JP2503084B2 - 作業用車輌の変速機構 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、前輪及び後輪を共に駆動輪とした主として
農作業用に使用される作業用車輌の変速機構に関する。

〔従来の技術〕

従来、この種の前後輪駆動型の作業車輌においては、
前進時の直進性を高めるために、前輪の周速度を後輪の
周速度よりも幾分大きくした状態で駆動するのが一般的
である。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、上記従来のものにあっては、前輪の周
速度が後輪の周速度よりも増速されたいるため、例えば
比較的軟弱な圃場から畦へ後進しながら乗り上がる際
に、後輪が畦に乗りかかって機体が前傾斜し、前輪の接
地荷重が増加して、軟弱な圃場内にある前輪でスリップ
が生じ易く、一旦前輪でスリップが発生すると、前輪が
圃場を更に掘込んで沈下してしまい、脱出が困難になる
ことがわった。特に、一気に畦へ乗り上がろうとして急
加速後進すると、前輪の駆動逆トルクによって機体後部
が浮上がり気味になる上に後輪の畦への乗りかかりによ
る機体前傾斜によって一層前輪荷重が増大して前記スリ
ップ及び前輪沈下が生じやすくなるものであった。

本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであって、
機体の前進時の直進性を良好に維持しながら、後進畦越
えを良好に行うのに有効な変速機構を提供することを目
的とする。

〔課題を解決するための手段〕

本発明にかかる作業用車輌の変速機構は、上記目的を
達成するために、前輪の周速度を後輪の周速度よりも増
速した状態で駆動する前輪側増速駆動手段と、前記後輪
の周速度を前記前輪の周速度よりも増速した状態で駆動
する後輪側増速駆動手段とを、互いに背反的に作動する
ように備えているとともに、機体の前後進切換操作が可
能な前後進切換手段の機体前進操作に連係して、前記前
輪側増速駆動手段を作動し、前記前後進切換手段の機体
後進操作に連係して、前記後輪側増速駆動手段を作動す
るように、前記前後進切換手段と、前記前輪側増速駆動
手段と、前記後輪側増速手段とを連係してあることを特
徴構成とする。

かかる特徴構成による作用・効果は次の通りである。

〔作用〕

すなわち、機体の前進操作のときには、前後進切換手
段の機体前進操作に連係して、前輪側増速手段が作動さ
れるので、従来通り直進性を維持できる。また、機体の
後進操作のときには、前後進切換手段の機体後進操作に
連係して、後輪側増速手段が作動されるので、後進で圃
場から畦へ出る場合に、圃場内にある前輪でのスリップ
が生じにくく、かつ、高速となる後輪の牽引力が有効に
作用し、機体が後向きで畦に乗り上がってゆく。

〔発明の効果〕

従って、本発明によれば、通常の前進作業時には高い
直進性が確保されて、各種の農作業を良好に行えるとと
もに、後進による軟弱な圃場から畦への自力移動等をも
確実に行うことができ、作業用の車輌としての走行性能
を向上することができた。

〔実施例〕

以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

第３図に、本発明の変速機構を備えた作業用車輌の一
例として、乗用型田植機を示している。

この乗用型田植機は、左右一対の前輪（１），（１）
及び左右一対の後輪（２），（２）で支持された機体フ
レーム（３）にエンジン（４）及び操縦部（５）を搭載
するとともに、四連リンク機構（６）を介して苗植付装
置（７）を機体フレーム（３）に対して昇降自在に連結
して構成してある。

そして、第２図に示すように、上記四連リンク機構
（６）の上下揺動中心軸（Ｐ）には、その揺動角を検出
するためのポテンショメータ（８）を設けてある。一
方、エンジン（４）から走行変速装置（９）へ伝動する
ベルト伝動機構（10）には、電動シリンダ（11）の伸縮
で揺動駆動されるテンションプーリ（12）によってベル
ト張力を変更して、巻掛径可変型に構成した伝動プーリ
（10a）への張設半径を変えることで伝動速度を変更す
る変速手段が設けられている。前記ポテンショメータ
（８）と、電動シリンダ（11）とを、マイクロコンピュ
ータを利用した制御回路（13）に接続してあり、例えば
圃場の枕地等における機体旋回のために前植付装置
（７）を上昇操作したとき、すなわち、四連リンク機構
（６）を上昇がわに揺動操作したときに、ポテンショメ
ータ（８）で検出された角度情報によって、四連リンク
機構（６）が設定角度以上上昇がわに揺動したことを制
御回路（13）が判断すると、制御回路（13）は、その判
断に基づいて電動シリンダ（11）を駆動して、走行系へ
の伝動を減速するようにしてある。従って、四連リンク
機構（６）の上昇で苗植付装置（７）が設定高さ以上に
上昇すると、自動的に走行速度が減速される。

次に、動力伝達系について詳述する。

第１図に示すように、エンジン（４）からの動力は、
前記ベルト伝動機構（10）を介して走行変速装置（９）
の入力軸（14）に伝達され、第１伝動軸（15）、第２伝
動軸（16）を介して、前輪（１），（１）がわへの伝動
系と、後輪（２），（２）がわへの伝動系とに分岐する
入力ギア（17）に伝達される。前記第２伝動軸（16）に
はシフト部材（18）がスプライン構造にてスライド操作
自在に外嵌されており、このシフト部材（18）を第１伝
動軸（15）の第１ギア（19）に咬合せることによって前
進１速状態、第２ギア（20）に咬合せることによって前
進２速状態が得られ、さらにシフト部材（18）を第３伝
動軸（21）の後進ギア（22）に咬合せることによって後
進状態が得られる。

又、第３伝動軸（21）から分岐した動力は、３段の植
付苗間変速部（23）からトルクリミッタ（24）、植付ク
ラッチ（25）及びPTO軸（26）を介して苗植付装置
（７）に伝達される。

後輪（２），（２）への伝動系は、前記入力ギア（1
7）に対して小径のベベルギア（27）を咬合せて、高速
低トルクに変換された動力が第４伝動軸（28）を介して
後進（２），（２）に対する後輪デフ機構（29）に伝達
するようにして構成してある。

一方、前輪（１），（１）に対する前輪デフ機構（3
0）へ伝動は、前記入力ギア（17）と一体に前輪車軸（3
1）に遊嵌された第３ギア（32）と、前記デフ機構（3
0）の入力軸（30a）にスプライン構造にてスライド操作
自在に外嵌された第４ギア（33）とを、この第４ギア
（33）のスライド操作によって、夫々のギア（32），
（33）の爪（32a），（33a）同士を咬合せることで、入
力ギア（17）の回転動力を直接前輪デフ機構（30）へ伝
達する手段と、第３ギア（32）に歯合した第５ギア（3
4）、第５伝動軸（35）及び第６ギア（36）を介し、前
記第４ギア（33）がスライド操作されて第６ギア（36）
に歯合することで、入力ギア（17）の回転動力を減速状
態にて前輪デフ機構（30）へ伝達する手段とによってな
される。第４ギア（33）をスライド操作する図示しない
スライド操作部材は、前記シフト部材（18）と連係した
前後進切換手段としての変速レバー（37）に、リンク機
構又は油圧回路等を介して連係してあり、変速レバー
（37）の前進操作で、第３ギア（32）と第４ギア（33）
の爪（32a），（33a）同士を咬合せるようにして、第３
ギア（32）と第４ギア（33）とを一体に回転させ、他
方、変速レバー（37）の後進操作で、第４ギア（33）と
第６ギア（36）とを歯合させるようにしてある。そし
て、走行用伝動系としては、第３ギア（32）と第４ギア
（33）の爪（32a），（33a）同士が咬合せたときの機体
前進時に、前輪（１），（１）の周速度を後輪（２），
（２）の周速度よりも増速した状態で駆動されるように
設定してあり、特に第３ギア（32）、第４ギア（33）及
びそれの爪（32a），（33a）を前輪側増速駆動手段（3
8）として構成してあるとともに、機体後進時に、後輪
（２），（２）の周速度を前輪（１），（１）の周速度
よりも増速した状態で駆動されるよう、前記第３ギア
（32）、第５ギア（34）、第６ギア（36）及び第４ギア
（33）の咬合比率によって、前輪（１），（１）に対す
る伝動速度が減速されるように設定してあり、第３ギア
（32）、第５ギア（34）、第５伝動軸（35）、第６ギア
（36）及び第４ギア（33）を後輪側増速駆動手段（39）
として構成してある。尚、第４ギア（33）の径を第３ギ
ア（32）の径よりも大に設定することで、第５ギア（3
4）、第５伝動軸（35）、第６ギア（36）を介しての伝
動において伝動速度が減速されるようになっている。

以上の構成により、この乗用型田植機は、機体前進時
において、前輪（１），（１）の周速度が後輪（２），
（２）の周速度よりも増速状態にできて、高い直進性を
確保でき、かつ、機体旋回時に前輪（１），（１）で圃
場を荒らすことを防ぐことができるものでありながら、
変速レバー（37）を操作して、機体後進状態に切換える
と、前輪（１），（１）への伝動は、前輪側増速駆動手
段（38）を介しての伝動から後輪側増速駆動手段（39）
を介しての伝動に切換わって、後輪（２），（２）の周
速度が前輪（１），（１）の周速度よりも増速した状態
となり、例えば後進しながら畦を登る場合に、前輪
（１），（１）がスリップして機体前部が沈み込むよう
な不具合を抑制できる。

〔別実施例〕

本発明は、以下のように実施しても良い。

乗用型田植機の他に、農用トラクタ等の４輪駆動型
の作業用車輌に適用すること。

前輪側増速駆動手段（38）と後輪側増速駆動手段
（39）とを、後輪（２），（２）に対する伝動系中に介
装してあること。

前輪側増速駆動手段（38）と後輪側増速駆動手段
（39）とを、前輪（１），（１）に対する伝動系と、後
輪（２），（２）に対する伝動系との分岐箇所に介装し
てあること。

前後進切換手段を、変速レバー（37）以外の前後進
切換を行うためのレバー又はペダル等で構成すること。

尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にする
為に符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構
造に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明に係る作業用車輌の変速機構の実施例を示
し、第１図は乗用型田植機の走行用の伝動系を示す概略
説明図、第２図は乗用型田植機の自動減速構造を示す概
略説明図、第３図は乗用型田植機を示す全体側面図であ
る。 （１）……前輪、（２）……後輪、（37）……前後進切
換手段、（38）……前輪側増速駆動手段、（39）……後
輪側増速駆動手段。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】前輪（１）の周速度を後輪（２）の周速度
   よりも増速した状態で駆動する前輪側増速駆動手段（3
   8）と、前記後輪（２）の周速度を前記前輪（１）の周
   速度よりも増速した状態で駆動する後輪側増速駆動手段
   （39）とを、互いに背反的に作動するよう備えていると
   ともに、機体の前後進切換操作が可能な前後進切換手段
   （37）の機体前進操作に連係して、前記前輪側増速駆動
   手段（38）を作動し、前記前後進切換手段（37）の機体
   後進操作に連係して、前記後輪側増速駆動手段（39）を
   作動するように、前記前後進切換手段（37）と、前記前
   輪側増速駆動手段（38）と、前記後輪側増速駆動手段
   （39）とを連係してある作業用車輌の変速機構。