JP2680567B2 - 高強度低合金耐熱鋼 - Google Patents
高強度低合金耐熱鋼Info
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Description
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、高強度低合金耐熱鋼に関し、例えば、発電
用ボイラや化学プラントの熱交換器、配管等の鋼管材、
高温耐圧バルブ等の鋳鍛鋼品、高温で使用される吊金
具、支持材等の丸鋼、形鋼、鋼板等に適用される高強度
低合金耐熱鋼に関する。 〔従来の技術〕 従来、耐熱鋼としては、オーステナイト系ステンレス
鋼,9Cr鋼,12Cr鋼,2 1/4Cr−1Mo鋼(STBA24),1.5%以下
のCrを含有する低合金鋼等がある。 〔発明が解決しようとする問題点〕 上記の従来の耐熱鋼の場合、約600℃までの高温で使
用することを条件とすると、次のような問題点がある。 1) オーステナイト系ステンレス鋼;高温強度、靭
性、加工性は良好であるが、使用環境によつては応力腐
食割れ、粒界腐食が生じる欠点がある。また、材料価格
が高い。 2) 9Cr鋼及び12Cr鋼;種々の鋼種があるが、STBA26
(9Cr−1Mo鋼)やDIN規格X20CrMoV121(12Cr−1Mo−V
鋼)はC量が約0.13〜0.25wt%と高いために、溶接割れ
が発生しやすく、また加工性が劣る。最近開発された低
c系で、V及びNbを添加した9Cr鋼及び12Cr鋼は上記の
高C系の鋼種に比べ、溶接性及び高温強度とも改善され
ているが、2 1/4Cr−1Mo鋼などの低合金鋼に比べ、熱伝
導率が低く、全般に溶接作業性が劣る。 3) 2 1/4Cr−1Mo鋼(STBA24);この鋼は約600℃ま
で使用できる耐酸化性があり、STBA26を含めた低合金鋼
の中では最も高温強度が優れ、溶接性及び加工性が良好
である。しかし、最近開発された高強度の9Cr鋼及び12C
r鋼やオーステナイト系ステンレス鋼に比べ、高温強度
が劣るため、本鋼を使用する場合、600℃付近の設計温
度では極厚となり、配管等の大径管では、大きな熱応力
が発生することになる。 4) 1.5%以下のCrを含有する低合金鋼;2 1/4Cr−1Mo
鋼に比べて高温強度が低く、耐酸化性が劣るため、使用
限界温度が低い欠点がある。 本発明は、上記のような従来鋼種の欠点をなくし、約
600℃までの温度域で使用される安価な高強度鋼で、基
本的には従来のSTBA24(2 1/4Cr−1Mo鋼)の高温強度を
大巾に改善し、約600℃までオーステナイト系ステンレ
ス鋼及び高強度9Cr鋼や12Cr鋼に代えて使用できるもの
を提供するものである。 従つて、本発明では、熱伝導率が高く、溶接性、加工
性の優れた2 1/4Cr−1Mo鋼の特性をそのまま生かし、下
記の高温強度を有する鋼を提供することを目標とする。 すなわち、これらの強度は従来鋼種である2 1/4Cr−1
Mo鋼のクリープ破断強度のデータバンドの上限値であ
り、これ以上の強度を有する2 1/4Cr−1Mo鋼であれば、
従来のオーステナイト系ステンレス鋼、9Cr鋼、12Cr鋼
に代えて約600℃まで使用できるものである。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明は、 (1)重量%で、 C=0.03%以上で、0.10%未満、 Si≦1%、 Mn=0.2〜1%、 P≦0.03%、 S≦0.03%、 Ni≦0.8%、 Cr=1.5〜3%、 Mo=0.5〜1.5%、 V=0.05〜0.35%、 Nb=0.01〜0.12%、 N=0.01〜0.05%、 W=0.5〜1.5%を含み 残部Fe及び不可避の不純物からなることを特徴とする高
強度低合金耐熱鋼、及び、 (2)重量%で、 C=0.03%以上で、0.10%未満、 Si≦1%、 Mn=0.2〜1%、 P≦0.03%、 S≦0.03%、 Ni≦0.8%、 Cr=1.5〜3%、 Mo=0.5〜1.5%、 V=0.05〜0.35%、 Nb=0.01〜0.12%、 N=0.01〜0.05%、 W=0.5〜1.5%を含み、 更に、 B=0.0005〜0.015%、 Al≦0.05%及び Ti=0.05〜0.12%の1種以上を含み 残部Fe及び不可避の不純物からなることを特徴とする高
強度低合金耐熱鋼である。 本発明鋼の金属組織は、フエライト+ベーナイトであ
り、通常の2 1/4Cr−1Mo鋼に比べ、フエライトの量が多
い。このフエライト相内には微細なVN析出物が生成す
る。 また本発明鋼における成分範囲の限定理由は、次の通
りである。 1) CはCr,Mo,W,V,Nb,Tiとともに炭化物を形成し、
クリープ強度を上昇させる。しかし、0.10wt%以上では
溶接割れが生じやすく、また却つてクリープ強度を低下
させることになる。一方、クリープ強度上昇のためには
0.03wt%以上が必要であり、これを下廻るとクリープ強
度が低下する。従つて、0.03wt%以上で0.10%未満とし
た。好ましくは0.05〜0.09wt%である。 2) Siは、脱酸剤として用いられ、強度上昇、耐酸化
性向上に寄与するが、1wt%を越えて添加すると靭性が
低下し、クリープ延性を低下させるので、1wt%以下と
した。好ましくは0.2wt%以下である。 3) Mnは、Siと同様に脱酸剤としての効果を有し、焼
入れ性を向上させるが、0.2wt%未満ではその効果が少
なく、また1wt%を越えて添加すると脆化しやすいの
で、0.2〜1wt%とした。好ましくは、0.4〜0.6wt%であ
る。 4) P及びSは、不純物元素として靭性を低下させ、
機械的性質を劣化させるので、ともに0.03wt%以下とし
た。好ましくは、Pは0.01wt%以下、Sは0.005wt%以
下である。 5) Niは焼入れ性を向上させ、靭性を改善する元素で
あるが、0.8wt%を越えて添加すると硬化性が大きくな
り、溶接性が低下すると同時にクリープ破断強度を低下
させるので、0.8wt%以下とした。好ましくは、0.4wt%
以下である。 6) Crは耐酸化性を高め、適正な量であれば炭化物形
成元素としてクリープ破断強度を高めるが、添加量が多
くなると熱伝導率が小さくなるとともに、却つてクリー
プ破断強度を低下させる。また、1.5wt%を下廻る量で
は耐酸化性の面から約600℃まで使用することは困難に
なり、クリープ破断硬化も低下する。そこで、下限を1.
5wt%、上限3wt%とした。好ましくは1.8〜2.4%であ
り、最も好ましくは下限の上限と中央である2.25wt%で
あり、それにより±0.75wt%の範囲内では目的とする良
好な高温強度及び耐酸化性が得られる。 7) Moは母地に固溶するとともに炭化物等の析出物を
形成してクリープ破断強度を高めるが、0.5wt%未満で
は不十分であり、また1.5wt%を越えて添加してもその
効果は飽和し、靭性が低下してくる。また、Moの多量添
加は熱間加工性を阻害するので、成分範囲を0.5〜1.5wt
%とした。好ましくは、0.7〜1.3wt%である。 8) Vは炭化物が生成するとともに、Nと化合してVN
がフエライト地中に析出し、クリープ破断強度を著しく
高める効果がある。その効果は0.05wt%以上で現われ、
0.35wt%を越えると溶接割れ感受性を高め、溶接性が劣
化する。従つて、0.05〜0.35wt%とした。好ましくは、
0.15〜0.3wt%である。 9) Nbは炭窒化物を生成し、短時間側のクリープ破断
強度を高め、Vとの複合添加によつて、V炭窒化物を微
細に、また良好な分散状態で析出させる効果があり、そ
の効果は0.01wt%以上で現われる。また、0.12wt%を越
えて添加しても、その効果は飽和し、却つて、長時間側
のクリープ破断強度を低下させる原因となる。また、多
量添加した場合には溶接性を低下させる。従つて、0.01
〜0.12wt%を成分範囲とした。好ましくは、0.01〜0.05
wt%である。 10) NはCの代替元素としての役割りを果すととも
に、V及びNbなどの窒化物あるいは炭窒化物を形成し、
クリープ破断強度を著しく上昇させる。その効果は0.01
wt%未満では不十分であり、0.05wt%を越えて添加する
と焼入れ硬化性が高くなり、溶接性を阻害するので、範
囲を0.01〜0.05wt%とした。好ましくは、0.01〜0.03wt
%である。 11) Wは上記成分に加えて添加することにより、Moの
添加量を減じ、またMoとともにフエライト地に固溶して
高温強度を著しく高める。その効果は、0.5wt%未満で
は十分ではなく、また1.5wt%を越えて添加しても飽和
する。さらに、1.5wt%を越えて添加した場合、熱間加
工性を阻害し、靭性が低下する。従つて0.5〜1.5wt%と
した。好ましくは、0.7〜1.2wt%である。 12) Bは、粒界の強度を高める元素であり、クリープ
破断強度及び延性を上昇させる。その効果は0.0005wt%
未満では不十分であり、0.015wt%を越えて添加した場
合、熱間加工性を阻害するとともに、常温強度が高くな
り、加工性を低下させる。従って、成分範囲は0.0005〜
0.015wt%、好ましくは0.001〜0.005wt%である。 13) Alは脱酸剤としても有効であるが、0.05wt%を越
えて多量に含有した場合、結晶粒を小さくし、クリープ
破断強度を低下させる。一方で、低温靭性を向上させる
効果を有する。従って、成分範囲は0.05wt%以下で、好
ましくは0.015wt%である。 14) Tiは炭化物を形成してクリープ破断強度を上昇さ
せる。その効果は0.05wt%未満では十分ではなく、ま
た、0.12wt%を越えて添加した場合、低温靭性を低下さ
せる。従って、成分範囲は0.12wt%以下で、好ましくは
0.05〜0.12wt%、より好ましくは0.05〜0.1wt%であ
る。 上記のW,B,Al,Tiは、本発明鋼におけるフエライトを
安定化する効果があり、フエライト地の強化析出物VNの
析出を促し、間接的に高温強度(クリープ破断強度)を
高めるのに役立つ。本発明は、この中でWを上記の範囲
内で必須とする第1の発明、及び、Wを必須とし、さら
に、B,Al及びTiを上記の範囲内で1種以上を含有する第
2の発明である。 また、通常、2 1/4Cr−1Mo鋼は約930℃で焼なまし処
理をして使用されるが、上記組成の本発明鋼の高温強度
を一層上昇させるためには900℃以上の温度での焼なら
し、680℃以上の温度での焼戻しが有効である。すなわ
ち、本発明鋼は基本的にV及びNbを含有しており、それ
らの炭窒化物の作用によつて高温強度を高めるものであ
り、そのためには高温においてV及びNbを母地中に十分
に固溶させる必要がある。900℃未満の温度では、V及
びNbの固溶量は不十分であり、高温強度が低下する。ま
た、焼ならしのままでは硬さが高く、靭性も低いので、
十分に焼戻し、軟化させる必要がある。2 1/4Cr−1Mo鋼
では、応力除去焼鈍などの熱処理は約700℃で行なわれ
るので、この温度を目安とし、680℃以上を焼戻し温度
とした。 また、これより低い温度では十分な軟化が得られな
い。 〔実施例〕 第1表に、第1の発明に対応する本発明鋼7、及び、
第2の発明に対応する本発明鋼1〜6及び本発明鋼8〜
11の化学成分を示す。供試材は大気中高周波溶解炉によ
り各々50kg溶製した後、950〜1100℃の範囲で熱間鍛造
し、断面が40×20mmの棒に仕上げた。 熱処理は、1050℃AC+750℃AC、950℃Ac+700℃A
c、930℃FCの3通りとした。 試験片は上記棒状素材より鍛造方向に直角に採取し、
常温引張試験、600℃でのクリープ破断試験及び2mm Vノ
ッチシヤルピー衝撃試験を0℃で実施した。 第2表に試験結果を示すが、600℃クリープ破断強度
は最長約8000hまでの試験結果から内外挿により103hを
破断強度及び104h破断強度を求めた。 第2表から明らかなように、本発明鋼のクリープ破断
強度は全て、第1、2表中比較鋼12、13として示す従来
のSTBA24(2 1/4Cr−1Mo鋼)のデータバンドの上限値に
上廻つており、本発明鋼がすぐれた高温強度を有してい
ることが確認できた。また、引張性質及びシヤルピン衝
撃値も良好であつた。 〔発明の効果〕 実施例で述べたように本発明鋼は、良好な機械的性質
を有すると同時に、600℃においてオーステナイト系ス
テンレス鋼や高強度の9Cr鋼と及び12Cr鋼と同等以上の
スリープ破断強度を有する。これは、2 1/4Cr−1Mo鋼へ
の各種合金元素、特にV,Nbの添加と、C量を2 1/4−1Mo
鋼より低くしたことによつて得られたものである。C量
を低くすることは、溶接性向上の面からも効果的であ
り、これによつて予熱、後熱処理を省略することも可能
である。また、焼戻し温度を680℃以上、より好ましく
は700℃以上とすれば、軟化が良好となり、加工性も良
好となる。
用ボイラや化学プラントの熱交換器、配管等の鋼管材、
高温耐圧バルブ等の鋳鍛鋼品、高温で使用される吊金
具、支持材等の丸鋼、形鋼、鋼板等に適用される高強度
低合金耐熱鋼に関する。 〔従来の技術〕 従来、耐熱鋼としては、オーステナイト系ステンレス
鋼,9Cr鋼,12Cr鋼,2 1/4Cr−1Mo鋼(STBA24),1.5%以下
のCrを含有する低合金鋼等がある。 〔発明が解決しようとする問題点〕 上記の従来の耐熱鋼の場合、約600℃までの高温で使
用することを条件とすると、次のような問題点がある。 1) オーステナイト系ステンレス鋼;高温強度、靭
性、加工性は良好であるが、使用環境によつては応力腐
食割れ、粒界腐食が生じる欠点がある。また、材料価格
が高い。 2) 9Cr鋼及び12Cr鋼;種々の鋼種があるが、STBA26
(9Cr−1Mo鋼)やDIN規格X20CrMoV121(12Cr−1Mo−V
鋼)はC量が約0.13〜0.25wt%と高いために、溶接割れ
が発生しやすく、また加工性が劣る。最近開発された低
c系で、V及びNbを添加した9Cr鋼及び12Cr鋼は上記の
高C系の鋼種に比べ、溶接性及び高温強度とも改善され
ているが、2 1/4Cr−1Mo鋼などの低合金鋼に比べ、熱伝
導率が低く、全般に溶接作業性が劣る。 3) 2 1/4Cr−1Mo鋼(STBA24);この鋼は約600℃ま
で使用できる耐酸化性があり、STBA26を含めた低合金鋼
の中では最も高温強度が優れ、溶接性及び加工性が良好
である。しかし、最近開発された高強度の9Cr鋼及び12C
r鋼やオーステナイト系ステンレス鋼に比べ、高温強度
が劣るため、本鋼を使用する場合、600℃付近の設計温
度では極厚となり、配管等の大径管では、大きな熱応力
が発生することになる。 4) 1.5%以下のCrを含有する低合金鋼;2 1/4Cr−1Mo
鋼に比べて高温強度が低く、耐酸化性が劣るため、使用
限界温度が低い欠点がある。 本発明は、上記のような従来鋼種の欠点をなくし、約
600℃までの温度域で使用される安価な高強度鋼で、基
本的には従来のSTBA24(2 1/4Cr−1Mo鋼)の高温強度を
大巾に改善し、約600℃までオーステナイト系ステンレ
ス鋼及び高強度9Cr鋼や12Cr鋼に代えて使用できるもの
を提供するものである。 従つて、本発明では、熱伝導率が高く、溶接性、加工
性の優れた2 1/4Cr−1Mo鋼の特性をそのまま生かし、下
記の高温強度を有する鋼を提供することを目標とする。 すなわち、これらの強度は従来鋼種である2 1/4Cr−1
Mo鋼のクリープ破断強度のデータバンドの上限値であ
り、これ以上の強度を有する2 1/4Cr−1Mo鋼であれば、
従来のオーステナイト系ステンレス鋼、9Cr鋼、12Cr鋼
に代えて約600℃まで使用できるものである。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明は、 (1)重量%で、 C=0.03%以上で、0.10%未満、 Si≦1%、 Mn=0.2〜1%、 P≦0.03%、 S≦0.03%、 Ni≦0.8%、 Cr=1.5〜3%、 Mo=0.5〜1.5%、 V=0.05〜0.35%、 Nb=0.01〜0.12%、 N=0.01〜0.05%、 W=0.5〜1.5%を含み 残部Fe及び不可避の不純物からなることを特徴とする高
強度低合金耐熱鋼、及び、 (2)重量%で、 C=0.03%以上で、0.10%未満、 Si≦1%、 Mn=0.2〜1%、 P≦0.03%、 S≦0.03%、 Ni≦0.8%、 Cr=1.5〜3%、 Mo=0.5〜1.5%、 V=0.05〜0.35%、 Nb=0.01〜0.12%、 N=0.01〜0.05%、 W=0.5〜1.5%を含み、 更に、 B=0.0005〜0.015%、 Al≦0.05%及び Ti=0.05〜0.12%の1種以上を含み 残部Fe及び不可避の不純物からなることを特徴とする高
強度低合金耐熱鋼である。 本発明鋼の金属組織は、フエライト+ベーナイトであ
り、通常の2 1/4Cr−1Mo鋼に比べ、フエライトの量が多
い。このフエライト相内には微細なVN析出物が生成す
る。 また本発明鋼における成分範囲の限定理由は、次の通
りである。 1) CはCr,Mo,W,V,Nb,Tiとともに炭化物を形成し、
クリープ強度を上昇させる。しかし、0.10wt%以上では
溶接割れが生じやすく、また却つてクリープ強度を低下
させることになる。一方、クリープ強度上昇のためには
0.03wt%以上が必要であり、これを下廻るとクリープ強
度が低下する。従つて、0.03wt%以上で0.10%未満とし
た。好ましくは0.05〜0.09wt%である。 2) Siは、脱酸剤として用いられ、強度上昇、耐酸化
性向上に寄与するが、1wt%を越えて添加すると靭性が
低下し、クリープ延性を低下させるので、1wt%以下と
した。好ましくは0.2wt%以下である。 3) Mnは、Siと同様に脱酸剤としての効果を有し、焼
入れ性を向上させるが、0.2wt%未満ではその効果が少
なく、また1wt%を越えて添加すると脆化しやすいの
で、0.2〜1wt%とした。好ましくは、0.4〜0.6wt%であ
る。 4) P及びSは、不純物元素として靭性を低下させ、
機械的性質を劣化させるので、ともに0.03wt%以下とし
た。好ましくは、Pは0.01wt%以下、Sは0.005wt%以
下である。 5) Niは焼入れ性を向上させ、靭性を改善する元素で
あるが、0.8wt%を越えて添加すると硬化性が大きくな
り、溶接性が低下すると同時にクリープ破断強度を低下
させるので、0.8wt%以下とした。好ましくは、0.4wt%
以下である。 6) Crは耐酸化性を高め、適正な量であれば炭化物形
成元素としてクリープ破断強度を高めるが、添加量が多
くなると熱伝導率が小さくなるとともに、却つてクリー
プ破断強度を低下させる。また、1.5wt%を下廻る量で
は耐酸化性の面から約600℃まで使用することは困難に
なり、クリープ破断硬化も低下する。そこで、下限を1.
5wt%、上限3wt%とした。好ましくは1.8〜2.4%であ
り、最も好ましくは下限の上限と中央である2.25wt%で
あり、それにより±0.75wt%の範囲内では目的とする良
好な高温強度及び耐酸化性が得られる。 7) Moは母地に固溶するとともに炭化物等の析出物を
形成してクリープ破断強度を高めるが、0.5wt%未満で
は不十分であり、また1.5wt%を越えて添加してもその
効果は飽和し、靭性が低下してくる。また、Moの多量添
加は熱間加工性を阻害するので、成分範囲を0.5〜1.5wt
%とした。好ましくは、0.7〜1.3wt%である。 8) Vは炭化物が生成するとともに、Nと化合してVN
がフエライト地中に析出し、クリープ破断強度を著しく
高める効果がある。その効果は0.05wt%以上で現われ、
0.35wt%を越えると溶接割れ感受性を高め、溶接性が劣
化する。従つて、0.05〜0.35wt%とした。好ましくは、
0.15〜0.3wt%である。 9) Nbは炭窒化物を生成し、短時間側のクリープ破断
強度を高め、Vとの複合添加によつて、V炭窒化物を微
細に、また良好な分散状態で析出させる効果があり、そ
の効果は0.01wt%以上で現われる。また、0.12wt%を越
えて添加しても、その効果は飽和し、却つて、長時間側
のクリープ破断強度を低下させる原因となる。また、多
量添加した場合には溶接性を低下させる。従つて、0.01
〜0.12wt%を成分範囲とした。好ましくは、0.01〜0.05
wt%である。 10) NはCの代替元素としての役割りを果すととも
に、V及びNbなどの窒化物あるいは炭窒化物を形成し、
クリープ破断強度を著しく上昇させる。その効果は0.01
wt%未満では不十分であり、0.05wt%を越えて添加する
と焼入れ硬化性が高くなり、溶接性を阻害するので、範
囲を0.01〜0.05wt%とした。好ましくは、0.01〜0.03wt
%である。 11) Wは上記成分に加えて添加することにより、Moの
添加量を減じ、またMoとともにフエライト地に固溶して
高温強度を著しく高める。その効果は、0.5wt%未満で
は十分ではなく、また1.5wt%を越えて添加しても飽和
する。さらに、1.5wt%を越えて添加した場合、熱間加
工性を阻害し、靭性が低下する。従つて0.5〜1.5wt%と
した。好ましくは、0.7〜1.2wt%である。 12) Bは、粒界の強度を高める元素であり、クリープ
破断強度及び延性を上昇させる。その効果は0.0005wt%
未満では不十分であり、0.015wt%を越えて添加した場
合、熱間加工性を阻害するとともに、常温強度が高くな
り、加工性を低下させる。従って、成分範囲は0.0005〜
0.015wt%、好ましくは0.001〜0.005wt%である。 13) Alは脱酸剤としても有効であるが、0.05wt%を越
えて多量に含有した場合、結晶粒を小さくし、クリープ
破断強度を低下させる。一方で、低温靭性を向上させる
効果を有する。従って、成分範囲は0.05wt%以下で、好
ましくは0.015wt%である。 14) Tiは炭化物を形成してクリープ破断強度を上昇さ
せる。その効果は0.05wt%未満では十分ではなく、ま
た、0.12wt%を越えて添加した場合、低温靭性を低下さ
せる。従って、成分範囲は0.12wt%以下で、好ましくは
0.05〜0.12wt%、より好ましくは0.05〜0.1wt%であ
る。 上記のW,B,Al,Tiは、本発明鋼におけるフエライトを
安定化する効果があり、フエライト地の強化析出物VNの
析出を促し、間接的に高温強度(クリープ破断強度)を
高めるのに役立つ。本発明は、この中でWを上記の範囲
内で必須とする第1の発明、及び、Wを必須とし、さら
に、B,Al及びTiを上記の範囲内で1種以上を含有する第
2の発明である。 また、通常、2 1/4Cr−1Mo鋼は約930℃で焼なまし処
理をして使用されるが、上記組成の本発明鋼の高温強度
を一層上昇させるためには900℃以上の温度での焼なら
し、680℃以上の温度での焼戻しが有効である。すなわ
ち、本発明鋼は基本的にV及びNbを含有しており、それ
らの炭窒化物の作用によつて高温強度を高めるものであ
り、そのためには高温においてV及びNbを母地中に十分
に固溶させる必要がある。900℃未満の温度では、V及
びNbの固溶量は不十分であり、高温強度が低下する。ま
た、焼ならしのままでは硬さが高く、靭性も低いので、
十分に焼戻し、軟化させる必要がある。2 1/4Cr−1Mo鋼
では、応力除去焼鈍などの熱処理は約700℃で行なわれ
るので、この温度を目安とし、680℃以上を焼戻し温度
とした。 また、これより低い温度では十分な軟化が得られな
い。 〔実施例〕 第1表に、第1の発明に対応する本発明鋼7、及び、
第2の発明に対応する本発明鋼1〜6及び本発明鋼8〜
11の化学成分を示す。供試材は大気中高周波溶解炉によ
り各々50kg溶製した後、950〜1100℃の範囲で熱間鍛造
し、断面が40×20mmの棒に仕上げた。 熱処理は、1050℃AC+750℃AC、950℃Ac+700℃A
c、930℃FCの3通りとした。 試験片は上記棒状素材より鍛造方向に直角に採取し、
常温引張試験、600℃でのクリープ破断試験及び2mm Vノ
ッチシヤルピー衝撃試験を0℃で実施した。 第2表に試験結果を示すが、600℃クリープ破断強度
は最長約8000hまでの試験結果から内外挿により103hを
破断強度及び104h破断強度を求めた。 第2表から明らかなように、本発明鋼のクリープ破断
強度は全て、第1、2表中比較鋼12、13として示す従来
のSTBA24(2 1/4Cr−1Mo鋼)のデータバンドの上限値に
上廻つており、本発明鋼がすぐれた高温強度を有してい
ることが確認できた。また、引張性質及びシヤルピン衝
撃値も良好であつた。 〔発明の効果〕 実施例で述べたように本発明鋼は、良好な機械的性質
を有すると同時に、600℃においてオーステナイト系ス
テンレス鋼や高強度の9Cr鋼と及び12Cr鋼と同等以上の
スリープ破断強度を有する。これは、2 1/4Cr−1Mo鋼へ
の各種合金元素、特にV,Nbの添加と、C量を2 1/4−1Mo
鋼より低くしたことによつて得られたものである。C量
を低くすることは、溶接性向上の面からも効果的であ
り、これによつて予熱、後熱処理を省略することも可能
である。また、焼戻し温度を680℃以上、より好ましく
は700℃以上とすれば、軟化が良好となり、加工性も良
好となる。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.重量%で、 C=0.03%以上で、0.10%未満、 Si≦1%、 Mn=0.2〜1%、 P≦0.03%、 S≦0.03%、 Ni≦0.8%、 Cr=1.5〜3%、 Mo=0.5〜1.5%、 V=0.05〜0.35%、 Nb=0.01〜0.12%、 N=0.01〜0.05%、 W=0.5〜1.5%を含み 残部Fe及び不可避の不純物からなることを特徴とする高
強度低合金耐熱鋼。 2.重量%で、 C=0.03%以上で、0.10%未満、 Si≦1%、 Mn=0.2〜1%、 P≦0.03%、 S≦0.03%、 Ni≦0.8%、 Cr=1.5〜3%、 Mo=0.5〜1.5%、 V=0.05〜0.35%、 Nb=0.01〜0.12%、 N=0.01〜0.05%、 W=0.5〜1.5%を含み、 更に、 B=0.0005〜0.015%、 Al≦0.05%及び Ti=0.05〜0.12%の1種以上を含み 残部Fe及び不可避の不純物からなることを特徴とする高
強度低合金耐熱鋼。
Priority Applications (1)
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JP61206800A JP2680567B2 (ja) | 1986-09-04 | 1986-09-04 | 高強度低合金耐熱鋼 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP61206800A JP2680567B2 (ja) | 1986-09-04 | 1986-09-04 | 高強度低合金耐熱鋼 |
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-
1986
- 1986-09-04 JP JP61206800A patent/JP2680567B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPS6362848A (ja) | 1988-03-19 |
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