JP2024515301A - 多重特異性及び一価のigg分子の会合における鎖対形成の静電ステアリングにおけるバランスのとれた電荷分布 - Google Patents

多重特異性及び一価のigg分子の会合における鎖対形成の静電ステアリングにおけるバランスのとれた電荷分布 Download PDF

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ワン,ジュウルン
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Abstract

二重特異性抗体及び三重特異性抗体のような多重特異性抗体の臨床的可能性は、複合疾患を標的とするのに大いに有望である。しかしながら、それらの分子の作製は、特に、誤対合ポリペプチドを含まない許容される発現レベルを達成することに関して大きな課題を提示する。本明細書で特許請求される発明は、ヘテロ多量体のCH3領域内に設計された電荷を再分布することによって既存の電荷対技術を改良する多重特異性抗原結合タンパク質に関する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月20日に出願され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/177,325号の利益を主張する。
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を包含し、その配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年4月15日に作成された前記ASCIIのコピーは、名称がA-2745-WO01-SEC_SEQUENCE_LISTING_041522_ST25.txtであり、サイズは12キロバイトである。
本発明は、バイオ医薬品の技術分野に関する。特に、本発明は、免疫グロブリンCH3ドメインにおいて変異を挿入することによって作製されるヘテロ多量体に関する。多重特異性抗原結合タンパク質は、ヘテロ多量体のCH3領域内に設計された電荷を再分布することによって既存の電荷対技術を改良する。
同じ又は異なる標的における2つの異なるエピトープを認識するように設計されるとき、二重特異性抗体は、新世代の大分子治療薬となる。二重特異性抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)において見られるT細胞及び腫瘍細胞の同時の結合などの新規の治療的機能性を付与する方法として注目を集めている。しかしながら、これらの治療薬は、従来のモノクローナル抗体(mAb)より複雑であり、開発の全ての段階においてさらなる課題を提示している。
免疫グロブリンG(IgG)は、二重特異性抗体を開発するための最も一般的な足場の1つとして使用される。IgG分子は、2つの同一の重鎖(HC)で構成され、それぞれ対称の「Y」形状において合わせてフォールドする同一の軽鎖(LC)のコピーと対形成する。野生型(WT)IgG内でのHC/HC相互作用は、ジスルフィド結合を介して可動性のヒンジ領域、N結合型グリカンを介してCH2/CH2’界面、及び直接的なタンパク質相互作用を介してCH3/CH3界面において発生する。しかしながら、二重特異性抗体を開発するとき、単一の細胞における2つの同一ではないHCの発現は、多くの場合、2つの対応するホモ二量体の生成をもたらし得る。そのような不純物は、安全性及び有効性に関連する製品品質に影響を及ぼすだけでなく、商品の生産性の歩留まり及びコストにも影響を及ぼすことになる。したがって、ヘテロ-Fc含有二重特異性抗体の会合に必要となる2つの異なるHCの対形成を促進するために、特異的なヘテロ-二量体形成界面が設計されなければならない。結果として、いくつかの工学的アプローチが、正確な鎖対形成の割合を増加させるために開発されており、限定されないが、「ノブ・イントゥ・ホール」技術、鎖交換操作ドメインボディ技術、及び静電ステアリングが挙げられる。しかしながら、それらの技術は、二重特異性抗体の収量がモノクローナル抗体(mAb)のものと同等になる場合、さらなる改良を必要とする。
電荷対変異(CPM)の組み込みによって可能になった静電ステアリング現象は、好ましい技術の1つであり、多くの二重特異性抗体が現在臨床開発中である。一方の鎖に負電荷及び他方に正電荷を導入することによって、誘引性の静電力がヘテロ二量体化を促進する一方で、斥力がホモ二量体形成を妨げる。しかしながら、そのようなアプローチは、最適以下の分子をもたらす可能性があり、さらなる設計技術と組み合わせる必要がある場合がある。
本発明は、ヘテロ多量体のCH3領域内に設計された電荷を再分布することによって既存の電荷対技術を改良する。
一態様では、本発明は、第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチド及び第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドを含むヘテロ二量体免疫グロブリンCH3ドメインを含み、
(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドが、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439D/Eを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドが、以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う単離されたヘテロ多量体に関する。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D/E、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、ヘテロ多量体は、第1の免疫グロブリンFcポリペプチド及び第2の免疫グロブリンFcポリペプチドを含むヘテロ二量体Fc領域を含み、第1の免疫グロブリンFcポリペプチドは、第1のCH3ドメインポリペプチドを含み、第2のFcポリペプチドは、第2のCH3ドメインポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態では、ヘテロ多量体は、第1のヒンジドメインポリペプチド及び第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド;並びに第2のヒンジドメインポリペプチド及び第2のFcポリペプチドを含む第2のポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態では、ヘテロ多量体は、第1の重鎖ポリペプチド及び第1の軽鎖ポリペプチド;並びに第2の重鎖ポリペプチド及び第2の軽鎖ポリペプチドを含む二重特異性抗体コンストラクトであり、
第1の重鎖ポリペプチドは、第1のVHドメイン、第1のCH1ドメインポリペプチド、第1のヒンジドメインポリペプチド、及び第1のFcポリペプチドを含み;且つ第2の重鎖ポリペプチドは、第2のVHドメイン、第2のCH1ドメインポリペプチド、第2のヒンジドメインポリペプチド、及び第2のFcポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態では、第1及び第2の抗体軽鎖は、同一である。
ある特定の実施形態では、i)第1の重鎖ポリペプチドは、183位でリジンを含み;
ii)第1の軽鎖ポリペプチドは、176位でグルタミン酸を含み;
iii)第2の重鎖ポリペプチドは、183位でグルタミン酸を含み;且つ
iv)第2の軽鎖ポリペプチドは、176位でリジンを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、i)第1の重鎖ポリペプチドは、183位でグルタミン酸を含み;
ii)第1の軽鎖ポリペプチドは、176位でリジンを含み;
iii)第2の重鎖ポリペプチドは、183位でリジンを含み;且つ
iv)第2の軽鎖ポリペプチドは、176位でグルタミン酸を含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、第1及び第2のCH3ドメインポリペプチドは、IgG1-、IgG2-、IgG3-又はIgG4-免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドに由来するか又はその変異バージョンである。
ある特定の実施形態では、第1及び第2のCH3ドメインポリペプチドは、IgG1-又はIgG2-免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドに由来するか又はその変異バージョンである。
一態様では、本発明は、多重特異性抗原結合タンパク質を作製する方法であって、抗原結合タンパク質が、異なるエピトープに結合する少なくとも2つの結合ドメインを含み、哺乳動物宿主細胞において:
(i)以下のアミノ酸置換:D399K及びK439D/Eを含む第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
(ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びE356Kを含む第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドを発現させることを含み;
アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従い、
第1の結合ドメインが、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、第2の結合ドメインが、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、且つ
結合ドメインが、VH、scFab、及びscFvからなる群から選択される方法に関する。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含み;且つ
第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、第2の結合ドメインは、scFab及びscFvからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含み;且つ
第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、第1の結合ドメインは、scFab及びscFvからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabであり、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabである。
ある特定の実施形態では、結合ドメインは、それらの対応するCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、CH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの一方、又は両方のいずれかのC末端に融合された第3の結合ドメインを含み、第3の結合ドメインは、受容体リガンド VH、scFab、又はscFvである。
一態様では、本発明は、多重特異性抗原結合タンパク質を作製する方法であって、抗原結合タンパク質が、異なるエピトープに結合する少なくとも2つの結合ドメインを含み、哺乳動物宿主細胞において:
(i)以下のアミノ酸置換:D399K及びK439D/Eを含む第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
(ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びE356Kを含む第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドを発現させることを含み;
アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従い、
第1の結合ドメインが、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、第2の結合ドメインが、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、且つ
結合ドメインが、VH、scFab、及びscFvからなる群から選択される方法に関する。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している第1の抗体軽鎖を含み;且つ
第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、第2の結合ドメインは、scFab及びscFvからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している第2の抗体軽鎖を含み;且つ
第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、第1の結合ドメインは、scFab及びscFvからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、第1及び第2の抗体軽鎖は、同一である。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabであり、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabである。
ある特定の実施形態では、結合ドメインは、それらの対応するCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、CH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの一方、又は両方のいずれかのC末端に融合された第3の結合ドメインを含み、第3の結合ドメインは、受容体リガンド VH、scFab、又はscFvである。
ある特定の実施形態では、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド及び第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現は、第1の哺乳動物宿主細胞において実施され、発現は、第1の哺乳動物宿主細胞と同じ型の第2の哺乳動物宿主細胞における
(i)以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含む第3のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
(ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びK439D/Eを含む第4のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現と比較してSECによって測定されるとおりの1/2抗体種不純物のより低いパーセンテージをもたらす。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D/E、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第3の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含み;且つ
(ii)第4の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びK439Dを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド及び第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現は、第1の哺乳動物宿主細胞において実施され、発現は、第1の哺乳動物宿主細胞と同じ型の第2の哺乳動物宿主細胞における
(i)以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含む第3のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
(ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びK439D/Eを含む第4のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現と比較してプロテインA精製後にmg/mlによって測定されるとおり多重特異性抗原結合タンパク質のより高い収量をもたらす。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D/E、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第3の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含み;且つ
(ii)第4の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びK439Dを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ヘテロ-IgG分子におけるCPMv103の合理的な配置を示す。
本明細書で使用する場合、用語「抗原結合タンパク質」は、1種以上の標的抗原に特異的に結合するタンパク質を指す。抗原結合タンパク質は、抗体及びその機能的断片を含み得る。「機能的抗体断片」とは、完全長の重鎖及び/又は軽鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠くが、それでもなお抗原に特異的に結合することができる抗体の一部である。機能的抗体断片としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、Fd断片、及び相補性決定領域(CDR)断片が挙げられるが、これらに限定されず、また、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、又はラクダ科の動物などの任意の哺乳動物源に由来するものとすることができる。機能的抗体断片は、標的抗原の結合について、インタクトな抗体と競合する場合があり、断片は、インタクトな抗体の修飾(例えば、酵素的又は化学的切断)によって生成され得るか、又は組換えDNA技術又はペプチド合成を使用して新規に合成され得る。
また、抗原結合タンパク質には、単一のポリペプチド鎖又は複数のポリペプチド鎖に組み込まれた1つ以上の機能的抗体断片を含むタンパク質を含めることもできる。例えば、抗原結合タンパク質として、下記が挙げられ得るが、これらに限定されない:一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ(例えば、欧州特許第404,097号明細書、国際公開第93/11161号パンフレット;及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.90:6444-6448,1993参照);イントラボディ;ドメイン抗体(単一のVL若しくはVHドメイン、又はペプチドリンカーによって連結された2つ以上のVHドメイン;Ward et al.,Nature,Vol.341:544-546,1989参照);マキシボディ(Fc領域に融合した2つのscFv、Fredericks et al.,Protein Engineering,Design&Selection,Vol.17:95-106,2004及びPowers et al.,Journal of Immunological Methods,Vol.251:123-135,2001参照);トリアボディ;テトラボディ;ミニボディ(CH3ドメインに融合したscFv;Olafsen et al.,Protein Eng Des Sel.,Vol.17:315-23,2004を参照);ペプチボディ(Fc領域に結合した1つ以上のペプチド、国際公開第00/24782号パンフレットを参照);線状抗体(相補的軽鎖ポリペプチドとともに一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)、Zapata et al.,Protein Eng.,Vol.8:1057-1062,1995を参照);小モジュラー免疫薬(米国特許出願公開第20030133939号明細書を参照);及び免疫グロブリン融合タンパク質(例えば、IgG-scFv、IgG-Fab、2scFv-IgG、4scFv-IgG、VH-IgG、IgG-VH、及びFab-scFv-Fc)。
「多重特異性」は、抗原結合タンパク質が、2種以上の異なる抗原に特異的に結合することができることを意味する。「二重特異性」は、抗原結合タンパク質が、2種の異なる抗原に特異的に結合することができることを意味する。本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質は、類似の結合アッセイ条件下で、他の無関係なタンパク質に対するその親和性と比較して、標的抗原に対して有意に高い結合親和性を有し、その結果、その抗原を識別することができる場合に、標的抗原に「特異的に結合する」。抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、平衡解離定数(K)が≦1×10-6Mであり得る。抗原結合タンパク質は、Kが≦1×10-8Mである場合に、「高い親和性」で抗原に特異的に結合する。
親和性は、種々の技術を用いて判定され、その一例として、親和性ELISAアッセイがある。様々な実施形態では、親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore(登録商標)に基づくアッセイ)によって決定される。この方法論を用いて、結合速度定数(k単位:M-1-1)及び解離速度定数(k単位:s-1)を測定することができる。次に、動力学速度定数の比(k/k)から、平衡解離定数(K、M)を算出することができる。いくつかの実施形態では、親和性は、Rathanaswami et al.Analytical Biochemistry,Vol.373:52-60,2008に記載されているような結合平衡除外法(KinExA)などの速度論的方法によって決定される。KinExAアッセイを用いて、平衡解離定数(K、M)及び結合速度定数(k、M-1-1)を測定することができる。これらの値から、解離速度定数(k、s-1)を算出することができる(K×k)。他の実施形態では、親和性は、平衡/溶液法によって決定される。ある特定の実施形態では、親和性は、FACS結合アッセイによって決定される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質は、k(解離速度定数)によって測定される結合親和力が、約10-2、10-3、10-4、10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10-1以下(値が低いほど結合親和力が高いことを示す)、及び/又はK(平衡解離定数)によって測定される結合親和性が、約10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、10-14、10-15、10-16M以下(値が低いほど結合親和性が高いことを示す)などの望ましい特性を示す。
本明細書で使用する場合、「結合ドメイン」と互換的に使用される「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原と相互作用し、その抗原に対する特異性及び親和性を抗原結合タンパク質に付与するアミノ酸残基を含有する抗原結合タンパク質の領域を指す。
本明細書で使用する場合、「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域(「最小認識単位」又は「超可変領域」とも呼ばれる)を指す。3つの重鎖可変領域CDR(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)及び3つの軽鎖可変領域CDR(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)が存在する。「CDR領域」という用語は、本明細書で使用する場合、単一の可変領域に存在する3つのCDR(すなわち、3つの軽鎖CDR又は3つの重鎖CDR)の群を指す。2つの鎖の各々におけるCDRは、通常、フレームワーク領域によって整列させられ、標的タンパク質の特異的エピトープ又はドメインと特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端まで、天然に存在する軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は両方とも、通常、以下のこれらの要素の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4と一致する。これらのドメインの各々において位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための付番方式が考案されている。この付番方式は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987 and 1991,NIH,Bethesda,MD)又はChothia&Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:878-883において定義されている。所与の抗体の相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)が、この方式を用いて特定され得る。
本発明の二重特異性抗原結合タンパク質のいくつかの実施形態では、結合ドメインは、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単鎖可変断片(scFv)、又はナノボディを含む。一実施形態では、両方の結合ドメインがFab断片である。別の実施形態では、1つの結合ドメインはFab断片であり、他方の結合ドメインはscFvである。
抗体をパパインで消化すると、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片(各々が単一の抗原結合部位を有する)及び残部の「Fc」断片(免疫グロブリン定常領域を含有する)が生成される。Fab断片は、可変ドメイン、並びに軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)の全てを含有する。したがって、「Fab断片」は、1つの免疫グロブリン軽鎖(軽鎖可変領域(VL)及び定常領域(CL))並びに1つの免疫グロブリン重鎖のCH1領域及び可変領域(VH)から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。Fc断片は炭水化物を示し、抗体の1つのクラスを別のクラスから識別する多くの抗体エフェクター機能(結合補体及び細胞受容体など)に関与する。「Fd断片」は、免疫グロブリン重鎖に由来するVHドメイン及びCH1ドメインを含む。Fd断片は、Fab断片の重鎖成分を表す。
「Fab’断片」は、CH1ドメインのC末端にて、抗体ヒンジ領域に由来する1つ以上のシステイン残基を有するFab断片である。
「F(ab’)断片」は、ヒンジ領域にて重鎖間のジスルフィド架橋によって連結されている2つのFab’断片を含む二価の断片である。
「Fv」断片は、抗体由来の完全抗原認識及び結合部位を含有する最小の断片である。この断片は、緊密な非共有結合状態にある、1つの免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び1つの免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)の二量体からなる。この構成において、各可変領域の3つのCDRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を規定する。単一の軽鎖又は重鎖の可変領域(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFv断片の半分)は、抗原を認識し、結合する能力を有するが、VH及びVLの両方を含む結合部位全体よりも親和性は低い。
「一本鎖可変抗体断片」又は「scFv断片」は、抗体のVH領域及びVL領域を含み、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖に存在し、任意選択により、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするペプチドリンカーを、VH領域とVL領域の間に含む(例えば、Bird et al.,Science,Vol.242:423-426,1988;及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.85:5879-5883,1988を参照されたい)。
「ナノボディ」は、重鎖抗体の重鎖可変領域である。そのような可変ドメインは、そのような重鎖抗体の完全に機能的な最小の抗原結合断片であり、分子質量は、わずか15kDaである。Cortez-Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853-57,2004を参照されたい。軽鎖を欠く機能的重鎖抗体は、特定の種の動物、例えばコモリザメ、テンジクザメ並びにラクダ科(Camelidae)、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びラマでは天然に生じる。これらの動物において、抗原結合部位は、単一ドメインであるVHHドメインになる。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成する、すなわち、これらの機能的な抗体は、構造Hを有するだけの重鎖のホモ二量体(「重鎖抗体」又は「HCAb」とも称される)である。ラクダ化VHHは、報告によれば、ヒンジドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含有し、CH1ドメインを欠くIgG2定常領域及びIgG3定常領域と再結合する。ラクダ化VHHドメインは、抗原に高親和性で結合し(Desmyter et al.,J.Biol.Chem.,Vol.276:26285-90,2001)、溶液で高い安定性を有する(Ewert et al.,Biochemistry,Vol.41:3628-36,2002)ことが判明している。ラクダ化重鎖を有する抗体を生成する方法は、例えば、米国特許出願公開第2005/0136049号明細書及び米国特許出願公開第2005/0037421号明細書に記載されている。別の足場は、サメV-NAR足場とより密接に適合するヒト可変様ドメインから作製することができ、長い貫通性のループ構造のフレームワークを提供し得る。
本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の特定の実施形態では、結合ドメインは、所望の抗原に特異的に結合する抗体又は抗体断片の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む。
本明細書において「可変ドメイン」(軽鎖の可変領域(VL)、重鎖の可変領域(VH))と互換的に使用される「可変領域」は、抗体の抗原への結合に直接関与する、免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖のそれぞれにおける領域を指す。上記のように、可変軽鎖領域及び可変重鎖領域は、同じ一般的構造を有しており、各領域は、4つのフレームワーク(FR)領域を含み、これらの配列は、広範に保存されており、3つのCDRによって連結されている。フレームワーク領域は、ベータ-シート構造を採用しており、CDRは、ベータ-シート構造を連結するループを形成し得る。各鎖中のCDRは、フレームワーク領域によってそれらの三次元構造中に保持され、他方の鎖のCDRとともに抗原結合部位を形成する。
標的抗原に特異的に結合する結合ドメインは、a)この抗原に対する既知の抗体に由来し得るか、或いはb)抗原タンパク質若しくはその断片を用いる新規の免疫化法によって、ファージディスプレイによって、又は他の常法によって得られる新規の抗体又は抗体断片に由来し得る。二重特異性抗原結合タンパク質の結合ドメインの起源である抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体とすることができる。ある特定の実施形態では、結合ドメインの起源である抗体は、モノクローナル抗体である。これらの及び他の実施形態では、抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であり、IgG1型、IgG2型、IgG3型、又はIgG4型のものとすることができる。
「モノクローナル抗体」(又は「mAb」)という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在し得る可能性のある天然の変異以外は同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、典型的には、様々なエピトープに対して向けられる様々な抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、個々の抗原部位又はエピトープに対して向けられるものである。モノクローナル抗体は、当該技術分野において知られる任意の技術を使用して、例えば、免疫化スケジュールの完了後にトランスジェニック動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって産生することができる。脾臓細胞は、当該技術分野において知られる任意の技術を使用して、例えば、脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを産生することによって不死化することができる。ハイブリドーマを生成する融合手順に用いられる骨髄腫細胞は、好ましくは非抗体産生性であり、融合効率が高く、且つ酵素が欠損しており、そのため、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地中で、増殖が不可能となる。マウス融合における使用に好適な細胞株の例としては、Sp-20、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7及びS194/5XXO Bulが挙げられ、ラット融合において使用される細胞株の例としては、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983F及び4B210が挙げられる。細胞融合に有用な他の細胞株は、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2及びUC729-6である。
いくつかの例では、動物(例えば、ヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)を標的抗原で免疫化し、免疫化した動物から脾臓細胞を採取し、採取した脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合し、それにより、ハイブリドーマ細胞を生成し、ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を樹立し、標的抗原に結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することによって、ハイブリドーマ細胞株が産生される。
ハイブリドーマ細胞株によって分泌されたモノクローナル抗体は、当該技術分野において知られる任意の技術、例えば、プロテインA-Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなどを使用して精製することができる。ハイブリドーマ又はmAbsをさらにスクリーニングして、例えば、標的抗原を発現している細胞に結合する能力、標的抗原リガンドが、そのそれぞれの受容体への結合をブロック若しくは妨害する能力、又は受容体のいずれかを機能的にブロックする能力など、特定の性質を有するmAbsを、例えば、cAMPアッセイを使用して同定することができる。
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の結合ドメインは、ヒト化抗体に由来してもよい。「ヒト化抗体」は、領域(例えば、フレームワーク領域)が、対応するヒト免疫グロブリン由来の領域を含むように改変された抗体を指す。一般に、ヒト化抗体は、最初に非ヒト動物において増やされたモノクローナル抗体から生成され得る。典型的には、抗体の非抗原認識部分に由来する、このモノクローナル抗体のある特定のアミノ酸残基は、対応するアイソタイプのヒト抗体における対応する残基と相同となるように改変される。ヒト化は、例えば、齧歯類可変領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に置換することにより、種々の方法を用いて行うことができる(例えば、米国特許第5,585,089号明細書及び米国特許第5,693,762号明細書、Jones et al.,Nature,Vol.321:522-525,1986;Riechmann et al.,Nature,Vol.332:323-27,1988;Verhoeyen et al.,Science,Vol.239:1534-1536,1988を参照されたい)。別の種において生成された抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のCDRは、コンセンサスヒトFRに移植することができる。コンセンサスヒトFRを作り出すために、いくつかのヒト重鎖アミノ酸配列又はヒト軽鎖アミノ酸配列に由来するFRを整列させて、コンセンサスアミノ酸配列を同定してもよい。
本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の結合ドメインの起源とすることができる標的抗原に対して生成される新規な抗体は、完全ヒト抗体であり得る。「完全ヒト抗体」は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来するか、又はそれを示す、可変領域及び定常領域を含む抗体である。完全ヒト抗体の生成を実施するために提供される具体的な一手段が、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。内因性のIg遺伝子が不活化されているマウス中にヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を導入することは、任意の所望の抗原により免疫化され得る動物であるマウスにおいて完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)を生成する一手段である。完全ヒト抗体を使用すると、マウスのmAb又はマウス由来のmAbを治療剤としてヒトに投与することによって生じることがあり得る免疫原性及びアレルギー性の応答を最小化することができる。
完全ヒト抗体は、内因性の免疫グロブリンを産生せずに、ヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(通常はマウス)を免疫化することによって生成され得る。この目的のための抗原は、通常、6つ以上の連続アミノ酸を有し、任意選択により、ハプテンなどの担体にコンジュゲートされる。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551-2555;Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255-258;及びBruggermann et al.,1993,Year in Immunol.7:33を参照されたい。そのような方法の一例において、トランスジェニック動物は、マウスの免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を無能化して、ヒト重鎖タンパク質及びヒト軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を含有するヒトゲノムDNAの大型断片をマウスゲノム中に挿入することによって生成される。次に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の完全補体より少ない補体を有する部分的に改変された動物を交雑して、所望の免疫系の改変を全て有する動物を得る。免疫原が投与されると、このトランスジェニック動物は、当該免疫原に免疫特異性があるが、可変領域を含むマウスアミノ酸配列ではなくヒトアミノ酸配列を有する抗体を産生する。このような方法のさらなる詳細は、例えば、国際公開第96/33735号パンフレット及び国際公開第94/02602号パンフレットを参照されたい。ヒト抗体を作るためのトランスジェニックマウスに関連する追加の方法は、米国特許第5,545,807号明細書、米国特許第6,713,610号明細書、米国特許第6,673,986号明細書、米国特許第6,162,963号明細書、米国特許第5,939,598号明細書、米国特許第5,545,807号明細書、米国特許第6,300,129号明細書、米国特許第6,255,458号明細書、米国特許第5,877,397号明細書、米国特許第5,874,299号明細書、及び米国特許第5,545,806号明細書、国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第90/04036号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/30498号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、並びに欧州特許第546073B1号明細書及び欧州特許出願公開第546073A1号明細書に記載されている。
本明細書中で「HuMab」マウスと称される上記のトランスジェニックマウスは、内因性のミュー及びカッパ鎖遺伝子座を不活化する標的変異とともに、再配列されていないヒト重鎖(ミュー及びガンマ)及びカッパ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含有する(Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859)。したがって、当該マウスは、マウスIgM又はカッパの発現の低下を示し、且つ免疫化に応答し、そして導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチ及び体細胞変異を経て、高親和性ヒトIgGカッパモノクローナル抗体を生成する(Lonberg et al.,前掲;Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65-93;Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536-546)。HuMabマウスの作製は、Taylor et al.,1992,Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen et al.,1993,International Immunology 5:647-656;Tuaillon et al.,1994,J.Immunol.152:2912-2920;Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859;Lonberg,1994,Handbook of Exp.Pharmacology 113:49-101;Taylor et al.,1994,International Immunology 6:579-591;Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65-93;Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536-546;Fishwild et al.,1996,Nature Biotechnology 14:845-851に詳細に説明されており、これらの文献は、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,789,650号明細書、米国特許第5,877,397号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,814,318号明細書、米国特許第5,874,299号明細書、及び米国特許第5,770,429号明細書、並びに米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22646号パンフレット、及び国際公開第92/03918号パンフレットを参照されたい(これらの全ての開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。このトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の産生を利用する技術は、国際公開第98/24893号パンフレット、及びMendez et al.,1997,Nature Genetics 15:146-156にも開示されており、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
また、ヒト由来抗体は、ファージディスプレイ技術を用いて生成され得る。ファージディスプレイは、例えば、Dower et al.,国際公開第91/17271号パンフレット、McCafferty et al.,国際公開第92/01047号パンフレット、及びCaton and Koprowski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6450-6454(1990)において説明されており、これらの各文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ファージ技術によって生成される抗体は、通常、細菌において、抗原結合断片、例えばFv又はFab断片として生成され、したがってエフェクター機能を欠く。エフェクター機能は、2つの戦略のうち1つによって導入することができる:断片は、必要に応じて、哺乳動物細胞で発現する完全な抗体に、又はエフェクター機能を誘発し得る第2の結合部位を有する二重特異性抗体断片に操作され得る。通常、抗体のFd断片(VH-CH1)及び軽鎖(VL-CL)は、PCRによって別々にクローン化され、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリーにおいてランダムに組み換えられ、その後、特定の抗原に結合するために選択することができる。抗体断片はファージ表面に発現し、Fv又はFab(したがって抗体断片をコードするDNAを含有するファージ)の抗原結合による選択は、パニングと呼ばれる手順である抗原結合及び再増幅を数ラウンド行うことによって実現される。抗原に特異的な抗体断片は濃縮され、最終的に単離される。ファージディスプレイ技術はまた、「ガイデッドセレクション(guided selection)」と呼ばれる、齧歯類モノクローナル抗体のヒト化のためのアプローチにおいて使用することができる(Jespers,L.S.,et al.,Bio/Technology 12,899-903(1994)を参照)。このために、マウスモノクローナル抗体のFd断片は、ヒト軽鎖ライブラリーと組み合わせて提示されてもよく、続いて、得られたハイブリッドFabライブラリーは、抗原を用いて選択され得る。これにより、マウスFd断片は、選択をガイドするテンプレートを提供する。続いて、選択されたヒト軽鎖は、ヒトFd断片ライブラリーと組み合わされる。得られたライブラリーの選択により、完全なヒトFabが得られる。
ある特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は抗体である。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、2つの軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kDa)及び2つの重鎖ポリペプチド(それぞれ約50~70kDa)を含む四量体免疫グロブリンタンパク質を指す。用語「軽鎖」又は「免疫グロブリン軽鎖」は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、単一の免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)及び単一の免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)を含むポリペプチドを指す。免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)は、カッパ(κ)又はラムダ(λ)であり得る。用語「重鎖」又は「免疫グロブリン重鎖」は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、単一の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)、免疫グロブリンヒンジ領域、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)、及び任意選択により免疫グロブリン重鎖定常ドメイン4(CH4)を含むポリペプチドを指す。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、及びイプシロン(ε)として分類されており、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義する。IgGクラス抗体及びIgAクラス抗体は、サブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4並びにIgA1及びIgA2に、それぞれさらに分けられる。IgG抗体、IgA抗体、及びIgD抗体内の重鎖は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有するが、IgM抗体及びIgE抗体内の重鎖は、4つのドメイン(CH1、CH2、CH3、及びCH4)を有する。免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、サブタイプを含むあらゆる免疫グロブリンアイソタイプ由来であり得る。抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメインとの間(すなわち、軽鎖と重鎖との間)、及び抗体重鎖のヒンジ領域間のポリペプチド間ジスルフィド結合を介してともに連結されている。
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、ヘテロ二量体抗体(本明細書では「ヘテロ免疫グロブリン」又は「ヘテロIg」と互換的に使用される)であり、これは2つの異なる軽鎖及び2つの異なる重鎖を含む抗体を指す。しかしながら、ある特定の実施形態では、「共通の軽鎖」が使用され得る。「共通の軽鎖」は、二重特異性又は多重特異性分子内で少なくとも1つの第1及び第2の抗原結合部位、例えば、それぞれが異なる抗原に特異的なFabを形成する2つ以上の重鎖又はその断片と対形成する軽鎖を指す。そのような実施形態では、2つの軽鎖は同じである一方で、重鎖は異なる。たとえ2つの軽鎖が同じであっても、ヘテロIgの2つのfab部分は異なるエピトープに結合する。
ヘテロ二量体抗体は、任意の免疫グロブリン定常領域を含み得る。「定常領域」という用語は、本明細書で使用する場合、可変領域以外の抗体の全てのドメインを指す。定常領域は、抗原の結合に直接には関与しないが、種々のエフェクター機能を発揮する。上記のように、抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、特定のアイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)及びサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)に分けられる。軽鎖定常領域は、例えば、5つの抗体アイソタイプ全てにおいて見出されるカッパ型又はラムダ型の軽鎖定常領域、例えばヒトのカッパ型又はラムダ型の軽鎖定常領域であり得る。
ヘテロ二量体抗体の重鎖定常領域は、例えば、アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型又はミュー型の重鎖定常領域、例えば、ヒトアルファ型、ヒトデルタ型、ヒトイプシロン型、ヒトガンマ型、又はヒトミュー型の重鎖定常領域であり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。一実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、ヒトIgG1免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。別の実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、ヒトIgG2免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。
特定の重鎖とその同族の軽鎖との会合を促進するために、重鎖及び軽鎖の両方は、相補的アミノ酸置換を含有し得る。本明細書で使用する場合、「相補的アミノ酸置換」は、一方の鎖における正荷電アミノ酸への置換と対になる他方の鎖における負荷電アミノ酸置換を指す。例えば、いくつかの実施形態では、重鎖は、荷電アミノ酸を導入するために少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、対応する軽鎖は、荷電アミノ酸を導入するために少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、重鎖に導入される荷電アミノ酸は、軽鎖に導入されるアミノ酸の反対の電荷を有する。ある特定の実施形態では、1つ以上の正荷電残基(例えば、リジン、ヒスチジン又はアルギニン)を、第1の軽鎖(LC1)に導入することができ、且つ1つ以上の負荷電残基(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)を、LC1/HC1の結合界面で対になる重鎖(HC1)に導入することができるが、1つ以上の負荷電残基(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)を、第2の軽鎖(LC2)に導入することができ、且つ1つ以上の正荷電残基(例えば、リジン、ヒスチジン又はアルギニン)を、LC2/HC2の結合界面で対になる重鎖(HC2)に導入することができる。静電相互作用は、界面で反対に荷電した残基(極性)が引き合うため、LC1をHC1と対形成させ、且つLC2をHC2と対形成させるように誘導することになる。界面で同じ荷電残基(極性)を有する重鎖/軽鎖の対(例えば、LC1/HC2及びLC2/HC1)は、反発することになり、結果として不所望なHC/LCの対形成が抑制される。
これらの及び他の実施形態では、重鎖のCH1ドメイン又は軽鎖のCLドメインは、野生型IgGアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、その結果、野生型IgGアミノ酸配列中の1つ以上の正荷電アミノ酸は、1つ以上の負荷電アミノ酸で置換される。或いは、重鎖のCH1ドメイン又は軽鎖のCLドメインは、野生型IgGアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、野生型IgGアミノ酸配列中の1つ以上の負荷電アミノ酸が、1つ以上の正荷電アミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、F126、P127、L128、A141、L145、K147、D148、H168、F170、P171、V173、Q175、S176、S183、V185及びK213から選択されるEU位置でヘテロ二量体抗体中の第1及び/又は第2の重鎖のCH1ドメインにおける1つ以上のアミノ酸は、荷電アミノ酸で置換される。ある特定の実施形態では、負荷電又は正荷電のアミノ酸で置換するのに好ましい残基はS183(EU付番方式)である。いくつかの実施形態では、S183は、正荷電アミノ酸で置換される。代替的な実施形態では、S183は、負荷電アミノ酸で置換される。例えば、一実施形態では、S183は、第1の重鎖において負荷電アミノ酸で置換され(例えば、S183E)、第2の重鎖において、S183は、正荷電アミノ酸で置換される(例えば、S183K)。
軽鎖がカッパ軽鎖である実施形態では、F116、F118、S121、D122、E123、Q124、S131、V133、L135、N137、N138、Q160、S162、T164、S174及びS176から選択される位置(カッパ軽鎖におけるEU及びKabat付番)のヘテロ二量体抗体中の第1の及び/又は第2の軽鎖のCLドメインにおける1つ以上のアミノ酸は、荷電アミノ酸で置換される。軽鎖がラムダ軽鎖である実施形態では、T116、F118、S121、E123、E124、K129、T131、V133、L135、S137、E160、T162、S165、Q167、A174、S176及びY178から選択される位置(ラムダ鎖におけるKabat付番)のヘテロ二量体抗体中の第1の及び/又は第2の軽鎖のCLドメインにおける1つ以上のアミノ酸は、荷電アミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、負荷電又は正荷電のアミノ酸で置換するのに好ましい残基は、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖のいずれかのCLドメインのS176(EU及びKabat付番方式)である。ある特定の実施形態では、CLドメインのS176は、正荷電アミノ酸で置換される。代替的な実施形態では、CLドメインのS176は、負荷電アミノ酸で置換される。一実施形態では、S176は、第1の軽鎖において正荷電アミノ酸(例えば、S176K)で置換され、S176は、第2の軽鎖において負荷電アミノ酸(例えば、S176E)で置換される。
CH1及びCLドメインにおける相補的アミノ酸置換に加えて又はその代わりとして、ヘテロ二量体抗体における軽鎖及び重鎖の可変領域は、荷電アミノ酸を導入するために1つ以上の相補的アミノ酸置換を含有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体中の重鎖のVH領域又は軽鎖のVL領域は、野生型IgGアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、野生型IgGアミノ酸配列中の1つ以上の正荷電アミノ酸が、1つ以上の負荷電アミノ酸で置換される。或いは、重鎖のVH領域又は軽鎖のVL領域は、野生型IgGアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、その結果、野生型IgGアミノ酸配列中の1つ以上の負荷電アミノ酸は、1つ以上の正荷電アミノ酸で置換される。
VH領域内のV領域界面残基(すなわち、VH領域及びVL領域の会合を媒介するアミノ酸残基)には、Kabatの1位、3位、35位、37位、39位、43位、44位、45位、46位、47位、50位、59位、89位、91位及び93位が含まれる。VH領域内のこれらの界面残基の1つ以上が、荷電(正荷電又は負荷電)アミノ酸により置換され得る。ある特定の実施形態では、第1の及び/又は第2の重鎖のVH領域中のKabatの39位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸、例えば、リジンに置換される。代替的な実施形態では、第1の及び/又は第2の重鎖のVH領域中のKabatの39位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸、例えば、グルタミン酸に置換される。いくつかの実施形態では、第1の重鎖のVH領域中のKabatの39位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸に置換され(例えば、G39E)、第2の重鎖のVH領域中のKabatの39位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸に置換される(例えば、G39K)。いくつかの実施形態では、第1の及び/又は第2の重鎖のVH領域中のKabatの44位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸、例えば、リシンに置換される。代替的な実施形態では、第1の及び/又は第2の重鎖のVH領域中のKabatの44位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸、例えば、グルタミン酸に置換される。ある特定の実施形態では、第1の重鎖のVH領域中のKabatの44位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸に置換され(例えば、G44E)、第2の重鎖のVH領域中のKabatの44位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸に置換される(例えば、G44K)。
VL領域内のV領域界面残基(すなわち、VH領域及びVL領域の会合を媒介するアミノ酸残基)には、Kabatの32位、34位、35位、36位、38位、41位、42位、43位、44位、45位、46位、48位、49位、50位、51位、53位、54位、55位、56位、57位、58位、85位、87位、89位、90位、91位及び100位が含まれる。VL領域中の1つ以上の界面残基は、荷電アミノ酸、好ましくは、同族重鎖のVH領域に導入されるものと反対の電荷を有するアミノ酸で置換され得る。いくつかの実施形態では、第1の及び/又は第2の軽鎖のVL領域中のKabatの100位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸、例えば、リジンに置換される。代替的な実施形態では、第1の及び/又は第2の軽鎖のVL領域中のKabatの100位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸、例えば、グルタミン酸に置換される。ある特定の実施形態では、第1の軽鎖のVL領域中のKabatの100位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸に置換され(例えば、G100K)、第2の軽鎖のVL領域中のKabatの100位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸に置換される(例えば、G100E)。
ある特定の実施形態では、本発明のヘテロ二量体抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖、並びに第1の軽鎖及び第2の軽鎖を含み、第1の重鎖は、アミノ酸置換を44位(Kabat)、183位(EU)、392位(EU)、409(EU)、及び356位(EU)に含み、第2の重鎖は、アミノ酸置換を44位(Kabat)、183位(EU)、439位(EU)及び399位(EU)に含み、第1の及び第2の軽鎖は、アミノ酸置換を100位(Kabat)及び176位(EU)に含み、アミノ酸置換は前記位置に荷電アミノ酸を導入する。関連する実施形態では、第1の重鎖の44位(Kabat)のグリシンがグルタミン酸で置換され、第2の重鎖の44位(Kabat)のグリシンがリジンで置換され、第1の軽鎖の100位(Kabat)のグリシンがリジンで置換され、第2の軽鎖の100位(Kabat)のグリシンがグルタミン酸で置換され、第1の軽鎖の176位(EU)のセリンがリジンで置換され、第2の軽鎖の176位(EU)のセリンがグルタミン酸で置換され、第1の重鎖の183位(EU)のセリンがグルタミン酸で置換され、第1の重鎖の392位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、第1の重鎖の409位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、第1の重鎖の356位(EU)のグルタミン酸がリジンで置換され、第2の重鎖の183位(EU)のセリンがリジンで置換され、第2の重鎖の439位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、且つ第2の重鎖の399位(EU)のアスパラギン酸がリジンで置換される。
ある特定の実施形態では、本発明のヘテロ二量体抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖、並びに第1の軽鎖及び第2の軽鎖を含み、第1の重鎖は、アミノ酸置換を183位(EU)、392位(EU)、409位(EU)及び356位(EU)に含み、第2の重鎖は、アミノ酸置換を183位(EU)、439位(EU)及び399位(EU)に含み、第1の及び第2の軽鎖は、アミノ酸置換を176位(EU)に含み、アミノ酸置換は前記位置に荷電アミノ酸を導入する。関連する実施形態では、第1の軽鎖の176位(EU)のセリンがリジンで置換され、第2の軽鎖の176位(EU)のセリンがグルタミン酸で置換され、第1の重鎖の183位(EU)のセリンがグルタミン酸で置換され、第1の重鎖の392位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、第1の重鎖の409位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、第1の重鎖の356位(EU)のグルタミン酸がリジンで置換され、第2の重鎖の183位(EU)のセリンがリジンで置換され、第2の重鎖の439位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、且つ第2の重鎖の399位(EU)のアスパラギン酸がリシンで置換される。
関連する実施形態では、第1の軽鎖の176位(EU)のセリンがグルタミン酸で置換され、第2の軽鎖の176位(EU)のセリンがリジンで置換され、第1の重鎖の183位(EU)のセリンがリジンで置換され、第1の重鎖の392位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、第1の重鎖の409位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、第1の重鎖の356位(EU)のグルタミン酸がリジンで置換され、第2の重鎖の183位(EU)のセリンがグルタミン酸で置換され、第2の重鎖の439位(EU)のリジンがアスパラギン酸で置換され、且つ第2の重鎖の399位(EU)のアスパラギン酸がリジンで置換される。
一態様では、本発明は、第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチド及び第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドを含むヘテロ二量体免疫グロブリンCH3ドメインを含み、
(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドが、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439D/Eを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドが、以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う単離されたヘテロ多量体に関する。
ある特定の実施形態では、ヘテロ多量体は、第1の免疫グロブリンFcポリペプチド及び第2の免疫グロブリンFcポリペプチドを含むヘテロ二量体Fc領域を含み、第1の免疫グロブリンFcポリペプチドは、第1のCH3ドメインポリペプチドを含み、第2のFcポリペプチドは、第2のCH3ドメインポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態では、ヘテロ多量体は、第1のヒンジドメインポリペプチド及び第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド;並びに第2のヒンジドメインポリペプチド及び第2のFcポリペプチドを含む第2のポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態では、ヘテロ多量体は、第1の重鎖ポリペプチド及び第1の軽鎖ポリペプチド;並びに第2の重鎖ポリペプチド及び第2の軽鎖ポリペプチドを含む二重特異性抗体コンストラクトであり、
第1の重鎖ポリペプチドは、第1のVHドメイン、第1のCH1ドメインポリペプチド、第1のヒンジドメインポリペプチド、及び第1のFcポリペプチドを含み;且つ第2の重鎖ポリペプチドは、第2のVHドメイン、第2のCH1ドメインポリペプチド、第2のヒンジドメインポリペプチド、及び第2のFcポリペプチドを含む。
ある特定の実施形態では、i)第1の重鎖ポリペプチドは、183位でリジンを含み;
ii)第1の軽鎖ポリペプチドは、176位でグルタミン酸を含み;
iii)第2の重鎖ポリペプチドは、183位でグルタミン酸を含み;且つ
iv)第2の軽鎖ポリペプチドは、176位でリジンを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、i)第1の重鎖ポリペプチドは、183位でグルタミン酸を含み;
ii)第1の軽鎖ポリペプチドは、176位でリジンを含み;
iii)第2の重鎖ポリペプチドは、183位でリジンを含み;且つ
iv)第2の軽鎖ポリペプチドは、176位でグルタミン酸を含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、第1及び第2のCH3ドメインポリペプチドは、IgG1-、IgG2- IgG3-又はIgG4-免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドに由来するか又はその変異バージョンである。
ある特定の実施形態では、第1及び第2のCH3ドメインポリペプチドは、IgG1-又はIgG2-免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドに由来するか又はその変異バージョンである。
一態様では、本発明は、多重特異性抗原結合タンパク質を作製する方法であって、抗原結合タンパク質が、異なるエピトープに結合する少なくとも2つの結合ドメインを含み、哺乳動物宿主細胞において:
(i)以下のアミノ酸置換:D399K及びK439D/Eを含む第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
(ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びE356Kを含む第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドを発現させることを含み;
アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従い、
第1の結合ドメインが、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、第2の結合ドメインが、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、且つ
結合ドメインが、VH、scFab、及びscFvからなる群から選択される方法に関する。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含み;且つ
第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、第2の結合ドメインは、scFab及びscFvからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含み;且つ
第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、第1の結合ドメインは、scFab及びscFvからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabであり、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabである。
ある特定の実施形態では、結合ドメインは、それらの対応するCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、CH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの一方、又は両方のいずれかのC末端に融合された第3の結合ドメインを含み、第3の結合ドメインは、受容体リガンド VH、scFab、又はscFvである。
一態様では、本発明は、多重特異性抗原結合タンパク質を作製する方法であって、抗原結合タンパク質が、異なるエピトープに結合する少なくとも2つの結合ドメインを含み、哺乳動物宿主細胞において:
(i)以下のアミノ酸置換:D399K及びK439D/Eを含む第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
(ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びE356Kを含む第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドを発現させることを含み;
アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従い、
第1の結合ドメインが、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、第2の結合ドメインが、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、且つ
結合ドメインが、VH、scFab、及びscFvからなる群から選択される方法に関する。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含む。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含み;且つ
第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、第2の結合ドメインは、scFab及びscFvからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含み;且つ
第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、第1の結合ドメインは、scFab及びscFvからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、第1の結合ドメインは、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabであり、第2の結合ドメインは、第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabである。
ある特定の実施形態では、結合ドメインは、それらの対応するCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、多重特異性抗原結合タンパク質はさらに、CH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの一方、又は両方のいずれかのC末端に融合された第3の結合ドメインを含み、第3の結合ドメインは、受容体リガンド VH、scFab、又はscFvである。
本明細書で使用する場合、「Fc領域」という用語は、インタクトな抗体のパパイン消化によって生成され得る免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、すなわちCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択により、CH4ドメインを含む。ある特定の実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4免疫グロブリン由来のFc領域である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG2免疫グロブリン由来のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。Fc領域は、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、及び貪食などのエフェクター機能を保持し得る。他の実施形態では、Fc領域は、本明細書にさらに詳細に記載されるように、エフェクター機能を低減又は排除するように改変される場合がある。
本発明の抗原結合タンパク質のいくつかの実施形態では、Fc領域のカルボキシル末端に位置する結合ドメイン(すなわち、カルボキシル末端の結合ドメイン)はscFvである。ある特定の実施形態では、scFvは、ペプチドリンカーによって連結された重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。可変領域は、scFv内で、VH-VL又はVL-VHの向きに向きを定められ得る。例えば、一実施形態では、scFvは、N末端からC末端までに、VH領域、ペプチドリンカー及びVL領域を含む。別の実施形態では、scFvは、N末端からC末端までに、VL領域、ペプチドリンカー及びVH領域を含む。scFvのVH領域及びVL領域は、1つ以上のシステイン置換を含有して、VH領域とVL領域との間のジスルフィド結合形成を可能にし得る。そのようなシステインのクランプは、2つの可変ドメインを抗原-結合配置で安定化させる。一実施形態では、VH領域中の44位(Kabat付番)及びVL領域中の100位(Kabat付番)は、それぞれシステイン残基で置換される。
ある特定の実施形態では、scFvは、そのアミノ末端で、ペプチドリンカーを介してFc領域のカルボキシル末端(例えば、CH3ドメインのカルボキシル末端)に融合されるか、又はそうでなければ連結される。したがって、一実施形態では、得られる融合タンパク質が、N末端からC末端までに、CH2ドメイン、CH3ドメイン、第1のペプチドリンカー、VH領域、第2のペプチドリンカー、及びVL領域を含むように、scFvがFc領域に融合される。別の実施形態では、得られる融合タンパク質が、N末端からC末端までに、CH2ドメイン、CH3ドメイン、第1のペプチドリンカー、VL領域、第2のペプチドリンカー、及びVH領域を含むように、scFvがFc領域に融合される。「融合タンパク質」は、2つ以上の親タンパク質又はポリペプチドに由来するポリペプチド成分を含むタンパク質である。通常、融合タンパク質は、1つのタンパク質由来のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、異なるタンパク質由来のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列と一緒にインフレームに付加され、任意選択によりリンカーによって、その配列から分離される、融合遺伝子から発現する。この融合遺伝子は、その後、組換え宿主細胞によって発現されて、単一の融合タンパク質を産生することができる。
「ペプチドリンカー」とは、あるポリペプチドを別のポリペプチドに共有結合させる約2~約50個のアミノ酸のオリゴペプチドを指す。ペプチドリンカーを使用して、scFv内でVHドメイン及びVLドメインを連結することができる。ペプチドリンカーはまた、scFv、Fab断片、又は他の機能的抗体断片をFc領域のアミノ末端又はカルボキシル末端に連結して、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質を作り出すために使用することもできる。好ましくは、ペプチドリンカーは、少なくとも5アミノ酸長である。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、約5アミノ酸長~約40アミノ酸長である。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、約8アミノ酸長~約30アミノ酸長である。さらに他の実施形態では、ペプチドリンカーは、約10アミノ酸長~約20アミノ酸長である。
好ましくは、必ずしもというわけではないが、ペプチドリンカーは、20種の標準的なアミノ酸の中のアミノ酸、特に、システイン、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及び/又はセリンを含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシン、セリン及びアラニンなど、立体障害のない大多数のアミノ酸で構成される。したがって、いくつかの実施形態において好ましいリンカーには、ポリグリシン、ポリセリン、及びポリアラニン、又はこれらのうちいずれかの組み合わせが含まれる。いくつかの例示的なペプチドリンカーとしては、以下に限定されないが、ポリ(Gly)2~8(配列番号22~28)、特に(Gly)(配列番号23)、(Gly)(配列番号24)、(Gly)(配列番号25)及び(Gly)(配列番号27)、並びにポリ(Gly)Ser(配列番号29)、ポリ(Gly-Ala)2~4(配列番号30~32)及びポリ(Ala)2~8(配列番号33~39)が挙げられる。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、(GlySer)であり、ここで、x=3又は4であり、n=2、3、4、5又は6である(配列番号41~50)。そのようなペプチドリンカーとしては、「L5」(GGGGS又は「GS」;配列番号40)、「L9」(GGGSGGGGS;又は「GSGS」;配列番号51)、「L10」(GGGGSGGGGS;又は「(GS)」;配列番号46)、「L15」(GGGGSGGGGSGGGGS;又は「(GS)」;配列番号47)、及び「L25」(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS;又は「(GS)」;配列番号49)が挙げられる。いくつかの実施形態では、scFv中でVH領域及びVL領域を連結しているペプチドリンカーは、L15又は(GS)リンカー(配列番号47)である。これらの及び他の実施形態では、カルボキシル末端の結合ドメイン(例えば、scFv又はFab)をFc領域のC末端に連結しているペプチドリンカーは、L9若しくはGSGSリンカー(配列番号51)又はL10(GS)リンカー(配列番号46)である。
本発明の二重特異性抗原結合タンパク質に使用され得るペプチドリンカーの他の特定の例としては、(Gly)Lys(配列番号1);(Gly)LysArg(配列番号2);(Gly)Lys(Gly)(配列番号3);(Gly)AsnGlySer(Gly)(配列番号4);(Gly)Cys(Gly)(配列番号5);GlyProAsnGlyGly(配列番号6);GGEGGG(配列番号7);GGEEEGGG(配列番号8);GEEEG(配列番号9);GEEE(配列番号10);GGDGGG(配列番号11);GGDDDGG(配列番号12);GDDDG(配列番号13);GDDD(配列番号14);GGGGSDDSDEGSDGEDGGGGS(配列番号15);WEWEW(配列番号16);FEFEF(配列番号17);EEEWWW(配列番号18);EEEFFF(配列番号19);WWEEEWW(配列番号20);及びFFEEEFF(配列番号21)が挙げられる。
本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質の重鎖定常領域又はFc領域は、抗原結合タンパク質のグリコシル化及び/又はエフェクター機能に影響する1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。免疫グロブリンのFc領域の機能の1つは、免疫グロブリンがその標的に結合するときに免疫系に伝達することである。これは、一般に「エフェクター機能」と呼ばれる。伝達は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)につながる。ADCC及びADCPは、免疫系の細胞の表面上のFc受容体へのFc領域の結合を介して媒介される。CDCは、補体系のタンパク質(例えばC1q)とFcの結合を介して媒介される。いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、定常領域において、エフェクター機能、例えば、ADCC活性、CDC活性、ADCP活性、及び/又は抗原結合タンパク質のクリアランス若しくは半減期を増強する1つ以上のアミノ酸置換を含む。エフェクター機能を増強できる例示的なアミノ酸置換(EU付番)には、E233L、L234I、L234Y、L235S、G236A、S239D、F243L、F243V、P247I、D280H、K290S、K290E、K290N、K290Y、R292P、E294L、Y296W、S298A、S298D、S298V、S298G、S298T、T299A、Y300L、V305I、Q311M、K326A、K326E、K326W、A330S、A330L、A330M、A330F、I332E、D333A、E333S、E333A、K334A、K334V、A339D、A339Q、P396L、又は上記のいずれかの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
他の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、定常領域において、エフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。エフェクター機能を低減できる例示的なアミノ酸置換(EU付番)には、C220S、C226S、C229S、E233P、L234A、L234V、V234A、L234F、L235A、L235E、G237A、P238S、S267E、H268Q、N297A、N297G、V309L、E318A、L328F、A330S、A331S、P331S、又は上記のいずれかの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
グリコシル化は、抗体、特にIgG1抗体のエフェクター機能に寄与し得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、結合タンパク質のグリコシル化のレベル又は型に影響する1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N結合型又はO結合型のいずれかである。N結合は、アスパラギン残基の側鎖への糖鎖の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖鎖の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作り出される。O結合型グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースの1つがヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに結合することを指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質のグリコシル化は、1つ以上のグリコシル化部位を、例えば、結合タンパク質のFc領域に付加することによって増加される。抗原結合タンパク質へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列の1つ以上を含むようにアミノ酸配列を改変することによって都合よく達成され得る(N結合型グリコシル化部位の場合)。また、改変は、1つ以上のセリン残基若しくはスレオニン残基の開始配列への付加、又はこれによる開始配列への置換によってもなされ得る(O結合型グリコシル化部位の場合)。容易にするために、抗原結合タンパク質のアミノ酸配列は、DNAレベルでの変化により、特に、所望のアミノ酸に翻訳されることとなるコドンが生成されるように、標的ポリペプチドをコードするDNAを、予め選択された塩基にて変異させることによって改変され得る。
本発明はまた、エフェクター活性の変化をもたらす改変糖鎖構造を有する二重特異性抗原結合タンパク質分子、例えば、ADCC活性の向上を示すフコシル化が存在しないか又は減少した抗原結合タンパク質の産生を包含する。フコシル化を減少させるか又は排除する様々な方法が当該技術分野において知られている。例えば、ADCCエフェクター活性は、抗体分子のFcγRIII受容体への結合によって媒介され、これは、CH2ドメインのN297残基でのN結合型グリコシル化の炭水化物構造に依存することが示されている。非フコシル化抗体は、高い親和性でこの受容体に結合し、FcγRIII媒介性エフェクター機能を天然のフコシル化抗体よりも効率的に誘発する。例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素がノックアウトされているCHO細胞における非フコシル化抗体の組換え産生により、ADCC活性が100倍増大した抗体が生じる(Yamane-Ohnuki et al.,Biotechnol Bioeng.87(5):614-22,2004を参照されたい)。同様の効果は、フコシル化経路におけるアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素又は他の酵素の活性を低下させることによって、例えば、siRNA若しくはアンチセンスRNA処理、酵素をノックアウトするような細胞株の操作、又は選択的グリコシル化阻害剤を用いる培養によって、達成することができる(Rothman et al.,Mol Immunol.26(12):1113-23,1989を参照されたい)。いくつかの宿主細胞株、例えばLec13又はラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、より低いフコシル化レベルを有する抗体を天然に産生する(Shields et al.,J Biol Chem.277(30):26733-40,2002及びShinkawa et al.,J Biol Chem.278(5):3466-73,2003を参照されたい)。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞において抗体を組換え産生することによる、二分された糖鎖レベルの増加もADCC活性を増加させることが判明している(Umana et al.,Nat Biotechnol.17(2):176-80,1999を参照されたい)。
他の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質のグリコシル化は、1つ以上のグリコシル化部位を、例えば、結合タンパク質のFc領域から除くことによって減少又は排除される。N結合型グリコシル化部位を排除又は改変するアミノ酸置換により、抗原結合タンパク質のN結合型グリコシル化を減少又は排除することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質は、N297Q、N297A、又はN297GなどのN297位(EU付番)での変異を含む。特定の一実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、N297G変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。N297変異を含む分子の安定性を向上させるために、分子のFc領域はさらに操作されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、Fc領域における1つ以上のアミノ酸は、二量体状態でジスルフィド結合形成を促進するためにシステインで置換される。したがって、IgG1 Fc領域のV259、A287、R292、V302、L306、V323、又はI332(EU付番)に対応する残基は、システインで置換され得る。好ましくは、残基の特定の対が、互いにジスルフィド結合を優先的に形成するようにシステインで置換され、このため、ジスルフィド結合のスクランブルが制限又は防止される。好ましい対としては、以下に限定されないが、A287C及びL306C、V259C及びL306C、R292C及びV302C、並びにV323C及びI332Cが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質は、R292C及びV302Cの変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。このような実施形態では、Fc領域は、N297G変異も含み得る。
例えば、サルベージ受容体結合エピトープの組み込み又は追加(例えば、適切な領域の変異による、又はエピトープをペプチドタグに組み込み、続いて、例えば、DNA若しくはペプチド合成によって、いずれかの末端又は中央で抗原結合タンパク質に融合されることによる;例えば、国際公開第96/32478号パンフレットを参照)、或いは、PEG又は他の水溶性ポリマー、例えば、多糖ポリマーなどの分子の追加による血清半減期を増加させるための本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の改変もまた望ましい場合がある。サルベージ受容体結合エピトープは、好ましくは、Fc領域の1つ又は2つのループ由来のいずれか1つ以上のアミノ酸残基が、抗原結合タンパク質中の類似の位置に移される領域を構成する。さらにより好ましくは、Fc領域の1つ又は2つのループ由来の3つ以上の残基が移入されている。さらにより好ましくは、エピトープはFc領域(例えば、IgG Fc領域)のCH2ドメインから採取され、抗原結合タンパク質のCH1、CH3、若しくはVH領域、又は2つ以上のそのような領域に移入される。或いは、エピトープはFc領域のCH2ドメインから採取され、抗原結合タンパク質のCL領域若しくはVL領域、又はその両方に移入される。Fcバリアント及びそれらのサルベージ受容体との相互作用の説明については、国際出願の国際公開第97/34631号パンフレット及び国際公開第96/32478号パンフレットを参照されたい。
本発明は、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質及びその成分をコードする1つ以上の単離された核酸を含む。本発明の核酸分子には、一本鎖及び二本鎖の両方の形態のDNA及びRNA並びに対応する相補的配列が含まれる。DNAには、例えば、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成されたDNA、PCRによって増幅されたDNA及びそれらの組み合わせが含まれる。本発明の核酸分子には、完全長遺伝子又はcDNA分子並びにそれらの断片の組み合わせが含まれる。本発明の核酸は、優先的にはヒト供給源に由来するが、本発明には非ヒト種に由来するものも含まれる。
免疫グロブリン又はその領域(例えば、可変領域、Fc領域など)又は目的のポリペプチド由来の該当するアミノ酸配列は、直接タンパク質配列解析法によって決定されてもよく、好適なコードヌクレオチド配列は普遍コドン表に従って設計することができる。或いは、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の結合ドメインの起源となり得る、モノクローナル抗体をコードするゲノムDNA又はcDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、そのような抗体を産生する細胞から単離し、配列決定することができる。
本明細書において「単離されたポリヌクレオチド」と互換的に使用される「単離された核酸」は、天然に存在する供給源から単離された核酸の場合、核酸が単離された生物のゲノムに存在する隣接遺伝子配列から分離されている核酸である。例えば、PCR産物、cDNA分子又はオリゴヌクレオチドなど、鋳型から酵素的に、又は化学的に合成された核酸の場合、このようなプロセスから得られる核酸は、単離された核酸であると理解される。単離された核酸分子は、別個の断片の形態の核酸分子、又はより大きな核酸コンストラクトの成分としての核酸分子を指す。好ましい一実施形態では、核酸は、混入する内因性物質を実質的に含まない。核酸分子は、好ましくは、標準的な生化学的方法(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)に概説されているもの)によって、実質的に純粋な形態で、且つその成分ヌクレオチド配列の特定、操作、及び回収を可能にする量又は濃度で少なくとも1回単離されたDNA又はRNAから誘導されたものである。このような配列は、好ましくは、通常、真核生物遺伝子に存在する内部非翻訳配列又はイントロンによって中断されないオープンリーディングフレームの形態で提供及び/又は構築される。非翻訳のDNAの配列は、オープンリーディングフレームから5’側又は3’側に存在することができ、この場合、これは、コード領域の操作又は発現を妨害しない。特に明記しない限り、本明細書に記載される任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5’方向と呼ばれる。新生RNA転写産物の5’から3’への生成の方向は、転写方向と称され、RNA転写産物の5’末端の5’側にあるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と称され、RNA転写産物の3’末端の3’側にあるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と称される。
本発明はまた、中程度にストリンジェントな条件下、より好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸にハイブリダイズする核酸も含む。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響する基本パラメーター及び好適な条件を考案するためのガイダンスは、Sambrook,Fritsch,and Maniatis(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,chapters 9 and 11;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,1995,Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.,sections 2.10 and 6.3-6.4)によって示されており、例えば、DNAの長さ及び/又は塩基組成に基づいて当業者が容易に決定することができる。中程度にストリンジェントな条件を達成する一方法は、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有する予洗溶液、約50%ホルムアミド、6×SSCのハイブリダイゼーション緩衝液、及び約55℃のハイブリダイゼーション温度(又は他の類似のハイブリダイゼーション溶液、例えば、約42℃のハイブリダイゼーション温度による、約50%ホルムアミドを含有するもの)、並びに0.5×SSC、0.1% SDS中の約60℃の洗浄条件の使用を含む。一般に、高度にストリンジェントな条件は、およそ68℃、0.2×SSC、0.1%SDSで洗浄すること以外は上記のようなハイブリダイゼーション条件として定義される。SSPE(l×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPO、及び1.25mM EDTA、pH7.4である)は、ハイブリダイゼーション緩衝液及び洗浄緩衝液中のSSC(l×SSCは、0.15M NaCl及び15mMクエン酸ナトリウムである)に置換することができ、ハイブリダイゼーションが完了した後、15分間洗浄を行う。当業者に知られており、以下にさらに記載されるとおり、ハイブリダイゼーション反応及び二重鎖安定性を支配する基本原理を適用することにより、所望の程度のストリンジェンシーを達成するために、洗浄温度及び洗浄塩濃度を必要に応じて調節し得ることが理解されるべきである(例えば、Sambrook et al.,1989を参照されたい)。核酸を未知の配列の標的核酸へとハイブリダイズする場合、ハイブリッド長はハイブリダイズする核酸の長さであると仮定する。既知の配列の核酸がハイブリダイズされる場合、ハイブリッド長は、両核酸の配列を整列させ、最適な配列相補性の領域又は領域群を同定することによって決定することができる。50塩基対長未満であると予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)より5~10℃低くなければならず、ここで、Tmは、以下の式に従って決定される。18塩基対長未満のハイブリッドの場合、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18塩基対長を超えるハイブリッドの場合、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N)、(式中、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である)(1×SSCの[Na+]=0.165M)。好ましくは、そのようなハイブリダイズする核酸の各々は、少なくとも15個のヌクレオチド(又はより好ましくは少なくとも18個のヌクレオチド、若しくは少なくとも20個のヌクレオチド、若しくは少なくとも25個のヌクレオチド、若しくは少なくとも30個のヌクレオチド、若しくは少なくとも40個のヌクレオチド、又は最も好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド)の長さ、或いはそれがハイブリダイズする本発明の核酸の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、及び最も好ましくは少なくとも80%)である長さを有しており、且つそれがハイブリダイズする本発明の核酸と少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、及び最も好ましくは少なくとも99.5%)を有しており、ここで、配列同一性は、上でより詳細に記載されているように、ハイブリダイズする核酸の配列を、重複及び同一性が最大となり、配列ギャップが最小になるように整列させた場合に当該核酸の配列を比較することにより決定される。
本明細書に記載される抗原結合タンパク質のバリアントは、ポリペプチドをコードするDNAにおけるヌクレオチドの部位特異的な変異誘発により、カセット若しくはPCR変異誘発、又は当該技術分野でよく知られる他の技術を使用して、バリアントをコードするDNAを生成し、その後、本明細書に概説するように、細胞培養物中で組換えDNAを発現させることによって調製することができる。しかしながら、最大約100~150個の残基を有するバリアントCDRを含む抗原結合タンパク質が、確立された技術を用いるインビトロ合成によって調製され得る。バリアントは、典型的には、天然に存在する類似体と同じ定性的生物学的活性、例えば抗原への結合を示す。このようなバリアントは、例えば、抗原結合タンパク質のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせを行って、最終コンストラクトに至るのであるが、但し、最終コンストラクトは所望の特性を保持するものとする。アミノ酸の変化はまた、グリコシル化部位の数又は位置を変化させるなど、抗原結合タンパク質の翻訳後プロセスを改変する場合もある。ある特定の実施形態では、抗原結合タンパク質バリアントは、エピトープ結合に直接関与するアミノ酸残基を改変する目的で調製される。他の実施形態では、本明細書に記載の目的のため、エピトープ結合に直接関与しない残基、又はエピトープ結合に何ら関与しない残基の改変が望ましい。CDR領域及び/又はフレームワーク領域のいずれかにおける変異誘発が企図される。抗原結合タンパク質のアミノ酸配列における有用な改変を設計するために、当業者は共分散分析技術を使用することができる。例えば、Choulier,et al.,Proteins 41:475-484,2000;Demarest et al.,J.Mol.Biol.335:41-48,2004;Hugo et al.,Protein Engineering 16(5):381-86,2003;Aurora et al.,米国特許出願公開第2008/0318207A1号明細書;Glaser et al.,米国特許出願公開第2009/0048122A1号明細書;Urech et al.,国際公開第2008/110348A1号パンフレット;Borras et al.,国際公開第2009/000099A2号パンフレットを参照されたい。共分散分析によって決定されるそのような改変は、抗原結合タンパク質の効力、薬物動態学的、薬力学的及び/又は製造可能性の特性を改善することができる。
本発明はまた、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の1つ以上の成分(例えば、可変領域、軽鎖、重鎖、改変された重鎖、及びFd断片)をコードする1つ以上の核酸を含むベクターを含む。「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞に移入するために使用される任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を指す。ベクターの例として、以下に限定されないが、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター、及び発現ベクター、例えば組換え発現ベクターが挙げられる。用語「発現ベクター」又は「発現コンストラクト」は、本明細書で使用する場合、特定の宿主細胞における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な所望のコード配列及び適切な核酸制御配列を含有する組換えDNA分子を指す。発現ベクターは、転写、翻訳に影響を及ぼすか又はそれを制御し、且つイントロンが存在する場合、それに作動可能に連結されたコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含むことができるが、これに限定されない。原核生物での発現に必要な核酸配列には、プロモーター、任意選択によりオペレーター配列、リボソーム結合部位、及び場合によりその他の配列が含まれる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、並びに終結シグナル及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。分泌シグナルペプチド配列もまた、任意選択により発現ベクターによってコードされ、目的のコード配列に作動可能に連結されることが可能であり、これにより、所望の場合、細胞から目的のポリペプチドがより容易に単離されるように、組換え宿主細胞に発現ポリペプチドを分泌させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、シグナルペプチド配列は、特許請求されるポリペプチド配列のいずれかのアミノ末端に付加/融合され得る。ある特定の実施形態では、MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC(配列番号52)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、ポリペプチド配列のいずれかのアミノ末端に融合される。他の実施形態では、MAWALLLLTLLTQGTGSWA(配列番号53)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、ポリペプチド配列のいずれかのアミノ末端に融合される。さらなる他の実施形態では、MTCSPLLLTLLIHCTGSWA(配列番号54)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、ポリペプチド配列のいずれかのアミノ末端に融合される。本明細書に記載されるポリペプチド配列のアミノ末端に融合され得る他の適切なシグナルペプチド配列としては、MEAPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号55)、MEWTWRVLFLVAAATGAHS(配列番号56)、METPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号57)、METPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号58)、MKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号59)、及びMEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号60)が含まれる。他のシグナルペプチドが当業者に知られており、例えば、特定の宿主細胞における発現を促進又は最適化するために、ポリペプチド配列のいずれかに融合されてもよい。
通常、本発明の二重特異性抗原タンパク質を産生するために宿主細胞中で使用される発現ベクターは、プラスミド維持のための配列、並びに二重特異性抗原結合タンパク質の成分をコードする外因性ヌクレオチド配列のクローン化及び発現のための配列を含有することになる。集合的に「隣接配列」と呼ばれるこのような配列は、ある特定の実施形態において、典型的には、以下のヌクレオチド配列:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナー及びアクセプタースプライス部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるべきポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、並びに選択マーカーエレメントの1つ以上を含むことになる。これらの配列の各々を、以下で論じる。
任意選択により、ベクターは「タグ」コード配列、すなわち、ポリペプチドコード配列の5’又は3’末端に位置するオリゴヌクレオチド分子を含有してもよく、このオリゴヌクレオチドタグ配列はポリHis(ヘキサHisなど)、FLAG、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)、myc、又は商業的に入手可能な抗体が存在する別の「タグ」分子をコードする。このタグは、通常、ポリペプチドの発現の際にポリペプチドに融合され、宿主細胞からのポリペプチドの親和性精製又は検出のための手段として機能し得る。親和性精製は、例えば、タグに対する抗体を親和性マトリックスとして使用するカラムクロマトグラフィーによって実現することができる。任意選択により、その後、ある特定の切断用ペプチダーゼを使用するなどの様々な手段によって、精製されたポリペプチドからタグを除去することができる。
隣接配列は、同族性(すなわち、宿主細胞と同一の種及び/又は株に由来する)、異種性(すなわち、宿主細胞の種又は株以外の種に由来する)、ハイブリッド(すなわち、2つ以上の供給源に由来する隣接配列の組み合わせ)、合成、又は天然とすることができる。したがって、隣接配列の供給源は、任意の原核生物若しくは真核生物、任意の脊椎動物若しくは無脊椎動物、又は任意の植物とすることができるが、但し、その隣接配列が宿主細胞機構において機能し、且つ宿主細胞機構によって活性化され得るものとする。
本発明のベクターに有用な隣接配列は、当該技術分野においてよく知られる複数の方法のいずれかによって得られてもよい。典型的には、本明細書において有用な隣接配列は、マッピング及び/又は制限エンドヌクレアーゼ消化によって事前に同定されていることになるため、適切な制限エンドヌクレアーゼを使用し、適切な組織源から単離することができる。場合により、隣接配列の全ヌクレオチド配列は既知であり得る。この場合、隣接配列は、核酸合成又はクローン化の常法を使用して合成することができる。
隣接配列の全てが既知であるか、又はその一部のみが既知であるかを問わず、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を使用して、且つ/又は同じ若しくは別の種に由来するオリゴヌクレオチド及び/若しくは隣接配列断片などの好適なプローブを用いてゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、隣接配列を得てもよい。隣接配列が未知である場合、隣接配列を含有するDNAの断片は、例えば、コード配列又は1つ或いは複数の別の遺伝子を含有し得るDNAの大型断片から単離され得る。単離は、制限エンドヌクレアーゼ消化によって適切なDNA断片を生成し、続いてアガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth,CA)、又は当業者に既知の他の方法を用いて単離することによって達成され得る。この目的を達成するのに適した酵素の選択は、当業者であれば容易に分かるであろう。
複製起点は通常、市販の原核生物発現ベクターの一部であり、その起点は、宿主細胞におけるベクターの増幅に役立つ。選択したベクターが複製起点部位を含有しなければ、既知の配列に基づいて化学的に合成して、ベクター中にライゲートしてもよい。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs,Beverly,MA)に由来する複製起点は、ほとんどのグラム陰性菌に適しており、種々のウイルス性の起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、又はパピローマウイルス、例えば、HPV若しくはBPV)が、哺乳動物細胞におけるベクターのクローニングに有用である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターには必要でない(例えば、SV40起点は、ウイルス初期プロモーターも含有するという理由でのみ、使用されることが多い)。
転写終結配列は、典型的には、ポリペプチドコード領域の3’末端側に位置し、転写を終結させる働きをする。通常、原核細胞における転写終結配列は、G-Cリッチ断片とそれに続くポリT配列である。この配列はライブラリーから容易にクローン化されるか、又はベクターの一部として、市販品を購入する場合さえあるが、既知の核酸合成の方法を使用して容易に合成することもできる。
選択マーカー遺伝子は、選択培養培地中で増殖させた宿主細胞の生存及び増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核生物の宿主細胞に、抗生物質又は他の毒素、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン又はカナマイシンに対する耐性を付与するタンパク質;(b)細胞の栄養要求性欠損を補完するタンパク質;又は(c)複合培地又は限定培地からは利用不能の重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。特異的選択マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子及びテトラサイクリン耐性遺伝子である。有利には、ネオマイシン耐性遺伝子は、原核宿主細胞及び真核宿主細胞の両方でも選択に使用され得る。
他の選択遺伝子を使用して、発現されることになる遺伝子を増幅してもよい。増幅は、増殖又は細胞生存に重要なタンパク質の生成に必要とされる遺伝子が、組換え細胞の累代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳動物細胞に好適な選択マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)及びプロモーターレスチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞形質転換体を、この形質転換体のみが唯一、ベクター中に存在する選択遺伝子によって生存するように適合されている選択圧下に置く。選択圧は、培地中の選択剤の濃度が連続的に増加する条件下で形質転換された細胞を培養することによって課され、それにより、選択遺伝子及び本明細書中に記載される二重特異性抗原結合タンパク質の1つ以上の成分などの別の遺伝子をコードするDNAの両方の増幅を導く。その結果、増幅されたDNAから多量のポリペプチドが合成される。
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、シャイン・ダルガーノ配列(原核生物)又はコザック配列(真核生物)によって特徴付けられる。このエレメントは、典型的には、プロモーターの3’側、及び発現されることになるポリペプチドのコード配列の5’側に位置する。ある特定の実施形態では、1つ以上のコード領域は、内部リボソーム結合部位(IRES)に作動可能に連結され、単一のRNA転写産物から2つのオープンリーディングフレームの翻訳を可能にし得る。
真核宿主細胞発現系においてグリコシル化が所望される場合などのいくつかの場合には、グリコシル化又は収率を向上させるために、種々のプレ配列又はプロ配列を操作し得る。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ開裂部位を改変してもよいし、プロ配列を付加してもよく、これもまたグリコシル化に影響を及ぼし得る。最終タンパク質産物は、-1位(成熟タンパク質の第1のアミノ酸に対して)において、発現に付随する1つ以上の追加のアミノ酸を有する場合があり、これは、完全には除去されていなくてもよい。例えば、最終タンパク質産物は、アミノ末端に結合した、ペプチダーゼ開裂部位内に見出される1つ又は2つのアミノ酸残基を有し得る。或いは、いくつかの酵素切断部位を使用すると、酵素が成熟ポリペプチド内のこのような領域で切断する場合、所望のポリペプチドがわずかに切断された形態を生じ得る。
本発明の発現ベクター及びクローニングベクターは通常、宿主生物によって認識され、ポリペプチドをコードする分子に作動可能に連結されたプロモーターを含有することになる。「作動可能に連結された」という用語は、本明細書で使用する場合、所与の遺伝子の転写及び/又は所望のタンパク質分子の合成を指令することができる核酸分子が産生されるように、2つ以上の核酸配列が連結されていることを指す。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結された」ベクター中の制御配列は、タンパク質コード配列の発現が、制御配列の転写活性と適合する条件下で達成されるように、タンパク質コード配列にライゲートされている。より具体的には、プロモーター及び/又はエンハンサー配列(シス作用性転写制御エレメントの任意の組み合わせを含む)は、それが適切な宿主細胞又は他の発現系においてコード配列の転写を刺激又は調節する場合、そのコード配列に作動可能に連結されている。
プロモーターは、構造遺伝子(一般に、約100~1000bp以内)の開始コドンの上流(すなわち5’側)に位置し、構造遺伝子の転写を制御する非転写配列である。通常、プロモーターは、2つのクラス:誘導性プロモーター及び構成的プロモーターの一方に分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の有無又は温度変化などの培養条件のいくらかの変化に応答してそれらの制御下でDNAからの転写レベルの上昇を惹起する。一方、構成的プロモーターは、それが作動可能に連結されている遺伝子を均一に、すなわち遺伝子発現に対する制御をほとんど又は全く行わずに転写する。種々の潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターがよく知られている。好適なプロモーターは、供給源DNAから制限酵素消化によりプロモーターを除去し、所望のプロモーター配列をベクターに挿入することによって、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の例えば、重鎖、軽鎖、修飾された重鎖、又は他の成分をコードするDNAに作動可能に連結される。
酵母宿主での使用に好適なプロモーターも当該技術分野においてよく知られている。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターとともに使用されるのが有利である。哺乳動物宿主細胞とともに使用するのに好適なプロモーターはよく知られており、以下に限定されないが、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2型など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが挙げられる。他の好適な哺乳動物プロモーターとしては、異種哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーター及びアクチンプロモーターが挙げられる。
対象となり得るさらなるプロモーターとしては、SV40初期プロモーター(Benoist and Chambon,1981,Nature 290:304-310);CMVプロモーター(Thornsen et al.,1984,Proc.Natl.Acad.U.S.A.81:659-663)、ラウス肉腫ウイルスの3’側の長い末端反復に含まれるプロモーター(Yamamoto et al.,1980,Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1444-1445);メタロチオネイン遺伝子由来のプロモーター及び調節配列(Prinster et al.,1982,Nature 296:39-42);並びにベータ-ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物プロモーター(Villa-Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727-3731)、又はtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21-25)が挙げられるが、これらに限定されない。組織特異性を示し、トランスジェニック動物で利用されている以下の動物転写制御領域も対象となる:膵腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al.,1984,Cell 38:639-646;Ornitz et al.,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399-409;MacDonald,1987,Hepatology 7:425-515);膵ベータ細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115-122);リンパ細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al.,1984,Cell 38:647-658;Adames et al.,1985,Nature 318:533-538;Alexander et al.,1987,Mol.Cell.Biol.7:1436-1444);精巣、***、リンパ球、及び肥満細胞において活性であるマウス***腫瘍ウイルス制御領域(Leder et al.,1986,Cell 45:485-495);肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al.,1987,Genes and Devel.1:268-276);肝臓において活性であるアルファ-フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al.,1985,Mol.Cell.Biol.5:1639-1648;Hammer et al.,1987,Science 253:53-58);肝臓において活性であるアルファ1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al.,1987,Genes and Devel.1:161-171);骨髄細胞において活性であるベータ-グロビン遺伝子制御領域(Mogram et al.,1985,Nature 315:338-340;Kollias et al.,1986,Cell 46:89-94);脳内のオリゴデンドロサイト細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al.,1987,Cell 48:703-712);骨格筋において活性であるミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283-286);並びに視床下部において活性である性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al.,1986,Science 234:1372-1378)。
エンハンサー配列をベクターに挿入し、高等真核生物によって、二重特異性抗原結合タンパク質の成分(例えば、軽鎖、重鎖、改変重鎖、Fd断片)をコードするDNAの転写を増加させることができる。エンハンサーは、DNAのシス作用性エレメントであり、通常、約10~300bp長で、プロモーターに作用して転写を増加させる。エンハンサーは、方向及び位置に比較的依存せず、転写単位に対して5’側及び3’側の両方の位置に見出されている。哺乳動物遺伝子から入手可能な複数のエンハンサー配列が知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ-フェト-タンパク質、及びインスリン)。しかしながら、通常、ウイルス由来のエンハンサーが使用される。当該技術分野で知られているSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための例示的な増強エレメントである。エンハンサーは、ベクターにおいてコード配列の5’側又は3’側のいずれに位置してもよいが、典型的には、プロモーターから5’側の部位に位置する。適切な天然又は異種性のシグナル配列(リーダー配列又はシグナルペプチド)をコードする配列を発現ベクターに組み込んで、細胞外への抗体の分泌を促進することができる。シグナルペプチド又はリーダーの選択は、抗体を産生する宿主細胞の型に依存し、天然のシグナル配列を異種性のシグナル配列と交換することができる。シグナルペプチドの例は、上に記載されている。哺乳動物宿主細胞において機能する他のシグナルペプチドとしては、米国特許第4,965,195号明細書に記載されるインターロイキン-7(IL-7)のシグナル配列;Cosman et al.,1984,Nature 312:768に記載されるインターロイキン-2受容体のシグナル配列;欧州特許第0367 566号明細書に記載されるインターロイキン-4受容体シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号明細書に記載されるI型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド;欧州特許第0 460 846号明細書に記載されるII型インターロイキン-1受容体シグナルペプチドが挙げられる。
提供される発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築してもよい。そのようなベクターは、所望の隣接配列の全てを含有していてもしていなくてもよい。本明細書に記載される隣接配列の1つ以上がベクター内に最初から存在していない場合、それらを個々に得てベクターにライゲートしてもよい。隣接配列の各々を取得するために使用される方法は、当業者によく知られている。発現ベクターを宿主細胞に導入し、それにより、本明細書に記載される核酸によってコードされる融合タンパク質を含むタンパク質を産生することができる。
ある特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の異なる成分をコードする核酸を、同じ発現ベクターに挿入してもよい。そのような実施形態では、軽鎖及び重鎖が同じmRNA転写産物から発現されるように、配列内リボソーム侵入部位(IRES)により、単一のプロモーターの制御下で、2つの核酸が分離されてもよい。或いは、2つの核酸は、軽鎖及び重鎖が2つの別個のmRNA転写産物から発現されるように、2つの別個のプロモーターの制御下にあってもよい。
同様に、IgG-scFv二重特異性抗原結合タンパク質については、軽鎖をコードする核酸は、改変された重鎖(重鎖及びscFvを含む融合タンパク質)をコードする核酸と同じ発現ベクターにクローン化されてもよく、その場合、2つの核酸は単一のプロモーターの制御下にあってIRESによって分離されるか、又は2つの核酸は2つの別個のプロモーターの制御下にある。IgG-Fab二重特異性抗原結合タンパク質については、3つの成分の各々をコードする核酸は、同じ発現ベクターにクローン化されてもよい。いくつかの実施形態では、IgG-Fab分子の軽鎖をコードする核酸、及び第2のポリペプチド(C末端のFabドメインのもう半分を含む)をコードする核酸は、1つの発現ベクターにクローン化される一方で、改変された重鎖(重鎖及びFabドメインの半分を含む融合タンパク質)をコードする核酸は、第2の発現ベクターにクローン化される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質の全ての成分は、同じ宿主細胞集団から発現される。例えば、1つ以上の成分が、別個の発現ベクター中にクローニングされる場合でも、宿主細胞に双方の発現ベクターがコトランスフェクトされて、1つの細胞が二重特異性抗原結合タンパク質の全ての成分を生成するようになる。
ベクターが構築されて、本明細書中に記載される二重特異性抗原結合タンパク質の成分をコードする1種以上の核酸分子が、1種以上のベクターの適切な部位中に挿入された後に、完成したベクターは、増幅及び/又はポリペプチド発現に好適な宿主細胞中に挿入され得る。したがって、本発明は、二重特異性抗原結合タンパク質の成分をコードする1つ以上の発現ベクターを含む単離された宿主細胞を包含する。「宿主細胞」という用語は、本明細書で使用する場合、核酸で形質転換されているか、又は形質転換されることが可能であり、それにより、目的の遺伝子を発現する細胞を指す。この用語には、目的の遺伝子が存在する限り、親細胞の子孫の形態又は遺伝的構造が元の親細胞と同一であるか否かにかかわらず、親細胞の子孫が含まれる。好ましくは少なくとも1つの発現制御配列(例えば、プロモーター又はエンハンサー)に作動可能に連結された、本発明の単離された核酸を含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」である。
抗原結合タンパク質の発現ベクターの選択された宿主細胞への形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又は他の知られた技術を含むよく知られた方法によって達成され得る。選択される方法は、部分的に、使用される宿主細胞型に応じることになる。これらの方法及び他の好適な方法は、当業者にはよく知られており、例えば、前掲のSambrook et al.,2001に示されている。
宿主細胞は、適切な条件下で培養されると、抗原結合タンパク質を合成し、これはその後、(宿主細胞が培地中に分泌するならば)培養培地から回収され得るか、又は(分泌されなければ)産生する宿主細胞から直接的に回収され得る。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性(グリコシル化又はリン酸化など)に望ましいか又は必要であるポリペプチドの修飾、及び生物学的に活性な分子へのフォールディングの容易さなどの様々な要因に依存することになる。
例示的な宿主細胞としては、原核生物、酵母、又は高等真核生物の細胞が挙げられる。原核生物の宿主細胞としては、グラム陰性微生物又はグラム陽性微生物などの真正細菌、例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えば、エシェリキア属(Escherichia)、例えば、大腸菌(E.coli)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、例えば、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属(Serratia)、例えば、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、及びシゲラ属(Shigella)、並びにバチルス属(Bacillus)、例えば、枯草菌(B.subtilis)及びB.リケニフォルミス(B.licheniformis)、シュードモナス属(Pseudomonas)及びストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母が、組換えポリペプチドに適したクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、又は一般的なパン酵母が、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に用いられている。しかしながら、ピキア属(Pichia)、例えば、P.パストリス(P.pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、シュワニオミセス属(Schwanniomyces)、例えば、シュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、並びに糸状菌、例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えば、A.ニデュランス(A.nidulans)、A.ニガー(A.niger)などの複数の他の属、種及び株が、ここで一般に利用可能であり、有用である。
グリコシル化された抗原結合タンパク質の発現のための宿主細胞は、多細胞生物に由来し得る。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株及びバリアント並びにツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(イモ虫)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)及びカイコ(Bombyx mori)などの宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。このような細胞のトランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1バリアント、及びカイコ(Bombyx mori)NPVのBm-5株が公的に入手可能である。
脊椎動物宿主細胞もまた好適な宿主であり、このような細胞からの抗原結合タンパク質の組換え産生は常法となっている。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該技術分野においてよく知られており、以下に限定されないが、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection:ATCC)から入手可能な不死化細胞株、例えば、以下に限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えば、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44、及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216,1980);SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293細胞、又は懸濁培養での増殖用にサブクローニングされた293細胞)(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251,1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス***腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44-68,1982);MRC 5細胞又はFS4細胞;哺乳動物骨髄腫細胞、及びいくつかの他の細胞株が挙げられる。別の実施形態では、それ自体の抗体は作製しないが、異種性抗体を作製及び分泌する能力を有するB細胞系統由来の細胞株を選択することができる。いくつかの実施形態では、CHO細胞が、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質を発現するのに好ましい宿主細胞である。
二重特異性抗原結合タンパク質の産生のために、宿主細胞は上記の核酸又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされ、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように改変された従来の栄養培地中で培養される。加えて、選択マーカーによって分離された転写単位の複数のコピーを有する新規なベクター及びトランスフェクトされた細胞株は、抗原結合タンパク質の発現に特に有用である。したがって、本発明はまた、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質を調製する方法であって、本明細書に記載される1つ以上の発現ベクターを含む宿主細胞を、当該1つ以上の発現ベクターによってコードされる二重特異性抗原結合タンパク質の発現を可能にする条件下にて培養培地中で培養すること;及び培養培地から二重特異性抗原結合タンパク質を回収することを含む方法も提供する。
本発明の抗原結合タンパク質を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに好適である。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44,1979;Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255,1980;米国特許第4,767,704号明細書;米国特許第4,657,866号明細書;米国特許第4,927,762号明細書;米国特許第4,560,655号明細書;若しくは米国特許第5,122,469号明細書;国際公開第90103430号パンフレット;国際公開第87/00195号パンフレット;又は米国再発行特許第30,985号明細書に記載される培地のいずれかが、宿主細胞の培養培地として使用され得る。これらの培地はいずれも、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬物)、微量元素(通常はマイクロモル範囲の最終濃度にて存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコース又は同等のエネルギー源が補充され得る。また、他の必須のあらゆる栄養補助物質が、当業者に知られている適切な濃度にて含まれ得る。温度及びpHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
宿主細胞を培養すると、二重特異性抗原結合タンパク質は、細胞内で産生されるか、細胞膜周辺腔内で産生されるか、又は培地中に直接分泌され得る。抗原結合タンパク質が細胞内で産生される場合、第1の工程として、粒状の破片である宿主細胞又は溶解した断片を、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去する。二重特異性抗原結合タンパク質は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、陽イオン若しくは陰イオン交換クロマトグラフィー、又は好ましくは、親和性リガンドとして目的の抗原又はプロテインA若しくはプロテインGを使用するアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づくポリペプチドを含むタンパク質を精製するために使用することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13,1983)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss et al.,EMBO J.5:15671575,1986)。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。コントロールドポアガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースを用いて実現することができるよりも、流速を速く、処理時間を短くすることが可能である。タンパク質がCH3ドメインを含む場合には、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が、精製に有用である。回収されることになる特定の二重特異性抗原結合タンパク質に応じて、エタノール沈殿、逆相HPLC、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製のための他の技術もまた可能である。
ある特定の実施形態では、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド及び第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現は、第1の哺乳動物宿主細胞において実施され、発現は、第1の哺乳動物宿主細胞と同じ型の第2の哺乳動物宿主細胞における
(i)以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含む第3のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
(ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びK439D/Eを含む第4のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現と比較してSECによって測定されるとおりの1/2抗体種不純物のより低いパーセンテージをもたらす。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D/E、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第3の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含み;且つ
(ii)第4の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びK439Dを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド及び第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現は、第1の哺乳動物宿主細胞において実施され、発現は、第1の哺乳動物宿主細胞と同じ型の第2の哺乳動物宿主細胞における
(i)以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含む第3のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
(ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びK439D/Eを含む第4のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現と比較してプロテインA精製後にmg/mlによって測定されるとおり多重特異性抗原結合タンパク質のより高い収量をもたらす。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D/E、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439Dを含み;且つ
(ii)第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びE356Kを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、(i)第3の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含み;且つ
(ii)第4の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K409D、K392D、及びK439Dを含み;
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、第1及び第2の抗体軽鎖は、同一である。
実験手順
分子生物学
目的の分子、(抗体HC、抗体LC、scFv-Fc、Fc)の可変ドメインのオープンリーディングフレームは、外部の提供者によって合成された後、Golden Gate技術を使用する定常ドメイン及びBsmBI制限部位を含有する一過的発現ベクターに個別にクローン化された。HCは、CH2に付加された安定化ジスルフィドを有するアグリコヒトIgG1足場において構築された(Jacobsen et al,2017)。優先的なヘテロ-IgG編成のために設計されたHCは、Fc-CH3ドメイン中に変異された電荷対変異(CPM)を有した。配列確認の後、トランスフェクショングレードのDNAを、産業標準のプレップキットを使用して調製した。プラスミドを、モノクローナル抗体に関して1:1の質量比(一価scFv-Fc分子に関してscFv-Fc:Fc、1:1:1:1(LC1:HC1:LC2:HC2))で混合した。
哺乳動物発現
全ての一価ヘテロ-IgG分子は、カナダ国立研究機構(National Research Council of Canada)によって開発された一過的HEK293-6E発現系を使用して発現された。バルプロ酸ナトリウムもまた、発現系に組み込まれた。この場合、細胞を、トランスフェクションのために2e6個の生存細胞/mLまで増殖させた。トランスフェクションは、0.5μg DNA/mLを100μl FreeStyle F-17培地中で1.5μl PEImax/mL(Polysciences)と10分間混合した後、複合体を900μLの細胞培養物に加えることによってなされた。トランスフェクションの24時間後、新鮮な培地を、培養物の2倍量まで加え、トリプトン-N1(Organotechnie)及びグルコース(Thermo Fisher)をそれぞれ2.5g/L及び4.5g/Lの最終濃度に達するまで加えた。トランスフェクションの4日後、バルプロ酸ナトリウム(MP biomedicals)を、3.75mMの最終濃度まで加えた。トランスフェクションの6日後、条件培地を、遠心分離により収集した後、0.22umフィルターに通して真空濾過した。Fcコンストラクトの場合、発現は、トランスポゾン技術の組み込みによる内部の安定なCHO-K1プロセスを使用してなされた。トランスフェクションのために、細胞を遠心分離し、Opti-MEM培地(Thermo Fisher)中において2E6個の生存細胞/mLで再懸濁させた。トランスフェクションは、2μgのプラスミドDNAを1mLのOpti-MEM中において2μgのトランスポゾンDNA及び10μLのリポフェクタミンLTX(Thermo Fisher)と混合し、15~20分間インキュベートし、複合体を1mLの再懸濁された細胞に加えることによってなされた。培養物を、120RPMに設定された振盪プラットフォーム上において37℃及び5% COでインキュベートした。トランスフェクションの5時間後、2mLの本発明者らの内製の増殖培地を加えた。トランスフェクションの72時間後、細胞を増殖培地中で再懸濁させ、10μg/mLのピューロマイシン及び600μg/mLのハイグロマイシンを加え、増殖及び生存率がトランスフェクション前のレベルに達するまで希釈により継代した。培養物を、内製の産生培地中における1.5E6個の細胞/mLでの培地交換によって産生のために播種した。播種の7日後、条件培地を収集した。
精製
ヘテロ-IgG CPM分子を、プロテインA親和性レジンに続いて、DEVDヘテロ-IgGプロトコルに記載されるとおりであるがSECカラムを省略したSP HP CEXで精製した。各試料を、1mL HiTrap SP HP CEXカラム上にロードし、各pH緩衝液において30CV 0~400mM NaCl勾配で溶出した。ピーク画分を、最終試料に関してMCE、UPLC及びLC-MSによって分析した。プールを、50mM酢酸ナトリウム、pH5.6中で平衡化された10mL SP HPカラム上にロードし、30CV 0~400mM NaCl勾配で溶出した。ピーク画分をプールし、10mM酢酸ナトリウム、9%スクロース、pH5.2中で透析した。
全ての分子に関して、最終タンパク質試料を、Caliper機器(Perkin Elmer)を使用してマイクロ-キャピラリー電気泳動(mCE)によって、及び100mMリン酸ナトリウム、50mM NaCl、7.5% EtOH、pH6.9中においてBEH C-200、4.6×150mmカラムによるUPLC(Waters)によって純度について分析した。LCMS-QCもまた、各分子の正確な質量を決定するために実施された。
SEC分析に関して、約70μgの各試料を、BEH200、4.6×300mmカラムを備えたAcquity UPLC(Waters)に注入した。移動相は、0.3mL/分の流速、pH6.8の100mMリン酸ナトリウム及び500mM NaClであった。データを、Chromeleonソフトウェア(Thermo fisher)で分析した。
バランスのとれた電荷コンストラクト
CPM設計、v103を、4種のヘテロ-IgG分子において評価した(図1及び表1)。各ヘテロ-IgGは、配列多様性の影響を決定するために2つの異なるFv領域を含有した。効率的な対形成はサロゲート分子において明確に実証できたが、追加の配列の導入は、この関連性を歪める可能性がある(1つのポリペプチド鎖の過剰/過小発現など)。さらに、タンパク質発現及び誤対合種に対する目的の種のパーセンテージに対するCH3/CH3’界面にわたるCPM分布の影響も理解するために、2つの異なるシナリオが評価された:i)二成分の正/負の分布の交換及びii)CH3/CH3’界面におけるCPMv103の電荷分布が混合され(HC_1におけるD399K及びK439D/E(青色);HC_2におけるK409D/E、K392D/E及びE356K(緑色))、バランスのとれた電荷分布(BCD)を作り出した後、結果として起きる交換。驚くべきことに、発現データ(プロテインAのカラムで捕捉された)は、シナリオi)の場合、1つの配向(HC_1上の負に荷電した変異K409D/E K392D/E K439D/E(青色)及びHC_2上の正に荷電した変異D399K E356K(緑色))が、3/4分子の発現を約2倍まで増加させることを示した(図1A)。v103に関するこの無作為な配置はまた、タンパク質フォールディング及び不純物に影響を及ぼすように見えた。実際に、ヘテロ-IgG A×Bは、分析的SECによって決定されるとおり、CPM交換時(図1B)に13.3%を超える1/2-Ab(約75kDa)を示していたのが0%付近になった。この約75kDaの不純物は、一方のHCが他方より過剰に発現し、その結果、これらのCPMによって生成される反発電荷のためにホモダイマーを形成できなくなった結果である可能性がある。対照的に、C×D、E×F及びG×H分子は全て、この不純物が増加した(図1B)。これは、相補性決定領域(CDR)のタンパク質配列とCH3/CH3’二量体に配置された5個の荷電変異の間の関連性を示唆しているように見える。著しく対照的に、シナリオiiの交換では、CPMv103BCDの交換はこの4分子パネルの発現に影響を与えず、中央値はほぼ同一であった(図1A)。1/2-Ab種に関して、CPMv103BCD交換におけるA×B分子とは別に、BCD設計は、この約75kDaの不純物を著しく減少させるように見え、これは所望の種のより高い最終的な回収率につながることになる(図1B)。
Figure 2024515301000002

Claims (19)

  1. 第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチド及び第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドを含むヘテロ二量体免疫グロブリンCH3ドメインを含む単離されたヘテロ多量体であって、
    (i)前記第1の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドが、以下のアミノ酸置換:D399K及びK439D/Eを含み;且つ
    (ii)前記第2の免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドが、以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びE356Kを含み;
    アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う、単離されたヘテロ多量体。
  2. 前記ヘテロ多量体が、第1の免疫グロブリンFcポリペプチド及び第2の免疫グロブリンFcポリペプチドを含むヘテロ二量体Fc領域を含み、前記第1の免疫グロブリンFcポリペプチドが、前記第1のCH3ドメインポリペプチドを含み、前記第2のFcポリペプチドが、前記第2のCH3ドメインポリペプチドを含む、請求項1に記載の単離されたヘテロ多量体。
  3. 前記ヘテロ多量体が、第1のヒンジドメインポリペプチド及び前記第1のFcポリペプチドを含む第1のポリペプチド;並びに第2のヒンジドメインポリペプチド及び前記第2のFcポリペプチドを含む第2のポリペプチドを含む、請求項2に記載の単離されたヘテロ多量体。
  4. 前記ヘテロ多量体が、第1の重鎖ポリペプチド及び第1の軽鎖ポリペプチド;並びに第2の重鎖ポリペプチド及び第2の軽鎖ポリペプチドを含む二重特異性抗体コンストラクトであり、
    前記第1の重鎖ポリペプチドが、第1のVHドメイン、第1のCH1ドメインポリペプチド、第1のヒンジドメインポリペプチド、及び前記第1のFcポリペプチドを含み;且つ前記第2の重鎖ポリペプチドが、第2のVHドメイン、第2のCH1ドメインポリペプチド、第2のヒンジドメインポリペプチド、及び前記第2のFcポリペプチドを含む、請求項2に記載の単離されたヘテロ多量体。
  5. i)前記第1の重鎖ポリペプチドが、183位でリジンを含み;
    ii)前記第1の軽鎖ポリペプチドが、176位でグルタミン酸を含み;
    iii)前記第2の重鎖ポリペプチドが、183位でグルタミン酸を含み;且つ
    iv)前記第2の軽鎖ポリペプチドが、176位でリジンを含み;
    アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う、請求項4に記載の単離されたヘテロ多量体。
  6. i)前記第1の重鎖ポリペプチドが、183位でグルタミン酸を含み;
    ii)前記第1の軽鎖ポリペプチドが、176位でリジンを含み;
    iii)前記第2の重鎖ポリペプチドが、183位でリジンを含み;且つ
    iv)前記第2の軽鎖ポリペプチドが、176位でグルタミン酸を含み;
    アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従う、請求項4に記載の単離されたヘテロ多量体。
  7. 前記第1及び第2のCH3ドメインポリペプチドが、IgG1-、IgG2- IgG3-又はIgG4-免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドに由来するか又はその変異バージョンである、請求項1~6のいずれかに記載の単離されたヘテロ多量体。
  8. 前記第1及び第2のCH3ドメインポリペプチドが、IgG1-又はIgG2-免疫グロブリンCH3ドメインポリペプチドに由来するか又はその変異バージョンである、請求項7に記載の単離されたヘテロ多量体。
  9. 多重特異性抗原結合タンパク質を作製する方法であって、前記抗原結合タンパク質が、異なるエピトープに結合する少なくとも2つの結合ドメインを含み、哺乳動物宿主細胞において:
    (i)以下のアミノ酸置換:D399K及びK439D/Eを含む第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
    (ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びE356Kを含む第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドを発現させることを含み;
    アミノ酸残基の付番が、Kabatに記載されるとおりのEUインデックスに従い、
    前記第1の結合ドメインが、前記第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、前記第2の結合ドメインが、前記第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN又はC末端に融合され、且つ
    前記結合ドメインが、VH、scFab、及びscFvからなる群から選択される方法。
  10. 前記第1の結合ドメインが、前記第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、前記多重特異性抗原結合タンパク質がさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している第1の抗体軽鎖を含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記第2の結合ドメインが、前記第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、前記多重特異性抗原結合タンパク質がさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している第2の抗体軽鎖を含む、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 前記第1の結合ドメインが、前記第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、前記多重特異性抗原結合タンパク質がさらに、第1のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含み;且つ
    前記第2の結合ドメインが、前記第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、前記第2の結合ドメインが、scFab及びscFvからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  13. 前記第2の結合ドメインが、前記第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたVHであり、前記多重特異性抗原結合タンパク質がさらに、第2のエピトープに結合するVHと会合している抗体軽鎖を含み;且つ
    前記第1の結合ドメインが、前記第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、前記第1の結合ドメインが、scFab及びscFvからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  14. 前記第1の結合ドメインが、前記第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabであり、前記第2の結合ドメインが、前記第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合されたscFabである、請求項9に記載の方法。
  15. 前記結合ドメインが、それらの対応するCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドのN末端に融合され、前記多重特異性抗原結合タンパク質がさらに、前記CH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの一方、又は両方のいずれかのC末端に融合された第3の結合ドメインを含み、前記第3の結合ドメインが、受容体リガンド VH、scFab、又はscFvである、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド及び前記第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現が、第1の哺乳動物宿主細胞において実施され、前記発現が、前記第1の哺乳動物宿主細胞と同じ型の第2の哺乳動物宿主細胞における
    (i)以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含む第3のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
    (ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びK439D/Eを含む第4のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現と比較してSECによって測定されるとおりの1/2抗体種不純物のより低いパーセンテージをもたらす、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記第1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド及び前記第2のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現が、第1の哺乳動物宿主細胞において実施され、前記発現が、前記第1の哺乳動物宿主細胞と同じ型の第2の哺乳動物宿主細胞における
    (i)以下のアミノ酸置換:D399K及びE356Kを含む第3のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチド;及び
    (ii)以下のアミノ酸置換:K409D/E、K392D/E、及びK439D/Eを含む第4のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ポリペプチドの発現と比較してプロテインA精製後にmg/mlによって測定されるとおり多重特異性抗原結合タンパク質のより高い収量をもたらす、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記第1の抗体軽鎖及び前記第2の抗体軽鎖が、同一である、請求項4に記載のヘテロ多量体。
  19. 前記第1の抗体軽鎖及び前記第2の抗体軽鎖が、同一である、請求項11に記載の方法。
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