JP2502763Y2 - 車両用燃料タンク取付構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、車両用燃料タンク取付構造に関するもので
ある。

（従来の技術） 従来一般に、車両用燃料タンクはこれを一体的に構成
するのが通例であったが、近年の車両の低車高化・低床
化及びエンジンの大排気量化の影響から、一体構成の大
容量の燃料タンクを車体に取り付けることがその配置ス
ペースという点において制約される傾向にある。

このような背景から、例えば、実開平1-59730号公報
に開示されるように、燃料タンクを、連結パイプによっ
て相互に連結された複数のタンク単体に分割して形成す
ることによって各タンク単体それぞれを小形化して車体
への配置に際してのスペース上の制約を排除し、もって
車体への取付性の向上を図ったものが提案されている。

また、このように燃料タンクを複数のタンク単体に分
割したものにおいて、車両の衝突時等において該複数の
タンク単体が別々に変位すると、該各タンク単体相互間
あるいはこれらと連結パイプとの間に相対変位が生じ、
その結果、場合によっては各タンク単体と連結パイプと
の間の連結状態が悪化するということも懸念されること
から、例えば、実開昭62-184031号公報に開示される如
く、該各タンク単体を同一の車体側フレームに対して固
定する思想も提案されている。

（考案が解決しようとする課題） ところが、このように単に複数に分割形成されたタン
ク単体を同一の車体側フレームに固定するようにした場
合には、車両の衝突時において車体フレームの変形によ
り各タンク単体が別々に変位することに起因する上述の
如き不都合は回避されるものの、これら複数のタンク単
体を連結する連結パイプの配置構造あるいは連結構造に
ついては十分な考慮がされていないため、例えば、車両
の走行中に飛石等により連結パイプが損傷したり、ある
いは車両の衝突時等における車体側フレームの変形によ
って連結パイプの各タンク単体に対する連結状態が悪化
する等のことが懸念される。

そこで本考案は、燃料タンクを複数のタンク単体に分
割してこれを同一の車体側フレームに固定し且つこれら
の相互間を連結パイプによって連結した構成をもつもの
において、各タンク単体と連結パイプとの間の連結状態
を常時良好に維持し得るようにするとともに、連結パイ
プに対する保護性能をも高め得るようにした車両用燃料
タンク取付構造を提案せんとするものである。

（課題を解決するための手段） 本考案はかかる課題を解決するための具体的手段とし
て、相互に独立する如く分割形成された複数のタンク単
体をそれぞれ離間状態で車体側に配置するとともに、こ
れら各タンク単体相互間を連結パイプによって連結して
なる車両用燃料タンクにおいて、上記各タンク単体が開
断面をもつ同一の車体側フレームに対して固定されると
ともに、上記連結パイプを上記車体側フレームの内部に
没入状態で延設配置し、さらに、上記各タンク単体に
は、上記連結パイプが嵌挿固定される固定パイプと、該
固定パイプ内に摺動自在に嵌挿配置され且つその第１の
位置においては上記固定パイプをタンク単体の内部に連
通させるとともに第２の位置においては該固定パイプと
タンク単体の内部との連通を遮断する可動パイプとを設
け、しかも該可動パイプは上記連結パイプと係合可能と
され該連結パイプが上記固定パイプから引き抜かれる方
向に変位するとき第２の位置に位置設定される如く構成
したことを特徴としている。

（作用） このような構成をもつ本考案では次のような作用が得
られる。

同一の車体側フレームに各タンク単体が固定される
とともに、これらを連結する連結パイプもこの車体側フ
レームの内部に配置されているため、例え車両の衝突に
より車体フレームが変形したとしても、該各タンク単体
及び連結パイプは該車体側フレームと一体的に変形し、
該各タンク単体相互間の相対変位及びこれらと連結パイ
プとの間の相対変位が可及的に抑制される。

連結パイプが車体側フレームの内部に没入状態で配
置されているため、該車体側フレームにより、車体走行
時における連結パイプと略面との干渉あるいは該連結パ
イプへの飛石の衝突等が可及的に防止される。

車両の衝突時等における車体側フレームの変形によ
り連結パイプをタンク単体側の固定パイプから引き抜く
方向に力がかかった場合、該連結パイプの変位に伴って
上記固定パイプ内に嵌挿配置された可動パイプが第１の
位置から第２の位置に移動し、該固定パイプとタンク単
体との連通を遮断するため、例え固定パイプと連結パイ
プとの連結状態が損なわれたとしてもタンク単体内の燃
料がこぼれるというようなことは起こり得ない。

（考案の効果） 従って、本考案の車両用燃料タンク取付構造によれ
ば、 （ｉ） 分割形成された複数のタンク単体を同一の車体
側フレームに固定することで車両衝突時等における該各
タンク単体壮相互間及びこれらと連結パイプとの間の相
対変位を可及的に防止するようにしていることから、該
各タンク単体と連結パイプとの間の連結状態が常時良好
に維持され、衝突時における車両の安全性が向上する。

（ii） また、連結パイプにこれを各タンク単体の固定
パイプから引き抜く方向に力がかかった場合には該連結
パイプの変位に伴って作動する可動パイプによって上記
固定パイプとタンク単体との連通が遮断され、燃料こぼ
れが未然に且つ確実に防止されることから、衝突時にお
ける車両の安全性がさらに高められるものである。

（iii） 車両走行時においては車体側フレームによっ
て連結パイプが保護されその損傷が可及的に防止される
ところから、該連結パイプの信頼性、延いては燃料タン
ク装置全体の信頼性が向上せしめられる。

（実施例） 以下、添付図面を参照して本考案の好適な実施例を説
明する。

第１図及び第２図には、本考案の実施例にかかる燃料
タンク取付構造を備えた車両の後輪側部分が示されてい
る。この車両はエンジン１を後輪11の直前方位置に且つ
車幅方向略中央に位置するようにしてに配置したいわゆ
るミッドシップタイプの車両であって、各図において符
号２は該エンジン１から車体前方に延びるトランスミッ
ション、３は車体両側部に前後方向に向けて配置された
リヤサイドフレームである。

この各リヤサイドフレーム3,3には、リヤフロアパネ
ル５が該各リヤサイドフレーム3,3に跨がるようにして
取り付けられている。このリヤフロアパネル５は、上記
エンジン１の直前方位置において斜めに立ち上がったの
ち、略水平に車体後方に延びており、この立ち上がり部
5aと水平延出部5bとによって上記エンジン１が収容され
たエンジンルームＡとシート10が配置された車室Ｂ側と
に区画されている。尚、シート10は、上記トランスミッ
ション２を車幅方向に跨ぐようにしてその両側にそれぞ
れ配置されている。

また、このリヤフロアパネル５の立ち上が部5aと水平
延出部5bとのコーナ部分には、略Ｌ形断面を有するリヤ
レインフォースメント６が、該コーナ部分との間に閉断
面を構成するように、裏打ち状態で車幅方向に向って取
り付けられている。尚、このリヤレインフォースメント
６の両端部6a,6bは、それぞれ車体両面部に配置したベ
ルトラインレインフォースメント7,7に結合されてい
る。

一方、上記リヤサイドフレーム３の下方側でしかも上
下方向において上記リヤレインフォースメント６とほぼ
対応する位置には、上記エンジン１を支持するためのエ
ンジンマウントフレーム４が車幅方向に向けて配置され
ている。このエンジンマウントフレーム４は、下方に開
口する略形断面を有しており、その両端部4a,4bはこ
れを略Ｚ状に折曲させて上記各リヤサイドフレーム3,3
に対する結合部としている。

さらに、この実施例においては本考案を適用して、こ
のエンジンマウントフレーム４と上記リヤレインフォー
スメント６との間にまたがった状態で後述の分割式の燃
料タンク15を取り付けている。即ち、燃料タンク15は、
相互に分割形成された縦長の第１タンク単体16と第２タ
ンク単体17とを連結パイプ18によって結合して構成され
ている。また、この各タンク単体16,17は、相互に対称
形に形成されており、上記エンジン１及びトランスミッ
ション２を左右方向に挟み且つ上記各シート10,10の直
後方にそれぞれ位置した状態で離間配置されている。

そして、この各タンク単体16,17の車体側への取り付
けは、それぞれそのフランジ20,21の上部20a,21aを上記
リヤレインフォースメント６に、また下部20b,21bを上
記エンジンマウントフレーム４にそれぞれ取付ボルト2
5,25,・・で締結することによって行なわれている。

また、上記連結パイプ18は、各タンク単体16,17の下
端部16a,17a相互間に設けられるが、その場合、本考案
を適用して、これを上記エンジンマウントフレーム４の
傾斜部4c,4dの外側からそれぞれ回り込ませてその内部
に没入させた状態で延設配置している。従って、該連結
パイプ18は、エンジンマウントフレーム４側への配置状
態においては、その両端部を除く大部分が該エンジンマ
ウントフレーム４の内部に収納されるとともに、該エン
ジンマウントフレーム４の下面4eよりも上方に位置する
こととなる。

このようにして燃料タンク15を単体側に取り付ける
と、例えば、車両の衝突時において上記エンジンマウン
トフレーム４が変形したような場合であっても、各タン
ク単体16,17及び連結パイプ18は該エンジンマウントフ
レーム４とほぼ一体的に変形するため、該各タンク単体
16,17相互間、及びこれらと連結パイプ18との間に相対
変位はほとんど発生しない。従って、衝突時における各
タンク単体16,17と連結パイプ18との結合状態の悪化が
可及的に防止され、それだけ車両の安全性あるいは信頼
性が向上するものである。

また、連結パイプ18が外部にむき出し状態ではなく、
エンジンマウントフレーム４の内部に没入状態で配置さ
れているため、衝突時に該連結パイプ18が直接的に損傷
を受るということがなく、また車両走行状態において
も、該連結パイプ18が路面と干渉したりあるいはこれに
飛石が衝突したりすることが可及的に防止され、それだ
け車両の信頼性向上に寄与できるものである。

さらに、この実施例においては本考案を適用して、衝
突時における燃料漏れという事態の発生を未然に且つ確
実に防止するために、上記各タンク単体16,17と連結パ
イプ18との結合部に、第３図に示すような後述のパイプ
接続金具30を取り付けている。

パイプ接続金具30は、これを第１タンク単体16側を例
にとって説明すると、該タンク単体16を貫通して油密的
に溶接固定された固定パイプ31と、該固定パイプ31の内
側に摺動可能に嵌挿された可動パイプ32とを有してい
る。

この可動パイプ32は、上記固定パイプ31よりも所定寸
法だけ長い軸長を有するとともに、その一端側32aはこ
れを径方向外方側にしかも上記固定パイプ31の外周面よ
りも外方に突出するように鍔状に折曲して係止部40と
し、また他端部32b側には盲板33を固定し外盲板33によ
って該他端部32bを閉塞するようにしている。また、こ
の可動パイプ32の外周面のうち、第３図に示すように可
動パイプ32の係止部40が固定パイプ31の外端面31aに当
接した状態（即ち、可動パイプ32が第１タンク単体16の
内側へ一杯に押し込まれた状態であって、実用新案登録
請求の範囲中に言う可動パイプ32の“第１の位置”であ
る）において該第１タンク単体16の内部に露出する位置
には、所定の口径をもった複数の通油口34,34,・・が形
成されている。

さらに、可動パイプ32の伸縮方向において対向する上
記固定パイプ31のフランジ状の内端部31bと、上記盲板3
3の外周部には、それぞれ適度の弾性をもったシール材3
5,36が取り付けられている。そして、この一対のシール
材35,36は、上記可動パイプ32が外方へ引き抜かれた状
態（実用新案登録請求の範囲中に言う可動パイプ32の
“第２の位置”である）においては、これが相互に所定
の圧力でもって当接することによってこれらの間のシー
ル作用を行うことができるようになっている。

このように構成されたパイプ接続金具30を取り付けた
第１タンク単体16においては、先ず該第１タンク単体16
を車体に組み付けた後に、そのパイプ接続金具30部分に
可撓性をもつ連結パイプ18を連結する。この場合、連結
パイプ18を可動パイプ32の鍔部40の外方から固定パイプ
31に嵌挿する時、該鍔部40が固定パイプ31の外形よりも
大きいため、連結パイプ18は必然的に可動パイプ32を第
１タンク単体16の内部側に（矢印ｍ方向）押し込みなが
ら固定パイプ31に嵌挿される。従って、連結パイプ18の
嵌挿完了後、締め具37によって該連結パイプ18を固定し
た状態においては、第３図に示すように可動パイプ32は
第１タンク単体16内に突出し、その各通油口34,34,・・
は該第１タンク単体16内に露出した状態となる（即ち、
可動パイプ32は“第１の位置”に設定される）。

この状態が燃料タンク15の通常の使用状態であり、こ
の場合、燃料は同図に矢印Ｆで示すように、各通油口3
4,34,・・を通って流通することになる。

一方、衝突等により、連結パイプ18にこれをパイプ接
続金具30から引き抜く方向（矢印ｎ方向）に力がかかっ
た場合には、可動パイプ32はその係止部40の係止作用に
よって、該連結パイプ18と一体的に固定パイプ31から外
方に引き出される（即ち、可動パイプ32は“第２の位
置”に設定される）。すると、固定パイプ31側のシール
材35と可動パイプ32側のシール材36とが当接してこの間
のシールを行うとともに、上記各通油口34,34,・・も固
定パイプ31によって閉塞されれる。従って、可動パイプ
32は第１タンク単体16内部との連通が確実に遮断され、
例えば連結パイプ18が完全にパイプ接続金具30から離脱
したとしても第１タンク単体16内の燃料が外部に漏れ出
すということはなく、燃料漏れが未然に且つ確実に防止
できるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例にかかる車両用燃料タンク取付
構造を備えた車両の要部側面図、第２図は第１図のII-I
I矢視図、第３図はタンク単体と連結パイプとの連結部
に用いられるパイプ接続金具の構造説明図である。 １……エンジン ２……トランスミッション ３……リヤサイドフレーム ４……エンジンマウントフレーム ５……リヤフロアパネル ６……リヤレインフォースメント ７……ベルトラインレインフォースメント 10……シート 11……後輪 15……燃料タンク 16,17……タンク単体 18……連結パイプ 30……パイプ接続金具 31……固定パイプ 32……可動パイプ

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】相互に独立する如く分割形成された複数の
   タンク単体をそれぞれ離間状態で車体側に配置するとと
   もに、これら各タンク単体相互間を連結パイプによって
   連結してなる車両用燃料タンクにおいて、 上記各タンク単体が開断面をもつ同一の車体側フレーム
   に対して固定されるとともに、上記連結パイプが上記車
   体側フレームの内部に没入状態で延設配置され、 さらに、上記各タンク単体には、上記連結パイプが嵌挿
   固定される固定パイプと、該固定パイプ内に摺動自在に
   嵌挿配置され且つその第１の位置においては上記固定パ
   イプをタンク単体の内部に連通させるとともに第２の位
   置においては該固定パイプとタンク単体の内部との連通
   を遮断する可動パイプが設けられ、しかも該可動パイプ
   は上記連結パイプと係合可能とされ該連結パイプが上記
   固定パイプから引き抜かれる方向に変位するとき第２の
   位置に位置設定される如く構成されていることを特徴と
   する車両用燃料タンク取付構造。