JP2024523493A - 歯科用セメント組成物、パーツキット及びその使用 - Google Patents

歯科用セメント組成物、パーツキット及びその使用 Download PDF

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Abstract

Figure 2024523493000001
本発明は、歯科用セメント組成物であって、樹脂マトリックスであって、以下を含む(メタ)アクリレート成分:少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分;少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分の間のポリオールスペーサー基であって、少なくとも3,000g/molの分子量Mwを有するポリオールスペーサー基;と、酸性重合性成分、好ましくは酸性(メタ)アクリレート成分と、1,000g/mol未満の分子量Mwを有する非酸性重合性成分、好ましくは非酸性(メタ)アクリレート成分と、を含む樹脂マトリックスと、充填剤と、開始剤系と、任意に添加剤と、を含む歯科用セメント組成物に関する。本発明はまた、歯科用セメント組成物と、歯冠、又は一時的歯科修復物を製造するための、歯科用セメント組成物とは異なる硬化性歯科用組成物と、を含むパーツキットに関する。歯科用セメント組成物は、患者の口腔内の歯科的シチュエーションを一時的に修復するプロセスにおいて使用することが意図される。

Description

本発明は、歯科用セメント組成物、特に一時的使用のための歯科用セメント組成物に関する。歯科用セメント組成物は、高分子量を有する(メタ)アクリレート成分を含む。
本発明はまた、そのような歯科用セメント組成物を含むパーツキット、及び患者の口腔内の歯科的シチュエーションに歯科修復物を一時的に固定するプロセスにおいて使用するための歯科用セメント組成物に関する。
一時的歯科用セメントは、一時的歯科修復物を患者の口腔内の調製された歯の表面に、中間期間、すなわち永久歯科修復物が利用可能になるまでの期間、固定するために使用される。
この機能を果たすために、調製された歯の表面への一時的歯科用セメントの接着性は、高すぎてはならない。そうでなければ、歯科医が一時的歯科修復物を除去することが困難な場合がある。
一方、様々な一時的歯科用セメントが市販されている。それらのいくつかは、酸化亜鉛に基づき、オイゲノールを含有するか、又はオイゲノールを含まない。
オイゲノール系一時的セメントが不快な臭いを有することを報告する患者もいる。更に、調製された歯の表面上のオイゲノール系一時的セメントの残留物は、永久修復物を固定するために後で使用される歯科用樹脂セメントの硬化反応を阻害する可能性がある。
(メタ)アクリレート化学に基づく一時的歯科用セメントも知られている。
しかしながら、オイゲノールを含まない歯科用セメント及び(メタ)アクリレート系歯科用セメントは、除去すると、歯の表面上に不定の破砕パターンを示すことが多く、これは、修復物の除去中のセメント残留物が歯の表面上及び修復物内の両方に残ることを意味する。これは、その後の永久的なセメント合着を成功させるために、歯の表面の時間のかかる洗浄手順をもたらす。加えて、(メタ)アクリレート系の一時的セメントの封止特性も、時には不十分であると考えられ、これにより一時的修復物の装着時間中に、調製された歯の表面と歯科用セメントとの間の界面に汚染物質を侵入させてしまう。
米国特許第2014/0213686(A1)号(Falsafiら)は、一時的結合を形成するための歯科用セメント組成物であって、水、開始剤、還元剤及び第1の充填剤を含む第1の部分と、モノマー分子当たり少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有するモノマー、酸化剤及び第2の充填剤を含む第2の部分と、一時的結合を形成するための歯科用セメント組成物の第1の部分又は第2の部分の一方に存在する多価アルコールの接着低減成分と、を含む、歯科用セメント組成物を記載している。
米国特許第2017/0014312(A1)号(Suzuki)は、(a)25℃~50℃のガラス転移温度を有する(メタ)アクリル酸エステルホモポリマー、そのホモポリマーが37℃より高いガラス転移温度を有する(メタ)アクリル酸エステルのランダムコポリマー、又はその両方と、そのホモポリマーが37℃より低いガラス転移温度を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む(メタ)アクリル酸エステルポリマーであって、(a)25℃~50℃のガラス転移温度を有し、動的機械分析によって決定される37℃で0.10以上のtanδを有し、融点を有さない(メタ)アクリル酸エステルポリマーと、(b)(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、又はその両方を含む重合性モノマーと、(c)重合開始剤と、を含む歯科用組成物を記載している。
欧州特許第0988851(A2)号(Kerr)は、(a)多官能性オリゴマー及びプレポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの結合剤と、(b)少なくとも1つの超微粒子状充填剤と、(c)少なくとも1つの重合開始系と、を含む透明なエラストマー一時的歯科用セメント組成物を記載している。
米国特許第2012/213832(A1)号(Oriら)は、(A)重合性モノマー及び(B)有機アミン系重合開始剤を含む歯科用硬化性組成物であって、(A’)17個以上の原子の鎖長を有する長鎖重合性モノマーが成分(A)中に含有され、及び/又は(C)軟質樹脂材料が組成物中に含有される、歯科用硬化性組成物を記載している。硬化性組成物は容易に除去可能であると言われている。
代替の又は改良された一時的歯科用セメント組成物が依然として必要とされている。
歯科用セメント組成物は、調製された歯の表面に対して十分な接着性を有するべきである。
歯科用セメント組成物はまた、一時的歯科修復物への十分な接着性も有するべきである。
理想的には、歯科用セメント組成物は、調製された歯の表面から容易に除去され、必要に応じて一時的修復物中に留まるべきである。
可能であれば、歯科用セメント組成物は良好な流動特性を有するべきである。
更に、可能であれば、歯科用セメント組成物は本質的に軟化剤を含まないべきである。
一実施形態では、本発明は、歯科用セメント組成物であって、
樹脂マトリックスであって、
以下を含む(メタ)アクリレート成分:
少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分;
少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分の間のポリオールスペーサー基であって、少なくとも2,500g/mol、好ましくは少なくとも3,000g/molの分子量Mwを有するポリオールスペーサー基;と、
酸性重合性成分、好ましくは酸性(メタ)アクリレート成分と、
1,000g/mol未満の分子量Mwを有する非酸性重合性成分、好ましくは非酸性(メタ)アクリレート成分と、
を含む、樹脂マトリックスと、
充填剤と、
開始剤系と、
任意に添加剤と、
を含む、歯科用セメント組成物を特徴とする。
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される歯科用セメント組成物と、歯冠、又は一時的歯科修復物を製造するための歯科用セメント組成物とは異なる硬化性歯科用組成物と、を含むパーツキットに関する。
本発明の更なる実施形態は、患者の口腔内の歯科的シチュエーションを修復するプロセスにおいて使用するための、本明細書に記載される歯科用セメント組成物に関する。
別段の定義のない限り、本明細書では、以下の用語は、以下に記載の意味を有するものとする。
「一成分組成物」とは、保存及び使用中に、上記成分の全てが組成物中に存在することを意味する。つまり、適用又は使用される組成物は、使用前に組成物の異なる部分を混合することによって調製されるものではない。一成分組成物に対し、これらの組成物は二成分組成物と呼ばれることが多い(例えば、粉末/液体、液体/液体、又はペースト/ペースト組成物として処方される)。
「二成分組成物」とは、成分が、使用前に互いに分離された部分のパーツ又は系のキットとして提供されることを意味する。使用のためには、それぞれの成分又は部分を混合する必要がある。
「歯科用組成物」又は「歯科で使用するための組成物」又は「歯科分野で使用されることになる組成物」は、歯科分野で使用することのできる任意の組成物である。この点において、組成物は患者の健康にとって有害であってはならず、したがって、組成物から漏出し得る有害成分及び有毒成分を含んではならない。歯科用組成物の例としては、永久及び暫間クラウン及びブリッジ材、人工クラウン、前歯又は奥歯用充填材、接着剤、ミルブランク、ラボ材料、合着材、並びに歯科矯正用器具が挙げられる。歯科用組成物は、典型的には硬化性組成物であり、これは、30分、又は20分、又は10分の時間枠内での、15℃~50℃、又は20℃~40℃の範囲の温度を含む周囲条件において硬化され得る。これよりも高い温度は、患者に痛みをもたらすことがあり、患者の健康に有害な場合があるため、推奨されない。歯科用組成物は、典型的には、同程度の小容量、すなわち、0.1mL~100mL、又は0.5mL~50mL、又は1mL~30mLの範囲の容量で、施術者に提供される。したがって、有用なパッケージング用デバイスの保存容量は、これらの範囲内である。
「一時的セメント」という用語は、通常の口腔使用条件下で、歯科補綴装置、例えばクラウンなどの歯科用材料を、調製された歯又はインプラントなどの歯科構造上の適所に装置の有効寿命の間、保持することができ、更に、歯又はインプラントに損傷を与えることなく、必要なときに装置の容易な除去を容易にするセメントを指す。したがって、そのような一時的セメントは、容易な除去を可能にする。一時的セメントは、典型的には、1日~6ヶ月の期間にわたって使用される。
用語「化合物」又は「成分」は、特定の分子的同一性を有する化学物質であるか、又はそのような物質の混合物から作製される化学物質であり、例えば、ポリマー性物質である。
「モノマー」は、オリゴマー若しくはポリマー又は架橋ネットワークに重合させることで分子量を増加させ得る、重合性基((メタ)アクリレート基を含む)を有する化学式により特徴付けることができる任意の化学物質である。通常、モノマーの分子量は、与えられた化学式に基づいて単純に計算することができる。
本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す短縮語である。例えば、「(メタ)アクリルオキシ」基は、アクリルオキシ基(すなわち、CH=CH-C(O)-O-)及び/又はメタクリルオキシ基(すなわち、CH=C(CH)-C(O)-O-)のいずれかを指す短縮語である。同様に、(メタ)アクリレートは、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を指す省略語である。
「固化性成分若しくは材料」又は「重合性成分」は、例えば、重合を起こす加熱、化学的架橋、放射線誘発性重合、又はレドックス開始剤の使用による架橋によって硬化又は固化し得る、任意の成分である。固化性成分は、1つのみ、2つ、3つ、又はそれ以上の重合性基を含有し得る。重合性基の典型例としては、特に、(メタ)アクリレート基中に存在するビニル基等の不飽和炭素基が挙げられる。
「酸性重合性成分」又は「エチレン性不飽和酸性成分」は、エチレン性不飽和官能基並びに酸及び/又は酸前駆体官能基を有する、モノマー、オリゴマー、及びポリマーを含むことを意図する。酸性前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロリン酸塩が挙げられる。酸性基は、好ましくは、-COOH又は-CO-O-CO-等の1つ以上のカルボン酸残基、-O-P(O)(OH)OH等のリン酸残基、C-P(O)(OH)OH等のホスホン酸残基、-SOH等のスルホン酸残基、又は-SOH等のスルフィン酸残基を含む。
「充填剤」は、固化性組成物中に存在する全ての充填剤を含む。1種類の充填剤のみを用いてもよく、又は異なる充填剤の混合物を用いてもよい。
「溶媒」は、周囲条件(例えば、23℃)で、成分が少なくとも部分的に分散又は溶解可能な液体を意味する。溶媒は、典型的には、約5Pa・s未満、又は約1Pa・s未満、又は約0.1Pa・s未満の粘度を有する。
「ペースト」は、液体に分散した、軟らかく、粘稠な固体の塊(すなわち、粒子)を意味する。
「粒子」は、幾何学的に決定できる形状を有する固体である物質を意味する。その形状は規則的であっても不規則的であってもよい。粒子は、典型的には、例えば粒径及び粒径分布に関して分析され得る。
「接着剤」又は「歯科用接着剤」とは、「歯科用材料」(例えば、「修復材」、歯科矯正用装具(例えば、ブラケット)、又は歯科矯正用接着剤)を歯牙表面に接着させるために、歯構造体(例えば、歯)に対し前処理として使用される組成物を指す。「歯科矯正用接着剤」とは、歯牙(例えば、歯)表面に歯科矯正用装具を接着させるために用いられる組成物を指す。一般的に、「歯科矯正用接着剤」の歯牙表面への接着性を高めるために、例えば、エッチング、下塗り、及び/又は接着剤の適用によって歯牙表面を前処理する。
「歯牙表面」又は「歯表面」とは、歯構造体(例えば、エナメル質、象牙質、及びセメント質)及び骨の表面を指す。
「自己接着性」組成物とは、歯牙表面をプライマー又はボンディング材で前処理せずとも歯牙表面に接着できる組成物を指す。好ましくは、自己接着性組成物は、別のエッチング材を使用しないセルフエッチング性組成物でもある。
「自己硬化組成物」とは、放射線を適用せずともレドックス反応によって硬化する組成物という意味である。
「放射線硬化性」は、成分(又は場合によっては、組成物)が、放射線の適用、好ましくは、周囲条件下及び適切な時間内(例えば、約60、30、又は10秒以内)で、可視光スペクトルの波長の電磁放射線の適用によって硬化させることができることを意味する。
「周囲条件」は、本明細書に記載の組成物が、保存及び取り扱い中に通常さらされる条件を意味する。周囲条件は、例えば、圧力900mbar~1,100mbar、温度10℃~40℃及び相対湿度10%~100%としてもよい。実験室では、周囲条件は、典型的には、20℃~25℃及び海面の高度で1,000mbar~1,025mbarに調整される。
組成物が特定の成分を本質的な特徴として含有しない場合、この組成物はこの成分を「本質的又は実質的に含まない」。したがって、この成分は、それだけで、又は他の成分若しくは他の成分の含有物質との組み合わせでのいずれによっても、組成物に意図的に添加されない。特定の成分を本質的に含まない組成物は、通常はその成分を全く含有しない。しかし、例えば用いられる原料に含有される不純物のために、少量のこの成分が存在するのを回避できないこともある。
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、交換可能に使用される。また、本明細書において、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
用語に「(s)」を付加することは、その用語が単数形及び複数形を含むべきであることを意味する。例えば、「添加剤(additive(s))」という用語は、1つの添加剤及び2つ以上の添加剤(例えば2つ、3つ、4つなど)を意味する。
特に指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている、例えば下に記載するものなどの含有物質(ingredient)の量、物性の測定値を表す全ての数は、全ての例で「約」という用語により修飾されていると理解されるべきである。
「含む」又は「含有する」という用語及びそれらの変形は、それらの用語が本明細書及び特許請求の範囲で記載される場合、限定的な意味を有しない。「から本質的になる」は、特定の更なる成分、つまり物品又は組成物の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさない成分が存在し得ることを意味する。「からなる」は、更なる成分が存在するべきではないことを意味する。「含む」という用語はまた、「から本質的になる」及び「からなる」という用語を含むものとする。
本明細書に記載の歯科用セメント組成物を使用したプルオフ試験後の複合クラウンの内表面を示す。
本明細書に記載された歯科用セメント組成物は、いくつかの有利な特性を有する。
歯科用セメント組成物は、象牙質及び一時的歯科修復物に対して適切な接着性を示し、一時的歯科修復物に対する接着性は象牙質に対する接着性よりも高い。これは、調製された歯の表面からの一時的歯科修復物のより容易な除去を可能にする。
歯科用セメント組成物はまた、除去プロセス中に硬化した組成物の破壊のリスクを低減する適切な引張強度を有する。
したがって、一時的修復物を除去した後、歯科用セメント組成物は主に一時的修復物中に残り、したがって、最終修復物の永久的セメント合着の前の歯表面の清浄化手順が簡略化される。
所望であれば、これは、いわゆるクラウンプルオフ試験を行うことによって評価することができる。
歯科用セメント組成物はまた、破断点伸びによって決定され得る適切な可撓性を示す。高分子量(メタ)アクリレート成分の存在により、歯科用セメント組成物は、硬化後に一種の「剥離効果」を示す。
歯科用セメント組成物はまた、一時的修復物の装着時間中に良好な封止特性も示す。
歯科用セメント組成物は(メタ)アクリレート成分に基づくために、典型的には(メタ)アクリレート成分も同様に含む、後に使用される永久歯科用樹脂セメントに対する不適合性のリスクが低減される。
光開始剤が存在する場合、歯科用セメント組成物の硬化反応が光の適用によって引き起こされ、更に調節され得るので、過剰な歯科用セメント組成物はまた、使用後により容易に除去され得る。
(メタ)アクリレート部分の間にエーテル単位を有する高分子ポリオールスペーサーが存在するため、歯科用セメント組成物は良好な流動特性を示す。
良好な湿潤挙動は、歯科用セメント組成物が適用された歯表面のより良好な封止に寄与し得る。
更に、高分子量(メタ)アクリレート成分の使用により、軟化剤が存在しないか、又は少量しか存在しない場合であっても、硬化組成物の十分な可撓性が既に達成され得ることが見出された。
本発明は、歯科用セメント組成物に関する。
歯科用セメント組成物は、典型的には、歯科修復物を患者の口腔内の歯科的シチュエーションに一時的に固定するために使用される。
歯科用セメント組成物は樹脂マトリックスを含む。
歯科用セメント組成物は、ポリエーテルポリオールスペーサー基を含む(メタ)アクリレート成分を含む。
(メタ)アクリレート成分は、典型的には、組成物全体の重量に対して、重量%で、次の量:すなわち、下限:少なくとも30重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも50重量%;上限:最大80重量%、又は最大75重量%、又は最大70重量%、範囲:30重量%~80重量%又は40重量%~75重量%又は50重量%~70重量%で存在する。
(メタ)アクリレート成分は、少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分を含む。
一実施形態によれば、(メタ)アクリレート成分は、2つ以下の(メタ)アクリレート部分を含んでもよい。
2つ以下の(メタ)アクリレート部分を有する(メタ)アクリレートを使用することは、硬化反応中に形成されるネットワークの架橋密度が、3つ以上の重合性部分を有する(メタ)アクリレート成分が使用されるシチュエーションと比較して低いので、有利であり得る。
(メタ)アクリレート成分は、ポリオールスペーサー基を更に含む。
ポリオールスペーサー基は、好ましくはポリエーテルポリオールであり、少なくとも2,500g/mol又は少なくとも3,000g/mol又は少なくとも3,500g/mol又は少なくとも4,000g/molの分子量Mwを有する。
分子量は、典型的には、2,500g/mol~20,000g/mol又は3,000g/mol~15,000g/mol又は3,500g/mol~12,000g/mol又は4,000g/mol~10,000g/molの範囲である。
所望であれば、分子量は、DIN EN ISO4692-2に従って出発OH末端ポリエーテルのOH価の滴定によって決定することができる。次いで、鎖延長及び/又は(メタ)アクリレート官能基(例えば、イソシアナトエチルメタクリレート)を導入するために使用される分子の分子量を数学的に加算することによって、モル質量を計算することができる。
好ましくは本明細書に記載される分子量を有するポリエーテルポリオールスペーサー基を含む(メタ)アクリレートを使用することは、硬化した歯科用セメント組成物にエラストマー特性を付与することに寄与するので、有益であることが見出された。
ポリオールスペーサー基は、以下の式
Figure 2024523493000002
(式中、
n=1~6、好ましくは1~4、特に1であり、nは鎖内で変化することができ、
m=1~6、好ましくは1~4、特に3であり、mは鎖内で変化することができ、
k、l=2~500、好ましくは4~250、特に10~200であり、
R’、R’’=H、メチル、エチル、好ましくはR’=R’’=Hである)を有することができる。
(メタ)アクリレート成分の好ましい実施形態としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラメチレンオキシド又はそれらの混合物に基づく繰り返し単位を有するポリオールが挙げられる。
ポリオールスペーサー基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン及び/又はエチレンオキシドの、強酸、例えばフッ化ホウ素エーテラートの存在下での単独重合又は共重合によって製造することができる。
好適なポリオール成分も市販されており、例えば、Acclaim(商標)Polyol 4200(Covestro)又はAcclaim(商標)Polyol 8200(Covestro)である。
一実施形態によれば、ポリオールスペーサー基を含む(メタ)アクリレート成分は、ウレタン基を更に含むことができ、したがってウレタン(メタ)アクリレート成分とみなすことができる。
ウレタン(メタ)アクリレート成分は、少なくとも3,000g/mol又は少なくとも4,000g/molの分子量(Mw)を有し得る。
分子量は、典型的には、3,000g/mol~22,0000g/mol又は3,000g/mol~17,0000g/mol又は4,000g/mol~15,0000g/mol又は4,000g/mol~10,000g/molの範囲である。
ウレタン(メタ)アクリレートは、少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分を含む。
ウレタン(メタ)アクリレートは、少なくとも2つのウレタン部分を含む。
一実施形態によれば、ウレタン(メタ)アクリレートは、6個又は4個又は2個を超えるウレタン部分を含まない。
ウレタン部分の数が増加すると、硬化した歯科用セメント組成物はより脆くなり、弾性が低下することが見出された。
本発明による(メタ)アクリレートは、以下の構造:
Figure 2024523493000003

(式中、
MAは、アクリレート又はメタクリレート部分であり、
Lは、ウレタン、エステル又はエーテル結合であり、
Uは、ウレタン部分(O-CO-NH)であり、
S1は、少なくとも2,500g/molの分子量Mwを有するポリエーテルポリオールであり、
S2は、(メタ)アクリレート部分とウレタン、エステル又はエーテル部分とを連結するスペーサー基である。
xは、1及び2から独立して選択され、好ましくは1である)を有することができる。
スペーサー基S2は、C2~6アルキル鎖を含んでもよい。(メタ)アクリレート成分の特に好ましい実施形態は、実施例のセクションに記載されている。
(メタ)アクリレート成分は、種々の反応スキームによって製造することができる。
1つの反応スキーム(構造I)によれば、(メタ)アクリレート成分は、好ましくは本明細書に記載の2つの末端OH部分を有するポリエーテルポリオール成分を、イソシアネート部分を有する(メタ)アクリレート成分又は(メタ)アクリル酸成分、好ましくは酸無水物又は酸塩化物、のいずれかと反応させることによって得ることができるか、又は得られる。
別の選択肢(構造II)は、2つの末端OH部分を有する2つのポリエーテルポリオールをジイソシアネート(モル比OH:NCO=2:1)と結合させ、残りのOH基をイソシアネート部分を有する(メタ)アクリレート成分又は(メタ)アクリル酸成分、好ましくは酸無水物又は酸塩化物、のいずれかと反応させることによるものである。
更なる選択肢(構造III)は、2つの末端OH部分を有するポリエーテルポリオール成分を過剰のジイソシアネート(例えば、モル比OH:NCO=2:3)と反応させ、残りのNCO基を例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと反応させてウレタン-(メタ)アクリレートを生成することによるものである。実施例を実験のセクションに示す。
本明細書に記載の歯科用セメント組成物は、酸性重合性成分を含む。所望であれば、酸性部分を有する1つ以上の重合性成分が存在してもよい。
酸部分を有する重合性成分は、典型的には以下の式
BC
(式中、
Aは、(メタ)アクリル部分などのエチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)他の官能基(例えば、ハロゲン化物(Cl、Br、Iを含む)、OH、又はそれらの混合物)で任意に置換された直鎖又は分枝鎖C~C12アルキル、(ii)他の官能基(例えば、ハロゲン化物、OH、又はそれらの混合物)で任意に置換されたC~C12アリール、(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/又はスルホニル結合によって互いに結合している4個~20個の炭素原子を有する有機基などのスペーサー基であり、
Cは酸性基、又は酸無水物などの酸性基の前駆体であり、
m、nは独立して、1、2、3、4、5、又は6から選択され、
酸性基は、1つ以上の、-COOH若しくは-CO-O-CO-などのカルボン酸残基、-O-P(O)(OH)OHなどのリン酸残基、C-P(O)(OH)(OH)などのホスホン酸残基、-SOHなどのスルホン酸残基、又は-SOHなどのスルフィン酸残基を含む)によって表すことができる。
酸部分を有する重合性成分の例としては、グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシプロピルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシ-オクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、カプロラクトンメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ-又はトリ-メタクリレート、ポリ(メタ)アクリル化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリカルボキシル-ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリル化ポリホウ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば水と容易に反応して、酸ハロゲン化物又は無水物などの上述の特定の例を形成することができる酸部分を有するこれらの固化性成分の誘導体もまた、企図される。
また、(メタ)アクリル酸、芳香族の(メタ)アクリル化された酸(例えば、メタクリレート化トリメリト酸)などの不飽和カルボン酸のモノマー、オリゴマー、及びポリマー、並びにこれらの無水物を使用することもできる。
これらの化合物の一部は、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との間の反応生成物として得ることができる。酸官能性成分及びエチレン性不飽和成分の両方を有するこの種の追加の化合物は、米国特許第4,872,936号(Engelbrecht)及び同第5,130,347号(Mitra)に記載されている。エチレン性不飽和部分及び酸部分の両方を含有する多種多様のこのような化合物を使用することができる。所望により、このような化合物の混合物を使用することができる。
(メタ)アクリレート官能化ポリアルケン酸の使用は、それらの成分が歯牙硬組織への接着性、均質な層の形成、粘度、又は水分耐性等の特性を改善させるのに有用であることが見出されているため、多くの場合好ましい。
一実施形態によれば、組成物は、(メタ)アクリレート官能化ポリアルケン酸、例えば、AA:ITA:IEM(ペンダントメタクリレートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー)を含む。
これらの成分は、例えば、AA:ITAコポリマーを、2-イソシアネートエチルメタクリレートと反応させて、コポリマーの酸基の一部をペンダントメタクリレート基に変換させることにより、作製することができる。これらの成分の製造についてのプロセスは、例えば、米国特許第5,130,347号(Mitra)の実施例11に記載されており;並びに米国特許第4,259,075号(Yamauchiら)、同第4,499,251号(Omuraら)、同第4,537,940号(Omuraら)、同第4,539,382号(Omuraら)、同第5,530,038号(Yamamotoら)、同第6,458,868号(Okadaら)、及び欧州特許出願公開第0712622(A1)号(Tokuyama Corp.)、及び同第1051961(A1)号(Kuraray Co.,Ltd.)に説明されているものがある。
存在する場合、酸性部分を有する重合性成分は、水と接触させた場合に組成物のpH値が6未満、又は4未満、又は2未満となるような量で存在すべきである。
存在する場合、酸性部分を有する重合性成分は、典型的には、組成物全体の重量に対する重量%で、次の量:すなわち、下限:少なくとも3重量%又は少なくとも5重量%又は少なくとも8重量%;上限:最大40重量%又は最大30重量%又は最大20重量%;範囲:3重量%~40重量%又は5重量%~30重量%又は8重量%~20重量%で存在する。
樹脂マトリックスは、1,000g/mol未満の分子量Mを有する非酸性重合性成分を更に含む。
本明細書に記載される歯科用セメント組成物は、非酸性重合性成分、すなわち、酸性部分を含まない重合性成分を更に含む。所望であれば、酸性部分を有しない1つ以上の重合性成分が存在してもよい。
非酸性重合性成分は、典型的には、エチレン性不飽和、モノマー又はオリゴマー又はポリマーを含むフリーラジカル重合性材料である。
酸性部分を有しない好適な重合性成分は、以下の式:
BA
(式中、
Aは、(メタ)アクリル部分などのエチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)他の官能基(例えば、ハロゲン化物(Cl、Br、Iを含む)、OH、若しくはそれらの混合物)で任意に置換された直鎖若しくは分枝鎖C~C12アルキル、(ii)他の官能基(例えば、ハロゲン化物、OH、若しくはそれらの混合物)で任意に置換されたC~C12アリール、又は(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/若しくはスルホニル結合によって互いに結合している4個~20個の炭素原子を有する有機基から選択され、
m、nは独立して、0、1、2、3、4、5、又は6から選択されるが、ただしn+mは0より大きく、つまり少なくとも1つのA基が存在する)によって特徴付けることができる。
そのような重合性材料としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)との反応生成物であるUDMAと呼ばれるジウレタンジメタクリレート(異性体の混合物、例えば、Rohm Plex6661-0)、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビス[1-(2-(メタ)アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシ-フェニル-ジメチル-メタン(BisGMA)、ビス[1-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリメタクリレートなどの、モノ-、ジ-、又はポリ-アクリレート及びメタクリレート;分子量200~500のポリエチレングリコールのビス-アクリレート及びビス-メタクリレート、アクリル化モノマー(米国特許第4,652,274号を参照)、及びアクリル化オリゴマー(米国特許第4,642,126号を参照)の共重合性混合物;並びにスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、及びジビニルフタレートなどのビニル化合物;ウレタン、尿素、又はアミド基を含む多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。所望であれば、これらのフリーラジカル重合性材料のうちの2つ以上の混合物を使用することができる。
存在し得る更なる重合性成分としては、エトキシ化ビス-フェノールAのジ(メタ)アクリレート、例えば、2,2’-ビス(4-(メタ)アクリルオキシテトラエトキシフェニル)プロパンが挙げられる。使用されるモノマーは、更に、[アルファ]-シアノアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、及びソルビン酸のエステルであり得る。
米国特許第4,795,823号(Gasserら)に記載のメタクリルエステル、例えば、ビス[3[4]-メタクリル-オキシメチル-8(9)-トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチルトリグリコレート等を使用することも可能である。2,2-ビス-4(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニルプロパン(Bis-GMA)も好適である。
これらのエチレン性不飽和モノマーは、単独で又は他のエチレン性不飽和モノマーと組み合わせて歯科用組成物に用いることができる。
ヒドロキシル部分及び/又は1,3-ジケト部分を含む重合性モノマーもまた、加えることができる。
好適な化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、並びに更に、1,2-又は1,3-及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル-1,3-ジ(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-プロピル-1,2-ジ(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-1,2-ジヒドロキシプロピルアミン、N-(メタ)アクリロイル-1,3-ジヒドロキシプロピルアミン、フェノール及びグリシジル(メタ)アクリレートの付加物、例えば、1-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
1,3-ジケト基を有する重合性成分の例は、アセトアセトキシエチル-メタクリレート(AAEMA)である。所望により、これらの成分のうちの1つ以上の混合物を用いてもよい。
これらの成分の添加は、レオロジー特性を調整するため又は機械的特性に影響を及ぼすために使用してもよい。
非酸性重合性成分は、典型的には、組成物全体の重量に対して、重量%で、次の量:すなわち、下限:少なくとも2重量%又は少なくとも5重量%又は少なくとも8重量%;上限:最大30重量%、又は最大25重量%、又は最大20重量%、範囲:2重量%~30重量%又は5重量%~24重量%又は8重量%~20重量%で存在する。
(メタ)アクリレート成分の、酸性重合性成分に対する比は、典型的には、重量%で2:1~20:1の範囲である。そのような比を使用することは、歯牙構造への十分な接着性と、一片で除去される前提条件であるセメントの高い可撓性との間の良好なバランスを可能にするため、有利であり得る。
(メタ)アクリレート成分の、非酸性重合性成分に対する比は、典型的には、重量%で1:1~20:1の範囲である。そのような比を使用することは、歯及び修復物表面の両方の湿潤を確実にするために、セメントのレオロジー特性と流動特性との間の良好なバランスを提供し得るので、有利であり得る。
酸性重合性成分の、非酸性重合性成分に対する比は、典型的には、重量%で1:10~5:1の範囲である。そのような比を使用することは、接着性と機械特性との間の良好なバランスを可能にし得るので、有利であり得る。
歯科用セメント組成物は、更に1つ以上の充填剤を含んでもよい。
充填剤の添加は、例えば、粘度のようなレオロジー特性を調整するのに有益であり得る。充填剤の含有量もまた、典型的には、硬度又は曲げ強度のような、固化後の組成物の物性に影響する。
充填剤粒子のサイズは、樹脂マトリックスを形成する固化性成分との均質混合物を得ることができる程度とすべきである。充填剤の平均粒径は、5nm~100μmの範囲であってもよい。所望であれば、充填剤粒子の粒径の測定は、実施例のセクションに記載されるように行うことができる。
充填剤は、典型的には、歯科用セメント組成物の重量に対する重量%で、次の量:すなわち、下限:少なくとも5又は少なくとも8又は少なくとも10重量%;上限:最大55又は最大50又は最大45重量%;範囲:5重量%~55重量%又は8重量%~50重量%又は10重量%~45重量%で存在する。
充填剤は、典型的に非酸反応性充填剤を含む。非酸反応性充填剤は、酸との酸/塩基反応を受けない充填剤である。
有用な非酸反応性充填剤としては、ヒュームドシリカ、非酸反応性フルオロアルミノシリケートガラス、石英、粉末ガラス、CaFなどの非水溶性フッ化物、ケイ酸、特に発熱性ケイ酸などのシリカゲル及びその顆粒、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、モレキュラーシーブを含むゼオライトに基づく充填剤が挙げられる。
好適なフュームドシリカとしては、例えば、Evonikから入手可能な商品名Aerosil(商標)シリーズOX-50、-130、-150、及び-200、Aerosil(商標)R8200、-R805で販売されている製品、Cabot Corp(Tuscola)から入手可能なCAB-O-SIL(商標)M5、並びにWackerから入手可能なHDKタイプ、例えば、HDK(商標)-H2000、HDK(商標)H15、HDK(商標)H18、HDK(商標)H20、及びHDK(商標)H30が挙げられる。
また使用することができ、歯科用材料に放射線不透過性をもたらす充填剤としては、重金属酸化物及びフッ化物が挙げられる。本明細書で使用する場合、「放射線不透過性」は、従来の方法で標準的な歯科用X線装置を使用して、歯構造体と区別される、固化した歯科用材料の能力を表す。歯科用材料における放射線不透過性は、X線を使用して歯の状態を診断する、ある特定の場合に有利である。例えば、放射線不透過材料は、充填物を囲んでいる歯組織に形成されている場合がある二次齲蝕の検出を可能とする。
約28よりも大きい原子番号を有する重金属の酸化物又はフッ化物が好ましい場合がある。重金属酸化物又はフッ化物は、それを分散させる固化樹脂に望ましくない色又は濃淡が付与されないように選択すべきである。例えば、鉄及びコバルトは、歯科用材料の歯の中間色に、黒ずんだ色及び明暗差のある色を付与するので好ましくない。より好ましくは、重金属酸化物又はフッ化物は、30よりも大きい原子番号を有する金属の酸化物又はフッ化物である。好適な金属酸化物は、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオビウム、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド元素(すなわち、端値を含む57~71の範囲の原子番号を有する元素)、セリウム、及びそれらの組み合わせの酸化物である。好適な金属フッ化物は、例えば、三フッ化イットリウム及び三フッ化イッテルビウムである。最も好ましくは、30超72未満の原子番号を有する重金属の酸化物及びフッ化物が、任意に本発明の材料に含められる。放射線不透過性を付与する特に好ましい金属酸化物としては、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。重金属酸化物粒子は凝集してもよい。この場合、凝集した粒子の平均直径は200nm以下であることが好ましい。
放射線不透過性を上昇させる他の好適な充填剤は、バリウム及びストロンチウムの塩、とりわけ、硫酸ストロンチウム及び硫酸バリウムである。
また使用することのできる充填剤としては、ナノサイズシリカなどのナノサイズ充填剤が挙げられる。好適なナノサイズ粒子は、典型的には、5nm~80nmの範囲の平均粒径を有する。
好ましいナノサイズシリカは、製品名NALCO(商標)COLLOIDAL SILICASでNalco Chemical Co.(Naperville,Ill.)から市販されているもの(例えば、好ましいシリカ粒子は、NALCO(商標)製品1040、1042、1050、1060、2327及び2329を使用して得ることができる)、Nissan Chemical America Company、Houston、Texasから入手可能なもの(例えば、SNOWTEX-ZL、-OL、-O、-N、-C、-20L、-40及び-50)、Admatechs Co.,Ltd.、Japanから市販されているもの(例えば、SX009-MIE、SX009-MIF、SC1050-MJM及びSC1050-MLV)、Grace GmbH&Co.KG、Worms、ドイツから市販されているもの(例えば、製品名LUDOX(商標)、例えば、P-W50、P-W30、P-X30、P-T40及びP-T40ASで入手可能なもの)、Akzo Nobel Chemicals GmbH、Leverkusen、ドイツから市販されているもの(例えば、製品名LEVASIL(商標)、例えば、50/50%、100/45%、200/30%、200A/30%、200/40%、200A/40%、300/30%及び500/15%で入手可能なもの)、並びにBayer Material Science AG、Leverkusen、ドイツから市販されているもの(例えば、製品名DISPERCOLL(商標)S、例えば、5005、4510、4020及び3030で入手可能なもの)である。
歯科用材料に入れる前にナノサイズシリカ粒子を表面処理することにより、樹脂中により安定に分散させることができる。好ましくは、表面処理は、粒子が硬化性樹脂中に良好に分散されるようにナノサイズ粒子を安定化させ、その結果組成物を実質的に均質にする。
したがって、シリカ粒子及び他の好適な非酸反応性充填剤を、樹脂相溶化表面処理剤で処理してもよい。表面処理剤又は表面改質剤としては、シラン処理剤が挙げられる。特に好ましいのは、硬化性樹脂と反応しないシラン処理剤である。この種類のシランの例としては、例えば、アルキル若しくはアリールポリエーテル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アリール、ヒドロキシアリール、又はアミノ官能性シランが挙げられる。
非酸反応性充填剤は、典型的には、歯科用セメント組成物の重量に対する重量%で、次の量:すなわち、下限:少なくとも5又は少なくとも8又は少なくとも10重量%;上限:最大50又は最大45又は最大40重量%;範囲:5重量%~50重量%又は8重量%~45重量%又は10重量%~40重量%で存在する。
歯科用セメント組成物はまた、酸反応性充填剤を含有してもよい。
酸反応性充填剤の存在は、硬化プロセス中にpH値を調節することによって、歯科用セメント組成物の硬化挙動及び接着性を調整するのに役立ち得る。
使用できる酸反応性充填剤としては、例えばカルシウム、マグネシウム又は亜鉛の金属酸化物及び水酸化物が挙げられ、水酸化カルシウムの使用が好ましい場合もある。
酸反応性充填剤は、典型的には、歯科用セメント組成物の重量に対する重量%で、次の量:すなわち、下限:少なくとも0又は少なくとも0.1又は少なくとも0.2重量%;上限:最大5又は最大4又は最大3重量%;範囲:0重量%~5重量%又は0.2重量%~4重量%又は0.3重量%~3重量%で存在する。
歯科用セメント組成物は、開始剤系を更に含む。開始剤系は、歯科用セメント組成物の重合性成分の硬化反応を開始するのに好適である。
開始剤系及びそのそれぞれの成分は、適切なフリーラジカル反応速度を得るのに十分な量で存在する。歯科用セメント組成物は酸性成分を含有するので、開始剤系は酸性環境で機能することができなければならない。
開始剤系は、レドックス開始剤系、光開始剤(系)、又は両方の組み合わせを含むことができる。
一実施形態によれば、歯科用セメント組成物は、レドックス開始剤系を含む。レドックス反応に依存する開始剤は、しばしば「自動硬化触媒」又は「暗硬化触媒」と呼ばれる。歯科用セメント反応の早期硬化を回避するために、この系の2つの主成分(酸化剤及び還元剤)は、歯科用セメント組成物の貯蔵中に分離されたままであるべきである。
酸化成分として、典型的には、過酸化物などのペルオキシ成分が使用される。
使用できる有機ペルオキシドは、ジ-ペルオキシド及びヒドロペルオキシドを含む。
一実施形態によれば、有機ペルオキシドはジ-ペルオキシドであり、好ましくは、部分R-O-O-R-O-O-Rを含むジ-ペルオキシドであり、ここで、R及びRは、独立して、H、アルキル(例えば、C~C)、分枝アルキル(例えば、C~C)、シクロアルキル(例えば、C~C10)、アルキルアリール(例えば、C~C12)、又はアリール(例えば、C~C10)から選択され、かつRは、アルキル(例えば、C~C)又は分枝アルキル(例えば、C~C)から選択される。
好適な有機ジ-ペルオキシドの例としては、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
他の一実施形態によれば、有機ペルオキシドはヒドロペルオキシド、特に、構造部分
R-O-O-H
を含むヒドロペルオキシドであり、
Rは、(例えば、C~C20)アルキル、(例えば、C~C20)分枝アルキル、(例えば、C~C12)シクロアルキル、(例えば、C~C20)、アルキルアリール(例えば、C~C12)又はアリール(例えば、C~C12)である。
好適な有機ヒドロペルオキシドの例としては、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロ-ペルオキシド、p-ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロ-ペルオキシド、p-メタンヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、並びにこれらの混合物が挙げられる。
ヒドロペルオキシドを使用することは、特に自己接着性組成物の配合に好ましい場合がある。
使用することができる他のペルオキシドは、ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、及びペルオキシジカーボネートである。
ケトンペルオキシドの例としては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、及びシクロヘキサノンペルオキシドが挙げられる。
ペルオキシエステルの例としては、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、2,2,4-トリメチルペンチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジ-t-ブチル-ペルオキシヘキサ-ヒドロテレフタレート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート(TBPIN)、t-ブチル-ペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、及びt-ブチルペルオキシマレイン酸が挙げられる。
ペルオキシジカーボネートの例としては、ジ-3-メトキシペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシ-ジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピル-1-ペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチル-ペルオキシジカーボネート、及びジアリルペルオキシ-ジカーボネートが挙げられる。
ジアシルペルオキシドの例としては、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドが挙げられる。
ジアルキルペルオキシドの例としては、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキサンが挙げられる。
ペルオキシケタールの例としては、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、及び4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)吉草酸-n-ブチルエステルが挙げられる。
ペルオキシ成分が存在する場合、典型的には、歯科用セメント組成物の0.1重量%~5重量%又は0.25重量%~4重量%の量で存在する。
過酸化物成分に加えて、更なる酸化成分、例えば過硫酸塩成分、特に水溶性過硫酸塩成分が存在してもよい。
使用することができる過硫酸塩は、式Dによって特徴付けることができ、式中、DはLi、Na、K、NH、NRから選択され、RはH及びCHから選択される。使用可能な過硫酸塩の例としては、Na、K、(NH及びそれらの混合物が挙げられる。
過硫酸塩成分が存在する場合、典型的には0.1重量%~5重量%又は0.25重量%~4重量%の量で存在する。
還元剤として、バルビツール酸又はチオバルビツール酸成分、特にそれらのそれぞれの塩を使用することができる。好適なバルビツール酸成分は、以下の式:
Figure 2024523493000004
(式中、R1、R2及びR3は独立して水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリールアルキル、アリール又は置換アリールから選択され;Xは酸素又は硫黄であり;Yは金属カチオン又は有機カチオンである)によって特徴付けることができる。
塩は、金属カチオン又は無機カチオンを含んでもよい。好適な金属カチオンとしては、安定なカチオンM、M2+、又はM3+を提供することができる任意の金属Mが挙げられる。いくつかの可能な無機カチオンとしては、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Fe、Cu、Zn、又はLaのカチオンが挙げられる。
好適なバルビツール酸又はチオバルビツール酸成分の例としては、バルビツール酸、チオバルビツール酸、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1-フェニル-5-ベンジルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、1,3-ジメチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸、5-ラウリルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、5-アリルバルビツール酸、5-フェニルチオバルビツール酸、1,3-ジメチルチオバルビツール酸、トリクロロバルビツール酸、5-ニトロバルビツール酸、5-アミノバルビツール酸、及び5-ヒドロキシバルビツール酸が挙げられる。
例示的な塩は、1-ベンジル-5-フェニル-バルビツール酸のカルシウム塩である。好適なバルビツール酸塩の別の例は、1-ベンジル-5-フェニル-バルビツール酸のナトリウム塩である。可能な塩は、5-フェニル-チオバルビツール酸のカルシウム塩である。
塩はまた、有機カチオンを含んでもよい。適切な可能な有機カチオンとしては、アミンのカチオン、例えばアンモニウムのカチオン又はアルキルアンモニウムのカチオンが挙げられる。一例は、1-ベンジル-5-フェニル-バルビツール酸のトリエタノールアンモニウム塩である。
バルビツール酸又はチオバルビツール酸成分が存在する場合、典型的には、歯科用セメント組成物の0.1重量%~3重量%又は0.5重量%~2重量%の量で存在する。
使用できる他の還元剤としては、芳香族スルフィン酸塩又はチオ尿素成分が挙げられる。好適なスルフィン酸成分は、以下の式
SOO-R
(式中、Rは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリールアルキル、アリール又は置換アリール基であり、R=H、リチウム、ナトリウム又はカリウムなどの金属であるか、あるいはアルキル、置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリールアルキル、アリール又は置換アリール基である)を有することができる。
基R又はRのうちの1つが非置換アルキルである場合、この基は直鎖又は分岐鎖であってよく、例えば1個~18個の炭素原子、好ましくは1個~10個、特に1個~6個の炭素原子を含有することができる。低分子アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、n-ペンチル及びイソアミルである。
基R又はRのうちの1つが置換アルキル基である場合、この基のアルキル部分は、典型的には、非置換アルキルについて上に示した数の炭素原子を有する。基R又はRのうちの1つがアルコキシアルキル又はアルコキシカルボニルアルキルである場合、アルコキシ基は、例えば1個~5個の炭素原子を含有し、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、n-ペンチル又はイソアミルである。基R又はRのうちの1つがハロアルキルである場合、ハロ部分はフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードであると理解される。
基R又はRのうちの1つがアルケニルである場合、それは典型的にはC~Cアルケニル基、特にアリルである。基R又はRのうちの1つが非置換シクロアルキルである場合、それは典型的にはC~Cシクロアルキル基、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシルである。基R又はRのうちの1つが置換シクロアルキルである場合、それは典型的には上記シクロアルキル基の1つであり、シクロアルキル基上の置換基は例えばメチル、エチル、プロピル、n-ブチル又はイソブチルのようなC~Cアルキル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード又はC~Cアルコキシ、特にメトキシであることが可能である。基R又はRのうちの1つがアリール又はアラルキルである場合、それは典型的にはアリールとしてのフェニル又はナフチルである。好ましいアリールアルキル基としては、ベンジル及びフェニルエチルが挙げられる。
又はRはまた、所望により置換アリール基であってもよい。この場合、フェニル及びナフチルが好ましく、環置換基としては、C~Cアルキル、特にメチル、ハロゲン又はC~Cアルコキシ、特にメトキシが好ましい。
特に、以下の成分:ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム二水和物、トルエンスルフィン酸ナトリウム、ホルムアミジンスルフィン酸、ヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩、2,5-ジクロロベンゼンスルフィン酸のナトリウム塩、3-アセトアミド-4-メトキシベンゼンスルフィン酸が有用であることが見出され、トルエンスルフィン酸ナトリウム又はベンゼンスルフィン酸ナトリウム及びそれらの水和物が好ましい場合がある。
スルフィン酸成分が存在する場合、典型的には、歯科用セメント組成物の0.1重量%~3重量%又は0.5重量%~2重量%の量で存在する。
好適なチオ尿素成分としては、1-エチル-2-チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1-ジブチルチオ尿素、及び1,3-ジブチルチオ尿素、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
所望であれば、歯科用セメント組成物は、バルビツール酸成分とスルフィン酸成分との組合せを含む異なる還元剤の組合せ又は混合物を含有してもよい。
上記の成分に加えて、レドックス開始剤系は活性剤を含んでいてもよい。
好適な活性剤としては、第三級芳香族アミン、例えば、N,N-ビス-(ヒドロキシアルキル)-3,5-キシリジン(例えば、米国特許第3,541,068号に記載)、並びにN,N-ビス-(ヒドロキシアルキル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、特に、N,N-ビス-([ベータ]-オキシブチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、並びにN,N-ビス-(ヒドロキシアルキル)-3,4,5-トリメチルアニリンが挙げられる。
所望であれば、加速のために、遷移金属成分の存在下で重合を行うこともできる。好適な遷移金属成分としては、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及び/又は銅の有機及び/又は無機塩が挙げられるが、銅、鉄及びバナジウムが、時として好ましい。
一実施形態によれば、遷移金属成分は、銅含有成分である。銅含有成分における銅の酸化段階は、好ましくは+1又は+2である。
使用することのできる銅成分の典型例としては、酢酸銅、塩化銅、安息香酸銅、アセチルアセトナト銅、ナフテン酸銅、カルボン酸銅、銅ビス(1-フェニルペンタン-1,3-ジオン)錯体(銅プロセトネート(copper procetonate))、エチルヘキサン酸銅、サリチル酸銅、チオ尿素、エチレンジアミン四酢酸との銅の錯体、及び/又はそれらの混合物を含む、銅の塩及び錯体が挙げられる。銅化合物は、水和物形態で使用されてもよく、又は水を含まなくてもよい。
特に好ましいのは、時には、酢酸銅(II)、銅ビス(1-フェニルペンタン-1,3-ジオン)錯体(銅プロセトネート)、及びエチルヘキサン酸銅である。
一実施形態によれば、遷移金属成分は、鉄含有成分である。鉄含有成分における鉄の酸化段階は、好ましくは+2又は+3である。
使用できる鉄含有成分の典型的な例としては、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)、カルボン酸鉄、ナフテン酸鉄、鉄(III)アセチルアセトネート(これらの塩の水和物を含む)を含む塩及び錯体が挙げられる。
一実施形態によれば、遷移金属成分は、バナジウム含有成分である。バナジウム含有成分におけるバナジウムの酸化段階は、好ましくは+4又は+5である。
使用することができるバナジウム成分の典型的な例としては、バナジルアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジルステアレート、ナフテン酸バナジウム、バナジウムベンゾイルアセトネート、バナジルオキサレート、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、オキソビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオネート)バナジウム(IV)、バナジウム(V)オキシトリイソプロポキシド、メタバナジン酸アンモニウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、五酸化バナジウム(V)、四酸化二バナジウム(IV)、及びバナジルサルフェート(IV)及びこれらの混合物が挙げられるが、バナジルアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、及びビス(マルトラート)-オキソバナジウム(IV)が、時として好ましい。
好適なレドックス開始剤系は、米国特許出願公開第2003/008967(A1)号(Hechtら)、米国特許出願公開第2004/097613(A1)号(Hechtら)、米国特許出願公開第2019/000721(A1)号(Ludsteckら)にも記載されている。これらの参考文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
歯科用セメント組成物は、光開始剤を含んでもよい。
歯科用セメント組成物がパーツキットとして提供される場合、光開始剤は、基剤部分若しくはペースト又は触媒パーツ若しくはペースト又は両方のパーツ若しくはペースト中に存在してもよい。典型的には、光開始剤は、触媒パーツ若しくはペースト中に存在する。
光開始剤の性質及び構造は、意図した目的が達成不能でない限り、特に限定されない。フリーラジカル重合に好適な光開始剤は、歯科用材料を取り扱う当業者には一般に公知である。
光開始剤としては、350nm~500nmの範囲の波長を有する可視光の作用によって、重合性モノマーを重合させることができるものが好ましい。
好適な光開始剤は、多くの場合、アルファジ-ケト部分、アントラキノン部分、チオキサントン部分又はベンゾイン部分を含有する。
光開始剤の例としては、カンファーキノン、1-フェニルプロパン-1,2-ジオン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2-メトキシエチル)ケタール、4,4’-ジメチルベンジルジメチルケタール、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。
アシルホスフィンオキシドを使用することも同様に有用であることが見出された。
好適なアシルホスフィンオキシドは以下の式
Figure 2024523493000005
(式中、
各Rは、独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキルなどのヒドロカルビル基であってもよく、そのいずれかがハロ-、アルキル-、若しくはアルコキシ基で置換されていてもよく、又は2つのR基が結合してリン原子と共に環を形成することができ、R10は、ヒドロカルビル基、S-、O-、若しくはN-含有5若しくは6員複素環式基、又は-Z-C(=O)-P(=O)-(R基であり、Zは2個~6個の炭素原子を有するアルキレン又はフェニレンなどの二価ヒドロカルビル基を表す)
によって特徴付けることができる。
好適なシステムはまた、例えば、米国特許第4,737,593号(Ellrichら)に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
好ましいアシルホスフィンオキシドは、R及びR10基が、フェニル、又は低級アルキル-若しくは低級アルコキシ-置換フェニルであるものである。「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」は、1個~4個の炭素原子を有するような基を意味する。特に、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが有用であることが見出された(Lucirin(商標)TPO、BASF)。
より具体的な例としては、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-クロロフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,4-ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-オクチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチル-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-4-エトキシ-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチル-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-エトキシ-フェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2-ナフチル-ホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチル-ホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニル-ホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-4-ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス-(2-メトキシ-1-ナフトイル)-2-ナフチル-ホスフィンオキシド及びビス-(2-クロロ-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
アシルホスフィンオキシドビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(以前はIRGACURE(商標)819,Ciba Specialty Chemicals製として公知)が好ましい場合がある。
光開始剤の他に、還元剤が存在してもよい。光開始剤と還元剤との組み合わせは、しばしば光開始剤系と呼ばれる。
還元剤又は供与体成分として、第三級アミンが概ね用いられる。
第三級アミンの好適な例としては、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、メチル4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル4-ジメチル-アミノベンゾエート、メチル-ジフェニル-アミン及びイソアミル4-ジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。
存在する場合、光開始剤は、典型的には、歯科用セメント組成物の重量に対する重量%で、次の量:すなわち、下限:少なくとも0.01又は少なくとも0.02又は少なくとも0.03重量%;上限:最大5又は最大4又は最大3重量%、範囲:0.01重量%~5重量%又は0.02重量%~4重量%又は0.03重量%~3重量%で存在する。
歯科用セメント組成物は、1つ以上の添加剤を更に含んでもよい。
本明細書に記載の組成物はまた、染料、顔料、光退色性着色剤、フッ化物放出剤、遅延剤、可塑剤、溶媒などの添加剤を含有してもよい。
使用することのできる染料又は顔料の例としては、二酸化チタン又は硫化亜鉛(リトポン)、赤色酸化鉄3395,Bayferrox(商標)920 Z Yellow、Neazopon(商標)Blue 807(銅フタロシアニン系染料)又はHelio(商標)Fast Yellow ERが挙げられる。これらの添加剤は、歯科用組成物の個々の着色に使用することができる。
存在し得る光漂白性着色剤の例としては、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’-ジブロモフルオレセイン、及びそれらのブレンドが挙げられる。光漂白性着色剤の更なる例は、米国特許第6,444,725号に見出すことができる。本発明の組成物の色は、増感化合物によって更に付与され得る。
存在し得るフッ化物剥離剤の例としては、天然に存在する又は合成フッ化物鉱物が挙げられる。これらのフッ化物源は、任意に、表面処理剤で処理されてもよい。
添加することのできる更なる添加物には、抑制剤、(例えば1,2-ジフェニルエチレン)、可塑剤(ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール、低分子量ポリエステル、ジブチル、ジオクチル、ジノニル及びフタル酸ジフェニル、ジ(イソノニルアジペート)、リン酸トリクレシル、パラフィン油、三酢酸グリセロール、ビスフェノールAジアセテート、エトキシル化ビスフェノールAジアセテート、並びにシリコーン油を含む)、風味料、抗菌剤、及び/又は芳香剤が挙げられる。
存在することができる溶媒としては、直鎖、分枝鎖、又は環状の飽和又は不飽和アルコール、ケトン、エステル、エーテル又は2個~10個のC原子を有するこの種類の溶媒の2以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアルコール性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール及びn-プロパノールが挙げられる。他の好適な有機溶媒は、THF、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、トルエン、アルカン、及び酢酸アルキルエステルであり、特に酢酸エチルエステルである。
これらの添加剤は存在する必要はなく、添加剤は全く存在しなくてもよい。しかし、存在する場合、これらは、典型的には、意図する目的にとって有害ではない量で存在する。
存在する場合、添加剤は、典型的には以下の量で存在する。組成物全体の重量に対して、重量%で、下限:少なくとも0重量%又は少なくとも0.01重量%又は少なくとも0.1重量%;上限:最大20重量%又は最大15重量%又は最大10重量%、範囲:0重量%~20重量%又は0.01重量%~15重量%又は0.1重量%~10重量%。
歯科用セメント組成物は、それぞれの成分を、下記の量で含んでもよい:
歯科用セメント組成物は、
30重量%~80重量%の量の(メタ)アクリレート成分と、
5重量%~40重量%の量の酸性重合性成分と、
2重量%~30重量%の量の非酸性重合性成分と、
5重量%~55重量%の量の充填剤と、
1重量%~10重量%の量の開始剤系と、
0重量%~20重量%の量の添加剤と、
を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなり、重量%は、組成物全体の重量に対するものである。
更なる実施形態によれば、歯科用セメント組成物は、
40重量%~70重量%の量の(メタ)アクリレート成分と、
10重量%~40重量%の量の酸性重合性成分と、
5重量%~30重量%の量の非酸性重合性成分と、
8重量%~50重量%の量の充填剤と、
1重量%~10重量%の量の開始剤系と、
0重量%~20重量%の量の添加剤と、
を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなり、重量%は、組成物全体の重量に対するものである。
歯科用セメント組成物は、典型的には、以下の成分を単独で又は組み合わせて含有しない:5重量%を超える量の(メタ)アクリレート官能性充填剤;5重量%を超える量の軟化剤;5重量%を超える量の多価アルコール;0.1重量%を超える量のオイゲノール;(重量%は、歯科用セメント組成物に対するものである)。
典型的には存在しないか又は意図的に添加される軟化剤としては、フタレート、アジペート、セバケート成分及びそれらの混合物が挙げられる。
典型的には存在しない他の軟化剤としては、ガッタパーチャ(gutta-percha)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンプロピレンターポリマー、シリコーンポリマー、ポリイソプレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、並びにエチレン-メチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン-エチル(メタ)アクリレートコポリマー及びエチレン-ブチル(メタ)アクリレートコポリマーなどのエチレン-(メタ)アクリレートコポリマーが挙げられる。
歯科用セメント組成物はまた、その物理的又は機械的特性に関して説明され得る。
歯科用セメント組成物は酸性である。
歯科用セメント組成物は、硬化前に以下の特性によって特徴付けられ得る:粘度:28℃及び剪断速度10s-1で10Pa・s~70Pa・s、並びにpH値:5~1。
適用については、歯科用セメント組成物は、典型的にはペーストとして適用される。
ペーストは、例えば適切な混合及び送達システムを使用することによって、表面への組成物の容易な適用を可能にする粘度を有する。適切な混合及び送達システムを以下に記載する。
歯科用セメント組成物は、硬化後に以下の特性を単独で又は組み合わせて特徴付けることができる:破断点伸び:20%~50%;引張強度:4MPa~10MPa;重合した(メタ)アクリレート材料に対する剪断接着強度(SBS):8MPa~30MPa;象牙質に対する剪断接着強度(SBS):0.2MPa~3MPa。
引張強度は、何かが壊れる点まで何かを引っ張るのに必要な力の測定値である。硬化した歯科用セメント組成物は、歯科修復物が患者の口腔内の歯科的シチュエーションから取り外された後に歯科用セメント組成物が破損しないことを確実にするために、十分に高い引張強度を有するべきである。言及された範囲の引張強度が有用であることが判明した。
言及された範囲内の破断点伸びは、歯科用セメント組成物の所望のエラストマー特性を反映する。組成物は、十分に可撓性かつエラストマー性であるべきである。
歯科用セメント組成物はまた、歯牙表面(例えば、調製された歯の表面)、特に象牙質表面に対して十分に接着性であるべきである。接着性を測定するための適切な方法は、剪断接着強度の測定である。
しかしながら、歯科用セメント組成物の主な用途は、患者の口腔内の歯科的シチュエーションに歯科修復物を一時的に固定することであるため、接着性は強すぎてはならない。そうでなければ、歯科的シチュエーションから一時的歯科修復物を除去することが困難になる可能性がある。上記範囲の剪断接着強度は、十分かつ適切であると考えられた。
意図された使用のために、歯科用セメント組成物はまた、患者の口腔内の歯科的シチュエーションに固定されるように歯科修復物に十分に付着するべきである。
歯科修復物への歯科用セメントの接着性は、歯科修復物が作製される材料(例えば、セラミック、金属、複合材料)に依存するため、接着性の値は変動する。
所望の結果を達成するために、歯科用セメント組成物の歯科修復物への接着性は、歯科用組織への接着性よりも高くあるべきである。これは、セメントの大部分が歯の表面から除去された後に修復物中に残ることを確実にするのに役立ち、したがって、最終的な修復物の永久的なセメント合着の前に歯の表面を洗浄するプロセスを簡略化することができる。
したがって、歯科用セメント組成物は、以下の式によって特徴付けることもできる:
修復材料への剪断接着強度>象牙質への剪断接着強度
本明細書に記載の歯科用組成物は、典型的には、それぞれの成分、すなわち、樹脂マトリックスの重合性成分、充填剤及び開始剤成分を、添加剤などの他の任意の成分と一緒に組み合わせるか又は混合することによって製造される。
混合には混練も含まれる。所望であれば、スピードミキサーを使用することができる。混合される成分に応じて、混合は、調光(save light)条件下で行われる。
歯科用セメント組成物は、基剤部分及び触媒部分を含むパーツキットとして提供される。
個々の部分は、典型的には、貯蔵中に別々に保たれ、使用直前に組み合わされる。
パーツキットは、基剤部分及び触媒部分を含んでもよく、
基剤部分が、
(メタ)アクリレート成分の一部と、
酸性重合性成分と、
非酸性重合性成分の一部と、
開始剤系の一部、好ましくは酸化成分と、
充填剤の一部と、
を含み、
触媒部分が、
(メタ)アクリレート成分の一部と、
非酸性重合性成分の一部と、
開始剤系の一部、好ましくは還元成分と、
充填剤の一部と、を含み、
歯科用セメント組成物のその他の成分が、基剤部分若しくは触媒部分のいずれか、又は基剤部分及び触媒部分に存在し、それぞれの成分が本明細書に記載されている通りである。
基剤部分及び触媒部分の粘度は、典型的には、混合プロセスを容易にするために同様である。粘度は、剪断速度10sで測定して、28℃で10Pa・s~70Pa・sである。
歯科用セメント組成物は、典型的には、患者の口腔内の歯科的シチュエーションを一時的に修復させるプロセスにおいて使用されるか、又はプロセスにおける使用のために使用され、プロセスは
歯科修復物、特に一時的歯科修復物、及び本明細書に記載される歯科用セメント組成物を提供する工程と、
歯科修復物を、歯科用セメント組成物を用いて、修復されるべき歯科的シチュエーションに固定する工程と、
歯科修復物を歯科的シチュエーションから除去する工程と、を含む。
「一時的に修復する」とは、定義された期間にわたる歯科的シチュエーションの修復を意味し、この期間は、典型的には、永久修復物が利用可能になるまでの中間期間である(例えば、歯科技工所で作製される場合)。
このような中間期間は、数日(例えば、2日~7日)から数週間(例えば、2週間~4週間)まで、数ヶ月(例えば、2ヶ月~6ヶ月)までの範囲であり得る。
歯科修復物は、クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、べニア、又はコーピングの形状を含む様々な形状を有してもよい。
歯科修復物は、複合材料、金属及びセラミック又はガラスセラミック材料を含む、異なる材料から作製されてもよい。
典型的には、一時的歯科修復物は、複合材料、特にビスアクリル複合材料又はPMMA材料から作製される。
本発明はまた、本明細書に記載の歯科用セメント組成物と、以下の品目:本明細書に記載の歯科用セメント組成物と、歯冠、又は一時的歯科修復物を製造するための、歯科用セメント組成物とは異なる硬化性歯科用組成物とを単独で又は組み合わせて含むパーツキットに関する。
好適な一時的歯科修復材料は、米国特許出願公開第2011/053116(A1)号(Hechtら)、米国特許第4,787,850号(Michlら)、又は米国特許出願公開第2006/229377(A1)号(Bublewitzら)に記載されている。これらの参考文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
一時的な歯の修復材料も市販されており、例えば、Protemp(商標)4(3M Oral Care)、Luxatemp(登録商標)Automix Plus(DMG)又はIntegrity(登録商標)(Dentsply)である。
組成物は、典型的には、使用前にパッケージング用デバイスに貯蔵される。
好適なパッケージング用デバイスは、カートリッジ、シリンジ及びチューブを含む。貯蔵に使用されるパッケージング用デバイスの容積は、典型的には、0.1mL~100mL、又は0.5mL~50mL、又は1mL~30mLの範囲である。
パッケージング用デバイスはまた、2つの区画を含んでもよく、各区画は、その中に貯蔵された組成物又は部分を送達するためのノズルを備える。一旦、適切な分量が送達されたら、次いで、その部分は、混合プレート上で手で混合され得る。
パッケージング用デバイスは、静的混合チップを受容するためのインターフェースを有し得る。混合チップは、それぞれの組成物を混合するために使用される。
パッケージング用デバイスは、典型的には2つのハウジング又はコンパートメントを備え、これは、ノズルを有する前端、及び後端、及びハウジング又はコンパートメント中で移動可能な少なくとも1つのピストンを有する。
使用可能なカートリッジは、例えば米国特許出願公開第2007/0090079(A1)号又は米国特許第5,918,772号に記載され、その開示は、参照により組み込まれる。使用することのできるカートリッジの一部は、例えば、Sulzer Mixpac社(Switzerland)から市販されている。
使用可能な静的混合チップは、例えば米国特許出願公開第2006/0187752(A1)号又は米国特許第5,944,419号に記載され、その開示は、参照により組み込まれる。使用することのできる混合チップは、同様に、Sulzer Mixpac(Switzerland)から市販されている。
他の好適な保存デバイスは、例えば、国際公開第2010/123800号(3M)、国際公開第2005/016783号(3M)、国際公開第2007/104037号(3M)、国際公開第2009/061884号(3M)(特に、国際公開第2009/061884号(3M)の図14に示されるデバイス)又は国際公開第2015/073246号(3M)(特に、国際公開第2015/07346号の図1に示されるデバイス)に記載されている。これらの保存デバイスは、シリンジの形状を有する。これらの参考文献の内容は、同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。本発明に対する様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。上述の明細書、例及びデータは、本発明の組成物の製造及び使用並びに方法の説明を提供するものである。本発明は、本明細書に開示された実施形態には限定されない。当業者であれば、本発明の多くの代替的実施形態が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく実施できることを理解するであろう。
以下の実施例は、本発明を例示するために与えられる。
特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指示のない限り、全ての実験は周囲条件(23℃、1013mbar)で実施した。
方法
粘度
所望であれば、混合されたペーストの粘度を、プレート/プレート形状(PP08)を有するPhysica MCR301レオメータ(Anton Paar,Graz,Austria)を用いて、28℃で回転させながら一定の剪断速度10s-1で測定することができる。プレートの直径は8mmであり、プレート間の間隙を0.75mmに設定する。混合後に、約200mgの混合物を円筒状プラットフォーム上に置き、粘度(Pas単位)を測定する。各測定は2回行われるべきである。
pH値
所望であれば、組成物のpH値は以下のように決定することができる:pH感受性紙(Carl Roth(商標)社)を用意する。pH感受性紙のストライプを湿らせる。試験される組成物の小部分を、湿らせたpH感受性紙上に置く。5秒後、pH感受性紙の色の変化を測定する。
粒径分布
所望であれば、粒径分布は、例えば、デバイスHoriba(堀場製作所、日本)を使用して、光散乱によって決定することができる。
光散乱型粒径測定装置は、レーザーで試料を照射し、粒子から散乱された光の強度変動を173度の角度で解析する。粒径を計算するため、器具による光子相関分光法(Photon Correlation Spectroscopy、PCS)の方法を用いることができる。PCSは、液体中の粒子のブラウン運動を測定するために、変動する光の強度を用いる。次に、粒径を、測定された速度で移動する球体の直径であるとして計算する。
粒子によって散乱される光の強度は、粒子直径の6乗に比例する。Z平均サイズ又はキュムラント平均は、強度分布から計算される平均であり、計算は、粒子が単峰性、単分散性、及び球状であるという仮定に基づく。変動する光の強度から計算される関連する関数は、強度分布及びその平均である。強度分布の平均は、粒子が球状であるという仮定に基づき計算される。Z平均サイズ及び強度分布平均の双方とも、より小さい粒子に対するよりも、より大きな粒子に対して、感度が高い。
体積分布は、所与のサイズ範囲内の粒子に相当する粒子の総体積の百分率を示す。体積平均粒径は、体積分布の平均に相当する粒径である。粒子の体積は直径の3乗に比例するため、この分布は、より大きな粒子に対しては、Z平均サイズよりも感度が低い。したがって、体積平均は、典型的には、Z平均サイズよりも小さい値である。この文献の範囲では、Z平均サイズは、「平均粒径」と称される。
剪断接着強度(SBS-DE;SBS-MA)
試験方法は、試験される歯科用セメント組成物でコーティングされ、次いで標準化された圧力で基材(象牙質又はメタクリレート複合材、例えばProtemp 4(商標)、3M Oral Care)に誘導される、規定された表面積を有するステンレス鋼ロッドに基づく。硬化後、ステンレス鋼ロッドを剪断試験で剪断する。
試験片の調製、試験片の数、硬化(光硬化、暗硬化)及び保存条件を含む試験方法の詳細は、IADR/AADR Abstract ID#3318916に記載されている。
全てのセメントを製造業者の指示に従って使用した。ウシの歯を平らに研削して象牙質又はエナメル質を露出させ、研磨し(グリット320サンドペーパー)、水ですすぎ、穏やかに空気乾燥させた。
Protemp 4(商標)試験片(直径20.0mm、高さ3.5mm)を室温で1時間硬化させ、次いで水中で36℃で24時間±1時間貯蔵し、次いで平坦に研削し(グリット320サンドペーパー)、サンドブラストした(アルミナ酸化物粒径<50μm)。
ステンレス鋼ロッド(直径=4mm)を、標準圧力(20g/mm)下で、サンドペーパー研磨し、サンドブラストし、シラン化し(ESPE(商標)Sil、3M(商標)ESPE)、セメント接合した(n=6)。過剰分を除去した後、セメントを4面から照射した(各10秒;Elipar(商標)S10、3M(商標)ESPE)。試料を加圧下(36℃)で10分間保管した後、加圧せずに更に24時間(36℃;相対湿度100%)保管した。
所望であれば、剪断接着強度試験(Zwick Z010;n=6;速度=0.75mm/分)の前に、試料を人工的にエージングさせることができる(5℃~55℃の5000サイクルの熱サイクルによって)。
平均値及び標準偏差の評価は、Zwick機のコンピュータによって計算した。破損のタイプは、前処理、材料のタイプ、シリンダーのタイプ、バッチ番号及び試験条件と同様に、Zwickプリントアウトに記録される。
引張強度(TS)及び破断点伸び(EB)
引張強度及び破断点伸びは、本質的にDIN ISO527-1:2019(プラスチック)に従って、以下の変更を加えて測定した。
試験片は、以前のDIN 53455試験片タイプ4に従って以下の寸法で製造した。
Figure 2024523493000006
硬化した試験片を湿度100%、36℃で24時間保管した。測定は、6個の試験片について行い、試験前にノギスを用いて測定した。試験片を、(Zwick試験フレームZ010を使用して)破断するまで2mm/分の試験速度で引き離した。ソフトウェアは、引張強度[MPa]及び破断点伸び[%]を自動的に決定する。
クラウンプルオフ試験(CPOT)
洗浄したヒトの歯を、3M(商標)RelyX(商標)Unicemで歯根においてコーティングし、次いで、エナメル質/象牙質境界の約2mm下までVersocit(商標)インベストメント材料に包埋した。歯の残根を適切な高さ及び角度(6°)(4mm)に調製した。歯の残根の形状を、歯科用スキャナーを用いてデジタル記録し、CAD/CAMソフトウェアに読み込んだ。
スキャンデータに従って複合クラウンを設計し、適切な樹脂(例えば、国際公開第2018/231583(A1)号の実施例6に記載されている樹脂)から3d印刷によって製造した。複合クラウンの内表面を、50μmのアルミナでサンドブラストすることによって前処理した。製造者の指示に従って、一時的セメントのための典型的なセメント合着プロトコルに従って、複合クラウンをセメント接合した。修復された歯を36℃及び湿度100%で24時間保存した。
所望であれば、熱サイクルプロセス(温度が5℃と55℃との間で5,000サイクル切り替えられる)を行い、続いて咀嚼シミュレーション(50Nの負荷が20,000回適用される)を行って、患者の口内のリアルタイム条件をシミュレートすることができる。
次に、テキスチャー・アナライザーTA HD Plusを用いてクラウンプルオフ試験を行い、ここで、複合クラウンを歯の残根から除去した。除去後、破壊モード及び残留セメント残留物についてシチュエーションを目視検査した。
評価:
++ 本質的に全て(例えば>80重量%)の歯科用セメント組成物が複合クラウン中に残った;
+ >60%が複合クラウン上にあった;
+/- 歯科用セメントの50%が複合クラウン中に残り、50%が歯の表面に留まった
- >60%が歯表面上にあった;
-- 本質的に全て(例えば、>80重量%)の歯科用セメント組成物が歯の表面上に残った。
例1の歯科用セメント組成物で歯表面に一時的にセメント接着され、後に除去した複合クラウンの内表面の写真を図1に示す。
プルオフ試験後、歯科用セメント組成物のほぼ全て(>90重量%)が複合クラウン中に残っていた。したがって、複合クラウン材料への歯科用セメントの接着性は、歯牙構造への接着性よりも有意に高かった。
材料
Figure 2024523493000007
ポリアルキレンオキシドの調製(米国特許第6,677,393(B1)号参照)
ポリアルキレンオキシドの調製は、米国特許第6,677,393(B1)号(第7/8欄)の調製例に従って行った。
モノマーの式
Figure 2024523493000008
DIOL-IEM
Figure 2024523493000009
DIOL-DMA
Figure 2024523493000010
PPG-1000-TMDI-MA
Figure 2024523493000011
PPG-1000-IEM-MA
Figure 2024523493000012
Figure 2024523493000013
PPG-2000-TMDI-IEM-MA
Acclaim 4200-IEM
一般的手順
個々のペーストを、Hauschildスピードミキサー(DAC150FVZ)を使用して標準化された条件(室温、周囲圧力、相対湿度50%)下でそれぞれの成分を混合することによって調製した。次いで、それぞれのペーストを、混合パッド上でスパチュラを用いて1:1の重量比で、又はオートミックスシステムを用いて1:1の体積比で混合した。
硬化は、ペーストを混合すること(自動硬化)又は放射線を適用すること(光硬化)のいずれかによって開始された。光硬化については、Elipar(商標)S10(3M Oral Care)装置を各4面で10秒間使用した。得られた歯科用セメント組成物を、それらの機械的特性に関して更に分析した。
以下の組成物を調製した。
Figure 2024523493000014
Figure 2024523493000015
Figure 2024523493000016
Figure 2024523493000017
Figure 2024523493000018
Figure 2024523493000019
結果
Figure 2024523493000020
測定データから分かるように、本発明の歯科用セメント組成物は、比較例(例2~4)と比較してより高い可撓性を示す。

Claims (15)

  1. 歯科用セメント組成物であって、
    樹脂マトリックスであって、
    以下を含む(メタ)アクリレート成分:
    少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分;
    前記少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分の間のポリオールスペーサー基であって、少なくとも3,000g/molの分子量Mwを有するポリオールスペーサー基;と、
    酸性重合性成分、好ましくは酸性(メタ)アクリレート成分と、
    1,000g/mol未満の分子量Mwを有する非酸性重合性成分、好ましくは非酸性(メタ)アクリレート成分と、
    を含む、樹脂マトリックスと、
    充填剤と、
    開始剤系と、
    任意に添加剤と、
    を含む、歯科用セメント組成物。
  2. 前記(メタ)アクリレート成分が、以下の構造:
    Figure 2024523493000021
    (式中、
    MAは、アクリレート又はメタクリレート部分であり、
    Lは、ウレタン、エステル又はエーテル結合であり、
    Uは、ウレタン部分であり、
    S1は、少なくとも3,000g/molの分子量Mwを有するポリオール部分、好ましくは、ポリエーテルポリオールであり、
    S2は、(メタ)アクリレート部分とウレタン、エステル又はエーテル部分とを連結するスペーサー基であり、
    xは、1~2である)
    のいずれかを有する、請求項1に記載の歯科用セメント組成物。
  3. 前記スペーサー基S2が、C2~6アルキル鎖を含み、
    前記スペーサー基S1が、下記式
    Figure 2024523493000022
    (式中、
    n=1~6、好ましくは1~4、特に1であり、nは前記鎖内で変化することができ、
    m=1~6、好ましくは1~4、特に3であり、mは前記鎖内で変化することができ、
    k、l=2~500、好ましくは4~250、特に10~200であり、
    R’、R’’=H、メチル、エチル、好ましくはR’=R’’=Hである)
    を有するポリオールを含む、請求項2に記載の歯科用セメント組成物。
  4. 前記(メタ)アクリレート成分が、少なくとも2つの(メタ)アクリレート部分と、4つ以下又は2つ以下のウレタン部分と、を含むウレタン(メタ)アクリレート成分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  5. 以下の特徴:
    (メタ)アクリレート成分の、酸性重合性成分に対する比が、重量%で2:1~20:1の範囲であること、
    (メタ)アクリレート成分の、非酸性重合性成分に対する比が、重量%で1:1~20:1の範囲であること、
    酸性重合性成分の、非酸性重合性成分に対する比が、重量%で1:10~5:1の範囲であること、
    の単独又は組み合わせにより特徴付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  6. 前記開始剤系が、レドックス開始剤系、光開始剤、又は両方の組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  7. 前記充填剤が、非酸反応性充填剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  8. 30重量%~80重量%の量の前記(メタ)アクリレート成分と、
    5重量%~40重量%の量の前記酸性重合性成分と、
    2重量%~30重量%の量の前記非酸性重合性成分と、
    5重量%~55重量%の量の前記充填剤と、
    1重量%~10重量%の量の前記開始剤系と、
    0重量%~20重量%の量の添加剤と、
    を含み、重量%が、組成物全体の重量に対するものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  9. 以下の成分:
    5重量%を超える量の(メタ)アクリレート官能性充填剤、
    5重量%を超える量の軟化剤、
    5重量%を超える量の多価アルコール、
    0.1重量%を超える量のオイゲノール
    を、単独で又は組み合わせて含まず、重量%が、前記歯科用セメント組成物に対するものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  10. 前記(メタ)アクリレート成分が、少なくとも3,000g/molの分子量Mwを有するポリオール成分を、イソシアネート部分を有する(メタ)アクリレート成分、又は(メタ)アクリル酸成分、好ましくは酸無水物若しくは酸塩化物、のいずれかと反応させることによって得ることができる、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  11. 硬化前に、以下の特徴:
    粘度:28℃及び10s-1の剪断速度において10Pa・s~70Pa・sであること、
    pH値:5~1であること、
    の単独又は組み合わせにより特徴付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  12. 硬化後に、以下の特徴:
    破断点伸び:20%~50%であること、
    引張強度:4MPa~10MPaであること、
    重合した(メタ)アクリレート材料に対する剪断接着強度:8MPa~30MPaであること、
    象牙質に対する剪断接着強度:0.1MPa~3MPaであること、
    の単独又は組み合わせにより特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  13. 基剤部分及び触媒部分を含むパーツキットとして提供され、
    前記基剤部分が、
    前記(メタ)アクリレート成分の一部と、
    前記酸性重合性成分と、
    前記非酸性重合性成分の一部と、
    前記開始剤系の一部、好ましくは酸化成分と、
    前記充填剤の一部又は部分と、
    を含み、
    前記触媒部分が、
    前記(メタ)アクリレート成分の一部と、
    前記非酸性重合性成分の一部と、
    前記開始剤系の一部、好ましくは還元成分と、
    前記充填剤の一部又は部分と、
    を含み、
    前記歯科用セメント組成物のその他の成分が、前記基剤部分若しくは前記触媒部分のいずれか、又は前記基剤部分及び前記触媒部分に存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物。
  14. 患者の口腔内の歯科的シチュエーションを一時的に修復させるプロセスにおいて使用するための歯科用セメント組成物であって、前記プロセスが、
    歯科修復物及び請求項1~13のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物を提供する工程と、
    前記歯科修復物を、前記歯科用セメント組成物を用いて、修復されるべき前記歯科的シチュエーションに固定する工程と、
    前記歯科修復物を前記歯科的シチュエーションから除去する工程と、
    を含む、歯科用セメント組成物。
  15. 請求項1~14のいずれか一項に記載の歯科用セメント組成物と、歯冠、又は一時的歯科修復物を製造するための前記歯科用セメント組成物とは異なる硬化性歯科用組成物と、を含む、パーツキット。
JP2023579091A 2021-06-28 2022-06-01 歯科用セメント組成物、パーツキット及びその使用 Pending JP2024523493A (ja)

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