JP2544406Y2 - 車両用ディスクブレーキの分割型キャリパボディ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、自動二輪車等の各種の
走行車両に用いられるディスクブレ―キのキャリパボデ
ィであって、詳しくは、２つの分割体を異種金属で形成
した分割型キャリパボディの電蝕防止構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】車両の高速化に対応して大型のディスク
ブレ―キが必要とされている。このため、大型化に伴う
軽量化と剛性力の確保を目的として、分割型キャリパボ
ディを構成する分割体を異種金属としたものが知られて
いる。しかし、これらの接合面には、電位差による電蝕
が発生するため、板状スペ―サの一部を接合面よりも外
側へ突出させて介装し（例えば、実開昭５０−２００９
０号公報参照）、更にこの板状スペ―サを不導体で形成
して電蝕を防ぐようにしている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】このような構成にあっ
ては、雨水などの水滴が板状スペ―サの突出部を越え
て、双方の分割体を連結するように付着することがあ
り、充分な電蝕防止が図れないことがある。また、連結
ボルトも双方の分割体と異なる金属で形成されるため、
連結ボルトの頭部と、分割体の一方に穿設されたボルト
挿通孔の開口部外周面との間にも、電蝕が発生すること
がある。

【０００４】本考案は、このような実情に鑑みてなされ
たもので、その目的とするところは、キャリパボディを
構成する分割体や連結ボルト，摺動ピン等の接触面の電
蝕を、一枚の板状スペ―サによって防止すると共に、組
み付け作業を簡単に行なうことのできる分割型キャリパ
ボディの構造を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、第１の構成では、ディスク周方向に沿って２分割さ
れた分割体を異種金属で形成し、これら分割体の接合面
に、不導体の板状スペーサを介装して連結ボルトにて連
結した車両用ディスクブレーキの分割型キャリパボディ
において、前記スペーサを、前記接合面の全周に亙って
外側へ突出させ、該スペーサのディスク半径方向外周側
に、前記連結ボルトの頭部側へ折れ曲がるフランジを形
成し、該フランジの先端に第１シム部を延設し、該第１
シム部を、前記一方の分割体に穿設されたボルト挿通孔
の開口部外周面と前記連結ボルトの頭部との間に挟装す
る。

【０００６】また、第２の構成では、ディスク周方向に
沿って２分割された分割体を異種金属で形成し、これら
分割体の接合面に、不導体の板状スペーサを介装して連
結ボルトにて連結すると共に、一方の分割体の両側部に
突出する取付け腕を、車体に固設されたキャリパブラケ
ットに摺動ピンを介して支持される車両用ディスクブレ
ーキの分割型キャリパボディにおいて、前記スペーサ
を、前記接合面の全周に亙って外側へ突出させ、該スペ
ーサのディスク半径方向外周側に、前記連結ボルトの頭
部側へ折れ曲がるフランジを形成し、該フランジに第１
シム部と第２シム部とを延設して、第１シム部を、前記
一方の分割体に穿設されたボルト挿通孔の開口部外周面
と前記連結ボルトの頭部との間に挟装すると共に、第２
シム部を、前記取付け腕の基端部と前記摺動ピンの端面
及び／またはこの摺動ピンを取付け腕に固定する取付け
ボルトの頭部との間に挟装する。

【０００７】

【作用】第１の構成では、板状スペ―サのフランジによ
って、雨水などの水滴が、双方の分割体に亙って付着す
るのを防止する。また、フランジから延びた第１シム部
が、連結ボルトと分割体との直接接触を妨げて、電蝕の
発生を防止する。

【０００８】また第２の構成では、第１シム部に併せて
設けられた第２シム部が、取付け腕と摺動ピン及び／ま
たは摺動ピンを固定する取付けボルトとの直接接触を妨
げて、電蝕の発生を防止する。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明
する。

【００１０】図１乃至図５は、本考案の第１実施例を示
すものであり、ディスクブレ―キに用いられる分割型の
キャリパボディ１は、車輪と一体に回転するディスクロ
―タ２の一側に作用部側分割体３を持ち、他側に反作用
部側分割体４を持つピンスライド型で、車体に固設され
たキャリパブラケット５に、一対の摺動ピン６，６を介
して保持されている。

【００１１】作用部側分割体３には、ピストン７を収容
するシリンダ孔８が、ディスクロ―タ側を開口して設け
られ、両側部に突出する取付け腕３ａ，３ａの先端に、
それぞれ上述の摺動ピン６が取付けボルト９にて固定さ
れており、反作用部側分割体４には反力爪４ａが一体形
成されている。また作用部側分割体３には、軽量な例え
ばアルミニウム合金が用いられ、反作用部側分割体４に
は、例えば鋳鉄を用いて組合わせている。

【００１２】上記分割体３，４は、ディスク周方向の接
合面１０に、不導体の板状スペ―サ１１を挟み、４本の
連結ボルト１２を、それぞれ作用部側分割体３のボルト
挿通孔３ｂと、板状スペ―サ１１の通孔１１ａとに挿通
し、更にその先端を反作用部側分割体４の雌ねじ４ｂに
螺着して連結される。

【００１３】キャリパブラケット５には、ディスクロ―
タ２の外側でディスク軸方向に並設される一対のキャリ
パ支持腕５ａ，５ａが一体に設けられていて、キャリパ
ボディ１は、作用部側分割体３に突設した上述の摺動ピ
ン６，６を、それぞれキャリパ支持腕５ａのガイド孔５
ｂに差込んで、ディスク軸方向へ移動可能に支持され
る。

【００１４】板状スペーサ１１は、両分割体３，４の接
合面１０の全周に亙って外側へ突出する大きさで形成さ
れており、ディスク半径方向外周側外縁には、連結ボル
ト１２の頭部１２ａ側、即ち作用部側分割体３側へ折れ
曲がるフランジ１１ｂが、キャリパボディ１のディスク
周方向全長に亙って設けられている。

【００１５】フランジ１１ｂの先端には、板状スペ―サ
１１の一側面へ対向するように折れ曲がる４つの第１シ
ム部１１ｃが、舌片状に一体形成されており、これら第
１シム部１１ｃは、板状スペ―サ１１を分割体３，４の
間へ差込んだ際に、ボルト挿通孔３ｂの開口部外周面へ
密着するように配設され、通孔１１ｄに差込まれる連結
ボルト１２によって、ボルト挿通孔３ｂの開口部外周面
と連結ボルト１２の頭部１２ａとの間に挟持される。

【００１６】作用部側分割体３と反作用部側分割体４と
の間には、一対の摩擦パッド１３，１３がディスクロ―
タ２を挟んで対向配置されている。各摩擦パッド１３
は、ディスクロ―タ２と摺接するライニング１３ａと、
キャリパブラケット５の支持腕５ａ，５ａに保持される
裏板１３ｂとからなっている。裏板１３ｂの両側部に
は、耳片１３ｃ，１３ｃが突設されており、摩擦パッド
１３は、この耳片１３ｃ，１３ｃを、キャリパ支持腕５
ａ，５ａに凹設されたパッドガイド溝５ｃ，５ｃに遊嵌
して、キャリパボディ１と同様にディスク軸方向へ移動
可能に吊持される。

【００１７】本実施例はこのように、分割体３，４の接
合面１０に挟まれる板状スペ―サ１１を、接合面１０か
ら全周に亙って突出するように大きく形成し、更にこの
板状スペ―サ１１から、連結ボルト１２の頭部１２ａ側
へ折れ曲がるフランジ１１ｂを設けたので、特に雨水等
の水滴が比較的かかり易いキャリパボディ１の外側にお
いて、水滴が板状スペ―サ１１を越えて双方の分割体
３，４に亙って付着する虞がなくなり、電蝕の発生を極
力防止することができる。

【００１８】また、フランジ１１ｂの先端に設けた第１
シム部１１ｃが、それぞれ連結ボルト１２の頭部１２ａ
とボルト挿通孔３ｂの開口部外周面との間の電蝕を防止
ぐ。しかもこれら双方の電蝕防止を、一枚の板状スペ―
サ１１を利用して行なうので、部品点数の削減が図れ、
更に組付け作業が一度で済む。

【００１９】また、板状スペ―サ１１を用いてキャリパ
ボディ１を組付ける際に、第１シム部１１ｃの通孔１１
ｄに連結ボルト１２を差込むことによって、板状スペ―
サ１１を所定位置に脱落なく配置でき、しかも板状スペ
―サ１１の通孔１１ａを、両側のボルト挿通孔３ｂ及び
雌ねじ４ｂと同軸上へ容易に位置合わせできるので、組
付け作業が頗る簡便となる。更に、フランジ１１ｂによ
って大気との接触面積が増加するので、走行時の放熱効
果が高い。

【００２０】図６乃至図８は、本考案の第２実施例を示
し、本実施例では、第１実施例の板状スペ―サ１１に、
２つの第２シム部１１ｅ，１１ｅが追加されたもので、
その他は第１実施例と同一の構成となっている。

【００２１】第２シム部１１ｅ，１１ｅは、４つの第１
シム部１１ｃの両側部から反ディスク方向へ延び、取付
け腕３ａの先端ディスク外周側面から、更にそれぞれが
二股の舌片１１ｆ，１１ｇに分れた形状となっている。
舌片１１ｆ，１１ｇには、取付けボルト９が差込まれる
通孔１１ｈが、それぞれ取付け腕３ａの差込み孔３ｃと
略同径に形成されている。一方の舌片１１ｆはＬ字形
で、取付け腕３ａの先端一側面と摺動ピン６の基端部と
の間に差込まれ、また他方の舌片１１ｇはベタ板状で、
取付け腕３ａの先端他側面と取付けボルト９の頭部９ａ
との間に差込まれ、これら３者の直接接触を妨げて、電
蝕の発生を防止する。

【００２２】本実施例は、摺動ピン６の取付け部分を含
む３つの電蝕防止を、一枚の板状スペ―サ１１で同時に
行なうので、第１実施例よりも更に部品点数の削減と組
付け性の向上が図れる。また、舌片１１ｆ，１１ｇが取
付け腕３ａと摺動ピン６または取付けボルト９との間で
ワッシャの役目を果し、取付けボルト９を高トルクで締
付けても、ピンまたはボルト座面となる取付け腕３ａの
側面に座屈がなく、取付けボルト９にトルクダウンがな
い。

【００２３】尚、第１実施例で説明した本考案の第１構
成では、ピンスライド型以外に、ピストンを対向させた
固定型にも適用可能である。また第１実施例では、板状
スペ―サの第１シム部を、連結ボルトの本数に応じて舌
片状としたが、連続した帯板状にしても差支えない。

【００２４】更に、本考案の第２構成を例示した第２実
施例では、摺動ピンを取付けボルトによって取付け腕に
固定したが、取付けボルトを省略して摺動ピンを直接取
付け腕に固定する形式にも適用することができる。

【００２５】

【考案の効果】以上説明したように、本考案の第１の構
成によれば、一枚の板状スペ―サによって、分割体の接
合面と、連結ボルトと分割体間の電蝕を有効に防止で
き、また第２シム部を加えた第２の構成では、取付け腕
と摺動ピン及び／または取付けボルト間の電蝕をも、併
せて防止するすることができる。更に、第２の構成で
は、第２シム部が取付け腕と摺動ピンまたは取付けボル
トとの間でワッシャの役目を果し、摺動ピンや取付けボ
ルトを高トルクで締付けても、ピンまたはボルト座面と
なる取付け腕の側面に座屈がなく、摺動ピンや取付けボ
ルトにトルクダウンがない。

【００２６】また、これら両構成の利点として、いずれ
か一方のシム部にボルトやピンを差込むことによって、
板状スペ―サを双方の分割体の間に脱落なく配置でき、
組付け作業が頗る簡便に行なえる。しかもこれによっ
て、板状スペ―サの通孔が分割体のボルト挿通孔や雌ね
じに自然と一致させることができるので、組付け作業が
一層容易となる。更に、板状スペ―サから折れ曲って突
出するフランジが、走行時に放熱効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１実施例を示すディスクブレ―キの
一部断面平面図

【図２】図１の正面図

【図３】図２のIII −III 断面図

【図４】図３のIV―IV断面図

【図５】本実施例で用いた板状スペ―サの斜視図

【図６】本考案の第２実施例を示すディスクブレ―キの
一部断面平面図

【図７】図６の正面図

【図８】本実施例で用いた板状スペ―サの斜視図

【符号の説明】

１…キャリパボディ、２…ディスクロータ、３…作用部
側分割体、３ｂ…ボルト挿通孔、４…反作用部側分割
体、４ｂ…雌ねじ、５…キャリパブラケット、６…摺動
ピン、９…取付けボルト、９ａ…頭部、１０…接合面、
１１…板状スペーサ、１１ａ，１１ｄ，１１ｈ…通孔、
１１ｂ…フランジ、１１ｃ…第１シム部、１１ｅ…第２
シム部、１１ｆ，１１ｇ…舌片、１２…連結ボルト、１
２ａ…頭部、１３…摩擦パッド

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディスク周方向に沿って２分割された分
   割体を異種金属で形成し、これら分割体の接合面に、不
   導体の板状スペーサを介装して連結ボルトにて連結した
   車両用ディスクブレーキの分割型キャリパボディにおい
   て、前記スペーサを、前記接合面の全周に亙って外側へ
   突出させ、該スペーサのディスク半径方向外周側に、前
   記連結ボルトの頭部側へ折れ曲がるフランジを形成し、
   該フランジに第１シム部を延設して、この第１シム部
   を、前記一方の分割体に穿設されたボルト挿通孔の開口
   部外周面と前記連結ボルトの頭部との間に挟装したこと
   を特徴とする車両用ディスクブレーキの分割型キャリパ
   ボディ。
2. 【請求項２】 ディスク周方向に沿って２分割された分
   割体を異種金属で形成し、これら分割体の接合面に、不
   導体の板状スペーサを介装して連結ボルトにて連結する
   と共に、一方の分割体の両側部に突出する取付け腕を、
   車体に固設されたキャリパブラケットに摺動ピンを介し
   て支持される車両用ディスクブレーキの分割型キャリパ
   ボディにおいて、前記スペーサを、前記接合面の全周に
   亙って外側へ突出させ、該スペーサのディスク半径方向
   外周側に、前記連結ボルトの頭部側へ折れ曲がるフラン
   ジを形成し、該フランジに第１シム部と第２シム部とを
   延設して、第１シム部を、前記一方の分割体に穿設され
   たボルト挿通孔の開口部外周面と前記連結ボルトの頭部
   との間に挟装すると共に、第２シム部を、前記取付け腕
   の基端部と前記摺動ピンの端面及び／またはこの摺動ピ
   ンを取付け腕に固定する取付けボルトの頭部との間に挟
   装したことを特徴とする車両用ディスクブレーキの分割
   型キャリパボディ。