JP2781193B2 - アクティブ・ノイズ・キャンセラー - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、外部騒音を積極的にキャンセルする機能を
有するアクティブ・ノイズ・キャンセラーに関する。

（従来の技術） 従来、アクティブ・ノイズ・キャンセラーとしては、
例えば、米国特許第4455675号に記載されているような
ものが知られている。このアクティブ・ノイズ・キャン
セラーは、外部騒音とキャンセル音の合成音を入力する
モニター用マイクロホンと、キャンセル音を発生する消
音スピーカと、モニター用マイクロホンで拾われた入力
音とは逆位相のキャンセル音を前記消音スピーカで発生
させるべくキャンセル音発生信号を出力する騒音キャン
セル回路とを備え、外部騒音に対し逆位相のキャンセル
音の打ち消し作用によって外部騒音を消音するようにし
たものであった。

（発明が解決しようとする課題） しかしながら、このような従来のアクティブ・ノイズ
・キャンセラーでは、モニター用マイクロホンが外部騒
音とキャンセル音の両方を入力して閉ループを形成する
ようにしているために、以下に述べる問題があった。

即ち、モニター用スピーカは、消音スピーカから発せ
られるキャンセル音を、偏り無く入力するために、消音
スピーカに対向させてその直前位置に配置している。よ
って、このモニター用マイクロホン及びその支持部材
が、消音スピーカから放射される音場を乱し、特に、波
長の短い、例えば1000Hz以上の高周波の音場を著しく乱
すものであった。従って、高周波域の消音量が低下して
消音が不安定になっていた。

さらに、上述のような音場の乱れの防止や、消音スピ
ーカの振動膜の振動を妨げないようにするためや、消音
スピーカのマグネットの影響を受けないようにするため
や、消音スピーカが外部騒音の侵入経路の邪魔にならな
いようにするために、消音スピーカとモニター用マイク
ロホンの間に、ある程度の間隔を設ける必要が生じる。
このため、消音スピーカから発せられたキャンセル音が
空気中を伝播してモニター用マイクロホンに入力される
間に位相遅れが生じ、これによって、可聴周波数のハウ
リングが生じ、消音性能が低下する。

ところで、上述のような従来の問題の解決案として、
外部騒音入力専用のモニター用マイクロホンを、消音ス
ピーカから離れた位置に設けることが考えられる。しか
しながら、この場合には、モニター用マイクロホンが使
用者の耳腔からも離されてしまうこととなり、マイクロ
ホンに入力される音と、実際に使用者が聞く音とが異な
るため、消音性能が低いものとなる。そこで、消音性能
を向上させるためには、外部騒音用のモニター用マイク
ロホンとは別途に使用者の耳腔の近くにフィードバック
用のマイクロホンを設け、フィードバック制御を行う必
要が生じ、この場合、制御回路が複雑になる。

本発明は、上述のような問題に着目してなされたもの
で、ハウリングの発生を防止すると共に、音場の乱れを
防止して、安定した高い消音性能が得られ、しかも、構
造が簡単なアクティブ・ノイズ・キャンセラーの開発を
課題とする。

（課題を解決するための手段） 上記課題を解決するために本発明のアクティブ・ノイ
ズ・キャンセラーでは、使用者の耳腔に対し所定のキャ
ンセル音を発生放射させる消音スピーカと、外部騒音を
入力するモニター用マイクロホンと、該モニター用マイ
クロホンの入力音とは略逆位相のキャンセル音を発生さ
せるべく消音スピーカにキャンセル音発生信号を出力す
る騒音キャンセル回路とを備え、外部騒音に対し略逆位
相のキャンセル音の打ち消し作用によって外部騒音を消
音するようにしたアクティブ・ノイズ・キャンセラーに
おいて、前記モニター用マイクロホンを、消音スピーカ
の側面位置であって、消音スピーカの正圧面から放射さ
れるキャンセル音と負圧面から放射されるキャンセル音
とが打ち消され合う位置に配置したことを特徴とする手
段とした。

（作 用） 外部騒音下で使用すると、消音スピーカから使用者の
耳腔に向けキャンセル音が放射され、使用者が聞く外部
騒音は、このキャンセル音による逆位相による打ち消し
作用を受けて消音される。

ところで、消音スピーカから放射されるキャンセル音
は、消音スピーカの正圧面からの音と負圧面とからの音
とで互いに逆位相となっている。よって、正圧面と負圧
面とからの音響的に等距離の位置、即ち、本発明におい
てモニター用マイクロホンが設けられている位置では、
正圧・負圧両面からのキャンセル音が打ち消され合っ
て、０となる。

従って、外部騒音下で使用した場合に、モニター用マ
イクロホンでは、理想的には外部騒音のみしか入力され
ないもので、これにより、原信号と360゜の整数倍のフ
ィードバック信号が加算されることで生じるハウリング
の発生を防止でき、しかも、モニター用マイクロホンは
消音スピーカの音場を乱すこともない。

また、このような正圧面と負圧面からのキャンセル音
が打ち消し合って０となる位置は、両面から音響的に等
距離であれば、消音スピーカに近接させた位置とするこ
とができる。

よって、消音スピーカに近接した位置で使用者が聞く
外部騒音と同じ外部騒音のみを入力することができる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

まず、構成を説明する。

第１図は本発明第１実施例のアクティブ・ノイズ・キ
ャンセラーの構成を示す全体図であって、図において、
１は使用者の耳腔に対し所定のキャンセル音を発生放射
させる消音スピーカ、２は外部騒音を入力するモニター
用マイクロホン、３は該モニター用マイクロホンの入力
音とは略逆位相のキャンセル音を発生させるべく前記消
音スピーカ１にキャンセル音発生信号を出力する騒音キ
ャンセル回路である。

前記消音スピーカ１は、ハウジング1aに支持されて、
ダイヤフラム1b、マグネット1c、コイル1dを備えてい
る。即ち、ダイヤフラム1bの表面1eが消音スピーカ１の
正圧面であって、コイル1dにキャンセル音発生信号を与
えると、ダイヤフラム1bから使用者の耳腔Ｅに対してキ
ャンセル音を発生放射させるようになっている。尚、こ
のダイヤフラム1bと耳腔Ｅの間の空間並びに消音スピー
カ１は、いわゆるヘッドホンのような形態の図外のカバ
ーにより覆われている。また、ハウジング1aの表面1fが
消音スピーカ１の負圧面であって、前記ダイヤフラム1b
から放射される音とは逆位相の音が放射される。

前記モニター用マイクロホン２は、消音スピーカ１の
側面に近接した位置であって、消音スピーカ１のダイヤ
フラム表面1e（正圧面）から放射されるキャンセル音と
ハウジング表面1f（負圧面）から放射されるキャンセル
音とが打ち消され合う位置に配置されている。尚、この
モニター用マイクロホン２を設ける位置としては、消音
スピーカ１に近接した位置に限られないが、ダイヤフラ
ム1bの直径以下の距離内が好ましい。

前記騒音キャンセル回路３は、モニター用マイクロホ
ン２の入力音を前置増幅するプリアンプ3bや、不要な周
波数範囲をキャンセル音から外すフィルタ回路3cや、パ
ワーアンプ3dや、入力音の位相を180度ずらす反転回路3
eを含んで形成されている。

次に、作用を説明する。

航空機のコックピット内等のような外部騒音下で使用
すると、モニター用マイクロホン２によって外部騒音が
入力され、騒音キャンセル回路３では入力信号とは逆位
相のキャンセル音発生信号が形成され、この信号に基づ
き、消音スピーカ１から使用者の耳腔Ｅに向けキャンセ
ル音が放射され、使用者が聞く外部騒音は、このキャン
セル音による逆位相による打ち消し作用を受けて消音さ
れる。

ところで、消音スピーカ１からキャンセル音が放射さ
れる場合、第２図に示すように、消音スピーカ１のダイ
ヤフラム表面（正圧面）1eからキャンセル音ａが放射さ
れると共に、ハウジング表面（負圧面）1fとからもキャ
ンセル音ｂが放射され、両キャンセル音a.bは、図示の
ように互いに逆位相となっている。よって、モニター用
マイクロホン２が設けられている位置である、ダイヤフ
ラム表面（正圧面）1eとハウジング表面（負圧面）1fと
から音響的に等距離の位置では、両面1e.1fからのキャ
ンセル音a.bが打ち消し合って、０となる。

従って、モニター用マイクロホン２では、外部騒音ｃ
（第２図）のみが入力されるもので、これによって、原
信号と360゜の整数倍のフィードバック信号が加算され
ることで生じるハウリングの発生を防止でき、ハウリン
グの発生による消音性能の低下を防止することができる
という効果が得られる。

しかも、モニター用マイクロホン２は、ダイヤフラム
1bからのキャンセル音の放射前面から離れて側面に配置
されているから消音スピーカ１の音場を乱すことがな
い。よって、高周波域まで安定した消音性能が得られ
る。

また、モニター用マイクロホン２は、消音スピーカ１
の側面に近接させているので、使用者が聞く外部騒音と
同じ外部騒音のみを入力することができる。よって、安
定した消音性能が得られ、フィードバック制御用の回路
やマイクロホンが不要で構成が簡単であるという効果が
得られる。

次に、第３図に示す本発明第２実施例について説明す
る。

この第２実施例は、３個の消音スピーカ21.21.21を、
同一円周上に配置させて支持枠４に対し取り付け、その
円周中心位置にモニター用マイクロホン２を配置した例
である。尚、消音スピーカ21には、振動膜としてコーン
21bを有したタイプのものを示している。

このように消音スピーカの数は、１個でも複数でもよ
い。

以上、実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体
的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても
本発明に含まれる。

例えば、騒音キャンセル回路に対し、他のマイクや外
部信号等を入力するミキサーを設け、必要な会話音や呼
出音等を消音スピーカから出力するようにしてもよい。

（発明の効果） 以上説明してきたように、本発明のアクティブ・ノイ
ズ・キャンセラーにあっては、モニター用マイクロホン
を、消音スピーカの側面位置であって、消音スピーカの
正圧面から放射されるキャンセル音と負圧面から放射さ
れるキャンセル音とが打ち消され合う位置に配置したた
め、以下に列挙する効果を同時に得ることができる。

モニター用マイクロホンは、キャンセル音を入力す
ることなく外部騒音のみを入力するようにできる、これ
によって、ハウリングの発生を防止して消音性能を向上
できるという効果が得られる。

モニター用マイクロホンやその支持部材が消音スピ
ーカの音場を乱すことがない、これによって、高周波域
までの外部騒音を安定的に消音することができるという
効果が得られる。

モニター用マイクロホンを消音スピーカ並びに使用
者の耳腔に近い位置に設け、使用者に聞こえる外部騒音
と等しい外部騒音を入力することができ、これによっ
て、フィードバック制御用のマイクロホンや回路を不要
とし、構成を簡単にできるという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明第１実施例のアクティブ・ノイズ・キャ
ンセラーの構成を示す全体図、第２図は第１実施例アク
ティブ・ノイズ・キャンセラーによる消音スピーカの正
圧音並びに負圧音及び外部騒音を示す特性図、第３図は
本発明第２実施例アクティブ・ノイズ・キャンセラーの
要部構成示す斜視図である。 Ｅ……耳腔 １……消音スピーカ 1e……ダイヤフラム表面（正圧面） 1f……ハウジング表面（負圧面） ２……モニター用マイクロホン ３……騒音キャンセル回路 21……消音スピーカ

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) H04R 3/00 G10K 11/16 H04R 1/10

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】使用者の耳腔に対し所定のキャンセル音を
   発生放射させる消音スピーカと、外部騒音を入力するモ
   ニター用マイクロホンと、該モニター用マイクロホンの
   入力音とは逆位相のキャンセル音を発生させるべく消音
   スピーカにキャンセル音発生信号を出力する騒音キャン
   セル回路とを備え、外部騒音に対し逆位相のキャンセル
   音の打ち消し作用によって外部騒音を消音するようにし
   たアクティブ・ノイズ・キャンセラーにおいて、 前記モニター用マイクロホンを、消音スピーカの側面位
   置であって、消音スピーカの正圧面から放射されるキャ
   ンセル音と負圧面から放射されるキャンセル音とが打ち
   消され合う位置に配置したことを特徴とするアクティブ
   ・ノイズ・キャンセラー。