JP2899379B2 - 注射針にシリコーンオイルを塗布する方法およびそれに用いる装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明はハブとハブから突出したフロントエンドおよ
びハブ内で終端するバックエンドを有するカヌラとから
なる注射針のバックエンドにシリコーンオイル（以下、
単にシリコーンという）を塗布する方法および装置に関
する。

［従来の技術］ 注射針の一種として、たとえばノボ（Novo）社から発
売されているインシュリン針と呼ばれているもののよう
に、フロントエンドとバックエンドとの両端に刃先を有
するカヌラがハブに挿入されハブ内部に突出したバック
エンドがハブ内部で終端してなる特定の構造、形状を有
するもの（以下、特定の注射針という）がある。

一般に注射針の製造工程では、カヌラの滑りをよくし
て注射針の刺通抵抗を小さくするために、ハブに取付け
られたカヌラの刃先をシリコーンを揮発性の溶液で稀釈
した液（本明細書において、シリコーン液という）を入
れた槽に浸漬してカヌラにシリコーンを塗布することが
行われている。ところが、前述のごとき特定の注射針の
ばあい、バックエンドがハブ内で終端しておりハブから
突出していないために、通常の浸漬による塗布を行う
と、ハブにシリコーン液が付着してしまう。ハブにシリ
コーン液が付着することは、シリコーン液が無駄になる
ばかりでなく、次工程の治具が汚染される、ハブが注射
針を注射器に装着するときに手などで把持する部分であ
るため、手が汚れ、また手が滑って装着操作がしにくく
なる、などの問題があり、好ましくない。

そこで従来は、たとえばハブ内径よりも小さな寸法を
有する多孔質樹脂などにシリコーン液を含浸させ、それ
にバックエンドを突刺す方法などを用いてバックエンド
のシリコーン塗布を行ってきた。

しかし、そのようにシリコーン液含浸樹脂を用いる方
法では、シリコーン液中の希釈剤が蒸発してシリコーン
液組成が変化し、粘度が高くなりすぎるためにシリコー
ンオイルが塗布しにくくなるという欠点、カヌラから樹
脂に移動した汚れが再びカヌラに付着しやすいという欠
点、樹脂の微細片がカヌラに付着しやすいという欠点な
どを有する。

［発明が解決しようとする課題］ 本発明は特定の注射針のバックエンドに対する従来の
シリコーン塗布方法および装置の問題点に鑑みてなされ
たものであり、シリコーン液組成が実質的に変化せず、
カヌラへの異物の付着が生じないバックエンドへのシリ
コーン塗布方法および装置を提供することを目的とす
る。

［課題を解決するための手段］ 本発明はフロントエンドとバックエンドとの両端に刃
先を有するカヌラがハブに挿入されハブ内部に突出した
バックエンドがハブ内部で終端する注射針のバックエン
ドにシリコーンを塗布する方法であって、カヌラ外径よ
りも大きな内径とハブ内径よりも小さいな外径とを有す
る垂直な立上がり管の上端から、一定の流量でシリコー
ン液をオーバーフローさせながら、該立上がり管上端の
シリコーン液中にバックエンドを浸漬することを特徴と
する注射針にシリコーンを塗布する方法に関する。

さらに、前記方法においてはバックエンドを浸漬した
のち、フロントエンドからカヌラ内に気体を通し、カヌ
ラ内に残留したシリコーン液をバックエンドから噴出さ
せてもよい。

また、本発明はフロントエンドとバックエンドとの両
端に刃先を有するカヌラがハブに挿入されハブ内部に突
出したバックエンドがハブ内部で終端する注射針をハブ
のみに接触して取扱うハンドリングユニットと、カヌラ
外径よりも大きな内径とハブ内径よりも小さな外径とを
有し、水平な上部開口端を有する垂直な立上がり管と、
立上がり管の下部に接続されたシリコーン液を一定の流
量で供給するシリコーン液供給部とからなる、注射針に
シリコーンを塗布する装置に関する。

［作用］ 本発明の方法および装置においてはハブ内径よりも小
さな直径で一定な流量でシリコーン液がオーバーフロー
せしめられ、その中にバックエンドが浸漬されるので、
ハブ内面にシリコーン液が付着することなく、流動する
シリコーン液によってバックエンドにシリコーンオイル
が塗布される。また、流動するシリコーン液は更新され
るので、カヌラへの異物の付着が防止され、かつ、実質
的に粘度上昇などを生ずることなくつねに所定の組成の
シリコーン液によってシリコーンを塗布できる。

［実施例］ つぎに本発明の方法および装置を図面を参照してさら
に詳細に説明する。

第１図は本発明の装置を示す断面図、第２図は本発明
の装置の一配置例を示す側面図、第３図は第１組立治具
を示す斜視図、第４図は第２組立治具を示す斜視図であ
る。

第１図に示されるシリコーン塗布装置（３）はカヌラ
（11）外径よりも大きな内径とハブ（12）内径よりも小
さな外径とを有し、水平な上部開口端（33）を有する垂
直な立上がり管（31）と、立上がり管（31）の下部に接
続されシリコーン液を一定な流量で供給するシリコーン
液供給部（32）とからなっている。

さらに、第１図の例においては、ハブ（12）を支持す
るとともに、ハブ（12）へのシリコーン液の付着防止を
確実にする外筒（38）が設けられている。外筒（38）
は、ハブ（12）内径よりも小さな外径と立上り管（31）
外径よりも大きな内径を有しており、立上り管（31）よ
りも高い上端を有している。

シリコーン塗布に供せられる注射針（１）はフロント
エンド（13）とバックエンド（14）との両端に刃先を有
するカヌラ（11）がハブ（12）に挿入されハブ（12）内
部に突出したバックエンド（14）がハブ（12）内部で終
端する特定の注射針（１）である。

このように本発明の方法においては、カヌラ（11）外
径よりも大きな内径を有する垂直な立上がり管（31）の
上端から、ハブ（12）内径よりも小さな直径で一定な流
量でシリコーン液をオーバーフローさせ、該立上がり管
（31）上端のシリコーン液中にバックエンド（14）を浸
漬することによって注射針（１）のバックエンド（14）
にシリコーンが塗布される。

前記浸漬は、注射針（１）をハブ（12）のみに接触し
て取扱うハンドリングユニットによって行われる。

とくに好適な態様においては、注射針（１）は20〜50
本程度が一列に並べられて取扱われ、まとめて一度にバ
ックエンド（14）へのシリコーン塗布が施される。その
ばあいは、前記立上がり管（31）の数量も並列された注
射針（１）の本数に合わせて設けられる。

シリコーン液は、図示されていないシリコーン液供給
部より立上り管（31）下部に一定流量で供給される、シ
リコーン液供給部としては、プランジャポンプ、ダイヤ
フラムポンプなどの定容量型ポンプなどが用いられる
が、これに限定されるものではない。

シリコーン液供給量は、たとえば上部開口端が内径4m
m（中間部は3mmに絞ってある）、外径5mmの立上がり管
（31）のばあい、１本あたり10〜30ml/分で充分であ
り、通常20ml/分程度の値が採用される。これを立上が
り管の内径を基準とした流速で表わすと1.33〜3.98cm/s
ecである。

シリコーン液供給量が少なすぎると、シリコーン液の
更新が不充分になり、多すぎるとオーバフローさせたと
きにシリコーン液がハブ内面に付着するおそれがある。

なお、前述のごとく、多数の注射針（１）をまとめて
シリコーン塗布するばあいには、たとえばすべての立上
がり管（31）に１つのシリコーン液供給ユニットからシ
リコーン液を供給してもよい。

なお、前記シリコーン液の粘度としては20〜100cP程
度が好ましい。粘度が低すぎるとシリコーンの塗布が不
充分になるので好ましくなく、また、粘度が高すぎると
シリコーンが塗布しにくくなり、遂には粒子状にシリコ
ーンが付着するようになるので好ましくない。

本発明のバックエンド（14）へのシリコーン塗布法お
よび装置においては、バックエンド（14）にシリコーン
を塗布しながらオーバーフローしたシリコーン液を回収
し、必要に応じて組成調整、粘度調整、不純物除去など
を行ったのち再循環することもできる。

このように本発明の方法および装置においては、ハブ
内面には接触せず、バックエンド（14）を浸漬せしめる
ような適切な一定形状を形成しながら、シリコーン液が
オーバーフローせしめられる。したがって、組成や粘度
などがつねに適切な状態に維持され、不純物を含まない
シリコーン液によってバックエンド（14）に充分にシリ
コーンが塗布され、シリコーン不足や異物付着などが発
生しない。また、ハブ内面へのシリコーン液の付着は確
実に防止される。

第２図には組立治具の移し換えの途中にバックエンド
へのシリコーン塗布を行なう例が示されている。第２図
においては注射針（１）は図の右方の搬送路（６）上を
搬送せしめられる第１組立治具（５）上から、図の中央
のシリコーン塗布装置（３）に移送され、シリコーン塗
布後には図の左方にある搬送路（６）上の第２組立治具
（７）に移送される。

移送は、注射針（１）をハブのみに接触して取扱うハ
ンドリングユニット（39）によって行われる。

シリコーン塗布装置（３）は立上がり管（31）と図示
されていないシリコーン液供給部とを接続するシリコー
ン液チャンバー（35）および接続管（36）を有し、さら
に立上がり管（31）頂部からオーバーフローしたシリコ
ーン液を回収する集液部（37）と、ハブを支持し、か
つ、ハブへのシリコーン液付着防止を確実にする外筒
（38）とを有している。

前記第１組立治具（５）は第３図に示されているごと
く、特定の注射針（１）をハブ（12）にカヌラ（11）が
挿入された状態でフロントエンドを上にして複数個一列
に載置するものである。

１つの第１組立治具（５）上に載置される特定の注射
針（１）の数はまとめて一度にシリコーン塗布される本
数である。なお、第３図においてはわかりやすくするた
めに適宜省略されたり切取られたりしている。

第３図に断面が示されているように、第１組立治具
（５）はハブ支持部（51）と、カヌラ支持部（52）と、
環状バネからなる固定バネ（53）とを有しており、ハブ
（11）がハブ支持部（51）にかぶせられカヌラ（12）の
下端がカヌラ支持部（52）に当接した状態が、所定挿入
位置となるように寸法決めされている。

すなわち、上流の工程においては第１組立治具（５）
の前記特定の構造を利用して、カヌラ（11）とハブ（1
2）とが接合され、搬送路（６）に沿ってシリコーン塗
布装置（３）付近に搬送される。

一方、第４図に示されているように、前記第２組立治
具（７）は特定の注射針（１）のハブ（12）をカヌラ
（11）のフロントエンドが上になるように支持するもの
である。

１つの第２組立治具（７）は前記第１組立治具（５）
と同数の特定の注射針（１）を載置することができる。

第４図に断面が示されているように、第２組立治具
（７）は、内部に比較的大きな中空部を備えたハブ支持
部（71）を有している。

このような構造の治具に移し換えることにより、次工
程でフロントエンド（13）からカヌラ（11）内に気体を
通して残留シリコーン液をブローすることが容易にな
る。

本発明のシリコーン塗布方法および装置は、高度な自
動化を容易にするものであり、たとえば第２図に示され
るような配置を採用することにより、前工程としてのカ
ヌラとハブとの接合工程および後工程としての残留シリ
コーン液除去工程や検査工程のあいだに、全体工程の能
率の低下を伴うことなく位置せしめることができる。

［発明の効果］ 本発明のバックエンドへのシリコーン塗布方法および
装置は、前記特定の注射針に対して、ハブへのシリコー
ン液の付着を防止しながら、異物付着などのない充分な
シリコーン塗布を達成し、かつ、高度な自動化を容易に
するという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の装置を示す断面図、第２図は本発明の
装置の一配置例を示す側面図、第３図は第１組立治具を
示す部分切取斜視図、第４図は第２組立治具を示す部分
切取斜視図である。 （図面の主要符号） （１）：注射針 （11）：カヌラ （12）：ハブ （13）：フロントエンド （14）：バックエンド （３）：シリコーンオイル塗布装置 （31）：立上がり管 （32）：シリコーン液供給部 （39）：ハンドリングユニット

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A61M 5/178 - 5/52 B05D 1/18

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】フロントエンドとバックエンドとの両端に
   刃先を有するカヌラがハブに挿入されハブ内部に突出し
   たバックエンドがハブ内部で終端する注射針のバックエ
   ンドにシリコーンオイルを塗布する方法であって、カヌ
   ラ外径よりも大きな内径とハブ内径よりも小さな外径と
   を有する垂直な立上がり管の上端から、一定の流量でシ
   リコーン液をオーバーフローさせながら、該立上がり管
   上端のシリコーン液中にバックエンドを浸漬することを
   特徴とする注射針にシリコーンオイルを塗布する方法。
2. 【請求項２】フロントエンドとバックエンドとの両端に
   刃先を有するカヌラがハブに挿入されハブ内部に突出し
   たバックエンドがハブ内部で終端する注射針をハブのみ
   に接触して取扱うハンドリングユニットと、 カヌラ外径よりも大きな内径とハブ内径よりも小さな外
   径とを有し、水平な上部開口端を有する垂直な立上がり
   管と、 立上がり管の下部に接続されシリコーン液を一定の流量
   で供給するシリコーン液供給部とからなる、注射針にシ
   リコーンオイルを塗布する装置。