JP2508033Y2 - 筆記具の尾栓 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、水性ボールペン等の筆記具における軸筒の
尾端部に装着される尾栓に関するものである。

〔従来の技術〕

従来、インキの吸蔵体を内蔵するタイプの筆記具で
は、その軸筒の内外のエア置換を行うため、上記軸筒の
首部に通気孔が設けられているが、このような通気孔の
存在は、上記インキ吸蔵体からのインキの蒸発、乾燥を
促すため、この箇所でインキの粘度が増し、変質すると
いった不都合が生じ易い。

そこで、実公昭63-5910号公報には、上記軸筒の尾端
側開口内に嵌着される尾栓の外表面に溝を設け、この溝
によって軸筒内外のエア流通を図るとともに、この溝の
形状を微小非直線状、すなわち筆記具軸方向に平行に形
成された直線溝よりも長い軸長をもつような螺旋状、ジ
グザグ状、段階状等の迂回する形状とすることにより、
エアの流通をある程度抑制し、軸筒内のインキ吸蔵体か
らのインキの蒸散を抑えるようにしたものが開示されて
いる。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記筆記具は、常に横向きで取扱われるとは限らず、
場合によっては尾栓側を下向きにした状態で落とされた
り他の物にぶつけられたりすることがある。このような
場合、上記落下等による衝撃でインキ吸蔵体がずれた
り、インキが飛散したりすることにより、このインキや
上記インキ吸蔵体を構成する綿が上記尾栓に形成された
通気用溝に入り込み、目詰りを引起こすおそれがある。
また、筆記軸がノック操作によって出没するタイプの筆
記具においては、上記筆記具を付勢するばねの圧縮・復
帰の衝撃によっても上記と同様の事態を招きかねない。

一方、このような目詰りを防ぐために溝の断面形状を
拡大すると、これによってインキの蒸散が促され、上記
の目的と反する結果になってしまう。

本考案は、このような事情に鑑み、軸筒内からのイン
キの蒸散抑制を図り、かつエア流通溝がインキや綿等で
詰まりのを防ぐことができる筆記具の尾栓を提供するこ
とを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は、筆記具において内部にインキを収容する軸
筒の尾端側開口内に嵌着される尾栓において、全体が熱
可塑性樹脂で一体成形されるとともに、その外表面の一
部に筆記具軸方向全域に延びるエア流通溝を有し、この
エア流通溝において上記軸筒の内部に臨む側の開口（以
下、この明細書では「先端側開口」と称する。）以外の
部分にこの開口よりも小さな断面積をもつ流通規制部を
有するものである。

〔作用〕

上記構成によれば、エア流通溝の先端側開口、すなわ
ち軸筒内に臨む開口の面積を十分大きくとることによ
り、インキやインキ吸蔵体の綿等による目詰りが防がれ
るとともに、このエア流通溝において他の箇所に設けら
れた小断面積の流通規制部によって、上記エア流通溝内
を通過するエア流量が規制され、軸筒内からのインキ蒸
散が抑制される。

〔実施例〕

本考案の第１実施例を第１図および第２図に基づいて
説明する。

第２図に示される筆記具は、先端側および尾端側の双
方に開口する軸筒10を備え、この軸筒10内に綿等からな
るインキ吸蔵体12が収納されており、このインキ吸蔵体
12に保持されたインキは、インキ導出棒14を介して先端
の筆記部16に導かれるようになっている。そして、上記
軸筒10の尾端側に本考案の尾栓20が装着されている。

この尾栓20は、第１図（ａ）（ｂ）に示されるよう
に、略円柱状の本体21と、この本体21の尾端部に形成さ
れた大径の鍔部22とを有し、弾性変形可能な材料により
全体が一体成形されている。具体的には、ポリプロピレ
ンやポリエチレン等のオレフィン系熱可塑性樹脂で射出
成形されたもの等が好適である。

上記本体21の径は、軸筒10の尾端部内径よりも若干大
きめに設定されており、鍔部22の径は軸筒10の尾端部外
径と略等しく設定されている。

上記本体21の外表面の一部には、筆記具軸方向に延び
る溝23が凹設され、鍔部22には、上記溝23と連続する位
置に略Ｖ字状の切欠26が形成されており、両者によっ
て、尾栓20の軸方向全域に亘る本考案のエア流通溝が構
成されている。

さらに、この尾栓20の特徴としては、上記本体21にお
ける溝23の形状は、尾端側に向かうに従って断面積が小
さくなる形状、より具体的には尾端側に向かうに従って
小幅となり、かつ浅くなるテーパー状とされており、こ
の溝23の尾端部25の断面積は先端側開口24の開口面積よ
りも数段小さくなっている。

このような尾栓20によれば、上記鍔部22が軸筒10の尾
端に当接する位置まで本体21を軸筒10の尾端側開口内に
圧入し、嵌着することにより、この本体21の外周面がそ
の弾性によって軸筒10の内周面に圧接し、かつ、上記溝
23および切欠26からなるエア流通溝と軸筒10の周壁とに
よってエア流通路が形成された状態となる（第２図の状
態）。

しかも、上記溝23の先端側開口24の開口面積を広く設
定することにより、筆記具に衝撃等が加わってインキ吸
蔵体12が尾端側にずれ、あるいはインキが飛散しても、
このインキや上記インキ吸蔵体12の綿等によって溝23に
目詰りが生じるのを防ぐことができるとともに、上記溝
23の尾端側端部25の断面積を極力小さく設定することに
より、軸筒10内部のインキ吸蔵体12から外部へインキが
蒸散するのを抑制することができる。

なお、この実施例では尾端側に向かうにつれて幅寸法
および深さ寸法の双方が小さくなる形状の溝23を示した
が、いずれか一方のみが小さくなる形状であっても上記
と同様の効果を得ることが可能である。また、最も断面
積が小さくなる部分は必ずしも尾端側端部25でなくても
よく、溝の中間部に設定してもよい。

次に、第２実施例を第３図に示す。ここでは、溝23の
先端側部分の断面形状を先端側開口24の開口形状と等し
く設定するとともに、それ以外の部分には上記先端側開
口24よりも小幅でかつ浅底の溝27を形成し、さらに、こ
の溝27の途中に該溝27よりも小幅の絞り部（流通規制
部）28を形成している。このような構造においても、先
端側開口24の開口面積を極力大きめに設定し、かつ絞り
部28の断面積を極力小さく設定することにより、前記実
施例と同様の効果を得ることができる。

次に、第３実施例を第４図に示す。ここでは、複数の
先端側開口24を設け、各先端側開口24から延びる通路を
共通の溝27に合流させている。このような構造において
も、先端側開口24を複数とした分、その総開口面積は大
きくなっており、前記実施例と同様の効果が得られる。
また、いずれかの先端側開口24に目詰まりが生じても他
の先端側開口24によって良好なエア流通を確保すること
が可能である。

次に、第４実施例を第５図および第６図に示す。

第６図に示されるように、この実施例における尾栓20
は、中が空洞とされて尾端側に開口する形状とされてお
り、その先端側壁21aには、第５図（ａ）（ｂ）にも示
されるような先端側に向かって突出する正面視十字状の
空間形成部29が設けられている。

このような構造によれば、尾栓29を第６図に示される
ように軸筒10に嵌着した状態で、上記空間形成部29の存
在により本体21の先端面とインキ吸蔵体12の尾端面との
間に所定の空間30が確保され、インキ吸蔵体12と本体21
との直接の接触が阻まれるため、インキの飛散やインキ
吸蔵体12のずれによる目詰りをより確実に防ぐことがで
きる。

なお、本考案は上記各実施例に限定されるものではな
く、例として次のような態様をとることも可能である。

（１） 本考案における溝の形状は上記各実施例に限定
されず、先端側開口よりも小断面積の規制部を有する形
状であればよく、その面積差を大きくとるほど、目詰り
防止およびインキ蒸散抑制の双方の効果をより確実に両
立させることができる。

（２） 本考案では、尾栓に設けられる溝の本数を問わ
ず、上記のような形状の溝を複数本尾栓に配設するよう
にしてもよい。

（３） 上記各実施例では、鍔部22を設け、この鍔部22
に切欠26を形成した尾栓20を示したが、上記鍔部22を有
しない構造の場合には上記切欠26が不要であるのは言う
までもない。

（４） 前記第４実施例における空間形成部29は、その
断面形状を問わず、適宜設定すればよい。例えば、尾栓
20の先端側部分に十字状の凹部を形成し、この凹部が形
成されている部分と連続する位置に溝23を設けるように
してもよい。

〔考案の効果〕

以上のように本考案は、外表面の一部に形成されたエ
ア流通溝においてその先端側開口以外の部分にこの先端
側開口よりも小さな断面積をもつ流通規制部を設けたも
のであるので、先端側開口、すなわち軸筒内に臨む開口
の面積を十分大きくとることにより、インキやインキ吸
蔵体の綿等による目詰りを防ぎながら、このエア流通溝
における流通規制部によって軸筒内からのインキの蒸散
を抑制することができる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図（ａ）は本考案の第１実施例における尾栓の正面
図、同図（ｂ）は同尾栓の側面図、第２図は同尾栓が取
付けられる筆記具の一例を示す断面側面図、第３図は第
２実施例における尾栓の側面図、第４図は第３実施例に
おける尾栓の側面図、第５図（ａ）は第４実施例におけ
る尾栓の正面図、同図（ｂ）は同尾栓の側面図、第６図
は同尾栓を筆記具に取付けた状態を示す断面側面図であ
る。 10……軸筒、20……尾栓、21……本体、23……溝（エア
流通溝を構成）、24……先端側開口、25……溝の尾端側
端部（規制部）、27……溝（エア流通溝を構成）、28…
…絞り部（規制部）。

Claims (4)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】筆記具において内部にインキを収容する軸
   筒の尾端側開口内に嵌着される尾栓において、全体が熱
   可塑性樹脂で一体成形されるとともに、その外表面の一
   部に筆記具軸方向全域に延びるエア流通溝を有し、この
   エア流通溝において上記軸筒の内部に臨む側の開口以外
   の部分にこの開口よりも小さな断面積をもつ流通規制部
   を有することを特徴とする筆記具の尾栓。
2. 【請求項２】上記エア流通溝は、尾端側に向かうに従っ
   て断面積が小さくなるテーパー状であることを特徴とす
   る請求項１記載の筆記具の尾栓。
3. 【請求項３】上記エア流通溝は、その途中に他の部分よ
   りも小さな断面積をもつ絞り部を有することを特徴とす
   る請求項１記載の筆記具の尾栓。
4. 【請求項４】上記エア流通溝は、上記軸筒の内部に臨む
   側に複数の開口を有し、各開口から尾端側に延びる連通
   路が単一の溝に合流する形状であることを特徴とする請
   求項１記載の筆記具の尾栓。