金属12’を湯道11a
から型材11内に流し込む。上記金属としては、例え
ば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、およびこれらの
合金、或いはステンレス鋼等、所望の金属を用いること
ができるが、特に限定されるものではない。また、鋳造
法としては、例えば、遠心鋳造法、減圧鋳造法、加圧鋳
造法、真空鋳造法等を挙げることができるが、特に限定
されるものではない。その後、溶融金属12’を型材1
1と共に冷却して固化させる。
【0063】次いで、同図(d)に示すように、例えば
金槌や木槌等で型材11を破壊して造形物12を取り出
す。尚、造形物12には、型材11における湯道11a
が形成されていた箇所にバリ部12aが形成される場合
がある。この場合には、鑢等を用いて余剰金属からなる
バリ部12aを削り取ればよい。
【0064】以上のように、本実施例にかかるワックス
状物質を用いた造形方法は、主成分が飽和鎖式炭化水素
からなり、炭素と水素との重量比(C/H)が 5.839〜
6.018 であり、炭素および水素の合計の重量%が98.5%
〜100 %であり、数平均分子量(Mn)が 3.0×103
1.0×104 であり、重量平均分子量(Mw)が1.0 ×10
4 〜 5.0×104 であり、Mw/Mnが 1.0〜5.0 である
ワックス状物質を加工して原型10を作成し、この原型
10を型材11にて覆った後、原型10を脱蝋し、鋳型
となった型材11に溶融金属12’を流し込み、冷却し
て固化させることにより造形物12とする方法である。
【0065】上記のワックス状物質が備える物理的性
質、例えば、融点や粘度、硬さ等の諸物性は、加工性に
優れると共に、鋳型である型材11からの脱蝋が容易と
なる適正な範囲に収まっているので、簡単に加工を施す
ことができ、かつ、容易に軟化または型崩れしない。
【0066】これにより、ワックス状物質を用いて所望
の造形物、例えば、高精細な模様を有する装飾物や、複
雑で立体的な形状を有するアクセサリー、美術工芸品等
を好適に製造することができる。造形物としては、具体
的には、置物、表札、食器類、印鑑、ブローチ、指輪、
ペンダント、キーホルダー、小物入れ、仏像等を挙げる
ことができるが、これらに限定されるものではない。ま
た、1つの原型からは、1つの造形物しか製造すること
ができない。従って、製造される造形物は、稀少価値が
高くなる。尚、原型10は型崩れしないので、場合によ
っては、原型10それ自体を装飾物等とすることも可能
である。
【0067】本実施例にかかるワックス状物質は、上述
したように、いわゆる蝋型鋳造法に好適に用いられる
が、ワックス状物質は、いわゆるロストワックス製法に
用いることもできる。この場合には、原型10を、例え
ばシリコーンゴム等で型取りすることにより、上記ゴム
型を用いて同一形状の造形物を大量に生産することがで
きる。
【0068】また、ワックス状物質は、例えば120 ℃以
下の低温加熱および冷却を繰り返しても、その物理的性
質が変化しない。このため、原型を作成する際に発生す
る削り屑や切り屑、或いは脱蝋したワックス状物質は、
回収し溶融させた後、箱型に流し込んで再び所望の大き
さのブロック形状等に固化することにより、何度でも再
使用することができる。それゆえ、経済性に優れてい
る。そして、ワックス状物質の加工を失敗した場合に
も、溶融させた後、箱型に流し込んで固化することによ
り、元のブロック形状等に戻すことができる。従って、
ワックス状物質を用いた造形方法においては、所望の原
型が出来上がるまで、何度でもワックス状物質を加工し
直すことができる。
【0069】また、例えば、製造すべき造形物が、例え
ば皿やカップ等の食器類等の場合には、皿やカップの形
状に近い形状の箱型を用いてワックス状物質を固化させ
ればよい。これにより、ワックス状物質を、皿やカップ
の形状に近い形状とすることができるので、加工時間を
短縮することができる。
【0070】上記箱型の材質は、ワックス状物質の溶融
温度以上の耐熱温度を備えているものであれば、特に限
定されるものではない。ワックス状物質は、箱型に接着
しないので、箱型からの型離れが良好となっている。
尚、前記の従来品Bは、箱型に接着し易く、このため、
箱型からの型離れが不良となっている。
【0071】次に、ワックス状物質の製造方法につい
て、一例を挙げて以下に説明する。
【0072】ワックス状物質の製造装置は、図2に示す
ように、ワックス状物質Cを受け溜める受溜用タンク1
を備えている。この受溜用タンク1は、支脚1a…によ
って支持されている。受溜用タンク1のタンク上端開口
部1bには、筒状の燃焼用バスケット2が一体的に載架
して固設されている。そして、燃焼用バスケット2の側
壁には、無数の空気導入孔2b…が穿設されている。ま
た、燃焼用バスケット2の上端開口部2cは、開放状態
となっている。上記燃焼用バスケット2内の下部には、
燃焼用バスケット2の下端開口部2aを上方から塞ぐよ
うにして、凸状の原料受け皿であるロストル3が設置さ
れている。ロストル3には多数のロストル孔部3a…が
穿設されている。そして、ロストル3上に原料A(後述
する)が載置される。
【0073】また、燃焼用バスケット2の下部には、上
記の下端開口部2aを下方から塞ぐようにして、閉塞し
た箱状の触媒槽4が取り付けられている。触媒槽4は、
その全壁が網目状部4aを有している。上記の触媒槽4
内には、溶融物B(後述する)の熱分解反応を促進する
触媒、例えば白金や銅等の金属からなる線状触媒4bが
充填されている。そして、上記の溶融物Bは、線状触媒
4b間を通過する。
【0074】燃焼用バスケット2の外周には、燃焼用バ
スケット2に供給すべき空気量を調節するために、筒状
のエアーバランサー5が設置されている。このエアーバ
ランサー5は、燃焼用バスケット2から所定の間隔を置
いて設置されている。また、エアーバランサー5の下部
には、空気を導入するための開口部5aが設けられてい
る。上記のエアーバランサー5の上部は開放状態となっ
ている。
【0075】また、受溜用タンク1と燃焼用バスケット
2との間には、図示しない連通管が複数設置されてい
る。これら連通管は、受溜用タンク1にて発生するガス
を燃焼用バスケット2に送り出すためのポンプ(図示せ
ず)に接続されている。
【0076】そして、受溜用タンク1の内底部には、溶
融しているワックス状物質Cの温度を上昇させるため
に、パイプ状のヒーター6が設置されている。ヒーター
6は、ワックス状物質Cを電気加熱若しくは高周波加熱
する。また、受溜用タンク1の内部には、ワックス状物
質Cの温度を検出するバイメタルや熱電対等の温度セン
サ7が設置されている。ヒーター6は、制御手段8によ
り、ON/OFF制御若しくは比例制御される。制御手
段8は、上記の温度センサ7からの信号に基づいて、ワ
ックス状物質Cを所定温度に保つようにヒーター6を制
御する。
【0077】次に、上記構成の製造装置を用いたワック
ス状物質Cの製造方法について説明する。
【0078】先ず、原料物質である合成樹脂と、高架橋
のポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂である燃料と
からなる原料Aを、燃焼用バスケット2内に所定量投入
する。次に、燃料に着火して燃焼させることで、合成樹
脂を溶融させると共に、その一部を熱分解させること
で、低分子化して液化する。そして、それらの混合物で
ある溶融物Bをロストル孔部3a…から滴下させ、触媒
槽4の線状触媒4b間を通過させて、受溜用タンク1に
滴下させる。
【0079】このとき、触媒槽4内および受溜用タンク
1内の酸素は、溶融物Bと反応して速やかに消費され
る。このため、触媒槽4内および受溜用タンク1内は酸
欠状態となる。これにより、溶融物Bにおける熱分解さ
れていない樹脂や熱分解の不充分な樹脂は、主に触媒槽
4内で酸欠状態で熱分解し、低分子化してワックス状物
質Cとなる。ワックス状物質Cは、溶融状態で受溜用タ
ンク1に溜められる。
【0080】溶融状態となっているワックス状物質C
は、ヒーター6によって加熱されると共に、温度センサ
7および制御手段8によって制御されることにより、そ
の溶融温度が所定温度に維持される。従って、上記のワ
ックス状物質Cは、酸欠状態となっており、かつ、溶融
温度が安定しているため、ワックス状物質Cの一部が気
化した可燃性のエチレンガス等の高熱ガスGを安定的に
発生する。尚、ワックス状物質Cの溶融温度は、約 600
℃となるように設定すればよい。
【0081】このように発生量が制御された高熱ガスG
は、触媒槽4およびロストル3を通って上昇することに
より、若しくは図示しない連通管およびポンプを介し
て、前記原料Aの燃焼場所である燃焼用バスケット2に
達する。そして、高熱ガスGは、各空気導入孔2b…か
ら導入される空気と混合されて燃焼する。このため、燃
焼用バスケット2内の温度は、所定温度に制御される。
これにより、燃焼用バスケット2に継続的に投入される
原料Aの溶融・分解が持続する。尚、燃焼用バスケット
2における内部温度としては、1100℃程度が望ましい。
また、ワックス状物質Cから、高熱ガスGと共に微粒子
状カーボンも生成するが、生成した微粒子状カーボン
は、燃焼用バスケット2内で全て燃焼される。このた
め、燃焼用バスケット2内にカーボン煤が付着すること
はない。従って、ワックス状物質Cにカーボン煤が混入
することはない。
【0082】以上の方法により、本実施例にかかるワッ
クス状物質が製造される。勿論、ワックス状物質の製造
装置および製造方法は、上記例示の製造装置および製造
方法に限定されるものではない。即ち、本実施例にかか
るワックス状物質は、上記例示の方法によって製造され
るものに限定されない。つまり、ワックス状物質は、前
記したように、繰り返して使用でき、加工性に優れると
共に、型材からの脱蝋が容易な、即ち、いわゆる使い勝
手が良好であるという作用・効果を奏するものであれ
ば、どのように製造されていてもよい。
【0083】
【発明の効果】本発明の請求項1記載のワックス状物質
は、以上のように、原料物質である合成樹脂と、燃料と
からなる原料を燃焼用バスケットに投入し、該燃料を燃
焼させることで合成樹脂を溶融させると共に、その一部
を熱分解させることで低分子化して液化し、それらの混
合物である溶融物を酸欠状態の触媒槽に滴下させること
により、溶融物における熱分解されていない合成樹脂や
熱分解の不充分な合成樹脂を熱分解し、低分子化してワ
ックス状物質を得る一方、溶融状態となっているワック
ス状物質の一部が気化して発生した可燃性の高熱ガスを
上記燃焼用バスケットで燃焼させることにより、燃焼用
バスケット内の温度を所定温度に制御するという方法に
よって得られる、造形物の製造用のワックス状物質であ
って、主成分が飽和鎖式炭化水素からなり、炭素と水素
との重量比(C/H)が 5.839〜6.018 であり、炭素お
よび水素の合計の重量%が98.5%〜100 %であり、数平
均分子量(Mn)が 3.0×10 3 〜 1.0×10 4 であり、重
量平均分子量(Mw)が1.0×10 4 〜 5.0×10 4 であ
り、Mw/Mnが 1.0〜5.0 であり、かつ、融解ピーク
温度が100 ℃〜120 ℃であり、粘度が60℃で 2.0×10 6 p
oise〜 8.0×10 6 poise、80℃で 2.0×10 4 poise〜 1.0×
10 5 poise、100 ℃で 1.0×10 3 poise〜 7.0×10 3 poiseで
あり、溶融開始温度が90℃〜110 ℃であり、硬さが40H
DD〜60HDDであり、引張強さが80 kgf/cm 2 〜100kgf
/cm 2 であり、曲げ強さが0.6kgf/mm 2 〜0.9kgf/mm 2 であ
り、曲げ弾性率が40 kgf/mm 2 〜60 kgf/mm 2 であり、破壊
までの押込量が0.7 mm〜0.9 mmである構成である。
【0084】このため、例えば120 ℃以下の低温加熱お
よび冷却を繰り返しても、ワックス状物質は変質せず、
安定性に優れる。また、ワックス状物質が備える物理的
性質、例えば、融点や粘度、硬さ等の諸物性は、加工性
に優れると共に、鋳型である型材からの脱蝋が容易とな
る適正な範囲に収まる。つまり、ワックス状物質は、簡
単に加工を施すことができ、かつ、容易に軟化または型
崩れしない。これにより、繰り返して使用でき、加工性
に優れると共に、型材からの脱蝋が容易な、即ち、いわ
ゆる使い勝手が良好なワックス状物質を提供することが
できるという効果を奏する。
【0085】
【0086】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるワックス状物質を用
いた造形方法の手順を説明する説明図であり、(a)
は、原型を型材にて覆う段階、(b)は、原型を溶融さ
せて型材から脱蝋する段階、(c)は、溶融金属を型材
内に流し込む段階、(d)は、型材を破壊して造形物を
取り出す段階をそれぞれ示している。
【図2】上記ワックス状物質の製造装置の一例を示す概
略の断面図である。
【符号の説明】
10 原型 11 型材 11a 湯道 12 造形物 12’ 溶融金属

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原料物質である合成樹脂と、燃料とからな
    る原料を燃焼用バスケットに投入し、該燃料を燃焼させ
    ることで合成樹脂を溶融させると共に、その一部を熱分
    解させることで低分子化して液化し、それらの混合物で
    ある溶融物を酸欠状態の触媒槽に滴下させることによ
    り、溶融物における熱分解されていない合成樹脂や熱分
    解の不充分な合成樹脂を熱分解し、低分子化してワック
    ス状物質を得る一方、溶融状態となっているワックス状
    物質の一部が気化して発生した可燃性の高熱ガスを上記
    燃焼用バスケットで燃焼させることにより、燃焼用バス
    ケット内の温度を所定温度に制御するという方法によっ
    て得られる、造形物の製造用のワックス状物質であっ
    て、 主成分が飽和鎖式炭化水素からなり、炭素と水素との重
    量比(C/H)が 5.839〜6.018 であり、炭素および水
    素の合計の重量%が98.5%〜100 %であり、数平均分子
    量(Mn)が 3.0×10 3 〜 1.0×10 4 であり、重量平均
    分子量(Mw)が1.0 ×10 4 〜 5.0×10 4 であり、Mw
    /Mnが 1.0〜5.0 であり、かつ、 融解ピーク温度が100 ℃〜120 ℃であり、粘度が60℃で
    2.0×10 6 poise〜 8.0×10 6 poise、80℃で 2.0×10 4 poi
    se〜 1.0×10 5 poise、100 ℃で 1.0×10 3 poise〜 7.0×
    10 3 poiseであり、溶融開始温度が90℃〜110 ℃であり、
    硬さが40HDD〜60HDDであり、引張強さが80 kgf/c
    m 2 〜100kgf/cm 2 であり、曲げ強さが0.6kgf/mm 2 〜0.9kgf
    /mm 2 であり、曲げ弾性率が40 kgf/mm 2 〜60 kgf/mm 2 であ
    り、破壊までの押込量が0.7 mm〜0.9 mmである ことを特
    徴とするワックス状物質。
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