JP2879078B2 - 化合物半導体結晶の製造方法及びそれに用いるルツボ - Google Patents

化合物半導体結晶の製造方法及びそれに用いるルツボ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化合物半導体などの結
晶の製造技術に関し、特にルツボ内に入れた原料融液に
種結晶を接触させて長尺の結晶を育成するのに利用して
好適な化合物半導体結晶の製造方法及びそれに用いるル
ツボに関する。
【0002】
【従来の技術】InPやGaAsなどのIII−V族化合物
半導体の単結晶を製造する主要な方法として、例えば原
料と封止剤をルツボ内で溶融させ、その原料融液表面に
種結晶を接触させて徐々に引き上げることにより単結晶
を育成するLEC(液体封止チョクラルスキー)法が知
られている。このLEC法においては、従来石英製や熱
分解窒化硼素(以下、「pBN」とする。)製のルツボ
を用いていたが、夫々以下のような欠点があった。即
ち、石英製のルツボにおいては、石英が原料融液中のV
族元素と反応してシリコンや酸素を生じ、例えばInP
結晶中に欠陥を発生させることがあったり、高抵抗のG
aAs結晶の製造が困難であったりした。一方、pBN
製のルツボは原料融液と反応しないため、上述した欠点
は解消される代わりに、双晶の発生頻度が増加したり多
結晶化し易かったりして、長尺の単結晶を育成させるこ
とが困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は上述した
pBN製のルツボにおける欠点を解消すべくその原因の
検討を行った。一般に結晶の引上げ装置においてはルツ
ボの側板部に対向してヒータが配置されているため、ヒ
ータから発せられた熱はルツボの側板部を介して原料融
液中に流入し、融液中を伝播して融液表面からの熱放射
及び融液中央の成長結晶を介した熱伝導により融液外に
流出する。この様な熱流により原料融液中に温度勾配が
生じる。
【0004】所望の温度勾配においては上述した熱流に
よって、図1に示すように、ルツボ1内における結晶2
の成長界面、即ち固液界面は、その中央部が融液3側に
膨出したような凸形状となり、この場合に長尺の単結晶
を成長させ易くなる。この際、温度勾配を所望の勾配よ
りも大きくすると、育成した単結晶の内部に大きな熱応
力が生じて多数の転位が発生することがわかった。即
ち、育成した結晶中の転位密度を低減させるには温度勾
配を小さくするのが望ましいことがわかった。
【0005】しかし、温度勾配を所望の勾配よりも小さ
くし融液3の成長界面近傍における温度勾配が過度に小
さくなると、図2に示すように、結晶2の成長界面の形
状は平坦となる。この状態では、成長界面近傍での融液
3中の温度分布は不安定となり、しかもそのバランスが
崩れ易いことがわかった。それによって界面における結
晶2の成長速度にバラツキが生じ、図3に示すように結
晶2の成長界面が融液3に対して凹形状をなす低成長速
度領域4が生じ易くなることがわかった。
【0006】ところで、熱応力等により単結晶中に発生
した転位は、高温で熱応力が作用している状態において
は移動や増殖を起こして、網目状の高転位密度領域、即
ちリネージを形成し易い。このリネージは、結晶の育成
が進んで長尺となるに連れて密になり、成長界面に向か
って移動する。そして、移動したリネージは上述した低
成長速度領域4において成長界面に達して結晶境界を形
成し、以後育成される結晶は多結晶部分を含むようにな
ることがわかった。
【0007】また、図3に示す状態においては、結晶成
長方向に垂直な方向の温度勾配も小さくなるので、成長
界面の外周近傍における温度分布が不安定となり、結晶
2の外周における成長速度にバラツキが生じることがわ
かった。そして、その成長速度のバラツキによって、育
成される結晶2の直径に変動が生じ易くなり、その変動
が特定の条件と重なった時に双晶境界が発生して、育成
された結晶2中に双晶部分が生じることがわかった。
【0008】つまり、低転位密度の単結晶を歩留りよく
製造するために、ヒータの温度等を制御して融液3の成
長界面近傍における結晶成長方向の温度勾配を過度に小
さくすると、逆に双晶の発生や多結晶化を招き歩留りが
悪くなる。特に、長尺の結晶を成長させる場合に、ルツ
ボ1内の融液3の残量が少なくなるほど、融液3中の温
度分布に変動が生じ易くなる。そして、上述した双晶や
多結晶を生じ易くなるので、低転位密度で長尺の単結晶
を歩留りよく製造するのは極めて困難であることがわか
った。本発明は、上記問題点を解決するためになされた
もので、低転位密度で長尺の単結晶を歩留りよく製造す
ることのできる化合物半導体結晶の製造方法及びそれに
用いるルツボを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者等はルツボの熱伝導率に異方性をもたせる
ことにより、原料融液の成長界面近傍における結晶成長
方向の温度勾配を大き過ぎずまた小さ過ぎず適度に保つ
ことができると考え、(1)原料融液内における結晶成長方向の温度勾配が所
望の勾配よりも大きくなり得る場合には、底板部におけ
る結晶成長方向に垂直な方向の熱伝導率が極めて大き
く、温度勾配が大きくなり過ぎるのを緩和可能なルツボ
を用い、 (2)温度勾配が所望の勾配よりも小さくなり得る場合
には、温度勾配が小さくなり過ぎるのを緩和可能なルツ
ボを用いるという新規な概念に基づき、次のような構成
のルツボを提案する。 即ち、原料を入れ、当該原料を加
熱して溶融させ、その原料融液に種結晶を接触させるこ
とにより化合物半導体結晶を育成する化合物半導体結晶
の製造方法に用いられるルツボであって、該ルツボは、
底壁部と側壁部とによって器状に形成され、その底壁部
は、ルツボの内側にする第一層とその外側に位置する
第二層とからなる少なくとも2層以上の積層構造を有
し、前記第二層における結晶成長方向の熱伝導率は、前
記第一層における結晶成長方向の熱伝導率よりも小さ
く、且つ前記第二層における結晶成長方向に垂直な方向
の熱伝導率は前記第一層における結晶成長方向に垂直な
方向の熱伝導率よりも大きい熱伝導特性を有し、前記側
壁部は、その厚さ方向よりもそれに垂直な方向の熱伝導
率の方が大きい熱伝導特性を有するようにした。なお、
前記第一層は熱分解窒化硼素よりなり、前記第二層は熱
分解グラファイトよりなるようにすることができる。ま
た、前記底壁部は、前記第二層の外側には第三層が設け
られて、第一層と第三層とにより第二層が挟持されたサ
ンドイッチ構造とされ、前記第一層と前記第三層は熱分
解窒化硼素から、前記第二層は熱分解グラファイトから
なるようにしてもよい。また、前記側壁部は、熱分解窒
化硼素の積層体で形成されるようにしてもよい。 さら
に、他の発明に係る別種のルツボは、原料を入れ、当該
原料を加熱して溶融させ、その原料融液に種結晶を接触
させることにより化合物半導体結晶を育成する化合物半
導体結晶の製造方法に用いられるルツボであって、該ル
ツボは、底壁部と側壁部とによって器状に形成され、前
記底壁部及び前記側壁部には、各部の厚さ方向に垂直な
方向における熱流の経路長を長くするような凹凸が形成
されるようにしたものである。なお、前記底壁部及び前
記側壁部は、層構造を有する熱分解窒化硼素の積層体で
形成されるようにしてもよい。また、他の発明に係る化
合物半導体結晶の製造方法は、ルツボ内に原料を入れ、
そのルツボをヒータで加熱して前記原料を溶融させ、そ
の原料融液に種結晶を接触させることにより化合物半導
体結晶を育成する化合物半導体結晶の製造方法におい
て、前記原料融液内における結晶成長方向の温度勾配が
所望の温度勾配よりも大きくなる場合と、前記温度勾配
が所望の温度勾配よりも小さくなる場合とで前記2種類
のルツボを使い分けるようにしたものである。これによ
り、大きい温度勾配の条件下において結晶を育成する場
合には原料融液中の温度勾配が大きくなり過ぎるのを防
ぎ、また温度勾配が小さい条件下においては融液中の温
度勾配が小さくなり過ぎるのを防ぐことができるので、
低転位密度の単結晶、特に長尺の単結晶を歩留りよく製
造することができる。
【0010】具体的には、ヒータ等の温度設定により上
記(1)の場合、即ち温度勾配が図4に示す(イ)線の
ように大きい場合には、図5に一例として示すようなル
ツボ100を用いる。このルツボ100においては、底
板部101が等しい厚さを有する三つの層からなる三層
構造になっており、上から順に第1層102はpBN、
第2層103はpG(熱分解グラファイト)、第3層1
04はpBNよりなる。pBN及びpGは層構造を有
し、何れも熱伝導率に異方性を有しており、その厚さ方
向(図5におけるc1方向)よりもそれに垂直な方向
(図5におけるa1方向)の熱伝導率の方が大きい。し
かも、pGはpBNに比べてより異方性が強く、c1
向の熱伝導率に付いてはpGはpBNよりも小さく、a
1方向の熱伝導率に付いてはpGはpBNよりも大き
い。
【0011】ルツボ100の側板部105は上記図5に
示す例ではpBNの積層体からなり、その厚さ方向(図
5におけるc2方向)よりもそれに垂直な方向(図5に
おけるa2方向)の熱伝導率の方が大きい。以上のよう
に構成されたルツボ100の底板部101及び側板部1
05の室温における熱伝導率の測定値を表1に示す。同
表より、底板部101におけるa1方向の熱伝導率が、
図8に示すようなpBNのみの積層体からなる従来のル
ツボに比べて格段と大きくなっているのがわかる。
【表1】
【0012】なお、第2層103はpGに限らず、第1
層102の材質よりもa1方向の熱伝導率が大きければ
如何なる材質であってもよい。また、第1層102及び
第2層103の材質もpBNに限らず、第1層102に
付いては成長温度において原料融液と反応せず且つ融液
及び結晶を汚染しなければ如何なる材質でもよく、第3
層104に付いては耐熱性に優れ且つ結晶を汚染しなけ
れば如何なる材質でもよい。一般にルツボ100の底板
部101及び側板部105は略等しい厚さとされる。
【0013】また、上記(2)の場合、即ち温度勾配が
図4に示す(ロ)線のように小さい場合には、図6に一
例として示すようなルツボ110を用いる。このルツボ
110は、特に限定しないが、例えば層構造を有するp
BNの積層体(図6においては例えば3層構造となって
いる。)により形成されており、底板部111及び側板
部115には微細な凹凸が形成されている。即ち、それ
ら板部111,115を形成するPBNの各層は、前記
凹凸により微細に曲がりくねった形状をなしており、そ
れら板部111,115の各厚さ方向に垂直な方向(図
6におけるa3方向及びa4方向)における熱流の経路長
が図8に示すルツボ(pBNを平坦に積層させた従来の
ルツボ)の対応箇所における熱流の経路長よりも長くな
っている。通常、図6に一例を示すルツボ110は、表
面に凹凸を設けた型台を用い、その型台上に均一な厚さ
でPBNを積層させて製造されたものである。
【0014】つまり、このルツボ110においては、a
3方向及びa4方向の熱伝導率は図8に示すルツボにおけ
る対応する方向の熱伝導率よりも小さくなっている。逆
に、底板部111及び側板部115の厚さ方向(図6に
おけるc3方向及びc4方向)の熱伝導率は図8に示すル
ツボにおける対応する方向の熱伝導率よりも大きくなっ
ている。以上のように構成されたルツボ110の底板部
111及び側板部115の室温における熱伝導率の測定
値を表2に示す。
【表2】
【0015】なお、図4において縦軸は原料融液、液体
封止剤(B23)及び高圧封入ガス(N2)における位
置を表す軸であり、上へいくほどルツボの底から遠ざか
る。また横軸は温度を表す軸であり、右へいくほど高温
となる。
【0016】
【作用】上述したルツボ100によれば、底板部101
におけるa1方向の熱伝導率が従来のルツボ(図8参
照)に比べて格段と大きいため、従来のルツボよりもヒ
ータから放散(供給)される熱が底板部101の中央部
に伝わり易く、原料融液中におけるa1方向の温度差、
即ち勾配が小さくなる。また、底板部101が従来のル
ツボの底板部よりも高温となるので、原料融液中におけ
るa2方向、即ち結晶成長方向の温度勾配が小さくな
る。従って、図4の(イ)線のように温度勾配が大きく
双晶や多結晶を生じ難い条件下において結晶を育成する
場合にこのルツボ100を用いることにより、融液中の
温度勾配が大きくなり過ぎるのを防ぐことができるだけ
でなく、さらに固液界面の形状を図1に示した形状(融
液に対して凸な形状)から図2に示した形状(融液に対
して平坦な形状)に適度に近づけることができる。従っ
て、双晶や多結晶部分を含まない低転位密度の単結晶を
成長させることができる。
【0017】また、上述したルツボ110によれば、底
板部111におけるa3方向及び側板部115における
4方向の熱伝導率が従来のルツボ(図8参照)よりも
小さく、且つ底板部111におけるc3方向及び側板部
115におけるc4方向の熱伝導率が従来のルツボより
も大きいため、従来のルツボよりもヒータから放散され
る熱が底板部111の中央部に伝わり難く、従って原料
融液中におけるa3方向の温度勾配が大きくなる。ま
た、熱流が側板部115のa4方向に伝わり難いので、
原料融液中における結晶成長方向(a4方向)の温度勾
配が大きくなる。従って、図4の(ロ)線のように温度
勾配が小さく熱応力による転位の発生を低減させ易い条
件下において結晶を育成する場合にこのルツボ110を
用いることにより、融液中の温度勾配が小さくなり過ぎ
るのを防いで固液界面の形状を図1に示した形状(融液
に対して凸な形状)に適度に近づけることができる。従
って、低転位密度で双晶や多結晶部分を含まない単結晶
を成長させることができる。
【0018】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明
に係る化合物半導体結晶の製造方法の特徴とするところ
を明らかにする。実施例及び比較例においては、ルツボ
内に原料を入れ、該ルツボをヒータで加熱して前記原料
を溶融させ、その原料融液に種結晶を接触させて徐々に
引き上げることにより結晶を育成する液体封止チョクラ
ルスキー(LEC)法により硫黄(S)をドープしたI
nP単結晶を育成した。
【0019】(実施例1)ヒータの温度を制御して、図
4の(イ)線のように、液体封止剤中で結晶成長方向に
比較的大きな温度勾配を持つようにし、図5に示すルツ
ボ100を用いて直径2インチで長さ100〜120mm
程度の結晶を育成した。なお、V族元素、即ちPの解離
を低減するために液体封止剤としてB23を用い、アル
ゴン(Ar)ガスや窒素(N2)ガスを高圧で封入して
育成を行った。 (比較例1〜2)比較例1においては従来の石英製ルツ
ボを用い、また比較例2においては図8に示す平坦なp
BNの積層体よりなる従来のルツボを用いて、夫々上記
実施例1と同一の条件において結晶の育成を行った。な
お、石英製ルツボと従来のpBN製ルツボの熱伝導率を
表1に示す。なお、前記実施例1にて用いたルツボ10
0と比較例1ならびに2に用いたルツボとは、その外形
形状及び厚さは等しいものであった。
【0020】以上の実施例1、比較例1及び比較例2で
得られた単結晶から薄板状の基板(ウェハ)を夫々切り
出した。それら各基板の結晶中における硫黄濃度と基板
中心部の無転位領域の面積との関係を図7に示す。同図
において、実施例1は○印で、比較例1は△印で、比較
例2は□印で夫々示した。同図からわかるように、硫黄
の濃度が7×1018cm-3(実施例1の結晶より得られた
基板において測定した上限値である。)以下の範囲にお
いて、比較例1,2に較べて実施例1の方が無転位領域
の面積が大きくなっている。即ち、比較例1,2で得ら
れた結晶よりも実施例1で得られた結晶が優れているこ
とがわかる。特に、実施例1で得られた結晶は、硫黄の
濃度が5×1018cm-3以下の範囲において、比較例1,
2よりも格段に優れていることがわかる。
【0021】また、単結晶が得られる比率、即ち単結晶
化率は、何れも90%以上であり、上記実施例及び比較
例に差は殆ど認められなかった。実施例1において用い
たルツボ100の底部の径方向(結晶成長方向に垂直な
方向)の熱伝導は比較例2に用いたルツボと比較し、格
段に大きくなっている。そのため、実施例1においてル
ツボ100の底部における径方向の温度勾配は低減さ
れ、それに伴って原料融液中の径方向の温度勾配も低減
されている。更には、原料融液中の径方向の温度勾配が
低減されることにより、育成されている結晶中の径方向
の温度勾配が小さくなる。実施例1で得られた結晶にお
ける無転位領域面積の拡大は、その育成中、結晶の径方
向の温度勾配が小さく、熱応力に起因する転位の発生が
抑えられていたことに起因している。一方、実施例1に
おいて用いたルツボ100の側板部105の熱伝導は比
較例2に用いたルツボと差異はない。従って、少なくと
も、ルツボ底部の影響を受けにくい原料融液の上端に位
置する液体封止剤中の結晶成長方向の温度勾配は比較例
2と同程度、或いは比較例2より小さいとしても僅かに
小さい程度であり、双晶や多結晶が発生するほどには、
結晶成長方向の温度勾配は低下していないことがわか
る。
【0022】(実施例2)ヒータの温度を制御するとと
もに保温用のフードを設けるなどして、図4の(ロ)線
のように、液体封止剤中で結晶成長方向に比較的小さな
温度勾配を持つようにし、図6に示すルツボ110を用
いて結晶の育成を行った。その他の条件は上記実施例1
と同じであった。なお、実施例2において用いたルツボ
110の外形形状及び厚さは前記実施例1で用いたルツ
ボ100と同じであった。 (比較例3)図8に示す従来のpBN製ルツボを用い
て、上記実施例2と同一の条件において結晶の育成を行
った。
【0023】以上の実施例2及び比較例3の各結晶より
切り出した各基板においては、硫黄の濃度が3×1018
〜7×1018cm-3(実施例2の結晶より得られた基板に
おいて測定した上限値である。)以下の範囲で、無転位
領域の面積が殆ど同じであった。また、実施例2及び比
較例3において育成させた夫々10本ずつの結晶を観察
した。その結果を表3に示す。同表からわかるように、
比較例3においては全ての結晶の直胴部に双晶が生じ、
双晶を含まない単結晶を育成することができなかった
が、実施例2では半数以上(6本)の単結晶を育成する
ことができた。比較例3においては、育成した結晶の全
てに双晶が発生しており、少なくとも、その直胴部を育
成する際、液体封止剤中の結晶成長方向の温度勾配が小
さくなりすぎていることがわかる。それに対して、実施
例2においては、双晶の発生は抑えられており、少なく
とも、液体封止剤中の結晶成長方向の温度勾配は比較例
3より大きく保たれていることがわかる。一方、熱応力
に起因する転位の発生は、比較例3と同様に低く抑えら
れており、その育成中、結晶の径方向の温度勾配、即ち
それを決めている原料融液中の径方向の温度勾配は、比
較例3と同じ程度に小さい、或いは、比較例3より大き
いとしても僅かに大きい程度であることがわかる。
【表3】
【0024】(実施例3)ヒータの温度を制御して、図
4の(イ)線のように、液体封止剤中で結晶成長方向に
比較的大きな温度勾配を持つようにし、図6に示すルツ
ボ110を用いて直径2インチで長さ200mm程度の結
晶を育成した。その他の条件は上記実施例1と同じであ
った。 (比較例4)図8に示す従来のpBN製ルツボを用い
て、上記実施例3と同一の条件において結晶の育成を行
った。
【0025】実施例3及び比較例4において育成させた
夫々3本ずつの結晶を観察した。その結果を表4に示
す。同表からわかるように、比較例4においては全ての
結晶の直胴部に多結晶が生じ、長尺の単結晶を育成する
ことができなかったが、実施例3では全ての結晶に多結
晶が発生せず、長尺の単結晶を育成することができた。
これより、ルツボ110には、育成された結晶が100
mm以上の長さになった時、即ち原料融液の残量が少なく
なった時に、結晶成長方向の温度勾配が小さくなり過ぎ
るのを防止する効果があり、ルツボ110が長尺の結晶
育成に好適であることがわかる。
【表4】
【0026】なお、上記実施例においては直径2インチ
のInP単結晶の育成を例に挙げて説明したが、例えば
直径8インチ程度までの大きさの結晶育成においても同
様の効果が得られる。また、InPに限らず、GaAs
など他のIII−V族化合物半導体やII−VI族化合物半導体
の結晶育成においても同様の効果が得られる。さらに、
LEC法以外にも原料融液を液体封止剤で被覆したまま
徐冷しながら固化させる液体封止カイロポーラス(LE
K)法など、ルツボを用いて原料融液から結晶を育成す
る場合一般に適用できるのは勿論である。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、大きい温度勾配の条件
下において結晶を育成する場合には原料融液中の温度勾
配が大きくなり過ぎるのを防ぎ、また温度勾配が小さい
条件下においては融液中の温度勾配が小さくなり過ぎる
のを防ぐことができるので、低転位密度の単結晶、特に
長尺の単結晶を歩留りよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】好ましい状態における育成結晶の成長界面を示
す模式図である。
【図2】好ましくない状態における育成結晶の成長界面
を示す模式図である。
【図3】好ましくない状態における育成結晶の成長界面
を示す模式図である。
【図4】結晶育成におけるルツボ内の温度勾配を表す模
式図である。
【図5】本発明に係るルツボの一例を示す概略断面図で
ある。
【図6】本発明に係るルツボの他の例を示す概略断面図
である。
【図7】実施例1及び比較例1,2における硫黄濃度と
無転位領域面積の関係を表す特性図である。
【図8】従来のpBN製ルツボの概略断面図である。
【符号の説明】
100,110 ルツボ 101,111 底板部 102 第1層 103 第2層 104 第3層 105,115 側板部

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原料を入れ、当該原料を加熱して溶融さ
    せ、その原料融液に種結晶を接触させることにより化合
    物半導体結晶を育成する化合物半導体結晶の製造方法に
    用いられるルツボであって、 該ルツボは、底壁部と側壁部とによって器状に形成さ
    れ、 その底壁部は、ルツボの内側に面する第一層とその外側
    に位置する第二層とからなる少なくとも2層以上の積層
    構造を有し、 前記第二層における結晶成長方向の熱伝導率は、前記第
    一層における結晶成長方向の熱伝導率よりも小さく、且
    つ前記第二層における結晶成長方向に垂直な方向の熱伝
    導率は前記第一層における結晶成長方向に垂直な方向の
    熱伝導率よりも大きい熱伝導特性を有し、 前記側壁部は、その厚さ方向よりもそれに垂直な方向の
    熱伝導率の方が大きい熱伝導特性を有すること、 を特徴とする化合物半導体結晶の製造方法に用いるルツ
    ボ。
  2. 【請求項2】前記第一層は熱分解窒化硼素よりなり、前
    記第二層は熱分解グラファイトよりなることを特徴とす
    る請求項1記載の化合物半導体結晶の製造方法に用いる
    ルツボ。
  3. 【請求項3】前記底壁部は、前記第二層の外側には第三
    層が設けられて、第一層と第三層とにより第二層が挟持
    されたサンドイッチ構造とされ、 前記第一層と前記第三層は熱分解窒化硼素から、前記第
    二層は熱分解グラファイトからなることを特徴とする請
    求項1記載の化合物半導体結晶の製造方法に用いるルツ
    ボ。
  4. 【請求項4】前記側壁部は、熱分解窒化硼素の積層体で
    形成されることを特徴とする請求項1から請求項3の何
    れかに記載の化合物半導体結晶の製造方法に用いるルツ
    ボ。
  5. 【請求項5】 原料を入れ、当該原料を加熱して溶融さ
    せ、その原料融液に種結晶を接触させることにより化合
    物半導体結晶を育成する化合物半導体結晶の製造方法に
    用いられるルツボであって、 該ルツボは、底壁部と側壁部とによって器状に形成さ
    れ、 前記底壁部及び前記側壁部には、各部の厚さ方向に垂直
    な方向における熱流の経路長を長くするような凹凸が形
    成されていることを特徴とする化合物半導体結晶の製造
    方法に用いるルツボ。
  6. 【請求項6】前記底壁部及び前記側壁部は、層構造を有
    する熱分解窒化硼素の積層体で形成されることを特徴と
    する請求項5記載の化合物半導体結晶の製造方法に用い
    るルツボ。
  7. 【請求項7】ルツボ内に原料を入れ、そのルツボをヒー
    タで加熱して前記原料を溶融させ、その原料融液に種結
    晶を接触させることにより化合物半導体結晶を育成する
    化合物半導体結晶の製造方法において、 前記原料融液内における結晶成長方向の温度勾配が所望
    の温度勾配よりも大きくなる場合には、請求項1から請
    求項4の何れかに記載のルツボを用い、 前記温度勾配が所望の温度勾配よりも小さくなる場合に
    は、請求項5または請求項6に記載のルツボを用いるこ
    と、 を特徴とする化合物半導体結晶の製造方法。
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