JP2024087617A - エポキシ樹脂、その樹脂組成物、及びその硬化物、並びにエポキシ樹脂の製造方法 - Google Patents

エポキシ樹脂、その樹脂組成物、及びその硬化物、並びにエポキシ樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた低誘電特性を発現するエポキシ樹脂組成物、それを与えるエポキシ樹脂、及びその製造方法。【解決手段】式(1)で表されるエポキシ樹脂成分(A)と式(5)で表されるエポキシ樹脂成分(B)を含み、GPC測定で、前記成分(B)が10~80面積%の範囲であるエポキシ樹脂。TIFF2024087617000053.tif36147TIFF2024087617000054.tif24149式中、Xは置換フェニレン基など、Zはグリシジル基など、nは繰り返し数を示す。Gはグリシジル基、R6は炭化水素基など、s1は1又は2、s2は1~5の整数、s1+s2は2~6の整数を示す。【選択図】図1

Description

本発明は、低誘電特性に優れる硬化物を与えるエポキシ樹脂、そのエポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物、及びそのエポキシ樹脂組成物から得られる硬化物、プリプレグ、積層板、又はプリント配線基板、並びにエポキシ樹脂の製造方法に関する。
エポキシ樹脂は接着性、可撓性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、硬化反応性に優れることから、塗料、土木接着、注型、電気電子材料、フィルム材料等多岐にわたって使用されている。特に、電気電子材料の一つであるプリント配線基板用途ではエポキシ樹脂に難燃性を付与することによって広く使用されている。
近年、情報機器の小型化、高性能化が急速に進んでおり、それに伴い、半導体や電子部品の分野で用いられる材料に対し、これまでよりも高い性能が要求されている。特に、電気・電子部品の材料となるエポキシ樹脂組成物には、基板の薄型化と高機能化に伴う低誘電特性が求められている。
一方、エポキシ樹脂には低誘電特性だけでなく、基板上の回路の封止性を担保するために低溶融粘度性が求められる。これまで積層板用途の低誘電化として、例えば、脂肪族骨格を導入したジシクロペンタジエンフェノール樹脂等が提案されている(特許文献1、2)。しかし、誘電正接を改善するには効果が乏しく、低溶融粘度性に関しても満足いくものではなかった。また、芳香族変性を行ったジシクロペンタジエンフェノール樹脂を用いることにより、誘電特性の改善が提案されている(特許文献3、4)。しかし、低誘電特性と低溶融粘度性を両立するものではなかった。
特開2001-240654号公報 特開平5-339341号公報 特開2016-69524号公報 国際公開第2022/124252号
従って、本発明が解決しようとする課題は、低誘電特性及び低溶融粘度性を両立し、優れた誘電特性を発現する硬化物が得られるエポキシ樹脂、それを用いたエポキシ樹脂組成物、並びにその製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために本発明者が種々検討した結果、ジシクロペンタジエン型多価ヒドロキシ樹脂を特定の比率のジシクロペンタジエンと反応させ、更に芳香族ビニル化合物を反応させた多価ヒドロキシ樹脂及び特定の単環フェノール化合物を配合した混合物をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂は、低溶融粘度であり、そのエポキシ樹脂を必須とするエポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は、低誘電特性が優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分(A)と下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂成分(B)を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定において、前記エポキシ樹脂成分(B)が10~80面積%の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂である。
Figure 2024087617000002
ここで、Xは独立に下記式(2)又は式(3)で表される基を含む2価の基であり、少なくとも1つは式(2)である。Zは独立にグリシジル基又は下記式(4)で表される基を示す。但し、式(1)及び式(2)のZのうち、少なくとも1つはグリシジル基である。nは繰り返し数を示し、その平均値は0.1~10の数である。
Figure 2024087617000003
ここで、Rは独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子、下記式(2a)又は下記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(2c)で表される基又は下記式(2d)で表される基を示し、少なくとも2つのうち、1つは式(2a)又は式(2b)で表されるジシクロペンテニル基を含み、もう1つは式(2c)又は式(2d)で表される基を含む。iは0~2の整数である。m1は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
Figure 2024087617000004
Figure 2024087617000005
ここで、Rは独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子又は式(2c)で表される基を示す。Aは上記式(2e)から2つのR23を除いた残基であって、R23は水素原子、上記式(2a)又は上記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(2c)で表される基である。Zは独立にグリシジル基又は下記式(4)で表される基を示す。Meはメチル基を示す。pは繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。iは0~2の整数である。m2は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
Figure 2024087617000006
ここで、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基を示し、jは1~4の整数である。
Figure 2024087617000007
ここで、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基を示し、qは1~5の整数である。
Figure 2024087617000008
ここで、Gはグリシジル基を示し、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基又は上記式(2a)又は上記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は上記式(2c)で表される基を示す。s1は1又は2であり、s2は1~5の整数であり、s1+s2は2~6の整数である。
また本発明は、下記一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂と下記一般式(7)で表される単環フェノール化合物の混合物をエポキシ化することで得られるエポキシ樹脂であり、得られたエポキシ樹脂のGPCにおいて、前記単環フェノール化合物のエポキシ化物及び前記多価ヒドロキシ樹脂のm3=0体のエポキシ化物の総量が10~80面積%の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂である。
Figure 2024087617000009
ここで、Rは独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、R21は独立に水素原子、下記式(6a)又は下記式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(6c)で表される基又は下記式(6d)で表される基を示し、少なくとも2つのうち、1つは式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基であり、もう1つは式(6c)又は式(6d)で表される基である。iは0~2の整数である。m3は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
Figure 2024087617000010
Figure 2024087617000011
ここで、Rは独立に水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子又は式(6c)で表される基を示す。Aは上記式(6)から2つのR21を除いた残基であって、残基中のR21は水素原子、上記式(6a)又は上記式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(6c)で表される基である。Meはメチル基を示す。p1は繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。
Figure 2024087617000012
ここで、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基を示し、q1は1又は2であり、q2は1~5の整数であり、q1+q2は2~6の整数である。
上記エポキシ樹脂の150℃での溶融粘度は0.001~0.50Pa・sであることが好ましい。
また本発明は、エポキシ樹脂と硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂を必須とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。そして硬化剤は、上記一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂が好ましい。
また本発明は、上記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物であり、上記エポキシ樹脂組成物を使用したプリプレグ、積層板、又はプリント配線基板である。
また本発明は、上記一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂100質量部に対し、上記一般式(7)で表される単環フェノール化合物30~300質量部を配合した混合物のフェノール性水酸基1モルに対して、5~20モルのエピハロヒドリンを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることを特徴とする上記エポキシ樹脂の製造方法である。
本発明のエポキシ樹脂は低溶融粘度であり、その製造方法で得られたエポキシ樹脂を使用した硬化物は優れた低誘電特性を発現するエポキシ樹脂組成物を与える。
実施例1で得たエポキシ樹脂のGPCチャートである。 実施例1で得たエポキシ樹脂のIRチャートである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分(A)と下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂成分(B)を必須成分として含む。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定において、エポキシ樹脂成分(B)は10~80面積%の範囲であり、好ましくは15~75面積%、より好ましくは30~70面積%、更に好ましくは40~60面積%である。
ここで、エポキシ樹脂成分(B)としては、原料として使用する一般式(7)で表される単環フェノール化合物のエポキシ化物だけでなく、一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂のエポキシ化物のうち、m3が0(ゼロ)のもの(m3=0体)も該当する。
Figure 2024087617000013
一般式(1)において、Xは独立に上記式(2)又は上記式(3)で表される基を含む2価の基であり、少なくとも1つは式(2)である。Zは独立にグリシジル基又は上記式(4)で表される基を示す。但し、式(1)及び式(2)のZのうち、少なくとも1つはグリシジル基である。nは繰り返し数を示し、その平均値は0.1~10の数であり、0.1~5が好ましい。
一般式(5)において、Gはグリシジル基を示し、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基又は上記式(2a)又は上記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は上記式(2c)で表される基を示す。s1はグリシジルオキシ基の数であって、1又は2であり、s2は置換基Rの数であって、1~5の整数であり、1~3の整数が好ましく、s1+s2は2~6の整数であり、2~4の整数が好ましい。
Figure 2024087617000014
式(2)において、
は炭素数1~8の炭化水素基を示し、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数7~8のアラルキル基、又はアリル基が好ましい。炭素数1~8のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもかまわず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。炭素数6~8のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。炭素数7~8のアラルキル基としては、ベンジル基、α-メチルベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの置換基の中では、入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、フェニル基、メチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。Rの置換位置は、オルソ位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、オルソ位が好ましい。
は水素原子、上記式(2a)又は上記式(2b)で表される基、上記式(2c)で表される基又は上記式(2d)で表される基を示し、少なくとも2つのうち、1つは式(2a)又は式(2b)で表される基であり、もう1つは式(2c)又は式(2d)で表される基である。Rは、置換基であるRとは異なり、必ずしも置換基だけを示すものではなく、水素原子をも示す。一般式(2a)又は(2b)で表される基はジシクロペンタジエン由来の基であり、一般式(2c)又は式(2d)で表される基はモノビニル化合物又はジビニル化合物由来の基である。
iは置換基Rの数であって、0~2の整数であり、好ましくは1又は2、より好ましくは2である。
Zは式(1)におけるZと同義である。
m1は繰り返し数を示し、その平均値(数平均)は0.1~5の数であり、1.0~3.0が好ましく、1.1~3.0がより好ましく、1.2~2.5が更に好ましい。
式(3)において、Rは炭素数1~10の炭化水素基を示す。炭素数1~10の炭化水素基としては、Rと同様のものが例示される。Rとしては、入手の容易性及び硬化物の耐熱性の観点から、メチル基、エチル基、t-ブチル基が好ましく、メチル基、t-ブチル基が特に好ましい。jは置換基Rの数であって、1~4の整数であり、1~3の整数が好ましい。
Figure 2024087617000015
Figure 2024087617000016
式(2c)及び式(2d)において、
は水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示す。炭素数1~8の炭化水素基としては、Rと同様のものが例示される。Rも、Rと同様に、置換基であるRとは異なり、必ずしも置換基だけを示すものではなく、水素原子をも示す。
原料として、モノビニル化合物を使用する場合、Rとしては、入手の容易性及び硬化物の耐熱性の観点から、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子、エチル基が特に好ましい。原料として、ジビニル化合物を使用する場合、Rとしてビニル基が含まれていてもよい。また、Rの置換位置は、オルソ位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、メタ位とパラ位が好ましい。Meはメチル基を示す。
式(2d)において、
Aは式(2e)から2つのR23を除いた残基であって、R23は水素原子、上記式(2a)又は上記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は上記式(2c)で表される基である。
は独立に水素原子又は式(2c)で表される基を示す。Meはメチル基である。
pは繰り返し数であって、0以上の数を示し、その平均値は0.01~3の数であり、0.1~2.0が好ましく、0.2~1.0がより好ましく、0.3~0.8が更に好ましい。
式(2e)において、
、Z、及びiは式(2)のR、Z、及びiとそれぞれ同義である。R23は独立に水素原子、式(2a)又は式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(2c)で表される基である。m2は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
本発明のエポキシ樹脂は、好ましくは、下記一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂と下記一般式(7)で表される単環フェノール化合物との混合物をエポキシ化することで得られる。
Figure 2024087617000017
Figure 2024087617000018
Figure 2024087617000019
Figure 2024087617000020
一般式(6)において、
、iは、式(2)のR、iとそれぞれ同義である。R21は独立に水素原子、式(6a)又は式(6b)で表される基を示し、少なくとも1つは式(6a)又は式(6b)である。m3は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
一般式(7)において、
は式(3)のRと同様である。q1は水酸基の数であって、1又は2であり、q2は置換基Rの数であって、1~5の整数であり、1~3の整数が好ましく、q1+q2は2~6の整数であり、2~4の整数が好ましい。
上記Zが式(4)になる場合は、一般式(7)の単環フェノール化合物のq1が1であるモノフェノール化合物を原料として使用する場合であり、モノフェノール化合物を使用しない場合、すなわちジフェノール化合物(q1=2)のみを使用する場合は、Zの全てがグリシジル基となる。
Figure 2024087617000021
式(4)において、Rは式(3)のRと同様である。qは置換基Rの数であって、1~5の整数であり、1~3の整数が好ましい。
一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂において、置換基R21として、式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基と共に、式(6c)又は式(6d)で表される芳香族アラルキル基も必須である。
Figure 2024087617000022
式(6c)は式(2c)と同義である。
式(6d)において、
Me、R、Rは、式(2d)のMe、R、Rとそれぞれ同義である。Aは式(6)から2つのR21を除いた残基であって、残基中のR21は水素原子、式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(6c)で表される基である。p1は繰り返し数であって、0以上の数を示し、0.1~2.0が好ましく、0.2~1.0がより好ましく、0.3~0.8が更に好ましい。その平均値は0.01~3の数である。
一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂の製造方法としては、例えば、フェノール類に、ジシクロペンタジエン及び芳香族ビニル化合物を、ルイス酸の存在下、所定の比率で反応させるとよい。
原料のフェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、トリルフェノール、ベンジルフェノール、α-メチルベンジルフェノール、アリルフェノール、ジメチルフェノール、ジエチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、ジ(n-ブチル)フェノール、ジ(t-ブチル)フェノール、ジヘキシルフェノール、ジシクロヘキシルフェノール、ジフェニルフェノール、ジトリルフェノール、ジベンジルフェノール、ビス(α-メチルベンジル)フェノール、メチルエチルフェノール、メチルプロピルフェノール、メチルイソプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、メチル-t-ブチルフェノール、メチルアリルフェノール、トリルフェニルフェノール等が挙げられる。入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、フェノール、クレゾール、フェニルフェノール、ジメチルフェノール、ジフェニルフェノールが好ましく、クレゾール、ジメチルフェノールが特に好ましい。
この反応に用いる触媒はルイス酸であり、具体的には三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・エーテル錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛、塩化鉄等であるが、中でも取り扱いの容易さから、三フッ化ホウ素・エーテル錯体が好ましい。触媒の使用量は、三フッ化ホウ素・エーテル錯体の場合、ジシクロペンタジエン100質量部に対して、0.001~20質量部であり、好ましくは0.5~10質量部である。
この反応において、フェノール類とジシクロペンタジエンを主骨格として連結させる第一反応と、その後フェノール類に置換基としてジシクロペンタジエンを付加する第二反応を、連続又は分割して行うことが好ましい。
第一反応において、ジシクロペンタジエンの使用量は、フェノール類1モルに対し、0.08~0.80モル、好ましくは0.09~0.60モル、より好ましくは0.10~0.50モルである。
第二反応において、フェノール性水酸基1モル対し、ジシクロペンタジエンを0.08~0.80モル、好ましくは0.09~0.60モル、より好ましくは0.10~0.50モルである。
一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂において、R21で表される置換基として式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基が導入されたことを確認する方法としては、質量分析法とFT-IR測定を用いることができる。
質量分析方法を用いる場合、エレクトロスプレー質量分析法(ESI-MS)やフィールドデソープション法(FD-MS)等を用いることができる。GPC等で核体数が異なる成分を分離したサンプルを質量分析法にかけることにより、置換基として式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基が導入されたことを確認できる。
FT-IR測定法を用いる場合、サンプルをダイアモンドATR上にマウントし、FT-IRで測定すると、フェノール核におけるC-O伸縮振動に由来するピークが1210cm-1付近に現れる。式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基が導入されている場合のみ、これらのオレフィン部位のC-H伸縮振動に由来するピークが3040cm-1付近に現れる。因みに、フェノール類の連結基としてのジシクロペンテニレン基はオレフィンではないため、この吸収ピークは現れない。
目的のピークの始まりと終わりを直線的につないだものをベースラインとし、ピークの頂点からベースラインまでの長さをピーク高さとしたとき、3040cm-1付近のピーク(A3040)と1210cm-1付近のピーク(A1210)の比率(A3040/A1210)によって、式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基の導入量が定量できる。その比率は大きいほど物性値が良くなることが確認できており、目的の物性を満たすための好ましい比率(A3040/A1210)は0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.10以上である。上限としては、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.60以下である。この比率が高ければ、ジシクロペンタジエン置換基が多く導入されていることになる。この比率によりジシクロペンタジエン基の導入量を定量することができる。
この反応は、置換基含有フェノール類と触媒を反応器に仕込み、ジシクロペンタジエンを1~10時間かけて滴下していく方式がよい。
反応温度は、50~200℃が好ましく、100~180℃がより好ましく、120~160℃が更に好ましい。反応時間は1~10時間が好ましく、3~10時間がより好ましく、4~8時間が更に好ましい。
反応終了後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリを加えて触媒を失活させる。その後、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の溶媒を加えて溶解し、水洗した後、減圧下で溶媒を回収することにより、目的とする芳香族ヒドロキシ化合物を得ることができる。なお、ジシクロペンタジエンを可及的に全量反応させ、置換基含有フェノール類の一部を未反応、好ましくは10%以下を未反応として、それを減圧回収することが好ましい。
反応に際し、必要に応じて、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類や、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングルコールジメチルエーテル等のエーテル類等の溶媒を使用してもよい。
一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂は、下記一般式(9)で表される多価ヒドロキシ樹脂(a)対して、下記一般式(6x)及び/又は一般式(6y)で表される芳香族ビニル化合物(b)と下記一般式(6z)で表されるジシクロペンタジエンを反応させることによって得ることができる。一般式(6)おいて、置換基R21として、式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基は式(6z)で表されるジシクロペンタジエン由来の基であり、式(6c)又は式(6d)で表されるアラルキル基は式(6x)又は式(6y)で表される芳香族ビニル化合物由来の基である。
Figure 2024087617000023
ここで、Rは、式(6c)や式(6d)におけるRと同義である。Rの置換位置は、オルソ位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、メタ位とパラ位が好ましい。式(2y)において、ビニル基の置換位置は、オルソ位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、メタ位とパラ位が好ましく、それらの混合物であってもよい。
芳香族ビニル化合物(b)は、式(6x)で表される芳香族モノビニル化合物、式(6y)で表される芳香族ジビニル化合物のいずれであってもよく、単独又は混合物として使用できる。芳香族ジビニル化合物の配合量が多いほど、多価ヒドロキシ樹脂(6)の分子量は増加する。そのため、目的の分子量になるように、原料の多価ヒドロキシ樹脂の分子量を考慮しながらその配合量を調整すればよい。これらが多価ヒドロキシ樹脂(6)の置換基R21となり、誘電特性の低減効果をより発現する。
芳香族モノビニル化合物としては、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、α-メチルスチレン等のビニル芳香族化合物や、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルビニルベンゼン、m-エチルビニルベンゼン、p-エチルビニルベンゼン、エチルビニルビフェニル、エチルビニルナフタレン等の核アルキル置換ビニル芳香族化合物や、インデン、アセナフチレン、ベンゾチオフェン、クマロン等の環状ビニル芳香族化合物等が挙げられる。好ましくは、スチレン、エチルビニルベンゼンである。これらは単独又は2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等のジビニル芳香族化合物が挙げられる。好ましくは、ジビニルベンゼンである。これらは単独又は2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族モノビニル化合物及び芳香族ジビニル化合物はそれぞれ単独で用いてもよいが、混合して用いることが好ましい。この場合の配合量(質量比)としては、芳香族モノビニル化合物/芳香族ジビニル化合物が、15/85~50/50が好ましく、17/83~45/55がより好ましい。特に、芳香族ジビニル化合物が、好ましくは50~70質量%、より好ましくは50~60質量%である。この配合量にすることで、分子量の調整が容易になり、誘電特性をより向上させることができる。
多価ヒドロキシ樹脂の置換基R21として、式(6c)又は式(6d)の芳香族骨格構造を導入するための反応方法としては、多価ヒドロキシ樹脂に対して、芳香族ビニル化合物を所定の比率で反応させる方法が挙げられる。多価ヒドロキシ樹脂のフェノール性水酸基1モル対し、芳香族ビニル化合物を、好ましくは0.05~2.0モル、より好ましくは0.1~1.0モル、更に好ましくは0.15~0.95モルの配合比率で反応するとよい。
この反応に用いる触媒は、酸触媒であり、具体的には塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいは、活性白土、シリカ-アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。中でも、取り扱いの容易さから、p-トルエンスルホン酸が好ましい。触媒の使用量は、p-トルエンスルホン酸の場合、多価ヒドロキシ樹脂(a)100質量部に対して、0.001~20質量部であり、好ましくは0.5~10質量部である。
この反応は、多価ヒドロキシ樹脂と触媒と溶媒を反応器に仕込み、溶解した後、芳香族ビニル化合物を0.1~10時間、好ましくは0.5~8時間、より好ましくは0.5~5時間かけて滴下していく方式がよい。
反応温度は、好ましくは50~200℃、より好ましくは100~180℃、更に好ましくは120~160℃である。反応時間は好ましくは1~10時間、より好ましくは3~10時間、更に好ましくは4~8時間である。
反応終了後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリを加えて触媒を失活させる。その後、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の溶媒を加えて溶解し、水洗した後、減圧下で溶媒を回収することにより、目的とする多価ヒドロキシ樹脂を得ることができる。
反応に際し使用する溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類や、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独使用でも2種類以上を混合使用してもよい。
多価ヒドロキシ樹脂に、置換基R21として、式(6a)又は式(6b)のジシクロペンテニル基を導入するための反応と、式(6c)又は式(6d)の芳香族骨格構造を導入するための反応は、どちらを先に行っても構わない。反応の容易さから、多価ヒドロキシ樹脂にジシクロペンタジエンを反応させた後、芳香族ビニル化合物を反応させることが好ましい。
一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂のフェノール性水酸基当量(g/eq.)は160~400が好ましく、180~350がより好ましく、200~300が更に好ましい。
GPCによる含有量としては、m3=0体が10面積%以下、m3=1体が50~90面積%、m3=2体以上が0~50面積%の範囲にあることが好ましい。
一般式(7)で表される単環フェノール化合物のフェノール性水酸基当量(g/eq.)は60~300が好ましく、70~280がより好ましく、80~260が更に好ましい。
一般式(7)で表される単環フェノール化合物としては、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、トリルフェノール、ベンジルフェノール、α-メチルベンジルフェノール、アリルフェノール、ジメチルフェノール、t-ブチル-ジメチルフェノール、ジエチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、ジ(n-ブチル)フェノール、ジ(t-ブチル)フェノール、ジヘキシルフェノール、ジシクロヘキシルフェノール、ジフェニルフェノール、ジトリルフェノール、ジベンジルフェノール、ビス(α-メチルベンジル)フェノール、メチルエチルフェノール、メチルプロピルフェノール、メチルイソプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、メチル-t-ブチルフェノール、ジメチル-t-ブチルフェノール、メチルアリルフェノール、トリルフェニルフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルレゾルシノール、t-ブチルヒドロキノン等が挙げられる。入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、クレゾール、フェニルフェノール、ジメチルフェノール、ジフェニルフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルレゾルシノール、t-ブチルヒドロキノンが好ましく、t-ブチルカテコールが特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂の原料として、必須成分としての上記多価ヒドロキシ樹脂と上記単環フェノール化合物以外のフェノール化合物を、本発明のエポキシ樹脂の効果を阻害しない限り、併用することもできる。併用できるフェノール化合物は1価又は2価の化合物が好ましい。併用できる量は、フェノール化合物成分の全量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
本発明のエポキシ樹脂は、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分と一般式(5)で表されるエポキシ樹脂成分を含む。このエポキシ樹脂は、一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂と一般式(7)で表される単環フェノール化合物との混合物にエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンを反応させることによって得られる。このエポキシ化反応は従来公知の方法に従って行われる。
エポキシ化する方法としては、例えば、原料として多価ヒドロキシ樹脂及び単環フェノール化合物と共に、多価ヒドロキシ樹脂及び単環フェノール化合物の合計の水酸基に対して過剰モルのエピハロヒドリンを用意し、これらの反応原料混合物に、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を固形又は濃厚水溶液として加え、30~120℃の反応温度で0.5~10時間反応させることにより得ることができる。また、反応原料混合物に、テトラエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩を触媒として加え、50~150℃の温度で1~5時間反応して得られるポリハロヒドリンエーテルに水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を固形又は濃厚水溶液として加え、30~120℃の温度で1~10時間反応させることによっても得ることができる。
上記反応において、エピハロヒドリンの使用量は多価ヒドロキシ樹脂及び単環フェノール化合物の合計の水酸基に対して1~20倍モルであり、2~8倍モルが好ましい。またアルカリ金属水酸化物の使用量は、多価ヒドロキシ樹脂及び単環フェノール化合物の合計の水酸基に対して、好ましくは0.85~1.15倍モルである。
これらの反応で得られたエポキシ樹脂は、未反応のエピハロヒドリンとアルカリ金属のハロゲン化物を含有しているので、反応混合物より未反応のエピハロヒドリンを蒸発除去し、更にアルカリ金属のハロゲン化物を水による抽出、ろ別等の方法により除去して、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂において、エポキシ当量(g/eq.)は、160~400が好ましく、180~360がより好ましく、200~320が更に好ましい。
150℃での溶融粘度は、0.001~0.50Pa・sが好ましく、0.001~0.20Pa・sがより好ましく、0.001~0.05Pa・sが更に好ましい。
重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300~2000、より好ましくは350~1500であり、数平均分子量(Mn)は、好ましくは100~1000、より好ましくは150~800である。
全塩素含有量は、2000ppm以下が好ましく、1500ppm以下が更に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有してなり、エポキシ樹脂として本発明のエポキシ樹脂を必須成分とする。この態様としては、エポキシ樹脂の一部又は全部が本発明のエポキシ樹脂である。
好ましくは、エポキシ樹脂の30質量%以上が本発明のエポキシ樹脂である。より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上含有するとよい。これよりも少ない場合、誘電特性が悪化する恐れがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物において使用するエポキシ樹脂としては、本発明のエポキシ樹脂と共に、必要に応じて各種エポキシ樹脂を1種類又は2種類以上併用してもよい。併用できる量は、エポキシ樹脂の全量に対して、好ましくは50質量%未満、より好ましくは10質量%未満である。
併用できるエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂はすべて使用できる。例を挙げれば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスチオエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビナフトール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂等の3官能エポキシ樹脂、テトラキスフェニルエタン型エポキシ樹脂等の4官能エポキシ樹脂、本発明以外のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多価アルコールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコール型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の脂肪族環状エポキシ樹脂、ダイマー酸ポリグリシジルエステル等のグリシジルエステル類、フェニルジグリシジルアミン、トリルジグリシジルアミン、ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルアミン、アミノフェノール型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製)等の脂環式エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、臭素含有エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。入手容易さの観点から、下記一般式(8)で表されるエポキシ樹脂や、本発明以外のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を使用することが更に好ましい。
Figure 2024087617000024
一般式(8)において、
は独立に、炭素数1~8の炭化水素基を示し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基であり、お互いに同じであっても異なっていてもよい。
Vは2価の有機基を示し、例えば、メチレン基、エチレン基、イソプロピレデン基、イソブチレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基等のアルキレン基、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-S-S-、又は式(8a)で示されるアラルキレン基を示す。
式(8a)において、
は独立に、水素原子又は炭素数1以上の炭化水素基を示し、例えば、メチル基であり、お互いに同じであっても異なっていてもよい。
Arはベンゼン環又はナフタレン環であり、これらのベンゼン環又はナフタレン環は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~11のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~11のアリールオキシ基、又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を置換基として有してもよい。
硬化剤としては、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、シアネートエステル類、活性エステル類、ヒドラジッド類、酸性ポリエステル類、芳香族シアネート類等、エポキシ樹脂の硬化剤として通常使用されるものを使用できる。一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂を使用することもできる。これらを単独又は2種類以上を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、全エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の活性水素基のモル比は0.2~1.5モルが好ましく、0.3~1.4モルがより好ましく、0.5~1.3モルが更に好ましく、0.8~1.2モルが特に好ましい。この範囲を外れる場合は、硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。例えば、フェノール樹脂系硬化剤やアミン系硬化剤を用いた場合はエポキシ基に対して活性水素基をほぼ等モル配合する。酸無水物系硬化剤を用いた場合はエポキシ基1モルに対して酸無水物基を0.5~1.2モル、好ましくは、0.6~1.0モル配合する。本発明のフェノール樹脂を硬化剤として単独で使用する場合は、エポキシ樹脂1モルに対して0.9~1.1モルの範囲で使用することが望ましい。
本発明でいう活性水素基とはエポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、1モルのカルボキシル基やフェノール性水酸基は1モルと、アミノ基(NH)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、エポキシ当量が既知のフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いることのできるフェノール樹脂系硬化剤としては、具体例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のビスフェノール類や、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ-t-ブチルハイドロキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン等ジヒドロキシベンゼン類や、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等のヒドロキシナフタレン類や、LC-950PM60(Shin-AT&C社製)等のリン含有フェノール硬化剤や、ショウノールBRG-555(アイカ工業株式会社製)等のフェノールノボラック樹脂、DC-5(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等のクレゾールノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノール樹脂、芳香族変性フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、レヂトップTPM-100(群栄化学工業株式会社製)等のトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のフェノール類、ナフトール類及び/又はビスフェノール類とアルデヒド類との縮合物、SN-160、SN-395、SN-485(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等のフェノール類、フェノール類及び/又はナフトール類及び/又はビスフェノール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類及び/又はナフトール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類及び/又はナフトール類及び/又はビスフェノール類とジシクロペンタジエンとの反応物、フェノール類及び/又はナフトール類及び/又はビスフェノール類とジビニルベンゼンとの反応物、フェノール類及び/又はナフトール類及び/又はビスフェノール類とテルペン類との反応物、フェノール類及び/又はナフトール類及び/又はビスフェノール類とビフェニル系架橋剤との縮合物等のいわゆるノボラックフェノール樹脂といわれるフェノール化合物、ポリブタジエン変性フェノール樹脂、スピロ環を有するフェノール樹脂等が挙げられる。入手容易さの観点から、フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂、芳香族変性フェノールノボラック樹脂等が好ましい。
ノボラックフェノール樹脂は、フェノール類と架橋剤とから得ることができる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられ、ナフトール類としては、1-ナフトール、2-ナフトール等が挙げられ、その他、上記フェノール樹脂系硬化剤として挙げたビスフェノール類が挙げられる。架橋剤としてのアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルアルデヒド、ブロムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が例示される。ビフェニル系架橋剤としてビス(メチロール)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(エトキシメチル)ビフェニル、ビス(クロロメチル)ビフェニル等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、具体的には、無水マレイン酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルナジック酸、スチレンモノマーと無水マレイン酸との共重合物、インデン類と無水マレイン酸の共重合物等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ポリエーテルアミン、ビグアニド化合物、ジシアンジアミド、アニシジン等の芳香族アミン類、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
シアネートエステル化合物としては、1分子中に2つ以上のシアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物であれば特に限定されない。例えば、フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型等のノボラック型シアネートエステル系硬化剤、ナフトールアラルキル型シアネートエステル系硬化剤、ビフェニルアルキル型シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、テトラメチルビスフェノールF型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマー等が挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、ビス(3-メチル-4-シアネートフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-シアネートフェニル)メタン、ビス(4-シアネートフェニル)-1,1-エタン、4,4-ジシアネート-ジフェニル、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、トリス(4-シアネートフェニル)-1,1,1-エタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアネートフェニル)-4-シアネートフェニル-1,1,1-エタン等の3価のフェノールのシアン酸エステル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用できる。
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、本発明のエポキシ樹脂の原料であるジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル系硬化剤は1種又は2種以上を使用することができる。活性エステル系硬化剤として、具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、本発明のエポキシ樹脂の原料を含むジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。
その他の硬化剤として、具体的には、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、イミダゾール類とトリメリット酸、イソシアヌル酸、又はホウ素等との塩であるイミダゾール塩類、トリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類、ジアザビシクロ化合物、ジアザビシクロ化合物とフェノール類やフェノールノボラック樹脂類等との塩類、3フッ化ホウ素とアミン類やエーテル化合物等との錯化合物、芳香族ホスホニウム、又はヨードニウム塩等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を使用することができる。使用できる硬化促進剤の例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、4-ジメチルアミノピリジン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤を使用する場合、その使用量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分100質量部に対して0.02~5質量部が好ましい。硬化促進剤を使用することにより、硬化温度を下げたり、硬化時間を短縮したりすることができる。
エポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶媒又は反応性希釈剤を使用することができる。
有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、メタノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、パインオイル等のアルコール類や、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ベンジルアルコールアセテート等の酢酸エステル類や、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の安息香酸エステル類や、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類や、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類や、ネオデカン酸グリシジルエステル等の単官能グリシジルエステル類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの有機溶媒又は反応性希釈剤は、単独又は複数種類を混合したものを、樹脂組成物において、不揮発分として90質量%以下で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1-メトキシ-2-プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶媒であることが好ましく、樹脂組成物における使用量は不揮発分で40~80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を使用することが好ましく、その使用量は不揮発分で30~60質量%が好ましい。
エポキシ樹脂組成物は、特性を損ねない範囲で他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を配合してもよい。例えば、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリシロキサン化合物、水酸基含有ポリブタジエン等の反応性官能基含有アルキレン樹脂類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
エポキシ樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
リン系難燃剤は、無機リン系化合物、有機リン系化合物のいずれも使用できる。無機リン系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。有機リン系化合物としては、例えば、脂肪族リン酸エステル、リン酸エステル化合物、例えば、PX-200(大八化学工業株式会社製)等の縮合リン酸エステル類、ホスファゼン、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物や、ホスフィン酸の金属塩の他、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物や、それらをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体であるリン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤等が挙げられる。
難燃剤の配合量としては、リン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択される。例えば、エポキシ樹脂組成物中の有機成分(有機溶媒を除く)中のリン含有量は、好ましくは0.2~4質量%であり、より好ましくは0.4~3.5質量%であり、更に好ましくは0.6~3質量%である。リン含有量が少ないと難燃性の確保が難しくなる恐れがあり、多すぎると耐熱性に悪影響を与える恐れがある。またリン系難燃剤を使用する場合は、水酸化マグネシウム等の難燃助剤を併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物には必要に応じて充填材を用いることができる。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭素、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、微粒子ゴム、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマー、カーボンブラック、顔料等が挙げられる。一般的に充填材を用いる理由としては耐衝撃性の向上効果が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いた場合は、難燃助剤として作用し難燃性が向上する効果がある。これら充填材の配合量はエポキシ樹脂組成物全体に対し、1~150質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましい。配合量が多いと積層板用途として必要な接着性が低下する恐れがあり、更に硬化物が脆く、十分な機械物性を得られなくなる恐れがある。また配合量が少ないと、硬化物の耐衝撃性の向上等、充填剤の配合効果がでない恐れがある。
エポキシ樹脂組成物を板状基板等とする場合、その寸法安定性、曲げ強度等の点で繊維状のものが好ましい充填材として挙げられる。より好ましくはガラス繊維を網目状に編んだガラス繊維基板が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物は、更に必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、難燃剤、顔料等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量はエポキシ樹脂組成物に対し、0.01~20質量%の範囲が好ましい。
エポキシ樹脂組成物は繊維状基材に含浸させることによりプリント配線板等で用いられるプリプレグを作成することができる。繊維状基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂等、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布又は不織布を用いることができるがこれに限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、エポキシ樹脂組成物を有機溶媒で粘度調整して作成した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば、100~200℃で1~40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30~80質量%が好ましい。
プリプレグを硬化するには、一般にプリント配線板を製造するときに用いられる積層板の硬化方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、プリプレグを用いて積層板を形成する場合、プリプレグを一枚又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。そして、作成した積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化させ、積層板を得ることができる。その時、加熱温度を160~220℃、加圧圧力を5~50MPa、加熱加圧時間を40~240分間とすることが好ましく、目的とする硬化物を得ることができる。加熱温度が低いと硬化反応が十分に進行せず、高いとエポキシ樹脂組成物の分解が始まる恐れがある。また、加圧圧力が低いと得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があり、高いと硬化する前に樹脂が流れてしまい、希望する厚みの硬化物が得られない恐れがある。更に、加熱加圧時間が短いと十分に硬化反応が進行しない恐れがあり、長いとプリプレグ中のエポキシ樹脂組成物の熱分解が起こる恐れがあり、好ましくない。
エポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法で硬化することによってエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。硬化物を得るための方法としては、公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファ一成形、圧縮成形等や樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に用いられる。その際の硬化温度は通常、100~300℃であり、硬化時間は通常、1時間~5時間程度である。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、積層物、成型物、接着物、塗膜、フィルム等の形態をとることができる。
エポキシ樹脂組成物を作製し、加熱硬化により積層板及び硬化物を評価した結果、硬化物において優れた低誘電特性を発現するエポキシ硬化性樹脂組成物を提供することができた。誘電特性として、具体的には、比誘電率3.20以下、より好ましくは3.10以下、更に好ましくは3.05以下、誘電正接0.025以下、より好ましくは0.020以下、更に好ましくは0.018以下を発現できる。
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表し、「ppm」は質量ppmを表す。また、測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
(1)水酸基当量:
JIS K0070規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。なお、特に断りがない限り、多価ヒドロキシ樹脂の水酸基当量はフェノール性水酸基当量を意味する。
(2)エポキシ当量:
JIS K7236規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。具体的には自動電位差滴定装置(平沼産業株式会社製、COM-1600ST)を用いて、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液で滴定した。
(3)溶融粘度:
ICI粘度測定装置(東亜工業株式会社製、CV-1S)を使用し、150℃での粘度を測定した。
(4)比誘電率及び誘電正接:
IPC-TM-650 2.5.5.9に準じて測定した。具体的には、試料を105℃に設定したオーブンで2時間乾燥し、デシケーター中で放冷した後、AGILENT Technologies社製のマテリアルアナライザーを用い、容量法により周波数1GHzにおける比誘電率及び誘電正接を求めることにより評価した。
(5)GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
本体(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料はサンプル0.1gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターで濾過したものを50μL使用した。標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PStQuick Kit-H)より求めた検量線より換算して、Mw及びMnを求めた。なお、データ処理は、東ソー株式会社製GPC-8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
(6)IR:
フーリエ変換型赤外分光光度計(Perkin Elmer Precisely製、Spectrum One FT-IR Spectrometer 1760X)を用い、ダイアモンドATRを使用し、トルエンに溶解させたサンプルをATR上に塗布、乾燥させた後、波数650~4000cm-1の吸光度を測定した。
実施例、比較例で使用する略号は以下の通りである。
[エポキシ樹脂]
E1:実施例1で得たエポキシ樹脂
E2:実施例2で得たエポキシ樹脂
E3:実施例3で得たエポキシ樹脂
E4:実施例4で得たエポキシ樹脂
E5:実施例5で得たエポキシ樹脂
EH1:参考例1で得たエポキシ樹脂
EH2:参考例2で得たエポキシ樹脂
EH3:フェノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、HP-7200H、エポキシ当量280、軟化点83℃、150℃での粘度0.40Pa・s)
EH4:シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、ZX-1658GS、エポキシ当量136)
[硬化剤]
P2:合成例1で得た多価ヒドロキシ樹脂
P3:フェノールノボラック樹脂(アイカ工業株式会社製、ショウノールBRG-557、水酸基当量105、軟化点80℃)
[硬化促進剤]
C1:2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
合成例1
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、及び冷却管を備えたガラス製セパラブルフラスコからなる反応装置に、2,6-キシレノール(下記構造式)
Figure 2024087617000025
500部、47%BFエーテル錯体7.3部を仕込み、撹拌しながら100℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン(下記構造式)
Figure 2024087617000026
67.6部(2,6-キシレノールに対し0.12倍モル)を1時間で滴下した。更に115~125℃の温度で4時間反応し、水酸化カルシウム11部を加えた。更に10%のシュウ酸水溶液19部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1320部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水400部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の多価ヒドロキシ樹脂(P1)を得た。得られた多価ヒドロキシ樹脂(P1)の水酸基当量は195であり、軟化点は73℃であった。式(9)で表される多価ヒドロキシ樹脂(a)であって、Rがメチル基、iが2であり、Mwは470であり、Mnは440であり、m=0体含有量は2.8面積%、m=1体含有量は86.2面積%、m=2体以上の含有量は11.0面積%であった。
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、及び冷却管を備えたガラス製セパラブルフラスコからなる反応装置に、得られた多価ヒドロキシ樹脂(P1)100部、47%BFエーテル錯体1.0部を仕込み、撹拌しながら100℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン(下記構造式)
Figure 2024087617000027
15.0部を1時間で滴下した。更に115~125℃の温度で4時間反応し、水酸化カルシウム2.2部を加えた。更に10%のシュウ酸水溶液2.6部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK264部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水80部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、多価ヒドロキシ樹脂を得た。得られた多価ヒドロキシ樹脂の水酸基当量は234であり、軟化点は86℃であり、吸収比(A3040/A1210)は0.11であった。Mwは560であり、Mnは470であり 、m3=0体含有量は6.2面積%、m3=1体含有量は74.0面積%、m3=2体以上の含有量は19.8面積%であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=375、507、629、639、761が確認され、式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂であって、Rがメチル基、iが2であり、R21が水素原子又はジシクロペンテニル基であることが確認できた。
得られた多価ヒドロキシ樹脂100部、パラトルエンスルホン酸・1水和物1.0部、MIBK25部を仕込み、撹拌しながら120℃に加温した。同温度に保持しながら、ジビニルベンゼン(アルドリッチ社製、ジビニルベンゼン55%、エチルビニルベンゼン45%;下記構造式)
Figure 2024087617000028
20部を1時間で滴下した。更に120~130℃の温度で4時間反応した。MIBK280部を加えて生成物を溶解し、炭酸水素ナトリウム1.3部で中和し、80℃の温水90部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、180℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の多価ヒドロキシ樹脂(P2)を得た。得られた多価ヒドロキシ樹脂(P2)の構造式を以下に示す。水酸基当量は267であり、軟化点は77℃であり、Mwは669であり、Mnは499であった。
Figure 2024087617000029
ここで、R22は独立に、水素原子、式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、式(6c-1)又は式(6d-1)で表される基を示し、R42は独立に、水素原子又は式(6c-1)で表される基を示す。式(6d-1)において、A12は式(6-1)から二つのR22を除いた基である。R22とR42の総和の内、30モル%は式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニルであり、25モル%は式(6c-1)で表される基であり、14モル%は式(6d-1)で表される基であり、残りは水素原子である。m3は平均で1.2である。
実施例1
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、及び冷却管を備えた反応装置に、合成例1で得た多価ヒドロキシ樹脂(P2)を25部、4-t-ブチルカテコール(TBC:下記構造式)
Figure 2024087617000030
を23.3部、エピクロルヒドリン(下記構造式)
Figure 2024087617000031
を185部、ジエチレングリコールジメチルエーテルを55部加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液35.9部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK290部を加えて生成物を溶解した。その後、90部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色のエポキシ樹脂(E1)を得た。エポキシ当量は243、溶融粘度は0.006Pa・s、Mwは502、Mnは310であった。得られたエポキシ樹脂(E1)のGPCを図1に、IRを図2にそれぞれ示す。図1において、ピーク(a)が、一般式(5)で表されるエポキシ樹脂成分(B)である。
実施例2
多価ヒドロキシ樹脂(P2)を33.3部、TBCを20.7部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、赤褐色のエポキシ樹脂(E2)を得た。エポキシ当量は265、溶融粘度は0.011Pa・s、Mwは640、Mnは380であった。
実施例3
多価ヒドロキシ樹脂(P2)を50部、TBCを15.5部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、赤褐色のエポキシ樹脂(E3)を得た。エポキシ当量は288、溶融粘度は0.15Pa・s、Mwは727、Mnは423であった。
実施例4
多価ヒドロキシ樹脂(P2)を20部、TBCを24.9部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、赤褐色のエポキシ樹脂(E4)を得た。エポキシ当量は220、溶融粘度は0.002Pa・s、Mwは440、Mnは280であった。
実施例5
多価ヒドロキシ樹脂(P2)を33.3部、TBCに代えて6-t-ブチル-2,4-キシレノール(TBXL:下記構造式)
Figure 2024087617000032
を44.4部使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、赤褐色のエポキシ樹脂(E5)を得た。エポキシ当量は287、溶融粘度は0.001Pa・s、Mwは426、Mnは299であった。
参考例1
多価ヒドロキシ樹脂(P2)を100部、TBCを配合しない(0部)こと以外は実施例1と同様の操作を行い、赤褐色のエポキシ樹脂(EH1)を得た。エポキシ当量は335、溶融粘度は0.20Pa・s、Mwは810、Mnは498であった。
参考例2
多価ヒドロキシ樹脂(P2)を配合せず(0部)、TBCを31.1部に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、淡黄色のエポキシ樹脂(EH2)を得た。エポキシ当量は197、溶融粘度は0.001Pa・s、Mwは357、Mnは254であった。
エポキシ樹脂(E1~E5、EH1~EH2)の物性を表1に示す。なお、表中の「式(5)率」は、一般式(5)で表されるエポキシ樹脂成分(B)の含有率を面積%で表した値を示す。
Figure 2024087617000033
実施例6
エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂(E1)を100部、硬化剤として多価ヒドロキシ樹脂(P3)を43.2部、硬化促進剤としてC1を0.4部で配合し、MEK、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドで調整した混合溶媒に溶解してエポキシ樹脂組成物ワニスを得た。得られたエポキシ樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA 7628 XS13、0.18mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環オーブン中で9分間乾燥してプリプレグを得た。
得られたプリプレグをほぐし、篩で100メッシュパスの粉状のプリプレグパウダーとした。得られたプリプレグパウダーをフッ素樹脂製の型に入れて、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、50mm角×2mm厚の試験片を得た。試験片の比誘電率及び誘電正接の結果を表2に示す。
実施例7~11及び比較例1~3
表2の配合量(部)で配合し、実施例6と同様の操作を行い、試験片を得た。硬化促進剤の使用はワニスゲルタイムを300秒程度に調整できる量とした。実施例6と同様の試験を行い、その結果を表2に示す。
Figure 2024087617000034
本発明のエポキシ樹脂は、塗料、土木接着、注型、電気電子材料、フィルム材料等に使用でき、特に、低誘電特性が要求されるプリント配線基板用途に有用である。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分(A)と下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂成分(B)を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定において、前記エポキシ樹脂成分(B)の含有割合が10~80面積%の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂。
    Figure 2024087617000035
    ここで、Xは独立に、下記式(2)又は式(3)で表される基を含む2価の基であり、少なくとも1つは式(2)である。Zは独立にグリシジル基又は下記式(4)で表される基を示す。但し、式(1)及び式(2)のZのうち、少なくとも1つはグリシジル基である。nは繰り返し数を示し、その平均値は0.1~10の数である。
    Figure 2024087617000036
    ここで、Rは独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子、下記式(2a)又は下記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(2c)で表される基、又は下記式(2d)で表される基を示し、少なくとも2つのうち、1つは式(2a)又は式(2b)で表されるジシクロペンテニル基を含み、もう1つは式(2c)又は式(2d)で表される基を含む。Zは独立にグリシジル基又は下記式(4)で表される基を示す。iは0~2の整数である。m1は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
    Figure 2024087617000037
    Figure 2024087617000038
    ここで、Rは独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子又は式(2c)で表される基を示す。Aは上記式(2e)から2つのR23を除いた残基であって、R23は水素原子、上記式(2a)又は上記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(2c)で表される基である。Zは独立にグリシジル基又は下記式(4)で表される基を示す。Meはメチル基を示す。pは繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。iは0~2の整数である。m2は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
    Figure 2024087617000039
    ここで、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基を示し、jは1~4の整数である。
    Figure 2024087617000040
    ここで、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基を示し、qは1~5の整数である。
    Figure 2024087617000041
    ここで、Gはグリシジル基を示し、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基又は上記式(2a)又は上記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、又は上記式(2c)で表される基を示す。s1は1又は2であり、s2は1~5の整数であり、s1+s2は2~6の整数である。
  2. 下記一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂と下記一般式(7)で表される単環フェノール化合物の混合物をエポキシ化することで得られるエポキシ樹脂であり、得られたエポキシ樹脂のGPCにおいて、前記単環フェノール化合物のエポキシ化物及び前記多価ヒドロキシ樹脂のm3=0体のエポキシ化物の総量が10~80面積%の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂。
    Figure 2024087617000042
    ここで、Rは独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、R21は独立に水素原子、下記式(6a)又は下記式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(6c)で表される基又は下記式(6d)で表される基を示し、少なくとも2つのうち、1つは式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基を含み、もう1つは式(6c)又は式(6d)で表される基を含む。iは0~2の整数である。m3は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
    Figure 2024087617000043
    Figure 2024087617000044
    ここで、Rは独立に水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子又は式(6c)で表される基を示す。Aは上記式(6)から2つのR21を除いた残基であって、残基中のR21は水素原子、上記式(6a)又は上記式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(6c)で表される基である。Meはメチル基を示す。p1は繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。
    Figure 2024087617000045
    ここで、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基を示し、q1は1又は2であり、q2は1~5の整数であり、q1+q2は2~6の整数である。
  3. 150℃での溶融粘度が0.001~0.50Pa・sである請求項1に記載のエポキシ樹脂。
  4. エポキシ樹脂と硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂を必須とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  5. 硬化剤が下記一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂である請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2024087617000046
    ここで、Rは独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、R21は独立に水素原子、下記式(6a)又は下記式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(6c)で表される基、又は下記式(6d)で表される基を示し、少なくとも2つのうち、1つは式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基を含み、もう1つは式(6c)又は式(6d)で表される基を含む。iは0~2の整数である。m3は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
    Figure 2024087617000047
    Figure 2024087617000048
    ここで、Rは独立に水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子又は式(6c)で表される基を示す。Aは上記式(6)から2つのR21を除いた残基であって、残基中のR21は水素原子、上記式(6a)又は上記式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(6c)で表される基である。Meはメチル基を示す。p1は繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。
  6. 請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を用いたことを特徴とするプリプレグ。
  7. 請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を用いたことを特徴とする積層板。
  8. 請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を用いたことを特徴とするプリント配線基板。
  9. 請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
  10. 請求項1に記載のエポキシ樹脂を製造する方法であって、下記一般式(6)で表される多価ヒドロキシ樹脂100質量部に対し、下記一般式(7)で表される単環フェノール化合物30~300質量部を配合した混合物のフェノール性水酸基1モルに対して、5~20モルのエピハロヒドリンを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
    Figure 2024087617000049
    ここで、Rは独立に炭素数1~8の炭化水素基を示し、R21は独立に水素原子、下記式(6a)又は下記式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(6c)で表される基、又は下記式(6d)で表される基を示し、少なくとも2つのうち、1つは式(6a)又は式(6b)で表されるジシクロペンテニル基を含み、もう1つは式(6c)又は式(6d)で表される基を含む。iは0~2の整数である。m3は繰り返し数を示し、その平均値は0.1~5の数である。
    Figure 2024087617000050
    Figure 2024087617000051
    ここで、Rは独立に水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、Rは独立に水素原子又は式(6c)で表される基を示す。Aは上記式(6)から2つのR21を除いた残基であって、残基中のR21は水素原子、上記式(6a)又は上記式(6b)で表されるジシクロペンテニル基、又は式(6c)で表される基である。Meはメチル基を示す。p1は繰り返し数を示し、その平均値は0.01~3の数である。
    Figure 2024087617000052
    ここで、Rは独立に炭素数1~10の炭化水素基を示し、q1は1又は2であり、q2は1~5の整数であり、q1+q2は2~6の整数である。
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