JP2861753B2 - 窒化ホウ素含有膜で被覆された基体 - Google Patents

窒化ホウ素含有膜で被覆された基体

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JP2861753B2
JP2861753B2 JP24940793A JP24940793A JP2861753B2 JP 2861753 B2 JP2861753 B2 JP 2861753B2 JP 24940793 A JP24940793 A JP 24940793A JP 24940793 A JP24940793 A JP 24940793A JP 2861753 B2 JP2861753 B2 JP 2861753B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削工具、金型、光学
素子成形用型、磁気ヘッド或いは各種の摺動部品といっ
た耐摩耗性能、潤滑性能、適度の摺動性、離型性及び耐
熱性等の1又2以上が要求される基体上に、これらの性
能を向上させることができるとともに該基体への密着性
良好な窒化ホウ素含有膜が被覆された基体に関する。
【0002】
【従来の技術】窒化ホウ素(BN)は、結晶構造によっ
て立方晶系閃亜鉛鉱型のもの(c−BN)、六方晶系の
グラファイトと類似した構造のもの(h−BN)、或い
は六方晶系のウルツ鉱型のもの(w−BN)等に大別さ
れる。h−BNは、その特性もグラファイトに類似し、
C軸方向に劈開性を有することから軟質ながらも摺動性
に優れ、現在では人工的に合成された粉末状のものが固
体潤滑剤として、各種摺動部材の摩擦係数を下げるため
に広く用いられている。
【0003】また、c−BNはダイヤモンドに次ぐ高硬
度を有しており、熱的・化学的安定性はダイヤモンドよ
り優れていることから、切削工具といった耐摩耗性を必
要とする分野に応用されており、また、絶縁性や高熱伝
導率を有する特徴を活かしてヒートシンク用材料として
利用されている。w−BNも高硬度、優れた熱的・化学
的安定性を有し、c−BNと同様、工具を中心にした耐
摩耗性が要求される分野に応用されている。
【0004】h−BNは低温下で容易に粉状に合成さ
れ、また各種物理的蒸着(PVD)法や化学的蒸着(C
VD)法により容易に膜状に合成されている。しかし、
c−BN及びw−BNは、これまで高温度、高圧力下で
人工的に合成されるものであることから、その製造コス
トは非常に高くなり、しかも合成される形態がバルク状
になるため、その応用範囲が限られていた。そこで、c
−BN及びw−BNを薄膜合成させようとする試みが、
各種PVD法やCVD法によって行われている。
【0005】一例として熱CVD法を用いたBN含有膜
形成の試みについて述べると、基体の置かれた反応室内
に原料ガスとしてホウ素(B)元素を含むガスと窒素
(N)元素を含むガス又は該両元素を含むガス等を導入
し、1000℃近い温度に加熱することにより前記原料
ガスを熱分解し、分解生成物によりBN含有膜を前記基
体上に形成することが試みられたが、この手法によって
h−BN含有膜は容易に形成されるものの、c−BN含
有膜は形成されなかった。
【0006】また、PVD法においては、例えばBNか
ら成るターゲットをレーザ照射によりスパッタし、対向
する基体表面にBN含有膜を形成しようとする手法が試
みられたが、c−BN含有膜は合成されなかった。しか
し近年、原料ガスを電力印加によりプラズマ化して化学
的に活性なイオンやラジカルを生成させ、これら活性な
粒子により基体表面での化学反応を促進し、薄膜を形成
するプラズマCVD法により、c−BN含有膜又はw−
BN含有膜が形成されるようになってきた。
【0007】このプラズマCVD法は、熱CVD法に比
して低温下で緻密な膜が得られる利点を有するため、例
えば高速度工具鋼(ハイス鋼)など一定以上の温度で硬
度の劣化を生じるものや、高温下での変形による寸法精
度の狂いが許されない金型等を基体として用いる場合に
も用いることができる。しかしプラズマCVD法にて形
成された膜は高温下で形成された膜に比べて基体との密
着性が劣る傾向にある。
【0008】また最近、B元素を含有する物質を真空蒸
着又はスパッタすることにより、基体上に膜形成させる
と同時、交互、又は該膜形成後に、少なくともN元素を
含むイオン種を照射することにより、蒸発原子と照射イ
オンが衝突し、蒸発原子が基体内部に押し込まれ、基体
内で反跳し、基体と膜との界面に両者の構成原子よりな
る混合層が形成され、その結果、基体と膜との密着性が
向上することが見出された。この手法によると、蒸発原
子と照射イオンが衝突する結果、蒸発原子が励起化さ
れ、c−BNやw−BNが非熱平衡的に低温下で合成さ
れる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この手
法によってc−BN膜やw−BN膜が低温下で基体への
密着性良好に合成されるものの、c−BNやw−BNの
膜で被覆された基体を実用に供した場合、特にその基体
が他の物品と摺動したり、接触して摩擦・摩耗現象を生
じるものであるときは、長時間又は繰り返しの使用に耐
えられる程の密着性は得られず、未だ産業上の実用化に
は至っていない。
【0010】そこで本発明は、高硬度で、化学的安定性
に優れ、各種基体への密着性良好なBN含有膜で被覆さ
れていることにより、耐摩耗性能、摺動性能及び離型性
能等に優れた基体を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記課題を解
決すべく研究を重ね、以下の事実を見出した。各種の結
晶構造のBNのうちc−BN及びw−BNは高硬度であ
るため、これらを含有する膜で被覆することにより基体
の硬度は向上する。しかしc−BN及びw−BNは膜形
成時に過大な内部応力を発生させ、しかも化学的に安定
であるため、これらを含有する膜は基体への密着性が劣
る。そこでc−BN又はw−BN含有膜中にN原子と結
合していないB原子を混入させれば、前記内部応力が解
消され、しかも該膜の基体への漏れ性が向上するため、
該膜の基体への密着性は向上する。
【0012】一方B原子の混入により該膜の化学的安定
性、例えば耐熱性等は低下するため、前記BN含有膜で
被覆された基体はさらにその外側を、N原子と結合して
いないB原子を含まないBN含有膜で被覆する必要があ
る。しかし前記B原子を含む内膜と前記B原子を含まな
い外膜とは結晶構造が大きく異なるため該外膜が剥離し
易い。
【0013】そこで前記両膜間にc−BN又はw−BN
の少なくとも一方、及びN原子と結合していないB原子
に加えてh−BNを含有する中間膜を形成させることに
より該外膜の剥離が防がれる。これは、前記外膜がh−
BNを含む場合には、前記中間膜が外膜と同じ構造の物
質と内膜と同じ構造の物質とを併せ含むことにより外膜
及び内膜との不整合が緩和され、その結果、外膜に生じ
る内部応力が緩和されるからである。
【0014】また、前記外膜がh−BNを含まず、c−
BN又はw−BNの少なくとも一方を含む場合には、該
外膜は脆性に富み、一般的にはこのような膜で被覆され
た基体を耐摩耗性能が要求される分野で使用すると、該
外膜にクラックが生じ易い。しかし本発明では、この場
合にも前記中間膜を形成させることにより該外膜の剥離
が防がれる。何故なら、前記中間膜に含まれるh−BN
はその結晶のC面間がファンデルワールス力により結合
しており、外部から応力が加えられた場合、C面間にズ
レが生じることで該応力を緩和することができるが、こ
れにより外膜に加えられた応力を緩和し該外膜にクラッ
クが生じるのを防ぎ、その結果、外膜ひいては膜全体の
基体に対する密着性を向上させることができるからであ
る。
【0015】以上の知見に基づき本発明は、BN含有膜
で被覆さた基体であって、該基体上にN原子と結合して
いないB原子、及びc−BN、w−BNのうち少なくと
も一方を含有する膜が形成され、その上にN原子と結合
していないB原子、及びc−BN、w−BNのうち少な
くとも一方、及びh−BNを含有する膜が形成され、そ
の上にc−BN、w−BN、h−BNのうち少なくとも
いずれかを含有し、N原子と結合したB原子を含まない
膜が形成されていることを特徴とするBN含有膜で被覆
された基体を提供するものである。
【0016】前記BN含有膜に含まれるB原子とN原子
の個数比(B/N組成比)は内膜から外膜にかけて順に
減少していることが望ましい。これによりB/N組成比
が内膜と中間膜及び中間膜と外膜との間で大きく異なら
ず、各BN含有膜間の密着性ひいては該膜と基体との密
着性を一層向上させることができる。なお、前記基体の
製法としては、例えば次のものが考えられる。。
【0017】すなわち、基体を成膜用真空容器内のホル
ダに支持させ、該基体に対し、B元素含有物質を真空蒸
着及び(又は)スパッタ法にて付与し、該付与と同時、
交互又は該付与の後にイオン源よりイオンを照射してB
N含有膜を前記基体上に形成するようにする。前記方法
において用いるB元素含有物質としては、B単体の他、
B化合物、例えば酸化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ
素、硫化ホウ素、ホウ化リン、ホウ化水素及び各種金属
ホウ化物等の中から一種又は二種以上が用いられる。
【0018】前記方法において用いるイオン種は、蒸発
B原子に作用してBN膜を形成するものであればよく、
例えば、N原子イオン、N分子イオン、アンモニアイオ
ン(NH3 + )のような窒素化合物イオン、窒化ホウ素
イオン(BN+ )のようなB化合物イオンの他、これら
のN元素を含むイオン種にアルゴンイオン(Ar+ )の
ような不活性ガスイオン、水素原子イオン(H+ )を混
合したもの等が用いられる。
【0019】各膜中に形成されるBNの結晶構造、該B
Nの結晶性の高低及びB/N組成比等の制御は、基体上
に到達するB原子数とN原子数の比(B/N輸送比)、
イオン種、照射イオンの加速エネルギ及び電流密度の条
件を適宜組み合わせることにより行う。B/N輸送比は
0.5から60までとするのが望ましく、0.5より小
さい場合、照射イオンの蒸発物質への衝突が過大になり
膜中欠陥が多くなり、該膜の硬度や化学的安定性が低下
する。また、60より大きい場合、膜内に含有される、
N原子と結合しないB原子の割合が多くなり、その分膜
内に含有されるBNの割合が少なくなるためBNの有す
る諸特性が十分に発揮されなくなる。なお、B/N組成
比が1より大きくなるようB/N輸送比を制御すること
により、膜中にN原子と結合しないB原子を生成させる
ことができる。
【0020】B/N輸送比の制御は、例えば水晶振動子
式膜厚計等の膜厚モニタを用いて基体への蒸着量をモニ
タし、例えば2次電子抑制電極を備えたファラデーカッ
プ等のイオン電流測定器を用いて基体へのイオン照射量
をモニタすることで行える。イオン種として、これらN
元素を含むイオン種にアルゴンイオン(Ar+ )のよう
な不活性ガスイオン、水素原子イオン(H+ )を混合し
たものを用いるときにはB原子を一層高励起化すること
ができ、c−BN、w−BNの合成に有利になる。
【0021】照射イオンの加速エネルギは50eVより
大きく、40KeVより小さいことが望ましい。50e
Vより小さい場合、イオン照射により基体と膜及び膜と
膜の界面に形成される混合層の厚みが小さくなり、該混
合層を挟む2つの層を十分に密着させることができな
い。また、40KeVより大きい場合、膜中欠陥が多く
なり、該膜の硬度が低下したり化学的安定性が低下す
る。
【0022】前記範囲内で加速エネルギを大きくする
と、h−BN及びa−BNの形成量が多くなり、加速エ
ネルギを小さくするとc−BN及びw−BNの形成量が
多くなる。前記方法において、c−BN、w−BN及び
h−BNを合成する際にはアモルファス構造を有するB
N(a−BN)が混入し易いが、混入したa−BNは本
発明のBN含有膜の機能を妨げるものではなく、前記の
各BN含有膜はa−BNを含むように形成されてもよ
い。
【0023】例えば結晶性を高めるためには、照射イオ
ン種として窒素イオンと不活性ガスイオンを混合したも
のを使用し、又は、前述のように照射イオンの加速エネ
ルギとして例えば2KeV以下の低い値のものを使用す
る。しかし、窒素イオンと不活性ガスイオンを混合した
ものを使用する場合、イオン源に接続されるガス系統が
その分増え、装置に要するコストが高くなったり、ガス
流量の制御や成膜操作が複雑になり、膜の再現性を確保
するのに要する労力が多くなったりする。また、照射イ
オンの加速エネルギを例えば2KeV以下の低い値にす
る場合、高い加速エネルギのイオンを使用する場合に比
べて膜と基体との密着性が劣る。従って密着性を向上さ
せるために、基体と膜の界面近傍の膜を作成する際のみ
高い加速エネルギとし、その後、低い加速エネルギに順
次切り換えていくことが望ましい。しかしその場合、イ
オン照射の全工程を高い加速エネルギで行う場合に比べ
てイオン源に使用する電源の電圧範囲が広くなるため、
装置に要するコストが高くなったり、成膜操作が複雑に
なったりする。
【0024】よって、膜中にa−BNが混入することを
許す方が、装置の構成が簡単で、成膜時の制御が容易に
なるため、生産コストを低減させたり、生産を効率化し
たりすることができる。そこで、本発明基体の製造に当
たっては、特に生産コストを低減したり、生産効率を高
めたりすることを優先する場合には、むしろa−BNの
混入を積極的に行うのが好ましい。a−BNの混入量は
特に限定されず、各BN膜が所望の結晶構造になってい
ることが確認出来る範囲内であればよい。
【0025】なお、基体へのイオン入射角度は特に限定
されず、基体を回転させながら成膜を行ってもよい。イ
オン源の方式も特に限定は無く、例えばカウフマン型、
バケット型等の物が考えられる。さらに、熱的なダメー
ジを充分に避けなければならない基体については基体ホ
ルダを水冷して基体を冷却させながら成膜を行うのが好
ましい。
【0026】前記基体の材質は特に限定されず、例えば
各種セラミックス、金属、又は高分子から成る材質等が
考えられる。
【0027】
【作用】本発明のBN含有膜で被覆された基体は、該B
N含有膜が三層からなり、そのうち基体に接する内膜が
B原子、及びc−BN、w−BNのうち少なくとも一方
を含有する膜であり、外膜がc−BN、w−BN、h−
BNのうち少なくともいずれかを含有する膜であり、中
間膜がB原子、及びc−BN、w−BNのうち少なくと
も一方、及びh−BNを含有する膜であることにより、
該膜の外膜は化学的安定性に優れ、内膜は高硬度でしか
も基体への密着性が良好であり、さらにこれら内外のB
N含有膜の中間的構造を有し、C軸方向に劈開性を有す
るh−BNを含む中間膜が該両膜間の密着性を向上させ
るため、該基体は全体として高硬度で化学的安定性に優
れ、しかも基体に対する密着性良好なBN含有膜で被覆
されたものとなる。なお、たとえ外膜に含まれるBN結
晶がh−BNのみであっても、その下に形成されている
BN含有膜が高硬度であることにより該基体は全体とし
て高硬度なBN含有膜で被覆されたものとなる。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。図1は本発明の1実施例の基体の一部の拡大断面
図であり、図2は該基体の製造に用いる成膜装置の概略
構成を示したものである。図2において、1は基体、2
は基体1を支持するホルダ、3はB元素を含有する物質
を蒸発させる蒸発源、4はイオンを照射させるためのイ
オン源、5は基体1上に蒸着されるB原子の個数及びそ
の膜厚を計測するための膜厚モニタ、6は基体1に照射
されるイオンの個数を計測するためのイオン電流測定器
である。これらは真空容器7内に収容されている。容器
7内は排気装置8にて所望の真空度とされ得る。
【0029】本発明による基体を作成するに当たって
は、まず基体1をホルダ2に支持させた後、真空容器7
内を所定の真空度にする。その後、基体1に蒸発源3を
用いて、B元素含有物質3aを電子ビーム、抵抗、レー
ザ、高周波等の手段で真空蒸着させる。なお、真空蒸着
に代えて、B元素含有物質3aをイオンビーム、マグネ
トロン、高周波等の手段でスパッタすることで基体1上
に膜形成してもよい。
【0030】このB元素含有物質3aの真空蒸着(或い
はスパッタ)と同時、又は交互に、又は蒸着(或いはス
パッタ)後に、イオン源4よりイオン4aを当該蒸着面
に照射する。以上に述べた成膜操作により、図1に示す
ように、基体1表面にN原子と結合していないB原子、
及びc−BN、w−BNのうち少なくとも一方を含有す
る内膜11が形成され、その外側にN原子と結合してい
ないB原子、及びc−BN、w−BNのうち少なくとも
一方、及びh−BNを含有する中間膜12が形成され、
さらにその外側にc−BN、w−BN、h−BNのうち
少なくともいずれかを含有する外膜13が形成される。
【0031】各膜11、12及び13中に形成されるB
Nの結晶構造、該BNの結晶性の高低及びB/N組成比
等の制御は、基体上に到達するB原子数とN原子数の比
(B/N輸送比)、イオン種、照射イオンの加速エネル
ギ及び電流密度の条件を適宜組み合わせることにより行
われる。膜11、12、13で被覆された基体1におい
て膜11はc−BN又はw−BN又は該両者を含むこと
により高硬度で、しかもB原子を含むことにより基体1
に対する密着性に優れ、膜13はc−BN又はw−BN
を含む場合には高硬度で、h−BNを含む場合には潤滑
性に優れ、何れの場合にも化学的安定性に優れたものと
なる。また前記の膜13がBNの結晶のうちh−BNの
みを含む場合にも、膜11、12が高硬度であるため基
体全体としては高硬度のものとなる。また膜12は膜1
1及び13の中間的構成要素から成るため、該両膜11
及び13の密着性を向上させることができる。また、外
膜13がh−BNを含まない場合には該膜13は脆性に
富みクラックが生じ易いが、中間膜12に含まれるh−
BNが外部から加えられた応力を緩和してこのクラック
の発生を防ぎ、膜13ひいては膜全体の基体1に対する
密着性を向上させることができる。従って基体1は高硬
度で、化学的安定性に優れ、しかも基体1に対する密着
性良好な膜11、12、13で被覆されたものとなる。
【0032】次に図2に示す成膜装置による本発明の基
体の製造方法の具体例と、それによって得られるBN含
有膜で被覆された基体について説明する。 実施例 図2に示す装置を用いて、高速度工具鋼(SKH−5
1)よりなる基体1(25mm×25mm×厚さ3m
m)を基体ホルダ2に設置し、真空容器7内を5×10
-7Torrの真空度とした。その後、純度99.9%の
ホウ素ペレット3aを電子ビーム蒸発源3を用いて蒸気
化し、基体1上に成膜した。それと同時にイオン源4に
純度5N(99.999%)の窒素ガスを真空容器7内
が5×10-5Torrになるまで導入し、イオン化さ
せ、該イオン4aを20KeVの加速エネルギで、基体
1に立てた法線に対して0°の角度で基体1に照射し
た。なお、イオン源にはカプス磁場を用いたバケット型
イオン源を用いた。
【0033】また、前記成膜操作においては、B/N組
成比が35になるよう、窒素イオンによるホウ素原子の
スパッタ効率等を考慮してB/N輸送比を調整し、膜厚
約500nmの膜11を形成した。次いで蒸発物質とし
て純度99.7%のBペレットを用い、その他は膜11
の形成時と同じ条件で、B/N組成比が15になるよう
B/N輸送比を調整し、前記膜11の上に膜厚約500
nmの膜12を形成した。
【0034】さらに蒸発物質として純度99.7%のB
ペレットを用い、その他は膜11の形成時と同じ条件
で、B/N組成比が1になるようB/N輸送比を調整
し、前記膜12の上に膜厚約500nmの膜13を形成
した。前記実施例で形成された各膜中のBNの結晶構造
及び膜内のB原子の結合状態を調べるために、実施例と
同じ基体上に、実施例における膜11、12、13を各
単独に同じ膜厚(500nm)だけ形成したもののBN
膜の構造を赤外線吸収スペクトル分析法(IR)及び光
電子分光法(XPS)にて分析した。
【0035】IRによると各膜に含まれるBNの結晶構
造は、膜11はc−BNのみが含まれ、膜12にはc−
BN及びh−BNが含まれ、膜13はh−BNのみが含
まれていた。また、XPSによると、膜11及び膜12
にはN原子と結合していないB原子が存在していた。該
両分析の結果、前記各膜の構成は以下の通りであった。
【0036】膜11:c−BN+B原子 (B/N組成比=35) 膜12:c−BN+h−BN+B原子 (B/N組成比=15) 膜13:h−BNのみ (B/N組成比=1) なお、膜被覆基体の特性には結晶構造のみが影響を与え
るので、各結晶構造の結晶性、即ちa−BNの含有率に
ついては分析を行わなかった。
【0037】また、実施例による基体及び前記の実施例
における膜11、12、13を各単独に被覆した基体
(各、比較例1、2、3とする)の硬度と膜密着性を測
定したところ、以下の結果が得られた。なお、硬度は1
0gビッカース硬度計を用いて測定し、密着性はダイヤ
モンド圧子を用いたAEセンサ付きスクラッチ試験機を
用いて、0から連続的に荷重を増加しながら膜を引っか
き、AE信号が急激に立ち上がる荷重を剥離荷重とし
て、その値の大きさでもって評価した。
【0038】 硬度(Kg/cm2 ) 密着性(N) 実施例 3500 30 比較例1 3500 30 比較例2 2800 26 比較例3 1200 15 実施例による基体及び比較例1による基体は、高硬度、
高密着性を有する膜で被覆されており、比較例2による
基体は、実施例による基体とほぼ同等の密着性を有する
膜で被覆されていたが、硬度は実施例による基体に比べ
て劣り、比較例3による基体は、硬度、密着性共に実施
例による基体に比べて劣っていた。
【0039】次に、実施例及び比較例1〜3による基体
を、700℃の大気雰囲気中に3時間曝し、その後の膜
の酸化状態を検討した。酸化状態は、XPSにてB原子
の光電子ピークの状態を検討することにより行い、以下
の結果を得た。 実施例 酸化されなかった。 比較例1 酸化された。
【0040】比較例2 酸化された。 比較例3 酸化されなかった。 実施例及び比較例3による基体に比べて比較例1及び比
較例2による基体は耐酸化性が劣っていた。以上の結果
より、化学的安定性、硬度及び密着性の全てについて実
施例による基体が優れていることが分かる。
【0041】
【発明の効果】本発明によると、高硬度で、優れた化学
的安定性を有し、各種基体への密着性良好なBN含有膜
で被覆されていることにより、耐摩耗性能、摺動性能及
び離型性能等に優れた基体を提供することができる。ま
た前記の効果を得る上で支障を来さない程度に膜中にa
−BNを混在させることにより生産コストを低減させた
り、生産効率を高めたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の一部の拡大断面図である。
【図2】図1に示す基体の製造に用いる成膜装置の概略
構成を示した図である。
【符号の説明】 1 基体 11 内膜 12 中間膜 13 外膜 3 蒸発源 3a 蒸着物質 4 イオン源 4a イオン 5 膜厚モニタ 6 イオン電流測定器 7 真空容器 8 排気装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−247627(JP,A) 特開 平5−247625(JP,A) 特開 平5−285062(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/00 - 14/58 C01B 21/064

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化ホウ素含有膜で被覆された基体であ
    って、該基体上に窒素原子と結合していないホウ素原子
    及び立方晶系閃亜鉛鉱型、六方晶ウルツ鉱型のうち少な
    くとも一方の結晶構造を有する窒化ホウ素を含有する膜
    が形成され、その上に、窒素原子と結合していないホウ
    素原子、及び立方晶系閃亜鉛鉱型、六方晶ウルツ鉱型の
    うち少なくとも一方の結晶構造を有する窒化ホウ素及び
    六方晶系のグラファイトと類似した結晶構造を有する窒
    化ホウ素を含有する膜が形成され、その上に立方晶系閃
    亜鉛鉱型、六方晶ウルツ鉱型、六方晶系のグラファイト
    と類似した型のうち少なくともいずれかの結晶構造を有
    する窒化ホウ素を含有し、窒素原子と結合していないホ
    ウ素原子を含有しない膜が形成されていることを特徴と
    する窒化ホウ素含有膜で被覆された基体。
  2. 【請求項2】 前記各窒化ホウ素含有膜がアモルファス
    構造の窒化ホウ素を含有する請求項1記載の窒化ホウ素
    含有膜で被覆された基体。
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