JP2647833B2 - 有機高分子複合電気亜鉛合金めつき浴 - Google Patents

有機高分子複合電気亜鉛合金めつき浴

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JP2647833B2 JP20713786A JP20713786A JP2647833B2 JP 2647833 B2 JP2647833 B2 JP 2647833B2 JP 20713786 A JP20713786 A JP 20713786A JP 20713786 A JP20713786 A JP 20713786A JP 2647833 B2 JP2647833 B2 JP 2647833B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、亜鉛合金めっき皮膜を母相とし、これに有
機高分子化合物を分子オーダーで共析させることによ
り、塗料密着性、耐食性に優れた複合電気めっき皮膜を
得ることができる複合電気亜鉛合金めっき浴に関するも
のである。更に詳しくは、従来のようにリン酸塩処理や
クロメート処理などの塗装下地処理(化成処理)を全く
必要としない電気めっき合金皮膜を形成する点に大きな
特徴を有する有機高分子複合電気亜鉛合金めっき浴に関
するものである。
〔従来の技術〕
従来、金属表面、特に鋼板表面に耐食性を付与するた
め亜鉛や亜鉛合金めっきが広く行われている。これらの
めっき金属材は、耐食性の増加及び装飾性付与等の目的
のため、めっきの上に塗装して使用されることが多い。
ところが亜鉛及び亜鉛合金めっき等の金属めっき表面は
塗料密着性が悪い場合があるため、また白錆防止の目的
から、塗装に先立ってリン酸塩処理やクロメート処理な
どの塗装下地処理が施されるのが普通である。しかるに
近年リン酸塩処理やクロメート処理などの化成処理は、
工程の長さ(6〜9ステップ)や浴管理の煩雑さから、
工程の短縮、簡素化が望まれている。特にユーザーにお
いては、省力化、或いはスラッジ処理や廃液処理などの
公害防止上の制約から上記の如き自家処理(化成処理)
を回避すること、或いは塗装下地処理を必要としない表
面処理鋼板の開発が強く要望されている。
これらの問題を解決するため、これまで各種の方法が
試みられている。化成処理を必要としない表面処理鋼板
の試みの中で有機化合物を利用する方法としては、例え
ば、極性有機化合物を塗布する方法や有機複合シリケー
トなどの樹脂を塗布、乾燥する方法、或いはめっき液中
に水不溶性樹脂を分散して複合共析させる分散めっき方
法なども既に提案されている(米国特許第3434942号及
び同第3461044号)。しかしいずれの方法にも一長一短
があってユーザーの要求を十分満たすまでには至ってい
ない。
例えば最後に挙げた水不溶性樹脂分散めっき法は注目
すべき技術であるが、工業化を考慮した場合、次のよう
な多くの欠点があった。まず、工程上の問題点として
は、 a) 樹脂粒子の均一分散安定化のために界面活性剤の
使用が必要であり、また液循環に特別の工夫が必要で煩
雑な工程を含んでいる。
b) 樹脂粒子がめっき浴中で強く負に帯電するため、
樹脂粒子の陽極への共析が生じて陰極共析が難しい。
c) これを回避するため、被めっき物の極性を反転し
ながら交互にめっきする工夫が必要であった(米国特許
第3434942号、同3461044号)。或いは特殊な界面活性剤
を使用して樹脂粒子に正に帯電させて、陰極析出を容易
にし、樹脂の陽極析出を防止する工夫が必要である(特
公昭52−25375号公報)点など制約が多い。
d) この界面活性剤を用いる方法は樹脂粒子の種類ご
とに界面活性剤の選定が必要であったり、或いは連続生
産性を考慮した場合、微量の界面活性剤の濃度管理が難
しくなるなど煩雑な問題を含んでいる。
一方、生成するめっき皮膜の物性にかかわる問題とし
て、次の様なものが挙げられる。
e) 用いる樹脂粒子の大きさ以下には膜厚を薄くでき
ない。
f) 粒子の金属相に埋め込まれる形で析出するためピ
ンホールができやすく、そのため耐食性に不利である。
g) 多量の樹脂粒子(約5%以上)を共析しないと塗
料密着効果が現れず、また用いる樹脂粒子径によっては
下地基板との密着不良やめっき金属相の物性が変化し
て、加工時の剥離につながりやすい。
不溶性樹脂粒子の分散めっき法は実用上以上のような
問題を含んでいた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上に述べたように、塗装下地処理(化成処理)を行わ
なくとも十分に塗料密着性に優れているめっき金属材の
製造方法は各種検討されているが、生産性や機能面でも
まだまだ不十分で、現行の化成処理工程を省きうるレベ
ルに到底至っていない。
一方、亜鉛とプラスチック化合物を分子状態で複合め
っきする方法が、既に物理蒸着法においては試みられて
いる(特公昭58−1185号公報)。これは耐食性付与を目
的としたものであるが、高真空中での処理のため大量連
続生産性に多大の設備が必要となるなど工業的実施には
問題が多い。
本発明はこのような状況に鑑み、有機高分子と金属と
の複合化技術に注目して上記問題を解決するめっき浴を
提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は有機化合物を単に塗布するとか、水不溶性樹
脂粒子を分散共析するといった従来の発想から離れて、
有機高分子と金属とを分子レベルで複合化(モレキュラ
ーコンポジット)する新技術及びめっき浴を開発するこ
とによって、従来の技術では達成しえない高水準の多機
能表面の形成を意図したものである。
以上の観点から水溶性高分子の基本骨格、極性基の種
類、分子量の作用、及び水溶性高分子のめっき浴への添
加量等について鋭意検討を行った結果、本発明者等はあ
る特定の化学構造を有する水溶性有機高分子を電気めっ
きに応用することにより上記目的を十分に達成できるこ
とを見出し、本発明のめっき浴の完成に至ったのであ
る。
即ち本発明は、亜鉛イオンを1〜600g/と亜鉛以外
の異種金属イオンの1種以上をそれぞれ1〜600g/と
を含む亜鉛合金めっき浴に、以下の条件を満たす水溶性
有機高分子の1種以上0.5〜300g/を必須成分として含
有することを特徴とする有機高分子複合電気亜鉛合金め
っき浴を提供するものである。上記の条件を満たす水溶
性有機高分子とは、少なくとも繰り返し単位内に1個以
上の芳香環を有し、且つその繰り返し単位当たりに1〜
4個の水酸基(−OH)と平均0.05〜4個のスルホン基
(−SO3)との両者を有し、且つ繰り返し単位の数nが
2以上であって、平均分子量が1000〜100万の範囲であ
る水溶性有機高分子をさす。この水溶性有機高分子には
上述の置換基の他に、Cl,Brなどのハロゲン基、ニトリ
ル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、エステル基、カ
ルボキシル基などの他の置換基を含んでいてもよい。上
記のめっき浴中で金属材を陰極として、電気めっきを行
えば、当該表面に金属と水溶性有機高分子との共析が分
子オーダーで起こり、いわゆるモレキュラーコンポシッ
ト皮膜が生成する。その結果、塗装下地処理を行わなく
とも、下地処理を施したもの以上に塗料密着性や塗装後
耐食性に優れた有機高分子複合亜鉛合金めっき金属材の
製造可能であることを見出したものである。
本発明で用いる水溶性有機高分子は多量の金属塩を含
んだめっき液中でも均一に溶解して安定であるものを使
用しているため、改めて分散剤(界面活性剤)を使用す
ることや、液循環の特別な工夫等が必要でなく、作業性
に極めて優れている。
また本発明においては、有機高分子が陽極に析出して
絶縁膜を形成し電圧異常となるなどの問題がないため通
常の直流法で連続めっきが可能である。
ところで、水溶性の有機化合物を電気めっきに使用す
ることは古くから行われている。これは比較的低分子量
の界面活性剤をめっき浴助剤として極く少量(0.001〜
0.05%程度)添加する用い方で、主に装飾性の向上(光
沢剤)をねらいとしたものである。その他の目的として
はミスト防止剤、不純物除去剤(錯形成剤)、消泡剤、
不溶性懸濁不純物の凝集沈澱剤、或いは分散めっき法に
おいては、共析粒子の分散剤として用いられている。従
って、上記の場合、用いた助剤の水溶性有機化合物によ
って塗料密着性及び耐食性は殆ど改善されていないか、
或いは逆に悪くなる場合も多々見受けられる。従来はこ
れら界面活性剤はめっき物性を悪くするという認識か
ら、その添加量はできるだけ低く抑えられ、極めて低濃
度で使用されるのが常であった。本発明は従来の使用目
的とは大きく異なり、塗料密着性及び耐食性の向上を目
的としたもので、そのため使用の方法も異なっている。
即ち本発明においては、めっき金属とある特定の化学構
造を有する水溶性有機高分子とを積極的に共析・複合化
させることにより、上記の機能を発現させるものであ
る。
本発明に用いることができる水溶性有機高分子として
は、その繰り返し単位の中に水酸基(−OH)、スルホン
基(−SO3)、芳香環を必須成分として有するもので、
例えば1)〜10)の化合物が挙げられる。
1) フェノールホルムアルデヒド樹脂(ノボラック樹
脂)、フェノール−フルフラール樹脂、レゾルシン−ホ
ルムアルデヒド樹脂等のフェノール樹脂及びこれらの誘
導体のスルホン酸塩 2) ビスフェノールA骨格を有するエポキシ樹脂、エ
ポキシアクリレート、及びフェノール(EO)グリシジ
ルエーテル等のエポキシ樹脂誘導体のスルホン酸塩 3) ポリヒドロキシビニルピリジンのスルホン酸塩 4) クレオソート油硫酸化物のホルマリン縮合物の
塩、n−クレゾールメチレンスルホン酸−ホルマリン縮
合物の塩、m−クレゾールベークライトメチレンスルホ
ン酸ソーダとシェファー酸のホルマリン縮合物等の例を
含めたアルキルフェノール及びこの誘導体のスルホン化
物のホルマリン縮合物の塩 5) モノ又はポリヒドロキシナフタレンスルホン酸塩
及びこれらの誘導体のホルマリン縮合物 6) フェニルフェノールスルホン酸塩のホルマリン縮
合物 7) ジヒドロキシシフェニルスルホン酸のホルマリン
縮合物 8) ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ポリ−p−ヒド
ロキシスチレン臭素化物等のポリヒドロキシスチレン誘
導体のスルホン酸塩 9) リグニンスルホン酸やリグニンスルホン酸塩 これは、パルプ製造時に副生するパルプ排液を種々の
方法で処理した化合物で、主成分はリグニンスルホン酸
塩又はリグニンスルホン酸である。リグニンの化学構造
はフェニルプロパン基を基本骨格とし、これが3次元網
目構造繊維をとった化合物であるが、植物体からの単離
方法によって種々の名称がつけられている。例えばリグ
ニンを残渣として得たものだと、硫酸リグニン、塩酸リ
グニン、酸化銅アンモニアリグニン、過ヨウ素酸リグニ
ン等が挙げられる。リグニンを溶解して得たものだと、
1)無機試薬によるもの:リグニンスルホン酸、アルカ
リリグニン、チオリグニン、クロルリグニン、2)酸性
有機試薬によるもの:アルコールリグニン、ジオキサン
リグニン、フェノールリグニン、チオグリコール酸リグ
ニン、酢酸リグニン、ヒドロトロピックリグニン、3)
塩基性有機試薬によるもの:有機アミノリグニン、4)
中性有機試薬によるもの:Brauns天然リグニン、アセト
ンリグニン、Nordリグニン、Bjrkmanリグニンなどが
挙げられる。以上の単離リグニンあるいはその誘導体を
原料にしてスルホン化を行ったリグニンスルホン酸また
はその塩でもかまわない。リグニンスルホン酸塩の塩の
種類としてはNa塩、K塩、Ca塩、アンモニウム塩、Cr
塩、Fe塩、Al塩、Mn塩、Zn塩、Mg塩、アミド塩等があ
る。ここで取り上げるリグニンスルホン酸及びリグニン
スルホン酸塩中にはパルプ製造時の不純物を含有してい
ても構わない。この他に酸化処理をしてカルボキシル基
を増やすなどの化学変性を行ったリグニンスルホン酸や
リグニンスルホン酸塩も用いることができる。
10) ポリタンニン酸のスルホン化物 以上の中から、1種又は2種以上を選び出して混合し
て用いることも可能である。有機高分子の塩の種類はNa
塩、Ca塩、NH3塩等何でもよく、制約を受けない。
本発明に用いることのできる水溶性有機高分子はその
平均分子量が1000〜100万の範囲に、好ましくは1000〜5
0万の範囲である。この理由は有機高分子の分子量が本
発明の効果に影響を与え、分子量が1000未満の低分子体
では大きな塗料密着効果が得られにくく、反面分子量が
50万を越える有機高分子のスルホン酸塩ではめっき浴へ
の溶解性が悪くなり、めっき浴への添加濃度に限界が生
じて問題となるからである。スルホン基は有機高分子の
めっき浴への溶解性を与える点で特に重要であり、その
好ましいスルホン基密度の範囲は有機高分子の繰り返し
単位当たり0.05〜4個の間にある。スルホン基密度が0.
05未満だとめっき浴への溶解性が悪くて問題となり、4
個を越えると得られるめっき皮膜の耐食性が低下して問
題となる。水酸基及び芳香環の存在は塗料密着性向上、
耐食性向上の点から本発明めっき浴用の有機高分子には
必須な構成成分である。
本発明において、対象となる被めっき金属材には特に
制限はない。例えば鉄鋼、銅、真鍮、アルミニウムなど
の金属材料が使用できる。
本発明に使用できる亜鉛合金めっき浴としては、亜鉛
イオンを1〜600g/含む公知の亜鉛めっき浴、例え
ば、(1)硫酸亜鉛を用いる硫酸塩浴、塩化亜鉛を用い
る塩化物浴、ホウフッ化亜鉛を用いるホウフッ化物浴或
いはこれらの混合浴を含む一般公知の酸性浴、(2)塩
化亜鉛をアンモニアにて中和して建浴した中性浴、
(3)ピロリン酸亜鉛を用いるピロリン酸亜鉛浴、亜
鉛、水酸化ナトリウムよりなるジンケート浴などのアル
カリ浴、或いは(4)シアン化亜鉛めっき浴など、一般
に公知の亜鉛めっき浴(1)〜(4)の浴に合金元素と
して考えられる鉄、ニッケル、クロム、コバルト、マン
ガン、銅、錫、鉛、マグネシウム、アルミニウム、モリ
ブデンなどの元素の1種以上をそれぞれの塩化物、硫酸
化物、フッ化物、シアン化物、酸化物、有機酸塩、リン
酸塩等のなかから選択してそれぞれ1〜600g/添加し
た一般公知あるいは新規の亜鉛合金めっき浴を用いるこ
とができる。このうち(1)の浴を基本に建浴されたも
のが好ましい。又、合金元素としてはニッケルが好まし
い。
めっき浴への水溶性高分子の添加量は0.5〜300g/の
範囲であり、好ましくは1〜100g/添加しめっき浴が
良い。浴調整後は、有機高分子が安定に溶解しているた
め、分散均一化のための液撹拌の必要なない。めっき浴
のpHの程度及び金属イオン濃度によっては、用いる水溶
性有機高分子の溶解性が悪くなる場合があるので注意を
要する。また本発明のめっき浴には防錆剤を添加して耐
食性を向上させることができる。更に本発明のめっき浴
には光沢剤、ピット防止剤、ミスト防止剤、不純物除去
剤、消泡剤などのめっき助剤(有機化合物)を添加する
ことができる。
めっき電解条件としては、直流或いはパルス電流を用
いることができる。水溶性有機高分子の共析量は、高分
子濃度、電流密度、及び有機高分子の電荷によって著し
く影響を受ける。高濃度、高電流密度で共析量を増加す
る。
本発明のめっき浴は有機高分子を分子オーダーで共析
させると最もよくその特性を発揮することができる。好
ましくは0.2〜30wt%共析させるのが良い。有機高分子
の共析量が少ないと亜鉛合金単体めっきに近づくため塗
料密着効果が現れにくく、反面多すぎるとめっき皮膜が
もろくなるため、プレス加工時にめっき皮膜の破壊や剥
離が生じやすくなって問題となる。
本発明によるめっき浴は水溶性高分子を用いるため、
共析金属との複合化が分子オーダーで起こる点に大きな
特徴を有しており、マクロな分散・複合化しか達成し得
ない水不溶性樹脂の分散めっきと本発明はこの点で大き
く相違するものである。従って本発明のめっき浴では分
散めっきのように用いる樹脂粒子径からくるめっきの下
限膜層の制約はなく、薄膜(薄目付)から厚膜(厚目
付)まで任意にめっき量を選択することができる。更に
用いる水溶性有機高分子の種類によっては複合めっき金
属の結晶の形を例えば、平板、立方体、針状、球状、長
方体などと大きく変化させることも可能であり、しかも
結晶サイズのコントロールも可能である。これらの現象
は有機高分子が結晶成長の段階から関与していることを
示しており、金属との共析が分子オーダーで生じている
ことの一つの証でもある。このように有機高分子により
表面形態をコントロールできることは、アンカー効果や
接着表面積の増大等がコントロールできるわけで、接着
性表面を設計する上で大変有益である。
本発明による複合めっき浴は、金属材の耐食性、美観
を一段と向上させるため、得られるめっき皮膜上に直接
塗料を塗布することを前提として考えているので、塗料
に対する密着機能は有機高分子複合めっきに求められる
本質的機能である。
本発明による有機高分子複合めっき皮膜は、めっきさ
れたままの状態で塗料へ対する密着力を有しているの
で、リン酸塩処理やクロメート処理などの化成処理(塗
装下地処理)が全く必要でなく、また100℃以上の加熱
処理など新たなる特別な処理を全く必要としない。従っ
て乾燥しためっき皮膜にそのまま常温乾燥型塗料を塗布
した場合でも十分な塗料密着効果が得られる。
〔作用〕
本発明浴によって得られるめっき皮膜の塗料密着性及
び塗装後耐食性が向上する原因については完全に解明さ
れているわけではないが、次の因子が挙げられる。
まず塗料密着性の向上については、有機高分子が分子
オーダーでよりミクロに複合化されることによって、め
っき金属表面の塗料に対する親和性が増大すること。ま
た有機高分子の持っている極性基と塗料分子との間での
水素結合やキレート結合の生成が挙げられ、或いは共有
結合やイオン結合の生成の可能性も考えられる。また更
にカチオン型塗料の方がアニオン型塗料より強い塗料密
着性が得られることから、酸塩基作用による接着効果、
或いは静電気的効果の寄与も考えられる。更にはめっき
皮膜の幾何学的形態因子として、有機高分子複合による
めっき皮膜の粗面化効果も寄与していると考えられる。
塗装後耐食性の向上については、有機高分子複合によ
って塗料密着性、耐アルカリ性、電気絶縁性の増加が認
められることから、めっき結晶粒子の微細化に伴うめっ
き皮膜の緻密化の寄与、或いは活性な亜鉛合金金属表面
を有機高分子で被覆することによるバリヤー効果や電気
絶縁性の増加、又は複合化された有機高分子の防錆効果
の相乗効果が考えられる。
〔実 施 例〕
以下実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこ
れらの実施例に限定されるものではない。
(1)めっき方法 冷延鋼板をアルカルリ電解樹脂、水洗後、次の条件で
めっきを施した。用いためっき浴基本組成と水溶性高分
子をそれぞれ表1及び表2に示した。めっき条件は電流
密度1〜50A/dm2の直流電流を用い、浴温30〜60℃の範
囲で行った。めっき皮膜厚は全て3μmとした。膜厚測
定には過電流式膜厚計(サンコウ電子(株)、SL−2L−
SM型)を用いた。
(2)塗料密着性評価 上記条件で作製した本発明品及び比較品の塗料密着性
の評価結果を表3に示す。表3に記載している塗膜密着
性評価は塗料としてカチオン型エポキシ系電着塗料(関
西ペイント(株)エレクロン9210番)を用い、250Vにて
電着を行い、180℃で25分焼付後の塗膜厚さを30μmと
なるよう調整した。中塗・上塗塗装を行わないでそのま
ま密着性試験に供した。
尚、比較例の化成処理のリン酸塩処理およびクロメー
ト処理にはそれぞれ日本パーカライジング製ボンデライ
ト3004のリン酸亜鉛処理薬剤、日本ペイント(株)製ク
ロメート処理薬剤(商品名:グラノヂン92)を用いた。
水不溶製樹脂の分散めっきは表1のB,Cの亜鉛めっき浴
に酢酸ビニル/メタクリル酸メチル(97:3)共重合体エ
マルジョン(粒径1.5μm)をそれぞれ20g/、10g/
(固形分)添加しためっき浴を用いて、浴温30℃、電流
密度10A/dm2の条件で厚さ3μmのめっきを行った。
(3)耐食性評価 板橋理化製塩水噴霧試験機を用いてJIS2371に基づい
て5%NaClを2週間連続噴霧を行った。
注)*1:金属中炭素分析装置(堀場製作所製EMIA−11
0)を用いて1350℃に加熱し、発生するCO2,CO量を検出
してめっき皮膜中の全炭素量を定量(wt/%)した。こ
の値(炭素含量)をもって有機高分子の共析量とした。
*2:下地めっき面に達するゴバン目を1mm間隔に100個描
き、セロテープで剥離した時の塗膜残存数で示した。
*3:下地めっき面に達するゴバン目を1mm間隔で100個描
いた後、エリクセン押出加工、8mmを行い、引続きセロ
テープ剥離試験を行った際の塗膜残存率。
評価基準 ◎…テープ剥離による剥離が全く認められない ○…テープ剥離による剥離が僅か(1〜5%)に認めら
れる △…テープ剥離による剥離がやや(5〜15%)認められ
る ×…テープ剥離による剥離が相当程度(15〜35%)認め
られる ××…テープ剥離による剥離が大部分(65%)以上を占
める *4:ゴバン目を描かない状態で60℃のイオン交換水に15
0日間浸漬し、注)*2のゴバン目試験を行った際の塗
膜残存率で示した。評価基準は注)*3と同じ。
*5:塗装後クロスカットを入れた調整片をJIS 2371に基
づいて5%塩化ナトリウム水溶液を2週間連続噴霧を行
い、クロスカット部のテープ剥離試験を行った。
評価基準 ◎…0〜1mm(カットラインからの片幅)、周辺部にふ
くれなし ○…1〜2mm(カットラインからの片幅)、周辺部にふ
くれなし △…2〜4mm(カットラインからの片幅)、周辺部にふ
くれ認められる ×…4〜10mm(カットラインからの片幅)、周辺部にふ
くれ顕著 ××…全面剥離(カットラインからの片幅) 表3は本発明品である亜鉛合金−水溶性有機高分子複
合めっき浴から得られる各種めっき皮膜の塗膜1次密着
性を比較品と共に示したものである。
ゴバン目試験による塗膜密着性評価結果においては、
本発明品(No.1〜39)と比較品(No.40〜59)との間に
有意差は認められない。
しかし、エリクセン押出試験による厳しい条件下での
塗膜密着性評価結果においては、顕著な差が存在してい
ることがわかる。即ち、まず有機高分子を全く含まない
亜鉛合金めっき皮膜(No.40〜47)と比較すると、有機
高分子を複合した本発明品(No.1〜39)の塗膜密着性が
極めて優れていることがわかる。本発明の条件を満たさ
ない水溶性有機高分子を含んだめっき浴、比較品No.48
〜55によると、これらの浴により塗料の1次密着力は亜
鉛合金めっきに比べて改善されるものの、しかし本発明
品に比べて機能的に劣っていることがわかる。また本発
明品を、化成処理を施しためっき鋼板(No.58〜59)お
よび水不溶性樹脂の分散めっき鋼板(No.56〜57)と比
較すると、No.1が比較品と同等である以外は全て比較品
をうわまわる塗膜1次密着性を示した。
耐水密着性評価結果においては、本発明品(No.1〜3
9)は有機高分子を含まないNo.40〜47の比較品及び分散
めっき鋼板(No.56〜57)、化成処理鋼板(No.58〜59)
及びNo.48〜55の比較品のいずれをも上回る性能を示す
ことが判明した。
以上の結果から、水溶性有機高分子を少量亜鉛、その
他の金属と共析させることによって、亜鉛合金めっき表
面の塗料密着性が著しく改良されることがわかった。
耐食性については本発明品(No.1〜39)は比較品(N
o.40〜59)のいずれをも大幅に上回る結果が得られ、本
発明品であるめっき浴は耐食性改善にも顕著な効果があ
ることがわかる。
以上、ある特定の化学構造をもった水溶性有機高分子
を電気めっきに応用することにより、従来の水不溶性樹
脂分散めっき技術が有していた煩雑さや制約を取り除く
ことが可能で、本発明のめっき浴を使用することによ
り、化成処理技術を施すことなく、塗料密着性及び塗装
後耐食性に優れためっき皮膜が得られることがわかっ
た。
〔発明の効果〕
本発明は上記のように、水不溶性の有機高分子を用い
る代わりに水溶性の有機高分子を用いるところに大きな
特徴を有している。本発明のめっき浴では、めっき金属
と有機高分子との複合化が分子オーダーで生じるため、
比較的少量の有機高分子の共析で高水準の塗料密着性の
付与が可能である。従って、従来一般に行われていたリ
ン酸塩処理やクロメート処理などの塗装下地処理(化成
処理)を全く施すことなく直接塗装できるので、本発明
のめっき浴を用いることにより、煩雑な化成処理を省略
することが可能である。この工業的メリットは多大であ
る。更に本発明によるめっき浴では、耐食性、プレス加
工性、及び溶接性も兼備した亜鉛合金めっき皮膜を生成
することができる。
また本発明品による水溶性有機高分子複合めっき法に
おいては、従来の電気めっき設備で容易に生産でき、高
価な設備や多大な労力を必要とせず、工業的価値が高
い。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】亜鉛イオンを1〜600g/と亜鉛以外の異
    種金属イオンの1種以上をそれぞれ1〜600g/を含む
    亜鉛めっき浴において、少なくとも繰り返し単位内に1
    個以上の芳香環を有し、且つその繰り返し単位当たりに
    1〜4個の水酸基(−OH)と平均0.05〜4個のスルホン
    基(−SO3)との両者を有し、且つ繰り返し単位の数n
    が2以上であって、平均分子量が1000〜100万である水
    溶性有機高分子の1種以上をめっき浴1当たり0.5〜3
    00g必須成分として含有することを特徴とする有機高分
    子複合電気亜鉛合金めっき浴。
  2. 【請求項2】亜鉛以外の異種金属の1種がニッケルであ
    る特許請求の範囲第1項記載の有機高分子複合電気亜鉛
    合金めっき浴。
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