JP2024518335A - SARS-CoV-2に対するヒト中和モノクローナル抗体、及びそれらの使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する抗体、特には、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体、並びにSARS-CoV-2感染及び関連付けられた疾病(COVID-19)の診断、モニタリング、予防及び処置の為のそれらの使用に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2:Severe Acute Respiratory Syndrome-related Coronavirus 2)に対する抗体、特に、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体、並びにSARS-CoV-2感染及び関連付けられた疾病(COVID-19)の、診断、モニタリング、予防及び処置の為のそれらの使用に関する。
新興の重篤な急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によるパンデミックは、コロナウイルス疾病-2019(COVID-19:Coronavirus Disease-2019)を引き起こし、現在までに世界中で約4億7000万人の感染者と600万人の死亡者を出しており(https://www.who.int/)、世界的な公衆衛生上の深刻な緊急事態を引き起こしており、予防的及び治療的介入が緊急に必要とされている。
コロナウイルスは、ヒト及び哺乳類に感染するところの、エンベロープ型の、ポジティブセンスの、一本鎖RNAウイルスである。コロナウイルスのゲノムは、非構造ポリタンパク質及び構造タンパク質、例えば、ホモ三量体のスパイク(homotrimeric spike)(S)糖タンパク質、エンベロープ(E)、膜(M)及びヌクレオカプシド(nucleocapsid)(N)タンパク質を包含する上記の非構造ポリタンパク質及び構造タンパク質、をコードする。幾つかのコロナウイルスはヒトに病原性であり、様々な程度の症状の重症度を引き起こす(Cui et al.,Nat Rev Microbiol.2019 Mar;17(3):181-92)。ベータコロナウイルス属(ベータ-CoV又はβ-CoV)は、4つの系統又はグループ(A、B、C、D)に分けられ、B/Cグループにおける高度にヒト病原性のコロナウイルスを含む。ベータ-CoVグループB/Cは、2002年に中国において発生した重篤な急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV又はSARS-CoV-1)、2012年にサウジアラビアで最初に検出された中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV:Middle East respiratory syndrome coronavirus)を包含し、そして、2019年に中国において単離されたCOVID-19を引き起こすところのSARS-CoV-2と名付けられた新しいコロナウイルス(SARS-CoV-2単離株であるWuhan(武漢)-Hu-1)は、重篤な急性呼吸器症候群の症例に関連付けられる(Peiris et al.,Nat Med.,2004 Dec;10(12 Suppl):S88-97;Zaki et al.,N Engl J Med.,2012 Nov 8;367(19):1814-20 ;Lee et al.,BMC Infect Dis.2017 Jul 14;17(1):498;Zhu N et al.,N Engl J Med.,2020 Jan 24)。対照的に、ベータ-CoVグループAは、風邪を引き起こす可能性があるHCoV-OC43及びHCoV-HKU1を包含する。
SARS-CoV-2感染及びワクチン接種に応答して展開する抗体は、COVID-19に対する長期的な防御の為に不可欠である。ヒト中和SARS-CoV-2抗体はCOVID-19感染の制御において重要な役割を果たしているようであり、及び軽症から中等症のSARS-CoV-2の感染したヒトを処置する為の有望な免疫治療ツールである。COVID-19における抗体応答を解読することは、中和化抗体のターゲット(target)であるSARS-CoV-2スパイクタンパク質(SARS-CoV-2-S)に対する体液性免疫の基本的なメカニズムを理解する上で基本的なことであり、効果的なワクチン及びモノクローナル抗体に基づく免疫療法戦略を開発する上でまた重要である。
スパイク糖タンパク質は、受容体認識、ウイルスの付着及び侵入に関与することから、ウイルスサイクルにおいて重要な役割を果たしており、従って宿主のトロピズム(tropism)及び感染能力の重要な決定因子である。SARS-CoV-2の細胞侵入は、ウイルススパイクタンパク質の受容体kドメイン(RBD:receptor-binding domain)とアンジオテンシン変換酵素2(ACE2:angiotensin converting enzyme 2)ターゲット受容体との間のバインディングに依存する。ACE2とのバインディングは、ウイルス侵入の為の細胞膜融合イベントのカスケードをトリガーする。各Sプロトマー(protomer)は、プロテアーゼによって切断された下記の2つのサブユニットから構成されている:球状のS1ドメイン及びN末端領域、並びに膜近位のS2ドメイン及び膜貫通ドメイン。宿主範囲(host range)と細胞トロピズム(cellular tropisms)の決定因子はS1ドメイン内のRBD内に存在し、一方、膜融合のメディエーターはS2ドメイン内で識別されている。抗SARS-CoV-2抗体の中和力は、RBD結合に対するACE2受容体との競合によって決定される。
抗体は、例えば、異なるSタンパク質領域を認識する中和化抗体(neutralizing antibodies)を包含する上記の抗体、に応答して迅速に展開する。RBDは、中和化抗体、例えば、強力な中和剤(potent neutralizer)を包含する上記の中和化抗体、の主要なターゲットであるが、NTD及びS2幹領域はまた、中和化エピトープ(neutralizing epitopes)を含む。SARS-CoV-2中和化IgA抗体は、症状の発現後1週間もすると検出され、血清中和に寄与し、そして、IgGと同程度に強力であることができる。中和化抗体はCOVID-19ワクチンの為の防御の主な相関因子である。それでもなお、SARS-CoV-2スパイク特異的抗体、例えば、非中和剤(non-neutralizers)を包含する上記のSARS-CoV-2スパイク特異的抗体、は、イン・ビボ(in vivo)防御の為に重要な抗ウイルスFc依存性エフェクター機能、すなわち抗体依存性細胞障害(ADCC:antibody-dependent cellular cytotoxicity)及び抗体依存性細胞貪食作用(ADCP:antibody-dependent cellular phagocytosis)、を発揮することができる。
2020年半ば以降、スパイクタンパク質、特にその受容体バインディング領域(RBD)、において、予測される変異により、感染性が増加したり、及び/又は中和化抗体に対する感受性が低下したりするSARS-CoV-2の新興の変異型が幾つかの国において報告されており、そして、現在世界的に広がっている。最初に報告されたのは英国(系統B.1.1.7;注目すべき変異はN501Y,69-70del,P681H)であり、その後、南アフリカ(SA:South Africa)(系統B.1.351;注目すべき変異はN501Y,E484K,K417N)とブラジル(BR)(系統P.1;注目すべき変異はN501Y,E484K,K417T)において報告された。幾つかのモノクローナル抗体及び血清由来抗体は、E484K変異を持つ中和化ウイルス(SARS-CoV-2変異体SA及びBR)において10倍~60倍低いことが報告されている。幾つかのワクチンは、これらの変異体に対するそれらの低下された有効性を示す場合がある。
それ以来、SARS-CoV-2の新興の変異体が世界中に広がっており、それは、懸念される変異体(VOC:Variants of Concerns)の系統、例えば、下記に記載されているもの、又はhACE2との高められた親和性及び潜在的な免疫逃避についての可能性をもたらすスパイクタンパク質における同じ変異を含むVOCの系統を包含する:
アルファ(B.1.1.7) N501Y;A570D;P681H;T716I;S982A;D1118H
ベータ(B.1.351) D80A;D215G;K417N;E484K;N501Y;A701V
ガンマ(P.1) L18F;T20N;P26S;D138Y;R190S;K417T;E484K;N501Y;H655Y;T1027I
デルタ(B.1.617.2) T19R;L452R;T478K;P681R;D950N
オミクロン(BA.1亜系統)(B.1.1.529) A67V,H69-,V70-,T95I,G142-,V143-,Y144-,Y145D,N211-,L212I,G339D,S371L,S373P,S375F,K417N,N440K,G446S,S477N,T478K,E484A,Q493R,G496S,Q498R,N501Y,T547K,D614G,H655Y,N679K,P681H,N764K,D796Y,N856K,Q954H,N969K,L981F
オミクロン(BA.2亜系統) G339D;F367V;S371F;S373P;S375F;T376A;D405N;R408S;K417N;N440K;S477N;T478K;E484A;Q493R;Q498R;N501Y;Y505H。
SARS-CoV-2に特異的な予防的且つ治療的アプローチを開発する為に、SARS-CoV-2に対する中和化抗体、特に、SARS-CoV-2に対するヒト中和化抗体、例えば、SARS-CoV-2変異体を中和することができるヒト抗体を包含する上記のヒト中和化抗体、特には、上記のVOC及びそのようなVOCの変異体並びに上記の変異体の組み合わせを有するVOCを中和することができるヒト中和化抗体、が必要とされている。課題は、現在及び将来のVOCからSARSを発症するリスクのある個体を保護する為に、効率的な中和特性を保持するモノクローナル抗体を単独又は組み合わせて提供することである。普遍的なSARS-CoV2スパイクモノクローナル抗体(mAb:モノクローナル antibody)が、ほとんどのVOC及び将来のVOCに対して十分な効力を維持するようなものであることは期待できないが、これらのVOCの大部分及びこれらの変異体の異なる組み合わせを含むVOCを中和することにおいて一貫性のあるmAbを提供することが目標であり、従って、SARSを予防又は処置する為に今後も有用であり続ける。
SARS-CoV-2中和化抗体に基づく免疫療法が迅速に検討され、そして、これにより、幾つかのmAb単独又は二剤併用療法の臨床的使用がもたらされた。これまでに単離された非常に強力なヒトSARS-CoV-2中和化抗体は、臨床において試験又は使用されているものも含め、全てRBDをターゲットとし、そして、前臨床モデルにおいて動物を感染から予防又は防御することができる。しかしながら、抗体中和に対する耐性を付与するスパイク変異を持つウイルス変異体がパンデミックの間に出現し、そして、これらの治療法の幾つかを消滅させた。広範に中和化するmAbについての探索が進められている。全てのVOC、例えば、現在流行しているオミクロン系統を包含する上記の全てのVOC、に対して活性な新規抗体が報告されている。
これらのVOCの大部分及びこれらの変異の異なる組み合わせを含むVOCを中和する際に一貫性のあるmAbを提供するというこの課題は、現在FDA/EMEAに承認されている治療用mAbの大部分の効力が失われていることを示す本明細書に提示された結果を考慮すると、非常に大きな課題である。本発明はこの必要性を満たし、そのような変異を示す主要なVOCにわたって効力が保持された特異的なmAbを提供する。
最も強力なCv2.1169 IgAとCv2.3194 IgGは、VOCのアルファ、ベータ、ガンマ及びデルタに対して完全な活性を示し、なおかつオミクロンBA.1及びBA.2の感染をイン・ビトロ(in vitro)で強力に阻止した。Cv2.1169 IgAのJ鎖二量体化は、BA.1及びBA.2に対する中和効力を大幅に向上させた。Cv2.1169は、マウス及びハムスターのSARS-CoV-2感染モデルにおいて治療的効果を示した。
本発明は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する抗体、及びそれらのフラグメント、例えば、それらの抗原結合性フラグメント(抗原-binding fragment)を包含する上記のそれらのフラグメント、特には、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和化抗体、核酸、該抗体をコードするベクター、組成物、試薬、医療用デバイス、並びに、本開示に従う、該抗体、核酸、ベクターを含むキット、を提供する。
本発明は、本開示に従う、該抗体、核酸、ベクターを作成する方法及び使用する方法、並びにそれらを使用する方法、特には、SARS-CoV-2感染及び関連付けられた疾病(COVID-19)の、検出、診断、モニタリング、予防及び処置の方法、を包含する。
本開示は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、ウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、及び、下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169;
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194;
(i)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1353;
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.5213;並びに、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3235
のうちの少なくとも1つのRBDへの結合の競合的阻害剤である。
本開示はまた、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、ウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、及び、下記の参照抗体のRBDへの結合の競合的阻害剤である:(i)配列番号152のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号153のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.5179。
従って、本開示はまた、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、ウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、及び、下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194;
(i)配列番号152のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号153のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.5179;
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169;
(i)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1353;
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.5213;並びに、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3235
のうちの少なくとも1つのRBDへの結合の競合的阻害剤であり、
ここで、該ヒト中和化抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
a)配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
b)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
c)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
d)配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号32の軽鎖CDR1、配列番号33の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
e)配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号44の軽鎖CDR1、配列番号45の軽鎖CDR2及び配列番号46の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
f)配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号50の軽鎖CDR1、配列番号51の軽鎖CDR2及び配列番号52の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
g)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変ドメインであって、それは夫々、配列番号23~25又は138~140と、1、2若しくは3個のCDRの配列において2以下のアミノ酸変異により異なる上記の重鎖可変ドメイン;並びに、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変ドメインであって、それは夫々、配列番号26~28又は141~143と、1、2若しくは3個のCDRの配列において2以下のアミノ酸変異により異なる上記の軽鎖可変ドメイン
を含む。
従って、本開示はまた、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対する単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号138の重鎖CDR1、配列番号139の重鎖CDR2及び配列番号140の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン
、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体
から選択される重鎖可変ドメイン、
並びに、
配列番号141の軽鎖CDR1、配列番号142の軽鎖CDR2及び配列番号143の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号32の軽鎖CDR1、配列番号33の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号44の軽鎖CDR1、配列番号45の軽鎖CDR2及び配列番号46の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号50の軽鎖CDR1、配列番号51の軽鎖CDR2及び配列番号52の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体
から選択される軽鎖可変ドメイン
を含むことにおいて特徴付けられる。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントが、参照ヒト抗体Cv2.5179、Cv2.1169又はCv2.3194;例えば、Cv2.1169又はCv.3194;例えば、Cv2.1169又はCv2.5179;好ましくは参照ヒト抗体Cv2.1169、とバインディングを競合する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントが、配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、又は1、2若しくは3個のCDRの配列において6以下(1、2、3、4、5又は6)のアミノ酸変異、好ましくは保存的アミノ酸置換、を含むそれらの変異体を含む。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、
a)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
b)配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号32の軽鎖CDR1、配列番号33の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
c)配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
d)配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号44の軽鎖CDR1、配列番号45の軽鎖CDR2及び配列番号46の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
e)配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号50の軽鎖CDR1、配列番号51の軽鎖CDR2及び配列番号52の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;又は、
f)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変ドメインであって、それは夫々、配列番号23~25、29~31、35~37、41~43又は47~49と、1、2若しくは3個のCDRの配列において6以下(1、2、3、4、5又は6)のアミノ酸変異により異なる上記の重鎖可変ドメイン;並びに、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変ドメインであって、それは夫々、配列番号26~28、32~34、38~40、44~46又は50~52と、1、2若しくは3個のCDRの配列において6以下(1、2、3、4、5又は6)のアミノ酸変異、好ましくは保存的アミノ酸置換、により異なる上記の軽鎖可変ドメイン
を含む。
幾つかのより好ましい実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。
幾つかの他のより好ましい実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示に従う抗体は、
a)配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
b)配列番号5と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
c)配列番号7と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号8と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
d)配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号10と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、又は、
e)配列番号11と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号12と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
を含む。
幾つかの実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、
a)配列番号3からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号4からなる軽鎖可変ドメイン、
b)配列番号5からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号6からなる軽鎖可変ドメイン、
c)配列番号7からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号8からなる軽鎖可変ドメイン、
d)配列番号9からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10からなる軽鎖可変ドメイン、又は、
e)配列番号11からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号12からなる軽鎖可変ドメイン
を含まない。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示に従う抗体は、配列番号3の重鎖可変ドメイン及び配列番号4の軽鎖可変領域を含む。
幾つかの実施態様において、本開示に従う抗体の重鎖可変ドメインは、配列番号132と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖定常領域に関連付けられている。
幾つかの実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントの重鎖可変ドメインは、IgG又はIgA定常領域と会合している。幾つかの特定の実施態様において、IgA定常領域を含む該抗体は、J鎖及び/又は分泌成分を更に含む。幾つかの特定の実施態様において、該定常領域は、抗体のエフェクター機能を抑制し及び/又はイン・ビボ(in vivo)で抗体の半減期を増加させるところの1以上の変異及び/又は改変を含む。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、IgG1定常領域と会合している。好ましくは、該抗体は、配列番号13、15、17、19及び21、好ましくは配列番号13、のいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列を含む。より好ましくは、該抗体は、
a)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖;
b)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖;
c)配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖;
d)配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖;又は、
e)配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖
を含む。
幾つかの他の好ましい実施態様において、該抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号133、134、135、136及び137のうちのいずれか1つ、好ましくは配列番号133、と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列を含む。より好ましくは、該抗体は、
a)配列番号133のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖;
b)配列番号134のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖;
c)配列番号135のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖;
d)配列番号136のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖;又は、
e)配列番号137のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖、並びに配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖
を含む。
幾つかのより好ましい実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号13の重鎖アミノ酸配列及び配列番号14の軽鎖アミノ酸配列を含む。
幾つかの他のより好ましい実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号133の重鎖アミノ酸配列及び配列番号14の軽鎖アミノ酸配列を含む。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、組み換えヒトモノクローナル抗体であり、好ましくは、IgG1又はIgAアイソタイプであり、ここで、該IgAは、単量体、高分子IgA又は分泌型IgAであってもよく、好ましくは、該IgAは、高分子IgA又は分泌型IgAである。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、10nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下及び300pM以下から選択されるKDを有する、配列番号106の組み換えSARS-CoV-2 S-三量体に結合する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、25nM以下、10nM以下、5nM以下及び1nM以下から選択されるKDを有する、配列番号107の組み換えSARS-CoV-2 S1タンパク質に結合する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、25nM以下、10nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下及び100pM以下から選択されるKDを有する、配列番号108~111及び122~125のいずれか1つの組み換えSARS-CoV-2 RBDタンパク質に結合する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号103の組み換えアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)エクトドメインタンパク質の結合親和性よりも高い結合親和性、好ましくは、少なくとも5、10、25、50、100、250、500又は1000倍高い結合親和性、を有する、配列番号106のトリ-S1タンパク質、配列番号107のS1タンパク質、及び配列番号108~111及び122~125のRBDタンパク質から選択される少なくとも1つの組み換えSARS-CoV-2 Sタンパク質に結合し、好ましくは、ここで、該RBDタンパク質についての該抗体の該結合親和性が、ACE2エクトドメインタンパク質の結合親和性よりも少なくとも10、25、50、100、250、500又は1000倍高い。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号106又は126の組み換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質を、1μg/mL以下、0.5μg/mL以下、0.4μg/mL以下、0.3μg/mL以下、0.2μg/mL以下及び0.1μg/mL以下から選択されるEC50を有する、配列番号103の組み換えACE2エクトドメインタンパク質に結合させることを競合的に阻害する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号106又は126の組み換えSARS-CoV-2スパイク又は配列番号108~111及び122~125及び184のRBDタンパク質の、組み換えACE2エクトドメインタンパク質への結合を少なくとも70%、80%又は90%ブロックする。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号106又は126の組み換えSARS-CoV-2スパイク又は配列番号108~111及び122~125及び184のRBDタンパク質の、組み換えACE2エクトドメインタンパク質への結合を少なくとも70%、80%又は90%ブロックする。
本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントの幾つかの特定の実施態様において、組み換えSARS-CoV-2 S-三量体、S1及び/又はRBDタンパク質が、単離株であるWuhan-Hu-1、B.1.1.7系統、P.1系統、B.1.351系統、B.1.617系統、B.1.1.529系統(「オミクロン変異体」を包含する)又は、それらの、任意の亜系統、懸念される変異体(VOC)又は関心のある変異体、例えば、任意のオミクロン変異体、系統又は亜系統、例えば、BA.1、BA.1.1又はBA.2、から選択される。
幾つかの特定の実施態様において、B.1.617系統は、B.1.617.1、B.1.617.2及びB.1.617.3から選択される亜系統のうちのいずれか一つを含みうる。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、系統B.1.1.7、P.1及びB.1.351及びB.1.617及びB.1.1.529から選択される、特には系統B.1.1.7、P.1及びB.1.351及びB.1.617.2及びB.1.617.2.1及びB.1.617.1.3から選択される、少なくとも1つのSARS-CoV-2変異体を中和する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、系統B.1.1.7、P.1及びB.1.351及びB.1.617及びB.1.1.529及びBA.2から選択される、特には系統B.1.1.7、P.1及びB.1.351及びB.1.617.2及びB.1.617.2.1及びB.1.617.1.3及びBA.2から選択される、少なくとも1つのSARS-CoV-2変異体を中和する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つのSARS-CoV-2変異体、系統又は亜系統、例えば、オミクロン変異体の亜系統の系統、例えばBA.2変異体亜系統、から選択される少なくとも1つのSARS-CoV-2変異体、系統又は亜系統、を中和する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、20ng/mL以下、15ng/mL以下、10ng/mL以下、5ng/mL以下及び1ng/mL以下から選択される半数最大有効濃度(EC50)でSARS-CoV-2を中和する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、S-CoV-2単離株であるWuhan-Hu-1、SARS-CoV-2変異体D614G、及びRBDドメイン中に1以上の変異を含むSARS-CoV-2変異体から選択される少なくとも1つのSARS-CoV-2を中和する。
好ましい実施態様に従うと、RBDドメインにおける1以上の変異が、N501Y、E484K、K417N及びK417T置換のうちの1以上から選択される。他の好ましい実施態様に従うと、RBDドメインにおける1以上の変異が、N501Y、E484K、E484Q、K417N、K417T、L452R、T478K置換のうちの1以上から選択される。
他の好ましい実施態様に従うと、該RBDドメインにおける1以上の変異が、K417N、K417T、N440K、L452R、G446S、S477N、T478K、E484A、E484K、E484Q、Q493R、G496S、Q498R及びN501Y置換のうちの1以上から選択される。
他の好ましい実施態様に従うと、該RBDドメインにおける1以上の変異が、K417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、E484K Q493R、G496S、Q498R及びN501Y置換のうちの1以上から選択される。
好ましくは、SARS-CoV-2変異体が、B.1.1.7、P.1系統及びB.1.351系統及びB.1.617系統及びB.1.1.529系統から選択される。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、SARS-CoV-1、MERS-CoV、NL63-CoV、OC43-CoV、HKU1-CoV及び229E-CoVから選択される少なくとも1つのヒトコロナウイルスと交差反応しない、好ましくは、該抗体は、該ヒトコロナウイルスの全てと交差反応しない。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、対照抗体と比較して、抗体依存性細胞障害(ADCC)の通常のレベルを有する。特に、該抗体は、対照抗体と比較して、CD16(FcγRI)受容体に対して通常の親和性を有する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、対照(陽性又は内因性)抗体と比較して、抗体依存性細胞障害(ADCC)の調節された(すなわち、低い又は低下した)レベルを有する。特に、該抗体が、対照抗体と比較して、CD16(FcγRI)受容体に対する調節された(すなわち、低い又は低下した)レベルを有する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、対照抗体と比較して、抗体依存性細胞障害(ADCC)の低いレベルを有する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、対照抗体と比較して、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)の通常のレベルを有する。特に、該抗体は、対照抗体と比較して、CD32A(FcγRIIA)受容体に対する通常の親和性を有する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、対照(陽性又は内因性)抗体と比較して、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)の調節された(すなわち、正常な又は改善された)レベルを有する。特に、該抗体は、対照抗体と比較して、CD32A(FcγRIIA)受容体に対する調節された(すなわち、正常な又は改善された)レベル親和性を有する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、対照抗体と比較して、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)の改善されたレベルを有する。
所与の抗体のADCP活性又はADCC活性を測定する場合に、対照(陰性)抗体はアイソタイプ対照としてmGO53から選択されうる。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、ヒトタンパク質に対する予測された反応性を有さず、対照抗体と比較して自己反応性がなく、及び/又は対照抗体と比較して多反応性がない。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、真核生物組み換え系において産生される。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、原核生物組み換え系において産生される。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、非ネイティブヒトグリコシル化パターン及び/又は非ヒトグリコシル化パターンを含む。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、組み換え的に産生され、且つ非ネイティブヒトグリコシル化パターン及び/又は非ヒトグリコシル化パターンを含む。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、組み換え的に産生され、且つ非ヒトグリコシル化パターンを含む。
本開示の別の観点は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体
から選択される重鎖可変ドメイン;並びに、
配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、若しくは1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号32の軽鎖CDR1、配列番号33の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、若しくは1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号44の軽鎖CDR1、配列番号45の軽鎖CDR2及び配列番号46の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号50の軽鎖CDR1、配列番号51の軽鎖CDR2及び配列番号52の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体
から選択される軽鎖可変ドメイン
を含むことにおいて特徴付けられている。
幾つかの実施態様において、該抗体又は抗原結合性フラグメントは、上記に開示された配列を含む重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインを含み、好ましくは上記に開示されたIgG又はIgAと会合した重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインを含み、例えば、配列番号132と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖定常領域と会合した、重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインを含む。
幾つかの実施態様において、本開示に従う抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、検出可能な標識を更に含む。
その主な実施態様のうちの一つに従うと、本発明は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン、又は1、2若しくは3個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体;並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン、又は1、2若しくは3個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体;又は、
配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン;並びに、配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン
を含むことにおいて特徴付けられている。
主な第2の実施態様に従うと、本発明は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体に関し、それは、ウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、且つ及び下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169;及び、下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194
のうちの少なくとも1つのRBDへの結合の競合的阻害剤であり、
ここで、該ヒト中和化抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
a)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号2の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;又は、
b)配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに、配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含む。
本発明の別の観点は、本開示に従う抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸、好ましくは、
本開示に従う抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸配列を少なくとも含む単離された核酸、に関する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う該単離された核酸は、mRNA、好ましくは改変されたmRNA、である。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う該単離された核酸は、DNAである。
本発明の別の観点は、宿主細胞において、本開示に従う抗体の組み換え生産の為の発現ベクターであって、本開示に従う抗体をコードする少なくとも1つの核酸を含む上記の発現ベクターに関する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う該発現ベクターは、配列番号93と少なくとも90%の同一性を有する配列と配列番号94と少なくとも90%の同一性を有する配列;配列番号95と少なくとも90%の同一性を有する配列と配列番号96と少なくとも90%の同一性を有する配列;配列番号97と少なくとも90%の同一性を有する配列と配列番号98と少なくとも90%の同一性を有する配列;配列番号99と少なくとも90%の同一性を有する配列と配列番号100と少なくとも90%の同一性を有する配列;並びに、配列番号101と少なくとも90%の同一性を有する配列と配列番号102と少なくとも90%の同一性を有する配列、から選択される核酸配列の一対を含む。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う該発現ベクターは、ブダペスト条約に基づき、2021年1月28日に、Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5651及びI-5652で夫々寄託されたCv2.1169_pIgH及びCv2.1169_pIgLから選択される細菌株中に含まれている。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う該発現ベクターは、ブダペスト条約に基づき、2021年4月2日に、Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5668、I-5669、I-5670、I-5671、I-5672、I-5673、I-5674及びI-5675で夫々寄託された、Cv2.1353_IgH、Cv2.1353_IgL、Cv2.3194_IgH、Cv2.3194_IgL、Cv2.3235_IgH、Cv2.3235_IgL、Cv2.5213_IgH及びCv2.5213_IgLから選択される細菌株中に含まれている。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う該発現ベクターは、ブダペスト条約に基づき、2021年11月15日に、Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号CNCM I-5775及びCNCM I-5776の語の下で登録されたCv2.5179_IgH及びCv2.5179_IgLからなるグループから選択される細菌株中に含まれている。
別の観点は、本開示に従う発現ベクター又は本開示に従う核酸を含む宿主細胞に関する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う該宿主細胞は、該発現ベクターで安定的に形質転換された抗体産生細胞株である。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う該宿主細胞は、真核細胞である、好ましくは、酵母、昆虫及び哺乳動物細胞から選択される。
別の観点は、本開示に従う抗体の産物の製造方法であって、(i)該宿主細胞によって、該抗体の発現の為の本開示の宿主細胞を培養すること、及び任意的に、(ii)該抗体を回収すること、及び、(iii)該抗体を精製することを含む上記の方法に関する。
別の観点は、医薬組成物であって、該医薬組成物は、本開示に従う、該抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、核酸又はベクター、並びに、医薬的に許容可能な担体、アジュバント及び保存剤のうちの少なくとも1つを含む上記の医薬組成物に関する。
本開示の特定の別の観点は、医薬組成物であって、
(i)抗体又はそれらの抗原結合性フラグメント、核酸又はベクター;及び、
(ii)下記の参照抗体、すなわち、アジントレビマブ、シルガビマブ、ソトロビマブ及びイムデビマブのうちの少なくとも1つのグループから選択される抗体
を含む上記の医薬組成物に関する。
本開示の別の観点は、キットであって、
(i)抗体又はそれらの抗原結合性フラグメント、核酸又はベクター;及び、
(ii)下記の参照抗体、すなわち、アジントレビマブ、シルガビマブ、ソトロビマブ及びイムデビマブのうちの少なくとも1つのグループから選択される抗体
を含む上記のキットに関する。
幾つかの特定の実施態様において、該核酸は、mRNA、特には、改変されたmRNA、であり、好ましくは、小胞(vesicle)又は粒子、特には脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)、に製剤化されている。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う医薬組成物は、非経口注射、注入、局所送達、吸入又は持続送達の為のものである。
別の観点は、医薬として使用する為の、本開示に従う、該抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、核酸、ベクター又は医薬組成物に関する。
別の観点は、SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病を予防又は処置する為の、本開示に従う医薬組成物に関する。
別の観点は、SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病を予防又は処置する為の医薬の製造の為に、本開示に従う医薬組成物を使用する方法に関する。
別の観点は、サンプルにおいてSARS-CoV-2を検出する方法であって、該サンプルを、本開示に従う抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントと接触させること;及び、形成された抗原抗体複合体を検出し、それによって、該サンプル中のSARS-CoV-2の存在、非存在又はレベルを検出すること
を含む上記の方法に関する。
本開示に従う方法の幾つかの特定の実施態様において、該サンプルが、SARS-CoV-2に汚染されていると疑われる対象からの生物学的サンプルであり、及び該方法は、SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病の診断の為のものである。
本開示に従う方法の幾つかの特定の実施態様において、該サンプルが、COVID-19疾病の処置の前又は処置の間のCOVID-19患者からの生物学的サンプルであり、及び該方法は、COVID-19疾病の処置のモニタリングの為のものである。
別の観点は、SARS-CoV-2感染若しくは汚染の検出若しくは診断、又はCOVID-19疾病の処置のモニタリングの為のキットであって、本開示に従う抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントを少なくとも含み、好ましくは検出可能な標識を更に含む、上記のキットに関する。
別の観点は、対象においてSARS-CoV-2に関連付けられたCOVID-19疾病を発症するリスクを低減する方法であって、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を該対象に投与することを含む上記の方法に関する。
該方法の幾つかの特定の実施態様において、入院のリスクが低減される。
該方法の幾つかの特定の実施態様において、死のリスクが低減される。
別の観点は、対象において、SARS-CoV-2に関連付けられたCOVID-19疾病を処置する方法であって、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を該対象に投与することを含む上記の方法に関する。
該方法の幾つかの特定の実施態様において、重篤な疾病を発症する可能性が処置によって減少する。
該方法の幾つかの特定の実施態様において、入院の可能性が処置によって減少する。
該方法の幾つかの特定の実施態様において、該対象が入院している。
別の観点は、対象において、SARS-CoV-2に関連付けられたCOVID-19疾病を処置する方法であって、本開示に従う、少なくとも2つの抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントの組み合わせの有効量を投与することを含む上記の方法に関する。
別の観点は、対象において、SARS-CoV-2に関連付けられたCOVID-19疾病を処置する方法であって、本開示に従う抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントの有効量を、アジントレビマブ、シルガビマブ、ソトロビマブ及びイムデビマブから選択される抗体と組み合わせて投与することを含む上記の方法に関する。
別の観点は、本開示に従う方法であって、ここで、対象が、SARSを発症するリスクがあり、より特には、基礎疾患、例えば、肥満、糖尿病、癌、免疫抑制療法中、原発性免疫不全又はワクチンに対する無反応性、を併発している対象である。
別の観点は、コロナウイルス科感染症、特にはSARS-CoV-2感染を予防する為に及び/又はその発生の可能性を低減する為に、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を投与することを含む上記の方法に関する。
別の観点は、コロナウイルス科感染の合併症、特には、コロナウイルス科感染の呼吸器系、神経系、胃腸系又は心臓血管系の合併症、特にはSARS-CoV-2感染の合併症、を予防する為に及び/又はその発生の可能性を低減する為に、本開示に従う、抗体又はそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を投与することを含む上記の方法に関する。
他の特定の観点は、コロナウイルス科感染症、特にはSARS-CoV-2感染症、の重篤な急性呼吸器系合併症を予防する為に及び/又はその発生の可能性を低減する為に、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を投与することを含む上記の方法に関する。
別の観点は、個体において、コロナウイルス科感染の発生を予防する為に及び/又はその可能性を低減する為に、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を投与することを含む方法であって、該個体が、下記の特徴、すなわち、
該個体に、コロナウイルス科感染症に対するワクチンを投与されていない;又は、
該個体が、該ワクチンに反応しない;又は、
該コロナウイルス科感染に対して向けられた抗体の個人のレベルが、保護する閾値レベル以下であること
によって特徴付けられる上記方法に関する。
別の観点は、コロナウイルス科ウイルス、特にはSARS-CoV-2感染、に対する免疫応答を改善する為に、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を投与することを含む上記の方法に関する。
他の特定の観点は、コロナウイルス科ウイルスのウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)又はそれらのフラグメントに対する免疫応答を改善する為に、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を投与することを含む上記の方法に関する。
別の観点は、コロナウイルス科感染症、特にはSARS-CoV-2感染、に対するワクチンと組み合わせて、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を投与することを含む上記の方法に関する。
別の観点は、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を特異的に中和する第2の抗体と組み合わせて投与することを含む方法に関し、ここで、該第2の抗体は、第1の抗体とのRBDへの結合の競合的阻害剤でない。
別の観点は、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合するところの第2の抗体と組み合わせて投与することを含む方法に関し、ここで、該第2の抗体は、クラス2又はクラス3の抗SARS-CoV2スパイクタンパク質抗体である。
別の観点は、本開示に従う、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の有効量を、下記の参照抗体、すなわち、アジントレビマブ、シルガビマブ、イムデビマブ及びソトロビマブのうちの少なくとも1つのグループから選択される第2の抗体と組み合わせて投与することを含む上記の方法に関する。
別の観点は、コロナウイルス科感染、特にはSARS-CoV-2感染症、に対するワクチンと組み合わせて医薬品として使用する為の、本開示に従う、抗体若しくはその抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物に関する。
別の観点は、医薬を調製する為の、コロナウイルス科感染、特にはSARS-CoV-2感染、に対するワクチンと組み合わせた、本開示に従う、抗体若しくはその抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の使用に関する。
別の観点は、医薬として使用する為の、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を特異的に中和するところの第2の抗体と組み合わせた、本開示に従う、抗体若しくはその抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物に関し、ここで、該第2の抗体は、該第1の抗体とのRBDへの結合の競合的阻害剤でない。
別の観点は、医薬を調製する為に、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を特異的に中和するところの第2の抗体と組み合わせた、本開示に従う、抗体若しくはその抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の使用に関し、ここで、該第2の抗体は、第1の抗体とのRBDへの結合の競合的阻害剤でない。
別の観点は、医薬として使用する為の、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合するところの第2の抗体と組み合わせた、本開示に従う、抗体若しくはその抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物に関し、ここで、該第2の抗体は、クラス2又はクラス3の抗SARS-CoV2スパイクタンパク質抗体である。
別の観点は、医薬を調製する為の、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合するところの第2の抗体と組み合わせた、本開示に従う、抗体若しくはその抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の使用に関し、ここで、該第2の抗体は、クラス2又はクラス3の抗SARS-CoV2スパイクタンパク質抗体である。
別の観点は、医薬として使用する為の、特には上記された適応症の為に使用する為の、下記の参照抗体、すなわち、アジントレビマブ、シルガビマブ、イムデビマブ及びソトロビマブのうちの少なくとも1つのグループから選択される第2の抗体と組み合わせた、本開示に従う、抗体若しくはその抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物に関する。
別の観点は、医薬を調製する為の、下記の参照抗体、すなわち、アジントレビマブ、シルガビマブ、イムデビマブ及びソトロビマブのうちの少なくとも1つのグループから選択されるところの第2の抗体と組み合わせた、本開示に従う、抗体若しくはその抗原結合性フラグメント、又は核酸若しくはベクター、又は医薬組成物の使用に関する。
本開示に従う、使用、方法、組成物及びキットは、ヒト及び、非ヒト患者、例えば非ヒト哺乳動物、に有利に適しうる。
別の観点は、本開示に従う医薬組成物を含む医療機器に関し、好ましくは、注射又は吸入による投与に適した形態である上記の医療機器に関する。
本開示は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体は、それらの抗原結合性フラグメントを含めて、特には、下記の特性を有するSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する組み換えヒトモノクローナル抗体、を提供する:
-それらは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)エクトドメインの結合親和性よりも高い結合親和性でSARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合する;
SARS-CoV-2スパイク(S-三量体又はトリ-S)、S1サブユニット、スパイク-RBD(S-RBD)タンパク質に対する抗体及びACE2-エクトドメインタンパク質タンパク質バインディングアッセイ(ACE2-ectodomain protein binding assay)の結果が図3Aにおいて示されている;
-それらは、スパイクのACE2エクトドメインタンパク質、及びSARS-CoV-2、並びにウイルス変異体由来のS-RBDタンパク質(B.1.1.7,B.1.351,P.1,B.1.617及びB.1.1.529)への結合をブロックする;(図3C、図3F、図3I及び図3L);
-それらは、SARS-CoV-2ウイルス、例えば、Wuhan-Hu-1分離株及びその変異体(D614G,B.1.1.7,B.1.351,P.1)、特にはE484K免疫回避変異(immune escape mutation)を有する変異体(P.1,B.1.351)を包含する上記のSARS-CoV-2ウイルス、を中和する;図3D,図3G及び図3I;
-それらは、SARS-CoV-2スパイク及びS-RBDタンパク質への結合に関して互いに競合し(図3B)、それは、それらがSARS-CoV-2スパイク受容体-結合ドメイン上の同じ又は関連する(空間的に近接した)エピトープに結合してもよいことを示す;及び、
-それらは、他のコロナウイルス、例えば、ヒト病原性ベータコロナウイルス(グループB/C)SARS-CoV-1及びMERS-CoVを包含する上記の他のコロナウイルス、とは交差反応しない;アルファコロナウイルスNL63-CoV及び229E-CoV、並びにベータコロナウイルスグループA HKU1-CoV(表5)と交差反応しない;及び、
-それらは、IgG又はIgAとして少なくとも活性である(図3L及び3M)。
その上、全ての抗体(試験された6つの抗体)は、限定されたFcエフェクター機能、特には限定された抗体依存性細胞障害(ADCC)、を有する(表5)。全ての抗体はヒトタンパク質と反応しないと予測され(オフターゲット結合なし;図5E)及び自己反応性抗体(self-reactive antibodies)でもない(図5C、図5D及び図5E)。大半の抗体は非反応性抗体(non-polyreactive antibodies)である(図5A、図5B及び図5F)。
SARS-CoV-2に対するヒト中和IgG抗体の治療的効果は、SARS-CoV-2感染の2つの異なる動物モデルにおいて検証された(図6)。SARS-CoV-2に対するそれらの特異性の故に、これらの抗体はまた、SARS-CoV-2感染の診断及びCOVID-19処置のモニタリングに有用である。
本開示は、そのような抗体及びそれらの抗原結合性フラグメントがまた、懸念される新しい変異体(VOC:Variants of Concerns)及び関心のある新しい変異体(VOI:Variants-of-Interest)、例えば、デルタ変異体及びオミクロン変異体を包含する上記の懸念される新しい変異体及び関心のある新しい変異体、に対して強力な中和化抗体であるという実験的証拠を更に提供する(図9、図10、図11、図12、図13及び図14)。
本開示は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する他の参照治療抗体との競合アッセイの形で、そのような抗体及び抗原結合性フラグメントのベンチマーク研究を更に提供する。特には、そのような抗体及び抗原結合性フラグメントは、他の治療用抗体よりも広範な中和効果を実証すると同時に、別個の又は部分的に重複するエピトープをターゲットとすることが本明細書において実証されている(図10、図11、図16及び図18)。
これらの結果から、本開示に従うSARS-CoV-2中和化抗体は、それらの抗原結合性フラグメントを含めて、SARS-CoV-2感染及び関連付けられた疾病COVID-19の処置及び診断の為の有望な免疫治療及び診断ツールとなる。
本開示は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントであって、それが、ウイルスのスパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194;
(i)配列番号152のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号153のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.5179;
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169;
(i)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1353;
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.5213;並びに、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3235
のうちの少なくとも1つのRBDへの結合の競合的阻害剤であり、
ここで、該ヒト中和化抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
a)配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
b)配列番号138の重鎖CDR1、配列番号139の重鎖CDR2及び配列番号140の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号141の軽鎖CDR1、配列番号142の軽鎖CDR2及び配列番号143の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
c)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
d)配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号32の軽鎖CDR1、配列番号33の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
e)配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号44の軽鎖CDR1、配列番号45の軽鎖CDR2及び配列番号46の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;
f)配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号50の軽鎖CDR1、配列番号51の軽鎖CDR2及び配列番号52の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;又は、
g)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変ドメインであって、それは夫々、配列番号23~25又は138~140と、1、2若しくは3個のCDRの配列において2以下のアミノ酸変異により異なる上記の重鎖可変ドメイン;並びに、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変ドメインであって、それは夫々、配列番号26~28又は141~143と、1、2若しくは3個のCDRの配列において2以下のアミノ酸変異により異なる上記の軽鎖可変ドメイン
を含む、
上記のヒト中和モノクローナル抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントに関する。
本開示は更に、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン;又は、
配列番号138の重鎖CDR1、配列番号139の重鎖CDR2及び配列番号140の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有するそれらの変異体;又は、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有するそれらの変異体;又は、
配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン;又は、
配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン;又は、
配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン
から選択される重鎖可変ドメイン;並びに、
配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン;又は、
配列番号141の軽鎖CDR1、配列番号142の軽鎖CDR2及び配列番号143の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン、若しくは1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン、若しくは1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号32の軽鎖CDR1、配列番号33の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン;又は、
配列番号44の軽鎖CDR1、配列番号45の軽鎖CDR2及び配列番号46の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン;又は、
配列番号50の軽鎖CDR1、配列番号51の軽鎖CDR2及び配列番号52の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン
から選択される軽鎖可変ドメイン
を含むことにおいて特徴付けられている。
その主な実施態様のうちの一つに従うと、本発明は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン、又は1、2若しくは3個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体;並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン、又は1、2若しくは3個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体;又は、
配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン;並びに、配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン
を含むことにおいて特徴付けられている。
幾つかの特定の実施態様において、本発明は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン、又は1、2若しくは3個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体;並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン、又は1、2若しくは3個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体
を含むことにおいて特徴付けられている。
幾つかの特定の実施態様において、本発明は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン、又は1若しくは2個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体;並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン、又は1若しくは2個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体
を含むことにおいて特徴付けられている。
幾つかの特定の実施態様において、本発明は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン、又は1個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体;並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン、又は1個のCDRの配列における1以下のアミノ酸変異を含むそれらの変異体
を含むことにおいて特徴付けられている。
幾つかの特定の実施態様において、本発明は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン;並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン
を含むことにおいて特徴付けられている。
幾つかの特定の実施態様において、本発明は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、
配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3の3つの全てを含む重鎖可変ドメイン;並びに、配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3の3つの全てを含む軽鎖可変ドメイン
を含むことにおいて特徴付けられている。
主な第2の実施態様に従うと、本発明は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体に関し、それは、ウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、及び、下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169;及び、
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194
のうちの少なくとも1つのRBDへの結合の競合的阻害剤であり、
ここで、該ヒト中和化抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
a)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号2の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;又は、
b)配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含む。
幾つかの特定の実施態様において、本発明は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、ウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、及び、下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169
のRBDへの結合の競合的阻害剤であり、
ここで、該ヒト中和化抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号2の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含む。
幾つかの特定の実施態様において、本発明は、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、ウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、及び、下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194
のRBDへの結合の競合的阻害剤であり、
ここで、該ヒト中和化抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含む。
定義
本発明において使用される場合に、語「SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質又は糖タンパク質」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、及びアクセッション番号UniProtK P0DTC2又は配列番号1で報告された正規配列を有する三量体クラスIウイルス融合タンパク質(trimeric class I viral fusion protein)(S-三量体(S trimer)、すなわちトリ-S(tri-S))を云う。構造予測に基づき、シグナルペプチド(SP:signal peptide)は1位~12位;エクトドメイン(ectodomain)(細胞外ドメイン)は13位~1213位;膜貫通ドメインIは1214位~1234位、及び細胞質ドメインは1235位~1273位である。S1サブユニットは13位~685位、受容体結合ドメイン(RBD又はRBDドメイン)は319位~541位、及びS2サブユニットは686位~1273位である。しかしながら、ドメイン又はサブユニットの位置は、示された位置に対してわずかに(+1~+15及び-1~-15)変動してもよい。例えば、該シグナルペプチドは参照配列の配列番号1の1位~15位、該エクトドメインは13位~1208位、S1タンパク質は16位~681位、及びRBDは331位~530位でありうる。本開示に従う抗SARS-CoV-2抗体によって認識されるRBDドメインは典型的には、配列番号2でありうる。
本発明において使用される場合に、SARS-CoV-2は、SARS-CoV-2分離株であるWuhan-Hu-1及び本発明に従う抗体によって中和されるところのその任意の分離株、株、系統、亜系統又は変異体を云う。SARS-CoV-2分離株であるWuhan-Hu-1は、SARS-CoV-2参照として使用され、また、ベータCoV_Wuhan_WIV04_2019(EPI_ISL_402124)又はベータCoV_Wuhan_IVDC-HB-05_2019 EPI_ISL_402121と云われる。本発明に従う抗体によって中和されうるところのSARS-CoV-2変異体又は系統の非限定的な例は、下記からなるグループから選択されるRBD中に1以上の変異を含むSARS-CoV-2変異体を包含する:K417N、K417T、N440K、L452R、G446S、S477N、T478K、E484A、E484K、E484Q、Q493R、G496S、Q498R及びN501Y置換;例えば、N501Y、E484K、K417T及びK417N。該変異体は、RBD、スパイクタンパク質、又は他のウイルスタンパク質における他の変異を含んでいてもよく、それらは本開示に従う抗体による中和を妨げない可能性がある。
本明細書において使用される場合に、語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位(抗原 binding site)を含む分子を云う。このように、抗体という用語は、抗体分子全体だけでなく、抗体フラグメント、並びに抗体の変異体(誘導体を包含する)を包含する。
語「抗体」は、特に断りのない限り、抗体分子全体だけでなく、それらの抗原結合性フラグメントも包含する。
げっ歯類及び霊長類の天然抗体において、2本の重鎖がジスルフィド結合によって互いに結合されており、及び各々の重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖と結合されている。2種類の軽鎖、すなわちラムダ(λ)及びカッパ(κ)がある。抗体分子の機能的活性を決定するところの下記の5種類の重鎖クラス(又はアイソタイプ)がある:IgM、IgD、IgG、IgA及びIgE。ヒトの場合に、IgGの下記の4つのサブクラスがある:IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4(血清中の濃度が低い順に番号が付けられている)。IgAは、2つのサブクラスであるIgA1及びIgA2が存在する。IgA1及びIgA2の両方が外部分泌物(分泌性IgA)において見つけられており、ここで、IgA2は血液中よりも顕著である(血清IgA)。各鎖は異なる配列ドメインを含む。典型的なIgG抗体において、該軽鎖は、2つのドメイン、すなわち可変ドメイン(VL:variable domain)及び定常ドメイン(CL:constant domain)を含む。該重鎖は、4つのドメイン、すなわち、可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3、総称してCHとして言及される)を含む。軽鎖(VL)と重鎖(VH)の可変領域は、抗原に対する結合認識(binding recognition)と特異性とを決定する。軽鎖(CL)と重鎖(CH)の定常領域ドメインは、重要な生物学的特性、例えば、抗体鎖の会合(antibody chain association)、分泌、胎盤通過性(trans-placental mobility)、補体結合(complement binding)、Fc受容体(FcR:Fc receptors)への結合、を与える。分泌型IgAは高分子である:2~4個のIgAモノマーは、2つの追加の鎖、すなわち1以上の免疫グロブリン連結(immunoglobulin joining)(J)鎖と分泌成分(SC:secretory component)によって結合されている。該J鎖は、複数のシステイン残基間のジスルフィド結合を通じて2つのIgA分子に共有的に結合する。該分泌成分は、高分子Igを含むJ鎖に結合する高分子免疫グロブリン受容体(pIgR:polymeric immunoglobulin receptor)の細胞外部分のタンパク質分解切断産物(proteolytic cleavage product)である。高分子IgA(主に分泌型二量体)は、粘膜表面に隣接する固有層(lamina propria)における形質細胞によって産生される。高分子IgAは上皮細胞の基底側表面上にある高分子免疫グロブリン受容体に結合し、そして、エンドサイトーシスを解して細胞内に取り込まれる。受容体IgA複合体は細胞区画を通過した後、受容体に結合したまま上皮細胞の管腔表面上に分泌される。受容体のタンパク質分解が生じ、そして、二量体IgA分子は、分泌成分として知られている受容体の一部(sIgAとして知られている)と共に、内腔全体に自由に拡散する。
Fvフラグメントは免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、且つ1本の軽鎖と1本の重鎖の可変部分からなる。該抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定因子との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、超可変領域又は相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)に主に由来するところの残基で構成されている。場合によっては、非超可変領域又はフレームワーク領域(FR:framework region)由来の残基が抗体結合部位に関与したり、又はドメイン全体の構造、ひいては結合部位に影響を与えたりする可能性がある。相補性決定領域(すなわち、CDR)は、天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性と特異性とを画定するところのアミノ酸配列を云う。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々3つのCDRを有し、夫々L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と呼ばれる。それ故に、抗原結合部位は典型的に、6個のCDRを含み、重鎖及び軽鎖のV領域の各々から設定されたCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、複数のCDR間に介在するアミノ酸配列を云う。従って、軽鎖及び重鎖の可変領域は典型的に、下記の配列の4つのフレームワーク領域と3つのCDRを含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。
抗体可変ドメインにおける残基は、慣用的に、Kabat等によって考案されたシステムに従って番号付けされている。このシステムは、Kabat等、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USA(Kabat等,1992,以下「Kabat等」という)において記載されている。この番号付けシステムは、本明細書において使用される。Kabat残基の指定は、配列番号の配列におけるアミノ酸残基の直鎖番号付けと必ずしも直接的に対応しない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本可変ドメイン構造のフレームワークであれ又は相補性決定領域(CDR)であれ、構造的構成要素の短縮又は構造構成要素への挿入に対応する厳密なKabat番号付けよりも少ない又は追加のアミノ酸を含みうる。残基の正しいKabat番号付けは、抗体の配列中の相同性のある残基と「標準の」Kabat番号付けされた配列とのアラインメントによって、所与の抗体について決定されうる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って、残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)及び残基95~102(H-CDR3)に位置している。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って、残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)及び残基89~97(L-CDR3)に位置している。幾つかの抗SARS-CoV-2抗体の予測CDR、例えば、Cv2.1169、Cv2.5213、Cv2.3235、Cv2.1353及びCv2.3194、本明細書において記載されている。
本明細書において使用される場合に、語「モノクローナル抗体」は、単一の特異性を持つ抗体分子の調製物を云う。モノクローナル抗体は、特定のエピトープについての単一の結合特異性と親和性とを示す。従って、語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する若しくはそれに基づく可変領域及び定常領域又は完全に合成された配列に由来する可変領域及び定常領域を有するところの単一の結合特異性を示す抗体を云う。モノクローナル抗体の調製方法は、結合特異性に関係しない。
本発明において使用される場合に、語「組み換え抗体」(recombinant antibody)は、組み換え手段によって産生され、発現され、生成され又は単離されるところの抗体、例えば、宿主細胞内にトランスフェクションされた組み換え発現ベクターを使用して発現されるところの抗体、組み換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子によりトランスジェニックされるところの動物(例えばマウス)から単離される抗体、又は特定の免疫グロブリン遺伝子配列(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子)が他のDNA配列と組み合わされた他の任意の方法で産生され、発現され、生成され又は単離される抗体、を云う。組み換え抗体は例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体を包含する。幾つかの実施態様において、本発明の組み換えヒト抗体は、天然に生じるヒト抗体と同じアミノ酸配列を有するが、天然に生じるヒト抗体とは構造的に異なる。例えば、幾つかの実施形態において、組み換えヒト抗体の組み換え産生の結果として、グリコシル化パターンが異なる。幾つかの実施形態において、該組み換えヒト抗体は、ヒトにおいて天然に生じるヒト抗体の構造に対して、少なくとも1つの共有化学結合を追加し又は減らすことによって化学的に修飾される。
本発明において使用される場合に、語「非ネイティブヒトグリコシル化パターン」(non-native human glycosylation pattern)は、ヒト細胞において産生されること(すなわち、イン・ビトロ(in vitro)産生;例えば、HEK細胞におけるイン・ビトロ産生)を特徴とするところの及び参照ヒト抗体のネイティブのグリコシル化パターンに対応してもよく又は対応しなくてもよいところのグリコシル化パターン(すなわち、本開示に従う抗体のグリコシル化パターン)を云う。
本発明において使用される場合に、語「非ヒトグリコシル化パターン」(non-human glycosylation pattern)は、非ヒト細胞において産生されること(すなわち、CHO細胞におけるイン・ビトロ産生)を特徴とするところのグリコシル化パターンを云う。
本発明において使用される場合に、抗体の「抗原結合性フラグメント」(又、単に「抗体フラグメント」)という語は、抗原(例えば、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質、好ましくはRBDドメイン)に特異的に結合する能力を保持するところの抗体の完全長又は1以上のフラグメントを云う。
抗体の抗原結合機能は、抗体の完全長フラグメントによって実行されることができることが示されている。抗体の「抗原結合性フラグメント」という用語に包含される結合フラグメントの例は、Fabフラグメント、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインからなる1価のフラグメント;F(ab')2フラグメント;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;VHドメイン及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFvフラグメント;VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546)、又はそのような抗原結合性フラグメントを含む任意の融合タンパク質を包含する。その上、Fvフラグメントの2つのドメイン、すなわちVL及びVH、は、別々の遺伝子によってコードされているが、それらは、組み換え法を用いて、VL領域及びVH領域が対になって一価分子を形成する一本鎖タンパク質(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;and Huston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照)として作製されることを可能にするところの合成リンカーによって結合されることができる。そのような一本鎖抗体がまた、抗体の「抗原結合性フラグメント」という用語内に包含されることが意図されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られている慣用的な技術を用いて得られ、そして、該フラグメントはインタクト抗体と同様の方法で有用性についてスクリーニングされる。
抗体の可変領域は可変ドメインから構成される故に、抗体の重鎖又は軽鎖の「可変ドメイン」又は「可変領域」という表現は互換的に使用される。
「抗原(X)を認識する抗体」、「抗原(X)について特異性を有する抗体」、「抗X抗体」、「Xに対する抗体」、及び「に対して向けられた抗体」という句は、本明細書において、「抗原(X)に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
本発明において使用される場合に、「抗体」又は「核酸」は、単離された抗体又は核酸を云う。
本明細書において使用される場合に、「クラス2抗SARS-CoV2スパイクタンパク質抗体」は、「アップ」(up)コンフォメーションのウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)及び「ダウン」(down)コンフォメーションのウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)の両方に特異的に結合しうる中和化抗体を云う。
RBDの「アップ」コンフォメーションは、受容体結合部位がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)のペプチダーゼドメイン(PD)に露出するRBDコンフォメーションに対応する。RBDの「ダウン」コンフォメーションは、ACE2受容体結合部位にアクセスできない閉じたRBDコンフォメーションに対応する。
本明細書において使用される場合に、「クラス3の抗SARS-CoV2スパイクタンパク質抗体」は、RBDのACE2結合部位の外側に結合する中和化抗体を云う。クラス2又はクラス3の抗SARS-CoV2スパイクタンパク質抗体への分類は、Barnes等(“SARS-CoV-2 neutralizing antibody structures inform therapeutic strategies”;Nature;588, 682-687 (2020))において展開されているBarnes分類に対応する。
本開示は、本開示に従う、抗体又は抗原結合性フラグメントの治療的使用(抗体療法)と、該抗体又は抗原結合性フラグメントをコードする核酸又はベクター、特には、mRNA、例えば、改変されたmRNAの治療的使用(核酸療法)との両方を包含する。
本発明において使用される場合に、語「Kassoc」又は「Ka」は、特定の抗体-抗原相互作用の会合率(association rate)を云うことを意図しており、一方、本明細書において使用される場合に、用語「Kdis」又は「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離率(dissociation rate)を云うことを意図している。
本発明において使用される場合に、語「KD」は、Kaに対するKdの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ且つモル濃度(M)として表されるところの解離定数(dissociation constant)を云うことが意図されている。抗体についてのKD値は、Biacore登録商標システムを用いた表面プラズモン共鳴法により決定される(Biacore assay)。
本発明において使用される場合に、語「特異性」は、抗原上に提示されたエピトープ、例えば三量体のクラスIウイルス融合タンパク質であるSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S-三量体又はトリ-S)、特にはSタンパク質単量体のS1サブユニット、より特にはSARS-CoV-2スパイク受容体-結合ドメイン(RBD又はS-RBD)、に検出可能に結合し、一方で、他のエピトープには検出可能に結合しない(すなわち、他のエピトープと交差反応することはない)抗体の能力を云う。SARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン(RBD又はS-RBD)に対する本開示の抗体の特異的結合は、SARS-CoV-2スパイク(S-三量体又はトリ-S)タンパク質、S1サブユニットタンパク質、及びS-RBDタンパク質のうちの少なくとも1つ、特には、SARS-CoV-2 トリ-S(配列番号106)、S1サブユニット(配列番号107)、S-RBD(配列番号108)タンパク質から選択される少なくとも1つ、に対するその結合を云う。RBDはスパイク及びS1タンパク質中に存在する故に、RBDタンパク質についての抗体の特異性はまた、スパイク及びS1タンパク質についての特異性を意味する。
Biacoreアッセイにおいて抗体のターゲットについて1μM以下のKDを該抗体が有する場合に、該抗体はそのターゲットに特異的に結合する。該ターゲットは特に、SARS-CoV-2 トリ-S(配列番号106)、S1サブユニット(配列番号107)及びS-RBD(配列番号108)から選択される(図3A)。少なくともS-RBDターゲットについて基準が生じる場合に、該定義は満たされる。抗体は、製造元の手順に従って、アミノカップリングキット(Biacore)を用いてCM5センサーチップ(Biacore)に共有結合される。比較の為に、組み換えACE2エクトドメインがまた、同じ条件で該センサーチップに結合されうる。全ての分析は、HBS-EPバッファー(10mMのHEPES pH7.2;150mMのNaC;3mMのEDTA、0.005%のツイーン20(Tween 20)を用いて行われる。全てのリアルタイム相互作用測定の間のバッファーの流速は30μl/分に設定される。全ての相互作用は25℃で行われる。SARS CoV-2 トリ-S及びS1タンパク質は、40~0.156nMの範囲でHBS-EPで連続希釈(2倍ステップ)された。低親和性相互作用を除き、同じ濃度範囲がRBDについても使用され、濃度範囲は1280~10nMが適用された。固定化された抗体とACE2とに対するウイルスタンパク質の結合及び解離の段階が夫々、3分間と4分間モニタリングされた。カルボキシメチル化されたデキストランのみを含む参照チャネルへのタンパク質の結合は負の対照として使用され、そして、データ処理の間に結合から差し引かれる。試験された相互作用の速度論的パラメータが、BIAevaluationバージョン4.1.1ソフトウェア(Biacore)を用いることによって評価された。これらの条件において、本開示の抗体Cv2.3235、Cv2.5213、Cv2.1353、Cv2.3194及びCv2.1169は、図3Aにおいて示されているように、3つのターゲット:トリ-S(配列番号106)、S1サブユニット(配列番号107)及びS-RBD(配列番号108)についての1μM未満のKDを有する。S-RBDターゲットについてのKDは、ACE2エクトドメインのKDよりも低い(図3A)。
特異性は更に、例えば、特異的抗原への結合対他の無関係な分子(この場合、特異的抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(トリ-S)、S1サブユニット又はS-RBDであり、特にはSARS-CoV-2 トリ-S(配列番号106)タンパク質、S1サブユニット(配列番号107)タンパク質及びS-RBD(配列番号108)タンパク質から選択される)への非特異的結合における親和性/結合活性(Avidity)の比が約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1又はそれ以上によって示されることができる。少なくともS-RBDタンパク質及び1つの非特異的抗原についての実験的に証明された特異性は、抗体が抗原に対して特異的であることを意味する。本明細書において使用される場合に、語「親和性」は、エピトープに対する抗体の結合の強さを意味する。
本発明において使用される場合に、語「結合活性」(Avidity)は、抗体-抗原複合体の全体的な安定性又は強度の情報的尺度を云う。結合活性は、下記の3つの主要な因子によって制御される:抗体のエピトープ親和性;抗原及び抗体の両方の価数;並びに、相互作用する部分の構造的配置。最終的に、これらの因子が抗体の特異性、すなわち、特定の抗体が正確な抗原エピトープに結合する可能性を画定する。
本発明に従う抗体は、競合ELISA結合アッセイにおいて、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(S-三量体、すなわちトリ-S)及びS-RBDタンパク質への結合について互いに競合する。本明細書において、「相互競合する」(Cross-compete with)は、「~の結合を競合的に阻害する」又は「~の競合的阻害剤である」と互換的に使用される。競合ELISAについて、ELISAプレートは、250ng/ウェルのStrepTagを含まないSARS-CoV-2 トリ-S及びS-RBDタンパク質(配列番号106、108のC末端StrepTag配列を欠失したWSHPQFEK(配列番号121))でコーティングされ、そして、ビオチン化された抗体を(トリ-S競合について100ng/ml、及びRBD競合について25ng/mlの濃度で)、PBSで1:2に連続的に希釈された抗体競合溶液(IgG濃度は0.39~50μg/ml)と共にインキュベーションされた。抗体のインキュベーション工程は、2時間である。
全てのELISAアッセイにおいて、コーティング工程はPBSバッファー中で一晩行われる。各工程間に0.05%のツイーン20(Tween 20)-PBS緩衝液での洗浄が行われる。コーティング工程の後、2%のBSA、1mMのEDTA、0.05%のツイーン20(Tween 20)-PBS(ブロッキングバッファー)で2時間のブロッキング工程が行われる。抗体の希釈とインキュベーションがPBS中で行われる。光学濃度は適切なODで測定され、そして、PBS単独でのインキュベーションによって与えられたバックグラウンド値が差し引かれる。OD>0.5(カットオフ値)が陽性とみなされる。
図3B及び図4Dは、本開示の抗体Cv2.3235、Cv2.5213、Cv2.1353、Cv2.3194及びCv2.1169が、SARS-CoV-2トリ-S及びS-RBDタンパク質への互いの結合を競合的に阻害することを示す。RBD以外のエピトープに結合する抗S対照抗体(Cv2.2396)との競合的阻害はない(図4D)。抗体の競合的阻害の割合は、曲線下面積(AUC:area under curve)を測定することにより決定されうる(図3B)。本開示に従う抗体は、本開示に従う競合ELISA結合アッセイにおいて、SARS-CoV-2トリ-S及び/又はS-RBDタンパク質に対する参照抗体Cv2.3235、Cv2.5213、Cv2.1353、Cv2.3194及びCv2.1169のうちの少なくとも1つの結合を、少なくとも30%、好ましくは50%以上(60%;70%;80%;90%)阻害する。
本開示は、本開示に従う競合ELISA結合アッセイにおいて、参照抗体Cv2.1169、Cv2.5213、Cv2.3235、Cv2.1353及びCv2.3194のうちの少なくとも1つのSARS-CoV-2スパイク及び/又はS-RBDタンパク質との結合の少なくとも30%を阻害するところの抗SARS-CoV-2抗体を包含する。
試験抗体は、まず、直接ELISA結合アッセイにおいて、SARS-CoV-2スパイク(S-三量体又はトリ-S)、S1サブユニット及びS-RBDへのそれらの結合親和性についてスクリーニングされうる。ELISAプレートが、250ng/ウェルの精製された組み換えSARS-CoV-2トリ-S(配列番号106)、S1(配列番号107)及びS-RBD(配列番号108)でコーティングされ、そして、4又は10μg/mlの組み換えモノクローナルIgG1又はIgA抗体、及びPBSで4~7回連続の1:4希釈液でインキュベーションされ、抗体のインキュベーション工程は2時間である。コーティング、洗浄、リベレーション(revelation)及び緩衝液は上記で開示された通りである。本開示に従うSARS-CoV-2スパイク(S-三量体又はトリ-S)、S1サブユニット及びS-RBD(配列番号106~108)に対するELISA結合アッセイにおけるOD値>0.5は、結合親和性の存在を示す(表5)。
上記に開示された競合ELISAアッセイにおいて、試験抗体(test antibody)がSARS-CoV-2スパイク(S)(S-三量体又は三量体-S)及びS-RBDタンパク質に対する本開示の抗体の結合と交差競合する又は競合的に阻害する能力は、該試験抗体がSARS-CoV-2スパイク(S)(S-三量体又は三量体-S)及びRBDタンパク質への結合についてその抗体と競合できることを実証する;そのような抗体は、非限定的な理論に従うと、SARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン上の、競合する抗体と同一又は関連する(例えば、構造的に類似した、又は空間的に近接した)エピトープに結合しうる。
本発明に従う抗体は、ビオチン化されたSARS-CoV-2トリ-S(配列番号106)又はS-RBD(配列番号108)タンパク質とACE2エクトドメインタンパク質(配列番号103)を用いた競合ELISA結合アッセイにおいて、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)へのSARS-CoV-2スパイク(S-三量体、すなわちトリ-S)及び/又はS-RBDタンパク質の結合を阻害する。プレートが、精製されたACE2エクトドメインタンパク質(250ng/ウェル)でコーティングされ、そして、ビオチン化されたトリ-Sタンパク質1μg/mlの存在下、組み換えモノクローナル抗体2μg/ml及び連続希釈液(1:2)、又はビオチン化されたRBD0.5μg/mlの存在下、組み換えモノクローナルIgG1抗体10μg/ml又は100μg/ml、及び連続希釈液(1:2)で2時間インキュベーションされる。抗原抗体複合体は、ストレプトアビジンコンジュゲート、例えば、ストレプトアビジン-HRP、と適切な発色基質を用いて検出される。
抗体の阻害活性は、半数最大有効濃度(EC50)、例えば、ACE2-エクトドメインタンパク質へのトリ-S又はS-RBDタンパク質の結合を50%阻害する濃度、として表される。EC50値(μg/ml)は、本実施例(図3C及び図3Lを参照)に示されているように、示された様々な濃度における阻害率の再構築された曲線に基づいて算出される。代替的には、曲線下面積(AUC:area under curve)を測定することにより、ACE2-エクトドメインタンパク質へのSARS-CoV-2トリ-S又はS-RBDタンパク質の結合の阻害(又はブロッキング)の割合として表されうる(表5)。ACE2エクトドメインへのSARS-CoV-2 S-RBD又はトリ-Sタンパク質の結合の競合的阻害剤は、5μg/mL未満のEC50を有し、及び/又は競合ELISA結合アッセイにおいてACE2エクトドメインへのSARS-CoV-2 S-RBD又はトリ-Sタンパク質の結合の少なくとも70%を阻害する。
SARS-CoV-2変異体、特にはP.1、B.1.1.7及びB.1.351を包含する上記のSARS-CoV-2変異体、のRBDに結合し且つACE2-エクトドメインへのRBD結合をブロックする為の本開示に従う抗体の能力は、SARS-CoV-2変異体P.1、B.1.1.7及びB.1.351のS-RBDタンパク質(配列番号109~111)を用いて、本開示に従う直接及び競合ELISA結合アッセイでアッセイされる。Cv2.1169、Cv2.5213、Cv2.3235、Cv2.1353及びCv2.3194のACE2エクトドメインへのRBD結合及びRBD結合のブロッキングが図3F、図4E~図4Jにおいて示されている。
代替的には、SARS-CoV-2変異体、特にはB.1.617及びB.1.1.529を包含する上記SARS-CoV-2変異体、のRBDに結合し且つACE2-エクトドメインへのRBD結合をブロックする為の本開示に従う抗体の能力は、SARS-CoV-2変異体B.1.617及びB.1.1.529のS-RBDタンパク質(配列番号122~125)を用いて、本開示に従う直接及び競合ELISA結合アッセイでアッセイされる。
本発明に従う抗体は、コロナウイルスのスパイクエクトドメイン(トリ-S)タンパク質(配列番号115~120)を用いたELISA結合アッセイにおいて、他のコロナウイルス、例えば、他のヒト病原性ベータコロナウイルスSARS-CoV-1及びMERS-CoV)、アルファコロナウイルス229E-CoV及びNL63-CoV及びベータコロナウイルスグループA HKU1-CoVを包含する上記の他のコロナウイルス、と交差反応しない。ELISAプレートは、フォルドン(foldon)三量体化モチーフ及びC末端タグ(8×HisTag,StrepTag,及びAviTag)を含む精製された組み換えコロナウイルストリ-Sタンパク質250ng/ウェルでコーティングされ、そして、4又は10μg/mlでの組み換えモノクローナルIgG1又はIgA抗体、及びPBS中の4~7回連続の1:4希釈物でインキュベーションされる。コーティング、洗浄、リベレーション、緩衝液は上記で開示した通りである。本開示に従う、SARS-CoV-1、MERS-CoV、229E-CoV、NL63-CoV、HKU1-CoV又はOC43-CoVスパイクタンパク質(配列番号115~120)に対するELISA結合アッセイにおけるOD値≦0.5は、交差反応性がないことを示す(表5)。
本開示に従う抗体の多反応性の非存在は、ELISA結合アッセイで決定される。ELISAプレートは、500ng/ウェルの精製された二本鎖(ds)-DNA、KLH、LPS、リゾチーム、サイログロブリン(Thyroglobulin)、枯草菌(B.subtilis)由来のペプチドグリカン、250ng/ウェルのインスリン、枯草菌(B.subtilis)由来のフラジェリン、MAPK14(9)、及び125ng/ウェルのYU2 HIV-1 Env gp140タンパク質を用いてPBS中でコーティングされる。ブロッキング工程及び洗浄工程の後、組み換えモノクローナルIgG抗体が、4μg/ml及びPBS中の7回連続の1:4希釈物で試験される。対照抗体であるmGO53(陰性)(3)及びED38(高陽性)(4)が各実験において含まれている。ELISA結合は上記されたように展開される。OD>0.5(カットオフ値)が陽性としてみなされる。本開示に従って抗体Cv2.1169、Cv2.5213、Cv2.3235、Cv2.1353及びCv2.3194を用いて得られた結果が図5において示されている(図5A、図5B、図5D及び図5F)。
本開示に従う抗体のヒトタンパク質に対する反応性の非存在は、タンパク質マイクロアレイ結合アッセイで決定される。実験が、ProtoArray Human Protein Microarrays(Thermo Fisher Scientific)を用いて、4℃で行われる。マイクロアレイがブロッキング溶液(Thermo Fisher)で1時間ブロッキングされ、洗浄され、そして、上述されたように、2.5μg/mlのIgG抗体で1時間30分インキュベーションされる(9)。洗浄後、アレイがAF647でコンジュゲーションされたヤギ抗ヒトIgG抗体(PBS中、1μg/mlで;Thermo Fisher Scientific)と共に、1時間30分インキュベーションされ、そして、GenePix 4000Bマイクロアレイスキャナー(Molecular Devices)及びGenePix Pro 6.0ソフトウェア(Molecular Devices)を用いて、前述されたように可視化される(9)。蛍光強度が、Spotxel登録商標ソフトウェア(SICASYS Software GmbH,Germany)を用いて定量され、そして、各抗体の平均蛍光強度(MFI:mean fluorescence intensity)シグナル(重複したタンパク質スポットから)が、GraphPad Prismソフトウェア(v8.1.2,GraphPad Prism Inc.)を用いて、参照抗体であるmGO53(非反応性(non-polyreactive)アイソタイプ対照)に対してプロットされる。各抗体について、ProtoArray登録商標Prospectorソフトウェア(v5.2.3,Thermo Fisher Scientific)を用いてZスコアが算出され、そして、対角に対する偏差(σ)、及び多反応性指数(PI:polyreactivity index)値が上述されたように算出される(9)。PI>0.21であるときに、抗体は多反応性であるとして定義された。
本開示に従う抗体の自己反応性の非存在は、HEp-2細胞上の間接免疫蛍光アッセイ(IFA:indirect immuno-fluorescence assay)で決定される。100μg/mlでの組み換えSARS-CoV-2 S-特異的IgG抗体及び対照IgG抗体(mGO53及びED38)が、キットの対照及びトレーサーとしてのFITCでコンジュゲーションされた抗ヒトIgG抗体を用いて、HEp-2細胞切片(AnA HEp-2 AeskuSlides登録商標,Aesku.Diagnostics,Wendelsheim、ドイツ)上の間接免疫蛍光アッセイ(IFA)で、製造業者の指示に従って試験される。HEp-2切片が蛍光顕微鏡を用いて観察され、そして、倍率40倍で写真が撮られる。本開示に従って抗体Cv2.1169、Cv2.5213、Cv2.3235、Cv2.1353及びCv2.3194を用いて得られた結果が図5Cにおいて示されている。
本発明において使用される場合に、語「中和化抗体」(neutralizing antibody)は、ウイルス感染を阻害する抗体、特には、宿主細胞上のアンジオテンシン変換酵素2 ACE2受容体への結合についてSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質と競合し、そして、RBDへの結合を通じてACE2とのRBD相互作用をブロックすることによって、宿主細胞へのウイルス侵入を阻害又はブロックするところの抗体を云う。抗体の中和活性はSARS-CoV-2 S-融合アッセイ(Fuse Assay)によって測定される。SARS-CoV-2ウイルス(0.1の感染多重度(MOI:Multiplicity of infection))が、10μg/ml又は5μg/mlの組み換えモノクローナルIgA抗体又はIgG抗体、及び連続1:4希釈液と共に、培養液中、30分間、室温でインキュベーションされ、そして、S-融合細胞培養液(Fuse cell culture)(U2OS-ACE2 GFP1-10及びU2OS-ACE2 GFP 11;1:1の比;ウェル当たり8×103個)に添加される。18時間のインキュベーション後、細胞が固定され、そして、核が染色される。GFP発現を示す面積と核の数とが、共焦点顕微鏡(confocal microscopy)によって定量される。中和率はGFP陽性面積から下記の式で算出される:100×(1-(IgA/IgG有りの値-「非感染」における値)/(IgA/IgG無しの値-「非感染」における値))(表5)。各アイソタイプの中和活性は、半値最大有効濃度(EC50)として表される。EC50値(ng/ml)は、示された様々な濃度での中和パーセンテージの再構築された曲線に基づいて算出される(図3D、図3G、図3Lを参照)。中和化抗体は、1000ng/mL未満のEC50を有し、及び/又はSARS-CoV-2 S-融合アッセイにおいてSARS-CoV-2の少なくとも90%を中和する。
本発明において使用される場合に、語「ADCC」又は「抗体依存性細胞障害」及び「CDC」又は「補体依存性細胞障害」(Complement-dependent-cytotoxicity)活性は、細胞枯渇活性を云う。ADCC活性及びCDC活性は、当技術分野において周知であり且つ実施例において開示されている標準的な方法によって測定されことができる。本開示の抗体のADCC活性は、ADCC Reporter Bioassay(Promega)を用いて定量される。Raji-スパイク細胞(5x104)が、10μg/ml又は50μg/mlでのSARS-CoV2 S特異的又は対照mGO53 IgG抗体(3)の存在又は非存在下で、PBS中の10回連続の1:2希釈がされたJurkat-CD16-NFAT-rLuc細胞(5x104)と共培養される。ルシフェラーゼ活性は18時間の培養後に測定される。ADCCは、対照抗体と比較したルシフェラーゼ活性の誘発倍数(fold induction)として測定される。ADCC活性が低いとは、対照抗体と比較して2倍未満である。本開示の抗体のCDC活性は、上述されているように、SARS-CoV-2スパイクを発現するRaji細胞を用いて定量される(10)。Raji-スパイク細胞(5x104)が、50%の正常(NHS)又は熱不活性化(HIHS)ヒト血清の存在下、組み換えIgG抗体(10μg/ml又は50μg/mlで、及びPBS中の10回連続の1:2希釈)有りで又は無しで培養される。24時間後、細胞がPBSで洗浄され、生細胞/死細胞の固定可能なアクア死細胞マーカー(PBS中、1:1,000;Life Technologies)が、固定前に4℃で30分間添加される。細胞は蛍光顕微鏡によって分析される。CDCは下記の式で算出される:100×(血清添加の死細胞の%-血清無添加の死細胞の%)/(100-血清無添加の死細胞の%)。CDC活性が低いとは3%未満である。
本明細書において使用される場合に、「予防する」とは、SARS-CoV-2感染及び/又は関連付けられた疾患のリスクを低減することを意味する。
中和化抗体
本開示に従う中和化抗体又はその抗原結合性フラグメントは、下記の表1において記載されているように、それらの重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列によって構造的に特徴付けられる、選択された組み換え抗Cv2.3235、Cv2.5213、Cv2.1169、Cv2.1353、並びにCv2.3194及びCv2.5179を包含する:
本開示に従う中和化抗体又はその抗原結合性フラグメントはまた、SARS-CoV-2-スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し且つ下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169;
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194;
(i)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1353;
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.5213;並びに、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3235;並びに、
(i)配列番号152のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号153のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.5179
のうちの少なくとも1つのRBDへの結合の競合的阻害剤であるところのヒト抗体を包含する。
特定の実施態様に従うと、本開示に従う中和化抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、SARS-CoV-2-スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、且つ下記の参照抗体、すなわち、
(i)配列番号133のアミノ酸配列を含む重鎖と(ii)配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169;又は、
(i)配列番号135のアミノ酸配列を含む重鎖と(ii)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194
のうちの少なくとも1つのRBDへの結合の競合的阻害剤であるところのヒト抗体を包含する。
参照抗体との競合的阻害は、本開示に従う競合ELISA結合アッセイでアッセイされる(定義を参照)。本開示は、本開示に従う競合ELISA結合アッセイにおいて、参照抗体Cv2.1169、Cv2.5213、Cv2.3235、Cv2.1353、Cv2.3194及びCv2.5179のうちの少なくとも1つへのSARS-CoV-2スパイク及び/又はS-RBDタンパク質への結合を少なくとも30%阻害するところの抗SARS-CoV-2抗体を包含する。参照抗体Cv2.1169、Cv2.5213、Cv2.3235、Cv2.1353、Cv2.3194又はCv2.5179は、表1において示されているように、上記に開示された、重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。参照抗体は好ましくは、IgA又はIgG1である。IgG1参照抗体は好ましくは、下記の表2において示されている、下記の、完全長重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を含む:Cv2.1169(配列番号13~14);Cv2.1353(配列番号15~16);Cv2.3194(配列番号17~18);Cv2.3235(配列番号19~20);Cv2.5213(配列番号21~22);Cv2.5179(配列番号154~155)。
代替の好ましい実施態様に従うと、IgG1参照抗体は好ましくは、下記の完全長重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を含む:Cv2.1169「プライム」(配列番号133~14);Cv2.1353「プライム」(配列番号134~16);Cv2.3194「プライム」(配列番号135~18);Cv2.3235「プライム」(配列番号136~20);Cv2.5213「プライム」(配列番号137~22)。
幾つかの好ましい実施態様において、該抗体は、参照ヒト抗体Cv2.1169若しくはCv2.1169「プライム」又はCv2.3194若しくはCv2.3194「プライム」の競合的阻害剤である;好ましくは、参照ヒト抗体Cv2.1169である。好ましくは、参照抗体Cv2.1169若しくはCv2.1169「プライム」又はCv2.3194若しくはCv2.3194「プライム」は、IgA又はIgG1である;IgG1 参照抗体Cv2.1169若しくはCv2.1169「プライム」又はCv2.3194若しくはCv2.3194「プライム」は好ましくは、夫々、完全長重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列番号13~14、配列番号133~14、配列番号17~18及び配列番号135~18を含む。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、本開示に従うBiacoreアッセイにおいて600nM~100pM以下のKDを有する、S-三量体、S1サブユニット及びS-RBDドメインから選択される少なくとも1つの組み換えSARS-CoV-2 Sタンパク質に結合する(定義を参照)。幾つかの好ましい実施態様において、該S-三量体タンパク質は、配列番号106を含み又は配列番号106からなり、該S1サブユニットタンパク質は、配列番号107を含み又は配列番号107からなり、該S-RBDタンパク質は、配列番号108~111及び122~125のいずれか1つを含み又は配列番号108~111及び122~125のいずれか1つからなり、及び/又はACE2エクトドメインタンパク質は、配列番号103を含み又は配列番号103からなる。幾つかの好ましい実施態様において、それは好ましくは、50nM~300pM以下のKDを有する、好ましくは10nM~300pMのKDを有する、特には、5nM以下、1nM以下、500pM以下及び300pM以下から選択されるKDを有する、配列番号106を含む組み換えSARS-CoV-2 S-三量体に結合する(図3Aを参照)。幾つかの好ましい実施態様において、それは好ましくは、600nM~1nM以下のKDを有する、好ましくは100nM~1nMのKDを有する、より好ましくは25nM~1nMのKDを有する、特には、10nM以下、5nM以下、2.5nM以下及び1nM以下から選択されるKDを有する、配列番号107を含む組み換えS1サブユニットに結合する(図3Aを参照)。幾つかの好ましい実施態様において、それは好ましくは、500nM~100pM以下のKDを有する、好ましくは100nM~100pMのKDを有する、より好ましくは25nM~100pMのKDを有する、特には、10nM、1nM、500pM、400pM、300pM及び100pM以下から選択されるKDを有する、配列番号108~111のうちのいずれか1つを含む組み換えRBDドメインに結合する(図3Aを参照)。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、ACE2エクトドメインタンパク質の結合親和性よりも高い結合親和性で、S-三量体、S1サブユニット及びS-RBDから選択される少なくとも1つの組み換えSARS-CoV-2 Sタンパク質に結合する;好ましくは、少なくとも5、10、25、50、100、250、500又は1000倍高い(それは、S-三量体、S1サブユニット及び/又はS-RBDについての抗体のKDが、ACE2エクトドメインタンパク質のそれよりも少なくとも5、10、25、50、100、250、500又は1000倍低いことを意味する);好ましくは、組み換えS-RBDタンパク質についての抗体の結合親和性が、組み換えACE2エクトドメインタンパク質の結合親和性と比較して、少なくとも10、25、50、100、250、500又は1000倍高い;より好ましくは、組み換えS-三量体、S1サブユニット及びS-RBDタンパク質の結合親和性が、組み換えACE2エクトドメインタンパク質の結合親和性と比較して、少なくとも10、25、50、100、250、500又は1000倍高い。好ましくは、S-三量体タンパク質が配列番号106を含み、S1サブユニットタンパク質が配列番号107を含み、S-RBDタンパク質が配列番号108~111のいずれか1つを含み、及び/又は組み換えACE2エクトドメインタンパク質が配列番号103を含む。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、本開示に従う競合ELISA結合アッセイにおいて、1μg/mL~0.1μg/mL以下のEC50を有する組み換えアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)エクトドメインタンパク質への組み換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質(S-三量体、すなわちトリ-S)の結合を競合的に阻害する(定義を参照)。幾つかの実施態様において、該抗体は、本開示に従う競合ELISA結合アッセイで決定される場合に、1μg/mL以下、0.5μg/mL以下、0.4μg/mL以下、0.3μg/mL以下、0.2μg/mL以下及び0.1μg/mL以下から選択されるEC50を有する組み換えアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)エクトドメインタンパク質への組み換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質(S-三量体、すなわちトリ-S)の結合を競合的に阻害する(図3C及び図3Lを参照)。幾つかの実施態様において、該抗体は、上記に開示したような競合ELISA結合アッセイにおいて、組み換えACE2エクトドメインタンパク質への組み換えSARS-CoV-2 トリ-Sタンパク質及び/又はRBDタンパク質の結合の少なくとも70%、80%又は90%をブロックする(下記の表5)。好ましくは、S-三量体タンパク質が配列番号106を含み、S-RBDタンパク質が配列番号108~111のいずれか1つを含み、及び/又はエクトドメインタンパク質が配列番号103を含む。
上記の実施態様のうちの幾つかにおいて、組み換えSARS-CoV-2 S-三量体、S1、及び/又はRBDタンパク質は、単離株であるWuhan-Hu-1、又はRBDドメインに1以上の変異を含むそれらの変異体由来である。該RBDドメインにおける1以上の変異は、好ましくは置換であり、より好ましくは、N501Y、E484K、K417N及びK417T変異のうちの1以上から選択される。幾つかの好ましい実施態様において、SARS-CoV-2変異体は、B.1.1.7、P.1及びB.1.351系統から選択される。幾つかのより好ましい実施態様において、組み換えSARS-CoV-2 S-三量体、S1、及び/又はRBDタンパク質は、配列番号106~111を含むグループから選択される。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、20ng/mL~1ng/mLの半数最大有効濃度(EC50)でSARS-CoV-2を中和し、及び/又は本開示に従うSARS-CoV-2 S-融合アッセイにおいてSARS-CoV-2の少なくとも90%を中和する(定義を参照)。幾つかの好ましい実施態様において、該抗体は、20ng/mL以下、15ng/mL以下、10ng/mL以下、5ng/mL以下及び1ng/mL以下から選択される半数最大有効濃度(EC50)でSARS-CoV-2を中和する。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、単離株であるWuhan-Hu-1、SARS-CoV-2変異体D614G、及びRBDドメインにおいて1以上の変異を含むSARS-CoV-2変異体から選択される少なくとも1つのSARS-CoV-2を中和する。RBDドメインの変異は、好ましくは置換であり、より好ましくはN501Y、E484K、K417N及びK417T置換の1つ以上から選択される。幾つかの好ましい実施態様において、SARS-CoV-2変異体は、B.1.1.7、P.1及びB.1.351系統から選択される。幾つかの好ましい実施態様において、該抗体は、SARS-CoV-2分離株であるWuhan-Hu-1、並びにB.1.1.7系統、P.1系統及びB.1.351系統から選択される少なくとも1つのSARS-CoV-2変異体を中和する;好ましくは、該抗体は、SARS-CoV-2分離株であるWuhan-Hu-1、並びにSARS-CoV-2変異体系統B.1.1.7、P.1及びB.1.351を中和する。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、本開示に従うELISA結合アッセイにおいて他のコロナウイルスと交差反応しない(定義を参照)。幾つかの好ましい実施態様において、該抗体は、下記からなるグループより選択される1以上のコロナウイルスと反応しない:ヒト病原性ベータコロナウイルス(B/Cグループ)SARS-CoV-1及びMERS-CoV;アルファコロナウイルスNL63-CoV及び229E-CoV;並びに、ベータコロナウイルスAグループHKU1-CoV(配列番号115~120のスパイクタンパク質)。幾つかの好ましい実施態様において、該抗体は、SARS-CoV-1、MERS-CoV、NL63-CoV、OC43-CoV、HKU1-CoV及び229E-CoVと交差反応しない。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、対照抗体と比較して、本開示に従うELISA結合アッセイにおいて多反応性を有さない(定義を参照)。幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、対照抗体と比較して、本開示に従うHEp-2細胞上の間接免疫蛍光アッセイ(IFA)において自己反応性を有さない(定義を参照)。幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、本開示に従うタンパク質マイクロアレイ結合アッセイにおいて、ヒトタンパク質への予測された反応性を有さない(定義を参照)。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、本開示に従うSARS-CoV-2スパイク発現Raji細胞上でのCDCアッセイにおいて、低レベルのCDC活性(例えば、3%未満)を有する(定義を参照)。幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、本開示に従ったADCCレポーターバイオアッセイにおいて、低レベルのADCC活性(例えば、対照抗体と比較して2倍未満)を有する(定義を参照)。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記を含むグループより選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む:配列番号3、5、7、9、11及び152、例えば配列番号3及び7、好ましくは配列番号3。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記を含む:
a)配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
b)配列番号5と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号6と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
c)配列番号7と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号8と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
d)配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号10と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、
e)配列番号11と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号12と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、
f)配列番号152と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号153と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
幾つかの特定の実施態様において、a)からf)のうちのいずれか1つ、例えばa)からe)のうちのいずれか1つ、における重鎖及び軽鎖可変領域は、上記に開示された配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
上記に定義されたアミノ酸配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する抗-SARS-CoV-2抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、本開示の一部であり、典型的には、抗-SARS-CoV-2抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、本開示に従うS融合アッセイにおいて、配列番号3の重鎖と配列番号4の軽鎖とを含む抗SARS-CoV-2抗体と少なくとも同等又はそれよりも高い中和活性を有する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、下記を含む:
a)配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号4と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
b)配列番号5と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号6と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
c)配列番号7と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号8と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
d)配列番号9と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号10と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
e)配列番号11と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号12と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は、
f)配列番号152と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号153と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
特には、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、配列番号3又は配列番号7と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4又は配列番号8と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、より好ましくは、配列番号3の重鎖可変領域と配列番号4の軽鎖可変領域とを含む。
好ましくは、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、より好ましくは、配列番号3の重鎖可変領域と配列番号4の軽鎖可変領域とを含む。
好ましくは、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
a)配列番号3と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号4と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は、
b)配列番号7と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号8と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
を含む。
本発明において使用される場合に、2つの配列間の同一性パーセントは、該2つの配列の最適なアラインメントの為に導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数(すなわち、同一性のパーセント=同一位置の数/位置の総数×100)である。該配列の比較及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、下記に記載されているように、数学的アルゴリズムを使用して達成されることができる。
2つのアミノ酸配列間又はヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重量残基表、ギャップペナルティ長(gap length penalty)12、ギャップペナルティ(gap penalty)4を使用してALIGNプログラム(バージョン2.4:11-17、1988)を用いて決定することができる。これはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を用いる。代替的には、2つのアミノ酸配列間又はヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch(J.Mol,Biol.48:444-453,1970)アルゴリズムを使用して決定されることができ、このアルゴリズムは、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれかと、16、14、12、10、8、6又は4のギャップ重み、及び1、2、3、4、5又は6の長さの重みを使用してGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.com)におけるGAPプログラム内に組み込まれる。
2つのヌクレオチド間又はアミノ酸配列間の同一性のパーセントはまた、アルゴリズム、例えば、単語長(word length)(W)を11、期待値(expectation)(E)を10、M=5、N=4、及び両鎖の比較をデフォルトとして使用する核酸又はアミノ酸配列の為のBLASTNプログラム、を使用して決定されることができる。
完全長軽鎖及び重鎖アミノ酸配列が、下記の表2において示されている。
従って、幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、配列番号13、15、17、19及び21、特には配列番号13及び17、好ましくは配列番号13、からなるグループから選択される重鎖アミノ酸配列を含む。
幾つかの他の特定の実施態様において、本開示に従う抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、配列番号133、134、135、136及び137並びに154、好ましくは配列番号13又は配列番号133、からなるグループから選択される重鎖アミノ酸配列を含む。
幾つかのより特定の実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記を含む:
a)配列番号13と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号14と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
b)配列番号15と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号16と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
c)配列番号17と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号18と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
d)配列番号19と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号20と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
e)配列番号21と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号22と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、又は、
f)配列番号154と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号155と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列。
幾つかの特定の実施態様において、a)からf)のうちのいずれか1つ、例えばa)からe)のうちのいずれか1つ、における重鎖及び軽鎖アミノ酸配列は、上記に開示された配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する。
幾つかの他のより特定の実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、配列番号154と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列と配列番号155と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列とを含む。
幾つかの他のより特定の実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記を含む:
a)配列番号133と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号14と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
b)配列番号134と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号16と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
c)配列番号135と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号18と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
d)配列番号136と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号20と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
e)配列番号137と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号22と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、又は、
f)配列番号154と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号155と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列。
幾つかの特定の実施態様において、a)からf)のうちのいずれか1つ、例えばa)からe)のうちのいずれか1つ、における重鎖及び軽鎖アミノ酸配列は、上記に開示された配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する。
好ましくは、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、配列番号13又は配列番号133と少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列と配列番号14と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列とを含み、より好ましくは、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、配列番号13又は配列番号133の重鎖アミノ酸配列と配列番号14の軽鎖アミノ酸配列とを含む。
上記に定義されたアミノ酸配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%、の同一性を有するアミノ酸配列を有する抗SARS-CoV-2抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、本開示の一部であり、典型的には、抗SARS-CoV-2抗体は、配列番号13又は配列番号133の重鎖と配列番号14の軽鎖とからなる抗SARS-CoV-2抗体と少なくとも同等又はそれよりも高い中和活性を有する。
使用されうる本開示に従う他の中和抗SARS-CoV-2抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記の表3に記載されているように、Cv2.1169、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.3235又はCv2.5213若しくはCv2.5179の6つのCDRを含む任意の抗体を包含する。
幾つかの特定の実施態様において、本開示に従う、抗SARS-CoV-2抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは下記を含む:
a)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、
b)配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、
c)配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、
d)配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、
e)配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、又は、
f)配列番号138の重鎖CDR1、配列番号139の重鎖CDR2及び配列番号140の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン。
好ましくは、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。
より特定の実施態様において、該抗SARS-CoV-2抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは下記を含む:
a)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン、
b)配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号32の軽鎖CDR1、配列番号33の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン、
c)配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン、
d)配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号44の軽鎖CDR1、配列番号45の軽鎖CDR2及び配列番号46の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン、
e)配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号50の軽鎖CDR1、配列番号51の軽鎖CDR2及び配列番号52の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン、又は、
f)配列番号138の重鎖CDR1、配列番号139の重鎖CDR2及び配列番号140の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号141の軽鎖CDR1、配列番号142の軽鎖CDR2及び配列番号143の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン。
好ましくは、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
・配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3、並びに、
・配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3
を含む。
抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、上記で定義されているように、それらの中和特性について更にスクリーニング又は最適化されうることが更に企図される。特には、モノクローナル抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、本明細書において提供されているモノクローナル抗体の1、2、3、4、5、6、又はそれ以上のCDRのアミノ酸配列、特には配列番号23~52のCDRにおいて、1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の改変を有しうることが企図される。抗体の軽可変領域又は重可変領域のVJ領域又はVDJ領域のCDR1、CDR2、CDR3、CDR4、CDR5又はCDR6の1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位又は10位におけるアミノ酸は、挿入、欠失、又は保存されたアミノ酸若しくは保存されないアミノ酸との置換を有していてもよいことが企図される。置換されるか又は置換を構成することができるそのようなアミノ酸が下記に開示されている。幾つかの特定の実施態様において、モノクローナル抗体又は抗原結合性フラグメントは、本明細書で提供されているモノクローナル抗体の1、2、3、4、5、又は6個のCDRのアミノ酸配列、特に配列番号23~52のCDR、において、1又は2個の保存的置換(conservative substitution)を有する。
幾つかの実施態様において、アミノ酸の相違は保存的置換、すなわち、あるアミノ酸を類似の化学的特性又は物理的特性(サイズ、電荷又は極性)を有する別のアミノ酸に置換すること、であり、この置換は一般的に、抗体の生化学的、生物物理学的特性及び/又は生物学的特性に悪影響を及ぼさない。特には、該置換は抗体とスパイク糖タンパク質抗原との相互作用と中和特性とを破壊しない。1以上の上記保存的置換は有利には、下記の5つのグループのうちの1つから選択される:グループ1-小さな脂肪族、非極性又はわずかに極性の残基(A、S、T、P、G);グループ2-極性、負に荷電した残基及びそれらのアミド(D,N,E,Q);グループ3-極性、正に荷電した残基(H、R、K);グループ4-大きな脂肪族、非極性の残基(M,L,I,V,C);及び、グループ5-大きな芳香族の残基(F,Y,W)。
CDRドメインによって定義される本開示に従う中和化抗体又はその抗原結合性フラグメントは、下記の表において定義されているように、Cv2.1169、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.3235、Cv2.5213及びCv2.5179抗体のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4を含みうる。
本開示の特定の観点において、CDRドメインによって定義されている抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントが開示されており、ここで、
a)可変重ドメインは、配列番号53、61、69、77、85及び144を含むグループから選択されるフレームワークFR1のアミノ酸配列、配列番号54、62、70、78、86及び145を含むグループから選択されるフレームワークFR2のアミノ酸配列、配列番号55、63、71、79、87及び146を含むグループから選択されるフレームワークFR3のアミノ酸配列、及び/又は配列番号56、64、72、80、88及び147を含むグループから選択されるフレームワークFR4のアミノ酸配列を含み;及び/又は、
b)可変軽ドメインは、配列番号57、65、73、81、89及び148を含むグループから選択されるフレームワークFR1のアミノ酸配列、配列番号58、66、74、82、90及び149を含むグループから選択されるフレームワークFR2のアミノ酸配列、配列番号59、67、75、83、91及び150を含むグループから選択されるフレームワークFR3のアミノ酸配列、及び/又は配列番号60、68、76、84、92及び151を含むグループから選択されるフレームワークFR4のアミノ酸配列を含む。
本開示の特定の観点において、CDRドメインによって上記で定義される抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントが開示され、ここで、
a)可変重ドメインは、配列番号53、61、69、77及び85を含むグループから選択されるフレームワークFR1のアミノ酸配列、配列番号54、62、70、78及び86を含むグループから選択されるフレームワークFR2のアミノ酸配列、配列番号55、63、71、79及び87を含むグループから選択されるフレームワークFR3のアミノ酸配列、及び/又は、配列番号56、64、72、80及び88を含むグループから選択されるフレームワークFR4のアミノ酸配列を含み;及び/又は、
b)可変軽ドメインは、配列番号57、65、73、81及び89を含むグループから選択されるフレームワークFR1のアミノ酸配列、配列番号58、66、74、82及び90を含むグループから選択されるフレームワークFR2のアミノ酸配列、配列番号59、67、75、83及び91を含むグループから選択されるフレームワークFR3のアミノ酸配列、及び/又は配列番号60、68、76、84及び92を含むグループから選択されるフレームワークFR4のアミノ酸配列を含む。
特には、モノクローナル抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、本明細書において提供されているモノクローナル抗体のFRが1、2、3、4、5、6、7、8のアミノ酸配列中に、特には配列番号53~92のFRにおけるアミノ酸配列中に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の変異を有することが企図される。FR配列は、挿入、欠失、又は保存アミノ酸(conserved amino acid)若しくは非保存アミノ酸(non-conserved amino acid)との置換を有することが企図される。置換されることができる又は置換を構成することができるそのようなアミノ酸は、上記に開示されている。幾つかの特定の実施態様において、モノクローナル抗体又は抗原結合性フラグメントは、本明細書において提供されているモノクローナル抗体のFRが1、2、3、4、5、6、7、8のアミノ酸配列中に、特には配列番号53~92及び144~151のFRにおけるアミノ酸配列中に、1、2、3、4、5個、好ましくは1又は2個、の保存的置換(conservative substitution)を有する。
本開示に従う変異体抗体は、SARSV-CoV-2スパイクタンパク質RBDに特異的に結合し且つ上述された対応する参照抗体ヒト抗体Cv2.1169、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.3235又はCv2.5213の対応する機能特性と実質的に同等又は優れた機能特性を示すところの機能抗体である。本明細書において、実質的に等しいとは、該機能的変異体が、参照ヒト抗体の対応する機能的特性の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%を保持することが意図される。
より特定の実施態様において、CDRドメインによって定義されている該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記のフレームワークドメイン(frameworks domains)を含む:
配列番号53のVHFR1、
配列番号54のVHFR2、
配列番号55のVHFR3、
配列番号56のVHFR4、
配列番号57のVLFR1、
配列番号58のVLFR2、
配列番号59のVLFR3、及び、
配列番号60のVLFR4。
他の特定の実施態様において、CDRドメインによって定義されている該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記のフレームワークドメインを含む:
配列番号69のVHFR1、
配列番号70のVHFR2、
配列番号71のVHFR3、
配列番号72のVHFR4、
配列番号73のVLFR1、
配列番号74のVLFR2、
配列番号75のVLFR3、及び、
配列番号76のVLFR4。
本開示の特定の実施態様において、上記された抗体の可変領域は、抗体定常領域、例えば、IgA、IgM、IgE、IgD、又はIgG(例えば、Igg1、IgG2、IgG3、IgG4)、に関連付けられうる。該抗体の可変領域は好ましくは、IgG又はIgA定常領域、好ましくはIgG1又はIgA(IgA1、IgA2)定常領域、に関連付けられる。これらの定常領域は、特にFc受容体に対するそれらの結合能を改変する為に、又は抗体の半減期を高める為に、当技術分野において知られている方法によって、更に変異されてもよく又は改変されてもよい。IgA定常領域を含む抗体は、重合性又は分泌性IgAを生成する為に、J鎖及び/又は分泌性成分を更に含んでいてもよい。
本発明において使用される場合に、語「IgGのFc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域、例えば、ネイティブ配列のFc領域及び変異体のFc領域を包含する上記の免疫グロブリン重鎖のC末端領域、を定義する為に使用される。ヒトIgG重鎖Fc領域は一般的に、C226位から又はP230位からIgG抗体のカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むとして定義される。Fc領域における残基の番号付けは、KabatのEU指標(EU index)の番号付けである。Fc領域のC末端リジン(残基K447)は、例えば、抗体の製造又は精製の間に、除去されてもよい。従って、本開示の抗体組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体との混合物を有する抗体集団を含みうる。
特定の実施態様において、本開示に従う抗SARS-CoV-2抗体はサイレント抗体(silent antibody)である。本発明において使用される場合に、語「サイレント」抗体は、ADCC活性を示さないか又は低いADCC活性を示すところの抗体を云う。サイレントされたエフェクター機能(Silenced effector function)は、抗体のFc領域における変異によって得られることができ、且つ下記の文献に記載されている:Strohl 2009 (LALA & N297A);Baudino 2008,D265A (Baudino et al.,J.Immunol.181 (2008):6664-69,Strohl,CO Biotechnology 20 (2009):685-91)。サイレントFcのIgG1抗体の例は、IgG1のFcアミノ酸配列のN297A又はL234A及びL235A変異を含む。
本明細書において記載されている抗体又は抗原結合性フラグメントのいずれかの別の特定の実施態様において、変異型ヒトFc定常領域は、抗体の半減期を高める為のKabatのEU指標におけるM428L及びN434S置換(LS)を含む。幾つかの実施態様において、本開示の抗体は、FcgRIIIA(CD16)ポリペプチドに実質的に結合可能なFcドメインを含まない。幾つかの実施態様において、本開示の抗体は、Fcドメインを欠く(例えば、CH2及び/又はCH3ドメインを欠く)。
他の変異はG236A/A330L/I332Eであり、本明細書において「GAALIE」と名付けられ、病原体に対する抗ウイルス効力を向上させる(Bournazos et al.,Nature,2020,588,485-490)。M428L及びN434S置換(LS)は有利には、G236A/A330L/I332Eと組み合わされる。
本開示によって企図される本明細書における抗体の別の改変は、ペグ化(pegylation)若しくはヘシル化(hesylation)又は関連技術である。抗体は、例えば、該抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させる為にペグ化されることができる。抗体をペグ化する為に、該抗体又はそのフラグメントは典型的には、1以上のPEG基が抗体又は抗体フラグメントに付着する条件下で、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体、と反応される。該ペグ化は、反応性PEG分子(又は、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって実行されることができる。本発明において使用される場合に、語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質、例えば、モノ(C1~C10)アルコキシ-又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミド、を誘導体化する為に使用されてきたPEGの形態のいずれをも包含することが意図されている。或る実施態様において、ペグ化されるべき抗体はアグリコシル化された抗体である。タンパク質をペグ化する方法は当技術分野において知られており、且つ本開示の抗体に適用されることができる。例えば、Nishimura等による欧州特許出願第EP0154316号明細書及びIshikawa等による欧州特許出願EP0401384号明細書を参照されたい。
本明細書において企図されている抗体の別の改変は、コンジュゲート又は融合タンパク質である。該抗体又はその抗原結合性フラグメントは、関心のある別のタンパク質部分と融合されてもよく、又は関心のある薬剤とコンジュゲートされてもよい。該薬剤は、例えば治療剤;抗体検出の為の標識、又は該抗体の半減期を増加させるタンパク質であってもよい。幾つかの実施態様において、本開示の抗体の少なくとも抗原結合領域は、結果として得られる分子の半減期を増加させる為に、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン又はそのフラグメント、に融合される。他の実施態様において、本開示に従う抗体又は抗原結合性フラグメントは、検出可能な標識を更に含む。好ましい標識は、蛍光色素、例えば、ウンベリフェロン(umbelliferone)、フルオレセイン(fluorescein)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC:fluorescein isothiocyanate)、ローダミン(rhodamine)、テトラメチルローダミン(tetramethyl rhodamine)、エオシン(eosin)、緑色蛍光タンパク質、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(Cascade Blue)、テキサスレッド(Texas Red)、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン(dichlorotriazinylamine fluorescein)、ダンシルクロリド、フィコエリトリン(phycoerythrin)、蛍光ランタニド錯体(fluorescent lanthanide complexes)(例えば、ユーロピウム(Europium)及びテルビウム(Terbium))、シアニン色素ファミリーメンバー(例えば、Cy3及びCy5)、分子ビーコン(molecular beacons)及びその蛍光誘導体、発色団標識(chromophore label);発光標識(luminescent label)(例えば、ルミノール)、放射性標識(例えば、14C、123I、124I、125I、32P、33P、35S、3H等)、親和性リガンド標識(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビオチン、抗アイソタイプ抗体);酵素標識、例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼ;酵素補酵素標識;ハプテンコンジュゲート標識、例えば、ジゴキシゲニン又はジニトロフェニル;ラマン信号発生化標識(Raman signal generating label);磁気標識;スピン標識;エピトープ標識(例えば、FLAG又はHAエピトープ);重原子標識(heavy atom label);ナノ粒子標識、電気化学標識;光散乱又はプラズモン共鳴物質(例えば、金若しくは銀の粒子又は量子ドット);球殻標識(spherical shell label)、半導体ナノ結晶標識;並びに、他当技術分野において知られている他のものを包含し、ここで、該標識は、二次検出分子の有無にかかわらず可視化を可能にすることができる。
幾つかの実施態様において、該抗体は高分子である。高分子抗体は、Igポリマーを含むか又はIgポリマーからなる。該高分子抗体は好ましくは、上記で定義したモノクローナル抗体由来の高分子モノクローナル抗体である。該Igポリマーは、二量体を含むか又は二量体からなる。該高分子抗体は通常、Ig分子に加えて、1以上の免疫グロブリン連結(immunoglobulin joining)(J)鎖を含む。該J鎖は、血漿細胞又は骨髄腫細胞によって発現される137個のアミノ酸のポリペプチドであり、それは、システイン残基間のジスルフィド結合を通じて2つのIg分子と共有的に結合することによって、Igポリマー形成を制御する。特には、二量体抗体は、J鎖に共有的に結合する2つの単量体Ig分子によって形成される。好ましい実施態様において、該抗体は高分子IgAであり、好ましくは、上記で定義されたモノクローナル抗体から導出される高分子IgAモノクローナル抗体である。
幾つかの実施態様において、該抗体は、分泌性抗体である。分泌性抗体は、上皮細胞を横切って漿膜組織の管腔表面に輸送されることができる。分分泌型抗体は通常、高分子抗体、好ましくは高分子IgA、であり、IgのJ鎖含有ポリマーと分泌成分(SC:secretory component)の複合体を含む。該分泌成分は、J鎖含有高分子Igと結合するところの高分子免疫グロブリン受容体(pIgR)の細胞外部分のタンパク質分解切断産物である。該分泌型抗体は好ましくは、上記で定義されたモノクローナル抗体から導出された分泌型IgAモノクローナル抗体である。
幾つかの好ましい実施態様において、中和化抗体は組み換えヒトモノクローナル抗体であり、好ましくはIgG1又はIgAのアイソタイプである。IgAは、単量体、高分子IgA又は分泌型IgAであってもよい;好ましくは、高分子IgA又は分泌型IgAである。幾つかのより好ましい実施態様において、組み換え抗体は、上記されているように、抗体の半減期を高める為の変異及び/又は改変を更に含みうるサイレント抗体である。
本発明はまた、上記されたCDRドメインを含む可変ドメインを含有する抗体の抗原結合性フラグメント、例えば、Fv、dsFv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、に関する。特には、上記抗原結合性フラグメントは、F(ab')2フラグメントである。該F(ab')2フラグメントは、ヒンジジスルフィド(hinge disulfide)以下の抗体のペプシン消化によって産生されることができ、それは、2つのFab'フラグメントを含み、及び免疫グロブリン分子のヒンジ領域の一部を更に含む。Fabフラグメントは抗体のパパイン消化によって得られることができる単量体フラグメントであり、それらは、L鎖全体とH鎖のVH-CH1フラグメントを含み、ジスルフィド結合を通じて互いに結合している。Fab'フラグメントはヒンジ領域におけるジスルフィド結合を切断することによってF(ab')2フラグメントから得られることができる。F(ab')2フラグメントは二価であり、すなわち、それらは、天然の免疫グロブリン分子のように2つの抗原結合部位を含む。一方、Fv(Fabの可変部を構成するVHVL二量体)、dsFv、scFv、Fab及びFab'フラグメントは一価、すなわち、それらは単一の抗原結合部位を含む。本開示のこれらの基本的な抗原結合性フラグメントが組み合わされて、多価抗原結合性フラグメント、例えば、ダイアボディ(diabodies)、トリボディ(tribodies)又はテトラボディ(tetrabodies)、を得ることができる。これらの多価抗原結合性フラグメントがまた本発明の一部である。Fvフラグメントは、疎水性相互作用によって互いに会合した抗体のVLドメインとVHドメインとから構成される。dsFvフラグメントにおいて、VH:VLヘテロ二量体(heterodimer)はジスルフィド結合によって安定化される。scFvフラグメントにおいて、VLドメインとVHドメインとは柔軟なペプチドリンカーを介して互いに結合され、従って、単鎖タンパク質を形成する。
本開示の別の観点は、SARS-CoV-2のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントに関し、それは、

配列番号138の重鎖CDR1、配列番号139の重鎖CDR2及び配列番号140の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン;又は、
配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2及び配列番号31の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号41の重鎖CDR1、配列番号42の重鎖CDR2及び配列番号43の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号47の重鎖CDR1、配列番号48の重鎖CDR2及び配列番号49の重鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;
から選択される重鎖可変ドメイン、
並びに、
配列番号141の軽鎖CDR1、配列番号142の軽鎖CDR2及び配列番号143の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号32の軽鎖CDR1、配列番号33の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号44の軽鎖CDR1、配列番号45の軽鎖CDR2及び配列番号46の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体;又は、
配列番号50の軽鎖CDR1、配列番号51の軽鎖CDR2及び配列番号52の軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは3つの全て、を含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ若しくは2つの保存的置換を有する変異体
から選択される軽鎖可変ドメイン
を含むことにおいて特徴付けられる。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体は、全抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントである。
幾つかの実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、上記の表4において定義されているCv2.1169、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.3235並びにCv2.5213及びCv2.5179抗体のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4、又は上記に開示されているそれらの変異体を更に含む。幾つかの実施態様において、該抗体は、上記表1において定義されているCv2.1169、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.3235並びにCv2.5213及びCv2.5179抗体又は上記に開示されているそれらの変異体の重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインを含む。該抗体の該重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインは好ましくは、IgG又はIgA定常領域に関連付けられており、上記に開示されたように更に修飾されていてもよい。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、上記の表2において定義されているCv2.1169、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.3235並びにCv2.5213及びCv2.5179抗体の重鎖及び/又は軽鎖、又は上記に開示されているそれらの変異体を含む。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記のV(D)J組み換え事象のうちの少なくとも1つの産物である可変領域を含む:
(i)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ3*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV1-58*01、及びJ-遺伝子対立遺伝子IGKJ1*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-20*01(例えば、Cv2.5179及びCv2.1169);
(ii)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ6*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV3-53*01、及びJ-遺伝子対立遺伝子IGKJ3*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV1-9*01(例えば、Cv2.5213);
(iii)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ6*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV3-53*01、及びJ-遺伝子対立遺伝子IGKJ4*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-20*01(例えば、Cv2.3194);
(iv)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ3*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV3-66*02、及びG-遺伝子対立遺伝子IGKJ3*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV1-9*01(例えば、Cv2.1353);又は、
(v)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ6*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV3-53*01、及びJ-遺伝子対立遺伝子IGKJ5*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV1-9*01(例えば、Cv2.3235)。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記のV(D)J組み換え事象の産物である可変領域を含む:
(i)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ3*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV1-58*01;又は、
(ii)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ6*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-53*01。
幾つかの特定の実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記のV(D)J組み換え事象の産物である可変領域を含む:
(i)J-遺伝子対立遺伝子IGKJ1*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-20*01;又は、
(ii)J-遺伝子対立遺伝子IGKJ4*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-20*01。
幾つかの好ましい実施態様において、該抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントは、下記のV(D)J組み換え事象の産物である可変領域を含む:
(i)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ3*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV1-58*01、及びJ-遺伝子対立遺伝子IGKJ1*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-20*01;又は、
(ii)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ6*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV3-53*01、及びJ-遺伝子対立遺伝子IGKJ4*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-20*01。
核酸、宿主細胞、抗体産生
本開示の抗SARS-CoV-2抗体をコードする核酸分子が本明細書においてまた開示される。
典型的には、上記核酸は、抗体発現又は産生、特にヒト抗体産生、の為に適した宿主細胞で発現可能である組み換え核酸、合成核酸又は半合成核酸である。宿主細胞は、組み換え抗体産生の為の細胞であってもよく、又はイン・ビボ(in vivo)での抗体産生の為の患者細胞であってもよい。典型的には、該核酸はDNA、RNA又は混合された分子であってもよく、それらは更に修飾されていてもよく及び/又は任意の適切な発現ベクター内に含まれていてもよい。本発明において使用される場合に、語「ベクター」及び「発現ベクター」は、宿主を形質転換し、そして、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進するように、DNA又はRNA配列(例えば、外来遺伝子)が宿主細胞内に導入されることができるビヒクルを意味する。該組み換えベクターは、真核又は原核発現の為のベクター、例えば、プラスミド、細菌導入の為のファージ、酵母を形質転換できるYAC、ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクター、又は任意の発現ベクターであることができる。本明細書において定義される発現ベクターは、イン・ビトロ(in vitro)又はイン・ビボ(in vivo)のいずれかで抗体の産生を可能にする為に選択される。
そこで、本開示の更なる目的は、本明細書において記載された、核酸を含むベクターに関する。
核酸分子の例は、前節において開示された抗SARS-CoV-2抗体の可変軽鎖及び重鎖アミノ酸配列をコードする核酸分子であり、遺伝暗号を使用し、及び任意的に、宿主細胞種に依存したコドンの偏り(codon bias)を考慮する。
核酸分子又は構築物配列(construct sequence)は、宿主細胞、特に哺乳動物細胞、における抗体産生の為に適した宿主細胞における発現の為に有利にコドン最適化される。コドン最適化は、ターゲット遺伝子の翻訳効率を高めることによって、生体内でのタンパク質発現レベルを向上させる為に用いられる。所望の宿主におけるコドン最適化の為の適切な方法及びソフトウェアは、当技術分野において周知であり、及び一般に入手可能である(例えば、Raab et al.,Systems and Synthetic Biology,2010,4,(3),215-225のGeneOptimizerソフトウエアスイートを参照)。
抗体産生の宿主細胞は、真核細胞であってもよく又は原核細胞であってもよい。原核細胞は特に細菌である。真核細胞は、酵母、昆虫細胞、及び哺乳類細胞を包含する。
典型的には、Cv2.1169抗体の可変重鎖及び軽鎖をコードする核酸は夫々、配列番号93及び配列番号94を含むか又はそれらからなり、Cv2.1353抗体の可変重鎖及び軽鎖をコードする核酸は夫々、配列番号95及び配列番号96を含むか又はそれらからなり、Cv2.3194抗体の可変重鎖及び軽鎖をコードする核酸は夫々、配列番号97及び配列番号98を含むか又はそれらからなり、Cv2.3235抗体の可変重鎖及び軽鎖をコードする核酸は夫々、配列番号99及び配列番号100を含むか又はそれらからなり、Cv2.5213抗体の可変重鎖及び軽鎖をコードする核酸は夫々、配列番号101及び配列番号102を含むか又はそれらからなり、Cv2.5179抗体の可変重鎖及び軽鎖をコードする核酸は夫々、配列番号156及び配列番号157を含むか又はそれらからなる。
上記で定義されたヌクレオチド配列のいずれか1つに対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する本開示の抗SARS-CoV-2抗体をコードする核酸がまた、本開示の一部である。
本開示はまた、宿主細胞、特には真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えばCHO細胞株又はHEK細胞株又はヒト細胞、におけるタンパク質発現の為に最適化されている後者の配列から導出される核酸分子に関する。
幾つかの実施態様において、上記核酸分子は、真核生物、好ましくは哺乳動物の発現カセット、であり、ここで、1以上の該抗体コード配列は、抗体産生細胞(antibody producing cell)又は患者細胞における発現の為に適切な1以上の調節配列に作動可能に連結されている。そのような配列は当技術分野において周知であり、特にプロモーター、及び導入遺伝子の発現を更に制御することが可能な更なる制御配列、例えば限定されるものではないが、エンハンサー、ターミネーター及びイントロン、を包含する。プロモーターは、抗体産生細胞において機能する組織特異的、ユビキタス(ubiquitous)、構成的(constitutive)又は誘導性(inducible)のプロモーターであってもよい。そのようなプロモーターは当技術分野において周知であり、及びそれらの配列は公開配列データベースにおいて入手可能である。
幾つかの特定の実施態様において、該核酸は、RNA、好ましくはmRNA、であり、ここで、抗体の軽鎖及び/又は重鎖のコード配列は、個体のターゲット細胞又は1以上の組織におけるそれらの発現の為に適切な1以上の調節配列に作動可能に連結されている。mRNA療法は当技術分野において周知である。mRNAは、宿主細胞の細胞質内へと送達され、そこでの発現により、関心のある治療用のタンパク質を生成する。mRNA構築物は、キャップ構造、5'及び3'の非翻訳領域(UTR:untranslated region)、並びにオープンリーディングフレーム(ORF:open reading frame)、及び3'ポリ(A)テールを含む。mRNA構築物は、非複製mRNA(MRM)、又は自己増幅(self-amplifying)mRNA(SAM)でありうる。SAMは、アルファウイルス、例えば、シンドビスウイルス(Sindbis virus)及びセムリキフォレストウイルス(Semliki-Forest virus)、に代表される陽性ストランドmRNAウイルスから導出される遺伝的複製機構を組み込んだものである。SAM構築物において、ウイルス構造タンパク質をコードするORFは、関心のある治療タンパク質をコードする転写産物によって置換され、及びウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼは、レプリコン構築物(replicon construct)の細胞質増幅を指示する為に保持される。トランス複製RNAは、例えば国際公開第WO2017/162461号パンフレットに開示されている。遺伝子発現の為に適したアルファウイルス由来のRNAレプリコンは、国際公開第WO2017/162460号パンフレットに開示されている。mRNA製造工程において、DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター、例えばT7、と、mRNA構築物について対応する配列とを含むプラスミドDNA(pDNA)を使用する。pDNAはDNA依存性RNAポリメラーゼがmRNAを転写する為の鋳型として機能するように直鎖化され、そして、引き続きDNase処理工程によって分解される。5'キャップと3'ポリ(A)テールの付加は、イン・ビトロ(in vitro)転写の工程の間に達成されることができ、又は転写後に酵素的に行われることもできる。キャップの酵素的付加は、グアニリルトランスフェラーゼ及び2'-O-メチルトランスフェラーゼを用いて、夫々Cap0(N7MeGpppN)又はCap1(N7MeGpppN2’-oMe)構造を得ることによって達成されることができ、一方、ポリAテールはポリAポリメラーゼを介した酵素的付加を通じて達成されることができる。次に、mRNAは、mRNA精製の為に適した標準的な方法、例えば高圧液体クロマトグラフィー(HPLC:high-pressure liquid chromatography)、を用いて精製される。mRNAを製造する方法は、例えば国際公開第WO2017/182524号パンフレットに開示されている。
処置された対象の細胞における翻訳効率を改善する為に、本発明に従うmRNAは、ヒトにおける発現の為にコドン最適化される配列を含む。イン・ビボ(in vivo)での安定性及び翻訳効率を向上させる為の本発明に従うmRNA構築物の更なる改良は、5'-UTR及び3'-UTRの長さ及び調節エレメント配列を最適化すること;リボソーム相互作用及び/又はmRNA安定性を高める為のキャップ構造における塩基及び/又は糖の改変;並びに改変されたヌクレオシドを包含する。改変されたヌクレオシドは、5'-UTR、3'-UTR又はORF中に存在しうる。改変されたヌクレオシドの例は、プロテインキナーゼR活性化の為の細胞内シグナル伝達トリガーを除去するところのプソイドウリジン(pseudouridine)及びN-1-メチルプソイドウリジンを包含する。細胞内へのRNA分解を減少させる改変されたヌクレオシドの例は、国際公開第WO2013/039857号パンフレットにおいて開示されている。改変されたキャップ構造は、国際公開第WO2011/015347号パンフレット及び国際公開第WO2019/175356号パンフレットにおいて開示されている。最適化された3'-UTR配列は、国際公開第WO2017/059902号パンフレットにおいて開示されている。RNAの安定性及び翻訳効率を改善するところの改変されたポリA配列は、米国特許出願公開第US2020/0392518号明細書において開示されている。改善された安定性及び翻訳効率を有する改変されたmRNAがまた、国際公開第WO2007/036366号パンフレットにおいて開示されている。
本発明は、個体の細胞への核酸の送達及び発現に適した任意のベクター、特には核酸治療の為に適した任意のベクター、を使用しうる。当技術分野において周知であるそのようなベクターは、ウイルス性ベクター及び非ウイルス性ベクターを包含する。非ウイルス性ベクターは、個体の細胞内に核酸を導入又は維持する為に一般的に使用される様々な(非ウイルス性の)薬剤を包含する。様々な手段によって個体の細胞内へと核酸を導入する為に使用される薬剤は、特にポリマーベース、粒子ベース、脂質ベース、ペプチドベースの送達ビヒクル、又はそれらの組み合わせを包含し、限定はされないが、例えば、カチオン性ポリマー、デンドリマー(dendrimer)、ミセル、リポソーム、リポポリプレックス(lipopolyplex)、エクソソーム(exosome)、マイクロ粒子、及びナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)及びウイルス様粒子を包含する上記のナノ粒子;並びに、細胞透過性ペプチド(CPP:cell penetrating peptide)を包含する。個体の細胞内へと核酸を維持する為に使用される薬剤は、特には裸の核酸ベクター、プラスミド、トランスポゾン(transposon)及びミニサークル(mini-circle)、を包含する。ウイルスベクターは、本来、ウイルス導入(viral transduction)と名付けられたプロセスに従って、細胞内に侵入し、そして、関心のある1以上の核酸を細胞内に送達することができる。本明細書において使用される場合に、語「ウイルスベクター」は、遺伝物質を細胞内へと送達する為に設計された、非複製性の非病原性ウイルスを云う。ウイルスベクターにおいて、複製と病原性の為に不可欠なウイルス遺伝子が、関心のある導入遺伝子の為の発現カセットに置き換えられる。従って、ウイルスベクターゲノムは、ウイルスベクター生産の為に必要とされるウイルス配列によって挟まれた導入遺伝子発現カセットを含む。本明細書において使用される場合に、語「組み換えウイルス」は、当技術分野において知られている標準的な組み換えDNA技術技術によって産生されたウイルス、特にはウイルスベクター、を云う。本明細書において使用される場合に、語「ウイルス粒子」(virus particle又はviral particle)は、キャプシド(capsid)と呼ばれるタンパク質被膜と、場合によっては宿主細胞膜の一部から導出され且つウイルス糖タンパク質を含むところのエンベロープとに囲まれたDNA又はRNAのいずれかから作られた遺伝物質から構成される非病原性ウイルス、特にはウイルスベクター、の細胞外形態を意味することが意図される。本発明において使用される場合に、ウイルスベクターはウイルスベクター粒子を云う。これらのベクターは、染色体統合(chromosomal integration)の可能性を最小限にする為に、最小限の真核生物配列を有する。加えて、これらのアプローチは、本発明の核酸を個体の細胞内へと導入し、そして維持する為に有利に組み合わされることができる。
幾つかの実施態様において、上記に開示された本発明に従うmRNAは、mRNAを哺乳動物宿主細胞内へ送達する為に適した、当技術分野において周知である核酸送達剤と組み合わされる。mRNA送達剤は、高分子担体、ポリカチオン性タンパク質又はペプチド、脂質ナノ粒子等であってもよい。例えば、mRNA(非複製性又は自己増幅性)は、ポリマー、特にはカチオン性ポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-リジン(PEL)、ポリビニルアミン(PVA)又はポリアリルアミン(PAA)を用いて細胞内へと送達されてもよく、ここで、mRNAは、国際公開第WO2021/001417号パンフレットにおいて開示されているように、好ましくは、単量体(monomer)、二量体(dimer)、三量体(trimer)又はオリゴマー(oligomer)の形態で存在する。代替的には、mRNAは、国際公開第WO2019/137999号パンフレット又は国際公開第WO2018/011406号パンフレットにおいて開示されているように、筋肉内投与に適したポリプレックス粒子(polyplex particle)の形態で、ポリアルキレンイミンと組み合わされてもよい。mRNAはまた、国際公開第WO2016/000792号パンフレットに開示されているように、ポリカチオン、特にはプロタミン、と組み合わされてもよい。1以上のmRNA分子は、カチオン性脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)内に製剤化されてもよく;例えば、該製剤は、国際公開第WO2015/164674号パンフレットにおいて開示されているように、20~60%のカチオン性脂質;5~25%の非カチオン性脂質、25~55%のステロール、及び0.5~15%のPEGで改変された脂質を含んでいてもよい。mRNAはまた、RNA装飾された粒子、例えば、RNA装飾された脂質粒子(RNA decorated particle)、好ましくは、国際公開第WO2015/043613号パンフレットに開示されているようなRNA装飾されたリポソーム、中に製剤化されてもよい。
特定の実施態様において、該ベクターは粒子又は小胞、特には脂質ベースのマイクロ又はナノ小胞又は粒子、例えばリポソーム又は脂質ナノ粒子(LNP)、である。より特定の実施態様において、該核酸はRNA、特にはmRNA、であり、該ベクターは粒子又は小胞、特には上記されたLNPである。LNP:mRNAの質量比は、約10:1~約30:1であることができる。
他の実施態様において、該核酸はDNAであり、好ましくは発現ベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクター、内に含まれている。本発明はまた、本開示に従う核酸を含むベクターに関する。好ましくは、該ベクターは組み換え統合(integrating)又は非統合(non-integrating)ウイルスベクターである。組み換えウイルスベクターの例は、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV:adeno-associated virus)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、及び他のウイルスから導出されるベクターを包含するが、これらに限定されない。レトロウイルスは、特にはレンチウイルスベクター、例えばヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV1型(HIV-1)及びHIV2型(HIV-2)ベクターを包含する上記のヒト免疫不全ウイルス、を包含する。
幾つかの好ましい実施態様において、該発現ベクターは、配列番号93と少なくとも90%の同一性を有する配列及び配列番号94と少なくとも90%の同一性を有する配列;配列番号95と少なくとも90%の同一性を有する配列及び配列番号96と少なくとも90%の同一性を有する配列;配列番号97と少なくとも90%の同一性を有する配列及び配列番号98と少なくとも90%の同一性を有する配列;配列番号99と少なくとも90%の同一性を有する配列及び配列番号100と少なくとも90%の同一性を有する配列;並びに配列番号101と少なくとも90%の同一性を有する配列及び配列番号102と少なくとも90%の同一性を有する配列、から選択される核酸配列の一対を含む。
幾つかのより好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.1169抗体重鎖をコードするプラスミドCv2.1169_pIgH、特にはCv2.1169_pIgHで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)中に含まれるもの、である。これらの細菌Cv2.1169_pIgHは、ブダペスト条約に基づき、2021年1月28日に、Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5651で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.1169抗体軽鎖をコードするプラスミドCv2.1169_pIgL、特にはCv2.1169_pIgLで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)中に含まれるもの、である。これらの細菌Cv2.1169_pIgLは、ブダペスト条約に基づき、2021年1月28日に、Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5652で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.1353抗体重鎖をコードするプラスミドCv2.1353_pIgH、特にはCv2.1353_pIgHで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)中に含まれるもの、である。これらの細菌Cv2.1353_IgHは、ブダペスト条約に基づき、2021年04月02日にInstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5668で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.1353抗体軽鎖をコードするプラスミドCv2.1353_pIgL、特にはCv2.1353_pIgLで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)中に含まれるもの、である。これらの細菌Cv2.1353_IgLは、ブダペスト条約に基づき、2021年04月02日にInstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5669で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.3194抗体重鎖をコードするプラスミドCv2.3194_pIgH、特にはCv2.3194_pIgHで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)中に含まれるもの、である。これらの細菌Cv2.3194_IgHは、ブダペスト条約に基づき、2021年04月02日にInstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5670で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.3194抗体軽鎖をコードするプラスミドCv2.3194_pIgL、特にはCv2.3194_pIgLで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)に含まれるもの、である。これらの細菌Cv2.3194_IgLは、ブダペスト条約に基づき、2021年04月02日にInstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5671で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.3235抗体重鎖をコードするプラスミドCv2.3235_pIgH、特にはCv2.3235_pIgHで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)に含まれるもの、である。これらの細菌Cv2.3235_IgHは、ブダペスト条約に基づき、2021年04月02日にInstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5672で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.3235抗体軽鎖をコードするプラスミドCv2.3235_pIgL、特にはCv2.3235_pIgLで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)に含まれるもの、である。これらの細菌は、ブダペスト条約に基づき、2021年04月02日にInstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5673で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.5213抗体重鎖をコードするプラスミドCv2.5213_pIgH、特にはCv2.5213_pIgHで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)に含まれるもの、である。これらの細菌Cv2.5213_IgHは、ブダペスト条約に基づき、2021年04月02日にInstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5674で寄託された。
幾つかの好ましい実施態様において、本開示の抗体を発現させる為の組み換えベクターは、発現可能な形態におけるCv2.5213抗体軽鎖をコードするプラスミドCv2.5213_pIgL、特にはCv2.5213_pIgLで形質転換された大腸菌(DH10B、C3019、NEB)に含まれるもの、である。これらの細菌は、ブダペスト条約に基づき、2021年04月02日にInstitut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5675で寄託された。
本開示に従うポリヌクレオチドは、当技術分野において慣用的な方法によって調製される。例えば、PCR又はRT-PCRによる核酸配列の増幅によって、相同プローブとのハイブリダイゼーションによるゲノムDNAライブラリーのスクリーニングによって、又は全体的若しくは部分的な化学合成によって作成される。該組み換えベクターは、当技術分野において知られている慣用的な組み換えDNA及び遺伝子工学技術によって構築され、そして、宿主細胞内へと導入される。
本開示の更なる目的は、本発明に従う核酸及び/又はベクターによってトランスフェクションされ、感染され又は形質転換されたところの宿主細胞に関する。本明細書において使用される場合に、語「形質転換」(transformation)は、宿主細胞が導入された遺伝子又は配列を発現して所望の物質、典型的には導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素、を産生するように、「外来」(foreign)(すなわち、外来(extrinsic)又は細胞外(extracellular))遺伝子、DNA又はRNA配列を宿主細胞へ導入することを意味する。該形質転換は一過性のものであってもよく、又は経時的に安定なものであってもよい。安定な形質転換は、核酸を宿主細胞ゲノム内へ組み込むことによるものであってもよい。導入されたDNA又はRNAを受け、そして発現するところの宿主細胞は、「形質転換」されている。
宿主細胞は、原核細胞、例えば細菌、又は真核細胞、例えば酵母、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞は、サル(simian)、ヒト、イヌ及びげっ歯類の細胞でありうる。本開示の抗体を発現する為の哺乳動物宿主細胞は、特には、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary)(CHO細胞)、例えば、DHFR選択可能マーカー(Kaufman and Sharp,1982において記載されている)と共に使用されるdhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin,1980において記載されている)、CHOK1 dhfr細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞、例えばGS Xceed商標遺伝子発現システム(Lonza)、HEK-293細胞(ATCC CRL-1573)を伴うGS CHO細胞株、を包含する上記のCHO細胞を包含する。好ましい実施態様において、上記宿主細胞は、CHO細胞、又はHEK-293である。
本開示のポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、周知の組み換えDNA技術を用いた本発明のタンパク質の産生の為に有用である。ポリヌクレオチド又はベクターはまた、下記に開示された核酸治療の為に有用である。
本開示の抗体は、例えば、当技術分野において周知であるように、組み換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法との組み合わせを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマ(transfectoma)において産生されることができる(Morrison,1985)。軽鎖及び重鎖の発現の為に、重鎖及び軽鎖をコードする1以上の発現ベクターが、標準的な技術によって宿主細胞内へとトランスフェクションされる。語「トランスフェクション」の様々な形態は、原核生物又は真核生物の宿主細胞内へと外来性DNAを導入する為に一般的に用いられる様々な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション等、を包含することが意図されている。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが宿主細胞、特に真核細胞、例えば哺乳動物細胞、内へと導入されるときに、宿主細胞における抗体の発現の為に十分な期間、該宿主細胞を培養することにより抗体が産生され、そして任意的に、該宿主細胞が増殖しているところの培養液中に抗体が分泌される。抗体は、例えば標準的なタンパク質精製方法を用いてそれらの分泌後の培養液から回収され、そして精製されることができる(Shukla et al.,2007)。
医薬組成物及び治療的使用
別の観点において、本開示は、本明細書内において開示されている抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、核酸又はベクターを含む組成物であって、医薬的に許容可能な担体、アジュバント及び保存剤のうちの少なくとも1つとともに製剤化された該組成物、例えば医薬組成物、を提供する。例えば、本組成物は、本明細書において開示されているCv2.1169、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.3235、Cv2.5179及びCv2.5213を含むグループから選択される抗体、それらの抗原結合性フラグメント、又は該抗体若しくは抗原結合性フラグメントをコードする核酸若しくはベクターを含む。
幾つかの実施態様において、該核酸はmRNA、好ましくは本明細書において開示されている改変されたmRNA、であり、ここで、改変されたmRNAを含むmRNAは有利には、本明細書において開示されている粒子又は小胞、特にはLNP、に製剤化される。
本発明において使用される場合に、語「医薬的に許容可能な」は、動物及び/又はヒトにおける使用の為に、規制機関(regulatory agency)又は公認薬局方(recognized pharmacopeia)、例えば欧州薬局方(European Pharmacopeia)、によって承認されていることを意味する。語「賦形剤」は、治療剤がそれとともに投与されるところの希釈剤、アジュバント、担体又はビヒクルを云う。
医薬的に許容可能な任意の適切な担体、希釈剤又は賦形剤が、医薬組成物の調製において使用されることができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Alfonso R.Gennaro (Editor) Mack Publishing Company,April 1997を参照)。医薬組成物は典型的に、無菌であり、且つ製造及び保存の条件下で安定である。医薬組成物は、溶液(例えば、生理食塩水、ブドウ糖溶液、若しくは緩衝溶液、又は他の医薬的に許容可能な滅菌液)、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高濃度の生成物を収容する為に適した他の順序付けられた構造(ordered structure)(例えば、微粒子又はナノ粒子)として製剤化されうる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール等)、並びにそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性が、コーティング、例えばレシチン、の使用によって、分散液の場合における必要とされる粒子径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持されることができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば糖類、多価アルコール、例えばマンニトール及びソルビトール、塩化ナトリウム、を含めることが好ましいであろう。
幾つかの実施態様において、医薬組成物は、全身投与用、局所投与用、又は局所投与と組み合わせた全身投与用である。非経口的医薬組成物は、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、又は筋肉内投与の為に適した組成物を包含する。局所投与は好ましくは、呼吸器投与、例えば、鼻腔投与、吸入、ガス注入(insufflation)、又は気管支肺胞洗浄(broncho-alveolar lavage)、である。該投与は、非経口注射若しくは注入、局所送達、又は吸入、又は持続投与であってもよい。好ましくは、該投与は、注射、吸入、又は吸入と組み合わせた注射による。好ましくは、該注射は、静脈内、皮下又は筋肉内である。該吸入は有利には、ネブライゼーション(nebulisation)によって行われる。
幾つかの実施態様において、該医薬組成物は保存剤を含む。保存剤の非限定的な例は、抗酸化剤及び抗菌剤である。幾つかの実施態様において、該保存剤は既知の濃度で存在する。該組成物中の保存剤の存在は、該組成物を天然に存在するあらゆる組成物と区別する。それはまた、天然に存在する組成物中に存在しない独自の機能、例えば或る実施態様において、保存剤が有用であるところの或る条件下で治療的に使用されることができる能力、を該組成物に付与する。
幾つかの実施態様において、該医薬組成物は、規定濃度の本発明の組み換えヒト抗体を含む。そのような組成物は天然には存在せず、及び天然に存在する組成物とは異なる構造を有する。組み換え抗体の既知濃度は、該組成物に、天然に存在する組成物には存在しないところの固有の機能、例えば、或る実施態様において、該組み換え抗体の該規定濃度が有用であるところの或る条件下で治療的に使用される能力、を付与する。
幾つかの実施態様において、本明細書に開示されるIgA、特には高分子IgA又は分泌性IgA、を含む医薬組成物は、粘膜適用の為に、特には気道への適用の為に、好ましくはネブライゼーション(nebulisation)若しくは吸入によって使用される。IgA、特に高分子IgA(例えば、IgAのJ鎖二量体化)又は分泌性IgA、を含む医薬組成物は、SARS-CoV-2感染を予防する為の、予防的処置として好ましい。
幾つかの実施態様において、IgG、好ましくはIgG1、を含む医薬組成物は、注射、特に静脈内、皮下又は筋肉内、の為に使用される。
これらの医薬組成物は例示的なものであり、他の非経口及び非経口投与経路の為に適した医薬組成物を限定するものでない。本明細書において記載されている医薬組成物は、単回単位用量形態で又は多回用量形態で包装されることができる。
好ましくは、該医薬組成物はビヒクルを含み、該ビヒクルは、注射されることが可能な製剤の為に医薬的に許容可能である。これらは、特に等張、無菌、生理食塩水(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム等、又はそのような塩の混合物)、又は乾燥した組成物、特に凍結乾燥した組成物、であってもよく、場合により滅菌水又は生理食塩水を添加に応じて、注射可能な溶液の構成を可能にする。吸入又は注射の為の徐放性製剤、例えば、PLA若しくはPLGA又は他のポリマー、が使用されることができる。
或る態様において、本開示は、医薬品として使用する為の、先の複数の実施態様のうちのいずれか1つに従う、抗体、その抗原結合性フラグメント、又は医薬組成物に関する。
或る態様において、本開示は、好ましくは、SARS-CoV-2に関連付けられた又はそれに媒介される障害の症状を処置、予防又は緩和することを必要とする対象における該SARS-CoV-2に関連付けられた又はそれに媒介される障害の症状を処置、予防又は緩和する為の、上記の実施態様のいずれか1つに従う、抗体、それらの抗原結合性フラグメント又は組成物の治療的使用を提供する。
本発明において使用される場合に、語「対象」又は「患者」は、哺乳類を云う。開示された処置方法から利益を得ることができる哺乳動物種は、ヒト、非ヒト霊長類、例えば、類人猿、チンパンジー、サル、及びオランウータン、家畜化動物、例えばイヌ及びネコを包含する上記の家畜化動物、並びに家畜、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、及びヤギ、又は他の哺乳動物種、例えば限定されないが、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスターを包含する、上記の他の哺乳動物種、等を包含するが、これらに限定されない。
本発明において使用される場合に、語「処置」、「処置する」又は「処置している」は、患者の健康状態を改善することが意図された任意の行為、例えば、疾病の治療、予防(prevention)、前予防(prophylaxis)及び遅延、を云う。或る実施態様において、そのような語は、疾病又は疾病に関連付けられた症状の改善又は根絶、例えば、本開示に従うと、肺におけるウイルス負荷(viral burden)及び/又は炎症のレベルの低減、を云う。他の実施態様において、この語は、そのような疾病を有する対象への1つ以上の治療剤の投与から生じる結果として疾病の広がり又は悪化を最小限に抑えることを云う。
更なる観点において、本開示は、SARS-CoV-2に関連付けられた障害を発症するリスクを処置及び/又は低減することを必要とする対象において、該SARS-CoV-2に関連付けられた障害を発症するリスクを処置及び/又は低減する方法であって、該治療有効量の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、核酸若しくはベクター、又は上記された医薬組成物を該対象に投与することを含む上記の方法に関する。
幾つかの実施態様において、該対象は、SARS-CoV-2に感染しておらず、該処置は前予防的処置(prophylactic treatment)である。
幾つかの特定の実施態様において、該方法は、SARS-CoV-2に関連付けられたCOVID-19疾病を発症するリスクを低減する方法であり、ここで、入院のリスク又は死亡のリスクは、本処置によって低減される。幾つかの特定の実施態様において、SARS-CoV-2関連付けられたCOVID-19疾病を発症するリスクを低減することは、処置有効量の、上記された、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、核酸若しくはベクター、又は医薬組成物を対象に投与した後に、少なくとも3又は4ヶ月、好ましくは5又は6ヶ月、より好ましくは7~9ヶ月持続する。
幾つかの実施態様において、該対象はCOVID-19患者であり、該処置は治癒的処置(curative treatment)である。
幾つかの特定の実施態様において、該方法は、SARS-CoV-2に関連付けられたCOVID-19疾病を処置する方法であり、ここで、重篤な疾患を発症する可能性が処置によって減少し;ここで、入院の可能性が処置によって減少し;ここで、該対象が入院する。
幾つかの特定の実施態様において、該方法は、SARS-CoV-2に関連付けられたCOVID-19疾病を処置する方法であり、ここで、該対象はSARSを発症するリスクがあり、より特には、基礎疾患、例えば、肥満、糖尿病、癌、免疫抑制療法中(under immunosuppressive therapy)、原発性免疫不全(primary immune deficiency)、又はワクチンに対する無反応性、を併発している対象である。基礎疾患を併発している対象の非限定的な例は、抗CD20抗体療法を受けている対象、リンパ性血症を有する対象、固形臓器移植レシピエント(solid organ transplant recipient)、又は同種造血幹細胞移植レシピエント(allogeneic hematopoietic stem cell transplant recipient)を包含する。
本発明の文脈において、「有効量」とは、治療上有効な量を意味する。本明細書において使用される場合に、「治療上有効な量」は、SARS-CoV-2-感染の所望の治療結果、例えば、前予防、又は処置、特に肺におけるウイルス負荷(viral burden)及び/又は炎症レベルの低減、を達成する為に必要な投与量及び期間において有効な量を意味する。本発明の製品又はそれを含む医薬組成物の治療上有効な量は、因子、例えば、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を引き出す為の製品又は医薬組成物の能力に応じて変化しうる。用量レジメンは、最適な治療反応を提供するように調整されうる。治療上有効な量はまた、典型的には、製品又は医薬組成物の毒性又は有害作用が、治療上有益な作用によって凌駕される量である。
本開示の製品は典型的には、医薬組成物又は医薬品中に、任意的に、医薬担体、希釈剤及び/又はアジュバントと組み合わせて含まれるであろう。そのような組成物又は医薬品製品は、所望の治療効果を提供する為に十分な有効量の本開示の製品、及び医薬的に許容可能な担体又は添加剤を含む。
1つの実施態様において、該抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又はその治療的使用の為の医薬組成物は、非経口経路、特に静脈内、動脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内経路によって、対象又は患者に投与される。別の特定の実施態様において、抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又はその治療的使用の為の医薬組成物は、吸入により対象又は患者に投与される。
対象又は患者に投与される本発明の製品の量は、個々の対象又は患者の特定の状況、例えば、個人の年齢、性別、及び体重、疾病の性質及び段階、疾病の攻撃性、投与経路、及び/又は対象又は患者に処方された併用薬を包含する上記の特定の状況、に応じて変化しうる。用量レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整されうる。
任意の特定の対象の場合に、特定の投与量レジメンは、個々の必要性及び該組成物の投与を管理又は監督する者の専門的判断に従って、経時的に調整されうる。本明細書において記載されている用量範囲は例示的なものであり、医療従事者によって選択されうる用量範囲を制限するものでない。
1つの実施態様において、本開示に従う、抗体又は抗原結合性フラグメントは、2.5mg/kg~40mg/kg(kg:対象の又は患者の体重)の範囲内で構成される量又は用量で、SARS-CoV-2に関連付けられた疾病の処置の為に対象又は患者に投与されることができる。より特定の実施態様において、抗体又は抗原結合性フラグメントは、5~30mg/kgの範囲内で構成される量で投与される。より特定の実施態様において、該抗体又は抗原結合性フラグメントは、体重70kgの人について8.5~28.5mg/kgの範囲内で構成される量で投与される。より特定の実施態様において、抗体又は抗原結合性フラグメントは、少なくとも5mg/kg、好ましくは10mg/kg、より好ましくは15mg/kg、更により好ましくは30mg/kg、の用量で投与される。
幾つかの実施態様において、該医薬組成物はキット中に含まれ、該キットは、該キット内に含まれている製品を患者に投与する方法を記載するところの説明書又は包装材料を更に含みうる。キットの容器は、任意の適切な材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属など、及び任意の適切なサイズ、形状、又は構成であることができる。或る実施態様において、該キットは、適切な液体又は溶液の形態で本発明の製品を含む1以上のアンプル又はシリンジを備えていてもよい。
本発明の別の観点は、本開示に従う医薬組成物を含む医療用デバイスに関する。該医療用デバイスは、該組成物の投与の為に適した形態である。幾つかの実施態様において、該医療用デバイスは、該組成物の注射の為に適しており;該医療用デバイスは有利には、注射器、輸液バッグ、注射ポート、及び当技術分野において周知の他のものから選択される。他の実施態様において、該医療用デバイスは、該組成物の気道投与の為に適しており;該医療用デバイスは有利には、吸入器、ネブライザー、例えば小容量ネブライザー、及び当技術分野において周知の他のものから選択される。
本発明の別の観点は、SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病の予防又は処置の為の医薬の製造の為の、本開示に従う医薬組成物の使用に関する。
診断薬、キット及び方法
本開示に従う抗原結合部位を含む抗体又はそのフラグメントは、SARS-CoV-2に特異的であり、特には、他のコロナウイルス、例えば、ヒト病原性ベータコロナウイルス(B/Cグループ)SARS-CoV-1及びMERS-CoV;アルファコロナウイルスNL63-CoV及び229E-CoV並びにベータコロナウイルスAグループHKU1-CoVを包含する上記の他のコロナウイルス、とは交差反応しない(表5)。それ故に、これらは、様々なサンプル中、例えば、特に生物学的サンプル又は環境サンプルを包含する上記の様々なサンプル中、のSARS-CoV-2感染又は汚染を検出する為の試薬として有用である。
該サンプルはSARS-CoV-2を含むと疑われる何らかのサンプル、例えば、特には生物学的サンプル又は環境サンプル、である。生物学的サンプルは、組織、体液又は便のいずれであってもよい。体液の非限定的な例は、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF:cerebral spinal fluid)、及び粘膜分泌物、例えば口腔分泌物及び呼吸器分泌物(喀痰、唾液等)を包含する。サンプルは、スワブ(swab)、例えば、口腔スワブ又は上咽頭(NP:nasopharyngeal)スワブ、吸引液、洗浄液(wash)、又は灌流液(lavage)、を包含する。SARS-CoV-2についての診断検査の為のサンプルは、上気道(上咽頭/咽頭スワブ、鼻腔吸引液、鼻洗浄液、若しくは唾液)、又は下気道(喀痰若しくは気管吸引液、又は気管支肺胞灌流液(BAL:bronchoalveolar lavage))から採取されることができる。好ましい生物学的生物学的サンプルは、鼻咽頭スワブ及び唾液サンプルを包含する。サンプルは、SARS-CoV-2を含みうる環境サンプル、例えば、空気、水、土壌、食品、飲料、飼料、水(例えば、淡水、塩水、廃水、及び飲料水)、下水、汚泥、環境表面等を包含する。環境表面サンプルは例えば、表面スワブ又はスワイプ(swipe)である。
検出又は診断は、当技術分野において周知であり、且つ適切な標識を用いた抗原抗体複合体の検出に依存するところのイムノアッセイ技術によって行われる。本発明の方法は、限定されないが、任意のイムノアッセイ法、例えば、イムノブロット法、免疫沈降法、ELISA法、免疫細胞化学法又は免疫組織化学法、及びフローサイトメトリーアッセイのような免疫蛍光法、及びFACS、を使用しうる。フローサイトメトリーは、フロービロメトリー(flow virometry)、ナノスケールフローサイトメトリー、又は単に小粒子フローサイトメトリーとしても知られており、感染した細胞によって放出された無傷の(intact)ウイルス粒子を定量する為の、迅速、ハイスループット、及び効果的な方法である。
本発明は、サンプル中のSARS-CoV-2を検出する方法であって、該サンプルを本開示に従う抗体と接触させ、そして、形成された抗原抗体複合体を検出することを含む上記方法を包含する。
本発明の方法は、イムノアッセイでにおいて使用される任意の適切な標識、例えば、酵素、化学発光、蛍光色素/タンパク質又は放射性薬剤等、を使用しうる。該標識は、抗原に結合する抗体若しくはそのフラグメント上に、又は標識にコンジュゲートされた結合パートナー、例えば、二次抗体若しくはアビジン/ストレプトアビジン、上にありうる。
該抗体は好ましくは、コンジュゲート(conjugate)又は融合タンパク質(fusion protein)の形で標識付けされ、ここで、抗原抗体複合体は、上記に開示されているように、その目的の為に利用可能な任意の適切な手段によって、該標識からのシグナルを測定することによって検出される。
幾つかの実施態様において、抗原検出は、ELISA、ラテラルフローイムノアッセイ(lateral flow immunoassay)、又はビーズベースイムノアッセイ(bead-based immunoassay)によって行われる。
検出工程は定性的又は半定量的であり、及びサンプル中のウイルス抗原の存在又はレベルを検出することを含む。幾つかの実施態様において、該検出工程は、混合物中の結合抗原の量を決定すること、及び任意的に、混合物中の結合抗原の量を少なくとも1つの所定の値と比較することを含む。
本発明の方法を用いて、個体からの生物学的サンプル中のウイルス抗原の存在又はレベルを検出することは、その個体がSARS-CoV-2感染又は関連付けられたCOVID-19疾病を患っているかどうかを示す。
それ故に、本発明の上記方法は、個体におけるSARS-CoV-2感染又は関連付けられたCOVID-19疾病の診断、及びCOVID-19患者における処置のモニタリングの為に有用である。
該処置は、抗ウイルス処置又はSARS-CoV-2中和化抗体を用いた免疫療法でありうる。
幾つかの実施態様において、該方法は、該個体がSARS-CoV-2感染又は関連付けられた疾病を患っているかどうかをそれらから推測する工程を含む診断方法である。
幾つかの実施態様において、該方法は、COVID-19患者における処置のモニタリング方法であり、該方法は、該処置が効率的であるか否かをそれらから推測する工程を含む。処置の有効性は、処置前又は処置の経過の間に、患者において決定された以前のウイルス抗原レベルと比較したウイルス抗原レベルの減少によって決定される。
本発明のこの観点に関連する幾つかの実施態様において、上記の診断方法は、個体がSARS-CoV-2ウイルス感染症、特にはCOVID-19に関連付けられた疾病、と診断されたか否かに応じて、該個体に適切な処置を施す更なる工程を含む。
本発明のこの観点に関連する幾つかの実施態様において、COVID-19患者における処置のモニタリングの上記方法は、該処置が患者において効率的でないと決定されたときに、COVID-19処置を修正するさらなる工程を含む。
別の観点において、本開示は、SARS-CoV-2感染又は汚染の検出又は診断の為のキットに更に関し、該キットは少なくとも抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントを含み、好ましくは、該キットは、検出可能な標識を更に含む。該キットは任意的に、抗原/抗体複合体を検出する為の試薬を含む。この目的の為に利用可能な試薬は当技術分野において周知であり、限定されるものでないが、緩衝液、標識にコンジュゲートされた二次抗体、標識にコンジュゲートされたアビジン/ストレプトアビジンを包含する。本発明のキットの幾つかの好ましい実施態様において、抗体及び任意の試薬は、常温保存を可能にする為に凍結乾燥された形態である。該キットの構成要素は、抗原/抗体複合体の検出の為に適した様々な容器、例えば、プレート、スライド、ウェル、ディッシュ、ビーズ、粒子、カップ、ストランド、チップ、ストリップ等、のいずれかにまとめてパッケージ化される。該キットは任意的に、本発明の方法の少なくとも1つの特定の実施態様を実施する為の説明書を含む。幾つかの有利な実施態様において、該キットはマイクロウェルプレート又はマイクロチューブ、好ましくは乾燥フォーマット(dried format)、すなわちプレート又はマイクロチューブのウェルが、少なくとも抗体を含む乾燥組成物を含み、好ましくは抗原/抗体複合体の検出の為の全ての試薬を更に含むマイクロウェルプレート又はマイクロチューブを含む。他の幾つかの有利な実施態様において、抗体及び任意の試薬は、イムノアッセイの為に利用可能な複数のデバイスのうちのいずれかに含まれている。
本発明の実施には、特に断りのない限り、当業者が知っている慣用的な技術が用いられるであろう。そのような技術は文献において十分に説明されている。
ここで、添付図面を参照しながら、本発明が下記の実施例により例示されるが、本発明はこれらに限定されるものでない。
図1.回復期のCOVID-19個体からのクローニングされた、(Wuhan)SARS-CoV-2スパイク特異的なメモリ抗体。(図1A)SARS-CoV-2トリ-SへのIgG抗体結合が、CORSERコホート(n=212;2つの時点t1及びt2)並びにフランスCOVID-19コホート(n=159;一部のサンプルについては経過観察あり)の回復期COVID-19個体からの連続希釈血清を用いてELISAにより決定された曲線下面積(AUC:area under the curve)値として示したドットプロット。全てのドットは、下記の(図1B)及び(図1C)で夫々試験された選択されたサンプルを示す。 図1.回復期のCOVID-19個体からのクローニングされた、(Wuhan)SARS-CoV-2スパイク特異的なメモリ抗体。(図1B)図2Bにおいて測定されたSARS-CoV-2トリ-S及びRBDタンパク質に対する、CORSER(n=8)コホート及びフランスCOVID-19(n=34)コホートからの選択された回復期COVID-19個体のIgG、IgGサブクラス及びIgAの血清反応性を示すヒートマップ。別のβ-コロナウイルスに対する交差反応性を調べる為に、サンプルがまたMERSトリ-Sに対して試験された。 図1.回復期のCOVID-19個体からのクローニングされた、(Wuhan)SARS-CoV-2スパイク特異的なメモリ抗体。(図1C)図2D及び図2Eにおいて測定された、SARS-CoV-2抗原及び他のコロナウイルス(α-コロナウイルス;β-コロナウイルス)からの三量体スパイクタンパク質に対する、選択された回復期ドナーから精製された血清IgG及びIgA抗体の抗体結合を示すヒートマップ。RBD、受容体結合ドメイン;FP、融合ペプチド。 図1.回復期のCOVID-19個体からのクローニングされた、(Wuhan)SARS-CoV-2スパイク特異的なメモリ抗体。(図1D)選択したCOVID-19回復者(上部)からの精製された血清IgG及びIgA抗体のイン・ビトロ(in vitro)SARS-CoV-2中和活性を示すグラフ。計算されたIC50値は、下部のヒートマップ内に示されている。 図1.回復期のCOVID-19個体からのクローニングされた、(Wuhan)SARS-CoV-2スパイク特異的なメモリ抗体。(図1E)回復期ドナーからの血液中のSARS-CoV-2 S結合IgG+及びIgA+メモリB細胞を示すフローサイトメトリープロット。左上のフローサイトメトリーヒストグラムは、SARS-CoV-2 S結合IgG+及びIgA+メモリBリンパ球中のRBD+細胞の割合を示す。 図1.回復期のCOVID-19個体からのクローニングされた、(Wuhan)SARS-CoV-2スパイク特異的なメモリ抗体。(図1E)回復期ドナーからの血液中のSARS-CoV-2 S結合IgG+及びIgA+メモリB細胞を示すフローサイトメトリープロット。左上のフローサイトメトリーヒストグラムは、SARS-CoV-2 S結合IgG+及びIgA+メモリBリンパ球中のRBD+細胞の割合を示す。 図1.回復期のCOVID-19個体からのクローニングされた、(Wuhan)SARS-CoV-2スパイク特異的なメモリ抗体。(図1F)S-フロー(Y軸)、トリ-S ELISA(X軸)、トリ-S-捕捉ELISA(バブルサイズ)によって測定された、回復期ドナーのSARS-CoV-2 S結合IgG+及びIgA+メモリB細胞からクローニングされたヒトモノクローナルIgG抗体のSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する反応性を示すバブルプロット。各ドナーについて、円グラフはクローニングされた抗体からのSARS-CoV-2 S特異的抗体の割合(上;円グラフ中央中に示された総数)と、各SARS-CoV-2 S特異的B細胞クローンファミリーにおける変異体の数(n)を示す。 図1.回復期のCOVID-19個体からのクローニングされた、(Wuhan)SARS-CoV-2スパイク特異的なメモリ抗体。(図1F)S-フロー(Y軸)、トリ-S ELISA(X軸)、トリ-S-捕捉ELISA(バブルサイズ)によって測定された、回復期ドナーのSARS-CoV-2 S結合IgG+及びIgA+メモリB細胞からクローニングされたヒトモノクローナルIgG抗体のSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する反応性を示すバブルプロット。各ドナーについて、円グラフはクローニングされた抗体からのSARS-CoV-2 S特異的抗体の割合(上;円グラフ中央中に示された総数)と、各SARS-CoV-2 S特異的B細胞クローンファミリーにおける変異体の数(n)を示す。 図2.COVID-19回復者からの血清、精製されたポリクローナル及びモノクローナル抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2反応性。(図2A)既に報告されている(2)のSARS-CoV-2トリ-SへのELISA IgG抗体結合について、CORSERコホート(n=212)とフランスCOVID-19コホート(n=159)とにおける回復期COVID-19個体及び流行前のドナー(n=100)からの連続希釈された血清で測定された単一希釈OD測定値(1:400)(X軸)及びAUC値(Y軸)を比較したグラフ。 図2.COVID-19回復者からの血清、精製されたポリクローナル及びモノクローナル抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2反応性。(図2B)CORSERコホート(n=8)及びフランスCOVID-19コホート(n=34)における選択された回復期COVID-19個体の血清IgG及びIgA抗体のSARS-CoV-2トリ-S及びRBD蛋白に対する反応性を示すELISAグラフ。別のβ-コロナウイルスに対する交差反応性を調べる為に、サンプルがまたMERSトリ-Sに対して試験された。2回繰り返しの値の平均値が示されている。DF、希釈倍率。 図2.COVID-19回復者からの血清、精製されたポリクローナル及びモノクローナル抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2反応性。(図2C)(図2A)において決定されたSARS-CoV-2トリ-S、MERS-CoVトリ-S及びRBDタンパク質に対する血清IgG及びIgA抗体のAUC結合値を比較した相関図。p値は両側ピアソン相関検定(two-tailed Pearson correlation test)を用いて算出された。 図2.COVID-19回復者からの血清、精製されたポリクローナル及びモノクローナル抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2反応性。(図2D)SARS-CoV-2タンパク質及びタンパク質サブユニットに対する、選択されたドナー(n=10)からの精製されたIgG及びIgA血清抗体の反応性を示すELISAグラフ。2回繰り返しの値の平均値が示されている。 図2.COVID-19回復者からの血清、精製されたポリクローナル及びモノクローナル抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2反応性。(図2E)(図2D)と同じであるが、他のコロナウイルスの三量体スパイクタンパク質。 図2.COVID-19回復者からの血清、精製されたポリクローナル及びモノクローナル抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2反応性。(図2F)SARS-CoV-2 S捕捉されたメモリB細胞(n=133)からクローニングした抗体のSARS-CoV-2トリ-Sタンパク質に対する反応性を示すELISAグラフ。2回繰り返しの値の平均値が示されている。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3A)(Wuhan)SARS-CoV-2 S-三量体、S1及びRBDタンパク質への結合についての、中和化抗RBD IgG抗体の相対的親和性を比較したSPRセンサーグラム。計算されたKDの値が下部に示されている。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3A)(Wuhan)SARS-CoV-2 S-三量体、S1及びRBDタンパク質への結合についての、中和化抗RBD IgG抗体の相対的親和性を比較したSPRセンサーグラム。計算されたKDの値が下部に示されている。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3B)潜在的なコンペティターとしてのCv2.1169の存在下で、選択されたビオチン化された抗RBD抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2トリ-S(上側)及びRBD(下側)へのIgG結合を比較した競合ELISAグラフ(左側)。エラーバーは2回繰り返しの値のSDを示す。ヒートマップ(右側)は、図4Dにおいて測定されたトリ-S及びRBD結合についての選択された抗RBD抗体の競合を示す。黒色は競合物質による阻害が強いことを示し;灰色は競合が少ないか又は全くないことを示す。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3C)コンペティターとしての抗RBD抗体の存在下で、固定化された可溶性ACE2エクトドメインへのビオチン化された(Wuhan)SARS-CoV-2トリ-Sタンパク質の結合を示す競合ELISAグラフ。エラーバーは2回繰り返しの値のSDを示す。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3D)擬似中和(上側)アッセイ及びS-融合中和(Fuse neutralization)(下側)アッセイを用いて決定された、抗RBD IgG抗体による(Wuhan)SARS-CoV-2の中和曲線を示すグラフ。エラーバーはアッセイの3回繰り返し値のSDを示す。IC50値は、左上隅に示されている。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3D)擬似中和(上側)アッセイ及びS-融合中和(Fuse neutralization)(下側)アッセイを用いて決定された、抗RBD IgG抗体による(Wuhan)SARS-CoV-2の中和曲線を示すグラフ。エラーバーはアッセイの3回繰り返し値のSDを示す。IC50値は、左上隅に示されている。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3E)フローサイトメトリーによって測定された、SARS-CoV-2及び選択されたウイルス変異体の細胞発現されたスパイクタンパク質へのRBD特異的IgG抗体の結合を比較したヒートマップ。2回繰り返しのlog10ΔgMFI値の幾何平均が、各細胞において示されている。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3F)図4Eから図4Gにおいて測定されたSARS-CoV-2及び選択されたウイルス変異体(B.1.1.7、B.1.351及びP.1)のRBDタンパク質についてのRBD特異的IgG抗体の結合(binding)(左側)及びRBD-ACE2ブロッキング能(blocking capacity)(右側)を比較したヒートマップ。黒は高い結合(binding)又は競合(competition)を示し、灰色は中程度の結合又は競合を示す(白=結合なし)。AUC値が各セルにおいて示されている。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3F)図4Eから図4Gにおいて測定されたSARS-CoV-2及び選択されたウイルス変異体(B.1.1.7、B.1.351及びP.1)のRBDタンパク質についてのRBD特異的IgG抗体の結合(binding)(左側)及びRBD-ACE2ブロッキング能(blocking capacity)(右側)を比較したヒートマップ。黒は高い結合(binding)又は競合(competition)を示し、灰色は中程度の結合又は競合を示す(白=結合なし)。AUC値が各セルにおいて示されている。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3G)S-融合中和アッセイによって決定された抗RBD IgG抗体によるSARS-CoV-2ウイルス変異体の中和曲線を示すグラフ。エラーバーはアッセイ2回繰り返しのSDを示す。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3H)SARS-CoV-2及び選択されたVOCに対する選択された抗RBD抗体のIC50中和値が、図14D及び図14Eにおいて測定された、擬似中和アッセイ(下側)及びS-融合中和アッセイ(上側)で比較したヒートマップ。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3I)図7B~図7Eにおいて測定されたCv2.5179抗体についての、スパイクタンパク質(上側)及びRBDタンパク質(真ん中)への結合、RBD-ACE2ブロッキング能(真ん中)、並びに中和活性(下側)を示すヒートマップ。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3J) SARS-CoV-2トリ-S、S1及びRBDへの並びにSARS-CoV-2ウイルス変異体からのRBDタンパク質(太字;B.1.1.7,B.1.351及びP.1)へのCv2.1169 IgG及びIgA抗体の結合を比較したレーダープロット(Rada plot)。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3K)SARS-CoV-2 トリ-S、S1及びRBDタンパク質への並びに図4Jにおいて測定された選択されたウイルス変異体(太字で)からのRBDへの単量体Cv2.1169 IgG及びIgA抗体の結合を比較したレーダープロット。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3L) コンペティターとしてのCv2.1169 IgG又はIgAの存在下で、固定化された可溶性ACE2エクトドメインへのビオチン化された(Wuhan)SARS-CoV-2トリ-Sタンパク質の結合を比較した競合ELISAグラフ(左側)。エラーバーは2回繰り返し値のSDを示す。擬似中和アッセイで決定されたCv2.1169 IgG、IgA及びIgA FabのSARS-CoV-2中和活性を比較したグラフ(右側)。エラーバーは2回繰り返し値のSDを示す。 図3.強力な抗RBD抗体中和剤の結合及び中和特性-図12及び図13に関連。(図3M)S-融合中和アッセイで決定された単量体及び二量体IgA(dIgA)Cv2.1169抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2中和活性を比較したグラフ。エラーバーは3回繰り返し値のSDを示す。n.dIgAは、結合部位の数に従って正規化された値。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4A)変性された(Wuhan)SARS-CoV-2トリ-Sタンパク質に対するSARS-CoV-2 S-特異的IgG抗体(n=101)の反応性を示す赤外免疫ブロット。免疫反応性のバンド(上側の画像)は、抗6×Hisタグ抗体で可視化された変性されたSARS-CoV-2トリ-Sタンパク質に対応する。下側の画像におけるバンドは、変性されたトリ-Sタンパク質を認識するSARS-CoV-2抗体Cv2.3132を示し、それは、配列番号164の重鎖可変領域と配列番号165の軽鎖可変領域とによって特徴付けられる。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4B)変性された(Wuhan)SARS-CoV-2トリ-Sタンパク質に対するCv2.3132抗体の、様々な濃度での反応性を示す赤外ドットブロット。Cv2.1169が比較の為に加えられた。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4C)15-マー(mer)のS2重畳(overlapping)5-アミノ酸ペプチド(n=52)に対するCv2.3132 IgG抗体の反応性を示すグラフ。mGO53は非SARS-CoV-2アイソタイプ対照である。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4D)競合ELISAグラフは、潜在的なコンペティターとしての対応するビオチン化されていないIgG抗体の存在下で、選択されたビオチン化されたSARS-CoV-2 S-特異的抗体の(Wuhan)SARS-CoV-2トリ-S(上側)及びRBD(下側)へのIgG結合を示す。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4E)SARS-CoV-2ウイルス変異体(B.1.1.7(α)、B.1.351(β)及びP.1(γ))からのRBDタンパク質に対するSARS-CoV-2 RBD特異的IgG抗体の反応性を示すELISAグラフ。OD405nmの2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4F)潜在的なコンペティターとしてのSARS-CoV-2 S-特異的IgG抗体の存在下で、可溶性ACE2エクトドメインへのSARS-CoV-2及びウイルス変異体(B.1.1.7(α)、B.1.351(β)及びP.1(γ))からのビオチン化されたRBDタンパク質の結合を示す競合ELISAグラフ。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4G)(図4F)と同様であるが、選択されたIgG競合物質が、RBDタンパク質についてのB.1.1.7及びB.1.351に対して高濃度で試験された。2回繰り返し値の平均値が示されている。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4H)(図4E)と同様であるが、SARS-CoV-2ウイルス変異体κ、δ、δ+のRBDタンパク質。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4I)(図4F)と同様であるが、SARS-CoV-2ウイルス変異体κ、δ、δ+のRBDタンパク質。 図4.強力な抗RBD抗体中和剤の結合特徴。(図4J)Cv2.1169の単量体IgG/IgA及び二量体IgA(dIgA)抗体のSARS-CoV-2トリ-S、S1及びRBDに対する並びにSARS-CoV-2ウイルス変異体(α、β、γ、δ、δ+及びκ)のRBDタンパク質に対する反応性を比較したELISAグラフ。OD405nmの2回繰り返し値の平均±SDが示されている。 図5.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のポリ反応性及び自己反応性の評価。(図5A)dsDNA(DNA)、フラジェリン(flagellin)(Fla)、YU2 HIV-1 Env(gp140)、インスリン(INS)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH:keyhole limpet hemocyanin)、リポ多糖(LPS:lipopolysaccharide)、リゾチーム(LZ:lysozyme)、MAPK-14(MAPK)、プロテオグリカン(PG:proteoglycan)、サイログロブリン(Tg:thyroglobulin)に対する選択されたSARS-CoV-2中和化抗体の反応性を示すELISAグラフ;mGO53(3)及びED38(4)は夫々、陰性対照抗体と陽性対照抗体である。(図5C)におけるHEp-2反応性を示す抗SARS-CoV-2 S抗体Cv2.3132が比較の為に加えられた。2回繰り返し値の平均値が示されている。 図5.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のポリ反応性及び自己反応性の評価。(図5B)(図5A)において示されているELISA結合解析から決定された曲線下面積(AUC:area under the curve)値を比較したヒートマップ。濃い色は高い結合を示し、一方、薄い色は中庸の結合を示す(白=結合なし)。 図5.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のポリ反応性及び自己反応性の評価。(図5C)間接免疫蛍光アッセイ(indirect immunofluorescence assay)によって測定されたHEp2発現化自己抗原(HEp2-expressing self-antigen)に対する選択されたSARS-CoV-2抗体の反応性を示す顕微鏡像。陰性(mGO53)、低陽性(ED38)、及びキットの陽性(Ctr+)対照が実験に含まれた。HEp-2反応性の抗SARS-CoV-2 S抗体Cv2.3132がまた比較の為に加えられた。スケールバーは40μmを表す。 図5.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のポリ反応性及び自己反応性の評価。(図5D)ELISAによって測定された、選択されたSARS-CoV-2抗体のHEp-2反応性を示す棒グラフ。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。Ctr+とCtr-はそれぞれキットの陽性対照と陰性対照である。 図5.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のポリ反応性及び自己反応性の評価。(図5E)ヒトタンパク質に対する選択されたSARS-CoV-2抗体の反応性を示す代表的なマイクロアレイプロット。プロット(上側)は夫々、y軸に参照 (Ref:mGO53)及びx軸に試験抗体によって各タンパク質スポット上に与えられた平均蛍光強度(MFI:mean fluorescence intensity)値を示す。各ドットは、重複アレイタンパク質の平均を表す。プロット(下側)は、参照(Ref:mGO53、y軸)及び試験抗体(x軸)による単一タンパク質上のzスコアを示す。 図5.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のポリ反応性及び自己反応性の評価。(図5F)2つの独立した実験(アレイ#1及びアレイ#2)から得られた非反応抗体MGO53と比較した、選択されたSARS-CoV-2抗体のMFIシグナルのlog10タンパク質変位(log10 protein displacement)(σ)を示す頻度ヒストグラム。多反応性指標(PI:polyreactivity index)は、全てのアレイのタンパク質変位のガウス平均に対応する。薄い灰色(5213、1169、1353)及び濃い灰色(3235、3194)のヒストグラムは夫々、非反応抗体(non-polyreactive antibody)及び多反応抗体(polyreactive antibody)を示す。 図6.強力なSARS-CoV-2中和剤Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性。(図6A)(Wuhan)SARS-CoV-2で感染したK18-hACE2マウスにおけるCv2.1169抗体療法の実験設計を示す模式図。動物に104のプラーク形成単位(PFU:plaque forming units)の(Wuhan)SARS-CoV-2ウイルスを経鼻(i.n.)感染させ、そして、6時間後に、Cv2.1169又はアイソタイプ対照IgG抗体が、~10mg/kg(0.25mg)及び~20mg/kg(0.5mg)で腹腔内(i.p.)注射された。動物グループにおける初期体重(Δ%体重、左下)及び生存率(右下)の推移を示すグラフ。ログランク・マンテル-コックス検定(Log-rank Mantel-Cox test)を用いてカプラン・マイヤー解析(Kaplan-Meier analysis)でマウスのグループが比較された。 図6.強力なSARS-CoV-2中和剤Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性。(図6B)(図6A)と同様であるが、K18-hACE2マウスに105のPFUで感染され、そして、22時間後に、Cv2.1169 IgG抗体1mgのi.p.(~40mg/kg)で又はCv2.1169 IgG抗体1mg+0.4mgで夫々i.p.及びi.n.投与された。 図6.強力なSARS-CoV-2中和剤Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性。(図6C)(図6A)と同様であるが、感染したマウスが、~5mg/kg(0.125mg)i.p.でCv2.1169 IgG及びIgA抗体を用いて処置された。 図6.強力なSARS-CoV-2中和剤Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性。(図6D)(Wuhan)SARS-CoV-2で感染したゴールデンシリアンハムスター(Golden Syrian hamster)(上側)におけるCv2.1169抗体療法の実験設計を示す模式図。動物に6×104のプラーク形成単位(PFU)のSARS-CoV-2ウイルスを経鼻(i.n.)感染させ、そして、24時間後に、PBS、Cv2.1169又はアイソタイプ対照IgG抗体を~10mg/kg(1mg)で腹腔内(i.p.)注射した。肺重量/体重比(LW/BW)×100(左側)、感染率(中央)、及び5dpiで、動物グループで測定されたRNA負荷量(右側)を示すドットプロット。ハムスターのグループは、両側マン・ホイットニー検定(two-tailed Mann-Whitney test)を用いて比較された。 図6.強力なSARS-CoV-2中和剤Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性。(図6E)(図6D)と同様であるが、感染した動物が4時間後に、~5mg/kg(0.5mg)i.p.でCv2.1169 IgG及びIgA抗体を用いて処置された。 図6.強力なSARS-CoV-2中和剤Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性。(図6F)(図6A)と同様であるが、K18-hACE2マウスが104のPFUのSARS-CoV-2変異体β(B.1.351)に感染され、そして、感染6時間前に~5mg/kg(0.5mg)のCv2.1169 IgAを用いて前処置されたか又は感染6時間後に~5mg/kg(0.5mg)のCv2.1169 IgG若しくはアイソタイプ対照(ctr)で処置された。 図7.VH1-58でコード化されたSARS-CoV-2スパイクで捕捉されたメモリB細胞抗体。(図7A)SARS-CoV-2スパイクで捕捉されたメモリB細胞抗体から作製されたVH1-58コード化されたヒト抗体の重鎖(IgH,左側)と軽鎖(IgL,右側)のアミノ酸整列。IgHとIgLの配列整列から作成されたVH1-58でコード化されたヒト抗体間の関係を示すデンドログラム(Dendrogram)が下部に示されている。 図7.VH1-58でコード化されたSARS-CoV-2スパイクで捕捉されたメモリB細胞抗体。(図7B)(Wuhan)SARS-CoV-2トリ-Sタンパク質に対するVH1-58でコード化された抗体の反応性を示すELISAグラフ。OD405nmの2回繰り返し値の平均±SDが示されている。 図7.VH1-58でコード化されたSARS-CoV-2スパイクで捕捉されたメモリB細胞抗体。(図7C)RBDタンパク質へのCv2.5179抗体及びCv2.1169抗体の結合を比較したELISAグラフ。OD405nmの2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図7.VH1-58でコード化されたSARS-CoV-2スパイクで捕捉されたメモリB細胞抗体。(図7D)Cv2.5179又はCv2.1169抗体の存在下、固定化された可溶性ACE2エクトドメインへのビオチン化されたRBDタンパク質の結合を示す競合ELISAグラフ。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図7.VH1-58でコード化されたSARS-CoV-2スパイクで捕捉されたメモリB細胞抗体。(図7E)S-融合中和アッセイで決定された、Cv2.5179 IgG抗体によるSARS-CoV-2及びVOCの中和曲線を示すグラフ。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。IC50の値が左上隅に示されている。 図8.潜在的なコンペティターとしての他の中和化抗体の存在下、ビオチン化されたCv2.5179と(Wuhan)トリ-Sタンパク質とのELISAによる結合。潜在的なコンペティターとしての選択された抗RBD抗体の存在下、(Wuhan)SARS-CoV-2トリ-Sへのビオチン化されたCv2.5179抗体の結合を示す競合ELISAグラフ。結合曲線は、試験した全ての抗RBD nAbsが、SARS-Cov-2トリ-Sタンパク質へのCv2.5179の結合を阻害/ブロッキングすることを示す。 図9.VOCベータ及びオミクロン(BA.1)のトリ-S及びRBDタンパク質へのCv2.1169結合-図17A及び図17Cに関連。SARS-CoV-2 Wuhan(過去のデータ)及びBA.1トリ-S(図9A);並びにSARS-CoV-2 Wuhan及びウイルス変異体(β及びBA.1)からのRBDタンパク質(図9B)へのCv2.1169抗体の反応性を示すELISAグラフ。OD405nmの2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図9.VOCベータ及びオミクロン(BA.1)のトリ-S及びRBDタンパク質へのCv2.1169結合-図17A及び図17Cに関連。SARS-CoV-2 Wuhan(過去のデータ)及びBA.1トリ-S(図9A);並びにSARS-CoV-2 Wuhan及びウイルス変異体(β及びBA.1)からのRBDタンパク質(図9B)へのCv2.1169抗体の反応性を示すELISAグラフ。OD405nmの2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図9.VOCベータ及びオミクロン(BA.1)のトリ-S及びRBDタンパク質へのCv2.1169結合-図17A及び図17Cに関連。(図9C)Cv2.1169及び選択されたベンチマーク抗体についてのIC50値がヒートマップ中に示されている。灰色の空欄は、抗体が結合せず、従って、IC50値が決定されることができなかったことを示す。 図10.Cv2.1169及びベンチマーク抗体の存在下で、固定化されたACE-2へのSARS-CoV-2 Sタンパク質(トリ-S)の結合。(図10A)Cv2.1169抗体の存在下、可溶性ACE2エクトドメインへのビオチン化されたSARS-CoV-2 Wuhan及びBA.1トリ-Sタンパク質の結合を示す競合ELISA。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図10.Cv2.1169及びベンチマーク抗体の存在下で、固定化されたACE-2へのSARS-CoV-2 Sタンパク質(トリ-S)の結合。(図10B)Cv2.1169及び選択されたベンチマーク抗体(可変領域の配列番号158~163を含む)についてのIC50値がヒートマップにおいて示されている。2.0(灰色で)の値は、2μg/mlのIgG濃度で50%の結合阻害に到達しなかったことを示す。 図11.S-融合中和アッセイで決定された、Cv2.1169及びベンチマーク抗体によるSARS-CoV-2デルタ及びオミクロン(BA.1)の中和。(図11A)グラフは、S-融合中和アッセイによって決定された、Cv2.1169抗体によるSARS-CoV-2デルタ及びBA.1ウイルス変異体の中和曲線を示す。エラーバーはアッセイの2回繰り返しのSDを示す。 図11.S-融合中和アッセイで決定された、Cv2.1169及びベンチマーク抗体によるSARS-CoV-2デルタ及びオミクロン(BA.1)の中和。(図11B)Cv2.1169及び選択されたベンチマーク抗体についてのIC50値(ng/ml)が右のヒートマップ中に示されている。灰色の値は、最大濃度(>9000ng/ml)で50%の結合阻害に到達しなかったことを示す。 図12.SARS-CoV-2ウイルス変異体κ、δ及びδ+に対する強力な抗RBD中和剤の結合及び中和特性-図3F(右パネル)に関連。図4E~図4Hにおいて測定された、SARS-CoV-2及び選択されたウイルス変異体(δ、δ+及びκを包含する)のRBDタンパク質についてのRBD特異的IgG抗体の結合(左側)とRBD-ACE2ブロッキング能(右側)を比較したヒートマップ。濃い色は高い結合又は競合を示し、一方、薄い色は中庸の結合又は競合を示す(白=結合又は競合なし)。AUC値が各セルにおいて示されている。 図13.SARS-CoV-2ウイルス変異体κ、δ及びδ-に対する強力な抗RBD抗体中和剤Cv2.5179の結合特徴-図3Lに関連。RBD特異的IgG抗体Cv2.5179のSARS-CoV-2及び選択されたウイルス変異体(δ、δ+及びκを含む)のRBDタンパク質に対する結合能(上側)とRBD-ACE2遮断能(下側)を比較したヒートマップ(図12)。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図14.強力なSARS-CoV2中和剤の交差中和機能及びFc依存性エフェクター機能。(図14A)選択された中和化(nAbs)及び非中和化(non-nAbs)のSARS-CoV-2 S-特異的抗体のADCC活性を比較したグラフ。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図14.強力なSARS-CoV2中和剤の交差中和機能及びFc依存性エフェクター機能。(図14B)(図14A)と同様であるが、CDC活性に関する。 図14.強力なSARS-CoV2中和剤の交差中和機能及びFc依存性エフェクター機能。(図14C)Cv2.1169のADCP活性。ドットプロット(左側)は、1μg/ml及び10μg/mlの濃度での、Cv2.1169 IgGの単球を介在したADCP活性を示す。各ドットは、初代単球のドナー(n=6)に対応する。組み換えIgG1、IgG1NA、IgG1LALA、単量体IgA1(mIgA1)及び二量体IgA1(dIgA1)抗体として発現されるCv2.1169のADCP活性を比較したグラフ。mGO53はネガティブなアイソタイプ対照であり、及び比較の為にADCPで誘発されたS309 IgG1が含められた。PS、すなわち、貪食スコア(phagocytic score)。2回繰り返し値の平均値が示されている。 図14.強力なSARS-CoV2中和剤の交差中和機能及びFc依存性エフェクター機能。(図14D)S-融合中和アッセイを用いて測定された、強力な抗RBD IgG抗体によるSARS-CoV-2及び選択されたVOCの中和曲線を示すグラフ。エラーバーは2回繰り返し値のSDを示す。IC50値が左上隅に示されている。ND、すなわち、決定されていない(not determined)。 図14.強力なSARS-CoV2中和剤の交差中和機能及びFc依存性エフェクター機能。(図14E)Cv2.1169及びCv2.3194 IgG抗体によるSARS-CoV-2及び選択されたVOCの中和曲線を示すグラフ。エラーバーは2回繰り返し値のSDを示す。IC50値が左上隅に示されている。 図15.SARS-CoV-2で感染されたマウス及びハムスターにおけるCv2.1169抗体処置。(図15A)図6Cにおいて示されているように、5mg/kg i.p.のCv2.1169 IgG又はIgA(n=8/グループ)で処置された(Wuhan)SARS-CoV-2で感染されたK18 hACE2マウス(4dpiで)の口腔スワブ(OS:oral swab)中のSARS-CoV-2 RNAレベル、又はmGO53対照(ctr)IgA抗体(n=6)で処置されたものと比較したドットプロット。各ドットはマウス1匹に対応する。2回繰り返し値の平均値が示されている。(図15B)図6A及び図6Cにおいて示されているように、抗体Cv2.1169(n=7/グループ)を5、10又は20mg/kg i.p.で1回与えられたSARS-CoV-2で感染されたK18 hACE2マウス(20dpiで)の血清中のヒトIgG濃度を比較したドットプロット。(図15C)図6Fにおいて示されているように、SARS-CoV-2 β変異体に感染され、そして、Cv2.1169で前処置(IgA,n=8)又は処置(IgG,n=6)されたK18 hACE2マウス、又はmGO53 IgG対照(ctr,n=7)における血清中のヒトIgG及びIgA濃度を比較したドットプロット。各ドットはマウス1匹に対応する。2回繰り返し値の平均値が示されている。(図15D)図6Fにおいて示されているように、SARS-CoV-2 β変異体に感染され、そして、Cv2.1169で前処置(IgA,n=8)又は処置(IgG,n=6)されたK18 hACE2マウスにおける血清マウスIgG抗体のELISA SARS-CoV-2トリ-S結合を示すドットプロット。AUC、すなわち、曲線下面積(area under the curve)。各ドットはマウス1匹に対応する。2回繰り返し値の平均値が示されている。(図15E)図6D及び図6Eにおいて示されているように、Cv2.1169又はmGO53対照(5mg/kg i.p.,n=8;又は10mg/kg i.p.,n=7)で1回処置されたSARS-CoV-2で感染されたゴールデンシリアンハムスター(5dpiで)の血清中のヒトIgG及びIgA濃度を比較するドットプロット(夫々、左側及び右側)。各記号はマウス1匹に対応する。2回繰り返し値の平均値が示されている。(図15F)図6D及び図6Eにおいて示されているように、Cv2.1169又はmGO53対照(5mg/kg i.p.,n=8;又は10mg/kg i.p.,n=7)で1回処置されたSARS-CoV-2で感染されたハムスター(5dpiで)における血清ハムスターIgG抗体のELISA SARS-CoV-2 トリ-S結合を示すドットプロット(夫々、左側及び右側)。AUC、すなわち、曲線下面積(area under the curve)。各記号はマウスに対応する。2回繰り返し値の平均値が示されている。 図16.他の抗スパイク抗体とのCv2.169及びCv2.3194のベンチマーク。選択されたウイルス変異体に対するRBD特異的抗体のELISA結合(図16A)とフローサイトメトリー結合(B)とを比較したヒートマップ。濃い色は高い結合を、薄い色は中庸の結合を示す(白=結合なし)。OD405nmの2回繰り返し値の平均値とlog10ΔgMFI値の幾何平均値とが、(図16A)及び(図16B)の各々の細胞について示されている。下記の参照RBD特異的抗体が報告されている:アジントレビマブ(Adintrevimab)(ADI)、バムラニビマブ(Bamlaivimab)(BAM)、カシリビマブ(Casirivimab)(CAS)、シルガビマブ(Cilgavimab)(CIL)、エテセビマブ(Etesevimab)(ETE)、イムデビマブ(Imdevimab)(IMD)、レグダンビマブ(Regdanvimab)(REG)、ソトロビマブ(Sotrovimab)(SOT)、チキサゲビマブ(Tixagevimab)(TIX)。各抗体についての可変領域が、配列番号164~183として提供される。 図16.他の抗スパイク抗体とのCv2.169及びCv2.3194のベンチマーク。選択されたウイルス変異体に対するRBD特異的抗体のELISA結合(図16A)とフローサイトメトリー結合(B)とを比較したヒートマップ。濃い色は高い結合を、薄い色は中庸の結合を示す(白=結合なし)。OD405nmの2回繰り返し値の平均値とlog10ΔgMFI値の幾何平均値とが、(図16A)及び(図16B)の各々の細胞について示されている。下記の参照RBD特異的抗体が報告されている:アジントレビマブ(ADI)、バムラニビマブ(BAM)、カシリビマブ(CAS)、シルガビマブ(CIL)、エテセビマブ(ETE)、イムデビマブ(IMD)、レグダンビマブ(REG)、ソトロビマブ(SOT)、チキサゲビマブ(TIX)。各抗体についての可変領域が、配列番号164~183として提供される。 図16.他の抗スパイク抗体とのCv2.169及びCv2.3194のベンチマーク。(図16C)Wuhan(RBD Wuhan-図16C)の、RBDドメインに対するRBD特異的抗体の結合競合に対応するヒートマップ。濃い色は高い競合を、薄い色は中程度の競合を示す(白=競合なし)。各実験について、コンペティターはY軸において定義されている。 図16.他の抗スパイク抗体とのCv2.169及びCv2.3194のベンチマーク。(図16D)β株(図16D)の、RBDドメインに対するRBD特異的抗体の結合競合に対応するヒートマップ。濃い色は高い競合を、薄い色は中程度の競合を示す(白=競合なし)。各実験について、コンペティターはY軸において定義されている。 図16.他の抗スパイク抗体とのCv2.169及びCv2.3194のベンチマーク。(図16E)δ株(図16E)の、RBDドメインに対するRBD特異的抗体の結合競合に対応するヒートマップ。濃い色は高い競合を、薄い色は中程度の競合を示す(白=競合なし)。各実験について、コンペティターはY軸において定義されている。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17A)Cv2.1169について、フローサイトメトリー(2回繰り返し値からの平均log10ΔMFI)及びELISA(2回繰り返し値からの平均AUC)によって夫々測定された、細胞発現型(CE:cell-expressed)及び可溶性(トリ-S)オミクロン(ο)SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するRBD特異的IgG抗体の結合を比較したヒートマップ(右側)。NT ctrはトランスフェクションされていない細胞対照。ヒートマップはまた、β及びο RBDタンパク質に対する比較可能な抗体反応性(AUC値)を提示する。白は結合しないことを示す。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17B)Cv2.1169(上側)に示されているSARS-CoV-2及びο変異体BA.1のRBDタンパク質についての中和抗RBD抗体のRBD-ACE2ブロッキング能を比較したヒートマップ(下側)。濃い色は高い競合を示し、一方、薄い色は中庸の競合を示す(白=結合なし又は競合なし)。2回繰り返し値からの平均AUCが各セルにおいて示されている。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17C) ο変異体BA.1のSARS-CoV-2タンパク質に対するベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和物RBD特異的IgG抗体を伴うCv2.1169のトリ-S結合(上側)及びトリ-S-ACE2ブロッキング能(下側)を比較したヒートマップ。濃い色は高い結合又は競合を示し、一方、薄い色は中庸の結合又は競合を示す(白=結合なし又は競合なし)。各セルには、2回繰り返し値からの平均EC50が各セルにおいて示されている。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17D)Cv2.1169については左側に示されているようにELISAで測定された(2回繰り返されたAUC値の平均値)、ο変異体BA.1及びBA.2のRBDタンパク質についてのベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴うCv2.1169及びCv2.3194の結合を比較したヒートマップ(右側)。濃い色は高い結合を示し、一方、薄い色は中庸の結合を示す(白=結合なし)。2回繰り返し値からの平均EC50が各セルにおいて示されている。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17E)S-融合中和アッセイを用いて決定された、強力な抗RBD IgG抗体によるSARS-CoV-2 δ及びο BA.1の中和曲線を示すグラフ。エラーバーは、独立した実験における2回(Cv2.5179)又は5回(Cv2.1169及びCv2.3194)からの2回繰り返し値のSDを示す。IC50値が示されている(ο BA.1の場合は灰色)。ND、すなわち、決定されていない(not determined)。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17F)Cv2.1169及びCv2.3194抗体の存在下、可溶性ACE2エクトドメインへのSARS-CoV-2 o BA.1及びBA.2変異体からのビオチン化されたRBDタンパク質の結合を示す競合ELISAグラフ。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17G)S-融合中和アッセイを用いて決定された、Cv2.1169及びCv2.3194によるSARS-CoV-2 ο BA.2の中和曲線を示すグラフ。エラーバーは2回繰り返し値のSDを示す。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17H)SARS-CoV-2 o BA.1及びBA.2変異体のRBDタンパク質への単量体及び二量体Cv2.1169 IgA抗体のELISA結合を比較したグラフ。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。n.dIgA、結合部位の数に従って正規化された値。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17I)(図17E)と同じであるが、単量体及び二量体Cv2.1169 IgA抗体を伴うWuhan及びo BA.1 トリ-Sタンパク質。2回繰り返し値の平均値±SDが示されている。n.dIgA、結合部位の数に従って正規化された値。 図17.他のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤を伴う、SARS-CoV-2オミクロン変異体に対する、Cv2.1169、Cv2.3194及びCv2.5179の活性-図9に関連。(図17J)(図17F)と同じであるが、BA.1及びBA.2に対するCv2.1169 IgA単量体及びJ鎖二量体(dIgA)。エラーバーは2回繰り返し値のSDを示す。ヒートマップ(右側)は、曲線(左側)から算出されたIC50値を提示する。n.dIgA、結合部位の数に従って正規化された値。 図18.ベンチマーク付けされた抗体を伴うCv2.1169の比較分析。図9、図16及び図17と同様。(図18A)Cv2.1169、Cv2.3194、及び臨床使用中又は開発中のベンチマーク付けされた中和化抗体の選択されたSARS-CoV-2タンパク質へのELISA結合を比較したヒートマップ。濃い色は高い結合を示し、一方、薄い色は中庸の結合又は競合を示す(白=0、結合なし)。AUC値の平均値が各セルにおいて示されている。 図18.ベンチマーク付けされた抗体を伴うCv2.1169の比較分析。図9、図16及び図17と同様。(図18B)Cv2.1169、Cv2.3194及びベンチマーク付けされた中和化抗体のトリ-S-及びRBD-ACE2ブロッキング能を比較したヒートマップ。濃い色は高い競合を示し、一方、薄い色は中庸の競合を示す(白=0、競合なし)。2回繰り返し値の平均値(結合阻害%)が各セルにおいて示されている。NT、すなわち、試験されていない(not tested)。 図18.ベンチマーク付けされた抗体を伴うCv2.1169の比較分析。図9、図16及び図17と同様。(図18C)選択されたSARS-CoV-2ウイルス変異体に対するCv2.1169及びベンチマーク付けされた中和化抗体のイン・ビトロ(in vitro)中和活性を比較したヒートマップ。pM単位での3回繰り返しIC50値の平均値が各セルにおいて示されている。白色は、最大抗体濃度25nMで50%の中和に到達しなかったことを示す。 図18.ベンチマーク付けされた抗体を伴うCv2.1169の比較分析。図9、図16及び図17と同様。(図18D)トリ-S及びRBDタンパク質への、ELISA結合の為のCv2.1169、Cv2.3194及びベンチマーク付けされた中和化抗体の競合性の可能性を示すヒートマップ。濃い色は高い競合性を示し、薄い色は中程度の競合性を示す(白=0、競合性なし)。2回繰り返し値の平均値(結合阻害%)が各セルにおいて示されている。 図19.SARS-CoV-2デルタ及びオミクロンBA.1に感染したハムスターにおけるCv2.1169及びベンチマーク付けされた抗体のイン・ビボ(in vivo)治療及び予防活性。(図19A)SARS-CoV-2δ変異体で感染したゴールデンシリアンハムスターにおけるCv2.1169及びエバシェルド(Evusheld)を用いた抗体療法の為の実験設計を示す模式図。動物に104のプラーク形成単位(PFU)のSARS-CoV-2 δを経鼻(i.n.)感染させ、そして、24時間後にPBS、Cv2.1169又はエバシェルドが6mg/kg(上側)又は2mg/kg(下側)で腹腔内(i.p.)注射された。3dpiでの動物グループ(n=3)において測定された、肺内感染率(左側)とRNA負荷量(右側)とを示すドットプロット。ハムスターのグループは、両側マン・ホイットニー検定(two-tailed Mann-Whitney test)を用いて比較された。 図19.SARS-CoV-2デルタ及びオミクロンBA.1に感染したハムスターにおけるCv2.1169及びベンチマーク付けされた抗体のイン・ビボ(in vivo)治療及び予防活性。(図19B)ベロ(Vero)細胞上で中和アッセイを用いて決定された場合とqRT-PCRを用いて決定された場合の、Cv2.1169、エバシェルド及びソトロビマブによるSARS-CoV-2オミクロン(ο)BA.1の中和曲線を比較したグラフ。エラーバーは3回試験した値のSDを示す。IC50の値が示されている(右側)。 図19.SARS-CoV-2デルタ及びオミクロンBA.1に感染したハムスターにおけるCv2.1169及びベンチマーク付けされた抗体のイン・ビボ(in vivo)治療及び予防活性。(図19A)と同様であるが、SARS-CoV-2オミクロンBA.1に感染し、6mg/kgで、Cv2.1169、エバシェルド、ソトロビマブ又は対照(mGO53-LS)抗体を用いて処理された動物が用いられた。ベースライン(Δ体重)時間外(左側)、肺内感染性(中央)及びRNA負荷量(右側)と比較した動物の体重変化を示すプロット。ハムスターのグループ(n=4)は、両側マン・ホイットニー検定(two-tailed Mann-Whitney test)を用いて比較された。アスタリスクはp=0.029を示す。 図19.SARS-CoV-2デルタ及びオミクロンBA.1に感染したハムスターにおけるCv2.1169及びベンチマーク付けされた抗体のイン・ビボ(in vivo)治療及び予防活性。(図19D)(図19C)と同様であるが、104のPFUのSARS-CoV-2オミクロンBA.1を用いてi.n.でチャレンジする前に、動物(n=4)にCv2.1169(3又は30mg/kg)、エバシェルド(3mg/kg)、又は対照(mGO53-LS,3mg/kg)抗体で前処理された。
実施例
材料及び方法
ヒトサンプル
COVID-19回復期ドナーからの血液サンプルが、CORSER9コホート及びREACTing French COVID-19コホートの一部として、フランスの全ての法規制当局に準拠し且つ倫理的承認を得た後に得られた。CORSER試験はClinicalTrials.gov(NCT04325646)に登録され、そして、Commite de Protection des Personnes Ile de France IIIによる倫理承認を受けた。REACTing French Covid-19試験は、地域の治験審査委員会(IRB;Comite de Protection des Personnes Ile-de-France VII,Paris,France)による承認を受け、そして、欧州ガイドライン(European guidelines)及びヘルシンキ宣言(Declaration of Helsinki)に従って実施された。参加者全員がこの研究への参加に書面で同意し、及びデータは対象のコード化を用いて擬似匿名化された条件下で集められた。
血清IgG及びIgAの精製
全てのヒト血清が、56℃で60分間熱不活化された。ヒトIgG及びIgA抗体は、夫々Protein G Sepharose登録商標4 Fast Flow(GE Healthcare)及びpeptide M-coupled agarose beads(Invivogen)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによってドナーの血清から精製された。精製された血清抗体は、Slide-A-Lyzer登録商標Cassettes(10K MWCO、Thermo Fisher Scientific)を用いてPBSに対して透析された。
ウイルス
SARS-CoV-2ベータCoV/フランス/IDF0372/2020、hCoV-19/フランス/GES-1973/2020、D614G(hCoV-19/フランス/GE1973/2020)及びB.1.351(β変異体;hcoV-19/フランス/IDF-IPP00078/2021)株が、National Reference Centre for Respiratory Viruses(Institut Pasteur France)によって提供された。ヒトサンプル(それからベータCoV/フランス/IDF0372/2020株が分離された)は、パリのBichat病院のXavier Lescure博士、Yazdan Yazdanpanah博士によって提供された。ヒトサンプル(それからβ変異株が分離された)は、Mounira Smati-Lafarge博士(CHI de Creteil,Creteil,France)によって提供された。全ての変異株は鼻腔スワブから分離され、そして、Vero E6細胞培養で1回又は2回継代することによって増幅された。中和アッセイの為に用いられたα変異株(B.1.1.7)及びδ変異株(B.1.617.2)は、夫々トゥール(フランス)及びHopital Europeen Georges Pompidou(Assistance Publique des Hopitaux de Paris,Paris,France)における個体から分離された。γ変異体(P.1.;hCoV-19/日本国/TY7-501/2021)はGlobal Health security action group Laboratory Networkから入手された。GISAIDデータベースの配列IDは下記の通りである:D614G:EPI_ISL_414631;α変異体:EPI_ISL_735391;β変異体:EPI_ISL_964916;γ変異体:EPI_ISL_833366;δ変異体:EPI_ISL_2029113。生物学的材料の使用については、全ての個体についてインフォームド・コンセントが提供された。ウイルスはVero E6細胞培養で1回又は2回継代されることによって増幅され、そして滴定された。ウイルス株の配列はRNAseqによって確認された。感染性ウイルスを用いた全ての作業は、Institut Pasteurでのバイオセーフティレベル3の封じ込め実験室(containment laboratories)において行われた。
ウイルスタンパク質の発現及び精製
SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、OC43-CoV、HKU1-CoV、229E-CoV及びNL63-CoV(2P)並びにBA.1スパイク(HexaPro)スパイク(S)エクトドメイン、並びにSARS-CoV-2 S2ドメインの安定化されたバージョンをコードするコドン最適化されたヌクレオチドフラグメント、続いて、フォルドン(foldon)三量化モチーフ、及びC末端タグ(Hisx8-tag,Strep-tag及びAviTag)が合成され、そして、pcDNA3.1/Zeo(+)ベクターベクター(thermo Fisher Scientific)内にクローニングされた。競合ELISA実験の場合に、StrepTagを有しないSARS-CoV-2 SエクトドメインDNA配列がまた、pcDNA3.1/Zeo(+)ベクター内へとクローニングされた。Wuhan SARS-CoV-2 RBD、サブユニット、S1 N-末端ドメイン(NTD:N-terminal domain)、S1接続ドメイン(CD:connecting domain)、ヌクレオカプシドタンパク質(N)、BA.1 RBD及びBA.2 RBD、続いて、C-末端タグ(Hisx8-tag,Strep-tag及びAviTag)並びにヒトアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)(加えて、Hisx8タグ及びStrepタグがpcDNA3.1/Zeo(+)ベクター内にクローニングされた。SARS-CoV-2 RBD変異体タンパク質の場合に、変異(α変異体の場合にN501Y;β変異体の場合に、K417N、E484K及びN501Y;γ変異体の場合にK471T、E484K及びN501Y;δ変異体の場合にL452R及びT478K;δ+変異体の場合に、K417N、L452R及びT478K;κ変異体L452Rの場合に、E484Q)をコードする合成ヌクレオチドフラグメントが、QuickChange Site-Directed Mutagenesis kit(Agilent Technologies)を使用し、続いて、製造者の指示書を使用して導入された。糖タンパク質は、上記で記載されたポリエチレンイミン(PEI)析出法を用いて、指数関数的に増殖するFreestyle 293-F懸濁細胞(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)の一過性トランスフェクションによって産生された(5)。タンパク質が、製造者の指示(GE Healthcare)に従ってNi Sepharose登録商標Excel Resin(GE Healthcare社製)を用いた高性能クロマトグラフィーによって培養上清から精製され、Slide-A-Lyzer登録商標透析カセット(Thermo Fisher Scientifi)を用いてPBSに対して透析され、NanoDrop 2000 instrument (Thermo Fisher Scientific)を用いて定量され、そして、NuPAGE 3~8%のトリス-アセテートゲル(Life Technologies)を用いたSDS-PAGEによって純度が管理された(5)。Aviタグ付けされたトリ-S及びRBDタンパク質は、BirAビオチン-タンパク質リガーゼバルク反応キット(結合活性(Avidity),LLC)又はEnzymatic Protein Biotinylation Kit(Sigma-Aldrich)を用いてビオチン化された。SARS-CoV-2RBDタンパク質はまた、DyLight登録商標Amine-Reactive Dyes kit(Thermo Fisher scientific)を用いてDyLight650にカップリングされた。
結晶学的実験について、SARS-CoV-2 RBDタンパク質(残基331~528)をコードするコドン最適化されたヌクレオチドフラグメント、続いて、エンテロキナーゼ切断部位とC末端二重strep-tagが、改変されたpMT/BiP発現ベクター(pT350,Invitrogen)内にクローニングされた。ショウジョウバエS2細胞が、pT350及びpCoPuro(ピューロマイシン選択用)プラスミドで安定的に共トランスフェクションされた。この細胞株が選択され、そして、7μg/mlのピューロマイシンと1%のペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質が補充された無血清昆虫細胞培地(HyClone,Cytiva)中で維持された。細胞が1×107個の細胞/mlの密度に到達するまで増殖させ、そして次に、タンパク質発現が、4mMのCdCl2で誘発された。培養6日後、上清が集められ、濃縮され、そして、タンパク質がStreptactinカラム(IBA)を用いた高性能クロマトグラフィーによって精製された。溶出液が、HiPrep26/10 脱塩カラム(Desalting column)(GE Healthcare)を用いて、10mMのTris-HCl(pH8.0)、100mMのNaCl、2mMのCaCl2へとバッファー交換され、そして引き続き、室温で一晩、エンテロキナーゼ処理され、strep-tagが除去された。未消化のタグ付けされたタンパク質がStreptactinカラムを用いて除去され、そして、10mMのTris-HCl(pH8.0)、100mMのNaClで平衡化したSuperdex75カラム(Cytiva)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC:size-exclusion chromatography)により、単量体でタグ付けされていないタンパク質が精製された。精製された単量体でタグ付けされていないタンパク質が濃縮され、そして、使用するまで-80℃で保存された。
Cryo-EM実験について、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質(残基1~1208) をコードするコドン最適化されたヌクレオチドフラグメントが、その内因性シグナルペプチドとともにpcDNA3.1(+)ベクター内にクローニングされ、そして、フリン切断部位(残基682~685)でのGSAS置換とともに、6つのプロリン置換(F817P、A892P、A899P、A942P、K986P、V987P)、続いて、フォルドン(foldon)三量化モチーフ、及びC末端タグ(Hisx8-tag,Strep-tag及びAviTag)を導入することによって、安定化された三量体のプレフュージョン構築物(prefusion construct)として発現された。組み換えタンパク質であるS_6Pは、製造者の指示に従って、FectroPRO登録商標DNAトランスフェクション試薬(Polyplus)を用いてExpi293FTM細胞(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)の一過性トランスフェクションによって産生された。5日間の培養後、SrepTactinカラム(IBA)を用いたアフィニティークロマトグラフィー、続いて10mMのTris-HCl、100mMのNaCl(pH8.0)で平衡化されたSuperose 6 10/300カラム(Cytiva)を用いたSECにより、組み換えタンパク質が濃縮上清から精製された。ピークに対応する三量体のタンパク質が濃縮され、そして、使用されるまで-80℃で保存された。
フローサイトメトリー免疫表現型解析
末梢血単核球(PBMC:Peripheral blood mononuclear cell)が、Ficoll Plaque Plus(GE Healthcare)を用いてドナーの血液から分離された。ヒト血中B細胞及び循環T濾胞ヘルパーT細胞(cTfh:circulating T follicular helper T cell)は、2種類の異なる蛍光的に標識された抗体カクテルを用いて解析された。B細胞の表現型を決定する為に、ヒトCD19 MicroBeads(Miltenyi Biotec)を用いて、MACSによりドナーのPBMCからB細胞がまず分離された。次に、CD19+B細胞がLIVE/DEAD aqua fixable dead cell stain kit(Molecular Probes,Thermo Fisher Scientific)を用いて染色され、そして、死細胞が除かれた。B細胞がビオチン化されたトリ-S及びDyLight650カップリングされたRBDと共に4℃で30分間インキュベーションされ、1%のFBS-PBS(FACSバッファー)で1回洗浄され、そして、マウス抗ヒト抗体のカクテルと共に4℃で30分間インキュベーションされた:CD19 Alexa 700(HIB19,BD Biosciences,San Jose,CA)、CD21 BV421(B-ly4,BD Biosciences)、CD27 PE-CF594(M-T271,BD Biosciences)、IgG BV786(G18-145,BD Biosciences)、IgA FITC(IS11-8E10,Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)、インテグリン(Integrin)β7 BUV395(FIB504,BD Biosciences)及びストレプトアビジンR-PEコンジュゲート(Invitrogen,Thermo Fisher Scientific)を添加した。次に、細胞が洗浄され、そして、FACSバッファー中に再懸濁された。リンパ球と単一細胞のゲーティングに続いて、生細胞(live cell)がCD19+B細胞上でゲーティングされた。FACS解析は、FACS Aria Fusion Cell Sorter(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)及びFlowJoソフトウェア(v10.3,FlowJo LLC,Ashland, OR)を用いて行われた。cTfhサブセットのイムノフェノタイピング(immunophenotyping)は、CD19 MACSの陰性画分(negative fraction)に対して行われた。cTfh抗体パネルには、下記が含まれていた:CD3 BV605(SK7)、CD4 PE-CF594(RPA-T4)、CD185/CXCR5 AF-488(RF8B2)、CD183/CXCR3 PE-Cy商標5(1C6/CXCR3)、CD196/CCR6 PE-Cy商標7(11A9)、CD197/CCR7 AF647 (3D12)(BD Biosciences)、CD279/PD1 BV421(EH12.2H7、BioLegend)、及びCD278/ICOS PE(ISA-3, Thermo Fisher Scientific)。細胞が上記されたように染色され、洗浄され、そして、1%パラホルムアルデヒド-PBS中で固定された。リンパ球と単一細胞のゲーティング後、死細胞が除かれた。染色した細胞のフローサイトメトリー解析が、BD LSR Fortessa商標instrument(BD Biosciences)及びFlowJoソフトウェア(v10.6,FlowJo LLC)を用いて行われた。
単一B細胞のFACSソーティング(sorting)及び抗体の発現クローニング
末梢血ヒトB細胞が、CD19 MACS(Miltenyi Biotec)によりドナーのPBMCから分離され、そして、上記されたように染色された。単一SARS-CoV-2 S+IgG+及びIgA+B細胞が、上記されたように、FACS Aria Fusion Cell Sorter(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)を用いて96ウェルPCRプレート内にソーティングされた(6)。SuperScript IV逆転写酵素(Thermo Fisher Scientific)を用いた単細胞cDNA合成、それに続くIgH、Igκ及びIgλ遺伝子のネステッドPCR(nested-PCR)増幅、並びにIg遺伝子の特徴についての配列解析が、以前に記載されたように行われた(6,13)。精製された消化されたPCR産物が、前述されたように、ヒトIgγ1-発現ベクター、Igκ-発現ベクター又はIgλ-発現ベクター(夫々、GenBank#LT615368.1,LT615369.1及びLT615370.1)内にクローニングされた。Cv2.1169がまた、ヒトIgγ1NA、Igγ1LALA[N297A及びL234A/L235A変異が部位特異的変異導入(Site-DirectedMutagenesis)(QuickChange,Agilent Technologies)によって導入された]、Igα1及びFab-Igα1発現ベクター内にクローニングされた。Cv2.3235及びCv2.6264 IgHがまたヒトFab-Igγ1発現ベクター内にクローニングされた。
組み換え抗体は、上記で記載されたPEI析出法を用いてFreestyle商標293-F懸濁細胞(Thermo Fisher Scientific)の一過性の共トランスフェクションによって作成された(5)。Cv2.1169 IgA1の二量体形は、上記で記載されているように、Freestyle商標293-F細胞をヒトJ鎖pcDNA商標3.1/Zeo(+)ベクターに共トランスフェクションすることによって作成された。組み換えヒトIgG抗体、IgA抗体及びFabフラグメントは夫々、プロテインG Sepharose登録商標4 Fast Flow(GE Healthcare)、ペプチドMに結合されたアガロースビーズ(Invivogen)及びNi Sepharose登録商標Excel Resin (GE Healthcare)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製された。単量体及び二量体のCv2.1169 IgA1抗体が、Superose 6 Increase 10/300カラム(Cytiva)を用いたSECによって分離された。PBSでカラムを平衡化した後、精製されたIgA抗体が0.3ml/分の流速でカラム内に注入された。1.2CVのPBSでのアイソクラティック溶出に応じて、単量体、二量体及び多量体が分離された。精製された異なる画分の品質/純度が、非還元条件下で、3~8%のトリス-アセテートゲル(Life Technologies)を用いたSDS-PAGE、続いて、銀染色(Siver Stain kit,Thermo Scientific)によって評価された。精製された抗体がPBSに対して透析された。ベンチマーク付けされたモノクローナルの精製された親IgG1抗体バージョン[REGN10933,REGN10987,CB6,LY-CoV555,CT-P59)、COV2-2196、COV2-2130、ADG-2及びS309]が、免疫グロブリン可変ドメインをコードする合成DNAフラグメント(GeneArt,Thermo Fisher Scientific)のクローニング後、上記されたように調製された。イン・ビボ(in vivo)注入の為の抗体調製物は、マイクロフィルター(Ultrafree登録商標-CLデバイス-0.1μmのPVDF膜,Merck-Millipore,Darmstadt,Germany)に付され、ToxinSensor商標Chromogenic LAL Endotoxin Assay Kit(GenScript)を用いてエンドトキシンレベルがチェックされた。
ベンチマーク付けされたモノクローナルの精製された親IgG1抗体バージョン[REGN10933,REGN10987(PMID:32540901),CB6(PMID:32454512),LY-CoV555(PMID:33820835),CT-P59(PMID:33436577),COV2-2196,COV2-2130(PMID:32668443),ADG-2(PMID:33495307)及びS309(PMID:32422645)]が、合成DNAフラグメント(GeneArt,Thermo Fisher Scientific)のクローニング後、上記されたように調製された。
ELISA
ELISAは、上記に記載されたように実行された(5,6)。簡単に説明すると、高結合(high-binding)96ウェルELISAプレート(Costar,Corning)に、250ng/ウェルの精製された組み換えコロナウイルスタンパク質と500ng/ウェルのSARS-CoV-2融合配列含有ペプチド(KRSFIEDLLFNKVTLADAGFIK(配列番号105),GenScript Biotech)で一晩コーティングされた。0.05%のツイーン20(Tween 20)-PBS(洗浄バッファー)で洗浄後、プレートが2%のBSA、1mMのEDTA、0.05%のツイーン20(Tween 20)-PBS(ブロッキングバッファー)で2時間ブロッキングされ、洗浄され、そして、連続希釈されたヒト及びげっ歯類の血清、精製された血清IgA/IgG又は組み換えモノクローナル抗体を用いてPBS中でインキュベーションされた。全血清が1:100(ヒト及びゴールデンハムスター用)又は1:10(K18マウス用)に希釈され、続いて、PBSで7回連続の1:4希釈がされた。組み換えモノクローナルIgG1抗体が、4又は10μg/ml(PBS中の4~7回連続の1:4希釈物)で試験された。精製された血清IgG及びIgA抗体が50μg/mlで試験され、PBSで7回連続の1:3希釈がされた。組み換えモノクローナルIgG1抗体は、4μg/ml又は10μg/mlで試験され、PBSで4~7回連続の1:4希釈がされた。Cv2.1169 IgG1抗体及びIgA1抗体の比較ELISA結合が70nMの濃度で行われ、PBSで7回連続希釈された。処置されたK18マウス及びゴールデンハムスターにおける血中ヒトCv2.1169 IgA1及びIgG1を定量する為に、高結合96ウェルELISAプレート(Costar,Corning)に、250ng/ウェルの精製されたヤギ抗ヒトIgA又はIgG抗体(Jackson ImmunoResearch,最終0.8μg/ml)が一晩コーティングされた。洗浄後、プレートがブロッキングされ、洗浄され、そして、K18マウス及びゴールデンハムスター由来の1:100希釈血清とPBSで7回連続の1:3希釈がされたものと共に、2時間インキュベーションされた。12μg/mlのCv2.1169 IgA1抗体又はIgG1抗体とPBSで7回連続の1:3希釈がされたものが標準として用いられた。洗浄後、プレートがヤギHRPでコンジュゲーションされた抗マウスIgG、抗ゴールデンハムスターIgG、抗ヒトIgG又は抗ヒトIgA抗体(Jackson ImmunoReseach,最終0.8μg/ml)で、1時間インキュベーションされることによって、そして、洗浄工程の後に100μlのHRP発色基質(chromogenic substrate)(ABTS溶液,Euromedex)を添加することによって可視化された。光学濃度は405nmで測定され(OD405nm)、そして、コーティングされたウェルでPBSのみをインキュベーションすることによって与えられたバックグラウンド値が差し引かれた。実験が、HydroSpeed商標マイクロプレート洗浄器とSunrise商標マイクロプレート吸光度リーダー(Tecan Mannedorf,Switzerland)を用いて行われた。ペプチドELISAの場合に、15-マー(mer)のS2オーバーラップ(overlapping)5-アミノ酸ペプチド(n=52,GenScript Biotech,500ng/well)へのSARS-CoV2抗体と対照IgG抗体(1μg/mlで)の結合が、以前に記載されたのと同じ手順を使用して試験された(7)。競合ELISAについて、250ng/ウェルのStrepTagを含まないトリ-S及びRBDタンパク質がELISAプレート(Costar,Corning)上にコーティングされ、次に、それは、ブロッキングされ、洗浄され、そして、ビオチン化された抗体(トリ-S競合について100ng/mlの濃度で、及びRBD競合について25ng/mlの濃度で)がPBS中の1:2に連続的に希釈された抗体コンペティター溶液(IgG濃度は0.39~50μg/ml)で2時間インキュベーションされた。プレートが、上記されたように、HRPでコンジュゲーションされたストレプトアビジン(BD Biosciences)を用いて作製された。ACE2に対するトリ-S-及びRBD-結合の競合実験おいて、ELISAプレート(Costar,Corning)に精製されたACE2エクトドメイン250ng/ウェルで一晩コーティングされた。洗浄後、プレートがブロッキングバッファーで2時間ブロックされ、PBSTで洗浄され、そして、ビオチン化されたトリ-Sタンパク質1μg/mlの存在下、組み換えモノクローナルIgG1抗体2μg/ml(7回連続の1:2希釈物)と共にPBS中で、及びビオチン化されたRBD 0.5μg/mlの存在下、組み換えモノクローナルIgG1抗体10μg/ml又は100μg/ml7回連続の1:2希釈物)と共に、(PBS中でインキュベーションされた。洗浄後、上記されたストレプトアビジンHRP標識体(BDバイオサイエンス社製)と共に、30分間インキュベーションすることによってプレートが可視化された。
多反応性ELISAが、上記に記載されたように実行された(9)。簡単に説明すると、高結合(high-binding)96ウェルELISAプレートに、500ng/ウェルの精製された二本鎖(ds)-DNA,KLH,LPS、リソチーム、チログロブリン、枯草菌(B.subtilis)からのペプチドグリカン、250ng/ウェルのインスリン(Sigma-Aldrich,Saint-Louis,MO)、枯草菌由来のフラジェリン(Invivogen)、MAPK14(9)、及び125ng/ウェルのYU2 HIV-1 Env gp140タンパク質と共に、PBS中で一晩コーティングされた。ブロッキング及び洗浄工程の後、組み換えモノクローナルIgG抗体が、4μg/ml(PBS中の7回連続の1:4希釈物)で試験された。対照抗体であるmGO53(陰性)(3)及びED38(高陽性)(4)が各実験において含められた。ELISA結合が上記されたようにして展開された。ヒトIL6、IP10、CXCL13及びBAFFの血清レベルが、DuoSet ELISAキット(R&D Systems)を用いて、希釈されていない血漿サンプルを用いて測定された。
HEp-2 IFAアッセイ
100μg/mlの組み換えSARS-CoV-2 S特異的IgG抗体及び対照IgG抗体(mGO53及びED38)を、HEp-2細胞切片(ANA HEp-2 AeskuSlides登録商標,Aesku.Diagnostics,Wendelsheim,Germany)上で、キットの対照、及びトレーサーとしてのFITCコンジュゲートされた抗ヒトIgG抗体を用いて、製造者の指示に従って、間接免疫蛍光アッセイ(IFA:indirect immuno-fluorescence assay)によって解析した。HEp-2切片が蛍光顕微鏡Axio Imager 2(Zeiss,Jena,Germany)を用いて検査され、そして、Imagopole platform(Institut Pasteur)でZEN imaging software(Zen 2.0 blue version,Zeiss)を用いて、倍率40倍で、5000ms-取得(acquisition)を用いて、写真が撮影された。
赤外線免疫ブロッティング
組み換えトリ-Sタンパク質が、1Xサンプル還元剤(Invitrogen)を含有するローディングバッファー(Invitrogen)中、100℃で3分間、熱変性された。変性したトリ-Sタンパク質(総量50μg)がNuPAGE登録商標4~12%のビス-トリスゲル(Bis-Tris Gel)(1-well,Invitrogen)を用いてSDS-PAGEによって分離され、ニトロセルロース膜上で電気泳動され、PBS-0.05%のツイーン20(Tween 20)(PBST)-5%ドライミルク中で、一晩、4℃で飽和された。膜がMiniblot apparatus(Immunetics)内に挿入され、そして次に、PBS-T 5%ドライミルク中のヒトモノクローナル抗体(濃度1μg/mlで)及びマウス抗Hisx6抗体(1μg/ml,BD Biosciences)と共に、各チャンネルで2時間インキュベーションされた。ドットブロッティング実験において、変性トリ-S(0.125~2μg)を乾燥ニトロセルロース膜に室温で2時間固定化し、PBS-0.05% ツイーン20(Tween 20)(PBST)-5%ドライミルクと共に、4℃で一晩飽和させた。次に、膜がヒトモノクローナル抗体(1μg/mlの濃度で)及びマウス抗Hisx6抗体(1μg/ml,BD Biosciences)と共に、PBS-T 5%ドライミルク中で2時間インキュベーションされた。PBSTで洗浄後、1/25,000希釈されたAlexa Fluor 680でコンジュゲーションされたロバ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)及び1/25,000希釈されたIR Dye登録商標800CWでコンジュゲーションされたヤギ抗マウスIgG(LI-COR Biosciences)と共に、PBST-5%ドライミルク中で1時間インキュベーションされた。最後に、膜が洗浄され、そして、Odyssey Infrared Imaging system(LI-COR Biosciences)で観察された。
タンパク質マイクロアレイバインディング解析
全ての実験が、ProtoArray Human Protein Microarrays(Thermo Fisher Scientific)を用いて、4℃で行われた。マイクロアレイがブロッキング溶液(Thermo Fisher)で1時間ブロッキングされ、洗浄され、そして、上述されたように、2.5μg/mlのIgG抗体で1時間30分インキュベーションされた(9)。洗浄後、アレイがAF647でコンジュゲーションされたヤギ抗ヒトIgG抗体(PBS中、1μg/mで;Thermo Fisher Scientific)と共に、1時間30分インキュベーションされ、そして、GenePix 4000Bマイクロアレイスキャナー(Molecular Devices)及びGenePix Pro 6.0ソフトウェア(Molecular Devices)を用いて、前述されたように可視化された(9)。蛍光強度は、Spotxel登録商標ソフトウェア(SICASYS Software GmbH,Germany)を用いて定量され、そして、各抗体の平均蛍光強度(MFI)シグナル(重複したタンパク質スポットから)が、GraphPad Prismソフトウェア(v8.1.2,GraphPad Prism Inc.)を用いて、参照抗体であるmGO53(非反応性アイソタイプ対照)に対してプロットされた。各抗体について、ProtoArray登録商標Prospectorソフトウェア(v5.2.3,Thermo Fisher Scientific)を用いてZスコアが算出され、そして、対角に対する偏差(σ)、及び多反応性指数(PI)値が上述されたように算出された(9)。PI>0.21であるときに、抗体は多反応性であるとして定義された。
表面プラズモン共鳴
表面プラズモン共鳴(SPR:Surface plasmon resonance)に基づく技術(Biacore 2000,Biacore,Uppsala,Sweden)が、モノクローナル抗体とSARS CoV2タンパク質-三量体S、S1及びRBDとの相互作用の動態を評価する為に使用された。抗体(Cv2.1169,Cv2.1353,Cv2.3194,Cv2.3235及びCv2.5213)及びACE2エクトドメインが、製造者の手順に従って、アミノカップリングキット(Biacore)を用いてCM5センサーチップ(Biacore)に共有結合された。簡単に説明すると、IgG抗体及びACE2タンパク質が、5mMのマレイン酸溶液(pH4)で希釈されて最終濃度が10μg/mlにされ、そして、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドとN-ヒドロキシスクシンイミドとの混合物によって予め活性化されたセンサー表面上に注入された。未結合のカルボキシル基が、エタノールアミン.HCl(Biacore)の1M溶液にさらすことによってブロックされた。IgG抗体及びACE2の固定化密度は夫々、500RU及び1000RUであった。全ての解析がHBS-EPバッファー(10mMのHEPES pH7.2;150mMのNaCl;3mMのEDTA及び0.005%のツイーン20(Tween 20))を用いて行われた。全てのリアルタイム相互作用測定の間のバッファー流速は30μl/分に設定された。全ての相互作用は25℃の温度で行われた。SARS CoV-2トリ-S及びS1タンパク質は、40~0.156nMの範囲でHBS-EP中で連続希釈(2倍ステップ)された。同じ濃度範囲が、低親和性相互作用を除いてRBDについて使用され、ここで、該濃度範囲1280~10nMが適用された。固定化された抗体及びACE2へのウイルスタンパク質の結合の会合及び解離の段階が夫々、3分間と4分間とでモニタリングされた。カルボキシメチル化されたデキストランのみを含有する参照チャンネルへのタンパク質の結合は、陰性対照として使用され、そして、データ処理の間に中に結合から差し引かれた。センサーチップの表面は、4Mのグアニジン塩酸溶液(Sigma-Aldrich)に30秒間暴露して再生された。試験した相互作用の速度論的パラメータの評価が、BIAevaluationバージョン4.1.1ソフトウェア(Biacore)を用いて行われた。
SARS-CoV-2 S-融合中和アッセイ
S-融合細胞(Fuse cell)(U2OS-ACE2 GFP1-10又はGFP 11細胞)が混合され(1:1の比)、そして、上述されているように(1)、μClearの96ウェルプレート(Greiner Bio-One)中に8×103/ウェルの密度で播種された。SARS-CoV-2及びVOCウイルス(MOI 0.1)が、35nM又は7nMの組み換えモノクローナルIgG1、単量体及び二量体IgA1抗体、及び11回連続の1:4希釈物と共に、30分間、室温でインキュベーションされ、そして、S-融合細胞に添加された。18時間後、細胞が2%のパラホルムアルデヒド中で固定され、洗浄され、そして、Hoechst染色(希釈度1:1000;Invitrogen)で染色された。画像がOpera Phenix高含有共焦点顕微鏡(Opera Phenix high-content confocal microscope)(Perkin Elmer)で取得された。Harmonyソフトウェア4.8(Perkin Elmer)を用いて、GFP発現を表す面積と核の数とが定量された。中和率はGFP陽性面積から下記の式で算出された:100×(1-(IgA/IgG有りの値-「非感染」における値)/(IgA/IgG無しの値-「非感染」における値))。IC50値が、Prismソフトウェア(v.9.3.1,GraphPad Prism Inc.)を使用し、4パラメータ用量反応モデル(可変勾配)を用いて再現値をフィッティングすることによって算出された。各アイソタイプの中和活性が、半値最大有効濃度(IC50)として表された。IC50の値(μg/ml)は、示された様々な濃度でのる中和パーセントの再構築曲線に基づいて算出された。
イン・ビトロ(in vitro)でのSARS-CoV-2擬似中和アッセイ(pseudoneutralization assay)
SARS-CoV-2擬似中和アッセイは、以前に記載されたように行われた(10,12)。簡単に説明すると、2x104個の293T-ACE2-TMPRSS2が、96ウェルプレート中に播種された。精製された血清IgA及びIgG抗体が、PBS中(又は、ペニシリン/ストレプトマイシン含有10%-FCS DMEM中)で250μg/ml(7回連続の1:2希釈物)で試験され、そして、細胞に添加する前にスパイク擬似型レンチウイルス粒子と15~30分間、室温でインキュベーションされた。組み換えモノクローナルIgG1、IgA1又はFab-IgAフラグメント抗体がまた、70又は350nM(PBS中の11回連続の1:3希釈物)で試験された。48時間、37℃、5%のCO2でインキュベーションされ、ONE-Glo商標Luciferase Assay System(Promega)を用いて実行され、そして、ルシフェラーゼシグナルが、EnSpire登録商標Multimode Plate Reader(PerkinElmer)で測定された。中和パーセンテージが下記の式で計算された:100×(1-平均(二重サンプルにおけるルシフェラーゼシグナル)/平均(ウイルス単独におけるルシフェラーゼシグナル))。個々の実験は、Cv2.3235抗体を用いて標準化された。IC50値は、上述されたとおりに算出された。
抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)アッセイ
PBMCが、Ficoll Plaque Plus(GE Healthcare)を用いて、健康なドナーの血液(Etablissement Francais du Sang)から分離された。初代ヒト単球は、Whole Blood CD14 MicroBeads(Miltenyi Biotech)を用いてMACSによってPBMCから精製された。ビオチン化されたSARS-CoV-2トリ-Sタンパク質がFITCで標識化されたNeutrAvidinビーズ(1μm,Thermo Fisher Scientific)と混合され(1μlのビーズの場合に1μgのトリ-S)、そして、30分間、室温でインキュベーションされた。PBS洗浄後、DMEMで1:500に希釈されたトリ-Sで結合されたビーズが、ヒトモノクローナルIgG1抗体(3μg/mlで)と共に、1時間、37℃でインキュベーションされた。トリ-S-ビーズ-抗体混合物は、7.5×104ヒト単球と共に、2時間、37℃でインキュベーションされた。0.5%のBSA、2mMのEDTA-PBSで洗浄後、細胞が4%のPFA-PBSで固定化され、そして、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter)を用いて分析された。ADCPアッセイが2回の独立した実験で実行され、そして、FlowJoソフトウェア(v10.6,FlowJo LLC)を用いて解析された。貪食スコア(Phagocytic score)が、抗SARS-CoV-2スパイク抗体によって与えられた蛍光シグナル(%FITC陽性細胞×幾何学的MFI FITC陽性細胞)を陰性対照抗体mGO53の光学シグナルで割ることによって計算された。
抗体依存性細胞障害(ADCC)アッセイ
抗SARS-CoV2 S IgG抗体のADCC活性が、ADCC Reporter Bioassay(Promega)を用いて、上記されたように決定された(10)。簡単に説明すると、SARS-CoV2 S 特異的又は対照mGO53 IgG抗体10μg/ml又は50μg/ml(PBSで10回連続で1:2希釈された)の存在下又は非存在下、5x104個のRaji-スパイク細胞が5x104個のJurkat-CD16-NFAT-rLuc細胞と共に共培養された。ルシフェラーゼが、EnSpireプレートリーダー(PerkinElmer)を用いて18時間培養後に測定された。ADCCは、対照抗体と比較したルシフェラーゼ活性の誘発倍数として測定された。実験が、2つの独立した実験において二重に行われた。
補体依存性細胞障害(CDC:Complement-dependent cytotoxicity)アッセイ
抗SARS-CoV2 S IgG抗体のCDC活性は、SARS-CoV-2スパイク発現Raji細胞を用いて、上記されたように決定された(10)。簡単に説明すると、5x104個のRaji-スパイク細胞が、50%の正常又は熱不活性化されたヒト血清の存在下、IgG抗体(10μg/ml又は50μg/ml,PBSで10回連続の1:2希釈物)の有り又は無しで培養された。24時間後、細胞がPBSで洗浄され、そして、live/dead fixable aqua dead cell marker(PBS中1:1,000;Life Technologies)を固定前に、30分間、4℃でインキュベーションされた。データがAttune NxT instrument(Life Technologies)で取得された。CDCが下記の式で算出された:100×(血清有りの死細胞の%-血清無しの死細胞の%)/(100-血清無しの死細胞の%)。実験が、2つの独立した実験において二重に行われた。
ゴールデンハムスターにおけるSARS-CoV-2感染及び処置
5~6週齢(平均体重60~80g)のゴールデンシリアンハムスター(Golden Syrian hamster)(Mesocricetus auratus;RjHan:AURA)が、Janvier Laboratories(Le Genest-Saint-Isle,France)から購入され、そして、病原体を含まない特定の条件下で取り扱われた。ゴールデンハムスターは、生きたげっ歯類の実験を行う為にフランス農業省(French Ministry of Agriculture)から認定を受けたパスツール研究所における動物施設内のクラスIII安全キャビネットに収容され、水と餌を自由に摂取できる状態で操作された。動物への感染は、上記された通りに行われた(11)。簡単に説明すると、麻酔された動物に6x104個のSARS-CoV-2(ベータCoV/フランス/IDF00372/2020;EVAgコレクション,Ref-SKU:014V-03890)のプラーク形成単位(PFU)が経鼻感染された(50μl/鼻孔)。モック感染動物(Mock-infected animal)には生理的溶液のみが投与された。鼻腔内接種の4時間後又は24時間後に、ハムスターは10mg/kg又は5mg/kgのCv2.1169 IgG又はIgA抗体、並びにmGO53対照抗体又はPBSの腹腔内注射を施された。全てのハムスターは毎日経過観察され、体重及び臨床スコアが記録された。接種後5日目に、動物が過剰の麻酔薬(ケタミン及びキシラジン)を用いて安楽死且つ失血死された(AVMAガイドライン2020)。血液サンプルが心臓穿刺によって採取された。凝固後、チューブが10分間、4℃で、1,500×gで遠心分離され、そして、血清が採取され、そして、更なる分析まで-80℃で凍結保存された。肺が秤量され、そして、-80℃で凍結保存された。凍結肺フラグメントが秤量され、そして、Lysing Matrix M 2mlチューブ(116923050-CF,MP Biomedicals)中に1%ペニシリン/ストレプトマイシン(15140148,Thermo Fisher)を補充された氷冷DMEM(31966021,Gibco)1mlが入れられ、FastPrep-24商標システム(MP Biomedicals)を用い、そして、下記のスキームでホモジナイズされた:20秒間、4.0m/秒でホモジナイズ、4℃で2分間、インキュベーション、そして、4.0m/sで20秒間、新たにホモジナイズ。該チューブが1分間、4℃で10,000×gで遠心された。上清が、半固形オーバーレイ(Avicel,RC581-NFDR080I,DuPont)を用いた古典的なプラークアッセイによりVero-E6細胞で滴定され、そして、組織のPFU/100mgとして表された(12)。凍結した肺フラグメントが、Lysing Matrix D 2mlチューブ(116913100,MP Biomedicals)中で、FastPrep-24商標システム(MP Biomedicals)を用いて、トリゾール(Trizol)(15596026,Invitrogen)と共に下記のスキームでホモジナイズされた:60秒間、6.5m/秒でホモジナイズ、2分間、4℃で12,000×gで遠心分離。上清が回収され、そして次に、Direct-zol RNA MiniPrep Kit(R2052,Zymo Research)を用いて全RNAが抽出され、そして、NanoDrop2000を用いて定量された。これらのサンプル中のゲノムSARS-CoV-2RNAの存在は、上述されているように(11)、サーモサイクラー(7500t Real-time PCR system,Applied Biosystems)を用いて、96ウェルPCRプレートで1反応当たり25μlの最終容量で一段階RT-qPCRによって評価された。ウイルス量の定量(RNAのコピー数/RNAのμgとして表される)は、RdRp配列を含む6つの既知量のRNA転写産物(107~102のコピーの範囲)の標準曲線を用いた線形回帰によって評価された。
K18マウスにおけるSARS-CoV-2感染及び処置
B6.Cg-Tg(K18-ACE2)2Prlmn/Jマウス(ストック#034860)が、ジャクソン研究所(Bar Harbor,ME,USA)から輸入され、そして、厳格なSPF条件下、パスツール研究所で飼育された。感染試験は、パリのパスツール研究所の動物バイオセーフティレベル3(BSL-3:biosafety level 3)施設において、6週齢~16週齢の雌雄マウスで行われた。全ての動物は適正動物規範に厳格に従って取り扱われた。動物実験は、パスツール研究所(the Institut Pasteur)の動物実験倫理委員会(Animal Experimentation Ethics Committee)(CETEA89)によって承認され(project dap 200008及び200023)、及び欧州共同体理事会指令(2010/63/UE,フランス法2013-118、2013年2月6日)を遵守し、且つパスツール研究所動物ケア委員会(Pasteur Institute Animal Care Committees)の規則に従い、フランスの法律により認可された(プロジェクト24613)。麻酔(ケタミン/キシラジン)したマウスに、1x104又は1 x105個のPFUのSARS-CoV-2ウイルス(20μl/鼻孔)が経鼻接種された。接種の6時間後又は22時間後に、マウスは5、10、20又は40mg/kgのCv2.1169 IgG又はIgA抗体、及びmGO53対照IgG又はIgA抗体が腹腔内(i.p.)注射された。口腔咽頭スワブが、感染後3日目に採取された。病気の臨床症状(毛並みの乱れ、猫背、運動能力の低下、呼吸困難)と体重減少が20日間毎日モニタリングされた。マウスは事前に定義されたエンドポイント基準に達したときに安楽死され、そして、集められた心臓穿刺から血清が採取された。
定量化及び統計分析
VH、Vκ及びVλ変異の数は、Welchの補正を加えた対応のないStudentのt検定(unpaired Student’s t test)を用いて抗体のグループ間で比較した。二変量相関(Bivariate correlation)は、両側ピアソン相関検定(two-tailed Pearson correlation test)を用いて検定された。統計及び解析が、GraphPad Prismソフトウェア(v.8.2,GraphPad Prism Inc.)を使用して行われた。トリ-S+B細胞及び正常メモリB細胞(mB)の遺伝子特徴(n=206個のパラメータ)を比較するボルケーノプロットがまた、GraphPad Prismソフトウェア(v.8.4,GraphPad Prism Inc.)を使用して行われた。y軸は-log10(p値)として表される統計量を示し、及びx軸は各パラメータについてのグループの平均間の差を表す。t-分布確率的近傍埋め込み(t-SNE:t-distributed stochastic neighbor embedding)のBarnes-Hut実装は、FlowJoソフトウェア(v.10.3,FlowJo LLC,Ashland,OR)を用いて、2000の反復、200のパープレキシティ(perplexity)パラメータで計算された。色は表面発現マーカー又は細胞集団の密度を表し、低い(青)から高い(赤)まで様々である。CDRH3内で少なくとも75%の同一性を持つ抗体配列をリンクするサーコス(Circos)プロットは、http://mkweb.bcgsc.ca/circosでのオンラインソフトウェアを用いて行われた。系統樹(Phylogenetic tree)が、整列されたVH配列に対してCLC Main Workbench(Qiagen)を用い、近隣結合(Neighbor-Joining)法を用い、100個の反復のブートストラップ解析(bootstrap analysis)を行い構築された。マウスの生存期間は、カプラン・マイヤー解析(Kaplan-Meier analysis)及びログランク・マンテル-コックス検定(Log-rank Mantel-Cox test)(GraphPad Prism,v8.2,GraphPad Prism Inc.)を使用してグループ間で比較された。ゴールデンシリアンハムスターのグループ間の比較は、両側マン-ホイットニー検定(two-tailed Mann-Whitney test)(GraphPad Prism,v.8.2,GraphPad Prism Inc.)を使用した解析で比較された。主成分分析(PCA:Principal component analysis)が、R Studio Server(v1.4.1103)におけるprcomp()関数を用いて行われた。個体のPCAプロット[fviz_pca_ind()]、変数のPCAプロット[fviz_pca_var()]、及びバイプロット(biplot)のPCAプロット[fviz_pca_biplot()]は、factoextraパッケージ(v1.0.7,https://CRAN.R-project.org/package=factoextra)を用いて作成された。スピアマン順位相関(Spearman rank correlation)は、マルチパラメーター相関を確立する為に使用された。全ての相関図(correlogram)及び散布図(scatterplot)は夫々、corrplotとplot R関数を用いて作成された。相関プロット(correlation plot)は、GraphPad Prism(v6.4,GraphPad Prism Inc.)を用いて生成された。
フローサイトメトリー結合アッセイ
クローン化されたヒトIgG抗体のSARS-CoV-2特異性の検証が、以前に記載されたように、S-フローアッセイを用いて行われた(PMID:32817357)。スパイクの交差反応性を評価する為に、Freestyle商標293-Fに、pUNO1-スパイク-dfur発現ベクター(スパイク及びスパイクV1~V11プラスミド,Invivogen)(106細胞当たり1.2μgのプラスミドDNA)がPEI沈殿法を用いてトランスフェクションされた。トランスフェクションから48時間後、0.5x106個のトランスフェクション細胞及び非トランスフェクション対照細胞がIgG抗体と30分間、4℃でインキュベーションされた(1μg/ml)。洗浄後、細胞がAF647でコンジュゲーションされたヤギ抗ヒトIgG抗体(1:1000希釈;Thermo Fisher Scientific)及びLIVE/DEAD Fixable Viability dye Aqua(1:1000希釈;Thermo Fisher Scientific)と4℃で20分間インキュベーションされ、洗浄され、そして、PBS-パラホルムアルデヒド1%(Electron Microscopy Sciences)中に再懸濁された。データがCytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter)を用いて取得され、そして、FlowJoソフトウェア(v10.7.1;FlowJo LLC)を用いて解析された。抗体は二重に試験された。
結晶化及び構造決定
結晶化シャペロン分子(crystallization chaperone molecule)として使用されるべき抗SARS-CoV-2 S抗体CR3022のFabフラグメントが、上記されたように、作成され、そして、精製された(「単一B細胞のFACSソーティング(sorting)及び抗体の発現クローニング」の見出しのセクション)。精製されたRBDタンパク質が、RBD-Fabモル比2:1(三元複合体RBD-Cv2.1169-CR3022の場合に、2:1:1)のFabを用いて、一晩、4℃でインキュベーションされた。各結合反応が、10mMのTris-HCl(pH 8.0)、100mMのNaClで平衡化されたSuperdex200カラム(Cytiva)上にロードされた。複合体に対応する画分がプールされ、9~10mg/mlに濃縮され、そして、シッティング・ドロップ蒸気拡散法(sitting-drop vapor diffusion method)を用いて、18℃で結晶化試験において使用された。RBD-Cv2.2325 Fab複合体は0.1Mのクエン酸アンモニウム(pH 7.0)、12%のPEG 3350で結晶化され、一方、RBD-Cv2.6264 Fabの結晶は0.1MのNaAc、7%のPEG6000、30%のエタノールで得られた。RBD-Cv2.1169-CR3022の結晶は、6%のPEG8000、0.5MのLi2SO4の存在下で成長した。結晶は、30%(v/v)グリセロール(RBD-Cv2.2325;RBD-Cv2.1169-CR3022)又は30%(v/v)エチレングリコール(RBD-Cv2.6264)を補充された結晶化溶液を含有するクライオプロテクタント(cryo-protectant)中に浸漬され、続いて、液体窒素中に急速に移すことによって瞬間凍結された。データ収集が、SOLEIL シンsynchrotron(St Aubin,France)で行われた。データが、XDS及びAIMLESSで処理され、スケーリングされ、そして、縮小された。該構造は、適切なPHENIX(101)からのPhaserと、PBDの6M0J(RBD)、5I1E(Cv2.2325)、5VAG(Cv2.6264)、7K3Q(Cv2.1169)及び6YLA(CR3022)から得られた探索アンサンブル(search ensemble)を用いて分子置換によって決定された。最終的なモデルは、Cootによる実空間モデル構築と、phenix.refineによる逆空間精密化を組み合わせることによって構築された。最終モデルはMolprobityで検証された。エピトープ残基(Epitope residue)及びパラトープ残基(paratope residue)、並びにそれらの相互作用は、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(www.ebi.ac.uk/pdbe/prot_int/pistart.html)のPISAにアクセスすることによって同定した。重ね合わせ及び図は、PymolとUCSF Chimeraを使用してレンダリングされた。
クライオ電子顕微鏡(Cryo-electron microscopy)
S_6Pタンパク質が、Cv2.1169 IgA Fabと1:3.6(三量体:Fab)比、最終の三量体濃度0.8μM、室温で、1時間インキュベーションされた。サンプルの3μlアリコートが、Vitrobot Mk IV(Thermo Fischer Scientific)を用いて、8℃で、及び湿度100%(ブロット(blot)4秒、ブロットフォース(blot force)0)でプランジ凍結する前に、グロー放電したばかりのR 1.2/1.3 Quantifoilグリッドに施与された。複合体のデータは、Titan Krios透過型電子顕微鏡(Thermo Fischer Scientific)上で、EPU自動化画像取得ソフトウェア(Thermo Fischer Scientific)を用いて300kVで取得された。動画が、Gatan K3直接電子検出器(direct electron detector)を用いて、-1.0μm~-3.0μmのデフォーカス範囲(defocus range)で、公称倍率105,000倍(0.85Å/ピクセル)で計数超解像モード(Counted Super Resolution mode)で収集された。動画は2秒間の露光で集められ、及び総線量は、~45e-/Å2であった。
画像処理
全ての動画はMotionCorr2を用いて動き補正され且つ容量重み付けされ、そして、位置合わせされた顕微鏡写真は、cryosparc内でpatchCTFを用いてデフォーカス(defocus)値を推定する為に使用された。CryoSPARC blob pickerが自動化された粒子ピッキングの為に使用され、そして、結果として得られた粒子は初期2D参照を得る為に使用され、次に、それは、顕微鏡写真の自動選択の為に使用され。初期3Dモデルがcryosparcで取得され、そして、Relionで対称性を課すこと無しに3D分類を実行する為に使用された。最良のクラスが選択され、そして、cryosparcにおいて3Dの、非均一精密化に付された。
様々なアッセイにおいて使用されるタンパク質/ペプチドの配列
配列番号103:アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)エクトドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGSTIEEQAKTFLDKFNHEAEDLFYQSSLASWNYNTNITEENVQNMNNAGDKWSAFLKEQSTLAQMYPLQEIQNLTVKLQLQALQQNGSSVLSEDKSKRLNTILNTMSTIYSTGKVCNPDNPQECLLLEPGLNEIMANSLDYNERLWAWESWRSEVGKQLRPLYEEYVVLKNEMARANHYEDYGDYWRGDYEVNGVDGYDYSRGQLIEDVEHTFEEIKPLYEHLHAYVRAKLMNAYPSYISPIGCLPAHLLGDMWGRFWTNLYSLTVPFGQKPNIDVTDAMVDQAWDAQRIFKEAEKFFVSVGLPNMTQGFWENSMLTDPGNVQKAVCHPTAWDLGKGDFRILMCTKVTMDDFLTAHHEMGHIQYDMAYAAQPFLLRNGANEGFHEAVGEIMSLSAATPKHLKSIGLLSPDFQEDNETEINFLLKQALTIVGTLPFTYMLEKWRWMVFKGEIPKDQWMKKWWEMKREIVGVVEPVPHDETYCDPASLFHVSNDYSFIRYYTRTLYQFQFQEALCQAAKHEGPLHKCDISNSTEAGQKLFNMLRLGKSEPWTLALENVVGAKNMNVRPLLNYFEPLFTWLKDQNKNSFVGWSTDWSPYADGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEK
配列番号104:SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(N)
MGWSCIILFLVATATGVHSQRNAPRITFGGPSDSTGSNQNGERSGARSKQRRPQGLPNNTASWFTALTQHGKEDLKFPRGQGVPINTNSSPDDQIGYYRRATRRIRGGDGKMKDLSPRWYFYYLGTGPEAGLPYGANKDGIIWVATEGALNTPKDHIGTRNPANNAAIVLQLPQGTTLPKGFYAEGSRGGSQASSRSSSRSRNSSRNSTPGSSRGTSPARMAGNGGDAALALLLLDRLNQLESKMSGKGQQQQGQTVTKKSAAEASKKPRQKRTATKAYNVTQAFGRRGPEQTQGNFGDQELIRQGTDYKHWPQIAQFAPSASAFFGMSRIGMEVTPSGTWLTYTGAIKLDDKDPNFKDQVILLNKHIDAYKTFPPTEPKKDKKKKADETQALPQRQKKQQTVTLLPAADLDDFSKQLQQSMSSADSTQAGSHHHHHHHHGSGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号105:SARS-CoV-2融合ペプチド(FP:Fusion peptide)
KRSFIEDLLFNKVTLADAGFIK
配列番号106:SARS-CoV-2スパイクエクトドメイン(トリ-S)
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDPPEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号107:SARS-CoV-2 S1ドメイン
MGWSCIILFLVATATGVHSVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPGGSHHHHHHHH
配列番号108:SARS-CoV-2 RBDドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号109:SARS-CoV-2 RBD(B.1.1.7)ドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTYGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号110:SARS-CoV-2 RBD(B.1.351)ドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGNIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVKGFNCYFPLQSYGFQPTYGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号111:SARS-CoV-2 RBD(P.1)ドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGTIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVKGFNCYFPLQSYGFQPTYGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号112:SARS-CoV-2 S1 NTDドメイン
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSGSGLVPRGSHHHHHHHH
配列番号113:SARS-CoV-2 S1接続ドメイン(CD:connecting domain)
MGWSCIILFLVATATGVHSTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPGGGSGGKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGGSGLVPRGSHHHHHHHH
配列番号114:SARS-CoV-2 S2ドメイン
MGWSCIILFLVATATGVHSSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDPPEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGGSHHHHHHHH
配列番号115:CoV-OC43スパイクエクトドメイン
MPMGSLQPLATLYLLGMLVASVLAVIGDLKCTSDNINDKDTGPPPISTDTVDVTNGLGTYYVLDRVYLNTTLFLNGYYPTSGSTYRNMALKGSVLLSRLWFKPPFLSDFINGIFAKVKNTKVIKDRVMYSEFPAITIGSTFVNTSYSVVVQPRTINSTQDGDNKLQGLLEVSVCQYNMCEYPQTICHPNLGNHRKELWHLDTGVVSCLYKRNFTYDVNADYLYFHFYQEGGTFYAYFTDTGVVTKFLFNVYLGMALSHYYVMPLTCNSKLTLEYWVTPLTSRQYLLAFNQDGIIFNAVDCMSDFMSEIKCKTQSIAPPTGVYELNGYTVQPIADVYRRKPNLPNCNIEAWLNDKSVPSPLNWERKTFSNCNFNMSSLMSFIQADSFTCNNIDAAKIYGMCFSSITIDKFAIPNGRKVDLQLGNLGYLQSFNYRIDTTATSCQLYYNLPAANVSVSRFNPSTWNKRFGFIEDSVFKPRPAGVLTNHDVVYAQHCFKAPKNFCPCKLNGSCVGSGPGKNNGIGTCPAGTNYLTCDNLCTPDPITFTGTYKCPQTKSLVGIGEHCSGLAVKSDYCGGNSCTCRPQAFLGWSADSCLQGDKCNIFANFILHDVNSGLTCSTDLQKANTDIILGVCVNYDLYGILGQGIFVEVNATYYNSWQNLLYDSNGNLYGFRDYITNRTFMIRSCYSGRVSAAFHANSSEPALLFRNIKCNYVFNNSLTRQLQPINYFDSYLGCVVNAYNSTAISVQTCDLTVGSGYCVDYSKNGGSGGAITTGYRFTNFEPFTVNSVNDSLEPVGGLYEIQIPSEFTIGNMVEFIQTSSPKVTIDCAAFVCGDYAACKSQLVEYGSFCDNINAILTEVNELLDTTQLQVANSLMNGVTLSTKLKDGVNFNVDDINFSPVLGCLGSECSKASSRSAIEDLLFDKVKLSDVGFVEAYNNCTGGAEIRDLICVQSYKGIKVLPPLLSENQFSGYTLAATSASLFPPWTAAAGVPFYLNVQYRINGLGVTMDVLSQNQKLIANAFNNALYAIQEGFDATNSALVKIQAVVNANAEALNNLLQQLSNRFGAISASLQEILSRLDALEAEAQIDRLINGRLTALNAYVSQQLSDSTLVKFSAAQAMEKVNECVKSQSSRINFCGNGNHIISLVQNAPYGLYFIHFSYVPTKYVTARVSPGLCIAGDRGIAPKSGYFVNVNNTWMYTGSGYYYPEPITENNVVVMSTCAVNYTKAPYVMLNTSIPNLPDFKEELDQWFKNQTSVAPDLSLDYINVTFLDLLIKRMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKKIKLVPRGSLEWSHPQFEK
配列番号116:CoV-HKU1スパイクエクトドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGVIGDFNCTNSFINDYNKTIPRISEDVVDVSLGLGTYYVLNRVYLNTTLLFTGYFPKSGANFRDLALKGSIYLSTLWYKPPFLSDFNNGIFSKVKNTKLYVNNTLYSEFSTIVIGSVFVNTSYTIVVQPHNGILEITACQYTMCEYPHTVCKSKGSIRNESWHIDSSEPLCLFKKNFTYNVSADWLYFHFYQERGVFYAYYADVGMPTTFLFSLYLGTILSHYYVMPLTCNAISSNTDNETLEYWVTPLSRRQYLLNFDEHGVITNAVDCSSSFLSEIQCKTQSFAPNTGVYDLSGFTVKPVATVYRRIPNLPDCDIDNWLNNVSVPSPLNWERRIFSNCNFNLSTLLRLVHVDSFSCNNLDKSKIFGSCFNSITVDKFAIPNRRRDDLQLGSSGFLQSSNYKIDISSSSCQLYYSLPLVNVTINNFNPSSWNRRYGFGSFNLSSYDVVYSDHCFSVNSDFCPCADPSVVNSCAKSKPPSAICPAGTKYRHCDLDTTLYVKNWCRCSCLPDPISTYSPNTCPQKKVVVGIGEHCPGLGINEEKCGTQLNHSSCFCSPDAFLGWSFDSCISNNRCNIFSNFIFNGINSGTTCSNDLLYSNTEISTGVCVNYDLYGITGQGIFKEVSAAYYNNWQNLLYDSNGNIIGFKDFLTNKTYTILPCYSGRVSAAFYQNSSSPALLYRNLKCSYVLNNISFISQPFYFDSYLGCVLNAVNLTSYSVSSCDLRMGSGFCIDYALPSSGGSGSGISSPYRFVTFEPFNVSFVNDSVETVGGLFEIQIPTNFTIAGHEEFIQTSSPKVTIDCSAFVCSNYAACHDLLSEYGTFCDNINSILNEVNDLLDITQLQVANALMQGVTLSSNLNTNLHSDVDNIDFKSLLGCLGSQCGSSSRSLLEDLLFNKVKLSDVGFVEAYNNCTGGSEIRDLLCVQSFNGIKVLPPILSETQISGYTTAATVAAMFPPWSAAAGVPFSLNVQYRINGLGVTMDVLNKNQKLIANAFNKALLSIQNGFTATNSALAKIQSVVNANAQALNSLLQQLFNKFGAISSSLQEILSRLDPPEAQVQIDRLINGRLTALNAYVSQQLSDITLIKAGASRAIEKVNECVKSQSPRINFCGNGNHILSLVQNAPYGLLFIHFSYKPTSFKTVLVSPGLCLSGDRGIAPKQGYFIKQNDSWMFTGSSYYYPEPISDKNVVFMNSCSVNFTKAPFIYLNNSIPNLSDFEAELSLWFKNHTSIAPNLTFNSHINATFLDLYYEMNVIQESIKSLNGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGSLVPRGSHHHHHHHH
配列番号117:CoV-MERSスパイクエクトドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGVDVGPDSVKSACIEVDIQQTFFDKTWPRPIDVSKADGIIYPQGRTYSNITITYQGLFPYQGDHGDMYVYSAGHATGTTPQKLFVANYSQDVKQFANGFVVRIGAAANSTGTVIISPSTSATIRKIYPAFMLGSSVGNFSDGKMGRFFNHTLVLLPDGCGTLLRAFYCILEPRSGNHCPAGNSYTSFATYHTPATDCSDGNYNRNASLNSFKEYFNLRNCTFMYTYNITEDEILEWFGITQTAQGVHLFSSRYVDLYGGNMFQFATLPVYDTIKYYSIIPHSIRSIQSDRKAWAAFYVYKLQPLTFLLDFSVDGYIRRAIDCGFNDLSQLHCSYESFDVESGVYSVSSFEAKPSGSVVEQAEGVECDFSPLLSGTPPQVYNFKRLVFTNCNYNLTKLLSLFSVNDFTCSQISPAAIASNCYSSLILDYFSYPLSMKSDLSVSSAGPISQFNYKQSFSNPTCLILATVPHNLTTITKPLKYSYINKCSRLLSDDRTEVPQLVNANQYSPCVSIVPSTVWEDGDYYRKQLSPLEGGGWLVASGSTVAMTEQLQMGFGITVQYGTDTNSVCPKLEFANDTKIASQLGNCVEYSLYGVSGRGVFQNCTAVGVRQQRFVYDAYQNLVGYYSDDGNYYCLRACVSVPVSVIYDKETKTHATLFGSVACEHISSTMSQYSRSTRSMLKRRDSTYGPLQTPVGCVLGLVNSSLFVEDCKLPLGQSLCALPDTPSTLTPASVGSVPGEMRLASIAFNHPIQVDQLNSSYFKLSIPTNFSFGVTQEYIQTTIQKVTVDCKQYVCNGFQKCEQLLREYGQFCSKINQALHGANLRQDDSVRNLFASVKSSQSSPIIPGFGGDFNLTLLEPVSISTGSRSARSAIEDLLFDKVTIADPGYMQGYDDCMQQGPASARDLICAQYVAGYKVLPPLMDVNMEAAYTSSLLGSIAGVGWTAGLSSFAAIPFAQSIFYRLNGVGITQQVLSENQKLIANKFNQALGAMQTGFTTTNEAFQKVQDAVNNNAQALSKLASELSNTFGAISASIGDIIQRLDPPEQDAQIDRLINGRLTTLNAFVAQQLVRSESAALSAQLAKDKVNECVKAQSKRSGFCGQGTHIVSFVVNAPNGLYFMHVGYYPSNHIEVVSAYGLCDAANPTNCIAPVNGYFIKTNNTRIVDEWSYTGSSFYAPEPITSLNTKYVAPQVTYQNISTNLPPPLLGNSTGIDFQDELDEFFKNVSTSIPNFGSLTQINTTLLDLTYEMLSLQQVVKALNESYIDLKELGNYTYYNKGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGSLVPRGSHHHHHHHHGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号118:SARS-CoV-1スパイクエクトドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGSDLDRCTTFDDVQAPNYTQHTSSMRGVYYPDEIFRSDTLYLTQDLFLPFYSNVTGFHTINHTFDNPVIPFKDGIYFAATEKSNVVRGWVFGSTMNNKSQSVIIINNSTNVVIRACNFELCDNPFFAVSKPMGTQTHTMIFDNAFNCTFEYISDAFSLDVSEKSGNFKHLREFVFKNKDGFLYVYKGYQPIDVVRDLPSGFNTLKPIFKLPLGINITNFRAILTAFSPAQDTWGTSAAAYFVGYLKPTTFMLKYDENGTITDAVDCSQNPLAELKCSVKSFEIDKGIYQTSNFRVVPSGDVVRFPNITNLCPFGEVFNATKFPSVYAWERKKISNCVADYSVLYNSTFFSTFKCYGVSATKLNDLCFSNVYADSFVVKGDDVRQIAPGQTGVIADYNYKLPDDFMGCVLAWNTRNIDATSTGNYNYKYRYLRHGKLRPFERDISNVPFSPDGKPCTPPALNCYWPLNDYGFYTTTGIGYQPYRVVVLSFELLNAPATVCGPKLSTDLIKNQCVNFNFNGLTGTGVLTPSSKRFQPFQQFGRDVSDFTDSVRDPKTSEILDISPCSFGGVSVITPGTNASSEVAVLYQDVNCTDVSTAIHADQLTPAWRIYSTGNNVFQTQAGCLIGAEHVDTSYECDIPIGAGICASYHTVSLLRSTSQKSIVAYTMSLGADSSIAYSNNTIAIPTNFSISITTEVMPVSMAKTSVDCNMYICGDSTECANLLLQYGSFCTQLNRALSGIAAEQDRNTREVFAQVKQMYKTPTLKYFGGFNFSQILPDPLKPTKRSFIEDLLFNKVTLADAGFMKQYGECLGDINARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDDMIAAYTAALVSGTATAGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKQIANQFNKAISQIQESLTTTSTALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDPPEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQAAPHGVVFLHVTYVPSQERNFTTAPAICHEGKAYFPREGVFVFNGTSWFITQRNFFSPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIINNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGSLVPRGSHHHHHHHH
配列番号119:CoV-229Eスパイクエクトドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGAGCQTTNGLNTSYSVCNGCVGYSENVFAVESGGYIPSDFAFNNWFLLTNTSSVVDGVVRSFQPLLLNCLWSVSGLRFTTGFVYFNGTGRGDCKGFSSDVLSDVIRYNLNFEENLRRGTILFKTSYGVVVFYCTNNTLVSGDAHIPFGTVLGNFYCFVNTTIGTETTSAFVGALPKTVREFVISRTGHFYINGYRYFTLGNVEAVNFNVTTAETTDFFTVALASYADVLVNVSQTSIANIIYCNSVINRLRCDQLSFYVPDGFYSTSPIQSVELPVSIVSLPVYHKHMFIVLYVDFKPQSGGGKCFNCYPAGVNITLANFNETKGPLCVDTSHFTTKYVAVYANVGRWSASINTGNCPFSFGKVNNFVKFGSVCFSLKDIPGGCAMPIVANWAYSKYYTIGTLYVSWSDGDGITGVPQPVEGVSSFMNVTLDKCTKYNIYDVSGVGVIRVSNDTFLNGITYTSTSGNLLGFKDVTKGTIYSITPCNPPDQLVVYQQAVVGAMLSENFTSYGFSNVVELPKFFYASNGTYNCTDAVLTYSSFGVCADGSIIAVQPRNVSYDSVSAIVTANLSIPSNWTISVQVEYLQITSTPIVVDCSTYVCNGNVRCVELLKQYTSACKTIEDALRNSARLESADVSEMLTFDKKAFTLANVSSFGDYNLSSVIPSLPTSGSRVAGRSAIEDILFSKIVTSGLGTVDADYKNCTKGLSIADLACAQYYNGIMVLPGVADAERMAMYTGSLIGGIALGGLTSAVSIPFSLAIQARLNYVALQTDVLQENQKILAASFNKAMTNIVDAFTGVNDAITQTSQALQTVATALNKIQDVVNQQGNSLNHLTSQLRQNFQAISSSIQAIYDRLDPPQADQQVDRLITGRLAALNVFVSHTLTKYTEVRASRQLAQQKVNECVKSQSKRYGFCGNGTHIFSIVNAAPEGLVFLHTVLLPTQYKDVEAWSGLCVDGTNGYVLRQPNLALYKEGNYYRITSRIMFEPRIPTMADFVQIENCNVTFVNISRSELQTIVPEYIDVNKTLQELSYKLPNYTVPDLVVEQYNQTILNLTSEISTLENKSAELNYTVQKLQTLIDNINSTLVDLKWLNRVETYIKSGGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGSLVPRGSHHHHHHHH
配列番号120:CoV-NL63スパイクエクトドメイン
METDTLLLWVLLLWVPGSTGFFTCNSNANLSMLQLGVPDNSSTIVTGLLPTHWFCANQSTSVYSANGFFYIDVGNHRSAFALHTGYYDANQYYIYVTNEIGLNASVTLKICKFSRNTTFDFLSNASSSFDCIVNLLFTEQLGAPLGITISGETVRLHLYNVTRTFYVPAAYKLTKLSVKCYFNYSCVFSVVNATVTVNVTTHNGRVVNYTVCDDCNGYTDNIFSVQQDGRIPNGFPFNNWFLLTNGSTLVDGVSRLYQPLRLTCLWPVPGLKSSTGFVYFNATGSDVNCNGYQHNSVVDVMRYNLNFSANSLDNLKSGVIVFKTLQYDVLFYCSNSSSGVLDTTIPFGPSSQPYYCFINSTINTTHVSTFVGILPPTVREIVVARTGQFYINGFKYFDLGFIEAVNFNVTTASATDFWTVAFATFVDVLVNVSATNIQNLLYCDSPFEKLQCEHLQFGLQDGFYSANFLDDNVLPETYVALPIYYQHTDINFTATASFGGSCYVCKPHQVNISLNGNTSVCVRTSHFSIRYIYNRVKSGSPGDSSWHIYLKSGTCPFSFSKLNNFQKFKTICFSTVEVPGSCNFPLEATWHYTSYTIVGALYVTWSEGNSITGVPYPVSGIREFSNLVLNNCTKYNIYDYVGTGIIRSSNQSLAGGITYVSNSGNLLGFKNVSTGNIFIVTPCNQPDQVAVYQQSIIGAMTAVNESRYGLQNLLQLPNFYYVSNGGNNCTTAVMTYSNFGICADGSLIPVRPRNSSDNGISAIITANLSIPSNWTTSVQVEYLQITSTPIVVDCATYVCNGNPRCKNLLKQYTSACKTIEDALRLSAHLETNDVSSMLTFDSNAFSLANVTSFGDYNLSSVLPQRNIRSSRIAGRSALEDLLFSKVVTSGLGTVDVDYKSCTKGLSIADLACAQYYNGIMVLPGVADAERMAMYTGSLIGGMVLGGLTSAAAIPFSLALQARLNYVALQTDVLQENQKILAASFNKAINNIVASFSSVNDAITQTAEAIHTVTIALNKIQDVVNQQGSALNHLTSQLRHNFQAISNSIQAIYDRLDSPPADQQVDRLITGRLAALNAFVSQVLNKYTEVRGSRRLAQQKINECVKSQSNRYGFCGNGTHIFSIVNSAPDGLLFLHTVLLPTDYKNVKAWSGICVDGIYGYVLRQPNLVLYSDNGVFRVTSRVMFQPRLPVLSDFVQIYNCNVTFVNISRVELHTVIPDYVDVNKTLQEFAQNLPKYVKPNFDLTPFNLTYLNLSSELKQLEAKTASLFQTTVELQGLIDQINSTYVDLKLLNRFENLIKRMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKKIKGSLVPRGSHHHHHHHH
配列番号122:合成ポリペプチド(SARS-CoV-2カッパ変異体B.1.617.1/3 RBDドメイン)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYRYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVQGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号123:合成ポリペプチド(SARS-CoV-2デルタ変異体B.1.617.2/3 RBDドメイン)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYRYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSKPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号124:合成ポリペプチド(SARS-CoV-2デルタプラス変異体)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSFLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGNIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYRYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSKPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号125:合成ポリペプチド(SARS-CoV-2オミクロン変異体B.1.1.529/RBDドメイン)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFDEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNLAPFFTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGNIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNKLDSKVSGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGNKPCNGVAGFNCYFPLRSYSFRPTYGVGHQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号126:合成ポリペプチド(SARS-CoV-2オミクロン変異体B.1.1.529/スパイクエクトドメイン)
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHVISGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASIEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLDHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPIIVREPEDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFDEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNLAPFFTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGNIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNKLDSKVSGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGNKPCNGVAGFNCYFPLRSYSFRPTYGVGHQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLKGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQGVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEYVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTKSHGSAGSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLKRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKYFGGFNFSQILPDPSKPSKRSPIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFKGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGPALQIPFPMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTPSALGKLQDVVNHNAQALNTLVKQLSSKFGAISSVLNDIFSRLDPPEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
配列番号184:合成ポリペプチド(オミクロン亜変異体BA.2)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGNITNLCPFDEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNFAPFFAFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGNEVSQIAPGQTGNIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNKLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGNKPCNGVAGFNCYFPLRSYGFRPTYGVGHQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKGSGLVPRGSHHHHHHHHSAWSHPQFEKGTGGLNDIFEAQKIEWHE
結果
1.SARS-CoV-2 Sタンパク質に対するヒトモノクローナル抗体の産生
回復期のCOVID-19個体において、スパイク及びRBDタンパク質に対する血清抗体レベルは、SARS-CoV-2 IgA血清中和活性と相関している。
ELISA結合(binding)実験によるSARS-CoV-2トリ-S及びRBDに対するIgG及びIgAの血清反応性に基づき、SARS-CoV-2 Sタンパク質に対する高い抗体反応を有する回復期のCOVID-19患者(最初の流行波の間に感染した)がCOVID-19コホートから選択された(図1A、図1B;図2A、図2B、図2C)。
回復期のCOVID-19患者のほとんどは、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)のトリ-Sタンパク質に対する交差反応抗体を包含する抗トリ-S IgG(主にIgG1である)の高力価を有していた(図1A、図1B、図2A及び図2B)。高レベルの血清抗RBD IgGがまた検出され(図1A、図1B、図2A及び図2B)、抗トリ-S抗体価と相関した(図2C)。IgA抗体のSARS-CoV-2血清反応性は、IgGよりも全体的に弱かったが、両者には相関があった(図1B、図2B、図2C)。
次に、回復期の選択されたCOVID-19患者からのポリクローナル血清IgG及びIgAが精製され、そして、様々なSARS-CoV-2抗原、例えばトリ-S、S1、S2、RBD、FP及びNタンパク質を包含する上記の様々なSARS-CoV-2抗原、に対するELISA結合実験によってアッセイされた(図1C、図2D、図2E)。選択されたCovid-19回復者からの精製された血清IgG及びIgA抗体が、Wuhanヌクレオカプシド(N)、トリ-S、S1及びS2サブユニット並びにRBDへの強いELISA結合(binding)を示し、並びにまた、他のβ-コロナウイルス(SARS-CoV-1、MERS-CoV、HKU1及びOC43)並びにα-コロナウイルス(229E及びNL63)の組み換えスパイクタンパク質に対しても交差反応を示した(図1C、図2D、図2E)。選択されたCovid-19回復期患者の精製された血清IgG及びIgA抗体がまたイン・ビトロ(in vitro)でSARS-CoV-2中和活性について測定された(図1D)。精製されたIgA抗体の50%阻害濃度(IC50)は、IgGと比較して平均的に低く(IgAs及びIgGについて夫々70.4対115.6μg/ml、p=0.068)、IgAsについて43~133μg/ml、及びIgGについて21~257μg/mlであった(図1D)。IgA抗体についてのIC50値は、SARS-CoV-2 S1及びRBDタンパク質に対するそれらの個々の結合レベル(binding levels)と負の相関であったが、IgG抗体についてのIC値はSARS-CoV-2 S1及びRBDタンパク質に対するそれらの個々の結合レベル(binding levels)と負の相関を示さなかった。
別のβコロナウイルスに対する交差反応性を調べる為に、サンプルがまたMERSトリ-Sに対して検査された(図1B、図1C、図2C)。
末梢血単一SARS-CoV-2 S+ IgG+及びIgA+ B細胞が蛍光標識されたRBD及びトリ-Sで染色され、そして、後者が、単一SARS-CoV-2反応性B細胞を捕捉する為のベイト(bait)として用いられ、そして、フローサイトメトリーによって選別され、そして、それらの頻度がフローサイトメトリー解析によって決定された。S+ RBD+ IgG+及びIgA+ B細胞の頻度がまた決定された(図1E)。単離された2870個のSARS-CoV-2トリ-S+IgA+/G+メモリB細胞から、組み換え発現クローニングによって合計133個のユニークなヒトmAbsが産生され、それらのほとんどがB細胞クローン展開(clonal expansion)の一部であった(図1F)。
10名の回復期のCOVID-19患者が、スパイク蛋白の血清反応性と中和に基づいて選択された。
モノクローナル抗体が、選択された回復期のCOVID-19患者の単細胞選別されたSARS-CoV-2 S+ IgG+及びIgA+ B細胞からクローニングされた。SARS-CoV-2 Sタンパク質に対する組み換えヒトモノクローナル抗体の反応性が、S-フロー、トリ-S ELISA及びトリ-SキャプチャELISAによって解析された(図1F、図2F)。
SARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的な組み換えヒトモノクローナル抗体の合計101個が、クローニングされた133個の中から単離され、作製され、そして、それらのSARS-CoV-2 Sタンパク質特異性について検証された。
2.COVID-19回復患者からのヒトSARS-CoV-2スパイクに特異的なメモリB細胞抗体(一部のデータは示されていない)
ELISA及びフローサイトメトリー(S-フロー(S-Flow))に基づく結合解析(binding analyses)は、101個の精製されたmAbがSARS-CoV-2のSタンパク質に特異的に結合することを示した(76%[40~100%]、図1F及び図2F)。RBD結合細胞(RBD-binding cell)は、トリ-S+ IgA+及びIgG+ B細胞の夫々11%及び17%であった。抗RBD IgA力価は血中RBD+ IgA+ B細胞頻度と相関し、そして、IgAの中和IC50値と逆相関していた。全B細胞及びSARS-CoV-2トリ-S特異的クラススイッチされた(class-switched)メモリB細胞は、いずれもレストメモリ(resting memory)B細胞表現型(RM,CD19+CD27+CD21+)を示した。循環血液濾胞性ヘルパーT細胞(circulating blood follicular helper T cell)(cTfh)サブセットの頻度がまた決定された。cTfh2(CD4+CXCR5+CCR6-CXCR3-)は、そのほとんどが活性化されており、優勢であることが判明し、及びトリ-S+ IgG+ RM B細胞と相関しており(r=0.83;p=0.0098)、cTfh2がB細胞のクラススイッチ(class switching)と親和性成熟を促進することを示した。免疫グロブリン遺伝子の特徴を健常対照からのIgG+メモリB細胞と比較することにより、再配列されたVH3Vλ3(p=0.0047)及びVλ3/Jλ2(p=0.0019)、JH4(p=0.0312)及びJκ4(p=0.0387)遺伝子、並びにIgG1サブクラス(p=0.0001)のSARS-CoV-2スパイク特異的B細胞レパートリーにおいて、使用率が増加していることが明らかになった。抗スパイク抗体はまた、以前に観察されたようにVH1-24/-69及びVH3-30/-33遺伝子において富化され、そして、減少したCDRH3陽性荷電を有し(p=0.0001)、並びにIgH(9.5対19.2、p<0.0001)及びIgλ(6.8対12.4、p<0.0001)における体細胞変異を有した。報告されているように、或る抗体クローンはCOVID-19の回復患者の数人の間で共有されており、SARS-CoV-2に対する抗体応答の個人間収束を更に例証している。
3.ヒト抗SARS-CoV-2スパイク抗体の結合及び及び抗ウイルス特性(データは示されていない)
エピトープマッピング解析は、抗SmAbs(n=101)の59%がS2サブユニット、16%がRBDドメイン、17%がNTDドメイン、1%がS1接続ドメイン(connecting domain)、及び7%がSARS-CoV-2スパイクの未定義の領域に結合したことを示した。S2サブユニットをターゲットとする抗S抗体(全体の0.99%)のみが、イムノブロット法によって、変性したトリ-Sタンパク質を認識したが、Sをカバーする直鎖ペプチドには結合せず、ほとんどのSARS-CoV-2-Sメモリ抗体はコンフォメーションエピトープ(conformational epitope)をターゲットとしていることを示した。抗スパイクメモリー抗体がWuhan株を中和するかどうかを決定する為に、イン・ビトロ(in vitro)での下記の3つの異なる機能アッセイを用いて阻害活性が測定された:ACE2エクトドメインへの可溶性トリ-S又はRBD結合の阻害を測定する競合ELISA、擬似中和アッセイ、及びS-融合(S-Fuse)と呼ばれる生きたウイルスを用いた中和アッセイ(19)。全体として、抗SmAbの~15%がS-融合アッセイにおいて50%超の阻害活性を示し、それらの多くはまた、偽型SARS-CoV-2ビリオン(pseudotyped SARS-CoV-2 virion)を中和し、及びトリ-S-ACE2相互作用を阻害した。強力な中和剤はRBDをターゲットとしたが、SARS-CoV-2感染をブロックした抗RBD抗体は全体の50%に過ぎず、ここで、IC50の値は10μg/ml未満であった。
SARS-CoV-2抗体はFc依存性エフェクター機能を備えており、ビリオン(virion)及び感染した細胞を排除することができ、それは、イン・ビボ(in vivo)における感染の経過を変化させることができる。抗体依存性細胞障害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞障害(CDC)を促進する抗SmAbsのイン・ビトロ(in vitro)能力が評価された。平均して、IgG抗体の41.6%、74.2%、42.6%が夫々ADCC、ADCP及びCDC活性を示した。SARS-CoV-2抗体のエフェクター活性はグローバルに相関していた。ADCC及びADCPを誘発する抗体は、S2(夫々、50%及び85%)及びNTD(夫々、53%及び76%)に対して主に向けられた。逆に、抗RBD抗体はADCCを実行する効率が低く、且つADCPを実行する効率も低かった。CDCの可能性を持つSARS-CoV-2抗体は、主にNTD(抗NTDの59%)とRBD(抗RBDの56%)とをターゲットとした。従って、CDCとトリ-S-ACE2のブロッキング活性は相関していた。主成分分析(PCA:Principal-component analyses)において、中和及びFc依存性エフェクター機能は、抗ウイルス機能のPCAにおいて2つの別個のクラスターに分離され、2つの第1主成分を組み合わせるときに、分散の77%に達することを示した。「中和」クラスターには主に抗RBD抗体が含まれ、一方、「エフェクター」クラスターにはNTD特異的IgG及びS2特異的IgGが含まれていた。
4.SARS-CoV-2 Sタンパク質に対するヒトモノクローナル抗体の特徴解析
ARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的な101個の組み換えヒトモノクローナル抗体が、更に特徴解析された。
6つの強力な抗RBD抗体中和剤(Cv2.5213,Cv2.5179,Cv2.3235,Cv2.1353,Cv2.3194,Cv2.1169)についての結果が示されている。Cv2.1169はIgA産生B細胞に由来し、一方、Cv2.5213、Cv2.5197、Cv2.3235、Cv2.1353及びCv2.3194はIgG産生B細胞に由来する。
ヒトモノクローナル抗体Cv2.5213、Cv2.5179、Cv2.3235、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.1169の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列が表2において示されている。これらの抗体のCDR、VH、VL及びFR配列が表1、表3及び表4において示されている。Cv2.1169可変重鎖及び可変軽鎖は夫々、核酸配列番号93及び配列番号94によってコードされる。Cv2.1353可変重鎖及び可変軽鎖は夫々、核酸配列番号95及び配列番号96によってコードされる。Cv2.3194可変重鎖及び可変軽鎖は夫々、核酸配列番号97及び配列番号98によってコードされる。Cv2.3235可変重鎖及び可変軽鎖は夫々、核酸配列番号99及び配列番号100によってコードされる。Cv2.5179可変重鎖及び可変軽鎖は夫々、核酸配列番号152及び配列番号153によってコードされる。Cv2.5213可変重鎖及び可変軽鎖は夫々、核酸配列番号101及び配列番号102によってコードされる。
これらの配列は発現ベクター((pUC19プラスミド:GeneBank#LT615368.1(IgG1);LT615369.1(IgK);LT615370.1(IgL))内に独立的にクローニングされ、抗体Cv2.1169、Cv2.1353、Cv2.3194、Cv2.3235、Cv2.5179及びCv2.5213の抗体重鎖及び軽鎖を発現する為の下記の10個の組み換えプラスミドを作製した。プラスミドCv2.1169_pIgH及びCv2.1169_pIgL(抗体Cv2.1169);プラスミドCv2.1353_pIgH及びCv2.1353_pIgL(抗体Cv2.1353);プラスミドCv2.3194_pIgH及びCv2.3194_pIgL(抗体Cv2.3194);プラスミドCv2.3235_pIgH及びCv2.3235_pIgL(抗体Cv2.3235);プラスミドCv2.5179_pIgH及びCv2.5179_pIgL(抗体Cv2.5179)、プラスミドCv2.5213_pIgH及びCv2.5213_pIgL(抗体Cv2.5213)。これらのプラスミドで形質転換された大腸菌(DH10B,C3019,NEB)は、Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に寄託された。
Cv2.1169の抗体重鎖及び軽鎖を発現可能な形態でコードするプラスミドCv2.1169_pIgHとCv2.1169_pIgLとを含む細菌株Cv2.1169_pIgH及びCv2.1169_pIgLは夫々、I-5651及びI-5652の番号の下で、2021年1月28日にInstitut PasteurのCNCMに寄託された。
Cv2.1353の抗体重鎖及び軽鎖を発現可能な形態でコードするプラスミドCv2.1353_pIgHとCv2.1353_pIgLとを含む細菌株Cv2.1353_IgH及びCv2.1353_IgLは夫々、I-5668及びI-5669の番号の下で、2021年4月02日にInstitut PasteurのCNCMに寄託された。
Cv2.3194の抗体重鎖及び軽鎖を発現可能な形態でコードするプラスミドCv2.3194_pIgHとCv2.3194_pIgLとを含む細菌株Cv2.3194_IgH及びCv2.3194_IgLは夫々、I-5670及びI-5671の番号の下で、2021年4月02日にInstitut PasteurのCNCMに寄託された。
Cv2.3235の抗体重鎖及び軽鎖を発現可能な形態でコードするプラスミドCv2.3235_pIgHとCv2.3235_pIgLとを含む細菌株Cv2.3235_IgH及びCv2.3235_IgLは夫々、I-5672及びI-5673の番号の下で、2021年4月02日にInstitut PasteurのCNCMに寄託された。
Cv2.5179の抗体重鎖及び軽鎖を発現可能な形態でコードするプラスミドCv2.5179_pIgHとCv2.5179_pIgLとを含む細菌株Cv2.5179_IgH及びCv2.5179_IgLは夫々、I-5775及びI-5776の番号の下で、2021年11月15日にInstitut PasteurのCNCMに寄託された。
Cv2.5213の抗体重鎖及び軽鎖を発現可能な形態でコードするプラスミドCv2.5213_pIgHとCv2.5213_pIgLとを含む細菌株Cv2.5213_IgH及びCv2.5213_IgLは夫々、I-5674及びI-5675の番号の下で、2021年4月2日にInstitut PasteurのCNCMに寄託された。
組み換え抗体が、Freestyle商標293-F懸濁細胞を上記で開示された組み換え発現プラスミドで一過性に共トランスフェクションすることによって作成され、そして、組み換え抗体が、上記の材料及び方法に開示したように精製された。
SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する強力な抗RBD中和剤の反応性が、S-フロー、トリ-S ELISA、トリ-S捕捉ELISAによって解析された。Sタンパク質上のモノクローナル抗体の結合領域がマッピングされた。他のベータコロナウイルスとの交差反応性が試験された。モノクローナル抗体の抗ウイルス機能が、ACE2へのトリ-S及びRBDの結合の競合ELISAアッセイ、並びにSARS-CoV-2中和アッセイ(SARS-CoV-2 S-融合アッセイ及び擬似中和アッセイ)において評価された。Fc依存性エフェクター機能は、補体依存性細胞障害(CDC)アッセイ及び抗体依存性細胞毒性(ADCC)アッセイによって分析された。
101個の抗SmAbsコレクションにおいて、5つの強力なSARS-CoV-2中和化抗体が同定された(Cv2.5213,Cv2.3235,Cv2.1353,Cv2.3194,Cv2.1169)。それらは、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)によって測定された場合に、高い親和性で組み換えトリ-S、S1及びRBDタンパク質に結合した(図3A)。それらは、ELISAによるリガンド結合の為のそれらの交差競合によって示されるように、RBD上の類似又は空間的に近接したエピトープをターゲットとした(図3B及び図4D)。それらは、可溶性ACE2エクトドメインへのトリ-Sの相互作用を効率的にブロックした(図3C)ことから、それらが、受容体結合モチーフ(RBM;receptor binding motif)を認識していることを示唆した。擬似中和及びS-融合アッセイを用いて決定された、SARS-CoV-2中和のIC50値が夫々、3~37ng/ml及び0.95~11.5ng/mlであった(図3D)。Cv2.1169抗体及びCv2.3194抗体の親和性と中和活性が下記の表5及び表6にまとめられている。
最も強力な抗体であるCv2.1169は、VH1-58/DH2-15/JH3及びVκ3-20/Jκ1免疫グロブリン遺伝子再配列によってコードされ、及び低レベルの体細胞変異を示した(アミノ酸レベルでVHが3.1%及びVKが2.1%)。
次に、SARS-CoV-2中和剤が低親和性の無関係なリガンドと結合し(多反応性)、且つ自己抗原と交差反応する可能性が、異なる相補的結合アッセイで評価された(図5)。いずれの抗体も自己反応性を示さず、一方、Cv2.3235とCv2.3194とだけが多反応性を示した(図5及びセクション5.強力なSARS-CoV-2中和化抗体の多反応性及び自己反応性の評価)。
いずれの強力な中和剤もADCCの可能性を有しなかったが、中庸のCDC活性と強固なADCP活性を示した(図14A~図14C及びセクション11.強力なCoV-2中和剤のFc依存性エフェクター機能)。驚くべきことに、IgG1抗体として発現したCv2.1169は、全てのSARS-CoV-2スパイクmAbsの中で最も強力なADCP誘発因子の1つであった(上位2%;図14C)。
トリ-S、S1及びRBDタンパク質についての、強力な抗RBD中和剤の結合親和性が表面プラズモン共鳴(SPR:surface plasmon resonance)によって測定され、そして、KD値が決定された(図3A)。
ビオチン化された抗RBD抗体及び潜在的なコンペティターとしての抗体を用いたELISAによって、トリ-S及びRBDへの結合についての抗RBD抗体の競合が評価された(図3B及び図4D)。
コンペティターとしての抗RBD抗体の存在下で、固定化されたACE-2へのビオチン化されたトリ-Sの結合がELISAで評価された(図3C)。
抗RBD抗体によるSARS-CoV-2及びSARS-CoV-2ウイルス変異体の中和曲線が、SARS-CoV-2 S-融合アッセイ及び擬似中和アッセイを用いて決定された(図3D及び図3G)。
SARS-CoV-2及びウイルス変異体(B.1.1.7,B.1.351及びP.1)のRBDタンパク質についてのRBD特異的IgG抗体の結合及びRBD-ACE2ブロッキング能がELISAで測定された(図3F、図4E、図4F、図4G)。
Cv2.1169のIgG及びIgA抗体の存在下、固定化されたACE-2へのビオチン化されたトリ-Sの結合がELISAで評価された(図3L)。
Cv2.1169のIgG及びIgAによるSARS-CoV-2の中和曲線は、SARS-CoV-2 S-融合アッセイ及び擬似中和アッセイを用いて決定された(図3L)。
SARS-CoV-2トリ-S、S1及びRBDへの並びにSARS-CoV-2ウイルス変異体由来のRBDタンパク質へのCv2.1169のIgG及びIgA抗体の結合がELISAで決定された(図3J、図4J)。
全ての強力な中和剤はSへの高い親和性を有し、RBDをターゲットとし、S結合において互いに競合する。その上、最も強力な抗体であるCv2.1169はまた、D614G、B1.1.7、B1.351及びP1ウイルス変異体をイン・ビトロ(in vitro)でWuhanのオリジナル株と同等に中和した。
5.強力なSARS-CoV-2中和化抗体の多反応性と自己反応性の評価
dsDNA(DNA)、フラジェリン(flagellin)(Fla)、gp140(HIV-1 YU2)、インスリン(INS)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH:keyhole limpet hemocyanin)、リポ多糖(LPS)、リゾチーム(LZ)、MAPK-14(MAPK)、ペプチドグリカン(PG)及びサイログロブリン(Tg)に対するELISAによって、強力なSARS-CoV-2中和化抗体の多反応性及び自己反応性が評価された(図5A及び5B);Hep2発現自己抗原に対する免疫蛍光(図5C);ELISAによるHep-2反応性(図5D);ヒトタンパク質(図5E)。多反応性指標(Polyreactivity index)は、非反応抗体との比較によって決定された(図5F)。
特に超強力な中和剤Cv2.1169において、ヒトタンパク質に対する、多反応性、自己反応性及びオフターゲット結合は検出されなかった(図5A~図5F)。
6.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のイン・ビボ(in vivo)治療活性
強力なSARS-CoV-2中和剤であるCv2.1169の治療的効果が、SARS-CoV-2(Wuhan株)に感染したK18-hACE2マウス及びゴールデンシリアンハムスター(golden Syrian hamster)において試験された。
K18-hACE2マウスに104のPFUプラーク形成単位(PFU)のSARS-CoV-2ウイルスを経鼻(i.n.)感染させ、そして、2つの異なる処置レジメンに従ってCv2.1169抗体を投与した:
6時間後にCv2.1169又はアイソタイプ対照IgG抗体を~10mg/kg(0.25mg)及び~20mg/kg(0.5mg)で腹腔内(i.p.)注射した(図6A);
6時間後、Cv2.1169 IgG及びIgA抗体、又はアイソタイプ対照IgG抗体を~5mg/kg(0.125mg)で腹腔内(i.p.)注射した(図6C)。
K18-hACE2マウスにSARS-CoV-2(Wuhan株)ウイルスを105のプラーク形成単位(PFU)で経鼻(i.n.)感染させ、22時間後にCv2.1169又はアイソタイプ対照IgG抗体を~40mg/kg(1mg)、更にCv2.1169を~16mg/kg(0.4mg)で腹腔内(i.p.)注射した(図6B)。
K18-hACE2マウスにおける結果は下記の通りである:
Cv2.1169 IgG処置 6時間 pi (10及び20mg/kgの両方で)は、100%の生存率及び回復率をもたらした(対 対照グループにおいて0%)(図6A)。
Cv2.1169 IgG処置 24時間 pi (40mg/kgで)は、10倍量のウイルス接種物に感染したマウスにおいて50%の生存率及び回復率をなおもたらした(対 対照グループにおいて0%)(図6B)。
5mg/kgでCv2.1169 IgGを単回注射したが、依然として最大77%の生存率が得られた(図6C)。
対照グループからの感染したマウスは、感染後最初の6日間(dpi)で体重の25%まで減少し、その後7~8dpiで死亡した(図6A)。対照的に、Cv2.1169 IgGで処置された全ての動物が生存し、そして、最初の1週間の間に一過性の体重減少を経験した後に、体重が回復された(図6A)。より高いウイルス接種量(105のPFU SARS-CoV-2)で感染させ、感染後22時間にCv2.1169 IgG(~40mg/kg i.p.+i.n.)で処理した場合であっても、対照グループのマウスと比較して半数のマウスが生存した(p=0.029)(図6B)。次に、Cv2.1169 IgA抗体のイン・ビボ(in vivo)での有効性を評価する為に、Cv2.1169 IgA抗体又はIgG抗体(0.125mg i.p.,~5mg/kg)のいずれかの低用量がSARS-CoV-2に感染したマウスに単回投与された。4dpiで、Cv2.1169 IgA及びIgGで処置されたマウスの口腔スワブ中のウイルス量は、対照動物と比較して有意且つ程度に減少したにもかかわらず(Cv2.1169 IgAにおいて2.6x104等量PFU/ml 対 5.7x103等量PFU/ml[p=0.008],Cv2.1169 IgGにおいて4.7x103等量PFU/ml,[p=0.029])(図15A)、SARS-CoV-2 IgAで処置されたマウスは全て7~8dpiで死亡したが、Cv2-1169 IgGで処置されたマウスの75%は生存し、且つ2週間後にそれらの初期体重が回復された(図6C)。これは、マウスにおけるIgG抗体と比較して、循環ヒトIgA(circulating human IgA)の急速な減衰によって説明されることができる(図15C)。
感染したゴールデンシリアンハムスターにおけるSARS-CoV-2に関連する病態は、ヒトにおける軽症COVID-19疾病に類似する。ゴールデンシリアンハムスターに6.104のSARS-CoV-2(Wuhan)ウイルスのプラーク形成単位(PFU)を経鼻感染させ、そして、様々な処理レジメンが施された:
24時間後にPBS、Cv2.1169又はアイソタイプ対照IgG抗体を、~40mg/kg(1mg i.p.)で腹腔内注射した(図6D);
4時間後、Cv2.1169 IgG及びIgA抗体、又はアイソタイプ対照IgG抗体を、~20mg/kg(0.5mg i.p.)で腹腔内(i.p.)注射した(図6E)。
シリアンハムスターでの結果は、感染したハムスターにCv2.1169 IgGを単回注射することにより、感染後24時間(図6E)でさえ、肺内ウイルス感染性及びウイルス血症の有意な減少が誘発されることを示した(図6D)。
肺重量/体重比(Lung weight to body weight)(LW/BW)、肺内ウイルス感染率、及びRNA負荷量が5dpiで測定された。Cv2.1169で処置されたハムスターにおける肺ウイルス感染性及びRNAレベルは、対照動物と比較して有意に減少した(夫々、2.44x103 vs 10x105 PFU/肺、p=0.0005、及び4.3x107 vs 3.4x108コピー/μg RNA,p=0.013)(図6D)。
IgA及びIgGで処置されたハムスターは、対照動物と比較してLW/BW比における減少を示した(IgAの場合に1.64対1.4[p=0.03]及びIgGの場合に1.32[p=0.004])(図6E)。
処置された動物において循環ヒトIgA抗体の急速な消失から予想されるように(図15E)、肺内ウイルス感染性及びRNA負荷量は、SARS-CoV-2中和IgA処理ハムスターと対照ハムスターとの間で同等であった(図6D)。対照的に、Cv2.1169 IgG抗体の投与により、処置されたハムスターの肺において、SARS-CoV-2の感染力とRNAレベルの両方が減少した(1.39x106 対 80のPFU/肺,p=0.0002;6.14x108 対 1.51x108のコピー/μg RNA,p=0.028)(図6D)。Cv2.1169 IgAとIgGとを処置された動物は、対照グループと比較して低下した内因性の抗スパイクIgG力価を同様に示し(夫々、p<0.0001及びp=0.0003)、SARS-CoV-2感染に対するCv2.1169 IgA抗体の潜在的な早期抗ウイルス効果を示唆した(図15F)。
VOCに対する活性については、下記のセクション13のベータ変異体に対する、強力なSARS-CoV-2中和化抗体Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性、並びに下記のセクション15のSARS-CoV-2デルタ及びオミクロンBA.1変異体に感染したハムスターにおけるCv2.1169及びベンチマーク付けされた抗体のイン・ビボ(in vivo)治療及び予防活性、をまた参照されたい。
7.強力なSARS-CoV-2中和剤の中和スペクトル
懸念される幾つかのSARS-CoV-2変異体(VOC)、すなわちアルファ(α,B.1.1.7)、ベータ(β,B.1.351)、ガンマ(γ,P.1)及びデルタ(δ,B.1.617.2)、並びに関心のある変異体(VOI)が流行の間に出現した(https://www.who.int/)。次に、16個の抗RBD抗体の交差反応の可能性が評価された。フローサイトメトリーによる結合解析の結果、5種の強力な中和化抗体のうち3種がVOC(α,β,γ,δ)及びVOI(ε,ι,κ,λ,μ)からのスパイクタンパク質を発現する細胞に結合し、一方、非中和化抗体のほとんどは狭い交差反応スペクトルを有していた(図3E)。中和剤であるCv2.1169、Cv2.3194及びCv2.1353並びに非中和化抗体の3分の1だけが、VOCα、β、γ、δ及びVOIκ、δ+のRBDタンパク質へのELISA結合に変化を示さなかった(図3G、図4E及び図4H)。Cv2.1169及びCv2.3194は、試験されたウイルス変異体由来のRBDタンパク質とACE2エクトドメインとの相互作用を一様にブロッキングする唯一の抗RBD抗体であった(図3G)。VH3-53/-66免疫グロブリン遺伝子によってコードされる3つの強力な中和剤(Cv2.1353,Cv2.5213及びCv2.3235)は、417位及び501位でのRBD変異に感受性があるが、SARS-CoV-2 α、β、γ、δに対する結合及び/又はブロッキング活性を失った(図3G及び図4E~図4I)。S-融合アッセイと擬似中和アッセイとの両方は、Cv2.1169及びCv2.3194がSARS-CoV-2変異体α、β、γ、δを中和したことを示した(図3J、図14D及び図14E)。VH3-53遺伝子発現抗体Cv2.3194は、全ての変異体と効率的に結合し且つ中和したが、これは、以前に報告されたように、再配列されたVκ3-20/Jκ4軽鎖遺伝子が使用されているためであると考えられる。これらの交差中和剤の中で、Cv2.1169は最も強力であり、それは、S-融合アッセイにおいて、Wuhan、D614G変異株、α株、β株、γ株及びδ株に対して1.5~2.7ng/mlのIC50値を示し、及び擬似中和アッセイにおいて、D614G変異株、α株、β株、γ株、δ株及びδ+株に対して3.5~14ng/mlのIC50値を示した(図3D、図3J、図14D及び図14E)。Cv2.1169は、臨床において使用されている又は開発中であるベンチマーク付けされた抗体の親バージョンの抗体と比較された場合に、最も強力な交差中和化抗体にランク付けされた(図18A~図18C)。加えて、個体間クローン収束解析(interindividual clonal convergence analyses)(図7A及び図7B)に基づいて、異なる回復期ドナー由来のCv2.1169 IgGホモログ(VH1-58/DH2/JH3及びVκ3-20/Jκ1)であるCv2.5179が作製され、それはまた、強力且つ広範なSARS-CoV-2中和活性を示した(図3L及び図18C~図18E)。
ソーティングされたB細胞のイムノフェノタイピング(immunophenotyping)から、Cv2.1169は元々、活性化されたメモリ表現型(CD27+CD21-)を持つスパイク+RBD+IgA+B細胞によって発現され、及び粘膜ホーミングインテグリン(mucosa-homing integrin)β7を発現していることが示された。従って、Cv2.1169はまた単量体IgA抗体として発現し、それは、対応するIgGと比較して同等の結合及び中和を示した(図3K、図3L及び図4I)。対照的に、精製されたJ鎖含有IgA二量体は、Wuhan株に対してより高い中和能を実証し(図3M)、前に報告されているように結合活性効果による高められた中和を示唆した。従って、SARS-CoV-2に対するCv2.1169 IgA Fabの中和活性は、二価の免疫グロブリンと比較して強く損なわれていた(図3L)。
8.VOCオミクロンのスパイクタンパク質及びRBDタンパク質へのCv2.1169結合
SARS-CoV-2のオミクロン変異体B.1.1.529又はBA.1が世界的に優勢となった(https://www.who.int/)。オミクロンBA.1は15個のRBD-アミノ酸置換を含み、それは、多くの強力な抗RBD中和剤、例えば臨床的に使用されているものを包含する上記の抗RBD中和剤、に対する耐性を与えた。
本試験の目的は、VOCオミクロンウイルス株由来のSARS-CoV-2スパイク(トリ-S)へのCv2.1169及び選択されたベンチマーク抗体の結合と、VOCベータ(β)及びオミクロン(o)ウイルス株由来のRBDタンパク質とへのCv2.1169及び選択されたベンチマーク抗体の結合とを比較することである。
選択されたベンチマーク抗体は、図7Aにおいて、Cv2.1174、Cv2.5156及びCv2.1388として報告されている。それらの可変領域(重鎖可変領域VH及び軽鎖可変領域VL)に対応するポリペプチド配列は、配列番号158~配列番号163として報告されている。
ELISAプレートには、精製された組み換えSARS-CoV-2スパイクVOC oと、β(対照として使用)及びo由来のRBDタンパク質がコーティングされた。洗浄後、プレートが、BSA含有溶液でブロッキングされ、様々な濃度のCv2.1169抗体又はベンチマークIgG抗体でインキュベーションされ、ヤギペルオキシダーゼでコンジュゲートされた抗ヒトIgG抗体によって可視化された。光学濃度が、405nmで測定された(OD405nm)。
図9並びに図17A及び図17Cは、Cv2.1169がオミクロン変異体(o)由来の精製された組み換えSARS-CoV-2スパイク及びRBDドメインと用量依存的に結合することを示す。プラトー値(Plateau values)はトリ-Sの場合におよそ150ng/ml、及びRBDの場合におよそ625ng/mlに達した。EC50値(ng/mlで表される)(平均±SD,n=2)は、RBDの場合に5.4(β)から27(o)まで様々であり、RBD oへのCv2.1169の結合がRBD βに比べて5倍減少していることを示した。
Cv2.1169及びCv2.3194は、細胞発現型の可溶性オミクロンBA.1スパイクタンパク質並びにo BA.1 RBDとよく結合したが、他の抗RBD抗体には結合しなかった(図17A)。どちらの抗体も、Wuhanウイルススパイクの効率よりも低い効率であったが、ACE2へのオミクロンBA.1トリ-Sの結合をブロックした(図17B)。Cv2.1169及びCv2.3194はまた、ベンチマーク付けされた抗体と比較して、ELISAによるオミクロンBA.1ウイルスタンパク質への最高の結合とスパイク-ACE2ブロッキング能を有した(図17C及び図17D)。Cv2.1169及びCv2.3194は、S-融合アッセイにおいて、夫々253ng/ml及び24.2ng/mlのIC50でBA.1を中和したが、Cv2.5179では中和しなかった(図17E)。従って、Cv2.1169及びCv2.3194は、デルタと比較して、オミクロンBA.1に対する中和効力を夫々、79倍及び2.2倍低下させた(図17E)。対照的に、Cv2.1169及びCv2.3194は、オミクロンBA.2に対して、o BA.1と比較してわずかに強いRBD結合を示した(図17D)。一貫して、両方の抗体は、可溶性ACE2へのRBD BA.2の結合をより効率的にブロックした(図17F)。それにもかかわらず、Cv2.1169及びCv2.3194は、S-融合アッセイにおいてオミクロンBA.1及びBA.2に対して同等の中和活性を示した(図17G)。それらの単量体の抗体と比較して、二量体のCv2.1169 IgA抗体は、オミクロンの変異体、特にはBA.1、に対する高められたRBD結合活性及びスパイク-ACE2ブロッキング活性を有していた(図17H及び図17I)。このことは、結合部位の数について正規化されたときに、オミクロンBA.1及びBA.2に対するCv2.1169 IgA二量体の中和力が夫々13倍及び20倍増加したことにつながる(図17J)。
9.Cv2.1169は、ACE-2へのWuhan及びVOC o由来のSARS-CoV-2スパイク及びRBDの結合を阻害した。
Cv2.1169及びベンチマーク抗体の、スパイクタンパク質とその受容体であるACE-2との相互作用を阻害する能力が、Wuhanウイルス株とVOCオミクロンウイルス株由来のスパイク(トリ-S)タンパク質を用いて、ELISAによって調べられた。
ELISAプレートに、250ng/ウェルの精製されたACE-2エクトドメインが一晩コーティングされた。ブロッキング後、Cv2.1169又はベンチマーク抗体の存在下で、ビオチン化されたトリ-S及びRBD(Wuhan及び変異体o)が添加された。洗浄後、該プレートが、ペルオキシダーゼでコンジュゲートされたストレプトアビジン(BD Biosciences)で30分間インキュベーションされることによって可視化された。光学濃度が、405nm(OD405nm)で測定された。
図10は、Cv2.1169が用量依存的にトリ-SとACE-2との相互作用を阻害することを示す。プラトー値は、92.5ng/ml(Wuhan)から583.4ng/ml(o)まで得られた。IC50は平均±SD(n=2)で表され、250ng/ml(Wuhan)から~2000ng/ml(o)まで様々であった。Cv2.1169は、依然としてそのリガンドACE-2とのスパイク・オミクロン相互作用を阻害した。この機能特性は、Cv2.1169がオミクロンBA.1ウイルスがターゲットへ付着することをブロックし、その結果、SARS-CoV-2オミクロン変異体によって介在されるウイルス感染を減少させることを示唆する。
10.S-融合アッセイを用いた、Cv2.3194、Cv2.5179、Cv2.1169を含む本開示の抗体による、δ株、δ+株及びo株に対するイン・ビトロ(in vitro)でのSARS-CoV-2の中和。
SARS-CoV-2デルタ(対照として使用)及びオミクロンウイルスを中和する為の、Cv2.1169及び他のベンチマーク抗体の能力が、S-融合中和アッセイを用いてイン・ビトロ(in vitro)で評価された。
S-融合細胞(U2OS-ACE-2 GFP1-10又はGFP11細胞)が、様々な希釈のIgG抗体の存在下でSARS-CoV-2ウイルス変異体と共にインキュベーションされた。18時間後、細胞が固定され、そして、画像が共焦点顕微鏡で取得された。GFP発現を表す面積と核の数に基づいて、中和パーセンテージが算出された。EC50値(ng/ml)は、用量反応曲線に基づいて算出された。
図11は、Cv2.1169による用量反応SARS-CoV-2中和を示す。プラトー値は15.6ng/ml(デルタ)から1000ng/ml(o)で得られた。IC50値は、S-融合アッセイで4.46ng/ml(デルタ)~212.2ng/ml(o)で構成され、オミクロンoに対する、Cv2.1169の中和活性はデルタと比較して~50倍低下したことを示す。
Cv2.1169は、RBD結合及びRBD-ACE2ブロッキングの低下並びにSARS-CoV-2 VOCオミクロンに対する中和活性の低下を示しているにもかかわらず、この抗体は依然として、SARS-CoV-2オミクロンを~0.25μg/mlのIC50で中和し、そして、記載されたアッセイで試験された全てのベンチマーク抗体の中で第1位にランク付けされている。
図12及び図13は、本開示に従って、試験された全ての中和化抗体、特には、Cv2.3194、Cv2.5179及びCv2.1169を包含する上記の中和化抗体が、懸念される複数の変異体に対して広範な中和特性を有することを更に確認する。
11.強力なCoV-2中和剤のFc依存性エフェクター機能
図14Aは、本開示に従う強力なSARS-Cov-2中和剤が、非中和剤(非nAbs)と比較して誘発は中庸であるが、抗体依存性細胞毒性(ADCC)活性を誘発する傾向があることを示す。
図14Bは、本開示に従う強力なSARS-Cov-2中和剤が、中程度の補体依存性細胞障害(CDC)活性を誘発する傾向があるが、その誘発は、非中和剤(非nAbs)と比較して中庸であることを示す。
図14Cは、本開示に従う強力なSARS-Cov-2中和剤であるCv2.1169が、組み換えIgG1、単量体IgA1、及び二量体IgA1抗体についていずれも、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)活性を有意に誘発する傾向があることを示す。
12.エピトープの構造的特徴(データは示さず)
最も強力なmAbのエピトープと中和メカニズムとを正確に定義する為に、対応するFabが作製されて、Wuhan RBDとの複合体で共結晶化試験が行われた。Cv2.3235 Fab/RBD及びCv2.6264 Fab/RBD複合体の結晶が得られ、そして、それぞれ2.3Å及び2.8Åの分解能に対するそれらのX線構造が決定された。Cv2.1169FabはRBDとの2元複合体として結晶化せず、しかし、Cv2.1169 IgA Fab/CR3022 IgG1 Fab/RBDの3元複合体として結晶化され、それにより、2.9Åに対するX線構造を決定することが可能であった。これらの結晶は、可動性であるCv2.1169 Fab定常ドメインについて解釈可能な密度を示さなかったが、可変ドメイン及びパラトープ/エピトープ領域は明確に分離された。該結晶構造は、Cv2.1169がRBMに結合すること、及び「閉じた」スパイク上の該RBDの「下向き」のコンフォメーションで閉塞されているところの面に向かって傾いているRBDリッジ(RBD ridge)をまたいでいることを示した。Cv2.1169の結合モードは、A23-58.1、COVOX-253及びS2E12 mAbsとの重ね合わせモデル(superposition model)において示されているように、他のVH1-58/VK3-20由来の中和化抗体と類似している。RBD-Cv2.1169及びRBD-ACE2複合体の構造を重畳することにより、抗体と受容体との間で広範な衝突を示した。Cv2.1169の結合により導入された立体障害は、その中和メカニズムについての構造的根拠を提供し、及びそのRBD-ACE2ブロッキング能と一致した(図3C、図3F、図4F及び図4I)。Cv2.1169のRBD結合は、あまり強力でない2つのVH3-53及びVH1-69抗RBD中和化抗体(夫々、Cv2.3235及びCv2.6264)のうちの1つの結合と異なっていた。Cv2.3235抗体とCv2.6264抗体とを比較すると、Cv2.1169は適度な総埋没表面積(BSA:buried surface area)で結合した(夫々、Cv2.1169、Cv2.3235及びCv2.6264について、~1400Å2、~2620Å2及び~1820Å2)。加えて、Cv2.3235及びCv2.6264の全てのCDRでなく、Cv2.1169の全てのCDRは、相互作用表面の大部分(パラトープ(paratope)のBSAの~80%)を提供するところの重鎖が主にCDRH3依存的にRBDに接触した。Cv2.1169のCDRH3(Kabatの定義において14アミノ酸長)は、P99及びF110で、舌様ループ(tongue-like loop)を画定するところのキンク(kink)を含み、それは、C101CDRH3とC106CDRH3との間のジスルフィド結合によって安定化される。この特殊な形状により、CDRH3の「舌」(tongue)の片側だけからG104とF110との間の幾つかの残基によってRBDの先端を認識すること及び主鎖原子を通じてRBDと水素結合を形成することが可能になる。加えて、界面での極性相互作用には、CDRH3におけるD108とCDRL1におけるY33の側鎖が関与している。
全体として、Cv2.1169はRBDセグメント417~421、455~458、473~478及び484~493と相互作用する。T478を除けば、オミクロン以前のSARS-CoV-2 VOC中に存在する変異されたRBD残基は全て、接触領域の縁(K417,E484)又は外側(L452,N501)にある。逆に、Cv2.3235抗体の重鎖及び軽鎖は、幾つかのVOCにおいて変異している幾つかの残基、例えばK417やN501、と相互作用し、α、β、γ及びδ+変異体への結合する能力及び中和する能力の低下を説明する(図3E、図3F及び図14A)。RBD残基であるT478は、Cv2.1169の重鎖及び軽鎖の両方と水素結合を形成し、並びにδ及びδ+変異体において変異している(T478K)。しかしながら、スレオニンがリジンに置換されているにもかかわらず、Cv2.1169抗体は両方の変異体と効率的に結合し、そして、中和することができる(図3E、図3F、図14A及び図14B)。このことは、界面の完全性がT478側鎖と形成される水素結合に依存しないこと、及びリジン残基が抗体との衝突を減らすところの配向のを有するロータマー(rotamer)を適用する為に十分な空間があることを示す。Cv2.6264抗体もRBDリッジをまたいでいるが、δ及びδ+変異体に対する反応性を失っている(図3E)のとは異なり、Cv2.1169はRBDのF486及びN487残基を疎水性キャビティ内に埋めている。このポケットは、FWRH2(W50)、CDRH3(F110)、CDRL1(Y33)、CDRL3(Y92とW97)の芳香族残基によって形成され、ACE2と相互作用する際にこれらの残基が遭遇する環境を模倣している。したがって、F486残基とN487残基はCv2.1169のアンカーとして機能している可能性が高く、RBMとの相互作用を強化して、δ及びδ+変異体におけるT478K変異を許容できるようにしている。BA.1及びBA.2変異体において、Cv2.1169-RBD接触残基のうち4個が変異しており、これには、β及びγにすでに存在する置換K417N、δのT478K、更に2つのオミクロン特異的変異S477N及びQ493Rが含まれる。いずれもCv2.1169結合部位の周辺に位置しているが、これらの変異の組み合わせにより、SARS-CoV-2 BA.1及びBA.2の結合及び中和が他のVOCに比べて低下していることが説明できる(図17)。
前述されているように、Cv2.1169抗体はRBDの閉塞面(occluded face)に向かって傾いており、隣接するプロトマーと近接性により、エピトープは「ダウン」(down)のRBDコンフォメーションにおいてアクセスできない。このことから、該抗体はRBDの「アップ」(up)のコンフォメーションでのみ該RBDに結合することを意味する。このことは、Cv2.1169のIgA Fabと複合体化したSARS-CoV-2のS_6Pタンパク質三量体のÅクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)による再構成を3.Åの分解能で決定する場合に実際に当てはまる。この構造は、3-「アップ」(up)のRBDオープン(open)スパイクにおける各プロトマーがCv2.1169 Fabフラグメントによって結合していることを示した。Cv2.1169は、可溶性のACE2受容体へのSARS-CoV-2トリ-Sの結合をブロックすること及びその結合部位はアップ(up)-RBDコンフォメーションにおいてのみアクセス可能であることを考慮すると、この抗体はRBD-Bグループにエピトープを持つクラス1カテゴリー(又はIa)に属することが我々のデータにより示唆された。従って、Cv2.1169は、クラス1のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤(CT-P59,COV2-2196,REGN10933及びCB6)と相互競合し、クラス2の抗体であるLY-CoV555ともスパイク及びRBDタンパク質への結合で相互競合した。
13.ベータ変異体に対する、強力なSARS-CoV-2中和化抗体Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性
強力なSARS-CoV-2中和剤であるCv2.1169の治療効果が、図15において示されているように、及びWuhan株についての図6について以前に示されているように、ベータ変異体を接種した後に、SARS-CoV-2で感染したK18-hACE2マウスにおいて更に試験された。
Cv2.1169がSARS-CoV-2 VOCでの感染に対してイン・ビボ(in vivo)で活性であるかどうかを調べる為に、K18-hACE2ノックインマウス(knock-in mice)を用いて、SARS-CoV-2 VOC βに対するCv2.1169 IgA抗体の前予防活性(prophylactic activity)及びCv2.1169 IgG抗体の治療活性を試験した。104のPFUのSARS-CoV-2変異体βに感染する6時間前に、~10mg/kg(0.25mg i.p.)でCv2.1169 IgA抗体を単回投与することにより、87.5%の動物が死から保護された(図6F)。ヒトSARS-CoV-2 IgA抗体はマウス循環(mouse circulation)中に持続しなかったにもかかわらず(図15C)、Cv2.1169 IgAで処置されたマウスは、追跡調査中にそれらの初期体重がまた回復した(図6F)。同様に、SARS-CoV-2 βで感染したマウスにCv2.1169 IgG抗体(0.25mg i.p.,~10mg/kg)を感染後6時間処置することにより100%生存し、一方、対照抗体を投与された動物は全て7~8dpiで死亡した(図6F)。注目すべきことに、ヒトCv2.1169 IgG抗体は依然として、追跡調査の終了時点でマウス血清中に検出可能であった(図15B及び図15C)。加えて、Cv2.1169 IgAで前処置されたマウスは、Cv2.1169 IgG抗体で処置されたマウスに比べて、より高い抗スパイクIgG抗体価を示し、前者のグループにおいてウイルス制御が弱いことが示唆された(図15)。
全体として、Cv2.1169の可変領域を含むIgA免疫グロブリンでの前処置、又は同じ可変領域を含むIgG免疫グロブリンでの処置が、懸念される複数のSARS-CoV2変異体についてイン・ビボ(in vivo)で強力な中和剤であることが我々のデータにより確認された。
特には、図15Aにより、対照マウスと比較したときに、5mg/kgのCv2.1169 IgG又はIgAの腹腔内注射後、感染4日目(dpi)にSARS-CoV2 RNAレベルが有意に減少していることが確認される。
WuhanのSARS-CoV-2に対する活性については、上記のセクション6.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のイン・ビボ(in vivo)治療活性、をまた参照されたい。VOCについての活性については、下記のセクション15.SARS-CoV-2デルタ及びオミクロンBA.1変異体に感染したハムスターにおけるCv2.1169及びベンチマーク付けされた抗体のイン・ビボ(in vivo)治療及び予防活性、をまた参照されたい。
14.SARS-CoV2のRBDドメインに対して向けられた他の治療用抗体とのベンチマーク。
図16A及び図16Bは、Cv2.1169及びCv2.3194の結合特性を、懸念される1以上の変異体に対する中和特性を有する他の参照治療抗体の選択と比較研究を提供する。試験された参照治療抗体は、アジントレビマブ、シルガビマブ、ソトロビマブ(Xevudy商標としてまた報告されている)、イムデビマブ(Ronapreve商標としてまた報告されている)、チキサゲビマブ、レグダンビマブ(Regkirona商標としてまた報告されている)、カシリビマブ、エテシビマブ、バムラニビマブ、及びそれらの組み合わせ、例えば、カシリビマブとイムデビマブとの組み合わせ、バンラニビマブとエテセビマブとの組み合わせ、シルガビマブとチキサゲビマブとの組み合わせを包含する上記の組み合わせ、を包含する。全体として、本開示に従う中和化抗体は、試験された全ての変異体のRBDに対する強力な結合剤として実証された。
図16C及び図16D及び図16Eは、各対の抗体についての及び複数のRBD構築物についての結合競合を更に示す。全体として、Cv2.1169及びCv2.3194は、クラス1の最良のコンペティターであることが実証されている。ELISAアッセイにより、それらの結合界面が、他の治療用抗体、特には、アジントレビマブ、シルガビマブ、ソトロビマブ及びイムデビマブからなるグループから選択される抗体、と相補的であることが本明細書において更に実証されている。
図17及び図18は、Cv2.1169がまた、臨床において使用されている又は開発中であるベンチマーク付けされた抗体の親バージョンと比較された場合に、最も強力な交差中和剤にランク付けされたことを示す。特には、Cv2.1169は、クラス1のベンチマーク付けされたSARS-CoV-2中和剤(CT-P59,COV2-2196,REGN10933及びCB6)と交差競合し、クラス2の抗体LY-CoV555ともスパイク及びRBDタンパク質への結合の場合に中庸に交差競合した。
15.SARS-CoV-2デルタ及びオミクロンBA.1変異体に感染したハムスターにおけるCv2.1169及びベンチマーク付けされた抗体のイン・ビボ(in vivo)治療及び予防活性
Cv2.1169及び選択されたベンチマーク抗体(エバシェルド[シルガビマブ+チキサゲビマブ]及びS309/ソトロビマブ)の治療的効果が、SARS-CoV-2変異体デルタ及びオミクロンBA.1に感染したゴールデンシリアンハムスターで試験された(図19B)。
動物にSARS-CoV-2デルタ(図19A)又はオミクロンBA.1(図19C)の104のプラーク形成単位(PFU)で経鼻(i.n.)感染され、そして、2つの異なる処置レジメンが施された:
SARS-CoV-2デルタで感染の24時間後に、Cv2.1169 IgG又はエバシェルドが腹腔内(i.p.)に2mg/kg(及び6mg/kg)で注射された(図19A);
SARS-CoV-2 BA.1で感染後の24時間後に、Cv2.1169、ソトロビマブ又はエバシェルド抗体が腹腔内に3mg/kgの濃度で注射された。Cv2.1169 IgG抗体がまた30mg/kgで投与された(図19C)。
結果は、感染したハムスターにCv2.1169 IgGとエバシェルドとを単回注射することにより、2mg/kg及び6mg/kgで肺内SARS-CoV-2デルタウイルス感染性及びウイルス血症の有意な減少が誘発されたことを示した(図19A)。同様のデータが、オミクロンBA.1に感染したハムスターにCv2.1169 IgG及びエバシェルド調製物を6mg/kgで単回注射を施した場合に得られた(図19C)。
Cv2.1169の前予防活性(prophylactic activity)が、シリアンハムスターにおけるSARS-CoV-2オミクロンBA.1に対してまた試験された。104のPFUのSARS-CoV-2オミクロンBA.1変異体を用いた感染の24時間前にCv2.1169 IgG抗体を単回投与することにより、エバシェルド調製物と比較して、3mg/kg及び30mg/kgの両方で、肺内ウイルス感染性及びウイルス血症、並びに感染後80時間の体重減少が有意に減少した(図19C)。
全体として、シリアンハムスターにおけるイン・ビボ(in vivo)の実験は、Cv2.1169が、SARS-CoV-2 VOCであるデルタ及びオミクロンBA.1に対して、ソトロビマブ及びエバシェルドよりも高い治療及び前予防の可能性を有することを示した。
Wuhan SARS-CoV-2に対する活性については、上記のセクション6.強力なSARS-CoV-2中和化抗体のイン・ビボ(in vivo)治療活性、をまた参照されたい。VOCに対する活性については、上記のセクション13.ベータ変異体に対する、強力なSARS-CoV-2中和化抗体Cv2.1169のイン・ビボ(in vivo)治療活性、を参照されたい。
結論
SARS-CoV2に対する防御的体液性応答(protective humoral response)を調べる為に、本発明者等は、高い中和化抗体価に基づいて選択された10人のCOVID-19回復者のメモリB細胞から、SARS-CoV2-Sに特異的な101個のヒト抗体をクローニングし、そして、特徴評価をした。本発明者等は、ヒトSARS-CoV-2抗体が免疫グロブリン遺伝子の多様なセットによってコードされているが、幾つかのB細胞クローンは異なる個体間で共有されていることがわかった。抗体は様々なコンフォメーションエピトープ(conformational epitope)を認識し、その大部分はS2サブユニットをターゲットとしていた。SARS-CoV2-Sに特異的な抗体の約10%が受容体結合ドメイン(RBD)を認識し、そして、そのうちの5つがイン・ビトロ(in vitro)でSARS-CoV2を強力に中和した。SARS-CoV-2中和化抗体は他のコロナウイルスとは反応せず、及びRBD結合について交差競合を示した。しかしながら、抗S2はどれも中和しなかったが、ADCC及びCDCの可能性についてイン・ビトロ(in vitro)で試験をしたときに、多くはFc依存性エフェクター機能を保持していた。注目すべきは、最も強力な抗体であるCv2.1169がまた、D614G、B1.1.7、B.1.351及びP.1ウイルス変異体をイン・ビトロ(in vitro)でWuhanのオリジナル株と同等に中和した。驚くべきことに、超強力中和化抗体であるCv2.1169の単剤療法は、マウス及びハムスターにおけるSARS-CoV2モデルにおいて、イン・ビボ(in vivo)でウイルス血症の低下を誘発し、感染した全てのマウスを死から保護した。
本発明者等は更に、SARS-CoV2-S特異的抗体がまた、複数の懸念する変異体、例えば、カッパ(κ)、デルタ(δ)、デルタ+(δ)及びオミクロン(o)変異体を包含する上記の複数の懸念する変異体、を効率的に中和することを本明細書において更に示す。
本試験研究において報告された102個のSARS-CoV-2抗体の中で、Cv2.1169及びCv2.3194は、全てのSARS-CoV-2変異体、例えば、オミクロンBA.1亜型及びBA.2亜型を包含する上記のSARS-CoV-2変異体、に対して持続的な活性を有する唯一の強力な中和剤であった。典型的なクラス1抗RBD抗体と同様に、Cv2.3194はVH3-53可変遺伝子を使用し、且つ短いCDRH3を示すが、VOCにおけるエスケープ変異(escape mutation)に対するその耐性によって他の変異体と異なる。事実、VH3-53にコードされた抗RBD抗体は通常、α、β、γ及びο変異体を包含するK417及びN501位において変異を持つSARS-CoV-2ウイルスを中和する為の能力を失う。Vκ3-20を発現するクラス1抗RBD抗体のCDRκ1の稀な変異(P30S)は、VOC中和をレスキューすることが提唱されているが、Cv2.3194にはない。Cv2.3194のFab/RBD複合体は結晶化しなかった故に、全てのVOCに対するその強力な交差中和化能(cross-neutralizing capacity)が変化しない分子的根拠はまだ解明されていない。Cv2.3194の他に、本発明者等は別の強力なSARS-CoV-2交差中和化抗体(cross-neutralizing antibody)であるCv2.1169を単離し、これは、RBDに結合するクラス1の中和化抗体で、適度な総埋没表面積(BSA:buried surface area)を有する。オミクロンBA.1及びBA.2を除き、SARS-CoV-2VOCにおける変異されたRBD残基の全ては、Cv2.1169のSARS-CoV-2結合及び中和能にほとんど影響を及ぼさなかった。構造データ解析に基づき、本発明者等は、F486位及びN487位におけるRBM残基がCv2.1169結合の為に重要であり、アンカーとして作用し、及び幾つかのVOC中に存在するT478K変異を許容する為に寄与することを同定した。重要なことは、以前にVH1-58クラスの抗体S2E12について示されたように、F486位とN487位における置換は、ACE2へのRBD結合とウイルスの複製適性の両方を低下させる有害な作用があるので、将来の潜在的なVOCにおいて生じにくいということである。従って、Cv2.1169は、ウイルスのエスケープ(viral escape)に対する高い障壁(high barrier)と最低のエスケープ性(escapability)とを有するクラスの広範なSARS-CoV-2中和剤(すなわち、S2E12,A23.58.1,AZD8895[COV2-2196])に属する。また、SARS-CoV-2オミクロンに対するCv2.1169の効力の低下は、BA.1及びBA.2に対するそれらの活性を劇的に低下した又は失ったところのRBD「VH1-58スーパーサイト」への他の中和化抗体と比較するときに中庸であると考えられる。
げっ歯類及び非霊長類を用いたSARS-CoV-2動物モデルは、ヒト中和抗スパイク抗体のイン・ビボ(in vivo)前予防及び治療能力を実証する際に極めて重要である。本発明者等は、Cv2.1169 IgGがSARS-CoV-2及びそのVOC βでの感染を効率的に予防及び/又は防御することを示した。Cv2.1169は、おそらく粘膜組織において発生している、活性化された循環血中IgA発現化メモリB細胞によって元々発現されており、本発明者等はCv2.1169 IgA抗体がSARS-CoV-2 VOC βからマウスを保護することができることを確立した。従って、本発明者等は、そのような抗体が粘膜表面で局所的に存在する場合に、特に二量体IgAとして存在する場合に、ビリオンを効率的に中和及び/又は排除し、それ故に、SARS-CoV-2変異体による感染のリスクを潜在的に減少させると考えられる。この点に関して、IgA1抗体二量体の長いヒンジ領域及び多価性は、それらのIgG1抗体対応物と比較してイン・ビトロ(in vitro)でのSARS-CoV-2中和を高めることを可能にする(20,78)。これに関連して、本発明者等は、BA.1及びBA.2に対するCv2.1169の中和活性の喪失が、その二量体IgA形態で産生された抗体の結合活性効果によって大きく救われることを見出した。
SARS-CoV-2変異体のスパイクにおける幾つかのエスケープ変異(escape mutation)により、抗体中和に対する抵抗性を生じ、ワクチン及び治療用抗体の有効性を損なった。驚くべきことに、Cv2.1169及びCv2.3194は幅広い活性を実証し、VOC α、β、γ、δ及びδ+だけでなく、BA.1及びBA.2も中和し、及び臨床において使用されるベンチマーク付けされた抗体と比較したときに、最も強力な交差中和剤としてランク付けされた。その中和活性に加えて、Cv2.1169 IgG抗体の強力なADCPポテンシャル(ADCP potential)は、無細胞と細胞に関連付けられたビリオンを排除し、及びワクチン効果を介して適応免疫を刺激することに貢献することができる。COVID-19と闘う抗体療法によってもたらされる医療上の利点を考慮し、Cv2.1169及びCv2.3194の優れた抗ウイルス属性を考慮すると、それらは、COVID-19に対する前予防的及び/又は治療的戦略の為の有望な候補を表す。これらの幅広いSARS-CoV-2中和化抗体の半減期を延長した長時間作用型は、免疫不全集団(immunocompromised populations)に防御免疫を提供する為に使用されることができる。
参考文献
SARS-CoV-2による壊滅的なコロナウイルス疾病2019(COVID-19)のパンデミックは、世界中で4,700万人以上の確定された症例と120万人以上のヒトの死亡を引き起こし、そして、ヒトにおけるCOVID-19の重症例のほとんどは、神経症状、例えば無嗅覚症及び加齢症、並びに制御不能な炎症性免疫応答を伴っている2-5。治療選択肢の中で6-8、抗SARS-CoV-2活性の可能性を考慮して、抗寄生虫薬イベルメクチン(ivermectin)(IVM)の使用が提案されている9。イベルメクチンは、α-7ニコチン性アセチルコリン受容体の陽性のアロステリックモジュレーター(positive allosteric modulator)であり10、それは、Covid-19感染の制御についてのターゲットであることが示唆され11、潜在的な免疫調節活性を備えている12。我々は、SARS-CoV-2を鼻腔内接種したゴールデンシリアンハムスターにおけるIVMの効果を評価した。イベルメクチンはウイルス量に対して効果がなかったにもかかわらず、SARS-Cov-2に関連付けられた病理学的症状が大幅に軽減された。IVMは性別に依存し、且つ区分化された免疫調節効果があり、感染した動物における臨床症状の悪化を防ぎ且つ嗅覚障害を軽減した。重要なことに、イベルメクチンは肺組織におけるIl-6/Il-10比を劇的に減少させ、それが、処置された動物における臨床症状がより好ましいことをおそらく説明していると考えられる。我々のデータは、IVMが有望な抗COVID-19薬であることを裏付けている。

Claims (85)

  1. 重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に対して向けられた単離された抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントであって、
    配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3の3つの全てを含むところの重鎖可変ドメイン、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3の配列における1以下のアミノ酸変異を含むところのそれらの変異体;並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28軽鎖CDR3の3つの全てを含むところの軽鎖可変ドメイン、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3の配列における1以下のアミノ酸変異を含むところのそれらの変異体;或いは、
    配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3の3つの全てを含むところの重鎖可変ドメイン;並びに、配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3の3つの全てを含むところの軽鎖可変ドメイン
    を含むことを特徴とする前記抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  2. 重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するヒト中和モノクローナル抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントであって、それは、ウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合し、及び
    (i)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.1169;及び、下記の参照抗体、すなわち、
    (i)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む参照ヒト抗体Cv2.3194
    のうちの少なくとも1つのRBDへの結合の競合的阻害剤であり、
    ここで、前記ヒト中和化抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメントは、
    a)配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号2の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン;又は、
    b)配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに、配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変ドメイン
    を含む、
    前記ヒト中和モノクローナル抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  3. 前記参照ヒト抗体Cv2.1169が、(i)配列番号133のアミノ酸配列を含む重鎖と(ii)配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む;又は、
    前記参照ヒト抗体Cv2.3194が、(i)配列番号135のアミノ酸配列を含む重鎖と(ii)配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、
    請求項2に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  4. 配列番号23の重鎖CDR1、配列番号24の重鎖CDR2及び配列番号25の重鎖CDR3を含み、並びに、ここで、軽鎖可変ドメインは、配列番号26の軽鎖CDR1、配列番号27の軽鎖CDR2及び配列番号28の軽鎖CDR3を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  5. 配列番号35の重鎖CDR1、配列番号36の重鎖CDR2及び配列番号37の重鎖CDR3を含み、並びに、ここで、軽鎖可変ドメインは、配列番号38の軽鎖CDR1、配列番号39の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  6. a)配列番号3と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号4と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は、
    b)配列番号7と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号8と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
    を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  7. 配列番号3の重鎖可変ドメイン及び配列番号4の軽鎖可変領域を含み、又は配列番号7の重鎖可変ドメイン及び配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  8. a)配列番号3からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号4からなる軽鎖可変ドメイン、又は、
    b)配列番号7からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号8からなる軽鎖可変ドメイン
    を含まない、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  9. 下記のV(D)J組み換え事象:
    (i)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ3*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV1-58*01、及びJ-遺伝子対立遺伝子IGKJ1*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-20*01;又は、
    (ii)J-遺伝子対立遺伝子IGHJ6*02を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGHV3-53*01、及びJ-遺伝子対立遺伝子IGKJ4*01を伴うV-遺伝子対立遺伝子IGKV3-20*01
    のうちの少なくとも1つの産物である可変領域を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  10. a)配列番号13若しくは133のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有する配列を含む重鎖、及び、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有する配列を含む軽鎖;又は、
    b)配列番号17若しくは135のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有する配列を含む重鎖、及び、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有する配列を含む軽鎖
    を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  11. 配列番号13若しくは133の重鎖アミノ酸配列と配列番号14の軽鎖アミノ酸配列とを含み;又は、配列番号17若しくは135の重鎖アミノ酸配列と軽鎖配列番号18のアミノ酸配列とを含む、
    請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  12. 前記重鎖可変ドメインが、IgG又はIgA定常領域と会合しており;好ましくは、IgA定常領域と会合している前記抗体は、J鎖及び/又は分泌成分を更に含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  13. 前記定常領域が、抗体のエフェクター機能を抑制し及び/又はイン・ビボで抗体の半減期を増加させるところの1以上の変異及び/又は改変を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  14. IgG1定常領域と会合している、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  15. 組み換えヒトモノクローナル抗体、好ましくは、IgG1又はIgAアイソタイプの組み換えヒトモノクローナル抗体、である、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  16. 前記IgAが、高分子IgA又は分泌型IgAである、請求項15に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  17. 10nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下及び300pM以下から選択されるKDを有する、配列番号106の組み換えSARS-CoV-2 S-三量体に結合する、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  18. 25nM以下、10nM以下、5nM以下及び1nM以下から選択されるKDを有する、配列番号107の組み換えSARS-CoV-2 S1タンパク質に結合する、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  19. 25nM以下、10nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下及び100pM以下から選択されるKDを有する、配列番号108~111及び122~125のいずれか1つの組み換えSARS-CoV-2 RBDタンパク質に結合する、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  20. 配列番号103の組み換えアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)エクトドメインタンパク質の結合親和性よりも高い結合親和性、好ましくは、少なくとも5、10、25、50、100、250、500又は1000倍高い結合親和性、を有する、配列番号106のトリ-S1タンパク質、配列番号107のS1タンパク質、及び配列番号108~111及び122~125のRBDタンパク質から選択される少なくとも1つの組み換えSARS-CoV-2 Sタンパク質に結合し、好ましくは、ここで、前記RBDタンパク質についての前記抗体の前記結合親和性が、ACE2エクトドメインタンパク質の結合親和性よりも少なくとも10、25、50、100、250、500又は1000倍高い、請求項1~19のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  21. 配列番号106の組み換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質を、1μg/mL以下、0.5μg/mL以下、0.4μg/mL以下、0.3μg/mL以下、0.2μg/mL以下及び0.1μg/mL以下から選択されるEC50を有する、配列番号103の組み換えACE2エクトドメインタンパク質に結合させることを競合的に阻害する、請求項1~20のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  22. 配列番号106の組み換えSARS-CoV-2スパイク及び/又は配列番号108~111及び122~125及び184のRBDタンパク質の、組み換えACE2エクトドメインタンパク質への結合を少なくとも70%、80%又は90%ブロックする、請求項1~21のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  23. 前記組み換えSARS-CoV-2 S-三量体、S1及び/又はRBDタンパク質が、単離株である、Wuhan-Hu-1、B.1.1.7系統、P.1系統又はB.1.351系統又はB.1.617系統又はB.1.1.529系統からのものであり、特には、単離株である、Wuhan-Hu-1、B.1.1.7系統、P.1系統又はB.1.351系統又はBA.2系統からのものである、請求項1~22のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  24. 20ng/mL以下、15ng/mL以下、10ng/mL以下、5ng/mL以下及び1ng/mL以下から選択される半数最大有効濃度(EC50)でSARS-CoV-2を中和する、請求項1~23のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  25. 単離株であるWuhan-Hu-1、SARS-CoV-2変異体D614G、及びRBDドメイン中に1以上の変異を含むSARS-CoV-2変異体から選択される少なくとも1つのSARS-CoV-2を中和し;好ましくは、前記RBDドメインにおける前記変異が、K417N、K417T、N440K、L452R、G446S、S477N、T478K、E484A、E484K、E484Q、Q493R、G496S、Q498R及びN501Y置換のうちの1以上から選択され、より好ましくは、N501Y、E484K、K417N及びK417T置換のうちの1以上から選択される、請求項1~24のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  26. 系統B.1.1.7、P.1及びB.1.351及びB.1.617及びB.1.1.529及びBA.2から選択される、特には、系統B.1.1.7、P.1及びB.1.351及びB.1.617.2及びB.1.617.2.1、B.1.617.1.3及びBA.2から選択される、少なくとも1つのSARS-CoV-2変異体を中和する、請求項1~25のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  27. SARS-CoV-1、MERS-CoV、NL63-CoV、OC43-CoV、HKU1-CoV及び229E-CoVから選択される少なくとも1つのヒトコロナウイルスと交差反応しない、好ましくは、前記ヒトコロナウイルスの全てと交差反応しない、請求項1~26のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  28. 陽性対照抗体と比較して、抗体依存性細胞障害(ADCC)活性の調節されたレベルを有する;例えば、陽性対照抗体と比較してADCCの低いレベルを有する;より特には、ここで、前記抗体が、陽性対照抗体と比較して正常な又は低下したADCC活性を有する;特には、ここで、前記抗体が、陽性対照抗体と比較してCD16(FcγRI)受容体に対する正常な又は低下した親和性を有する、請求項1~27のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  29. 陽性対照抗体と比較して、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)活性の調節されたレベルを有する;より特には、ここで、前記抗体は、陽性対照抗体と比較して正常な又は改善されたADCP活性を有する;特には、ここで、前記抗体が、陽性対照抗体と比較してCD32A(FcγRIIA)受容体に対する正常な又は改善された親和性を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  30. ヒトタンパク質に対する予測された反応性を有さず、対照抗体と比較して自己反応性がなく、及び/又は対照抗体と比較して多反応性がない、請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  31. 真核生物組み換え系において産生される、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  32. 原核生物組み換え系において産生される、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  33. 組み換え的に産生され、且つ非ネイティブヒトグリコシル化パターン及び/又は非ヒトグリコシル化パターンを含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  34. 検出可能な標識を更に含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体、又はそれらの抗原結合性フラグメント。
  35. 請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸であって、好ましくは、前記抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントの重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸配列を少なくとも含む前記単離された核酸。
  36. mRNA、好ましくは改変されたmRNA、である、請求項35に記載の単離された核酸。
  37. DNAである、請求項35又は36に記載の単離された核酸。
  38. 宿主細胞において、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントの組み換え生産の為の発現ベクターであって、請求項35~37のいずれか1項に記載の前記抗体をコードする少なくとも1つの核酸を含む、前記発現ベクター。
  39. 配列番号93と少なくとも90%の同一性を有する配列と配列番号94と少なくとも90%の同一性を有する配列;並びに、配列番号97と少なくとも90%の同一性を有する配列と配列番号98と少なくとも90%の同一性を有する配列、から選択される核酸配列の一対を含む、請求項38に記載の発現ベクター。
  40. ブダペスト条約に基づき、2021年1月28日に、Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5651及びI-5652で夫々寄託されたCv2.1169_pIgH及びCv2.1169_pIgLから選択される細菌株中に含まれている、請求項38に記載の発現ベクター。
  41. ブダペスト条約に基づき、2021年4月2日に、Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,75724 パリ、フランス国にあるフランス国立微生物保存センター(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)(CNCM)に、寄託番号I-5670及びI-5671で夫々寄託されたCv2.3194_IgH及びCv2.3194_IgLから選択される細菌株中に含まれている、請求項38に記載の発現ベクター。
  42. 請求項38~41のいずれか1項に記載の発現ベクター又は請求項35~37のいずれか1項に記載の核酸を含む宿主細胞。
  43. 前記発現ベクターで安定的に形質転換された抗体産生細胞株である、請求項42に記載の宿主細胞。
  44. 真核細胞である、好ましくは、酵母、昆虫及び哺乳動物細胞から選択される、請求項42又は43に記載の宿主細胞。
  45. 請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントの製造の方法であって、(i)前記宿主細胞によって、前記抗体又は抗原結合性フラグメントの発現の為に、請求項42~44のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養すること、及び任意的に、(ii)前記抗体又は抗原結合性フラグメントを回収すること;及び、(iii)前記抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントを精製することを含む、前記方法。
  46. 医薬組成物であって、該医薬組成物は、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、並びに、医薬的に許容可能な担体、アジュバント及び保存剤のうちの少なくとも1つを含む、医薬組成物。
  47. 前記核酸が、mRNAであり、特には、改変されたmRNAであり、好ましくは、小胞又は粒子、特には脂質ナノ粒子(LNP)、に製剤化されている、請求項46に記載の医薬組成物。
  48. 非経口注射、注入、局所送達、吸入又は持続送達の為のものである、請求項46又は47に記載の医薬組成物。
  49. 医薬として使用する為の、特には、SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病の発生を予防する為に及び/又はその可能性を低減する及び又はその処置をする為の、方法において使用する為の、請求項46~48のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  50. 医薬として使用する為の、特には、SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病の発生を予防する及び/又はその可能性を低減する及び又はその処置をする為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  51. SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病を予防する及び/又はその発生の可能性を低減する及び又はその処置をする為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  52. ヒト哺乳動物の為の医薬として使用する為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  53. 非ヒト哺乳動物の為の医薬として使用する為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  54. コロナウイルス科感染、特にはSARS-CoV-2感染、に対するワクチンと組み合わせて医薬として使用する為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  55. 重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を特異的に中和するところの第2の抗体と組み合わせて医薬として使用する為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物、ここで、前記第2の抗体は、前記第1の抗体とのRBDへの結合の競合的阻害剤でない。
  56. 重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合するところの第2の抗体と組み合わせて医薬として使用する為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物、ここで、前記第2の抗体は、前記第1の抗体とのRBDへの結合の競合的阻害剤でない。
  57. 重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に特異的に結合するところの第2の抗体と組み合わせて医薬として使用する為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物、ここで、前記第2の抗体が、クラス2又はクラス3の抗SARS-CoV2スパイクタンパク質抗体である。
  58. 下記の参照抗体、すなわち、アジントレビマブ、シルガビマブ、イムデビマブ及びソトロビマブ、のうちの少なくとも1つのグループから選択される第2の抗体と組み合わせて医薬として使用する為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  59. 医薬組成物であって、
    (i)請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物;
    (ii)下記の参照抗体、すなわち、アジントレビマブ、シルガビマブ、イムデビマブ及びソトロビマブのうちの少なくとも1つのグループから選択される抗体
    を含む、前記医薬組成物。
  60. SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病の予防又は処置用の医薬の製造の為の、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、又は請求項46~49及び59のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用方法。
  61. 請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項41~48のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び59のいずれか1項に記載の医薬組成物、を含むキット。
  62. 下記の参照抗体、すなわち、アジントレビマブ、シルガビマブ、イムデビマブ及びソトロビマブ、のうちの少なくとも1つのグループから選択される抗体を更に含む、請求項61に記載のキット。
  63. 前記抗体が、検出可能な標識を含む、請求項61又は62に記載のキット。
  64. コロナウイルス科感染に対するワクチン、特には、SARS-CoV-2感染のワクチン、を更に含む、請求項61~63のいずれか1項に記載のキット。
  65. サンプルにおいてSARS-CoV-2を検出する方法であって、
    前記サンプルを、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体又はそれらの抗原結合性フラグメントと接触させること;及び、形成された抗原抗体複合体を検出し、それによって、前記サンプル中のSARS-CoV-2の存在、非存在又はレベルを検出すること
    を含む、前記方法。
  66. 前記サンプルが、生物学的サンプル又は環境サンプルである、請求項65に記載の方法。
  67. 前記サンプルが、ヒト又は非ヒト哺乳動物からのものである、請求項65又は66に記載の方法。
  68. 前記サンプルが、SARS-CoV-2に汚染されていると疑われる対象からの生物学的サンプルであり、及び前記方法が、SARS-CoV-2感染及び関連付けられたCOVID-19疾病の診断の為のものである、請求項65~67のいずれか1項に記載の方法。
  69. 前記サンプルが、COVID-19疾病の処置の前又は処置の間のCOVID-19患者からの生物学的サンプルであり、及び前記方法は、COVID-19疾病の処置のモニタリングの為のものである、請求項65~67のいずれか1項に記載の方法。
  70. 対象において、SARS-CoV-2に関連付けられた疾病を発症するリスクを低減する方法であって、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49のいずれか1項に記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  71. 入院のリスクが低減される、請求項70に記載の方法。
  72. 死のリスクが低減される、請求項70に記載の方法。
  73. コロナウイルス科感染、特にはSARS-CoV-2感染、を予防する及び/又はその発生の可能性を低減する方法において使用する為の、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41及び54~58のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び54~59のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  74. コロナウイルス科感染の合併症、特には、コロナウイルス科感染の呼吸器系、神経系、胃腸系又は心臓血管系の合併症、特にはSARS-CoV-2感染の合併症、を予防する及び/又はその発生の可能性を低減する方法において使用する為の、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41及び54~58のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び54~59のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  75. コロナウイルス科感染、特にはSARS-CoV-2感染、の重篤な急性呼吸器系合併症を予防する及び/又はその発生の可能性を低減する方法において使用する為の、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41及び54~58のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び54~59のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  76. 個体における、コロナウイルス科感染を予防する及び/又はその発生の可能性を低減する方法における使用の為の、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41及び54~58のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び54~59のいずれか1項に記載の医薬組成物、ここで、前記個体が、下記であることを特徴とする:
    前記個体が、前記コロナウイルス科感染に対するワクチンを投与されていない;又は、
    前記個体が、前記ワクチンに応答しない;又は、
    前記コロナウイルス科感染に向けられた抗体の個体のレベルが、保護する閾値レベル以下である。
  77. コロナウイルス科ウイルス、特にはSARS-CoV-2感染、に対する免疫応答を改善する方法において使用する為の、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41及び54~58のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び54~59のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  78. コロナウイルス科ウイルスのウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)又はそのフラグメントに対する免疫応答を改善する方法において使用する為の、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41及び54~58のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び54~59のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  79. 対象においてSARS-CoV-2に関連付けられた疾病を処置する方法であって、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41及び54~58のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び54~59のいずれか1項に記載の医薬組成物の有効量を、対象に投与することを含む、前記方法。
  80. 重篤な疾病を発症するリスクが、前記処置によって低減される、請求項79に記載の方法。
  81. 入院のリスクが、前記処置によって低減される、請求項79に記載の方法。
  82. 前記対象が入院している、請求項79に記載の方法。
  83. 対象において、SARS-CoV-2に関連付けられた疾病を処置する方法であって、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメントの有効量を、アジントレビマブ、シルガビマブ、ソトロビマブ及びイムデビマブから選択される抗体と組み合わせて投与することを含む、前記方法。
  84. 前記対象が、SARS-CoV-2に関連付けられた疾病を発症するリスクがあり、より特には、基礎疾患、例えば、肥満、糖尿病、癌、免疫抑制療法中、原発性免疫不全又はワクチンに対する無反応性、を併発している対象である、請求項79~83のいずれか1項に記載の方法。
  85. 医療用デバイスであって、該医療用デバイスが、請求項1~34及び54~58のいずれか1項に記載の抗体若しくはそれらの抗原結合性フラグメント、請求項35~41及び54~58のいずれか1項に記載の核酸若しくはベクター、又は請求項46~49及び54~59のいずれか1項に記載の医薬組成物を含み、好ましくは、注射又は吸入による投与の為に適した形態である、前記医療用デバイス。
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