JP2591870Y2 - サーモスタットミキシングバルブ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、自動温度調整機能を持
つサーモスタットミキシングバルブに係り、特に弁開度
の変化を緩やかにして温度設定時や変動時のハンチング
やオーバーシュート等を防止するようにした装置構成に
関する。

【０００２】

【従来の技術】自動温度調整機能を持つサーモスタット
ミキシングバルブは、たとえば浴室用のシャワー設備や
洗面化粧台等に備える湯水混合栓として利用されてい
る。

【０００３】このサーモスタットミキシングバルブの基
本構造は、本体の内部流路に感温機能部を組み込み、こ
れによって温度変動を生じたときに水と湯との混合比を
一軸上で変える弁体を移動させ、混合水の温度を設定し
た温度に維持するというものである。

【０００４】この感温機能部の例として、たとえば実開
昭６２−５０３８５号公報に記載されているように、熱
膨張・収縮性のワックスを封入した感温体を用い、この
感温体の一端から出没するピンの動きによって弁体の位
置を変更するものがある。

【０００５】また、このようなワックスの熱膨張・収縮
を利用するのに代えて、混合水流路内に形状記憶合金製
のスプリングを収納し、混合水温度の変動に基づくスプ
リングの軸線方向への膨張及び収縮によって温度調整す
るようにしたものもある。

【０００６】これらの何れにおいても、本体の内部流路
を流れる混合水に感温部を曝し、この感温部の熱膨張・
収縮を変換手段として弁体を移動させ、湯側と水側の弁
開度を変更することによって、自動温度調整を行う。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】ところが、温度調整用
の弁体は中空の円筒体状であってその軸線方向の一端を
水弁座への着座面とし、他端を湯弁座への着座面とした
ものである。このため、水側及び湯側のそれぞれの弁開
度は、それぞれの弁座と弁体の端部との距離と弁体の外
周面の長さの積となる。したがって、弁体が大きいほ
ど、その軸線方向の移動量が僅かであっても弁開度は大
きく変化することになる。

【０００８】このように、弁体を軸線方向に移動させて
弁開度を調整し、湯と水との混合比を変えて温度調整す
る構造では、操作時に湯側と水側の弁開度が急激に変わ
ってしまうため、調整した直後には設定温度を挟んで上
下に温度が変動するハンチング現象を生じやすい。

【０００９】また、温度設定するときでも、ハンドルの
回転角度に比べて弁開度の増減が急激に行われる傾向に
あることから、設定値を超えてオーバーシュートするこ
とも多い。

【００１０】本考案において解決すべき課題は、サーモ
スタットミキシングバルブにおいて、温度調整時での弁
開度の変化を緩やかにし、混合水温度のハンチングやオ
ーバーシュートの発生を抑えることにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本考案は、水流入口と湯
流入口とを軸線方向に間隔をおいて周壁に開け更に下流
側に混合水流出口を備えたハウジング内に、前記水流入
口及び湯流入口にそれぞれ整合可能な水用孔及び湯用孔
を周壁に開けた中空円筒状の弁体を回転自在に設けると
共に該弁体を外部から回転操作可能とし、前記水用孔及
び湯用孔からの水と湯が混合する流路内に形状記憶素子
製のコイルスプリングを設け、該コイルスプリングは前
記弁体と前記ハウジングとの間に連接され温度変化に基
づく変形による捩じりを前記弁体の軸線周りの回転に変
換可能とし、混合水が設定温度より上昇変動したときに
は前記湯用孔側の弁開度を小さく且つ下降変動したとき
には前記水用孔側の弁開度を小さくする向きに前記コイ
ルスプリングによって前記弁体を回転駆動する系とした
ことを特徴とする。

【００１２】コイルスプリングは、低温側から高温側へ
の温度変化に対して形状記憶効果を持つ１方向性の形状
記憶素子製とし、湯用側の弁開度を大きくする向きに弁
体を付勢するバイアススプリングを備える構成とするこ
ともできる。

【００１３】また、コイルスプリングは、低温側及び高
温側の両方の温度雰囲気に対する形状記憶効果を持つ２
方向性の形状記憶素子製としてもよい。

【００１４】

【作用】ハウジングの中に設けた弁体は円筒状であって
その軸線周りに回転させることによって、弁体の水用及
び湯用の孔をハウジングの水及び湯の流入口に対して弁
開度を設定できる。このため、これらの水用，湯用の孔
及び流入口の形状や大きさを適切にしておけば、弁開度
の変化を緩やかにすることができる。したがって、急激
な弁開度の変化がなく、温度設定時等でのハンチングや
オーバーシュートが防止される。

【００１５】また、形状記憶素子製のコイルスプリング
は、混合水の温度に感応して膨張・収縮変形し、温度上
昇時には湯側の弁開度を絞るように、また温度下降時に
は水側の弁開度を絞るように弁体を回転させることがで
き、これによって使用中での温度変動に対する自動温度
調整が行われる。

【００１６】コイルスプリングを１方向性の形状記憶素
子製とした場合では、コイルスプリングは高温側の形状
を記憶しているだけである。これに対し、湯用孔の弁開
度を大きくする向きに弁体を付勢するバイアススプリン
グを備えておけば、混合水が低温側に変化したときで
も、弁体の開度調整が可能となる。

【００１７】また、コイルスプリングを低温側及び高温
側の形状を記憶した２方向性とすれば、コイルスプリン
グの温度に対する変形によって、混合水の温度変動に対
応した弁開度の調整が可能であり、バイアススプリング
は不要となる。

【００１８】

【実施例】図１はサーモスタットミキシングバルブの要
部の構造の概略を示す正面縦断面図、図２及び図３はそ
れぞれ図１のＡ−Ａ線及びＢ−Ｂ線矢視による縦断面図
である。

【００１９】図において、湯水混合栓の本体（図示せ
ず）の中に組み込まれるハウジング１の周壁には軸線方
向に間隔をおいて水流入口１ａ及び湯流入口１ｂをそれ
ぞれ開けると共に、これらの流入口１ａ，１ｂに連通す
る下流側には混合水流出口１ｃを開けている。水流入口
１ａは湯水混合栓の本体の中の給水室に連通し、同様に
湯流入口１ｂと混合水流出口１ｃはそれぞれ湯室及び混
合室に連通し、この混合室を経由して混合水が吐出端か
ら吐出される。

【００２０】ハウジング１の内部には、中空円筒状の弁
体２をその軸線周りに回転可能に組み込み、この弁体２
をハウジング１にネジ接合したスピンドル３の回転に連
動して回転可能とし、温度調整の際にはハウジング１か
ら突き出して湯水混合栓の本体の外部に位置するハンド
ル３ａを回転操作する。

【００２１】弁体２の周壁には、図２及び図３に示すよ
うな互いの位置関係を持つ水用孔２ａ及び湯用孔２ｂを
それぞれ開ける。図２及び図３においては、弁体２はそ
の中立位置にあり、湯用孔２ｂは湯流入口１ｂに対して
右半分の領域で流路を整合させ、また水用孔２ａは水流
入口１ａに対して左半分の領域で流路を整合させてい
る。そして、水用孔２ａと湯用孔２ｂとの間には隔壁２
ｃを設け、その中央部には水用孔２ａを混合水流出口１
ｃ側に連通させる連絡孔２ｄを開ける。

【００２２】隔壁２ｃとスピンドル３の端面との間に
は、スピンドル３の回転を弁体２に伝えると共に、混合
水の温度下降時に湯用孔２ｂ側の弁開度が大きくなる方
向に弁体２を付勢するバイアススプリング４を組み込
む。このバイアススプリング４は、隔壁２ｃ及びスピン
ドル３の端面にそれぞれ設けたフック２ｅ，３ｂによっ
て掛止され、ハンドル３ａを回転操作すると、バイアス
スプリング４は捩じれを生じながら隔壁２ｃに回転力を
伝達し、弁体２をその軸線周りに回転させることができ
る。

【００２３】更に、隔壁２ｃから下流側の弁体２の内部
には、感温部の機能を果たす形状記憶素子製のコイルス
プリング５を組み込む。このコイルスプリング５は、１
方向性の形状記憶素子を素材としたものであり、高温側
での形状を記憶し、混合水の温度が高くなると記憶した
形状に変形可能である。そして、この変形によって、混
合水温度が設定温度に保持されるように弁体２を回転さ
せる機能を持つ。

【００２４】コイルスプリング５は、その一端を隔壁２
ｃに設けた二股状のフック２ｆによって掛止され、他端
を弁体２の端部から突き出してハウジング１の内周から
突き出したフック１ｄによって保持されている。

【００２５】図４はコイルスプリング５の巻き方向及び
フック１ｄ，２ｆとの係合関係を示すための概略斜視
図、図５はコイルスプリング５を上流側から見た図であ
る。

【００２６】図示のように、コイルスプリング５は上流
側から見て時計方向に螺旋状としたもので、それぞれ両
端にはフック１ｄ，２ｆに掛けるための掛止片５ａ，５
ｂを半径方向に突き出している。そして、図５のような
フック１ｄ，２ｆと掛止片５ａ，５ｂとの位置関係によ
って、コイルスプリング５の温度が高温になると、スプ
リング５はその形状記憶効果によって変形し、図５にお
いて時計方向に向けて変形しようとし、これによって弁
体２は図２及び図３において時計方向に回転する。した
がって、水用孔２ａと水流入口１ａとの整合度が大きく
湯用孔２ｂと湯流入口１ｂとの整合度が小さくなって、
低温側に設定される。

【００２７】また、コイルスプリング５周りの温度が下
がると、コイルスプリング５は軟化し始め、バイアスス
プリング４の捩り方向の付勢力がコイルスプリング５の
それに打ち勝つようになる。このため、コイルスプリン
グ５は図において反時計方向に向けて変形しようとし、
フック２ｆによってスプリング５に連接されている弁体
２は、図２及び図３において反時計方向に回転する。し
たがって、水用孔２ａと水流入口１ａとの整合度が小さ
く且つ湯用孔２ｂと湯流入口１ｂとの整合度が大きくな
り、高温側に設定される。

【００２８】以上の構成において、混合水の温度の設定
はハンドル３ａの回転操作によって、弁体２をバイアス
スプリング４を介して回転させることで行われる。これ
により、弁体２の水用及び湯用の孔２ａ，２ｂのハウジ
ング１の水及び湯の流入口１ａ，１ｂに対する整合度が
決められる。

【００２９】ここで、供給された水は連絡孔２ｄを経由
して弁体２の下流側に流れ込み、この部分で湯と混合し
て混合水流出口１ｃ側へ流れ去る。そして、この流れの
中に位置している形状記憶素子製のコイルスプリング５
は混合水の温度に応じて、その高温側での形状記憶効果
及び低温側でのバイアススプリング４による動作によっ
て弁体２を回転させ、混合水温度を設定値となるように
自動調整することができる。

【００３０】弁体２は回転式であってその周壁に開けた
水用及び湯用の孔２ａ，２ｂの位置をハウジング１側の
水流入口１ａ及び湯流入口１ｂに対して変化させるの
で、従来の軸線方向への移動による弁開度の設定に比べ
ると、開度の変更が緩やかに行われる。このため、温度
設定のときや混合水の急な温度変動に対しても、急激に
水側及び湯側の弁開度が変化しないので、設定温度の維
持及び設定値に対するハンチング現象が防止可能であ
る。

【００３１】図６は別の例を示すバルブハウジングの内
部構造を示す縦断面図である。

【００３２】この例では、コイルスプリング５を低温側
及び高温側の両方で形状記憶効果を持つ可逆性の２方向
性形状記憶素子によって構成する。この２方向性形状記
憶素子のコイルスプリング５であれば、先の例では混合
水が低温となったときに弁体２の姿勢を変えるのにバイ
アススプリング４の付勢力を用いていたのに対し、コイ
ルスプリング５の変形のみによって弁体２を駆動でき、
バイアススプリング４を必要としない。

【００３３】コイルスプリング５の組み込みの要領は、
先の例と全く同様であり、巻き方向やフック１ｄ，２ｆ
との連接関係も図４及び図５と同一である。

【００３４】この２方向性の形状記憶素子製のコイルス
プリング５を備えた場合でも、コイルスプリング５周り
の温度が下がるとその形状記憶効果により、コイルスプ
リング５は先の例の図２において反時計方向に向けて変
形しようとする。このため、フック２ｆによってスプリ
ング５に連接されている弁体２は、水用孔２ａと水流入
口１ａとの整合度が小さく且つ湯用孔２ｂと湯流入口１
ｂとの整合度が大きくなる向きに回転し、高温側に設定
される。

【００３５】また、コイルスプリング５の温度が高温に
なるときは、先の例と全く同様に、水用孔２ａと水流入
口１ａとの整合度が大きく湯用孔２ｂと湯流入口１ｂと
の整合度が小さくなる方向に弁体２が回転して低温側に
設定される。

【００３６】

【考案の効果】本考案では、感温部として混合水の流路
に位置させた形状記憶素子製のコイルスプリングによっ
て弁体をその軸線周りに回転させるように付勢し、弁体
の周壁に開けた水用及び湯用の孔を供給側の流路に整合
させるので、弁体を軸線方向に移動させその両端面と弁
座との間で弁開度を設定する従来構造に比べると、弁開
度の変更が緩やかに行われる。このため、温度設定時や
温度変動時の自動調整の際のハンチングや大きなオーバ
ーシュートがなくなり、設定した温度の混合水を確実に
供給できる。

【００３７】また、感温部として機能するコイルスプリ
ングは、混合水の流れの中に曝されているので、たとえ
ば容器の中に熱収縮性のワックスを封入した感温部に比
べると応答性が高く、温度変動に対して速やかに自動温
度調整が行える。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案のサーモスタットミキシングバルブに使
用するバルブハウジングの内部構造を示す概略縦断面図
である。

【図２】図１のＡ−Ａ線矢視による縦断面図である。

【図３】図１のＢ−Ｂ線矢視による縦断面図である。

【図４】形状記憶素子製のスプリングの巻き方向とこれ
を掛止するフックとの位置関係を示す概略斜視図であ
る。

【図５】スプリングとフックとを上流側から見た図であ
る。

【図６】低温側及び高温側に形状記憶効果を持つ２方向
性の形状記憶素子のコイルスプリングを備えた例のバル
ブハウジングの概略縦断面図である。

【符号の説明】

１ ハウジング １ａ 水流入口 １ｂ 湯流入口 １ｃ 混合水流出口 ２ 弁体 ２ａ 水用孔 ２ｂ 湯用孔 ３ スピンドル ４ バイアススプリング ５ コイルスプリング

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 牛田 俊秀 福岡県北九州市小倉北区中島２丁目１番 １号 東陶機器株式会社内 (56)参考文献 実開 昭60−139966（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F16K 31/70 F16K 11/00 - 11/24

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 水流入口と湯流入口とを軸線方向に間隔
   をおいて周壁に開け更に下流側に混合水流出口を備えた
   ハウジング内に、前記水流入口及び湯流入口にそれぞれ
   整合可能な水用孔及び湯用孔を周壁に開けた中空円筒状
   の弁体を回転自在に設けると共に該弁体を外部から回転
   操作可能とし、前記水用孔及び湯用孔からの水と湯が混
   合する流路内に形状記憶素子製のコイルスプリングを設
   け、該コイルスプリングは前記弁体と前記ハウジングと
   の間に連接され温度変化に基づく変形による捩じりを前
   記弁体の軸線周りの回転に変換可能とし、混合水が設定
   温度より上昇変動したときには前記湯用孔側の弁開度を
   小さく且つ下降変動したときには前記水用孔側の弁開度
   を小さくする向きに前記コイルスプリングによって前記
   弁体を回転駆動する系としてなるサーモスタットミキシ
   ングバルブ。
2. 【請求項２】 前記コイルスプリングは、低温側から高
   温側への温度変化に対して形状記憶効果を持つ１方向性
   の形状記憶素子製とし、前記湯用側の弁開度を大きくす
   る向きに前記弁体を付勢するバイアススプリングを備え
   てなる請求項１記載のサーモスタットミキシングバル
   ブ。
3. 【請求項３】 前記コイルスプリングは、低温側及び高
   温側の両方の温度雰囲気に対する形状記憶効果を持つ２
   方向性の形状記憶素子製としてなる請求項１記載のサー
   モスタットミキシングバルブ。