JP2024083921A - 絶縁電線、電気・電子機器、絶縁電線の製造方法、及び電気・電子機器の製造方法。 - Google Patents

絶縁電線、電気・電子機器、絶縁電線の製造方法、及び電気・電子機器の製造方法。 Download PDF

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恵一 冨澤
奈摘子 原
紗世 菅
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Abstract

【課題】実質的に端部皮膜のみが除去されて導体が露出した端部を有する絶縁電線であって、当該端部同士を溶接し、次いで導体露出部の周囲に絶縁被覆層を設けたとき、導体露出部と絶縁被覆層との密着性を十分に高めることができる絶縁電線、及びこの絶縁電線の製造方法を提供する。【解決手段】導体10と、前記導体10の周囲を覆う絶縁皮膜Aとを有する絶縁電線1であって、前記絶縁電線1は、導体10が露出した端部11を有し、前記の導体10が露出した端部11以外の導体断面積(S1)に対する、前記の導体10が露出した端部11の導体断面積(S2)の比の値(S2/S1)が0.95以上であり、前記の導体10が露出した端部11の導体表面の算術平均高さSaが1.0~5.0μmである、絶縁電線1、この絶縁電線1の製造方法、この絶縁電線1を用いた電気・電子機器、及びこの電気・電子機器の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線、電気・電子機器、絶縁電線の製造方法、及び電気・電子機器の製造方法に関する。
電気・電子機器には、従来から絶縁電線が用いられる。例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド、耐熱ポリエステル、又はポリエステルイミド等を含むワニスを導体に塗布・焼付することにより、当該導体の周囲に単層又は複層のエナメル層を有する絶縁電線が知られている。また、導体周囲に熱可塑性樹脂を押出被覆することにより絶縁皮膜を形成した絶縁電線が知られている。また、導体周囲にエナメル層を形成し、このエナメル層の周囲に、さらに熱可塑性樹脂を押出被覆して、エナメル層と押出被覆層とからなる絶縁皮膜を形成した絶縁電線も知られている。
モーターや変圧器に代表される電気・電子機器では、例えば、絶縁電線をヘアピン状に加工してセグメントコイルとし、このセグメントコイルをステータコア(固定子コア)のスロットに押し込み、ステータコアから突出したセグメントコイル(絶縁電線)の末端同士を溶接して電気的に接続する。溶接により電気的に接続された溶接部の周囲には、粉体塗装、ワニス塗装等の絶縁塗装処理が施され、絶縁被覆層が形成される。この溶接を行うためには、セグメントコイルの端部を覆う絶縁皮膜(端部皮膜)を除去し、当該端部の導体を露出させる必要がある。この端部皮膜の除去は、プレス加工などによって機械的に切削除去する方法が知られている。しかし、この切削除去方法では、絶縁皮膜だけでなく導体表層も大きく削り取られてしまい、導体断面積が減少してしまう問題がある。また、金属導体の削り屑の処理を要したり、プレス加工に用いる金型に摩耗が生じたりして、製造効率面の問題も生じる。
端部皮膜の機械的な除去に代えて、レーザー光を用いて端部皮膜を燃焼して除去する技術が提案されている。例えば特許文献1には、絶縁電線を絶縁電機子に巻付けた回転電機を製造するに当たり、この絶縁電線の絶縁皮膜にレーザー光を吸収して発熱する遷移金属酸化物の粒子を含有させることにより、当該絶縁電線の末端部分の絶縁皮膜をレーザー光照射により容易に除去できることが記載されている。
特開2010-15907号公報
上記の通り、ステータコアから突出したセグメントコイルの端部は、露出した導体同士を溶接後、露出している導体部分(導体露出部)には絶縁塗装によって絶縁被覆層が形成される。この導体露出部と絶縁被覆層との密着性について本発明者らが検討を進めた結果、レーザー光を用いて端部皮膜を除去した場合には、導体を削りとることなく、実質的に端部皮膜のみを取り除くことができる一方で、導体露出部と絶縁被覆層との密着性の向上には制約があることがわかってきた。導体露出部と絶縁被覆層との密着性が十分でないと、電線同士との間、電線と周囲の部品との間などで通電し、モーターが破損するという問題が生じるおそれがある。
本発明は、実質的に端部皮膜のみが除去されて導体が露出した端部を有する絶縁電線であって、当該端部同士を溶接し、次いで導体露出部の周囲に絶縁被覆層を設けたとき、導体露出部と絶縁被覆層との密着性を十分に高めることができる絶縁電線、及びこの絶縁電線の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、この絶縁電線を用いた電気・電子機器、及びこの電気・電子機器の製造方法を提供することを課題とする。
なお、上記の「実質的に端部皮膜のみが除去され」とは、導体が露出した端部以外の部分における導体断面積(S1)に対する、当該端部の導体断面積(S2)の比の値(S2/S1)が0.95以上であることを意味する。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた。その結果、絶縁電線の端部において、レーザー光照射によって実質的に端部皮膜のみを除去し、これにより絶縁電線の端部に導体を露出させるに当たり、当該レーザー光照射によって端部皮膜の下の導体表面も不均一に、微細に削り取ることができること、また、これにより端部の導体表面を特定の算術平均高さへと制御できること、さらに、この端部の導体表面の算術平均高さの制御によって、導体が露出した端部同士を溶接後、導体露出部の周囲に絶縁被覆層を形成したときに、導体露出部と絶縁被覆層との密着性が効果的に高められることを見出した。本発明は、かかる知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
本発明者の上記課題は下記手段により解決される。
[1]
導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線であって、
前記絶縁電線は、導体が露出した端部を有し、
前記の導体が露出した端部以外の導体断面積(S1)に対する、前記の導体が露出した端部の導体断面積(S2)の比の値(S2/S1)が0.95以上であり、
前記の導体が露出した端部の導体表面の算術平均高さSaが1.0~5.0μmである、絶縁電線。
[2]
前記導体表面の表面形状のアスペクト比Strが、0.0~0.5である、[1]に記載の絶縁電線。
[3]
前記の導体が露出した端部が、前記絶縁電線の端部の皮膜をレーザー光照射により除去して形成されたものである、[1]又は[2]に記載の絶縁電線。
[4]
前記絶縁電線が長さ150~700mmのサイズにセグメント化された絶縁電線である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[5]
前記絶縁電線がセグメントコイルである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の絶縁電線。
[6]
[1]~[5]のいずれか1つに記載の絶縁電線を用いた電気・電子機器。
[7]
前記電気・電子機器がトランスである、[6]に記載の電気・電子機器。
[8]
導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線の端部にレーザー光を照射することにより、前記端部の絶縁皮膜を除去し、かつ、露出した導体の表面の算術平均高さSaを1.0~5.0μmとする端部加工工程を含む、絶縁電線の製造方法。
[9]
前記端部加工工程において、前記の露出した導体の、表面形状のアスペクト比Strを0.0~0.5とする、[8]に記載の絶縁電線の製造方法。
[10]
セグメント化された絶縁電線の端部にレーザー光を照射することにより、前記端部の絶縁皮膜を除去し、かつ、露出した導体の表面の算術平均高さSaを1.0~5.0μmとする端部加工工程と、
前記端部加工工程を経た、セグメント化された絶縁電線を、コイル状に加工してセグメントコイルとし、ステータコアのスロットに組み込む組込工程と、
前記組込工程の後、前記セグメントコイルの端部の導体同士を溶接して電気的に接続する溶接工程と、
前記溶接工程の後、露出している導体部分を絶縁塗装することにより前記の露出している導体部分の周囲に絶縁被覆層を設ける絶縁塗装工程と
を含む、電気・電子機器の製造方法。
[11]
前記端部加工工程において、前記の露出した導体の、表面形状のアスペクト比Strを0.0~0.5とする、[10]に記載の電気・電子機器の製造方法。
本発明及び本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば、「A~B」と記載されている場合、その数値範囲は、「A以上B以下」である。
本発明の絶縁電線は、実質的に端部皮膜のみが除去されて導体が露出した端部を有し、端部同士が溶接され、その後、導体露出部の周囲に絶縁被覆層が設けられたとき、露出していた導体部分と絶縁被覆層との密着性が十分に高められる。したがって、本発明の絶縁電線を用いた電気・電子機器は、使用環境中で長期間にわたり性能を維持することができる。また、本発明の絶縁電線の製造方法によれば、上記本発明の絶縁電線を得ることができる。また、本発明の電気・電子機器の製造方法によれば、上記本発明の電気・電子機器を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る絶縁電線の構成例を模式的に示す断面図である。 図1のa-a線の断面図である。 本発明の他の実施形態に係る絶縁電線の構成例を模式的に示す断面図である。 本発明の電気・電子機器に用いられるステータの好ましい形態を示す概略斜視図である。 本発明の電気・電子機器に用いられるステータの好ましい形態を示す概略斜視図である。 本発明の電気・電子機器の製造方法の一形態を模式的に示す説明図である。
[絶縁電線]
本発明の絶縁電線は、導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線であって、前記絶縁電線は、導体が露出した端部を有し、前記の導体が露出した端部以外の導体断面積(S1)に対する、前記の導体が露出した端部の導体断面積(S2)の比の値(S2/S1)が0.95以上であり、前記の導体が露出した端部の導体表面の算術平均高さSaが1.0~5.0μmである。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本発明は、本発明で規定すること以外は、以下に示す実施形態に限定されない。また、下記の図面を参照した説明は、下記の図面にかかる形態に限らず、本発明の構成ないし発明特定事項の説明として適用されるものである。
図1は本発明の一実施形態に係る絶縁電線1の構成例を模式的に示す断面図であり、図2は図1のa-a線の断面図である。絶縁電線1は、所定のサイズにセグメント化(短尺化)された絶縁電線である。絶縁電線1の長手方向の長さL1は、例えば150~700mmとすることができる。なお、図1に示されるX軸、Y軸及びZ軸は相互に直交する3軸であり、本明細書の全図において共通である。X軸は絶縁電線1の長手方向に平行な軸線であり、Y軸は絶縁電線1の短手方向に平行な軸線である。また、Z軸は絶縁電線1の厚み方向(Y軸に垂直な短手方向)に平行な軸線である。
絶縁電線1は、図1に示されるように、平角状の導体10と、絶縁皮膜Aと、端部11とを有する。絶縁皮膜Aは、導体10に接し、導体10の周囲を覆う絶縁皮膜である。絶縁皮膜Aは、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。以下、本実施形態の絶縁電線1について導体10から順に説明する。
導体10は、絶縁電線で通常用いられる導体を広く適用することができ、通常は金属導体である。金属導体は銅又はアルミニウムを含むことが好ましく、銅線、又はアルミニウム線などが好適に用いられる。導体10が銅線である場合、その材質は例えば低酸素銅、タフピッチ銅、又は無酸素銅である。また、導体10はアルミニウム線である場合、その材質は例えばA1070である。
平角形状の導体10は、角部からの部分放電を抑制する点において、図2に示されるように、4隅にR面取り(曲率半径r)を設けた形状であることが好ましい。曲率半径rは、0.6mm以下が好ましく、0.2~0.4mmがより好ましい。
導体10のサイズは特に限定されない。平角導体の場合、矩形の断面形状において、幅(長辺)は1~5mmが好ましく、1.4~4.0mmがより好ましく、厚み(短辺)は0.4~3.0mmが好ましく、0.5~2.5mmがより好ましい。導体10の厚み(D1)に対する幅(D2)のアスペクト比の値(D2/D1)は、2~5が好ましい。
絶縁皮膜Aは、絶縁性樹脂(絶縁性ポリマー)を含む樹脂ワニスを導体10上に塗布し、焼き付けて形成したエナメル層でもよく、熱可塑性樹脂を押出被覆してなる押出被覆層でもよく、これらを組み合わせてなる層でもよい。絶縁皮膜Aがエナメル層を含む場合、このエナメル層の形成には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができ、熱硬化性樹脂を硬化してなるエナメル層が好ましい。エナメル層の形成に用いる樹脂としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、及びポリエステルイミド(PEsI)などのイミド結合を有する熱硬化性樹脂、ポリウレタン(PU)、熱硬化性ポリエステル(PEst)、H種ポリエステル(HPE)、ポリイミドヒダントイン変性ポリエステル、ポリヒダントイン、ポリベンゾイミダゾール、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
絶縁皮膜Aが押出被覆層を含む場合、押出被覆層の形成材料である熱可塑性樹脂としては、絶縁電線の絶縁樹脂層として通常用いられる熱可塑性樹脂を広く用いることができる。例えば、ポリアミド(PA)(ナイロン)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(変性ポリフェニレンエーテルを含む)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及び超高分子量ポリエチレン等の汎用エンジニアリングプラスチックの他、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(Uポリマー)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(変性ポリエーテルエーテルケトン(変性PEEK)を含む)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、熱可塑性ポリイミド樹脂(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、及び液晶ポリエステル等のスーパーエンジニアリングプラスチック、さらに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)をベース樹脂とするポリマーアロイ、ABS/ポリカーボネート、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド樹脂(芳香族PA)、ポリフェニレンエーテル/ナイロン6,6、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、及びポリブチレンテレフタレート/ポリカーボネート等の前記エンジニアリングプラスチックを含むポリマーアロイが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。前記熱可塑性樹脂はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びナイロン6,6(66ナイロン、PA66)の少なくとも1種を含むことが好ましい。
絶縁皮膜Aの厚さは、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましい。また、絶縁皮膜Aの厚さは、好ましくは10μm以上であり、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。絶縁皮膜Aの厚さの好ましい範囲は、10~200μmであり、より好ましくは20~200μmであり、さらに好ましくは30~180μmである。
端部11は、絶縁皮膜Aから絶縁電線1の長手方向に突出した導体10であり、絶縁皮膜Aが除去されて導体10が露出することにより形成される。端部11の当該長手方向の寸法L2は、1~50mmであることが好ましく、1~20mmであることがより好ましく、1~15mmであることがさらに好ましい。
導体10のうち、絶縁皮膜Aに被覆された部分12の導体断面積(S1)に対する、導体10が露出した端部11の導体断面積(S2)の比の値(S2/S1)は0.95以上であり(規定1)、0.96~1.00が好ましく、0.97~1.00がより好ましく、0.98~1.00がさらに好ましい。S2/S1は0.99以下であることも好ましい。なお、上記の「導体断面積」は、絶縁電線1の長手方向に直交し、短手方向に平行な平面に沿う断面積である。即ち、導体10を絶縁電線1の長手方向に向けて見たときの導体10の断面積である。
端部11の表面(端部11のX軸周りの周面)は、絶縁皮膜Aが除去され、さらに所定の表面粗さに加工されている。当該表面の算術平均高さSaは、1.0~5.0であり(規定2)、1.2~4.5が好ましく、1.3~4.4がより好ましい。
算術平均高さSaはJIS B 0601(2001)に準拠して測定された値である。算術平均高さSaの測定方法は、後述の[実施例]の項で詳述する。
また、端部11の表面の表面形状のアスペクト比Strは、0.0~0.5が好ましく、0.1~0.5がより好ましく、0.2~0.4がさらに好ましい。表面形状のアスペクト比Strが0.0~0.5の範囲内であることで、端部11同士が溶接された後の溶接部にボイド(空隙)が形成されることをより抑制することができる。したがって、溶接部の電気的信頼性、及び機械的信頼性を、より長期にわたって維持することが可能となる。
表面形状のアスペクト比Strは、ISO25178の表面形状(面粗さ測定)に準拠して測定された値である。表面形状のアスペクト比Strは、端部11の表面のうち互いに重ならない5箇所(各箇所の面積1mm)の各々を、レーザー顕微鏡を用いて400倍の倍率で測定することにより得られた5つの値の平均値である。表面形状のアスペクト比Strの測定方法は、後述の[実施例]の項で詳述する。
絶縁電線1に端部11を形成する手段は、上記規定1及び2を満たすことができれば特に制限されず、典型的にはレーザー光照射により絶縁皮膜Aを除去する方法が採用される。レーザー光照射については後述する。
図3は、本発明の別の実施形態に係る絶縁電線2の構成例を模式的に示す断面図である。絶縁電線2は、断面円形の導体20と、導体20に接し、導体20の外周面を被覆する絶縁皮膜Aとを有する。
導体20の直径は、0.3~3.0mmが好ましく、0.4~2.7mmがより好ましい。
導体20は、断面形状が円形であることを除き、図1及び図2の形態で説明した導体10と同じであり、好ましい形態も同じである。絶縁電線2の絶縁皮膜Aは、断面形状が円形の導体20を被覆することを除き、図1及び図2の形態で説明した絶縁皮膜Aと同じであり、好ましい形態も同じである。
[絶縁電線の製造方法]
本発明の絶縁電線の製造方法は、導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線の端部にレーザー光を照射することにより、前記端部の絶縁皮膜を除去し、かつ、露出した導体の表面の算術平均高さSaを1.0~5.0μmとする端部加工工程を含むことが好ましい。
前記の端部加工工程では、絶縁電線の端部の絶縁皮膜をレーザー光照射により除去して導体を露出させ、さらに、このレーザー光照射によって、あるいは他の方法によって、露出した導体表面の算術平均高さSaを1.0~5.0μmに制御する。他の方法としては、サンドブラスト加工やプレス加工が挙げられるが、絶縁皮膜の除去に用いるレーザー光照射をそのまま、導体表面の算術平均高さSaの制御に用いることが、製造効率の観点で好ましい。
また、露出した導体表面の表面形状のアスペクト比Strを0.0~0.5に制御することが好ましい、表面形状のアスペクト比Strの制御方法も、レーザー光照射によって、あるいは上述した他の方法によって行うことができる。なかでもレーザー光照射をそのまま、表面形状のアスペクト比Strの制御に用いることが好ましい。例えば、レーザー光を一定方向に走査して照射することにより、露出した端部導体の表面形状に所望の異方性を付与することができ、結果、表面形状のアスペクト比Strを所望の範囲に制御することができる。これらの具体的な方法は、後述の[実施例]の項に記載されている。
絶縁皮膜の除去のためのレーザー光照射の方法それ自体は、絶縁電線の技術分野において広く知られている。また、レーザー光照射による導体表面の算術平均高さSaや表面形状のアスペクト比Strの制御は、例えばレーザー光照射の照射条件(例えばレーザーの周波数、波長及び出力等)を制御したり、照射角度や走査条件を制御したりして行うことができる。
前記の端部加工工程に付される絶縁電線は、例えば、長さを150~700mmとすることができる。つまり、セグメント化(短尺化)された絶縁電線であることが好ましい。セグメント化された絶縁電線を用いることにより、セグメントコイルの形成に好適な絶縁電線を得ることができる。
本発明の絶縁電線の製造方法は、導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線がセグメント化されたものでない場合には、端部加工工程の前に、絶縁電線を上記の通りセグメント化(短尺化)することが好ましい。これにより、セグメントコイルとして好適な長さの絶縁電線を得ることができる。
[絶縁電線の用途]
本発明の絶縁電線は、好ましくは、コイル加工してセグメントコイルとして、各種の電気・電子機器など、耐電圧性及び耐熱性を必要とする分野に利用可能である。即ち、本発明の絶縁電線は、セグメントコイル状であってもよい。このコイルを用いてなる電気・電子機器としては、特に限定されない。このような電気・電子機器の好ましい一態様として、トランスが挙げられる。また、例えば、図4に示されるステータ30を備えた回転電機(例えばハイブリット自動車又は電気自動車の駆動モーター)が挙げられる。この回転電機は、ステータ30を備えていること以外は、通常の回転電機と同様の構成とすることができる。
ステータ30は、本発明の絶縁電線の一態様であるセグメントコイル1が用いられること以外は通常のステータと同様の構成とすることができる。すなわち、ステータ30は、ステータコア31と、例えば図5に示されるようにセグメントコイル1がステータコア31のスロット32に組み込まれ、端部11が電気的に接続されてなるコイル33とを有している。ここで、セグメントコイル1は、スロット32に1本で組み込まれてもよいが、好ましくは図5に示されるように2本1組として組み込まれる。このステータ30は、上記のように曲げ加工したセグメントコイル1を、その2つの末端である端部11を互い違いに接続してなるコイル33が、ステータコア31のスロット32に収納されている。このとき、セグメントコイル1の端部11を接続してからスロット32に収納してもよく、また、セグメントコイル1をスロット32に収納した後に、セグメントコイル1の端部11を折り曲げ加工して接続してもよい。
[電気・電子機器の製造方法]
本発明の電気・電子機器の製造方法は、下記の各工程を含むことが好ましい。
セグメント化された絶縁電線の端部にレーザー光を照射することにより、前記端部の絶縁皮膜を除去し、かつ、露出した導体の表面の算術平均高さSaを1.0~5.0μmとする端部加工工程、
前記端部加工工程を経た、セグメント化された絶縁電線を、コイル状に加工してセグメントコイルとし、ステータコアのスロットに組み込む組込工程、
前記組込工程の後、前記セグメントコイルの端部の導体同士を溶接して電気的に接続する溶接工程、及び
前記溶接工程の後、露出している導体部分を絶縁塗装することにより前記の露出している導体部分の周囲に絶縁被覆層を設ける絶縁塗装工程。
前記のセグメント化された絶縁電線の長さは、上記で説明した通り、例えば、150~700mmとすることができる。
前記の端部加工工程は、本発明の絶縁電線の製造方法において説明した端部加工工程と同じである。
前記の組込工程と絶縁塗装工程それら自体は知られた工程であり、通常の方法を適宜に適用することができる。
電気・電子機器の製造方法の好ましい実施形態について、図面を参照してより詳しく説明する。
図6は、本発明の電気・電子機器の製造方法の一実施形態を、回転電機の製造を例として、模式的に示す説明図である。なお、本発明の電気・電子機器の製造方法は、本発明で規定すること以外は、以下の実施形態に限定されない。
図6には、巻き取られた長い絶縁電線を短尺化する工程(セグメント化工程)から示している。短尺化工程により得られた所定の長さの絶縁電線を、前記の端部加工工程に付し、次いで、前記の組込工程と、前記の溶接工程と、前記の絶縁塗装工程を経て、回転電機が製造される。以下、これらの各工程について説明する。
<短尺化工程>
短尺化工程では、ローラRに巻き付いた絶縁電線を所定の間隔で切断する。これにより、上述した所望の長さに短尺化された絶縁電線が得られる。
<端部加工工程>
端部加工工程では、短尺化された絶縁電線の端部の絶縁皮膜をレーザー光照射により燃焼(熱分解)させて除去し、当該端部において導体10を露出させる。同時に、このレーザー光照射により、露出した導体10の表面を上記規定1及び2を満たす状態(必要により端部11の表面形状のアスペクト比Strが0.0~0.5を満たす状態)へと加工する。こうして絶縁電線1が得られる。
レーザー光照射の走査軌跡は、例えば、長尺平行とすることができ、五目状であってもよく、長尺平行であることが好ましい。「長尺平行の走査軌跡」とは、絶縁電線1の長手方向に延伸する溝が、短手方向に所定のピッチ幅で端部11の表面に複数形成されることを意味する。また、「五目状の走査軌跡」とは、絶縁電線1の長手方向に延伸する溝が短手方向に所定のピッチ幅で端部11の表面に複数形成され、さらに、絶縁電線1の短手方向に延伸する溝が長手方向に所定のピッチ幅で複数形成されることを意味する。上記ピッチ幅は、20~30μmであることが好ましい。
レーザー光照射に使用されるレーザーとしては、例えば、ファイバーレーザー、COレーザー、及びYAGレーザー等が挙げられ、連続照射(CW)としてもよく、パルス照射としてもよい。レーザー光照射による絶縁皮膜の除去方法については、例えば、特開平6-38330号公報、特開2001-309521号公報、及び特開2005-285755公報に開示されている。
本発明のレーザー光照射の具体的な照射条件の例については、後述の[実施例]の項に記載する。
<組込工程>
組込工程では、端部の絶縁皮膜が除去された絶縁電線1をヘアピン状に曲げ加工してセグメントコイル1を作製する。次いで、セグメントコイル1をステータコア31のスロット32に挿入し、ステータコア31の表面から突出するセグメントコイル1をねじり加工する。
<溶接工程>
溶接工程では、一方のセグメントコイル1の端部11と他方のセグメントコイル1の端部11とを溶接して電気的に接続する。この溶接の方法としては、例えば、アーク溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接、及び抵抗溶接等が挙げられる。この溶接工程は、絶縁塗装される面を形成する導体部分について、端部加工工程で形成した表面の状態(算術平均高さSa及び表面形状のアスペクト比Str)を実質的に維持するように溶接する工程である。
<絶縁塗装工程>
上記溶接工程の後、露出している導体部分に、例えば絶縁粉体塗装を施し、当該露出している導体部分を絶縁性材料でコーティングして絶縁被覆層34を形成する。本実施形態では、セグメントコイル1が上記規定1及び2を満たすことにより、露出していた導体部分と絶縁被覆層34との密着性が十分に高められる。
上記各工程を経て、目的の電気・電子機器を得ることができる。
本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[絶縁電線の作製]
<実施例1>
実施例1では、図1及び図2に示される絶縁電線1(端部加工前、以下同様)を作製した。
導体10には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:平角状、断面積:3mm、アスペクト比:5)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成には、導体10上に形成される絶縁皮膜Aの形状と相似形のダイスを使用した。熱硬化性樹脂ワニス(ユニチカ社製、商品名:Uイミド、樹脂種:ポリイミド)を当該ダイスにより導体10へコーティングし、炉内温度400~650℃に設定した炉長8mの熱風循環式の炉内を、通過時間10~90秒となる速度で通過させ、これを16~35回繰り返すことで厚さ50μmの絶縁皮膜A(エナメル層)を形成した。
<実施例2>
実施例2では、図3に示される絶縁電線2を作製した。
導体20には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:円形状、断面積:3mm)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、押出機のスクリューとして30mmフルフライト、L/D=25、圧縮比3のものを用いた。熱可塑性樹脂(ビクトレックスジャパン社製、商品名:450G、樹脂種:PEEK)を用い、絶縁皮膜Aの断面の外形の形状が導体20の形状と相似形になるように、押出ダイを用いて押出被覆を390℃(押出ダイの温度)で行い、厚さ50μmの絶縁皮膜A(押出被覆層)を形成した。
<実施例3>
実施例3では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:平角状、断面積:6mm、アスペクト比:2)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例1と同様にして、厚さ100μmの絶縁皮膜A(エナメル層)を形成した。
<実施例4>
実施例4では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:平角状、断面積:6mm、アスペクト比:5)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例2と同様にして、厚さ100μmの絶縁皮膜A(押出被覆層)を形成した。
<実施例5>
実施例5では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:平角状、断面積:9mm、アスペクト比:5)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例1と同様にして、厚さ170μmの絶縁皮膜A(エナメル層)を形成した。
<実施例6>
実施例6では、図3に示される絶縁電線2を作製した。
導体20には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:円形状、断面積:9mm)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例1と同様にして、厚さ170μmの絶縁皮膜A(エナメル層)を形成した。
<実施例7>
実施例7では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、銅線(材質:タフピッチ銅、断面形状:平角状、断面積:3mm、アスペクト比:5)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例1と同様にして厚さ50μmの絶縁皮膜A(エナメル層)を形成した。
<実施例8>
実施例8では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、銅線(材質:タフピッチ銅、断面形状:平角状、断面積:6mm、アスペクト比:2)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例1と同様にして、厚さ100μmの絶縁皮膜A(エナメル層)を形成した。
<実施例9>
実施例9では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体20には、銅線(材質:タフピッチ銅、断面形状:平角状、断面積:6mm、アスペクト比:5)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例1と同様にして、厚さ50μmのエナメル層を形成し、次いで、実施例2と同様にして、上記エナメル層の外側に厚さ120μmの押出被覆層を形成した。実施例9では、絶縁皮膜Aの厚みが170μmであった。
<実施例10>
実施例10では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、アルミニウム線(材質:A1070、断面形状:平角状、断面積:3mm、アスペクト比:5)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例2と同様にして厚さ50μmの絶縁皮膜A(押出被覆層)を形成した。
<実施例11>
実施例11では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、アルミニウム線(材質:A1070、断面形状:平角状、断面積:6mm、アスペクト比:2)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例2と同様にして、厚さ100μmの絶縁皮膜A(押出被覆層)を形成した。
<比較例1>
比較例1では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:平角状、断面積:6mm、アスペクト比:2)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例1と同様にして、厚さ100μmの絶縁皮膜A(エナメル層)を形成した。
<比較例2>
比較例2では、図3に示される絶縁電線2を作製した。
導体20には、銅線(材質:タフピッチ銅、断面形状:円形状、断面積:6mm)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例2と同様にして、厚さ100μmの絶縁皮膜A(押出被覆層)を形成した。
<比較例3>
比較例3では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:平角状、断面積:6mm、アスペクト比:2)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例1と同様にして、厚さ100μmの絶縁皮膜A(エナメル層)を形成した。
<比較例4>
比較例4では、図1及び図2に示される絶縁電線1を作製した。
導体10には、銅線(材質:無酸素銅、断面形状:平角状、断面積:6mm、アスペクト比:5)を用いた。
絶縁皮膜Aの形成では、実施例2と同様にして、厚さ100μmの絶縁皮膜A(押出被覆層)を形成した。
[レーザー剥離試験(端部加工)]
実施例及び比較例に係る絶縁電線を長さ500mmのセグメントとし、その端部の一方(一端)を被覆する絶縁皮膜をレーザー光照射により除去しながら、露出した導体表面を当該レーザー光照射によって微細に削り取ることにより表面粗さを制御した。レーザー光照射の条件は下記の[表1]に示す条件とした。CWは連続発振(Constant Wave)を意味する。また、各実施例及び比較例において、導体が露出した端部以外の導体断面積(S1)に対する、前記の導体が露出した端部の導体断面積(S2)の比の値(S2/S1)が0.95~1.00の範囲内であった。
Figure 2024083921000002

[表面粗さ測定]
次に、上記レーザー剥離試験が行われた実施例及び比較例に係る絶縁電線のセグメントにおいて、レーザー光照射により露出した導体表面の算術平均高さSa、及び表面形状のアスペクト比Strを測定した。具体的には、算術平均高さSa及び表面形状のアスペクト比Strは、レーザー光照射により露出した導体表面のうち、5つの互いに異なる領域(各領域の面積1mm)の各々について、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、商品名:VK-X250)を用いて400倍の倍率で測定することにより得られた5つの値の平均値とした。電線に含浸ワニスなどが付着している場合には絶縁被膜剥離剤(明和化学工業社製、商品名:ソルコート)などの薬品で溶解・除去してから表面粗さを測定した。また、粉体塗装物が付着している場合には、粉体塗装物は脆い材質のため機械的に剥離・除去した。算術平均高さSaの測定結果を表2に示し、表面形状のアスペクト比Strの測定結果を表3に示す。
[シェア強度試験]
上記レーザー剥離試験が行われた実施例及び比較例に係る絶縁電線のセグメントを2本用意し、セグメント2本を並列に並べて露出した端部の導体同士を並べた状態で(図6の溶接を模擬した状態で)、ファイバーレーザーにより露出した端部の導体同士を溶接した。次いで、露出している導体部分を、エポキシ樹脂とフィラーとの混合粉末を含む粉体浴に高温で浸漬させることにより、絶縁粉体塗装を施して絶縁被覆層を形成した。上記レーザー剥離試験におけるレーザー光走査面に対応する絶縁被覆層のシェア強度(溶接のために絶縁皮膜を剥離した部分と絶縁被覆層との密着力、N/mm)を、直径1mmのサイズに削り出したサンプルを用いて測定し、下記判定基準に当てはめて評価した。結果を表2に示す。
(シェア強度試験の判定基準)
◎:シェア強度が1.0N/mm以上
〇:シェア強度が0.7N/mm以上1.0N/mm未満
△:シェア強度が0.5N/mm以上0.7N/mm未満
×:シェア強度が0.5N/mm未満
Figure 2024083921000003
表2に示す通り、比較例1~4に係る絶縁電線では、塗装接着力(溶接のために絶縁皮膜を剥離した部分と絶縁被覆層との接着力)が不良であった。これに対し、実施例1~11に係る絶縁電線では、塗装接着力に優れることがわかった。
[ボイド面積率測定]
上記粉体塗装により絶縁被覆層を形成した溶接部について、電線の短手方向に沿う断面(電線の長手方向に直交する方向に沿う断面)を湿式研磨してから断面観察することで、観察視野に占めるボイド面積率(%)を決定した。具体的には、湿式研磨した溶接部断面を、光学顕微鏡を用いて50倍の倍率で撮影し、得られた画像を画像処理ソフトウェア(ImageJ)により二値化処理してから、当該画像における導体面積(E1)に占めるボイドの面積(E2)の割合((E2/E1)×100)を算出した。同様にして、計3つの溶接部断面について、E1に占めるE2の割合を算出した。3つの断面における算出値(3つの算出値)の平均値を、ボイド面積率(%)とした。結果を表3に示す。
Figure 2024083921000004
表3に示す通り、表面形状のアスペクト比Strが0.0~0.5の範囲内である比較例1及び2に係る絶縁電線では溶接部のボイドの生成が抑制されるものの、表面形状のアスペクト比Strが0.5より大きい比較例3及び4に係る絶縁電線では、比較例1及び2よりも溶接部にボイドが多量に形成された。
同様に、表面形状のアスペクト比Strが0.0~0.5の範囲内である実施例1~11に係る絶縁電線では、溶接部のボイドの生成が比較例3及び4に係る絶縁電線よりも大幅に抑制されることが確認された。
以上の結果から、表面形状のアスペクト比Strが0.0~0.5の範囲内であると、溶接部のボイドの生成が効果的に抑制されることがわかった。
1,2…絶縁電線、10,20…導体、11…端部、34…絶縁被覆層、A…絶縁皮膜。

Claims (11)

  1. 導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線であって、
    前記絶縁電線は、導体が露出した端部を有し、
    前記の導体が露出した端部以外の導体断面積(S1)に対する、前記の導体が露出した端部の導体断面積(S2)の比の値(S2/S1)が0.95以上であり、
    前記の導体が露出した端部の導体表面の算術平均高さSaが1.0~5.0μmである、絶縁電線。
  2. 前記導体表面の表面形状のアスペクト比Strが、0.0~0.5である、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記の導体が露出した端部が、前記絶縁電線の端部の皮膜をレーザー光照射により除去して形成されたものである、請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 前記絶縁電線が長さ150~700mmのサイズにセグメント化された絶縁電線である、請求項3に記載の絶縁電線。
  5. 前記絶縁電線がセグメントコイルである、請求項4に記載の絶縁電線。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の絶縁電線を用いた電気・電子機器。
  7. 前記電気・電子機器がトランスである、請求項6に記載の電気・電子機器。
  8. 導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁皮膜とを有する絶縁電線の端部にレーザー光を照射することにより、前記端部の絶縁皮膜を除去し、かつ、露出した導体の表面の算術平均高さSaを1.0~5.0μmとする端部加工工程を含む、絶縁電線の製造方法。
  9. 前記端部加工工程において、前記の露出した導体の、表面形状のアスペクト比Strを0.0~0.5とする、請求項8に記載の絶縁電線の製造方法。
  10. セグメント化された絶縁電線の端部にレーザー光を照射することにより、前記端部の絶縁皮膜を除去し、かつ、露出した導体の表面の算術平均高さSaを1.0~5.0μmとする端部加工工程と、
    前記端部加工工程を経た、セグメント化された絶縁電線を、コイル状に加工してセグメントコイルとし、ステータコアのスロットに組み込む組込工程と、
    前記組込工程の後、前記セグメントコイルの端部の導体同士を溶接して電気的に接続する溶接工程と、
    前記溶接工程の後、露出している導体部分を絶縁塗装することにより前記の露出している導体部分の周囲に絶縁被覆層を設ける絶縁塗装工程と
    を含む、電気・電子機器の製造方法。
  11. 前記端部加工工程において、前記の露出した導体の、表面形状のアスペクト比Strを0.0~0.5とする、請求項10に記載の電気・電子機器の製造方法。

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