JP2510936Y2 - エンジンの動弁装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、エンジンのカムシャフトに可変バルブタイ
ミング機構を付設したエンジンの動弁装置に関するもの
である。

（従来の技術） 従来より、エンジンの動弁機構でカムシャフトの駆動
を行うについて、このカムシャフトの駆動機構に可変バ
ルブタイミング機構を装着し、クランクシャフトとカム
シャフトとの回転位相を変更して排気バルブもしくは吸
気バルブのバルブタイミングを運転状態に対応して変化
させるようにした技術が、例えば、特開昭58-185914号
公報および特開昭63-162910号公報、特開平2-102305号
公報に見られるように知られている。

上記先行例においては、直流モータによって可変バル
ブタイミング機構を作動させてカムシャフトの位相を変
更するようにしているもの、および電磁コイルへの通電
によってカムシャフトの位相を変更してバルブタイミン
グを変更するようにした可変バルブタイミング機構等が
開示されている。

（考案が解決しようとする課題） しかして、上記のような可変バルブタイミング機構を
備えた動弁装置では、その電磁コイルは通電に伴って昇
温し、耐久性などの面で不利となると共に、この可変バ
ルブタイミング機構の設置に伴うカムシャフト端部近傍
の回転部分における潤滑が良好に行えない問題を有す
る。

すなわち、可変バルブタイミング機構の作動によって
カムシャフトの位相を変更する場合には、吸排気バルブ
を開閉作動している運転状態で行うものであり、その弁
開閉には相当の駆動力を要し、この状態においてカムシ
ャフトの位相を変えるように作動するのにも相当の駆動
力が必要である。そして、前記可変バルブタイミング機
構の電磁コイルには、バルブタイミングの変更制御のた
めに大きな電流が通電され、それに伴う発熱量も大きい
ものであるが、この可変バルブタイミング機構はシリン
ダヘッド内に配設された際には放熱量も少なく、さらに
温度が高くなる。

一方、上記可変バルブタイミング機構をカムシャフト
の端部に設置した場合には、カムシャフトの中心部には
この可変バルブタイミング機構を設置するための締結ボ
ルトが挿入され、その中心部にオイル通路を形成するこ
とは困難である。

そこで、本考案は上記事情に鑑み、可変バルブタイミ
ング機構をカムシャフトもしくはその延長シャフト部材
の外周部に配設した回転体内に、電磁コイルを備えた可
変バルブタイミング機構を設置するについて電磁コイル
の冷却を図るようにしたエンジンの動弁装置を提供する
ことを目的とするものである。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するために本考案の動弁装置は、クラ
ンクシャフトの動力が伝達されて回転する回転体をカム
シャフトもしくはその延長シャフト部材の外周部に配設
すると共に、電磁コイルを備え該電磁コイルの作動に伴
ってカムシャフトの回転位相を変更する可変バルブタイ
ミング機構を上記回転体内に設け、上記カムシャフトも
しくはその延長シャフト部材内に前記可変バルブタイミ
ング機構の電磁コイルに冷却用オイルを導くオイル通路
を形成して構成したものである。

また、前記オイル通路をカムシャフト端部に可変バル
ブタイミング機構のカムシャフトと一体に回転するハブ
を介してシャフト部材を取り付ける締結ボルトの外周に
形成し、しかも、このオイル通路に締結ボルトとカムシ
ャフトとの螺合部に隣接するカムシャフトのジャーナル
部に形成したオイル孔を接続して構成するのが好適であ
る。

（作用および効果） 上記のような動弁装置では、カムシャフトもしくはそ
の延長シャフト部材の外周部に配設した回転体内に電磁
コイルを有する可変バルブタイミング機構を設けてコン
パクト化を得ると共に、上記可変バルブタイミング機構
の電磁コイルに対して冷却用のオイルを、カムシャフト
もしくはその延長シャフト部材内に形成したオイル通路
によって導いて、簡単な構成で電磁コイル回りをオイル
によって確実に冷却し温度上昇を抑制して所期の特性を
得ると共に、可変バルブタイミング機構の潤滑を行うこ
とができる。

また、前記オイル通路は、カムシャフト端部にシャフ
ト部材を取り付けるべく挿入した締結ボルトの外周に形
成し、しかも、このオイル通路にカムシャフトのジャー
ナル部に形成したオイル孔を連通すれば、簡易に構成す
ることができるものである。

（実施例） 以下、図面に沿って本考案の実施例を説明する。第１
図は一実施例のDOHC動弁装置を備えたＶ型エンジン１に
おける一方のバンクのシリンダヘッド４の要部平面図、
第２図はそのA-A断面図であって、このバンクにおいて
は各気筒が４弁構造（吸気側２弁、排気側２弁）で備え
られると共に、各気筒の吸・排気バルブを開閉作動する
カム部2a,3aを備えた一対のカムシャフト2,3がシリンダ
ヘッド４の上方に相互に平行に配設され、シリンダヘッ
ド４の軸受部５にカムキャップ６（第２図参照）を締結
することによって支承されている。

また、吸気側カムシャフト２および排気側カムシャフ
ト３のそれぞれの一端部（前端部）の外周には、回転体
としての吸気側カム間ギヤ７および排気側カム間ギヤ８
がそれぞれ配設され、両カム間ギヤ7,8は相互に噛合さ
れ、排気側カム間ギヤ８は排気側カムシャフト３に直接
取り付けられている。

一方、吸気側カム間ギヤ７は吸気側カムシャフト２に
は直接取り付けられず、排気側カムシャフト３のカム間
ギヤ８より幅が大きく形成されたボス部7aが中空状に形
成され、その内部に可変バルブタイミング機構20が配設
されている。上記両側のカム間ギヤ7,8はシリンダヘッ
ド４の端部に形成されたギヤ室９に収容されている。

さらに、吸気側カム間ギヤ７の前端部には、該カム間
ギヤ７と一体的に吸気側カムシャフト２の軸方向に沿っ
て延びるアダプタ15が配設されている。このアダプタ15
の前端部はシリンダヘッド４の前端面に臨み、この前端
部にクランクシャフト（図示せず）からの動力が伝達さ
れるカムプーリ16が取り付けられている。また、上記ア
ダプタ15は吸気側カム間ギヤ７に連接された後端部がフ
ランジ状に形成され、前端部との間の中間部分がシリン
ダヘッド４の前端軸受部5aに軸受支持されるジャーナル
部15aに形成されている。

上記カムプーリ16は、前記アダプタ15に固着される中
心部が円板状に形成され、その外周部分が後方に屈曲し
て、前記アダプタ15のジャーナル部15aの外周位置にタ
イミングベルト（図示せず）が掛けられるギヤ部16aが
設置されている。なお、前記カムプーリ16はスプロケッ
ト状に形成されて、タイミングチェーンによって動力が
伝達されるようにしてもよい。

一方、前記吸気側カムシャフト２の端部外周には前記
可変バルブタイミング機構20が配設されるが、この吸気
側カムシャフト２の前方には可変バルブタイミング機構
20のハブ21（後述する）を挾持する筒状の延長シャフト
部材17が同軸上に設けられ、このシャフト部材17は端部
からその中心を貫通してカムシャフト２に締結される締
結ボルト18によって取り付けられている。そして、この
シャフト部材17は前記アダプタ15の内孔に回動可能に嵌
合され、シリンダヘッド４の前端軸受部5aにアダプタ15
を介して支持されている。

また、上記締結ボルト18の軸部の外周部には、吸気側
カムシャフト２およびシャフト部材17のボルト孔の内周
面との間に形成された隙間によって軸方向に伸びるオイ
ル通路31が形成されている。そして、第２図に示すよう
に、シリンダヘッド４内にカムシャフト２と平行に形成
されたオイルギャラリ32から前端気筒の吸気側カムシャ
フト２を支承する軸受部５に対して、上方にカムキャッ
プ６内を経てオイル分岐通路33が形成される。なお、37
は気筒中心に形成された点火プラグホールである。

一方、前記締結ボルト18は吸気側カムシャフト２のボ
ルト孔奥部の螺合部18aで締結され、この螺合部18aに隣
接して前記前端気筒の軸受部５に支持されているジャー
ナル部2bに流入オイル孔31aが形成され、この流入オイ
ル孔31aは中心側のオイル通路31と連通され、前記オイ
ル分岐通路33からのオイルを導入する。

さらに、上記オイル通路31に連通して可変バルブタイ
ミング機構20の後述の電磁コイル24に対応する位置の吸
気側カムシャフト２を貫通してオイル供給孔31bが開口
され、該オイル供給孔31bによって電磁コイル24の周辺
に冷却用のオイルが供給される。また、同様に上記オイ
ル通路31に連通してシリンダヘッド４の前端軸受部5aに
対応する位置のシャフト部材17およびアダプタ15のジャ
ーナル部15aを貫通してオイル供給孔31cが形成され、該
オイル供給孔31cによって潤滑用のオイルが供給され
る。

上記構造により、クランクシャフトの回転に伴ってタ
イミングベルトを介してカムプーリ16が駆動されると、
アダプタ15、カム間ギヤ7,8を経て排気側カムシャフト
３がそのまま回転され、吸気側カムシャフト２には可変
バルブタイミング機構20を介して所定の位相で回転が伝
達される。

一方、前述の可変バルブタイミング機構20は電磁作動
式であり、その概略構造を説明すれば、前記吸気側カム
シャフト２に固着されたハブ21は円板部から円周の複数
箇所に軸方向後方に斜めに形成された係合片21aを有す
る。また、カム間ギヤ７のボス部7a内周面には縦溝に沿
って軸方向に移動可能にアドバンシングプレート22が係
合され、このアドバンシングプレート22の内周はドラム
23の外周のネジ部に螺合しており、該ドラム23の相対回
転によって軸方向に移動され、上記斜めの係合片21aと
の係合位置の変更によってハブ21すなわち吸気側カムシ
ャフト２の位相を変更するものである。その駆動機構
は、上記ドラム23の内側（カムシャフト２の外側）に電
磁コイル24が配設され、該電磁コイル24に固着されたブ
ラケット25が図示しない係合構造によってシリンダヘッ
ド４側に固定されて、回り止めが行われている。上記電
磁コイル24に接続された電気コード28は、ブラケット25
を貫通して導出され、ヘッドカバー（図示せず）のグロ
メットを通って配線されている。

そして、上記電磁コイル24への通電によってドラム23
の回転に抵抗を与えて該ドラム23を進角方向に相対回転
させるものであり、このドラム23の回転角度はストップ
プレート26で制限され、可変位相角が調整される。な
お、上記ドラム23は渦巻状のスプリング27によって遅角
方向に復帰回転される。上記電磁コイル24への通電は運
転状態に応じて制御され、吸気側カムシャフト２の回転
位相の変更で吸気バルブの開閉時期を可変として排気バ
ルブとのオーバーラップ期間を変更するものである。

なお、上記実施例では吸気側カムシャフト２に可変バ
ルブタイミング機構20を配設するようにしているが、排
気側カムシャフト３に配設するようにしてもよい。ま
た、カム間ギヤ7,8は、チェーン駆動用のスプロケット
等によって構成してもよい。

また、前記可変バルブタイミング機構20では、ハブ21
が前端側に位置するように配設されているが、その位相
変更方向または係合片21aの傾斜方向が逆になった場合
には、この可変バルブタイミング機構20の設置は実施例
と逆向き、すなわちハブ21が気筒側に配置されるもので
あり、その際には、カムシャフト２は短くなり、可変バ
ルブタイミング機構20が中心部には長く形成されたシャ
フト部材17が挿入され、後部側でカムシャフト端部との
間でハブ21を挾持して締結ボルト18で締結するように構
成すればよい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例における動弁装置を備えたＶ
型エンジンの一方のシリンダヘッドの要部平面図、 第２図は第１図のＡ−Ａ線に沿う断面図である。 １……エンジン、2,3……カムシャフト、４……シリン
ダヘッド、7,8……カム間ギヤ（回転体）、15……アダ
プタ、17……シャフト部材、18……締結ボルト、18a…
…螺合部、20……可変バルブタイミング機構、21……ハ
ブ、22……アドバンシングプレート、23……ドラム、24
……電磁コイル、31……オイル通路、31a,31b,31c……
オイル孔、32……オイルギャラリ。

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】クランクシャフトの動力が伝達されて回転
   する回転体をカムシャフトもしくはその延長シャフト部
   材の外周部に配設すると共に、電磁コイルを備え該電磁
   コイルの動作に伴ってカムシャフトの回転位相を変更す
   る可変バルブタイミング機構を上記回転体内に設け、上
   記カムシャフトもしくはその延長シャフト部材内に前記
   可変バルブタイミング機構の電磁コイルに冷却用オイル
   を導くオイル通路を形成したことを特徴とするエンジン
   の動弁装置。
2. 【請求項２】前記オイル通路は、カムシャフト端部に前
   記可変バルブタイミング機構のカムシャフトと一体に回
   転するハブを介してシャフト部材を取り付ける締結ボル
   トの外周に形成され、かつ、該締結ボルトとカムシャフ
   トとの螺合部に隣接するカムシャフトのジャーナル部に
   形成されたオイル孔と接続されていることを特徴とする
   請求項１記載のエンジンの動弁装置。