JP2024506850A - 同質遺伝子型iPSC由来血管内皮細胞との共培養における機能的なヒトiPSC由来膵島の作製 - Google Patents

同質遺伝子型iPSC由来血管内皮細胞との共培養における機能的なヒトiPSC由来膵島の作製 Download PDF

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Abstract

糖尿病は、世界中で何百万もの人々が罹患している臨床症状であり、インスリン補充療法によって治療されている。限られた供給量の死体膵島、または複数回の外因性インスリン投与に代わるものとして、インスリン産生β細胞を含む、規模拡大可能で適合性のある膵島を作り出すための新しい戦略が必要である。多くの未熟な多ホルモン性細胞が残存し、かつ単ホルモン性状態を達成できないという理由で、依然として改善が必要である。ヒトの発生発達過程で、膵臓は内皮と共発達しかつシグナルを共有し、それによってβ細胞のよりよい成熟を可能にするが、このことは現在の分化プロトコルには含まれていない。臓器チップ(organchip)型マイクロ流体デバイスは、異なる細胞の動的な共培養を可能にするため、インビボ生理学に類似したものとなっている。ここで、本発明者らは、より機能的で単ホルモン性のiPSC由来β細胞を得るために、ヒトiPSC由来膵前駆体をiPSC由来内皮細胞と共培養する臓器チップモデルを確立する。TIFF2024506850000009.tif55128

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月1日に出願された米国仮特許出願第63/144,155号に対する35 U.S.C. §119(e)に基づく優先権の主張を含むものであり、その全体は参照により本明細書に組み入れられる。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された助成金番号DK063491の下に政府の支援を受けて行われたものである。米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
発明の分野
本発明は、細胞を培養する分野、特に、膵島細胞を他の細胞タイプと共に培養する分野に関する。
背景
糖尿病は、世界中で何百万もの人々が罹患しており、主に、グルコースの身体的需要に対して不十分な、皆無かそれに近い量のインスリンを産生する膵島の機能不全が原因である高血糖により特徴づけられる。糖尿病患者の大半は、有害作用を引き起こす可能性のある複数回の外因性インスリン注射に依存しており、患者のなかには、供給源が乏しくかつ長期の免疫抑制を必要とする死体膵島移植を受けている人もいる。したがって、規模拡大可能で適合性のあるインスリン産生β細胞を含む膵島を作り出すための新規戦略が大いに必要とされている。
下記の態様およびそれらの局面は、組成物および方法に関連して記載され、説明されているが、これらは例示および説明を目的とするものであり、範囲を限定するものではない。
本発明の様々な態様は、機能的な人工多能性幹細胞(iPSC)由来膵島(iIslet)を作製する方法を提供し、この方法は、β細胞を含む機能的なiIsletを作製するために、ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)とある量のiPSC由来膵島前駆体とを約10~18日間共培養する工程を含む。
様々な態様において、共培養する工程は、ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)をMATRIGELでコートされたプレート上にプレーティングし、Y27632を補充したフェーズIV EC培地中で培養すること;ある量のiPSC由来膵島(iIslet)を該量のiECの上にプレーティングし、Y-27632を補充した約1/2のフェーズIV iEC培地と約1/2のフェーズVI膵島培地とを含む培地中で約12~16日間培養するかまたはフェーズVI膵島培地(膵島のみの条件)中で約12~16日間培養するかのいずれかで、β細胞を含む機能的なiIsletを作製することを含み得る。
様々な態様において、共培養する工程は、ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)をMATRIGELでコートされたプレート上にプレーティングし、Y27632を補充したフェーズIV EC培地中で培養すること;ある量のiPSC由来膵島(iIslet)を該量のiECの上にプレーティングし、Y-27632を補充した約1/2のフェーズIV iEC培地と約1/2のフェーズVI膵島培地とを含む培地中で約14日間培養するかまたはフェーズVI膵島培地(膵島のみの条件)中で約14日間培養するかのいずれかで、β細胞を含む機能的なiIsletを作製することを含み得る。
様々な態様において、前記方法は、以下によってiECを最初に作製する工程をさらに含み得る:ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をMATRIGEL上にプレーティングすること;iPSCをMATRIGEL中で約2~4日間培養すること;CHIR99021の存在下で約1~3日間培養して中胚葉を作製すること;中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約1~3日間培養して血管前駆体を作製すること;血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約3~8日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製すること。
様々な態様において、前記方法は、以下によってiECを最初に作製する工程をさらに含み得る:ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をMATRIGEL上にプレーティングすること;iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養すること;CHIR99021の存在下で約2日間培養して中胚葉を作製すること;中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約2日間培養して血管前駆体を作製すること;血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約4~7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製すること。
様々な態様において、前記方法は、以下によって前記量の膵島前駆体を最初に作製する工程をさらに含み得る:ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をアクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1~2日間培養すること;アクチビンAおよびFGF2の存在下で約1~3日間培養すること;FGF10、CHIR99021およびノギン(Noggin)の存在下で約1~3日間培養して、後方前腸(posterior foregut)細胞を作製すること;後方前腸細胞をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約3~5日間培養して、膵前駆体を作製すること;膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約3~5日間培養して、膵内分泌前駆体を作製すること;膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約6~8日間培養して、膵島前駆体を作製すること。
様々な態様において、前記方法は、以下によって前記量の膵島前駆体を最初に作製する工程をさらに含み得る:ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をアクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養すること;アクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養すること;FGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸細胞を作製すること;後方前腸細胞をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製すること;膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製すること;および膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製すること。
様々な態様において、膵前駆体は、PDX1+およびSOX9+を発現し得る。
様々な態様において、膵内分泌前駆体は、PDX1+およびNKX6.1+であり得る。
様々な態様において、iIsletは、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1+を発現し得る。
様々な態様において、血管内皮細胞と共培養せずに産生されたβ細胞と比較して、または膵島のみの条件を用いない培養物中で産生されたβ細胞と比較して、膵島のみの条件で産生されたβ細胞において、INS、UCN3、NGN3およびCHGAの発現がアップレギュレートされ得る。
様々な態様において、β細胞は、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合にインスリン分泌を増加させることができる。
様々な態様において、iPSC由来血管内皮細胞(iEC)とiPSC由来膵島前駆体は、同質遺伝子型であり得る。
様々な態様において、血管内皮細胞(iEC)を誘導するために使用されるiPSCと、膵島前駆体を誘導するために使用されるiPSCとは、同じiPSC細胞株または同じドナーに由来し得る。
様々な態様において、iIsletは、ヒトiIsletであり得る。
本発明の様々な態様は、本明細書に記載の方法のいずれか1つによって作製された人工多能性幹細胞(iPSC)由来膵島(iIslet)を提供する。様々な態様では、人工多能性幹細胞(iPSC)由来膵島(iIslet)は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1+を発現し得る。様々な態様では、iIsletは、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合にインスリン分泌を増加させることができる。
本発明の様々な態様は、その必要がある対象における代謝疾患、代謝障害、または代謝状態を改善または治療する方法を提供し、この方法は、本発明のiIsletを対象に投与して、代謝疾患、代謝障害、または代謝状態を改善または治療することを含む。様々な態様では、代謝疾患、代謝障害、または代謝状態は、糖尿病またはインスリン抵抗性であり得る。
本発明の様々な態様は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をアクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養する工程;次いで、アクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養する工程;次いで、FGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸細胞を作製する工程を含む方法を提供する。
様々な態様において、前記方法は、後方前腸細胞をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製する工程をさらに含み得る。
様々な態様において、膵前駆体は、PDX1およびSOX9を発現し得る。
様々な態様において、前記方法は、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程をさらに含み得る。
様々な態様において、膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1であり得る。
様々な態様において、前記方法は、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程をさらに含み得る。
様々な態様において、前記方法は、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して、成熟膵島を作製する工程をさらに含み得る。
様々な態様において、成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現し得る。
様々な態様において、前記方法は、後方前腸をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して膵前駆体を作製する工程;次いで、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して膵内分泌前駆体を作製する工程;次いで、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して膵島前駆体を作製する工程;次いで、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して成熟膵島を作製する工程をさらに含み得る。
本発明の様々な態様は、本明細書に記載の本発明の方法のいずれか1つによって作製された、ある量の成熟膵島を提供する。
本発明の様々な態様は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をMATRIGEL上にプレーティングする工程;iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養する工程;次いで、CHIR99021の存在下で培養して中胚葉を作製する工程を含む方法を提供する。
様々な態様において、前記方法は、中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約2日間培養して、血管前駆体を作製する工程をさらに含み得る。
様々な態様において、前記方法は、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程をさらに含み得る。
様々な態様において、前記方法は、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して成熟ECを作製する工程をさらに含み得る。様々な態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。
様々な態様において、前記方法は、中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約2日間培養して血管前駆体を作製する工程;次いで、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程;次いで、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して成熟ECを作製する工程をさらに含み得る。
本発明の様々な態様は、本明細書に記載の本発明の方法のいずれか1つによって作製された、ある量の成熟ECを提供する。
本発明の様々な態様は、ある量の成熟膵島とある量の成熟ECを含むアセンブリを提供し、ここで、成熟膵島と成熟ECは同質遺伝子型である。
様々な態様において、前記量の成熟膵島は、本明細書に記載の本発明の成熟膵島を含み、前記量の成熟ECは、本明細書に記載の本発明の成熟ECを含み得る。
様々な態様において、成熟膵島、成熟EC、またはその両方はスキャフォールド上に付着され得る。様々な態様では、成熟膵島、成熟EC、またはその両方は、スキャフォールド上にバイオインク(bioink)を用いて付着され得る。様々な態様では、バイオインクとして、フィブリンまたはアルギン酸塩が含まれ得る。
また、本明細書には、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、アクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養し、さらにアクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養し、追加的にFGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸を作製する工程を含む方法が記載される。
他の態様において、前記方法は、後方前腸をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9を発現する。他の態様では、該方法は、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1である。他の態様では、該方法は、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して、成熟膵島を作製する工程を含む。他の態様では、その成熟膵島はC-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現する。
また、本明細書には、本方法によって作製された、ある量の成熟膵島が記載され、この方法は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、アクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養し、さらにアクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養し、追加的にFGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、後方前腸をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9を発現する。他の態様では、該方法は、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1である。他の態様では、該方法は、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して、成熟膵島を作製する工程を含む。他の態様では、その成熟膵島はC-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現する。
また、本明細書には、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、iPSCをMATRIGEL上にプレーティングし、iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養し、CHIR99021の存在下でさらに培養して中胚葉を作製する工程を含む方法が記載される。他の態様では、該方法は、中胚葉をBMP4、FGF2およびVEGFの存在下で約2日間培養して、血管前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して成熟ECを作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をEGM-MV2およびVEGFの存在下で約4~6日間培養して内皮前駆細胞を作製する工程、および内皮前駆細胞をEGM-MV2およびVEGFの存在下で培養して内皮細胞を作製する工程を含む。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。
また、本明細書には、本方法によって作製された、ある量の成熟ECが記載され、この方法は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、iPSCをMATRIGEL上にプレーティングし、iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養し、CHIR99021の存在下でさらに培養して中胚葉を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、中胚葉をBMP4、FGF2およびVEGFの存在下で約2日間培養して、血管前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して成熟ECを作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をEGM-MV2およびVEGFの存在下で約4~6日間培養して内皮前駆細胞を作製する工程、および内皮前駆細胞をEGM-MV2およびVEGFの存在下で培養して内皮細胞を作製する工程を含む。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。
また、本明細書には、ある量の成熟膵島およびある量の成熟ECを含むアセンブリが記載される。他の態様では、成熟膵島は本方法によって作製され、この方法は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、アクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養し、さらにアクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養し、追加的にFGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、後方前腸をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9を発現する。他の態様では、該方法は、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1である。他の態様では、該方法は、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して、成熟膵島を作製する工程を含む。他の態様では、その成熟膵島はC-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現する。他の態様では、成熟ECは、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、iPSCをMATRIGEL上にプレーティングし、iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養し、CHIR99021の存在下でさらに培養して中胚葉を作製する工程を含む方法によって作製される。他の態様では、該方法は、中胚葉をBMP4、FGF2およびVEGFの存在下で約2日間培養して、血管前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して、成熟ECを作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をEGM-MV2およびVEGFの存在下で約4~6日間培養して内皮前駆細胞を作製する工程、および内皮前駆細胞をEGM-MV2およびVEGFの存在下で培養して内皮細胞を作製する工程を含む。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。他の態様では、成熟膵島と成熟ECは同質遺伝子型である。
本発明の他の特徴および利点は、本発明の態様の様々な特徴を例として示す添付図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1は、内分泌膵前駆体マーカーのタンパク質発現を示す。 図2は、発生発達を通しての多能性マーカー(Oct4)と内分泌膵マーカー(Pdx1、Nkx6.1、C-ペプチド)のmRNA発現を示す。 図3は、内皮細胞マーカーのタンパク質発現を示す。 図4は、内皮細胞マーカーのmRNA発現を示す。 図5A~5Bは、共培養システムからの結果を示す。(5A)共培養システムの表示;(5B)iECとiIsletとの直接共培養を用いたGSISの結果。 図6は、β細胞マーカーのmRNA発現を示す。 図7A~7Dは、GSIS動的システムに適応する灌流システムを示す。(A)細胞に培地を流す灌流システム。(B)3Dプリントされた血管構築物に移される平面培養したiEC。(C),(D)少なくとも2週間にわたり血管構築物のキャスト(cast)に付着したままのiEC。 図8A~8Cは、iPSC由来膵内分泌前駆体の作製に成功したことを示す。8A.細部にわたる小分子によるiPSCから膵内分泌前駆体(PEP)のフェーズへの分化の概略的プロトコル。8B.各段階でのマーカーの発現を示す免疫蛍光画像:iPSCではOCT4/SSEA4;DEではFOXA2/SOX17;PPではPDX1/SOX9;およびPEPではPDX1/NKX6.1。この実験では、示されるように、3つの異なる細胞株を使用した。切り取った画像(挿入画像)は、元の画像の1/7に相当する。8C.示されるように、各段階での異なるマーカーのmRNA発現。この実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* P<0.05 vs iPSC。DE:胚体内胚葉(definitive endoderm)。PFG:後方前腸。PP:膵前駆体。PEP:膵内分泌前駆体。Nicotin.:ニコチンアミド。 図8Aの説明を参照のこと。 図8Aの説明を参照のこと。 図9A~9Dは、iPSC由来膵島前駆体の作製を示す。9A.膵内分泌前駆体(PEP)からの膵島前駆体(IP)の作製を最適化するために試験された主なシグナル伝達経路の概略図。9B.主な経路を調節するために試験された小分子の組み合わせは、以下の通りであった:i)Alk5iとT3;ii)Alk5iとT3とノギン;iii)Alk5iとT3とXXI;およびiv)Alk5iとT3とノギンとXXI。膵島のマーカー発現を示す免疫蛍光画像:β細胞ではC-ペプチド(C-PEP)およびNKX6.1;α細胞ではグルカゴン(GCG);δ細胞ではソマトスタチン(SST)。切り取った画像(挿入画像)は、元の画像の1/7に相当する。9C.Bの各条件でのウェルあたりの細胞数。9D.Bの各マーカーおよびそれらの組み合わせの発現率。これらの実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* P<0.05 vs Alk5i, T3; P<0.05 vs Alk5i, T3, ノギン;# P<0.05 vs Alk5i, T3, XXI。PEP:膵内分泌前駆体。IP:膵島前駆体。Nog:ノギン。 図9Aの説明を参照のこと。 図9Aの説明を参照のこと。 図9Aの説明を参照のこと。 図10A~10Dは、iPSC由来の成熟膵島(MI)の成熟過程の最適化を示す。10A.膵島前駆体(IP)から成熟膵島(MI)への成熟を最適化するために試験された主なシグナル伝達経路の概略図。10B.主な経路を調節するために試験された小分子の組み合わせは、以下の通りであった:i)T3;ii)T3とAlk5i;iii)T3とAlk5iとNAC;およびiv)T3とAlk5iとNACとR428。膵島のマーカー発現を示す免疫蛍光画像:β細胞ではC-ペプチド(C-PEP)およびNkx6.1;α細胞ではグルカゴン(GCG);δ細胞ではソマトスタチン(SST)。切り取った画像(挿入画像)は、元の画像の1/7に相当する。10C.Bの各条件でのウェルあたりの細胞数。10D.Bの各マーカーの発現のパーセンテージ。これらの実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* P<0.05 vs T3; P<0.05 vs T3, Alk5i。PEP:膵内分泌前駆体。NAC:N-アセチルシステイン。R248:AXL阻害剤R428。 図10Aの説明を参照のこと。 図10Aの説明を参照のこと。 図10Aの説明を参照のこと。 図11A~11Dは、iPSC由来血管内皮細胞(iEC)の作製に成功したことを示す。11A.iPSCから血管内皮細胞(iEC)への分化の概略的プロトコル。11B.21日目の内皮マーカーの発現を示す免疫蛍光画像:VEGFR2/CD31およびCD144/CD31、および11C.DAPI細胞の発現の%。Dil-Acil-LDL取り込みアッセイを用いて細胞の機能性についてもアッセイした(11B~11C)。11D.分化の異なる日での異なる内皮マーカーのmRNA発現。この実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* P<0.05 vs iPSC。 図11Aの説明を参照のこと。 図11Aの説明を参照のこと。 図11Aの説明を参照のこと。 図12A~12Dは、i-成熟膵島(i-MI)とiECとの直接共培養がi-MIの機能性の増強につながることを示す。12A.直接共培養の概略図:i-MIをiECの上でフェーズVI i-MI培地を供給して2週間共培養した。12B.単独で培養したまたはiECと共培養したi-MIにおける膵内分泌マーカーであるC-ペプチドとNKX.6.1の発現を示す免疫蛍光画像。i-MIを共培養した場合には、C-ペプチド/NKX6.1の発現倍率変化が2倍になった。12C.グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)を通じて細胞の機能性をアッセイした。このグラフには、2.8mMグルコースおよび20mMグルコースに負荷した、i-MI単独と、iECと共培養したi-MIとを比較して、インスリン分泌の倍率変化を示す。12D.2週間の共培養後の異なる膵内分泌マーカーのmRNA発現。この実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。図5Cでは、* p<0.05 vs 2.8mMグルコース i-MIのみ;# p<0.05 vs 20mM i-MI単独。図12Dでは、* p<0.05 vs iPSC; p<0.05 vs i-MI単独。 図12Aの説明を参照のこと。 図12Aの説明を参照のこと。 図12Aの説明を参照のこと。 図13A~13Bは、iEC分化を通しての細胞の形態を示す。13A.継代してMATRIGELでコートされたプレートにプレーティングした後3日目のiPSCコロニーの明視野像。13B.iEC分化のフェーズII終了時の血管前駆体(VP)の明視野像。周縁部のVPは解離後に容易に浮き上がり、MATRIGELでコートされたプレートに平面的に再プレーティングして、iEC分化のフェーズIIIの間に内皮細胞前駆体(EC)へと誘導することができる。 図14A~14Cは、異なる細胞株における膵内分泌前駆体(PEP)のマーカーのタンパク質発現の定量を示す。3つの細胞株:07iCTR-n07、EDi028-AおよびEDi029-Aにおける膵内分泌マーカーPDX1およびNKX6.1のタンパク質発現の定量(DAPI細胞の発現%)。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* p<0.05,** p<0.01,**** p<0.0001。 図15は、iPSCから膵内分泌前駆体(PEP)への分化を通しての多能性マーカーOCT4の遺伝子発現を示す。リアルタイムqPCR(RT-qPCR)を、07iCTR-n05、NCI-N87およびMKN-45ヒト胃がん細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* P<0.05 vs iPSC。 図16は、膵島前駆体(IP)における静的グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)を示す。膵島前駆体(IP)を静的GSISアッセイに負荷した;このアッセイは、2.8mMグルコース溶液(1時間)、次いで20mMグルコース溶液(1時間)、最後に30mM KCl溶液刺激(1時間)を用いた細胞の刺激で構成された。この実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* P<0.05 vs Alk5i, T3条件;& P<0.05 vs 2.8mMグルコース。 図17は、成熟膵島(MI)における静的グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)を示す。成熟膵島(MI)をGSISアッセイに負荷した;このアッセイは、2.8mMグルコース溶液(1時間)、次いで20mMグルコース溶液(1時間)、最後に30mM KCl溶液刺激(1時間)を用いた細胞の刺激で構成された。この実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* P<0.05 vs T3条件。 P<0.05 vs T3, Alk5i条件。# P<0.05 vs T3, Alk5i, NAC条件;& P<0.05 vs 2.8mMグルコース。 図18A~18Bは、iIsletの機能性を高めるための、フェーズVIでの異なる培地条件の試行を示す。18A.機能的な成熟膵島の作製を最適化するために培地中で調節される主要因を示す概略図。18B.次の条件を試した:i)8mMグルコースとITS-Xを含む培地;ii)8mMグルコースを含み、ITS-Xを含まない培地;iii)20mMグルコースとITS-Xを含む培地;およびiv)20mMグルコースを含み、ITS-Xを含まない培地。膵島のマーカー発現を示す免疫蛍光画像:β細胞ではC-ペプチド(C-PEP)およびNKX6.1;α細胞ではグルカゴン(GCG);δ細胞ではソマトスタチン(SST)。切り取った画像(挿入画像)は、元の画像の1/7に相当する。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。IP:膵島前駆体。MI:成熟膵島;Gluc:グルコース;ITS-X:インスリン-トランスフェリン-セレン-エタノールアミン。 図19A~19Cは、成熟膵島(MI)の再凝集(reaggregation)と、機能的なiIsletの機能性を高めるタイミングの試行を示す。19A.機能的な成熟iIsletの作製を最適化するために調節される主要因を示す概略図。19B.次の条件を試した:i)フェーズVIの初日に細胞を再凝集させ、次いで7日間細胞を培養する;およびii)フェーズVIの初日に細胞を再凝集させ、次いで14日間細胞を培養する。膵島のマーカー発現を示す免疫蛍光画像:β細胞ではC-ペプチド(C-PEP)およびNKX6.1;α細胞ではグルカゴン(GCG)。切り取った画像(挿入画像)は、元の画像の1/7に相当する。19C.細胞を静的グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)に負荷した;これは、2.8mMグルコース溶液(1時間)、次いで20mMグルコース溶液(1時間)、最後に30mM KCl溶液刺激(1時間)を用いた細胞の刺激で構成された。これらの実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。* P<0.05 vs 2.8mMグルコース; P<0.05 vs 20mMグルコース;& P<0.05 vs Reag. 28日目。IP:膵島前駆体。MI:成熟膵島。Reag.:再凝集。 図19Aの説明を参照のこと。 図19Aの説明を参照のこと。 図20は、再凝集後の他の細胞タイプが成熟膵島の機能性の欠如に影響を及ぼす可能性があることを示す。再凝集後35日目の膵島のマーカー発現を示す免疫蛍光画像:β細胞ではC-ペプチド(C-PEP)およびKX6.1、α細胞ではグルカゴン(GCG)、膵前駆体(PP)ではPDX1/SOX9、膵管細胞ではPDX1/CK19、および胃/腸マーカーとしてPDX1/CDX2。切り取った画像(挿入画像)は、元の画像の1/7に相当する。これらの実験は07iCTR-n07細胞株を用いて行った。データは平均値±SEMとして示される(n=3/実験)。Reag.:再凝集。 図21は、iECの多能性を示す。 図22A~22Bは、iPSCを内皮細胞に分化させるプロトコルの作成を示す;(22A)該プロトコルの概略図、(22B)5つの異なるiPSC株における21日目のiECの主な血管内皮マーカーのタンパク質発現。 図23A~23Bは、iECの主要マーカーのさらなる特性評価を示す;(22A)11日目にフローサイトメトリーで評価した内皮マーカーCD31およびCD144のタンパク質発現、(22B)iEC分化の複数の日にRT-qPCRで評価した多能性マーカーOCT4およびSOX2の遺伝子発現。 図24A~24Bは、11日目までVEGFAおよびCD31 iECマーカーの発現を高めるためのアンジオポエチン1(Angiopoietin-1)の添加を示す;(24A)11日目における内皮マーカーVEGFAおよびCD31のタンパク質発現、(24B)異なる条件でiECマーカーを発現する細胞の割合。 図25A~25Bは、11日目までCD144マーカーの発現を高めるためのアンジオポエチン1の添加を示す;(25A)11日目における内皮マーカーCD144のタンパク質発現、(25B)異なる条件でiECマーカーを発現する細胞の割合。 図26A~26Bは、21日目までVEGFAおよびCD31 iECマーカーの発現を高めるためのアンジオポエチン1の添加を示す。(26A)21日目における内皮マーカーVEGFAおよびCD31のタンパク質発現。(26B)異なる条件でiECマーカーを発現する細胞の割合。 図27A~27Bは、21日目までCD144マーカーの発現を高めるためのアンジオポエチン1の添加を示す;(27A)21日目における内皮マーカーCD144のタンパク質発現。(27B)異なる条件でiECマーカーを発現する細胞の割合。
詳細な説明
本明細書で引用された全ての参考文献は、完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で使用される技術用語および科学用語は、他に定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解している意味と同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 第3版, 改訂版, J. Wiley & Sons (New York, NY 2006); およびSambrook and Russel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第4版, Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2012) は、当業者に、本出願で使用される多くの用語に対する一般的な指針を提供する。
当業者は、本明細書に記載されたものと類似または同等の多くの方法および材料が、本発明の実施に使用され得ることを認識するであろう。実際、本発明は、記載された方法および材料に限定されるものではない。
本明細書で使用する用語「約」は、言及された数値表示と併用される場合、本明細書で特に規定されない限り、その言及された数値表示のプラスまたはマイナス5%までの、該言及された数値表示を意味する。例えば、「約50%」という表現は、45%~55%の範囲をカバーする。様々な態様では、言及された数値表示と併用される場合の「約」という用語は、特許請求の範囲に特に規定されている場合、その言及された数値表示のプラスまたはマイナス4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.25%までの、該言及された数値表示を意味することができる。
本明細書で使用する「グルコース応答性」という表現は、グルコース刺激アッセイに負荷した場合にインスリンを分泌する細胞の能力を指す。
本明細書で使用する「再現性のある」という用語は、本明細書に記載の様々な分化方法と併せて使用される場合、少なくとも3回の独立した分化ラウンドで成功している方法を指す。
本明細書で使用する「MATRIGEL」とは、例えばCorning Life Sciences社により調製された、Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞から分泌された可溶化基底膜マトリックスを指す。
本明細書で使用する「対象」とは、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、家畜または狩猟動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカクザル、例えばアカゲザル(Rhesus)が含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科動物、例えばイエネコ、およびイヌ科動物、例えばイヌ、キツネ、オオカミが含まれる。「患者」、「個体」および「対象」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。ある態様では、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。さらに、本明細書に記載の方法は、家畜および/またはペットを治療するために使用され得る。いくつかの態様では、対象はヒトである。
対象は、治療を必要とする疾患、障害もしくは状態、または該疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の合併症を患っているか、または有していると以前に診断されているか、または確認されているものであり、任意で、該疾患、障害もしくは状態、または該疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の合併症の治療をすでに受けているものであり得る。あるいは、対象は、疾患、障害もしくは状態、または該疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の合併症を有していると以前に診断されていないものであり得る。例えば、対象は、疾患、障害もしくは状態、または該疾患、障害もしくは状態に関連する1つもしくは複数の合併症の1つ以上のリスク因子を示すものであっても、リスク因子を示さないものであってもよい。特定の疾患、障害もしくは状態の治療を「必要とする対象」とは、その疾患、障害もしくは状態を有していると疑われるか、その疾患、障害もしくは状態を有していると診断されたか、その疾患、障害もしくは状態の治療をすでに受けているまたは治療中であるか、その疾患、障害もしくは状態の治療を受けていないか、あるいはその疾患、障害もしくは状態を発症するリスクがある対象であり得る。
本発明者らは、本明細書において、とりわけ、同じドナーからのiPSC由来膵島(iIslet)と内皮細胞(iEC)を用いた同質遺伝子型の共培養法について記述する;この方法は、β細胞マーカーの高発現および高グルコース負荷と同期したインスリン分泌を示すiIsletのより優れた成熟化と機能性をもたらす。iIsletとiECが同じiPSCドナーから作製されたこと、およびそれらの共培養が際立ってより明確で機能的なβ細胞をもたらしたことは、本発明者らの知る限り初めてのことである。
ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)は、皮膚や血液の細胞などの成人の体細胞に由来しており、そうした体細胞が胚性幹細胞のような状態に遺伝的に再プログラミングされて、無限に増殖する(自己複製)能力と、小分子、転写因子および成長因子の特定のカクテルを用いて3つの胚葉から身体の所望の細胞を生じさせる能力とを与えられている;そのため、iPSCは数限りない分化した細胞を作製するための供給源となっている。廃棄された胚から得られるヒト胚性幹細胞(ESC)が一部で使用されているが、これにはいくつかの倫理上の問題が生じる。倫理上の制限は別として、ESC株のような単一の同種異系細胞源に由来するβ細胞療法は、ヒト白血球抗原(HLA)に対する同種異系免疫のため、レシピエントに対して不応性になる可能性が高い。ESC由来のβ細胞に起因し得る免疫原性を回避するためには、患者自身の血液からのiPSC由来β細胞を利用することが解決策になりそうである。あるいは、意図された米国のレシピエント集団に適合するように最大限の有用性を持つように選択された、最も頻度の高いホモ接合型HLAハプロタイプドナーを集めたiPSCハプロバンクを使用することが、このようなアプローチの拡張性を可能にする。さらに、ESCからβ細胞を作製する戦略の多くは、多ホルモン性(polyhormonal)細胞、すなわち、インスリン/グルカゴン/ソマトスタチン細胞を生じさせる;これらの細胞は、単ホルモン性(monohormonal)インスリン状態を保持することができず、その上インビトロではインスリン分泌に対して低グルコース閾値を有し、この閾値はインビボ移植から数週間後にのみ増幅され、この時点でこれらの細胞はより成熟したプロファイルを獲得する。したがって、複雑なシグナルがインビボでのβ細胞の成熟化の鍵となる可能性が高く、これらのシグナルをインビトロで試験することは、改良されたプロトコルを開発する上で急務である。
内分泌膵臓の発生と成熟に重要であることが分かっているいくつかのシグナルは、周囲の血管内皮細胞(EC)により供給されるが、これらのシグナルは、幹細胞からβ細胞を分化させる以前のプロトコルには含まれていない。ECは血管系の一部であり、現在では、血管系の機能だけでなく、全身の器官の機能にとっても重要な、活動的な器官と考えられている。特に内分泌膵臓では、グルコース量などの外部シグナルを感知して、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンを分泌することによって血糖を維持するという膵島の活発な能動的役割があるため、膵島には血管からの大量の血液供給が必要である。この分野に関する知識は進展してきたものの、ECと内分泌膵臓の相互作用の根底にある正確なメカニズムと経路は完全には解明されていなかった;本発明者らは、それらがインビトロでのiPSC由来β細胞の発生と成熟の鍵を握っていると考えており、このことが、本明細書でさらに説明されるように、本発明者らの研究において探求されてきた。
本発明の様々な態様は、機能的な人工多能性幹細胞(iPSC)由来膵島(iIslet)を作製する方法を提供し、この方法は、β細胞を含む機能的なiIsletを作製するために、ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)とある量のiPSC由来膵島前駆体とを約10~18日間共培養する工程を含む。
様々な態様において、共培養する工程は、ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)をMATRIGELでコートされたプレート上にプレーティングし、Y27632を補充したフェーズIV EC培地中で培養すること;ある量のiPSC由来膵島(iIslet)を該量のiECの上にプレーティングし、Y-27632を補充した約1/2のフェーズIV iEC培地と約1/2のフェーズVI膵島培地とを含む培地中で約12~16日間培養するかまたはフェーズVI膵島培地(膵島のみの条件)中で約12~16日間培養するかのいずれかで、β細胞を含む機能的なiIsletを作製することを含む。様々な態様では、Y27632の濃度は約10μMである。様々な態様では、Y27632の濃度は約8~12μMである。
様々な態様において、共培養する工程は、ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)をMATRIGELでコートされたプレート上にプレーティングし、Y27632を補充したフェーズIV EC培地中で培養すること;ある量のiPSC由来膵島(iIslet)を該量のiECの上にプレーティングし、Y-27632を補充した約1/2のフェーズIV iEC培地と約1/2のフェーズVI膵島培地とを含む培地中で約14日間培養するかまたはフェーズVI膵島培地(膵島のみの条件)中で約14日間培養するかのいずれかで、β細胞を含む機能的なiIsletを作製することを含む。
様々な態様において、前記方法は、共培養する前にiECを作製する工程を含み、ここで、iECは、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をMATRIGEL上にプレーティングする工程;該iPSCをMATRIGEL中で約2~4日間培養する工程;CHIR99021の存在下で約1~3日間培養して中胚葉を作製する工程;中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約1~3日間培養して血管前駆体を作製する工程;および血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約3~8日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程によって作製される。
様々な態様において、前記方法は、共培養する前にiECを作製する工程を含み、ここで、iECは、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をMATRIGEL上にプレーティングする工程;該iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養する工程;CHIR99021の存在下で約2日間培養して中胚葉を作製する工程;中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約2日間培養して血管前駆体を作製する工程;および血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約4~7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程によって作製される。
iECを作製するための様々な態様では、iPSCを小さな細胞コロニーとしてMATRIGELでコートされたプレート上に平面的に植え付ける。様々な態様では、CHIR99021の濃度は約4~8μMである。様々な態様では、CHIR99021の濃度は約6μMである。様々な態様では、BMP4、FGF2、およびVEGFの濃度は、約25ng/ml(BMP4)、約10ng/ml(FGF2)、および約50ng/ml(VEGF)である。様々な態様では、BMP4、FGF2、およびVEGFの濃度は、約20~30ng/ml(BMP4)、約8~12ng/ml(FGF2)、および約40~60ng/ml(VEGF)である。様々な態様では、培地を約1日おきに交換する。様々な態様では、培地をほぼ毎日交換する。様々な態様では、培地を約2日おきに交換する。
様々な態様において、前記方法は、共培養する前に前記量の膵島前駆体を作製する工程を含み、ここで、膵島前駆体は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をアクチビンA、CHIR99021およびROCK阻害剤(例:Y-27632)の存在下で約1~2日間培養する工程;アクチビンAおよびFGF2の存在下で約1~3日間培養する工程;FGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約1~3日間培養して、後方前腸細胞を作製する工程;後方前腸細胞をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約3~5日間培養して、膵前駆体を作製する工程;膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約3~5日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程;膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約6~8日間培養して、膵島前駆体を作製する工程によって作製される。
様々な態様において、前記方法は、共培養する前に前記量の膵島前駆体を作製する工程を含み、ここで、膵島前駆体は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をアクチビンA、CHIR99021およびROCK阻害剤(例:Y-27632)の存在下で約1日間培養する工程;アクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養する工程;FGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸細胞を作製する工程;後方前腸細胞をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製する工程;膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程;膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程によって作製される。
前記量の膵島前駆体を作製するための様々な態様では、iPSCを単細胞に解離し、ROCK阻害剤(例:Y-27632)と共に再播種し、MATRIGELでコートされたプレート上に約300,000細胞/cm2の密度で平面的に植え付けた。様々な態様では、その密度は約250,000~350,000細胞/cm2である。様々な態様では、ROCK阻害剤の濃度は約10mMである。様々な態様では、ROCK阻害剤の濃度は約8~12mMである。様々な態様では、アクチビンA、CHIR99021、およびY-27632の濃度は、約80~120ng/ml(アクチビンA)、約1~3μM CHIR99021、および約8~12μM(Y-27632)である。様々な態様では、アクチビンA、CHIR99021、およびY-27632の濃度は、約100ng/ml(アクチビンA)、約2μM CHIR99021、および約10μM(Y-27632)である。様々な態様では、アクチビンAおよびFGF2の濃度は、約80~120ng/ml(アクチビンA)および約4~6ng/ml FGF2(FGF2)である。様々な態様では、アクチビンAおよびFGF2の濃度は、約100ng/ml(アクチビンA)および約5ng/ml FGF2(FGF2)である。様々な態様では、FGF10、ノギン、RA、およびSANT1の濃度は、約40~60ng/ml FGF10、約40~60ng/mlノギン、約1~3μM RA、および約0.2~0.3μM SANT1である。様々な態様では、FGF10、ノギン、RA、およびSANT1の濃度は、約50ng/ml FGF10、約50ng/mlノギン、約2μM RA、および約0.25μM SANT1である。様々な態様では、ノギン、EGF、およびニコチンアミドの濃度は、約40~60ng/mlノギン、約80~120ng/ml EGF、および約8~12mMニコチンアミドである。様々な態様では、ノギン、EGF、およびニコチンアミドの濃度は、約50ng/mlノギン、約100ng/ml EGF、および約10mMニコチンアミドである。様々な態様では、ノギン、T3、およびAlk5i IIの濃度は、約40~60ng/mlノギン、約0.5~1.5μM T3、および約8~10μM Alk5i IIである。様々な態様では、ノギン、T3、およびAlk5i IIの濃度は、約50ng/mlノギン、約1μM T3、および約10μM Alk5i IIである。様々な態様では、培地を約1日おきに交換する。様々な態様では、培地をほぼ毎日交換する。様々な態様では、培地を約2日おきに交換する。
様々な態様において、膵前駆体はPDX1+およびSOX9+を発現する。
様々な態様において、膵内分泌前駆体はPDX1+およびNKX6.1+である。
様々な態様において、iIsletはC-ペプチド、グルカゴン、およびNKX6.1+を発現する。
様々な態様において、血管内皮細胞と共培養せずに産生されたβ細胞と比較して、または膵島のみの条件を用いない培養物中で産生されたβ細胞と比較して、膵島のみの条件で産生されたβ細胞において、INS、UCN3、NGN3およびCHGAの発現がアップレギュレートされる。
様々な態様において、β細胞は、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合に、インスリン分泌を増加させる。様々な態様では、β細胞は、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合に、インスリン分泌を少なくとも50%増加させる。様々な態様では、β細胞は、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合に、インスリン分泌を少なくとも100%増加させる。様々な態様では、β細胞は、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合に、インスリン分泌を少なくとも200%増加させる。様々な態様では、β細胞は、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合に、インスリン分泌を少なくとも300%増加させる。様々な態様では、β細胞は、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合に、インスリン分泌を少なくとも400%増加させる。様々な態様では、β細胞は、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合に、インスリン分泌を少なくとも500%増加させる。
様々な態様において、iPSC由来血管内皮細胞(iEC)とiPSC由来膵島前駆体は、同質遺伝子型である。
様々な態様において、血管内皮細胞(iEC)を誘導するために使用されるiPSCと、膵島前駆体を誘導するために使用されるiPSCは、同じiPSC細胞株由来、または同じドナー由来である。
様々な態様において、血管内皮細胞(iEC)を誘導するために使用されるiPSCと、膵島前駆体を誘導するために使用されるiPSCは、iIsletを受け取る予定の対象から作製される。つまり、iPSCの供給源細胞および作製されたiIsletは、同一人物に対してパーソナライズされる。
様々な態様において、iIsletは、ヒトiIsletである。
本発明の様々な態様は、本明細書に記載の本発明の方法のいずれか1つによって作製されたiIsletを提供する。
本発明の様々な態様は、iIsletを提供する。様々な態様では、iIsletは、C-ペプチド、グルカゴン、およびNKX6.1+を発現する。様々な態様では、iIsletは、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合に、インスリン分泌を増加させる。
様々な態様において、iIsletは、本明細書に記載の本発明の方法によって作製されたiIsletを含む組成物からのものである。例えば、本発明の独創的な方法を用いてiIsletを作製し、次いで、そのiIsletを保存のために凍結する。別の例では、本発明の独創的な方法を用いてiIsletを作製し、そのiIsletを複数回継代する。したがって、これらの継代されたiIsletは、たとえ本明細書に記載の独創的な方法によって直接作製されていないとしても、本明細書に記載の本発明の方法によって作製されたiIsletを含む組成物中に含まれる。
本発明の様々な態様は、その必要がある対象における代謝疾患、代謝障害、または代謝状態を改善または治療する方法を提供し、この方法は、本発明のiIsletを対象に投与して、該状態を改善または治療することを含む。様々な態様では、代謝疾患、代謝障害、または代謝状態は、糖尿病またはインスリン抵抗性である。
本発明の様々な態様は、本発明のiIsletを、その必要がある対象に投与する方法を提供し、この方法は、本発明のiIsletをその必要がある対象に投与することを含み、該対象は代謝疾患、代謝障害または代謝状態の改善または治療を必要としている。様々な態様では、代謝疾患、代謝障害、または代謝状態は、糖尿病またはインスリン抵抗性である。
本明細書に記載の様々な態様は、細胞分化の方法を提供し、この方法は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、アクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養し、アクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間さらに培養し、FGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間さらに培養して、後方前腸を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、後方前腸をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して膵前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9の1つ以上を発現する。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9を発現する。他の態様では、該方法は、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1の1つ以上を発現する。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1である。他の態様では、該方法は、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程を含む。いくつかの態様では、培地を1日おきに交換する。他の態様では、該方法は、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して、成熟膵島を作製する工程を含む。いくつかの態様では、培地を1日おきに交換する。他の態様では、その成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、その成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)を発現する。様々な態様では、膵島前駆体は多ホルモン性である。様々な態様では、成熟膵島は単ホルモン性である。例えば、多ホルモン性細胞は、インスリン/グルカゴン/ソマトスタチンである。一方、単ホルモン性細胞は、C-ペプチド/グルカゴンである。様々な態様において、成熟膵島はインスリンを分泌し、かつ/またはグルコース応答性である。上記の各成長因子は0.25ng/ml~250ng/mlの濃度で添加され、小分子は0.1μM~2.5mMで添加される。様々な態様では、上記の各成長因子は、約0.25ng/ml~1ng/ml、または1ng/ml~10ng/ml、または10ng/ml~100ng/ml、または100ng/ml~200ng/ml、または200ng/ml~300ng/mlの濃度で添加される。様々な態様では、上記の各小分子は、約0.1μM~1μM、または1μM~10μM、または10μM~50μM、または50μM~100μM、または100μM~1mM、または1mM~5mMの濃度で添加される。
例えば、MATRIGELでコートされたプレート上に維持されたiPSC(OCT4発現>90%)をアキュターゼ(Accutase)で単細胞に解離し、ROCK阻害剤Y-27632(10mM,R&D Systems社)と共に再播種し、mTeSR培地を用いて300,000細胞/cm2の密度でMATRIGELでコートされたプレート上に平面的に植え付けた。24時間後、アクチビンA(100ng/ml,R&D Systems社)とCHIR99021(2μM,XcessBio社)とY-27632(10μM)の組み合わせを1日間、次いでアクチビンA(100ng/ml)とFGF2(5ng/ml,PeproTech社)の組み合わせを2日間用いて、iPSCを胚体内胚葉(DE - フェーズI)に方向づけた。次に、後方前腸(PFG - フェーズII)のパターン形成のために、FGF10(50ng/ml,PeproTech社)とCHIR99021(0.25μM)とノギン(50ng/ml,PeproTech社)の組み合わせを2日間使用した。細胞をPDX1/SOX9膵前駆体(PP - フェーズIII)に方向づけるために、FGF10(50ng/ml)とノギン(50ng/ml)とRA(2μM,Cayman社)とSANT1(0.25μM,Sigma社)の組み合わせを4日間使用した。その後、ノギン(50ng/ml)、EGF(100ng/ml,PeproTech社)およびニコチンアミド(10mM,Sigma社)で4日間処理して、PDX1/NKX6.1膵内分泌前駆体(PEP - フェーズIV)を誘導した。膵島前駆体(IP - フェーズV)を作製するために、ノギン(50ng/ml)とT3(1μM,Sigma社)とAlk5i II(10μM,Axxora社)の組み合わせを7日間使用し、その間培地を1日おきに交換した。膵島(MI - フェーズVI)の成熟化には、T3(1μM)とAlk5i II(10μM)とAXL阻害剤R428(2mM,Selleckchem社)と抗酸化剤N-アセチルシステインNAC(1mM,Sigma社)の組み合わせを14日間使用し、その間培地を1日おきに交換した。
様々な態様において、iPSCを単細胞に解離し、ROCK阻害剤(例:Y-27632)と共に再播種し、約300,000細胞/cm2の密度でMATRIGELでコートされたプレート上に平面的に植え付けた。様々な態様では、密度は約250,000~350,000細胞/cm2である。様々な態様では、ROCK阻害剤の濃度は約10mMである。様々な態様では、ROCK阻害剤の濃度は約8~12mMである。様々な態様では、アクチビンA、CHIR99021、およびY-27632の濃度は、約80~120ng/ml(アクチビンA)、約1~3μM CHIR99021、および約8~12μM(Y-27632)である。様々な態様では、アクチビンA、CHIR99021、およびY-27632の濃度は、約100ng/ml(アクチビンA)、約2μM CHIR99021、および約10μM(Y-27632)である。様々な態様では、アクチビンAおよびFGF2の濃度は、約80~120ng/ml(アクチビンA)および約4~6ng/ml FGF2(FGF2)である。様々な態様では、アクチビンAおよびFGF2の濃度は、約100ng/ml(アクチビンA)および約5ng/ml FGF2(FGF2)である。様々な態様では、FGF10、ノギン、RA、およびSANT1の濃度は、約40~60ng/ml FGF10、約40~60ng/mlノギン、約1~3μM RA、および約0.2~0.3μM SANT1である。様々な態様では、FGF10、ノギン、RA、およびSANT1の濃度は、約50ng/ml FGF10、約50ng/mlノギン、約2μM RA、および約0.25μM SANT1である。様々な態様では、ノギン、EGF、およびニコチンアミドの濃度は、約40~60ng/mlノギン、約80~120ng/ml EGF、および約8~12mMニコチンアミドである。様々な態様では、ノギン、EGF、およびニコチンアミドの濃度は、約50ng/mlノギン、約100ng/ml EGF、および約10mMニコチンアミドである。様々な態様では、ノギン、T3、およびAlk5i IIの濃度は、約40~60ng/mlノギン、約0.5~1.5μM T3、および約8~10μM Alk5i IIである。様々な態様では、ノギン、T3、およびAlk5i IIの濃度は、約50ng/mlノギン、約1μM T3、および約10μM Alk5i IIである。様々な態様では、培地を約1日おきに交換する。様々な態様では、培地をほぼ毎日交換する。様々な態様では、培地を約2日おきに交換する。
本明細書に記載の様々な態様は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)由来の成熟膵島を提供する。他の態様では、その成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、その成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)を発現する。様々な態様では、膵島前駆体は多ホルモン性である。様々な態様では、成熟膵島は単ホルモン性である。例えば、多ホルモン性細胞は、インスリン/グルカゴン/ソマトスタチンである。一方、単ホルモン性細胞は、C-ペプチド/グルカゴンである。様々な態様では、成熟膵島はインスリンを分泌し、かつ/またはグルコース応答性である。様々な態様では、成熟膵島細胞は、グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)アッセイにおいてグルコース応答性である。様々な態様では、GSISアッセイは静的である。様々な態様では、GSISアッセイは動的である。様々な態様において、GSISには、血管新生チャネル(vascularized channel)として組織化された成熟内皮細胞とアセンブリを形成している成熟膵島細胞が含まれ、この場合、その血管新生チャネルは成熟膵島細胞に対してグルコース負荷をすることができる。
本明細書に記載の様々な態様は、本方法によって作製された、ある量の成熟膵島を提供する;この方法は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、アクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養し、さらにアクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養し、追加的にFGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、後方前腸をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して膵前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9の1つ以上を発現する。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9を発現する。他の態様では、該方法は、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して膵内分泌前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1の1つ以上を発現する。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1である。他の態様では、該方法は、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して膵島前駆体を作製する工程を含む。いくつかの態様では、培地を1日おきに交換する。他の態様では、該方法は、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して成熟膵島を作製する工程を含む。いくつかの態様では、培地を1日おきに交換する。他の態様では、その成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、その成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの2つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの3つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)を発現する。様々な態様では、膵島前駆体は多ホルモン性である。様々な態様では、成熟膵島は単ホルモン性である。例えば、多ホルモン性細胞は、インスリン/グルカゴン/ソマトスタチンであり得る。一方、単ホルモン性細胞は、C-ペプチド/グルカゴンである。様々な態様では、成熟膵島はインスリンを分泌し、かつ/またはグルコース応答性である。様々な態様では、成熟膵島細胞は、グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)アッセイにおいてグルコース応答性である。様々な態様では、GSISアッセイは静的である。様々な態様では、GSISアッセイは動的である。様々な態様において、GSISには、血管新生チャネルとして組織化された成熟内皮細胞とアセンブリを形成している成熟膵島細胞が含まれ、この場合、その血管新生チャネルは成熟膵島細胞に対してグルコース負荷をすることができる。
本明細書に記載の様々な態様は、細胞分化の方法を提供し、この方法、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、iPSCをMATRIGEL上にプレーティングし、iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養し、CHIR99021の存在下でさらに培養して、中胚葉を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約2日間培養して血管前駆体を作製する工程を含む。
様々な態様では、iPSCをMATRIGELでコートされたプレート上に小さな細胞コロニーとして平面的に植え付ける。様々な態様では、CHIR99021の濃度は約4~8μMである。様々な態様では、CHIR99021の濃度は約6μMである。様々な態様では、BMP4、FGF2、およびVEGFの濃度は、約25ng/ml(BMP4)、約10ng/ml(FGF2)、および約50ng/ml(VEGF)である。様々な態様では、BMP4、FGF2、およびVEGFの濃度は、約20~30ng/ml(BMP4)、約8~12ng/ml(FGF2)、および約40~60ng/ml(VEGF)である。様々な態様では、培地を約1日おきに交換する。様々な態様では、培地をほぼ毎日交換する。様々な態様では、培地を約2日おきに交換する。
いくつかの態様では、血管前駆体を解離し、約85,000~100,000細胞/cm2の密度で再プレーティングする。いくつかの態様では、血管前駆体を解離し、約85,000細胞/cm2、または約85,000細胞/cm2、または約90,000細胞/cm2、または約95,000細胞/cm2、または約100,000細胞/cm2、または約105,000細胞/cm2の密度で再プレーティングする。他の態様では、該方法は、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程を含む。いくつかの態様では、培地を1日おきに交換する。他の態様では、EC前駆体をさらに約3日間培養する。他の態様では、EC前駆体を解離し、MATRIGELでコートされたプレート上に再プレーティングする。他の態様では、該方法は、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して、成熟ECを作製する工程を含む。いくつかの態様では、その成熟ECをMATRIGELでコートされたプレート上に再プレーティングする。他の態様では、該方法は、成熟ECをVEGFと共に約10日間培養する工程を含む。他の態様では、血管前駆体と内皮前駆体をアンジオポエチン1の存在下で培養する。様々な態様では、血管前駆体と内皮前駆体をアンジオポエチン1の存在下で分化4日目から21日目まで培養する。他の態様では、該方法は、血管前駆体をEGM-MV2およびVEGFの存在下で約4~6日間培養して内皮前駆細胞を作製する工程と、内皮前駆細胞をEGM-MV2およびVEGFの存在下で培養して成熟内皮細胞を作製する工程を含む。いくつかの態様では、培地を1日おきに交換する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。上記の各成長因子は0.25ng/ml~250ng/mlの濃度で添加され、小分子は0.1μM~2.5mMで添加される。
例えば、iPSCから膵島(iIslet)を作製するために、本発明者らは、ロバストで再現性のあるプロトコルを開発した。簡単に説明すると、MATRIGELでコートされたプレート上に維持されたiPSC(OCT4発現>90%)をアキュターゼで単細胞に解離し、ROCK阻害剤Y-27632(10mM,R&D Systems社)と共に再播種し、mTeSR培地を用いて300,000細胞/cm2の密度でMATRIGELでコートされたプレート上に平面的に植え付けた。24時間後、アクチビンA(100ng/ml,R&D Systems社)とCHIR99021(2μM,XcessBio社)とY-27632(10μM)の組み合わせを1日間、次いでアクチビンA(100ng/ml)とFGF2(5ng/ml,PeproTech社)の組み合わせを2日間用いて、iPSCを胚体内胚葉(DE - フェーズI)に方向づけた。次に、後方前腸(PFG - フェーズII)のパターン形成のために、FGF10(50ng/ml,PeproTech社)とCHIR99021(0.25μM)とノギン(50ng/ml,PeproTech社)の組み合わせを2日間使用した。細胞をPDX1/SOX9膵前駆体(PP - フェーズIII)に方向づけるために、FGF10(50ng/ml)とノギン(50ng/ml)とRA(2μM,Cayman社)とSANT1(0.25μM,Sigma社)の組み合わせを4日間使用した。その後、ノギン(50ng/ml)、EGF(100ng/ml,PeproTech社)およびニコチンアミド(10mM,Sigma社)で4日間処理してPDX1/NKX6.1膵内分泌前駆体(PEP - フェーズIV)を誘導した。膵島前駆体(IP - フェーズV)を作製するために、ノギン(50ng/ml)とT3(1μM,Sigma社)とAlk5i II(10μM,Axxora社)の組み合わせを7日間使用し、その間培地を1日おきに交換した。膵島(MI - フェーズVI)の成熟化には、T3(1μM)とAlk5i II(10μM)とAXL阻害剤R428(2mM,Selleckchem社)と抗酸化剤N-アセチルシステインNAC(1mM,Sigma社)の組み合わせを14日間使用し、その間培地を1日おきに交換した。分化を通して使用した基本培地の配合を表2にまとめてある。
本明細書に記載の様々な態様は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)由来の成熟内皮細胞(EC)を提供する。他の態様では、その成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの2つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの3つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの4つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。
本明細書に記載の様々な態様は、本方法によって作製された、ある量の成熟内皮細胞(EC)を提供する;この方法は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、iPSCをMATRIGEL上にプレーティングし、iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養し、CHIR99021の存在下でさらに培養して中胚葉を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、中胚葉をBMP4、FGF2およびVEGFの存在下で約2日間培養して、血管前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程を含む。いくつかの態様では、培地を1日おきに交換する。他の態様では、血管前駆体を酵素的に解離し(例えば、アキュターゼ)、MATRIGELでコートされたプレートに85,000~100,000細胞/cm2の密度で再プレーティングして、EC前駆体を作製する。他の態様では、該方法は、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して成熟ECを作製する工程を含む。他の態様では、血管前駆体と内皮前駆体をアンジオポエチン1の存在下で培養する。様々な態様では、血管前駆体と内皮前駆体をアンジオポエチン1の存在下で分化4日目から21日目まで培養する。他の態様では、該方法は、血管前駆体をEGM-MV2およびVEGFの存在下で約4~6日間培養して成熟内皮前駆細胞を作製する工程と、内皮前駆細胞をEGM-MV2およびVEGFの存在下で培養して成熟内皮細胞を作製する工程とを含む。いくつかの態様では、培地を1日おきに交換する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの2つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの3つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの4つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。
本明細書に記載の様々な態様は、ある量の成熟膵島とある量の成熟ECとを含むアセンブリを提供する。他の態様では、成熟膵島と成熟ECは同質遺伝子型である。いくつかの態様では、このアセンブリはスキャフォールドのような構築物をさらに含む。様々な態様では、成熟膵島、成熟EC、またはその両方はスキャフォールド上に付着される。様々な態様では、成熟膵島、成熟EC、またはその両方は、スキャフォールド上にバイオインクを用いて付着される。様々な態様では、バイオインクとして、フィブリンまたはアルギン酸塩が挙げられる。
他の態様では、成熟膵島は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、アクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養し、さらにアクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養し、追加的にFGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸を作製する工程を含む方法によって作製される。他の態様では、該方法は、後方前腸をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9の1つ以上を発現する。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9を発現する。他の態様では、該方法は、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1の1つ以上を発現する。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1である。他の態様では、該方法は、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して、成熟膵島を作製する工程を含む。他の態様では、その成熟膵島はC-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、その成熟膵島はC-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)を発現する。
他の態様では、成熟ECは、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、iPSCをMATRIGEL上にプレーティングし、iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養し、CHIR99021の存在下でさらに培養して中胚葉を作製する工程を含む方法によって作製される。他の態様では、該方法は、中胚葉をBMP4、FGF2およびVEGFの存在下で約2日間培養して、血管前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して、成熟ECを作製する工程を含む。他の態様では、血管前駆体と内皮前駆体をアンジオポエチン1の存在下で培養する。様々な態様では、血管前駆体と内皮前駆体をアンジオポエチン1の存在下で分化4日目から21日目まで培養する。他の態様では、該方法は、血管前駆体をEGM-MV2およびVEGFの存在下で約4~6日間培養して成熟内皮前駆細胞を作製する工程と、内皮前駆細胞をEGM-MV2およびVEGFの存在下で培養して成熟内皮細胞を作製する工程とを含む。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの2つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの3つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの4つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。
本明細書に記載の様々な態様は、本明細書に記載の方法により作製された成熟膵島、本明細書に記載の方法により作製された内皮細胞、またはその両方を、その必要がある対象に投与する方法を提供する。様々な態様では、その対象は代謝疾患、代謝障害および/または代謝状態を患っている。様々な態様では、代謝障害および/または代謝状態は、糖尿病および/またはインスリン抵抗性である。様々な態様では、該細胞は人工多能性幹細胞(iPSC)由来の細胞である。様々な態様では、膵島細胞、内皮細胞、またはその両方は、該対象に対して同質遺伝子型である。様々な態様では、本明細書に記載の方法により作製された成熟膵島、本明細書に記載の方法により作製された内皮細胞、またはその両方は、代謝疾患、障害および/または状態を調節することができる。様々な態様では、本明細書に記載の方法により作製された成熟膵島、本明細書に記載の方法により作製された内皮細胞、またはその両方は、代謝疾患、障害および/または状態を治療することができる。
他の態様において、成熟膵島は、本方法によって作製され、この方法は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、アクチビンA、CHIR99021およびY-27632の存在下で約1日間培養し、さらにアクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養し、追加的にFGF10、CHIR99021およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、後方前腸をFGF10、ノギン、RAおよびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9の1つ以上を発現する。他の態様では、その膵前駆体は、PDX1およびSOX9を発現する。他の態様では、該方法は、膵前駆体をノギン、EGFおよびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1の1つ以上を発現する。他の態様では、その膵内分泌前駆体は、PDX1およびNKX6.1である。他の態様では、該方法は、膵内分泌前駆体をノギン、T3およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して、成熟膵島を作製する工程を含む。他の態様では、その成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、C-ペプチド、グルカゴンおよびNKX6.1を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの2つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)のうちの3つ以上を発現する。他の態様では、成熟膵島は、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)およびクロモグラニンA(CHGA)を発現する。
他の態様において、成熟ECは、本方法によって作製され、この方法は、ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)を準備し、iPSCをMATRIGEL上にプレーティングし、iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養し、CHIR99021の存在下でさらに培養して中胚葉を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、中胚葉をBMP4、FGF2およびVEGFの存在下で約2日間培養して、血管前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程を含む。他の態様では、該方法は、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して成熟ECを作製する工程を含む。他の態様では、血管前駆体と内皮前駆体をアンジオポエチン1の存在下で培養する。様々な態様では、血管前駆体と内皮前駆体をアンジオポエチン1の存在下で分化4日目から21日目まで培養する。他の態様では、該方法は、血管前駆体をEGM-MV2およびVEGFの存在下で約4~6日間培養して成熟内皮前駆細胞を作製する工程と、内皮前駆細胞をEGM-MV2およびVEGFの存在下で培養して成熟内皮細胞を作製する工程とを含む。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの1つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの2つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの3つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLのうちの4つ以上を発現する。他の態様では、成熟ECは、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する。さらなる情報は、米国仮出願第62/647,548号およびPCT出願番号PCT/US2019/023749に見いだされ、これらは参照により本明細書に完全に組み入れられる。
実施例1
インビトロで誘導される機能的なiIsletの作製を促進する上でのhiPSC由来の血管内皮細胞(iEC)と膵島(iIslet)の特定の細胞集団の寄与度を調べる
本発明者らは、複数のhiPSC株からiIslet前駆体(PDX1/NKX6.1)と血管iECを作製する方法を開発することに成功した。これらの細胞を作製した後、本発明者らは、iIslet前駆体をiECと共培養する様々な方法を試験し、グルコースで負荷した場合にiECがiIsletのインスリン分泌を改善する最適なアプローチを見いだした。しかしながら、iIslet機能の増強に寄与する、iECとiIsletの間で交換される正確な細胞組成とシグナルは、いまだ研究されていない。そこで、本発明者らは、シングルセルRNAシーケンシング(sc RNA-seq)を用いたディープ・シングルセルトランスクリプトーム解析(deep single cell transcriptomic analyses)により、iECと共培養したiIsletにおいて異なって発現される細胞組成およびメカニズムの本質を探索する。
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、iECと共培養したiIsletは、単独で作製されたiIsletと比較して、機能性が増強されているため、iECと共培養したiIsletにはより多くの単ホルモン性β細胞が存在しており、インスリン分泌機構に関連する経路のアップレギュレーションが起こっていると、本発明者らは考えている。
エクスビボ動的灌流システム
ヒトiIsletの機能性を試験するための新規なエクスビボ動的灌流システムを確立する。本発明者らは、静的アッセイ(GSIS)を用いて、高濃度のグルコースに負荷した場合に、単独で培養したiIsletと比較して、iECと共培養したiIsletがインスリン分泌の増加を示すことを見いだした。エクスビボでより生理学的な方法でiIsletの機能性をよりよく特徴づけるために、本発明者らは、新規な3Dバイオプリントされた血管新生iIsletプラットフォームにおいて動的GSISによりiIsletの機能性を評価する予定である;このプラットフォームは、iIsletがiEC血管新生チャネルを通してグルコースで動的に負荷される、灌流システムで構成されている。
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、この新規なエクスビボの3Dバイオプリントされたヒト血管新生iIsletプラットフォームにおける、iECとの共培養において作製されたiIsletは、動的アッセイにおいて、より高いインスリン分泌を示すと考えられる。
インビトロで、およびエクスビボの3Dバイオプリントされたヒト血管新生iIsletシステムで、iIsletのよりよい成熟度と機能性を得るために、iIsletが同質遺伝子型iEC(同じドナー由来)と共培養されたということは、初めてのことである。重要な点として、本発明者らは、最先端のツールであるsc RNA-seqを用いて、この相互作用の根底にあるメカニズムと経路を示すことができるようになるだろう。
意義
膵島とECが同じhiPSCドナーから作製されるという事実は、極めて重要なアプローチである;なぜならば、これらの細胞を一緒に同じ糖尿病患者に移植して戻すことができ、移植の免疫反応を最小限に抑えることができるためである。さらに、この適用例は、sc RNAseq解析を用いて、細胞集団の不均一性をよりよく理解し、かつiECと共培養したiIsletの機能性増強に特定の細胞タイプがどのように寄与するかを、この表現型に寄与する可能性のある経路と共に、よりよく理解するための目新しさ(novelty)をもたらす。特に、強力なiPSC技術と3Dバイオプリンティング技術を組み合わせることによって、本発明者らは、iIsletの機能性をよりよく特徴づけるための、新規なエクスビボの3Dバイオプリントされたヒト血管新生(iECを使用)iIsletプロトタイプを開発することを提案する;これは、インビボでのインスリン分泌に関してβ細胞の生理機能を非常によく模倣するものであろう。
実験デザイン
全体的な目標は、iECと共培養したiIsletにおいて異なって発現される細胞組成とメカニズムの本質を理解すること、およびヒトの生理機能を非常によく模倣する、iIsletの機能をよりよく特徴づけるための新規な3Dバイオプリントされた血管新生iIsletプラットフォームを確立することである。
インビトロで誘導される機能的なiIsletの作製を促進する上でのhiPSC由来の血管内皮細胞(iEC)と膵島(iIslet)の特定の細胞集団の寄与度を調べるために、本発明者らは、複数のhiPSC株を、高割合のPDX1/NKX6.1細胞を含む平面培養において膵島(iIslet)前駆体へと分化させるための、ロバストで再現性のあるプロトコルを開発した。各細胞株について、少なくとも3ラウンドの分化を行い、試験した3つの異なる細胞株のタンパク質発現を図1に示す;図1は、この方法のロバスト性を実証している。重要なことは、図2に示すように、これらの細胞が、iPSC段階と比較して、それらの分化を通じて内分泌マーカーのmRNA発現を増加させたと同時に、多能性マーカーの発現を減少させたことである。内分泌マーカーを高発現するiIslet前駆体と、β細胞前駆体のマーカー(C-ペプチド)を、高いインスリン含量に加えて、含む細胞も作製された。しかし、これらの細胞は、グルコース負荷を繰り返してもインスリンを確実に分泌しなかった。そこで、本発明者らは、hiPSC由来のEC(iEC)を作製し、それらをiIslet前駆体と共培養することによって、iIsletの機能性の向上を試みることができると推測した。
iECを作製するために、本発明者らは、CD31、VEGF-A、VEGF-A受容体(VEGFR2)、CD144などの複数の内皮マーカーを高発現するiECをもたらすプロトコルを開発した。複数のhiPSC株(4つのhiPSC株)におけるこのiECプロトコルの再現性と効率は、20日目に2つの細胞株から示される(図3)。さらに、本発明者らのiECは、iPSC段階と比較して、それらの分化を通じて血管ECマーカーのmRNA発現の増加を示し、それは、陽性対照として用いたヒト臍帯静脈細胞(HUVEC)のマーカーの発現と類似していた(図4)。重要なことは、これらの細胞が、培地からのアセチル化低密度リポタンパク質(Ac-LDL)の取り込みによって測定されるように(図3)、機能的であったことである;Ac-LDLの取り込みは、長期にわたりECの機能性を試験するために使用されてきた機能アッセイである。
本発明者らは次に、iIslet前駆体をiECと共培養するための様々な方法を試験した(図5A)。本発明者らの最初の試みは、トランスウェル(transwell)を用いてそれらを共培養することであった;そこでは、シグナルが培地を通して細胞間で交換されるが、細胞同士の直接的な接触はない。そのために、iECを同じドナー由来のiIslet前駆体に導入し、それらを2週間にわたって共培養した;この時点でiIslet前駆体はより成熟したiIsletへとさらに発達した。本発明者らは、インサートの上にあるiECと、プレートの底面にあるiIslet前駆体を試験し、その逆も試験した。この方法を用いて、本発明者らは、iECをインサート上で、iIsletをプレートの底面で培養した場合、培養終了時にiIsletでC-ペプチドタンパク質のより高い発現を観察した。ところが、iIsletをiECとトランスウェル上で共培養する方法はいずれもiIsletの機能性を改善しなかった;なぜならば、iIsletは依然として大量のインスリンを含有していたが、それらは生理学的な方法でグルコース負荷に応答しなかったからである。そこで、ECと膵臓細胞との間の細胞間相互作用が内分泌膵臓の発達過程で極めて重要であるという以前の証拠に基づいて、本発明者らは、iIslet前駆体を同じドナー由来のiECと再び2週間にわたり直接共培養することにした。本発明者らは、iECをプレートの底面に、iIsletをiECの上に、またはその逆など、様々な方法を試してみた。本発明者らは、iECが2週間にわたりiIsletの下にある場合、分化終了時のiIsletが生理学的な方法でグルコース負荷に応答した、すなわち、高グルコース濃度の培地に負荷した場合に、それらがインスリン分泌を増加させた、ことを見いだした。このことは、単独で培養した場合のiIsletには観察されなかった(図5B)。重要なことは、iECと直接共培養したiIsletが、iPSC段階および単独で培養したiIsletと比較して、インスリン(INS)、ウロコルチン3(UCN3)、ニューロゲニン3(NGN3)、クロモグラニンA(CHGA)などの成熟膵β細胞の複数のマーカーのより高いmRNA発現をも示したことである(図6)。
まとめると、これらの結果は、膵島の発達過程でiIslet前駆体をiECと共培養すると、成熟度および機能性が向上したiIsletが生じることを示している。しかし、iIslet機能の増強に寄与するiECとiIsletの間で交換される正確な細胞組成とシグナルは、いまだ研究されていない。したがって、本発明者らは、ここで、シングルセルRNAシーケンシング(sc RNA-seq)を用いたディープ・シングルセルトランスクリプトーム解析により、iECと共培養したiIsletにおいて異なって発現される細胞組成とメカニズムの本質を探索することを提案する。シングルセルRNAseqは、以前のバルク解析では捉えられない希少な内分泌および内皮細胞集団を特徴づける能力がある。ここで得られた結果を用いて、本発明者らは、インビトロで重要な経路を調節することによって(機能の獲得および喪失)、iIslet機能の増強に寄与するシグナル伝達経路をさらに調べることにする。簡単に説明すると、共培養の最後に、細胞を単細胞に分離し、その後バルクRNAseqと同じステップ、すなわち、逆転写、増幅、ライブラリー作製、および配列決定を行う。個々の細胞をマイクロ流体デバイスで個々の液滴内にカプセル化し、そこで逆転写反応を行う。各液滴には、単細胞に由来するcDNAを一意的に標識するDNAバーコードが付いている。逆転写が完了したら、配列決定のために、多くの細胞からのcDNAを一緒に混合する;特定の細胞からの転写産物は、一意的バーコードにより識別される。PCAは、パスウェイ(経路)解析のためのIPAと同様に作成されるだろう。
本発明者らは、iECと共培養したiIsletで異なって発現される細胞組成とメカニズムを調べるために、本発明者らの試料からsc-RNAseqを用いたシングルセルトランスクリプトーム解析を実施することにする。これとは別に、本発明者らは、バルクmRNA-seqデータおよび内皮と併せた発達中の膵臓に関するデータから示唆される重要な経路を、機能獲得・喪失研究を通じて調節することによって、iIslet機能の増強に寄与するシグナル伝達経路を調べることにする。
ヒトiIsletの機能性を試験するための新規なエクスビボ動的灌流システムを確立する
本発明者らは、静的アッセイ(GSIS)を用いて、iECと共培養したiIsletが、単独で培養したiIsletと比較して、高濃度のグルコースに負荷した場合にインスリン分泌の増加を示すことを見いだした。より生理学的な方法でエクスビボでのiIsletの機能性をよりよく特徴づけるために、本発明者らは、新規な3Dバイオプリントされた血管新生iIsletプラットフォームにおいて動的GSISを用いて、iIsletの機能性を評価することにする;このプラットフォームは、iIsletがiEC血管新生チャネルを通してグルコースで動的に負荷される灌流システムで構成されている。この動的方法はまた、KCl、IBMX、トルブタミド、エクステンジン4、L-アルギニンなどの、様々な分泌促進物質に応答するインスリン放出の調節を調べるためにも有用である。
本発明者らは、コンパクトで迅速にロード可能なフォームファクター(form-factor)で押出物を正確に出し入れできる電動押出機を備えた3Dバイオプリンターを開発した。過去1年間、本発明者らはこれらの構築物上でiECを培養してきており、成功を収めている(図7)。簡単に説明すると、iECを、hiPSCから成熟に達するまで平面的に培養し、成熟した時点でそれらを解離し、バイオインク(フィブリン)と混合して、血管に似せて3D構築物上にバイオプリントする。生体での血液の流れを模倣する動的システムを通して細胞を連続的に供給する(図7A);本発明者らは、iECが広がって、その構築物に2週間を超えて付着し続けることを観察した。ここで、本発明者らは、iECと共培養したまたは共培養してないiIsletに対して同様のアプローチを提案する。平面での共培養の最後に、本発明者らはそれらを解離し、適切なバイオインクと混合して、それらを3D血管構築物へとバイオプリントする。いくつかの研究では、アルギン酸塩バイオインク中での膵島の生存が示されており、これが試験すべき最初のアプローチとなる。フィブリンなどの他のバイオインクも代替方法として試験されることになる。血管構築物内での細胞の生存能力は、セル-デッド(Cell-Dead)染色によって共焦点顕微鏡下で判定される;この染色では、カルセインアセトキシメチルエステル(カルセインAM)が生細胞を染色し、エチジウムホモダイマー2染色が生存不能細胞を標識する。その後、細胞をこのシステムに付着させて適応させた後に、このシステムを用いて、動的GSISによりiIsletの機能性を試験する(本発明者らは、構築物上に播種してから異なる日数後にGSISを試験する予定である)。
実施例2
iPSCの作製
この研究で利用したiPSC株は、Cedars-Sinai Medical CenterのiPSC Coreによって、健康な、引き締まった体の(BMI<27kg/m2)男性対照から作製された。これらの対照iPSC株は、非組込み型oriP/EBNA1ベースのエピソーマルプラスミドベクターを用いて、末梢血単核細胞(PMBC)から作製された。このアプローチでは、iPSCの異常な核型が5%未満であった。全ての未分化iPSCは、BD MATRIGEL(商標)マトリックスでコートされたプレート上にmTeSR培地(StemCell Technologies社)で維持した。この研究で使用した細胞株を表1にまとめてある。
iPSCからの膵島(iIslet)の分化
iPSCから膵島(iIslet)を作製するために、本発明者らは、ロバストで再現性のあるプロトコルを開発した。簡単に説明すると、MATRIGELでコートされたプレート上に維持したiPSC(OCT4発現>90%)をアキュターゼで単細胞に解離し、mTeSR培地を用いて300,000細胞/cm2の密度でMATRIGELでコートされたプレート上に平面的に、ROCK阻害剤Y-27632(10mM,R&D Systems社)と共に再播種した。24時間後、アクチビンA(100ng/ml,R&D Systems社)とCHIR99021(2μM,XcessBio社)とY-27632(10μM)の組み合わせを1日間、次いでアクチビンA(100ng/ml)とFGF2(5ng/ml,PeproTech社)の組み合わせを2日間用いて、iPSCを胚体内胚葉(DE - フェーズI)へと方向づけた。次に、後方前腸(PFG - フェーズII)のパターン形成のために、FGF10(50ng/ml,PeproTech社)とCHIR99021(0.25μM)とノギン(50ng/ml,PeproTech社)の組み合わせを2日間使用した。細胞をPDX1/SOX9膵前駆体(PP - フェーズIII)へと方向づけるために、FGF10(50ng/ml)とノギン(50ng/ml)とRA(2μM,Cayman社)とSANT1(0.25μM,Sigma社)の組み合わせを4日間使用した。その後、ノギン(50ng/ml)、EGF(100ng/ml,PeproTech社)およびニコチンアミド(10mM,Sigma社)で4日間処理してPDX1/NKX6.1膵内分泌前駆体(PEP - フェーズIV)を誘導した。膵島前駆体(IP - フェーズV)を作製するために、ノギン(50ng/ml)とT3(1μM,Sigma社)とAlk5i II(10μM,Axxora社)の組み合わせを7日間使用し、その間培地を1日おきに交換した。膵島(MI - フェーズVI)の成熟化には、T3(1μM)とAlk5i II(10μM)とAXL阻害剤R428(2mM,Selleckchem社)と抗酸化剤N-アセチルシステインNAC(1mM,Sigma社)の組み合わせを14日間使用し、その間培地を1日おきに交換した。分化過程を通して使用された基本培地の配合を表2にまとめてある。
iPSCからの血管内皮細胞(iEC)の分化
血管内皮細胞(EC)のiPSCからの作製(iEC)のために、本発明者らは、iPSC(OCT4発現>90%)を小さな細胞コロニーとしてMATRIGELでコートされたプレート上にプレーティングし、3日後(図13A)、CHIR99021(6μM)を2日間用いて中胚葉(ME - フェーズI)に誘導した。次に、BMP4(25ng/ml,R&D Systems社)とFGF2(10ng/ml)とVEGF165(50ng/ml,PeproTech社)の組み合わせをさらに2日間用いて、血管前駆体(VP - フェーズII)を作製した。その後、VPの大半が元のiPSCコロニーの周辺部で敷石のような形態を示した時点で(図13B)、細胞をアキュターゼで解離した;周辺部の細胞は容易に持ち上がり、それらをVEGF165(50ng/ml)およびY-27632(10μM)と共に85,000~100,000細胞/cm2の密度でMATRIGELでコートされたプレート上に平面的に再プレーティングして、EC前駆体(ECP - フェーズIII)を7日間誘導した;その間培地を1日おきに交換した。iEC(フェーズIV)の精製と成熟化のために、iECを11日目に解離し、VEGF165(50ng/ml)と共にMATRIGELでコートされたプレート上に同じ細胞密度で再プレーティングし、10日間にわたって培地を1日おきに交換した。このプロセスを21日目に繰り返し、必要に応じてさらに10日間延長した。フェーズIおよびIIに使用した基本培地はSTEMdiff(商標)APEL(商標)2培地(StemCell Technologies社)であり、フェーズIIIおよびIVに使用した基本培地はEC Growth培地MV2(ECGM-MV2)(PromoCell社)であった。
iIsletとiECとの共培養システム
iIsletとiECを直接共培養した。そのために、iIslet分化の20日目に並行して、11日目のiECを、Y-27632(10μM)を補充したフェーズIV EC培地を用いて、24ウェルMATRIGELでコートされたプレートの底面に翌日までプレーティングした。21日目のiIsletを解離させ、Y-27632(10μM)を補充した半分のフェーズIV iEC培地と半分のフェーズVI膵島培地を用いて、400,000細胞/ウェルの細胞密度でiECの上にプレーティングする(「1/2のiIslet培地を用いたiIslet」条件)か、またはそれらにフェーズVI培地のみを供給した(「iIslet培地を用いたiIslet」条件)。iIsletとiECとの共培養を14日間にわたって実施し、この時点で細胞を免疫蛍光のために固定するか、またはGSISアッセイにかけた。
免疫蛍光
最初に、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中4%パラホルムアルデヒド(PFA)で20分間固定し、その後PBSで2回洗浄した。次に、固定した細胞を透過処理し、10%ロバ血清(Millipore社)と0.1%Triton-X(Bio-Rad社)を加えたPBSを含む「ブロッキングバッファー」で1時間ブロッキングした。一次抗体をブロッキングバッファーで希釈し、細胞上に4℃で一晩置いた。以下の一次抗体と希釈率を使用した:Oct4(1:250, Stemgent社)、Ssea4(1:100, Abcam社)、Foxa2(1:100, Novus Biologicals社)、Sox17(1:250, Novus Biologicals社)、Pdx1(1:100, R&D Systems社)、Sox9(1:250, Millipore社)、Nkx6.1(1:25, DSHB社)、C-ペプチド(1:25, DSHB社)、Vegfa(1:100, Abcam社)、Cd31(1:100, Cell Signaling社)、Cd144(1:100, Abcam社)、Vegfr2(1:100, Cell Signaling社)。翌日、0.1%Tween-20(ThermoFisher社)を加えたPBSで十分に洗浄した後、細胞を、ブロッキングバッファーで希釈(1:1,000)した適切な種特異的Alexa Fluor標識二次抗体(ThermoFisher社)と室温で1時間インキュベートした。0.1%Tween-20を加えたPBSで洗浄した後、細胞を、PBSで希釈(1:2,500)したDAPI中で15分間インキュベートした。免疫蛍光画像は、ImageXpress Micro XLS(Molecular Devices社)を使用し、適切な蛍光フィルターを用いて可視化し、ImageJソフトウェアを用いて解析した。
静的グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)アッセイ
GSISは、iIslet分化が終わり、かつiIsletとiECの共培養が終わるまでに実施した。そのために、iIsletを2.8mMグルコースKrebs溶液(表4)で2回洗浄した。次に、細胞を3時間の断食(fasting)のために同じ2.8mMグルコース溶液とプレインキュベートした。その後、細胞を2.8mMグルコース溶液で1回洗浄し、同じ溶液とさらに1時間インキュベートした。このインキュベーションの後、上清を「低グルコース」として回収し、細胞を2.8mMグルコース溶液で1回洗浄し、すすぎ、高グルコース溶液(20mMグルコースKrebs溶液)(表4)で1時間負荷した。この負荷を行ったとき、上清を「高グルコース」として回収した。この後、細胞をPBSで洗浄し、免疫蛍光アッセイのために固定するか、または後日のRT-qPCRによる遺伝子発現のために回収した。
Dil-アセチル化LDL取り込みアッセイ
Dil蛍光色素で標識したアセチル化低密度リポタンパク質(Dil-ac-LDL)(10μg/ml,Cell Applications社)を、(Harding et al., 2017)に記載されるように、フェーズIV EC培地、HUVEC培地またはmTeSR培地に添加し、それに相応して11日目と21日目のiEC、HUVECまたはiPSCに添加し、37℃で4時間インキュベートした。その後、上記のように、細胞をPBSで洗浄し、固定し、DAPIで染色した。画像をImageXpress Micro XLSで撮影し、ImageJを用いて解析した。
リアルタイム定量PCR(RT-qPCR)解析
相対的遺伝子発現はRT-qPCRを用いて定量した。そのために、細胞をPBSで洗浄し、Quick-RNA Mini Prepキット(Zymo Research社)を用いて、製造元の指示に従ってトータルRNAを抽出・単離した。RNAの濃度と純度を分光光度分析(NanoDrop, ThermoFisher社)で測定したところ、全ての試料は約2.0のA260/280比を有していた(Desjardins and Conklin, 2010)。その後、RNA(1μg)をまずDNAse(Promega社およびThermoFisher社)で処理してから、High Capacity cDNA Reverse Transcriptionキット(ThermoFisher社)を用いてオリゴ(dT)でcDNAに逆転写した。リアルタイムqPCRは、CFX384 Real Timeシステム(Bio-Rad社)で、SYBR Green Mastermix(Applied Biosystems社)および各遺伝子に特異的なプライマー配列(表5)を使用し、3回反復して行った。ヒトRPL13を参照遺伝子として使用し、2-ΔΔ CT法を用いて相対的発現を測定した。
統計解析
データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表される。グループ間の統計的有意性は、一元配置分散分析(One-way ANOVA)後に、対照と比較する場合はダネットの事後検定(Dunnet post-test)により、または多重比較検定ではテューキーの事後検定(Tukey's post-test)により判定した。対応のない両側スチューデント検定を必要に応じて採用した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。統計解析とグラフは、GraphPad Prism 7 for Windowsソフトウェア(GraphPad Software社)を用いて作成した。
iPSC由来の膵内分泌前駆体(PEP)の作製に成功
分化戦略は図8Aにまとめてあり、そこには分化の各フェーズで使用される小分子が詳しく記載されている。分化を開始するための最適で最も一貫性のある細胞密度を決定した後、本発明者らは、図8Bに見られるように、分化の各フェーズのタンパク質発現によって示される通り、本発明者らのプロトコルが3つの異なるiPSC株において一貫性があり、再現可能であることを実証した。重要な点として、本発明者らは、フェーズIVの終了時にPDX1/NKX6.1細胞の高タンパク質発現(>40%)に達している(図8B、図14);この時点で、細胞は膵内分泌前駆体(PEP)として特徴づけられた。PEPへの細胞運命の方向づけに成功したことは、さらなる内分泌マーカー、すなわちNGN3およびINS、のmRNA発現によっても実証され、これらは、分化過程を通して増加し、図8Cに見られるように、フェーズIVの終了時に発現のピークに達した。図15に示されるように、細胞がPEPへと方向づけられるにつれて、多能性マーカーOCT4の発現はそれに伴って減少した。
TGF-βおよびBMPシグナル伝達経路の阻害の組み合わせはiPSC由来の膵内分泌前駆体(PEP)からの膵島前駆体(IP)の作製を誘導した
3つの異なるiPSC株でPEPの作製に成功した後の本発明者らの次のステップは、該細胞を膵島前駆体(IP)へ、さらに特定するとβ細胞へと、方向づけることであった;これは、膵β細胞分化の重要な調節因子である遺伝子NGN3およびINSが、分化のフェーズIVの終了時にすでに高発現していた(図8C)、という本発明者らの画期的な観察に基づいていた。このことは、フェーズIVの終わりまでに、本発明者らの細胞が、膵内分泌細胞または膵管細胞を生じさせることができる膵両能性幹前駆体期(pancreatic bipotent trunk progenitor phase)をすでに通過し、内分泌運命に達していたことを我々に示唆した。そこで、以前の文献に基づき、本発明者らは、図9Aに記載するように、PEPをIPへと方向づけるための3つのシグナル伝達経路、すなわち、i)TGF-β阻害、ii)BMP阻害、および/またはiii)Notch阻害を検討した。TGF-βシグナル伝達の阻害は、β細胞の高発現を達成するための戦略である;ここで、本発明者らは、Alk5 II阻害剤(Alk5i)を用いてTGF-βシグナル伝達の阻害を試験した。PEPをIPへ方向づけるために我々が調節したもう一つの経路は、ノギンの使用を介したBMPシグナル伝達の阻害であった。ノギンがBMPに対して高い親和性を有し、BMPのその受容体への結合を妨げることはよく知られている。このBMPシグナル伝達の遮断は、結果的に、β細胞増殖の緩和、またはβ細胞増殖の増強およびβ細胞特異的遺伝子発現の維持のいずれかをもたらす。本発明者らの最後の戦略は、残存する両能性幹前駆体の膵管細胞への分化を阻害する試みとして、γセクレターゼ阻害剤XXIの使用を介してNotchシグナル伝達を阻害することであった。以前の研究で示されたように、全ての条件にわたって、β細胞を増殖および成熟させる試みにおいてT3が使用された。
フェーズVの間に試験した様々な組み合わせにおいて、XXIの使用によるNotch阻害は、XXIを使用しない条件と比較して、フェーズVの終了時に細胞の数を減少させた(図9Bおよび9C);これは、XXI条件でのより少ない細胞増殖を示している可能性がある。また、XXIで処理した細胞は、膵内分泌細胞に存在する重要な転写因子であるNKX6.1の発現がより低く、ソマトスタチン(SST;δ細胞)やグルカゴン(GCG;α細胞)の高発現など、β細胞以外の内分泌細胞タイプのマーカーの発現がより高かった。XXIを使用しない条件のうち、T3とAlk5iとノギンの組み合わせは、C-ペプチド(P=0.05,t検定)およびNKX6.1/C-ペプチド(P=0.08,t検定)の発現がより高い傾向を示した(図9Bおよび9C)。
β細胞の機能性を評価するために、フェーズVの終了時のIPを静的グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)アッセイに負荷した;この場合、細胞は異なるグルコース濃度を受け取り、機能的であれば、グルコース負荷に相関してインスリンを分泌することで応答する。GSISの終了時に、細胞は高濃度のKCl(30mM KCl)を含む溶液を受け取る;この溶液は、β細胞の細胞膜脱分極を誘導し、高濃度のグルコースよりも強力にインスリン分泌を刺激することができる。フェーズVの後のGSISの結果は図16に見ることができ、図16は、高濃度のグルコース(20mMグルコース)で刺激した後にどのような条件でもインスリン分泌が増加しなかったことを示している。しかし、30mM KClを負荷した後、細胞は全ての条件でインスリン分泌を増加させ、それらがKCl刺激後にのみ機能的であったことを示している。さらに、T3とAlk5iとノギンの組み合わせは、T3とAlk5iのみに比べて、より高いインスリン分泌を示した(P=0.02,t検定)。
GSISの結果により、どの条件も十分に機能的な細胞を含んでいなかったことが示されたので、また、T3とAlk5iとノギンの組み合わせが、T3とAlk5iのみの条件に比べて、C-ペプチドおよびNKX6.1/C-ペプチドのより高い発現と、KClのより高いインスリン分泌をわずかに示したものの、C-ペプチドの全体的な発現は理想的ではなかった(細胞の約20~25%);これは、IPを増殖および成熟させるために、フェーズVの後に次のフェーズが必要であることを示している。
抗酸化剤N-アセチルシステインおよびAXL経路の阻害は、膵島前駆体(IP)の成熟度を高め、さらに特定するとβ細胞を増やしたが、機能性をもたらさなかった
フェーズVの間に使用したT3とAlk5iとノギンの組み合わせは、PEPを20%のC-ペプチド発現集団へと方向づけし、かつKClで刺激した後にインスリン分泌を増加させたが、それは、十分に機能的なβ細胞を生み出すには不十分であった。したがって、IPを、機能的なβ細胞を含む膵島に成熟させるための試みとして、本発明者らは、以前の文献に基づいて、フェーズVIの間に3つの主要なシグナル伝達経路を調節した:i)酸化ストレスの阻害;ii)TGF-βシグナル伝達の阻害の継続;およびiii)AXL経路の阻害(図10A)。チロシンキナーゼ受容体AXLの選択的小分子阻害剤R428、および抗酸化剤N-アセチルシステイン(NAC)の使用は、(Rezania et al., 2014)で使用された戦略に基づいていた。これらの化合物は、グルコースにより調節つれるインスリン分泌に関与するものを含めて、β細胞の成熟にとって重要である遺伝子の重要な調節物質として確認されている(Rezania et al., 2014)。フェーズVIの小分子カクテルに7日間さらした後、図10B~Cで観察されるように、C-ペプチドタンパク質の発現はフェーズVの終わりに比べて増加し、約30%のC-ペプチド発現を示し、他の内分泌細胞のマーカーであるソマトスタチン(SST)とグルカゴン(GCG)の発現はわずかに減少した。T3とAlk5iとR428とNACの組み合わせは、C-ペプチドのより高い発現を示した(P=0.059,t検定 vs T3とAlk5iとNAC)が、R428とNACを用いた両条件は、より高いSST発現を示した(図10B~C)。以前のフェーズVに比べてより高いC-ペプチド発現にもかかわらず、どの条件も高グルコースによる刺激後にインスリン分泌の増加を示さなかった。しかし、高濃度のKClにさらすと、全ての条件はインスリン分泌を増加させ、図17に見られるように、T3とAlk5iとR428とNACの組み合わせが最高レベルのインスリン分泌を示した。したがって、さらなる実験ではT3とAlk5iとR428とNACの組み合わせを使用した。
C-ペプチドタンパク質発現がより高く、KCl刺激後のインスリン分泌がより高いにもかかわらず、β細胞の機能性が引き続き欠如していたため、次に、本発明者らは、生理学的な方法でβ細胞の成熟およびグルコースに対する応答を緩和する可能性がある潜在因子として、フェーズVIの基本培地中のインスリンとグルコースの濃度を調べた(図18A)。そのために、本発明者らは、インスリンITS-X(以前と同様)を補充した8mMグルコース(以前と同様)もしくは20mMグルコースを添加した、またはグルコース無添加の、T3、Alk5i、R428およびNACを含むフェーズVI培地中で細胞をプローブした。20mMグルコース培地で細胞を処理した場合、本発明者らは、図18Bに見られるように、8mMグルコース培地で処理した細胞と比較して、7日間の処理後にC-ペプチドの発現が消失し、NKX6.1の発現が増加することを観察した;このことは、より高濃度のグルコースを含む培地にIPを7日間さらすと、それらの分化の方向がより前駆体の状態へと反転したことを示唆している可能性がある。ITS-Xの使用または不使用に関しては、NKX6.1またはC-ペプチドタンパク質の発現だけでなく、SSTまたはGCGの発現にも差がなかった(図18B)。
フェーズVIで培地中のグルコースおよび/またはインスリンの含量を調節しても、β細胞の成熟度を高めるのに十分ではなかったので、機能的なβ細胞を作製するための本発明者らの次の試みは、フェーズVIの間に細胞を再凝集させ、分化のタイミングを増やすことであった(7日間ではなく14日間)(図97A)。膵島クラスターの解離と再凝集は、膵島内のβ細胞集団を精製しかつ他の細胞タイプを除去するための試みとして、他の研究で以前に使用された戦略である(Stock et al., 2020)。重要なことに、これらの研究では、β細胞の再凝集によってGSISが改善された(Lecomte et al., 2016)。本発明者らの研究では、細胞をフェーズVIの1日目に解離し、T3、Alk5i、R428およびNACを含むフェーズVI培地を用いて、MATRIGELでコートされたプレートに同じ初期細胞密度(3×105細胞/cm2)で再プレーティングした。分化を7日間または14日間行った。C-ペプチドおよびGCGタンパク質の発現は、28日目(フェーズVIの7日目)と35日目(フェーズVIの14日目)の間で同程度であったが、NKX6.1の発現は35日目で統計的により高かった(図19B)。高グルコース溶液に負荷したとき、細胞はまだ十分には機能的でなかったが、細胞を2.8mMグルコースにさらした後のベースラインインスリンレベルは、28日目と比較して35日目の方が高く、KCl負荷後のインスリン応答も同様であった(図19C);このことは、β細胞の分化を35日間行うことが、さらなるステップで取るべきよりよい戦略であることを我々に示唆した。図20に示すように、膵管細胞および胃/腸細胞などの、他の細胞タイプの発達は、再凝集後35日目に機能性がなくなったことと関連しているかもしれない。
機能的なiPSC由来血管内皮細胞(iEC)の作製に成功
内分泌膵臓の発達の間、周囲の血管内皮細胞(EC)は、膵β細胞の発生と成熟のためのシグナルを提供し、これらは重要なニッチ(niche)の構成要素と考えられる。ここで分化したβ細胞は、高レベルのC-ペプチドおよびNKX6.1タンパク質発現を示したが、それでも最適な機能性を示さなかったという事実により、本発明者らは、それらのECとの共培養が、交換されたシグナルを通じてその成熟、ひいてはその機能性を高める可能性があると考えた。本発明の態様は、iPSC由来のβ細胞を移植して糖尿病患者に戻すことであるので、本発明者らは、共培養のためのiPSC由来EC(iEC)を作製するために、β細胞の分化に使用したのと同じiPSC細胞株を使用した。こうして、本発明者らは、iECを作製するためにいくつかの変更を加えたが、それらは主に細胞密度とプレートコーティングの変更に関係していた(図11A)。我々の最適化プロトコルで作製されたiPSC由来血管内皮細胞(iEC)は、VEGFR2、CD144、CD31などの内皮細胞マーカーの高発現を示した(分化21日目までに70%超)(図11B,11C)。これらの細胞はまた、Dil-Ac-LDL取り込みアッセイで実証されるように、機能的であった(図11B,11C)。それらはまた、mRNAレベルで内皮細胞マーカーを高発現し、21日目まで増加し続けた(図11D)。iECは、図21に示すように、4日目から31日目まで、多能性マーカーの最小限の発現を示した。
iPSC由来膵島(iIslet)を内皮細胞(iEC)と共培養する最適モデルはβ細胞の成熟と機能性を改善した
同じドナーからのiPSCを、T3、Alk5iおよびノギンを用いて、図2に示したように膵島前駆体(IP)にまで分化させた。フェーズVの終わりに、アキュターゼを用いてIPを解離し、図12Aの分化概略図に示すように、同じiPSC株(07iCTR)から作製した11日目のiECの上に細胞密度比1:4で再プレーティングした。IPをさらに、T3、Alk5i、R428およびNACを用いて、iECと14日間共培養するかまたは共培養しないかのいずれかで、図3に示すように成熟膵島(MI)へと分化させた。IPとiECの組み合わせには、先に記載したように、フェーズVI培地を1日おきに供給した。あるいは、細胞の共培養物にフェーズVI培地とiEC培地の組み合わせ(それぞれ50%)を供給した;しかし、その結果(ここには示されない)は、細胞の共培養物にフェーズVI培地のみを供給した場合ほど有望ではなかった。「膵島のみの条件」のC-ペプチド/NKX6.1のタンパク質発現は、「iECと共培養した膵島」と比べて、図12Bに示すように、有意差はなかった。しかし、iECと共培養した膵島を、高グルコース濃度溶液(20mMグルコース)に負荷すると、それらは、基礎グルコース濃度溶液(2.8mMグルコース)に比べて、インスリン分泌を増加するように応答した(図12C);一方、「膵島のみの条件」は高グルコース負荷に応答しなかった;このことは、膵島とiECとの共培養が、まだ解明されていないメカニズムを活性化して、膵島の機能性の増強をもたらしたことを示している。図12Cに示したGSISによりプローブされた機能性の増強を確認するために、iECと共培養した膵島または共培養しなかった膵島のいずれかからRNAを抽出し、成熟β細胞を含む膵島により発現される主要マーカーを検査した。興味深いことに、膵島をiECと共培養した場合、「膵島のみの条件」と比較して、INS、UCN3、NGN3、CHGAなどのマーカーのアップレギュレーションが見られた(図12D)。これらの結果は、膵β細胞とECとの共培養がβ細胞の成熟と機能性を高めるという初期の研究に基づく仮説を裏付けるものであり、そのメカニズムは未だ解明されていない。
(表1)この研究に利用したiPSC株の特徴づけ
Figure 2024506850000002
* PMBC:末梢血単核細胞
(表2)iPSC由来膵島の培養のための基本培地の配合
Figure 2024506850000003
Figure 2024506850000004
* BSA:ウシ血清アルブミン;ITS-X:インスリン-トランスフェリン-セレン-エタノールアミンのサプリメント
(表3)HUVEC培養物の培養のための培地の配合
Figure 2024506850000005
* FBS:ウシ胎児血清
(表4)Krebsバッファー
Figure 2024506850000006
* BSA:ウシ血清アルブミン
(表5)qPCRに使用したオリゴヌクレオチドのリスト
Figure 2024506850000007
(表6)iPSC由来内皮細胞の培養のための培地の配合
Figure 2024506850000008
上述した様々な方法および技術は、本発明を実施するための手段を数多く提供する。当然のことながら、記載された全ての目的または利点が本明細書に記載の特定の態様に従って必ずしも達成されるわけではない、ことを理解すべきである。したがって、例えば、本明細書で教示または示唆され得る他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点のグループを達成または最適化する形で、本方法を実施できることを当業者は認識するであろう。様々な有利および不利な代替案が本明細書に言及されている。一部の好ましい態様は、1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴を具体的に含み、他の好ましい態様は、1つの、別の、またはいくつかの不利な特徴を具体的に除外し、さらに他の好ましい態様は、1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴を含めることによって、当面の不利な特徴を具体的に緩和することを理解されたい。
さらに、当業者は、異なる態様からの様々な特徴の適用可能性を認識するであろう。同様に、上述した様々な要素、特徴およびステップ、ならびにそのような要素、特徴またはステップのそれぞれに対する他の既知の等価物は、本明細書に記載の原理に従った方法を実施するために、当業者によって混ぜ合わされ、適合され得る。様々な要素、特徴、およびステップのうち、一部は多様な態様に具体的に含まれ、他は具体的に除外されるだろう。
本発明は、特定の態様および実施例に関連して開示されてきたが、本発明の態様は、具体的に開示された態様を超えて、他の代替的な態様および/または使用、ならびにそれらの修正形態および等価物にまで及ぶことが当業者には理解されよう。
本発明の態様には、多くの変形形態および代替的な要素が開示されている。当業者には、さらなる変形形態および代替要素が明らかであろう。これらの変形形態の中に、iPSC、膵島細胞、内皮細胞に関連する組成物および方法、そこで使用される技術および溶液の組成と使用、ならびに本発明の教示により作り出された製品の特定の使用は含まれない。本発明の様々な態様は、これらの変形形態または要素のいずれかを具体的に含むことも、除外することも可能である。
いくつかの態様において、本発明の特定の態様を説明しかつ特許請求するために使用される、成分の量、濃度などの特性、反応条件、その他を表す数値は、場合によっては、用語「約」によって修飾されているものとして理解すべきである。したがって、いくつかの態様では、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の態様で得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの態様では、数値パラメータは、報告された有効数字の桁数を考慮し、かつ通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。本発明のいくつかの態様の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載された数値は、実行可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの態様で示される数値には、それぞれの試験測定で見いだされる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差が含まれることがある。
いくつかの態様において、本発明の特定の態様を説明する文脈で(特に、以下の特許請求の範囲の文脈で)使用される用語「a」および「an」および「the」ならびに同様の指示語は、単数形と複数形の両方をカバーするように解釈され得る。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内に入る個々の値を個別に参照する簡略化された方法としての役割を単に意図したものである。本明細書に別段の指示がない限り、個々の値は、あたかもそれが本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み入れられる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で特定の態様に関して提供される、ありとあらゆる例または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明の理解を容易にすることを意図しており、別途請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
本明細書に開示される本発明の代替要素または態様のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、またはそのグループの他のメンバーもしくは本明細書に見られる他の要素との任意の組み合わせで、参照され、特許請求され得る。あるグループの1つまたは複数のメンバーは、便宜上および/または特許性の理由のため、あるグループに含めることも、そこから削除することもできる。このような包含または削除が生じる場合、本明細書は、添付の特許請求の範囲で使用される全てのMarkushグループの記載を満たすように変更されたグループを含むものとみなされる。
本明細書には、本発明を実施するための本発明者らに知られたベストモードを含めて、本発明の好ましい態様が記載されている。これらの好ましい態様の変形形態は、前述の説明を読むことで、当業者には明らかになるであろう。当業者であれば、このような変形形態を適宜採用することが可能であり、本明細書で具体的に記載された以外の方法で本発明を実施することができると考えられる。したがって、本発明の多くの態様には、適用法令で許可されるような、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題のあらゆる修正形態および均等物が含まれる。さらに、そのあらゆる可能な変形形態における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
さらに、本明細書全体を通して、特許および刊行物が数多く参照されている。上で引用した参考文献および刊行物のそれぞれは、その全体が参照により個別に本明細書に組み入れられる。
最後に、ここに開示された本発明の態様は、本発明の原理を反映したものであることを理解されたい。採用可能な他の修正形態も本発明の範囲内であり得る。それゆえに、限定としてではなく、例として、本発明の代替構成を本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明の態様は、正確に図示され説明されたものに限定されない。

Claims (42)

  1. 機能的な人工多能性幹細胞(iPSC)由来の膵島(iIslet)を作製する方法であって、
    β細胞を含む機能的なiIsletを作製するために、ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)とある量のiPSC由来膵島前駆体とを約10~18日間共培養する工程
    を含む、前記方法。
  2. 共培養する工程が、
    ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)をMATRIGELでコートされたプレート上にプレーティングし、Y27632を補充したフェーズIV EC培地中で培養すること;
    ある量のiPSC由来膵島(iIslet)を該量のiECの上にプレーティングし、Y-27632を補充した約1/2のフェーズIV iEC培地と約1/2のフェーズVI膵島培地とを含む培地中で約12~16日間培養するかまたはフェーズVI膵島培地(膵島のみの条件)中で約12~16日間培養するかのいずれかで、β細胞を含む機能的なiIsletを作製すること
    を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 共培養する工程が、
    ある量のiPSC由来血管内皮細胞(iEC)をMATRIGELでコートされたプレート上にプレーティングし、Y27632を補充したフェーズIV EC培地中で培養すること;
    ある量のiPSC由来膵島(iIslet)を該量のiECの上にプレーティングし、Y-27632を補充した約1/2のフェーズIV iEC培地と約1/2のフェーズVI膵島培地とを含む培地中で約14日間培養するかまたはフェーズVI膵島培地(膵島のみの条件)中で約14日間培養するかのいずれかで、β細胞を含む機能的なiIsletを作製すること
    を含む、請求項1に記載の方法。
  4. ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をMATRIGEL上にプレーティングすること;
    iPSCをMATRIGEL中で約2~4日間培養すること;
    CHIR99021の存在下で約1~3日間培養して中胚葉を作製すること;
    中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約1~3日間培養して血管前駆体を作製すること;
    血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約3~8日間培養して内皮細胞(EC)前駆体を作製すること
    によってiECを作製する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をMATRIGEL上にプレーティングすること;
    iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養すること;
    CHIR99021の存在下で約2日間培養して中胚葉を作製すること;
    中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約2日間培養して血管前駆体を作製すること;
    血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約4~7日間培養して内皮細胞(EC)前駆体を作製すること
    によってiECを作製する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  6. ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をアクチビンA、CHIR99021、およびY-27632の存在下で約1~2日間培養すること;
    アクチビンAおよびFGF2の存在下で約1~3日間培養すること;
    FGF10、CHIR99021、およびノギンの存在下で約1~3日間培養して、後方前腸細胞を作製すること;
    後方前腸細胞をFGF10、ノギン、RA、およびSANT1の存在下で約3~5日間培養して膵前駆体を作製すること;
    膵前駆体をノギン、EGF、およびニコチンアミドの存在下で約3~5日間培養して膵内分泌前駆体を作製すること;
    膵内分泌前駆体をノギン、T3、およびAlk5i IIの存在下で約6~8日間培養して膵島前駆体を作製すること
    によって前記量の膵島前駆体を最初に作製する工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をアクチビンA、CHIR99021、およびY-27632の存在下で約1日間培養すること;
    アクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養すること;
    FGF10、CHIR99021、およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸細胞を作製すること;
    後方前腸細胞をFGF10、ノギン、RA、およびSANT1の存在下で約4日間培養して膵前駆体を作製すること;
    膵前駆体をノギン、EGF、およびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して膵内分泌前駆体を作製すること;
    膵内分泌前駆体をノギン、T3、およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して膵島前駆体を作製すること
    によって前記量の膵島前駆体を最初に作製する工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 膵前駆体がPDX1+およびSOX9+を発現する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 膵内分泌前駆体がPDX1+およびNKX6.1+である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  10. iIsletがC-ペプチド、グルカゴン、およびNKX6.1+を発現する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  11. 血管内皮細胞と共培養せずに産生されたβ細胞と比較して、または膵島のみの条件を用いない培養物中で産生されたβ細胞と比較して、膵島のみの条件で産生されたβ細胞において、INS、UCN3、NGN3、およびCHGAの発現がアップレギュレートされる、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. β細胞が、基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合にインスリン分泌を増加させる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. iPSC由来血管内皮細胞(iEC)とiPSC由来膵島前駆体が同質遺伝子型である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 血管内皮細胞(iEC)を誘導するために使用されるiPSCと、膵島前駆体を誘導するために使用されるiPSCとが、同じiPSC細胞株由来、または同じドナー由来である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. iIsletがヒトiIsletである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 請求項1~15のいずれか一項に記載の方法により作製された、人工多能性幹細胞(iPSC)由来膵島(iIslet)。
  17. C-ペプチド、グルカゴン、およびNKX6.1+を発現する、人工多能性幹細胞(iPSC)由来膵島(iIslet)。
  18. 基礎グルコース濃度と比較して、高グルコース濃度を負荷された場合にインスリン分泌を増加させる、請求項16または請求項17に記載のiIslet。
  19. その必要がある対象における代謝疾患、代謝障害、または代謝状態を改善または治療する方法であって、
    請求項16~18のいずれか一項に記載のiIsletをその必要がある対象に投与して、代謝疾患、代謝障害、または代謝状態を改善または治療する工程
    を含む、前記方法。
  20. 代謝疾患、代謝障害、または代謝状態が糖尿病またはインスリン抵抗性である、請求項19に記載の方法。
  21. ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をアクチビンA、CHIR99021、およびY-27632の存在下で約1日間培養する工程;
    次いで、アクチビンAおよびFGF2の存在下で約2日間培養する工程;ならびに
    次いで、FGF10、CHIR99021、およびノギンの存在下で約2日間培養して、後方前腸細胞を作製する工程
    を含む、方法。
  22. 後方前腸細胞をFGF10、ノギン、RA、およびSANT1の存在下で約4日間培養して、膵前駆体を作製する工程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
  23. 膵前駆体がPDX1およびSOX9を発現する、請求項22に記載の方法。
  24. 膵前駆体をノギン、EGF、およびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して、膵内分泌前駆体を作製する工程をさらに含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 膵内分泌前駆体がPDX1およびNKX6.1である、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 膵内分泌前駆体をノギン、T3、およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して、膵島前駆体を作製する工程をさらに含む、請求項24~25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して、成熟膵島を作製する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
  28. 成熟膵島がC-ペプチド、グルカゴン、およびNKX6.1を発現する、請求項27に記載の方法。
  29. 後方前腸をFGF10、ノギン、RA、およびSANT1の存在下で約4日間培養して膵前駆体を作製する工程;
    次いで、膵前駆体をノギン、EGF、およびニコチンアミドの存在下で約4日間培養して膵内分泌前駆体を作製する工程;
    次いで、膵内分泌前駆体をノギン、T3、およびAlk5i IIの存在下で約7日間培養して膵島前駆体を作製する工程;ならびに
    次いで、作製された膵島前駆体をT3、Alk5i II、R428、およびN-アセチルシステイン(NAC)の存在下で約14日間培養して成熟膵島を作製する工程
    をさらに含む、請求項21に記載の方法。
  30. 請求項27~29のいずれか一項に記載の方法により作製された、ある量の成熟膵島。
  31. ある量の人工多能性幹細胞(iPSC)をMATRIGEL上にプレーティングする工程;
    iPSCをMATRIGEL中で約3日間培養する工程;および
    次いで、CHIR99021の存在下で培養して中胚葉を作製する工程
    を含む、方法。
  32. 中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約2日間培養して、血管前駆体を作製する工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
  33. 血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して、内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
  34. EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して、成熟ECを作製する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
  35. 成熟ECが、CD31、CD144、VEGF-A、VEGFR2、およびAc-LDLを発現する、請求項34に記載の方法。
  36. 中胚葉をBMP4、FGF2、およびVEGFの存在下で約2日間培養して血管前駆体を作製する工程;
    次いで、血管前駆体をVEGFおよびY-27632の存在下で約7日間培養して内皮細胞(EC)前駆体を作製する工程;ならびに
    次いで、EC前駆体をVEGFと共に約10日間培養して成熟ECを作製する工程
    をさらに含む、請求項31に記載の方法。
  37. 請求項34~36のいずれか一項に記載の方法により作製された、ある量の成熟EC。
  38. ある量の成熟膵島とある量の成熟ECとを含み、該成熟膵島と該成熟ECが同質遺伝子型である、アセンブリ。
  39. 前記量の成熟膵島が請求項16~18または請求項30のいずれか一項に記載の成熟膵島を含み、前記量の成熟ECが請求項37に記載の成熟ECを含む、請求項38に記載のアセンブリ。
  40. 成熟膵島、成熟EC、またはその両方がスキャフォールド上に付着されている、請求項38~39のいずれか一項に記載のアセンブリ。
  41. 成熟膵島、成熟EC、またはその両方が、スキャフォールド上にバイオインクを用いて付着されている、請求項40に記載のアセンブリ。
  42. バイオインクがフィブリンまたはアルギン酸塩を含む、請求項41に記載のアセンブリ。
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