JP2543137Y2 - 吸遮音板 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、吸遮音板に係り、特に、建築物の壁面構成
材や防音壁などに利用され、騒音などの音響エネルギー
を吸収かつ遮断するための吸音性遮音板の構造に関する
ものである。

（従来の技術） 騒音などの音響エネルギーは、その伝播径路にある障
壁面で一部は透過、吸収され、残りは表面から反射す
る。障壁を構成する材料によって透過吸収（吸音）と反
射の割合、すなわち吸音率が異なっている。騒音エネル
ギーは、壁面材料の多孔質空孔内部に進入したり、板の
共鳴機構などで捕捉されて減衰し、熱エネルギーなどに
変換される。吸音材としての多孔質材料は、通常、遮音
要素を担う遮音板や建造物の構成躯体である剛壁と組合
わせて、後背空気層の作用を生み出す形で使用される場
合が多く、又、吸音効果もより大きく得られることが知
られている。

（考案が解決しようとする課題） しかしながら、吸音材を建築構造物の所定の表面に取
り付けたり、吸音材を遮音板と組合わせた構造で防音用
の障壁を設置したりする場合には、壁面への取付け構造
上や強度の要求から吸音材の背面に各種の支持部材など
が配置される例が多い。この場合には、吸音材と後背空
気層の厚みを計算通りに保持できなくなるなどの問題が
生じて、設計上の性能が期待通りに得られないことにな
る。

本考案は、このような従来の方法で壁面などを構築す
る際に起こりがちな特性への影響を最小限に抑え、安定
した音響性能を容易に実現できる吸音性遮音パネル、す
なわち吸遮音板を提供しようとするものである。

（課題を解決するための手段） すなわち、従来の吸音壁面は、後背空間を保持させる
スペーサ要素に吸音性を有する板を固定させているが、
本考案では、空間を保持させるスペーサーとして薄い板
を例えば六角柱状に連続して形成したハニカム構造の板
状部材３を用い、これを主吸音材であるアルミニウム切
削小片にバインダーを加えて多孔質な板状に成形した吸
音板１と、遮音板であるアルミニウム製平板などの金属
板２との間にサンドウィッチ状に介在、接着固定させ、
一体化した吸音性遮音板４を形成すると、安定した吸・
遮音特性が得られることを実験的に確認したことにより
考案したもので、実施例が図面にもみられるように、ア
ルミニウム切削小片にバインダーを加えて多孔質な板状
に成形した吸音板１と、所望厚さのハニカム構造の板状
部材３と、アルミニウムなどの金属板２とを順次積層し
一体化して板状に構成したことを特徴とする。

（作用） 本考案のように、多孔質の吸音板と後背空気層を設け
て遮音板（剛壁）が組合わされた吸音構造体では、多孔
質の吸音板の単体での吸音率特性の周波数分布に対し
て、全体に吸音率が向上する形に変化するが、その分布
パターンは後背空気層の厚さによって異なることは良く
知られている。従って、期待する吸音率特性を得ようと
するためには、その最適空気層厚さを確認して吸音板の
配置構造を決定すればよい訳である。

しかし、このような吸音率特性を改善向上させようと
する実験において、この空気層をハニカム構造の板状部
材で小さいセルに区分した場合には、周波数特性の変化
に単一の空気層とは異なる特性、さらにはより優れた吸
音率の周波数分布を示すことが判った。これは、後背空
気層のセルがヘルムホルツの共鳴の効果をもたらすこと
によるものと考えられる。

（実施例） 以下本考案をさらに実施例にて図面を用いて具体的に
説明する。

実施例１ 第１図、第２図は本考案の実施例品の一つである。第
１図において、参照数字１は、吸音特性の基本部材とな
るアルミニウム切除小片にバインダーを加えて、多孔質
な板状に成形した吸音板、同じく２は、安定した吸音特
性を得ると同時に、優れた遮音効果を組込むための遮音
板としての金属板であって、この例では、アルミニウム
板、同じく３は、吸音板１と、遮音板２との間に介在、
接着剤で接合されたハニカム構造の板状部材であって、
この実施例では、アルミニウム薄板製を用いている。

この実施例での吸音板１は、アルミニウム材の切削加
工の際に生じる切粉に特殊なバインダーを加えて、これ
を板状に成形した厚さ15mm〜30mmの多孔質板で、その吸
音率の周波数特性は高温帯域に高い性能を示す特徴があ
り、部材の厚さが増大すると共に、高い吸音率を示す周
波数帯域が中低音領域へと拡大する特性を持っている。
この吸音板１の単体は、厚さ15mmでは、周波数2500Hz前
後で吸音率の最大値0.9程度であり、吸音板の厚さを30m
mまで増加させると、周波数1000Hz前後で吸音率の最大
値0.98となり、板厚の増大と共に吸音性能は高まり、最
大周波数も低温領域にシフトする傾向を持っている。

この吸音板の厚さ20mmのものに、後背空気層の厚さ50
mmとなるように一つのセルの断面積が約5cm²のアルミニ
ウム薄板製ハニカム構造体３と、厚さ1mmのアルミニウ
ム板２とを接合させた吸遮音板４に加工したものでは、
周波数400Hz以上で略々１に近い吸音率を示した。

（考案の効果） 以上述べたことから本考案の効果は次の如くである。

（イ）アルミニウム切削小片をバインダーで多孔質な板
状に成形した吸音板１は背後空気層と組み合わされて優
れた吸音率周波数特性の改善効果を生じるが、ハニカム
構造の板状部材３を該吸音板１と金属板２とでサンドウ
ィッチ構造にした本考案の吸遮音板４では、空気層が確
実かつ安定に保持されるので極めて容易に音響性能の確
保が実現できる。

（ロ）構造的に脆いアルミニウム切削小片をバインダー
により多孔質な板状に成形した吸音板１は、金属板２
と、ハニカム構造の板状部材３とでサンドウィッチ状に
挟んで接合されているため、機械的な強度が飛躍的に向
上するほか、設置、組付けなどが容易にできる。

（ハ）実施例のように全ての構成部材をアルミニウムな
ど金属製のものにすれば、耐熱温度の高い吸遮音板４を
提供することが可能である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例品を示す断面図であり、 第２図は同じくその構成を示すための一部切欠断面斜視
図である。 １……アルミニウム切削小片にバインダーを加えて多孔
質な板状に成形した吸音板。 ２……遮音板としての金属板（アルミニウム板） ３……ハニカム構造の板状部材（アルミニウム薄板製ハ
ニカム構造体） ４……本考案の一実施例の吸遮音板（吸音性遮音板）

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】アルミニウム切削小片にバインダーを加え
   て多孔質な板状に成形した吸音板１と、所望厚さのハニ
   カム構造の板状部材３と、金属板２とを順次積層一体化
   して板状に構成したことを特徴とする吸遮音板。