JP2908493B2 - パワートレイン制御装置 - Google Patents

パワートレイン制御装置

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JP2908493B2
JP2908493B2 JP2005730A JP573090A JP2908493B2 JP 2908493 B2 JP2908493 B2 JP 2908493B2 JP 2005730 A JP2005730 A JP 2005730A JP 573090 A JP573090 A JP 573090A JP 2908493 B2 JP2908493 B2 JP 2908493B2
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本願発明は、4輪駆動車における前後輪及び左右輪又
は2輪駆動車における左右輪へのトルク配分量を可変な
らしめるトルク配分制御機能及びそれら各車輪のスリッ
プ状態に応じて当該各車輪の制動力を可変ならしめるス
リップ制御機能の2つの機能を備えた車両用のパワート
レイン制御装置に関するものである。
従来より、車両の走行安定性を確保するために、トル
ク配分制御(またはトルクスプリット制御)とスリップ
制御(またはトラクション制御)とが行なわれている。
前者は、主にカーブ走行時や発進時における走行性の向
上を目的として、各車輪に加えられるエンジントルクを
適正に分配しようとするものである。換言すれば、この
トルク配分制御は、ドライバーのアクセル操作やステア
リング操作に起因した車両姿勢の変化に伴う車輪への荷
重変化を考慮して、トルクの配分制御を行なうものであ
る。また、後者のスリップ制御は車輪のスリップ状態を
最適に確保するものである。換言すれば、スリップ制御
は、ドライバの操作とは独立した原因(例えば、低抵抗
路の走行)に起因する車輪スリップを制御するものであ
る。
このように、トルク配分制御もスリップ制御も、各々
独自の課題を負って開発されているものであり、その制
御も各々のシステムで行なわれているものであるが、両
制御とも、結果的には車輪に対する駆動トルクが変更制
御されるために、一方の制御が他方に必然的に影響を与
えざるを得ない。そこで、2つの制御による互いの干渉
による車両走行への悪影響の除去等を目指して提案され
たものが本願発明のパワートレイン制御装置である。
以下、先ずこれまでに既に開示若しくは提案されてい
るスリップ制御またはトルク配分制御に関連する種々の
従来技術について、その構成、動作、並びに問題点につ
いて各々説明し、その上で本願発明の具体的な課題ない
し構成を詳細に説明して行くことにする。
(従来の技術) 従来より、例えば4輪駆動車(以下、4WD車という)
において前後左右各輪の各々に異なるトルクを分配する
ようにした技術的思想は種々提案されている。例えば、
その一つとして特開昭60−248440号公報の明細書及び図
面に示されているように、先ずエンジンからの出力をセ
ンターディファレンシャルによって各車輪に配分すると
共に、前後左右各輪の制動力が相互に分離して独立制御
可能となるように個々に制御手段が設けられ、上記前輪
もしくは後輪側の左右各輪に路面状態との関係でスリッ
プが発生すると、このスリップしている特定の車輪に対
して制動力を加えて当該車輪の駆動力を実質的に小さく
するように制御する技術的手段(車輪駆動力制御手段)
が公知である。このようにスリップしている車輪を制動
すると、他方の車輪のトルク値とにトルク差が生じ、そ
の結果前後左右輪のそれぞれで適正な駆動力を得ること
ができるようになる。
本来、車両は、通常4つの車輪によって大地と接して
いるために、そのスリップ限界性能は路面の摩擦係数μ
とタイヤ(車輪)への荷重Wとの積(μ・W)により一
義的に決まるタイヤの摩擦力により制約される。そし
て、当該タイヤに加わる力には、例えば駆動力、制動
力、遠心力などの各種の要素があるが、これらをべクト
ル的に加算した値が上記したタイヤの摩擦力値以内にな
ければ、車両の安定した走行性能は得られない。
ところで、上記タイヤに加わる荷重Wについて、走行
中に生じる車体前後方向および横方向の各加速度によっ
て荷重移動が行った時には前後4組の各車輪に荷重差が
生じ、それによって車両の運動を支えるタイヤとしての
能力にも差が生じる。特に上記路面との摩擦係数μが低
い場合には荷重Wの車両の走行安定性に与える影響が大
きい。
そこで、上記のような4輪駆動車では、上述のように
駆動トルクを4つの車輪に適切に分配することによりタ
イヤ1本当りの負担を軽減させて、上記路面の摩擦係数
μが低い路面でも安定した車両走行性能を得るようにし
ている。しかし、上記の場合において、前後左右輪がセ
ンターディファレンシャルによって相互に繋がっている
と、どうしても前後輪には同一の駆動トルクが分配され
る。この結果、荷重の軽い車輪側でスリップが発生しや
すくなることから、最も能力の低下したタイヤによって
車としての性能が制約され、他方の荷重の上昇した車輪
では、その能力が十分に発揮されない問題がある。
一方、このような事情を考慮して上記のような4輪駆
動車において例えば前後輪で異なるトルク配分を行うよ
うにすると、各車輪でのタイヤの路面グリップ性能がよ
り一層有効に発揮されるようになるが、このトルク配分
を例えば上記センターディファレンシャルに配設したク
ラッチなどの接続程度(摩擦力)の調整によって変更す
るようにしたのでは、必然的に大きなエンジン出力を直
接配分することになるため、当該クラッチ部の構造自体
が大型化し、これにより搭載上の制約が大きくなり、従
って当然その重量も重くなり、またコストも高くなると
いう欠点を生じる。
しかし、かと言って先の従来技術の構成のようにブレ
ーキ装置を前後輪で独立して操作可能に設け、前輪もし
くは後輪にスリップが発生すると、このスリップしてい
る車輪に対して制動力を加えるように制御するもので
は、この制動力のためにエンジン出力の一部が使用され
てしまって車輪は減速してしまい、走行性能、特にその
加速性能が低下することになる。
そこで最近では、次のようなトルクスプリット(配
分)制御が提案されている。即ち、上述のように前後輪
もしくは左右輪で異なるトルク配分を行うことが必要な
状態は、本来低摩擦係数μの路面で、しかも車両の加速
に伴う車体荷重の車輪上での移動が生じる加速走行時の
場合と、同車輪に駆動力以外に遠心力が加わる旋回走行
時の場合との2つの場合が主であり、又、このような状
態では、通常、エンジン出力にはタイヤの能力を越える
大きなトルクの余裕があってエンジン出力の損失がある
程度許容されるから、トルクスプリット制御を行っても
ほとんど減速状態を生じることはない。そのためにクラ
ッチなどのトルク伝達経路にその伝達量を直接変更する
ような機構を設けることは不要となる。
該トルクスプリット制御装置は、上述のようにエンジ
ン出力(エンジントルク)を前後左右輪にそれぞれ伝達
するようにした4輪駆動車において、例えばエンジン出
力を可変制御するエンジン出力制御手段と、前後輪もし
くは左右輪に対する制動力を互いに独立して可変制御す
る制動力(ブレーキ力)制御手段とを設けている。そし
て、上記エンジン出力制御手段及び制動力制御手段の作
動をトルク配分変更手段によって制御し、制動力制御手
段による前後輪もしくは左右輪の一方への制動力の作用
およびエンジン出力制御手段による上記制動力に相当す
るエンジン出力増加により前後輪もしくは左右輪に対す
るトルクの配分量を変化させるように構成されている。
上記のような4輪駆動車のトルクスプリット制御装置
では、トルクを低減させたい前後輪もしくは左右輪の一
方に対して制動力制御手段によって所定量の制動力を加
える一方、この制動力によって低下するトルクに相当す
るエンジン出力をエンジン出力制御手段によって他の車
輪側に分配している。これにより、このエンジン出力増
加分を含むエンジン出力のトータル値が適切に配分され
て、それぞれ前後および後輪に伝達されるが、制動力が
作用しているところの車輪に伝達されるトルクは上記制
動力の作用分だけ低下して、全車輪から路面側に実際に
作用するトルクは、上記トルク配分量の変更前、すなわ
ち制動動作前と同じであって制動側の車輪に伝達される
トルクのみが低減され、非制動側の車輪のトルクが相対
的に増大することになる。
この結果、スリップ状態にある車輪の路面グリップ力
が向上し、このスリップ状態が防止されるようになるの
で車両の走行安定性が良くなる。
一方、上記トルクスプリット制御に類似する4輪駆動
車の駆動輪制御システムとして例えばスリップ制御(ト
ラクション制御)と呼ばれるものがある。一般に車両の
走行時において車輪の路面に対するスリップ量が大規模
なものである場合には、路面のグリップ走行が行われ
ず、ホイールスピンによるドリフトアウトの発生など適
正な走行特性自体が得られなくなってしまう。従って、
このような場合には、上記トルクスプリット制御と同様
に車両に備えられたブレーキ装置を作動させるか、ある
いはまたエンジンの出力そのものを低下させること等に
より、当該駆動輪の路面に対するスリップを制御する制
御を行うスリップ制御装置が使用されている。
このようなスリップ制御装置により、駆動輪の路面に
対するスリップ現象を抑制するにあたっては、当該駆動
輪が路面に対して所定レベル以上のスリップを生じてい
る状態を検出することや、また路面に対する所定レベル
以上のスリップを生じている駆動輪についての基準とな
る目標スリップ率等を設定するために、先ず車速を検出
することが要求される。該車速は、前輪もしくは後輪の
一方のみが駆動される2輪駆動車の場合においては、路
面に対するスリップを生じる頻度が少ない従動輪の周速
度に基づいて比較的容易に検出することができるが、上
述のように前輪及び後輪のいずれもが駆動され得るよう
にされた4輪駆動車にあつては、4輪駆動状態にされて
いるときには、従動輪となる車輪が存在しないことにな
るので、その検出が困難になる。
このような4輪駆動車におけるスリップ率検出の不都
合を解消するものとして、従来例えば特開昭62−289429
号公報に示されるように、先ず4輪駆動車における各車
輪についての周速度を求め、その周速度に基づいて各車
輪が路面に対して所定値以上のスリップを生じている状
態を検出するようになすとともに、各車輪についての当
該周速度のうちの最小の値のものに基づいて具体的に車
速を推定するように構成した4輪駆動車のスリップ制御
装置が提案されている。
このように、各車輪が路面に対するスリップを生じて
いる状態が検出されるとともに車速が推定されるように
なされた4輪駆動車のスリップ制御装置においては車輪
の路面に対する所定値以上のスリップ状態が検出された
とき、通常、該スリップ状態が検出された車輪について
のスリップ率もしくはスリップ量を予め設定された目標
値に一致させるべく、当該所定値以上のスリップ状態が
検出された車輪に作用する駆動トルクを低減させる制御
が行われる。そして、該制御における目標値は、上記所
定値以上のスリップが検出された車輪の個数とは無関係
に設定されている。
一般に、4輪駆動車においては、路面に対するスリッ
プが検出された車輪の個数は、車両の走行状態や路面状
況(路面摩擦係数等)に応じたものとなる。所定レベル
以上のスリップを生じている車輪の個数が多いとき程、
それが車両の走行安定性に及ぼす影響は大きい。従っ
て、所定レベル以上のスリップが検出された車輪の個数
が多い程、スリップ制御に際してのスリップ率もしくは
スリップ量の目標値を低く設定し、車両の走行安定性の
確保が優先されることが望まれる。また、更に所定レベ
ル以上のスリップが検出された車輪の個数が少ないとき
程、スリップ制御に際してのスリップ率もしくはスリッ
プ量の目標値を高く設定し、加速性や走破性等の車両の
走行特性の確保が優先されることが望まれる。
このような理由から、最近では例えば4輪駆動車にお
ける各車輪について所定レベル値以上のスリップ状態の
検出がなされたとき、該検出された車輪についてのスリ
ップ率もしくはスリップ量を設定された目標値に一致さ
せるべく、その車輪に作用する駆動トルクを変化させる
トルク制御手段を設け、その際、制御される車輪につい
てのスリップ率もしくはスリップ量の目標値が車両の走
行状態や路面状況に応じて設定され、車両の走行安定性
が実質的に確保される状況の下で所望の走行特性が得ら
れるように構成された高精度な4輪駆動車のスリップ制
御装置すら提案される状況になっている。
以上が従来技術の全体的概観である。
(発明が解決しようとする課題) さて、上述のように駆動輪のスリップ制御(トラクシ
ョン制御)並びにトルク配分制御(トルクスプリット制
御)は、車両の走行状態の安定性に大きく貢献し、操安
性、加速性能の向上に寄与するものであるが、一方これ
ら両システムを備えて構成された車両において、該両シ
ステムが同時に作動した時には一方次のような問題を招
く場合もあることを本願発明者達は見出した。
すなわち、例えば車体の運動量、又は運転者の操作量
によるトルク配分(スプリット)制御を実施した場合に
も、上記スリップ制御を阻害する恐れがある場合と、そ
うでない場合との2つの場合がある。従って本来その状
況に応じてトルク配分制御を行わなければならない。つ
まり、スリップ制御を阻害し、車両の走行安定性が害さ
れる場合には必然的にトルク配分制御を中止しなければ
ならないが、一方、そうでない場合にまでトルク配分制
御を中止してスリップ制御のみを行うことは結局不必要
な加速性能の低下を伴うことになる。
他方、上記のように車体の運動量又は運転者の操作量
に応じてトルク配分制御を実行すると、先にも述べたよ
うに前後各車輪のタイヤの能力を最大限に活用すること
ができるようになるが、本来路面状態(特に路面μ)に
よって異なってくるタイヤ能力の限界を越えてまで駆動
力が大きくなったような場合にはホイールスピンの発生
を防止することはできない。例えば積雪路などのような
低μ路では、車両運動状態によるタイヤ能力の限界差が
小さい。そのため、このような場合には、駆動力の配分
量を増大させること自体が、車輪位置或いは車輪数によ
っては却って車輪全体のスピン現象を誘発することも懸
念される。
そこで、このような場合には当然上記スリップ制御を
実施し、それによって車輪に作用するトルクを低下させ
てスピン状態の防止を図るようにすることが想定される
が、一方上記トルク配分制御を実施している時に急にス
リップ制御に移行したとすると、本来駆動力を減少させ
るべきであった車輪の路面に対するコントロール自体を
喪失してしまう。また急激な駆動力配分量の変化により
車体挙動が不安定となるなどの問題がある。
(請求項1の発明の目的) そこで、先ず本願請求項1の発明の目的は、スリップ
制御が実行されている車輪に対し、トルク配分制御が実
行されようとする場合に、このスリップ制御対象車輪に
対するトルク配分制御による配分トルクの増加を防ぐこ
とにより、スリップ車輪のスリップ収束を早めて走行安
定性を速やかに確保することにある。
(請求項1の発明の課題を解決するための手段) そして、該目的を達成し、上記課題を解決するための
同本願請求項1の発明の課題解決手段の構成は、エンジ
ン出力トルクの車輪への伝達を全体的に制御するパワー
トレイン制御装置において、エンジンからの出力トルク
を、その分配量を可変制御しながら、夫々の車輪へ独立
して配分するトルク配分制御手段と、車輪の各々のスリ
ップ状態を検出すると共に、検出されたスリップ車輪の
スリップ量を所定レベル以下になるようにスリップ制御
するスリップ制御手段と、このスリップ制御手段により
スリップ制御が行われている車輪に対して、更に上記ト
ルク配分制御手段が作用したときに、その車輪に配分さ
れるトルクが増大されるか否かを判定するトルク判定手
段と、このトルク判定手段の出力を受けて、上記スリッ
プ制御対象車輪に配分されるトルクが増大されるとき
は、少なくとも、そのスリップ制御対象車輪に対する配
分トルクを減少させるように上記スリップ制御手段また
はトルク配分制御手段を制御して、当該スリップ制御対
象車輪への伝達トルクを抑制するトルク抑制手段とを設
けてなることを特徴とするものである。
(請求項1の発明の課題解決手段の作用) 先ずスリップ制御(トラクション制御)は、車輪に作
用するトルクを低下させてスピン状態の発生を防止する
ように働く。
一方、トルク配分制御(スプリット制御)は、車体の
運動量又は運転者の操作量に応じて各車輪へのトルク配
分量をコントロールするものであり、各車輪のタイヤの
能力を最大限有効に活用することができる。
ところが、上記スリップ制御を行っている場合におい
て、車輪の1輪あるいは2輪にスピンが生じ、ブレーキ
制御のみを行っている時にトルク配分制御が行われて、
それにより制御対象車輪のトルク配分量が上記タイヤの
能力の限界を越えてまで大きくなると、却ってホイール
スピンの発生を防止することができなくなる。
他方、それとは逆に上記トルク配分制御による制御対
象車輪へのトルク配分量が小さくなる場合には上記スリ
ップ制御によって有効にホイールスピンの発生を防止す
ることができる。
そこで、上記請求項1の発明のパワートレイン制御装
置の構成では、上記トルク配分制御を行うトルク配分制
御手段とスリップ制御を行うスリップ制御手段とに加
え、スリップ制御およびトルク配分制御対象車輪への配
分トルクの増大状態を判定するトルク判定手段並びに該
トルク判定手段の判定結果に応じて、上記スリップ制御
手段又はトルク配分制御手段を制御することによって上
記スリップ制御対象車輪への伝達トルクを抑制するトル
ク抑制手段を設け、それによりトルク配分制御手段から
の配分トルク増大時のスリップ制御対象車輪への伝達ト
ルクを抑制するようにしている。
その結果、スリップ制御中においてトルク配分制御が
開始されても、それにより当該スリップ制御対象車輪へ
のトルクの配分量が増大するような場合には、自動的に
そのトルク伝達量が抑制され、可及的にホイールスピン
の発生を抑制するように作用する。
(請求項1の発明の効果) 従って、上記本願の請求項1の発明に係るパワートレ
イン制御装置によると、タイヤ能力に余裕のある範囲内
で有効にスリップ制御を活用することができ、タイヤの
スリップ状態を走行上最適な状態に維持することができ
る。
また、スリップ制御中であってもタイヤの能力に余裕
のある限り十分なトルク配分が可能となるから、ドライ
バーの加速要求にも適切に対応することができる。
(請求項2の発明の目的) また、次に本願請求項2の発明の目的は、トルク配分
制御が行われている状態において、更にスリップ制御が
行われようとしている場合に、本来上記トルク配分制御
による配分トルクの少ない車輪に対しては、スリップ制
御によっても配分トルクの増加を抑制することにより、
当該配分トルクの少ない車輪に新たなスリップが発生す
ることを防止することである。
(請求項2の発明の課題を解決するための手段) このような目的を達成し、上記課題を解決するための
本願請求項2の発明の課題解決手段の構成は、エンジン
出力トルクの車輪への伝達を全体的に制御するパワート
レイン制御装置において、エンジンからの出力トルク
を、その分配量を可変制御しながら、夫々の車輪へ独立
して配分するトルク配分制御手段と、車輪のスリップ量
を所定レベル以下になるようにスリップ制御するスリッ
プ制御手段と、このスリップ制御手段により制御される
べきスリップ制御対象の車輪を検出する第1の検出手段
と、この第1の検出手段の出力を受け、上記トルク配分
制御手段が作動しているときに、上記スリップ制御手段
により上記スリップ制御対象車輪に対してスリップ制御
が行なわれようとしていることを検出する第2の検出手
段と、この第2の検出手段の出力を受け、上記スリップ
制御対象車輪に配分されようとするトルクが所定の値以
上になるか否かを判定するトルク判定手段と、このトル
ク判定手段の出力を受けて、上記スリップ制御対象車輪
に伝達されるトルクが所定の値以上になるときは、当該
スリップ制御対象車輪へのトルクの増加を抑制するトル
ク抑制手段とを設けてなることを特徴とするものであ
る。
(請求項2の発明の課題解決手段の作用) トルク配分制御(スプリット制御)は、車体の運動量
又は運転者の操作量に応じて各車輪へのトルク配分量を
コントロールするものであり、各車輪のタイヤの能力を
最大限有効に活用することができる。
またスリップ制御(トラクション制御)は、車輪に作
用するトルクを低下させてスピン状態の発生を防止する
ように働く。
ところで、上記のように車体の運動量又は運転者の操
作量に応じてトルク配分制御を実行すると、前後各車輪
のタイヤの能力を最大限に活用することができるように
るが、本来路面状態(特に路面μ)によって異なってく
るタイヤ能力の限界を越えてまで駆動力が大きくなった
ような場合には上述の如くホイールスピンの発生を防止
することができない。例えば積雪路などのような低μ路
では、車両運動状態によるタイヤ能力の限界差が小さ
い。そのため、このような場合には、駆動力の配分量を
増大させること自体が、車輪位置或いは車輪数によって
は、却って車輪全体のスピン現象を誘発することも懸念
されるようになる。
そこで、このような場合には当然上述のスリップ制御
を実施し、それによって車輪に作用するトルクを低下さ
せてスピン状態の防止を図るようにすることが想定され
るが、一方上記トルク配分制御を実施している時に急に
スリップ制御に移行したとすると、本来駆動力を減少さ
せるべきであった車輪の路面に対するコントロール自体
を喪失して新なスピン車輪を発生させてしまう。また急
激な駆動力配分量の変化により車体挙動が不安定となる
などの問題があった。
そこで、該請求項2の発明のパワートレイン制御装置
の構成では、上記トルク配分制御手段およびスリップ制
御手段に加えて、さらに上記スリップ制御手段によって
制御されるべきスリップ制御対象の車輪を検出する第1
の検出手段と、この第1の検出手段の検出出力を受け、
上記トルク配分制御手段が作動しているときに上記スリ
ップ制御手段により上記スリップ制御対象車輪に対して
スリップ制御が行なわれようとしていることを検出する
第2の検出手段と、この第2の検出手段の出力を受け、
上記スリップ制御対象車輪に配分されようとするトルク
が所定の値以上になるか否かを判定するトルク判定手段
と、このトルク判定手段の出力を受けて、上記スリップ
制御対象車輪に伝達されるトルクが所定の値以上になる
ときは、戸外スリップ制御対象車輪へのトルク増加を抑
制するトルク抑制手段とを設け、トルク配分制御手段に
よってトルク配分制御が行われている時に所定の車輪に
スリップ制御が適用されようとしている場合は、その制
御対象車輪の配分トルク値に応じて上記トルク配分制御
手段のトルク配分量の増加を抑制するようにしている。
その結果、トルク配分制御中のスピン発生車輪に対し
てスリップ制御を適用した切替え過渡時の新なスピン発
生車輪の発生を防ぐことができるようになる。
(請求項2の発明の効果) 従って、上記本願請求項2の発明のパワートレイン制
御装置によると、トルク配分制御中においてスリップ制
御が実行された場合にあっても安定した車輪の路面に対
するコントロール力を確保することができ、また車体挙
動の変化を招かずに済むようになる。
(実施例) 以下、本願発明のパワートレイン制御装置の実施例を
2つ(基本となる第1実施例とそれを改良した第2実施
例)上げて詳細に説明する。
これらの各実施例では、車輪への荷重分布の変化に応
じたトルク配分制御(トルクスプリット制御)は、一例
として、トルクを減らそうとしている車輪に対しては制
動量を増やすことにより、また、トルクを増やそうとし
ている車輪に対しては、制動量を減らすことにより各々
なされる。そして、制動力の付加で失われるエンジント
ルクはエンジン出力全体を増大することによりまかなう
ようにしている。
また、車輪のスリップ状態を適正化するためのスリッ
プ制御は、目標スリップ率を4つの車輪の各車輪毎に設
定し、この目標スリップ率に向けて各車輪に適正な制動
力を与えるブレーキ制御と、エンジン出力に対しても目
標スリップ率との差からエンジンの出力を制御すること
により車輪のスリップ率を制御するエンジントルク制御
とによりなされている。
そして、第1実施例の制御装置は、車輪にかかる荷重
の変化に付加トルクが適切に対応するトルクスプリット
制御と、車輪のスリップをなくすためのスリップ制御
(トラクション制御)とが相互に独立して実行され、車
両の走行安定性や加速性を向上させることを特徴とする
ものである。
一方、第2実施例の制御装置は、第1実施例の制御装
置による制御では、スリップ制御とトルクスプリット制
御とが独立してなされているために、両制御が結果的に
相互干渉してしまう事態が発生し得る場合があることを
特に考慮してなされたものである。そのような事態と
は、主に、次のような2つの事態である。即ち、 :スリップを生じ第1実施例の制御によりスリップ制
御の対象となっている車輪に対して、独立してトルクス
プリット(トルク配分)制御がなされると、当該車輪に
対して、同トルクスプリット制御によって駆動トルクが
増加させられる場合がある得る。このような駆動トルク
の増加は更にスリップの助長を招くので、これを防止す
るために、このような事態が検出された場合は、当該ス
リップ制御対象の車輪に対するトルクスプリット制御に
よるトルクの増加を抑制しようとするものである。この
ような干渉状態を後に具体的に説明する第2実施例の説
明中では、第1の干渉状態と呼んでいる。
:上記のトルク抑制制御では、スリップ制御がなさ
れている車輪に対しては駆動トルクの増加が抑制され、
スリップ発生の助長が防止されるという特徴を有する。
しかし、一方本来トルク配分量の小さな車輪について
は、そのようにトルク配分を抑制又は禁止すること自体
が逆にトルクの増大につながり、その結果、車輪にタイ
ヤの能力を越えた過剰な駆動力がかかり、危険なドリフ
トアウトが発生する事態もあり得る。そこで、同第2実
施例では更に上記のようにトルクスプリット制御を停止
してスリップ制御に移行する場合であっても、実際に印
加トルクが減少している車輪は、その車輪が実際にスリ
ップしてようがいまいが、トルクスプリット制御を行う
ようにして、新たなスリップ車輪の発生を防止するよう
にしている。
以上の点を前提として、先ず、上記第1実施例及び第
2実施例の各パワートレイン制御装置に共通なハードウ
ェア部の構成を具体的に説明した上で、次に当該第1、
第2各実施例の詳しい制御動作の内容を順次説明して行
くことにする。
〈パワートレイン制御装置ハードウェア部のシステム構
成〉 先ず、第1図は、第1、第2実施例の各パワートレイ
ン制御装置の制御システムのハードウェア部の全体的な
構成を、それが適用された4輪駆動車の基本的な車両構
造とともに概念的に示している。
すなわち同第1図に示すように、当該4輪駆動車の車
体10の前部には、例えば直列4気筒のエンジン12が搭載
されている。このエンジン12は、4つの気筒11,11・・
を有し、それらの各気筒11.11・・には、スロットルア
クチュエータ13により電気的に開閉駆動されるスロット
ル弁14が設けられた吸気通路16を通じて、燃料供給系か
ら供給される燃料と吸入空気とで形成された所定空燃比
の混合気が供給されるようになっている。そして、該各
気筒11内に供給された混合気は、図示しない点火プラ
グ、ディストリビュータ、イグナイタ等の点火系の作動
によって燃焼せしめられた後、排気通路17を介して排出
される。この混合気の燃焼によってエンジン12が回転駆
動せしめられ、その発生トルクが変速機22、センターデ
ィファレンシャル機構23、前輪用のプロペラシャフト24
及びディファレンシャル機構25と、後輪用のプロペラシ
ャフト26及びディファレンシャル機構27とを含んで形成
されるトルク伝達経路を介して、左前輪20L、右前輪20
R、左後輪21L及び右後輪21Rにそれぞれ伝達されるよう
になっている。
左前輪20L、右前輪20R、左後輪21L及び右後輪21Rに関
連してブレーキコントロール部30が備えられている。ブ
レーキコントロール部30は、左前輪20L、右前輪20R、左
後輪21L及び右後輪21Rの各々に付設されたディスク32
と、ディスク32を押圧するブレーキパッドが設けられた
キャリパ34とから成るディスクブレーキ35A〜35Dを有し
ている。ディスクブレーキ35A〜35Dの各々におけるキャ
リパ34にはホイールシリンダ36が備えられていて、各ホ
イールシリンダ36には液圧調整部40から伸びる導管37a
〜37dがそれぞれ接続されている。各キャリパ34は、ホ
イールシリンダ36に液圧調整部40から導管37a〜37dを介
してブレーキ液圧が供給されると、その供給されたブレ
ーキ液圧に応じた押圧力をもってブレーキパッドをディ
スク32に押し付けて、左前輪20L、右前輪20R、左後輪21
L及び右後輪21Rの各制動を各々独立して行うようになっ
ている。
液圧調整部40には、ブレーキペダル41の踏み込み操作
に応じた液圧が、ブレーキペダル41に付随して設けられ
たパワーシリンダ43から導管42a及び42bを通じて供給さ
れるとともに、ポンプ44及び調圧弁45により形成される
作動液圧が導管46を通じて供給される。液圧調整部40
は、トラクション制御、つまりスリップ制御が行われな
い通常制動時には、ブレーキペダル41の踏込み操作に応
じたブレーキ液圧を形成して、それを導管37a〜37dを通
じてディスクブレーキ35A〜35Dに供給する通常のブレー
キ制御動作を行い、他方スリップ制御時には内蔵された
電磁開閉弁51〜58の動作状態に応じてディスクブレーキ
35A〜35Dに対するブレーキ液圧を個別に形成し、それら
をディスクブレーキ35A〜35Dにそれぞれ選択的に供給す
る動作を行う。
電磁開閉弁51〜58は、電磁開閉弁51及び52、電磁開閉
弁53及び54、電磁開閉弁55及び56、電磁開閉弁57及び58
の各々ペア状態に組合わせられ、各組の各々は左前輪20
L、右前輪20R、左後輪21L及び右後輪21Rに各々設けられ
た上記ディスクブレーキ35A〜35Dに対するブレーキ液圧
の調整に関与するものとされている。各組のうちの1方
の電磁開閉弁51,53,55及び57が開状態にされて、他方の
電磁開閉弁52,54,56及び58が閉状態にされたときには、
ディスクブレーキ35A〜35Dに供給されるブレーキ液圧が
それぞれ増圧され、又それとは逆に上記各組のうちの一
方の電磁開閉弁51,53,55及び57が閉状態にされ、他方の
電磁開閉弁52,54,56及び58が開状態にされたときには、
ディスクブレーキ35A〜35Dに供給されるブレーキ液圧が
それぞれ減圧され、各組のいずれもが閉状態にされたと
きには、ディスクブレーキ35A〜35Dに供給されるブレー
キ液圧がそのときの液圧状態のままに保持されるように
なっている。
これらの各電磁開閉弁51〜58の各開閉状態は、後述す
るようにコントロールユニット100のブレーキコントロ
ール部からの図示制御信号Ca〜Chによって各々制御目的
に応じて適切にコントロールされるようになっている。
すなわち、上述の各構成に加えて、本実施例では上記
電磁開閉弁51〜58の開閉制御を行うブレーキコントロー
ル部及び上記スロットルアクチュエータ13の動作制御を
行うためのスロットルコントロール部、各車輪へのトル
ク配分を行うトルク配分コントロール部を内蔵したコン
トロールユニット100が設けられている。そして、コン
トロールユニット100には、先ずスリップ制御(トラク
ションコントロール)に関して、左前輪20L、右前輪20
R、左後輪21L及び右後輪21Rの各々に関連して設けられ
た速度センサ61〜64から得られる。左前輪20L、右前輪2
0R、左後輪21L及び右後輪21Rの各々の周速度を表す信号
VFL,VFR,VRL,VRRと、スロットル開度センサ65から得ら
れる、スロットル弁14の開度(θt)と、アクセルペダ
ル66に関連して設けられたアクセル開度センサ67から得
られる、アクセルペダル66の踏込量θaと、ステアリン
グホイール68に関連して設けられた舵角センサ69から得
られる左前輪20L及び右前輪20Rの舵角信号θs等が各々
供給され入力されるようになっている。
次の表(第1表)に以下の制御に使用される各データ
信号を掲記する。
−各実施例のパワートレイン制御の概略− 〈第1実施例〉 次に、先ず第1実施例で行われるパワートレインの概
略について説明する。
先ずコントロールユニット100は、上記検出信号VFL,V
FR,VRL,VRRを所定の周期をもって順次取り込み、該取り
込まれた各検出信号VFL,VFR,VRL,VRRが表わす左前輪20
L、右前輪20R、左後輪21L及び右後輪20Rの周速度の値に
基づいて推定車速の値及び周加速度の値を各々算出し、
上記左前輪20L、右前輪20R、左後輪21L及び右後輪21Rの
各々に所定値以上のスリップが発生したか否かを、当該
算出された各周加速度の値を予め定められた所定の基準
値Aaと比較することによって判定する。そして、左前輪
20L、右前輪20R、左後輪21L及び右後輪21Rのうち周加速
度の値が該基準値Ae以上であると判断されたものには、
所定レベル以上のスリップが発生したとして、スリップ
制御を行い、一方左前輪20L、右前輪20R、左後輪21L及
び右後輪21Rの各周加速度の値が上記基準値Aa未満であ
ると判断された場合には、通常のスロットル開度制御を
行う。
そして、該コントロールユニット100により、上記通
常のスロットル開度制御が行われるにあたっては、上記
アクセル踏み込み量検出信号θaがあらわすアクセルペ
ダル66の踏込量に応じて通常の目標スロットル開度が設
定され、上記スロットル開度検出信号θtがあらわすス
ロットル弁14の開度が通常の目標スロットル開度に近づ
けられるように、通常目標スロットル開度とスロットル
弁14の開度との差に応じたスロットル弁駆動信号(フォ
ードバック制御信号)Ctが形成され、それがスロットル
アクチュエータ13に供給される。そして、それにより上
記スロットル弁14が上記スロットルアクチュエータ13に
より開閉駆動されて、その開度が通常目標スロットル開
度に一致せしめられるべく制御される。なお、該通常目
標スロットル開度は、アクセルペダル66の踏込量が増加
するに従い、所定の比例関係(リニアな特性)をもって
増大するように特性設定されている。そして、上記コン
トロールユニット100により、上記スリップ制御が行わ
れるにあたっては、左前輪20L、右前輪20R、左後輪21L
及び右後輪21Rの夫々についての周加速度の検出値が用
いられ、先ず路面に対する所定レベル値以上のスリップ
が発生した車輪(以下、スリップ車輪と呼ぶ)が4個の
車輪のうちのいずれであるかの検知、及びスリップ車輪
の個数の検知が各々なされ、さらに当該検知されたスリ
ップ車輪の個数が複数である場合には、該複数のスリッ
プ車輪のうちの略同時にスリップ車輪となったものの個
数が検知され、その検知の結果に基づいて目標スリップ
率の設定に際して用いられる推定車速の算出及びスリッ
プ制御態様の設定が行われるようになっている。
〈車速の推定〉 コントロールユニット100による推定車速の設定にお
いては、1サイクル前に取り込まれた上記検出信号VFL,
VFR,VRL,VRRがあらわす左前輪20L、右前輪20R、左後輪2
1L及び右後輪21Rの各周速度に基づいて算出された推定
車速の値Vn-1(但し、nは正の整数)が、所定の基準値
Vh以上とされる高速走行時、及び上記算出された推定車
速の値Vn-1が上記基準値Vh未満とされ、かつ舵角信号θ
sが表わす左前輪20L及び右前輪20Rの舵角が所定の基準
値θ1未満とされる低速直進走行時には、左前輪20L、右
前輪20R、左後輪21L及び右後輪21Rの周速度の値のうち
の最も低いものに所定の補正係数α0(但し、α0<1)
が乗じられて、そのときの推定車速の値Vnが算出される
(Vn=αo×Min{VFL,VFR,VRL,VRR})。また、推定車
速の値Vn-1が上記基準値Vh未満で、左前輪20L及び右前
輪20Rの舵角θsが値θ1以上とされる低速旋回走行時に
は、検知されたスリップ車輪及びその個数に応じて、路
面に対する所定値以上のスリップが発生していない車輪
(以下、非スリップ車輪と呼ぶ)についての周速度に基
づいて、異なる設定態様の下で推定車速が設定されるよ
うになっている。
低速旋回走行時における推定車速の設定においては、
スリップ車輪が零もしくは1個であることが検知された
下で、左前輪20L及び右前輪20Rの舵角に基づいて車両の
左旋回状態が検知されるとき、左前輪20L及び右前輪21R
が各々非スリップ車輪である場合には、左前輪20Lの周
速度と右後輪21Rの周速度との平均値に予め定められた
補正係数α1が乗じられて、推定車速の値Vnが算出さ
れ、また左前輪20L及び右後輪21Rのうちの少なくとも一
方がスリップ車輪であることが検知された下で、車両の
左旋回が検知されるときには、非スリップ車輪とされる
右前輪20Rの周速度と左後輪21Lの周速度との平均値に補
正係数α1が乗じられて、推定車速の値Vnが算出され
る。それに対し、スリップ車輪が零もしくは1個である
ことが検知された下で、車両の右旋回状態が検知される
とき、右前輪20R及び左後輪21Lがそれぞれ非スリップ車
輪である場合には、右前輪20Rの周速度と左後輪21Lの周
速度との平均値に補正係数α1が乗じられて、推定車速
の値Vnが算出され、また右前輪20R及び左後輪21Lのうち
の少なくとも一方がスリップ車輪であるとが検知された
下で、車両の右旋回が検知されるときには、非スリップ
車輪とされる左前輪20Lの周速度と右後輪21Rの周速度と
の平均値に補正係数α1が乗じられて、推定車速の値Vn
が各々算出される。
さらに、スリップ車輪が2個であることが検知された
下では、非スリップ車輪が左前輪20L及び右前輪20R、も
しくは左後輪21L及び右後輪21Rである場合には、左前輪
20Lの周速度と右前輪20Rの周速度との平均値、もしくは
左後輪21Lの周速度と右後輪21Rの周速度との平均値に予
め定められた補正係数α2が乗じられて推定車速の値Vn
が算出される。また、非スリップ車輪が左前輪20L及び
左後輪21L、もしくは右前輪20R及び右後輪21Rである場
合には、非スリップ車輪のうちの車両の重心点の軌跡に
最も近い軌跡をとる車輪の周速度に補正係数α2が乗じ
られて推定車速の値Vnが算出される。具体的には、非ス
リップ車輪が左前輪20L及び左後輪21Lであるときに、車
両が右旋回状態である場合は左前輪20Lの周速度に補正
係数α2が乗じられ、また車両が左旋回状態である場合
には左後輪21Lの周速度に補正係数α2が乗じられる。一
方、左スリップ車輪が、右前輪20R及び右後輪21Rである
ときに、車両が右旋回状態である場合は右前輪20Rの周
速度に補正係数α2が乗じられ、車両が左旋回状態であ
る場合は右後輪21Rの周速度に補正係数α2が乗じられ
て、それぞれの場合における推定車速の値Vnが算出され
る。
一方、非スリップ車輪が左前輪20L及び右後輪21R、も
しくは右前輪20R及び左後輪21Lである場合には、左前輪
20Lの周速度と右後輪21Rの周速度との平均値、もしくは
右前輪20Rの周速度と左後輪21Lの周速度との平均値に補
正係数α2が乗じられて推定車速の値Vnが算出される。
またスリップ車輪が3個であることが検知されたもと
では、非スリップ車輪とされる残りの1個についての周
速度に補正係数α3が乗じられて、推定車速の値Vnが算
出される。
さらに左前輪20L、右前輪20R、左後輪21L及び右後輪2
1Rの全てがスリップ車輪であることが検知された下で
は、斯かるスリップ車輪が検知される直前に算出された
推定車速の値Vnが、そのときの推定車速の値Vnとされ
る。
なお、上述の各補正係数α1,α2及びα3は、スリッ
プ車輪の個数が増大するに従い、車両が不安定な状態に
おかれることを勘案して、1>α1>α2>α3となるよ
うに順次小さく設定されるのが望ましい。
このようにスリップ車輪が4個の車輪のいずれである
か(車輪位置)及びスリップ車輪の個数等各々の判定結
果に応じた設定態様のもとで推定車速が設定されること
により、当該推定車速が例えば高価な対地車速センサ等
を用いることなく、比較的簡単な構成のもとで実際の車
両の走行状態が考慮され、実際の車速から大きく外れる
ことのない制御上妥当な値に設定されることになる。
〈スリップ制御〉 上述のようにして推定車速が設定される状態下で上記
コントロールユニット100は、スリップ車輪に対するス
リップ制御を、上記スリップ車輪の個数とスリップして
いる車輪はどれかという情報とに応じて予め定められた
制御態様に従って次のように行う。すなわち、上記コン
トロールユニット100によるスリップ制御においては、
先ずスリップ車輪の個数(スリップ車輪数計数カウンタ
SNに記憶される)及びスリップしている車輪を表わす4
つのフラグ(SFFR,SFFL,SFFL,SFRR)から成る組合せに
応じて、上記ブレーキコントロール用油圧回路部30に、
左前輪20L、右前輪20R、左後輪21L及び右後輪21Rの夫々
に対して制動力を付与させるブレーキ制御(制動力可変
制御)と、スロットル弁14の開度を減少させることによ
りエンジンの出力を低下させるスロットル制御(エンジ
ントルク可変制御)とが選択的に行われるようになされ
ている。また、上記ブレーキ制御のために導入した目標
スリップ率TGBRが、予め定められた3つの制御定数TG1
〜TG3(但し、0<TG1<TG2<TG3)のうちの最も小なる
値TG1に設定される。また、上記スロットル制御のため
に導入した目標スリップ率TGTRが、値TG1〜TG3の内のい
ずれかに選択されて設定される。なお、ここでスリップ
率は、(車輪速−車体速)/車輪速で定義されるもので
ある。
そして、このようにして設定されたブレーキ制御にお
ける目標スリップ率TGBR及びスロットル制御における目
標スリップ率TGTRのそれぞれの値に、スリップ車輪の個
数別に予め設定された内蔵メモリに記憶させている補正
計数γのうちの、そのときのスリップ車輪の個数に応じ
たものが乗じられて目標スリップ率TGBR及びTGTRの値が
補正される。そして、目標スリップ率TGTR及び目標スリ
ップ率TGTRの夫々に乗じられる該補正計数γは、スリッ
プ車輪が1個である場合には1とされ、またスリップ車
輪の個数が多い程小なる値とされる。
このようにスリップ車輪の個数が多い程、補正係数γ
が小なる値に設定されることにより、補正係数γが乗じ
られて補正された目標スリップ率TGBR及びTGTRの値は、
具体的に車両の走行状態や路面状況(特に路面抵抗μ)
に応じたものとなる。
尚、上記ブレーキ制御及びスロットル制御が行われる
にあたっては、上述の如くして算出された推定車速の値
Vnが用いられて、左前輪20L、右前輪20R、左後輪21L及
び右後輪21Rの夫々における実際のスリップ率SFL,SFR,S
RL及びSRRが、それぞれ式;SFL=(VFLn−Vn)/VFLn,SRL
=(VFRn−Vn)/VFRn,SRL=(VRLn−Vn)/VRLn,及びSRR
=(VRRn−Vn)/VRRnにより算出される。
そして、実際にブレーキ制御が行われる際には、上記
のように各車輪について算出された実際のスリップ率SF
L,SFR,SRL及びSRRと、上記補正係数γが乗じられて補正
された目標スリップ率TGBRの値との比較に基づき、コン
トロールユニット100により駆動信号Ca〜Chが選択的に
形成されて、それが上述の制動力可変用の電磁開閉弁51
〜58に供給される。それにより、左前輪20L、右前輪20
R、左後輪21L及び右後輪21Rに付設されたディスクブレ
ーキ35A〜35Dに対するブレーキ液圧が調整され、スリッ
プ車輪のスリップ率が、補正係数γが乗じられて補正さ
れた目標スリップ率TGBRの値に一致せしめられるべく制
御される。
また、他方スロットル制御が行われる際には、上記の
ようにして算出された実際のスリップ率SFL,SFR,SRL及
びSRRと上記補正係数γが乗じられて補正された目標ス
リップ率TGTRの値との比較に基づき、コントロールユニ
ット100によりスロットル弁駆動信号Ctが形成され、そ
れがエンジントルク可変制御用のスロットルアクチュエ
ータ13に供給される。それによりスロットル弁14の開度
が調整されてトルク制御され、スリップ車輪の実スリッ
プ率が上述の補正係数γが乗じられて補正された目標ス
リップ率TGTRの値に一致せしめられるべく制御される。
但し、このスロットル制御時に、上記スロットル弁14の
開度θtが、アクセルペダル66の踏込量θaに応じて設
定される通常目標スロットル開度より大とされたときに
は、斯かるスロットル制御が停止されて通常のスロット
ル開度制御が開始される。
〈制御パターン〉 第2図を参照して、第1実施例及び第2実施例におけ
る制御態様を説明する。
(a)スリップ車輪が1個の場合 上述のようにスリップ制御におけるブレーキ制御及び
スロットル制御は、スリップ車輪の個数及びスリップ車
輪の組合わせに応じて選択的に行われるが、スリップ車
輪が1個であることが検知される時には、単にブレーキ
制御のみが行われる。
(b)スリップ車輪が2個の場合 また、スリップ車輪が2個であることが検知された時
には、4個の車輪のうちの2個から成る6通りの組合わ
せの,それぞれに応じて予め定められた制御態様のうち
の1つに従って行われる。すなわち左後輪21L及び右後
輪21Rがスリップ車輪である場合には、ブレーキ制御の
みが行われる。
他方、左前輪20L及び右前輪20Rがスリップ車輪である
場合には、それにより車両の走行安定性に及ぼされる影
響が、左後輪21L及び右後輪21Rがスリップ車輪であると
きに比して大となり易いので、ブレーキ制御に加えて目
標スリップ率TGTRが、上記設定値TG3に補正係数γが乗
じられて補正された値に設定された時のスロットル制御
が行われ、さらにスリップ車輪が左前輪20L及び左後輪2
1L、もしくは右前輪20R及び右後輪21Rである場合には、
車両にヨー運動が発生する可能性があるので、ブレーキ
制御に加えて、目標スリップ率TGTRが設定値TG2に補正
係数γが乗じられて補正された値に設定された下でのス
ロットル制御が行われる。そして、スリップ車輪が左前
輪20L及び右後輪21R、もしくは右前輪20R及び左後輪21L
である場合には、単にブレーキ制御のみが行われる。
このように、スリップ車輪が2個であることが検知さ
れる時には、車両の走行安定性に対する影響が比較的小
であると考えられ,ブレーキ制御のみが行われることに
なるので、エンジンの出力が低下せしめられて出力の駆
動トルクが必要以上に低減されてしまうようなことがな
く、加速性や走破性等の車両に本来的に要求される走行
特性の低下が抑制される。また、車両の走行安定性に対
する影響が大となり易いときには、ブレーキ制御に加え
てスロットル制御が行われるので、車両の走行安定性に
影響を及ぼすものとなるヨー運動が発生する事態が効果
的に回避される。
(c)スリップ車輪が3個の場合 検知されたスリップ車輪が3個であり、しかも、それ
らが各々略同時に所定値以上のスリップである場合に
は、車両が極めて不安定な走行状態にあると認められる
ので、目標スリップ率TGTRが、上記設定値TG2に補正係
数γが乗じられて補正された値に設定された状態でのス
ロットル制御のみが行われる。また、3個のスリップ車
輪のスリップが略同時に所定値以上のスリップが発生し
たものではない場合には、上記ブレーキ制御に加えて、
目標スリップ率TGTRが上記設定値TG2に補正係数γが乗
じられて補正された値に設定されたもとでのスロットル
制御が行われる。
(d)スリップ車輪が4個の場合 さらにまた、スリップ車輪が4個の(全車輪)である
ことが検知された場合には、ブレーキ制御が停止され
て、目標スリップ率TGTRが零とされてスロットル弁14を
全閉状態とするスロットル制御が行われる。そして、ス
ロットル弁14を全閉状態とした上で、4個の車輪の夫々
が実質的にスリップが無い状態に転換されたか否かの判
断を行うべく、周速度平均値VAVが式;VAV=(VFLn+VFR
n+VRLn+VRRn)/4により算出され、そして、該算出さ
れた周速度平均値VAVを用いて、総和偏差値εが式;ε
=(VFLn−VAV)2+(VFRn−VAV)2+(VRLn−VAV)2
(VRRn−VAV)2)により算出され、さらにこの偏差値ε
が所定の値Za以下であるか否かが判断される。そして、
該総和偏差値εが所定の設定値Zaより大であると判断さ
れた場合(ε>Za)には、未だ4個の車輪の全てについ
てスリップが無くなった状態とはなっていないので、そ
のままスロットル弁14の全閉状態が維持される。一方、
上記総和偏差値εが値Za以下(ε≦Za)であると判断さ
れた場合には、4個の車輪が実質的に全てスリップが無
い状態となったとして各車輪毎のスリップ制御が再開さ
れる。
スリップ制御が再開されるにあったては、例えば(第
2図のように)偏差値εが値Za以下となった時点から所
定の期間Txが経過するまでは、ブレーキ制御は行われ
ず、目標スリップ率TGTRが、上記設定値TG1に補正係数
γが乗じられて補正された値に設定されたもとでのスロ
ットル制御のみが行われる。但し、このようなスロット
ル制御が行われているときに、上記スロットル弁14の開
度θtが、アクセルペダル66の踏込量θaに応じて設定
される通常目標スロットル開度Tkよりも大(θt>Tk)
とされたときには、該スロットル制御が停止されて、上
記通常のスロットル開度制御が開始される。つまり、運
転者の要求開度以上のスロットル制御を行うことは、運
転者の不安感を招くので禁止している。
このように、4個の車輪の全てに路面に対する所定値
以上のスリップが生じたことが検知されたとき、ブレー
キ制御が停止されて4個の車輪が実質的にスリップが無
い状態に戻されるまでスロットル弁14が全閉状態に維持
されて、エンジンの出力が迅速に低下されるようになさ
れる。この制御により、車両の走行安定性に影響を与え
る事態が確実かつ迅速に回避され、同じく確実かつ迅速
に4個の車輪が実質的にスリップが発生していない状態
に復帰される。それゆえに、4個の車輪に所定レベル以
上のスリップが発生しても、推定車速と実際の車速とが
等しくなる、もしくは略等しくなる走行状態が極めて短
時間のうちに得られる。また、4個の車輪がスリップが
実質的に無い状態に戻された後、期間Txが経過するまで
の間は、再び4個の車輪にスリップが発生する可能性が
大であるが、上記第2B図に示すように、このような期間
はスロットル制御のみが行われて該所定値以上のスリッ
プの発生が抑制されるよになされるので、4個の車輪の
スリップが実質的に生じない状態にされた直後における
車両の走行安定性が確実に確保される。
また、上述のようにしてスリップ制御が行われる際
に、スリップ車輪の個数に応じて目標スリップ率TGBR及
びTGTRの値が補正されて、該補正された目標スリップ率
TGBR及びTGTRの値にスリップ車輪のスリップ率が一致せ
しめられるように制御されるので、車両の走行状態や路
面状況に応じた適正なスリップ制御が行われることにな
り、車両の走行安定性を実質的に確保することができる
ようになるとともに、所望の走行特性を得ることができ
る。
〈トルクスプリット制御〉 一方、上記コントロールユニット100のスロットルコ
ントロール部およびブレーキコントロール部にはトルク
配分コントロール部からの制御信号が出力されるように
なっている。このトルク配分コントロール部には、例え
ば前後方向加速度センサからの加速度信号DFR、横方向
加速度センサからの横加速度信号DL、舵角センサ69から
の舵角信号θs、スロットル開度センサ65からのスロッ
トル開度信号θt、ブースト圧センサからのブースト圧
検出信号B、アクセル開度センサ67からのアクセル開度
検出信号θaなどが入力され、例えば加速度および旋回
走行時に前後輪と左右輪との間の各車輪へのトルク配分
量の変更制御を適切に行うようになっている。
該トルク配分コントロール部は、例えば発進加速時の
ように後輪21L,21Rに荷重移動がある時には前輪20L,20R
のディスクブレーキ35A,35Bに制動力を加え、この制動
力に相当する分のエンジントルクを増加して、全体とし
ての車輪20L,20R,21L,21Rから路面に作用する駆動トル
クは同一でありながら、そのトルク配分量が異なるよう
にトルクスプリット制御を実行する。また、旋回走行時
には、コーナ進入時に前輪20L,20R側のディスクブレー
キ35A,35Bに制動力を加える。他方コーナ脱出時には後
輪21L,21R側のディスクブレーキ35C,35Dに制動力を各々
加え、さらに左旋回では右側前後輪20R,21R側に荷重移
動があるので左側前後輪20L,21L側のブレーキ35A,35Vに
制動力を加える。また右旋回では右側前後輪20R,21R側
のブレーキ35B,35Dに制動力を各々加え、これら各制動
力により失われるトルクに相当する分のエンジントルク
を他方側で増加するように制御して各車輪に作用するト
ルク配分量を変更するようになっている。
〈第1実施例の制御動作の詳細〉 上述したスリップ制御(トラクション制御)及びトル
ク配分制御(トルクスプリット制御)は、何れも上記コ
ントロールユニット100に内蔵されたマイクロコンピュ
ータの各コントロール部の動作に基づいて行われるが、
このマイクロコンピュータが実行する具体的な個々の制
御プログラム(基本システム)を、先ずスリップ制御に
ついて第3図〜第10図のフローチャートを参照して詳細
に説明する。
先ず、第3図のフローチャートは当該スリップ制御の
メインプログラム(メインルーチン)を示す。そして、
先ず制御動作スタート後、ステップS101で各部の初期設
定を行った後、続くステップS102において上述した各検
出信号VFL等に加え、θt,θaθsなどを順次取り込ん
で必要なデータを作成する処理を行い、続くプロセス・
ステップS103〜S108において、順次、スリップ判定、車
速推定制御態様設定、目標スリップ率補正、スロットル
制御、ブレーキ制御を各々実行して再び上記ステップ10
2に戻る。
第3図のフローチャートにおけるステップS103で実行
されるスリップ判定用プログラムは、例えば第4図のフ
ローチャートで示されるように、制御スタート後、ステ
ップS111において、同時にスリップした車輪数を計数す
るカウンタSNを零に設定し、ステップS112において、1
サイクル前の左前輪20Lの周速度の値VFLn-1をレジスタV
WOにおき、また、そのときの左前輪20Lの周速度の値VFL
nをレジスタVWNにおく。また前回のサイクルで保持して
いる前輪スリップフラグSFFLをSFQにセーブして、ステ
ップS113において、第5図に示されるスリップ検出用プ
ログラムを実行する。
この第5図に示されるスリップ検出用プログラムにお
いては、スタート後、ステップS131において、現サイク
ルの周速度の値VWNから前回サイクルの周速度の値VWOを
滅じて左前輪20Lの周加速度ΔVWを算出し、続くステッ
プS132において周加速度ΔVWが所定の設定値Aa以上であ
るか否かを判断する。上記演算された周加速度ΔVWが設
定値Aa以上であると判断された場合には、左前輪20Lに
所定値以上のスリップが発生したと判定して、ステップ
S133において、この事を示すスリップ車輪判定フラグSF
Qを1(スリップ発生)に設定する。同時にスリップ車
輪計数カウンタSNに1を加算してカウンタSNのカウント
値を更新する。また、ステップS132において、周加速度
ΔVWが上記基準値Aa未満であると判断された場合には、
ステップS133を経由することなくこのスリップ検出プロ
グラムを終了する。第5図のプログラムを終了した後に
は、第4図のフローチャートにおけるステップS114にお
いて、右前輪スリッププラグSFFLをスリップ車輪判定フ
ラグSFQにおき代えて後ステップS115に進む。
以下、ステップS115〜S117では左前車に対して、S118
〜S121は左後輪に対して、またS122〜S124は右後輪に対
して各々スリップ判定を行う。
さらにステップS125においては、左前輪スリップフラ
グSFFL、右前輪スリップフラグSFFR、左後輪スリップフ
ラグSFRL及び右後輪スリップフラグSFRRを各々加算する
ことによりスリップ車輪計数カウンタSNにスリップ車輪
数を保存する。次にステップS126において、上記アクセ
ルペダル66が解放状態(運転者のスロットル全閉要求状
態)にされているか否かを判断する。上記アクセルペダ
ル66が解放状態にされていると判断されたYES判定の場
合には、最終のステップS127において、上記スリップ車
輪計数カウンタSNを零にした後、このプログラムを終了
し、また、ステップS126において、アクセルペダル66が
解放状態にされていないと判断されたNOの場合には、上
記ステップS127を経由することなくこのスリップ判定プ
ログラムを終了する。
一方、第3図のフローチャートにおけるステップS104
で実行される車速推定は、例えば第6図のフローチャー
トで示されるように、スタート後、先ずステップS140
おいて、1サイクル前に設定された推定車速の値Vn-1
基準値Vh以上であるか否かを判断し、推定車速の値Vn-1
が同基準値Vh以上であると判断された場合(YES)に
は、次のステップS141において、推定車速の値Vhを左前
輪20L、右前輪20R、左後輪21L及び右後輪21Rの夫々につ
いての周速度の値VFLn,VFRn,VRLn及びVRRnのうちの最小
のものに補正係数α0を乗じることにより算出して、こ
の車速推定プログラムを終了する。一方、上記ステップ
S140において、推定車速の値Vn-1が上記基準値Vh未満で
あると判断された場合には、他方ステップS142におい
て、舵角検出信号θsがあらわす左前輪20L及び右前輪2
0Rの舵角が設定値θ1以上であるか否かを判断する。舵
角が同設定値θ1未満であると判断された場合には、上
記ステップS141を上述と同様に実行して、この車速推定
プログラムを終了する。他方ステップS142で舵角θsが
上記設定値θ1以上であると判断されたYESの場合には、
ステップS143において、スリップ車輪計数カウンタSNが
零もしくは1であるか否かを判断し、スリップ車輪計数
カウンタSNが零もしくは1であると判断された場合に
は、さらに続くステップS144において、舵角θに基づい
て車両が先ず右旋回状態にあるか否かを判断する。車両
が右旋回状態にあると判断された場合には、さらに次の
ステップS145において、右前輪スリップフラグSFFRが零
であるか否かを判断する。そして、その結果、右前輪ス
リップフラグSFFRが零であると判断された場合には、さ
らにステップS146において、左後輪スリップフラグSFRL
が零であるか否かを判断し、左後輪スリップフラグSFRL
が零であると判断された場合には、ステップS147におい
て、推定車速の値Vnを式;Vn={(VFRn+VRLn)/2}×
α1により算出して、この推定車速設定プログラムを終
了する。他方上記ステップS145及び146において、それ
ぞれ右前輪スリップフラグSFFR及び左後輪スリップフラ
グSFRLが零でないと判断された場合には、ステップS148
において推定車速の値Vnを式;Vn={(VFLn+VRRn)/
2}×α1により算出してこの車速推定プログラムを終了
する。
一方、上記ステップS144において車両が右旋回状態に
ないと判断された場合には、ステップS151において、左
前輪スリップフラグSFFLが零であるか否かを判断し、左
前輪スリップフラグSFFLが零であると判断された場合に
は、ステップS152において、右後輪スリップフラグSFRR
が零であるか否かを判断する。そして、その結果、右後
輪スリップフラグSFRRが零であると判断された場合に
は、ステップS153において推定車速の値Vnを式;Vn=
{(VFLn+VRRn)/2}×α1により算出して、この車速
推定プログラムを終了し、他方上記ステップS151及び
152において夫々左前輪スリップフラグSFFL及び右後輪
スリップフラグSFRRが零でないと判断された場合には、
ステップS154において、推定車速の値Vnを式;Vn={(V
FRn+VRLn)/2}×α1により算出して、この車速推定プ
ログラムを終了する。
また、一方上記ステップS143において、スリップ車輪
計数カウンタSNが零もしくは1でないと判断された場合
には、ステップS155において、スリップ車輪計数カウン
タSNが2であるか否かを判断し、スリップ車輪計数カウ
ンタSNが2であると判断された場合には、続くステップ
S156において、右前輪スリップフラグSFFRが零であるか
否かを判断し、右前輪スリップフラグSFFRが零でないと
判断された場合には、ステップS157において、右後輪ス
リップフラグSFRRが零であるか否かを判断する。そし
て、その結果、右後輪スリップフラグSFRRが零でないと
判断された場合には、ステップS158において、車両が右
旋回走行状態にあるか否かを判断する。そして、車両が
右旋回走行状態にあると判断された場合には、ステップ
S159において、推定車速の値Vnを式;Vn=VFLnXa2により
算出して、この車速推定プログラムを終了する。また、
ステップS158において、車両が右旋回走行状態にないと
判断された場合には、ステップS160において、推定車速
後値Vnを式;Vn=VRLn+2α2により算出して、この車速
推定プログラムを終了する。
一方、上記ステップS157において、右後輪スリップフ
ラグSFRRが零であると判断された場合には、ステップS
161において、左前輪スリップフラグSFFLが零であるか
否かを判断し、左前輪スリップフラグSFFLが零で判断さ
れた場合には、ステップS162において、推定車速の値Vn
を式;Vn={(VFLn+VRRn)/2}×α2により算出して、
この車速推定プログラムを終了し、ステップS161におい
て、左前輪スリップフラグSFFLが零でないと判断された
場合には、ステップS163において、推定車速の値Vnを
式;Vn={(VRRn+VRLn)/2}×α2により算出してこの
プログラムを終了する。
また、ステップS156において、右前輪スリップフラグ
SFFRが零であると判断された場合には、ステップS170
おいて、左前輪スリップフラグSFFLが零であるか否かを
判断し、左前輪スリップフラグSFFLが零であると判断さ
れた場合には、ステップS164において、推定車速の値Vn
を式;Vn={(VFRn+VFLn)/2}×α2により算出して、
この推定車速設定プログラムを終了し、ステップS170
おいて、左前輪スリップフラグSFFLが零でないと判断さ
れた場合には、ステップS165において、左後輪スリップ
フラグSFRLが零であるか否かを判断する。そして、左後
輪スリップフラグSFRLが零であると判断された場合に
は、ステップS166において、推定車速の値Vnを式;Vn=
{(VFRn+VRLn)/2}×α2により算出してこの推定車
速プログラムを終了する。一方、ステップS165におい
て、左後輪スリップフラグSFRLが零でないと判断された
場合には、ステップS167において、車両が右旋回走行状
態にあるか否かを判断し、車両が右旋回走行状態にない
と判断された場合には、ステップS168において、推定車
速の値Vnを式;Vn=VRRn×α2により算出して、この車速
推定プログラムを終了し、ステップS167において、車両
が右旋回走行状態にあると判断された場合には、ステッ
プS169において推定車速の値Vnを式;Vn=VFRn×α2によ
り算出した上でこの車速推定プログラムを終了する。
さらに、ステップS155において、スリップ車輪計数カ
ウンタSNが2でないと判断された場合には、ステップS
171において、スリップ車輪計数カウンタSNが3である
か否かを判断し、スリップ車輪計数カウンタSNが3であ
ると判断された場合には、ステップS172において右前輪
スリップフラグSFFRが零であるか否かを判断し、右前輪
スリップフラグSFFRが零であると判断された場合には、
ステップS173において、推定車速の値Vnを式;Vn=VFRn
×α3により算出して、この車速推定プログラムを終了
する。またステップS172において、右前輪スリップフラ
グSFFRが零でないと判断された場合には、ステップS174
において、左前輪スリップフラグSFFLが零であるか否か
を判断し、左前輪スリップフラグSFFLが零であると判断
された場合には、ステップS175において、推定車速の値
Vnを式;Vn=VFLn×α3により算出して、この推定車速設
定プログラムを終了する。ステップS174において、左前
輪スリップフラグSFFLが零でないと判断された場合に
は、ステップS176において、右後輪スリップフラグSFRR
が零であるか否かを判断し、右後輪スリップフラグSFRR
が零であると判断された場合には、ステップS177におい
て、推定車速の値Vnを式;Vn=VRRn×α3により算出し
て、この車速推定プログラムを終了し、またステップS
176において、右後輪スリップフラグSFRRが零でないと
判断された場合には、ステップS178において、推定車速
の値Vnを式;Vn=VRLn×α3により算出して、この車速推
定プログラムを終了する。
一方、上記ステップS171において、スリップ車輪計数
カウンタSNの値が3つでないと判断された場合には、こ
の車速推定プログラムをそのまま終了する。
次に、第3図のフローチャートにおけるステップS105
で実行される制御態様設定用プログムは、例えば第7A図
に示されるように、制御動作スタート後、先ずステップ
S179において、後述する4輪スリップ制御フラグCF4が
定常状態であることをあらわす零であるか否かを判断
し、4輪スリップ制御フラグCF4が零であると判断され
た場合(YES)には、ステップS180において、スリップ
車輪計数カウンタSNが1であるか否かを判断する。そし
てスリップ車輪計数カウンタSNが1であると判断された
場合(YES)には、ステップS181において、ブレーキ制
御実行フラグEBFを1に設定するとともにスロットル制
御実行フラグETFを零に設定し、ステップS182におい
て、上述したスロットル制御用の目標スリップ率TGTRを
定数TG2に設定し、ステップS183において、ブレーキ制
御用の目標スリップ率TGBRを定数TG1に設定し、この制
御態様設定プログラムを終了する。
また、ステップS180において、スリップ車輪計数カウ
ンタSNが1でないと判断された場合には、ステップS184
において、スリップ車輪計数カウンタSNが2であるか否
かを判断し、スリップ車輪計数カウンタSNが2であると
判断された場合には、ステップS185において、右前輪ス
リップフラグSFFRが零であるか否かを判断する。そし
て、右前輪スリップフラグSFFRが零であると判断された
場合には、ステップS186において、左前輪スリップフラ
グSFFLが零であるか否かを判断し、左前輪スリップフラ
グSFFLが零であると判断された場合には、左後輪21L及
び右後輪21Rが路面に対する所定値以上のスリップを生
じているので、ステップS187においてブレーキ制御実行
フラグEBFを1(ブレーキ制御実行)に、また、スロッ
トル制御実行フラグETFを零に夫々設定してステップS
182に進み、ステップS182以降のプロセスを上述と同様
に順次実行して、この制御態様設定プログラムを終了す
る。
一方、ステップS186において、左前輪スリップフラグ
SFFLが零でないと判断された場合には、ステップS188
おいて左後輪スリップフラグSFRLが零であるか否かを判
断する。左後輪スリップフラグSFRLが零でないと判断さ
れた場合には、左前輪20L及び左後輪21Lが路面に対する
所定値以上のスリップを生じているので、ステップS189
において、目標スリップ率TGTRを設定値TG2に設定して
ステップS194に進む。また、ステップS185に於いて、右
前輪スリップフラグSFFRが零でないと判断された場合に
は、ステップS190において、右後輪スリップフラグSFRR
が零であるか否かを判断し、右後輪スリップフラグSFRR
が判断された場合には、ステップS191において、左前輪
スリップフラグSFFLが零であるか否かを判断し、左前輪
スリップフラグSFFLが零でないと判断された場合には、
左前輪20L及び右前輪20Rが路面に対する所定値以上のス
リップを生じていることになるので、ステップS192にお
いて、目標スリップ率TGTRを設定値TG3に設定してステ
ップS194に進む。さらに、ステップS190において、右後
輪スリップフラグSFRRが零でないと判断された場合に
は、右前輪20R及び右の後輪21Rが路面に対する所定値以
上のスリップを生じていることになるので、ステップS
193において、目標スリップ率TGTRを設定値TG2に設定し
てステップS194に進む。ステップS194においては、ブレ
ーキ制御実行フラグEBF及びスロットル制御実行フラグE
TFを共に1に設定し、続くステップS183において、目標
スリップ率TGBRを設定値TG1に設定して、この制御態様
設定プログラムを終了する。さらに、ステップS188にお
いて左後輪スリップフラグSFRLが零であると判断された
場合には、左前輪20L及び右後輪21Rが所定値以上のスリ
ップを生じており、また、ステップS191において左前輪
スリップフラグSFFLが零であると判断された場合には、
右前輪20R及び左後輪21Lが所定以上のスリップを生じて
いるので、該場合には、他方ステップS187に進み、ステ
ップS187以降の各プロセスを上述と同様に実行してこの
制御態様設定プログラムを終了する。
一方、ステップS184において、スリップ車輪計数カウ
ンタSNが2でないと判断された場合には、さらにステッ
プS196において、スリップ車輪計数カウンタSNが3であ
るか否かを判断し、スリップ車輪計数カウンタSNが3で
あると判断された場合には、ステップS197において、3
輪同時スリップ発生フラグCF3が零であるか否かを判断
する。3輪同時スリップ発生フラグCF3が零であると判
断された場合には、ステップS198において、同時にスリ
ップ計数カウンタSSNが3であるか否かを判断し、スリ
ップ計数カウンタSSNが3でないと判断された場合に
は、ステップS199において、目標スリップ率TGTRを設定
値TG2に設定するとともに、ブレーキ制御実行フラグEBF
及びスロットル制御実行フラグETFを共に1に設定し、
ステップS183において目標スリップ率TGBRを設定値TG1
に設定して、このプログラムを終了する。また、ステッ
プS197において3輪同時スリップ発生フラグCF3が零で
ないと判断された場合と、上記ステップS198において同
時にスリップ計数カウンタSSNが3であると判断された
場合とには、ステップS200において上記目標スリップ率
TGTRを設定値TG2に設定し、ブレーキ制御実行フラグEBF
及びスロットル制御実行フラグETFを共に1に設定する
とともに、3輪同時スリップ発生フラグCF3を1に設定
し、ステップS183を上述と同様に実行して、このプログ
ラムを終了する。
一方、ステップS196において、スリップ車輪計数カウ
ンタSNが3でないと判断された場合には、第7B図のステ
ップS201において、さらにスリップ車輪計数カウンタSN
が4であるか否かを判断し、スリップ車輪計数カウンタ
SNが4であると判断された場合には、そのままステップ
S202に進む。また、他方ステップS179において、4輪ス
リップ制御フラグCF4が零でないと判断された場合に
も、ステップS202に進み、ステップS202において、4輪
スリップ制御フラグCF4がスリップ収束状態をあらわす
2であるか否かを判断する。そして、4輪スリップ制御
フラグCF4が2でないと判断された場合には、ステップS
203において、4輪スリップ制御フラグCF4が定常状態を
あらわす零であるか否かを判断する。4輪スリップ制御
フラグCF4が零であると判断された定常状態の場合に
は、ステップS204において、目標スリップ率TGTRを零、
ブレーキ制御実行フラグEBFを零、スロットル制御実行
フラグFTFを1、4輪スリップ制御フラグCF4をスリップ
収束過程をあらわす1に設定してステップS205に進む。
一方、ステップS203において、4輪スリップ制御フラグ
CF4が零でないと判断された場合には、そのままステッ
プS205に進む。
ステップS205においては、先に述べたように周速度の
値VFLn,VFRn,VRLn及びVRRnを加算して4で割ることによ
り先ず周速度平均値VAVを算出する。続くステップS206
において、それらの総和偏差値εを上述の式;ε=(VF
Ln−VAV)2+(VFRn−VAV)2+(VRLn−VAV)2+(VRRn
−VAV)2により算出し、続くステップS207において該演
算された総和偏差値εが所定の値Za以下であるか否かを
判断し、総和偏差値εが値Za以下でないと判断された場
合には、そのままステップS183に進み、該ステップS183
の動作(TGBR←TG1)を上述ステップS182,S194
S199,S200の場合と同様に実行してこのプログラムを終
了する。他方へステップS207において、総和偏差値εが
設定値Za以下であると判断された場合には、ステップS
208において目標スリップ率TGTRを設定値TG1に、また、
4輪スリップ制御フラグCF4を2に設定し、内蔵タイマ
ーをスタートさせて経過時間Tの計測を開始する。そし
て、続くステップS210において経過時間Tが所定の時間
長Tx以上であるか否かを判断し、経過時間Tが時間長Tx
未満であると判断された場合には、ステップS183を上述
と同様に実行してこのプログラムを終了する。経過時間
Tが時間長Tx以上であると判断された場合には、ステッ
プS213において、ブレーキ制御実行フラグEBF、スロッ
トル制御実行フラグETF、3輪同時スリップ発生フラグC
F3、4輪スリップ制御フラグCF4、スリップ車輪計数カ
ウンタSNの各々を零に設定するとともに、上記内蔵タイ
マーをリセットし、ステップS183を上述と同様に実行し
た後このプログラムを終了する。また、上記ステップS
201において、スリップ車輪計数カウンタSNが4でない
と判断された場合にも、上記ステップS213及びステップ
S183を上述と同様に実行して元に戻る(リターン)。
一方、第3図に示されるフローチャートにおけるステ
ップS106における目標スリップ率補正用プログラムにお
いては、第8図に示される如く、制御動作スタート後、
ステップS215において、内蔵メモリからスリップ車輪計
数カウンタSNがあらわすスリップ車輪の個数SNの値に対
応する補正係数γを読出す。γはSN=0の時に大きな値
をとり、SNが大きくなるにつれて減る定数である。ステ
ップS216において、ステップS215で読み出された補正係
数γを目標スリップ率TGBRに乗じて新たな目標スリップ
率TGBRを設定し、また、ステップS217において、ステッ
プS215で読み出された補正係数γを目標スリップ率TGTR
に乗じて新たな目標スリップ率TGTRを設定して、このプ
ログラムを終了する。
さらに第3図のフローチャートにおけるステップS107
のスロットル制御用プログラムは、例えば第9図に示さ
れているように、制御動作スタート後、ステップS220
おいて上記スロットル制御実行フラグETFが零であるか
否かを判断し、スロットル制御実行フラグETFが零であ
ると判断された場合には、ステップS221において、通常
のスロットル開度制御用プログラムを実行してこのプロ
グラムを終了する。他方、ステップS220において、スロ
ットル制御実行フラグETFが零でないと判断された場合
には、ステップS222において、目標スリップ率TGTRが零
であるか否かを判断し、目標スリップ率TGTRが零である
と判断された場合には、ステップS224においてスロット
ル弁14を全閉にすべく、スロットル弁駆動信号Ctをスロ
ットルアクチュエータ13に送出して、この制御プログラ
ムを終了する。
また、ステップS222において、目標スリップ率TGTRが
零でないと判断された場合には、ステップS225におい
て、スロットル弁14の開度θtが、アクセルペダル66の
踏込量に応じて設定される通常の目標スロットル開度Tk
以下であるか否かを判断し、スロットル弁14の開度θt
が通常の目標スロットル開度Tkより大であると判断され
たNOの場合には、ステップS221において、通常スロット
ル開度制御用プログラムを実行してこのプログラムを終
了する。また、ステップS225において、スロットル弁14
の開度θtが通常の目標スロットル開度Tk以下であると
判断されたYESの場合には、ステップS226において、上
記推定車速の値(車体速)Vnを用いて左前輪20L、右前
輪20R、左後輪21L及び右後輪21Rのうちの路面に対する
所定値以上のスリップを生じているものの平均スリップ
率SAVを算出し、ステップS227において目標スリップ率T
GTRから当該平均スリップ率SAVを滅じることにより、そ
の差ΔSを算出する。そして、続くステップS228におい
て平均スリップ率SAVを目標スリップ率TGTRに一致させ
るべく、差ΔSに応じたスロットル弁駆動信号(フィー
ドバック制御信号)Ctを形成し、それをスロットルアク
チュエータ13に送出してこの制御プログラムを終了す
る。
さらに、また第3図のフローチャートにおけるステッ
プS108のブレーキ制御用プログラムは、例えば第10図の
フローチャートに示される如く、制御動作スタート後、
ステップS230において、ブレーキ制御実行フラグEBFが
零であるか否かを判断し、ブレーキ制御実行フラグEBF
が零であると判断された場合には、ステップS231におい
て、上述した駆動信号Ca〜Chの送出を停止して上述の各
ディスクブレーキ35A〜35Dを解放状態にした後、このプ
ログラムを終了する。他方、上記ステップS230におい
て、ブレーキ制御実行フラグEBFが零でないと判断され
た場合には、ステップS232において左前輪スリップフラ
グSFFLが零であるか否かを判断する。そして、左前輪ス
リップフラグSFFLが零でないと判断された場合には、ス
テップS233において、推定車速の値Vnを用いて左前輪20
Lの実際のスリップ率SFLを式;SFL=(VFLn−Vn)/VFLn
により算出し、続くステップS234において、実際のスリ
ップ率SFLと目標スリップ率TGBRとを一致させるべく、
実際のスリップ率SFLと目標スリップ率TGBRとの比較に
基づき駆動信号Ca及びCbを電磁開閉弁51及び52に選択的
に送出して、ステップS235に進む。また、ステップS232
において、左前輪スリップフラグSFFLが零であると判断
された場合にも、ステップS235に進む。ステップS235
おいては、右前輪スリップフラグSFFRが零であるか否か
を判断し、右前輪スリップフラグSFFRが零でないと判断
された場合には、ステップS236において、推定車速の値
Vnを用いて右前輪20Rの実際のスリップ率SFFRを式;SFR
=(VFRn−Vn)/VFRnにより算出し、続くステップS237
において、実際のスリップ率SFRと目標スリップ率TGBR
とを一致させるべく、実際のスリップ率SFRと目標スリ
ップ率TGBRとの比較に基づき駆動信号Cc及びCdを電磁開
閉弁53及び54に選択的に送出して、ステップS238に進
む。また、ステップS235において右前輪スリップフラグ
SFFRが零であると判断された場合にも、該ステップS238
に進む。このステップS238においては、左後輪スリップ
フラグSFRLが零であるか否かを判断し、左後輪スリップ
フラグSFRLが零でないと判断された場合には、ステップ
S239において、推定車速の値Vnを用いて左後輪21Lの実
際のスリップ率SRLを式;SRL=(VRLn−Vn)/VRLnにより
算出し、続くステップS240において、実際のスリップ率
SRLと目標スリップ率TGBRとを一致させるべく、実際の
スリップ率SRLと目標スリップ率TGBRとの比較に基づき
駆動信号Ce及びCfを電磁開閉弁55及び56に選択的に送出
して、ステップS241に進む。また、ステップS238におい
て、左後輪スリップフラグSFRLが零であると判断された
場合にも、ステップS241に進む。ステップS241において
は、右後輪スリップフラグSFRRが零であるか否かを判断
し、右後輪スリップフラグSFRRが零でないと判断された
場合には、ステップS242において、推定車速の値Vnを用
いて右後輪21Rの実際のスリップ率SRRを式;SRR=(VRRn
−Vn)/VRRnにより算出し、続くステップS243におい
て、実際のスリップ率SRRと目標スリップ率TGBRとを一
致させるべく、実際のスリップ率SRRと目標スリップ率T
GBRとの比較に基づき駆動信号Cg及びChを電磁開閉弁57
及び58に選択的に送出して、このプログラムを終了す
る。また、ステップS241において、右後輪スリップフラ
グSFRRが零であると判断された場合には、ステップS231
を上述と同様に実行してこのプログラムを終了する。
一方、この第1実施例のパワートレイン制御装置で
は、先の述べたコントロールユニット100の構成の説明
からも明らかなように上述したスリップ制御(トラクシ
ョン制御)に加え、さらにトルク配分制御(トルクスプ
リット制御)手段が同時に設けられており、必要に応じ
て上記スリップ制御システムと組合わせられるようにな
っている。
先ず最初に説明を判り易くするために、該トルク配分
制御システム単独の制御内容(基本プログラム)につい
て説明した上で、その後上述のスリップ制御と組合せた
制御内容(相関制御プログラム)について具体的に説明
することとする。
第11A図および第11B図のフローチャートは、該トルク
配分制御(トルクスプリット制御)の制御内容を示して
いる。
先ず制御スタート後、ステップS301では所定クロック
時間毎の計測タイミングの到来を判定し、該計測タイミ
ングが到来すると(YESになると)先に述べた車両の前
後方向加速度、横方向加速度、またエンジンのアクセル
開度、ブースト圧値、舵角等のパラメータを各センサか
らの信号に基づいて計測する(ステップS302)。
そして、次にステップS303で上記舵角θsが所定値θ
b以上である旋回中か否かを判定し、旋回中でないNOの
場合には、ステップS304でトルク配分の基本分配率、つ
まり前後車輪間の分配率KBを0.5に、また左右分配率Y
を0.5として前後左右の各車輪間で均等になるように設
定する。
一方、上記ステップS303の判定結果がYESで旋回中の
場合には、該旋回状態に対応してステップS305で前後分
配率KBを決定する。この前後分配率KBは、コーナ進入時
にはKB=0.7として後輪21L,21Rに対するトルク配分量を
大きくし、また旋回中はKB=0.5として前後を均等と
し、更にコーナ脱出時にはKB=0.3として前輪に対する
トルク配分量を大きく設定するようになっている。これ
は、旋回開始時には後輪側の駆動力を大きくして回頭性
を向上し、一方旋回終了時には前輪側の駆動力を大きく
して直進性を向上し、その結果、全体として良好な旋回
性能を得るようにするためである。
次に、この旋回中の左右車輪へのトルク配分はステッ
プS306で設定するようになっており、上記車両の横方向
加速度が大きくなるほど左右分配率Yが大きくなるよう
に決定される。そして、さらにステップS307で横方向加
速度DLが正(左旋回)か否かを判定し、その結果YESで
左旋回の場合には旋回フラグF1を1にセットし(ステッ
プS308)、NOで右旋回の場合には旋回フラグF1を0にリ
セットする(ステップS309)。
次に、ステップS310で前後方向加速度DFRに対応して
後輪分配率K0を決定し、車両の加速度が大きくなるほど
後輪21L,21Rへのトルク分配量を大きくする。そして、
この後輪分配率K0によって前記ステップS304またはS305
で設定して前後分配率KBを補正し(ステップS311)、後
輪への分配率KFを最終的に求める。そして、旋回の有無
に関係なく加速時には後輪に対するトルク配分量が大き
くなるように制御する。
また、ステップS312は、現在のエンジン発生トルクPs
の計算を行うものであり、エンジンのブースト圧値B、
スロットル開度TVOまたはアクセル開度ACCに基づいて求
める。その後、ステップS313で前後加速度DFRが0.5(等
分値)より小さいか否かを判定し、この判定がNOで0.5
以上で前輪より後輪側へのトルク配分量が大きい場合に
は、ステップS314で加速フラグF0を0にリセットし、他
方上記判定結果がYESで0.5未満で後輪より前輪側へのト
ルク分配量が大きい場合には、ステップS315で加速フラ
グFoを1にセットすると共に、ステップS316で前後分配
率kを1−kと0.5より大きな値に変換する。
続いて、第11B図のステップS317で上記前後分配率KF
および左右分配率Yを表現するために必要とする要求ト
ルクPrの計算を行う。この要求トルクPrの計算は、最も
トルク配分の大きな車輪に対する分配トルクPs×KF×Y
を4倍して求める。上記要求トルクPrがエンジンの最大
トルクPMAxより小さいか否かを判定し(ステップ
S318)、エンジントルクに余裕があるYES判定時には、
エンジントルクが前記要求トルクPrとなるようにスロッ
トル開度を増大制御する(ステップS319)。そして、ス
テップS320で上記加速フラグF0が1にセットされている
か否かを判定し、0にリセットされている加速時には後
輪側に荷重移動があることから、ステップS322で前輪側
のトルクを低減するべく左右前輪20L,20Rのディスクブ
レーキ35A,35Bで、それぞれ均等分配から前後トルク分
配の差の半分に相当するトルク分の制動を行うように前
輪20L,20R側に制動力を加える制御を行う。一方、上記
ステップS320がYESの判定で上記加速フラフF0が1にセ
ットされている場合には、前輪20L,20R側に荷重移動が
あることから、ステップS321で後輪21L,21R側のトルク
を低減するべく左右後輪21L,21Rのディスクブレーキ35
C,35Dでそれぞれ均等分配から前後トルク分配の差の半
分に相当するトルク分の制動を行うように後輪側に制動
力を加える制御を行う。
更に、ステップS323で上記旋回フラグF1がF1=1にセ
ットされているか否かを判定し、1にセットされている
左旋回時には右前後輪20R,21R側に荷重移動があること
から、ステップS24で左前後輪20L,21L側のトルクを低減
するべく左前後輪20L,21Lのディスクブレーキ35A,35Cで
それぞれ均等分配から左右トルク分配の差の半分に相当
するトルク分の制動を行うように左車輪側に制動力を加
える制御を行う。一方、ステップS323がNO判定で加速フ
ラグF1が0にリセットされている右旋回時には左前後輪
20L,21L側に荷重移動があることから、ステップS325
右前後輪側のトルクを低減するべく右前後輪20R,21Rの
ブレーキ35B,35Dでそれぞれ均等分配から左右トルク分
配の差の半分に相当するトルク分の制動を行うように右
車輪側に制動力を加える制御を行う。
また、一方上記ステップS318の判定結果がNOで、要求
トルクPrがエンジンの最大トルクPMAxより大きい場合に
は、ステップS326で左右配分を中止して左右分配率Yを
0.5とした時の要求トルクPrを計算し、この要求トルクP
rがエンジンの最大トルクPMAxより小さくなるか否かを
判定する(ステップS327)。そして、最大トルクPMAx
り小さくなったYES判定時には、エンジントルクが要求
トルクPrとなるようにスロットル開度を制御する(ステ
ップS328)。さらに、上記ステップS320〜S322と同様
に、ステップS329〜S331で前後分配率Yの大きさに対し
上記加速フラグF0の状態に応じて、加速時には前輪側に
制動力を加える制御を行う一方、減速時には後輪側に制
動力を加える制御を行う。
さらに、上記ステップS327の判定がNOで、左右配分を
中止しても要求トルクPrがエンジンの最大トルクPMAx
り大きい場合には、ステップS332で加速フラグF0が1に
セットされているか否かを判定し、0にリセットされて
いる加速時には、ステップS334でエンジントルクを最大
トルクPMAxとすると共に、トルク増加分の半分に相当す
るトルクの制動を行うように前輪側に制動力を加える制
御を行う。一方、加速フラグF0が1にセットさている減
速時には、ステップS333でエンジントルクを最大トルク
PMAxとすると共に、トルク増加分の半分に相当するトル
クの制動を行うように後輪側に制動力を加える制御を行
うようになっている。
上記トルク配分量の変更は、例えば前輪側と後輪側と
でそれぞれ50Kg・mの駆動トルクで走行しているとする
と、今変速機のギヤ比により車輪駆動力と等価となる様
に補正したエンジンの発生トルクPsは100Kg・mとな
る。ここで加速状態に対応して左右前輪に合計で30Kg・
mの制動トルクを作用させ、さらに、この制動トルクに
よって失われた駆動トルクを今エンジン出力の増大で補
うとすると、必要なエンジン出力トルクPrは130Kg・m
となる。これを前後に65Kg・mずつ等分配するため、最
終的な分配トルクは前輪が65−30=35Kg・mで後輪が65
Kg・mとなり、結局後輪のトルク分配率kは0.65とな
る。
〈第1実施例に対する修正〉 (スリップ制御に対する修正) なお、上述の第1実施例においては、スリップ車輪が
2個であるとき、そのスリップ車輪の組合せに応じて、
ブレーキ制御のみが行われる第1の制御態様と、ブレー
キ制御に加えてスロットル制御が行われる第2の制御態
様とが採られるとともに、第2の制御態様において、特
に、車両に対する走行安定性に影響を与え易い、左側も
しくは右側の前後輪あるいは左右の後輪がスリップ車輪
であるときと、それ以外の2個の車輪がスリップ車輪で
あるときとで、目標スリップ率が異なる制御態様がとら
れるようにシステム構成されているが、本願発明に係る
4輪駆動車のスリップ制御装置は必ずしもそのようにさ
れる必要はなく、例えば、ブレーキ制御とスロットル制
御における目標スリップ率が同一値に設定されたもと
で、当該ブレーキ制御とスロットル制御とが共に行われ
るようになされ、上記スリップ車輪に作用する駆動トル
クの低下分のうちの、ブレーキ制御によるものとスロッ
トル制御によるものとの比率が、2個のスリップ車輪の
組合わせに応じて異なるものとされた制御態様に従って
スリップ制御が行われるように構成されても良いことは
言うまでもない。
また、上述の実施例においては、所定値以上のスリッ
プ状態の検出がなされた特定の車輪についての具体的な
スリップ率値が算出され、その算出されたスリップ率を
設定された目標値に一致させるべく、特定の車輪に作用
する駆動トルクを変化させるようになされているが、本
願発明に係る4輪駆動車のスリップ制御装置は必ずしも
そのようにされる必要はなく、例えば、所定値レベル以
上のスリップ状態の検出がなされた特定の車輪の周速度
の値から推定車速の値が滅じられることにより、その特
定の車輪についてのスリップ量が算出され、該算出され
たスリップ量を目標値に一致させるべく特定の車輪に作
用する駆動トルクを変化させるように構成されてもよ
い。
さらに、また上述の実施例においては、スリップ制御
時におけるエンジンの出力トルクが、スロットル開度を
変化させることにより可変調整されるように構成されて
いるが、必ずしもそのように形成される必要はなく、例
えばスロットル開度に代えて空燃比、点火時期、排気還
流量、吸排気弁開閉時期、過給圧、及び、燃料噴射時期
等を変化させることにより、可変調整するように構成し
てもよいことはもちろんである。
さらにまた、上述の実施例では、当該パワートレイン
制御システムが常時4輪駆動状態をとるようにされたフ
ルタイム式の4輪駆動車に対して適用されているが、本
願発明は決して、それに限られるものではなく、例えば
4輪駆動状態と2輪駆動状態とが任意かつ選択的にとり
得るようにされた所謂パートタイム方式の4輪駆動車に
も適用できることも言うまでもない。
〈トルク配分方法の変形〉 なお、上記実施例の構成では、制動力を前後左右の各
輪で独立して変更可能となるように構成して各輪に対す
るトルク配分を変更可能としているが、前輪側と後輪側
とを独立に制動力を可変として前後輪側だけでトルク配
分を変えるようにしてもよく、また左右側だけでトルク
配分を変えるようにしてもよいことは言うまでもない。
〈第2実施例〉 概略 ところで、上述の第1実施例の制御によれば、駆動輪
のスリップ制御(トラクション制御)並びにトルク配分
制御(トルクスプリット制御)は、それぞれ、車両の走
行状態の安定性に大きく貢献し、操縦安定性、加速性能
の向上に寄与するものであるが、既に従来技術に関連し
て述べたように、これらの両制御が同時に作動した時に
は次のような、両制御間の干渉問題を招く場合がある。
本願発明者達は、この干渉問題を2つのタイプに類型化
し、夫々に対しその改善策としての制御上の工夫を第2
実施例において具体的に提案している。
第1の干渉問題は、スリップ制御中にトルクスプリッ
ト制御の必要に生じた場合に発生する。例えば、今摩擦
抵抗が低い道路での発進や旋回を想定する。第12A図に
示すように、かかる場合は、スリップ発生によるスリッ
プ制御と、車輪間における荷重の不均一分散によるトル
クスプリット制御とが同時に必要になり、さらに、スリ
ップ制御がなされている車輪に対して、トルクスプリッ
ト制御によるトルク増大が行われることがある。上記の
例で、発進時において後輪にスリップが発生すると、ス
リップ制御対象の後輪にトルクスプリット制御によりト
ルク増大が行なわれることになり、これでは、スリップ
状態の収束は困難となる。即ち、この場合、スリップ制
御とトルクスプリット制御との重畳制御は不都合を招く
ことを意味する。一方、発進時に前輪にスリップが発生
した場合は、前輪に対してスリップ制御を行なうとき
に、併せて、トルクスプリット制御により後輪へのトル
ク分配率を増大させることは、発進性を高めるのみなら
ず、もし、発進と併せて旋回も行なうのであれば、旋回
初期の回頭性を向上させる効果がある。また、トルクス
プリット制御による前輪トルクの減少は、スリップの早
期収束をもたらす。このように、同じ、積雪路等の低抵
抗路面での発進時でも、スリップの発生位置、更にはス
リップ車輪の数によっても、トルクスプリット制御によ
り、駆動力の配分量を増大させること自体が、運転性に
良い結果をもたらす場合と悪い影響をもたらす場合とが
ある。
そこで、この第2実施例では、上述のスリップ制御が
行なわれている車輪に印加されるトルクがトルクスプリ
ット制御により増加されないような特別の制御上の工夫
を凝らしている。この制御上の工夫の詳細は、以下に述
べる第15図の制御手順の説明により明らかになるであろ
う。
又該第2実施例では、制御上の更なる工夫が追加され
ている。即ち、第2の干渉問題として次のようなことが
考慮されなければならない。
この第2の干渉問題は、前記第1の干渉条件とは反対
に、トルクスプリット制御中にスリップ制御の必要性が
発生したときである。今、例えば路面抵抗の変化が大き
い道路での旋回動作を行なう状態を想定する。この場
合、第12B図に示すように、右旋回中に横方向加速度を
検知すると、荷重移動に伴うトルクスプリット制御が実
行され、エンジン出力トルクが適当に配分されて外側車
輪(FL,RL)に多目のトルクが配分される。このとき
に、路面が変化して、外側車輪である左後輪(RL)にス
リップが発生した場合、上記第1の干渉問題のところで
説明したように、スリップしている外側車輪である左後
輪RLに対するトルクスプリット制御によるトルク増加を
停止しなければならない。しかしながら、単純にトルク
スプリット制御を停止してしまうと、次のような不都合
が発生する。即ち、スリップしている車輪は全部の車輪
とは限らない。上記の例で、左後輪RLでスリップが発生
した瞬間は、トルクは外側車輪(FL,RL)に多く配分さ
れているので、内側車輪に付与されるトルクは小さい。
スリップが発生した外側車輪への付与トルクを減ずるた
めには、トルクスプリット制御を停止するのが容易であ
るのだが、もしトルクスプリット制御を停止したとする
とトルクが均等配分されるために、それまで少ないトル
クしか付与されていなかった内側車輪(FR,RR)には、
急激に過大なトルク上昇が起こり、その内側車輪(FR,R
R)に新たなスリップが発生する恐れがでてくる。ある
いは、たとえスリップが発生しなくとも、スリップして
いる旋回コーナーの外側車輪が車体に与える少ない回頭
力と、旋回するには多き過ぎるトルクが与えられている
内側車輪が車体に与える回頭力とにより、車両の旋回性
能が減少されてしまい、車体の挙動は不安定となる。
そこで、この第2の干渉状態が引き起こす不都合を回
避するために、この第2実施例では、次のような制御上
の工夫を凝らしている。即ち、トルクスプリット制御が
実行されているときに、車輪にスリップが発生してこの
トルクスプリット制御を停止せざるを得ない場合は、即
ちトルクスプリット制御を停止しないで、先ず、トルク
スプリット制御を停止するとしたら、付与トルクの急上
昇となるような車輪を検知し、そのような車輪に対して
はその車輪に実際にスリップが発生していようと、発生
していまいと、そのままスリップ制御を行なって、付与
トルクの急上昇を防止している。この第2の干渉状態を
回避するための制御手段は、後に第14図のフローチャー
トに関連して詳細に説明することにする。
(第2実施例のパワートレイン制御の詳細) 第13図から第19図までは、同第2実施例におけるパワ
ートレイン制御動作の詳細を示している。この第2実施
例の制御手順のうち、第13図はメインプログラムを図示
し、第14図〜第19図は同第2実施例の制御に使われる種
々のサブルーチンである。前述したように、トルクスプ
リット制御もスリップ制御も、直接の制御対象は、エン
ジン出力(即ち、上述のスロットル開度制御信号Ct)で
あり、また、各車輪のブレーキ制御(即ち、アクチュエ
ータ制御信号Ca〜Ch)である。尚、この第2の実施例に
係る制御において使われる各種信号等を以下の表(第2
表)にテーブルとして示す。
すなわち、先ず第13図のステップS400において、各種
入力信号の計測タイミングが到来しているか否かを判断
する。計測タイミング到来のYESの場合には、第2表に
示した各種入力信号を、夫々のセンサから読取る。さら
に、ステップS402、ステップS403で、夫々、これらの入
力信号に基づいて、スリップ判定と車体速度の推定を行
なう。ステップS401のスリップ状態の判定は、第1実施
例のそれと同じであるので、その制御手順として第1実
施例の第4図のフローチャートを採用する。そして、ス
テップS402により、各車輪のスリップ状態がフラグSFF
L,SFFR,SFRL,SFRRに、スリップした車輪の累計数がカウ
ンタSNに、同時に発生した車輪数がカウンタSSNに、夫
々格納される。また、ステップS403の車体速度Vnの推定
制御は第1実施例のそれと同じであるので、その制御手
順として第1実施例の第6A図、第6B図のフローチャート
を援用する。
(スリップ制御パラメータ設定) 次に、ステップS404で、本実施例のスリップ制御に使
われる各種パラメータの設定を行なう。このパラメータ
の設定動作は、スリップ状態フラグ(SFFL等)、スリッ
プ車輪係数カウンタSN等に基づいて、スリップ制御のた
めのブレーキ制御及びスロットル制御を行なうか否か
を、夫々、フラグEBF,ETFに設定し保持することと、目
標スリップ率(TGBR,TGTR)を設定することとを内容と
するものである。また、4輪スリップ状態の監視を行な
うもの、このステップS404の動作のひとつである。スリ
ップ制御に使われる各種パラメータの設定のための該ス
テップS404の手順の詳細は上述した第1実施例のそれと
同じであるので、その制御手順として上記第1実施例の
上述した第7A図、第7B図のフローチャートを援用する。
かくして、この制御パラメータ設定ルーチンにより、例
えば第2A図の制御テーブルに示した制御態様で、ブレー
キ制御実行フラグEBF、スロットル制御実行フラグETFの
状態や、スリップ制御のためのブレーキ制御における目
標スリップ率TGBRや、スリップ制御のためのスロットル
制御における目標スリップ率TGBR等が、スリップ車輪数
SN、同時スリップ車輪数SSN、スリップ車輪の位置(SFF
R等)に応じて設定される。
ところで、今4輪にスリップが発生した場合(SN=
4)のスリップ収束監視制御を先ず詳細に説明する。4
輪スリップが発生してから解消するまでの制御の各状態
は、例えばステータスカウンタCF4の値により追跡され
る。4輪スリップの発生当初は、このCF4=0であり、
その後CF4=1→2→0と変化する。
さて、4輪にスリップが発生した直後は、第7B図で、
ステップS201→ステップS202→ステップS203→ステップ
S204と進み、このステップS204で、ブレーキ制御を停止
させるために、EBF=0とする。また、スロットル制御
は行なうものの、スロットル弁を全開とするために、EF
T=1,TGTR=0とする。また、ステップS204では、4輪
スリップ状態を収束させるための制御が開始されたこと
を示すステータスがCF4=1として記憶される。
ステップS205では、平均車速VAVを次式から推定し、
ステップS206は4つの車輪の周速度(VFL,VFR,VRL,VR
R)のバラツキεを計算する。
このεが所定の閾値Za以下になったことが検出される
までは、制御手順は、ステップS201→ステップS202→ス
テップS203→ステップS205→ステップS206→ステップS2
07→ステップS183を繰り返し、その間は、 CF4=1,EBF=0,ETF=1,TGTR=0,TGBR=TG1 が維持される。
やがて、各車輪間のスリップが収束して、周速度のバ
ラツキεがZa(ε≦Za)になったとステップS207で検知
されると、ステップS208で、スロットル制御の目標スリ
ップ率TGTRをTG1に変更(TGTR=TG1)し、スロットルを
全開から若干開き傾向にする。また、期間Txのタイマを
スタートして、タイマがスタートされた旨を示すために
CF4を2に変更する。
このタイマがタイムアウトしたことをステップS210で
検知するまでは、制御手順は、ステップS201→ステップ
S202→ステップS210→ステップS183を繰り返し、その間
は、CF4=2,EBF=0,ETF=1,TGTR=TG1,TGBR=TG1 が維持される。
やがて、4輪スリップ状態が十分に収束するであろう
と前もって設定された時間Txが経過すると、ステップS2
13で、CF4,CF3,EBF,EFT,SN,SFFL,SFFR,SFRL,SFRR=2,E
BF=0,ETF=1と再設定する。
第13図の説明に戻る。ステップS405では、ステップS4
04で設定された目標スリップ率TGTR,TGBRが修正され
る。即ち、スリップ車輪数SNの値に応じて変化する係数
γが、TGBR,TGTRに掛けられることにより、 TGBR=TGBR×γ (ステップS216) TGTR=TGTR×γ (ステップS217) そのときのスリップ車輪数に適したスリップ率の目標値
に修正される。
(トルクスプリット制御用パラメータ設定) ステップS406のトルクスプリット制御用パラメータ設
定ルーチンの詳細は第14図に示されている。ステップS4
23では、現在旋回中か否かが舵過度信号θsから判断さ
れる。
旋回中でなければ、ステップS424で、後の2車輪への
基本トルク分配率KBを0.5に、右側の2車輪へのトルク
分配率Yを0.5に設定する。即ち、前後左右の車輪間で
トルク配分は均一となるように配分率が決定される。
一方、ステップS423で車両が旋回していると判断され
れば、ステップS425において、回頭性を要求される旋回
開始時には後輪トルクを増大させるために、基本トルク
分配率KBを0.5に、直進性を要求される旋回終了時には
前輪側の駆動力を高めるために基本トルク分配率KBを0.
3に設定する。このように、旋回の各段階において適切
な後輪トルク配分率を選択することにより旋回性能を高
める。
また、左右車輪間については、右側車輪へのトルク配
分率(絶対値)Yを、横方向加速度DLの絶対値|DL|に
応じて、加速度DLが大きくなればなるほど0.5よりも大
きな量に設定する。右側車輪へのトルク配分率Yを絶対
値としても、横方向加速度DLの符号に応じて右旋回か左
旋回かを、フラグF1に記憶しているので問題はない。即
ち、加速度DLが正となる左旋回の場合、即ち、右側車輪
の多くのトルクを配分しなければならない場合は、ステ
ップS428でフラグF1に“1"を、加速度DLが負となる右旋
回の場合、即ち、左車輪に多くのトルクを配分しなけれ
ばならない場合は、ステップS429でフラグF1に“0"をセ
ットする。
こうして、後輪への基本トルク配分率Kaおよび右車輪
へのトルク配分率Yが計算されると、ステップS430〜ス
テップS436において、後輪トルクの最終配分率KFを決定
する。即ちステップS430では、前後方向加速度DFRに応
じた補正係数Koを決定し、ステップS431で、最終分配率
KFを、 KF=(KB×Ko)/0.5 から計算する。分子0.5は、KFに対する補正Koによる寄
与を正規化するためである。このKFを0.5と比較するこ
とにより、車体が加速中かあるいは非加速中かを判断す
ることができる。ステップS432では、エンジンのブース
ト圧B、スロットル開度θtまたはアクセル開度θaに
基づいてエンジン発生トルクPsを求める。
ステップS433〜ステップS436は加速判定を行なう手順
である。ステップS433では、前後方向加速度の符号を調
べることにより、加速、減速の判定を行ない、非加速
(DFR>0)と判定されれば、非加速中であることを示
すためにステップS435でフラグFoをセットし、加速中
(DFR<0)と判定されれば、ステップS434で加速中で
あることを記憶するために、フラグFoをリセットする。
尚、第14図の制御手順で得られた後輪分配率KFと右車
輪分配率Yは必ずしも「正確」な呼称ではなく、現段階
では、KF,Yは、夫々、前輪分配率、左車輪分配率も含み
得る。それは、KF,Yを演算する際に、第14図のステップ
S430,ステップS426で夫々、前後方向の加速度DFRの絶対
値及び、横方向加速度DLの絶対値で補正定数Koや、Yを
決定しているからである。KF,Yが正確に後輪分配率、右
車輪分配率を反映するための修正は後述の第19図のステ
ップS500〜ステップS503で行なわれる。
かくして、トルクスプリット制御のための各種パラメ
ータ(後輪トルク分配率KF,右輪トルク分配率Y)が、
旋回中か否かの判断に応じて、または旋回初期か、旋回
最中か、旋回終了時かの判断に応じて、適切に決定され
る。
(スリップ制御,トルクスプリット制御) 次に、第13図のステップS407〜ステップS416に示され
た制御手順及び上記第15〜第19図で決定された各種制御
パラメータに基づいて、本第2実施例のスリップ制御、
トルクスプリット制御が、実際に行なわれる具体的な制
御過程について詳細に説明する。
前述したように、本願発明のトルクスプリット制御と
スリップ制御の夫々は、実施例レベルでは、エンジンの
トルク制御(スロットル制御)とブレーキ制御とからな
っている。トルクスプリット制御とスリップ制御のため
のエンジントルク制御は、第13図のステップS415で実行
され、ステップS415の詳細は第17図に示される。第17図
において、ステップS521〜ステップS526はトルクスプリ
ット制御のためのエンジントルク制御であり、ステップ
S527〜ステップS532はスリップ制御のためのエンジント
ルク制御である。一方、トルクスプリット制御とスリッ
プ制御のためのブレーキ制御は第13図のステップS416で
実行される。その詳細は第18図に示される。第18図にお
いて、ステップS480(その詳細は第19図に示される)が
トルクスプリット制御のためのブレーキ制御を、ステッ
プS481〜ステップS484がスリップ制御のためのブレーキ
制御を示している。そして、次の第3表が、上記各制御
間の相互の関係を示す。
第13図のステップS407〜ステップS414は、トルクスプ
リット制御とスリップ制御の各々のためのエンジントル
ク制御とブレーキ制御とで使用される各パラメータ(こ
れらのパラメータはステップS406以前で設定されてい
る)を、前述の2つの干渉状態の発生に適応させて修正
するための手順である。特に、第1の干渉状態に対処す
るための制御が主に第16図のフローチャートに、第2の
干渉状態に対処するための制御が主に第15図に示されて
いる。次の第4表と第5表は、夫々、上記2つの干渉状
態を、更に細かく場合分けして、その各々の場合に対す
る対処制御を簡単に記したものである。
更に、添付図面に従って、ステップS407〜ステップS4
16までを詳細に説明する。
先ず、ステップS407で、トルクスプリット制御の必要
があるか否かを判断する。これは、後輪トルク分配率KF
と右輪トルク分配率Yとが共に0.5であるか否かを判断
することにより認識できる。KF=Y=0.5と判断されれ
ば、ステップS415に進む。ステップS415はエンジントル
ク制御であり、その詳細は第17図に示される。
(トルクスプリット制御が不要な場合) ここで、トルクスプリット制御を行う必要がない場合
における第17図のエンジントルク制御について説明する
ことにより、同場合のエンジントルク制御について説明
する。先ず、第17図のステップS520において、スロット
ル制御実行フラグETFが0であるか否かを判定する。EFT
=0、つまりスリップ制御のためのスロットル制御を行
う必要がない場合について説明する。EFT=0の場合は
第2A図に示されているように、例えば、スリップ車輪数
が1つの場合である。かかる場合は、ステップS521に進
んで、先ず、ドライバの要求トルクPrを計算する。この
Prはアクセル開度θtやブースト圧B等に応じたエンジ
ン発生トルクである。次に、ステップS522で、トルク配
分判断を行うために必要トルクPsを計算する。
Pr=4・Ps・KF・Y トルクスプリット制御が行われないKF=Y=0.5の場合
は、Pr=Psである。
尚、第11図のフローチャートで既に説明したように、
現時点での、KF,Yは、夫々、後輪トルク分配率、右輪ト
ルク分配率そのものを表しているのではない。すなわ
ち、KFは、後輪トルク分配率と前輪トルク分配率に不均
一があれば、その大きいほうの分配率を意味する。Y
も、右輪分配率と左輪分配率との大きいほうの分配率を
意味する。したがって、実質的にトルクスプリット制御
が行われているとき(KF≠0.5,Y≠0.5のとき)の、Pr=
4・Ps・KF・Yは、トルクスプリット制御及びスリップ
制御を行うのに必要な最大トルクを意味するものであ
る。
次に、ステップS523で、エンジンに要求されるトルク
Prと当該エンジンの発生し得る最大トルクPMAxとの大小
を調べる。要求トルクPrがPMAX未満である場合(Pr<P
MAx)は、エンジンに余裕があるので、このPrに相当す
るトルクを発生するようなスロットル開度をステップS5
25で計算し、あるいは要求トルクPrがPMAx以上(Pr≧P
MAx)である場合は、エンジンはPMAx以上の出力は不可
能であるので、ステップS524でPrをPMAxに変更したうえ
で、このPMAxに相当するトルクを発生するようなスロッ
トル開度をステップS525で計算する。ステップS526で
は、この開度に相当する制御信号Ctをスロットルアクチ
ュエータ13に出力する。
次にステップS520でスリップ制御のためのエンジント
ルク制御が行われる場合(ETF=1)について説明す
る。かかる場合とは、例えば左右の前輪だけにスリップ
が発生した場合である。この場合は、ステップS527に進
み、目標スロットルスリップ率TGTRの値がゼロであるか
を調べる。ゼロである場合とは、第2A図に示すように、
4輪にスリップが発生した場合である。TGTRがゼロであ
れば、ステップS528でスロットル弁を全閉する。TGTRが
ゼロでなければ、ステップS530に進み、各車輪のスリッ
プ率の平均値SAVを計算する。例えば、左前輪と右前輪
とにスリップが発生している場合には、 SAV=1/2{(VFLn−Vn)/(VFLn+VFRn−Vn)/VFRn} で計算される。次に、この平均スリップ率SAVとスロッ
トル制御による目標スリップ率TGTRとの偏差ΔSをステ
ップS531で、 ΔS=TGTR−SAV から計算する。ステップS532において、このΔSに対応
するスロットル弁制御信号Ctをアクチュエータ13に出力
する。この制御信号Ctがアクチュエータ13に出力される
と、スロットル弁の開度がその信号Ctに見合って制御さ
れてエンジントルクが減少され、結果的に、車輪のスリ
ップ率が制御される。
以上がエンジントルク制御(第17図)の説明である。
即ち、ステップS521〜ステップS526はトルクスプリット
制御のためのエンジントルク制御であり、ステップS527
〜ステップS532はスリップ制御のためのエンジントルク
制御であった。
第13図のフローチャートの説明に戻る。ステップS415
のトルク制御を終了すると、ステップS416のブレーキ制
御を実行する。このブレーキ制御の詳細は第18図に示さ
れている。先ず、ステップS480で、各車輪についてのト
ルクスプリット制御のためのブレーキトルクTBST(TBST
FR,TBSTFL,TBSTRR,TBSTRL)の計算を行う。この計算ル
ーチンの詳細は第19図に示されている。
第19図のステップS500〜ステップS503の各手順は、各
車輪に加えられるべきトルクスプリット制御のためのブ
レーキ力(トルク)を、ステップS508において、以下の
式で定義することとしたために導入した。
TBSTFR=Ps/4−{Ps・(1−KF)・Y} TBSTFL=Ps/4−{Ps・(1−KF)・(1−Y)} TBSTRR=Ps/4−{Ps・KF・Y} TBSTRL=Ps/4−{Ps・KF・(1−Y)} 上記各式の右辺の第1項のPs/4は、ドライバが要求
(request)したエンジントルクPrの1つの車輪に平均
して分配されるとしたときのトルクである。また、第2
項は、第14図のパラメータKF,Yに応じて各車輪に分配さ
れるべきトルクの配分量である。第1項から第2項を差
し引くことにより、トルクスプリット制御のための各車
輪に対するブレーキ力TBSTが上式のように計算される。
しかしながら、第14図のKF,Y計算においては、KF,Yの
正の数として処理されている。例えば、コーナリング最
後のコーナ脱出時であれば、前輪にトルクを多く分配す
べきことを示すために、KFは0.5よりも小になるべきで
あるが、第14図のステップS430では、前後方向の加速度
DFRの絶対値で補正定数KFを決めているために、例え、
同状態であっても、KFは0.5よりも大きな値がステップS
432で計算されてしまう。右車輪分配率についても事情
は同じである。そこで、第19図のステップS500〜ステッ
プS503において、KF,Yが、加速状態において、また、旋
回方向において、夫々、正しく分配率を表現するように
修正する必要があるのである。
こうして修正されたトルク分配率に基づいて、ステッ
プS504以下の手順で、トルクスプリット制御のためのブ
レーキ力を決定する。
即ち、ステップS504において、先ず、現在の運転時に
おけるエンジンに要求されたトルクPrが当該エンジンの
発生し得る最大のトルクPMAxよりも小さいこと、つまり
トルクの増大制御が可能であることを確認する。Pr≧P
MAxの場合、つまりまだエンジン出力に余裕のある場合
にはステップS508に進んで、TBSTFR,TBSTFL,TBSTRR,TBS
TRLを計算する。
他方、ステップS501でPr>PMAxと判断された場合は、
ステップS505に進む。ここで、左右車輪間のトルク分配
比を均等にするために、分配率YをY=0.5に設定し
て、そのようにした時のエンジン要求トルクPr=2・Ps
・KFを演算する。その上で、さらにステップS506で再
び、左右分配比を等しくした状態でのエンジンに要求さ
れたトルクPrがエンジンの最大トルクPMAxよりも小さい
か否かを判定する。
もし、左右車輪へのトルク配分を等しくしても尚かつ
エンジンの要求トルクPrが最大トルクPMAxよりも小さく
ならないとのNO判定がステップS506で得られた場合に
は、ステップS507で、 KF={(PMAx−Ps)/(Pr−Ps)}・(KF−0.5)+
0.5で計算する。この式の意味するところは、分配率KF
は、KFの値を、エンジン要求トルクPrと発生トルクPsと
の差(Pr−Ps)と、最大トルクのPMAxとエンジンの発生
トルクPsとの差(PMAx−Ps)との比に基づいて、0.5だ
け縮減するものである。
第18図の説明に戻る。ステップS480でのブレーキ力の
計算が終了すると、ステップS481に進む。ステップS481
〜484では、スリップ制御のためのブレーキ力TBTR(TBT
RFL,TBTRFR,TBTRRL,TBTRRR)が計算される。次にステッ
プS481〜484の詳細説明を行う。
ステップS481で、スリップ制御のためのブレーキ制御
が行われるべきか否かが、フラグEBFの値に基づいて判
断される。ブレーキ制御を行わない(EBF=0)のとき
は、ステップS484で、TBTRFL=0,TBTRFR=0,TBTRRL=0,
TBTRRR=0 とされる。ブレーキ制御を行う(EBF=1)のときは、
ステップS482に進んで、補正値MBTRを演算する。即ち、
aを所定の定数とすると MBTRFL=a・(SFL−TGBR) MBTRFR=a・(SFR−TGBR) MBTRRL=a・(SRL−TGBR) MBTRRR=a・(SRR−TGBR) である。さらに、ステップS483でブレーキ力TBTRを更新
する。
TBTRFL=TBTRFL+MBTRFL TBTRFR=TBTRFR+MBTRFR TBTRRL=TBTRRL+MBTRRL TBTRRR=TBTRRR+MBTRRR こうして、スリップ制御のためのブレーキ力TBTRが計算
される。
続いて、ステップS485に進み、トルクスプリット制御
用のブレーキ力TBSTとスリップ制御用のブレーキ力TBTR
の何れが大きいかの比較を行う。TBST>TBTRの場合に
は、ステップS486でスリップ制御の方を優先して、各車
輪のブレーキ力が計算値TBTRとなるようにブレーキ制御
を行う。逆に、TBST>TBTRの場合には、反対にトルクス
プリット制御の方を優先して、各車輪のブレーキ力がTB
STとなるようにブレーキ制御を行う。
尚、ステップS485は各車輪について、TBSTとTBTRとの
大小関係が判断されることを示しており、その結果、異
なる車輪間でトルクスプリット制御のためのブレーキ制
御が行われつつ、同時に他方の車輪に対して、スリップ
制御のためのブレーキ制御が行われる場合もあり得る。
例えば右前輪に対して、 TBSTFR>TBTRFR が判断されて、この右前輪に対しては制御のためのブレ
ーキ制御が行われ、右後輪に対しては、 TBSTRR>TBTRRR が判断されて、この右後輪に対してはスリップ制御のた
めのブレーキ制御が行われる。
(トルクスプリット制御だけ実行されるとき) トルクスプリット制御だけが実行されるときは、スリ
ップ車輪数SNはゼロであり、またスリップ制御のための
ブレーキ制御及びトルク制御は行われないから、ETF=E
BF=0である。また、各車輪にかかる不均一な荷重分布
に適応して、KF≠0.5及び(または)Y≠0.5となってい
る。したがって、ステップS404,ステップS406で各種パ
ラメータが設定された後に、ステップS407に進んでくる
と、ここでNOの判断がなされる。次に、ステップS408
で、スリップ車輪数が増加しているかを調べるために、
SN>SNTの成立を判断する。ここで、SNTはスリップして
いる車輪数が増加しているときに、その数を一時的に対
比するためのレジスタである。ステップS409〜ステップ
S411は、第2の干渉状態の発生を検知するための手順で
ある。今は、スリップがないことを仮定しているから、
ステップS408ではNOの判断がなされて、ステップS409に
は進まないで、ステップS411ステップS412と進む。ま
た今はETF=0を仮定しているから、ステップS412でYES
の判断がなされる。そして、ステップS414のトルク配分
を中止すべきか否かの判定ルーチン(詳細は第16図参
照)が実行されている。
第16図の制御手段において、スリップ判定フラグ(SF
FR等)はゼロであるから、このサブルーチンでは実質的
に何も行わず、第13図のステップS415,ステップS416に
戻り、これらの手順を順に実行する。即ち、第17図をエ
ンジントルク制御では、ステップS521〜ステップS526が
実行され、第18図では、ステップS480でトルクスプリッ
ト制御のブレーキ力が計算される。一方、EBF=0のた
めに、ステップS484で、TBTR=0となるために、ステッ
プS487のトルクスプリット制御のためのブレーキ制御が
行われる。
(第2の干渉状態の発生する場合) 説明の便宜上、第2の干渉状態が発生した場合を先に
説明する。この第2の干渉状態は、第12B図に関連して
説明したように、トルクスプリット制御実行中に、スリ
ップ車輪の発生を検出した場合に、トルクスプリット制
御を直ちに停止した上でスリップ制御を実行しても構わ
ないかを判断する必要性が発生する事態を言う。
例として、第12B図に示すように、右旋回中に、外側
の左前輪と左後輪とにスリップが発生した場合を想定す
る。
かかる場合は、第13図のフローチャートのステップS4
02,ステップS404,ステップS406では、 SFFL=SFRL=1 SFFR=SFRR=0 SN=2 EBF=ETF=1 TGTR=TG2×γ TGBR=TG1 とパラメータが決定されているばずである。また、同じ
くステップS406(第14図)で、右旋回であることを示
す、例えばパラメータ KF=0.5、Y=0.3 F1=0 が設定されている。更に、トルクスプリット制御(ステ
ップS508;第19図)により、 TBSTFR=TBSTRR=0.1Ps TBSTFL=TBSTRL=−0.1Ps と計算されている。
次いで、トルクスプリット制御を行っているのである
から、ステップS407ではNOの判断がなされる。また、SN
>SNTであるから、ステップS408ではYESの判断がなされ
ている。ステップS409に進む。ステップS409では、SNT
の更新を行い、それから、ステップS410のスリップフラ
グの再設定ルーチン(第15図)を行う。
すなわち、SFFR=SFRR=0であるから、第15図のステ
ップS440〜ステップS451において、パラメータ設定変更
を受ける可能性のあるのは、2つの右車輪である。即
ち、右前輪については、ステップS440ステップS441と
進んで、 (1−KF)・Y=0.15 が計算されて、ステップS441の判断はYESとなる。そこ
で、ステップS442では、 SFFR=1, TBTRFR=TBSTFR=0.1Ps が実行される。このステップS442の意味するところは、
実際にはスリップしていない車輪をスリップしているも
のと見なして、トルクスプリット制御のために右前輪に
印加されるべきブレーキパワーTBSTFRを、スリップ制御
のために同車輪に加えられるべきブレーキパワーTBTRFR
と見なすことである。実際にスリップしていない右後輪
についても、ステップS447〜ステップS448で上記同様の
操作が施される。
かくして、トルクスプリット制御がなされているとき
に、いずれかの車輪でスピンが検出された場合には、先
ず、そのトルクスプリット制御により、エンジンの出力
の25%のトルクよりも少ないトルクが配分されているよ
うな車輪を探し、そのような車輪に対しては、前回の制
御サイクルで設定されたトルクスプリット制御のための
ブレーキTBSTを、スリップ制御のためのブレーキ力に変
更する。これが、ステップS410のスリップフラグ再設定
ルーチンの内容である。
ステップS410の演算を終了すると、次にステップS412
で、現在、スリップ制御のためのエンジントルク制御が
行われるべき(ETF=1)かを調べる。
現在説明している具体例では、スリップ制御のため
に、エンジントルク制御とブレーキ制御とが併存して行
われるべき(ETF=EBF=1)であるような、左前輪と左
後輪にスリップが発生しているような場合を想定してい
る。したがって、ETF=1であるために、制御はステッ
プS412からステップS413に進み、ここで、KF=Y=0.5
とすることにより、トルクスプリット制御は停止され
る。即ち、KF=Y=0.5により、ステップS508において
演算されるTBSTはゼロとなる。かくして、第5表に示し
てあるように、トルクスプリット制御中にスリップが発
生した場合を例にして説明する。第2A図の表から、スリ
ップが1つの車輪だけ発生したときは、スリップ制御に
関しては、ブレーキ制御のみが行われ(EBF=1)、エ
ンジントルク制御は行われない(ETF=0)。この場合
は、ステップS410(第15図)において、配分トルクが25
%未満の車輪は、その車輪がスリップしていようがいま
いが、スリップフラグ(SFFR等)がセットされると共
に、TBTR=TBSTとされて、スリップ制御対象輪には、ス
リップ制御のためのブレーキ制御とトルクスプリット制
御のためのブレーキ制御とのうち、大きなブレーキ力の
方のブレーキ制御(ステップS485;第18図)が行われ
る。ここで、第5表の「スリップ制御対象の車輪」と
は、最初にスリップの検出された車輪と、強制的にスリ
ップフラグがセットされた車輪とを言う。換言すれば、
トルクスプリット制御は継続する。この制御が第5表の
(a)の内容である。
次に第5表の(c)の意味するとことは以下のようで
ある。スリップ制御でエンジントルク制御が行われず
(ETF=0)、即ち、ブレーキ制御のみのときは、ステ
ップS414で第16図の制御が行われ、4輪のうちのいずれ
かの1つの車輪にスリップフラグがセットされていて、
かつ、その車輪に印加されるエンジントルクが全エンジ
ントルクの25%を超えたときは、トルクスプリット制御
が中止される。しかし、このように、第5表の(c)に
おいて、スリップ制御対象輪の1つにでも25%を超える
トルクを印加される車輪が存在してトルクスプリット制
御は中止されても、スリップ制御対象輪に対しては、前
述したように、 TBTR=前回のTBST とされ、一方、ステップS508では、TBTR=0とされるの
で、スリップ制御のためのブレーキ力は保持される。
(第1の干渉状態の発生) 第1の干渉状態とは、スリップが発生して、そのスリ
ップ車輪に対してスリップ制御が行われていて、そのと
きに、トルクスプリット制御が行われて、当該スリップ
車輪に対してトルクの増加制御が行われようとするとき
は、トルクスプリット制御を中止しようとするものであ
る。このトルクスプリット制御の停止には、第4表に示
すように、2つの態様((b)と(c))がある。
第4表の(b)の制御の例が第20B図に示されてい
る。スリップ制御がブレーキ制御だけで左前輪FLに行わ
れ(FTF=0)ていて、少なくともいずれか1つのスリ
ップ制御対象車輪(FL)に印加されるトルクが25%を超
える可能性があるときは、トルクスプリット制御が中止
されるものである。スリップ制御対象車輪はスリップし
ているか、またはスリップの恐れのある車輪であるの
で、これらの車輪に1つでも大きなトルクが印加される
恐れがある場合は、例え、エンジントルク制御が実行さ
れていない場合(ETF=0)であっても、トルクスプリ
ット制御を停止して、スリップ状態を早期に抑制しよう
いうものである。
尚、第20図において、スリップ制御対象輪であること
を示すために、車輪にハッチングを付した。尚、第20A
図、第20B図の左後輪RLは、第15図のスリップフラグ再
設定ルーチンで強制的にスリップ車輪とみなされたもの
である。
また、同表の(c)は第20C図に対応しており、スリ
ップ制御においてエンジントルク制御が実行されている
(ETF=1)ときは、トルクスプリット制御によるトル
ク配分比がどのようなものであっても、全面的にトルク
スプリット制御を停止する。第4表の(a)の制御は、
第20A図に対応する。スリップ制御中にトルクスプリッ
ト制御が必要になった場合において、そのままその要請
に応じてトルクスプリット制御が実行される場合を示
す。この場合は、全てのスリップ制御対象輪に印加され
るトルクが全て25%未満である場合である。第20A図の
例では、スリップ制御対象輪(FL,RL)に印加されるト
ルクが全て25%未満である。かかる場合は、新たなスリ
ップを発生させたり、またはそれまでのスリップを助長
したりする虞れがないので、トルクスプリット制御を実
行する。第4表の(a)の制御においては、スリップ制
御対象輪以外の車輪に25%を超えるトルクが印加されて
も、スリップの問題は発生することはないと考えられる
ので、要求通りにトルクスプリット制御を実行する。
尚、第4表には、(a),(b),(c)の各々の制
御が実行されるところのポイントとなるステップ番号を
記した。
また、トルクスプリット制御が実行される第4表の
(a)の制御態様においては、第15図の制御により、強
制的にスリップとみなされた車輪に対してはステップS4
42等で、 TBTR=TBST が設定される。この結果、この第4表(a)の強制態様
では、スリップ制御のためのブレーキ制御とトルクスプ
リット制御のためのブレーキ制御とが併存するが、第18
図のステップS485により、TBTRとTBSTのうち、ブレーキ
力の大きな方のブレーキ制御が採用される。
〈本願発明の変形例〉 本願発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々の変形が
可能であることは言うまでもない。
例えば、上記第1,第2の実施例では、トルク配分を制
御する手段として、ディスクブレーキ35A〜35Dの各々の
制動力を可変とする方法を採用したが、該手段として
は、それに限られるものではなく、例えば上述の前後各
デイフアレンシヤル機構25,27の左右出力軸の部分と各
プロペラシャフト24,26の部分に各々摩擦クラッチを設
け、それらの締結力を個別に制御することによってコン
トロールするようにしてもよいことはいうまでもない。
本願発明は更に変形が可能であり、その変形物、均等
物は本願発明の範囲内に含まれることは言うまでもな
く、本願発明の発明は勿論上記したクレームにより判断
されるべきである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本願発明の第1および第2の実施例に係るパ
ワートレイン制御装置の制御システムの全体的な構成を
示す制御系統図、第2A図、第2B図は、第1実施例のスリ
ップ制御のスリップ車輪数と制御内容を示す制御テーブ
ルおよび制御動作のタイムチャート、第3図は、同第1
図の実施例装置のスリップ制御(トラクション制御)シ
ステムのメインルーチンを示すフローチャート、第4図
は、同スリップ制御システムのスリップ判定動作を示す
サブルーチンのフローチャート、第5図は、同スリップ
制御システムのスリップ検出動作を示すサブルーチンの
フローチャート、第6A図,第6B図は、同スリップ制御の
車速推定動作を示すサブルーチンのフローチャート、第
7A図,第7B図は、同スリップ制御の制御態様設定動作を
示すサブルーチンのフローチャート、第8図は、同スリ
ップ制御の目標スリップ率補正動作を示すサブルーチン
のフローチャート、第9図は、同スリップ制御のスロッ
トル制御動作を示すサブルーチンのフローチャート、第
10図は、同スリップ制御のブレーキ制御動作を示すサブ
ルーチンのフローチャート、第11A図,第11B図は、上記
実施例装置のトルク配分制御(トルクスプリット制御)
システムのフローチャート、第12A図,第12B図は、第2
実施例が解決しようとする課題を説明する説明図、第13
図は本願発明の第2実施例の制御手順のメインフローチ
ャートの全体図、第14図は、同第2実施例におけるトル
クスプリット制御パラメータ設定サブルーチンのフロー
チャート、第15図は、同第2実施例におけるスリップフ
ラグ再設定のサブルーチンのフローチャート、第16図
は、同第2実施例におけるトルク配分中止判定サブルー
チンのフローチャート、第17図は、同第2実施例におけ
るエンジントルク制御サブルーチンのフローチャート、
第18図は、同第2実施例におけるブレーキ制御サブルー
チンのフローチャート、第19図は、同第2実施例におけ
るブレーキ力計算サブルーチンのフローチャート、第20
A図、第20B図、第20C図は、同第2実施例において、第
2の干渉状態を説明するための各説明図である。 10……車体 11……気筒 12……エンジン 13……スロットルアクチュエータ 14……スロットル弁 20L……左前輪 20R……右前輪 21L……左後輪 21R……右後輪 22……変速機 23……センターディファレンシャル機構 30……ブレーキコントロール部 35A〜35B……ディスクブレーキ 100……コントロールユニット
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−114523(JP,A) 特開 平1−141126(JP,A) 特開 平2−20432(JP,A) 特許2615806(JP,B2) 特許2615085(JP,B2) 特許2670284(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B60K 41/00 - 41/28 F02D 29/00 - 29/06 B60T 7/12 - 7/22 B60T 8/32 - 8/96 B60K 17/28 - 17/36 F02D 41/00 - 41/40

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンジン出力トルクの車輪への伝達を全体
    的に制御するパワートレイン制御装置において、エンジ
    ンからの出力トルクを、その分配量を可変制御しなが
    ら、夫々の車輪へ独立して配分するトルク配分制御手段
    と、車輪の各々のスリップ状態を検出すると共に、検出
    されたスリップ車輪のスリップ量を所定レベル以下にな
    るようにスリップ制御するスリップ制御手段と、このス
    リップ制御手段によりスリップ制御が行われている車輪
    に対して、更に上記トルク配分制御手段が作用したとき
    に、その車輪に配分されるトルクが増大されるか否かを
    判定するトルク判定手段と、このトルク判定手段の出力
    を受けて、上記スリップ制御対象車輪に配分されるトル
    クが増大されるときは、少なくとも、そのスリップ制御
    対象車輪に対する配分トルクを減少させるように上記ス
    リップ制御手段またはトルク配分制御手段を制御して、
    当該スリップ制御対象車輪への伝達トルクを抑制するト
    ルク抑制手段とを設けてなることを特徴とするパワート
    レイン制御装置。
  2. 【請求項2】エンジン出力トルクの車輪への伝達を全体
    的に制御するパワートレイン制御装置において、エンジ
    ンからの出力トルクを、その分配量を可変制御しなが
    ら、夫々の車輪へ独立して配分するトルク配分制御手段
    と、車輪のスリップ量を所定レベル以下になるようにス
    リップ制御するスリップ制御手段と、このスリップ制御
    手段により制御されるべきスリップ制御対象の車輪を検
    出する第1の検出手段と、この第1の検出手段の出力を
    受け、上記トルク配分制御手段が作動しているときに、
    上記スリップ制御手段により上記スリップ制御対象車輪
    に対してスリップ制御が行なわれようとしていることを
    検出する第2の検出手段と、この第2の検出手段の出力
    を受け、上記スリップ制御対象車輪に配分されようとす
    るトルクが所定の値以上になるか否かを判定するトルク
    判定手段と、このトルク判定手段の出力を受けて、上記
    スリップ制御対象車輪に伝達されるトルクが所定の値以
    上になるときは、当該スリップ制御対象車輪へのトルク
    の増加を抑制するトルク抑制手段とを設けてなることを
    特徴とするパワートレイン制御装置。
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