JP2024505987A - 抗tnfr2抗体およびその使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、抗体TNFR2抗体、その調製方法、組成物および使用に関する。本発明は、がんなどのTNFR2関連疾患および/または病症を治療するための方法をさらに提供する。

Description

本発明は、抗体TNFR2抗体、その調製方法、組成物および使用に関する。本発明は、がんなどのTNFR2関連疾患および/または病症を治療するための方法をさらに提供する。
II型腫瘍壊死因子受容体(TNFR2、CD120b、p75またはTNFRSF1Bともいう)は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーメンバーである。TNFR2は、サイトカインTNFαの受容体として、様々なタイプのがん細胞、および腫瘍に浸潤して免疫系活性を阻害可能な制御性T細胞(Treg)表面に高く発現している。TNFαは、TNFR2と結合することにより、下流のNFkBシグナル伝達を活性化し、強化されたTreg細胞の増殖をもたらすことができる。腫瘍微小環境において存在度の高いTNFR2-陽性Treg細胞があることは、既に様々なヒトおよびネズミがんにおいて発見された。従って、腫瘍微小環境のTreg細胞および腫瘍細胞上のTNFR2を標的にすることによるがんの治療は、有望な治療方法である。例えば、WO2017/083525には、いくつかの拮抗性TNFR2抗体が開示されており、かつがん治療におけるその使用が提案されている。
腫瘍免疫反応におけるTNFR2の潜在的な標的作用に鑑み、当該分野においては、疾患の治療、特にがんの治療のために、新たなTNFR2抗体、特に強い遮断作用および直接的な腫瘍殺傷活性を有する抗TNFR2抗体を開発する必要がある。
本発明者は、深く研究することで、新たな抗TNFR2抗体を提供する。本発明の抗TNFR2抗体は、強いTNFR2遮断活性を有し、かつ一部の分子が新しい遮断メカニズムを有し、TNFαと受容体TNFR2の結合を遮断せずにTNFR2の重合を直接阻害することで、TNFα/TNFR2シグナル伝達経路の活性化を阻害することができる。本発明の抗TNFR2抗体は、動物実験において良好な抗腫瘍薬効結果を示している。
従って、一態様において、本発明は、配列番号19、21、23、25、27、29と64に示される重鎖可変領域のうちの1つのHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、かつ/または配列番号20、22、24、26、28、30、31と65に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、あるいは上記CDR配列の組み合わせの変異体を含む、抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片は、
(i)高親和性でヒトTNFR-2と結合するが、ヒトTNFR-1と結合しないこと、
(ii)サルTNFR-2との交差免疫反応性を有すること、
(iii)特にリンパ腫細胞などの腫瘍細胞およびTreg細胞である細胞の表面上のTNFR-2と効果的に結合すること、
(iv)TNFR-2とリガンドTNFαの結合を遮断すること、
(v)TNFαのTNFR-2との結合により媒介されるNF-κBシグナル伝達経路の活性化を阻害すること、
(vi)ADCCシグナル伝達経路を活性化すること、および
(vii)腫瘍の成長への阻害などの抗腫瘍活性を有すること、
という1つまたは複数の特性を有する。
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の例示的な抗体(例えば、下記の表Bに示される抗体VHおよびVL配列の組み合わせを有する抗体)と同じまたは重複するエピトープと結合する、かつ/またはTNFR2と競合的に結合する、かつ/または本発明の例示的な抗体を阻害する(例えば、競合的に阻害する)、抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片をさらに提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸、上記核酸を含むベクター、上記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を調製する方法を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗体を含む免疫複合体、医薬組成物および組み合わせ製品を提供する。
別の態様において、本発明は、例えば、インビボとインビトロで、TNFR-2とそのリガンドTNFαの結合を遮断および/または拮抗すること、かつ/または上記結合による生物学活性、例えば、TNFR2受容体の活性化および/またはTreg細胞の増殖TNFR2受容体の活性化および/またはTreg細胞の増殖を遮断および/または拮抗することに用いられること、かつ/またはインビボとインビトロで表面にTNFR2を発現した腫瘍細胞を殺傷することに用いられることを含むが、これらに限定されない、本発明のTNFR2抗体またはその抗原結合断片を適用するインビボとインビトロ方法および使用を提供する。
別の態様において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を適用してTNFR2関連疾患を予防または治療する方法および使用をさらに提供し、上記疾患は、結腸がんまたは慢性骨髄性白血病などの腫瘍を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、唯一の活性剤としてもよく、または、他の治療法もしくは治療剤と併用投与してもよい。
別の態様において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を適用して試料においてTNFR2を検出する方法および試薬キットをさらに提供する。
下記の図面および具体的な実施形態で本発明をさらに説明する。しかし、これらの図面および具体的な実施形態は、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきではなく、当業者が容易に想到できる変更は、本発明の精神および添付される特許請求の範囲に含まれる。
フローサイトメトリーによってハイブリドーマ抗体とヒトTNFR2過剰発現安定形質転換細胞株hTNFR2 CHO-Sとの結合能力への測定を示す。 フローサイトメトリーによってハイブリドーマ抗体とカニクイザルTNFR2安定形質転換細胞株cTNFR2 CHO-Sとの結合能力への測定を示す。 ELISA法によってTNFα/TNFR2に対するハイブリドーマ抗体の遮断作用の検出を示す。 フローサイトメトリーによってキメラ抗体とヒトTNFR2過剰発現安定形質転換細胞株hTNFR2 CHO-Sとの結合能力への測定を示す。 フローサイトメトリーによってキメラ抗体とカニクイザルTNFR2過剰発現安定形質転換細胞株cTNFR2 CHO-Sとの結合能力への測定を示す。 ELISA法によってTNFα/TNFR2に対するキメラ抗体の遮断作用の検出を示す。 Jurkat TNFR2 NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子検出法によって、TNFR2シグナル伝達経路のTNFαによる活性化に対するキメラ抗体の阻害作用の検出を示す。 フローサイトメトリーによってヒト化抗体とヒトhTNFR2 CHO-S安定形質転換細胞株との結合能力への測定を示す。 ELISA法によってTNFα/TNFR2に対するヒト化抗体の遮断作用の検出を示す。 Jurkat TNFR2 NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子検出法によって、TNFR2シグナル伝達経路のTNFαによる活性化に対するヒト化抗体の阻害作用の検出を示す。 フローサイトメトリーによってヒト化抗体とヒトK562 CML細胞株(A)および初代Treg細胞(B)との結合能力への測定を示す。 Jurkat ADCCルシフェラーゼレポーター遺伝子検出法によって、ADCCシグナル伝達経路に対するヒト化抗体の活性化作用の検出を示す。 K562 matrigel NOD/SCID動物モデルによってTNFR2抗体の抗腫瘍効果の検出を示す。 MC38-TNFR2皮下接種C57動物モデルによってTNFR2抗体の抗腫瘍効果の検出を示す。 本発明の例示的なキメラ抗体およびヒト化抗体のCDR配列を示す。 本発明の例示的なキメラ抗体およびヒト化抗体のVHとVL配列を示す。
発明の詳細な説明
定義
別に定義しない限り、本明細書に使用されるすべての技術と科学用語はいずれも、当業者に通常に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下、下記の用語を定義する。
「約」という用語は、数字または数値とともに使用される場合、下限として指定された数字または数値より5%小さく、上限として指定された数字または数値より5%大きい範囲内の数字または数値をカバーすることを意味する。
「かつ/または」という用語は、選択可能オプションのうちのいずれか1項または選択可能オプションのいずれか2項もしくは複数項の組み合わせを指すと理解すべきである。
本明細書に使用されるように、「包含する」または「含む」という用語は、記載される要素、整数またはステップを含むが、任意の他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本明細書において、「包含する」または「含む」という用語を用いる場合、特記しない限り、言及される要素、整数またはステップからなる場合も含まれる。例えば、ある具体的な配列を「含む」抗体可変領域が言及される場合、この具体的な配列からなる抗体可変領域を含むことも意図する。
本明細書において、「抗体」という用語は、少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドを指し、上記免疫グロブリン可変領域は、抗原を特異的に認識して結合する。当該用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体または複数鎖抗体、単特異性または多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、完全ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体、全長抗体と抗体断片を含むが、これらに限定されない様々な抗体構造を含むが、所望の抗原結合活性を表現すればよい。
当業者は、「全抗体」(本明細書では、「全長抗体」、「完全抗体」、「完全な抗体」と切り替えて使用可能)が少なくとも2本の重鎖(H)および2本の軽鎖(L)を包含することが分かる。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域とからなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3という3つのドメインで構成される。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域とからなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。可変領域は、抗体の重鎖または軽鎖における、抗体とその抗原の結合に関与するドメインである。定常領域は、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能を示している。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つのタイプ(kappa(κ)とlambda(λ)と称される)の一方に分類することができる。抗体の重鎖は、その重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて主にIgA、IgD、IgE、IgGとIgMという5つの異なるタイプに分けることができ、かつこれらのタイプのうちのいくつかは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3とIgG4、IgA1とIgA2などのサブクラスにさらに分けることができる。異なる抗体のタイプに対応する重鎖定常領域はそれぞれ、α、δ、ε、γおよびμと称される。「アイソタイプ」という用語は、抗体の重鎖定常領域によって決定される抗体のタイプを指す。例えば、Fundamental Immunology、Ch.7(edited by Paul,W.,2th editon,Raven Press,N.Y.(1989))(すべての目的のために、その全体が参照によりここに組み込まれる)を参照する。
抗体の「抗原結合部分」(本明細書では、「抗体断片」および「抗原結合断片」と切り替えて使用可能)という用語は、完全な抗体ではない分子を指し、完全な抗体における当該完全な抗体が結合する抗原と結合するための部分を包含する。当業者に理解されるように、抗体の抗原結合部分は、通常、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基を包含する。抗原結合断片は、組換えDNA技術により、または酵素的もしくは化学的に完全な抗体を切断することにより調製することができる。抗原結合断片は、Fab、scFab、Fab’、F(ab’)、Fab’-SH、Fv、単鎖Fv、二本鎖抗体(diabody)、三本鎖抗体(triabody)、四本鎖抗体(tetrabody)、ミニ抗体(minibody)、シングルドメイン抗体(sdAb)を含むが、これらに限定されない。抗体断片のより詳細な説明については、基礎免疫学(Fundamental Immunology),edited by W.E.Paul,Raven Press,N.Y.(1993);(edited by)邵栄光ら、抗体薬物の研究および応用、人民衛生出版社(2013);Hollinger et al.,PNAS USA 90:6444ー6448(1993)、Hudson et al.,Nat.Med.9:129ー134(2003)を参照することができる。
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの生物種に由来して、定常領域配列が別の生物種に由来する抗体を指し、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体である。
「ヒト化抗体」という用語用語は、他の哺乳動物種、例えばマウス生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列に接続する抗体を指す。例えば、抗体の親和性成熟を行うために、ヒトフレームワーク配列において追加のフレームワーク領域修飾を行い、かつ/またはCDR配列において追加のアミノ酸修飾を行うことができる。
「単離した」抗体は、既にその天然環境における成分と単離した抗体である。いくつかの実施形態において、抗体を95%もしくは99%より高い純度に精製し、上記純度は、例えば電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって定められる。抗体の純度を評価する方法についての概説は、例えば、Flatman,S.et al.,J.Chrom.B 848(2007)79ー87を参照する。
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原領域を指す。エピトープは、連続的なアミノ酸から形成され、またはタンパク質の3次フォールディングにより並置された非連続的なアミノ酸から形成される。
本明細書において、TNFR2は、「腫瘍壊死因子受容体2」を指し、TNFRSF1BおよびCD120bとも呼ばれる。当該受容体は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであり、細胞表面結合受容体として、がん細胞および腫瘍浸潤Treg細胞において発現可能である。NF-KBシグナル伝達経路を調節することにより、TNFR2は、細胞の生存と増殖を促進する遺伝子の転写を調節することができる。本明細書において、当該表現は、TNFR2およびその変異体、アイソタイプ、ホモログと種ホモログをカバーしている。本発明による一実施形態において、TNFR2は、ヒト由来のTNFR2であり、例えば、配列番号60に示されるヒトTNFR2、または配列番号60と少なくとも95%、さらに少なくとも96%、97%、98%もしくは99%のアミノ酸配列同一性を有するヒトTNFR2である。本発明による別の実施形態において、TNFR2は、サル由来のTNFR2であり、例えば、配列番号61に示されるヒトTNFR2、または配列番号61と少なくとも95%、さらに少なくとも96%、97%、98%もしくは99%のアミノ酸配列同一性を有するヒトTNFR2である。本明細書において、TNFR2は、TNFR2の断片、例えば、細胞外ドメインを含む断片、例えば、本発明のいずれかの抗体との結合能力を保持する断片を含んでもよい。本明細書において、TNFαは、TNFR2の天然のアゴニストリガンドである「腫瘍壊死因子α」を指す。本明細書において、TNFR1は「腫瘍壊死因子受容体1」を指し、例えば、UniProtKB登録番号P19438でのヒトTNFR1である。
「特異的に結合する」という用語は、抗体が抗原と選択的にまたは優先的に結合することを示す。光干渉による生体測定において、抗体が約5x10-7Mまたはそれ以下、約1x10-7Mまたはそれ以下、約5x10-8Mまたはそれ以下、約1x10-8Mまたはそれ以下、約5x10-9Mまたはそれ以下のKで、ヒトTNFR2と結合すると、当該抗体は「ヒトTNFR2と特異的に結合する」抗体である。しかし、ヒトTNFR2と特異的に結合する抗体は、他の種由来のTNFR2タンパク質と交差反応性を有し得る。例えば、ヒトTNFR2に特異的な抗体は、いくつかの実施形態において、非ヒト種のTNFR2タンパク質と交差反応することができる。他のいくつかの実施形態において、ヒトTNFR2に特異的な抗体は、種もしくは他のタイプの交差反応性を示さずにヒトTNFR2に完全に特異的であり、またはある種のTNFR2に対する交差反応性のみを示してもよい。
本明細書にに使用されるように、「交差反応」という用語は、抗体が異なる種由来のTNFR2と結合する能力を指す。例えば、本明細書に記載のヒトTNFR2と結合する抗体は、他の種由来のTNFR2(例えば、カニクイザルTNFR2)と結合してもよい。交差反応性を測定する方法は、実施例に記載される方法、および本分野で既知の標準的な測定法、例えば、光干渉による生体測定法、またはフローサイトメトリー技術を含む。
「親和性」または「結合親和性」は、結合対のメンバー同士間の相互作用を反映する固有結合親和性を指す。その配偶子Yに対する分子Xの親和性は、通常、平衡解離定数(K)によって示され、平衡解離定数は、解離速度定数と結合速度定数(それぞれkdisとkonである)との比である。親和性は、本分野で既知の通常の方法により測定することができる。親和性を測定するための具体的な方法の1つは、本明細書におけるForteBio動態結合測定法である。
「高親和性」という用語は、IgG抗体に対して、当該抗体が1x10-7Mまたはそれ以下、好ましくは5x10-8Mまたはそれ以下、より好ましくは約1x10-8Mまたはそれ以下、さらにより好ましくは約5x10-9Mまたはそれ以下のKで、標的抗原と結合することを指す。しかし、「高親和性」結合は、抗体アイソタイプによって変化することができる。例えば、IgMアイソタイプに対して、「高親和性」は、抗体が1x10-6Mまたはそれ以下、好ましくは1x10-7Mまたはそれ以下、より好ましくは約1x10-8Mまたはそれ以下のKを有することを指す。
TNFR2などの抗原と結合する参照抗体「競合的に結合する抗体」は、競合検定において、参照抗体と抗原(例えば、TNFR2)との結合の50%またはそれ以上を遮断し、逆に、参照抗体が競合検定において当該抗体と抗原(例えば、TNFR2)との結合の50%またはそれ以上を遮断する抗体を指す。例示的な競合検定は、「Antibodies」,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY)に記載されている。競合的に結合する抗体は、参照抗体と同じエピトープ領域、例えば、同じエピトープ、隣接するエピトープまたは重複するエピトープと結合することができる。
参照抗体とその抗原との結合を阻害(例えば、競合的阻害)する抗体とは、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の上記参照抗体とその抗原との結合を阻害する抗体である。逆に言えば、参照抗体は、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の当該抗体とその抗原との結合を阻害する。抗体とその抗原との結合は、親和性(例えば、平衡解離定数)で測定することができる。親和性の測定方法は、この分野で既知の内容である。
参照抗体と同様もしくは類似の結合親和性および/または特異性を示す抗体は、参照抗体の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%以上の結合親和性および/または特異性があり得る抗体を指す。これは、当該分野での既知の結合親和性および/または特異性の任意の測定方法により測定することができる。
本明細書における「Fc領域」という用語は、少なくとも一部の定常領域を含有する免疫グロブリン重鎖のC-末端領域を定義するために用いられる。当該用語は、天然配列Fc-領域および変異体Fc-領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc-領域は、重鎖のCys226からまたはPro230からカルボキシル末端に延伸する。しかし、Fc-領域のC-末端リシン(Lys447)が存在してもよく、または存在しなくてもよい。本明細書に特に断りのない限り、Fc-領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムによるものであり、例えば、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th editon,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242に記載されている。
「エフェクター機能」という用語は、抗体のFc-領域による生物活性を指し、抗体の種類によって変化する。主な抗体クラスは、IgA、IgD、IgE、IgGとIgMという5つがあると知られており、かつこれらの一部は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1とIgA2などのサブクラス(アイソタイプ)にさらに分けることができる。IgGFc領域は、サイトカイン誘導、ADCC、貪食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)、および抗体と抗原-抗体複合体の半減期/クリアランス速度などのいくつかの重要なエフェクター機能を媒介することができる。治療の目的によっては、これらのエフェクター機能は、治療用抗体に望まれるものである場合があるが、他の場合に、不要または有害なものである可能性がある。従って、一実施形態において、本発明は、Fc領域においてアミノ酸残基変化を有することで抗体エフェクター機能を変化させる変異体Fc領域およびそのスクリーニング方法を提供する。例えば、抗体のFc領域において少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、抗体のエフェクター機能を変えることができる。
「ADCC」は、抗体依存性細胞媒介性の細胞傷害を指す。ADCCは、人体において主にナチュラルキラー細胞(NK細胞)により媒介される。ADCCにおいて、抗体は、標的細胞表面にディスプレイされた抗原と結合し、NK細胞表面のFcγRIIIAにより抗体のFc領域を認識することで、NK細胞を活性化し、パーフォリンとグランザイムを放出し、標的細胞の溶解とアポトーシスを引き起こす。標的分子のADCC活性を評価するインビトロ測定試験の非限定的な実例は、US5,500,362(例えば、Hellstrom、I.et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83(1986)7059-7063、およびHellstrom,I.et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82(1985)1499-1502を参照してもよい)、US 5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166(1987)1351-1361を参照してもよい)に記載されている。または、非放射性測定方法(例えば、フローサイトメトリーに用いられるACTITM非放射性の細胞傷害測定(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA)およびCytoTox96(登録商標)非放射性の細胞傷害測定(Promega,Madison,WI))を採用することができる。これらの測定に適用されるエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいはまたはさらに、インビボで標的分子のADCC活性を評価することができ、例えば、Clynes,R.et al.,Proc.Nat’lAcad.Sci.USA 95(1998)652-656に開示された動物モデルにおいて評価する。
「CDC」は、補体依存性細胞傷害を指す。CDCにおいて、抗体のFc領域は、補体分子C1qと結合し、それにより膜攻撃複合体を形成し、標的細胞のクリアランスを引き起こす。例えば、LiszewskiおよびAtkinson,ch.26,Fundamental immunology,3rd editon,edited by Paul,Raven Press,New York,1993,pp917-940を参照する。
「ADCP」は、抗体依存性細胞媒介性の貪食作用を指す。Fc受容体により媒介されるこのプロセスにおいて、抗体と結合する標的細胞は、マクロファージ、単核細胞、好中球と樹状細胞などの貪食細胞により貪食される。複数種のFc受容体は、当該プロセスに関与することができる。Richards et al.,Mol.Cancer Ther.7(8):2517-2527(2008)には、ADCPのためのインビトロ試験が記載されている。
抗体に関連する「変異体」という用語は、本明細書において、参照抗体と比べて、既に少なくとも1個、例えば、1個~30個、1個~20個または1個~10個、例えば、1個、2個、3個、4個もしくは5個のアミノ酸置換、欠失および/または挿入によってアミノ酸変化を有する標的抗体領域を含む抗体を指し、ここで、変異体は、基本的に変化前の抗体分子の少なくとも1つの生物学的特性(例えば、抗原結合能力)を保持する。標的抗体領域は、抗体全長、あるいは重鎖可変領域、軽鎖可変領域またはそれらの組み合わせ、あるいは(1つもしくは複数の)重鎖CDR領域、(1つもしくは複数の)軽鎖CDR領域またはそれらの組み合わせであってもよい。本明細書において、参照抗体領域に対してアミノ酸変化を有する抗体領域は、当該抗体領域の「変異体」とも呼ばれる。
本明細書において、「配列同一性」は、比較ウィンドウにおいて1つずつのヌクレオチドまたは1つずつのアミノ酸に基づく配列が同一である程度を指す。「配列同一性百分率」は、次の方法により算出することができる:最適にアラインメントされた2つの配列を比較ウィンドウで比較し、2つの配列において同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同じアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が存在する位置の数を決定することでマッチングした位置の数を取得し、マッチングした位置の数を比較ウィンドウにおける総位置数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除算し、その結果に100を乗算して配列同一性の百分率を得る。配列同一性百分率を決定するために行われる最適なアラインメントは、本分野で既知の種々の方法により、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアで実現することができる。当業者は、比較されている全長配列範囲内または標的配列領域内での最大アラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。
本発明において、抗体配列について、アミノ酸配列同一性百分率は、候補抗体配列を参照抗体配列と最適にアラインメントした後、好ましい一形態でKabat番号付け規則に従って最適なアラインメントを行った後に決定される。本明細書において、比較ウィンドウ(すなわち、比較すべき標的抗体領域)を指定しない場合、参照抗体配列の全長でアラインメントすることに適用される。いくつかの実施形態において、抗体について、配列同一性は重鎖可変領域全体および/または軽鎖可変領域全体に分布することができ、あるいは配列百分率同一性はフレームワーク領域のみに限定され、CDR領域に対応する配列は100%同じに保持する。
同様に、抗体配列について、アラインメントに基づき、参照抗体に対して標的抗体領域においてアミノ酸変化アミノ酸変化を有する候補抗体を決定することができる。
本発明において、「保存的置換」は、あるアミノ酸の化学的に類似なアミノ酸への置換を引き起こすアミノ酸変化を指す。部位特異的変異誘発およびPCR媒介性の変異誘発のような本分野で既知の標準的な方法によって、置換などのアミノ酸修飾を本発明の抗体に導入することができる。
機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、本分野でよく知られているものである。好ましい一態様において、保存的置換残基は、以下の保存的置換表Aに由来し、好ましくは表Aに示される好ましい保存的置換残基である。
Figure 2024505987000001
本発明の各態様は、以下の各セクションにおいてさらに詳細に説明される。
I.本発明の抗TNFR2抗体
本発明の一態様は、TNFR2、好ましくはヒトTNFR2タンパク質(例えば、配列番号60、NM_001066.2のヒトTNFR2配列)と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、特にヒト化抗体またはその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体の抗原結合断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFvなどの単鎖抗体、(Fab’)断片、シングルドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)または線状抗体から選ばれる抗体断片である。
抗体の有利な生物学的特性
いくつかの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片は、高親和性でヒトTNFR2と結合し、例えば、解離平衡定数(K)は約50x10-9M以下、より好ましくは約1x10-9M~30x10-9M、さらにより好ましくは約5x10-9M以下であり、例えば約2nM、1.5nM、1.0nM、0.5nM、0.3nM、0.2nMである。好ましくは、Kは、光干渉による生体測定法(例えば、Fortebio親和性測定法)により測定される。いくつかの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片とヒトTNFR2との結合の解離定数は、例えば、Fortebio親和性測定法により決定され、約1x10-4-1~20x10-4-1であり、例えば、約2x10-4-1、約5x10-4-1、約10x10-4-1、約15x10-4-1、約20x10-4-1である。
いくつかの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片は、サルTNFR2と交差反応する。いくつかの実施形態において、抗体は、高親和性でカニクイザルTNFR2と結合し、ここで、K値(例えば、Fortebio親和性測定法による)は、約50x10-9M以下、より好ましくは約1x10-9M~30x10-9M、さらにより好ましくは約5x10-9M以下である。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、高親和性で細胞表面に発現したTNFR2と結合する。一実施形態において、上記表面にヒトTNFR2を発現した細胞は、腫瘍細胞(例えば、リンパ腫細胞、例えば、K562細胞)、Treg細胞(例えば、ヒト末梢血天然CD4CD25CD127LOW 制御性T細胞)、またはTNFR2を組換え発現した哺乳動物細胞である。好ましくは、フローサイトメトリー(例えば、FACS)により、抗体とヒトTNFR2を発現した細胞との結合のEC50値を測定する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体と細胞表面TNFR2との結合のEC50値は10nM未満、例えば0.1nM~5nMであり、例えば、TNFR2を組換え発現したCHO細胞においてフローサイトメトリーにより測定される。別の実施形態において、本発明の抗体と細胞表面TNFR2との結合のEC50値は100pM未満、例えば20pM~60pMであり、例えば、K562細胞またはヒト末梢血Treg細胞においてフローサイトメトリーにより測定される。当業者は、細胞表面TNFR2の密度が抗体と細胞の結合EC50の測定値に影響を及ぼす場合があることが分かる。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、TNFR2とそのリガンドTNFαとの結合を遮断する。フローサイトメトリー(例えば、FACS)により、ヒトTNFR2(細胞に発現したTNFR2)とヒトTNFαの結合を遮断する抗体の能力(例えば、IC50値と最大遮断活性)を測定することができる。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトTNFR2(細胞に発現したTNFR2)とヒトTNFαの結合を完全に遮断することができる。いくつかの実施形態において、FACSにより測定し、本発明の抗体のIC50値は約10nM未満、例えば、約1nM、2nM、3nM、4nM、5nMまたは6nMである。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、TNFαとTNFR2の結合によるNF-κBシグナル伝達経路の活性化を低減する。いくつかの実施形態において、蛍光レポーター遺伝子試験(例えば、実施例のJurkat NF-κB蛍光レポーター試験)により、TNFαとTNFR2の結合によるNF-κBシグナル伝達経路の活性化を低減する抗体の能力(例えば、最大阻害およびIC50値)を検出する。いくつかの実施形態において、抗体は、TNFαとTNFR2の結合によるNF-κBシグナル伝達経路の活性化を遮断し、抗体を加えない場合に比べて、3倍以上の阻害に達することができる。いくつかの実施形態において、抗体のIC50値は、約0.1nM~10nM未満である。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片と細胞TNFR2の結合は、NKおよび/またはエフェクターT細胞の存在下でADCCシグナル伝達経路を活性化する。好ましくは、本発明の抗体は、ADCC活性によりTNFR2陽性腫瘍細胞を殺傷することができる。いくつかの実施形態において、蛍光レポーター遺伝子試験(例えば、実施例のJurkat ADCCルシフェラーゼレポーター遺伝子検出試験)により、抗体とTNFR2の結合によるADCC蛍光シグナルの能力(例えば、最大活性化作用およびEC50値)を検出する。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、ヒトTNFR2を発現した腫瘍の成長を阻害する。一実施形態において、腫瘍細胞は、ヒトTNFR2を発現したリンパ腫細胞、例えば慢性骨髄性白血病細胞であり、またはヒトTNFR2を発現した固形腫瘍細胞、例えば結腸がん細胞である。さらなる一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、ADCC依存性腫瘍細胞殺傷活性を引き起こす。別のいくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、(例えば、腫瘍微小環境において)TNFR2を発現した免疫抑制性制御性Treg細胞の機能を阻害する。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、
-免疫抑制性Treg細胞に作用し、その増殖を阻害することで、宿主の免疫機能の回復に有益であること、および
-表面にTNFR2を発現したがん細胞に直接作用し、ADCC依存性腫瘍細胞殺傷活性を引き起こすこと、
のうちの少なくとも1つまたは好ましくは2つの作用を有する。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、レシピエント(例えば、実施例の担腫瘍マウスなどの担腫瘍動物モデル)において少なくとも10%の腫瘍阻害率、例えば、少なくとも20%~50%もしくはそれ以上の腫瘍阻害率に達する。
好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、上記の特性の少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、さらに好ましくは少なくとも3つ、4つ、または5つ、さらにより好ましくは上記のすべての特性を示す。
抗体のCDR領域
「相補性決定領域」、「CDR領域」または「CDR」(本明細書において、超可変領域「HVR」と入れ替えて使用可能である)は、抗体可変領域において主に抗原エピトープとの結合を担当するアミノ酸領域にわたってある。重鎖および軽鎖のCDRは通常、CDR1、CDR2とCDR3と呼ばれ、N末端から順に番号付けられる。抗体の重鎖可変ドメインにあるCDRはHCDR1、HCDR2とHCDR3と呼ばれ、抗体の軽鎖可変ドメインにあるCDRはLCDR1、LCDR2とLCDR3と呼ばれる。
下記の表Bには、本発明のいくつかの例示的な抗体のVHおよびVL配列の組み合わせを示す。
Figure 2024505987000002
本分野では、所定のVHまたはVLアミノ酸配列にそのCDR配列を決定するための方案が複数既知されている。例えば、Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列変異性によって決定され、かつ最もよく用いられるものである(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Chothiaは、構造リングの位置を指す(ChothiaとLesk,J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造リングとの間のトレードオフであり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触性」(Contact)HVRは、入手可能な複雑な結晶構造への解析に基づくものである。異なるCDR決定方法に従って、これらのHVRにおける各HVR/CDRの残基は以下の通りである。
Figure 2024505987000003
HVRは、Kabat番号付けシステムに基づいて、以下のようなKabat残基位置に位置付けるHVR配列であってもよい:
VLにおける位置24~36または24~34(LCDR1)、位置46~56または50~56(LCDR2)、および位置89~97または89~96位置(LCDR3)、ならびにVHにおける位置26~35または27~35B(HCDR1)、位置50~65または49~65(HCDR2)、または位置93~102、94~102または95~102(HCDR3)である。
HVRは、参照CDR配列(例えば、本発明の例示的なCDRのいずれか1つ)と同じKabat番号付け位置を有することによって決定することができる。
特に断りのない限り、本発明において、「CDR」、「CDR配列」、「HVR」または「HVR配列」という用語は、上記のいずれか1つの方法で定められるHVRまたはCDR配列を含む。
特に断りのない限り、本発明において、抗体可変領域における残基位置(重鎖可変領域残基と軽鎖可変領域残基を含む)に言及する場合、Kabat番号付けシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))に基づく番号付け位置を指す。
好ましい一実施形態において、本発明のCDR配列は、図15に示す通りである。
下記の表Cには、本発明のいくつかの例示的なCDR配列の組み合わせを示す。
Figure 2024505987000004
異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。しかし、CDRが抗体間で異なるにもかかわらず、CDRにおいては、抗原との結合に直接関与するアミノ酸位置の数が限られている。Kabat、Chothia、AbMおよびContact方法のうちの少なくとも2つを使用することにより、最小の重複領域を決定することができ、それによって抗原と結合するための「最小結合単位」を提供する。最小結合単位は、CDRの1つのサブ部分であってもよい。当業者に知られているように、抗体の構造とタンパク質のフォールディングによって、CDR配列の残り部分の残基を決定することができる。従って、本発明は、本明細書に提供されるいずれのCDRの変異体についても考慮する。例えば、1つのCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基は変わらないように保持するが、KabatまたはChothiaに基づいて定義された残りのCDR残基は、保存的なアミノ酸残基で置換されてもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDRが、表Bに示されるいずれか1つの抗体の可変領域配列における対応するCDRまたはその変異体と同じである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも1つ、2つまたは3つのHCDRが、表Bに示されるいずれか1つの抗体の可変領域配列における対応する重鎖CDRまたはその変異体と同じである。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも1つ、2つもしくは3つのLCDRが、表Bに示されるいずれか1つの抗体の可変領域配列における対応する軽鎖CDRまたはその変異体と同じである。本明細書において、「対応するCDR」は、最適にアラインメントした後、候補抗体の可変領域アミノ酸配列において、参照抗体のCDRと最も類似した位置にあるCDRを指す。本明細書において、CDR変異体は、既に少なくとも1個、例えば、1個、2個もしくは3個のアミノ酸置換、欠失および/または挿入によって修飾されるCDRであり、ここで、CDR変異体を含む抗原結合分子は、基本的に非修飾CDRを含む抗原結合分子の生物学的特性を保持し、例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%もしくは100%の生物学的活性(例えば、抗原結合能力)を保持する。各CDRは、単独で修飾されても、組み合わせて修飾されてもよいことが理解されるべきである。好ましくは、アミノ酸修飾はアミノ酸置換であり、特に保存的アミノ酸置換であり、例えば、表Aに示される好ましい保存的アミノ酸置換である。
また、本分野で既知のように、CDR3領域は、CDR1および/またはCDR2領域とは独立しており、関連抗原に対する抗体の結合特異性を単独で決定することができる。かつ、共通のCDR3配列に基づいて、同じ結合特異性を有する複数種の他の抗体を産生することができる。
従って、一実施形態において、本発明の抗体は、表Bに示されるいずれか1つの抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域配列からのCDR3配列を含み、ここで、上記抗体は、ヒトTNFR2と特異的に結合することができる。さらなる一実施形態において、上記抗体は、同一の抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域からのCDR2、あるいは異なるTNFR2抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域からのCDR2を含んでもよい。さらなる一実施形態において、上記抗体は、同一の抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域からのCDR1、あるいは異なるTNFR2抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域からのCDR1を含んでもよい。本明細書に記載の測定方法により、ヒトTNFR2との結合活性、TNFR2とTNFα分子の結合への遮断活性、かつ/または腫瘍成長への阻害活性を含む、これらの抗体の活性を特徴付けることができる。
さらなる一態様において、抗原結合特異性が主にCDR1、2と3領域から提供されることを考慮すると、いくつかの実施形態において、VH CDR1、2と3配列およびVL CDR1、2と3配列を「混合とマッチングする」(すなわち、同一のTNFR2抗原と結合する異なる抗体に由来するCDRを混合とマッチングすることができるが、各抗体は、VH CDR1、2と3およびVL CDR1、2と3を含むことが好ましい)ことにより、TNFR2と結合する本発明の他の分子を産生することができる。このような「混合とマッチングする」抗体とTNFR2の結合は、本分野で既知の結合測定法(例えば、ELISA、SET、Biacore)および実施例に記載されるような測定法により測定することができる。VH CDR配列を混合とマッチングする時に、特定のVH配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置換することが好ましい。同様に、VL CDR配列を混合とマッチングする時に、特定のVL配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置換することが好ましい。本発明の表Bに示される抗体間でCDRの「混合とマッチング」を行うことができる。また、他の異なる抗体に由来する1つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR領域配列で、本明細書に示される抗体の構造的に類似したCDR配列を置換することにより、本発明の他の抗体を産生することもできることは、当業者には明らかである。
従って、いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は重鎖可変領域を含み、上記重鎖可変領域は重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含み、上記HCDR3は、
(i)表Bに示されるいずれか1つの抗体の重鎖可変領域のHCDR3と同じであり、または
(ii)表Cに示されるいずれか1つのHCDR3配列と同じであり、または
(iii)(i)もしくは(ii)のHCDR3に対して、少なくとも1個(好ましくは1個~2個、もしくはより好ましくは1個)のアミノ酸変化(好ましくは置換、より好ましくは保存的置換)
を含む。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、かつ上記抗体の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)および軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)は、
(i)表Bに示されるいずれか1つの抗体の重鎖と軽鎖可変領域配列のHCDR3とLCDR3と同じであり、または
(ii)表Cに示されるいずれか1つの組み合わせにおけるHCDR3とLCDR3配列と同じであり、または
(iii)(i)もしくは(ii)のHCDR3とLCDR3に対して、合計で少なくとも1個(好ましくは1個~2個、もしくはより好ましくは1個)のアミノ酸変化(好ましくは置換、より好ましくは保存的置換)
を含む。
一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)を含み、ここで、上記VHは、
(i)表Bに示されるいずれか1つの抗体のVH配列に含まれるHCDR1、HCDR2とHCDR3配列、または
(ii)表Cに示されるいずれか1つの組み合わせにおけるHCDR1、HCDR2とHCDR3配列、または
(iii)(i)もしくは(ii)の配列に対して、上記3つのCDR領域に合計で少なくとも1個、かつ5個、4個、3個、2個もしくは1個を超えないアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)が含まれた配列
を含む。
別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、上記VLは、
(i)表Bに示されるいずれか1つの抗体のVL配列に含まれるLCDR1、LCDR2とLCDR3配列、または
(ii)表Cに示されるいずれか1つの組み合わせにおけるLCDR1、LCDR2とLCDR3配列、または
(iii)(i)もしくは(ii)の配列に対して、上記3つのCDR領域に合計で少なくとも1個、かつ5個、4個、3個、2個もしくは1個を超えないアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)が含まれた配列
を含む。
別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで、上記抗体は、
(i)表Bに示されるいずれか1つの抗体のVHとVL配列に含まれる6つのCDR配列、または
(ii)表Cに示されるいずれか1つの組み合わせにおける6つのCDR配列、または
(iii)(i)もしくは(ii)の配列に対して、6つのCDR領域に合計で少なくとも1個かつ10個もしくは5個、4個、3個、2個、1個を超えないアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)が含まれる配列
を含む。
一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号19に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号20に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
(ii)配列番号21に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号22に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
(iii)配列番号23に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、および配列番号24に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2と3配列、または
(iv)配列番号25に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号26に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
(v)配列番号27に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号28に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
(vi)配列番号29に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号30もしくは31に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2と3配列、または
(vii)配列番号64に示される重鎖可変領域のHCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、ならびに配列番号65に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列
を含む。
好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、および軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRを含み、ここで、
(i)HCDR1は配列番号1のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR2は配列番号2のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR3は配列番号3のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR1は配列番号4のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR2は配列番号5のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、かつLCDR3は配列番号6のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、または
(ii)HCDR1は配列番号7のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR2は配列番号8のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR3は配列番号9のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR1は配列番号10のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR2は配列番号11のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、かつLCDR3は配列番号12のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、または
(iii)HCDR1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR3は配列番号15のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR1は配列番号16のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、かつLCDR3は配列番号18のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成される。
好ましい一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、表Cに示される組み合わせのうちの1つの6つのCDR配列を含む。
抗体の可変領域
「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖における、抗体とその抗原の結合に関与するドメインである。重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)は、比較的保存的な領域(すなわち、フレームワーク領域(FR))が介在する超可変領域(HVR、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる)にさらに分けることができる。それぞれのVHおよびVLは、3つのCDRと4つのFRとで構成され、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。場合によっては、単一のVHまたはVLドメインだけで、抗原-結合特異性を付与することができる。また、特定の抗原と結合する抗体は、上記抗原と結合する抗体に由来するVHまたはVLドメインにより相補性VLまたはVHドメインライブラリーを選別することで単離することができる(例えば、Portolano,S.et al.,J.Immunol.150(1993)880ー887、Clackson,T.et al.,Nature 352(1991)624ー628参照)。
本分野で既知のように、2つの可変領域の一方または両方(すなわち、VHおよび/またはVL)における1つもしくは複数の残基を修飾し、例えば、1つもしくは複数のCDR領域および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域に対して残基修飾、特に保存的残基置換を行うことができるが、修飾された抗体は、依然として、変化前の抗体分子の少なくとも1つの生物学的特性(例えば、抗原結合能力)を基本的に保持する。例えば、CDR領域の残基を変異させて、抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、親和性)を改善することができる。インビトロまたはインビボ測定試験において、変異後の抗体の抗原結合特性または他の機能特性を評価することができる。好ましくは、保存的置換が導入される。好ましくは、CDR領域に導入される残基変化は、1個、2個、3個、4個または5個を超えない。また、例えば、抗体の特性を改善するために、フレームワーク領域残基を変異させることができる。例えば、1つまたは複数のフレームワーク残基を、対応する生殖細胞系列配列残基に「復帰変異」してもよい。
CDR移植は、本分野で既知のもう1つの抗体可変領域修飾方法である。CDR配列は、ほとんどの抗体-抗原相互作用を担当するため、既知の抗体の特性をシミュレーションする組換え抗体変異体を構築することができる。当該抗体変異体において、既知の抗体からのCDR配列は、異なる特性を有する異なる抗体のフレームワーク領域に移植される。従って、一実施形態において、本発明は、表Bの抗体のうちの1つからの重鎖および軽鎖可変領域のCDR配列を含むが、異なるフレームワーク領域配列を有する、抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片に関する。置換のためのフレームワーク領域配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公共DNAデータベースから、または公開文献に報告されたTNFR2抗体配列から得ることができる。例えば、ヒト重鎖と軽鎖可変領域遺伝子をコードする生殖細胞系列DNAは、GenBankデータベースから得ることができる。抗体タンパク質配列とデータベースにおけるタンパク質配列は、Gapped BLASTなどの配列類似性検索ツールにより比較することができる。好ましくは、置換のためのフレームワーク配列は、変化のために選択された本発明の抗体のフレームワーク配列と構造的類似性を有し、例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有するフレームワーク配列を有する。いくつかの実施形態において、実施例9の方法のように抗体のヒト化を行うことができる。
さらなる一実施形態において、本発明の例示的な抗体(表Bに示される抗体のうちの1つ)と他の異なる抗TNFR2抗体(好ましくは、表Bに示される別の抗体)に由来するVHとVL配列を「混合とマッチングする」ことにより、TNFR2と結合する本発明の他の抗体を産生することができる。これらの鎖を混合とマッチングする時に、好ましくは、具体的なVH/VL対に由来するVH配列を構造的に類似したVH配列に置換する。同様に、特定のVH/VL対に由来するVL配列は、構造的に類似したVL配列で置換することが好ましい。このような「混合とマッチングする」抗体とTNFR2の結合は、本分野で既知の結合測定法(例えば、ELISA、および実施例部分に記載された他の測定法)により測定することができる。
従って、一実施形態において、本発明の抗体は、表Bに示されるいずれか1つの抗体の重鎖可変領域VH配列を含み、または上記アミノ酸配列によって構成される。さらなる一実施形態において、本発明の抗体は、上記VH配列の変異体を含む。
別の実施形態において、本発明の抗体は、表Bに示されるいずれか1つの抗体の軽鎖可変領域VL配列を含み、または上記アミノ酸配列によって構成される。さらなる一実施形態において、本発明の抗体は、上記VL配列の変異体を含む。
さらなる一実施形態において、本発明の抗体は、
(i)配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むVH配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むVL配列もしくはその変異体、または
(ii)配列番号21に示されるアミノ酸配列を含むVH配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むVL配列もしくはその変異体、または
(iii)配列番号23に示されるアミノ酸配列を含むVH配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号24に示されるアミノ酸配列を含むVL配列もしくはその変異体、または
(iv)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むVH配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むVL配列もしくはその変異体、または
(v)配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むVH配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むVL配列またはその変異体、
(vi)配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むVH配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号30もしくは21に示されるアミノ酸配列を含むVL配列もしくはその変異体、あるいは
(vii)配列番号64に示されるアミノ酸配列を含むVH配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号65に示されるアミノ酸配列を含むVL配列またはその変異体、
を含む。
一実施形態において、VH配列の変異体は、アミノ酸配列において、参照VH配列と比べて、(好ましくは、全長にわたって、またはCDR1、2と3の3つの領域にわたって)、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有する。一実施形態において、VH配列の変異体は、アミノ酸配列において、参照VH配列と比べて、(好ましくは、全長にわたって、またはCDR1、2と3の3つの領域にわたって)、少なくとも1個、かつ30個、10個、または5個、4個、3個、2個、1個、0個を超えないアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を含む。好ましくは、配列の相違は、CDR領域に生じない。
好ましい一実施形態において、VL配列の変異体は、アミノ酸配列において、参照VL配列と比べて、(好ましくは、全長にわたって、またはCDR1、2および3の3つの領域にわたって)、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有する。好ましい一実施形態において、VL配列の変異体は、アミノ酸配列において、参照VL配列と比べて、(好ましくは、全長にわたって、またはCDR1、2と3の3つの領域にわたって)、少なくとも1個、かつ30個、10個、または5個、4個、3個、2個、1個、0個を超えないアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を含む。好ましくは、配列の相違は、CDR領域に生じない。
好ましい一実施形態において、本発明の抗体は、表Bに示されるいずれか1つの抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域VH/VL配列対を含み、または上記アミノ酸配列対によって構成される。本発明は、当該抗体の変異体、例えば、VH、VLまたはVHとVLに少なくとも95%~99%の同一性を有し、または10個を超えないアミノ酸変化を含む変異体も提供する。
上記のいずれか1つの実施形態において、好ましくは、参照抗体に対して、抗体変異体の重鎖可変領域は、1つまたは複数のCDR(好ましくはすべての3つのCDR)領域に10個を超えず、好ましくは5個を超えない(例えば、3個、2個、1個もしくは0個)アミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を含む。
上記のいずれか1つの実施形態において、好ましくは、参照抗体に対して、抗体変異体の軽鎖可変領域VLは、1つまたは複数のCDR(好ましくはすべての3つのCDR)領域に10個を超えず、好ましくは5個を超えない(例えば、3個、2個、1個もしくは0個)アミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を含む。
抗体の重鎖と軽鎖
一実施形態において、本発明の抗体は、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、重鎖Fc領域、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプのFc領域を含む。別のいくつかの実施形態において、本発明の抗体は、IgG1-Fc領域、特にヒトIgG1-Fc領域を含む。さらなるいくつかの実施形態において、本発明の抗体は、κ軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ軽鎖定常領域を含む。
抗体の所望の応用によって、抗体は、天然Fc領域に対して同じまたは変化されたエフェクター機能を有する重鎖定常領域を含むことができる。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、ADCCおよび抗体依存性細胞により媒介される貪食作用(ADCP)などのFcγRにより媒介されるエフェクター機能を含む。一般的に、抗体の可変領域が細胞(例えば、腫瘍細胞)表面抗原と結合し、かつ抗体のFc領域がエフェクター細胞(例えば、Tエフェクター細胞)上のFc受容体と結合する場合、エフェクター機能が引き起こされる。哺乳動物において、液性免疫のほとんどは、抗体Fc領域とC1qの相互作用および補体カスケードにより媒介される。一方、細胞免疫反応のほとんどは、抗体Fc領域とFcγ受容体(すなわち、FcγR)の相互作用により媒介される。FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIIAおよびFcγRIIIBは、活性化FcγRである。一方、FcγRIIBは抑制性FcγRである。活性化受容体の細胞内シグナル伝達は、受容体の細胞内ITAMモチーフのリン酸化により媒介され、これは、ADCC、ADCPなどのエフェクター機能、およびサイトカインの放出を誘導することによる炎症反応をもたらす。抑制性受容体FcγRIIBの細胞シグナル伝達は、受容体細胞内のITIMモチーフのリン酸化により媒介され、活性化シグナル伝達経路を平衡する作用を果たす。抗体とFcγRおよびC1qとの相互作用は、主に、ヒンジとCH2アミノ酸配列およびCH2領域のグリコシル化に依存する。
いくつかの実施形態において、従って、本発明の抗体は、活性化FcγRと結合する重鎖定常領域を含む。一具体的な実施形態において、抗体は、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIA(CD16a)F158変異体、FcγRIIIA(CD16a)V158変異体から選ばれるFcRと結合する重鎖定常領域を含む。別の具体的な実施形態において、抗体は、ヒトIgG1またはIgG3サブクラスの定常領域を含む。好ましくは、本発明の抗TNFR2抗体は、NK細胞などのエフェクター細胞が存在する時にADCCを誘導する。
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列番号62のヒトIgG1定常領域のアミノ酸配列、または配列番号62のアミノ酸配列に対して少なくとも1つ、2つもしくは3つであるが、20個、10個もしくは5個を超えないアミノ酸変化を含むアミノ酸配列、または配列番号62のアミノ酸配列と少なくとも95%~99%の同一性を有する配列を含む。
好ましい一実施形態において、本発明の抗体は、軽鎖定常領域を含む。好ましい一実施形態において、軽鎖定常領域は、ヒトκ軽鎖定常領域である。さらに好ましい一実施形態において、軽鎖定常領域は、配列番号63のアミノ酸配列、または配列番号63のアミノ酸配列に対して少なくとも1個、2個もしくは3個であるが、20個、10個もしくは5個を超えないアミノ酸変化を含むアミノ酸配列、または配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも95%~99%の同一性を有する配列を含む。
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体は、重鎖を含み、かつ上記重鎖は、配列番号32~37と66から選ばれるアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも1個、2個もしくは3個であるが、20個、10個もしくは5個を超えないアミノ酸変化を含むアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、アミノ酸変化は、CDR領域に発生せず、より好ましくは、可変領域に発生しない。
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体は、軽鎖を含み、かつ上記軽鎖は、配列番号38~44と67から選ばれるアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも1個、2個もしくは3個であるが、20個、10個もしくは5個を超えないアミノ酸変化を含むアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、アミノ酸変化は、CDR領域に発生せず、より好ましくは、可変領域に発生しない。
好ましい一実施形態において、本発明の抗体は、
(a)配列番号32から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖配列もしくはその変異体、
(b)配列番号33から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号39または139のアミノ酸配列を含む軽鎖配列もしくはその変異体、
(c)配列番号34から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖配列もしくはその変異体、
(d)配列番号35から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖配列もしくはその変異体、
(e)配列番号36から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号42のアミノ酸配列を含む軽鎖配列もしくはその変異体、
(f)配列番号37から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号43もしくは44のアミノ酸配列を含む軽鎖配列もしくはその変異体、および
(g)配列番号66から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖配列もしくはその変異体、かつ/または配列番号67もしくは44のアミノ酸配列を含む軽鎖配列もしくはその変異体、
から選ばれる重鎖配列および/または軽鎖配列を含む。
ここで、上記変異体は、対応する参照配列と比べて、少なくとも1個、2個もしくは3個であるが、20個、10個もしくは5個を超えないアミノ酸変化を含むアミノ酸配列、または少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、アミノ酸変化はCDR領域に発生せず、より好ましくは、可変領域に発生しない。
いくつかの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体またはその断片の重鎖および/または軽鎖は、シグナルペプチド配列をさらに含む。
例示的な抗体配列
本発明は、実施例のように単離して特徴付けられる、TNFR2(例えば、ヒトTNFR2)と特異的に結合する抗体、例えば、マウス抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体を提供する。図16は、本発明のこれらの例示的な抗体の抗体可変領域VHおよびVL配列を示す。図15は、抗体の例示的なCDR配列を示す。
抗体の変異体
一態様において、本発明は、本明細書に言及される任意の抗体、特に表Bに示される例示的な抗体の変異体を提供する。一実施形態において、抗体の変異体は、変化前の抗体の少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%の生物学的活性(例えば、抗原結合能力)を保持する。いくつかの実施形態において、上記変化により、抗体の変異体が抗原への結合を失うことにはならないが、場合により、向上した抗原親和性および異なるエフェクター機能などのような特性を付与することができる。
なお、抗体の重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域、または各CDR領域は、単独でまたは組み合わせて変化することができる。いくつかの実施形態において、抗体の変異体と参照抗体は、標的抗体の配列領域において少なくとも80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する。例えば、一実施形態において、本発明の抗体は、参照抗体(例えば、表Bに示される抗体の1つ)と比べて、3つの重鎖CDR領域に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有する。一実施形態において、本発明の抗体は、参照抗体(例えば、表Bに示される抗体の1つ)と比べて、3つの軽鎖CDR領域に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有する。別の実施形態において、本発明の抗体は、参照抗体(例えば、表Bに示される抗体の1つ)と比べて、6つのCDR領域に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の同一性を有する。さらなる一実施形態において、本発明の抗体は、参照抗体(例えば、表Bに示される抗体の1つ)と比べて、重鎖可変領域に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する。さらなる一実施形態において、本発明の抗体は、参照抗体(例えば、表Bに示される抗体の1つ)と比べて、軽鎖可変領域に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する。さらに別の実施形態において、本発明の抗体は、参照抗体(例えば、表Bに示される抗体の1つ)と比べて、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する。
また、抗体のFc領域を変化させることができる。Fc領域の変化は、単独で、あるいはフレームワークおよび/またはCDR領域の上記変化と組み合わせて行われてもよい。例えば、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合などの抗体の1つもしくは複数の機能、かつ/または抗原依存性細胞傷害を変化させるために、Fc領域を変化させることができる。また、本発明の抗体を化学的に修飾(例えば、PEGと連結)したり、そのグリコシル化パターンを変化させたりしてもよい。
別のいくつかの実施形態において、所望の抗体の応用目的によっては、抗体は、修飾されたFc領域変異体を含んでもよく、上記修飾されたFc領域変異体は、非修飾の親Fc領域と比べて変化されたエフェクター機能を有する。通常、本明細書に記載の可変領域を、1つもしくは複数の修飾(例えば、アミノ酸置換、欠失および/または挿入)を含むFc領域に連結することにより、1種もしくは複数種の変化(例えば、強化、低減または除去)されたエフェクター機能を有する本発明の抗TNFR2抗体、例えば、非修飾の親Fc領域に対して、増加したADCC、CDC、ADCP、かつ/または血清半減期という増加した機能を有する抗TNFR2抗体を得ることができる。また、本発明の抗体を化学的に修飾し、例えば、抗体のグリコシル化パターンを変化させることにより、その機能を変化させることができる。
一部の実施形態において、抗体Fc領域は、ADCC活性を高める1つもしくは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc-領域の位置298、333および/または334の置換(残基のEU番号)を有するFc-領域を含んでもよい。いくつかの実施形態において、Fc-領域を変化させることで、変化(すなわち、向上もしくは低減)されたC1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を引き起こしてもよい(例えば、US6,194,551、WO99/51642およびIdusogie,E.E.et al.,J.Immunol.164(2000)4178-4184参照)。
いくつかの実施形態において、抗体は、Fc領域変異体を含み、上記変異体は、天然の非修飾の親Fc領域と比べて、増加したのADCC活性を有する。このようなFc領域変異体のいくつかの実例は、234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、247、248、249、252、254、255、256、258、262、263、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、301、303、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438または439(アミノ酸残基は、EUインデックスによって番号付けられる)という位置から選ばれる1つまたは複数のアミノ酸修飾に含まれる。例示的な置換は、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332D、および332Eを含む。例示的な組み合わせ置換は、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324T、および267E/268F/324Tを含む。
ヒトIgG1におけるFcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnとの結合部位が描かれており、かつ改善された結合を有する変異体が記載されている(Shields、R.L.et al.,(2001)J.Biol.Chem.276:6591-6604参照)。位置256、290、298、333、334および339での特定の変異は、FcγRIIIとの結合を改善可能なことを示している。T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224A、S298A/E333A/K334A、S239D/I332EおよびS239D/I332E/A330L変異という組み合わせ変異体は、FcγRIIIとの結合およびADCC活性を改善可能なことを示している。
別のいくつかの実施形態において、抗体Fcを変化させることで、そのグリコシル化程度を増加もしくは低減し、かつ/またはそのグリコシル化パターンを変えることができる。Fcのグリコシル化部位の追加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位を生成または除去するためにアミノ酸配列を変えることにより容易に実現することができる。例えば、1つまたは複数のグリコシル化部位を除去するために1つまたは複数のアミノ酸置換を行うことにより、当該部位でのグリコシル化を除去することができる。タイプが変化されたグリコシル化抗体、例えば、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体もしくは無フコシル化抗体、またはバイセクティングGlcNac構造が増加した抗体を調製することができる。このような変化されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を向上可能なことを示している。本発明は、Fc領域に連結されたオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も考慮する。これらの抗体変異体は、向上したCDC機能を有することができる。
さらにまたは代替的に、例えば、変化されたグリコシル化メカニズムを有する宿主細胞に抗体を発現することにより、抗体グリコシル化の程度および/またはパターンの変化を実現することができる。変化されたグリコシル化メカニズムを有する細胞は、本分野で既に記載されたものであり、かつ組換え抗体を発現することで変化されたグリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用可能である。
別のいくつかの実施形態において、本発明は、抗体のインビボ半減期は重要であるが、いくつかのエフェクター機能(例えば、補体とADCC)は不要または有害である特定の応用のための望ましい候補物となる、全部ではないく一部のエフェクター機能を有する抗体変異体も考慮する。例えば、Fc領域は、変異P329Gおよび/またはL234AとL235Aを有するヒトIgG1 Fc領域、あるいは変異P329Gおよび/またはS228PとL235Eを有するヒトIgG4 Fc領域などの、エフェクター機能を除去するかまたは減弱させる変異を含むことができる。
一部の実施形態において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された「チオMAb」などの、システイン操作抗体を産生する必要があり得る。例えば、抗体ヒンジ領域におけるシステイン残基の数を変更することによって、軽鎖および重鎖の組み立てを促進し、または抗体の安定性を向上もしくは低減させることができる。残基は、例えば、米国特許番号5,677,425である。
一部の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、非タンパク質部分が含まれるようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導に適する部分は、水溶性ポリマーを含むが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な実例は、例えば、抗体(例えば、血清)の半減期を増加させるために、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これに限定されない。タンパク質のPEG化のための方法は、本分野で既知するものであり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、EP 0154 316およびEP 0401384を参照する。
II.ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主
本発明は、上記の任意の抗TNFR2抗体またはその断片をコードする核酸を提供する。上記核酸を含むベクターをさらに提供する。一実施形態において、ベクターは発現ベクターである。上記核酸または上記ベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。一実施形態において、宿主細胞は真核のものである。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞もしくは293細胞)から選ばれる。別の実施形態において、宿主細胞は原核のものである。
一態様において、本発明は、上記の任意の抗TNFR2抗体またはその断片をコードする核酸を提供する。上記核酸は、抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸、あるいは抗体の軽鎖および/または重鎖のアミノ酸配列をコードする核酸を含むことができる。抗体の重鎖可変領域をコードする例示的な核酸配列は、配列番号45、47、49、51、53、55と68から選ばれる核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み、または配列番号45、47、49、51、53、55と68から選ばれる核酸配列を含む。抗体の軽鎖可変領域をコードする例示的な核酸配列は、配列番号46、48、50、52、54、56、57と69から選ばれる核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み、または配列番号46、48、50、52、54、56、57と69から選ばれる核酸配列を含む。これらのポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドは、適切な発現ベクターから発現される場合、TNFR2抗原結合能力を示すことができる。
本発明は、TNFR2と結合する上記抗体からの重鎖VHまたは軽鎖VL配列の少なくとも1つのCDR領域および通常はすべての3つのCDR領域をコードするポリヌクレオチドをさらに提供する。いくつかのさらなる実施形態において、ポリヌクレオチドは、上記のTNFR2と結合する上記抗体の重鎖および/または軽鎖の完全もしくは基本的に完全な可変領域配列をコードする。
当業者に明らかなように、遺伝暗号の退化性のため、それぞれの抗体またはポリペプチドアミノ酸配列は、複数種の核酸配列によってコードすることができる。
好ましい一実施形態において、抗体をコードする本発明の核酸は、配列番号62に示される定常領域配列またはそれと基本的に同じ配列などの、重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
好ましい一実施形態において、抗体をコードする本発明の核酸は、配列番号63に示される配列またはそれと基本的に同じ配列などの、軽鎖定常領域配列をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
本分野でよく知られている方法を用い、デノボ固相DNA合成により、またはPCR変異誘発により、TNFR2と結合する抗体もしくはその抗原結合断片の上記抗体核酸配列をコードすることができる。
一実施形態において、本発明の核酸を含む1つまたは複数のベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは発現ベクター、例えば、真核発現ベクターである。ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージまたは酵母人工染色体(YAC)を含むが、これらに限定されない。
一実施形態において、上記ベクターを含む宿主細胞を提供する。抗体をコードするベクターをクローニングまたは発現するための適切な宿主細胞は、本明細書に記載される原核または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特に、グリコシル化とFcエフェクター機能が不要な場合に、細菌において産生することができる。細菌における抗体断片とポリペプチドの発現に関しては、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、第5,840,523号、およびCharlton,Methods in Molecular Biology,vol.248(edited by B.K.C.Lo,Humana Press,Totowa,NJ,2003),p245~254,大腸菌における抗体断片の発現が参照される。発現した後、抗体は、可溶性画分における細菌細胞ペーストから単離することができるとともに、さらに精製することができる。
一実施形態において、宿主細胞は真核のものである。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞または抗体もしくはその抗原結合断片の調製に適用される他の細胞から選ばれる。例えば、糸状菌または酵母のような真核微生物は、抗体をコードするベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。例えば、グリコシル化経路が既に「ヒト化」された真菌と酵母菌株により、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体を産生する。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、およびLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)が参照される。グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物と脊椎動物)からも由来する。脊椎動物の細胞を宿主として用いてもよい。例えば、懸濁成長に適するように改変された哺乳動物細胞株を使用することができる。使用可能な哺乳動物宿主細胞株の他の実例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-7)、ヒト胎児腎臓系(293HEKもしくは293細胞、例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されたもの)などに示される。他の使用可能な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:216(1980))などのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、およびY0、NS0とSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体の産生に適するような哺乳動物宿主細胞株は、例えば、Yazaki&Wu,Methods in Molecular Biology,vol. 248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),p255ー268(2003)で概略的に説明されている。
III.抗体の調製
一実施形態において、抗体の発現に適する条件で、上述したように、上記抗体をコードする核酸を含む上記の宿主細胞を培養することと、場合により上記宿主細胞(または宿主細胞培地)から上記抗体を回収することとを含む、抗TNFR2抗体を調製する方法を提供する。組換えにより抗TNFR2抗体を産生するために、抗体(例えば、上記の抗体)をコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のために、それを1つまたは複数のベクターに挿入する。このような核酸は、通常のプロセスにより単離してシークエンシングすることが容易である(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって行われる)。
IV.測定法
本分野で既知の種々の測定法により、本明細書に提供される抗TNFR2抗体を同定し、スクリーニングし、またはその物理的/化学的特性および/または生物学的活性を特徴付けることができる。
例えば、ELISA、Westernブロットのような本分野で既知の方法、または本明細書の実施例に開示された例示的な方法により、抗体とヒトTNFR2との結合を測定することができる。例えば、フローサイトメトリーにより測定することができ、ここで、抗体は、ヒトTNFR2を発現した細胞株、例えば、トランスフェクトにより細胞表面にヒトTNFR2を発現したCHO細胞と反応する。ヒトTNFR2を発現した腫瘍細胞または初代Treg細胞を含む他の細胞も、フローサイトメトリーに適用される。場合により、結合ダイナミクス(例えば、K値)を含む抗体の結合は、組換えTNFR2タンパク質を使用して光干渉による生体測定法で測定することができる。いくつかの実施形態において、光干渉による生体測定法(例えば、Fortebio親和性測定)により、抗体とヒトおよび他の種に由来するTNFR2の結合平衡解離定数を測定する。
TNFR2に対する本発明の阻害性/拮抗性抗体は、細胞膜TNFR2との結合により、リガンドTNFαによるTNFR2シグナル伝達経路の活性化を遮断することができる。いくつかの実施形態において、当該遮断活性は、実施例の抗体3C4と69B1およびそのヒト化形態、またはそれと同様もしくは類似のVHとVL配列を有する抗体などの抗体によるTNFR2とその天然リガンドTNFαとの結合への遮断によるものである。別のいくつかの実施形態において、当該遮断活性は、実施例の抗体72G8およびそのヒト化形態、またはそれと同様もしくは類似のVHとVL配列を有する抗体などの抗体によるTNFR2とその天然リガンドTNFαとの結合への遮断によらないものであり、これらの抗体は、細胞表面TNFR2の重合を直接阻害することで、TNFR2受容体の活性化を阻害することができる。Jurkat TNFR2 NF-κB ルシフェラーゼレポーター検出システムにより、TNFR2を過剰発現したJurkat細胞において、本発明の抗体によるTNFαにより活性化されたTNFR2シグナル伝達経路への阻害作用を検出することができる。いくつかの実施形態において、実施例8に記載の方法により、本発明の抗体によるTNFαにより活性化されたTNFR2シグナル伝達経路への阻害作用を検出する。
ADCCレポーター遺伝子の生物学的活性検出により、本発明の抗体によるTNFR2を発現した標的細胞へのADCC殺傷作用を検出することができる。ADCCレポーター遺伝子の生物学的活性検出法は、ADCC作用メカニズム経路の活性化過程における初期事象、すなわち、エフェクター細胞におけるNFAT(活性化T細胞核因子)経路により媒介される遺伝子転写の活性化を検出の読み出し指標として選択する。また、ADCCレポーター遺伝子検出法は、操作されたT細胞をエフェクター細胞(例えば、Jurkat細胞)として使用し、ここで、上記細胞は、FcγRIIIa受容体(例えば、V158高親和性変異体)およびNFAT応答要素により発現駆動されるホタルルシフェラーゼを安定的に発現する。上記検出において、ADCC作用メカニズムにおける抗体の生物活性は、NFAT経路の活性化により産生されたルシフェラーゼによって定量されるが、エフェクター細胞におけるルシフェラーゼ活性は、生物発光の読取値によって定量される。ADCCレポーター遺伝子の生物学的活性検出により、正確な表面抗原を有する標的細胞、正確な特異性抗体、およびFcγRIIIaを発現したエフェクター細胞を同時に備える場合にのみ、良好な検出応答を得ることができる。好ましい一実施形態において、本発明の抗体のADCC活性は、実施例14に記載のADCCレポーター遺伝子検出方法により検出される。
本発明は、生物学的活性を有する抗TNFR2抗体を同定するための測定法をさらに提供する。生物学的活性は、例えば、TNFR2(例えば、ヒトTNFR2)との結合、TNFR2(例えば、ヒトTNFR2)とTNFα分子の結合への遮断、TNFαとTNFR2の結合により媒介されるシグナル伝達への阻害、ADCC活性の誘発、かつ/または腫瘍成長の阻害を含んでもよい。例えば、インビボ腫瘍阻害モデル(例えば、実施例15と16参照)において、抗体の腫瘍成長への阻害能力を測定する。本発明は、インビボおよび/またはインビトロでこのような生物学的活性を有する抗体も提供する。
なお、本発明の免疫複合体または多重特異性抗体で抗TNFR2抗体を置換または補充することで、任意の上記測定を実現することができる。
V.多重特異性抗体
さらなる一態様において、本発明は、TNFR2(好ましくはヒトTNFR2)と特異的に結合する多重特異性(二重特異性を含む)抗体分子を提供する。一実施形態において、多重特異性抗体において、本発明の抗体(またはその抗原結合断片)は、TNFR2に対する第1の結合特異性を形成する。さらなる一実施形態において、上記多重特異性抗体は、さらに、以下の1つに対する第2の特異性、またはさらに、以下の2つの分子に対する第2と第3の結合特異性を含む。上記の第2、第3の結合特異性は、例えば、腫瘍細胞表面に発現した別の抗原に対してもよい。
一実施形態において、結合特異性は、抗体の「結合部位」または「抗原結合部位」(抗体分子において抗原と実際に結合する領域)によって提供される。好ましい一実施形態において、抗原結合部位は、抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体の重鎖可変ドメイン(VH)からなるVH/VL対で構成される。従って、一実施形態において、「多重特異性」抗体は、少なくとも2つの抗原結合部位を有する抗体であり、上記少なくとも2つの抗原結合部位のそれぞれは、同じ抗原の異なるエピトープまたは異なる抗原の異なるエピトープと結合することができる。多重特異性抗体およびその調製については、例えば、WO 2009/080251、WO 2009/080252、WO 2009/080253およびWO 2010/145793に記載されたことを参照することができる。
VI.免疫複合体
さらなる一態様において、本発明は、本発明の抗体を異種分子に複合することにより産生される免疫複合体を提供する。一実施形態において、免疫複合体において、本発明の抗体(またはその抗原結合断片)は、治療剤または診断剤と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、全長抗体または抗体断片の形態で異種分子と複合することができる。例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、単鎖scFab抗体、単鎖scFvなどの断片の形態で複合することができる。
リンカーにより、複合体の様々な実体を共有結合することができる。好適なリンカーは、化学リンカーまたはペプチドリンカーを含む。有利なことに、リンカーは、標的部位への送達後にポリペプチドの放出を容易にする「切断可能なリンカー」である。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感度リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたは二硫化物を含むリンカー(Chari et al.,Cancer Research 52(1992)127~131;US5,208,020)を使用することができる。
複合体に適用される治療剤は、細胞毒素(例えば、細胞成長阻害剤もしくは細胞殺傷剤)、薬物または放射性同位体を含むが、これらに限定されない。免疫複合体の形成に適する細胞傷害剤(例えば、化学療法剤)としては、例えば、WO05/103081が参照され、本分野で既知のものである。例えば、細胞傷害剤は、放射性同位体、成長阻害剤、ヌクレアーゼなどの酵素およびその断片、抗生物質、その断片および/または変異体を含む小分子毒素、細菌、真菌、植物または動物由来の酵素活性毒素などの毒素、および既知の種々の抗腫瘍または抗がん剤を含むが、これらに限定されない。
さらなる一態様において、本発明の抗体は、診断剤または検出可能な試薬と複合することができる。このような複合体は、臨床検査方法の一部(例えば、特定療法の効能を確認する)として、疾患または病症の発作、形成、進行および/または重篤性を監視または予測することができる。抗体を検出可能な試薬にカップリングすることにより、このような診断および検出を実現することができ、上記検出可能な試薬は、西洋ワサビペルオキシダーゼなどに限定されないさまざまな酵素、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどに限定されない補欠分子族、蛍光物質、発光物質、放射性物質、ならびにさまざまな陽電子放出イメージングで使用される陽電子放出金属および非放射性常磁性金属イオンを含むが、これらに限定されない。
VII.医薬組成物および医薬製剤
本発明は、抗TNFR2抗体もしくはその免疫複合体または多重特異性抗体を含む組成物(医薬組成物または医薬製剤を含む)、抗TNFR2抗体もしくはその免疫複合体または多重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物をさらに含む。これらの組成物はまた、場合により、本分野で既知の薬学的に許容可能なベクター、緩衝剤を含む薬用賦形剤などの、適切な薬用補助材料を含んでもよい。
本発明に適用される薬学的に許容可能なベクターは、水および油などの滅菌液体であってもよく、ピーナッツオイル、大豆油、鉱油、ごま油などの石油、動物、植物または合成に由来するようなものを含む。医薬組成物が静脈内に投与される場合、水はベクターとして好ましい。さらに、生理食塩水溶液および水性デキストロースとグリセリン溶液を液体ベクターとして、特に注射可能な溶液に用いてもよい。適切な薬用賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、ジオール、水、エタノールなどを含む。賦形剤の使用およびその用途については、「Handbook of PharmaceuticalExcipients」、5th editon、R.C.Rowe、P.J.SeskeyおよびS.C.Owen、PharmaceuticalPress、London、Chicagoも参照される。必要に応じて、上記組成物は、少量の湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末、持続性放出製剤などの形態を採用することができる。経口製剤は、薬用マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンなどの標準的なベクターを含んでもよい。
所望の純度を有する本発明の抗TNFR2抗体、免疫複合体または多重特異性抗体を、1つまたは複数の任意の薬用補助材料(Remington′s Pharmaceutical Sciences,16th edition,edited by Osol,A.(1980))と混合することにより、好ましくは凍結乾燥製剤または水溶液の形態で本発明を含む医薬製剤を調製することができる。
本発明の医薬組成物および医薬製剤において、本発明の抗体は、唯一の活性剤であってもよく、または他の治療剤と併用してもよい。本発明の抗体と併用可能な治療剤は、治療すべき疾患および/または病症に有益な治療効果を有する治療剤を含むが、これらに限定されない。例えば、上記活性成分は、治療される特定の適応症に必要なものであってもよく、好ましくは、互いに悪影響を与えない相補的な活性を有するような活性成分である。例えば、抗がん活性を付与可能な他の薬物成分である。本発明の抗体および活性成分は、目的とする使用に有効な量で医薬組成物および医薬製剤に適切に組み合わせて存在する。
持続放出製剤を調製することができる。持続放出製剤の適切な実例は、抗体を含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリックスを含み、上記マトリックスは、例えば、フィルムまたはマイクロカプセル形態のような成形品である。
医薬製剤の他の成分については、WO2015/153513に開示されているものを参照してもよい。
VIII.組み合わせ製品
さらなる一態様において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片、二重特異性抗体または免疫複合体、および1種もしくは複数種の他の治療剤(例えば、化学療法剤、他の抗体、細胞傷害剤、抗腫瘍薬など)を含む組み合わせ製品をさらに提供する。本発明の組み合わせ製品は、本発明の治療方法に使用することができる。いくつかの実施形態において、本発明は、組み合わせ製品を提供し、ここで、上記他の治療剤は、例えば、免疫反応を刺激して対象の免疫反応をさらに増強、刺激またはアップレギュレートするのに有効な治療剤、例えば抗体である。
いくつかの実施形態において、上記組み合わせ製品は、腫瘍の予防または治療に用いられる。いくつかの実施形態において、腫瘍は、結腸がん、慢性骨髄性白血病などのがんである。
IX.方法および使用
一態様において、本発明は、本発明のTNFR2抗体またはその抗原結合断片を適用する方法および使用を提供する。例えば、インビボとインビトロで、
(1)TNFR-2とそのリガンドTNFαの結合を遮断すること、
(2)TNFR-2とそのリガンドTNFαの結合を遮断せずに、TNFR2の重合を直接阻害すること、
(3)依存的または非依存的にTNFαとTNFR2の結合を遮断することにより、TNFR2受容体の活性化を阻害すること、
(4)TNFαとTNFR2との結合により媒介されるNF-κBシグナル伝達経路の活性化を阻害すること、
(5)TNFR2の天然アゴニストTNFαのTreg細胞増殖促進作用を拮抗すること、および
(6)抗体のFc領域により誘発されるADCC活性に応じて、表面にTNFR2を発現した腫瘍細胞を殺傷すること、
に用いられる。
いくつかの実施形態において、本発明の方法および使用は、対象個体における疾患の治療に関する。別のいくつかの実施形態において、本発明の方法および使用は、例えば対象からの試料におけるTNFR2の存在の検出に関する。さらなるいくつかの実施形態において、本発明は、上記使用に用いられる製品(例えば、医薬組成物、医薬製品または検出製品)の調製における、本発明のTNFR2抗体またはその抗原結合断片の使用も提供する。
治療応用
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を利用して個体または対象においてTNFR2関連疾患を予防または治療する方法および使用をさらに提供し、上記疾患は、結腸がんまたは慢性骨髄性白血病などの腫瘍を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、唯一の活性剤としてもよく、または、他の治療法もしくは治療剤と併用して投与してもよい。上記他の治療法および治療剤は、例えば、腫瘍細胞表面の抗原を標的にして、これらの分子を結合および/または遮断することで腫瘍を消滅させる薬剤、対象の免疫系を活性化し、腫瘍を自発的に消滅させることを促進する薬剤を含む。
本明細書において、「個体」または「対象」という用語は、入れ替えて使用可能であり、哺乳動物を指す。哺乳動物は、馴化動物(例えば、乳牛、ヒツジ、ネコ、イヌとウマ)、霊長類(例えば、ヒトとサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスとラット)を含むが、これらに限定されない。特に、対象はヒトである。
本明細書において、「治療」は、1)診断された病理学的状態もしくは疾患の症状を治癒・緩和・軽減し、かつ/またはこの診断された病理学的状態もしくは疾患の進行を停止する治療的手段と、2)病理学的状態もしくは疾患の進行を予防および/または緩和する予防的または事前防止手段と、を含む。従って、治療が必要な対象は、疾患に罹患した個体、疾患に罹患しやすい個体、および疾患を予防しようとする個体を含む。上記個体は、上記の治療的手段または予防的手段から利益を受け、上記処理を受けていない個体と比べて、疾患、病症、病状、および/または症状の発生、再発もしくは進行の軽減もしくは改善を示している。いくつかの実施形態において、本発明は疾患または病症の治療に関し、別のいくつかの実施形態において、本発明は疾患または病症の予防に関する。
本発明によるいくつかの実施形態において、疾患または病症の「治療」は、疾患または病症の改善(すなわち、疾患の進行もしくはその少なくとも1つ臨床症状の緩和、阻止もしくは減少)を指す。別のいくつかの実施形態において、「治療」は、患者に識別できない可能性のある生理的パラメータを含め、少なくとも1つの身体パラメータを緩和または改善することを指す。別のいくつかの実施形態において、「治療」は、身体的に(例えば、安定的で識別可能な症状)、生理的に(例えば、安定的な身体パラメータ)またはこの両方において疾患または病症を調節することを指す。本明細書に明記のない限り、疾患または病症の治療および/または予防効果を評価する方法は、本分野で一般的に知られているものである。
本発明によるさらなるいくつかの実施形態において、疾患または病症の「治療」は、疾患、病症、または特定の疾患もしくは病症の症状の発生または進行に対する阻害を含め、疾患または病症の「予防」を指す。いくつかの実施形態において、対象は、予防的計画の候補者である。一般に、「予防」という用語は、疾患または病症の症候もしくは症状が生じる前(特に、疾患のリスクがある対象で)の薬剤投与を指す。
本明細書における「治療有効量」、「予防有効量」または「有効量」という用語は、本発明の抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片が単独で、または他の治療薬と組み合わせて細胞、組織または対象に投与される場合、1種もしくは複数種の疾患もしくは症候の症状、または当該疾患もしくは病症の進行を効果的に予防または改善する量を指す。治療有効量は、症状の改善に十分な抗体またはその抗原結合断片の量、例えば、関連の医学的病態を治療、治癒、予防もしくは改善するか、またはこのような病態を治療、治癒、予防もしくは改善する速度を高める量をさらに指す。ある活性成分を個体に単独投与する場合、治療有効量は、当該成分の量のみを指す。1種以上の活性成分を併用して投与する場合、治療有効量は、並行投与にしても、順次投与にしても、同時投与にしても、治療効果をもたらす活性成分の総合量を指す。治療剤の有効量により、診断基準またはパラメータは、少なくとも10%、一般的に少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%向上する。
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、有効量の本明細書に記載の任意の抗TNFR2抗体もしくはその断片、または上記抗体もしくは断片を含む免疫複合体、多重特異性抗体、または医薬組成物を上記対象に投与することを含む、対象において腫瘍を阻害する方法に関する。別のいくつかの実施形態において、本発明は、有効量の本明細書に記載の任意の抗TNFR2抗体もしくはその断片、または上記抗体もしくは断片を含む免疫複合体、多重特異性抗体、または医薬組成物を上記対象に投与することを含む、対象において体の抗腫瘍免疫応答を強化する方法にも関する。いくつかの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体またはその抗原結合部分を、TNFR2を伴う腫瘍を殺傷するため、腫瘍を伴う対象に投与する。いくつかの実施形態において、本発明の抗TNFR2抗体またはその抗原結合部分を、抗腫瘍免疫応答を刺激するため、腫瘍を伴う対象に投与する。
別のいくつかの実施形態において、本発明は、有効量の本明細書に記載の任意の抗TNFR2抗体もしくはその断片、または上記抗体もしくは断片を含む免疫複合体、多重特異性抗体、または医薬組成物を上記対象に投与することを含む、対象の腫瘍、例えばがんを治療する方法を提供する。がんは、早期、中期または末期にあるがんまたは転移性がんであってもよい。
本発明の方法により治療することができる腫瘍は、例えば、結腸がんおよび慢性骨髄性白血病を含むが、これらに限定されない。本発明の抗体は、細胞表面にTNFR2を発現する腫瘍細胞および/またはTreg細胞を標的にすることにより、腫瘍の成長を阻害することができる。
本発明の抗体(およびそれを含む医薬組成物または免疫複合体、ならびに任意の他の治療剤)は、非経口投与、肺内投与および鼻腔内投与を含む任意の適切な方法により投与されてもよく、かつ、局所治療に必要な場合、病巣内に投与されてもよい。非経口注入は、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与または皮下投与を含む。投与が短期であるか長期であるかによってある程度決まり、任意の適切な経路、例えば、静脈内注射投与または皮下注射投与などの注射により投与することができる。本明細書において、様々な投与スケジュールが含まれ、単回投与または複数の時点での複数回投与、ボーラス投与およびパルス注入を含むが、これらに限定されない。
疾患を予防または治療するために、本発明の抗体の適切な投与量(単独で、または1種もしくは複数種の他の治療剤と併用される場合)は、治療対象疾患の種類、抗体のタイプ、疾患の重症度およびその進行、上記抗体が予防目的で投与されるかまたは治療目的で投与されるか、過去の治療、患者の臨床病歴および上記抗体に対する応答、ならびに主治医の判断力によって決定される。上記抗体は、単回の治療で、または一連の治療を経て患者に適当に投与される。
上記本発明の方法において、本発明の抗体または抗原結合部分の代わりに、本発明の組成物、多重特異性抗体または免疫複合体を投与することができる。あるいは、これらの方法において、本発明の抗体または抗原結合部分の投与に加えて、本発明の組成物、多重特異性抗体または免疫複合体をさらに投与することができる。
いくつかの実施形態において、本発明はまた、上記方法(例えば、治療のため)に用いられる薬剤の調製における本発明の抗TNFR2抗体、組成物、免疫複合体、多重特異性抗体の使用を提供する。
検出応用
本発明はまた、試料におけるTNFR2を検出する方法および試薬キットを提供する。ここで、上記方法は、(a)上記試料を本発明の抗体またはその抗原結合断片もしくは免疫複合体と接触することと、(b)上記抗体またはその抗原結合断片もしくは免疫複合体とTNFR2タンパク質との間の複合物の形成を検出することを含む。いくつかの実施形態において、試料は、皮膚がん患者などのがん患者に由来する。上記検出は、インビトロでもインビボでもよい。
「検出」という用語は本明細書に使用される場合、定量的または定性的検出を含み、例示的な検出方法としては、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子複合磁気ビーズ、ELISA測定法、PCR-技術(例えば、RT-PCR)が挙げられる。一部の実施形態において、生体試料は、血、血清または生物に由来する他の液体試料である。一部の実施形態において、生体試料は、細胞または組織を含む。いくつかの実施形態において、生体試料は、過剰増殖性またはがん性病巣に由来する。一部の実施形態において、検出待ちのTNFR2はヒトTNFR2である。
一実施形態において、抗TNFR2抗体は、抗TNFR2抗体による治療に適する対象の選択に用いられ、例えば、TNFR2は、上記対象を選択するためのバイオマーカーである。一実施形態において、本発明の抗体を利用してがんまたは腫瘍を診断し、例えば、対象における本明細書に記載の疾患(例えば、過剰増殖性疾患またはがん性疾患)の治療または進行、その診断および/または病期を評価(例えば、モニター)することができる。
一部の実施形態において、標識された抗TNFR2抗体を提供する。標識は、直接検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識および放射性標識)、および例えば、酵素触媒反応または分子間の相互作用により間接的に検出される部分、例えば、酵素もしくはリガンドを含むが、これらに限定されない。標識の非限定的な例は、32P、14C、125I、3Hおよび131Iといった放射性同位体、希土類キレートもしくはフルオレセインおよびその誘導体などのフルオロフォア、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル(dansyl)、ウンベリフェロン(umbelliferone)、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)などのルシフェラーゼ(luceriferase)、フルオレセイン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HR)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどの炭水化物オキシダーゼ、尿酸オキシダーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、ならびにHR、ラクトペルオキシダーゼ、もしくはマイクロペルオキシダーゼ(microperoxidase)といった過酸化水素染料前駆体による酵素などの複素環オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、ファージ標識、安定的なフリーラジカルなどを含むが、これらに限定されない。
本発明の理解を助けるために、以下の実施例を説明する。いかなる方法によって、実施例を、本発明の請求範囲を制限するものと解釈する意図もなく、そうすべきでもない。
実施例
実施例1.ハイブリドーマ細胞の調製
本実験は、ヒトTNFR2タンパク質でマウスに免疫し、さらにマウスの脾細胞を取って骨髄腫細胞と融合し、陽性抗体を発現可能なハイブリドーマ細胞が得られた。
ハイブリドーマ融合
Figure 2024505987000005
細胞の融合:
免疫した動物から脾臓を採取し、脾細胞懸濁液とした。ろ過および赤血球溶解後、脾細胞を20mLの基本培地に懸濁して計数した。
Figure 2024505987000006
20mLの基本培地でマウス骨髄腫細胞SP2/0細胞(ATCC、CRL-1581)を再懸濁して計数した。SP2/0と脾細胞を1:2~1:1の割合で混合し、1000rpmで6min遠心分離した。上清を除去した後、混合した細胞を10mLの融合緩衝液(BTXpress、47-0001)に再懸濁した。さらに、15mLの融合緩衝液を加え、1000rpmで5min遠心分離し、上清を除去した。上記ステップを1回繰り返した後、適量の融合緩衝液で細胞を再懸濁し、混合細胞の密度を1×10細胞/mLに調整した。電気融合装置のパラメータ設定は、以下の通りである。各電気融合皿に2mLの細胞懸濁液を加えて電気融合を行った。
Figure 2024505987000007
電気融合後のスクリーニング:
細胞を電気融合皿において室温で5min静置した。細胞を遠心管に移し、スクリーニング培地(下記の表の通り)で細胞を1x10細胞/mL~2x10細胞/mLに希釈した。96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLの細胞懸濁液を加えた。融合後の7日目にスクリーニング培地を交換した。10日間(またはそれ以上、細胞生長状態によって)培養した後、スクリーニングした。Elisa検出により特異的抗hTNFR2抗体を発現したハイブリドーマ細胞をスクリーニングした。
Figure 2024505987000008
スクリーニングされたハイブリドーマ細胞に発現した抗体に対してPCRシークエンシングを行い、抗体の可変領域遺伝子を決定し、キメラ抗体のスクリーニング、ヒト化、および親和性成熟を行い、異なる段階の候補配列が得られた。
本発明の例示的な3つの抗体(3C4、69B1、72G8)およびそのヒト化形態のCDR領域、軽鎖可変領域と重鎖可変領域、軽鎖と重鎖のアミノ酸配列、ならびに対応するヌクレオチド配列は、下記の表に挙げられている。
Figure 2024505987000009
注:HCは、VH配列を配列番号62のIgG1部分に融合することにより形成され、LCは、VL配列を配列番号63のCκ鎖に融合することにより形成される。
実施例2.キメラ抗体の生産および精製
(1)GS-CHO細胞における発現および精製:
メーカーの取扱説明書に従い、GS Xceed(商標) Gene Expression System試薬キット(Lonza)を使用して抗体を発現するCHO-S細胞株を産生した。まず、抗体分子の重鎖および軽鎖のDNA配列を、同一のpCHO1.0プラスミドに挿入し、ここで、重鎖は軽鎖の上流にあった。その後、化学トランスフェクション法およびエレクトロトランスフェクション法により、構築したpCHO1.0プラスミドをCHO細胞株に導入し、48時間トランスフェクションした後、ForteBioで抗体の収率を検出し、トランスフェクション効率を判定した。トランスフェクション後の細胞を2回加圧スクリーニングして抗体を高発現した細胞プール(pool)が得られた。その後、細胞プールを増幅し、抗体を大量に発現させ、細胞上清を集め、抗体の純度>95%になるようにProtein Aで上清液を精製した。
(2)HEK293細胞における発現および精製:
HEK293細胞における抗体の一過性発現に対して、ベクターpcDNA3.1を使用した。まず、抗体をコードする重鎖および軽鎖のcDNAをpcDNA3.1ベクターにクローニングした。化学トランスフェクション法により、抗体分子の重鎖および軽鎖を有するベクターをHEK293細胞に導入した。使用された化学トランスフェクション試薬はPEI(Polysciencesから購入)であり、メーカーから提供された方法に従って、培養した293HEK(Invitrogen)を一過性トランスフェクションした。トランスフェクションした後、培地を捨て、新鮮なEXPI293培地(Gibco)で細胞を4x10/mLに希釈した。37℃、5%のCO2の条件において細胞を7日間培養し、48時間ごとに新鮮な培地を流加した。7日間後、1300rpmで20min遠心分離した。上清液を取り、抗体の純度>95%になるように、Protein Aで上清液を精製した。
実施例3 バイオレイヤー干渉技術による本発明のキメラ抗体と抗原の結合動力学の測定
本発明は、光干渉による生体測定(ForteBio)という測定方法を用いて、本発明の上記3つの例示的な抗体とヒトTNFR2(hTNFR2)、カニクイザルTNFR2(cTNFR2)、マウスTNFR2(mTNFR2)、ヒトTNFR1(hTNFR1)との結合の平衡解離定数(K)を測定した。比較として、陽性対照抗体OPI(WO2017083525におけるヒト化抗体SBT-002e、VH配列配列番号58、およびVL配列配列番号59)の平衡解離定数(K)を測定した。
ForteBio親和性測定は、従来の方法(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p.270ー8)に従って行われた。簡単に言えば、センサを分析緩衝液においてオフラインで30分間平衡化し、次にオンラインで60秒間検出して基線を確立し、上述したように得られた精製された抗体をAHQセンサ(ForteBio)にオンラインでロードしてForteBio親和性測定を行った。さらに、ロードされた抗体を有するセンサを、100nMのhTNFR2、cTNFR2、mTNFR2、hTNFR1抗原に暴露して5分間作用させた後、解離速度の測定のために、センサを分析緩衝液に移して5分間解離した。1:1結合モデルを利用して動態解析を行った。
上記測定法のように行われた実験において、3C4、69B1、72G8、および対照抗体OPIの親和性は、表2に示す通りである。
Figure 2024505987000010
以上のグラフの結果から見られるように、上記4つの抗体は、いずれも極めて高親和性を示しており、ここで、3C4、69B1および72G8は、対照抗体OPIに相当するかまたはそれ以上の高親和性を有する。
実施例4 ハイブリドーマ抗体とヒトTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-hTNFR2)またはカニクイザルTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-cTNFR2)との結合実験
本研究は、フローサイトメーターにより、勾配希釈した本発明のハイブリドーマ抗体(3C4、69B1、72G8)と表面にヒトTNFR2を過剰発現したCHO-S安定細胞株との結合状況を検出した。
ヒトTNFR2(配列番号60、NM_001066.2)とカニクイザルTNFR2(配列番号61、XP_005544817.1)をコードするcDNAをそれぞれpCHO1.0ベクター(Invitrogen)にクローニングし、CHO-S細胞(Invitrogen)にトランスフェクションし、ヒトTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-hTNFR2)およびカニクイザルTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-cTNFR2)を産生した。
CHOS-hTNFR2細胞またはCHOS-cTNFR2細胞を計数するとともに、2x10個の細胞/mLに希釈し、100μL/ウェルでU型底96ウェルプレートに加えた。300gで5min遠心分離し、細胞培地を除去した。試料(それぞれハイブリドーマ抗体3C4、69B1、72G8および陽性対照抗体OPIである)の希釈物(抗体の希釈方法は、最高抗体濃度が300nMで、PBSに2倍段階希釈した)をU型プレートに加えて細胞を再懸濁し、100μL/ウェルで、氷上で30min静置した。400gで5min遠心分離して上清を除去し、PBSで細胞を2回洗浄した。300gで5min遠心分離してPBSを除去し、各ウェルに抗マウスIgGのAlexa Fluor-488で標識した二次抗体(Jackson ImmunoResearch、115-545-072)(1:100でPBSに希釈した)を100μL加え、氷上で暗所で30minインキュベートした。400gで5min遠心分離して上清を除去し、PBSで細胞を3回洗浄した。200μLの1×PBSで細胞を再懸濁し、FACSにより検出した。
上記測定法に記載された実験において、検出結果として、図1と図2に示すように、抗体3C4、69B1、72G8は、いずれもCHO-S細胞に過剰発現したヒトTNFR2分子(図1参照)およびカニクイザルのTNFR2と結合している(図2参照)。
実施例5 ハイブリドーマ抗体によるTNFR2のTNFαとの結合への遮断実験
ELISAにより、ハイブリドーマ抗体3C4、69B1、72G8および対照抗体OPIによるヒトTNFαとhTNFR2との結合への遮断能力を検出した。
hTNFR2タンパク質をPBSで再懸濁して2μg/mLの濃度に溶解し、マイクロプレートに一晩被覆した。5%のBSAで1hブロッキングし、ビオチン抗原Recombinant Biotinylated TNFαタンパク質(ACRO)を3μg/mLに希釈し、20μL/ウェルであった。上述したように調製された抗体(3C4、69B1、72G8)を最高濃度300nMから勾配希釈し、合計で8個または12個の希釈勾配であり、200μL/ウェルで、PBSにおいて氷上で30minインキュベートした。抗原抗体混合液をマイクロプレートにて90minインキュベートし、PBSで3回洗浄し、上清を捨て、各ウェルに1:5000で希釈したAvidin-HRP(Invitrogen)を100μL加え、常温で30min行い、PBSを加えて6回洗浄した。100μL/ウェルのTMB発色液(solarbio)により1min発色し、100μL/ウェルの停止液(solarbio)により停止させた。プレートリーダーによりOD450およびOD620の値を読み取った。
実験の結果から明らかなように、72G8は、TNFαリガンドと受容体の結合に対して遮断作用がないが、3C4、69B1と対照抗体OPIによる遮断効果が完全であり、IC50値において、3C4および69B1はOPIよりも優れている。(図3参照)
実施例6 キメラ抗体とヒトTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-hTNFR2)またはカニクイザルTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-cTNFR2)との結合実験
本研究は、フローサイトメーターにより、勾配希釈した本発明のキメラ抗体と表面にヒトTNFR2を過剰発現したCHO-S安定細胞株との結合状況を検出した。
ヒトTNFR2(配列番号60)とカニクイザルTNFR2(配列番号61)をコードするcDNAをそれぞれpCHO1.0ベクター(Invitrogen)にクローニングし、CHO-S細胞(Invitrogen)にトランスフェクションし、ヒトTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-hTNFR2)およびカニクイザルTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-cTNFR2)を産生した。
CHOS-hTNFR2細胞またはCHOS-cTNFR2細胞を計数するとともに、2x10個の細胞/mLに希釈し、100μL/ウェルでU型底96ウェルプレートに加えた。300gで5min遠心分離し、細胞培地を除去した。試料(それぞれキメラ抗体3C4、69B1、72G8および陽性対照抗体OPIである)の希釈物(抗体の希釈方法は、最高抗体濃度が300nMで、PBSに3倍段階希釈した)をU型プレートに加えて細胞を再懸濁し、100μL/ウェルで、氷上で30min静置した。400gで5min遠心分離して上清を除去し、PBSで細胞を2回洗浄した。300gで5min遠心分離してPBSを除去し、各ウェルに抗ヒトFcのPEで標識した二次抗体(SoutherBiotech、2040-09)(1:100でPBSに希釈した)を100μL加え、氷上で暗所で30minインキュベートした。400gで5min遠心分離して上清を除去し、PBSで細胞を3回洗浄した。200μLの1×PBSで細胞を再懸濁し、FACSにより検出した。
上記測定法に記載された実験において、検出の結果として、図面に示すように、キメラ抗体3C4、69B1と72G8は、いずれもCHO-S細胞に過剰発現したヒトTNFR2分子と結合し(図4参照)、かつ抗体3C4、69B1と72G8は、いずれもカニクイザルのTNFR2と結合している(図5参照)。キメラ抗体3C4と69B1の結合EC50値は陽性対照抗体OPIに相当するが、72G8の結合は明らかに低い。
実施例7 キメラ抗体によるTNFR2とTNFαとの結合への遮断実験
ELISAにより、キメラ抗体3C4、69B1、72G8および対照抗体OPIによるヒトTNFαとhTNFR2との結合への遮断能力を検出した。
hTNFR2タンパク質をPBSで再懸濁して2μg/mLの濃度に溶解し、マイクロプレートに一晩被覆した。5%のBSAで1hブロッキングし、ビオチン抗原Recombinant Biotinylated TNFαタンパク質(ACRO)を2μg/mLに希釈し、10μL/ウェルであった。上述したように調製された抗体(3C4、69B1、72G8)を最高濃度300nMから勾配希釈し、合計で8個または12個の希釈勾配であり、100μL/ウェルで、PBSにおいて氷上で30minインキュベートした。抗原抗体混合液をマイクロプレートにて90minインキュベートし、PBSで3回洗浄し、上清を捨て、各ウェルに1:5000で希釈したAvidin-HRP(Invitrogen)を100μL加え、常温で30min行い、PBSを加えて6回洗浄した。100μL/ウェルのTMB発色液(solarbio)により1min発色し、100μL/ウェルの停止液(solarbio)により停止させた。プレートリーダーによりOD450およびOD620の値を読み取った。
実験の結果から明らかなように、3C4、69B1および対照抗体OPIによる遮断効果が完全であり、72G8は遮断効果がない。IC50値において、3C4、69B1抗体は、Benchmark OPIよりも優れている。(図6参照)
実施例8 キメラ抗体によるTNFR2媒介性のNF-κBシグナル伝達経路の活性化への阻害実験
TNFR2に対する阻害抗体は、細胞膜TNFR2との結合により、リガンドTNFαによるTNFR2シグナル伝達経路の活性化を遮断することができる。本研究は、Jurkat TNFR2 NF-κB luciferase reporterシステムにより、TNFR2を過剰発現したJurkat細胞において、本発明の抗体によるTNFαにより活性化されたTNFR2シグナル伝達経路への阻害作用を検定した。
検出ステップ:
10%の1640培地を希釈bufferとして、5x10cell/wellでJurkat TNFR2 NF-κB reporter細胞を各ウェルに加え、細胞を最終濃度50ngのTNFαおよび異なる濃度の抗体の条件(最高濃度が20nMで、順に1:2で等比希釈した)でインキュベートし、37℃、CO2のインキュベーターで6hインキュベートし、各ウェルに100μLのluciferase基質液を加えて2min振とうした。多機能プレートリーダー(Molecular Device i3)により値を読み取った。下記の式に従って、抗体蛍光値の倍率変化を算出した:
倍率変化=抗体が加えられた各ウェルの蛍光値/対照群(TNFα処理無し群)の蛍光値。
実験の結果(図7)から明らかなように、TNFR2とTNFαとの結合を遮断したキメラ抗体3C4と69B1は、いずれもTNFαにより誘導されるTNFR2 NF-κBシグナル伝達経路の活性化を阻害することができ、かつ3C4と69B1抗体の阻害活性は陽性対照抗体OPIよりも優れている。また、驚くべきことに、72G8抗体は、新たなTNFR2機能活性阻害メカニズムを示しており、当該抗体は、TNFR2とTNFαとの結合を遮断せずに、TNFR2の重合を直接阻害することで、TNFαにより誘導されるTNFR2 NF-κBシグナル伝達経路の活性化を阻害することができる。
実施例9 キメラ抗体のヒト化
得られた抗体である3C4と69B1キメラ抗体をヒト化した。ステップは以下の通りである:
1.CDRループ構造を決定する。
2.ヒト生殖系列配列データベースに重鎖と軽鎖の各V/J領域に最も近い相同配列を見つける。
3.重鎖軽鎖と最もマッチングするヒト生殖細胞系列および最低量の復帰変異をスクリーニングする。
4.キメラ抗体のCDR領域をヒトの骨格領域に構築する。
5.配列と構造特徴を使用して、骨格領域においてCDRを維持する機能を果たすアミノ酸位置を決定する。
6.重要であると決定された配列位置で復帰変異を行う(入力アミノ酸タイプに戻す)。
7.リスク部位のアミノ酸を最適化する。
得られたヒト化抗体hz3C4.7、hz69B1.5、hz69B1.6、hz69B1.11、hz69B1.20のCDR、軽鎖可変領域と重鎖可変領域、軽鎖と重鎖のアミノ酸配列は、添付された配列表を参照してください。
実施例10 ヒト化抗体とヒトTNFR2を発現した細胞の結合実験
本研究は、フローサイトメーターにより、勾配希釈した抗体と表面にヒトTNFR2を過剰発現したCHO-S安定細胞株との結合状況を検出した。
ヒトTNFR2をコードするcDNAをpCHO1.0ベクター(Invitrogen)にクローニングし、CHO-S細胞(Invitrogen)にトランスフェクションし、ヒトTNFR2を過剰発現したCHO-S細胞(CHOS-hTNFR2)を産生した。
CHOS-hTNFR2細胞を計数するとともに、2x10細胞/mLに希釈し、100μL/ウェルでU型底96ウェルプレートに加えた。300gで5min遠心分離し、細胞培地を除去した。試料(それぞれヒト化抗体hz3C4.7、hz69B1.5、hz69B1.6、hz69B1.11、hz69B1.20、キメラ抗体69B1および陽性対照抗体OPIである)(抗体の希釈方法は、最高抗体濃度が300nMで、PBSにおいて3倍希釈した)をU型プレートに加えて細胞を再懸濁し、100μL/ウェルで、氷上で30min静置した。400gで5min遠心分離して上清を除去し、PBSで細胞を2回洗浄した。300gで5min遠心分離してPBSを除去し、各ウェルに抗ヒトFcのPEで標識した二次抗体(SoutherBiotech、2040-09)(1:100でPBSに希釈した)を100μL加え、氷上で暗所で30minインキュベートした。400gで5min遠心分離して上清を除去し、PBSで細胞を3回洗浄した。200μLの1×PBSで細胞を再懸濁し、FACSにより検出した。
上記測定法に記載された実験において、抗体とCHOS-hTNFR2細胞の結合状況は、図8に示す通りである。ヒト化抗体hz3C4.7、hz69B1.5、hz69B1.6、hz69B1.11、hz69B1.20は、いずれもCHO-S細胞に過剰発現したヒトTNFR2分子と結合している(図8参照)。
実施例11 ヒト化抗体によるTNFR2とTNFαとの結合への遮断実験
実施例7と同様に、ELISAにより、ヒト化抗体hz3C4.7、hz69B1.5、hz69B1.6、hz69B1.11、hz69B1.20および対照抗体OPIによるヒトTNFαとhTNFR2との結合への遮断能力を検出した。
その結果は、図9Aと図9Bに示されている。図面に示すように、3C4と69B1のヒト化形態は、完全な遮断効果を示している。
実施例12 ヒト化抗体によるTNFR2媒介性のNF-κBシグナル伝達経路の活性化阻害実験
実施例8と同様に、Jurkat TNFR2 NF-κB luciferase reporterシステムにより、TNFR2を過剰発現したJurkat細胞において、3C4と69B1のヒト化形態抗体による、TNFαにより活性化されたTNFR2シグナル伝達経路への阻害作用を検査した。その結果は、図10Aと10Bに示されている。
実施例13 ヒト化抗体とK562、Treg細胞との結合実験
本研究は、フローサイトメーターにより、勾配希釈した本発明のヒト化抗体とK562細胞(ATCC、慢性骨髄性白血病細胞)およびTreg細胞との結合状況を検出した。
Tregの調製は以下の通りである:ヒトのPBMC細胞(ALLCELLS、PB005F)を蘇生させ、フローサイトメトリーによりCD4+CD25+CD127low細胞を選別し、Treg細胞を単離した。CD4+:anti-CD3/CD28 Beads=1:1に従って、Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28(Gibco、11131D)を加え、10ng/mLの組換えIL2を加え、7日間刺激した。
検出ステップ:400gで、5min遠心分離し、細胞培地を除去し、PBSでK562またはTreg細胞を再懸濁し、計数した後、細胞密度を2x10個/mLに調整し、100μL/ウェルでU型底96ウェルプレートに加えた。測定待ちの抗体を加え、3倍勾配希釈し、氷上で30min静置した。300g、5minで上清を除去し、PBSにより細胞を1回洗浄した。300g、5minでPBSを除去し、各ウェルに1:200で希釈したPE-抗ヒトFc抗体(SOUTHERN BIOTECH、2040-09)を100μL加えた。氷上で暗所で30minインキュベートした。400gで上清を5min除去し、PBSで細胞を2回洗浄した。100μLのPBSで細胞を再懸濁し、フローサイトメーター(BD、ACCURIC6 plus)により検出した。
上記の試験において、その結果として、図11に示すように、ヒト化抗体hz3C4.7、hz69B1.5、hz69B1.11、hz69B1.20結合K562とTreg細胞は、対照抗体OPIと比べて、より優れた結合能力を有する。
実施例14 ヒト化抗体のADCC reporter実験
本研究は、Jurkat ADCC reporter実験(Promega、G7102)により、CHOS-hTNFR2細胞に対する勾配希釈した本発明のヒト化抗体のADCC殺傷作用を検出した。
検出ステップ:供給業者から提供された実験計画に従って、抗体を勾配希釈し、初期濃度が50nMで、1:2で等比希釈した。その後、各ウェルに2.5x10のCHOS-hTNFR2 cells、および1.75x10のJurkatエフェクター細胞を加えた。37℃、CO2のインキュベーターで20hインキュベートし、luciferase基質を加えた。2min後、多機能プレートリーダーにより値を読み取って(MD、I3多機能プレートリーダー)検出した。
上記の試験において、その結果として、図12に示すように、ヒト化抗体hz3C4.7、hz69B1.5、hz69B1.11、hz69B1.20は、対照抗体OPIと比べて、hTNFR2を発現したCHO-S細胞に対して、より良いADCC殺傷効果を有する。
実施例15.抗K562腫瘍薬効試験
本実験は、K562細胞をNOD/SCIDマウスに接種して本発明の抗TNFR2抗体の抗腫瘍作用を測定した。
NOD/SCIDマウス:
雌のNOD/SCIDマウスは、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入され、等級がSPFグレード、品質検査機関が北京維通利華実験動物技術有限公司で、合格証明書番号がNO.11400700380384である。マウスを受け入れた後、実験開始前に7日間飼育して順応させる。
細胞:
K562細胞は、ヒト慢性骨髄性白血病細胞であり、ATCC(CAT#:CCL-243)から購入され、かつ取扱説明書に厳格に遵守して後続のインビボ実験に通常の継代培養を行った。遠心分離して細胞を収集し、Matrigelにおいて細胞を再懸濁して細胞密度を5x10個/mLに調整した。0.2mLの細胞懸濁液を取ってNOD/SCIDマウスの右腹部領域に皮下接種し、K562担腫瘍マウスモデルを確立した。
投与:
腫瘍細胞を6日間接種した後、各マウスの腫瘍体積を検出し、腫瘍体積が25mm~118mmの範囲にあるマウスを選別して腫瘍体積によってランダムに群分けし(1群あたりマウス8匹)、各群の腫瘍体積は、平均で65mm程度である投与量および方法は、表3に示す通りである。h-IgG(EQUITECH-BIOから購入)は、陰性対照とした。それぞれ接種後の6、10、13、17日目に投与し、1週2回で、合計4回投与し、マウス腫瘍体積および体重をモニターした。毎回投与する前に体重および腫瘍体積を測定し、接種後の27日目に相対腫瘍阻害率(TGI%)を算出し、算出式は、TGI%=100%×(対照群腫瘍体積-治療群腫瘍体積)/(対照群腫瘍体積-対照群投与前腫瘍体積)である。腫瘍体積の測定:ノギスで腫瘍の最大長軸(L)および最大幅軸(W)を測定し、腫瘍体積を下記の式:V=L××W/2により算出した。電子天びんにより体重を測定した。
Figure 2024505987000011
腫瘍阻害率の結果として、図13および表4に示すように、接種後の27日目に、キメラ抗体3C4と69B1の単剤は、いずれも腫瘍阻害効果を示すことができる。3C4の腫瘍阻害率は37%、69B1の腫瘍阻害率はそれぞれ33%である。従って、本発明のTNFR2分子に対する抗体は、腫瘍に対して阻害効果がある。
Figure 2024505987000012
実施例16.抗MC38-TNFR2腫瘍薬効試験
本実験は、MC38-TNFR2細胞(ヒトTNFR2を発現したマウス結腸がん細胞)をC57BL/6マウスに接種して本発明の抗TNFR2抗体の抗腫瘍作用を測定した。
C57マウス:
雌のC57BL/6背景のマウスは、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入され、等級がSPFグレード、品質検査機関が北京維通利華実験動物技術有限公司、合格証明書番号がNO.1100111911055796である。マウスを受け入れた後、実験開始前に7日間飼育して順応させる。
細胞:
マウスMC38-TNFR2細胞を自己構築し、取扱説明書を厳格に遵守して後続のインビボ実験のために通常の継代培養を行った。遠心分離して細胞を収集し、PBSにおいて細胞を再懸濁して細胞密度を2x10個/mLに調整した。0日目に0.2mLの細胞懸濁液を取ってヒトC57BL/6マウスの右腹部領域に皮下接種してMC38-TNFR2担腫瘍マウスモデルを確立した。
投与:
腫瘍細胞を7日間接種した後、各マウスの腫瘍体積を検出し、腫瘍体積によってランダムに群分けし(1群あたりマウス7匹)、各群の腫瘍体積は、平均で63mm程度である投与量と方式は表5に示す通りであり、h-IgG(EQUITECH-BIOから購入)は陰性対照とされ、1週2回で、合計4回投与し、マウス腫瘍体積と体重をモニターした。接種後の21日目に、相対腫瘍阻害率(TGI%)を算出し、算出式は、TGI%=100%×(対照群腫瘍体積-治療群腫瘍体積)/(対照群腫瘍体積-対照群投与前腫瘍体積)である。腫瘍体積の測定:ノギスで腫瘍の最大長軸(L)および最大幅軸(W)を測定し、腫瘍体積を下記の式:V=L××W/2により算出した。電子天びんにより体重を測定した。
Figure 2024505987000013
腫瘍阻害率の結果として、図14および表6に示すように、接種後の21日目に、hz3C4.7とhz69B1.20の単剤は、いずれも腫瘍阻害効果を示すことができる。Hz3C4.7の単剤の腫瘍阻害率は28%、hz69B1.20の腫瘍阻害率は41%である。従って、本発明のTNFR2分子に対する抗体は、腫瘍に対して阻害効果がある。
Figure 2024505987000014

Claims (18)

  1. TNFR2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
    (i)配列番号19に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号20に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
    (ii)配列番号21に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号22に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
    (iii)配列番号23に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号24に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
    (iv)配列番号25に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号26に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
    (v)配列番号27に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号28に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、または
    (vi)配列番号29に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号30もしくは31に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2と3配列、または
    (vii)配列番号64に示される重鎖可変領域のHCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、ならびに配列番号65に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列
    を含む、TNFR2と結合する抗体またはその抗原結合断片。
  2. 重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDRと、軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRとを含むTNFR2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、ここで、
    (i)HCDR1は配列番号1のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR2は配列番号2のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR3は配列番号3のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR1は配列番号4のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR2は配列番号5のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、かつLCDR3は配列番号6のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、または
    (ii)HCDR1は配列番号7のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR2は配列番号8のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR3は配列番号9のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR1は配列番号10のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR2は配列番号11のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、かつLCDR3は配列番号12のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、または
    (iii)HCDR1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、HCDR3は配列番号15のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR1は配列番号16のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、LCDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、かつLCDR3は配列番号18のアミノ酸配列を含み、もしくはそれによって構成され、
    または、前記抗体は、(i)~(iii)のCDR配列の組み合わせのうちの1つの変異体を含み、ここで、該変異体は、6個のCDR領域において合計で少なくとも1個かつ5個、4個、3個、2個もしくは1個以下のアミノ酸変化(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を含み、好ましくは、重鎖CDR3は変わらないように維持する、
    抗体またはその抗原結合断片。
  3. 重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、
    前記重鎖可変領域は、
    (i)配列番号19に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (ii)配列番号21に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (iii)配列番号23に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (iv)配列番号25に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (v)配列番号27に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (vi)配列番号29に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (vii)配列番号64に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
    を含む、抗体またはその抗原結合断片。
  4. 重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、
    前記軽鎖可変領域は、
    (i)配列番号20に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (ii)配列番号22に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (iii)配列番号24に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (iv)配列番号26に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (v)配列番号28に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (vi)配列番号30もしくは21に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    (vii)配列番号65に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列
    を含む、抗体またはその抗原結合断片。
  5. (i)配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または
    (ii)配列番号21に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号22に示されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含み、または
    (iii)配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または
    (iv)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または
    (v)配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または
    (vi)配列番号29に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号30もしくは31に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または
    (vii)配列番号64に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号65に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
    から選ばれる重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
  6. 前記抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4形態の抗体またはその抗原結合断片で、好ましくはヒトIgG1 Fc領域であり、好ましくは、前記抗体は、NK細胞などのエフェクター細胞がある場合にADCC活性を誘導する、
    前記請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
  7. 前記抗体は、マウス抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体であり、または前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体、scFv、(Fab’)断片、シングルドメイン抗体、ダイアボディ(dAb)もしくは線状抗体から選ばれる、
    前記請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
  8. 抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体は、
    (i)請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体とヒトTNFR2の結合を阻害する(例えば、競合的に阻害する)こと、
    (ii)請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体と同じまたは重複するエピトープと結合すること、および
    (iii)請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体と競合的にヒトTNFR2と結合すること、
    のうちの1つまたは複数の特性を有する、抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片。
  9. 前記請求項1~8のいずれか一項に記載の抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片をコードする、
    単離した核酸。
  10. 請求項9に記載の核酸を含むベクターであって、好ましくは発現ベクターである、
    ベクター。
  11. 請求項9に記載の核酸または請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、前記宿主細胞は哺乳動物細胞である、
    宿主細胞。
  12. 抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片を調製する方法であって、前記請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸を含む宿主細胞を、核酸の発現に適する条件で培養し、場合により、前記抗体またはその抗原結合断片を単離することを含み、場合により、前記宿主細胞から前記抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片を回収することをさらに含む、
    方法。
  13. 治療剤または診断剤と結合する前記請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、
    免疫複合体。
  14. 前記請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、
    多重特異性抗体。
  15. 前記請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片あるいは請求項13に記載の免疫複合体あるいは請求項14に記載の多重特異性抗体と、場合により、薬用補助材料とを含む、
    医薬組成物。
  16. 前記請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の使用であって、インビボでまたはインビトロで、
    (1)TNFR-2とそのリガンドTNFαの結合を遮断すること、
    (2)TNFR-2とそのリガンドTNFαの結合を遮断せずに、TNFR2の重合を直接阻害すること、
    (3)依存的または非依存的にTNFαとTNFR2の結合を遮断することにより、TNFR2受容体の活性化を阻害すること、
    (4)TNFαとTNFR2との結合により媒介されるNF-κBシグナル伝達経路の活性化を阻害すること、
    (5)TNFαのTreg細胞増殖促進作用を拮抗すること、および/または
    (6)抗体のFc領域により誘発されるADCC活性に応じて、表面にTNFR2を発現した腫瘍細胞を殺傷すること、
    から選ばれる目的のための、使用。
  17. 前記対象に有効量の前記請求項1~8のいずれか一項に記載の抗TNFR2抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項13に記載の免疫複合体、あるいは請求項14に記載の多重特異性抗体、あるいは請求項15に記載の医薬組成物を投与することを含み、好ましくは、前記腫瘍は結腸がん、または慢性骨髄性白血病である、
    対象において腫瘍を予防または治療する方法。
  18. 試料中のTNFR2を検出する方法であって、
    (a)試料を前記請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片と接触すること、および
    (b)前記抗体またはその抗原結合断片とTNFR2の間の複合体の形成を検出すること、を含み、場合により、抗体が検出可能に標識されることを含む、
    試料中のTNFR2を検出する方法。
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