JP2024094075A - 方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】昨今の環境規制への機運の高まりや、エネルギー問題、カーボンニュートラルなどの影響を受け、変圧器の損失を一層抑えるために、さらなる低鉄損化を達成できる方向性電磁鋼板を提供する。【解決手段】所定の成分組成とし、所定の範囲の全ての粒界近傍部に対し、結晶方位がゴス方位から10度以上ずれている結晶粒が面積率にして20%以下(0%含む)の割合となる粒界近傍部を50%以上とする。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄損が少ない方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、Siを質量%で7%以下含有し、鉄の磁化容易軸である<001>が鋼板の圧延方向に対し、高度に集積した組織を有する材料であり、主として変圧器鉄心材料として用いられている。
変圧器に最も求められる特性の一つとして、低損失であることが挙げられるが、変圧器の損失の大部分は、鉄心に生じる鉄損が占めている。よって、鉄心材料である方向性電磁鋼板の低鉄損化は変圧器の特性向上に極めて重要である。
昨今のエネルギー規制に伴い、低損失な変圧器を作製可能にする低鉄損な方向性電磁鋼板の開発は年々強く求められてきている。
そこで、低鉄損な方向性電磁鋼板を開発するにあたり、組織の方位先鋭化、高張力被膜の付与、鋼板表面への不均一性の導入による磁区細分化技術の開発などが進められてきた。
例えば、特許文献1は、方向性電磁鋼板の製造の際に、二次再結晶焼鈍の均熱パターンとその雰囲気を制御することによって、高度に集積された集合組織を作りこみ、低鉄損化を達成する技術について記されている。
また、特許文献2は、被膜形成に用いられる材料の熱膨張係数を調整することにより、大きな被膜張力を得ることで優れた磁気特性を発現させる技術について記されている。
さらに、特許文献3では、方向性電磁鋼板の絶縁被膜を局所的に除き、電解エッチングを施し、溝を掘るという磁区細分化処理を施すことで、低鉄損化を達成している。
特開2020-7637号公報 特開2020-196954号公報 特開平2-50918号公報 特公昭54-23647号公報
前述の特許文献1~3に記載されたように、さまざまな方法でその鉄心材料の方向性電磁鋼板の鉄損を抑制する技術が開発されている。
しかしながら、近年では、昨今の環境規制への機運の高まりや、エネルギー問題、カーボンニュートラルなどの影響を受け、変圧器の損失をさらに抑えることが求められている。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、前記課題のためにさらなる低鉄損化を達成できる方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
方向性電磁鋼板を低鉄損化するための手段は多岐にわたるが、発明者らは、特に磁区細分化の手段に注目した。すなわち、新規な磁区細分化の手法を検討した。
ここで、方向性電磁鋼板における磁区細分化とは、鋼板表面に発生する磁極量を増加させることで、大きくなった静磁エネルギーを緩和するために圧延方向を向いた180°磁区を細分化することである。
そのための方法として、例えば、突起ロールによる溝形成や、鋼板表面へのレーザー照射による熱歪を導入する方法が開発されている。これらの技術はいずれも既存の製品板、製品コイルに加工を実施することで磁区細分化処理を施すものであり、その母材は通常の方向性電磁鋼板が用いられている。
発明者らは、かかる母材である方向性電磁鋼板の磁区を細分化するために、まず、二次再結晶粒の粒径を人為的に小さくすることを目指した。これは、母材自体を磁区細分化材とすることで、それ自体が低鉄損の方向性電磁鋼板になるとともに、溝形成や熱歪による磁区細分化処理を施すことで、さらなる低鉄損化が期待できるからである。加えて、母材の二次再結晶粒を小さくすると、結晶粒界が増えるので、結晶粒間に生じる磁極の量が増加し磁区細分化効果が期待できるからである。
ここで、特許文献4には、鋼板への塑性加工、熱加工、化学的加工によって鋼板表面に局所的に二次再結晶の粒成長の阻害領域を導入することで、その領域に沿って二次再結晶粒を成長させ、結晶粒を小径化するという技術が開示されている。
また、特許文献4には、この技術に関し、最終焼鈍前に、鋼板に対し機械的に導入した歪みによって、最終焼鈍中に異常粒成長部分を形成し、この部分が二次再結晶をせき止め、二次再結晶粒を小さいものに仕上げ、鉄損が改善されると開示されている。
発明者らは、実際に特許文献4に記載の方法に従い、サンプルを作製した。すなわち、最終焼鈍前の鋼板表面に歪みを入れた後に、最終焼鈍にて製品板に仕上げ、かかる製品板の鉄損を調べた。すると、鉄損が比較的良いサンプルが得られたものの、一部、鉄損の大きいサンプルが認められた。
そこで、これらのサンプルの圧延方向に沿った断面を詳細に調査すると、歪み導入箇所の直下に導入された二次再結晶粒の粒界付近に微細粒が多数形成されていることが分かった。
そして、鉄損が比較的良いサンプルについては歪み部直下の二次再結晶粒の粒界が多い一方で、鉄損が悪いサンプルについては、前記微細粒の析出量が減少してはいるものの多数析出していた。この微細粒は最終焼鈍中に成長する二次再結晶ではなく、歪みが導入されることで、最終焼鈍での昇温中に粗大化し、二次再結晶粒に蚕食されなかった結晶粒(結晶方位がゴス方位から10度以上ずれている結晶粒)であり、ゴス粒ではないことから、この結晶粒(微細粒)が存在することで鉄損を低下させていたと推定される。
さらに、発明者らは、特許文献4に開示されている方法をもとに、以下の実験[1]を考えた。
すなわち、最終焼鈍後の歪み導入箇所の直下への微細粒の発生を抑制することで、人工的な二次再結晶粒の粒界を導入し、二次再結晶粒を小径化することによる鉄損低減の効果を、前記特許文献4に記載の技術を超えて高める方法を模索するために、以下の実験[1]を実施した。
実験[1]
脱炭焼鈍を施した0.23mm厚の方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍板に対し、かかる脱炭焼鋼板の圧延方向に対し直角に、かつ幅方向全体に均一に圧下されるように、突起が付与されたロールへの荷重圧力を変え、周期的な歪みおよび溝を導入した。このロールの外周部の円周は2mであり、突起間隔は全て等しく、10mmであった。また、比較用として、歪みを導入しないプレーン条件のサンプルも作製した。
次いで、酸化マグネシウムを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、最終焼鈍を1200℃の保定温度で実施することで、二次再結晶およびフォルステライト被膜の形成をさせた。
かように作製した製品板を、圧延方向に280mm、圧延直交方向に30mmの長さに剪断後、励磁周波数:50Hz、励磁磁束密度:1.7TでJIS C 2550-1:2011に基づきエプスタイン試験を実施し、鉄損を測定した。
鉄損測定後のサンプルの圧延方向における、板厚方向の鋼板断面観察を実施した。観察箇所は、図1に示すように、かかる鋼板断面の二次再結晶粒の粒界の圧延方向長さのうち最大長さの中心である粒界位置から圧延方向に沿って、±5mmの範囲とした(本発明において、「粒界近傍部」という)。かかる範囲内において、ゴス方位から10°以上ずれた結晶粒(微細粒)の観察面積に対する面積率を計算した。上記粒界位置を、図1、図2、図3および図4に示す各結晶粒の配置の例に則り示している。
なお、本発明で歪導入箇所とは、鋼板表面に歪を与えた部分のうち、鋼板圧延方向に対する中心部を指し、今回のような突起ロールであれば、突起が鋼板と接した部分の圧延方向中心部を指す。
図1に記載のように、二次再結晶粒の粒界が鋼板の圧延面の表面と裏面に貫通して導入されている二次再結晶粒の粒界に微細粒が隣り合うように析出している場合は、二次再結晶粒と微細粒との間に形成される粒界が表面に露出した位置をA、B、Cとする。
このとき、鋼板の反対の面にあるCをA、B側の面に垂直投射したときの点をC´として、かかるC´と上記A、Bとの距離、すなわち二次再結晶粒の粒界の圧延方向長さとなるAC´とBC´の長さを比較する。すると、図1の場合は、AC´>BC´であることから、最も距離が大きくなる、すなわち最大長さとなる組み合わせはAとC´となる。そこで、C´の基の点CとAとを結んだACを採用し、かかるACの圧延方向に対する中心を、本発明では、粒界位置と定義している。
また、図2に記載のように、二次再結晶粒の粒界に隣接する微細粒がない場合は、その二次再結晶粒の粒界が鋼板表面に露出しているA点とB点とを結んだ粒界ABの圧延方向に対する中心を粒界位置と定義した。
さらに、図3に記載のように、二次再結晶粒の厚さ方向の中間でお互いが接するように複数の微細粒が析出したり、図4に記載のように、二次再結晶粒を微細粒が左右に分断したりしているときは、二次再結晶粒と微細粒の間のそれぞれの粒界が鋼板表面に露出している点、A,B,C,D点を取る。次いで、図3および図4に示したように、鋼板の反対の面にあるCおよびDをA、B側の面に垂直投射したときの点をそれぞれC´およびD´とし、距離AC´,AD´,BC´およびBD´を考える。
そして、その中で最も距離が大きくなる組み合わせを求め、その組み合わせの鋼板表面に露出している点と投射前の鋼板表面に露出している点とを結んだ線の圧延方向に対する中心を粒界位置と定義した。
すなわち、図3および図4では、いずれもAD´が最も長いため、Aと、D´の投射前の点Dとを結んだ線ADを採用し、かかるADの圧延方向に対する中心が粒界位置となる。
前記粒界近傍部(粒界位置から圧延方向に沿って、±5mmの範囲)内における前記微細粒の面積率を計算した。かかる面積率の計算は、前記エプスタイン試験片を板幅方向の中央部で圧延方向に剪断した際の面積率をそのサンプルの面積率とし、1条件に付き、10枚のエプスタイン試験片に対し、前記面積率を算出し、それら10枚の平均面積率をその条件での面積率とした。
なお、かかる面積率は、歪を幅方向全体に均一に付与したので、板幅方向の中央部で取得可能である。ロールの当たり方が悪く、歪が幅方向全体に付与されていない場合は、最も多く導入された歪を横切ることができる板幅方向の位置で算出した。また、前記粒界位置の周期性は、ある歪とそれに隣接する歪の間隔を歪を付与する設備の1単位当たりの長さの二倍の長さに渡って測定し、繰り返し単位を調査することで取得可能である。
例えば、本例のような突起が付与されたロールでは、ロールの外周の円周の2倍の長さを測定し、周期性について評価した。
微細粒を判断するための結晶方位は、前記観察範囲内をX線回折法または電子線後方散乱回折法(EBSD)により測定することができる。X線及び電子線の試料からの反射角等が結晶方位ごとに異なるため、ランダム方位試料を基準とし、この反射強度等で結晶方位強度を求めることができる。
また、静磁状態の主磁区幅も測定した。主磁区幅は、前記断面観察を行った10枚のエプスタイン試験片に対し、断面観察のために幅方向中心部から剪断する前に、圧延面に生じる主磁区を磁性コロイド粒子によるマグネットビューアーで出力する処理を施し、マイクロスコープで観察することで算出した。
この処理を鋼板全体に実施し、全ての主磁区幅を平均することで、そのサンプル1枚の主磁区幅とし、これを10枚分平均することで、その実験条件での主軸区幅とした。
実験[1]の結果を表1に示す。なお、表1における存在比率とは、鋼板表面の単位面積(1m)中の鋼板全厚に亘り含まれる前記粒界近傍部において、すべての粒界近傍部に対する微細粒面積率が20%以下(0%含む)である粒界近傍部の存在数の比率を示している。ここでいう「存在数の比率」は、長さ比率に相当する。
Figure 2024094075000002
脱炭焼鈍板への突起が付与されたロールによる荷重が変化し、鋼板表面にある特定の範囲の圧下率が付与されると鉄損がさらに改善されることが分かった。この時、断面観察によって得られた微細粒の面積率が低下しており、鉄損が特に改善されるのは微細粒の面積率が20%以下となっている粒界近傍部の存在数の比率が50%以上のときであった。
前記実験[1]により、発明者らは、歪みを導入し、周期的な二次再結晶粒の粒界を持たせた方向性電磁鋼板の磁区をより細分化し、さらなる低鉄損化が実現できることを知見した。
前記実験[1]により、鉄損が特に改善されるのは微細粒の面積率が20%以下となっている粒界近傍部の存在数の比率が50%以上のときというのが知見されたので、発明者らは、さらに微細粒を抑えるための手段を以下の実験[2]によって検討した。
実験[2]
脱炭焼鈍後の方向性電磁鋼板である厚さ:0.23mmの脱炭焼鈍板を、幅:30mm、長さ:280mmに剪断後、突起間隔:10mmの突起ロールで鋼板の幅方向に圧下率が2.0%になる荷重で歪みを導入した。次いで、焼鈍分離剤を塗布し1200℃での最終焼鈍を実施した。この時、二次再結晶が開始される温度である800℃までの昇温速度を毎時1℃、毎時3℃、毎時5℃、毎時10℃に変更した。
最終焼鈍後の製品板の鉄損および微細粒の面積率および存在比率を、前記実験[1]と同様の方法で求めた。
実験[2]の結果を表2に示す。
Figure 2024094075000003
表2に示した実験[2]の結果より、昇温速度が毎時5℃以上の比較的速い条件で微細粒を有する粒界近傍部の発生を抑制できることが分かった。
すなわち、微細粒を有する粒界近傍部の発生を抑えるための手段としては、歪み量を増やすだけでなく、最終焼鈍の二次再結晶温度までの昇温速度の調整が効果的であることを実験[2]で知見した。
以上の知見を基に、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は以下の要件を備える。
1.質量%で、Si:2.0%以上7.0%以下を含む方向性電磁鋼板であって、 鋼板の圧延方向に沿う厚さ方向断面において、二次再結晶粒の粒界の圧延方向長さのうち最大長さの中心を粒界位置とし、かかる粒界位置を基点として、圧延方向に±5mmの長さでかつ鋼板の全厚に亘る範囲を粒界近傍部としたとき、鋼板の全厚に亘り鋼板表面の単位面積(1m)における前記粒界近傍部の全体に対し、結晶方位がゴス方位から10度以上ずれている結晶粒が面積率にして20%以下(0%含む)の割合となる粒界近傍部が50%以上存在する方向性電磁鋼板。
2.前記粒界位置の全てまたは一部が、圧延方向に単位面積(1m)における平均二次再結晶粒の粒径の整数倍の間隔で周期的に並ぶ前記1に記載の方向性電磁鋼板。
3.前記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法であって、最終焼鈍前の鋼板の圧延面における片方もしくは両方の面に対し、圧下率:0.1%以上で板幅方向の一部もしくは全体に圧下を施した後、二次再結晶が開始される温度域までの昇温速度を毎時5℃以上とし、さらに1100℃以上の温度で最終焼鈍を実施する方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、低鉄損な方向性電磁鋼板を提供することができる。また、本発明によって提供された方向性電磁鋼板にさらなる磁区細分化処理を施すことで、極めて低鉄損な方向性電磁鋼板の製造方法を提供することができる。
サンプルの圧延方向における板厚方向の鋼板断面の粒界位置の一例を表す模式図である。 サンプルの圧延方向における板厚方向の鋼板断面の粒界位置の他の例を表す模式図である。 サンプルの圧延方向における板厚方向の鋼板断面の粒界位置の他の例を表す模式図である。 サンプルの圧延方向における板厚方向の鋼板断面の粒界位置の他の例を表す模式図である。
まず、本発明の構成要件の限定理由について述べる。
本発明は、方向性電磁鋼板製品板についての発明であり、所定の粒界付近における微細粒の面積率が本発明の要件を満たすのであれば、Si量以外の他の成分系は特に問わない。残部はFe及び不可避的不純物であってよい。さらに質量%で、Mn:0.005~1.000%およびC:0.0050%以下の含有を許容する。さらにまた質量%で、Ni:0.01~1.50%、Cr:0.01~0.50%、Cu:0.01~0.50%、Bi:0.01~0.50%、Sb:0.01~0.20%、Sn:0.01~0.20%、Mo:0.01~0.20%、P:0.01~0.20%およびNb:0.001~0.015%の1種または2種以上の含有も許容する。
従って、出発材料である鋼スラブの成分組成は限定されず、二次再結晶が生じる成分組成であればよい。例えば、二次再結晶粒を成長させるためにインヒビターを利用する場合AlN系やMnSe系などのインヒビターが挙げられるが、これらを利用する場合のAlやN、MnやSeなどを適量含有させればよい。
また、インヒビターを利用しない方向性電磁鋼板にも同様に適用可能である。
なお、Siを鋼板に含有させることで軟磁性材料としての特性が向上するが、7.0質量%を超えて含有させた場合、著しく加工性が劣化し製造が困難になるため、本発明に用いる鋼板のSi量は7.0質量%以下と限定した。好ましくは5.0%質量以下である。一方、かかるSi量は、鋼板の電気抵抗を高め、渦電流損を低減し鉄損を低減可能な、2.0質量%以上とした。
方向性電磁鋼板は、その製造の過程において、熱延鋼板を冷間圧延したのち脱炭焼鈍を施すことで、二次再結晶の粒成長に必要な一次再結晶組織を作りこむ。この一次再結晶組織の作りこみのために、最終的に製品厚さに調整できれば、冷間圧延の回数および追加の焼鈍に関しても限定されない。
また、二次再結晶粒を小径化するために、最終焼鈍前に加工歪を入れるが、局所的に圧下による溝または歪みが導入された部分が残存した状態で、最終焼鈍を実施可能であれば、特に、そのタイミング、方法は限定されない。
なお、この加工歪は、周期的に導入し、周期性を有することが好ましい。また、本発明でいう粒界位置は、歪み導入箇所に最も近接している二次再結晶粒における粒界位置から選択されることが望ましい。
かかる歪みの導入の周期的とは、歪間隔に一定の周期性が認められればよく、圧延方向に単位面積(1m)における二次再結晶粒の平均粒径の整数倍の間隔で周期的に並んでいることがより好ましい。歪に周期性があることで、製造された方向性電磁鋼板から鉄心用材料を切り出す際に、場所による特性のバラつきが生じず、工業的に一定の品質を保つことが可能となるためである。
さらに、粒界位置の周期性は、歪を付与する設備の1単位が互いに隣接している少なくとも2単位分の長さの領域において粒界位置の個数比率で50%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましい。
ここで、本発明でいう粒界位置が周期的に存在するとは、鋼板の圧延方向へ3個以上の歪の間隔が、±0.5mm以内の誤差範囲で繰り返し導入されていることをいう。また、その間隔の値は特に限定されないが、工業的には5~200mm程度の範囲が好ましい。
二次再結晶粒の粒界は、歪みを導入した直下から圧延方向に垂直に伸びるわけではなく、歪みの前後の二次再結晶粒の蚕食スピードや、鋼板の板厚方向への歪みの不均一性の影響によって、斜めや半円状に伸びることもある。そのような影響を鑑みて上述の許容範囲を設けた。なお、歪み導入箇所の幅、長さは、歪みを導入する際に、脱炭焼鈍板へ応力、荷重が加わった部分の幅、長さとする。
本発明では、歪みの板幅方向の長さは、鋼板全幅に対し導入する必要はなく、鋼板の幅に対し50%以上を満たしていれば二次再結晶粒の粒径の小径化が効果的になされ、低鉄損化した鋼板が得られる。なお、低鉄損化のためには、歪を導入する部位の幅方向の長さを大きくする方が好ましく、最も好ましい条件は、板幅方向の全てに歪みを導入することである。
また、前述の通り、導入する歪みの少なくとも個数比率で50%以上に前述した周期性を持たせることで、鋼板を切り出した際の二次再結晶粒の粒径のばらつきを効果的に減らすことができる。
すなわち、方向性電磁鋼板を変圧器に加工する際には、ノンカットコアと呼ばれるものを除き、ある長さに剪断したのち、変圧器鉄心に組み上げる。ところが、この時、剪断後の鋼板ごとに二次再結晶粒の粒径が異なると、かかる鋼板ごとに鉄損が異なることになって、鉄損が大きい鋼板がボトルネックとなり、変圧器鉄心全体での本発明による鉄損改善効果が十分に発揮されなくなり、鉄心を磁化した際の特性を悪化させる要因になる。
従って、本発明では、得られた方向性電磁鋼板を用いて変圧器を作製した際に必要以上に鉄損を増加させることを抑えるために、前記した個数比率で周期的な二次再結晶粒の粒界をもつ結晶組織とすることが好ましい。
また、方向性電磁鋼板の一次再結晶組織はゴス粒に蚕食されやすく、ゴス粒の成長を助けるような組織に制御されている。しかしながら、最終焼鈍前に鋼板に局所的に歪みを導入すると、最終焼鈍の昇温中にその歪みを駆動力として、連続再結晶が発生し、再結晶粒が新たに形成されるものの、ここで生じる再結晶粒は方位が大きく異なり、蚕食されにくい。そのため、圧下部は蚕食されずに、そこを境に異なる二次再結晶粒が成長する。
さらに焼鈍温度が上昇すると、成長した二次再結晶粒が間にある再結晶粒を蚕食することで、歪み部の再結晶粒が蚕食され、特定の粒径を持つ二次再結晶粒のみが作り出される。その際、歪みの導入量が適切でないと、一次再結晶粒が連続再結晶を起こすだけの駆動力に不足し、周囲の粒に対し、方位が大きくずれた粒を中心とし、そのままの方位で異常粒成長を起こす不連続再結晶が生じる。
かかる不連続再結晶は、一次再結晶粒と比べて大きく、成長したゴス粒には蚕食されない。よって、かかる不連続再結晶は最終焼鈍後も二次再結晶粒に比べて微細な結晶粒として残る。また、かかる不連続再結晶は、二次再結晶していないため結晶方位はゴス粒から大きくずれている。
すなわち、前述の実験[1]で示されたように、かかる不連続再結晶である結晶粒が少なければ鉄損がさらに改善する。
よって、本発明は、前記粒界位置を基点として、圧延方向に±5mmの範囲の長さでかつ鋼板の全厚に亘る範囲を粒界近傍部としたとき、鋼板の全厚に亘り鋼板表面の単位面積(1m)における前記粒界近傍部の全体に対し、結晶方位がゴス方位から10度以上ずれている結晶粒(微細粒)が面積率にして20%以下(0%含む)の割合となる粒界近傍部を、50%以上の存在比率にすることで、極めて低鉄損な方向性電磁鋼板を得ることができる。なお、前記存在比率は80%以上が好ましい。
本発明では、母材となる鋼板の表面に歪みを導入し、かかる鋼板を加熱した際に、鋼板内の歪みを解放するために結晶粒が回復や再結晶を行うことが肝要である。
かかる導入される歪みとは、最終焼鈍前の鋼板の圧延面における片方もしくは両方の面に対し、圧下率:0.1%以上で板幅方向の一部もしくは全体に圧下を施すことである。なお、かかる圧下率の上限は、50μm深さ以上の溝と成らなければ、特に限定されないが、20μm以下が好ましい。
また、かかる加熱に際し、昇温速度が毎時5℃未満の遅い条件では、前記した連続再結晶を起こす前に、回復によって歪みが部分的に解放され、連続再結晶を起こすだけの歪みが残らず、不連続再結晶を起こし微細粒が多く成長する。
従って、昇温速度を毎時5℃以上に速めることで、歪みによる二次再結晶粒の粒径の小径化による低鉄損化の効果をさらに大きくすることができる。
さらに、最終焼鈍を1100℃以上の温度で実施する必要がある。鋼板中の不純物を純化する必要があるからである。前述した純化に、より適した温度として、1200℃以上の保定温度で実施することが好ましい。一方、最終焼鈍の保定温度の上限は特に制限されないが、設備の能力や昇温にかかるコストを考えると1200℃程度が好ましい。
なお、本発明において歪みを導入する際の母材である脱炭焼鈍板の製造条件は限定されず、最終焼鈍で二次再結晶が発現するプロセスであれば特に限定されない。従って、鋼板表面にレーザー照射や電気分解によるエッチングなどを施し加工した材料においても適用でき、二次再結晶粒の小径化によってさらなる低鉄損化が達成できる。
また、最終焼鈍後のプロセスにおいても特に限定はされず、平坦化焼鈍や絶縁被膜の塗布、焼き付けを実施しても良い。さらに、レーザー照射に代表される熱歪の導入や、さらなる溝の形成によって、磁区細分化処理を施すことがさらなる鉄損の低減化につながるので好ましい。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の代表的な一例を示すものであり、本発明は、本実施例によって何ら限定されるものではない。本発明の実施形態は、本発明の趣旨に適合する範囲で適宜変更することが可能であり、それらがいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表3に示す成分を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造にて製造し、1420℃にて加熱後、熱間圧延により板厚:2.0mmの熱延板としたのち、900℃で10秒の熱延板焼鈍を施した。ついで、冷間圧延により中間板厚:1.1mmとし、酸化度PHO/PH=0.32、温度:1070℃で30秒間の中間焼鈍を施したのち、再度、冷間圧延を施し、板厚:0.23mmの冷延鋼板とした。最終板厚となった上記冷延鋼板に対し、湿水素中で、850℃、150秒間の脱炭焼鈍を施した。
Figure 2024094075000004
その後、3~10mm間隔でランダムに幅:50μmの突起が成形されている外周部の長さが2mの突起ロールを用いて、鋼板に対し、圧下率:0.0%、0.1%、2.0%、5.0%、10.0%の5条件で圧下を施した。
次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶、フォルステライト被膜形成を目的とし最終焼鈍を実施した。なお、圧下率:0.0%とは、鋼板表面に溝が入らない荷重を突起ロールにかけて通板したことを意味する。
また、比較例として、脱炭焼鈍後、突起ロールによる圧延を実施せずに焼鈍分離剤を塗布し、最終焼鈍を実施するサンプルを作製した。
最終焼鈍は、二次再結晶が開始される800℃までは毎時1℃、毎時2℃、毎時5℃または毎時10℃の昇温速度でそれぞれ昇温を実施し、その後はいずれも1200℃まで毎時5℃の昇温速度で昇温するという熱パターンで実施した。
次に、未反応の焼鈍分離剤を取り除いたのち、50質量%のコロイダルシリカおよび50質量%のリン酸アルミニウムからなるコーティング液を塗布し、平坦化焼鈍も兼ねた張力コーティング焼き付け処理を焼き付け温度:850℃で実施した。
かようにして得られた方向性電磁鋼板について、エプスタイン試験および磁区観察を実施し鉄損と磁区幅を求めた。エプスタイン試験は、圧延方向に280mm、板幅方向に30mmのサンプルを1条件につき36枚切り出したサンプルで、励磁条件は1.7T,50Hzで行った。
本実施例では、かかる36枚のサンプルの鉄損値の平均を当該条件の鉄損とした。
また、磁区幅観察は、マグネットビューアーを用いて静磁状態の主磁区幅を表示させマイクロスコープで観察した。主磁区幅の観察後、鋼板断面を観察し、周期的に導入された粒界位置の個数比率、粒界近傍部における微細粒の面積率およびかかる微細粒の面積率が20%以下の粒界近傍部の存在比率を求めた。
かかる断面の観察方法および微細粒の面積率は、前述した方法にて実施した。
なお、微細粒の面積率は1条件に付き10枚の測定データの平均値である。
また、上記個数比率は、(周期的な粒界位置の個数/ロール外周の円周の長さの2倍の範囲内の結晶粒界の個数)の式から求めた。
さらに、上記存在比率は、(微細粒の面積率が20%以下である粒界の数/鋼板表面の単位面積(1m)に確認された結晶粒界数)の式から求めた。
かかる測定の結果を表4に示す。
Figure 2024094075000005
表4に示したように、本発明の要件を満たすことで、より優れた特性を持つ方向性電磁鋼板が得られることが分かる。
特に、上記個数比率は93%以上の範囲で、また、上記存在比率は88%以上の範囲で、より優れた特性を持つ方向性電磁鋼板が得られることが分かる。

Claims (3)

  1. 質量%で、Si:2.0%以上7.0%以下を含む方向性電磁鋼板であって、
    鋼板の圧延方向に沿う厚さ方向断面において、二次再結晶粒の粒界の圧延方向長さのうち最大長さの中心を粒界位置とし、かかる粒界位置を基点として、圧延方向に±5mmの長さでかつ鋼板の全厚に亘る範囲を粒界近傍部としたとき、
    鋼板の全厚に亘り鋼板表面の単位面積(1m)における前記粒界近傍部の全体に対し、結晶方位がゴス方位から10度以上ずれている結晶粒が面積率にして20%以下(0%含む)の割合となる粒界近傍部が50%以上存在する方向性電磁鋼板。
  2. 前記粒界位置の全てまたは一部が、圧延方向に単位面積(1m)における二次再結晶粒の平均粒径の整数倍の間隔で周期的に並ぶ請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    最終焼鈍前の鋼板の圧延面における片方もしくは両方の面に対し、圧下率:0.1%以上で板幅方向の一部もしくは全体に圧下を施した後、二次再結晶が開始される温度域までの昇温速度を毎時5℃以上とし、さらに1100℃以上の温度で最終焼鈍を実施する方向性電磁鋼板の製造方法。
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