JP2024079544A - 歯付ベルト用ゴム組成物および歯付ベルトならびにそれらの製造方法 - Google Patents

歯付ベルト用ゴム組成物および歯付ベルトならびにそれらの製造方法 Download PDF

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健人 梅谷
裕司 勘場
寛太 小梶
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Abstract

【課題】歯付ベルトの耐歯欠け性と耐背面亀裂性とを両立できるゴム組成物を提供する。【解決手段】歯付ベルト用ゴム組成物として、第1の水素化ニトリルゴム(A1)および第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)を含む複合ポリマー(A)と、第2の水素化ニトリルゴム(B)と、第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)とを組み合わせる。前記第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)の割合が、前記第1の水素化ニトリルゴム(A1)100質量部に対して1~100質量部である。前記複合ポリマー(A)の割合は、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して10~80質量部である。前記第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の割合は、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して1~45質量部である。【選択図】なし

Description

本発明は、耐歯欠け性と耐背面亀裂性との両立が必要な歯付ベルトを形成するためのゴム組成物およびこのゴム組成物で形成された歯付ベルトならびにそれらの製造方法に関する。
動力を伝達する伝動ベルトは、摩擦伝動ベルトと、かみ合い伝動ベルトとに大別される。摩擦伝動ベルトとしては、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルトなどが挙げられ、かみ合い伝動ベルトとしては、歯付ベルトが挙げられる。歯付ベルトは、心線をベルト周方向と略平行に埋設した背部と、ベルト周方向に所定間隔で配設された歯部と、この歯部の表面を被覆する歯布とを有している。歯付ベルトの歯部は、歯部と相対する溝を有するプーリと嵌合することで動力の伝達を行う。歯付ベルトはプーリとの間でスリップが発生せず、高負荷であっても確実に伝動できる特徴を生かし、自動車の内燃機関(カムシャフト駆動用など)、自動二輪車の後輪駆動用などに用いられている。
これらの用途に用いられる歯付ベルトに要求される特性として、耐歯欠け性と耐背面亀裂性が挙げられる。歯欠けは歯部が歯付ベルトから欠損する現象であり、歯欠けが発生した歯付ベルトでは正確な同期伝動が行えなくなる。背面亀裂は歯付ベルトの背面(外周面)においてベルト幅方向に延びる亀裂が発生する現象であり、亀裂の発生箇所ではベルト屈曲時に応力が集中して心線が損傷しやすくなるため、歯付ベルトの交換が必要となる。耐歯欠け性を高めるためには歯部の剛性(硬度およびモジュラスなど)を高めることが有効であり、ポリマー成分として水素化ニトリルゴム(HNBR)を用いた種々の配合が検討されている。
例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2017/0023098号明細書)には、HNBRと、HNBR中にオルガノクレイを相溶化させたマスターバッチと、アクリル酸亜鉛とを含むゴム組成物で形成された伝動ベルトが開示されている。特許文献2(特開2011-122719号公報)および特許文献3(特開2020-91034号公報)には、不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBRで歯部を形成した歯付ベルトが開示されている。
米国特許出願公開第2017/0023098号明細書 特開2011-122719号公報 特開2020-91034号公報
しかし、これらの文献に開示されるゴム組成物は、耐歯欠け性に対しては大きな効果を有するものの、耐背面亀裂性に対しては効果が小さいか、または逆効果とも言えるものであった。特に、自動車の内燃機関において使用される歯付ベルトでは高温によるゴムの硬化劣化が進行し易く、これらの文献に開示されるゴム組成物では耐背面亀裂性が不足していた。なお、耐歯欠け性を高めるためにはゴムの剛性(硬度やモジュラス)を高めることが有効である一方、高剛性のゴムは熱劣化時に背面亀裂が発生し易いため、耐歯欠け性と耐背面亀裂性とは、トレードオフの関係にあって両立させるのは困難である。
そこで、本願発明の目的は、歯付ベルトの耐歯欠け性と耐背面亀裂性とを両立できるゴム組成物および歯付ベルトならびにそれらの製造方法を提供することにある。
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討の結果、第1の水素化ニトリルゴムに対して第1の不飽和カルボン酸金属塩を特定の割合で含む複合ポリマーと、第2の水素化ニトリルゴムと、第2の不飽和カルボン酸金属塩とを特定の比率で組み合わせたゴム組成物を歯付ベルトに用いると、耐歯欠け性と耐背面亀裂性とを向上させ、これらの特性を両立できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の態様[1]としての歯付ベルト用ゴム組成物は、
第1の水素化ニトリルゴム(A1)および第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)を含む複合ポリマー(A)と、
第2の水素化ニトリルゴム(B)と、
第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)とを含み、
前記第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)の割合が、前記第1の水素化ニトリルゴム(A1)100質量部に対して1~100質量部であり、
前記複合ポリマー(A)の割合が、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して10~80質量部であり、かつ
前記第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の割合が、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して1~45質量部である。
本発明の態様[2]は、前記態様[1]において、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して15~60質量部の割合で、補強性充填剤(D)を含む態様である。
本発明の態様[3]は、前記態様[2]において、
前記補強性充填剤(D)がカーボンブラックおよびシリカを含み、
前記シリカの割合が、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して15質量部以上であり、かつ
前記シリカの割合が、前記カーボンブラック100質量部に対して100~200質量部である態様である。
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様において、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して3~15質量部の割合で、短繊維(E)を含む態様である。
本発明の態様[5]は、前記態様[4]において、前記短繊維(E)が脂肪族ポリアミド短繊維を含む態様である。
本発明の態様[6]は、前記態様[4]または[5]において、前記短繊維(E)の平均繊維長が0.5~3mmである態様である。
本発明の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様において、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して5~15質量部の割合で、可塑剤(F)を含む態様である。
本発明の態様[8]は、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様において、架橋ゴム組成物における8%圧縮応力が2.6MPa以上である態様である。
本発明の態様[9]は、前記態様[1]~[8]のいずれかの態様において、架橋ゴム組成物におけるゴム硬度Hs(タイプA)が88~93°である態様である。
本発明の態様[10]は、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様において、前記複合ポリマー(A)のムーニー粘度が50ML(1+4)100℃以下である態様である。
本発明の態様[11]は、前記態様[1]~[10]のいずれかの態様において、前記第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)が粉末状である態様である。
本発明には、態様[12]として、前記態様[1]~[11]のいずれかの態様の歯付ベルト用ゴム組成物の製造方法であって、前記複合ポリマー(A)と、前記第2の水素化ニトリルゴム(B)と、前記第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)とを混合する製造方法も含まれる。
本発明には、態様[13]として、前記態様[1]~[11]のいずれかの態様の歯付ベルト用ゴム組成物を含む歯付ベルトも含まれる。
本発明には、態様[14]として、圧入工法で歯部を形成する前記態様[13]の歯付ベルトの製造方法も含まれる。
本発明では、第1の水素化ニトリルゴムに対して第1の不飽和カルボン酸金属塩を特定の割合で含む複合ポリマーと、第2の水素化ニトリルゴムと、第2の不飽和カルボン酸金属塩とを特定の比率で組み合わせているため、耐歯欠け性を高めつつ、同時に耐背面亀裂性をも向上させ、これらの特性を両立できる。
図1は、本発明のゴム製歯付ベルトの一例を示す部分断面斜視図である。 図2は、実施例の歯剛性試験の測定方法を説明するための概略模式図である。 図3は、実施例の耐熱走行試験のレイアウトを示す概略図である。
[歯付ベルト用ゴム組成物]
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、第1の水素化ニトリルゴム(A1)および第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)を含む複合ポリマー(A)と、第2の水素化ニトリルゴム(B)と、第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)とを含む。
(A)複合ポリマー(または複合ゴム)
複合ポリマー(A)は、第1の水素化ニトリルゴム(A1)および第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)を含む。
なお、本願において、水素化ニトリルゴム(HNBR)とは、従来のニトリルゴムの利点である耐油性を維持しつつ、熱老化(熱劣化)中の硫黄の再結合反応によるゴム弾性の老化を防ぐため、従来のニトリルゴムが有する不飽和結合(炭素・炭素二重結合)を化学的に水素化することによって、熱老化中の再結合反応を起こり難くして耐熱性を改良したゴムを意味する。
また、本願において、HNBRは、カルボキシル化されていてもよく、カルボキシル化HNBRも含め、単にHNBRと称する場合がある。
第1のHNBR(A1)は、部分水素化ニトリルゴムであってもよく、完全水素化ニトリルゴムであってもよい。第1のHNBR(A1)の水添率は、50~100%程度の範囲から選択でき、好ましくは70~100%である。
第1のHNBR(A1)のヨウ素価(単位:mg/100mg)は、例えば5~60(例えば7~50)、好ましくは8~40(例えば8~35)、さらに好ましくは10~30である。
なお、本願において、ヨウ素価とは、不飽和結合の量を表す指標であり、ヨウ素価が高いほど、ポリマー分子鎖中に含まれる不飽和結合の量が多いことを表す。ヨウ素価は、測定試料に対して過剰のヨウ素を加えて完全に反応(ヨウ素と不飽和結合とを反応)させ、残ったヨウ素の量を酸化還元滴定により定量することで求められる。HNBRのヨウ素価が小さい場合は、HNBR同士の架橋反応が十分ではなく、架橋ゴムの剛性が低くなるため、ベルト走行時に耐変形性が低下する虞がある。一方、HNBRのヨウ素価が大きいと、不飽和結合の量が過剰に多くなり、架橋ゴムの熱劣化や酸化劣化が進行してベルト寿命が短くなる虞がある。
第1のHNBR(A1)のムーニー粘度[ML(1+4)100℃]は、例えば10~150、好ましくは30~100、さらに好ましくは50~90、より好ましくは60~80である。ムーニー粘度が低すぎると、耐歯欠け性が低下する虞があり、ムーニー粘度が高すぎると、耐背面亀裂性や成形性が低下する虞がある。
なお、本願において、ムーニー粘度は、JIS K 6300-1(2013)のムーニー粘度試験に準拠した方法で測定でき、試験条件は、L形ロータを使用し、試験温度100℃、予熱1分、ロータ作動時間4分である。
第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)は、1つまたは2つ以上のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸と金属とがイオン結合した化合物であってもよい。
第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)の不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸;これらのジカルボン酸のモノアルキルエステルなどが例示できる。これらの不飽和カルボン酸は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい不飽和カルボン酸は(メタ)アクリル酸である。
第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)の金属としては、多価金属、例えば、周期表第2族元素(マグネシウム、カルシウムなど)、周期表第4族元素(チタン、ジルコニウムなど)、周期表第8族~第14族元素(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉛など)などが例示できる。これらの金属も単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい金属は、周期表第2族元素(マグネシウムなど)、周期表第12族元素(亜鉛など)などであり、亜鉛が特に好ましい。
好ましい第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)としては、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどが例示できる。不飽和カルボン酸金属塩も単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸亜鉛が特に好ましい。
本発明のゴム組成物では、複合ポリマー(A)中の第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)の割合が比較的少ないため、硬度が過度に高くなるのを抑制して、耐背面亀裂性を向上できる。第1のHNBR(A1)と第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)との質量比は、前者/後者=100/1~100/100(例えば100/70~100/90)であり、好ましくは100/30~100/80、さらに好ましくは100/60~100/79である。第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)の割合が少なすぎると、架橋ゴム組成物(または歯部)の弾性率(モジュラス)や硬度が低下する虞があり、逆に多すぎると、耐背面亀裂性が低下する。
本発明では、ムーニー粘度の低い複合ポリマー(A)を用いることで、圧入工法でも、歯の形状が出易くなり、歯部の成形性を向上できる。複合ポリマー(A)のムーニー粘度[ML(1+4)100℃]は50以下であってもよく、例えば5~50、好ましくは10~45、さらに好ましくは15~40、より好ましくは18~30である。ムーニー粘度が高すぎると、成形性が低下する虞がある。
複合ポリマー(A)は、市販品を使用してもよく、アラセオ社製の商品名「Therban ART 3462」や、日本ゼオン(株)製の商品名「Zeoforte(ZSC)」などを用いてもよい。
複合ポリマー(A)の割合は、複合ポリマー(A)および後述する第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して10~80質量部であり、好ましくは13~70質量部、さらに好ましくは15~50質量部、より好ましくは20~40質量部、最も好ましくは25~35質量部である。複合ポリマー(A)の割合が少なすぎると、耐歯欠け性が低下し、逆に多すぎると、耐背面亀裂性および経済性が低下する。
(B)第2のHNBR
第2のHNBR(B)としては、例えば、前記第1のHNBR(A1)として例示されたHNBRなどが例示できる。第2のHNBR(B)の水添率、ヨウ素価およびムーニー粘度も、好ましい範囲も含めて、前記第1のHNBR(A1)に記載された範囲から選択できる。
第2のHNBR(B)は、前記第1のHNBR(A1)と同一であってもよく、異なっていてもよい。
第2のHNBR(B)の割合は、複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して20~90質量部であり、好ましくは30~87質量部、さらに好ましくは50~85質量部、より好ましくは60~80質量部、最も好ましくは65~75質量部である。第2のHNBR(B)の割合が少なすぎると、耐背面亀裂性および経済性が低下し、逆に多すぎると、耐歯欠け性が低下する。
(C)第2の不飽和カルボン酸金属塩
前記複合ポリマー(A)は不飽和カルボン酸金属塩の含有量が少なく、耐背面亀裂性を向上できるとともに圧入工法でも歯付ベルトの歯形状を良好にすることができる一方で、耐歯欠け性は低下する方向に働く。それを補うために、本発明のゴム組成物は、第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)を含む。
第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)は、好ましい態様も含めて、前記第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)として例示された不飽和カルボン酸金属塩から選択できる。第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)は、前記第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)と同一であってもよく、異なっていてもよい。
第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の形状は、粉末状(または粒子状)であるのが好ましい。粉末状である第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の平均粒子径は、例えば1~1000μm、好ましくは5~500μm、さらに好ましくは10~100μmである。
なお、本願において、第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真を含む電子顕微鏡写真の画像解析により適当なサンプル数(例えば、50サンプル)の算術平均粒子径として算出できる。
第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の割合は、複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して1~45質量部であり、好ましくは3~40質量部、特に好ましくは4~35質量部、さらに好ましくは4~30質量部、より好ましくは4~10質量部、最も好ましくは4~5質量部である。第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の割合が少なすぎると、耐歯欠け性が低下し、逆に多すぎると、均一に分散させるのが困難になるとともに耐背面亀裂性が低下する。
第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の割合は、前記第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)100質量部に対して、例えば0.1~3000質量部、好ましくは1~1000質量部、さらに好ましくは10~300質量部、より好ましくは20~100質量部、最も好ましくは30~60質量部である。第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の割合が少なすぎると、耐背面亀裂性が低下する虞があり、逆に多すぎると、耐歯欠け性または耐背面亀裂性が低下する虞がある。
第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)および第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の合計割合は、第1のHNBR(A1)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは5~70質量部、さらに好ましくは10~50質量部、より好ましくは15~30質量部、最も好ましくは17~25質量部である。第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)および第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の合計割合が少なすぎると、耐歯欠け性が低下する虞があり、逆に多すぎると、耐背面亀裂性または耐歯欠け性が低下する虞がある。
(D)補強性充填剤
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、さらに補強性充填剤(D)を含んでいてもよく、架橋ゴムの硬度と圧縮応力を向上できる点から、補強性充填剤(D)を含むのが好ましい。
補強性充填剤(補強性無機充填剤)(D)としては、例えば、カーボンブラック、シリカなどが例示できる。これらの補強性充填剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。補強性充填剤(D)は、粉末状であってもよい。
カーボンブラックの平均粒子径(平均一次粒子径)は、例えば5~200nm、好ましくは10~150nm、さらに好ましくは15~100nm、より好ましくは20~50nm、最も好ましくは20~45nm(特に20~40nm)である。前記平均粒子径が小さすぎると、ゴム組成物中に均一に分散させるのが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する虞がある。
なお、本願において、補強性充填剤(D)の平均粒子径(平均一次粒子径)は、透過型電子顕微鏡写真を含む電子顕微鏡写真の画像解析により適当なサンプル数(例えば、50サンプル)の算術平均粒子径として算出できる。
カーボンブラックのヨウ素吸着量は、例えば5~200mg/g、好ましくは10~150mg/g、さらに好ましくは50~120mg/g、より好ましくは60~100mg/gである。ヨウ素吸着量が小さすぎると、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する虞があり、逆に大きすぎると、ゴム組成物中に均一に分散させるのが困難となる虞がある。
なお、本願において、カーボンブラックのヨウ素吸着量は、ASTM D1510-17の標準試験法に準拠して測定できる。
これらのカーボンブラックは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
シリカには、乾式シリカ、湿式シリカ、表面処理したシリカなどが含まれる。また、シリカは、製法によって、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどにも分類できる。これらのシリカは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリカのうち、表面シラノール基を有するシリカ(無水ケイ酸、含水ケイ酸)が好ましく、表面シラノール基の多い含水ケイ酸はゴム成分との化学的結合力が強い。
シリカの平均粒子径(平均一次粒子径)は、例えば1~500nm、好ましくは3~300nm、さらに好ましくは5~100nm、より好ましくは10~50nmである。前記平均粒子径が小さすぎると、ゴム組成物中に均一に分散させるのが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する虞がある。
シリカのBET法による窒素吸着比表面積は、例えば50~400m/g、好ましくは70~300m/g、さらに好ましくは100~250m/g、より好ましくは150~200m/gである。前記比表面積が小さすぎると、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する虞があり、逆に大きすぎると、ゴム組成物中に均一に分散させるのが困難となり、耐背面亀裂性が低下する虞がある。
補強性充填剤(D)の割合は、複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば10~80質量部、好ましくは15~60質量部、さらに好ましくは20~55質量部、より好ましくは25~50質量部、最も好ましくは30~45質量部である。補強性充填剤(D)の割合が少なすぎると、耐歯欠け性が低下する虞があり、逆に多すぎると、耐背面亀裂性が低下する虞がある。
補強性充填剤(D)は、少なくともカーボンブラックを含むのが好ましく、カーボンブラックのみであってもよいが、カーボンブラックおよびシリカの両方を含むのが好ましい。特に、ゴム組成物が後述する短繊維(E)を含む場合は、補強性充填剤(D)は、カーボンブラックとシリカとの組み合わせが好ましい。
補強性充填剤(D)がシリカを含む場合、シリカの割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して10質量部以上であってもよく、15質量部以上が好ましく、15~50質量部がさらに好ましく、20~30質量部が特に好ましい。シリカの割合が少なすぎると、ゴム組成物が短繊維(D)を含む場合、HNBRと短繊維(D)との接着性が低下することにより、圧縮応力が低下し、耐歯欠け性が低下する虞がある。
補強性充填剤(D)がカーボンブラックとシリカとの組み合わせを含む場合、シリカの割合は、カーボンブラック100質量部に対して、例えば50~300質量部、好ましくは100~200質量部、さらに好ましくは130~190質量部、より好ましくは150~180質量部である。シリカの割合が、この範囲を外れると、補強性と接着性とのバランスが崩れるために、耐歯欠け性および/または耐背面亀裂性が低下する虞がある。特に、ゴム組成物が短繊維(D)を含む配合の場合、シリカの割合が少なすぎると、短繊維(D)とHNBRとの接着性が低下することにより圧縮応力も低下し、耐歯欠け性が低下し易くなる。
(E)短繊維
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、さらに短繊維(E)を含んでいてもよく、圧縮応力および耐歯欠け性を向上できる点から、短繊維(E)を含むのが好ましい。
短繊維(E)としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維[ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維などの脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維)、アラミド繊維など]、ポリエステル系繊維[ポリアルキレンアリレート系繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのC2-4アルキレンC8-14アリレート系繊維);ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル系繊維などの完全芳香族ポリエステル系繊維など]、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨンなどの再生セルロース繊維、セルロースエステル繊維など;炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維などが例示できる。これらの短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、ポリアミド繊維、PBO繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの弾性率(モジュラス)の高い繊維が好適に使用でき、脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維)やアラミド繊維などのポリアミド繊維がより好ましく、HNBRとの接着性および経済性の点から、脂肪族ポリアミド繊維が最も好ましい。
短繊維(E)の平均繊維径は、例えば1~100μm(例えば3~70μm)、好ましくは5~50μm(例えば7~40μm)、さらに好ましくは10~35μm(特に20~30μm)である。前記平均繊維径が小さすぎると、短繊維(E)を均一に分散するのが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する虞がある。
本発明では、短繊維(E)の繊維長を比較的短く調整することにより、耐背面亀裂性を向上できる。短繊維(E)の平均繊維長は10mm以下であってもよく、例えば0.3~10mm、好ましくは0.4~5mm、さらに好ましくは0.5~3mm、より好ましくは1~2.8mm、最も好ましくは1.5~2.5mmである。前記平均繊維長が大きすぎると、耐背面亀裂性が低下する虞がある。短繊維(E)として、このような繊維長のポリアミド短繊維(特に、ナイロン短繊維)を用いると、亀裂の発生を効果的に抑制でき、耐背面亀裂性を向上できる。
接着処理としては、例えば、エポキシ化合物(またはエポキシ樹脂)、ポリイソシアネート、シランカップリング剤、レゾルシン-ホルマリン-ラテックス(RFL)などの接着成分による処理が例示でき、このような接着成分を含む処理液(溶液または分散液)で短繊維(E)を処理(例えば、浸漬処理)し、乾燥することにより行うことができる。レゾルシン-ホルマリン-ラテックス(RFL)処理液や、ポリイソシアネート化合物を含むRFL処理液は、例えば、レゾルシン-ホルマリン樹脂、ポリイソシアネート化合物などを含むラテックス系接着剤であってもよい。また、ラテックスのゴムは、カルボキシル基などの官能基を有するゴムであってもよい。好ましい接着成分は、RFLであり、少なくともレゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物(または初期縮合物)と、ラテックス(HNBRラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスなどのビニルピリジンラテックスなど)とを含んでいてもよい。また、RFL処理液は、例えば、硫黄化合物(硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィドなど)の水分散物、キノンオキシム系化合物(p-キノンジオキシムなど)、ポリ(メタ)アクリレート系化合物(エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレート(すなわち、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレート)など)、ビスマレイミド化合物(N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド)など)のうち少なくとも一種の共架橋剤を含んでいてもよい。
前記接着成分としてのレゾルシン-ホルマリン-ラテックス(RFL)は、短繊維(E)の剛直さと、HNBRの柔軟性との中間的性質を有しており、短繊維(E)とHNBRとを強力に接着させながら、接着成分をHNBRの変形に追従させることができ、亀裂の発生を効果的に抑制できる。
なお、短繊維(E)は、バンバリーミキサーなどで混練したゴム組成物を、ロールまたはカレンダーなどで圧延して未架橋ゴムシートを調製する過程で、所定の方向に配向させることができる。
短繊維(E)の割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば1~20質量部、好ましくは3~15質量部、さらに好ましくは4~13質量部、より好ましくは5~12質量部である。短繊維(E)の割合が少なすぎると、耐歯欠け性が低下する虞があり、逆に多すぎると、耐背面亀裂性が低下する虞がある。
(F)可塑剤
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、さらに可塑剤(または軟化剤)(F)を含んでいてもよく、耐背面亀裂性を向上でき、かつゴム組成物の粘度を低減して圧入工法でも歯形状を形成し易くできる点から、可塑剤(F)を含むのが好ましい。
可塑剤(F)としては、例えば、オイル系可塑剤[パラフィン系オイル、脂環族系オイル(ナフテン系オイル)、芳香族系オイルなど]、脂肪族カルボン酸エステル系可塑剤(アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤など)、芳香族カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤など)、オキシカルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エーテル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤などが例示できる。これらの可塑剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの可塑剤のうち、エーテルエステル系可塑剤が好ましい。
可塑剤(F)の割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは5~15質量部、より好ましくは6~13質量部である。可塑剤(F)の割合が少なすぎると、耐背面亀裂性が低下するとともに、圧入工法で歯付ベルトを製造した場合に歯形状が不良となる虞があり、逆に多すぎると、架橋ゴムの硬度が低下して耐歯欠け性が低下する虞がある。
(G)酸化亜鉛
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、さらに酸化亜鉛(G)を含んでいてもよい。前記ゴム組成物中において、酸化亜鉛(G)は、耐熱老化剤として機能する。
酸化亜鉛(G)の平均粒子径(平均一次粒子径)は、例えば0.01~3μm、好ましくは0.02~2.5μm、さらに好ましくは0.05~2μm、より好ましくは0.1~1.5μm、最も好ましくは0.3~1μmである。
なお、本願において、酸化亜鉛(G)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を利用して、体積平均粒子径として測定できる。
酸化亜鉛(G)としては、JIS K 1410(2006)に規定される1種、2種、3種の粉状酸化亜鉛の他、導電性酸化亜鉛、活性亜鉛華、焼成亜鉛華などを使用できる。これらの酸化亜鉛(亜鉛華)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。中でも、JIS1種、2種、3種の粉状酸化亜鉛が好ましい。
酸化亜鉛(G)の割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば1~50質量部、好ましくは2~40質量部、さらに好ましくは3~30質量部、より好ましくは4~20質量部、最も好ましくは4~10質量部である。酸化亜鉛(G)の割合が少なすぎると、耐熱老化性が低下する虞があり、逆に多すぎると、ゴム組成物が短繊維(E)などを含む場合、短繊維(E)の分散性が低下する虞がある。
(H)架橋系配合剤
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)を架橋させるための架橋系配合剤(H)を含んでいてもよく、必要に応じて、共架橋剤、架橋助剤(架橋促進剤または架橋促進助剤)、架橋遅延剤などを含んでいてもよい。これらのうち、架橋系配合剤は、少なくとも架橋剤および共架橋剤を含むのが好ましく、架橋剤と共架橋剤と架橋助剤との組み合わせが特に好ましい。
架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、硫黄系架橋剤などが例示できる。これらの架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、1,1-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシ-ジ-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチル-ヘキシルカーボネートなどが例示できる。これらの有機過酸化物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
理論活性酸素量の高い有機過酸化物を利用すると、ゴム組成物の硬度とモジュラスを高めることができ、ゴムの変形を抑えて亀裂の成長を抑制できる。なお、理論活性酸素量は、有機過酸化物の分子中の過酸化結合の濃度を表し、下記の式で求められる。
理論活性酸素量(%)=(過酸化結合の数×16/有機過酸化物の分子量)×100
理論活性酸素量はゴム組成物を架橋する能力と言い換えることができ、理論活性酸素量が多い程、架橋が促進されて、ゴム組成物の硬度やモジュラスを高めることができる。そのため、好ましい有機過酸化物の理論活性酸素量は9%以上(例えば9~18%)、好ましくは9~15%、さらに好ましくは9~12%である。理論活性酸素量が低い有機過酸化物を用いると、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する。
このような理論活性酸素量が9%以上の有機過酸化物としては、例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどが例示できる。
架橋剤(特に、有機過酸化物)の割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば0.2~10質量部、好ましくは1~5質量部、さらに好ましくは1.5~4.5質量部、より好ましくは2~4質量部、最も好ましくは2~3.5質量部である。架橋剤の割合が少なすぎると、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する虞があり、逆に多すぎると、耐背面亀裂性および耐歯欠け性が低下する。
共架橋剤(共加硫剤co-agent)としては、公知の共架橋剤、例えば、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどの(メタ)アクリル酸多価金属塩]、オキシム類(例えば、キノンジオキシムなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジンなど)、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート]、ビスマレイミド類(脂肪族ビスマレイミド、例えば、N,N’-1,2-エチレンジマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)シクロヘキサンなどのアルキレンビスマレイミド;アレーンビスマレイミド又は芳香族ビスマレイミド、例えば、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンジマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジフェニルエーテルジマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンジマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼンなど)などが挙げられる。これらの共架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの共架橋剤のうち、多官能(イソ)シアヌレート、多官能(メタ)アクリレート、ビスマレイミド類(N,N’-m-フェニレンジマレイミドなどのアレーンビスマレイミドまたは芳香族ビスマレイミド)が好ましく、ビスマレイミド類が特に好ましい。共架橋剤(例えば、ビスマレイミド類)の添加により架橋度を高め、弾性率を向上できる。
ビスマレイミド類などの共架橋剤の割合は、固形分換算で、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば0.2~40質量部、好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは2~20質量部、より好ましくは3~10質量部、最も好ましくは4~7質量部である。
架橋助剤としては、例えば、チウラム系促進剤などの架橋促進剤、ステアリン酸やラウリン酸などの高級脂肪酸などが例示できる。架橋助剤の割合は、固形分換算で、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.3~2質量部、より好ましくは0.5~1.5質量部である。
架橋系配合剤(H)の割合は、固形分換算で、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば0.3~50質量部、好ましくは0.5~40質量部、さらに好ましくは1~30質量部、より好ましくは3~20質量部、最も好ましくは5~10質量部である。架橋系配合剤(H)の割合が少なすぎると、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する虞があり、逆に多すぎると、耐背面亀裂性および耐歯欠け性が低下する。
(I)非補強性充填剤
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、必須成分ではないが、さらに非補強性充填剤(I)を含んでいてもよい。
非補強性充填剤(非補強性無機充填剤)(I)としては、例えば、多価金属炭酸塩類(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、多価金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、多価金属硫酸塩(硫酸バリウムなど)、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどのケイ素の一部が多価金属原子で置換された天然または合成ケイ酸塩;ケイ酸塩を主成分とする鉱物、例えば、ケイ酸アルミニウムを含むクレイ、ケイ酸マグネシウムを含むタルクおよびマイカなどのケイ酸塩鉱物など)、リトポン、ケイ砂などが例示できる。これらの非補強性充填剤は単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
非補強性充填剤(I)としては、ゴムの充填剤として市販されている粉末状の充填剤を使用できる。
これらのうち、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムまたはケイ酸マグネシウムを含むタルク、ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸アルミニウムを含むクレイが好ましく、炭酸カルシウムが特に好ましい。
非補強性充填剤の平均粒子径(平均一次粒子径)は、例えば0.01~25μm、好ましくは0.1~20μm、さらに好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μmである。
なお、本願において、非補強性充填剤(I)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を利用して、体積平均粒子径として測定できる。
非補強性充填剤(I)の割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。必要に応じて非補強性充填剤(I)を用いる場合、非補強性充填剤(I)の割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば1~50質量部、好ましくは2~30質量部、さらに好ましくは3~10質量部、より好ましくは4~7質量部である。非補強性充填剤(I)の割合が多すぎると、分散性が低下する虞がある。
(J)他の添加剤
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、必須成分ではないが、さらに他の添加剤(J)を含んでいてもよい。
他の添加剤(J)としては、例えば、金属酸化物(酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、加工剤または加工助剤(ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなど)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、接着性改善剤(レゾルシン-ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂など)、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが例示できる。これら他の添加剤(J)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
他の添加剤(J)の合計割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、例えば0.1~100質量部、好ましくは0.5~50質量部、さらに好ましくは1~20質量部である。例えば、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して、酸化亜鉛を除く金属酸化物の割合は、0~20質量部(例えば1~10質量部)、老化防止剤の割合は0.5~10質量部(例えば1~5質量部)、加工(助)剤の割合は0~5質量部(例えば0.5~3質量部)である。
(K)他のポリマー成分
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)に加えて、さらに他のポリマー成分(K)を含んでいてもよい。
他のポリマー成分(K)としては、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(ニトリルゴム:NBR)、アクリロニトリル-クロロプレンゴムなど]、エチレン-α-オレフィンエラストマー(エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)など)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのゴム成分は、カルボキシル化SBR、カルボキシル化NBRなどのように、カルボキシル化されていてもよい。これらのゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、EPDMおよび/またはCRが好ましい。
他のポリマー成分(K)の割合は、前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計100質量部に対して100質量部以下であってもよく、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
前記複合ポリマー(A)および第2のHNBR(B)の合計割合は、全ポリマー成分中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。前記合計割合が少なすぎると、耐歯欠け性と耐背面亀裂性とを両立するのが困難となる虞がある。
(L)歯付ベルト用ゴム組成物の特性
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、架橋体の剛性が高く、耐歯欠け性に優れている。歯付ベルト用ゴム組成物の架橋体(架橋ゴム組成物)の8%圧縮応力は2.6MPa以上であってもよく、例えば2.6~10MPa、好ましくは2.8~8MPa、さらに好ましくは3~7MPa、より好ましくは3.5~5MPa、最も好ましくは4~4.5MPaである。8%圧縮応力が小さすぎると、耐歯欠け性が低下する虞がある。
なお、本願において、8%圧縮応力は、JIS K 7181(プラスチック-圧縮特性の求め方)に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物のゴム硬度Hsは、例えば85~95°、好ましくは88~93°、さらに好ましくは89~93°、より好ましくは90~93°、最も好ましくは91~93°である。ゴム硬度が高すぎると、耐背面亀裂性が低下する虞があり、逆に低すぎると、耐歯欠け性が低下する虞がある。
なお、本願において、架橋ゴム組成物のゴム硬度は、JIS K 6253(2012)(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-硬さの求め方-)に規定されているスプリング式デュロメータ硬さ試験に準拠して、タイプAデュロメータを用いて測定された値Hs(タイプA)を示し、単にゴム硬度と記載する場合がある。詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、熱老化後の破断伸びが50%以上(特に90%以上)であってもよく、例えば50~500%、好ましくは70~400%、さらに好ましくは80~350%、より好ましくは90~300%である。熱老化後の破断伸びが小さすぎると、耐背面亀裂性が低下する虞がある。
なお、本願において、熱老化後の破断伸びは、120℃で7日間加熱処理した試料に対して、JIS K 6257(2017)に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
(M)歯付ベルト用ゴム組成物の製造方法
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物の製造方法は、慣用の方法によって各成分を混合(または混練)することにより調製できるが、均一に混合するためには、前記複合ポリマー(A)と、前記第2の水素化ニトリルゴム(B)と、前記第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)とを含む原料(または原料組成物)を混練するのが好ましい。
混練は、加熱下で行ってもよい。加熱温度は、HNBRの架橋が進行しない温度で加熱するのが好ましい。加熱温度は、例えば120℃以下、好ましくは50~120℃、さらに好ましくは60~110℃、より好ましくは80~100℃である。加熱温度が高すぎると、ゴムが架橋する虞がある。
混練方法としては、慣用の混練方法、例えば、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機(一軸または二軸押出機など)などを用いた方法などが挙げられる。
[歯付ベルト]
本発明の歯付ベルトは、前記歯付ベルト用ゴム組成物を含む。以下に、必要に応じて、添付図面を参照しつつ、本発明の歯付ベルトの一例について詳細に説明する。
図1は、本発明の歯付ベルト(ゴム製歯付ベルト)の一例を示す部分断面斜視図である。この例の歯付ベルト1は、無端状のかみ合い伝動ベルトであり、ベルト周方向(長手方向)に沿って所定間隔をおいて形成された複数の歯部3を有するベルト本体2と、このベルト本体2の前記歯部3の表面を被覆し、かつベルト内周面を形成する歯布7とで構成されている。詳しくは、前記ベルト本体2は、長手方向に延びる心線5と、この心線5が埋設された背部4と、この背部4の内周面に所定間隔で設けられ、かつベルト幅方向に延びる複数の歯部3とを備えている。すなわち、前記歯付ベルト1は、断面台形状の複数の歯部3が形成されたベルト本体2と、前記歯部3の表面を被覆する歯布(カバー布)7とを備えており、前記ベルト本体2は、長手方向(X方向)に延びる背部4と、この背部4の長手方向に沿って所定の間隔をおいて幅方向(Y方向)に延びて形成された前記複数の歯部3と、背部4の長手方向に沿って埋設された心線5とを備えている。
前記心線5は、長手方向に延在し、かつベルト幅方向に間隔をおいて配列されている。隣接する心線5の隙間は、背部4および/または歯部3を構成する架橋ゴム組成物(特に、背部4を構成する架橋ゴム組成物)で形成されていてもよい。
さらに、少なくとも前記歯部3を形成するゴム組成物は、短繊維6を含んでもよく、この短繊維は、前記心線5と同様に、ベルト1の長手方向に配向(歯布7側では歯部3の断面形状に沿って湾曲し、心線5側では心線5または背部4とほぼ平行な形態で配向)してもよい。また、歯布7は、ベルトの幅方向に延在する経糸7aとベルトの長手方向に延在する緯糸7bからなる織布(綾織り帆布など)で形成されてもよい。
なお、歯付ベルトは、図1に示す形態または構造に限定されない。例えば、歯付ベルトは、ベルトの少なくとも一方の面に、長手方向に沿って所定間隔をおいて形成された複数の歯部または凸部を有し、かつ心線が埋設されたベルト本体と、このベルト本体の前記歯部の表面を被覆またはベルト本体の前記歯部の表面に積層された歯布(カバー布)とを備えていればよい。
複数の歯部または凸部は、歯状プーリと噛合可能であればよく、歯部または凸部の断面形状(ベルトの長手方向の断面形状)は、前記台形に限定されず、歯状プーリの形態などに応じて、例えば、半円形、半楕円形、多角形[三角形、四角形(矩形など)など]などであってもよい。これらのうち、噛み合い伝動性などの点から、台形または略台形が好ましい。
長手方向に隣り合う歯部または凸部の間隔(歯部の中心間の平均距離または歯ピッチ)は、歯付ベルトの種類や歯状プーリの形態などに応じて、例えば0.5~32mm、好ましくは2~20mm、さらに好ましくは5~14mm、より好ましくは8~11mmである。
歯部の平均歯高さ(歯布も含む高さ)は、ベルト全体の平均厚みに対して、好ましくは40~70%、さらに好ましくは50~65%である。なお、本願において、歯部の平均歯高さは、ベルト内周面において、突出している歯部の平均高さ(歯底部から突出している歯部の平均高さ)を意味する。
短繊維は、ベルトに対してランダムに配向していてもよいが、ベルト本体を有効に補強するため、通常、主にベルトの長手方向に配向している。さらに、短繊維は、歯布に近い側は歯部の輪郭に沿って配向し、心線に近づくにつれて心線とほぼ平行となるように配向して配置するのが好ましい。
歯布の経糸および緯糸の延在方向も特に制限されず、例えば、ベルトの長手方向に対して経糸を斜め方向に延在させてもよく、経糸がベルトの長手方向に延在し、緯糸がベルトの幅方向に延在していてもよいが、耐久性を高めるため、通常、経糸はベルトの幅方向に延在し、緯糸はベルトの長手方向に延在している。
背部の平均厚み(心線を含まない領域の厚み)は、例えば0.3~3mm、好ましくは0.5~2mmである。
歯付ベルトは、産業用機械、自動車の内燃機関、自動二輪車の後輪駆動等における高負荷伝動用途に使用される。例えば、歯付ベルトが、駆動プーリ(歯付プーリ)と従動プーリ(歯付プーリ)との間に巻き掛けられた状態で、駆動プーリの回転により、駆動プーリ側から従動プーリ側に動力を伝達する。
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、このような歯付ベルトに含まれていればよく、ベルト本体に含まれるのが好ましい。さらに、本発明のゴム組成物がベルト本体に含まれる場合、背部および/または歯部に含まれるのが好ましく、背部および歯部に含まれるのがさらに好ましく、背部および歯部を形成するのがより好ましい。
本発明の歯付ベルトにおいて、歯部および背部が前記歯付ベルト用ゴム組成物で形成される場合、歯部を形成するゴム組成物と背部を形成するゴム組成物とは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、生産性などの点から、同一であるのが好ましい。
歯部および背部ともに、前記歯付ベルト用ゴム組成物で形成された均一な単層構造であってもよく、他の層との積層構造であってもよい。例えば、歯部は、前記歯付ベルト用ゴム組成物で形成された層と、歯布との間に接着ゴム層が介在してもよい。
(心線)
心線は、抗張体として作用し、歯付ベルトの走行安定性および強度を向上できる。さらに、背部では、通常、ベルト周方向に沿って延びる心線が、ベルト幅方向に所定の間隔を空けて埋設されており、長手方向に平行な複数本の心線が配設されていてもよいが、生産性の点から、通常、螺旋状に埋設されている。螺旋状に配設する場合、ベルト長手方向に対する心線の角度は、例えば5°以下であってもよく、ベルト走行性の点から、0°に近いほど好ましい。
より詳細には、心線は、図1に示すように、背部のベルト幅方向の一方の端から他方の端にかけて、所定の間隔(またはピッチ)をおいて(または等間隔で)埋設されていてもよい。隣接する心線の中心間の距離である間隔(スピニングピッチ)は、心線径よりも大きければよく、心線の径に応じて、例えば0.5~5mm、好ましくは0.7~3mm、さらに好ましくは0.8~2.5mmである。
心線を形成する繊維としては、例えば、PET繊維、PEN繊維、ポリアリレート繊維などのポリエステル繊維;ナイロン繊維、アラミド繊維などのポリアミド繊維;PBO繊維;ガラス繊維;炭素繊維;金属繊維などが例示できる。これらの繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、伸びが小さく寸法安定性に優れる点から、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維が好ましく、経済性の点から、ガラス繊維が特に好ましい。
ガラス繊維としては、無アルカリガラス(Eガラス)、Si成分の多い高強度ガラス(K、U、Sガラス)のいずれで形成されたガラス繊維であってもよいが、経済性の点から、無アルカリガラス(Eガラス)で形成されたガラス繊維が好ましい。
心線は、多数の繊維(フィラメント)を集束して束(ストランド)とし、1本または2本以上のストランドを引き揃えて撚りを加えた撚りコードからなる心線であってもよい。撚りコードは、1本または2本以上のストランドを引き揃えて一方向に撚りを加えた片撚りコード、1本または2本以上のストランドを引き揃えて一方向に撚り(下撚り)を加えて作製した下撚り糸を複数本引き揃えた後に下撚り糸と同じ方向に撚り(上撚り)を加えて作製したラング撚りコード、1本または2本以上のストランドを引き揃えて一方向に撚り(下撚り)を加えて作製した下撚り糸を複数本引き揃えた後に下撚り糸と異なる方向に撚り(上撚り)を加えて作製した諸撚りコードのいずれであってもよいが、下撚りと上撚りとで捩れモーメントを打ち消し合って安定化することでキンクの発生を抑制でき、取り扱い性に優れる点から、諸撚りコードが好ましい。
ガラス繊維のフィラメント径、ストランドを形成するフィラメントの集束本数、下撚り糸を形成するストランドの本数、撚りコードを形成する下撚り糸の本数は特に制限されないが、フィラメント径は直径9μm、ストランドを形成するフィラメントの集束本数は200本(繊度約34tex)または600本(繊度約100tex)が汎用されている。下撚り糸を形成するストランドの本数は1~10本(特に1~3本)であり、撚りコードを形成する下撚り糸の本数は2~15本(特に6~13本)である。撚りコードに含まれるフィラメントの本数は、例えば500~50000本、好ましくは3000~20000本、より好ましくは6000~8000本である。撚りコードの繊度(総繊度)は、例えば100~11000tex、好ましくは600~4000tex、より好ましくは1200~1800texである。撚りコードの外径は、0.2~3.0mm、好ましくは0.5~1.8mm、より好ましくは1.0~1.3mmである。
心線として用いる撚りコードには、背部および歯部との接着性を高めるために接着処理が施されることが好ましい。接着処理としては、例えば、撚りコードを、レゾルシン-ホルマリン-ラテックス処理液(RFL処理液)に浸漬後、加熱乾燥して、表面に均一に接着層を形成する方法が採用される。RFL処理液は、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合体をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしては、クロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体(VPラテックス)、NBRなどが例示できる。なお、接着処理としては、エポキシ化合物またはイソシアネート化合物による処理(プレディップ)、ゴム糊による処理(オーバーコート)などが例示でき、例えば、プレディップ、RFL、オーバーコートの順に行うなど、これらの処理を任意の順、任意の回数で組み合わせて行ってもよい。
(歯布)
歯部の表面を被覆する歯布(カバー布)は、綾織り組織の帆布に限定されず、例えば、織布、編布、不織布などの布帛などで形成してもよいが、織布(帆布)である場合が多く、ベルト幅方向に延在する経糸とベルト周方向に延在する緯糸とを織成してなる織物であってもよい。織布の織り組織は、経糸と緯糸とが規則的に縦横方向に交差した組織であれば特に制限されず、平織、綾織(または斜文織)、朱子織(繻子織、サテン)などのいずれであってもよく、これらの組織を組み合わせた織り組織であってもよい。好ましい織布は、綾織および朱子織組織を有している。
歯布の緯糸および経糸を形成する繊維としては、前記短繊維(E)の項で例示された繊維に加えて、ポリフェニレンエーテル系繊維、ポリエーテルエーテルケトン系繊維、ポリエーテルスルホン系繊維、ポリウレタン系繊維などが例示できる。これらの繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの繊維のうち、有機繊維が汎用され、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエステル系繊維(PET繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド66繊維などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維など)、PBO繊維、フッ素樹脂繊維[ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維など]などが好ましい。また、これらの繊維と、伸縮性を有する弾性糸(例えば、ポリウレタンで形成されたスパンデックスなどの伸縮性を有するポリウレタン系弾性糸、伸縮加工(例えば、ウーリー加工、巻縮加工など)した加工糸など)との複合糸も好ましい。
経糸および緯糸の形態は、特に限定されず、1本の長繊維であるモノフィラメント糸、フィラメント(長繊維)を引き揃えたり、撚り合わせたマルチフィラメント糸、短繊維を撚り合わせたスパン糸(紡績糸)などであってもよい。前記マルチフィラメント糸または前記スパン糸は、複数種の繊維を用いた混撚糸または混紡糸であってもよい。緯糸は、前記伸縮性を有する弾性糸を含むのが好ましく、経糸は、製織性の点から、通常、弾性糸を含まない場合が多い。歯布のベルト周方向への伸縮性を確保するため、弾性糸を含む緯糸はベルト周方向に延在し、経糸はベルト幅方向に延在するのが好ましい。
繊維(フィラメント)の平均径は、例えば1~100μm(例えば3~50μm)、好ましくは5~30μm、さらに好ましくは7~25μmである。糸(撚糸)の平均径(太さ)について、緯糸は、例えば100~1000dtex(特に300~700dtex)であってもよく、経糸は、例えば50~500dtex(特に100~300dtex)であってもよい。緯糸の密度(本/cm)は、例えば5~50(特に10~40)であってもよく、経糸の密度(本/cm)は、例えば10~300(特に20~100)であってもよい。
歯布(歯付ベルト中の歯布)の平均厚みは、例えば0.3~1.5mm、好ましくは0.5~1.2mmである。なお、原料としての歯布(成形前の歯布)の平均厚みは、例えば0.5~3mm、好ましくは0.75~2.5mmである。
ベルト本体(歯部および背部)と歯布(カバー布)との接着性を高めるため、歯布を形成する布帛には接着処理を施してもよい。接着処理としては、例えば、布帛をRFL処理液に浸漬した後、加熱乾燥する方法;エポキシ化合物またはイソシアネート化合物で処理する方法;ゴム組成物を有機溶媒に溶解してゴム糊とし、このゴム糊に布帛を浸漬処理した後、加熱乾燥する方法;これらの処理方法を組み合わせた方法などが例示できる。これらの方法は、単独でまたは組み合わせて行うことができ、処理順序や処理回数も限定されない。例えば、エポキシ化合物またはイソシアネート化合物で前処理し、さらにRFL処理液に浸漬した後、加熱乾燥してもよい。なお、本願において、接着処理を施した歯布を、歯布前駆体と表記する。
[歯付ベルトの製造方法]
本発明の歯付ベルト(ゴム製歯付ベルトまたは歯付動力伝達ベルト)は、例えば、以下の工法(圧入工法または予備成形工法)で作製してもよい。
(a)圧入工法
図1に示す歯付ベルト1は、例えば、ゴム組成物を圧延して未架橋ゴムシートを得る未架橋ゴムシート調整工程、歯部に対応する形状を有するモールドに歯布前駆体、心線、前記未架橋ゴムシートを順次積層して未架橋積層体を得る成形工程、前記未架橋積層体を架橋して架橋成形体を得る架橋工程、前記架橋成形体を切断して歯付ベルトを得る切断工程を含む圧入工法で作製できる。
(未架橋ゴムシート調整工程)
未架橋ゴムシート調整工程では、バンバリーミキサーなどで混練したゴム組成物を、ロールまたはカレンダーなどで圧延して未架橋ゴムシートを調製する。ゴム組成物が短繊維を含む場合、この圧延の過程で所定の方向に配向(配列)させることができる。詳しくは、所定の間隙を設けた一対のカレンダーロール間にゴム組成物を通してシート状に圧延することにより、圧延方向に短繊維が配向した未架橋ゴムシートを得ることができる。
(成形工程)
成形工程では、歯付ベルトの歯部3に対応する複数の溝部(凹条)を有する円筒状モールドの外周面に、歯布7を形成するための歯布前駆体を巻き付ける。続いて、その外周に、心線5を形成する撚りコードを螺旋状に所定のピッチで(円筒状モールドの軸方向に所定のピッチを有するように)巻き付ける。さらにその外周に、歯部3および背部4を形成する未架橋ゴムシートを巻き付けて未架橋のベルト成形体(未架橋積層体)を形成する。未架橋ゴムシートが短繊維を含む場合、短繊維の配向方向が円筒状モールドの周方向と略平行となるように配置することにより、図1に示すように、短繊維をベルト周方向と略平行に配向させることができる。
(架橋工程)
続いて、架橋工程では、未架橋のベルト成形体が円筒状モールドの外周に配置された状態で、さらにその外周に、蒸気遮断材であるゴム製のジャケットが被せられる。続いて、ジャケットが被せられたベルト成形体および円筒状モールドは、加硫缶等の架橋成形装置の内部に収容される。そして、架橋成形装置の内部でベルト成形体を加熱加圧すると、軟化した未架橋ゴムシートの一部が撚りコードの隙間から内周側へ押出(圧入)される。圧入により、歯布7が歯部3の輪郭に沿った形態に伸張して最も内周側に配置され、その外周側にゴム層が歯部3の輪郭に沿って配置され、さらに外周側に撚りコードが配列し、最も外周側に残りのゴム層(背部4)が配置された層構造が形成される。これと同時に、ベルト成形体に含まれる未架橋および半架橋のゴム成分の架橋反応により各構成部材が接合して一体的に硬化され、スリーブ状の架橋成形体(架橋ベルトスリーブ)が形成される。このように、圧入工法では、成形工程において撚りコードの外周に巻き付けられた未架橋ゴムシート(単一の未架橋ゴムシート)が、歯部3および背部4の双方を形成する。
(切断工程)
最後に、切断工程では、円筒状モールドから脱型した架橋ベルトスリーブを所定の幅に切断することにより、複数の歯付ベルトが得られる。
(b)予備成形工法
図1に示す歯付ベルト1は、例えば、ゴム組成物を圧延して、歯部を形成するための未架橋ゴムシート、背部を形成するための未架橋ゴムシートをそれぞれ得る未架橋ゴムシート調整工程、歯部に対応する形状を有するモールドに歯布前駆体、歯部を形成するための未架橋ゴムシートを積層して得られた予備積層体に、心線、背部を形成するための未架橋ゴムシートを順次積層して未架橋成形体を得る成形工程、前記未架橋成形体を架橋して架橋成形体を得る架橋工程、前記架橋成形体を切断して歯付ベルトを得る切断工程を含む予備成形工法で作製できる。
(未架橋ゴムシート調整工程)
未架橋ゴムシート調整工程では、バンバリーミキサーなどで混練したゴム組成物を、ロールまたはカレンダーなどで圧延して、歯部を形成するための未架橋ゴムシートと、背部を形成するための未架橋ゴムシートとをそれぞれ調製する。ゴム組成物が短繊維を含む場合、この圧延の過程で所定の方向に配向(配列)させることができる。詳しくは、所定の間隙を設けた一対のカレンダーロール間にゴム組成物を通してシート状に圧延することにより、圧延方向に短繊維が配向した未架橋ゴムシートを得ることができる。
(成形工程)
成形工程では、歯付ベルトの歯部3に対応する複数の溝部(凹条)を有する円筒状モールドの外周面に、歯布7を形成するための歯布前駆体を巻き付ける。続いて、その外周に歯部3を形成するための未架橋ゴムシートを巻き付けた積層体を形成し、所定の装置でゴム組成物が軟化する程度の温度(例えば、70~90℃程度)に加熱しつつ、外周側から積層体を加圧し、未架橋ゴムシートのゴム組成物と歯布前駆体とを円筒状モールドの溝部(凹条)に圧入させて歯部3を形成し、半架橋状態の予備成形体(予備積層体)を得る。この圧入させて歯部3を形成する過程で、歯布7が歯部3の輪郭に沿った形態に伸張して最表面に配置され、その外周側にゴム層が歯部3の輪郭に沿って配置される層構造が形成される。未架橋ゴムシートが短繊維を含む場合、短繊維の配向方向が円筒状モールドの周方向と略平行となるように配置することにより、図1に示すように、短繊維をベルト周方向と略平行に配向させることができる。
なお、半架橋状態の予備成形体を得る方法は、円筒状モールドの代わりに、歯部3に対応する複数の溝部(凹条)を有するフラットなプレス用モールド(平型)を用いて、上記の手順で加熱プレスにより平型の溝部(凹条)に、歯部を形成するための未架橋ゴムシートのゴム組成物と歯布前駆体とを圧入させて歯部3を形成する方法でもよい。この方法では、予備成形体を平型から脱型した後、歯部3に対応する複数の溝部(凹条)を有する円筒状モールドに、予備成形体を巻き付けて装着(歯部と溝部とを嵌合)する。
得られた予備成形体の外周面に、心線5を形成する撚りコードを螺旋状に所定のピッチで(円筒状モールドの軸方向に所定のピッチを有するように)巻き付ける。さらにその外周に、背部4を形成する未架橋ゴムシートを巻き付けて未架橋のベルト成形体(未架橋積層体)を形成する。
(架橋工程)
続いて、架橋工程では、未架橋のベルト成形体が円筒状モールドの外周に配置された状態で、さらにその外周に、蒸気遮断材であるゴム製のジャケットが被せられる。続いて、ジャケットが被せられたベルト成形体および円筒状モールドは、加硫缶等の架橋成形装置の内部に収容される。そして、架橋成形装置の内部でベルト成形体を加熱加圧すると、所望の形状が形成されるとともに、ベルト成形体に含まれる未架橋および半架橋のゴム成分の架橋反応により各構成部材が接合して一体的に硬化され、スリーブ状の架橋成形体(架橋ベルトスリーブ)が形成される。
(切断工程)
最後に、切断工程では、円筒状モールドから脱型した架橋ベルトスリーブを所定の幅に切断することにより、複数の歯付ベルトが得られる。
(c)好ましい態様
本発明の歯付ベルト用ゴム組成物は、粘度が低いために、圧入工法であっても、歯の形状不良が発生するのを抑制できる。そのため、前記製造方法のうち、本発明の製造方法としては、圧入工法で歯部を形成する製造方法が好ましい。本発明では、圧入工法を採用することにより、予備成型工法に比べて、作業工程を減少することができるため、歯付ベルトの生産性を向上できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で用いた原料、各物性における測定方法または評価方法の詳細を以下に示す。
[ゴム組成物の原料]
複合ポリマー:アランセオ社製「Therban ART 3462」、50質量%のHNBRと39質量%のアクリル酸亜鉛などを含む複合ポリマー、ムーニー粘度22ML(1+4)100℃
HNBR1:アランセオ社製「Therban 3407」、ムーニー粘度70ML(1+4)100℃
HNBR2:アランセオ社製「Therban AT 3404」、ムーニー粘度39ML(1+4)100℃
ナイロン短繊維:旭化成(株)製「レオナ」、平均繊維径27μm
アラミド短繊維:帝人(株)製「テクノーラ」、平均繊維径12μm
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
カーボンブラックHAF:東海カーボン(株)製「シースト3」、平均一次粒子径28nm、ヨウ素吸着量80mg/g
カーボンブラックSRF:東海カーボン(株)製「シーストS」、平均一次粒子径66nm、ヨウ素吸着量26mg/g
シリカ1:オリエンタルシリカズ社製「トクシール255G」、比表面積176m/g
シリカ2:エボニックインダストリーズ社製「ウルトラシル9100GR」、比表面積235m/g
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製「スーパー1500」
可塑剤:(株)ADEKA製「アデカサイザーRS-700」
老化防止剤DCD(4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン):大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD」
老化防止剤MBI(2-メルカプトベンズイミダゾール):大内新興化学工業(株)製「ノクラックMB」
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」
メタクリル酸亜鉛:浅田化学工業(株)製「R-20S」、純度85%
アクリル酸亜鉛:浅田化学工業(株)製「ZDA-90」、純度91%
有機過酸化物:1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、理論活性酸素量9.45%
共架橋剤MPBM(m-フェニレンジマレイミド):大内新興化学工業(株)製「バルノックPM」。
[心線(処理コード)]
直径9μmのEガラスフィラメントを200本集束したストランド[JIS R3413(2012)に記載されている呼称ECG150のストランド]を3本引き揃えて表1に示す組成のRFL液(18~23℃)に3秒間通過させることにより浸漬した後、200~280℃で3分間加熱乾燥して、RFLの接着被膜を形成した。この接着処理の後に、3本のストランドを下撚り数12回/10cmにてS方向に撚った下撚り糸(下撚り糸S)と、同回数Z方向に撚った下撚り糸(下撚り糸Z)を準備した。次に、下撚り糸Sを11本引き揃え、撚り数8回/10cmにてZ方向に撚り、諸撚りコード(諸撚りコードZ)を得た。同様に、下撚り糸Zを11本引き揃え、撚り数8回/10cmにてS方向に撚り、諸撚りコード(諸撚りコードS)を得た。それぞれの諸撚りコードをオーバーコート液(表2に示す組成の未架橋ゴム組成物を10質量%の割合でメチルエチルケトンに溶解させたゴム糊)中を通過させた後に乾燥して、ゴム組成物の接着被膜を備えた処理コード(処理コードSおよび処理コードZ)を作製した。処理コードの総繊度は1400tex、外径は1.1mmであった。
Figure 2024079544000001
Figure 2024079544000002
[歯布(処理帆布)]
経糸として140dtexのナイロン66糸、緯糸として280dtexのナイロン66糸と110dtexのウレタン弾性糸との複合糸を用いて、2/2綾織帆布を製織した。経糸の密度は50本/cm、緯糸の密度は30本/cmとした。製織した帆布をRFL液(心線の処理に用いたものと同じ)に浸漬して乾燥させた後、さらにゴム糊(心線の処理に用いたものと同じ)に浸漬して乾燥させ、厚み0.8mmの接着処理帆布を得た。
[圧縮応力]
表3~6に示す組成を有する架橋ゴム組成物を圧縮した際の応力(圧縮応力)を、JIS K 7181(プラスチック-圧縮特性の求め方)に準拠して測定した。具体的には、表3~6に示す組成を有する未架橋ゴム組成物を温度165℃、時間30分でプレス加熱し、直方体の架橋ゴム型物(25.4mm×25.4mm×12.7mm厚み)を作製した。短繊維は架橋ゴム型物の厚み方向と略平行に配向させた。この架橋ゴム型物をオートグラフに取り付けられた一対の加圧板の間に置き、上側の加圧板を下方に移動させ、架橋ゴム型物の上面と、上側の加圧板の下面とが接触しているが押圧はしていない状態にセットした。この状態から、速度10mm/分で上側の加圧板を下方に移動させることで架橋ゴム型物を圧縮し、圧縮ひずみが8%となった時の応力を圧縮応力として求めた。試験温度は23℃とした。
[架橋ゴムのゴム硬度Hs]
表3~6に示す組成を有する塊状未架橋ゴム組成物をカレンダーロールに通して所定厚みの未架橋圧延ゴムシートを調製した後、得られた未架橋圧延ゴムシートを温度165℃、時間30分でプレス加熱し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。架橋ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、JIS K 6253(2012)(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-硬さの求め方-)に規定されているスプリング式デュロメータ硬さ試験に準拠して、タイプAデュロメータを用いて架橋ゴムシートのゴム硬度Hs(タイプA)を測定した。試験温度は23℃とした。
[熱老化後の破断伸び]
ゴム硬度の測定に使用した架橋ゴムシートをスーパーダンベルカッター((株)ダンベル製)で打抜いて、ダンベル状3号形の試験片を作製した。JIS K 6257(2017)に準拠し、作製した試験片を120℃に設定したギヤー式老化試験機中に7日間放置した後取り出した。取り出した試験片を23℃で24時間放置した後、JIS K 6251(2017)に準拠し、破断伸びを測定した。引張速度は500mm/min、試験温度は23℃とした。
[ベルトの作製]
背部および歯部を形成するための未架橋ゴムシートとして、表3~6に示す組成を有する未架橋ゴムシートを用いて、発明を実施するための形態で説明した圧入工法により、歯形:XR、歯ピッチ:9.525mm、歯数:100、ベルト長さ:952.5mm、ベルト幅:20mmの歯付ベルトを作製した。
[寿命サイクル(耐歯欠け性の評価)]
図2に示すように、歯付ベルト1の歯部を歯せん断治具(歯付プーリの歯形状を想定した剛体)21の突起部21aに引っ掛け、1つの歯を一定圧力(締め付けトルク19.6cNm/20mm幅)で押え付けた状態で、サーボパルサ((株)島津製作所製)によって30Hz(1秒あたり30サイクル)で560Nの負荷を繰り返しかけて、歯欠けが発生するまでのサイクル数(寿命サイクル)を比較した。寿命サイクルが10万回以上を耐歯欠け性に優れると判断した。
[耐熱走行寿命(耐背面亀裂性の評価)]
歯数が21歯の駆動(Dr.)プーリと、歯数が42歯の従動(Dn.)プーリと、外径が52mmの背面テンショナ(Ten.)を、図3に示すように配置して歯付ベルトを掛架し、ベルト張力を147N、駆動プーリの回転数を7200rpm、従動プーリの負荷を3.68kWとし、120℃の雰囲気温度にてベルトを走行させて、ベルトの背面に亀裂が発生するまでの時間を比較した。なお、試験は1000時間を上限として打ち切った。
評価結果を表3~6に示す。
Figure 2024079544000003
Figure 2024079544000004
Figure 2024079544000005
Figure 2024079544000006
実施例1~27は耐歯欠け性と耐背面亀裂性とを高いレベルで両立できていた。特に、実施例2、6、18、25は1000時間以上の耐熱走行寿命を示した上に、耐歯欠け性評価における寿命サイクルも長く、特に良好な結果を示した。これに対して比較例1~5は耐歯欠け性または耐背面亀裂性のいずれかが低い結果となり、これらの特性を両立することはできなかった。
実施例1~5、および比較例5などの比較により、複合ポリマーまたは粉末状の不飽和カルボン酸金属塩の割合が多すぎる場合は、耐背面亀裂性が低下する傾向が見られた。実施例2および実施例7~10などの比較により、補強性充填剤が多すぎる場合は耐背面亀裂性が低下する傾向が見られた。また、補強性充填剤がシリカを含まない場合は圧縮応力と寿命サイクルが明確に低下した。実施例2および実施例11~15などの比較により、短繊維の割合が少なすぎる場合は圧縮応力と寿命サイクル(耐歯欠け性)が低下し、多すぎる場合は耐背面亀裂性が低下する傾向が見られた。実施例16は実施例2に対してナイロン短繊維の長さを2mmから3mmに変更した例であるが、耐背面亀裂性が低下した。この原因としては、短繊維が長い場合はゴムの伸びが阻害されて、亀裂が発生しやすくなったことが考えられる。実施例17は実施例2に対してナイロン短繊維をアラミド短繊維に変更した例であるが、耐背面亀裂性が低下した。この原因としては、短繊維とゴムとの接着性が低下して、補強効果が十分に発揮されなかったことが考えられる。実施例2および実施例18~21などの比較により、可塑剤が少なすぎる場合は耐背面亀裂性が低下する傾向が見られ、多すぎる場合は耐歯欠け性が低下する傾向が見られた。
実施例22は実施例2に対して比表面積の大きいシリカを使用した例であるが、耐歯欠け性は向上したが、耐背面亀裂性は低下した。実施例23は実施例2に対して第2の水素化ニトリルゴムとしてムーニー粘度が低いものを使用した例であるが、熱老化後の破断伸びが大きくなり、耐背面亀裂性は向上することが予想されるが、耐歯欠け性は若干低下した。実施例2および実施例24、25の比較により、カーボンブラックとして平均一次粒子径の大きいソフトカーボンを使用すると、熱老化後の破断伸びが大きくなり、耐背面亀裂性は向上することが予想されるが、圧縮応力と硬度は低下する傾向にあった。実施例2および実施例26、27の比較により、架橋剤を少量にすると、圧縮応力と硬度が低下し、耐歯欠け性が低下し、架橋剤を多量にすると、耐背面亀裂性が低下するとともに、ゴム組成物が硬くなり過ぎるためか、耐歯欠け性も低下した。
比較例1は不飽和カルボン酸金属塩を含む複合ポリマーを含んでいるものの、粉末状の不飽和カルボン酸金属塩を添加しなかったためか、耐歯欠け性および耐背面亀裂性が劣っていた。比較例2は粉末状の不飽和カルボン酸金属塩を多く含む例であるが、耐背面亀裂性が大きく劣っていた。比較例3は複合ポリマーを使用しない代わりに粉末状の不飽和カルボン酸金属を多めに配合した例であり、比較例4は粉末状の不飽和カルボン酸金属塩を配合しない代わりに複合ポリマーの配合量を多くした例であるが、比較例3では耐歯欠け性および耐背面亀裂性が劣り、比較例4では耐背面亀裂性が劣っていた。このことより、複合ポリマーと粉末状の不飽和カルボン酸金属塩の両方を配合することが重要であると考えられる。比較例5はHNBRを用いずに複合ポリマーのみを用いた例であるが、耐背面亀裂性が劣っていた。
本発明の歯付ベルト(かみ合い伝動ベルトまたは歯付伝動ベルト)は、歯付プーリと組み合わせて、入力と出力との同期性が求められる種々の分野、例えば、自動車や自動二輪車などの車両における動力伝達機構、産業機械のモータ、ポンプ類などの動力伝達機構、自動ドア、自動化機械などの機械類、複写機、印刷機などに利用できる。なかでも、車両や産業機械などのエンジンに用いられる歯付ベルトとして好適であり、高剛性で耐歯欠け性に優れるとともに、高温下でも熱劣化によるゴムの柔軟性の低下が抑制されて耐背面亀裂性にも優れる点から、自動車の内燃機関などにおけるオーバーヘッドカムシャフト(OHC)駆動エンジン用歯付ベルトとして特に好適である。
1…歯付ベルト
2…ベルト本体
3…歯部
4…背部
5…心線
6…短繊維
7…歯布(カバー布)

Claims (14)

  1. 第1の水素化ニトリルゴム(A1)および第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)を含む複合ポリマー(A)と、
    第2の水素化ニトリルゴム(B)と、
    第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)とを含み、
    前記第1の不飽和カルボン酸金属塩(A2)の割合が、前記第1の水素化ニトリルゴム(A1)100質量部に対して1~100質量部であり、
    前記複合ポリマー(A)の割合が、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して10~80質量部であり、かつ
    前記第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)の割合が、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して1~45質量部である
    歯付ベルト用ゴム組成物。
  2. 前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して15~60質量部の割合で、補強性充填剤(D)を含む請求項1記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  3. 前記補強性充填剤(D)がカーボンブラックおよびシリカを含み、
    前記シリカの割合が、前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して15質量部以上であり、かつ
    前記シリカの割合が、前記カーボンブラック100質量部に対して100~200質量部である請求項2記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  4. 前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して3~15質量部の割合で、短繊維(E)を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  5. 前記短繊維(E)が脂肪族ポリアミド短繊維を含む請求項4記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  6. 前記短繊維(E)の平均繊維長が0.5~3mmである請求項4記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  7. 前記複合ポリマー(A)および前記第2の水素化ニトリルゴム(B)の合計100質量部に対して5~15質量部の割合で、可塑剤(F)を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  8. 架橋ゴム組成物における8%圧縮応力が2.6MPa以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  9. 架橋ゴム組成物におけるゴム硬度Hs(タイプA)が88~93°である請求項1~3のいずれか一項に記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  10. 前記複合ポリマー(A)のムーニー粘度が50ML(1+4)100℃以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  11. 前記第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)が粉末状である請求項1~3のいずれか一項に記載の歯付ベルト用ゴム組成物。
  12. 前記複合ポリマー(A)と、前記第2の水素化ニトリルゴム(B)と、前記第2の不飽和カルボン酸金属塩(C)とを混合する請求項1~3のいずれか一項に記載の歯付ベルト用ゴム組成物の製造方法。
  13. 請求項1~3のいずれか一項に記載の歯付ベルト用ゴム組成物を含む歯付ベルト。
  14. 圧入工法で歯部を形成する請求項13記載の歯付ベルトの製造方法。
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