JP2024089845A - マスクブランク、転写用マスク、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法 - Google Patents

マスクブランク、転写用マスク、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性の要求を満たすマスクブランクを提供する。【解決手段】透光性基板上に、パターン形成用の薄膜を備えるマスクブランクであって、薄膜は、遷移金属とケイ素を含有し、全電子収量法によって取得される薄膜の表層のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数をIL、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数をIHとしたとき、(IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上である。【選択図】図6

Description

本発明は、マスクブランク、転写用マスク、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法に関する。
近年、OLED(Organic Light Emitting Diode)を代表とするFPD(Flat Panel Display)等の表示装置では、大画面化、広視野角化、折りたたみなどのフレキシブル化とともに、高精細化、高速表示化が急速に進んでいる。この高精細化、高速表示化のために必要な要素の1つが、微細で寸法精度の高い素子および配線等の電子回路パターンを作製することである。この表示装置用電子回路のパターニングにはフォトリソグラフィが用いられることが多い。このため、微細で高精度なパターンが形成された表示装置製造用の位相シフトマスクおよびバイナリマスクといった転写用マスク(フォトマスク)が必要である。
例えば、特許文献1には、微細パターンを露光するためのフォトマスクが記載されている。特許文献1には、フォトマスクの透明基板上に形成するマスクパターンを、実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部と、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過させる光半透過部とで構成することが記載されている。また、特許文献1には、位相シフト効果を用いて、前記光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過した光が互いに打ち消しあうようにして境界部のコントラストを向上させることが記載されている。また、特許文献1には、フォトマスクが、前記光半透過部を、窒素、金属およびシリコンを主たる構成要素とする物質からなる薄膜で構成するとともに、該薄膜を構成する物質の構成要素たるシリコンを34~60原子%含むことが記載されている。
特許文献2には、リソグラフィに使用するハーフ・トーン型位相シフト・マスク・ブランクが記載されている。特許文献2には、マスク・ブランクが、基板と、前記基板に堆積させたエッチ・ストップ層と、前記エッチ・ストップ層に堆積させた位相シフト層とを備えることが記載されている。さらに特許文献2には、このマスク・ブランクを用いて、500nm未満の選択された波長でほぼ180度の位相シフト、および少なくとも0.001%の光透過率を有するフォトマスクを製造可能であることが記載されている。
特許第2966369号公報 特開2005-522740号公報
近年の高精細(1000ppi以上)のパネル作製に使用される転写用マスクとしては、高解像のパターン転写を可能にするために、転写用マスクであって、かつホール径で、6μm以下、ライン幅で4μm以下の微細なパターン形成用の薄膜パターンを含む転写パターンが形成された転写用マスクが要求されている。具体的には、径または幅寸法が1.5μmの微細なパターンを含む転写パターンが形成された転写用マスクが要求されている。
一方、マスクブランクのパターン形成用の薄膜をパターニングすることにより得られる転写用マスクは、繰り返し、被転写体へのパターン転写に用いられるため、実際のパターン転写を想定した紫外線に対する耐光性(紫外耐光性)も高いことが望まれる。
しかしながら、紫外線領域の波長を含む露光光に対する紫外耐光性(以下、単に耐光性)の要求を満たすパターン形成用の薄膜を備えたマスクブランクを製造することは、従来においては困難であった。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性の要求を満たすマスクブランクを提供することを目的とする。
また、本発明は、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性の要求を満たす、良好な転写パターンを備える転写用マスク、転写用マスクの製造方法、および表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(構成1)透光性基板上に、パターン形成用の薄膜を備えるマスクブランクであって、
前記薄膜は、遷移金属とケイ素を含有し、
全電子収量法によって取得される前記薄膜の表層のX線吸収スペクトルは、
入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数をIL、
入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数をIHとしたとき、
(IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上である
ことを特徴とするマスクブランク。
(構成2)蛍光収量法によって取得される前記薄膜のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいことを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)前記薄膜は、前記遷移金属として少なくともチタンを含有することを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成4)前記薄膜は、さらに窒素を含有することを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成5)前記薄膜における遷移金属およびケイ素の合計含有量に対する遷移金属の含有量の比率は、0.05以上であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成6)前記薄膜上に、前記薄膜に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜を備えていることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成7)前記エッチングマスク膜は、クロムを含有していることを特徴とする構成6記載のマスクブランク。
(構成8)透光性基板上に、転写パターンを有する薄膜を備える転写用マスクであって、
前記薄膜は、遷移金属とケイ素を含有し、
全電子収量法によって取得される前記薄膜の表層のX線吸収スペクトルは、
入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数をIL、
入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数をIHとしたとき、
(IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上である
ことを特徴とする転写用マスク。
(構成9)蛍光収量法によって取得される前記薄膜のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいことを特徴とする構成8記載の転写用マスク。
(構成10)前記薄膜は、前記遷移金属として少なくともチタンを含有することを特徴とする構成8記載の転写用マスク。
(構成11)前記薄膜は、さらに窒素を含有することを特徴とする構成8記載の転写用マスク。
(構成12)前記薄膜における遷移金属およびケイ素の合計含有量に対する遷移金属の含有量の比率は、0.05以上であることを特徴とする構成8記載の転写用マスク。
(構成13)構成6または7に記載のマスクブランクを準備する工程と、
前記エッチングマスク膜上に転写パターンを有するレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜をマスクとするウェットエッチングを行い、前記エッチングマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたるエッチングマスク膜をマスクとするウェットエッチングを行い、前記薄膜に転写パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成14)構成8から12のいずれかに記載の転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記転写用マスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
本発明によれば、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性の要求を満たすマスクブランクを提供することができる。
また、本発明によれば、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性の要求を満たす、良好な転写パターンを備える転写用マスク、転写用マスクの製造方法、および表示装置の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態のマスクブランクの膜構成を示す断面模式図である。 本発明の実施形態のマスクブランクの別の膜構成を示す断面模式図である。 本発明の実施形態の転写用マスクの製造工程を示す断面模式図である。 本発明の実施形態の転写用マスクの別の製造工程を示す断面模式図である。 本発明の実施例1~3および比較例1、2に係るマスクブランクのパターン形成用の薄膜に対して、蛍光収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトル(横軸:薄膜に入射させたX線エネルギー、縦軸:そのX線エネルギーに対する薄膜のX線吸収係数)を示す図である。 本発明の実施例1~3および比較例1、2に係るマスクブランクのパターン形成用の薄膜の表層に対して、全電子収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトル(横軸:薄膜の表層に入射させたX線エネルギー、縦軸:そのエネルギーのX線に対する薄膜の表層のX線吸収係数)を示す図である。 本発明の実施例1~3および比較例1、2に係るマスクブランクのパターン形成用の薄膜における、(IH-IL)/(EH-EL)と透過率の変化との関係を示す図である。ここで、ILは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数であり、IHは、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数である。
まず、本発明の完成に至る経緯を述べる。本発明者は、紫外線領域の波長を含む露光光(以下、単に「露光光」という場合がある)に対する高い耐光性の要求を満たすマスクブランクの構成について、鋭意検討を行った。
本発明者は、FPD(Flat Panel Display)等の表示装置を製造するために用いられる転写用マスクの薄膜パターンの材料に、遷移金属とケイ素を含有する遷移金属シリサイド系材料を用いることを検討していた。遷移金属シリサイド系材料を用いて形成された薄膜において、組成がほぼ同じであるにもかかわらず、露光光に対する耐光性に大きな差が生じる場合があることが判明した。このため、本発明者は、露光光に対する耐光性の高い遷移金属シリサイド系材料の薄膜と、露光光に対する耐光性の低い遷移金属シリサイド系材料の薄膜との相違について、多角的に検証を行った。まず、本発明者は、薄膜の組成と露光光に対する耐光性との関係性について検討したが、薄膜の組成と耐光性との間には、明確な相関関係は得られなかった。また、断面SEM像、平面STEM像の観察や電子回折像の観察を行ったが、いずれも耐光性との間で明確な相関が得られなかった。
そこで、本発明者は、薄膜を形成時に使用するガス成分に着目した。透光性基板上に遷移金属シリサイド系材料の薄膜を形成する場合、スパッタリング法を用いるのが一般的である。遷移金属シリサイド系材料の薄膜をスパッタリング法で形成する場合、成膜室内には、反応性ガスのほかに貴ガスを流入させることが一般的である。貴ガスをプラズマ化させてターゲットに衝突させた方がスパッタ効率を高くすることができるためである。また、その貴ガスにはアルゴンが広く用いられている。このようにして形成された薄膜においては、極めて微量ではあるが貴ガスの成分が含有されているものと考えられる。
このような観点に基づき、露光光に対する耐光性が大きく異なる遷移金属シリサイド系材料の薄膜に対して、蛍光収量法によってArに由来するX線吸収スペクトルを取得して分析を行った(図5参照)。その結果、いずれの薄膜にもスパッタガス由来のアルゴンが取り込まれていることを確認できたが、耐光性との間で明確な相関が得られなかった。
本発明者はさらに鋭意研究を行った結果、紫外線領域の波長を含む露光光に対する耐光性が大きく異なる遷移金属シリサイド系材料の薄膜の表層に対して、全電子収量法によってArに由来するX線吸収スペクトル(横軸:薄膜の表層に入射させたX線エネルギー、縦軸:そのエネルギーのX線に対する薄膜の表層のX線吸収係数)を取得して分析を行った(図6、図7参照)。蛍光収量法で取得された薄膜のX線吸収スペクトルは、取得される膜厚方向の範囲が十分に深く、薄膜の膜厚方向の全体の状態(表層+それ以外の領域)が反映されたスペクトルが得られる。薄膜の表層とそれ以外の領域の状態に係る情報が混在するスペクトルであり、薄膜の表層とそれ以外の領域の状態を切り分けることは困難である。これに対し、全電子収量法で取得された薄膜のX線吸収スペクトルは、取得される膜厚方向の範囲が非常に浅く、薄膜の表層の状態が大きく反映されたスペクトルになる。耐光性が大きく異なる薄膜において、全電子収量法で取得されたX線吸収スペクトルを分析したところ、X線吸収係数の傾向が両者の間で明確な差があることを突き止めた。
本発明のマスクブランクは、以上の鋭意研究の結果、導き出されたものである。すなわち、透光性基板上に、パターン形成用の薄膜を備えるマスクブランクであって、薄膜は、遷移金属とケイ素を含有し、全電子収量法によって取得される薄膜の表層のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数をIL、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数をIHとしたとき、
(IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上であることを特徴とするものである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
図1は、本実施形態のマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。図1に示すマスクブランク10は、透光性基板20と、透光性基板20上に形成されたパターン形成用の薄膜30(例えば位相シフト膜)と、パターン形成用の薄膜30上に形成されたエッチングマスク膜(例えば遮光膜)40とを備える。
図2は、別の実施形態のマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。図2に示すマスクブランク10は、透光性基板20と、透光性基板20上に形成されたパターン形成用の薄膜30(例えば位相シフト膜)とを備える。
本明細書において、「パターン形成用の薄膜30」とは、遮光膜および位相シフト膜などの、転写用マスク100において所定の微細パターンが形成される薄膜のことをいう(以降、単に「薄膜30」という場合がある)。なお、本実施形態の説明では、パターン形成用の薄膜30の具体例として位相シフト膜を例に、パターン形成用の薄膜パターン30a(以降、単に「薄膜パターン30a」という場合がある)の具体例として位相シフト膜パターンを例に説明する場合がある。遮光膜および遮光膜パターン、透過率調整膜および透過率調整膜パターンなど、他のパターン形成用の薄膜30およびパターン形成用の薄膜パターン30aにおいても、位相シフト膜および位相シフト膜パターンと同様である。
以下、本実施形態の表示装置製造用マスクブランク10を構成する透光性基板20、パターン形成用の薄膜30(例えば位相シフト膜)およびエッチングマスク膜40について、具体的に説明する。
<透光性基板20>
透光性基板20は、露光光に対して透明である。透光性基板20は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透光性基板20は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、および低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などのガラス材料で構成することができる。透光性基板20が低熱膨張ガラスから構成される場合、透光性基板20の熱変形に起因する薄膜パターン30aの位置変化を抑制することができる。また、表示装置用途で使用される透光性基板20は、一般に矩形状の基板である。具体的には、透光性基板20の主表面(パターン形成用の薄膜30が形成される面)の短辺の長さが300mm以上であるものを使用することができる。本実施形態のマスクブランク10では、主表面の短辺の長さが300mm以上の大きなサイズの透光性基板20を用いることができる。本実施形態のマスクブランク10を用いて、透光性基板20上に例えば幅寸法および/または径寸法が2.0μm未満の微細なパターン形成用の薄膜パターン30aを含む転写パターンを有する転写用マスク100を製造することができる。このような本実施形態の転写用マスク100を用いることにより、被転写体に所定の微細パターンを含む転写パターンを安定して転写することが可能である。
<パターン形成用の薄膜30>
本実施形態の表示装置製造用マスクブランク10(以下、単に「本実施形態のマスクブランク10」という場合がある。)の、パターン形成用の薄膜30は、遷移金属とケイ素を含有し、全電子収量法によって取得される薄膜30の表層のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数をIL、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数をIHとしたとき、
(IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上である、ものである。
ここで、表層とは、例えば、透光性基板20とは反対側の表面から、透光性基板20側に向かって10nmの深さまでの範囲にわたる領域である。
なお、X線吸収スペクトルの傾きである(IH-IL)/(EH-EL)は、-2.0×10-4以上であると好ましく、-1.5×10-4以上であるとより好ましい。
一般に、X線はX線エネルギーが大きくなるほど、媒質中を伝播するときのX線の減衰度合いが小さくなる(媒質内で吸収されにくくなる。)。すなわち、X線吸収スペクトルは、所定範囲のX線エネルギーのX線を大きく吸収する元素が測定対象物中に存在しない場合、X線エネルギーが大きくなるに従って、X線吸収係数が小さくなる、右肩下がり(傾きが負の値)のスペクトルになる。そして、そのX線を大きく吸収する元素の含有量が大きくなっていくに従い、X線吸収スペクトルの傾きの負の値は小さくなっていき、やがて正の値に転じる。このため、X線吸収スペクトルの傾きである(IH-IL)/(EH-EL)が負の値(右肩下がりの傾き)であることと、測定対象物の薄膜の表層にアルゴンが含まれていることは矛盾しない。
本発明者は、このX線吸収係数の傾向と耐光性との関係について、以下のように推察している。
成膜室内でアルゴンを含むスパッタガスによるスパッタリングによって、透光性基板20上に遷移金属とケイ素を含有するパターン形成用の薄膜30を形成した段階では、薄膜30の厚さ方向の全体にわたってアルゴンが取り込まれた状態になっていると考えられる。一方、図6の全電子収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトルの形状を踏まえれば、成膜室から薄膜30が形成された透光性基板20が取り出された後、紫外線領域の波長を含む露光光に対する耐光性の低い薄膜30は、大気に触れる側の表層において、耐光性の高い薄膜30に比して、相対的に多くのアルゴンが脱離して隙間が生じているものと考えられる。その隙間に大気中の水分が吸着し、露光光の照射によって表層中のケイ素および遷移金属の酸化が進み、薄膜30の透過率の上昇や膜面反射率スペクトルの短波長側へのシフトが発生していると推測される。ただし、この推察は、現段階での知見に基づくものであり、本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。
パターン形成用の薄膜30(以下、単に「薄膜30」という場合がある。)の蛍光収量法によって取得されるX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいことが、好ましい。
図5の蛍光収量法によって取得されたX線吸収スペクトルでは、入射X線エネルギーが3180~3210eVの範囲(より好ましくは3200~3210eVの範囲)でX線吸収係数が急に大きくなっている傾向、いわゆる吸収端(K吸収端)が出現している。この入射X線エネルギーの領域での吸収端はアルゴンに由来するものである。すなわち、この傾向を有する薄膜はアルゴンを含有している。一方、図6の全電子収量法によって取得されたX線吸収スペクトルにおいて明確な差がある複数の薄膜間において、図5の蛍光収量法によって取得されたX線吸収スペクトルでは、アルゴンに係る吸収端に明確な差がない。これらのことから、蛍光収量法によって取得されたX線吸収スペクトルにおいて、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも入射X線エネルギーELが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きくなっている薄膜は、その薄膜の表層以外の領域にもアルゴンを含有しているといえる。
パターン形成用の薄膜30は、遷移金属と、ケイ素(Si)を含有する材料からなることができる。遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などが好適であり、チタン、モリブデンがより好ましい。また、パターン形成用の薄膜30は、遷移金属として少なくともチタンを含有することが特に好ましい。
このパターン形成用の薄膜30は、位相シフト機能を有する位相シフト膜であることができる。
パターン形成用の薄膜30における遷移金属およびケイ素の合計含有量に対する遷移金属の含有量の比率は、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。これらの比率を満たすことで、光学特性、耐薬性をともに優れたものとすることができる。また、パターン形成用の薄膜30における遷移金属およびケイ素の合計含有量に対する遷移金属の含有量の比率は、0.50以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましい。これらの比率を満たすことで、パターン形成用の薄膜30のパターン形成時におけるウェットエッチングレートの過剰な上昇を、抑制することができる。
パターン形成用の薄膜30は、窒素を含有することが好ましい。上記遷移金属シリサイドにおいて、軽元素成分である窒素は、同じく軽元素成分である酸素と比べて、屈折率を下げない効果がある。そのため、パターン形成用の薄膜30が窒素を含有することにより、所望の位相差(位相シフト量とも言う)を得るための膜厚を薄くできる。また、パターン形成用の薄膜30に含まれる窒素の含有量は、10原子%以上であることが好ましく、20原子%以上であることがより好ましい。一方、窒素の含有量は、60原子%以下であることが好ましく、55原子%以下であることがよりに好ましい。薄膜30中の窒素含有量が多いことで露光光に対する透過率が過剰に高くなることを抑制できる。
パターン形成用の薄膜30は、膜厚方向の全ての領域でアルゴンを含有することが好ましい。紫外線領域の波長を含む露光光に対するより高い耐光性を有する薄膜30が得られる。一方、パターン形成用の薄膜30は、膜厚方向の全ての領域で、アルゴン、クリプトン、キセノンから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有するようにしてもよい。この場合、パターン形成用の薄膜30をスパッタ法で形成するときに用いられるスパッタガス中に該当の貴ガスを含有させる。また、クリプトンを含むスパッタガス中でパターン形成用の薄膜30を形成した場合においては、蛍光収量法によって取得される薄膜30のX線吸収スペクトルが、入射X線エネルギーELが14300eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが14330eVにおけるX線吸収係数の方が大きい(K吸収端の場合)、あるいは、入射X線エネルギーELが1650eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが1680eVにおけるX線吸収係数の方が大きい(L3吸収端の場合)ことが好ましい。さらに、キセノンを含むスパッタガス中でパターン形成用の薄膜30を形成した場合においては、蛍光収量法によって取得される薄膜30のX線吸収スペクトルが、入射X線エネルギーELが34540eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが34570eVにおけるX線吸収係数の方が大きい(K吸収端の場合)、あるいは、入射X線エネルギーELが4760eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが4790eVにおけるX線吸収係数の方が大きいこと(L3吸収端の場合)が好ましい。
一方、クリプトンを含むスパッタガス中でパターン形成用の薄膜30を形成した場合においては、全電子収量法によって取得される薄膜30の表層のX線吸収スペクトルが、入射X線エネルギーELが14300eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが14330eVにおけるX線吸収係数の方が大きい(K吸収端の場合)、あるいは、入射X線エネルギーELが1650eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが1680eVにおけるX線吸収係数の方が大きい(L3吸収端の場合)ことが好ましい。また、キセノンを含むスパッタガス中でパターン形成用の薄膜30を形成した場合においては、全電子収量法によって取得される薄膜30の表層のX線吸収スペクトルが、入射X線エネルギーELが34540eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが34570eVにおけるX線吸収係数の方が大きい(K吸収端の場合)、あるいは、入射X線エネルギーELが4760eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが4790eVにおけるX線吸収係数の方が大きいこと(L3吸収端の場合)が好ましい。
また、パターン形成用の薄膜30には、上述した酸素、窒素の他に、膜応力の低減および/またはウェットエッチングレートを制御する目的で、炭素およびヘリウム等の他の軽元素成分を含有してもよい。
このパターン形成用の薄膜30は複数の層で構成されていてもよく、単一の層で構成されていてもよい。単一の層で構成されたパターン形成用の薄膜30は、パターン形成用の薄膜30中に界面が形成され難く、断面形状を制御しやすい点で好ましい。一方、複数の層で構成されたパターン形成用の薄膜30は、成膜のしやすさ等の点で好ましい。
パターン形成用の薄膜30の膜厚は、光学的な性能を確保するために、200nm以下であることが好ましく、180nm以下であるとより好ましく、150nm以下であるとさらに好ましい。また、パターン形成用の薄膜30の膜厚は、所望の透過率を確保するために、50nm以上であることが好ましく、60nm以上であるとより好ましい。
<<パターン形成用の薄膜30の透過率および位相差>>
本実施形態の表示装置製造用マスクブランク10において、パターン形成用の薄膜30は、露光光の代表波長(波長405nmの光:h線)に対して透過率が1%以上80%以下、および位相差が140度以上210度以下の光学特性を備えた位相シフト膜であることが好ましい。本明細書における透過率は、特記しない限り、透光性基板の透過率を基準(100%)として換算したものを指す。
パターン形成用の薄膜30が位相シフト膜の場合には、パターン形成用の薄膜30は、透光性基板20側から入射する光に対する反射率(以下、裏面反射率と記載する場合がある)を調整する機能と、露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能とを有する。
露光光に対するパターン形成用の薄膜30の透過率は、パターン形成用の薄膜30として必要な値を満たす。パターン形成用の薄膜30の透過率は、露光光に含まれる所定の波長の光(以下、代表波長という)に対して、好ましくは、1%以上80%以下であり、より好ましくは、3%以上65%以下であり、さらに好ましくは5%以上60%以下である。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、パターン形成用の薄膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した透過率を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、パターン形成用の薄膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した透過率を有することができる。代表波長は、例えば、波長405nmのh線にすることができる。h線に対してこのような特性を有することで、i線、h線およびg線を含む複合光を露光光として用いた場合に、i線およびg線の波長での透過率に対しても類似の効果が期待できる。
また、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲からある波長域をフィルターなどでカットした選択された単色光、および313nm以上436nm以下の波長範囲から選択された単色光の場合、パターン形成用の薄膜30は、その単一波長の単色光に対して、上述した透過率を有する。
透過率は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
露光光に対するパターン形成用の薄膜30の位相差は、パターン形成用の薄膜30として必要な値を満たす。パターン形成用の薄膜30の位相差は、露光光に含まれる代表波長の光に対して、好ましくは、140度以上210度以下であり、より好ましくは、160度以上200度以下であり、さらに好ましくは、170度以上190度以下である。この性質により、露光光に含まれる代表波長の光の位相を140度以上210度以下に変えることができる。このため、パターン形成用の薄膜30を透過した代表波長の光と透光性基板20のみを透過した代表波長の光との間に140度以上210度以下の位相差が生じる。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、パターン形成用の薄膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した位相差を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、パターン形成用の薄膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した位相差を有することができる。代表波長は、例えば、波長405nmのh線にすることができる。h線に対してこのような特性を有することで、i線、h線およびg線を含む複合光を露光光として用いた場合に、i線およびg線の波長での位相差に対しても類似の効果が期待できる。
位相差は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
パターン形成用の薄膜30の裏面反射率は、365nm~436nmの波長域において15%以下であり、10%以下であると好ましい。また、パターン形成用の薄膜30の裏面反射率は、露光光にj線(波長313nm)が含まれる場合、313nmから436nmの波長域の光に対して20%以下であると好ましく、17%以下であるとより好ましい。さらに好ましくは15%以下であることが望ましい。また、パターン形成用の薄膜30の裏面反射率は、365nm~436nmの波長域において0.2%以上であり、313nmから436nmの波長域の光に対して0.2%以上であると好ましい。
裏面反射率は、分光光度計などを用いて測定することができる。
パターン形成用の薄膜30は、スパッタリング法などの公知の成膜方法により形成することができる。
<エッチングマスク膜40>
本実施形態の表示装置製造用マスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30の上に、パターン形成用の薄膜30に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜40を備えていることが好ましい。
エッチングマスク膜40は、パターン形成用の薄膜30の上側に配置され、パターン形成用の薄膜30をエッチングするエッチング液に対してエッチング耐性を有する(パターン形成用の薄膜30とはエッチング選択性が異なる)材料からなる。また、エッチングマスク膜40は、露光光の透過を遮る機能を有することができる。さらにエッチングマスク膜40は、パターン形成用の薄膜30側より入射される光に対するパターン形成用の薄膜30の膜面反射率が350nm~436nmの波長域において15%以下となるように、膜面反射率を低減する機能を有してもよい。
エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含有するクロム系材料から構成されることが好ましい。エッチングマスク膜40は、クロムを含有し、実質的にケイ素を含まない材料から構成されることがより好ましい。実質的にケイ素を含まないとは、ケイ素の含有量が2%未満であることを意味する(ただし、パターン形成用の薄膜30とエッチングマスク膜40との界面の組成傾斜領域を除く)。クロム系材料として、より具体的には、クロム(Cr)、または、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料が挙げられる。また、クロム系材料として、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含み、さらに、フッ素(F)を含む材料が挙げられる。例えば、エッチングマスク膜40を構成する材料として、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、およびCrCONFが挙げられる。
エッチングマスク膜40は、スパッタリング法などの公知の成膜方法により形成することができる。
エッチングマスク膜40が露光光の透過を遮る機能を有する場合、パターン形成用の薄膜30とエッチングマスク膜40とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは、3.5以上、さらに好ましくは4以上である。光学濃度は、分光光度計またはODメーターなどを用いて測定することができる。
エッチングマスク膜40は、機能に応じて組成が均一な単一の膜とすることができる。また、エッチングマスク膜40は、組成が異なる複数の膜とすることができる。また、エッチングマスク膜40は、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜とすることができる。
なお、図1に示す本実施形態のマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30上にエッチングマスク膜40を備えている。本実施形態のマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30上にエッチングマスク膜40を備え、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を備える構造のマスクブランク10を含む。
<マスクブランク10の製造方法>
次に、図1に示す実施形態のマスクブランク10の製造方法について説明する。図1に示すマスクブランク10は、以下のパターン形成用の薄膜形成工程と、エッチングマスク膜形成工程とを行うことによって製造される。図2に示すマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜形成工程によって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
<<パターン形成用の薄膜形成工程>>
まず、透光性基板20を準備する。透光性基板20は、露光光に対して透明であれば、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、および低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などから選択されるガラス材料で構成されることができる。
次に、透光性基板20上に、スパッタリング法により、パターン形成用の薄膜30を形成する。
パターン形成用の薄膜30の成膜は、所定のスパッタターゲットを用いて、所定のスパッタガス雰囲気で行うことができる。所定のスパッタターゲットとは、例えば、パターン形成用の薄膜30を構成する材料の主成分となる遷移金属とケイ素を含む遷移金属シリサイドターゲット、または遷移金属とケイ素と窒素を含む遷移金属シリコンナイトライドターゲットである。所定のスパッタガス雰囲気とは、例えば、アルゴンガスを含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、または、上記不活性ガスと、窒素ガスと、場合により、酸素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガスおよび二酸化窒素ガスからなる群より選ばれるガスとを含む混合ガスからなるスパッタガス雰囲気である。パターン形成用の薄膜30の形成は、スパッタリングを行う際における成膜室内のガス圧力が、0.3Pa以上2.0Pa以下、好ましくは0.43Pa以上0.9Pa以下になる状態で行うことができる。パターン形成時におけるサイドエッチングを抑制できるとともに、高エッチングレートを達成することができる。遷移金属シリサイドターゲットの遷移金属とケイ素の原子比率は、耐光性向上の観点や透過率調整の観点等から、遷移金属:ケイ素=1:1から1:19までの範囲であることが好ましい。
パターン形成用の薄膜30の組成および厚さは、パターン形成用の薄膜30が上述の位相差および透過率となるように調整される。パターン形成用の薄膜30の組成は、スパッタターゲットを構成する元素の含有比率(例えば、遷移金属の含有量とケイ素の含有量との比)、スパッタガスの組成および流量などにより制御することができる。パターン形成用の薄膜30の厚さは、スパッタパワー、およびスパッタリング時間などにより制御することができる。また、パターン形成用の薄膜30は、インライン型スパッタリング装置を使用して形成することが好ましい。スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、基板の搬送速度によっても、パターン形成用の薄膜30の厚さを制御することができる。このように、パターン形成用の薄膜30においてX線吸収スペクトルが所望の関係((IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上の関係等)を満たすように制御を行う。
パターン形成用の薄膜30が、単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を適宜調整して1回だけ行う。パターン形成用の薄膜30が、組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を適宜調整して複数回行う。スパッタターゲットを構成する元素の含有比率が異なるターゲットを使用してパターン形成用の薄膜30を成膜してもよい。成膜プロセスを複数回行う場合、スパッタターゲットに印加するスパッタパワーを成膜プロセス毎に変更してもよい。
このようにして、本実施形態のマスクブランク10を得ることができる。
<<エッチングマスク膜形成工程>>
本実施形態のマスクブランク10は、さらに、エッチングマスク膜40を有することができる。以下のエッチングマスク膜形成工程をさらに行う。なお、エッチングマスク膜40は、クロムを含有する材料から構成されることが好ましい。
パターン形成用の薄膜形成工程の後、パターン形成用の薄膜30の表面の表面酸化の状態を調整する表面処理を必要に応じて行い、その後、スパッタリング法により、パターン形成用の薄膜30上にエッチングマスク膜40を形成する。エッチングマスク膜40は、インライン型スパッタリング装置を使用して形成することが好ましい。スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、透光性基板20の搬送速度によっても、エッチングマスク膜40の厚さを制御することができる。
エッチングマスク膜40の成膜は、クロムまたはクロム化合物(酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、窒化炭化クロム、および酸化窒化炭化クロム等)を含むスパッタターゲットを使用して、不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、または不活性ガスと、活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行うことができる。不活性ガスは、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。活性ガスは、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、炭化水素系ガスおよびフッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガスおよびスチレンガス等が挙げられる。スパッタリングを行う際における成膜室内のガス圧力を調整することにより、パターン形成用の薄膜30と同様にエッチングマスク膜40を柱状構造にすることができる。これにより、後述するパターン形成時におけるサイドエッチングを抑制できるとともに、高エッチングレートを達成することができる。
エッチングマスク膜40が、組成の均一な単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変えずに1回だけ行う。エッチングマスク膜40が、組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、成膜プロセス毎にスパッタガスの組成および流量を変えて複数回行う。エッチングマスク膜40が、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を成膜プロセスの経過時間とともに変化させながら1回だけ行う。
このようにして、エッチングマスク膜40を有する本実施形態のマスクブランク10を得ることができる。
なお、図1に示すマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30上にエッチングマスク膜40を備えているため、マスクブランク10を製造する際に、エッチングマスク膜形成工程を行う。また、パターン形成用の薄膜30上にエッチングマスク膜40を備え、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を備えるマスクブランク10を製造する際は、エッチングマスク膜形成工程後に、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を形成する。また、図2に示すマスクブランク10において、パターン形成用の薄膜30上にレジスト膜を備えるマスクブランク10を製造する際は、パターン形成用の薄膜形成工程後に、レジスト膜を形成する。
図1に示す実施形態のマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30上にエッチングマスク膜40が形成されている。また、図2に示す実施形態のマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30が形成されている。いずれにおいても、パターン形成用の薄膜30は、その表層において、X線吸収スペクトルが所望の関係((IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上の関係等)を満たすものとなっている。
図1および図2に示す実施形態のマスクブランク10は、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性を有する。
したがって、本実施形態のマスクブランク10を用いることにより、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性を有するとともに、高精細なパターン形成用の薄膜パターン30aを精度よく転写することができる転写用マスク100を製造することができる。
<転写用マスク100の製造方法>
次に、本実施形態の転写用マスク100の製造方法について説明する。この転写用マスク100は、マスクブランク10と同様の技術的特徴を有している。転写用マスク100における透光性基板20、パターン形成用の薄膜30、エッチングマスク膜40に関する事項については、マスクブランク10と同様である。
図3は、本実施形態の転写用マスク100の製造方法を示す模式図である。図4は、本実施形態の転写用マスク100の別の製造方法を示す模式図である。
<<図3に示す転写用マスク100の製造方法>
図3に示す転写用マスク100の製造方法は、図1に示すマスクブランク10を用いて転写用マスク100を製造する方法である。図3に示す転写用マスク100の製造方法は、図1に示すマスクブランクを準備する工程と、エッチングマスク膜40の上に転写パターンを有するレジスト膜を形成する工程と、このレジスト膜をマスクするウェットエッチングを行い、エッチングマスク膜40に転写パターンを形成する工程と、この転写パターンが形成されたエッチングマスク膜(第1のエッチングマスク膜パターン40a)をマスクとするウェットエッチングを行い、パターン形成用の薄膜30に転写パターンを形成する工程と、を有する。なお、本明細書における転写パターンとは、透光性基板20上に形成された少なくとも1つの光学膜をパターニングすることによって、得られるものである。上記の光学膜は、パターン形成用の薄膜30および/またはエッチングマスク膜40とすることができ、その他の膜(遮光性の膜、反射抑制のための膜、導電性の膜など)がさらに含まれてもよい。すなわち、転写パターンは、パターニングされたパターン形成用の薄膜および/またはエッチングマスク膜を含むことができ、パターニングされたその他の膜がさらに含まれてもよい。
図3に示す転写用マスク100の製造方法は、具体的には、図1に示すマスクブランク10のエッチングマスク膜40上にレジスト膜を形成する。次に、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成する(図3(a)参照、第1のレジスト膜パターン50の形成工程)。次に、該レジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、パターン形成用の薄膜30上にエッチングマスク膜パターン40aを形成する(図3(b)参照、第1のエッチングマスク膜パターン40aの形成工程)。次に、上記エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、パターン形成用の薄膜30をウェットエッチングして透光性基板20上にパターン形成用の薄膜パターン30aを形成する(図3(c)参照、パターン形成用の薄膜パターン30aの形成工程)。その後、第2のレジスト膜パターン60の形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン40bの形成工程とをさらに含むことができる(図3(d)および(e)参照)。
さらに具体的には、第1のレジスト膜パターン50の形成工程では、まず、図1に示す本実施形態のマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。レジスト膜は、例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、パターン形成用の薄膜30に形成するパターンである。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンおよびホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図3(a)に示されるように、エッチングマスク膜40上に第1のレジスト膜パターン50を形成する。
<<<第1のエッチングマスク膜パターン40aの形成工程>>>
第1のエッチングマスク膜パターン40aの形成工程では、まず、第1のレジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成する。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成することができる。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、図3(b)に示されるように、第1のレジスト膜パターン50を剥離する。場合によっては、第1のレジスト膜パターン50を剥離せずに、次のパターン形成用の薄膜パターン30aの形成工程を行ってもよい。
<<<パターン形成用の薄膜パターン30aの形成工程>>>
第1のパターン形成用の薄膜パターン30aの形成工程では、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにしてパターン形成用の薄膜30をウェットエッチングして、図3(c)に示されるように、パターン形成用の薄膜パターン30aを形成する。パターン形成用の薄膜パターン30aとして、ラインアンドスペースパターンおよびホールパターンが挙げられる。パターン形成用の薄膜30をエッチングするエッチング液は、パターン形成用の薄膜30を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素とを含むエッチング液やフッ化アンモニウムとリン酸と過酸化水素とを含むエッチング液などが挙げられる。
パターン形成用の薄膜パターン30aの断面形状を良好にするために、ウェットエッチングは、パターン形成用の薄膜パターン30aにおいて透光性基板20が露出するまでの時間(ジャストエッチング時間)よりも長い時間(オーバーエッチング時間)で行うことが好ましい。オーバーエッチング時間としては、透光性基板20への影響等を考慮すると、ジャストエッチング時間に、そのジャストエッチング時間の20%の時間を加えた時間内とすることが好ましく、ジャストエッチング時間の10%の時間を加えた時間内とすることがより好ましい。
<<<第2のレジスト膜パターン60の形成工程>>>
第2のレジスト膜パターン60の形成工程では、まず、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うレジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、パターン形成用の薄膜パターン30aが形成されている領域の外周領域を遮光する遮光帯パターン、およびパターン形成用の薄膜パターン30aの中央部を遮光する遮光帯パターンなどである。なお、レジスト膜に描画するパターンは、露光光に対するパターン形成用の薄膜30の透過率によっては、パターン形成用の薄膜パターン30aの中央部を遮光する遮光帯パターンがないパターンの場合もある。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図3(d)に示されるように、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に第2のレジスト膜パターン60を形成する。
<<<第2のエッチングマスク膜パターン40bの形成工程>>>
第2のエッチングマスク膜パターン40bの形成工程では、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングして、図3(e)に示されるように、第2のエッチングマスク膜パターン40bを形成する。第1のエッチングマスク膜パターン40aは、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成されることができる。第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングするエッチング液は、第1のエッチングマスク膜パターン40aを選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、第2のレジスト膜パターン60を剥離する。
このようにして、転写用マスク100を得ることができる。すなわち、本実施形態にかかる転写用マスク100が有する転写パターンは、パターン形成用の薄膜パターン30aおよび第2のエッチングマスク膜パターン40bを含むことができる。
なお、上記説明ではエッチングマスク膜40が、露光光の透過を遮る機能を有する場合について説明した。エッチングマスク膜40が単に、パターン形成用の薄膜30をエッチングする際のハードマスクの機能のみを有する場合においては、上記説明において、第2のレジスト膜パターン60の形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン40bの形成工程は行われない。この場合、パターン形成用の薄膜パターン30aの形成工程の後、第1のエッチングマスク膜パターン40aを剥離して、転写用マスク100を作製する。すなわち、転写用マスク100が有する転写パターンは、パターン形成用の薄膜パターン30aのみで構成されてもよい。
本実施形態の転写用マスク100の製造方法によれば、図1に示すマスクブランク10を用いるため、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性を有するとともに、高精細なパターン形成用の薄膜パターン30aを精度よく転写することができる転写用マスク100を製造することができる。このように製造された転写用マスク100は、ラインアンドスペースパターンおよび/またはコンタクトホールの微細化に対応することができる。
<<図4に示す転写用マスク100の製造方法>>
図4に示す転写用マスク100の製造方法は、図2に示すマスクブランク10を用いて転写用マスク100を製造する方法である。図4に示す転写用マスク100の製造方法は、図2に示すマスクブランク10を準備する工程と、パターン形成用の薄膜30の上にレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにしてパターン形成用の薄膜30をウェットエッチングして、透光性基板20上に転写パターンを形成する工程とを有する。
具体的には、図4に示す転写用マスク100の製造方法では、マスクブランク10の上にレジスト膜を形成する。次に、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成する(図4(a)、第1のレジスト膜パターン50の形成工程)。次に、該レジスト膜パターン50をマスクにしてパターン形成用の薄膜30をウェットエッチングして、透光性基板20上にパターン形成用の薄膜パターン30aを形成する(図4(b)および(c)、パターン形成用の薄膜パターン30aの形成工程)。
さらに具体的には、レジスト膜パターンの形成工程では、まず、図2に示す本実施形態のマスクブランク10のパターン形成用の薄膜30上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、上記で説明したのと同様である。なお、必要に応じてレジスト膜を形成する前に、パターン形成用の薄膜30とレジスト膜との密着性を良好にするため、パターン形成用の薄膜30に表面改質処理を行うことができる。上述と同様に、レジスト膜を形成した後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図4(a)に示されるように、パターン形成用の薄膜30上にレジスト膜パターン50を形成する。
<<<パターン形成用の薄膜パターン30aの形成工程>>>
パターン形成用の薄膜パターン30aの形成工程では、レジスト膜パターンをマスクにしてパターン形成用の薄膜30をエッチングして、図4(b)に示されるように、パターン形成用の薄膜パターン30aを形成する。パターン形成用の薄膜パターン30aおよびパターン形成用の薄膜30をエッチングするエッチング液およびオーバーエッチング時間は、上述の図3に示す実施形態での説明と同様である。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、レジスト膜パターン50を剥離する(図4(c))。
このようにして、転写用マスク100を得ることができる。なお、本実施形態にかかる転写用マスク100が有する転写パターンは、パターン形成用の薄膜パターン30aのみで構成されているが、他の膜パターンをさらに含むこともできる。他の膜としては、例えば、反射を抑制する膜、導電性の膜などが挙げられる。
この実施形態の転写用マスク100の製造方法によれば、図2に示すマスクブランク10を用いるため、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性を有するとともに、高精細なパターン形成用の薄膜パターン30aを精度よく転写することができる転写用マスク100を製造することができる。このように製造された転写用マスク100は、ラインアンドスペースパターンおよび/またはコンタクトホールの微細化に対応することができる。
<表示装置の製造方法>
本実施形態の表示装置の製造方法について説明する。本実施形態の表示装置の製造方法は、上述の本実施形態の転写用マスク100を露光装置のマスクステージに載置し、表示装置製造用転写用マスク100上に形成された転写パターンを、表示装置用の基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有する。
具体的には、本実施形態の表示装置の製造方法は、上述したマスクブランク10を用いて製造された転写用マスク100を露光装置のマスクステージに載置する工程(マスク載置工程)と、表示装置用の基板上のレジスト膜に転写パターンを転写する工程(露光工程)とを含む。以下、各工程を詳細に説明する。
<<載置工程>>
載置工程では、本実施形態の転写用マスク100を露光装置のマスクステージに載置する。ここで、転写用マスク100は、露光装置の投影光学系を介して表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
<<パターン転写工程>>
パターン転写工程では、転写用マスク100に露光光を照射して、表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜にパターン形成用の薄膜パターン30aを含む転写パターンを転写する。露光光は、313nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光、または313nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光、または313nm~436nmの波長域を有する光源から発した単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線のうち少なくとも1つを含む複合光、またはi線の単色光である。露光光として複合光を用いることにより、露光光強度を高くしてスループットを向上することができる。そのため、表示装置の製造コストを下げることができる。
本実施形態の表示装置の製造方法によれば、高解像度、微細なラインアンドスペースパターンおよび/またはコンタクトホールを有する、高精細の表示装置を製造することができる。
なお、以上の実施形態においては、パターン形成用の薄膜30を有するマスクブランク10およびパターン形成用の薄膜パターン30aを有する転写用マスク100を用いる場合を説明した。パターン形成用の薄膜30は、例えば、位相シフト効果を有する位相シフト膜、または遮光膜であることができる。したがって、本実施形態の転写用マスク100は、位相シフト膜パターンを有する位相シフトマスクおよび遮光膜パターンを有するバイナリマスクを含む。また、本実施形態のマスクブランク10は、位相シフトマスクおよびバイナリマスクの原料となる位相シフトマスクブランクおよびバイナリマスクブランクを含む。
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1のマスクブランク10を製造するため、まず、透光性基板20として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
その後、合成石英ガラス基板を、主表面を下側に向けてトレイ(図示せず)に搭載し、インライン型スパッタリング装置のチャンバー内に搬入した。
透光性基板20の主表面上にパターン形成用の薄膜30を形成するため、まず、第1チャンバー内にアルゴン(Ar)ガスと、窒素(N)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第1スパッタターゲットを用いて、反応性スパッタリングにより、透光性基板20の主表面上にチタンとケイ素と窒素を含有するチタンシリサイドの窒化物を堆積させた。このようにして、チタンシリサイドの窒化物を材料とする膜厚113nmのパターン形成用の薄膜30(Ti:Si:N:O=10.7:34.9:50.3:4.1 原子%比)を成膜した。ここで、パターン形成用の薄膜30の組成は、実施例1と同一の成膜条件で成膜した薄膜について、X線光電子分光法(XPS)による測定によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても膜組成の測定方法は同様である(実施例2、3、比較例1、2においても同様)。このパターン形成用の薄膜30におけるチタンおよびケイ素の合計含有量に対するチタンの含有量の比率は、0.235であり、0.05以上であった。
なお、このパターン形成用の薄膜30は、位相シフト効果を有する位相シフト膜である。
次に、パターン形成用の薄膜30付きの透光性基板20を第2チャンバー内に搬入し、第2チャンバー内にアルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスとの混合ガスを導入した。そして、クロムからなる第2スパッタターゲットを用いて、反応性スパッタリングにより、パターン形成用の薄膜30上にクロムと窒素を含有するクロム窒化物(CrN)を形成した。次に、第3チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスとメタン(CH)ガスの混合ガスを導入し、クロムからなる第3スパッタターゲットを用いて、反応性スパッタリングによりCrN上にクロムと炭素を含有するクロム炭化物(CrC)を形成した。最後に、第4チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスとメタン(CH)ガスの混合ガスと窒素(N)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガスを導入し、クロムからなる第4スパッタターゲットを用いて、反応性スパッタリングによりCrC上にクロムと炭素と酸素と窒素を含有するクロム炭化酸化窒化物(CrCON)を形成した。以上のように、パターン形成用の薄膜30上に、CrN層とCrC層とCrCON層の積層構造のエッチングマスク膜40を形成した。
このようにして、透光性基板20上に、パターン形成用の薄膜30とエッチングマスク膜40とが形成されたマスクブランク10を得た。
別の合成石英基板(約152mm×約152mm)の主表面上に実施例1のパターン形成用の薄膜を成膜し、上記の実施例1と同じ成膜条件で別のパターン形成用の薄膜を形成した。次に、その別の合成石英基板上のパターン形成用の薄膜を所定のサイズに切り出した試料に対して、X線吸収分光法(全電子収量法、蛍光収量法)によるX線吸収微細構造解析を行い、X線吸収スペクトルを取得した。具体的には、あいちシンクロトロン光センターBL6N1で行った(以降の実施例2、3、比較例1、2も同様。)。
図5は、本発明の実施例1~3および比較例1、2に係るマスクブランクのパターン形成用の薄膜に対して、蛍光収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトル(横軸:薄膜に入射させたX線エネルギー、縦軸:そのX線エネルギーに対する薄膜のX線吸収係数)を示す図である。図5に示されるように、実施例1の蛍光収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトルには、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいものとなっており、薄膜30の膜厚方向の少なくともいずれかの領域にはArが存在していることが確認された。
図6は、本発明の実施例1~3および比較例1、2に係るマスクブランクのパターン形成用の薄膜の表層に対して、全電子収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトル(横軸:薄膜の表層に入射させたX線エネルギー、縦軸:そのエネルギーのX線に対する薄膜の表層のX線吸収係数)を示す図である。
図6に示される値から求められるように、実施例1の薄膜30の表層のX線吸収スペクトルは、(IH-IL)/(EH-EL)が7.933×10-4であり、-6.0×10-4以上の関係を満たすものであった。ここで、ILは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数であり、IHは、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数である(以降の実施例2、3、比較例1、2も同様。)。
また、図6に示されるように、実施例1の薄膜30の表層のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数ILよりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数IHの方が大きいものであった。
<透過率および位相差の測定>
実施例1のマスクブランク10のパターン形成用の薄膜30の表面について、透過率(波長:405nm)、位相差(波長:405nm)を測定した。パターン形成用の薄膜30の透過率、位相差の測定には、上述の別の合成石英ガラス基板の主表面上に別のパターン形成用の薄膜が成膜された薄膜付き基板を用いた(以降の実施例2、3、比較例1、2においても同様)。その結果、実施例1における別のパターン形成用の薄膜(パターン形成用の薄膜30)の透過率は35.2%であり、位相差は140度であった。
<転写用マスク100およびその製造方法>
上述のようにして製造された実施例1のマスクブランク10を用いて転写用マスク100を製造した。まず、このマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジスト膜を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、フォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜40上に、ホール径が1.5μmのホールパターンのレジスト膜パターンを形成した。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液によりエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成した。
その後、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合液を純水で希釈したチタンシリサイドエッチング液によりパターン形成用の薄膜30をウェットエッチングして、パターン形成用の薄膜パターン30aを形成した。
その後、レジスト膜パターンを剥離した。
その後、レジスト塗布装置を用いて、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うように、フォトレジスト膜を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、フォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に、遮光帯を形成するための第2のレジスト膜パターン60を形成した。
その後、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により、転写パターン形成領域に形成された第1のエッチングマスク膜パターン40aをウェットエッチングした。
その後、第2のレジスト膜パターン60を剥離した。
このようにして、透光性基板20上に、転写パターン形成領域にホール径が1.5μmのパターン形成用の薄膜パターン30aと、パターン形成用の薄膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光帯が形成された実施例1の転写用マスク100を得た。
<転写用マスク100の断面形状>
得られた転写用マスク100の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。
実施例1の転写用マスク100のパターン形成用の薄膜パターン30aは、垂直に近い断面形状を有していた。したがって、実施例1の転写用マスク100に形成されたパターン形成用の薄膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。
以上のことから、実施例1の転写用マスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用の基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを含む転写パターンを高精度に転写することができるといえる。
<耐光性>
透光性基板20上に、実施例1のマスクブランク10で用いたパターン形成用の薄膜30を形成した試料を用意した。この実施例1の試料のパターン形成用の薄膜30に対して、波長405nmの紫外線を含むメタルハライド光源の光を合計照射量10kJ/cmになるように照射した。所定の紫外線の照射の前後で透過率を測定し、透過率の変化[(紫外線照射後の透過率)-(紫外線照射前の透過率)]を算出することにより、パターン形成用の薄膜30の耐光性を評価した。透過率は、分光光度計を用いて測定した。
図7は、本発明の実施例1~3および比較例1、2に係るマスクブランクのパターン形成用の薄膜における、(IH-IL)/(EH-EL)と透過率の変化との関係を示す図である。図7に示されるように、実施例1においては、紫外線照射前後の透過率の変化は、0.34%と良好であった。以上から、実施例1のパターン形成用の薄膜は、実用上十分に耐光性の高い膜であることがわかった。
以上により、実施例1のパターン形成用の薄膜は、所望の光学特性(透過率、位相差)を満たしつつ、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性の要求を満たす、これまでにはない優れたものであることが明らかとなった。
(実施例2)
実施例2のマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30を下記のようにした以外は、実施例1のマスクブランク10と同様の手順で製造された。
実施例2のパターン形成用の薄膜30の形成方法は以下の通りである。
透光性基板20の主表面上にパターン形成用の薄膜30を形成するため、まず、第1チャンバー内にアルゴン(Ar)ガスと、窒素(N)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第1スパッタターゲットを用いて、反応性スパッタリングにより、透光性基板20の主表面上にチタンとケイ素と窒素を含有するチタンシリサイドの窒化物を堆積させた。このようにして、チタンシリサイドの窒化物を材料とする膜厚126nmのパターン形成用の薄膜30(Ti:Si:N:O=10.2:36.2:52.7:0.9 原子%比)を成膜した。このパターン形成用の薄膜30におけるチタンおよびケイ素の合計含有量に対するチタンの含有量の比率は、0.220であり、0.05以上であった。
その後、実施例1と同様に、エッチングマスク膜40を成膜した。
そして、別の合成石英基板の主表面上に、上記の実施例2と同じ成膜条件で別のパターン形成用の薄膜を形成した。次に、この別の合成石英基板上のパターン形成用の薄膜を所定のサイズに切り出した試料に対して、実施例1と同様に、X線吸収分光法(全電子収量法、蛍光収量法)によるX線吸収微細構造解析を行い、X線吸収スペクトルを取得した。
図5に示されるように、実施例2の蛍光収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトルには、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいものとなっており、薄膜30の膜厚方向の少なくともいずれかの領域にはArが存在していることが確認された。
また、図6に示される値から求められるように、実施例2の薄膜30の表層のX線吸収スペクトルは、(IH-IL)/(EH-EL)が1.500×10-4であり、-6.0×10-4以上の関係を満たすものであった。
また、図6に示されるように、実施例2の薄膜30の表層のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数ILよりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数IHの方が大きいものであった。
<透過率および位相差の測定>
実施例2のマスクブランク10のパターン形成用の薄膜30の表面について、透過率(波長:405nm)、位相差(波長:405nm)を測定した。その結果、実施例2におけるパターン形成用の薄膜30の透過率は30.9%であり、位相差は151度であった。
<転写用マスク100およびその製造方法>
上述のようにして製造された実施例2のマスクブランク10を用いて、実施例1と同様の手順で転写用マスク100を製造して、透光性基板20上に、転写パターン形成領域にホール径が1.5μmのパターン形成用の薄膜パターン30aと、パターン形成用の薄膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光帯が形成された実施例2の転写用マスク100を得た。
<転写用マスク100の断面形状>
得られた転写用マスク100の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。
実施例2の転写用マスク100のパターン形成用の薄膜パターン30aは、垂直に近い断面形状を有していた。したがって、実施例2の転写用マスク100に形成されたパターン形成用の薄膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。
以上のことから、実施例2の転写用マスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用の基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを含む転写パターンを高精度に転写することができるといえる。
<耐光性>
透光性基板20上に、実施例2のマスクブランク10で用いたパターン形成用の薄膜30を形成した試料を用意した。この実施例2の試料のパターン形成用の薄膜30に対して、波長405nmの紫外線を含むメタルハライド光源の光を合計照射量10kJ/cmになるように照射した。所定の紫外線の照射の前後で透過率を測定し、透過率の変化[(紫外線照射後の透過率)-(紫外線照射前の透過率)]を算出することにより、パターン形成用の薄膜30の耐光性を評価した。透過率は、分光光度計を用いて測定した。
図7に示されるように、実施例2においては、紫外線照射前後の透過率の変化は、0.37%と良好であった。以上から、実施例2のパターン形成用の薄膜は、実用上十分に耐光性の高い膜であることがわかった。
以上により、実施例2のパターン形成用の薄膜は、所望の光学特性(透過率、位相差)を満たしつつ、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性の要求を満たす、これまでにはない優れたものであることが明らかとなった。
(実施例3)
実施例3のマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30を下記のようにした以外は、実施例1のマスクブランク10と同様の手順で製造された。
実施例3のパターン形成用の薄膜30の形成方法は以下の通りである。
透光性基板20の主表面上にパターン形成用の薄膜30を形成するため、まず、第1チャンバー内にアルゴン(Ar)ガスと、窒素(N)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第1スパッタターゲットを用いて、反応性スパッタリングにより、透光性基板20の主表面上にチタンとケイ素と窒素を含有するチタンシリサイドの窒化物を堆積させた。このようにして、チタンシリサイドの窒化物を材料とする膜厚109nmのパターン形成用の薄膜30(Ti:Si:N:O=11.4:35.4:52.4:0.8 原子%比)を成膜した。このパターン形成用の薄膜30におけるチタンおよびケイ素の合計含有量に対するチタンの含有量の比率は、0.244であり、0.05以上であった。
その後、実施例1と同様に、エッチングマスク膜40を成膜した。
そして、別の合成石英基板の主表面上に、上記の実施例3と同じ成膜条件で別のパターン形成用の薄膜を形成した。次に、この別の合成石英基板上のパターン形成用の薄膜を所定のサイズに切り出した試料に対して、実施例1と同様に、X線吸収分光法(全電子収量法、蛍光収量法)によるX線吸収微細構造解析を行い、X線吸収スペクトルを取得した。
図5に示されるように、実施例3の蛍光収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトルには、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいものとなっており、薄膜30の膜厚方向の少なくともいずれかの領域にはArが存在していることが確認された。
また、図6に示される値から求められるように、実施例3の薄膜30の表層のX線吸収スペクトルは、(IH-IL)/(EH-EL)が-1.467×10-4であり、-6.0×10-4以上の関係を満たすものであった。
<透過率および位相差の測定>
実施例3のマスクブランク10のパターン形成用の薄膜30の表面について、透過率(波長:405nm)、位相差(波長:405nm)を測定した。その結果、実施例3におけるパターン形成用の薄膜30の透過率は30.9%であり、位相差は143度であった。
<転写用マスク100およびその製造方法>
上述のようにして製造された実施例3のマスクブランク10を用いて、実施例1と同様の手順で転写用マスク100を製造して、透光性基板20上に、転写パターン形成領域にホール径が1.5μmのパターン形成用の薄膜パターン30aと、パターン形成用の薄膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光帯が形成された実施例3の転写用マスク100を得た。
<転写用マスク100の断面形状>
得られた転写用マスク100の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。
実施例3の転写用マスク100のパターン形成用の薄膜パターン30aは、垂直に近い断面形状を有していた。したがって、実施例3の転写用マスク100に形成されたパターン形成用の薄膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。
以上のことから、実施例3の転写用マスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用の基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを含む転写パターンを高精度に転写することができるといえる。
<耐光性>
透光性基板20上に、実施例3のマスクブランク10で用いたパターン形成用の薄膜30を形成した試料を用意した。この実施例3の試料のパターン形成用の薄膜30に対して、波長405nmの紫外線を含むメタルハライド光源の光を合計照射量10kJ/cmになるように照射した。所定の紫外線の照射の前後で透過率を測定し、透過率の変化[(紫外線照射後の透過率)-(紫外線照射前の透過率)]を算出することにより、パターン形成用の薄膜30の耐光性を評価した。透過率は、分光光度計を用いて測定した。
図7に示されるように、実施例3においては、紫外線照射前後の透過率の変化は、0.74%と良好であった。以上から、実施例3のパターン形成用の薄膜は、実用上十分に耐光性の高い膜であることがわかった。
以上により、実施例3のパターン形成用の薄膜は、所望の光学特性(透過率、位相差)を満たしつつ、紫外線領域の波長を含む露光光に対する高い耐光性の要求を満たす、これまでにはない優れたものであることが明らかとなった。
(比較例1)
比較例1のマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30を下記のようにした以外は、実施例1のマスクブランク10と同様の手順で製造された。
比較例1のパターン形成用の薄膜30の形成方法は以下の通りである。
透光性基板20の主表面上にパターン形成用の薄膜30を形成するため、まず、第1チャンバー内にアルゴン(Ar)ガスと、窒素(N)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第1スパッタターゲットを用いて、反応性スパッタリングにより、透光性基板20の主表面上にチタンとケイ素と窒素を含有するチタンシリサイドの窒化物を堆積させた。このようにして、チタンシリサイドの窒化物を材料とする膜厚118nmのパターン形成用の薄膜30(Ti:Si:N:O=11.1:34.0:50.7:4.2 原子%比)を成膜した。
その後、実施例1と同様に、エッチングマスク膜40を成膜した。
そして、別の合成石英基板の主表面上に、上記の比較例1と同じ成膜条件で別のパターン形成用の薄膜を形成した。次に、この別の合成石英基板上のパターン形成用の薄膜を所定のサイズに切り出した試料に対して、実施例1と同様に、X線吸収分光法(全電子収量法、蛍光収量法)によるX線吸収微細構造解析を行い、X線吸収スペクトルを取得した。
図5に示されるように、比較例1の蛍光収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトルには、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいものとなっており、薄膜30の膜厚方向の少なくともいずれかの領域にはArが存在していることが確認された。
また、図6に示される値から求められるように、比較例1の薄膜30の表層のX線吸収スペクトルは、(IH-IL)/(EH-EL)が-1.233×10-3であり、-6.0×10-4以上の関係を満たすものではなかった。
<透過率および位相差の測定>
比較例1のマスクブランク10のパターン形成用の薄膜30の表面について、透過率(波長:405nm)、位相差(波長:405nm)を測定した。その結果、比較例1におけるパターン形成用の薄膜30の透過率は31.7%であり、位相差は154度であった。
<転写用マスク100およびその製造方法>
上述のようにして製造された比較例1のマスクブランク10を用いて、実施例1と同様の手順で転写用マスク100を製造して、透光性基板20上に、転写パターン形成領域にホール径が1.5μmのパターン形成用の薄膜パターン30aと、パターン形成用の薄膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光帯が形成された比較例1の転写用マスク100を得た。
<転写用マスク100の断面形状>
得られた転写用マスク100の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。
比較例1の転写用マスク100のパターン形成用の薄膜パターン30aは、垂直に近い断面形状を有していた。したがって、比較例1の転写用マスク100に形成されたパターン形成用の薄膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。
以上のことから、比較例1の転写用マスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用の基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを含む転写パターンを高精度に転写することができるといえる。
<耐光性>
透光性基板20上に、比較例1のマスクブランク10で用いたパターン形成用の薄膜30を形成した試料を用意した。この比較例1の試料のパターン形成用の薄膜30に対して、波長405nmの紫外線を含むメタルハライド光源の光を合計照射量10kJ/cmになるように照射した。所定の紫外線の照射の前後で透過率を測定し、透過率の変化[(紫外線照射後の透過率)-(紫外線照射前の透過率)]を算出することにより、パターン形成用の薄膜30の耐光性を評価した。透過率は、分光光度計を用いて測定した。
図7に示されるように、比較例1においては、紫外線照射前後の透過率の変化は、2.32%となり、許容範囲外であった。以上から、比較例1のパターン形成用の薄膜は、実用上十分な耐光性を有していないことがわかった。
(比較例2)
比較例2のマスクブランク10は、パターン形成用の薄膜30を下記のようにした以外は、実施例1のマスクブランク10と同様の手順で製造された。
比較例2のパターン形成用の薄膜30の形成方法は以下の通りである。
透光性基板20の主表面上にパターン形成用の薄膜30を形成するため、まず、第1チャンバー内にアルゴン(Ar)ガスと、窒素(N)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第1スパッタターゲットを用いて、反応性スパッタリングにより、透光性基板20の主表面上にチタンとケイ素と窒素を含有するチタンシリサイドの窒化物を堆積させた。このようにして、チタンシリサイドの窒化物を材料とする膜厚117nmのパターン形成用の薄膜30(Ti:Si:N:O=11.7:35.0:52.0:1.3 原子%比)を成膜した。
その後、実施例1と同様に、エッチングマスク膜40を成膜した。
そして、別の合成石英基板の主表面上に、上記の比較例2と同じ成膜条件で別のパターン形成用の薄膜を形成した。次に、この別の合成石英基板上のパターン形成用の薄膜を所定のサイズに切り出した試料に対して、実施例1と同様に、X線吸収分光法(全電子収量法、蛍光収量法)によるX線吸収微細構造解析を行い、X線吸収スペクトルを取得した。
図5に示されるように、比較例2の蛍光収量法によって取得されたArに由来するX線吸収スペクトルには、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいものとなっており、薄膜30の膜厚方向の少なくともいずれかの領域にはArが存在していることが確認された。
また、図6に示される値から求められるように、比較例2の薄膜30の表層のX線吸収スペクトルは、(IH-IL)/(EH-EL)が-6.133×10-4であり、-6.0×10-4以上の関係を満たすものではなかった。
<透過率および位相差の測定>
比較例2のマスクブランク10のパターン形成用の薄膜30の表面について、透過率(波長:405nm)、位相差(波長:405nm)を測定した。その結果、比較例2におけるパターン形成用の薄膜30の透過率は33.5%であり、位相差は144度であった。
<転写用マスク100およびその製造方法>
上述のようにして製造された比較例2のマスクブランク10を用いて、実施例1と同様の手順で転写用マスク100を製造して、透光性基板20上に、転写パターン形成領域にホール径が1.5μmのパターン形成用の薄膜パターン30aと、パターン形成用の薄膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光帯が形成された比較例2の転写用マスク100を得た。
<転写用マスク100の断面形状>
得られた転写用マスク100の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。
比較例2の転写用マスク100のパターン形成用の薄膜パターン30aは、垂直に近い断面形状を有していた。したがって、比較例2の転写用マスク100に形成されたパターン形成用の薄膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。
以上のことから、比較例2の転写用マスク100を露光装置のマスクステージにセットし、表示装置用の基板上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを含む転写パターンを高精度に転写することができるといえる。
<耐光性>
透光性基板20上に、比較例2のマスクブランク10で用いたパターン形成用の薄膜30を形成した試料を用意した。この比較例1の試料のパターン形成用の薄膜30に対して、波長405nmの紫外線を含むメタルハライド光源の光を合計照射量10kJ/cmになるように照射した。所定の紫外線の照射の前後で透過率を測定し、透過率の変化[(紫外線照射後の透過率)-(紫外線照射前の透過率)]を算出することにより、パターン形成用の薄膜30の耐光性を評価した。透過率は、分光光度計を用いて測定した。
図7に示されるように、比較例2においては、紫外線照射前後の透過率の変化は、2.06%となり、許容範囲外であった。以上から、比較例2のパターン形成用の薄膜は、実用上十分な耐光性を有していないことがわかった。
上述の実施例では、表示装置製造用の転写用マスク100、および表示装置製造用の転写用マスク100を製造するためのマスクブランク10の例を説明したが、これに限られない。本発明のマスクブランク10および/または転写用マスク100は、半導体装置製造用、MEMS製造用、およびプリント基板製造用等にも適用できる。また、パターン形成用の薄膜30として遮光膜を有するバイナリマスクブランク、および遮光膜パターンを有するバイナリマスクにおいても、本発明を適用することが可能である。
また、上述の実施例では、透光性基板20のサイズが、1214サイズ(1220mm×1400mm×13mm)の例を説明したが、これに限られない。表示装置製造用のマスクブランク10の場合、大型(Large Size)の透光性基板20が使用され、該透光性基板20のサイズは、主表面の一辺の長さが、300mm以上である。表示装置製造用のマスクブランク10に使用する透光性基板20のサイズは、例えば、330mm×450mm以上2280mm×3130mm以下である。
また、半導体装置製造用、MEMS製造用、プリント基板製造用のマスクブランク10の場合、小型(Small Size)の透光性基板20が使用され、該透光性基板20のサイズは、一辺の長さが9インチ以下である。上記用途のマスクブランク10に使用する透光性基板20のサイズは、例えば、63.1mm×63.1mm以上228.6mm×228.6mm以下である。通常、半導体装置製造用およびMEMS製造用の転写用マスク100のための透光性基板20としては、6025サイズ(152mm×152mm)または5009サイズ(126.6mm×126.6mm)が使用される。また、通常、プリント基板製造用の転写用マスク100のための透光性基板20としては、7012サイズ(177.4mm×177.4mm)または9012サイズ(228.6mm×228.6mm)が使用される。
10 マスクブランク
20 透光性基板
30 パターン形成用の薄膜
30a 薄膜パターン
40 エッチングマスク膜
40a 第1のエッチングマスク膜パターン
40b 第2のエッチングマスク膜パターン
50 第1のレジスト膜パターン
60 第2のレジスト膜パターン
100 転写用マスク

Claims (14)

  1. 透光性基板上に、パターン形成用の薄膜を備えるマスクブランクであって、
    前記薄膜は、遷移金属とケイ素を含有し、
    全電子収量法によって取得される前記薄膜の表層のX線吸収スペクトルは、
    入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数をIL、
    入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数をIHとしたとき、
    (IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上である
    ことを特徴とするマスクブランク。
  2. 蛍光収量法によって取得される前記薄膜のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいことを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記薄膜は、前記遷移金属として少なくともチタンを含有することを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  4. 前記薄膜は、さらに窒素を含有することを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  5. 前記薄膜における遷移金属およびケイ素の合計含有量に対する遷移金属の含有量の比率は、0.05以上であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  6. 前記薄膜上に、前記薄膜に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜を備えていることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  7. 前記エッチングマスク膜は、クロムを含有していることを特徴とする請求項6記載のマスクブランク。
  8. 透光性基板上に、転写パターンを有する薄膜を備える転写用マスクであって、
    前記薄膜は、遷移金属とケイ素を含有し、
    全電子収量法によって取得される前記薄膜の表層のX線吸収スペクトルは、
    入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数をIL、
    入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数をIHとしたとき、
    (IH-IL)/(EH-EL)が-6.0×10-4以上である
    ことを特徴とする転写用マスク。
  9. 蛍光収量法によって取得される前記薄膜のX線吸収スペクトルは、入射X線エネルギーELが3180eVにおけるX線吸収係数よりも、入射X線エネルギーEHが3210eVにおけるX線吸収係数の方が大きいことを特徴とする請求項8記載の転写用マスク。
  10. 前記薄膜は、前記遷移金属として少なくともチタンを含有することを特徴とする請求項8記載の転写用マスク。
  11. 前記薄膜は、さらに窒素を含有することを特徴とする請求項8記載の転写用マスク。
  12. 前記薄膜における遷移金属およびケイ素の合計含有量に対する遷移金属の含有量の比率は、0.05以上であることを特徴とする請求項8記載の転写用マスク。
  13. 請求項6または7に記載のマスクブランクを準備する工程と、
    前記エッチングマスク膜上に転写パターンを有するレジスト膜を形成する工程と、
    前記レジスト膜をマスクとするウェットエッチングを行い、前記エッチングマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
    前記転写パターンが形成されたるエッチングマスク膜をマスクとするウェットエッチングを行い、前記薄膜に転写パターンを形成する工程と、
    を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
  14. 請求項8から12のいずれかに記載の転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
    前記転写用マスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
    を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
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