JP2693602B2 - 送りねじ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は往復移動体を駆動するための送りねじ装置に
関し、たとえば、静電記録装置のワイヤ除帯電器の清掃
装置などに適用するに好適な送りねじ装置に関する。

「従来の技術」 従来の送りねじ装置に使用する送りねじは、軸状部材
に螺旋状の溝又は突出部を切削，転造等の機械加工によ
り形成し、ねじ部としたものであった。

また、精度を必要としない簡易な送りねじとして、軸
状部材に線材を螺旋状に巻き付け、その全長に渡って軸
状部材に固着したものがあった。

いずれにしても、上記従来の送りねじは、ねじ部が堅
いリジッドな部分として構成されており、変形するねじ
部という考えは常識に反するものであった。

「発明が解決しようとする課題」 しかしながら、送りねじ装置によって送られる往復移
動体をストローク端などにおいてストッパに衝突させて
停止させる場合がある。この場合、衝突による衝撃力の
ため、送りねじのねじ部が送りナットに喰い込んだり、
送りねじを回転駆動する減速機構に過大な力が作用した
りすることがあった。たとえば、減速機構に簡易なウォ
ームギヤ系を用いた場合は、ウォーム軸又はウォーム軸
に直結したモータの出力軸に過大なスラスト荷重が掛か
った状態になり、その後のモータの反転起動がトルク不
足のため困難になることがあった。

本発明は上記の問題点を解決するためなされたもので
あり、その目的とするところは、緩衝機能を備えた送り
ねじを有する送りねじ装置を提供することにある。

「課題を解決するための手段」 上記目的を達成する本発明の構成を説明すると、軸に
ねじ部が設けられ、軸の回転によりねじ部に螺合された
ナットを所定ストロークの間で当該軸に沿い往復移動さ
せる送りねじ装置であって、上記軸（２）を回転駆動す
る回転駆動手段（40）と、上記所定ストロークのストロ
ーク端に設けられて上記ナット（25）の移動を阻止する
ストッパ部材（15、16）と、上記軸（２）に巻回されて
ねじ部を形成し、軸方向の一部で上記軸（２）に固着さ
れるとともに、ストローク端部分では自由に弾性変形可
能となコイル状ばね部材（３）とを備えている。

なお、ここで、ストッパ部材によりナットの移動が阻
止されるとは、ナットがストッパ部材に直接当接してそ
の移動が阻止される場合のみならず、ナットと一体の他
部材がストッパ部材に当接してナットの移動が阻止され
る場合をも含む意である。

「作用」 上記構成の送りねじ装置において、ストローク端位置
にてストッパ部材によりナットの移動が阻止されると、
当該ストローク端部分で弾性変形自在なコイル状バネ部
材は軸方向および回転方向へ変形して、ナット停止時の
衝撃を緩和する。また、この時のコイル状バネ部材の弾
性変形による付勢力は、後に軸を反転駆動する際の回転
駆動手段の負担を軽減する方向へ作用する。

「実施例」 本発明の実施例について図面を参照し説明する。第１
図は本発明の送りねじ装置に使用する送りねじ１を示す
正面図である。この送りねじ１は、軸２に粗いピッチで
巻回されたコイル状ばね部材３を挿通して組立てられて
いる。コイル状ばね部材３は径が0.3〜2mm程度のピアノ
線，銅線，ステンレス線等の弾性を有する線材をピッチ
の粗い螺旋状に巻回し成形したばね部材であり、自由状
態でそのリード角及びリードが所定の値になるように成
形されている。コイル状ばね部材３はその弾性により伸
縮自在である。軸２はステンレスの引抜材により形成さ
れ、コイル状ばね部材３の内径よりやや小さな外径を有
する。軸２の両端付近にはスナップワッシャを係合させ
るための環状溝4,5が形成され、一方の軸端には駆動ユ
ニットの駆動軸に係合するため面取り部６が形成されて
いる。コイル状ばね部材３の内周部に上記軸２が挿通さ
れ、全長のうちの中央部分７においてのみ、コイル状ば
ね部材３は軸２にろう付されている。

第２図は、そのろう付部分７を示す縦断面図である。
コイル状ばね部材３の線材は軸方向の中央部分７の２〜
３周の巻回範囲においてのみ軸２にろう材８によりろう
付され固着されている。このため、コイル状ばね部材３
は軸２と一体に回転するが、ろう付された中央部分７以
外の両端部では弾性変形により伸縮することができる。
上記軸２及びコイル状ばね部材３により送りねじ１が構
成され、軸２に部分的に固着されたコイル状ばね部材３
が送りナットに係合するねじ部として使用される。

第３図は上記の送りねじを有する送りねじ装置を使用
したワイヤ除帯電器の清掃装置を示す平面図、第４図は
正面図であり、一部を破断して示している。ワイヤ除帯
電器は細いワイヤ11からコロナ放電を生じしめて静電記
録装置の感光体や転写紙を除帯電する機器であり、その
ワイヤ11に付着したカーボン粉等を除去するための清掃
装置である。

フレーム12は金属板をプレス加工して形成され、中央
に長手方向に走る溝13が形成されていると共に、側壁部
14,14′を有している。フレーム12の上面の両端にはそ
れぞれワイヤブラケット15,16が固定されている。左の
ワイヤブラケット15に設けられたビス17と、右のワイヤ
ブラケット16に設けられた引張りばね18との間にワイヤ
11が張設され、それぞれのＶブロック19,19′によりワ
イヤ11の中央部の張設位置が決められている。そして、
右端のブラケット16に設けられたプラグ20からワイヤ11
に高圧直流電圧が印加され、ワイヤ11からコロナ放電を
生じしめる。

フレーム12の下面の両端付近には、それぞれ軸受21,2
2が設けられ、その軸受21,22に前述した送りねじ１が回
転自在に支承されている。送りねじ１は環状溝4,5に嵌
着されたスナップワッシャ23,23′により軸受21,22から
の抜け止めがなされている。送りねじ１のねじ部をなす
コイル状ばね部材３に、送りナット25が係合されてい
る。送りナット25はその一部がフレーム12の溝13から上
方に突出するようにされ、突出した部分にクリーナ26が
固着されている。送りナット25及びクリーナ26はフレー
ム12の溝13に案内されて長手方向に移動可能である。ク
リーナ26は、内部にワイヤ11と摺接するパッドを有し、
長手方向への往復移動によりワイヤ11を清掃する。

第５図は送りナット25を示す側面図、第６図は縦断面
図である。送りナット25は樹脂成形品であり、前記送り
ねじ１が挿通される筒状部27と、フレーム12の溝13に挿
入され案内される角状突出部28と、クリーナ26を固着す
るためのピン部29とを有する。筒状部27内にはコイル状
ばね部材３の線材の間隙に嵌り込み係合する螺旋状のね
じ部30が形成されている。このねじ部30のリードは自由
状態のコイル状ばね部材３のリードと等しくされ、有効
巻線数は１回転以下である。また、ねじ部30の歯厚はコ
イル状ばね部材３との噛合に適当ながたを生ずるよう
に、線材の間隙に比べてやや薄く形成されている。

再び第４図を参照し、フレーム12の左端には送りねじ
１を回転駆動する駆動ユニット40が固定されている。駆
動ユニット40は樹脂ケース41内に収納された小型直流モ
ータ42と減速ギヤ列からなる。第７図は、第４図の矢印
VII方向矢視から見た駆動ユニット40単体を示す側面図
である。モータ42は出力端43が上方向を向くように配置
され、モータ42の出力軸43にはウォームギヤ44が直結さ
れている。樹脂ケース41には送りねじ１と平行な方向に
ホイール軸45及び駆動軸46が回転自在に支承されてい
る。ホイール軸45にはウォームホイール47及び平歯車48
が固定され、ウォームホイール47は前記ウォームギヤ44
に噛合する。また、駆動軸46に設けられた平歯車49はホ
イール軸45の平歯車48と噛合する。駆動軸46は両方の軸
端面が樹脂ケース41から露出するようにされ、その両軸
端面に平滑50,50′が形成されている。その一方の軸端
面の平滑50′に、送りねじ１の軸端の面取り部６が嵌挿
されて送りねじ１と駆動ユニット40とが連結されてい
る。モータ42を回転すると、ウォームギヤ44,ウォーム
ホイール47,2つの平歯車48,49の順に回転が伝えられ、
減速されて駆動軸46及び送りねじ１が一体に回転駆動さ
れる。モータ42のリード線51は樹脂ケース41の外部に引
出されている。

作動について説明する。送りナット25及びクリーナ26
は、クリーナ26が左右のワイヤブラケット15,16に当接
する位置をストローク端として直線移動可能である。常
時は、クリーナ26が左のワイヤブラケット15に当接した
一方のストローク端たるホームポジションに待機し、ワ
イヤ11の清掃時に右のワイヤブラケット16との間を往復
移動する。

まず、モータ42に正電圧が与えられると送りねじ１が
左回転し、送りねじ１のコイル状ばね部材３と送りナッ
ト25のねじ部30との噛合により、送りナット25及びクリ
ーナ26が右方向に送られる。やがて、クリーナ26が右ワ
イヤブラケット16に当接する他方のストローク端（以
下、単にストローク端という）に到着すると、図示しな
いフォトセンサによりこれを検出し、その後さらに１秒
程度の短時間モータ42への通電を続け、クリーナ26を確
実に右ワイヤブラケット16に当接せしめてモータ42への
通電を遮断する。

このとき、送りねじ１は次のように作動する。ストロ
ーク端付近では送りナット25はコイル状ばね部材３の全
長のうち右端付近に噛合している。この付近ではコイル
状ばね部材３は自由に弾性変形できるため、その軸方向
及び回転方向の弾性変形によりクリーナ26が右ワイヤブ
ラケット16に衝突した際の衝撃を緩和する。衝突の衝撃
による反力は送りねじ１から駆動ユニット40に伝わり、
ウォームホイール47とウォームギヤ44の噛合によりモー
タ42の出力軸43へのスラスト力として伝えられる。しか
し、コイルばね部材３のばね作用により緩衝されている
ため、モータ42の出力軸43に過大なスラスト力を与えな
い。クリーナ26が右ワイヤブラケット16に当接したスト
ローク端の位置では、コイル状ばね部材３が軸方向には
若干縮み、駆動ユニット40側から見て左回転方向に若干
変形した状態で止まる。

次に、通電の遮断後0.5秒程度経過後に、モータ42に
負電圧を与え逆転を開始させる。

このとき、モータ42の出力軸43に掛かっているスラス
ト力は、前述のように、コイル状ばね部材３のばね作用
により緩衝された比較的小さい力であるので、スラスト
力に起因する摩擦力がモータ42の起動トルクを上廻るこ
とはなく、モータ42は確実に逆回転を開始することがで
きる。さらに、コイルばね部材３の前記左回転方向への
変形による付勢力は、モータ42の逆回転を助ける方向に
作用するので、モータ42の逆回転起動を容易にする。

モータ42が逆回転を開始した直後は、コイル状ばね部
材３の変形が元に戻り、さらに、送りナット25のねじ部
とのがたの間を回転する間は、送りナット25及びクリー
ナ26は停止したままである。すなわち、モータ42が逆回
転を開始してしばらく回転を続ける間は、送りナット25
及びクリーナ26はモータ42の負荷とはならない。このこ
とは、送りナット25及びクリーナ26からなる往復移動体
の静止摩擦がモータ起動時の負荷とならず、モータ42が
起動を完了し安定に回転を始めた後に負荷としてモータ
42に掛かることになり、モータ42の逆転起動を極めてス
ムーズにする。

モータ42の逆回転が続き、送りナット25及びクリーナ
26の左方向への移動が開始され、やがて、クリーナ26が
左ワイヤブラケット15に当接するホームポジションに到
着すると、図示しないフォトセンサによりこれを検出
し、その後１秒程度モータ42への通電を続けた後、通電
を遮断する。

このときの送りねじ１の作動は、前述のストローク端
で説明した作動と全く同じである。以下、適当な回数だ
けクリーナ26及び送りナット25を往復移動せしめて、ワ
イヤ11の清掃を完了する。

以上説明した実施例では、軸２の中央部においてコイ
ルばね部材３の中央部分７をろう付固着し、コイル状ば
ね部材３の両端部は自由に弾性変形できるようにした。
しかし、本発明は中央部７を一箇所のみ軸２に固着する
ものに限られない。要は、コイル状ばね部材３が軸２と
一体に回転するように何処かで軸２に固着されており、
ストローク端付近など必要な部分では伸縮自在な状態に
されていればよいからである。

たとえば、ストロークの長い送りねじでは、軸の全長
の何箇所かでコイル状ばね部材をろう付固着し、コイル
状ばね部材の両端部のみ自由に伸縮できるようにしても
よい。また、中央部ではなく、コイル状ばね部材の両端
を軸にろう付固着し、中央部においてコイル状ばね部材
が伸縮可能なようにしてもよい。コイル状ばね部材３を
何処で軸２に固着するかは、送りねじ１の用途と、コイ
ル状ばね部材３のばね定数により定められるものであ
る。

また、本発明はワイヤ除帯電器の清掃装置に限定され
るものではなく、送り途中での高い位置精度を要求され
ず、往復移動体をストッパ等に当接させるようにして用
いる送り機構の送りねじ装置として、広く適用されるも
のである。

「発明の効果」 本発明の送りねじ装置は上記の構成を有し、その送り
ねじはコイル状ばね部材を軸方向の一部分でのみ軸に固
着してなるものであるから、送りねじ自体に緩衝作用が
あるという優れた効果がある。

また、ストッパに衝突させた後の反転駆動時に必要な
起動トルクを小さくすることができ、円滑な反転起動を
行うことができるという優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示し、第１図は送りねじを示す
正面図、第２図はコイル状ばね部材のろう付部分を拡大
して示す断面図、第３図は適用例であるワイヤ除帯電器
の清掃装置を示す平面図、第４図は正面図、第５図は送
りナットを示す側面図、第６図はその縦断面図、第７図
は駆動ユニットを示す側面図である。 １……送りねじ、２……軸、３……コイル状ばね部材、
７……中央部分（ろう付部分）、８……ろう材、15、16
……ワイヤブラケット、25……送りナット、30……送り
ナットのねじ部、40……駆動ユニット、42……モータ、
44……ウォームギヤ、47……ウォームホイール。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】軸にねじ部が設けられ、前記軸の回転によ
   り前記ねじ部に螺合された送りナットを所定ストローク
   の間で前記軸に沿い往復移動させる送りねじ装置であっ
   て、 前記軸を回転駆動する回転駆動手段と、 前記所定ストロークのストローク端に設けられて前記送
   りナットの移動を阻止するストッパ部材と、 前記軸に巻回されて前記ねじ部を形成し、軸方向の一部
   で前記軸に固着されるとともに、前記ストローク端部分
   では自由に弾性変形可能なコイル状ばね部材と を備えることを特徴とする送りねじ装置。