JP2526911B2 - 淡色高軟化点樹脂の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、淡色で高軟化点の芳香族系炭化水素樹脂
を、触媒の存在下で石油類の熱分解により得られる分解
油留分を更に蒸留操作して得られた高沸点留分から工業
的に簡便かつ有利に製造する方法に関するものである。

［従来の技術］ 従来より、石油類の熱分解により得られる分解油留分
のうち、140〜280℃の範囲内の沸点を有する留分から蒸
留操作によって得られる高沸点留分を使用して、高軟化
点の芳香族系炭化水素樹脂を製造する方法は公知であ
り、既に工業適に利用されている。

しかしながら、一般に従来より行われている方法は、
石油類の熱分解により得られる分解油留分のうち140〜2
80℃の範囲内の沸点を有する留分を蒸留搭へ仕込み、搭
底より抜き出して得られる高沸点留分を利用するために
これを原料として重合して得た樹脂は色相が悪く重合収
率が低くなるなどの問題点が多かった。

この高軟化点炭化水素樹脂の色相を改善する方法とし
て前記した搭底より抜き出して得られる高沸点留分を更
に蒸留して搭頂より得られる留分を利用する方法が知ら
れている。又、蒸留路の供給段より下段と搭底より上段
の間でチムニートレイなどでサイドカットして得られた
高沸点留分を利用する方法が知られている。

［発明が解決しようとする問題点］ しかしながら、前記したサイドカット法による方法
は、本発明者らが検討した結果、蒸留操作温度が高かっ
たり、蒸留搭での滞留時間が長くなった場合は、その原
料油を使用して樹脂を製造した場合、重合収率が低くな
る傾向があった。また、前記した再蒸留する方法は得ら
れる樹脂の物性や重合収率の面では問題はないが、必ら
ずしも経済的な方法とはいえない。

本発明は前記した従来の技術的課題を背景になされた
もので工業的かつ安価に淡色の高軟化点炭化水素樹脂を
得ることを目的とするものである。

［問題点を解決するための手段］ 本発明者らは前記従来技術の有する欠点を改善すべく
鋭意検討した結果、重合原料となる留分を蒸留搭の供給
段より下部で搭底部より上部の回収部から取り出した留
分、特に蒸留過程での上昇蒸気相のみを搭外に抜き出し
凝縮させて得られる高沸点留分を重合原料として使用す
ることにより淡色で高軟化点炭化水素が得られることを
見出だし本発明に到達したものである。

すなわち、本発明は石油類の熱分解により得られる分
解留分のうち140〜280℃の範囲内の沸点を有する留分を
分留原料として分留する際、分留原料の分留搭への供給
段より下部で搭底部より上部の回収部から分留成分を気
相で取り出し凝縮させた留分を原料とし、これを重合す
ることを特徴とする淡色高軟化点樹脂の製造方法であ
る。

本発明において重合原料として用いられる高沸点留分
を得る方法は、前記したように被分留物の供給段より下
部で搭底部より上部の回収部から分留成分を気相で抜き
出し凝縮させる方法である。石油類等の蒸留で一般に行
っているチムニートレイのような方法で下降液相部をサ
イドカットで得た成分を重合する方法では前記したよう
に高軟化点樹脂に得られるものの、色相が悪く、重合収
率が低くなる傾向がある。本発明では、蒸留の際の上昇
蒸気相を抜き出し凝縮させて得ることが必須条件であ
る。

本発明で、蒸留における上昇蒸気相を分留搭から抜き
出す位置（段）は、被分留物を効率よく低沸点留分と高
沸点留分に分留することが望ましいから、より搭底部に
近い段（より下方の段）が好ましいが、飛沫同伴等によ
って劣化した蒸留物が抜き取り物に混入することを防ぐ
ために搭底部より１〜２段上部の段が好ましい。

高沸点留分を抜き出す際の量的割合は分留原料油中の
留分、倒えばインデン，アルキルインデン等のインデン
誘導体の含有率によって変動するが、普通供給量に対し
て30〜80wt％である。

また、該留分を得る方法は、常圧蒸留，減圧蒸留等の
いずれの方法を採用してもよい。

本発明において使用される重合触媒は通常の炭化水素
重合触媒で例えばフリーデルクラフツ型触媒としては、
無水三塩化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム
又はその錯体，三ふっ化ホウ素又はその錯体，四塩化ス
ズなどのハロゲン化スズなどをあげることができるが好
ましくは、無水三塩化アルミニウム，三ふっ化ホウ素又
はそれらの錯体である。

本発明での重合温度，重合時間，重合に用いる触媒量
などの条件は、通常の炭化水素樹脂の重合に用いられる
条件，即ち、夫々10〜100℃,0.5〜６時間，原料に対し
て0.1〜1wt％でよいが、勿論この範囲に限定されるもの
ではない。

重合反応終了後に重合反応混合物を含む油相をそのま
ま又は界面活性剤の存在下に水又はアルカリ水溶液と接
触させさらに水相を分離し、重合停止，脱触媒，脱灰を
行う。

前述した処理で界面活性剤を使用する場合、その使用
量は、用いる水相に対して0.1〜200ppmで充分であるが
勿論、この範囲に限定されるものではない。前記水又は
アルカリ水溶液を使用する場合、その使用量は特に限定
されないが、通常油相100重量部に対して20〜200部が用
いられる。

脱触媒，脱灰操作お行われる温度は特に限定されない
が、通常、少々の加温下、即ち50〜100℃の範囲で行う
ことが好ましい。

前述の方法によって脱触媒，脱灰操作の行うことによ
り、充分に低灰分の樹脂が得られるが、必要ならば、前
述の方法によって得られた油相を更に界面活性剤の存在
下、あるいは不存在下に水洗を行ってもさしつかえな
い。

脱触媒，脱灰操作後の油相からは常法、すなわち蒸留
などの方法により未反応の油を留去して、淡色で高軟化
点の炭化水素樹脂を得る。

［実施例］ 次に本発明の方法を実施例および比較例によって具体
的に説明する。

比較例１ 石油類の熱分解により得られる分解油留分のうち140
〜280℃の範囲内の沸点を有する留分（以下芳香族留分
と略す）を図−１に示す装置により、ボトムから高沸点
留分（第Ｉ留分）を得た。図−１に示す蒸留搭の操作条
件は表−１の通りである。

比較例２ 芳香族留分を図−２に示すような下降液滴をサイドカ
ットできる装置（例：チムニートレイ）により、高沸点
留分（第II留分）を得た。サイドカット段は下から２段
目で行った。図−２に示す蒸留搭の操作条件は比較例−
１と同じである。

実施例１ 芳香族系留分を図−３に示すような上昇蒸気をサイド
カットできる装置により、高沸点留分（第III留分）を
得た。サイドカット段は下から２段目で行った。図−３
に示す蒸留搭の操作条件は比較例−１と同じである。

比較例３ 内容積２の四ッ口セパラブルフラスコに第Ｉ留分50
0gを仕込んだ。フラスコ内部を充分に窒素置換した後
に、撹拌しながら反応温度40℃において三ふっ化ホウ素
フェノール錯体2.5gを30分間で滴下した。

滴下終了後40℃でさらに１時間反応させた。

反応終了後1wt％苛性ソーダ水溶液250g,キシレン250g
を添加し、60℃で30分間撹拌し中和した後さらに80℃で
30分間静置した。油相と水相を分離し分離した油相から
水蒸気蒸留により未反応油を留去して、軟化点123℃色
相15の樹脂を得た。生成した樹脂の物性を表−２に示
す。

比較例４ 第Ｉ留分の代わりに第II留分を使用した以外は比較例
３と同様の操作を行って、軟化点145℃色相16の樹脂を
得た。生成した樹脂の物性の油性を表−２に示す。

実施例２ 第Ｉ留分の代わりに第III留分を使用した以外は比較
例３と同様の操作を行って、軟化点155℃色相８の樹脂
を得た。生成した樹脂の物性を表−２に示す。

［発明の効果］ 本発明で行なわれる特定の原料油蒸留の際の留分抜き
取り法により得られる高沸点留分を使用する方法は、前
記したように高沸点留分を再蒸留する必要がなく、経済
的であり、かつ劣化した油を含まないため、淡色で色相
も良く、高軟化点の炭化水素樹脂を製造できる。

【図面の簡単な説明】

図−1,図−２は各々、比較例1,比較例２の態様、図−３
は実施例の態様を示す。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】石油類の熱分解により得られる分解油留分
   のうち140〜280℃の範囲内の沸点を有する留分を分留原
   料として分留搭で分留する際に、分留原料の分留搭への
   供給段より下部で搭底部より上部の回収部から分留成分
   を気相で取り出し凝縮させた留分を原料とし、これを重
   合することを特徴とする淡色高軟化点樹脂の製造方法。