JP2656648B2 - インクジェットヘッド用基体、及び該基体を用いて形成されたインクジェットヘッド、並びに該ヘッドを具備するインクジェット装置 - Google Patents

インクジェットヘッド用基体、及び該基体を用いて形成されたインクジェットヘッド、並びに該ヘッドを具備するインクジェット装置

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JP2656648B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、電気熱変換体が発生する熱エネルギーを利
用してインクを吐出して記録を行うインクジェットヘッ
ド、及び該ヘッドを形成するために用いられる基体、並
びに前記ヘッドを具備するインクジェット装置に関す
る。
〔従来の技術〕
米国特許第4,723,129号明細書や米国特許第4,740,796
号明細書等に記載されているインクジェット方式(即
ち、キヤノン株式会社が呼称するところのバブルジェッ
ト方式)は、高速高密度で高精細高画質の記録が可能
で、且つカラー化、コンパクト化に適しており、近年と
みに注目を集めている。この方式を用いる装置の代表例
においては、インク(記録用液体等)を熱エネルギーを
利用して吐出させるため、インクに熱を作用させる熱作
用部が存在する。即ち、インク路に対応して熱作用部を
有する発熱抵抗体を設け、この発熱抵抗体から発生した
熱エネルギーを利用してインクを急激に加熱して発泡さ
せ、この発泡によってインクを吐出するものである。
この熱作用部は、対象物に熱を作用させるという観点
からすると、従来のいわゆるサーマルヘッドの構成と一
見類似している部分もあるが、熱作用部がインクに直接
接する点や、熱作用部がインクの発泡と消泡との繰り返
しによるキャビテーションがもたらす機械的衝撃、場合
によっては更にエロージョンにさらされるという点、ま
た熱作用部が10-1〜10マイクロ秒というオーダーの極め
て短い時間に100℃近い温度の上昇及び下降にさらされ
るといった点などで、サーマルヘッドとはその根本技術
が大きく異なる。従って、サーマルヘッド技術をバブル
ジェット技術にそのまま適用することができないことは
言うまでもない。即ち、サーマルヘッド技術とインクジ
ェット技術とを同列に論じることはできない。
ところで、インクジェット記録ヘッドが有する電気熱
変換体を構成する発熱抵抗体の材料としては、使用時に
非常に高温になるため、高温状態でも安定であり、かつ
耐酸化性に優れる、例えば高融点金属あるいは遷移金属
の、窒化物、炭化物、珪化物、硼化物などが使用されて
いる。
近年、インクジェット記録ヘッドを用いたインクジェ
ット装置における高密度記録および高速記録の要求に対
して、発熱抵抗体に加える電力を増加させる、あるいは
通電のパルス幅を短くするという方法がとられつつあ
る。その場合、発熱抵抗体はさらに高温に加熱されるの
で、より耐熱性のある発熱抵抗体が要求される。
また、記録密度を上げるため、発熱抵抗体の大きさを
小さくした場合、発熱抵抗体の面積抵抗はほぼ一定とさ
れるので、複数の発熱抵抗体全体における電気導体とし
ての抵抗値のみが増大するから、複数の発熱抵抗体全体
における電力消費が上昇することになる。
更に、電力増加が生じると駆動用ICの容量を大きくし
なければならなくなり、IC容量の増大はインクジェット
ヘッドの価格の上昇などを招く。
そこで、電力消費を低減しつつ高密度記録、高速記録
への要求に対応するために、例えば発熱抵抗体の比抵抗
を高くする種々の方法が検討されている。
例えば、発熱抵抗体の形状、膜厚を変えずにその比抵
抗を高くする方法として、発熱抵抗体の組成に、所定の
割合で窒素、酸素等を成分として追加し、所望の比抵抗
を得ようとするものがある。
一方、発熱抵抗体の材質を変えずにその膜厚を変化さ
せて高抵抗化を計る方法も知られている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上述の窒
素、酸素等を追加する方法によって高抵抗化した発熱抵
抗体では、駆動電力の増加に従って、抵抗値の大きな減
少にともなう消費電力の増加が観測された。これは、追
加された成分の多くが、基となる発熱抵抗体形成化合物
と遊離した状態で存在するために生じるためであると考
えられる。
一方、発熱抵抗体の膜厚を薄くして比抵抗を上げる場
合には、膜厚の制御を薄い領域で正確に行なう必要があ
るので製造上の安定性に問題がある上に、発熱抵抗体表
面での気体、水分吸着の効果が強く現われて発熱抵抗体
自体の安定性が悪くなるので、上述のような発熱抵抗体
の窒素、酸素等の追加による高抵抗化と比べて利点が一
層少ない。
本発明の目的の一つは、前述した問題点を解消し、比
抵抗値を高く設定でき、駆動電力の増加にともなう抵抗
値変化が少ない安定的な発熱抵抗体を有し、耐久性にお
いても優れた電気熱変換体を備えたインクジェット記録
ヘッド用基体、および該基体をその構成の一部とするイ
ンクジェット記録ヘッド、並びに該ヘッドを具備するイ
ンクジェット装置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明のインクジェットヘッド用基体は、インクを吐
出するために利用される熱エネルギーを通電されること
により発生する発熱抵抗体を有する電気熱変換体と、を
具備するインクジェットヘッド用基体において、 前記発熱抵抗体が金属元素、B、Si及びNを次の組成
割合で含有する複合化合物からなることを特徴とする。
8原子%≦金属元素≦31原子% 7原子%≦B≦58原子% 5原子%≦Si≦53原子% 6原子%≦N≦45原子% また、本発明のインクジェットヘッドは、インクを吐
出する吐出口と、該吐出口からインクを吐出するために
利用される熱エネルギーを通電されることにより発生す
る発熱抵抗体を有する電気熱変換体と、を具備するイン
クジェットヘッドにおいて、 前記発熱抵抗体が金属元素、B、Si及びNを上記の組
成割合で含有する複合化合物からなることを特徴とす
る。
更に、本発明のインクジェット装置は、インクを吐出
する吐出口と、該吐出口からインクを吐出するために利
用される熱エネルギーを通電されることにより発生する
発熱抵抗体を有する電気熱変換体と、を具備するインク
ジェットヘッドと、前記発熱抵抗体にインク吐出用信号
を付与するための手段と、を備えたインクジェット装置
において、 前記発熱抵抗体が金属元素、B、Si及びNを上記の組
成割合で含有する複合化合物からなることを特徴とす
る。
この様な本発明によれば、高品位記録、高速度記録及
び低消費電力記録等を、一層確実に実現することができ
る。
本発明者等は、前述した問題点を解消すべく鋭意研究
した結果、インクジェットヘッドの発熱抵抗体を、金属
元素、硼素(B)、珪素(Si)及び窒素(N)の4元素
を特定の組成割合で含有する複合化合物により構成する
場合、前述した目的を達成するインクジェットヘッドを
得られるという知見を得た。本発明に係る発熱抵抗体を
構成する複合化合物に含まれる金属元素は、Ti、V、C
r、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWからなる群から選択され
る一つ以上の元素であることが好ましく、中でもHfが最
適であることも分かった。そして、本発明者等は、これ
らの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
この様な4元素を特定の組成割合で含有する複合化合
物において、金属元素は主に硼化物を形成しており、Si
は後述する様に、窒化物の状態とSi単体の状態(即ち、
Si−Si結合の状態)との両者を主に含んでおり、これら
のことが結果的に極めて良好な特性をもたらしているも
のと想像される。
本発明者等は、前述した4元素を所定の組成割合で含
有するサンプルを、スパッタリング法により複数個作成
した。
それぞれのサンプルは、第4図に示すスパッタリング
装置(商品名:スパッタリング装置CFS−8EP、株式会社
徳田製作所製)を使用し、表面に5.0μmの熱酸化SiO2
膜を形成したSi単結晶基板上に成膜することにより作製
した。第4図において201は成膜室を示す。202は、成膜
室201内に設けられた基板203を保持するための基板ホル
ダーである。基板ホルダー202には基板203を加熱するた
めのヒーター(図示せず)が内蔵されている。基板ホル
ダー202は系外に設置された駆動モータ(図示せず)か
ら延びる回転シャフト217により支持され、上下移動で
き、かつ回転できるように設計されている。成膜室201
内の基板203に対向する位置には、成膜用ターゲットを
保持するためのターゲットホルダー205が設置されてい
る。206は、ターゲットホルダー205の表面に置かれた9
9.8重量%以上の純度の板状の金属硼化物ターゲットで
ある。207は、金属硼化物ターゲット上に配置された99.
9重量%以上の純度のシート状のSiターゲットである。
同様に208は、金属硼化物ターゲット上に配置された99.
9重量%以上の純度のシート状のSi3N4ターゲットであ
る。Siターゲット207とSi3N4ターゲット208は、第4図
に示すように、それぞれ所定面積の複数個を金属硼化物
ターゲット206の表面に所定の間隔で配置される。Siタ
ーゲット207とSi3N4ターゲット208の個々の面積及び配
置は、希望する4元素を所定の組成割合で含有する膜が
三者のターゲットの面積比の関係を如何にしたら得られ
るかを予め見極め、検量線を作製し、該検量線に基づい
て行うようにする。
218は、ターゲット206,207及び208が側面からプラズ
マによりスパッタされないようにそれらターゲットの側
面を覆う防護壁である。204は、ターゲットホルダー205
の上部の位置で基板203とターゲット206,207及び208の
間の空間を遮断するように水平に移動するように設けら
れたシャッター板である。該シャッター板204は、つぎ
のように使用される。即ち、成膜開始前に、ターゲット
206,207及び208を保持するターゲットホルダー205の上
部に移動させ、ガス供給管212を介してアルゴン(Ar)
ガス等の不活性ガスを成膜室201内に導入し、RF電源215
よりRF電力を印加して該ガスをプラズマ化し、生成した
プラズマによりターゲット206,207及び208をスパッタし
て該ターゲットのそれぞれの表面の不純物を除去する。
その後該シャッター板204は、成膜を害しない位置(図
示せず)に移動させる。
RF電源215は、導線216を介して成膜室201の周囲壁に
電気的に接続され、また、導線217を介してターゲット
ホルダー205に電気的に接続されている。214は、マッチ
ングボックスである。
ターゲットホルダー205には、成膜中にターゲット20
6,207及び208が所定の温度に保持されるように冷却水を
内部循環させる機構(図示せず)が設けられている。成
膜室201には、該成膜室の内部を排気するための排気管2
10が設けられており、該排気管は排気バルブ211を介し
て真空ポンプ(図示せず)に連通している。202は、成
膜室201内にアルゴンガス(Arガス)、ヘリュウムガス
(Heガス)等のスパッタリング用ガスを導入するための
ガス供給管である。213は、ガス供給管に設けられたス
パッタリング用ガスの流量調節バルブである。209は、
ターゲットホルダー205を成膜室201から電気的に絶縁す
るためにターゲットホルダー205と成膜室201の底壁との
間に設けられた絶縁碍子である。219は、成膜室201に設
けられた真空計である。該真空計により、成膜室201の
内圧が自動的に検知される。
第4図に示された装置においては、上述したようにタ
ーゲットホルダーが1つ設けられた形態のものである
が、複数のターゲットホルダーを設けることもできる。
その場合、それらのターゲットホルダーを成膜室201内
の基板203と対向する位置に同心円上に等間隔で配列す
る。そして、それぞれのターゲットホルダーには、個々
の独立したRF電源をマッチングボックスを介して電気的
に接続させる。上述の場合、3種のターゲット、即ち、
金属硼化物ターゲット、Siターゲット及びSi3N4ターゲ
ットを使用することから、3個のターゲットホルダーを
上述したように成膜室201内に配列し、それぞれのター
ゲットホルダー上にそれぞれのターゲットを個々に設置
する。この場合、個々のターゲットについて所定のRF電
力を独立に印加できるので、成膜する膜構成元素の組成
割合を変化させて金属、硼素、Si及びNの元素の1つ又
はそれ以上が膜厚方向に変化した膜を形成することがで
きる。
上述の第4図に示した装置を使用した各サンプルの作
製は、その都度金属硼化物ターゲット206上へのSiター
ゲット207及びSi3N4ターゲット208の配置を、得ようと
する所定の4元素の組成割合の非単結晶質物質(膜)に
ついての予め用意した検量線に基づいて行った以外は、
下記の成膜条件で行った。
基板ホルダー202上に配置した基板:5.0μm厚のSiO2
が表面に形成された4inchφサイズのSi単結晶基板(ワ
ッカー社製)(3枚) 基板設定温度:50℃ ベースプレッシャー:2.6×10-4Pa以下 高周波(RF)電力:500W スパッタリング用ガス及びガス圧:アルゴンガス、4×
10-3Torr 成膜時間:30分 以上のようにして得られた各サンプルのうちの一部の
試料について株式会社島津製作所製のEPM−810を使用し
てX線光電子分光を行って組成分析した。ついで、各サ
ンプルについて他の試料を使用して、膜厚及び比抵抗を
測定し、更に別の試料を使用して耐熱性及び耐衝撃性等
を観察するためのステップストレステスト(SST)を行
った。SSTは、後述するステップストレステストと同様
の手法により行った。これらの結果を総合して検討した
ところ、つぎの結論が得られた。
即ち、インクジェットヘッドの発熱抵抗体を構成する
複合化合物が、次の4元素を次の特定の組成割合で含有
する場合に、前述した問題点が飛躍的に解消し、特に高
抵抗で高温安定性に優れ、併せて耐久性も今までのもの
に勝るとも劣らない発熱抵抗体を得ることができる。
8原子%≦金属元素≦31原子% 7原子%≦B≦58原子% 5原子%≦Si≦53原子% 6原子%≦N≦45原子% また、4元素の特定の組成割合として好ましくは、次
の通りである。
15原子%≦金属元素≦24原子% 18原子%≦B≦38原子% 19原子%≦Si≦35原子% 18原子%≦N≦38原子% 更に、発熱抵抗体を構成する複合化合物中に含まれる
SiとNとの原子数比が次の範囲であることが、高抵抗で
高温安定性に優れた発熱抵抗体を得る上で好ましい。
0.6<Si/N≦2.5 加えて、SiとNとの原子数比は、更に好ましくは次の
通りである。
0.7<Si/N≦1.3 本発明に係る発熱抵抗体は、前述した複合化合物の各
構成要素を供給できる原料を用いた、蒸着法、スパッタ
リング法、CVD法等の各種の薄膜形成技術によって、支
持体上に所望の膜厚で形成することができる。
以下、本発明を図面を参照しつつ詳細に説明する。
第1図は、本発明のインクジェット記録ヘッド用基体
の一例の構造を示す部分断面図である。
この基体は、酸化シリコン、ガラスあるいはセラミッ
クスのような絶縁物、もしくはシリコン単結晶部材の表
面に熱酸化SiO2層が形成されたものなどを用いて形成さ
れた支持体1上に、発熱抵抗体2及び一対の対向する電
極3、4を有する電気熱変換体と、保護層5とを設けた
構造を有する。
発熱抵抗体2は、上記複合化合物の薄膜から形成され
ている。電極3、4に通電することで、発熱抵抗体2
の、これら電極の間の部分が、発熱する熱発生部2aを形
成している。電極3,4は、Al、Au、Cuのような金属によ
って代表される電気良導体で形成される。
保護膜5は、該基体を用いて作成されたインクジェッ
ト記録ヘッドが具備する電気熱変換体の、液路直下に位
置する部分がインクと接触するのを防ぐ機能を有するも
のであり、SiO2、SiCあるいはSiNなどの絶縁性材料等か
ら形成することができる。
なお、保護膜5は、単一材料で構成する必要は必ずし
もなく、前記材料の多層膜構成、あるいは液体(インク
等)と接する最表面にTaなどの耐キャビテーション用金
属薄膜層を設けた構造を有するものでも良い。
発熱抵抗体2は、上述の複合化合物からなる薄膜を、
フォトリソ工程等の適当なパターニング法によってパタ
ーニングして形成することができる。
その膜厚及び幅、並びに電極3,4の間隔等は、インク
ジェット記録ヘッドの設計に応じて該薄膜発熱抵抗体の
発熱部に必要な特性が得られるように適宜選択すれば良
い。
該複合化合物からなる薄膜は、膜厚制御の比較的容易
な膜厚(たとえば、500Å〜5μm)としても、所望と
する高比抵抗値を高駆動電力下において得ることができ
るという利点を有する。本発明に係る発熱抵抗体の層の
厚さは、好ましくは300Å〜2μm、より好ましくは700
Å〜1μm、最適には1000Å〜5000Åである。
第1図に示された構成のインクジェットヘッド用基体
の上に、少なくとも吐出口に連通する液路を形成して、
本発明のインクジェット記録ヘッドを得ることができ
る。
第2図および第3図に、本発明にかかるインクジェッ
ト記録ヘッドの一例の要部の基本構造を、夫々模式的斜
視図及び模式的断面図として示す。
この例では、上述の構成のインクジェットヘッド用基
体の上に、吐出口8に連通する液路9を、電気熱変換体
の熱発生部2aに対応して設けるための隔壁6及び該間隔
を覆う天板7が設けられている。
隔壁6は、液浸透防止と耐液作用に優れたエポキシ樹
脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の、例えば感光
性を有する有機絶縁物から選択された材料などを用い、
フォトリソ工程を含む方法など公知の方法を用いて形成
することができる。
第2図では、隔壁6によって、吐出口、液路、電気熱
変換体の熱発生部2aを含むインク吐出のための吐出単位
が区切られ、該吐出単位がマルチ化されている。
天板7は、各吐出単位における液路の天井に相当する
部分で、ガラス、金属板、セラミック、プラスチックな
どから選ばれた材料から形成することができる。
なお、隔壁6と天板7の接合には、エポキシ樹脂ある
いはシアノアクリレート樹脂などの接着剤を用いた接合
等が利用できる。
このインクジェット記録ヘッドでは、発熱抵抗体層の
材料として上述の高抵抗で高温安定性に優れる複合化合
物が用いられているので、該記録ヘッドは、高密度記録
および高速記録の要求に対して十分対応できる構成を有
する。
なお、本発明における発熱抵抗以外の構成は、上記し
た例に限定されず、種々の構成を取り得る。
例えば、図示した記録ヘッドは、熱発生部に液体が供
給される方向と、吐出口から液体が吐出される方向とが
ほぼ同一な構成を有しているが、これらの方向が異な
る、例えばほぼ直角を形成するような構成を有しても良
い。
実施例1 Si単結晶基板表面を熱酸化処理することで、厚さが5.
0μmのSiO2層が設けられた支持体を、第4図に示され
た前述のRFスパッタリング装置内の所定位置に置き、更
に5インチ径のHfB2ターゲット(純度99.8重量%以上)
上にSi3N4チップ(純度99.9重量%以上)とSiチップ
(純度99.9重量%以上)をそれぞれ該ターゲットに対し
面積比25%及び10%となるように置き、放電時パワー0.
5kW、放電時Ar圧4×10-3torrで30分間スパッタリング
して、支持体のSiO2層上に成膜を行なった。
得られた発熱抵抗体薄膜の組成を、XPS(X線光電子
分光)により、表面汚染層をAr+イオンスパッタリング
にて取り除いた後の状態で分析した。その定量分析値を
第1表に示す。また、この膜組成を原子%(小数点以下
を四捨五入)で表わしたものを第2表に示す。
さらに同分析装置にて、主要元素の結合状態を判定し
た。
その結果、Hfの4f軌道電子ピーク結合エネルギーが1
5.9eVにあることからHfは硼化物を主に形成しており、S
iの2p軌道電子ピークエネルギーが99.0eVにあることか
らSiは窒化物の状態と、Si単体とほぼ同じ状態(すなわ
ちSi−Si結合の状態)とを主に含むと考えられる。Bお
よびNはそれぞれ1s軌道結合エネルギーが187.0eV、39
7.0eVであることから、夫々主に硼化物および窒化物
(つまり化合物)を形成しているものと考えられる。
また、得られた発熱抵抗体薄膜の膜厚及び比抵抗を常
法により測定したところ、夫々1420Å、1150Ω・cmであ
った。
次に、支持体上の発熱抵抗体薄膜上に、更に電子ビー
ム蒸着により5000ÅのAl層を積層し、これらをフォトリ
ソ工程により、配線幅30μmにパターニングし、更に、
電極層の熱発生部2a(30μm×150μm)に相当する部
分を除去して、電気熱変換体を形成した。
更に、RFスパッタリングにより電気熱変換体を覆うSi
O2層(層厚2.0μm)を保護層5として形成し、第1図
に示された構成を有するインクジェットヘッド用基体を
得た。なお各電極3,4には、外部からの信号を受ける端
子(不図示)を接続して設けた。
次に、各熱発生部に対応する位置に、吐出口8に連通
する液路が位置するように、フォトリソ工程を含む常法
によって感光性ポリイミド樹脂からなる隔壁6(高さ、
50μm)を設け、更に該隔壁を覆う1mm厚のガラス板7
をエポキシ樹脂を用いて接合し、第2図及び第3図に示
す構成のインクジェット記録ヘッドを得た。
得られたインクジェット記録ヘッドの熱発生部2aに対
して3kHzで7μsの矩形波を印加し、記録液体として純
水を用いて、印加電圧を徐々に上げ、発泡が開始される
電圧を求めた。
次に、このヘッドに対して3kHzの矩形波を2分間に1.
0Vずつパルス電圧値が大きくなる様に印加してゆき、発
熱体抵抗値の変化(ΔR)を発熱抵抗体が破断するまで
測定した。この試験方法はステップストレステスト(SS
T)と呼ばれ、この試験により、インクジェット記録ヘ
ッドの実駆動状態における耐熱性、耐衝撃性を含む寿命
を評価できる。
得られた結果と試験実施前の抵抗値R0とから抵抗変化
率(ΔR/R0)を算出した。本実施例に係る発熱抵抗体
は、破断直前の抵抗値変化が+5.0%と小さく、優れた
特性を示していた。しかも、本実施例に係る発熱抵抗体
では、消費電流が136mAと十分に小さかった。故に、消
費電力が小さくて済むので、小さな容量の駆動用ICで十
分であることがわかった。
また、本実施例のインクジェットヘッドでのマージン
M(破断直前の印加電圧/発泡開始時の印加電圧)は1.
58であり、十分な耐熱性、耐衝撃性を示した。
更に、本実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行なったところ、良好な印字品位を得るこ
とができた。
以上の実施例1の評価結果等について、まとめて第2
表に示した。
実施例2〜12 ターゲットの面積比を種々変化させる以外は、実施例
1と同様の方法により、種々の組成の発熱抵抗体薄膜を
形成を支持体上に行なった後、第2図及び第3図に示さ
れたインクジェットヘッドを実施例1と同様にして作成
した。
各実施例について、実施例1と同様にして種々のデー
タを求め、その結果を第2表に示した。第2表から分か
る様に、いずれの実施例に係るインクジェットヘッド
も、十分に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化
率、十分に小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃
性を示した。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
比較例1〜7 ターゲットの面積比を種々変化させる以外は、実施例
1と同様の方法により、種々の組成をもつ発熱抵抗体薄
膜を支持体上に形成した。その後、第2図及び第3図に
示されたインクジェットヘッドを実施例1と同様にして
作成した。
各比較例について、実施例1と同様にして種々のデー
タを求め、その結果を第2表に示した。第2表から分か
る様に、これらの比較例に係るインクジェットヘッド
は、比抵抗値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝
撃性といった評価のいずれかにおいて、必ずしも十分と
は言えない結果を示した。
実施例13 支持体上への発熱抵抗体薄膜の形成を、発熱抵抗体薄
膜形成用材料としてHfB2およびSi(HfB2ターゲットに対
する面積比25%)を用い、スパッタガスAr(ガス圧4×
10-3Torr)中にN2ガスを0.5SCCM混合しながら流す以外
は、実施例1と同様の条件のRFマグネトロン同時スパッ
タリングにより行なった。
得られた発熱抵抗体薄膜の膜厚は1995Å、比抵抗値は
968μΩ・cmであった。
得られた支持体上の発熱抵抗体薄膜を用い、実施例1
と同様にして、インクジェット記録ヘッドを形成した。
本実施例について、実施例1と同様にして種々のデー
タを求め、その結果を第3表に示した。第3表から分か
る様に、本実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、本実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、良好な印字品位を得ること
ができた。
実施例14〜16 ターゲットの面積比とN2の流量とを種々変化させる以
外は、実施例13と同様の方法により、種々の組成をもつ
発熱抵抗体薄膜を支持体上に形成した。その後、第2図
及び第3図に示されたインクジェットヘッドを実施例13
と同様にして作成した。
各実施例について、実施例13と同様にして種々のデー
タを求め、その結果を第3表に示した。第3表から分か
る様に、いずれの実施例に係るインクジェットヘッド
も、十分に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化
率、十分に小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃
性を示した。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
比較例8,9 ターゲットの面積比とN2の流量とを夫々変化させる以
外は、実施例13と同様の方法により、発熱抵抗体薄膜を
支持体上に形成した。その後、第2図及び第3図に示さ
れたインクジェットヘッドを実施例13と同様にして作成
した。
各比較例について、実施例1と同様にして種々のデー
タを求め、その結果を第3表に示した。第3表から分か
る様に、これらの比較例に係るインクジェットヘッド
は、比抵抗値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝
撃性といった評価のいずれかにおいて、必ずしも十分と
は言えない結果を示した。
その他の実施例,比較例(その1) 金属硼化物として、HfB2の代わりにTiB2を用いる以外
は実施例1〜16及び比較例1〜9と同様にして、本発明
に係る発熱抵抗体を有する第2図及び第3図に示された
インクジェットヘッドを作成した。
いずれの実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
一方、比較例に係るインクジェットヘッドは、比抵抗
値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝撃性といっ
た評価のいずれかにおいて、必ずしも十分とは言えない
結果を示した。
その他の実施例,比較例(その2) 金属硼化物として、HfB2の代わりにVB2を用いる以外
は実施例1〜16及び比較例1〜9と同様にして、本発明
に係る発熱抵抗体を有する第2図及び第3図に示された
インクジェットヘッドを作成した。
いずれの実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
一方、比較例に係るインクジェットヘッドは、比抵抗
値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝撃性といっ
た評価のいずれかにおいて、必ずしも十分とは言えない
結果を示した。
その他の実施例,比較例(その3) 金属硼化物として、HfB2の代わりにCrB2を用いる以外
は実施例1〜16及び比較例1〜9と同様にして、本発明
に係る発熱抵抗体を有する第2図及び第3図に示された
インクジェットヘッドを作成した。
いずれの実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
一方、比較例に係るインクジェットヘッドは、比抵抗
値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝撃性といっ
た評価のいずれかにおいて、必ずしも十分とは言えない
結果を示した。
その他の実施例,比較例(その4) 金属硼化物として、HfB2の代わりにZrB2を用いる以外
は実施例1〜16及び比較例1〜9と同様にして、本発明
に係る発熱抵抗体を有する第2図及び第3図に示された
インクジェットヘッドを作成した。
いずれの実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
一方、比較例に係るインクジェットヘッドは、比抵抗
値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及及び耐衝撃性とい
った評価のいずれかにおいて、必ずしも十分とは言えな
い結果を示した。
その他の実施例,比較例(その5) 金属硼化物として、HfB2の代わりにNbB2を用いる以外
は実施例1〜16及び比較例1〜9と同様にして、本発明
に係る発熱抵抗体を有する第2図及び第3図に示された
インクジェットヘッドを作成した。
いずれの実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
一方、比較例に係るインクジェットヘッドは、比抵抗
値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝撃性といっ
た評価のいずれかにおいて、必ずしも十分とは言えない
結果を示した。
その他の実施例,比較例(その6) 金属硼化物として、HfB2の代わりにMo2B5を用いる以
外は実施例1〜16及び比較例1〜9と同様にして、本発
明に係る発熱抵抗体を有する第2図及び第3図に示され
たインクジェットヘッドを作成した。
いずれの実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
一方、比較例に係るインクジェットヘッドは、比抵抗
値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝撃性といっ
た評価のいずれかにおいて、必ずしも十分とは言えない
結果を示した。
その他の実施例,比較例(その7) 金属硼化物として、HfB2の代わりにTaB2を用いる以外
は実施例1〜16及び比較例1〜9と同様にして、本発明
に係る発熱抵抗体を有する第2図及び第3図に示された
インクジェットヘッドを作成した。
いずれの実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
一方、比較例に係るインクジェットヘッドは、比抵抗
値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝撃性といっ
た評価のいずれかにおいて、必ずしも十分とは言えない
結果を示した。
その他の実施例,比較例(その8) 金属硼化物として、HfB2の代わりにW2B5を用いる以外
は実施例1〜16及び比較例1〜9と同様にして、本発明
に係る発熱抵抗体を有する第2図及び第3図に示された
インクジェットヘッドを作成した。
いずれの実施例に係るインクジェットヘッドも、十分
に大きい比抵抗値及び十分に小さい抵抗変化率、十分に
小さな消費電流、更に十分な耐熱性、耐衝撃性を示し
た。
また、各実施例に係るインクジェットヘッドを用いて
実際に印字を行ったところ、いずれの実施例においても
良好な印字品位を得ることができた。
一方、比較例に係るインクジェットヘッドは、比抵抗
値、抵抗変化率、消費電流、耐熱性及び耐衝撃性といっ
た評価のいずれかにおいて、必ずしも十分とは言えない
結果を示した。
尚、第2表及び第3表に示された総合評価の基準を、
第4表に示した。
本発明に係る発熱抵抗体は、前述した様に抵抗値が高
く消費電力が小さいので、米国特許第4,429,321号明細
書に開示されている様な、機能素子がヘッド基体の内部
に構造的に設けられている形態のインクジェットヘッド
に用いられた場合に特に効果的である。
以上述べた構成の本発明に係るインクジェットヘッド
を装置本体に装着して装置本体からヘッドに信号を付与
することにより、高速記録、高画質記録を行うことがで
きるインクジェット記録装置を得ることができる。
第5図は本発明が適用されるインクジェット記録装置
IJRAの一例を示す概観斜視図で、駆動モータ5013の正逆
回転に連動して連動力伝達ギア5011,5009を介して回転
するリードスクリュー5005の螺旋溝5004に対して係合す
るキャリッジHCはピン(不図示)を有し、矢印a,b方向
に往復移動される。5002は紙押え板であり、キャリッジ
移動方向にわたって紙をプラテン5000に対して押圧す
る。5007,5008はフォトカプラでキャリッジのレバー500
6のこの域での存在を確認してモータ5013の回転方向切
換等を行うためのホームポジション検知手段である。50
16はインクタンクが一体的に設けられたカートリッジタ
イプの記録ヘッドIJCの前面をキャップするキャップ部
材5022を支持する部材で、5015はこのキャップ内を吸引
する吸引手段でキャップ内開口5023を介して記録ヘッド
の吸引回復を行う。5017はクリーニングブレードで、50
19はこのブレードを前後方向に移動可能にする部材であ
り、本体支持板5018にこれらは支持されている。ブレー
ドは、この形態でなく周知のクリーニングブレードが本
例に適用できることはいうまでもない。又、5012は、吸
引回復の吸引を開始するためのレバーで、キャリッジと
係合するカム5020の移動に伴って移動し、駆動モータか
らの駆動力がクラッチ切換等の公知の伝達手段で移動制
御される。インクジェットヘッドIJCに設けられた電気
熱変換体に信号を付与したり、前述した各機構の駆動制
御を司ったりするCPUは、装置本体側に設けられている
(不図示)。
以上説明した本発明の実施例においては、液体インク
を用いて説明しているが、本発明においては、室温で固
体状であるインクであっても、室温で軟化するものであ
れば用いることができる。上述のインクジェット装置で
は、インク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整
を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度
制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時
にインクが液状をなすものであれば良い。また、積極的
に熱エネルギーによる昇温を、インクの固形状態から液
体状態への態変化のエネルギーとして使用せしめること
で防止するか又は、インクの蒸発防止を目的として放置
状態で固化するインクを用いるかして、いずれにしても
熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが
液化してインク液状として吐出するものや記録媒体に到
達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱
エネルギーによって初めて液化する性質のインク使用も
本発明には適用可能である。このような場合インクは、
特開昭54−56847号公報、特開昭60−71260号公報のよう
な、多孔質シート凹部又は貫通孔に液状又は固形物とし
て保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するよ
うな形態としても良い。本発明においては、上述した各
インクに対しても最も有効なものは、上述した膜沸騰方
式を実行するものである。
本発明に係るインクジェット方式の記録ヘッド、記録
装置の代表的な構成や原理については、例えば米国特許
第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示さ
れている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。こ
の方式はいわゆるオンディマンド型、コンティニュアス
型のいずれにも適用可能であるが、特にオンディマンド
型の場合には、液体(インク)が保持されているシート
や液路に対応して配置された電気熱変換体に、記録情報
に対応して核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少な
くとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱
変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作
用面のインクに膜沸騰を生起させて、結果的にこの駆動
信号に一対一対応して液体(インク)内の気泡を形成で
きるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出
用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくと
も一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とす
ると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に
応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より
好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特
許第4,463,359号明細書、同第4,345,262号明細書に記載
されているようなものが適している。尚、上記熱作用面
の温度上昇率に関する発明の米国特許第4,313,124号明
細書に記載されている条件を採用すると、更に優れた記
録を行うことができる。
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示さ
れているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わ
せ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に熱作用部
が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特
許第4,558,333号明細書、米国特許第4,459,600号明細書
を用いた構成も本発明に含まれる。加えて、複数の電気
熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の
吐出部とする構成を開示する特開昭59年第123670号公報
や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応
せる構成を開示する特開昭59年第138461号公報に基づい
た構成としても本発明は有効である。
更に、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応
した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとして
は、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘ
ッドの組み合わせによって、その長さを満たす構成や一
体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成のいず
れでも良いが、本発明は、上述した効果を一層有効に発
揮することができる。
また、装置本体に装着されることで、装置本体との電
気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる
交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘ
ッド自体にインクタンクが一体的に設けられたカートリ
ッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効
である。
更に、本発明の記録装置の構成として設けられる、記
録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付
加することは本発明の効果を一層安定できるので好まし
いものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッド
に対しての、キャピング手段、クリーニング手段、加圧
或いは吸引手段、電気熱変換体或いはこれとは別の加熱
素子或いはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記
録とは別の吐出を行う予備吐出モードを行うことも安定
した記録を行うために有効である。
更にまた、記録装置の記録モードとしては黒色等の主
流色のみの記録モードだけでなく、記録ヘッドを一体的
に構成するか複数個の組み合わせによってでもよいが、
異なる色の複色カラー又は、混色によるフルカラーの少
なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効であ
る。
〔発明の効果〕 本発明によれば、比抵抗値を高く設定でき、駆動電力
の増加にともなう抵抗値変化が少ない安定的な発熱抵抗
体を有し、耐久性において優れた電気熱変換体を備えた
インクジェット記録ヘッド用基体、該基体をその構成の
一部とするインクジェット記録ヘッド及び該ヘッドを具
備するインクジェット装置を提供することができる。
また、本発明によれば、インクジェット記録における
高品位記録、高速度記録及び低消費電力記録等を、一層
確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係るインクジェットヘッド用基体の
一例を示す模式的断面図である。 第2図は、本発明に係るインクジェットヘッドの主要部
の一例を示す模式的斜視図である。 第3図は、第2図のa−b−c線に沿って切断した模式
的断面図である。 第4図は、本発明に係る発熱抵抗体層を形成するために
用いられるスパッタリング装置を示す模式図である。 第5図は、本発明に係るインクジェットヘッドを具備す
るインクジェット装置の主要部の一例を示す模式的斜視
図である。

Claims (24)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】インクを吐出する吐出口と、該吐出口から
    インクを吐出するために利用される熱エネルギーを通電
    されることにより発生する発熱抵抗体を有する電気熱変
    換体と、を具備するインクジェットヘッドにおいて、 前記発熱発熱体が金属元素、B、Si及びNを次の組成割
    合で含有する複合化合物からなることを特徴とするイン
    クジェットヘッド。 8原子%≦金属元素≦31原子% 7原子%≦B≦58原子% 5原子%≦Si≦53原子% 6原子%≦N≦45原子%
  2. 【請求項2】前記発熱低抗体を構成する複合化合物に含
    有される金属元素、B、Si及びNの組成割合が次の通り
    である請求項1に記載のインクジェットヘッド。 15原子%≦金属元素≦24原子% 18原子%≦B≦38原子% 19原子%≦Si≦35原子% 18原子%≦N≦38原子%
  3. 【請求項3】前記発熱低抗体を構成する複合化合物に含
    有される前記Si及びNの原子数比が次の通りである請求
    項1に記載のインクジェットヘッド。 0.6<Si/N≦2.5
  4. 【請求項4】前記発熱低抗体を構成する複合化合物に含
    有される前記Si及びNの原子数比が次の通りである請求
    項3に記載のインクジェットヘッド。 0.7<Si/N≦1.3
  5. 【請求項5】前記発熱低抗体を構成する複合化合物に含
    有される前記金属元素が、Ti、V,Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、
    Ta、及びWからなる群から選択される一つ以上の元素で
    ある請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  6. 【請求項6】前記発熱低抗体を構成する複合化合物にお
    いて、前記金属元素が硼化物の状態を含み、前記Siが窒
    化物の状態とSi単体の状態との両者を含む請求項1に記
    載のインクジェットヘッド。
  7. 【請求項7】前記発熱低抗体の層の厚さが、300Å〜2
    μmである請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  8. 【請求項8】前記発熱低抗体の層の厚さが、700Å〜1
    μmである請求項7に記載のインクジェットヘッド。
  9. 【請求項9】前記発熱低抗体の層の厚さが、1000Å〜50
    00Åである請求項8に記載のインクジェットヘッド。
  10. 【請求項10】前記吐出口からインクが吐出する方向
    と、前記発熱低抗体の前記熱エネルギーが発生する部分
    にインクが供給される方向とがほぼ同じである請求項1
    に記載のインクジェットヘッド。
  11. 【請求項11】前記吐出口からインクが吐出する方向
    と、前記発熱低抗体の前記熱エネルギーが発生する部分
    にインクが供給させる方向とが異なる請求項1に記載の
    インクジェットヘッド。
  12. 【請求項12】前記二つの方向が互いにほぼ直角である
    請求項11に記載のインクジェットヘッド。
  13. 【請求項13】前記吐出口が複数設けられている請求項
    1に記載のインクジェットヘッド。
  14. 【請求項14】前記吐出口が被記録部材の幅に対応して
    複数設けられている請求項13に記載のインクジェットヘ
    ッド。
  15. 【請求項15】インクを吐出するために利用される熱エ
    ネルギーを通電されることにより発生する発熱抵抗体を
    有する電気熱変換体と、を具備するインクジェットヘッ
    ド用基体において、 前記発熱抵抗体が金属元素、B、Si及びNを次の組成割
    合で含有する複合化合物からなることを特徴とするイン
    クジェットヘッド用基体。 8原子%≦金属元素≦31原子% 7原子%≦B≦58原子% 5原子%≦Si≦53原子% 6原子%≦N≦45原子%
  16. 【請求項16】前記発熱抵抗体を構成する複合化合物に
    含有される前記金属元素、B、Si及びNの組成割合が次
    の通りである請求項15に記載のインクジェットヘッド用
    基体。 15原子%≦金属元素≦24原子% 18原子%≦B≦38原子% 19原子%≦Si≦35原子% 18原子%≦N≦38原子%
  17. 【請求項17】前記発熱抵抗体を構成する複合化合物に
    含有される前記Si及びNの原子数比が次の通りである請
    求項15に記載のインクジェットヘッド用基体。 0.6<Si/N≦2.5
  18. 【請求項18】前記発熱抵抗体を構成する複合化合物に
    含有される前記Si及びNの原子数比が次の通りである請
    求項17に記載のインクジェットヘッド用基体。 0.7<Si/N≦1.3
  19. 【請求項19】前記発熱抵抗体を構成する複合化合物に
    含有される前記金属元素が、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、
    Hf、Ta及びWからなる群から選択される一つ以上の元素
    である請求項15に記載のインクジェットヘッド用基体。
  20. 【請求項20】前記発熱抵抗体を構成する複合化合物に
    おいて、前記金属元素が硼化物の状態を含み、前記Siが
    窒化物の状態とSi単体の状態との両者を含む請求項15に
    記載のインクジェットヘッド用基体。
  21. 【請求項21】前記発熱抵抗体の層の厚さが、300Å〜
    2μmである請求項15に記載のインクジェットヘッド用
    基体。
  22. 【請求項22】前記発熱抵抗体の層の厚さが、700Å〜
    1μmである請求項21に記載のインクジェットヘッド用
    基体。
  23. 【請求項23】前記発熱抵抗体の層の厚さが、1000Å〜
    5000Åである請求項22に記載のインクジェットヘッド用
    基体。
  24. 【請求項24】インクを吐出する吐出口と、該吐出口か
    らインクを吐出するために利用される熱エネルギーを通
    電されることにより発生する発熱抵抗体を有する電気熱
    変換体と、を具備するインクジェットヘッドと、 前記発熱抵抗体にインク吐出用信号を付与するための手
    段と、を備えたインクジェット装置において、 前記発熱抵抗体が金属元素、B、Si及びNを次の組成割
    合で含有する複合化合物からなることを特徴とするイン
    クジェット装置。 8原子%≦金属元素≦31原子% 7原子%≦B≦58原子% 5原子%≦Si≦53原子% 6原子%≦N≦45原子%
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