JP2591865B2 - 多結晶ダイヤモンド工具及びその製造方法 - Google Patents

多結晶ダイヤモンド工具及びその製造方法

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JP2591865B2
JP2591865B2 JP8151491A JP8151491A JP2591865B2 JP 2591865 B2 JP2591865 B2 JP 2591865B2 JP 8151491 A JP8151491 A JP 8151491A JP 8151491 A JP8151491 A JP 8151491A JP 2591865 B2 JP2591865 B2 JP 2591865B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削工具や耐摩工具等
として好適な、強度、耐摩耗性、耐欠損性、耐溶着性、
耐熱性が著しく改善された工具用多結晶ダイヤモンド、
及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】工具用ダイヤモンドは、従来焼結によっ
て作られた。ダイヤモンド微粉末を型に入れ高温高圧下
で焼結するものである。焼結ダイヤモンドを用いた工具
は非鉄金属の切削工具、ドリルビット、線引きダイス等
に使用されている。例えば、特公昭52−12126号
公報には、ダイヤモンド粉末をWC−Co系超硬合金の
粉末成形体に接触させた状態で焼結し、Coの一部をダ
イヤモンド粉末中に結合金属として侵入させることによ
って、約10〜15体積%のCoを有するダイヤモンド
焼結体が開示されている。
【0003】このダイヤモンド焼結体は、非鉄金属の切
削工具として実用的性能を有する。しかしこれは耐熱性
に難点があった。例えば700℃以上に加熱すると耐摩
耗性や強度が低下する。さらに900℃以上の温度では
焼結体が破壊されてしまう。このような耐熱性低下の原
因は次のように考えられる。ひとつは結合材であるCo
とダイヤモンド粒子の界面でダイヤモンドが黒鉛化する
ということである。もうひとつはCoとダイヤモンドの
熱膨脹率が違うので高温になると両者の界面に強い熱応
力が発生するためである。
【0004】このようなダイヤモンド焼結体の耐熱性を
改善するために、特開昭53−114589は焼結体を
酸処理して、結合金属であるCoを除去することを提案
している。こうすればCoとダイヤモンドの界面という
ものが存在しないので、黒鉛化、熱応力の問題がなくな
る筈である。しかしこの方法では、Coが除去された後
が空孔となってしまう。耐熱性は向上するが、機械的強
度は低下するという難点があった。焼結法にはこのよう
な難点があり強度、耐熱性ともに優れたものを作ること
が難しい。
【0005】最近では気相からダイヤモンドを化学的に
合成することが可能になってきた。化学的気相堆積法
(CVD法)または単に気相合成法という。約5体積%
以下の炭化水素ガスを、水素ガスによって希釈し数十T
orrの減圧下においてダイヤモンドを基材の上に析出
させるものである。原料ガスをどのように分解し励起す
るかについて様々な方法が提案されていていくつものC
VD法がある。加熱したり、電子、プラズマで励起した
りする。
【0006】特開昭58−91100号公報には原料ガ
スを1000℃以上に加熱した熱電子放射材によって予
備加熱し、加熱された基材表面に原料ガスを導き炭化水
素を熱分解させ、基材上にダイヤモンドを析出させる方
法が提案されている。特開昭58−11049号公報は
水素ガスをマイクロ波プラズマCVD法無電極放電中を
通過させた後、炭化水素ガスと混合し基材上にダイヤモ
ンドを析出させる方法を提案している。
【0007】特開昭59−30398号公報には水素ガ
スと不活性ガスとの混合ガスにマイクロ波を導入してプ
ラズマを発生させ炭化水素をプラズマによって分解し、
300℃〜1300℃に加熱された基材にダイヤモンド
を析出させる方法が開示されている。このようにCVD
法によってダイヤモンド膜を合成する方法はいくつもあ
る。合成したダイヤモンド膜をどのように使うかという
と、二つの方法がある。
【0008】ひとつは基材から剥離してダイヤモンドの
単体とするものである。これは改めて適当な工具に取り
付けられる。もうひとつは工具の刃先を基材としてこれ
にダイヤモンドを被覆するものである。特開平1−15
3228、特開平1−210201は、気相合成法でダ
イヤモンドを析出させた後、基材をエッチング除去しダ
イヤモンド単体とする。これを別体の工具主体の先に設
置固定することにより工具とする。しかしこれも耐欠損
性、耐摩耗性が不十分であってダイヤモンド本来の性能
を発揮できていない。CVD法で工具の先を多結晶ダイ
ヤモンドでコ−テイングした工具も提供されている。工
具または工具の一部を基材としてCVD方法でダイヤモ
ンドを成長させるのである。刃先はダイヤモンドである
ので強度も十分な筈である。しかしダイヤモンドの膜厚
が薄く、ダイヤモンドと基材との密着強度も不十分であ
って工具として十分な性能が得られていない。基材とダ
イヤモンドは異質であるから密着強度を高めることは難
しい。
【0009】特開平2−22471号公報は、組成に工
夫を加えたダイヤモンド膜を超硬合金にコ−テイングし
て密着強度を高めようとしている。しかしこれとて被切
削材の面粗度によっては切削性が悪い。さらに難削材
(例えば17%Al−Si合金、25%Al−Si合
金)を被切削材とする場合の切削特性が不十分である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、本発明に係
る従来の事情に鑑み、強度、耐欠損性、耐溶着性、耐熱
性及び耐摩耗性を改善し、特に難削材に対し、耐欠損性
と耐摩耗性に優れた工具用多結晶ダイヤモンドを提供す
ることを目的とする。従来のダイヤモンド膜は気相合成
で作製したものであっても、膜質が厚み方向で大きく変
わるものではなく、均一な膜質構造をとるものであっ
た。従来の均一な膜質構造であるダイヤモンド工具で
は、ダイヤモンドの全体にわたって劣等なダイヤモンド
であるものは耐摩耗性、強度が低い、反対に全体が良質
のダイヤモンドで構成されたものは耐欠損性が悪いとい
う難点がある。結局均一な膜質のダイヤモンドでは上記
の条件を満足するものはできないということに本発明者
は気付いた。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の多結晶ダイヤモ
ンド工具は、工具母材と多結晶ダイヤモンドとからな
り、工具刃先の母材面に多結晶ダイヤモンドの母材設置
固定面を当接して固定し、ダイヤモンドを刃先とする構
造の工具であって、ダイヤモンドの厚さが40μm以上
であり、ダイヤモンドの厚み方向に膜質が変化してお
り、刃先すくい面側のダイヤモンドの膜質が母材設置固
定面側のダイヤモンドの膜質よりも良好であるようにし
ている。つまり母材設置固定面側がより劣等で、すくい
面側がより優良な膜質になっている。この母材設置固定
面側のより劣等なダイヤモンドは欠陥が多く弾性率が低
いので靱性に富み、、刃先すくい面にかかる応力を緩和
し刃先の耐欠損性を向上させる。すくい面側は高品質の
ダイヤモンドであるので強度、耐熱性、耐溶着性に優れ
る。両面のダイヤモンドがお互いに長所を生かしあって
優れた工具となる。このようなすくい面、母材設置固定
面の性質の相補性が本発明の特徴である。
【0012】ここでいうダイヤモンドとは純粋なダイヤ
モンド成分の他に非ダイヤモンド成分をも含む。気相合
成で析出させるダイヤモンドであるため、合成条件によ
っては結晶質のダイヤモンドの他に、非ダイヤモンド成
分(非晶質炭素成分、グラファイトなどのダイヤモンド
構造を持たない結晶質炭素成分)が結晶質のダイヤモン
ドの析出と同時に析出するからである。そして、良質な
ダイヤモンド膜とはこれらの非ダイヤモンド成分の析出
が極力抑えられたダイヤモンドの事である。また、ダイ
ヤモンド結晶自体についても歪み、欠陥等が少ない高結
晶性のものをいう。これに対して、悪質なダイヤモンド
膜とは全く逆のものであり、非ダイヤモンド成分の含有
量が多く、低結晶性で欠陥の多いのものをいう。本発明
は、従来のもののように膜質が一定なのではなく、ダイ
ヤモンドの膜質を厚み方向に変化させる。ダイヤモンド
の工具母材に設置する面は悪質なダイヤモンド膜とし、
反対側の実際に被削面を切削するすくい面は良質なダイ
ヤモンド膜質構造とするのである。
【0013】この場合ダイヤモンドの品質を評価するた
めの特性量が必要である。これについては2つの特性量
がある。 欠陥密度 非ダイヤモンド成分濃度である。非ダイヤモンド成分
というのは、非晶質炭素成分、グラファイトなどを意味
する。欠陥というのはダイヤモンド構造における結晶欠
陥のことである。両者は勿論異なる物理量であるが、互
いに相関関係がある。前述の条件はダイヤモンドの両面
のみの膜質によって本発明を定義しているが、より厚み
を持たせて両方の表面から一定深さの部分領域における
膜質、つまり非ダイヤモンド成分濃度、欠陥密度の大小
によっても定義できる。厚み方向に膜質の異なるダイヤ
モンド膜を作成するには、最も簡単には、通常気相合成
で用いる水素ガス(A)中の炭素原子含有ガス(B)の
モル分率Q=(B)/(A)を合成中に変化させればよ
い。Qを増やすと膜質が低下してゆく。また酸素の含有
率を下げていっても膜質が低下する。窒素を増やしてゆ
くことにより膜質を低下させることもできる。
【0014】
【作用】第1図に多結晶ダイヤモンド工具の概略図の一
例を示す。超硬合金の母材1の一隅に多結晶ダイヤモン
ド膜2が鑞付け層3によって固定設置してある。多結晶
ダイヤモンド膜2の外部に現れた方の面がすくい面4
で、母材に固定してある方が母材設置固定面5である。
本発明においては、厚み方向にダイヤモンドの膜質が異
なる。母材設置固定面の方がダイヤモンド膜質がより悪
く、すくい面側ダイヤモンドの膜質がより良い。すくい
面側のダイヤモンドは非ダイヤモンド成分の含有量を極
力抑え、母材設置固定面側はすくい面側に対して非ダイ
ヤモンド成分の含有量を増加させる。もしくは、すくい
面側のダイヤモンドの欠陥密度を極力抑え、母材設置固
定面側はすくい面側に対してダイヤモンドの欠陥密度を
増加させてやる。
【0015】非ダイヤモンド成分の含有量が多ければ、
ダイヤモンドの欠陥密度は通常増加する。しかし非ダイ
ヤモンド成分の含有量が同程度でもダイヤモンド膜中の
欠陥密度が異なるダイヤモンド膜は存在する。このため
ダイヤモンドの膜質の定義としては上記のとおり非ダイ
ヤモンドと欠陥密度による2通りの方法がある。すくい
面4側は低非ダイヤモンド低欠陥高品質膜であり、母材
設置固定面5側はそれより非ダイヤモンド成分もしくは
欠陥密度が大きい低品質膜である。母材設置固定面は欠
陥密度が高く非ダイヤモンド成分が高いので剛性が低く
弾力性に富むようになる。これにより、すくい面4側に
かかる応力を緩和する事が可能となる。つまり、母材設
置固定面側が応力緩和層として機能する。上記に示す膜
質構造では、膜の剛性が母材設置固定面側では低く、す
くい面側の剛性を低下させる事なく、膜全体の靱性(T
OUGHNESS、ねばさ)を向上させる事が可能とな
るわけである。すくい面のほうは剛性が高いので耐摩耗
性が十分に高い。このため、ダイヤモンドの優れた耐摩
耗性を損なう事なく、耐欠損性を向上させる事ができ
る。
【0016】より厳密に規定するため、すくい面4をz
=0とし、面に直角方向にz軸を取る。面に平行な方向
にx、y軸を取る。点(X,Y,Z)での非ダイヤモン
ド成分濃度ををW(x,y,z)、欠陥密度をD(x,
y,z)で表現する。ダイヤモンドの膜厚をTとする
と、z=Tが母材設置固定面にあたる。第1の定義は G0 =∫W(x,y,0)dxdy/S (1) H0 =∫W(x,y,T)dxdy/S (2) S =∫dxdy (3) として(G0 はすくい面での非ダイヤモンド濃度、H0
は母材設置固定面での非ダイヤモンド濃度、Sはダイヤ
モンド面積)、 T>40μm (4) G0 <H0 (5) というように表現できる。
【0017】第2の定義は、 U0 =∫D(x,y,0)dxdy/S (6) V0 =∫D(x,y,T)dxdy/S (7) S =∫dxdy (8) として(U0 はすくい面での欠陥密度、V0 は母材設置
固定面での欠陥密度) T>40μm (9) U0 <V0 (10) というように表現できる。
【0018】ただし両側の表面に限らず,両側の表面近
くでこの式が成り立てばよく、この場合はすくい面側の
W(x,y,0)やD(x,y,0)をε(T/2>ε
>0)によりW(x,y,ε)やD(x,y,ε)に置
き換え、母材設置固定面側のW(x,y,T)やD
(x,y,T)をW(x,y,T−ε)やD(x,y,
T−ε)に置き換えることもできる。そして(5)や
(10)の代わりに、 Gε<Hε (11) Uε<Vε (12) というように本発明の内容を記述できる。
【0019】ダイヤモンドの膜厚Tが40μm以上であ
る理由は、ひとつはそれ以下であると強度が低下して破
損しやすくなるためである。いまひとつの理由は、切削
工具としたときの寿命時の逃げ面摩耗幅が40μm以上
となる場合が多いためである。さらに高度の耐摩耗性を
要求する場合には、膜厚Tを0.07mm〜3.0mm
にすることが望ましい。コスト的に問題が生じなければ
3mm以上にすることも考えられる。ダイヤモンドは熱
伝導率が最も良く、膜厚を大きくすると放熱特性が良好
になる。すると刃先温度の上昇が抑えられるので摩耗し
にくくなるのである。
【0020】本発明で最も特徴的なのはG0 <H0 また
はU0 <V0 という関係にある。もしもG0 ≧H0 また
はU0 ≧V0 であれば母材設置固定面側は応力緩和層と
ならず靱性が乏しくダイヤモンド膜にクラックが入りや
すく、脱離の惧れもあるし、耐摩耗性も劣りやすい。
【0021】すると非ダイヤモンドや欠陥密度をどのよ
うにして測定するのかということが問題になる。ダイヤ
モンド膜中の非ダイヤモンド成分(非晶質炭素、炭素、
グラファイトなどのダイヤモンド構造を持たない炭素成
分)の含有状態はX線回折等では測定できず、ラマン散
乱分光測定が最も適している。ラマン散乱は一言で言う
と、光波が物質中で非弾性散乱を受けその際励起された
フォノンと光波との相互作用により、入射光とは波長の
異なった光が放出される現象(非弾性散乱光、ラマン散
乱光)である。フォノン以外にもプラズモン、マグノン
などもラマン散乱に寄与する。また媒質が液体や気体で
ある場合にはフォノンではなく分子振動と光波との相互
作用によりラマン散乱が生じる。
【0022】通常ラマンスペクトルの測定には、大別し
て励起レーザ光源、試料光学系、分光系及び検知、計測
系が必要である。励起レーザ光源には通常アルゴンレー
ザの488nm、514nmを用いる。そして、このレ
ーザ光を試料、今回の場合は工具刃先に固定設置されて
いるダイヤモンド膜に照射し、発生したラマン散乱光を
分光した後、マルチチャンネル検出器などに導入する。
また、通常の後方散乱法に対し、照射するレーザ光を光
学顕微鏡による光学系を通過させてレーザ光を数十μm
以下に絞り微小部のラマン分光スペクトルを測定する顕
微ラマン測定法もある。
【0023】今回測定を行う工具刃先のダイヤモンドも
すくい面側刃先は刃先面に垂直にレーザ光を照射する場
合には前者の測定法でも可能であるが、ダイヤモンド刃
先の厚み方向、すくい面側から母材設置固定面にかけて
のラマン分光測定を行う場合には、レーザ光を数十μm
以下に絞れる後者の顕微ラマン測定法の方が微小分析に
適している。但し、レーザ光が集中するため、局所的に
温度が上昇しやすいので十分に注意する必要がある。試
料の膜質の変化やラマンピークのシフト位置の変化など
を引き起こす可能性があるからである。厳密には、ヘリ
ウム等のガスを試料に吹き付けたりラマンスペクトルの
プロファイルが対称であることを確認したり、レーザ光
の出力を変化させて温度上昇によるものかどうかを確認
すればよい。また、分光系の光軸系やスリット幅などの
調整も分解能を上げるため十分調整する必要がある。
【0024】ダイヤモンドのラマンスペクトルは1次の
ラマン線は3重に縮退した1332.5cm-1に現れる
1本のみであり、2次のラマン線は1次の500分の1
以下の非常に弱いものである。このため、ダイヤモンド
自体の評価には、この1次のラマン線に注意して評価を
行えばよい。ラマン散乱によるピ−クによってダイヤモ
ンド膜質を評価するといっても2つの方法がある。ひと
つはダイヤモンドに対応するピ−クの半値幅によって、
もうひとつはピ−ク自体の高さによって評価するもので
ある。本発明で欠陥密度を測定するために用いるダイヤ
モンドラマンスペクトルの半値幅とはこの1332.5
cm-1付近に現れるピ−クについてのものである。
【0025】通常、ダイヤモンド中に欠陥やストレス等
が入り、ダイヤモンド構造に乱れがが生じたりすると、
この半値幅が広がり、逆に高結晶性であると半値幅が狭
くなることが知られている。後に述べる非ダイヤモンド
成分等の析出が多く存在する場合等には顕著な広がりを
示す。しかし非ダイヤモンド成分の析出が少ない場合で
あってもイオン注入などによりダイヤモンドの結晶構造
を積極的に破壊した場合などでも顕著な広がりを示す。
【0026】本発明のひとつの方法、はこのダイヤモン
ド結晶中の欠陥密度分布を厚み方向に傾斜させるもので
ある。この欠陥(転位、積層欠陥等)の状態はTEM
(Transmission Electron Mi
croscopy)観察等により実際に観察する事が可
能である。また、X線回折による測定によっても観察可
能である。
【0027】また、本発明による非ダイヤモンド成分と
は結晶質ダイヤモンド以外の炭素成分の事を総称してい
うものであり、例えば、非晶質の炭素成分や、ガラス状
炭素、活性炭素のように黒鉛結晶構造を基本とし且つ構
造が大きく乱れたいわゆる無定型炭素(highly
disordered graphite)成分やグラ
ファイトのような結晶質炭素成分等の事を言う。そし
て、ここで問題にする非ダイヤモンド成分は主に無定型
炭素である。通常気相合成法ではダイヤモンドを非平衡
状態から析出させるため、条件によっては本発明実施例
に示すように、非ダイヤモンド成分の析出がダイヤモン
ドの析出とともに起こる。そして本発明のいまひとつの
手法としてはこの現象を積極的に利用したものである。
これらの非ダイヤモンド成分はダイヤモンドと同様にラ
マン光に対して構造敏感な物質であり、主に1000c
-1から2000cm-1の間でブロードなピークを持
つ。炭素構造の乱れ方により多少ピークの出方は変化す
るが、本発明においては1332.5cm-1付近のシャ
ープなダイヤモンドのラマン線以外はほぼこの非ダイヤ
モンド成分によるものと考えてよい。
【0028】再度本発明を以下に定義する。ひとつは
ダイヤモンド中に含まれる非ダイヤモンド成分によって
定義された多結晶工具であり、いまひとつは 結晶質
ダイヤモンド中の欠陥密度について定義したものであ
る。
【0029】[非ダイヤモンド成分による定義]工
具母材と多結晶ダイヤモンドとよりなり、工具刃先の母
材面に多結晶ダイヤモンドの母材設置固定面を当接して
固定しダイヤモンドを刃先とする構造の工具であって、
ダイヤモンドの厚さが40μm以上であり、すくい面か
ら母材設置固定面にかけてダイヤモンドの厚み方向に非
ダイヤモンド濃度が増加している事を特徴とする。より
望ましくは、刃先ダイヤモンドのすくい面から厚み方向
母材面に向かって少なくともダイヤモンドの平均膜厚の
30%以内もしくは40μm以内のダイヤモンドのどち
らか小さい箇所におけるダイヤモンド中の非ダイヤモン
ド成分の含有量がダイヤモンド母材設置固定面より厚み
方向刃先すくい面に向かってダイヤモンドの平均膜厚の
30%以内もしくは40μm以内のどちらか小さい方の
ダイヤモンド中の非ダイヤモンド成分含有に対して少な
い事を特徴とする多結晶ダイヤモンド工具である。
【0030】ラマンスペクトルによる定義を行うとラマ
ン分光分析により、刃先ダイヤモンドのすくい面から断
面方向母材面に向かって少なくともダイヤモンドの平均
膜厚の30%以内もしくは40μm以内のダイヤモンド
のどちらか小さい箇所における非ダイヤモンド成分のピ
ーク値(X1)のダイヤモンド成分のピーク値(Y1)
に対する比(X1/Y1)がダイヤモンド母材設置固定
面より断面方向刃先すくい面に向かってダイヤモンドの
平均膜厚の30%以内もしくは40μm以内のどちらか
小さい方の非ダイヤモンド成分のピーク値(X2)のダ
イヤモンド成分のピーク値(Y2)に対する比(X2/
Y2)よりも小さい膜質構造X1/Y1<X2/Y2
を持つ事を特徴とする多結晶ダイヤモンド工具である。
【0031】ここで、図5のラマンスペクトルを例に
X、Yのピーク値の設定を行う。蛍光等のバックグラウ
ンドのベースラインを引きダイヤモンドのピーク値(1
332.5cm-1付近のピーク)以外で最も高いブロー
ドなピークを検知し、このピーク値のベースラインから
の高さがXとなる。炭素はラマン活性な物質であるの
で、ダイヤモンドのピーク値以外に現れるブロードなピ
ークは非ダイヤモンド成分によるものと考えてよい。こ
の非ダイヤモンド成分のピーク値は非晶質炭素や、無定
型炭素(黒鉛結晶構造を基本とし、且つ構造が大きく乱
れたもの)と呼ばれるもので、構造の乱れゆえにピーク
値は1000cm-1から2000cm-1の間でばらつ
く。このため、1000cm-1から2000cm-1の間
に現れる最も高いピークをもって非ダイヤモンド成分の
ピーク高とする。図5は最も典型的な非ダイヤモンド成
分がダイヤモンドと同時析出しているラマンスペクトル
である。ダイヤモンド成分のラマンピーク値は133
2.5cm-1に現れる。これは通常の同位体12C、13
の存在比で構成されたダイヤモンドでの場合であり13
が多くなれば低波数側にシフトする事が知られている。
このためラマンシフト値が若干シフトする事もある。こ
こで、ダイヤモンドのピーク値を検知して前述と同様に
ベースラインに対する高さYを求めるのであるが、前述
の非ダイヤモンド成分の裾のピークが同時にのっている
ことが多いので、これを除去したベースラインを新たに
引き、これに対する高さをYとする。Xを求める場合と
Yを求める場合でベ−スラインの引き方が違う。ベ−ス
ラインの引き方によってこれらの高さが違ってくる。正
確なピーク分離を行う事が好ましいが、ある程度簡易型
に行っても非ダイヤモンド成分の含有比の定性的な比較
を行うことは可能である。
【0032】[欠陥密度による定義] 工具母材と
多結晶ダイヤモンドとよりなり、工具刃先の母材面に多
結晶ダイヤモンドの母材設置固定面を当接して固定しダ
イヤモンドを刃先とする構造の工具であって、ダイヤモ
ンドの厚さが40μm以上であり、すくい面から母材設
置固定面にかけてダイヤモンドの厚み方向に欠陥密度が
増加している事を特徴とする。より好ましくは先ダイヤ
モンドのすくい面から厚み方向母材設置固定面に向かっ
てダイヤモンドの平均膜厚の30%以内もしくは40μ
m以内のいずれか小さいほうの位置での欠陥密度が、ダ
イヤモンド母材設置固定面より厚み方向刃先すくい面に
向かってダイヤモンドの平均膜厚の30%以内もしくは
40μm以内のどちらか小さい方の位置での欠陥密度に
対して小さい事を特徴とする多結晶ダイヤモンド工具で
ある。
【0033】ラマン分光スペクトルによる定義を行うと
ラマン分光分析により、刃先ダイヤモンドのすくい面か
ら厚み方向母材設置固定面に向かって少なくともダイヤ
モンドの平均膜厚の30%以内もしくは40μm以内の
ダイヤモンドのどちらか小さい箇所におけるダイヤモン
ド成分の半値幅(αcm-1)がダイヤモンド母材設置固
定面より厚み方向刃先すくい面に向かってダイヤモンド
の平均膜厚の30%以内もしくは40μm以内のどちら
か小さい方のダイヤモンド成分の半値幅(βcm-1)よ
りも小さい膜質構造(α<β)を持つ事を特徴とする多
結晶ダイヤモンド工具となる。ここで図6のラマンスペ
クトルを例に、半値幅αや半値幅βの設定を行う。前述
のダイヤモンドのピーク値の設定のようにまずYの高さ
を設定し、その半分の高さにおけるピ−ク幅が半値幅α
cm-1やβcm-1となる。
【0034】次に本発明のダイヤモンドの製造方法を
(図2)によって説明する。気相合成法によってダイヤ
モンド膜を成長させるのであるから上記のようなダイヤ
モンド膜質を厚み方向に変化させるためには原料ガス中
の炭素濃度を連続的或は階段状に単調変化(単調増加あ
るいは単調減少)させるのが最も簡易である。2つの手
法のうち、炭素濃度を単調に増加させる手法の方が望ま
しい。その理由は後に述べる。また原料ガス中の酸素濃
度や窒素濃度によって膜質を制御できる。CVD装置
(後に説明する)の中で基材6を加熱して、原料ガスを
流しこれを励起し分解して基材上にダイヤモンドを成長
させる(図2(b))。原料ガス中の炭素濃度は一般的
に連続的あるいは階段状に単調変化している。このよう
なCVD法でダイヤモンド膜7を成長させた後、弗硝酸
や王水等で基材をエッチング除去し、ダイヤモンド単体
膜とする。(図2(c))。次にダイヤモンドと母材と
のヌレ性を改善するために予め、ダイヤモンド膜の一面
金属膜を蒸着メタライズ処理を行う(図2(d))。こ
の後YAGレ−ザ等により所定の大きさに切断する(図
2(e))。ここで溶解工程の前に切断工程を入れる順
序でも何等問題はない。そして、メタライズ層の面を工
具の母材面に設置固定する(図2(f))。
【0035】図3はダイヤモンド膜を取り付けた工具の
断面図を示す。母材は硬質材質であればよいが、通常は
超硬合金を用いる。この母材にダイヤモンド膜の取り付
け座があり、ここにメタライズ層を介してダイヤモンド
膜が固定設置されている。この固定には、耐熱性、耐強
度性を考えれば鑞付けによるものが好ましい。図4によ
って、本発明を定義するための幾何学的関係を示す。母
材に遠い方の面がすくい面である。すくい面に含まれる
線を基準線とし厚み方向にz軸を取っている。すくい面
はz=0で示すことができる。母材設置固定面は反対側
の面でz=Tによって表わせる。破線で示すのがz=
0.3Tもしくは40μmのどちらか小さい方、z=
0.7T、もしくは全膜厚Tから40μmを引いた値の
どちらか大きい方である。レ−ザ光はダイヤモンドの端
から面に平行に入射する。この部分領域での非ダイヤモ
ンド成分含有状態G0 、H0 もしくはダイヤモンド中の
欠陥含有状態U0 、V0 を問題にしているのである。
【0036】CVD法によりダイヤモンドを成長させる
際、非ダイヤモンド成分もしくはダイヤモンド膜中の欠
陥含有状態を変化させるが、どちらも(単調)増加させ
る方がよい。その理由は次の通りである。ダイヤモンド
を基材上に成長させる際、基材に設置していた側のダイ
ヤモンド膜は、基材の表面処理を平坦にしておけば、そ
のまま平坦なダイヤモンド面になるが、成長の終期に形
成されたダイヤモンド膜はダイヤモンド固有の6−8面
体構造を持つ凹凸のある多結晶ダイヤモンド固有の面を
呈する。これがすくい面となると被削材の被削面に凹凸
が発生してしまう。これを避けるためには成長の終期に
形成された面(成長面側、基材から遠い方の面)はメタ
ライズして母材に固定した方がよい。
【0037】本発明では母材設置固定面の方が非ダイヤ
モンド成分もしくはダイヤモンド中の欠陥含有量を増加
させる構造にしているので、ダイヤモンドを成長させる
とき、例えば炭素濃度を最初は低くし、最後に高くすれ
ばよいのである。この手順でダイヤモンドを合成すれ
ば、ダイヤモンドの形成速度も上昇し、合成コストも安
くなるメリットも生じるのである。また、工具に設置す
る際、すくい面側にあたるダイヤモンド成長初期の多結
晶ダイヤモンド粒径が小さく、母材面側にかけて粒径が
顕著に増大し、この膜質構造が、工具として使用した場
合、刃先にかかる応力分散や、耐欠損性、耐摩耗性の向
上につながる。もちろんこの工程順は必須の条件という
わけではない。CVD法でダイヤモンド膜を成長させた
後に成長の終期にできた方の面を研磨して平坦にして、
すくい面にすることもでき、この場合は、CVD法でダ
イヤモンドを成長させるとき、例えば炭素濃度を最初は
大きく、後に小さくするようにする。しかしこの場合は
工程が増えコスト上昇につながるデメリットがある。
【0038】[ダイヤモンドの製造方法]CVD法でダ
イヤモンドを気相合成するときの原料ガスは通常 水素ガス 炭素原子含有ガス・・メタン、エタン、アセチレン、
エチルアルコール、メチ ルアルコール、アセトン 等が一般的である。は炭素を含み気体状になるもので
あれば何でもよい。アルコール、アセトンのように常温
で液体のものでも加熱すれば気体になる。また液体を水
素ガス等のキャリヤガスでバブリングすれば気体とする
ことができる。また、上記ガス以外に不活性ガス(ヘリ
ウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラド
ン)は、特に原料ガスの活性化にプラズマを用いるプロ
セスに於いて、ダイヤモンド合成中の活性種(水素ラジ
カル、C2 等)の密度を増加させ、寿命を延ばし、均一
なダイヤモンドを合成するのに効果があるため、上記ガ
スに混入させてもよい。
【0039】CVD成長用の基材としては次のような材
料を用いることができる。W、Mo、Ta、Nb、S
i、SiC、WC、W2 C、Mo2 C、TaC、Si3
4 、AlN、Ti、TiC、TiN、B、BN、B4
C、ダイヤモンド、Al23 、SiO2 等である。さ
らに条件を選ぶことによっても、Cu、Al等も基材と
することができる。基材は単に平坦なものとは限らな
い。基材が適当な曲率を持つものとすれば、曲率を持つ
刃面を有する工具等へも適用することができる。例え
ば、ねじれ刃、エンドミル等の工具に適用できる。
【0040】さて本発明の気相合成法であるが、ダイヤ
モンドを基材上に成長させる際に、原料ガス中の炭素濃
度を連続的に増加させるのが容易である。この場合3段
階または2段階程度に原料ガス中の炭素濃度を変化させ
る。最も簡単なのは、原料ガス中の炭素濃度の小さい段
階と、それより濃度の高い段階の2段階によるCVD成
長である。
【0041】例えば、ダイヤモンド合成の前期は、水
素−メタン(メタン/水素=約1%)系で合成して後期
は水素−メタン(メタン/水素=約2.5%)系で合成
する。このとき、前期の組成中に酸素原子含有ガス、例
えば、酸素ガスやH2 O等を微量添加することによって
成長初期のダイヤモンド膜の結晶性を向上させ、非ダイ
ヤモンド成分の析出を抑え、ダイヤモンド膜中の欠陥密
度を減少させることもできる。この場合、酸素原子濃度
の増加によって、後期より前期の炭素濃度を大きくする
ことも可能となる。
【0042】例えば、ダイヤモンド合成の前期は水素
−メタン−酸素(メタン/水素=約2%、酸素/水素=
約0.2%)系で合成し、後期は水素−メタン(メタン
/水素=約3%)系で合成する。
【0043】この逆で、ダイヤモンド成長後期のダイ
ヤモンドの結晶性を低下させるために、後期の組成中に
窒素原子含有ガスを微量添加することもできる。例え
ば、ダイヤモンド合成の前期は水素−メタン(メタン/
水素=約1%、)系で合成し、後期は水素−メタン−窒
素(メタン/水素=約2%、窒素/水素=約0.5%)
系で合成する。この場合、窒素原子含有ガス濃度の増加
によって、前期より後期の炭素濃度を小さくすることも
可能となる。
【0044】
【実施例】CVD法についてはダイヤモンドが合成でき
るどの方法に於いても本発明を実施することができる。
本発明は次のCVD法、 フィラメントCVD法(図7) マイクロ波プラズマCVD法(図8) 熱CVD法(図9) 熱プラズマCVD法(図10) について実施した。基材は位〜の方法について共通
で、14mm×14mm×2.5mmの多結晶シリコン
の片面を、粒径0.5〜5μmの砥粒を含む研磨材でラ
ッピング処理し、RMAX <1.2μmになるようにした
ものを用いた。以下それぞれの手法に用いる装置を説明
し、それぞれの手法に本発明を適用した結果を述べる。
【0045】〔実施例〕フィラメントCVD法 図7にフィラメントCVD装置の概略図を示す。真空チ
ャンバ11の中に基材支持台12が設けられる。この上
に基材13が設置される。真空チャンバ11には真空排
気口14があり、真空排気装置(図示せず)に接続され
ている。真空チャンバ11の中には電極15が設けられ
る。これはガイシ16を通ってフィラメント電源に接続
されている。電極15の間にフィラメント17が張られ
ている。真空チャンバ11には原料ガス入口18から原
料ガスが導入される。圧力計19が真空チャンバ11内
の真空度を計測している。冷却水が基材支持台の内部に
導入されこれを冷却している。フィラメント17には4
N(純度99.99%)−W、4N−Ta、4N−Re
を用いた。フィラメントの温度は光学式高温計によって
測定した。基材の温度は基材表面に固定設置したクロメ
ル−アルメル熱電対によってモニターした。
【0046】図11によって原料ガスの供給系を説明す
る。これは以下のCVD装置に対しても共通に用いるこ
とができる。水素ガスボンベ55、不活性ガスボンベ5
6、炭素含有ガスボンベ57、酸素原子含有無機ガスボ
ンベ58が設置される。これらのガスボンベからのガス
はバルブ,配管を通って反応装置へ供給される。水素ガ
スはキャリヤガスとしてこれらに混合される。水素ガス
の一部はバブリング装置59を通り、常温で液体のもの
を気化して運ぶために用いられる。バブリング装置59
には、H2 O、C25 OHなどの液体60が収容され
る。バブリング装置59に続く配管にはテ−プヒ−タ6
1、62が巻いてあり任意の温度に加熱維持することが
できる。原料ガスや成長時間、圧力、フィラメント材
質、成長温度等成長の条件を様々に変えて、本発明と従
来の方法によってダイヤモンドをシリコン基板上に成長
させた。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】サンプルNo.A〜D本発明例 サンプルNo.E〜H比較例 本発明の実施例A〜Dと比較例E、Fは原料ガス組成及
び組成比を時間によって変化させている。例えば、実施
例Aは、最初の段階1のH2 600SCCM、CH4
SCCMの原料ガスで基材をコーティングし、次の20
時間は段階2のH2 600SCCM、CH4 12SCC
Mの原料ガスによってコーティングするということであ
る。本発明の他の実施例であるB、Dも2段階に、Cは
4段階に原料ガスを変えている。比較例Eはダイヤモン
ド膜を全て高炭素濃度で合成したもの。Fは全て低炭素
濃度で合成したもの。Hは原料ガス中の炭素濃度を本発
明とは逆に段階的に変化させている。成長の後シリコン
基板を溶かして除去する。矩形状のダイヤモンド板がで
きるのでこれを対角線に沿って切断し二等辺三角形とし
た。
【0049】こうして作製したダイヤモンドのサンプル
A〜Hを図2の工程によって超硬合金の母材に設置固定
して切削チップを作製した(固定には鑞付けを用い
た)。但し、成長の際、基材に接触していた面を切削チ
ップのすくい面とし、成長の後期にできた方の面を切削
チップの母材面に設置固定した。これらを以下のように
ラマン散乱による膜質測定と切削試験を行い品質を評価
し以下の表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】サンプルA〜Dが本発明の実施例で、E〜
Hが比較例である。ラマン分光測定用比較材として、天
然IIaダイヤモンド単結晶を同じように母材に設置固定
し、切削チップを作製した。(サンプルIとする)サン
プルJはこれらとは別の比較材である。これは結合材と
してCoを10容量%含む平均粒径10μmのダイヤモ
ンド材料を高圧焼結して作った焼結ダイヤモンドを工具
に取り付け切削チップとしたものである。CVD成長で
はない。これは高圧焼結して作った焼結ダイヤモンドを
工具に取り付け切削チップとしたものであるから非ダイ
ヤモンド成分が一様に多い。
【0052】ここで、ラマン分光スペクトルの測定点
は、図4に示すようにすくい面を基準として厚み方向内
部に向かう距離Z(単位μm)で示している。第1層、
第2層というのは表1の原料ガス及び組成を切り換えた
ことによって生ずるダイヤモンドの部分層である。成長
の初期にできた方の膜をすくい面とするから、表1で上
にあるものから順に表2の第1層、第2層と対応する。
当然のことであるが本発明の実施例ではすくい面に近い
方でX/Yの値が小さい。すくい面の非ダイヤモンド濃
度が低いということである。
【0053】比較例Eはダイヤモンド膜を全て高炭素濃
度で合成したものであるから非ダイヤモンド成分が多
い。しかし濃度の分布は本発明と反対の関係にある。比
較例Fは全て低炭素濃度で合成したものであるから非ダ
イヤモンド成分が低くしかも分布は本発明と反対の関係
にある。比較例Hは原料ガス中の炭素濃度を本発明とは
逆に段階的に変化させているが、実際にできたものもラ
マンスペクトル測定による非ダイヤモンド成分の含有状
態とダイヤモンドの半値幅が本発明の構造とは逆になっ
ている。本発明例の実施例は全て成長とともに原料ガス
中の炭素濃度を高めているが、実際に成長したダイヤモ
ンドも原料ガスに対応して、非ダイヤモンド成分や、ダ
イヤモンドラマンスペクトルの半値幅が成長方向に向け
て増大していることが分かる。
【0054】こうしてできたダイヤモンド切削工具の性
能を次の条件によって評価した。被削材として外周面に
軸方向に延びる4本の溝が形成されたA390合金(A
l−17%Si)丸棒を選んだ。これを前述の方法で作
られた切削工具によって、 切削速度:800m/min. 切り込み:0.2mm 送り :0.1mm/rev. 摩耗量が重要な評価のパラメータであるから90分或は
30分切削した時の平均摩耗幅を測定している。結果を
表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】表2、表3を対比して分かる様に、ラマン
分光分析により、すくい面側刃先の非ダイヤモンド成分
のピーク値(X1)のダイヤモンド成分のピーク値(Y
1)に対する比(X1/Y1)が、母材面側の非ダイヤ
モンド成分のピーク値(X2)のダイヤモンド成分に対
する比(X2/Y2)よりも小さい膜質構造 X1/Y
1<X2/Y2 を持つか、もしくはすくい面側刃先ダ
イヤモンドラマンスペクトルピ−クの半値幅(αc
-1)が母材面側のダイヤモンドラマンスペクトルピ−
クの半値幅(βcm-1)よりも小さい膜質構造 α<β
(cm-1)を持つ本発明例つまりサンプルA〜DではA
390の切削テストに於いて、欠損もせず、高耐摩耗性
を発揮している。これに対し、逆の条件 X1/Y1≧
X2/Y2、もしくは α≧β(cm-1) である比較
例E〜Jでは短時間に大きく欠損してしまうものや、大
きく摩耗してしまうものばかりであった。
【0057】焼結ダイヤモンドサンプルである比較材J
は欠損はしなかったものの、90分切削時での平均摩耗
幅が90μmと大きかった。焼結で形成するためにCo
等のバインダーが含まれており、これが耐摩耗性を低下
させている原因であると考えられる。また、比較例Eの
ように、ダイヤモンド厚み方向に全て非ダイヤモンド成
分の含有が多いか、もしくは半値幅の広いもの(ほぼ1
0cm-1以上)は耐摩耗性に劣る欠点がある。Hもすく
い面側において非ダイヤモンド成分が多く半値幅が大き
いのであるがこれも耐摩耗性が劣る。また、この逆で比
較例Fのように、ダイヤモンドの厚み方向に全て非ダイ
ヤモンド成分の含有が少ないか,もしくは半値幅の小さ
いもの(ほぼ6cm-1以下)ではダイヤモンド膜に靱性
が不足し、硬質の被削材に対しては特に耐欠損性が不足
するものと思われる。
【0058】本発明例のダイヤモンド膜質構造は、基本
的にすくい面側のダイヤモンド膜は高品質良好なもの
で、母材設置固定面側はやや品質を落としたものであ
る。母材設置固定面の弾性によりすくい面側の高品質膜
に加わる応力を緩和する構造を持つものである。定義と
してはこれらのラマンデータのみならず、種々他の定義
によっても表しうる。定性的に述べてみると以下のよう
なものも考えられる。 すくい面側 母材設置固定面側 ヤング率 高い 低い CL発光強度 弱い 強い (440nm) 結晶粒径 小さい 大きい 水素含有量 少ない 多い (CL:カソ−ドルミネッセンス)
【0059】[実施例] マイクロ波プラズマCVD
法 次にマイクロ波(プラズマ)CVD法によって本発明を
実施した。図8にマイクロ波CVD装置の概略を示す。
石英管22の中に、石英棒23によって基材24が支持
されている。上方のガス導入口25から原料ガス26が
石英管22に導入される。これは石英管22下方の真空
排気口27から排出される。石英管22の反応が行われ
る部分の近傍には水冷ジャケット28が設けられる。マ
グネトロン29でマイクロ波が発振され導波管30を通
って基材24の近傍に導かれる。原料ガスをマイクロ波
によって励起するので基材の近傍に高密度のプラズマが
発生する。本実施例の場合には、導波管が石英管に直交
し石英管の軸方向と直角にマイクロ波が進行するように
なっている。導波管と石英管の幾何学的位置関係は、高
密度のマイクロ波プラズマが発生さえすればその他の方
法によってもかまわない。導波管の形状寸法と長さがマ
イクロ波のモ−ドを決定するが、導波管30内を動くプ
ランジャ32(反射板)によってマイクロ波の定在波モ
−ドを規定出来るようになっている。このようなマイク
ロ波プラズマCVD法は公知である。またマイクロ波の
進行方向を基材面と直交させても良い。原料ガスは先の
例と同じように、炭素を含むガス、水素ガスなどよりな
る。プラズマの閉じ込めのために石英管の周囲に磁石を
配してカスプ磁場、或は軸方向磁場を形成することもあ
る。これも良く知られたことである。表4にマイクロ波
CVD法による合成条件を示す。基材には実施例と同じ
く多結晶シリコン基材を用いた。基材温度はコーティン
グ中は光学式光高温度計でモニターした。
【0060】
【表4】
【0061】K〜Nが本発明の実施例である。これらは
2段階、4段階に原料ガス組成を切り替えており成長の
後期の炭素濃度が増加している。Ar等の不活性ガスは
マイクロ波プラズマを安定に励起させやすくし、Hα、
2 等の活性種濃度を増加させるために添加している。
O〜Qは比較例である。Oは全て低炭素濃度で合成した
ものであり、Pは全て高炭素濃度で合成したものであ
る。また、Qは本発明とは逆の濃度変化で合成したもの
である。次に工具性能を評価するため、実施例1と同様
に切削チップを作製した。そして、実施例1と同様にダ
イヤモンド厚み方向のラマンスペクトル測定値を表5に
示す。
【0062】
【表5】
【0063】また 各切削チップを実施例1と同様な条
件で切削性能評価を行った。その結果を表6に示す。
【0064】
【表6】
【0065】表5、表6を対比して分かるように、ラマ
ン分光分析により、すくい面側刃先の非ダイヤモンド成
分のピーク値(X1)のダイヤモンド成分のピーク値
(Y1)に対する比(X1/Y1)が、母材面側の非ダ
イヤモンド成分のピーク値(X2)のダイヤモンド成分
に対する比(X2/Y2)よりも小さい膜質構造 X1
/Y1<X2/Y2 を持つか、もしくはすくい面側刃
先ダイヤモンドラマンスペクトルピ−クの半値幅(αc
-1)が母材面側のダイヤモンドラマンスペクトルピ−
クの半値幅(βcm-1)よりも小さい膜質構造 α<β
(cm-1) を持つ本発明例つまりサンプルK〜Nでは
A390の切削テストに於いて、欠損もせず、高耐摩耗
性を発揮している。これに対し、逆の条件 X1/Y1
≧X2/Y2、もしくは α≧β(cm-1) である比
較例O〜Qでは短時間に大きく欠損してしまうものや、
大きく摩耗してしまうものばかりであった。
【0066】[実施例] 熱CVD法を併用したプ
ロセス 本発明を適用するにはダイヤモンド膜質を少なくとも2
段階に変化させなければならない。ここでは2段階に変
化させてダイヤモンド膜を作った例を説明する。ここで
は第1段階目の成膜はフィラメントCVD法で、第2段
階目の成膜は熱CVD法で行った。図9に熱CVD装置
の概略を示す。真空に引くことのできる石英管35の中
に支持台36がありここに基材37が支持されている。
石英管35の周囲にはヒ−タ38が設けられる。石英管
35には原料ガス入口39から原料ガスが導入される。
廃ガスが真空排気口40から排出される。原料ガスはヒ
−タによって加熱されることによって励起され気相反応
によって基材の上に多結晶ダイヤモンドが成長する。熱
CVD法でダイヤモンドを低温で合成するためには弗素
系のガスの添加が好適である。基材は14mm×14m
m×2.5 mmの多結晶Siである。
【0067】 これらを続けて成長を行った。全膜厚が180μmであ
る。これを前例と同じように図2に示す工程により超硬
合金の台金にろうづけし工具とした。ラマン分光分析に
よる非ダイヤモンド成分のピーク(X)に対するダイヤ
モンド成分のピーク(Y)に対する比(X/Y)及びダ
イヤモンドのラマンスペクトルピ−クの半値幅α、β
(cm-1)を示す。
【0068】 であった。原料ガスの炭素濃度が高く形成温度の低い2
層でやはりX/Y及び半値幅が大きくなっている。
【0069】これの工具特性を評価するために、外周面
に軸方向に伸びる4本の溝が形成されたA390合金
(Al−17%Si)丸棒を被削材として切削した。切
削条件は前例と同じく 切削速度 800m/min 切り込み 0.2mm 送り 0.1mm/rev. で乾式切削した。120分後のVb摩耗量は15μm で
あった。極めて小さい値である。熱CVDに本発明を適
用しても有効であるということである。
【0070】[実施例] 熱プラズマCVD法 図10に熱プラズマCVD装置を示す。真空チャンバ4
2の上方に同心状の電極43が設けられる。下方に冷却
支持台44がありこの上に基材45が戴置される。電極
43は中心が陰極、周縁が陽極となっており、正負の電
極間には直流電源46によって電圧が印加される。原料
ガス47は電極43間の隙間からノズル51を経て真空
チャンバ42の中に導入される。ここで原料ガス47は
イオン化されプラズマガス流52となって基材の方へ流
れる。廃ガスは真空排気口49から排出される。基材は
25mm×25mm×5.0mmtの多結晶Siであ
る。ダイヤモンドの成長方向の膜質を変化させるため2
段階の成長工程を引き続き行った。
【0071】 である。これらの成長を引き続き行った。全膜厚が29
00μm (2.9mm)になる。図2の工程に従って多
結晶ダイヤモンドを超硬合金の母材の上にろう付けし工
具を作製した。第1層、第2層のダイヤモンドのラマン
スペクトルピ−クの半値幅は、 第1層・・・すくい面から 30μm 4.9cm-1 (α) 第2層・・・すくい面から2862μm 13.6cm-1 (β) であった。
【0072】この工具の性能を評価するため、外周面に
軸方向に延びる4本の溝が形成されたA390合金(A
l−17%Si)丸棒を被削材として、 切削速度 800m/min 切り込み 0.2mm 送り 0.1mm/rev. の切削条件で乾式切削した。120分後のVb摩耗量は
31μm と十分に小さかった。熱プラズマCVD法によ
るダイヤモンドの成長にも本発明が有効に適用できると
いうことである。
【0073】
【発明の効果】本発明は、厚み方向にダイヤモンド膜質
を変化させるCVD法によってダイヤモンド膜を形成す
る。これによって強度、耐摩耗性、耐欠損性、耐溶着
性、耐熱性に優れたダイヤモンド膜を作製することがで
きる。それでは何故本発明によってこのようなダイヤモ
ンド膜ができるのかということを説明する。従来は厚み
方向に均一な膜質のダイヤモンドが作られていた。純度
の高い高結晶性のダイヤモンドは剛性がほぼ理論値通り
高いが、衝撃によって簡単に欠損する。つまり結晶性の
高いダイヤモンドは耐欠損性に欠ける。従来例として挙
げたもののいずれかは短時間で欠損しているがそれは完
全結晶であるために剛性が高すぎることに起因すると考
えられる。それでは、結晶性を低下させて、非ダイヤモ
ンド成分の含有量の多い、欠損の多いダイヤモンドにす
ればよいかというとそうでもない。それらが多いと剛性
が低下し、耐摩耗性が劣る問題点がある。
【0074】耐欠損性と耐摩耗性の両者が工具には必要
である。非ダイヤモンド成分や、膜中の欠陥を適当な範
囲に限定するということでは最適の特性が得られない。
被削物に接触する面では耐摩耗性が必須である。また膜
全体の靱性を高めてやらなければ、耐欠損性は向上しな
い。そして、剛性と靱性は相反する特性であり、両方を
両立させることは非常に難しい。そこで本発明では膜の
厚み方向に相補性を持たせることにしている。被削物に
接触するすくい面は非ダイヤモンド成分もしくは欠陥の
少ないダイヤモンド膜質とし、個々のダイヤモンドの結
晶性は向上させる。また、母材面側はその逆とし、靱性
の向上を図る。内部(母材面側)のほうが靱性が高いた
め、刃先に衝撃を受けても内部の緩衝作用でダイヤモン
ドが欠損しない。これが本発明のダイヤモンド工具に高
性能を与える。耐摩耗性はすくい面の性質によるが、す
くい面側は高結晶性であり、高剛性であるため、難削材
においても十分な耐摩耗性が得られる。焼結ダイヤモン
ドではバインダ−を含むため、どうしても耐摩耗性は低
下するが本発明においてはそういうことがない。また、
工具寿命を考えた場合、すくい面側40μmもしくはダ
イヤモンド膜厚の30%までは、高品質ダイヤモンドで
あることが好ましい。耐摩耗性、耐欠損性、強度、耐溶
着性などの特性が強く要求される分野、特に切削工具、
旋削工具、掘削工具、ドレッサ−等の工具用として有用
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】多結晶ダイヤモンド工具の一例概略斜視図。
【図2】多結晶ダイヤモンド工具の製作工程概略図。
【図3】多結晶ダイヤモンド工具刃先断面図。
【図4】結晶ダイヤモンド工具のラマン分光分析測定箇
所を説明する断面図。
【図5】多結晶ダイヤモンド工具のダイヤモンドラマン
分光スペクトルの一例図。非ダイヤモンド成分のピ−ク
の高さXとダイヤモンド成分の高さYを定義する方法を
説明する。
【図6】多結晶ダイヤモンド工具のダイヤモンドラマン
分光スペクトルの一例図。ダイヤモンド成分に対するピ
−クの半値幅を定義する方法を説明する。
【図7】フィラメントCVD装置概略断面図。
【図8】マイクロ波プラズマCVD装置の概略断面図。
【図9】熱CVD装置の概略断面図。
【図10】熱プラズマCVD装置概略断面図。
【図11】ガス供給系の一例を示す構成図。
【符号の説明】
1 工具母材 2 ダイヤモンド膜 3 設置固定層 4 すくい面 5 母材設置固定層 6 基材 7 ダイヤモンド膜 8 メタライズ層 11 真空チャンバ 12 基材支持台 13 基材 14 真空排気口 15 電極 16 ガイシ 17 フィラメント 18 原料ガス入口 19 圧力計 20 冷却水 22 石英管 23 石英棒 24 基材 25 ガス導入口 26 原料ガス 27 真空排気口 28 水冷ジャケット 29 マグネトロン 30 導波管 31 プラズマ 32 プランジャ 35 石英管 36 支持台 37 基材 38 ヒ−タ 39 原料ガス入口 40 真空排気口 42 真空チャンバ 43 電極 44 冷却支持台 45 基材 46 直流電源 47 原料ガス 48 電極ギャップ 49 真空排気口 50 冷却水 51 ノズル 52 プラズマガス流 55 水素ガスボンベ 56 不活性ガスボンベ 57 炭素含有ガスボンベ 58 酸素原子含有無機ガスボンベ 59 バブリング装置 61 テ−プヒ−タ 62 テ−プヒ−タ

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 工具母材と多結晶ダイヤモンドとよりな
    り、工具刃先の母材面に多結晶ダイヤモンドの母材設置
    固定面を当接して固定しダイヤモンドのすくい面によっ
    て被加工物を加工する構造の工具であって、ダイヤモン
    ドの厚さが40μm以上であり、ダイヤモンドの厚み方
    向に膜質が変化しており、刃先すくい面側のダイヤモン
    ド膜質が、母材設置固定面側のダイヤモンド膜質よりも
    良好である事を特徴とする多結晶ダイヤモンド工具。
  2. 【請求項2】 工具母材と多結晶ダイヤモンドとよりな
    り、工具刃先の母材面に多結晶ダイヤモンドの母材設置
    固定面を当接して固定しダイヤモンドのすくい面によっ
    て被加工物を加工する構造の工具であって、ダイヤモン
    ドの厚さが40μm以上であり、ダイヤモンドの厚み方
    向に膜質が変化しており、刃先すくい面側ダイヤモンド
    中の非晶質炭素成分、非ダイヤモンド炭素成分、金属不
    純物、水素、窒素原子等非ダイヤモンド成分の含有量が
    母材設置固定面側ダイヤモンド中の非ダイヤモンド成分
    の含有量に対して少ない事を特徴とする多結晶ダイヤモ
    ンド工具。
  3. 【請求項3】 刃先ダイヤモンドのすくい面から厚み方
    向母材面に向かって少なくともダイヤモンドの平均膜厚
    の30%以内もしくは40μm以内のダイヤモンドのど
    ちらか小さい方の箇所におけるダイヤモンド中の非ダイ
    ヤモンド成分の含有量がダイヤモンド母材設置固定面よ
    り厚み方向刃先すくい面に向かってダイヤモンドの平均
    膜厚の30%以内もしくは40μm以内のどちらか小さ
    い方の箇所に於けるダイヤモンド中の非ダイヤモンド成
    分含有量に対して少ない事を特徴とする請求項1又は請
    求項2に記載の多結晶ダイヤモンド工具。
  4. 【請求項4】 ラマン分光分析により、刃先ダイヤモン
    ドのすくい面から厚み方向母材面に向かって少なくとも
    ダイヤモンドの平均膜厚の30%以内もしくは40μm
    以内のダイヤモンドのどちらか小さい方の箇所における
    非ダイヤモンド成分のピーク値(X1)のダイヤモンド
    成分のピーク値(Y1)に対する比(X1/Y1)が、
    ダイヤモンド母材設置固定面より厚み方向刃先すくい面
    に向かってダイヤモンドの平均膜厚の30%以内もしく
    は40μm以内のどちらか小さい方の箇所における非ダ
    イヤモンド成分のピーク値(X2)のダイヤモンド成分
    のピーク値(Y2)に対する比(X2/Y2)よりも小
    さい膜質構造 X1/Y1<X2/Y2を持つ事を特徴
    とする請求項1、2又は3に記載の多結晶ダイヤモンド
    工具。
  5. 【請求項5】 工具母材と多結晶ダイヤモンドとよりな
    り、工具刃先の母材面に多結晶ダイヤモンドの母材設置
    固定面を当接して固定しダイヤモンドのすくい面によっ
    て被加工物を加工する構造の工具であって、ダイヤモン
    ドの厚さが40μm以上であり、ダイヤモンドの厚み方
    向に膜質が変化しており、刃先すくい面側ダイヤモンド
    中の欠陥密度が母材設置固定面側ダイヤモンド中の欠陥
    密度に対して少ない事を特徴とする多結晶ダイヤモンド
    工具。
  6. 【請求項6】 刃先ダイヤモンドのすくい面から厚み方
    向母材設置固定面に向かって少なくともダイヤモンドの
    平均膜厚の30%以内もしくは40μm以内のどちらか
    小さい方の箇所におけるダイヤモンド中の欠陥密度が、
    母材設置固定面から厚み方向すくい面に向かって少なく
    ともダイヤモンドの平均膜厚の30%以内もしくは40
    μm以内のどちらか小さい方の箇所のダイヤモンド中の
    欠陥密度に対して小さい事を特徴とする請求項1又は5
    に記載の多結晶ダイヤモンド工具。
  7. 【請求項7】 ラマン分光分析により求めたラマン発光
    スペクトルに於いて、刃先ダイヤモンドのすくい面から
    厚み方向母材面に向かって少なくともダイヤモンドの平
    均膜厚の30%以内もしくは40μm以内のダイヤモン
    ドのどちらか小さい箇所におけるスペクトルのダイヤモ
    ンド成分に対応するピ−クの半値幅(αcm-1)がダイ
    ヤモンド母材設置固定面より厚み方向刃先すくい面に向
    かってダイヤモンドの平均膜厚の30%以内もしくは4
    0μm以内のどちらか小さい方の箇所におけるスペクト
    ルのダイヤモンド成分に対応するピ−クの半値幅(βc
    -1)よりも小さい(α<β)膜質構造を持つ事を特徴
    とする請求項1、5又は6に記載の多結晶ダイヤモンド
    工具。
  8. 【請求項8】 多結晶ダイヤモンドの母材への設置固定
    方法が鑞付けである事を特徴とする請求項1、2、3、
    4、5、6、或は7に記載の多結晶ダイヤモンド工具。
  9. 【請求項9】 水素ガス、炭素含有ガスを原料ガスとし
    て用い、化学的気相堆積法によって原料ガス中の炭素含
    有ガスの濃度を高める方向か、酸素含有量を減らす方向
    か、或は窒素含有量を減ずる方向に原料ガス中の成分を
    変えつつ、ダイヤモンドを基材上に析出させ、基材を除
    去して、ダイヤモンド単体膜とし、このダイヤモンド最
    終成長面側を工具刃先の母材面に当接して固定し、基材
    面側のダイヤモンドを刃先すくい面とする事を特徴とす
    る多結晶ダイヤモンド工具の製造方法。
  10. 【請求項10】 化学的気相堆積法によって基材上にダ
    イヤモンドを析出させる工程に於いて、原料ガスとして
    少なくとも水素ガス(A)、炭素原子含有ガス(B)の
    2種以上の混合ガスを用い、少なくともダイヤモンドを
    12μm膜状に析出させるまでの水素ガス(A)、炭素
    原子ガス(B)のモル分率比(B1)/(A1)が、1
    2μm以上析出させる時のモル分率比(B2)/(A
    2)よりも小さい事 (B1)/(A1)<(B2)/
    (A2) を特徴とする請求項9に記載の多結晶ダイヤ
    モンド工具の製造方法。
  11. 【請求項11】 基材上にダイヤモンドを析出させてゆ
    く工程に於いて、少なくとも12μmダイヤモンドを析
    出させる迄水素ガス(A)炭素原子含有ガス(B)の2
    種のガス以外に酸素原子含有ガス(C)を反応系内に導
    入する事を特徴とする請求項10に記載の多結晶ダイヤ
    モンド工具の製造方法。
  12. 【請求項12】 基材上にダイヤモンドを析出させてゆ
    く工程に於いて、少なくとも12μmダイヤモンドを析
    出させた後水素ガス(A)炭素原子含有ガス(B)の2
    種のガス以外に窒素原子含有ガス(D)を反応系内に導
    入する事を特徴とする請求項10に記載の多結晶ダイヤ
    モンド工具の製造方法。
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