JP2024070251A - ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを含みながら、製造時、貯蔵時及び/又は加工時のホルムアルデヒドの発生が少ない、ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法、並びに当該ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することを目的とする。【解決手段】ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを含む樹脂組成物であって、前記セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が0.5μmol/g~50μmol/gであり、前記セルロース微細繊維のカルボキシ基濃度が200μmol/g以下であり、前記セルロース微細繊維の数平均繊維径が1000nm以下である、樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法、並びに当該ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性等において優れた特性を持っており、電気機器、自動車部品、精密機械部品等の広範な用途における、構造材料、機構部品等として広く使用されている。
一般に、樹脂を主体とする成形体においては、機械特性向上の目的で各種フィラーが配合されることが多い。このようなフィラーとしては、近年、低比重、かつ再生可能な材料であるという利点に着目して、セルロースの利用が模索されている。中でも、セルロース微細繊維は、使用量当たりの物性向上効果が良好である点で有利である。
セルロースはその水酸基に起因して本質的に親水性であり、セルロース微細繊維を樹脂中に均一に分散させることはしばしば困難であることから、従来、セルロース微細繊維の樹脂中での分散性を向上させる手法が種々提案されている。例えば、特許文献1は、樹脂と、平均繊維径が4~1000nmである繊維状フィラーとを含む複合体組成物を記載し、繊維状フィラーは、セルロース繊維の水酸基の一部がアルデヒド及び/又はカルボキシ基に酸化されているものであってよいことを記載する。
特開2010-116477号公報
ポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物を製造する際には、当該樹脂組成物の製造時、貯蔵時及び/又は加工時に熱、酸等によりポリアセタール樹脂が分解してホルムアルデヒドが発生する場合がある。ポリアセタール樹脂の分解は、当該ポリアセタール樹脂自体の機械特性の低下に加え、ホルムアルデヒドによる作業環境への悪影響という問題を招来する。従来、ポリアセタール樹脂組成物の製造に際しては、当該樹脂組成物中にヒンダードフェノール系等の酸化防止剤を含有させることでホルムアルデヒドの発生を抑制してきたが、フィラーとしてセルロースを用いる場合、上記の安定剤による効果は必ずしも十分ではなかった。例えば、特許文献1に記載される酸化されたセルロース繊維は樹脂との親和性が良好であり得るが、ポリアセタール樹脂と組合されると当該ポリアセタール樹脂由来のホルムアルデヒド発生を促進し得る。
本発明の一態様は、上記の課題を解決し、ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを含みながら、製造時、貯蔵時及び/又は加工時のホルムアルデヒドの発生が少なく、良好な機械特性を示す、ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法、並びに当該ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することを目的とする。
本開示は、以下の項目を包含する。
[項目1]
ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを含む樹脂組成物であって、
前記セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が0.5μmol/g~50μmol/gであり、
前記セルロース微細繊維のカルボキシ基濃度が200μmol/g以下であり、
前記セルロース微細繊維の数平均繊維径が1000nm以下である、樹脂組成物。
[項目2]
アルデヒド基ブロック剤を更に含む、項目1に記載の樹脂組成物。
[項目3]
前記アルデヒド基ブロック剤が、アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、尿素誘導体、ヒドラジド化合物、アクリルアミド重合体、及びポリアミドからなる群から選択される1種以上である、項目2に記載の樹脂組成物。
[項目4]
前記セルロース微細繊維の重量平均分子量が100000以上である、項目1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
[項目5]
前記セルロース微細繊維のMw/Mnが6.0以下である、項目1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
[項目6]
前記セルロース微細繊維中のアルカリ可溶分含有率が10質量%以下である、項目1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
[項目7]
前記セルロース微細繊維の熱分解開始温度TDが200℃以上である、項目1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
[項目8]
前記セルロース微細繊維のハロゲン含有率Hが500質量ppm以下である、項目1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
[項目9]
前記セルロース微細繊維が、エステル化された化学修飾セルロース微細繊維である、項目1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
[項目10]
前記エステル化がアセチル化である、項目9に記載の樹脂組成物。
[項目11]
前記セルロース微細繊維の単位面積あたりのアルデヒド基濃度Aと、前記ポリアセタール樹脂におけるオキシメチレン単位の繰り返し数nに対するオキシエチレン単位の繰り返し数mの比(R=m/n)とが、以下の関係
10((R-5)/3) ≦ A ≦ 10((R+3)/10)
を満たす、項目1~10のいずれかに記載の樹脂組成物。
[項目12]
項目1~11のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法であって、
セルロース繊維原料を液体媒体中で液温85℃以下にて解繊してセルロース微細繊維スラリーを得る解繊工程、
前記セルロース微細繊維スラリーを乾燥させてセルロース微細繊維乾燥体を得る乾燥工程、及び
ポリアセタール樹脂と前記セルロース微細繊維乾燥体とを混合する混合工程、
を含む、方法。
[項目13]
前記解繊工程で生成したセルロース微細繊維スラリー中のセルロース微細繊維が、アルデヒド基濃度0.5μmol/g~50μmol/g、及びカルボキシ基濃度200μmol/g以下を有する、項目12に記載の方法。
[項目14]
項目1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
[項目15]
異形押出成形体である、項目14に記載の成形体。
[項目16]
異形押出成形体の製造方法であって、
項目1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を異形押出する工程を含む、方法。
[項目17]
項目1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物で構成されている、3Dプリント用造形材料。
[項目18]
フィラメント又は粉体の形態を有する、項目17に記載の3Dプリント用造形材料。
[項目19]
項目17又は18に記載の3Dプリント用造形材料を3Dプリンターにより造形してなる、造形物。
[項目20]
造形物の製造方法であって、
項目17又は18に記載の3Dプリント用造形材料を3Dプリンターにより造形する工程を含む、方法。
本発明の一態様によれば、ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを含みながら、製造時、貯蔵時及び/又は加工時のホルムアルデヒドの発生が少なく、良好な機械特性を示す、ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法、並びに当該ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体が提供され得る。
ディスクリファイナーの刃及び溝の配置例について説明する図である。 ディスクリファイナーの刃幅、溝幅及び刃間距離について説明する図である。 実施例19~21で用いた単軸押出機のダイス断面形状を示す図である。
以下、本発明の例示の実施形態(本開示で「本実施形態」ともいう。)について説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
≪ポリアセタール樹脂組成物≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂と、セルロース微細繊維とを含み、一態様において、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が、0.5μmol/g~50μmol/gである。
本発明者らは、ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを含む樹脂組成物において、ポリアセタール樹脂の分解を抑制するための酸化防止剤を使用してもなおホルムアルデヒドの発生が十分抑制されない一因が、セルロース微細繊維中のアルデヒド基の存在であることに着目し、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度を所定以下とすることで、樹脂組成物中のポリアセタール樹脂の分解が良好に抑制されることを見出した。セルロース分子の還元末端のヘミアセタール構造は、通常、一部が開環してアルデヒド基を形成しており、したがってセルロースは本来的にある量のアルデヒド基を有する。また、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)等のフリーラジカルを触媒として製造されるTEMPO酸化セルロースにおいても、C6位カルボキシ基がアルデヒド基として存在する場合がある。アルデヒド基は反応性に富むことから、セルロースが高温下に曝された際に熱分解の起点になり得る。すなわち、アルデヒド基濃度が高いセルロースは、分解され易い状態にあると考えられる。アルデヒド基濃度は、セルロースの分子構造(例えば、多量の低分子量成分の存在)、周囲条件(例えば、酸化性条件)等により増大し得る。
本発明者らの検討によれば、セルロース微細繊維とポリアセタール樹脂を溶融温度以上で組合せると、セルロース微細繊維のアルデヒド基が、ポリアセタールのエーテル結合を開裂させ、ポリアセタール樹脂の分解を促進すると考えられる。そのメカニズムは明確ではないが、ポリアセタール樹脂の溶融温度においてセルロース微細繊維の分子内で脱水反応が発生し、水が生成する。ポリアセタール樹脂が溶融した状態で生成した水とセルロース微細繊維のアルデヒド基とが組み合わさることで、ポリアセタール樹脂のエーテル結合の加水分解により形成されるアルコール末端とセルロース微細繊維のアルデヒド基との脱水反応による結合の形成が起きると考えられる。したがって、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が高いと、樹脂組成物の製造時、貯蔵時及び/又は加工時に、ポリアセタール樹脂及びセルロース微細繊維の分子量低下、したがって物性低下が生じ得る他、ポリアセタール樹脂由来のホルムアルデヒドの発生が促進される。本実施形態の樹脂組成物において、アルデヒド基濃度が所定以下であるセルロース微細繊維を用いることは、セルロース微細繊維自体の分解抑制のみならずポリアセタール樹脂の分解抑制に寄与するため、樹脂組成物の製造時、貯蔵時及び/又は加工時のホルムアルデヒド発生抑制に有利である。
以下、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の好適態様について具体的に説明する。
<ポリアセタール樹脂>
ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(-OCH2-)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、実質的にオキシメチレン単位の繰返しのみからなるポリアセタールホモポリマー、及びオキシメチレン単位と他のモノマー単位とを含有するポリアセタールコポリマーが代表的である。ポリアセタール樹脂は、分岐形成成分及び/又は架橋形成成分を共重合することにより分岐構造及び/又は架橋構造が導入された共重合体、オキシメチレン基の繰返しからなる重合体部位と他の重合体部位とを有するブロック共重合体又はグラフト共重合体なども包含する。
一般に、ポリアセタールホモポリマーとしては、無水ホルムアルデヒド、及び、トリオキサン(ホルムアルデヒドの環状三量体)、テトラオキサン(ホルムアルデヒドの環状四量体)等のホルムアルデヒド環状オリゴマーから選ばれる1種以上のモノマーの重合により製造されたものが挙げられる。通常、重合末端をエステル化することにより、熱分解に対して安定化される。
また、ポリアセタールコポリマーは、一般的に、ホルムアルデヒド及び/又は一般式(CH2O)n[式中、nは3以上の整数を示す]で表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマー(例えば上述のトリオキサン)と、環状エーテル及び/又は環状ホルマールなどのコモノマー(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3-ジオキソラン、及び1,4-ブタンジオールホルマールなどのグリコール若しくはジグリコールの環状ホルマール等)とを共重合することによって製造されたものが挙げられる。通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。
さらに、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又は環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルと、を共重合させて得られる、分岐を有するポリアセタールコポリマー;ホルムアルデヒドの単量体及び/又は環状オリゴマーと、多官能グリシジルエーテルと、を共重合させて得られる、架橋構造を有するポリアセタールコポリマー等も挙げられる。
ポリアセタール樹脂としては、両末端若しくは片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば、ポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体及び/又は環状オリゴマーを重合して得られる、ブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー;両末端若しくは片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体及び/又は環状オリゴマーと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーも挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂は、分解によるホルムアルデヒドの発生が少ない点で、好ましくは、上記したようなポリアセタールコポリマーであり、より好ましくは、構成単位が、オキシメチレン単位(-OCH2-)とオキシエチレン単位(-OC25-)とを含むポリアセタールコポリマー(以下、オキシエチレン単位含有コポリマーともいう。)である。オキシエチレン単位含有コポリマーは、ホルムアルデヒド及び/又は一般式(CH2O)n[式中、nは3以上の整数を示す]で表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマー(例えば上述のトリオキサン)と、エチレングリコール若しくはその環状ホルマールと、任意にその他の成分とを共重合することによって製造できる。
オキシエチレン単位含有コポリマーにおいて、一般式(CH2O)nで表されるオキシメチレン単位の繰り返し数nに対する、一般式(CH2CH2O)mで表されるオキシエチレン単位の繰り返し数mの比(本開示で、エチレン比R=m/nともいう。)は、樹脂組成物の寸法安定性の観点から、下限が、好ましくは0.3、又は0.4であり、樹脂組成物の耐熱性及び機械強度の観点から、上限が、好ましくは1.8、又は1.7、又は1.6、又は1.5である。
ポリアセタール樹脂は、好ましくは、トリオキサン99.9~90質量%と単官能環状エーテル0.1~10質量%との共重合体である。当該共重合体においては、アルコキシ末端基と炭素数が少なくとも2個のヒドロキシアルコキシ末端基との合計が、全末端基の、好ましくは70~99モル%である。末端基数は、公知の方法(具体的には赤外吸収スペクトル法又は核磁気共鳴法、より具体的には特開平5-98028号公報、特開2001-11143号公報等に記載された方法)を利用して測定することができる。
また、ポリアセタール樹脂の、ASTM-D1238に準拠して190℃及び2.16kgf(21.2N)の条件下で測定されるメルトインデックスは、下限が、好ましくは2g/10分、又は4g/10分、又は7g/10分であり、上限が、好ましくは25g/10分、又は20g/10分、又は18g/10分である。メルトインデックスを上記範囲内とすることで、成形流動性を確保しつつ、セルロース微細繊維による補強効果を最大化できる。
ポリアセタール樹脂の数平均分子量は、一態様において、3000以上、又は5000以上、又は10000以上であり、一態様において、1000000以下、又は500000以下、又は200000以下である。また、重量平均分子量は、一態様において、10000以上、又は100000以上、又は200000以上であり、一態様において、2000000以下、又は1000000以下、又は500000以下である。
樹脂組成物の製造に供するポリアセタール樹脂のアルデヒド基濃度は、一態様においてホルムアルデヒド濃度であり、0.001μmol/g以上、又は0.01μmol/g以上、又は0.1μmol/g以上であり、一態様において、10μmol/g以下、又は5μmol/g以下、又は3μmol/g以下、又は1μmol/g以下、又は0.5μmol/g以下である。
本開示で、ポリアセタール樹脂のアルデヒド基濃度は、ドイツ自動車工業組合規格VDA275に記載された方法で測定されるホルムアルデヒド放出量である。具体的には、まず射出成形機を用いて、ポリアセタール樹脂試験片(縦100mm×横40mm×厚み3mm)をJIS K7364-2に準拠した条件で、成形温度200℃で成形する。つづいて、蒸留水50mLをいれたポリエチレン容器にポリアセタール樹脂試験片を蒸留水に触れないよう吊るして入れて密閉し、60℃で3時間加熱しながら蒸留水中にホルムアルデヒドを抽出し、その後室温まで冷却する。冷却後、ホルムアルデヒドを吸収した蒸留水5mLに、アセチルアセトン0.4質量%水溶液5mL、及び酢酸アンモニウム20質量%水溶液5mLを加えて混合液を作製し、40℃で15分間加熱を行い、ホルムアルデヒドとアセチルアセトンの反応を行う。さらに当該混合液を室温まで冷却後、UV分光光度計を用いて412nmの吸収ピークより蒸留水中のホルムアルデヒド量を定量する。そして、ポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒド放出量(μmol/g)は下記式より求める。なお、一般的にVDA275試験ではホルムアルデヒド放出量をμg/gで表すが、本開示ではホルムアルデヒド分子量(30.031)で割り返したμmol/gを用いる。
ポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒド放出量(μmol/g)={蒸留水中のホルムアルデヒド量(mg)/ホルムアルデヒド分子量(30.031)}/測定に用いたポリアセタール樹脂成形品の質量(g)
<セルロース微細繊維>
セルロース微細繊維は、天然セルロース及び再生セルロースから選ばれる各種セルロース繊維原料から得られるものであってよい。天然セルロースとしては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(綿、竹、麻、バガス、ケナフ、コットンリンター、サイザル、ワラ等)から得られる非木材パルプ、動物(例えばホヤ類等)や藻類、微生物(例えば酢酸菌等)、が産生するセルロース繊維集合体を使用できる。再生セルロースとしては、再生セルロース繊維(ビスコース、キュプラ、テンセル等)、セルロース誘導体繊維、エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の極細糸等を使用できる。これらの原料は、必要に応じて、グラインダー、リファイナー等の機械力による叩解、フィブリル化、微細化等によって、繊維径、繊維長、フィブリル化度等を調整したり、薬品を用いて漂白、精製し、セルロース以外の成分(リグニン等の酸不溶成分、ヘミセルロース等のアルカリ可溶多糖類、等)の含有率を調整したりすることができる。セルロース繊維原料は、一態様においてパルプであり、アルデヒド基濃度を所望の範囲に容易に制御できる点で、好ましくはリンター由来である。
[アルデヒド基濃度]
セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度は、一態様において、50μmol/g以下であり、好ましくは、40μmol/g以下、又は30μmol/g以下、又は20μmol/g以下、又は10μmol/g以下である。当該アルデヒド基濃度は、セルロース微細繊維のアルデヒド基とポリアセタール樹脂との結合による樹脂複合体の物性向上の観点、及びセルロース微細繊維の製造容易性の観点から、一態様において、0.5μmol/g以上であり、好ましくは、1μmol/g以上、又は2μmol/g以上、又は3μmol/g以上、又は4μmol/g以上、又は5μmol/g以上である。
セルロース繊維原料のアルデヒド基濃度は、種類により異なるが、一態様において、0μmol/g~200μmol/g程度であり得る。セルロース繊維原料を解繊してセルロース微細繊維を得る際には、熱、酸化性条件、応力等によるセルロース分子の切断が生じ得ることから、セルロース分子末端のアルデヒド基の濃度はセルロース繊維原料と比べてセルロース微細繊維で大きくなる傾向がある。また、セルロース分子の切断は分子量低下をもたらすため、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分子量分布が広くなる。すなわち、一態様では、解繊前後で重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が増大し、低分子量成分の優先的な分解がアルデヒド基濃度を顕著に増大させ得る。本実施形態のセルロース微細繊維は、一態様において、解繊時のアルデヒド基濃度増大が抑制されていることによって、アルデヒド基濃度が特定範囲に制御されている。特に好ましい一態様では、均質なセルロース微細繊維を生成するように高度に制御された解繊条件によって低分子量成分の生成を抑制することで、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が特定範囲に制御されている。
一態様においては、セルロース繊維原料のアルデヒド基濃度が、0μmol/g以上であり、好ましくは0.1μmol/g以上、又は0.5μmol/g以上、又は1μmol/g以上、又は2μmol/g以上、又は3μmol/g以上、又は4μmol/g以上、又は5μmol/g以上、並びに/或いは、200μmol/g以下、好ましくは、100μmol/g以下、又は50μmol/g以下、又は30μmol/g以下、又は20μmol/g以下、又は10μmol/g以下であり、かつ当該セルロース繊維原料から得られたセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が上記範囲内である。
[カルボキシ基濃度]
一態様において、セルロース微細繊維のカルボキシ基濃度は、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、好ましくは1μmol/g以上、又は3μmol/g以上、又は5μmol/g以上、又は10μmol/g以上であり、セルロース微細繊維の耐熱性を保持し、また、カルボキシ基によるポリアセタール樹脂の劣化を防ぐ観点で、一態様において200μmol/g以下であり、好ましくは、150μmol/g以下、又は100μmol/g以下、又は80μmol/g以下、又は50μmol/g以下である。
セルロース繊維原料のカルボキシ基濃度は、種類により異なるが、一態様において、0μmol/g~200μmol/g程度であり得る。セルロース繊維原料を解繊してセルロース微細繊維を得る際には、熱、酸化性条件、応力等によるセルロース分子の切断又は変性が生じ得ることでカルボキシ基濃度がセルロース繊維原料と比べてセルロース微細繊維で大きくなる傾向がある。また、セルロース分子の切断は分子量低下をもたらすため、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分子量分布が広くなる。すなわち、一態様では、解繊前後で重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が増大し、低分子量成分の優先的な分解がカルボキシ基濃度を顕著に増大させ得る。本実施形態のセルロース微細繊維は、一態様において、解繊時のカルボキシ基濃度増大が抑制されていることによって、カルボキシ基濃度が特定範囲に制御されている。特に好ましい一態様では、均質なセルロース微細繊維を生成するように高度に制御された解繊条件によって低分子量成分の生成を抑制することで、セルロース微細繊維のカルボキシ基濃度が特定範囲に制御されている。
一態様においては、セルロース繊維原料のカルボキシ基濃度が、0μmol/g以上であり、好ましくは1μmol/g以上、又は3μmol/g以上、又は5μmol/g以上、又は10μmol/g以上であり、200μmol/g以下、又は150μmol/g以下、又は100μmol/g以下、又は80μmol/g以下、又は50μmol/g以下である。
[セルロース繊維原料及びセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度及びカルボキシ基濃度]
アルデヒド基濃度は、以下の方法で求める。セルロース繊維原料スラリー(固形分率0.5質量%)又はセルロース微細繊維スラリー(固形分率0.5質量%)を60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム水溶液量(V)から、下式を用いて官能基量1を決定する。該官能基量1がカルボキシ基の量(カルボキシ基濃度)を示す。
官能基量(mmol/g)=V(ml)×0.05/セルロース微細繊維の固形分質量(g)
次に、セルロース繊維原料スラリー及びセルロース微細繊維スラリーを、酢酸でpHを4~5に調整した2%亜塩素酸ナトリウム水溶液中でさらに48時間常温で酸化し、上記手法によって再び官能基量2を測定する。この酸化によって追加された官能基量(=官能基量2-官能基量1)を算出し、アルデヒド基濃度とする。
一態様において、本開示のセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度はポリアセタール樹脂組成物中のセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度であってよい。測定方法は以下のとおりである。すなわち、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールでポリアセタール樹脂組成物の樹脂成分を溶解させ、セルロース微細繊維を抽出し、遠心分離と前記溶媒での再分散を繰り返し、十分に洗浄する。洗浄したセルロース微細繊維は水でさらに洗浄し、セルロース微細繊維スラリー(固形分率0.5質量%)を調製し、上述の手法でアルデヒド基濃度を算出する。
[数平均繊維長、数平均繊維径、及びL/D比]
一態様において、セルロース微細繊維の数平均繊維長Lは、セルロース微細繊維による物性向上効果を良好に発現する観点から、好ましくは、100nm以上、又は500nm以上、1μm以上、又は5μm以上、又は10μm以上、又は20μm以上であり、樹脂組成物中でセルロース微細繊維を良好に分散させる観点から、好ましくは、1000μm以下、又は800μm以下、又は500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下である。
一態様において、セルロース微細繊維の数平均繊維径Dは、セルロース微細繊維による物性向上効果を良好に得る観点から、好ましくは2nm以上、又は4nm以上、又は5nm以上、又は10nm以上、又は15nm以上、又は20nm以上であり、一態様において、1000nm以下であり、好ましくは、900nm以下、又は800nm以下、又は700nm以下、又は600nm以下、又は500nm以下、又は400nm以下、又は300nm以下、又は200nm以下である。
セルロース微細繊維の数平均繊維長L/数平均繊維径D比は、セルロース微細繊維による物性向上効果を良好に発現する観点から、好ましくは、30以上、又は50以上、又は80以上、又は100以上、又は120以上、又は150以上であり、樹脂組成物中でセルロース微細繊維を良好に分散させる観点から、好ましくは5000以下、又は3000以下、又は2000以下、又は1000以下である。
一態様において、本開示のセルロース微細繊維の数平均繊維長L、数平均繊維径D及びL/D比は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて以下の手順で測定される値である。セルロース微細繊維の水分散液をtert-ブタノールで置換し、0.001~0.1質量%まで希釈し、高剪断ホモジナイザー(例えばIKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×3分間で分散させ、オスミウム蒸着したシリコン基板上にキャストし、風乾したものを測定サンプルとし、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)で計測して求める。具体的には、少なくとも100本の繊維状物質が観測されるように倍率が調整された観察視野にて、無作為に選んだ100本の数平均繊維長及び数平均繊維径を計測する。そして、それぞれの数平均値を数平均繊維径L及び数平均繊維径Dとし、比(L/D)を算出する。
[比表面積]
一態様において、本開示のセルロース微細繊維の比表面積は、セルロース微細繊維による物性向上効果を良好に発現する観点から、一態様において、0.1m2/g以上、又は0.5m2/g以上、又は1.0m2/g以上、又は2.0m2/g以上、又は3.0m2/g以上であり、製造容易性の観点から、一態様において、500m2/g以下、又は400m2/g以下、又は300m2/g以下、又は200m2/g以下、又は100m2/g以下、又は50m2/g以下である。
セルロース微細繊維の比表面積は、比表面積・細孔分布測定装置(例えば、カンタクローム・インスツルメンツ社製、商品名「Nova-4200e」)にて、後述する多孔質シートを105℃で5時間真空乾燥し、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P0)が0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定する(BET多点法)。
[結晶多形]
セルロースの結晶多形としては、I型、II型、III型、IV型などが知られており、その中でも特にI型及びII型は汎用されており、III型、IV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。セルロース微細繊維の結晶多型がI型、又はII型であると繊維の力学物性(強度、寸法安定性)が高く、セルロース微細繊維を樹脂に分散した際の樹脂組成物の強度、寸法安定性が高いため好ましい。
[結晶化度]
セルロース微細繊維の結晶化度は、好ましくは55%以上、又は60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上である。結晶化度が大きいほどセルロース自体の力学物性(強度、寸法安定性)が高いため、セルロース微細繊維を樹脂に分散した際に、樹脂組成物の強度、寸法安定性が高い傾向にある。セルロース微細繊維の結晶化度について上限は特に限定されず、高い方が好ましいが、生産上の観点から好ましい上限は99%である。
ここでいう結晶化度は、セルロース微細繊維がセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10~30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=[I(200)-I(amorphous)]/I(200)×100
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
また結晶化度は、セルロースがセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースライン(2θ=8°および15°を結ぶ線)のピーク強度h1から、下記式によって求められる。
結晶化度(%) =(h0-h1) /h0 ×100
[重合度]
また、セルロース微細繊維の重合度は、好ましくは100以上、又は150以上、又は200以上、又は300以上、又は400以上、又は450以上であり、好ましくは3500以下、又は3300以下、又は3200以下、又は3100以下、又は3000以下である。
加工性と機械的特性発現との観点から、セルロース微細繊維の重合度を上述の範囲内とすることが望ましい。加工性の観点から、重合度は高すぎない方が好ましく、機械的特性発現の観点からは低すぎないことが望まれる。
セルロース微細繊維の重合度は、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」の確認試験(3)に記載の銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従って測定される平均重合度を意味する。
なお、化学修飾されたセルロース微細繊維の重合度に関しては、化学修飾基の存在により正確な算出ができない場合がある。この場合においては化学修飾セルロース微細繊維の原料である化学修飾する直前のセルロース微細繊維、又は、化学修飾する直前のセルロース繊維原料の重合度を化学修飾されたセルロース微細繊維の重合度とみなしてよい。
[Mw,Mn,Mw/Mn]
一態様において、セルロース微細繊維の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100000以上、又は150000以上、又は180000以上、又は200000以上、又は250000以上である。一態様において、セルロース微細繊維の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000以上、又は20000以上、又は30000以上、又は40000以上、又は50000以上である。一態様において、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは6.0以下、又は5.6以下、又は5.4以下である。重量平均分子量が大きいほどセルロース分子の末端基の数は少ないことを意味する。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は分子量分布の幅を表すものであることから、Mw/Mnが小さいほどセルロース分子の末端の数は少ないことを意味する。セルロース分子の末端は熱分解の起点となるため、セルロース微細繊維のセルロース分子の重量平均分子量が大きいだけでなく、重量平均分子量が大きいと同時に分子量分布の幅が狭い場合に、特に高耐熱性のセルロース微細繊維が得られる。セルロース微細繊維の重量平均分子量(Mw)は、セルロース繊維原料の入手容易性の観点から、例えば600000以下、又は500000以下、又は400000以下であってよい。セルロース微細繊維の数平均分子量(Mn)は、セルロース繊維原料の入手容易性の観点から、例えば200000以下、又は150000以下、又は100000以下、又は80000以下、又は60000以下であってよい。重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)はセルロース微細繊維の製造容易性の観点から、例えば1.5以上、又は1.7以上、又は2以上であってよい。Mwは、目的に応じたMwを有するセルロース繊維原料を選択すること、セルロース繊維原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、特に解繊を制御された穏やかな条件で行うこと等によって上記範囲に制御できる。Mw/Mnもまた、目的に応じたMw/Mnを有するセルロース繊維原料を選択すること、セルロース繊維原料に対して物理的処理及び/又は化学的処理を適度な範囲で適切に行うこと、特に解繊を制御された穏やかな条件で行うこと等によって上記範囲に制御できる。セルロース繊維原料のMw及びMw/Mnの各々は一態様において上記範囲内であってもよい。Mwの制御、及びMw/Mnの制御の両者において、上記物理的処理としては、マイクロフリュイダイザー、ボールミル、ディスクミル等の乾式粉砕若しくは湿式粉砕、擂潰機、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波装置等による衝撃、剪断、ずり、摩擦等の機械的な力を加える物理的処理を例示でき、上記化学的処理としては、蒸解、漂白、酸処理、酵素処理、再生セルロース化、加水分解処理等を例示できる。
なお、化学修飾されたセルロース微細繊維のMw,Mn,Mw/Mnに関しては、化学修飾基の存在により正確な算出ができない場合がある。この場合においては化学修飾セルロース微細繊維の原料である化学修飾する直前のセルロース微細繊維、又は、化学修飾する直前のセルロース繊維原料のMw,Mn,Mw/Mnを化学修飾されたセルロース微細繊維のMw,Mn,Mw/Mnとみなしてよい。
ここでいうセルロース微細繊維の重量平均分子量及び数平均分子量とは、セルロース微細繊維を塩化リチウムが添加されたN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させたうえで、N,N-ジメチルアセトアミドを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィによって求めた値である。
[アルカリ可溶多糖類及び酸不溶性成分]
セルロース繊維原料は、アルカリ可溶多糖類、及び酸不溶成分(リグニン等)を含有するため、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程及び漂白工程を経て、アルカリ可溶分及び硫酸不溶成分を減らしても良い。他方、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程及び漂白工程はセルロースの分子鎖を切断し、重量平均分子量、及び数平均分子量を変化させてしまうため、セルロース繊維原料の精製工程及び漂白工程は、セルロース微細繊維の重量平均分子量、及び重量平均分子量と数平均分子量との比が適切な範囲となるようにコントロールされていることが望ましい。
また、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程及び漂白工程によってセルロース微細繊維が低分子量化すること、及びセルロース繊維原料が変質してアルカリ可溶分の存在比率が増加することが懸念される。アルカリ可溶分は耐熱性に劣り、アルデヒド基濃度が増大するため、セルロース繊維原料の精製工程及び漂白工程は、セルロース繊維原料に含有されるアルカリ可溶分の量が一定の値以下の範囲となるようにコントロールされていることが望ましい。
セルロース微細繊維が含み得るアルカリ可溶多糖類は、ヘミセルロースのほか、β-セルロース及びγ-セルロースも包含する。アルカリ可溶多糖類とは、植物(例えば木材)を溶媒抽出及び塩素処理して得られるホロセルロースのうちのアルカリ可溶部として得られる成分(すなわちホロセルロースからα-セルロースを除いた成分)として当業者に理解される。
一態様において、セルロース微細繊維中のアルカリ可溶分含有率は、溶融混練時のセルロース微細繊維の機械強度保持、及び黄変抑制、及びアルデヒド基濃度を本開示の範囲内に制御する観点から、セルロース微細繊維100質量%に対して、好ましくは、20質量%以下、又は18質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下、又は10質量%以下、又は8質量%以下、又は6質量%以下である。上記含有率は、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、0.1質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上であってもよい。
アルカリ可溶分含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より求めることができ、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求められる。なおこの方法は当業界においてヘミセルロース量の測定方法として理解されている。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶分含有率を算出し、算出したアルカリ可溶分含有率の数平均をアルカリ可溶分含有率とする。なお、化学修飾されたセルロース微細繊維のアルカリ可溶分含有率に関しては、化学修飾基の存在により正確に算出することができない場合がある。この場合、化学修飾されたセルロース微細繊維の原料である化学修飾する直前のセルロース微細繊維、又は、化学修飾する直前のセルロース繊維原料のアルカリ可溶分含有率を、化学修飾されたセルロース微細繊維のアルカリ可溶分含有率とみなしてよい。
セルロース微細繊維が含み得る酸不溶成分は、植物(例えば木材)を溶媒抽出した脱脂試料を硫酸処理した後に残存する不溶成分として当業者に理解される。酸不溶成分は具体的には芳香族由来のリグニンであるが、それに限定されない。
一態様において、セルロース微細繊維中の酸不溶成分平均含有率は、セルロース微細繊維の耐熱性低下及びそれに伴う変色を回避する観点から、セルロース微細繊維100質量%に対して、好ましくは、10質量%以下、又は5質量%以下、又は3質量%以下である。上記含有率は、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよい。
酸不溶成分平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載のクラーソン法を用いた酸不溶成分の定量として行う。なおこの方法は当業界においてリグニン量の測定方法として理解されている。硫酸溶液中でサンプルを撹拌してセルロース及びヘミセルロース等を溶解させた後、ガラスファイバーろ紙で濾過し、得られた残渣が酸不溶成分に該当する。この酸不溶成分重量より酸不溶成分含有率を算出する。1つのサンプルにつき3回酸不溶成分含有率を測定し、その数平均を酸不溶成分平均含有率とする。なお、化学修飾されたセルロース微細繊維の酸不溶成分平均含有率に関しては、化学修飾基の存在により正確に算出することができない場合がある。この場合、化学修飾されたセルロース微細繊維の原料である化学修飾する直前のセルロース微細繊維、又は、化学修飾する直前のセルロース繊維原料の酸不溶成分含有率を、化学修飾されたセルロース微細繊維の酸不溶成分含有率とみなしてよい。
[化学修飾]
セルロース微細繊維は、化学修飾されたセルロース微細繊維(化学修飾セルロース微細繊維ともいう)であってよい。化学修飾セルロース微細繊維として、例えば硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ホウ酸エステル等の無機エステル化物、アセチル化、プロピオニル化等の有機エステル化物、メチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル、シアノエチルエーテル等のエーテル化物、セルロースの一級水酸基を酸化してなるTEMPO酸化物等が挙げられる。化学修飾セルロース微細繊維は1種類又は2種類以上修飾基を含んでいても良い。
[アシル置換度(DS)]
セルロース微細繊維が化学修飾(例えばアシル化等の疎水化によって)されている場合、セルロース微細繊維の樹脂中での分散性は良好である傾向がある。一方、例えば分散剤と組合される場合、セルロース微細繊維が非置換又は低置換度であっても樹脂中で良好な分散性を示すことが容易である。セルロース微細繊維がエステル化セルロース微細繊維である場合、アシル置換度(DS)は、熱分解開始温度が高いエステル化セルロース微細繊維を得る点で、好ましくは、0.1以上、又は0.2以上、又は0.25以上、又は0.3以上、又は0.5以上であり、エステル化セルロース微細繊維中に未修飾のセルロース骨格が残存するため、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性と化学修飾由来の高い熱分解開始温度を兼ね備えたエステル化セルロース微細繊維を得ることができる点で、好ましくは、2.0以下、又は1.8以下、又は1.5以下、又は1.2以下、又は1.0以下、又は0.8以下、又は0.7以下、又は0.6以下、又は0.5以下である。
化学修飾セルロース微細繊維の修飾基がアシル基の場合のアシル置換度(DS)は、エステル化セルロース微細繊維の反射型赤外吸収スペクトルから、アシル基由来のピークとセルロース骨格由来のピークとのピーク強度比に基づいて算出することができる。アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピークは1730cm-1に出現し、セルロース骨格鎖に基づくC-Oの吸収バンドのピークは1030cm-1に出現する。エステル化セルロース微細繊維のDSは、後述するエステル化セルロース微細繊維の固体NMR測定から得られるDSと、セルロース骨格鎖C-Oの吸収バンドのピーク強度に対するアシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク強度の比率で定義される修飾化率(IRインデックス1030)との相関グラフを作製し、相関グラフから算出された検量線
置換度DS = 4.13 × IRインデックス(1030)
を使用することで求めることができる。
IRインデックス(1030)= H1730/H1030
式中、H1730及びH1030は1730cm-1、1030cm-1(セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ1900cm-1と1500cm-1を結ぶ線と800cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
固体NMRによるエステル化セルロース微細繊維のDSの算出方法は、凍結粉砕したエステル化セルロース微細繊維について13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C1-C6に帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より下記式で求めることができる。
DS=(Inf)×6/(Inp)
たとえば、修飾基がアセチル基の場合、-CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
用いる13C固体NMR測定の条件は例えば以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
[熱分解開始温度(TD)]
セルロース微細繊維の熱分解開始温度(TD)は、溶融混練時の熱劣化を回避し、機械強度を発揮できるという観点から、一態様において好ましくは、200℃以上、又は210℃以上、220℃以上、又は230℃以上、又は240℃以上、又は250℃以上、又は260℃以上、又は270℃以上、又は275℃以上、又は280℃以上、又は285℃以上である。熱分解開始温度は高いほど好ましいが、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、例えば、320℃以下、又は310℃以下、又は300℃以下であってもよい。
[1%重量減少時温度(T1%),250℃重量減少率(T250℃)]
セルロース微細繊維の1wt%重量減少時の温度(T1%)は、溶融混練時の熱劣化を回避し、機械強度を発揮できるという観点から、一態様において好ましくは、230℃以上、又は240℃以上、又は250℃以上、又は260℃以上、又は270℃以上、又は275℃以上、又は280℃以上、又は285℃以上、又は290℃以上である。T1%は高いほど好ましいが、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、例えば、330℃以下、又は320℃以下、又は310℃以下であってもよい。
セルロース微細繊維の250℃重量減少率(T250℃)は溶融混練時の熱劣化を回避し、機械強度を発揮できるという観点から、一態様において好ましくは、15%以下、又は12%以下、又は10%以下、又は8%以下、又は6%以下、又は5%以下、又は4%以下、又は3%以下である。T250℃は低いほど好ましいが、セルロース微細繊維の製造容易性の観点から、例えば、0.1%以上、又は0.5%以上、又は0.7%以上、又は1.0%以上であってもよい。
本開示で、TDとは、窒素フロー下の熱重量(TG)分析における、横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた値である。後述するセルロース微細繊維の多孔質シートを窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、つづいて、そのまま450℃まで昇温速度:10℃/minで昇温する。150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点として、1wt%重量減少時の温度(T1%)と2wt%重量減少時の温度(T2%)とを通る直線を得る。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度をTDと定義する。
1%重量減少温度(T1%)は、上記TDの手法で昇温を続けた際の、150℃の重量を起点とした1重量%重量減少時の温度である。
セルロース微細繊維の250℃重量減少率(T250℃)は、TG分析において、セルロース微細繊維を250℃、窒素フロー下で2時間保持した時の重量減少率である。セルロース微細繊維を窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、150℃から250℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、そのまま250℃で2時間保持する。250℃に到達した時点での重量W0を起点として、2時間250℃で保持した後の重量をW1とし、下記式より求める。
250℃重量変化率(%):(W1-W0)/W0×100
[ハロゲン含有率H]
本実施形態のセルロース微細繊維においては、セルロースと結合したハロゲンの含有量が好ましくは500質量ppm以下、又は400質量ppm以下、又は300質量ppm以下、又は250質量ppm以下である。一態様に係るセルロース微細繊維においては、セルロースと結合した塩素の含有量が好ましくは500質量ppm以下、又は400質量ppm以下、又は300質量ppm以下、又は250質量ppm以下である。本開示で、セルロース微細繊維中の、セルロースと結合したハロゲン(一態様において塩素)の含有量とは、セルロース微細繊維を下記の[浸漬・濾過処理]に供した後のハロゲン含有率H(一態様において塩素含有量)を意味する。また本開示で、ハロゲン(一態様において塩素)の含有量は、下記の[ハロゲン含有率H測定]に従って測定される値である。セルロースと結合したハロゲン(一態様において塩素)の含有量が上記範囲にあることで、セルロース微細繊維とポリアセタール樹脂とを複合化する際、セルロース微細繊維の熱劣化を抑えるため、長期保存時の安定性に優れ、マテリアルリサイクルのように溶融混練に伴う熱履歴を複数回経ても安定なポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。また上記範囲のハロゲン含有率H(一態様において塩素含有量)は、混練装置、成型装置等の装置内部の腐食の抑制にも有利である。
セルロース微細繊維中にハロゲンが混在している場合、当該ハロゲンは、セルロースに対し、化学的又は物理的な結合によって強固に結び付いていることがある。一態様においては、セルロース微細繊維を、本開示の[浸漬・濾過処理]のように、一旦純水中に25℃で48時間浸漬した後、濾過乾燥するという処理を行った際に、処理前の80質量%以上がセルロース微細繊維中に残存し得る。このようなハロゲンは、セルロースとの強固な結び付きに起因して、セルロース微細繊維を樹脂と複合化する際にも残存し続け、樹脂の分解、装置の腐食等の不都合を招来する。本実施形態のセルロース微細繊維は、一態様において、セルロースと強固に結び付いているハロゲンの含有量が少ないという特徴を有し得るところ、その指標として、本開示の[浸漬・濾過処理]に従った処理後にセルロース微細繊維中になお残存しているハロゲンの含有量を用いる。
[浸漬・濾過処理]
セルロース微細繊維を純水中で、25℃及び48時間にて浸漬処理する。具体的には、後述するセルロース微細繊維多孔質シートを全容量200mLのガラス製ビーカー中に固形分2質量%で純水に浸漬し、3-1モーター(HEIDON製BL-600型、SUS製プロペラ翼、100rpm)で1時間攪拌後に静置する。次いで、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルター(目開き1μm)を用いて減圧濾過し、目付10g/m2のシートを作製し、70℃の通風オーブン中で水分10質量%以下になるまで濾過乾燥を行って、処理後セルロース微細繊維を得る。ここで、水分量は以下の方法で測定される。セルロース試料2.00gをガラス製秤量ビンに導入し、60℃で15時間、その後、105℃で2時間乾燥し、デシケータ内で恒量した後、重量を測定し以下の式で求める。
水分量(質量%)=(乾燥前の試料重量-乾燥後の試料重量)/(乾燥前の試料重量)×100
[ハロゲン含有率H測定]
石英製の試料ボートに、上記の処理後セルロース微細繊維を50mg量りとる。試料ボートを電気炉(例えば、株式会社三菱化学アナリティック製)にセットし1000℃で燃焼する。燃焼により発生したガスは、冷却部を経て常温となり、フッ素樹脂製のチューブを通して吸収液(吸収液は、酒石酸イオン10mg/L、過酸化水素600mg/L、炭酸ナトリウム2.7mmol/L、炭酸水素ナトリウム0.3mmol/Lをイオン交換水に溶解したもの)にバブリングされる。この吸収液をフッ素樹脂製のチューブを通してイオンクロマト分析装置(THERMOFISHER製 INTEGRION CT型)を使用してハロゲンを定量する。この際、前述の測定で得た水分量を処理後セルロース微細繊維から差し引く。最終的に、処理後セルロース微細繊維の乾燥質量(すなわち水を含まない状態)あたりに換算した値(質量ppm)を、本実施形態のセルロースと結合したハロゲンの含有量とする。
本実施形態のセルロース微細繊維が含み得るハロゲンは、一態様において、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、及び/又はアスタチンを含む化合物(すなわちハロゲン化合物)の形態であってよい。ハロゲン化合物は、ハロゲン化物(すなわち、ハロゲンとそれより電気陰性度の低い元素との化合物)、ハロゲン塩等であってよく、無機ハロゲン化合物であっても有機ハロゲン化合物であってもよい。セルロース繊維原料の製造工程における漂白等を勘案すると、セルロース微細繊維は、ハロゲンの中でも、フッ素及び/又は塩素を含む場合が多く、塩素を含む場合が特に多い。ハロゲン含有率H(一態様において塩素含有量)が多いセルロース繊維原料を用いる場合には、セルロース微細繊維の製造工程においてハロゲン含有率H(一態様において塩素含有量)を低減させることによる利点がより顕著である。
[多孔質シート]
セルロース微細繊維の各特性(結晶化度、結晶多形、重合度、Mw、Mn、Mw/Mn、アルカリ可溶分含有率、酸不溶成分平均含有率、TD、T1%、T250℃等)の測定は測定サンプルの形態によって数値が大きく変動することがある。安定した再現性のある測定をするために、測定サンプルは歪みのない多孔質シートを用いる。多孔質シートの作製方法は以下のとおりである。
まず、固形分率が10質量%以上のセルロース微細繊維の濃縮ケーキをtert-ブタノール中に添加し、さらにミキサー等で凝集物が無い状態まで分散処理を行う。セルロース微細繊維固形分重量0.5gに対し、濃度が0.5質量%となるように調整する。得られたtert-ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過する。濾過物はろ紙から剥離させずに、ろ紙と共により大きなろ紙2枚の間に挟み、かつ、そのより大きなろ紙の縁をおもりで押さえつけながら、150℃のオーブンにて5分間乾燥させる。その後、ろ紙を剥離して歪みの少ない多孔質シートを得る。このシートの透気抵抗度Rがシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用する。
透気抵抗度Rの測定は、23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質シートサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(例えば、旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定することで行う。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出する。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
[セルロース繊維原料の物性]
上述したセルロース微細繊維の各種物性について、セルロース繊維原料で測定する場合、同等の手法を用いて測定する。
[樹脂組成物中のセルロース微細繊維の物性]
樹脂組成物中のセルロース微細繊維の各種物性(数平均繊維長、数平均繊維径、L/D比、結晶化度、結晶多形、重合度、Mw、Mn、Mw/Mn、アルカリ可溶分含有率、酸不溶成分平均含有率、TD、T1%、T250℃、DS等)は以下の方法で分析する。樹脂組成物の樹脂成分を溶解できる有機又は無機の溶媒に樹脂組成物中の樹脂成分を溶解させ、セルロース微細繊維を抽出し、前記溶媒で充分に洗浄した後、溶媒をtert-ブタノールに置換する。アセタール樹脂の場合、溶解させる溶媒として1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールが好適である。その後、セルロース微細繊維tert-ブタノールスラリーを前記手法と同様の測定法を用いて分析し、樹脂組成物中のセルロース微細繊維の各種物性を算出する。
[セルロース微細繊維含有率]
樹脂組成物中のポリアセタール樹脂100質量部に対するセルロース微細繊維の量は、良好な補強効果を得る観点から、好ましくは、0.001質量部以上、又は0.01質量部以上、又は0.1質量部以上、又は1質量部以上であり、セルロース微細繊維の樹脂組成物中での良好な分散を安定的に実現する観点から、好ましくは、100質量部以下、又は80質量部以下、又は70質量部以下、又は50質量部以下、又は30質量部以下である。
樹脂組成物100質量%に対するセルロース微細繊維の量は、良好な補強効果を得る観点から、好ましくは、0.001質量%以上、又は0.01質量%以上、又は0.1質量%以上、又は1質量%以上であり、セルロース微細繊維の樹脂組成物中での良好な分散を安定的に実現する観点から、好ましくは、50質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下、又20質量%以下である。
<追加の成分>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上記した各成分に加え、追加の成分を含んでよい。追加の成分としては、アルデヒド基ブロック剤、ギ酸捕捉剤、酸化防止剤、耐候安定剤、分散剤、離型剤、潤滑剤、導電剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、染顔料、顔料、或いは無機充填剤又は有機充填剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[アルデヒド基ブロック剤]
樹脂組成物は、好ましくはアルデヒド基ブロック剤を含む。アルデヒド基ブロック剤は、セルロース微細繊維のアルデヒド基をブロックすることで、ポリアセタール樹脂の分解を抑制できるとともに、ポリアセタール樹脂の分解で生じたホルムアルデヒドのアルデヒド基をブロックすることができる。アルデヒド基ブロック剤は、一態様において、アルデヒド基と脱水縮合反応し得る化合物であり、一態様において、窒素含有化合物である。
窒素含有化合物としては、アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、尿素誘導体、ヒドラジド化合物、アミド化合物(例えばアクリルアミド重合体)、ポリアミド等が挙げられ、これらは、各々を単独、或いは2種以上併用して用いることができる。好ましい態様において、窒素含有化合物は、アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種である。
上記アミノトリアジン化合物としては、例えば、メラミン、2,4-ジアミノ-sym-トリアジン、2,4,6-トリアミノ-sym-トリアジン、N-ブチルメラミン、N-フェニルメラミン、N,N-ジフェニルメラミン、N,N-ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4-ジアミノ-6-フェニル-sym-トリアジン)、アセトグアナミン(2,4-ジアミノ-6-メチル-sym-トリアジン)、2,4-ジアミノ-6-ブチル-sym-トリアジン等が挙げられる。
上記グアナミン化合物としては、脂肪族グアナミン系化合物(モノグアナミン類、アルキレンビスグアナミン類など)、脂環族グアナミン系化合物(モノグアナミン類など)、芳香族グアナミン系化合物[例えば、モノグアナミン類(ベンゾグアナミン及びその官能基置換体など)、α-又はβ-ナフトグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体、ポリグアナミン類、アラルキル又はアラルキレングアナミン類など]、ヘテロ原子含有グアナミン系化合物[例えば、アセタール基含有グアナミン類、テトラオキソスピロ環含有グアナミン類(CTU-グアナミン、CMTU-グアナミンなど)、イソシアヌル環含有グアナミン類、イミダゾール環含有グアナミン類など]などが挙げられる。
上記尿素誘導体としては、例えば、N-置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物等が挙げられる。
上記N-置換尿素としては、例えば、アルキル基等の置換基を有するメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素が挙げられる。
上記尿素縮合体としては、例えば、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。
上記ヒダントイン化合物としては、例えば、ヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、5,5-ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。
上記ウレイド化合物としては、例えば、アラントイン等が挙げられる。
上記ヒドラジド化合物は、カルボン酸(含芳香族、及び/又は含脂環)とヒドラジンとの反応により合成されるカルボン酸モノ/又はジヒドラジド化合物、或いはアルキル基置換モノ/又はジヒドラジド化合物であってよい。カルボン酸モノ/又はジヒドラジド化合物を構成するカルボン酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸等が挙げられ、飽和又は不飽和であってよい。モノカルボン酸の例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタリン酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸、ニトロカルボン酸等が挙げられる。また不飽和カルボン酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等が挙げられる。これらカルボン酸を用いて合成されるカルボン酸モノ(ジ)ヒドラジド化合物としては、例えば、カルボジヒドラジン、シュウ酸モノ(ジ)ヒドラジド、マロン酸モノ(ジ)ヒドラジド、コハク酸モノ(ジ)ヒドラジド、グルタル酸モノ(ジ)ヒドラジド、アジピン酸モノ(ジ)ヒドラジド、セバシン酸モノ(ジ)ヒドラジド、ラウリン酸モノ(ジ)ヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、プロピオン酸モノヒドラジド、ラウリン酸モノヒドラジド、ステアリン酸モノヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフタリン酸ジヒドラジド、p-ヒドロキシベンゾイックヒドラジン、p-ヒドロキシベンゾイックヒドラジン、1,4-シクロへキサンジカルボン酸ジヒドラジン、アセトヒドラジド、アクリロヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ベンゾヒドラジド、ニコチノヒドラジド、イソニコチノヒドラジド、イソブチルヒドラジン、オレイン酸ヒドラジド等が挙げられる。これらカルボン酸の中でも、アジピン酸、セバシン酸、ラウリン酸等のジカルボン酸が好ましく、アジピン酸モノ(ジ)ヒドラジド、セバシン酸モノ(ジ)ヒドラジド、及びラウリン酸モノ(ジ)ヒドラジドが、最も好ましいカルボン酸ヒドラジド化合物である。
これらカルボン酸ヒドラジド化合物の中でも、モノヒドラジド化合物とジヒドラジド化合物の含有率が特定の範囲にある場合、ホルムアルデヒド発生抑制の点で好ましく、更に、長時間連続成形時に発生する炭化物及び変性物の発生抑制、及び金型汚染抑制の点でも好ましい。カルボン酸モノヒドラジド化合物とカルボン酸ジヒドラジド化合物との合計100質量%に対する、カルボン酸モノヒドラジド化合物の含有率は、好ましくは、0.0001~1.0質量%、又は0.0001~0.5質量%、又は0.0001~0.1質量%である。
カルボン酸モノヒドラジド化合物の上記含有率の調整方法としては、カルボン酸ジヒドラジド化合物にモノヒドラジド化合物を添加し調整する方法、及び、前述のカルボン酸とヒドラジンの反応により合成する際、その合成反応条件を調整する方法が挙げられる。カルボン酸とヒドラジンとの合成反応条件を調整する方法では、合成反応時に中間体としてモノヒドラジド化合物が生成する。このモノヒドラジド化合物を洗浄除去することにより、モノヒドラジド化合物の含有率を調整する事が可能である。
上記アミド化合物としては、例えば、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミド、ポリアクリルアミド重合体が挙げられる。
上記アクリルアミド重合体としては、第一級アミド基が30~70mol%であり、0.1~10μmの平均粒子径を有する粒子状のものが好ましい。中でも、好ましいアクリルアミド重合体は、架橋型アクリルアミド重合体で、かつ平均粒子径が10μm以下のものである。更に好ましくは、平均粒子径が5μm以下のアクリルアミド重合体であり、最も好ましくは、架橋型で平均粒子径が3μm以下のアクリルアミド重合体である。
ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との併用により誘導されるポリアミドが含まれる。また、2種以上の異なったポリアミド形成成分により形成される共重合ポリアミドも含まれる。
ポリアミドの融点は、モールドデポジット性、及び成形機内滞留後の色差変化低減の観点から、好ましくは、240℃以上、又は245℃以上、又は250℃以上である。融点が240℃以上のポリアミドとしては、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I/6T等が挙げられる。これらポリアミドの中でも、ポリアミド66、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I/6Tが好ましく、より好ましいのはポリアミド66である。
樹脂組成物中のアルデヒド基ブロック剤の量は、ホルムアルデヒド発生抑制効果を良好に得る観点、樹脂組成物の物性が良好である観点から、ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維との合計100質量部に対して、好ましくは、0.001質量部以上、又は0.005質量部以上、又は0.01質量部以上、又は0.05質量部以上、又は0.1質量部以上であり、金型へのモールドデポジットを予め抑制する点、及び色調、熱安定性の維持、加工時の臭気の抑制、及び機械的特性の観点から、好ましくは、3質量部以下、又は2質量部以下、又は1質量部以下、又は0.7質量部以下、又は0.5質量部以下、又は0.3質量部以下である。
アルデヒド基ブロック剤が窒素含有化合物である場合のポリアセタール樹脂100質量部に対する窒素含有化合物の量は、色調、熱安定性の維持、加工時の臭気の抑制、及び機械的特性の観点より、好ましくは、0.001質量部以上、又は0.005質量部以上、又は0.01質量部以上であり、金型へのモールドデポジットを予め抑制する点、及び色調、熱安定性の維持、加工時の臭気の抑制、及び機械的特性の観点より、好ましくは、3質量部以下、又は2質量部以下、又は1質量部以下、又は0.7質量部以下、又は0.5質量部以下、又は0.3質量部以下である。
アルデヒド基ブロック剤を混合する工程として、特に限定されるものではないが、ホルムアルデヒド発生抑制効果を良好に得る観点、樹脂組成物の物性が良好である観点から好ましくは乾燥工程、又は、混合工程、特に好ましくは乾燥工程である。そのメカニズムは明確ではないが、乾燥工程で添加した場合、アルデヒド基の近傍にアルデヒド基ブロック剤が高濃度で存在することになるため、セルロース微細繊維をポリアセタール樹脂中に溶融混練で分散する際に、高効率でアルデヒド基をブロックすることができると推定される。また、乾燥工程では水を除去する際に加熱するが、セルロース微細繊維のアルデヒド基の近傍に高濃度でアルデヒド基ブロック剤が存在することでアルデヒド基がブロックされると推定され、アルデヒド基濃度が低減する場合がある。
[ギ酸捕捉剤]
樹脂組成物は、好ましくはギ酸捕捉剤を含む。ポリアセタール樹脂の分解が生じるとホルムアルデヒドが生じ、ホルムアルデヒドは容易に酸化されてギ酸となる。ギ酸はポリアセタール樹脂の更なる分解を促進するとともにセルロース微細繊維の分解も促進する。樹脂組成物がギ酸捕捉剤を含むことは、ポリアセタール樹脂及びセルロース微細繊維の分解を抑制して樹脂組成物の機械特性を良好に維持する観点で有利である。ギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムなどの水酸化物;上記金属の、炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、さらには層状複水酸化物が挙げられる。
上記カルボン酸塩のカルボン酸としては、10~36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸-パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸-ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸-ステアリン酸)カルシウム、12ヒドロキシステアリン酸カルシウムが挙げられ、中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシジステアリン酸カルシウムが挙げられる。
ギ酸補捉剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物中のギ酸捕捉剤の量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは、0.001質量部以上、又は0.005質量部以上、又は0.01質量部以上、又は0.05質量部以上、又は0.1質量部以上であり、好ましくは、3質量部以下、又は2質量部以下、又は1質量部以下、又は0.7質量部以下、又は0.5質量部以下、又は0.3質量部以下である。
[酸化防止剤]
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、ポリアセタール樹脂の熱分解又は加水分解の抑制、特にこれらによるホルムアルデヒド生成の抑制に有用である。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3’-メチル-5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-テトラデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、1,4-ブタンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,2-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-t-ブチルフェノール等が挙げられる。
酸化防止剤は、好ましくは、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,2-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]等であり、これらの中でも、窒素含有ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、ポリアセタール樹脂の熱安定性向上の観点から特に好ましい。
窒素含有ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、長期連続成形時におけるモールドデポジット性、成形体外観、及び成形機滞留後の色差変化低減の点で、好ましくは、ヒドラジン構造を含み、より好ましくは、1,2-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジンである。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の融点は、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性の観点から、好ましくは、50℃以上、又は150℃以上、又は200℃以上、又は225℃以上であり、当該酸化防止剤の入手容易性の観点から、好ましくは、300℃以下、又は250℃以下である。なお本開示において、融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、昇温速度10℃/分で測定される値である。
ポリアセタール樹脂100質量部に対する酸化防止剤の量は、成形性の観点から、好ましくは、0.01質量部以上、又は0.02質量部以上、又は0.03質量部以上であり、好ましくは、3質量部以下、2質量部以下、1質量部以下である。
[耐候安定剤]
耐候安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、及びヒンダードアミン系光安定剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3,5-ジ-イソアミル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3,5-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの化合物はそれぞれ1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記シュウ酸アリニド系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2-エトキシ-5-t-ブチル-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2-エトキシ-3’-ドデシルオキザリックアシッドビスアニリドなどが挙げられる。これらの化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルエトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(エチルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-カーボネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-オキサレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-マロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-テレフタレート、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-エタン、α,α’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-p-キシレン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルトリレン-2,4-ジカルバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレン-1,6-ジカルバメート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,4-トリカルボキシレート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物、などが挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも好ましい耐候安定剤は、2-[2’-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。
[分散剤]
<両親媒性分子>
一態様において、分散剤は親水性セグメント及び疎水性セグメントを同一分子内に有する(すなわち両親媒性分子である)ことが、樹脂中にセルロース微細繊維をより均一に分散させる観点で更に好ましい。
親水性セグメントは、親水性構造を含むことによって、セルロース微細繊維との良好な親和性を示す部分である。親水性構造としては、水酸基、チオール基、カルボキシ基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、ボロン酸基、シラノール基、ソルビタン及びショ糖等の糖類に由来する基、グリセリンに由来する基、-OM、-COOM、-SO3M、-OSO3M、-HMPO4、及び-M2PO4(但し、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。)で表される基、並びに、1~3級アミン及び4級アンモニウム塩等を有する。上記4級アンモニウム塩のカウンターアニオンとしては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、並びに、硝酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、及びテトラフルオロボレート等からなる群から選ばれる1つ以上の親水性基が挙げられる。
親水性セグメントとしては、ポリエチレングリコールのセグメント、4級アンモニウム塩構造を含む繰り返し単位が含まれるセグメント、ポリビニルアルコールのセグメント、ポリビニルピロリドンのセグメント、ポリアクリル酸のセグメント、カルボキシビニルポリマーのセグメント、カチオン化グアガムのセグメント、ヒドロキシエチルセルロースのセグメント、メチルセルロースのセグメント、カルボキシメチルセルロースのセグメント、ポリウレタンのソフトセグメント(具体的にはジオールセグメント)等を例示できる。非イオン系のポリオキシエチレン誘導体は特に好ましく、ポリオキシエチレン誘導体のポリオキシエチレン鎖長は、3以上、又は5以上、又は10以上、又は15以上であってよい。鎖長が長いほどセルロース微細繊維との親和性が高まるが、樹脂成形体の所望の特性(例えば機械特性)とのバランスの観点から、ポリオキシエチレン鎖長は、60以下、又は50以下、又は40以下、又は30以下、又は20以下であってよい。
疎水性セグメントとしては、炭化水素を有するセグメント、炭素数3以上のアルキレンオキシド単位を有するセグメント(例えば、PPGブロック)、ポリマー構造を含むセグメント等を例示できる。
炭化水素を有するセグメントとしては、アルキル型、アルケニル型、アルキルエーテル型、アルケニルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型、アルケニルフェニルエーテル型、ロジンエステル型、ビスフェノールA型、βナフチル型、スチレン化フェニル型、及び硬化ひまし油型等が好ましい。疎水基のアルキル鎖、又はアルケニル鎖の炭素数(アルキルフェニル、又はアルケニルフェニルの場合はフェニル基を除いた炭素数)は、好ましくは、5以上、又は10以上、又は12以上、又は16以上である。
ポリマー構造を含むセグメントとしては、アクリル系ポリマー、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリヘキサメチレンアジパミド(6,6ナイロン)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(6,9ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10ナイロン)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(6,12ナイロン)、ポリビス(4‐アミノシクロヘキシル)メタンドデカン等の、炭素数4~12の有機ジカルボン酸と炭素数2~13の有機ジアミンとの重縮合物、ω-アミノ酸(例えばω-アミノウンデカン酸)の重縮合物(例えば、ポリウンデカンアミド(11ナイロン)等)、ε-アミノカプロラクタムの開環重合物であるポリカプラミド(6ナイロン)、ε-アミノラウロラクタムの開環重合物であるポリラウリックラクタム(12ナイロン)等の、ラクタムの開環重合物を含むアミノ酸ラクタム、ジアミンとジカルボン酸とから構成されるポリマー、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、疎水性シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂等が好ましい。
両親媒性分子の構造は特に限定されないが、親水性セグメントをA、疎水性セグメントをBとしたときに、AB型ブロック共重合体、ABA型ブロック共重合体、BAB型ブロック共重合体、ABAB型ブロック共重合体、ABABA型ブロック共重合体、BABAB型共重合体、AとBを含む3分岐型共重合体、AとBを含む4分岐型共重合体、AとBを含む星型共重合体、AとBを含む単環状共重合体、AとBを含む多環状共重合体、AとBを含むかご型共重合体、等が挙げられる。
一態様として、両親媒性分子として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれも使用可能である。分散剤は、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等であってもよい。セルロース微細繊維との親和性の点で、カチオン性界面活性剤、及びノニオン系イオン系界面活性剤が好ましく、耐熱性の観点でノニオン性界面活性剤がより好ましい。
<親水性高分子>
一態様において、分散剤は、親水性高分子であることが好ましい。親水性高分子としては、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、カチオン化グアガム、水溶性ポリウレタン、4級アンモニウム塩構造を含むポリマー、アミド、アミン等からなる群から選択される1種以上を使用することができる。中でも、セルロース誘導体、ポリアルキレングリコールがより好ましく、ポリアルキレングリコールが特に好ましい。
セルロース誘導体は、セルロース系物質であることからセルロースとの親和性が高い一方で、熱可塑性樹脂でもあることから樹脂組成物中でのセルロースの分散安定性向上効果が高く、好ましい。
ポリアルキレングリコールは炭素数2~4のアルキレンオキサイドの付加等により得られ、ポリアセタール樹脂、特にオキシエチレン単位を有するポリアセタール樹脂と、セルロース微細繊維との両方に対する親和性が良好である点で炭素数2のポリエチレングリコールが好ましい。オキシアルキレンの繰り返し数は、高温剛性を高くする点において、好ましくは、10以上、又は20以上、又は30以上、又は40以上、又は50以上、又は60以上、又は70以上、又は80以上、又は85以上、又は90以上、又は95以上、又は100以上であり、加工性の観点から、好ましくは、1000以下、又は900以下、又は800以下、又は700以下、又は600以下、又は550以下、又は500以下である。
一態様においては、ポリアセタール樹脂のオキシメチレン単位数に対するオキシエチレン単位数の比であるエチレン比Rと、ポリエチレングリコールのオキシエチレン繰り返し単位数nとが、下記式:
(R+0.5)/0.015 ≦ n ≦ (R+10)/0.015
を満たす。上記式の関係が満たされる場合、ポリアセタール樹脂とポリエチレングリコールとの高い親和性の寄与により、ポリエチレングリコールがポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維との親和性の向上、したがってポリアセタール樹脂中でのセルロース微細繊維の高分散が達成され、ポリアセタール樹脂組成物の良好な機械特性(例えば、剛性及び靭性)が得られる。上記nは、より好ましくは、(R+0.6)/0.015以上、又は(R+0.7)/0.015以上であり、より好ましくは、(R+9)/0.015以下、又は(R+8)/0.015以下である。
<液状ポリマー>
一態様において、分散剤は、液状ポリマーであることが好ましい。液状ポリマーの具体例としては、液状ゴム、液状ポリオレフィン、液状アクリルポリマー、及び流動パラフィンが挙げられる。
<液状ゴム>
液状ゴムとは、23℃において流動性を有しており、かつ架橋(より具体的には加硫)及び/又は鎖延長によってゴム弾性体を形成する物質を意味する。すなわち液状ゴムは一態様において未硬化物である。また流動性を有しているとは、一態様において、シクロヘキサンに溶解させた液状ゴムを23℃にて胴径21mm×全長50mmのバイアル瓶に入れた後乾燥させることによって、液状ゴムを当該バイアル瓶内に高さ1mmまで充填して密閉し、当該バイアル瓶を上下逆にした状態で24時間静置したときに高さ方向に0.1mm以上の物質の移動が確認できることを意味する。
液状ゴムは、一態様において、ジエン系ゴムを含み、一態様において、共役ジエン系重合体若しくは非共役ジエン系重合体又はこれらの水素添加物を含む。上記の重合体又はその水素添加物はオリゴマーであってもよく、ランダム共重合体。又はブロック共重合体であってもよい。液状ゴムを構成する単量体は、非変性物又は変性物(例えば酸変性物、水酸基変性物等)であってよい。一態様において、液状ゴムは、両末端に反応性基(例えば、水酸基、カルボキシ基、イソシアナト基、チオ基、アミノ基及びハロ基からなる群から選択される1種以上)を有してよく、したがって2官能性であってよい
共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリイソプレン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びポリクロロプレン、及びこれらの誘導体(例えば無水マレイン酸変性物、メタクリル酸変性物、末端水酸基変性物、水添化物、及びこれらの組み合わせなど)等が挙げられる。
非共役ジエン系重合体としては、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴム、エチレン-αオレフィン共重合体等のオレフィン系重合体、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α,β-不飽和ニトリル-アクリル酸エステル-共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
ポリアセタール樹脂100質量部に対する分散剤の量は、樹脂組成物中でのセルロース微細繊維の分散性向上効果を良好に得る観点から、好ましくは、0.1質量部以上、又は1質量部以上、又は2質量部以上、又は3質量部以上、又は4質量部以上、又は5質量部以上であり、過剰の分散剤による樹脂組成物の可塑化等の不都合を回避する観点から、好ましくは、100質量部以下、又は80質量部以下、又は50質量部以下、又は20質量部以下、又は10質量部以下である。
[離型剤及び潤滑剤]
離型剤及び潤滑剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルコール、脂肪酸及びそれらのエステル(すなわちアルコールの脂肪酸エステル)、平均重合度が10~500であるオレフィン化合物、及びシリコーンが好ましいものとして挙げられる。離型剤及び潤滑剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。ポリアセタール樹脂100質量部に対する離型剤及び潤滑剤の合計量は、一態様において、0.01質量部~10質量部であってよい。
[導電剤]
導電剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、導電性カーボンブラック、金属粉末又は繊維が挙げられる。導電剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ポリアセタール樹脂100質量部に対する導電剤の量は、一態様において、0.01質量部~10質量部であってよい。
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、及び未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、熱可塑性樹脂としては、上述した樹脂の変性物も含まれる。ポリアセタール樹脂100質量部に対する熱可塑性樹脂の量は、一態様において、0.01質量部~10質量部であってよい。
[熱可塑性エラストマー]
熱可塑性エラストマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ポリアセタール樹脂100質量部に対する熱可塑性エラストマーの量は、一態様において、0.01質量部~10質量部であってよい。
[染顔料]
染顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
無機系顔料は、樹脂の着色用として一般的に使用されているものであってよく、以下に限定されるものではないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。
有機系顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、縮合アゾ系、イノン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ペリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料が挙げられる。
染顔料は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
染顔料の添加割合は所望の色調により大幅に変わるため一概に規定することは難しいが、一般的には、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05~5質量部の範囲で用いられる。
[充填剤]
無機充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、繊維状、粉粒子状、板状又は中空状の充填剤が用いられる。
繊維状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば:ガラス繊維;炭素繊維;シリコーン繊維;シリカ・アルミナ繊維;ジルコニア繊維;窒化硼素繊維;窒化硅素繊維;硼素繊維;チタン酸カリウム繊維;ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維;等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いウィスカー類、例えばチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等も含まれる。
粉粒子状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば:タルク;カーボンブラック;シリカ;石英粉末;ガラスビーズ;ガラス粉;珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩;酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;炭化珪素;窒化硅素;窒化硼素;各種金属粉末;等が挙げられる。
板状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。
中空状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
有機充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状充填剤が挙げられる。
上記の無機又は有機の充填剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。これらの充填剤としては、表面処理された充填剤、表面処理されていない充填剤の何れも使用可能であるが、ポリアセタール樹脂組成物を用いて得られる成形体の表面平滑性及び機械的特性の観点から、表面処理剤による表面処理の施された充填剤の使用の方が好ましい場合がある。
表面処理剤としては、特に限定されず、従来公知の表面処理剤が使用可能である。表面処理剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤、樹脂酸、有機カルボン酸、有機カルボン酸塩、界面活性剤等が使用できる。具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n-ブチルジルコネート等が挙げられる。
ポリアセタール樹脂100質量部に対する充填剤の量は、一態様において、0.01質量部~10質量部であってよい。
≪ポリアセタール樹脂組成物の製造方法≫
一態様において、ポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂、セルロース微細繊維及び任意に追加の成分を混合することを含む方法により製造できる。ポリアセタール樹脂組成物の製造方法としては、
(1)ポリアセタール樹脂及びセルロース繊維原料を含む混練成分を溶融混練に供し、溶融混練時の剪断力によってセルロース繊維原料を解繊してセルロース微細繊維を生成しつつ樹脂組成物を形成する方法、
(2)セルロース繊維原料を解繊してセルロース微細繊維を得る解繊工程、及びポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを混合する混合工程、を含む方法、及び
(3)セルロース繊維原料を液体媒体中で解繊してセルロース微細繊維スラリーを得る解繊工程、セルロース微細繊維スラリーを乾燥させてセルロース微細繊維乾燥体を得る乾燥工程、及びポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維乾燥体とを混合する混合工程、を含む方法
が挙げられる。セルロース微細繊維が高度に分散した樹脂組成物を得る観点では、上記(3)の方法が好ましい。以下、上記(2)及び(3)の方法の好適例について説明する。
<解繊工程>
本工程では、セルロース繊維原料を解繊してセルロース微細繊維を得る。セルロース繊維原料は、解繊前に前処理に供されてもよい。前処理によって繊維形状、特に繊維長を調整することで、後工程である解繊を比較的緩やかな解繊条件で行っても微細、かつ均質なセルロース微細繊維が得られる。一態様においては、解繊工程で生成したセルロース微細繊維が本開示の範囲、特に0.5μmol/g~50μmol/gのアルデヒド基濃度を有する。
解繊工程において、セルロース繊維原料又はその解繊物の温度は、好ましくは90℃以下、又は85℃以下、又は80℃以下、又は75℃以下、又は70℃以下、又は60℃以下である。このような緩やかな条件での解繊は、解繊時のセルロース中のアルデヒド基濃度増大を抑制する観点で有利である。一態様において、セルロース繊維原料又はその解繊物の温度は0℃以上、又は1℃以上、又は5℃以上、又は10℃以上、又は15℃以上、又は20℃以上、又は30℃以上とされてよい。
一態様において、解繊工程は、セルロース繊維原料又はその解繊物に掛かる圧力が、工程全体を通じて、300MPa以下、又は250MPa以下、又は200MPa以下に維持される条件で行う。このような緩やかな条件での解繊は、解繊時のセルロース中のアルデヒド基濃度増大を抑制する観点で有利である。一態様において、セルロース繊維原料又はその解繊物に掛かる圧力は、解繊工程の一部又は全部において、30MPa以上、又は50MPa以上、又は80MPa以上とされてよい。
[前処理]
前処理は、一態様において、粉砕、磨砕、及び分級から選ばれる1つ以上であってよい。粉砕は、セルロース繊維原料を乾式で粉砕する処理である。磨砕は、セルロース繊維原料を液体媒体に分散して得たスラリーに粉砕処理を施す処理であり、湿式である点で上記粉砕とは区別される。分級は、セルロース繊維原料の繊維長を揃えるための分離操作であり、乾式分級又は湿式分級であってよい。前処理を行う場合、比較的高い固形分濃度(例えば、0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2.0質量%以上)のスラリーであっても、解繊装置の詰まり等のトラブルなく短時間での解繊を行うことができ好ましい。
[溶媒]
液体媒体としては、水並びに/又は他の媒体(例えば、有機溶媒、無機酸、塩基及び/若しくはイオン液体)が挙げられ、1種類又は2種類以上の媒体を含んでいても良い。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~4のアルコール;メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数2~20、好ましくは炭素数2~6のグリコールエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の炭素数2~20、好ましくは炭素数2~8のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3~20、好ましくは炭素数3~6のケトン;直鎖又は分岐状の炭素数1~20、好ましくは1~8の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;ギ酸、酢酸、乳酸等の炭素数1~20のカルボン酸;酢酸エチル、酢酸ビニル等の炭素数2~20、好ましくは炭素数2~6のエステル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の含窒素溶媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒等が例示される。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、解繊処理の操作性の観点から、炭素数1~6のアルコール、炭素数2~6のグリコールエーテル、炭素数2~8のエーテル、炭素数3~6のケトン、炭素数2~5の低級アルキルエーテル、炭素数1~8のカルボン酸、炭素数2~6のエステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が好ましい。
無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸等を例示できるが、解繊性の効率及び取り扱い性の観点から、好ましくは、塩酸、硫酸、及びリン酸からなる群から選択される1種又は2種以上である。
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン等を例示できるが、解繊性の効率及び取り扱い性の観点から、好ましくは、水酸化物、炭酸塩及び有機アミンからなる群から選択される1種又は2種以上である。
本開示におけるイオン液体とは、カチオン部とアニオン部の少なくとも一方に有機イオンを含みイオンのみの融点が100℃以下の液体の塩を指す。イオン液体は、そのカチオン部がイミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、モルフォリニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、及びホスホニウムカチオンからなる群から選ばれる少なくとも1つのカチオンを有することが好ましい。
アニオン成分としては、ハロゲン化物イオン(Cl-、Br-、I-等)、カルボン酸アニオン(例えば総炭素数1~3のカルボン酸アニオン、例えばC25CO2 -、CH3CO2 -、HCO2 -等)、擬ハロゲン化物イオン(すなわち、一価でありハロゲン化物イオンに類似した特性を有するイオン、例えば、CN-、SCN-、OCN-、ONC-、N3 -等)、スルホン酸アニオン、有機スルホン酸アニオン(メタンスルホン酸アニオン等)、リン酸アニオン(エチルリン酸アニオン、メチルリン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等)、ホウ酸アニオン(テトラフルオロホウ酸アニオン等)、過塩素酸アニオン等が挙げられ、解繊性の観点から、ハロゲン化物イオン、及びカルボン酸アニオンが好ましい。
イミダゾリウム系イオン液体としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムホルメイト、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1,3-ジメチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネート、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムブロミド等を挙げることができる。
一態様において、液体媒体は水系媒体であり、水単独、又は、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の一価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ピロリドン系溶媒等のうち1種以上である有機溶媒と、水との混合媒体が挙げられる。有機溶媒と水との混合物における有機溶媒の比率は、好ましくは、50質量%未満、又は30質量%以下、又は20質量%以下である。水比率が高い場合、磨砕性が良好である傾向があり、有機溶媒比率が高い場合、磨砕後のセルロース繊維の凝集が抑制される傾向がある。有機溶媒の比率は、磨砕性と凝集抑制とのバランスに鑑みて設定されることが好ましい。
[解繊]
セルロース繊維原料は、任意に上記前処理を経た後、解繊に供される。解繊は、乾式又は湿式の機械的処理であってよい。解繊処理には単独の装置を1回以上用いても良いし、複数の装置をそれぞれ1回以上用いても良い。解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧又は超高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー、1軸、2軸又は多軸の混練機・押出機高速回転下でのホモミキサー、精製装置(refiner)、デフィブレーター(defibrator)、叩解機、摩擦グラインダー、高せん断フィブリレーター(fibrilator)(例えば、キャビトロンローター/スターター装置)、ディスパージャー(disperger)、ホモゲナイザー(例えば、微細流動化機(microfluidizer))など回転軸を中心として金属又は刃物とパルプ繊維を作用させるもの、或いはパルプ繊維同士の摩擦によるものを使用することができる。本実施形態においては、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度を所望範囲に制御する観点から、セルロース繊維原料に高温及び/又は高圧が掛からない解繊方法が好ましく、例えば、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等が好適である。
解繊工程が湿式である場合、液体媒体は上述で例示したものであってよい。この際のセルロース繊維原料スラリーの液温は、好ましくは、85℃以下、又は80℃以下、又は75℃以下、又は70℃以下である。また、スラリーが凍結しない観点、及び、熱交換のコストを抑制する観点で、スラリーの液温は、好ましくは、1℃以上、又は5℃以上、又は10℃以上、又は15℃以上である。
解繊処理は1段又は多段で行ってよい。多段の場合、同じ装置を複数回使用してもよく、異なる装置を組み合わせて使用してもよい。多段の場合、解繊機構、又は剪断速度の異なる2種類以上の解繊装置を組み合わせることが有効である。多段の方法は、解繊度合を精密に制御できることでセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度の制御が容易である点で、好ましくは、ディスク構成の異なるディスクリファイナーを用いる方法である。ディスクリファイナーとしては、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、及びコニカルリファイナーを例示できるが、解繊を高度に制御する観点では、固定刃と回転刃との間の刃間距離の制御精度が高いシングルディスクリファイナーが好ましい。
ディスクリファイナーを用いる場合には、セルロース繊維原料を解繊溶媒中に適切な固形分濃度で分散させてなるスラリーをタンク内に貯留し、当該スラリーをディスクリファイナーに供給して解繊する。スラリーの固形分濃度は、好ましくは、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.8質量%以上、又は1.0質量%以上であり、好ましくは、6質量%以下、又は3.5質量%以下、又は3質量%以下である。スラリーの媒体としての水は、蒸留水、イオン交換水などの純度の高い水であることが有利である。
ディスクリファイナーの運転においては、タンクに溜めたスラリーからディスクリファイナーを介し元のタンクに戻す循環式の連続処理で解繊処理を行ってもよいが、ディスクリファイナーを介し配管で繋がった2つのタンクを準備し(以下、タンクA,タンクBとする)、まずスラリーを投入したタンクAからディスクリファイナーを介しタンクBへ送液、貯留し、タンクA中のスラリーの処理を終えた段階で、連続的にタンクBからディスクリファイナーを介しタンクAへ送液、蓄積するという過程へ切り替え、以降、これらの工程を交互に繰り返す連続処理で解繊を行うと、スラリーが毎回のディスクリファイナー処理において確実に通過(パス)されるため、スラリーの全量に対し均一なパス回数を施すことができ、解繊程度の均一性、すなわちセルロース微細繊維の品質安定性の観点から、より好ましい。
ディスクリファイナーの運転においては、スラリーの液温は上昇する。解繊時のセルロース中のアルデヒド基濃度増大を抑制する観点でスラリーの液温は熱交換器等を用いて制御することが好ましい。液温は好ましくは85℃以下、又は80℃以下、又は75℃以下、又は70℃以下である。また、スラリーが凍結しない観点、及び、熱交換のコストを抑制する観点で、好ましくは1℃以上、又は5℃以上、又は10℃以上、又は15℃以上である。
ディスクリファイナーを用いて解繊処理する際は、多段(複数種の刃での処理)で行っても、1段(1種類の刃での処理)で行ってもよい。
図1は、ディスクリファイナーの刃及び溝の配置例について説明する図であり、図2は、ディスクリファイナーの刃幅、溝幅及び刃間距離について説明する図である。複数のディスクリファイナーを用いて多段で解繊する場合、少なくとも2種類の異なる刃を有するリファイナーを用いることが好ましい。図1及び2を参照し、具体的な刃の構成としては、図1に示すような刃11及び溝12を有するディスクリファイナーにおいて、図2に示す、刃幅WB、溝幅WG、及び刃幅WBを溝幅WGで除した値(以下、刃溝比ともいう。)が重要であり、刃幅が1.5mm以上、5mm以下、かつ刃溝比が0.1以上、1.0以下である刃を取り付けたリファイナーで解繊処理(以下、前段ともいう。)を施した後、刃幅が0.1mm以上、1.0mm以下、かつ刃溝比が0.5以上、1.0以下である刃を有するリファイナーで解繊処理(以下、後段ともいう。)を施すことが特に好ましい。このような構成のディスクリファイナーによって解繊することで、樹脂中の凝集の原因となる長い繊維長を有する繊維が減少するとともに、フィブリル化率の低い(すなわち毛羽の少ない)セルロース繊維を得ることができる。このとき、前段と後段の間に別の解繊処理を加えてもよい。
また、1種類の刃を用いて1段でディスクリファイナー処理する場合は、刃幅が0.1mm以上、1.0mm以下、かつ刃溝比が0.5以上、1.0以下である刃を有するリファイナーで解繊処理を施すことが特に好ましい。
[ディスクリファイナー処理における刃間距離]
また、図2を参照し、ディスクリファイナーでの解繊においては、二つの刃(具体的には図2中の回転刃21及び固定刃22)の刃間距離WL(以下、単に刃間距離と呼ぶ)を制御することが有利である。刃間距離を制御することで、セルロース微細繊維の繊維長及び解繊度合を制御することが可能である。刃間距離は、好ましくは、0.01mm以上、0.05mm以上であり、好ましくは、0.5mm以下、又は0.3mm以下である。多段での処理を行う場合、前段の処理においては刃間距離を0.01mm以上0.5mm以下、後段の処理においては刃間距離を0.05mm以上0.3mm以下とすることが好ましい。また、1段での処理を行う場合は、刃間距離を0.01mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。尚、刃間距離を調整する際には、広目の刃間距離から、装置の電流値を一定以下に抑えながら徐々に刃間を詰めていくことが好ましい。このような制御により、装置の詰まり又はオーバーロードを防止するとともに、均質性の高いセルロース微細繊維が得られる。
上記のように固定刃と回転刃との刃間距離を高度に制御することは、アルデヒド基濃度が制御されたセルロース微細繊維を製造する上で有利である。例えば、従来のシングルディスクリファイナーの刃間距離調整では、通常、スクリュー式ネジジャッキなどが用いられていることから、回転刃を固定するランナー部の遊びがあるため、ランナー部をスラスト方向に強く引っ張ると0.3mm程度動いてしまう。解繊性を精度良く制御して均質なセルロース微細繊維を得る観点から、この移動量(遊び)は、少ないことが有利であり、好ましくは、0.1mm以下、又は0.08mm以下、又は0.05mm以下である。一態様においては、刃間距離調整機構をボールねじ式ジャッキにすることで上記のトラスト方向の移動量が0.03mmとされたシングルディスクリファイナーを使用してよい。更には、精度よく刃間距離調整を行うために、ボールねじ式ジャッキに減速機を付け、ファインな刃間距離調整ができるようにすることが好ましい。このようなシングルディスクリファイナーを用いることで、ファインな刃間距離調整が可能となるとともに、解繊処理中の刃のブレなく一定の刃間を維持した解繊が可能となる。これにより、刃間を詰めた際の刃同士の接触を防止することで繊維長が短くなりすぎるのを防止し、粗い繊維を低減することが可能となる。このようにして得られる、解繊度合が均一なセルロース微細繊維は、低減された所望範囲のアルデヒド基濃度を有することができる。
[ディスクリファイナー処理でのパス回数]
解繊度合は、セルロース繊維が回転刃と固定刃との間を通過する回数(以下、パス回数ともいう。)によっても制御可能であり、パス回数を増加させることにより、繊維長分布が均質なセルロース微細繊維を生成できる。このようなセルロース微細繊維は、低減された所望範囲のアルデヒド基濃度を有することができる。ここでパス回数とは、前述の刃間距離を目的の刃間距離に詰めてからのリファイナー処理を施した(すなわち回転刃と固定刃との間を通過した)回数を意味する。
ディスクリファイナーのパス回数は、好ましくは、5回以上、又は20回以上、又は40回以上である。回数を増大させれば繊維形状分布が収束していくことからパス回数は多い方が好ましいが、生産性も考慮すると、パス回数の上限としては300回以下が好ましい。
[ディスクリファイナーによる解繊条件の決定方法]
ディスクリファイナー処理によって得られるセルロース微細繊維の形状は、前述したディスクリファイナーの刃の種類、刃間距離、パス回数、濃度などの影響が複合的に作用して制御される。樹脂組成物に用いる際に好ましいセルロース微細繊維の形状を得るためには、粘状叩解条件においてパス数を多くすることが好ましい。粘状叩解とは、繊維を毛羽立たせて解繊していく傾向の叩解方法である。一方、繊維長方向の切断が生じる傾向の叩解方法は遊離叩解と呼ばれる。ディスクリファイナーの刃の構成として、刃の数が多く、刃長が長く、刃幅と溝幅の比(刃溝比)が大きく、接触角度が大きいほど、回転刃と固定刃とのブレードの交錯数が増えるため、1つの交点で繊維に加わる力が分散し、繊維への衝撃回数が増加することで粘状叩解傾向を示す。一方、上記条件がそれぞれ逆の場合、遊離叩解傾向を示す。ディスクリファイナーの刃間距離は、遊離叩解傾向を示す刃を用いる場合は広げることが好ましく、遊離叩解傾向を示す刃を用いる場合は刃間距離を詰めることが好ましいが、刃間距離を詰めすぎると、目詰まり、繊維長の切断による短繊維化、及び過度の解繊を招来することから、刃間距離は0.05mm以上であることが好ましい。セルロース繊維原料の形状(繊維長及び繊維径)、処理濃度、及び使用する刃により、前述の刃間距離及びパス回数を調整してセルロース微細繊維の解繊状態を制御することで、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度を所望範囲に制御することができる。
[ディスクリファイナーと高圧ホモジナイザーの組合せによる多段叩解処理]
ディスクリファイナーで叩解されたセルロース繊維に対し、更に高圧ホモジナイザーによる叩解処理を施すことも好ましい様態の一つである。高圧ホモジナイザーはディスクリファイナーと比べ、繊維を細くする効果が大きい。高圧ホモジナイザー処理は、好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上、より好ましくは80MPa以上の圧力で処理する。圧力の上限は装置の特性上、好ましくは300MPa以下、より好ましくは250MPa以下、さらに好ましくは150MPa以下であってよい。
高圧ホモジナイザーとしては、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザー等、超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)のナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザー等の高圧衝突型の叩解処理機を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であってもよい。
高圧ホモジナイザー処理においても、ディスクリファイナー処理の場合と同様に、タンクに溜めたスラリーから高圧ホモジナイザーを介し元のタンクに戻す循環式の連続処理工程で解繊処理を行ってもよいが、高圧ホモジナイザーを介し配管で繋がった2つのタンクを準備し(タンクA、タンクBとする)、まずスラリーを投入したタンクAから高圧ホモジナイザーを介しタンクBへ送液、貯留し、タンクA中のスラリーの処理を終えた段階で、連続的にタンクBから高圧ホモジナイザーを介しタンクAへ送液、蓄積するという過程へ切り替え、以降、これらの工程を交互に繰り返す連続処理工程で解繊処理を行うと、スラリーが毎回の高圧ホモジナイザー処理において確実に通過(パス)されるため、スラリーの全量に対し均一なパス回数を施すことができ、解繊程度の均一性、すなわちセルロース微細繊維の品質安定性の観点から、より好ましい。
高圧ホモジナイザー処理においても、スラリーの液温は上昇する。解繊時のセルロース中のアルデヒド基濃度増大を抑制する観点でスラリーの液温は熱交換器等を用いて制御することが好ましい。液温は好ましくは85℃以下、又は80℃以下、又は75℃以下、又は70℃以下である。また、スラリーが凍結しない観点、及び、熱交換のコストを抑制する観点で、好ましくは1℃以上、又は5℃以上、又は10℃以上、又は15℃以上である。
高圧ホモジナイザー処理でもセルロース繊維への圧力や熱の印加はあるためアルデヒド基濃度の上昇は確認される場合があるが、高圧ホモジナイザー処理はセルロース繊維を効率良く微細化できる手法であり、ディスクリファイナー処理よりも少ないパス回数で済む。したがって、驚くべきことに高圧ホモジナイザー処理はアルデヒド基濃度上昇の主因にはなりにくく、一方でディスクリファイナー処理の条件選択がアルデヒド基濃度決定に強く影響する。
解繊工程で生成したセルロース微細繊維、一態様においてセルロース微細繊維スラリー中のセルロース微細繊維は、本開示の範囲、特に0.5μmol/g~50μmol/gのアルデヒド基濃度を有することができ、本開示の範囲、特に200μmol/g以下のカルボキシ基濃度を有することができる。
<化学修飾工程>
セルロース微細繊維は修飾化剤によって、例えばセルロース繊維原料の段階、解繊処理中、又は解繊処理後に化学修飾されたものであっても良いし、セルロース微細繊維を含むスラリーの調製中又は調製後、或いは乾燥・造粒工程中又はその後に化学修飾されてもよい。
セルロース微細繊維の修飾化剤としては、セルロースの水酸基と反応する化合物を使用でき、例えば、無機エステル化剤(硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ホウ酸エステル等)、有機エステル化剤(アセチル化剤、プロピオニル化剤等)、エーテル化剤(メチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル、シアノエチルエーテル等)、シリル化剤、TEMPO酸化触媒(セルロースの一級水酸基を酸化)等が挙げられる。好ましい態様において、化学修飾は、エステル化、具体的には有機エステル化剤を用いたエステル化(アシル化)であり、特に好ましくはアセチル化である。有機エステル化剤としては、酸ハロゲン化物、酸無水物、カルボン酸ビニルエステル、及びカルボン酸が好ましい。
酸ハロゲン化物は、下記式で表される化合物からなる群より選択された少なくとも1種であってよい。
1-C(=O)-X
(式中、R1は炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基を表し、XはCl、Br又はIである。)
酸ハロゲン化物の具体例としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、酸塩化物は反応性と取り扱い性の点から好適に採用できる。尚、酸ハロゲン化物の反応においては、触媒として働くと同時に副生物である酸性物質を中和する目的で、アルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。アルカリ性化合物としては、具体的には:トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物;及びピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物;が挙げられるが、これに限定されない。
酸無水物としては、任意の適切な酸無水物類を用いることができる。例えば、
酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;
シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸等の脂環族モノカルボン酸無水物;
安息香酸、4-メチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸無水物;
二塩基カルボン酸無水物として、例えば、無水コハク酸、アジピン酸等の無水飽和脂肪族ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、無水1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸等の無水脂環族ジカルボン酸、及び、無水フタル酸、無水ナフタル酸等の無水芳香族ジカルボン酸無水物等;
3塩基以上の多塩基カルボン酸無水物類として、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の(無水)ポリカルボン酸等が挙げられる。
尚、酸無水物の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
カルボン酸ビニルエステルとしては、下記式:
R-COO-CH=CH2
{式中、Rは、炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基のいずれかである。}で表されるカルボン酸ビニルエステルが好ましい。カルボン酸ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニルからなる群より選択された少なくとも1種であることがより好ましい。カルボン酸ビニルエステルによるエステル化反応のとき、触媒として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、1~3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上を添加しても良い。
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。 アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
1~3級アミンとは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのことであり、具体例としては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
イミダゾール及びその誘導体としては、1-メチルイミダゾール、3-アミノプロピルイミダゾール、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
ピリジン及びその誘導体としては、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピコリン等が挙げられる。
アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-t-ブトキシド等が挙げられる。
カルボン酸としては、下記式で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
R-COOH
(式中、Rは、炭素数1~16のアルキル基、炭素数2~16のアルケニル基、炭素数3~16のシクロアルキル基、又は炭素数6~16のアリール基を表す。)
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、シクロヘキサンカルボン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、メタクリル酸、クロトン酸、オクチル酸、安息香酸、及び桂皮酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらカルボン酸の中でも、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選択される少なくとも一種、特に酢酸が、反応効率の観点から好ましい。
尚、カルボン酸の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又はルイス酸、(例えば、MYnで表されるルイス酸化合物であって、MはB、As,Ge等の半金属元素、又はAl、Bi、In等の卑金属元素、又はTi、Zn、Cu等の遷移金属元素、又はランタノイド元素を表し、nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF3、ClO4、SbF6、PF6又はOSO2CF3(OTf)を表す。)、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
これらエステル化反応剤の中でも、特に、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、及び酢酸からなる群から選択された少なくとも一種、中でも無水酢酸及び酢酸ビニルが、反応効率の観点から好ましい。
<乾燥工程>
本工程では、セルロース微細繊維が液体媒体に分散してなるセルロース微細繊維スラリーを乾燥させることにより、セルロース微細繊維乾燥体を調製できる。
乾燥機としては、特に限定はされないが、ニーダー、プラネタリミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、プロペラミキサー、リボンミキサー、単軸又は二軸のスクリュー押出機、バンバリーミキサー、凍結乾燥機、棚乾燥機、スプレー噴霧乾燥機、流動層乾燥機、ドラムドライヤー等が挙げられる。
乾燥温度は、乾燥効率、及び樹脂組成物中のセルロース微細繊維のナノ分散性、及びマクロ分散性に優れる粉体特性の乾燥体を形成する観点から、例えば20℃以上、又は30℃以上、又は40℃以上、又は50℃以上であってよく、セルロース微細繊維及び追加の成分の熱劣化を生じ難くする観点、及びスラリーの急速乾燥による乾燥体の過度な微粉化を回避する観点から、例えば200℃以下、又は180℃以下、又は160℃以下、又は140℃以下、又は120℃以下、又は100℃以下であってよい。
乾燥温度は、スラリーに接触する熱源の温度であり、例えば、乾燥装置の温調ジャケットの表面温度や、加熱シリンダーの表面温度、熱風の温度で定義される。
減圧度は、大気圧、又は減圧どちらでも良いが、乾燥効率、及び樹脂組成物中のセルロース微細繊維のナノ分散性、及びマクロ分散性に優れる粉体特性の乾燥体を形成する観点から、-1kPa以下、又は-10kPa以下、又は-20kPa以下、又は-30kPa以下、又は-40kPa以下、又は-50kPa以下であってよく、スラリーの急速乾燥による乾燥体の過度な微粉化を回避する観点から、-100kPa以上、又は-95kPa以上、又は-90kPa以上であってよい。
乾燥工程に供するセルロース微細繊維スラリー中のセルロース微細繊維の濃度は、乾燥時のプロセス効率の観点から、好ましくは、1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上、又は5質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上であり、スラリーの粘度の過度な増大、及び凝集による固化を回避して良好な取扱い性を保持する観点から、好ましくは、60質量%以下、又は55質量%以下、又は50質量%以下、又は45質量%以下、又は40質量%以下、又は35質量%以下である。例えば、セルロース微細繊維の製造は希薄な分散液中で行われることが多いが、このような希薄分散液を濃縮することで、スラリー中のセルロース微細繊維濃度を前記好ましい範囲に調整してもよい。濃縮には、吸引ろ過、加圧ろ過、遠心脱液、加熱等の方法を用いることができる。
セルロース微細繊維以外の任意の追加の成分(例えば、上述した分散剤)はセルロース微細繊維スラリーの乾燥前、乾燥中、及び/又は乾燥後に添加してよい。
本発明の一態様は、アルデヒド基濃度が0.5μmol/g~50μmol/gであるセルロース微細繊維を含むセルロース微細繊維乾燥体も提供する。当該セルロース微細繊維の数平均繊維径は本開示の範囲であってよい。
[水分率]
乾燥体の液体媒体含有率は、好ましくは、50質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。液体媒体含有率は、0質量%であってよいが、乾燥体の製造容易性の観点から、例えば、0.1質量%以上、又は1質量%以上、又は1.5質量%以上であってよい。液体媒体含有率は、赤外加熱式水分計を用いて測定される値である。
[平均粒径]
乾燥体の平均粒径は、好ましくは、1μm以上、又は10μm以上、50μm以上、又は100μm以上、又は200μm以上、又は500μm以上であり、好ましくは、5000μm以下、又は4000μm以下、又は3000μm以下、又は2000μm以下である。上記平均粒径は、動的画像解析式粒径分布測定装置(Microtrac社製 CAMSIZER X2)で測定される値である。
[ゆるめ嵩密度]
一態様において、乾燥体のゆるめ嵩密度は、乾燥体の流動性が良好で二軸押出機へのフィード性に優れる点、分散剤の樹脂への移行抑制の観点から、好ましくは、0.01g/cm3以上、又は0.05g/cm3以上、又は0.10g/cm3以上、又は0.15g/cm3以上、又は0.20g/cm3以上、又は0.25g/cm3以上、又は0.30g/cm3以上、又は0.35g/cm3以上、又は0.40g/cm3以上、又は0.45g/cm3以上、又は0.50g/cm3以上であり、乾燥体が樹脂中で容易に崩壊してセルロース微細繊維が樹脂中に良好に分散できる点、及び、乾燥体が重質過ぎず乾燥体と樹脂との混合不良を回避できる点で、好ましくは、0.85g/cm3以下、又は0.80g/cm3以下、又は0.75g/cm3以下である。
[かため嵩密度]
乾燥体のかため嵩密度は、ゆるめ嵩蜜度及び圧縮度を本開示の範囲に制御するのに有用である範囲に制御され、一態様において、好ましくは、0.01g/cm3以上、又は0.1g/cm3以上、又は0.15g/cm3以上、又は0.2g/cm3以上、又は0.3g/cm3以上、又は0.4g/cm3以上、又は0.5g/cm3以上、又は0.6g/cm3以上であり、好ましくは、0.95g/cm3以下、又は0.9g/cm3以下、又は0.85g/cm3以下である。
[圧縮度]
圧縮度は、圧縮度=(かため嵩密度-ゆるめ嵩密度)/かため嵩密度、で算出される値である。ゆるめ嵩密度及びかため嵩密度は、本開示の[実施例]の項に記載した方法で測定される値である。
一態様において、圧縮度は嵩減りの程度を表す。一態様において、乾燥体の圧縮度は、乾燥体の流動性が高過ぎない点で、好ましくは、1%以上、又は5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上である。また、乾燥体の流動性が良好で二軸押出機へのフィード性に優れる点、及び取扱い性に優れる(具体的には、飛散、浮遊、又は粉塵形成が生じ難い)点、熱可塑性樹脂中に乾燥体を良好に分散させる点、分散剤の樹脂への移行抑制の点で、圧縮度は、好ましくは、50%以下、又は45%以下、又は40%以下、又は35%以下、又は30%以下である。
上記、ゆるめ嵩密度、かため嵩密度、及び圧縮度はホソカワミクロン株式会社製パウダーテスター(型番:PT-X)を用いて測定を行う。かため嵩密度測定のタッピング回数は180回で行う。
<混合工程>
本工程では、ポリアセタール樹脂と、乾燥工程で得たセルロース微細繊維乾燥体と、任意に追加の成分とを含む混合成分を混合する。混合は、自転・公転式ミキサー、プラネタリミキサー、ホモジナイザー、プロペラ式攪拌装置、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置、オープンロール、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機等の撹拌手段を用いて行ってよい。一態様において、混合は、押出機を用いた溶融混練である。押出機としては、セルロース微細繊維の分散性を向上させる観点から、同方向回転二軸押出機が好ましい。押出機のシリンダー長(L)をスクリュー径(D)で除したL/Dは、一態様において、40以上、又は50以上であってよい。スクリュー回転数は、一態様において、50ppm以上、又は100ppm以上、又は150ppm以上であってよく、800rpm以下、又は600rpm以下であってよい。押出機のシリンダー内の各スクリューは、楕円形の二翼のねじ形状の搬送スクリュー、ニーディングディスクと呼ばれる混練エレメント、等を組み合わせて最適化してよい。
混合時の混合成分の温度は、セルロース微細繊維の高度な分散の観点から、好ましくは、170℃以上、又は180℃以上、又は190℃以上であり、混合成分の分解抑制、特に、ポリアセタール樹脂及びセルロース微細繊維の分解を抑制することでこれらのアルデヒド基濃度増大を抑制する観点から、好ましくは、250℃以下、又は240℃以下、又は230℃以下である。
混合成分に掛かる圧力は、セルロース分子の切断による低分子量成分の生成を抑制してセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度を良好に制御する観点から、混合工程を通じ、好ましくは、30MPa以下、又は20MPa以下、又は10MPa以下に維持される。混合成分に掛かる圧力は、セルロース微細繊維の高度な分散の観点から、混合工程の一部又は全部において、好ましくは、0.0MPa以上、又は0.1MPa以上、又は0.2MPa以上、又は0.5MPa以上であってよい。
≪ポリアセタール樹脂組成物の形状≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、種々の形状での提供が可能である。具体的には、樹脂ペレット状、シート状、繊維状、板状、棒状等が挙げられるが、樹脂ペレット形状が、後加工の容易性及び運搬の容易性から好ましい。好ましい樹脂ペレット形状としては、丸型、楕円型、円柱型などが挙げられ、形状は押出加工時のカット方式により異なってよい。例えば、アンダーウォーターカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは、丸型になることが多く、ホットカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは丸型又は楕円型になることが多く、ストランドカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは円柱状になることが多い。丸型ペレットの好ましいペレット直径は、1mm以上3mm以下である。円柱状ペレットの好ましい直径は、1mm以上3mm以下であり、好ましい長さは、2mm以上10mm以下である。上記の直径及び長さは、押出時の運転安定性の観点から、下限以上とすることが望ましく、後加工での成形機への噛み込み性の観点から、上限以下とすることが望ましい。
≪成形体及びその用途≫
本発明の一態様はまた、本開示のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形体を提供する。ポリアセタール樹脂組成物は、従来公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形などの方法)で、種々の成形体に成形することができ、特に、射出成形に対して好適である。
一態様において、成形方法は異形成形であってよい。すなわち、一態様において、本実施形態の成形体は異形成形体であってよい。本発明の一態様はまた、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を異形押出する工程を含む、異形押出成形体の製造方法を提供する。
異形押出成形は公知の方法を使用することができる。異形押出成形方法の具体例としては、ポリアセタール樹脂組成物を押出成形機に投入し、内部で加熱しながら混練して、異形押出用のダイから押出し、未冷却の成形品を得る。次いで、未冷却の成形品を冷却ゾーンに連続的に導いて冷却して異形押出成形品を得る方法が挙げられる。
また、ポリアセタール樹脂組成物を得るための溶融混練を行い、その混練機のダイを異形押出用のダイとして押出し、未冷却の成形品を得、次いで、未冷却の成形品を冷却ゾーンに連続的に導いて冷却して異形押出成形品を得る方法が挙げられる。
異形押出時の押出温度の下限値は、ポリアセタール樹脂組成物中の熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合は融点に対して、又は非晶性樹脂の場合はガラス転移点に対して、それぞれ+5℃が好ましく、+10℃がより好ましい。下限値をこの範囲に制御することで、異形押出の生産性を向上させることができる。異形押出時の押出温度の上限値は、ポリアセタール樹脂組成物中の熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合は融点に対して、又は非晶性樹脂の場合はガラス転移点に対して、それぞれ+100℃が好ましく、+80℃が好ましく、+70℃が好ましく、+60℃が好ましい。上限値をこの範囲に制御することで、セルロース微細繊維の劣化を抑制することができるためポリアセタール樹脂組成物の機械特性を維持でき、また異形押出用ダイと冷却ゾーンとの間の樹脂のドローダウンを抑制することができるため異形押出成形品の寸法精度が良好となる。
異形押出成形品としては、断面形状に特に制限はないが、断面形状としては、シート状、パイプ状、チューブ状、及び角状などが好ましい。シート状の場合、シート厚みは0.2~50mm、シート幅は10~1500mmとすることができる。パイプ状若しくはチューブ状の場合、その厚みは0.1~30mm、内径は1~1000mmとすることができる。角状の場合、角部の角度は30~150℃とすることができる。また角部の谷側の最小曲率半径は0.1mmとすることができる。
また、得られた成形体は、自動車部品、電気・電子部品、建材、生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品、レール、パイプ、サッシ、ドア枠、窓枠、手すり、デッキ材、フェンス、各種建材など各種用途に利用することができる。
具体的には、自動車部品としては、インナーハンドル、フェーエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーター、コネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器、カーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される、金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などの機構部品などが挙げられる。
電気・電子部品としては、ポリアセタール樹脂成形体で構成され、かつ金属接点が多数存在する機器の部品又は部材、例えば、オーディオ機器、ビデオ機器、又は、電話機、コピー機、ファクシミリ、ワードプロセサー、コンピューターなどのOA機器、玩具類の部品又は部材、具体的には、シャーシ、ギア、レバー、カム、プーリー、軸受けなどが挙げられる。
更に、照明器具、建具、配管、コック、蛇口、トイレ周辺機器部品などの建材・配管部品、ファスナー類、文具、リップクリーム・口紅容器、洗浄器、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器、エアゾール容器、一般的な容器、注射針のホルダーなどの広範な生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品に好適に使用される。
これらの中でも、高温環境下に置かれ、かつ高い負荷が掛かる用途であるギアに、より好ましく使用可能である。
≪ポリアセタール樹脂組成物の特性≫
[引張降伏強度]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の引張降伏強度は、成形品、例えば摺動性物品の良好な耐久性を得る観点から、50MPa以上、又は60MPa以上、又は65MPa以上、又は70MPa以上、又は73MPa以上、又は75MPa以上、又は80MPa以上であってよく、樹脂組成物の製造容易性の観点から、300MPa以下、又は200MPa以下、又は150MPa以下であってよい。
[引張破断伸度]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の引張破断伸度は、成形品、例えば摺動性物品の良好な耐久性を得る観点から、1.0%以上、又は2.0%以上、又は3.0%以上、又は4.0%以上、又は5.0%以上、又は6.0%以上であってよく、樹脂組成物の製造容易性の観点から、1000%以下、又は500%以下、又は300%以下、又は200%以下であってよい。
[曲げ弾性率]
ポリアセタール樹脂組成物の曲げ弾性率は、成形品、例えば摺動性物品の良好な耐久性を得る観点から、好ましくは、3.0GPa以上、又は4.0GPa以上、又は4.5GPa以上、又は5.0GPa以上であり、樹脂組成物の製造容易性の観点から、例えば、20GPa以下、又は15GPa以下、又は12GPa以下、又は10GPa以下、又は8GPa以下、又は7GPa以下であってよい。
本開示の引張降伏強度、及び、引張破断伸度、及び、曲げ弾性率は、ISO294-3に準拠した多目的試験片をJIS K7364-2に準拠した条件で、成形温度は200℃で成形した上で、ISO527、及びISO178に準拠して測定される。
[高温時の剛性]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、高温での他部材との接触(例えば、ギアの噛み合い)において負荷による変形を抑制するため、高温剛性が高いという特徴を有することが好ましい。具体的には、ポリアセタール樹脂組成物の120℃における貯蔵弾性率は、他部材との接触時の変形を抑制する観点で、好ましくは、1000MPa以上、又は1200MPa以上、又は1300MPa以上、又は1400MPa以上、又は1500MPa以上、又は1700MPa以上である。上限は特にないが、靭性を維持する観点より、3000MPa以下であることが望ましい。
また、本実施形態において、ポリアセタール樹脂組成物は、セルロース微細繊維10質量%配合時の、23℃における貯蔵弾性率に対する120℃における貯蔵弾性率の比が0.4以上であるような成分組成(すなわちポリアセタール樹脂組成物の構成成分の種類及び量)を有することが望ましい。この指標は、セルロース微細繊維のポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物中における分散性の指標である。分散性が高いほど、上記比が大きくなる傾向にある。例えば、セルロース微細繊維を含まない場合、23℃における貯蔵弾性率に対する120℃における貯蔵弾性率の比は、0.3にも満たない。また、平均繊維径が1000nm以上のセルロース繊維を配合した場合も、上記比は0.4に満たない。より少量のセルロース微細繊維では高温剛性を高める観点より、23℃における貯蔵弾性率に対する120℃における貯蔵弾性率の比は、好ましくは0.4以上、又は0.45以上、又は0.5以上である。上限は特にないが、加工性の観点より、好ましくは1.5以下である。
上記貯蔵弾性率は、10mm幅、4mm厚みのISO多目的試験片を用い、固体粘弾性測定装置を用いて、測定温度範囲0℃~150℃(昇温速度:2℃/分)、引張モード、振動周波数10Hz、静的負荷歪0.5%、動的負荷歪0.3%の条件で測定したときの貯蔵弾性率である。なお、23℃及び120℃の温度は、その前後の測定温度をそれぞれの温度に内挿計算して算出される。
[ホルムアルデヒド放出量]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物はホルムアルデヒド放出量が低いほど好ましいが、製造容易性の観点から好ましくは、0.001μmol/g以上、又は0.01μmol/g以上、又は0.05μmol/g以上、又は0.1μmol/g以上であり、一態様において、成形時の作業環境の保全、及び、造形物使用時の使用者の健康障害低減の観点から、好ましくは5μmol/g以下、又は4μmol/g以下、又は3.5μmol/g以下、又は3μmol/g以下である。ホルムアルデヒド放出量は前記記載の手法で算出する。
[ギア耐久時間]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、例えば摺動部材としての利用を想定した場合、長期間使用できる高耐久性であることが好ましい。具体的には、ポリアセタール樹脂組成物で成形したギアが破壊するまでの時間を評価するギア耐久性試験において、ギア耐久時間は、好ましくは100hr以上、又は120hr以上、又は140hr以上、又は150hr以上、又は160hr以上、又は170hr以上である。上限は特にないが、製造容易性の観点より、1000hr以下、又は500hr以下であることが望ましい。ギア耐久時間は実施例にて記載される手法を用い測定する。
[単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度Aとポリアセタール樹脂のエチレン比Rの関係]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、一態様において、単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度A(μmol/m2)とポリアセタール樹脂のエチレン比R(オキシメチレン単位の繰り返し数nに対するオキシエチレン単位の繰り返し数mの比(R=m/n))とが、以下の関係を満たすことが好ましい。なお、単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度Aは、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度(μmol/g)を、セルロース微細繊維の比表面積(m2/g)で除した値である。
10((R-5)/3) ≦ A ≦ 10((R+3)/10)
上記式の関係が満たされる場合、セルロース微細繊維の表面のアルデヒド基とポリアセタール樹脂との結合で機械特性が向上すること、アルデヒド基によるポリアセタール樹脂の分解が抑制されることにより、ポリアセタール樹脂組成物の良好な機械特性(例えば、剛性及び靭性)が得られる。このような関係が成立する理由として下記のように推定される。ポリアセタール樹脂において相対的にオキシメチレン鎖は不安定であり、オキシエチレン鎖は安定である。オキシメチレン鎖比率が増えるほどポリアセタール樹脂として分解しやすくなるが、ここでアルデヒド基量が多いとポリアセタール樹脂の分解が加速し、機械特性が悪化する傾向となる。一方、オキシエチレン鎖比率が増えるとポリアセタール樹脂は分解しにくくなるが、ここでアルデヒド基量が少ないとセルロース微細繊維とポリアセタール樹脂との結合による界面強化が起き難く、機械特性は向上し難い傾向となる。
より好ましくは、10((R-4)/3) ≦ A ≦ 10((R/10)、又は10((R-3)/3) ≦ A ≦ 10((R-1)/10)である。
[単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度Aとハロゲン含有率Hの関係]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、一態様において、単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度A(μmol/m2)とセルロース微細繊維ハロゲン含有率H(質量ppm)とが、以下の関係を満たすことが好ましい。
50 ≦ H/A ≦ 1000
上記式の関係が満たされる場合、ポリアセタール樹脂の高分子量化、及びセルロース微細繊維とポリアセタール樹脂との間の界面強化により、ポリアセタール樹脂組成物の良好な機械特性(例えば、ギア耐久性)が得られる。特にギアのような長期耐久性が求められる用途では、長期使用時のマトリックス樹脂の低分子量化、及びフィラーとマトリックス樹脂との界面剥離を抑制することが可能となる。このような関係が成立する理由として下記のように推定される。アルデヒド基はポリアセタール樹脂を分解する起点となり低分子量化を促進する反面、セルロース微細繊維とポリアセタール樹脂とを結合することで、樹脂組成物の界面強化にも寄与する。一方、セルロース微細繊維に含まれるハロゲン化合物はポリアセタール樹脂の重合触媒としての役割を有する。したがって、ハロゲン含有率Hがアルデヒド基濃度Aより著しく大きく、H/Aが1000を超える場合、ポリアセタール樹脂は高分子量化するものの界面強化がなされず長期物性は劣る傾向となる。一方、ハロゲン含有率Hがアルデヒド基濃度Aより著しく小さく50を下回る場合、界面強化はされやすいがポリアセタール樹脂が著しく低分子量化し長期物性は劣る傾向となる。
上記H/Aの値は、好ましくは、50以上、又は60以上、又は70以上であり、好ましくは、1000以下、又は500以下、又は300以下である。
≪3Dプリント用造形材料及び造形物≫
<3Dプリント用造形材料及びその製造方法>
本発明の一態様は、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物で構成されている3Dプリント用造形材料を提供する。一態様において、3Dプリント用造形材料は、フィラメント、粉体等の所望の形態を有してよく、好ましくはフィラメント又は粉体の形態を有する。ポリアセタール樹脂組成物を所望の形態の3Dプリント用造形材料に成形する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えばフィラメントは、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよいが、成形の容易性からモノフィラメントが好ましい。
フィラメント状造形材料の直径は0.5~5.0mmであることが好ましく、1.0~3.5mmであることがより好ましく、1.5~3.0mmであることが最も好ましい。フィラメント状造形材料の長さは、1m超であることが好ましく、10m超であることがより好ましく、100m超であることがより好ましく、300m超であることが最も好ましい。この範囲にフィラメント状造形材料の形状を制御することで、適用可能な3Dプリンターを広く選択できるようになり、造形時間や、造形物のサイズ、精巧性を適切に設計することが可能となる。フィラメント状造形材料の長さは、一態様において、20000m以下であってよい。
一態様において、フィラメント状造形材料は、ポリアセタール樹脂組成物を加熱溶融させた後、ノズル等の細孔を通過させた後、冷却し、巻き取ることで製造することができる。細孔の径は、フィラメントの径及び巻き取り速度に応じて適宜選択することができるが、製造効率と糸切れ不良発生頻度の観点から、0.5~10.0mmであることが好ましく、0.8~5.0mmであることがより好ましく、1.0~3.0mmであることが最も好ましい。冷却の方法としては、空冷、水冷等の公知の方法を適宜選択できるが、セルロース微細繊維の親水性に起因する吸水を防止する観点から、空冷が好ましい。フィラメントの巻取速度は、製造効率と糸切れ不良発生頻度の観点から、0.1~10m/秒であることが好ましく、0.15~5m/秒であることがより好ましく、0.2~1m/秒であることが最も好ましい。フィラメント状造形材料の製造装置とポリアセタール樹脂組成物の製造装置は、同じでも異なっていても良い。
粉体状造形材料の粒子径、粒子形状、及び縦横比は、使用する3Dプリンターに応じて適宜選択することができる。一態様において、粒子径は、造形材料としての取り扱いと、造形物の表面平滑性の観点から、1~10000μmであることが好ましく、10~500μmであることがより好ましく、30~200μmであることが最も好ましい。粒子形状は、球状でも不定形であっても良いが、不定形であることが造形時のボイド抑制の観点から好ましい。縦横比は、粒子間隙を少なくすることによるボイド抑制の観点から、1.001~3.0であることが好ましく、1.01~2.0であることが好ましく、1.1~1.8であることが最も好ましい。
一態様において、粉体状造形材料は、ポリアセタール樹脂組成物を粉砕又は再沈殿させることで製造することができる。ポリアセタール樹脂組成物を粉砕する方法は、特に制限されないが、湿式粉砕、乾式粉砕、低温粉砕、凍結粉砕、加熱粉砕等であってよい。粉体状造形材料の形状制御を目的として、粉砕媒体を使用しても良い。
<造形物及びその製造方法>
本発明の一態様は、本実施形態の3Dプリント用造形材料を3Dプリンターにより造形してなる造形物を提供する。本発明の一態様はまた、本実施形態の3Dプリント用造形材料を3Dプリンターにより造形する工程を含む、造形物の製造方法を提供する。3Dプリンターの造形方式としては、熱溶解積層方式、光造形方式、材料噴射方式、粉末接着方式、粉末床溶融結合方式等が挙げられる。フィラメント状造形材料を用いる場合は、熱溶解積層方式が好ましく、粉体状造形材料を用いる場合は、粉末接着方式、及び粉末床溶融結合方式が好ましい。
<3Dプリント用造形材料及び造形物の用途>
造形物は、種々の用途にそのまま適用してよく、又は、単独で又は他の成分とともに所望の形状に成形することで、所望の成形体を製造してよい。成分の組合せ方法及び成形方法は特に限定されず、所望の成形体に応じて選択してよい。成形方法としては、これらに限定されないが、切削成形法、発泡成形法などが使用可能である。造形物又は成形体は、鋼板、繊維強化プラスチック(例えば炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等)、無機フィラーを含む樹脂コンポジット、等の代替品として有用である。3Dプリント用造形材料、造形物又は成形体の好適な用途としては、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両・船舶・航空宇宙関連部品、電子・電気部品、建築・土木材料、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材、容器・包装部材、等を例示できる。
≪ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料及び造形物の特性≫
ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料及び造形物は、一態様において下記のような特性を有することができる。
[引張降伏強度]
ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物の引張降伏強度は、一態様において、20MPa以上、又は50MPa以上、又は60MPa以上、又は65MPa以上、又は70MPa以上、又は73MPa以上、又は75MPa以上、又は80MPa以上であり、300MPa以下、又は200MPa以下、又は150MPa以下であってよい。
[引張破断伸度]
ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物の引張破断伸度は、一態様において、2.0%以上、又は3.0%以上、又は4.0%以上、又は5.0%以上、又は6.0%以上であり、1000%以下、又は500%以下、又は300%以下、又は200%以下であってよい。
[曲げ弾性率]
ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物の曲げ弾性率は、一態様において、2.0GPa以上、又は2.5GPa以上、又は3.0GPa以上、又は3.5GPa以上、又は3.7GPa以上、又は3.9GPa以上であってよく、20.0GPa以下、又は10.0GPa以下、又は8.0GPa以下であってよい。
[250℃重量減少率(T250℃)]
ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物の250℃重量減少率(T250℃)は、成形時の熱劣化を回避し、造形物の機械強度を良好にする観点から、好ましくは、1.5%以下、又は1.4%以下、又は1.3%以下である。上記250℃重量減少率は低い方が望ましいが、ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物の製造容易性の観点から、一態様において、0.01%以上、又は0.1%以上、又は0.3%以上であってよい。ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物の250℃重量減少率(T250℃)は、TG分析において、ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物である試料を250℃、窒素フロー下で2時間保持した時の重量減少率である。当該試料を窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、150℃から250℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、そのまま250℃で2時間保持する。250℃に到達した時点での重量W0を起点として、2時間250℃で保持した後の重量をW1とし、下記式より求める。
250℃重量変化率(%):(W1-W0)/W0×100
[表面粗さ]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物は、低い表面粗さを有することで加飾性及び外観に優れることができる。ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物の算術平均表面粗さRaは、好ましくは、0.5μm以下、又は0.4μm以下、又は0.3μm以下である。算術平均表面粗さRaは、ポリアセタール樹脂組成物、3Dプリント用造形材料又は造形物の製造容易性の観点から、一態様において、0.001μm以上、又は0.01μm以上、又は0.1μm以上であってよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
≪評価方法≫
<セルロース繊維原料及びセルロース微細繊維>
[セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度及びカルボキシ濃度]
セルロース微細繊維スラリー(固形分率0.5質量%)を60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝導度測定を行った。測定はpHが約11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム水溶液量(V)から、下式を用いて官能基量1(カルボキシ基濃度)を決定した。
官能基量(mmol/g)=V(ml)×0.05/セルロース微細繊維の固形分質量(g)
次に、セルロース微細繊維スラリーを、酢酸でpHを4.5に調製した2質量%亜塩素酸ナトリウム水溶液中でさらに48時間常温で酸化し、上記手法によって再び官能基量2を測定した。この酸化によって追加された官能基量(=官能基量2-官能基量1)を算出し、アルデヒド基濃度とした。
なお、セルロース繊維原料として用いた各種パルプについても同様の手法で測定を実施した。
[多孔質シートの作製]
後述の各種評価を実施するためにセルロース微細繊維の多孔質シートを作製した。まず、セルロース微細繊維(固形分率1質量%)をブフナー漏斗で固形分率10質量%まで濃縮した濃縮ケーキを作製した。つづいて、濃縮ケーキをtert-ブタノール中に添加し、さらにミキサー等で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。セルロース微細繊維固形分重量0.5gに対し、濃度が0.5質量%となるように調整した。得られたtert-ブタノール分散液100gをろ紙上で濾過した。濾過物はろ紙から剥離させずに、ろ紙と共により大きなろ紙2枚の間に挟み、かつ、そのより大きなろ紙の縁をおもりで押さえつけながら、150℃のオーブンにて5分間乾燥させた。その後、ろ紙を剥離して歪みの少ない多孔質シートを得た。このシートの透気抵抗度がシート目付10g/m2あたり100sec/100ml以下のものを多孔質シートとし、測定サンプルとして使用した。
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプルの目付W(g/m2)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて透気抵抗度R(sec/100ml)を測定した。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=R/W×10
[セルロース微細繊維の数平均繊維径D及びL/D]
濃縮ケーキをtert-ブタノールで0.01質量%まで希釈し、高剪断ホモジナイザー(IKA製、商品名「ウルトラタラックスT18」)を用い、処理条件:回転数15,000rpm×3分間で分散させ、オスミウム蒸着したシリコン基板上にキャストし、風乾したものを、高分解能走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、Regulus8220)で測定した。測定は、少なくとも100本のセルロース繊維が観測されるように倍率を調整して行い、無作為に選んだ100本のセルロース繊維の短径(数平均繊維径D)を測定し、100本のセルロース繊維の加算平均を算出した。
[疎水化セルロース微細繊維のアセチル置換度 DS]
上記多孔質シートの5か所のATR-IR法による赤外分光スペクトルを、フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製 FT/IR-6200)で測定した。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:64回、
波数分解能:4cm-1
測定波数範囲:4000~600cm-1
ATR結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°
得られたIRスペクトルよりIRインデックスを、下記式:
IRインデックス= H1730/H1030
に従って算出した。式中、H1730及びH1030は1730cm-1、1030cm-1(セルロース骨格鎖C-O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ1900cm-1と1500cm-1を結ぶ線と800cm-1と1500cm-1を結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
そして、各測定場所の平均置換度をIRインデックスより下記式に従って算出し、その平均値をDSとした。
DS=4.13×IRインデックス
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びMw/Mn比]
多孔質シートを0.88g秤量し、ハサミで小片に切り刻んだ後、軽く攪拌したうえで、純水20mLを加え1日放置した。次に遠心分離によって水と固形分を分離した。続いてアセトン20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。次に遠心分離によってアセトンと固形分を分離した。続いてN,N-ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。再度、遠心分離によってN,N-ジメチルアセトアミドと固形分を分離したのち、N,N-ジメチルアセトアミド20mLを加え、軽く攪拌したうえで1日放置した。遠心分離によってN,N-ジメチルアセトアミドと固形分を分離し、固形分に塩化リチウムが8質量パーセントになるように調液したN,N-ジメチルアセトアミド溶液を19.2g加え、スターラーで攪拌し、目視で溶解するのを確認した。セルロースを溶解させた溶液を0.45μmフィルターでろ過し、ろ液をゲルパーミエーションクロマトグラフィ用の試料として供した。用いた装置と測定条件は下記である。
装置 :東ソー社 HLC-8120
カラム:TSKgel SuperAWM-H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
検出器:RI検出器
溶離液:N,N-ジメチルアセトアミド(塩化リチウム0.2%)
流速:0.6mL/分
検量線:プルラン換算
[アルカリ可溶分含有率]
アルカリ可溶分含有率はセルロース微細繊維について非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92~97頁、2000年)に記載の手法より、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求めた。1つのサンプルにつき3回アルカリ可溶分含有率を算出し、その数平均をセルロース微細繊維のアルカリ可溶分含有率とした。
なお、セルロース繊維原料として用いた各種パルプについても同様の手法で測定を実施した。
[セルロース微細繊維の比表面積]
セルロース微細繊維の比表面積は比表面積・細孔分布測定装置(Nova-4200e,カンタクローム・インスツルメンツ社製)にて、多孔質シート試料約0.2gを真空下、105℃で5時間乾燥し、液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を相対蒸気圧(P/P0)が0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定した後(多点法)、同装置プログラムによりBET比表面積(m2/g)を算出した。
[セルロース微細繊維の熱分解開始温度(TD)]
セルロース微細繊維のTDは多孔質シートを以下の測定法にて評価した。
装置:Rigaku社製、Thermo plus EVO2
サンプル:多孔質シートから円形に切り抜いたものをアルミ試料パン中に10mg分重ねて入れた。
サンプル量:10mg
測定条件:窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、そのまま450℃まで昇温速度:10℃/minで昇温した。
D算出方法:横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた。多孔質シートの150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点としてさらに昇温を続け、1wt%重量減少時の温度と2wt%重量減少時の温度とを通る直線を得た。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度を熱分解開始温度(TD)とした。
[セルロース微細繊維中のハロゲン含有率H]
風乾したセルロース微細繊維の多孔質シートを全容量200mLのガラス製ビーカー中に固形分2質量%で25℃の純水に浸漬し、3-1モーター(HEIDON製BL-600型、SUS製プロペラ翼、100rpm)で1時間攪拌後、25℃にて48時間静置した。次いで、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルター(目開き1μm)を用いて減圧濾過し、目付10g/m2のシートを作製し、70℃の通風オーブン中で水分10質量%以下になるまで濾過乾燥を行い、セルロースシートを得た。
つづいて、セルロースシートを50mg石英製の試料ボートに入れ、電気炉(株式会社三菱化学アナリティック製)にセットし1000℃で燃焼させた。燃焼により発生したガスは、冷却部を経て常温となり、フッ素樹脂製のチューブを通して吸収液(吸収液は、酒石酸イオン10mg/L、過酸化水素600mg/L、炭酸ナトリウム2.7mmol/L、炭酸水素ナトリウム0.3mmol/Lをイオン交換水に溶解したもの)にバブリングされた。この吸収液をフッ素樹脂製のチューブを通してイオンクロマト分析装置(THERMOFISHER製 INTEGRION CT型)を使用してハロゲンを定量した。この際、後述する乾燥減量法で測定したセルロースシートの水分量をセルロースシートの重量から差し引き、セルロースシートの乾燥質量とした。最終的に、セルロースシートの乾燥質量(すなわち水を含まない状態)あたりに換算した値(質量ppm)を、本実施形態のセルロースと結合したハロゲンの含有量とした。
(乾燥減量法)
セルロースシート2.00gをガラス製秤量ビンに導入し、60℃で15時間、その後、105℃で2時間乾燥し、デシケータ内で恒量した後、重量を測定し以下の式で水分量を求めた。
水分量(質量%)=(乾燥前の試料重量-乾燥後の試料重量)/(乾燥前の試料重量)×100
なお、セルロース繊維原料として用いた各種パルプについても同様の手法で測定を実施した。
<ポリアセタール樹脂>
[メルトフローレート(MFR)
ISO1133(条件D、荷重2.16kg、シリンダー温度190℃)に準拠して測定した。
[ホルムアルデヒド放出量]
ドイツ自動車工業組合規格VDA275に記載された方法でホルムアルデヒド放出量を測定した。具体的には、まず射出成形機を用いて、ポリアセタール樹脂試験片(縦100mm×横40mm×厚み3mm)をJIS K7364-2に準拠した条件で成形した。成形温度は200℃とした。つづいて、蒸留水50mLをいれたポリエチレン容器にポリアセタール樹脂試験片を蒸留水に触れないよう吊るして入れて密閉し、60℃で3時間加熱しながら蒸留水中にホルムアルデヒドを抽出し、その後室温まで冷却した。冷却後、ホルムアルデヒドを吸収した蒸留水5mLに、アセチルアセトン0.4質量%水溶液5mL、及び酢酸アンモニウム20質量%水溶液5mLを加えて混合液を作製し、40℃で15分間加熱を行い、ホルムアルデヒドとアセチルアセトンの反応を行った。更に当該混合液を室温まで冷却後、UV分光光度計を用いて412nmの吸収ピークより蒸留水中のホルムアルデヒド量を定量した。そして、ポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒド放出量(μmol/g)は下記式より求めた。なお、一般的にVDA275試験ではホルムアルデヒド放出量をμg/gで表すが、本開示ではホルムアルデヒド分子量(30.031)で割り返したμmol/gを用いた。
ポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒド放出量(μmol/g)={蒸留水中のホルムアルデヒド量(mg)/ホルムアルデヒド分子量(30.031)}/測定に用いたポリアセタール樹脂成形品の質量(g)
<樹脂組成物>
[ホルムアルデヒド放出量]
ポリアセタール樹脂について上記したのと同様の手法で測定した。
[引張特性]
射出成形機を用いて、ISO294-3に準拠した多目的試験片をJIS K7364-2に準拠した条件で成形した。成形温度は200℃とした。成形した試験片について、ISO527に準拠して引張試験を実施し、引張破断応力及び引張破断ひずみを測定した。
[貯蔵弾性率]
射出成形機を用いて、ISO294-3に準拠した多目的試験片をJIS K7364-2に準拠した条件で成形した。引張モード、測定温度範囲-100℃~150℃、昇温速度:2℃/分、振動周波数10Hz、静的負荷歪0.5%、動的負荷歪0.3%の条件で測定した貯蔵弾性率を測定した。23℃における貯蔵弾性率をE’(23℃)、120℃における貯蔵弾性率をE’(120℃)として、それぞれ表2~4中に記載した。また、23℃における貯蔵弾性率に対する120℃における貯蔵弾性率の比は、RATIO(120℃/23℃)として表中に記載した。
[ギア耐久性試験]
ファナック(株)製の射出成形機(商品名「α50i-A射出成形機」)を用いて、シリンダー温度を200℃とし、金型温度80℃、最大射出圧力120MPa、射出時間10秒、冷却時間60秒の射出条件で樹脂組成物を射出成形し、モジュール3.0、歯数50、歯厚5mm、歯幅15mmのウォームホイールギアを得た。つづいて、東芝機械(株)製の歯車耐久試験機に、ウォームと樹脂製のウォームホイールギアを組み合わせて設置した。駆動側をウォームホィールギア、従動側をウォームとした。また、噛み合い部分にグリース(協同油脂株式会社製マルテンプ CPL)を塗布し、手で回転させてグリースがウォームとウォームホィールギア全体になじむようにした。次に、駆動側の歯車を下記条件で回転させ、歯車が破壊するまでの時間(耐久時間)を測定した。
耐久性試験:温度23℃、湿度50%、トルク25N/m、回転速度30rpm
往路と復路それぞれの1回転後に、10秒の間隔をあけてから、反対方向への回転を実施した。
グリース:マルテンプ CPL
基油(エステル系合成油)60~70質量%
増稠剤(ウレア誘導体)10~20質量%
極圧剤(ポリテトラフルオロエチレン)15~25質量%
その他(酸化防止剤)5質量%以下
≪使用材料≫
<セルロース微細繊維(CNF)の製造>
[CNF製造例1](セルロース微細繊維CNF-Aの製造)
(粉砕による前処理)
日本紙パルプ商事(株)より入手したコットンリンターパルプ(CLP)ベール(アルデヒド基濃度0.3μmol/g、アルカリ可溶分含有率2.0質量%、ハロゲン含有率H60質量ppm)をシュレッダーで5mm角に細断した。
(叩解)
上記粉砕物を固形分1.0質量%になるように水に浸漬させ、ラボパルパー(相川鉄工社製)を用いて分散させて、前処理済セルロース繊維原料のスラリーを得た。該スラリーをシングルディスクリファイナー(相川鉄工社製、SDR14型ラボリファイナー 加圧型DISK式)を用いて解繊した。このディスクリファイナーは、装置を介して配管で繋がった2つのタンク(タンクAとタンクB)を持つ。まずスラリーを投入したタンクAから該ディスクリファイナーを介してタンクBへ送液、貯蔵し、該タンクAのスラリーの処理を終えた段階で、連続的に該タンクBから該ディスクリファイナーを介して該タンクAへ送液、貯蔵する方法により、該ディスクリファイナーを通過した回数(パス回数)を制御して処理を行った。尚、該ディスクリファイナーの刃間調整機構には、ボールねじ式ジャッキと減速機を設けており、マイクロメートルの精度でシビアな刃間調整を行うことができる。また、目的の刃間距離に到達させた後の叩解処理中の刃間距離のぶれ幅は変位センサーによる測定で0.005mm以下であった。ディスクリファイナーの刃としては、第1段階で刃幅4.0mm、刃溝比0.89の刃を使用し、刃間距離0.25mmで30パスさせた後、第2段階で刃幅0.8mm、刃溝比0.53の刃を用いて刃間距離0.30mmで30パスさせた。ディスクリファイナー処理中のスラリー温度は熱交換器を用いて5℃に調整した。
(解繊)
得られたスラリーを高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製、NS3015H)にて80MPaで10パス処理した。高圧ホモジナイザー処理も上記ディスクリファイナー処理と同様に2つのタンクを設け、高圧ホモジナイザー処理されたパス回数を制御して行い、セルロース微細繊維(CNF-A)を製造した。セルロース微細繊維の製造条件及び特性を表1に示す。
[CNF製造例2](セルロース微細繊維CNF-Bの製造)
スラリー温度を50℃に調整した以外はCNF製造例1と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-B)を製造した。
[CNF製造例3](セルロース微細繊維CNF-Cの製造)
スラリー温度を80℃に調整した以外はCNF製造例1と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-C)を製造した。
[CNF製造例4](セルロース微細繊維CNF-Dの製造)
パルプを日本紙パルプ商事(株)より入手した針葉樹由来クラフト漂白パルプ(NBKP)ベール(アルデヒド基濃度20μmol/g、アルカリ可溶分含有率8.0質量%、ハロゲン含有率H100質量ppm)NBKPに変更した以外はCNF製造例2と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-D)を製造した。
[CNF製造例5](セルロース微細繊維CNF-Eの製造)
スラリー温度を85℃に調整した以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-E)を製造した。
[CNF製造例6](セルロース微細繊維CNF-Fの製造)
ディスクリファイナー処理の第1段階及び第2段階のパス回数をそれぞれ10回に調整した以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-F)を製造した。パス回数が少なくなることでセルロース微細繊維の数平均繊維径が大きくなる一方で、アルデヒド基濃度はCNF製造例4と比較し低下した。
[CNF製造例7](セルロース微細繊維CNF-Gの製造)
使用した原料パルプに後述する晒クラフトパルプを用いた以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-G)を製造した。晒クラフトパルプのハロゲン含有率Hが高く、CNF中のハロゲン含有率Hも高くなった。
<晒クラフトパルプ製造例>
針葉樹チップを乾式スクリーン処理し、2-8mm画分で採取したものを砕木パルプとした。砕木パルプをオートクレーブに導入し、活性アルカリ添加率18((NaOH(g)+Na2S(g))/水(L))、硫化度28%(Na2S(g)/全アルカリ(g)×100)、液比4.5(液/固形分)、初期温度90℃、蒸解温度155℃で90分蒸解した。蒸解後パルプを、純水で10倍(質量基準)希釈し、デカンテーションを4回繰り返すことにより洗浄した。次いで、セントル式脱水機(目開き200μmのろ布を装着)で固形分25質量%まで脱水し、未晒クラフトパルプを得た。前記未晒クラフトパルプをパルプ濃度が10質量%となるように純水を加えて調整し、次亜塩素酸ナトリウム5質量%を加え、50℃で処理を行った。次亜塩素酸ナトリウム処理パルプを、純水で10倍(質量基準)希釈し、デカンテーションを4回繰り返すことにより洗浄した。次いで、セントル式脱水機(目開き200μmのろ布を装着)で固形分25質量%まで脱水し、つづいて60℃のスチームオーブンで乾燥し、晒クラフトパルプを得た(アルデヒド基濃度20μmol/g、アルカリ可溶分含有率8.0質量%、ハロゲン含有率H510質量ppm)。
[CNF製造例8](セルロース微細繊維CNF-Hの製造)
スラリー温度を90℃に調整した以外はCNF製造例1と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-H)を製造した。
[CNF製造例9](セルロース微細繊維CNF-Iの製造)
スラリー温度を90℃に調整した以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-I)を製造した。
CNF製造例1~5、8、9より、スラリー温度が高くなる程、アルデヒド基濃度は高くなり、90℃を超えると50μmol/g以上となった。また、スラリー温度が高くなる程、Mw/Mnは低分散度化、Mwは低分子量化、アルカリ可溶分含有率は増加した。
[CNF製造例10](アセチル化セルロース微細繊維CNF-Jの製造)
前処理済セルロース繊維原料のスラリーを下記のアセチル化パルプスラリーに変更した以外はCNF製造例2と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-J)を製造した。
<アセチル化パルプ>
CNF製造例1に記載のコットンリンターパルプの粉砕物を、パルプが固形分5.8質量%、炭酸カリウムが1.1質量%となるようにジメチルスルホキシド(DMSO)に分散し、このスラリー30Lを全容量50Lの反応容器に仕込み、均質に撹拌しながら60℃に加温した。そこに酢酸ビニル(反応液に対し4.4質量%)を加え、所定の置換度になるまでアセチル化を行った。反応中、DSは適宜測定され、DSが1.0以上となったところで、水を3L加え反応を終了した。この反応液は、加圧ろ過器でセルロース固形分に対し50質量倍の純水を用いて撹拌、ろ過を繰り返して溶媒等を充分洗浄し、アセチル化パルプの湿潤ケーキを得た。次に、このケーキを固形分1質量%となるように純水に分散し、アセチル化パルプスラリーを製造した。
[CNF製造例11](セルロース微細繊維CNF-Kの製造)
ディスクリファイナー処理の第1段階及び第2段階のパス回数をそれぞれ20回に調整し、スラリー温度を5℃にした以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-K)を製造した。パス回数が少なくなり、かつスラリー温度が5℃になることでセルロース微細繊維の数平均繊維径は大きくなる一方で、アルデヒド基濃度はCNF製造例4と比較し大幅に低下した。
[CNF製造例12](セルロース微細繊維CNF-Lの製造)
ディスクリファイナー処理の第2段階における刃間距離を0.51mmにした以外はCNF製造例2と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-L)を製造した。刃間距離が広くなったことにより、解繊効率が低下し数平均繊維径が増大する一方で、アルデヒド基濃度の上昇は抑制された。
[CNF製造例13](セルロース微細繊維CNF-Mの製造)
ディスクリファイナー処理の第2段階における刃間距離を0.04mmにした以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-M)を製造した。製造後にディスクリファイナーのディスクを確認した結果、刃間の詰まりが確認され、かつ高圧ホモジナイザー処理においても詰まりが確認され、アルデヒド基濃度は上昇した。詰まった繊維に特に過度な負荷がかかり、アルデヒド基濃度が50μmol/g超に上昇したと推定される。
[CNF製造例14](セルロース微細繊維CNF-Nの製造)
ディスクリファイナー処理の第1段階及び第2段階における刃溝比をそれぞれ1.3及び1.1にした以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-N)を製造した。刃溝比が大きくなることでディスクの刃数が増え解繊効率が向上した一方で、アルデヒド基濃度は50μmol/g超に上昇した。
[CNF製造例15](セルロース微細繊維CNF-Oの製造)
ディスクリファイナー処理の第1段階及び第2段階における刃溝比をそれぞれ0.09にした以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-O)を製造した。刃溝比が小さくなることでディスクの刃数が減り、解繊効率が悪化し数平均繊維径が増大し1000nm超となった一方で、アルデヒド基濃度の上昇は限定的であった。
[CNF製造例15](セルロース微細繊維CNF-Pの製造)
ディスクリファイナー処理の第1段階及び第2段階における刃溝比をそれぞれ0.09に、パス回数を300回にした以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-P)を製造した。刃溝比が小さくなることでディスクの刃数が減ったが、パス回数を増やすことで数平均繊維径を48nmまで細繊維化できた。しかし、アルデヒド基濃度は50μmol/g超に上昇した。
[CNF製造例16](セルロース微細繊維CNF-Qの製造)
ディスクリファイナー処理の第1段階及び第2段階における刃幅をそれぞれ0.51mm及び1.1mmにした以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-Q)を製造した。刃幅が大きくなることでディスクの刃数が減り解繊効率が悪化し数平均繊維径が増大し1000nm超となった一方で、アルデヒド基濃度の上昇は限定的であった。
[CNF製造例17](セルロース微細繊維CNF-Rの製造)
ディスクリファイナー処理の第1段階及び第2段階における刃幅をそれぞれ5.1mm及び1.1mmに、パス回数を300回にした以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-R)を製造した。刃幅が大きくなることでディスクの刃数が減り解繊効率が悪化したがパス回数を増やすことで数平均繊維径を243nmまで細繊維化できた。しかし、アルデヒド基濃度は50μmol/g超に上昇した。
[CNF製造例18](セルロース微細繊維CNF-Sの製造)
ディスクリファイナー処理の第2段階における刃間距離をそれぞれ1.4mm及び0.09mmにした以外はCNF製造例4と同様の手法でセルロース微細繊維(CNF-S)を製造した。刃幅が小さくなることでディスクの刃数が増え解繊効率が向上した一方で、アルデヒド基濃度は50μmol/g超に上昇した。
[CNF製造例19](TEMPO酸化セルロース微細繊維CNF-Tの製造)
乾燥重量で2質量部相当分のCNF製造例1における粉砕パルプ、0.003質量部のTEMPO(2,2,6,6‐テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル)および0.03質量部の臭化ナトリウムを水150質量部に分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が2.5mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は自動滴定装置を用い、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、0.5Mの塩酸水溶液でpH7に中和し反応物をろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を6回繰り返し、固形分量2質量%の水を含浸させたTEMPO酸化処理されたセルロース繊維を得た。次に、TEMPO酸化処理されたセルロース繊維に水を加え1.0質量%混合液とし、CNF製造例1に記載の高圧ホモジナイザーを用いた解繊を実施し、TEMPO酸化セルロース微細繊維(CNF-T)を製造した。TEMPO酸化によりアルデヒド基濃度は40μmol/g、カルボキシ基濃度は220μmol/g、ハロゲン含有率Hは320質量ppmまで上昇した。
<ポリアセタール樹脂>
[調製例A-1]
ジャケット付き2軸パドル型連続重合反応機((株)栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を80℃に調整し、下記に示す重合条件(供給速度)にて原料等を供給してポリアセタールコポリマーを重合した。得られた粗ポリマーの不安定末端基を下記に示す末端安定化条件で除去し、1,3-ジオキソランに由来するコモノマー成分の含有量がトリオキサンのモル数に対して0.5mol%のポリアセタールコポリマーを得た((CH2CH2)/(CH2)=0.5)。
(重合条件)
以下に示す供給速度で反応機に原料を供給した。
・トリオキサン(主モノマー):3500gr/hr
・1,3-ジオキソラン(コモノマー):14.4gr/hr
・メチラール(低分子量アセタール化合物):2.4gr/hr
・シクロヘキサン(有機溶媒):6.5g/hr
・三フッ化ホウ素-ジ-n-ブチルエーテラート(重合触媒):0.15g/hr(トリオキサン1molに対して、三フッ化ホウ素が、0.2×10-4molとなるように供給速度を設定した。)
なお、重合触媒のみ上記の他の成分と別ラインにてフィードした。
(末端安定化条件)
重合反応機から排出された粗ポリアセタールコポリマーを、トリエチルアミン水溶液(0.5質量%)中に浸漬し、その後、常温で1hr攪拌を実施した後、遠心分離機でろ過し、窒素下で120℃×3hr乾燥し、次に、200℃に設定されたベント付の2軸押出機(L/D=40)に供給し、末端安定化ゾーンに、0.8質量%トリエチルアミン水溶液を、窒素の質量に換算して20質量ppmになるように液添し、90kPaで減圧脱気しながら安定化させ、ペレタイザーにてペレット化した。その後100℃で2hr乾燥を行い、ポリアセタール樹脂A-1を得た。得られたポリアセタール樹脂のメルトフローレート(MFR)は8g/10分、ホルムアルデヒド放出量は0.03μmol/gであった。
[調製例A-2]
1,3-ジオキソランの添加量を調整することにより、エチレン比の異なるポリアセタール樹脂A-2を得た。
(CH2CH2)/(CH2)=1.5、MFR:10g/10分、ホルムアルデヒド放出量:0.04μmol/g
[ポリアセタールホモポリマー(A-3)]
旭化成社製テナック4010(ホモポリマー(CH2CH2)/(CH2)=0、MFR:10g/10分、ホルムアルデヒド放出量:0.05μmol/g)をポリアセタール樹脂A-3として用いた。
<アルデヒド基ブロック剤>
メラミン (日産化学株式会社製)
<分散剤:ポリエチレングリコール>
PEG50 Mn=約2,200 オキシエチレン繰り返し単位数=50
PEG85 Mn=約3,740 オキシエチレン繰り返し単位数=85
PEG200 Mn=約8,800 オキシエチレン繰り返し単位数=200
PEG500 Mn=約22,000 オキシエチレン繰り返し単位数=500
PEG700 Mn=約30,000 オキシエチレン繰り返し単位数=700
PEG900 Mn=約41,000 オキシエチレン繰り返し単位数=900
<ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
イルガノックス1010 (ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASFジャパン株式会社製)
[実施例1~18、比較例1~11]
<セルロース微細繊維乾燥体の製造>
上記で製造したセルロース微細繊維スラリー(固形分1.0質量%)を濾過し、濃縮ケーキ(固形分質量10%)を得た。プラネタリミキサーにセルロース微細繊維および分散剤を表2~4の組成で加え、下記条件で乾燥を実施し、セルロース微細繊維乾燥体を得た。乾燥の終点はセルロース微細繊維乾燥体の水分率が3質量%以下(固形分質量97%以上)になった時点とし、水分率は赤外加熱式水分計(MX-50(エー・アンド・デイ製))を用いて測定した。
装置:プライミクス株式会社 ハイビスミックス2P-1
ジャケット温度:80℃
真空度:-0.1MPa
攪拌速度:50rpm
<樹脂組成物の製造>
上流側と、押出機中央部にそれぞれ1か所の投入口を有するL/D=48の同方向回転二軸押出機ZSK26MC(コペリオン社製)のシリンダー温度を200℃に設定し、ポリアセタール樹脂及びアルデヒド基ブロック剤及びヒンダードフェノール系酸化防止剤をドライブレンドしたものを上流側投入口に設置したロスインウェイト式供給機より定量で供給し、押出機中央部投入口に設置したロスインウェイト式供給機より、上記の各セルロース微細繊維乾燥体を表2~4の組成となるよう定量で供給し、溶融混練を実施し、ストランド状に押出し、冷却切断してペレット状のポリアセタール樹脂組成物を得た。押出機の下流は減圧脱気可能とし、押出機内の空気及び発生ガスを除去した。
また、スクリュー構成としては、押出機中央部供給口の上流部に、RKDを3個配し、下流側の減圧脱気直前には、RKD3個とLKD1個をこの順に配置したデザインとした。この際の押出機のスクリュー回転数は、150rpm、合計押出吐出量は5kg/時間となるよう供給機を設定した。得られたペレットを用いて、各種試験を実施した。結果を表2~4に記載する。
<異形押出成形体の製造>
[実施例19]
実施例2の樹脂組成物ペレットを用い、異型押出成形を行った。図3(図中数値はミリメートル単位)に示す断面形状のダイスを具備した口径40mm単軸押出機を使用し、成形温度190℃、スクリュー回転数20rpmでペレットを押出した後、水温25℃の冷却水を蓄えた長さ2mの水槽中でダイスと同断面のサイジングダイスを使用して賦形し、異形押出成形体を得た。これにより、本実施形態の樹脂組成物を用いて異形押出成形体を問題なく形成できることが確認された。
[実施例20]
実施例2のポリアセタール樹脂をガラス繊維強化ポリアセタール樹脂(旭化成製、テナック-C GN752)に変更し、セルロース微細繊維の量が組成物中に5質量%となるようにした樹脂組成物ペレットを用いて実施例19と同様に異型押出成形を行い、異形押出成形体を得た。これにより、本実施形態の樹脂組成物を用いて異形押出成形体を問題なく形成できることが確認された。
[実施例21]
実施例2と同様に、炭素繊維(東レ製、トレカT300)の量が組成物中に10質量%、セルロース微細繊維の量が組成物中に5質量%に変更した樹脂組成物ペレットを用いて実施例19と同様に異型押出成形を行い、異形押出成形体を得た。これにより、本実施形態の樹脂組成物を用いて異形押出成形体を問題なく形成できることが確認された。
<3Dプリントによる造形物の製造>
[実施例22]
実施例2の樹脂組成物ペレットを用い、株式会社3Dプリンティングコーポレーション製の3devoフィラメントエクストルーダー(ノズル径1.7mm)を用いて、ノズル温度210℃、スクリュー回転速度3.5rpm、巻取速度0.02~0.1m/sの自動制御条件で、空冷条件で引き取り、フィラメント状造形材料のモノフィラメントを得た。
続いて、上記フィラメント状造形材料を、キヤノン社製のFUNMAT HT 熱溶解積層法3Dプリンターを用いて、ノズル温度210℃、プラットフォーム温度80℃、積層ピッチ0.3mm、造形速度30mm/秒の条件で、ISO294-3に準拠した多目的試験片と同形状の造形物を得た。造形物の形成は問題なく可能であった。
実施例1~5、比較例1、2、4、5、7、9、10より、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が大きくなる程、樹脂組成物の物性は低下し、ホルムアルデヒド放出量が増える傾向にある。そして、アルデヒド基濃度が50μmol/gを超える比較例1、2、4、5、7、9、10は物性低下が著しいと分かる。
比較例3はセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が0.4μmol/gとかなり小さく、ホルムアルデヒド放出量も小さい。しかし、セルロース微細繊維とポリアセタール樹脂との結合量が少なすぎると推測され、樹脂組成物は物性低下したと分かる。
比較例6及び8はセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度は50μmol/g以下ではあるものの、数平均繊維径が1000μm超であり樹脂組成物の物性低下は著しいと分かる。
比較例11はカルボキシ基濃度が220μmol/gと非常に大きく、熱分解開始温度TDが190℃と非常に低いため樹脂組成物の物性は低下し、ホルムアルデヒド放出量が増えることが分かる。
実施例4及び6を比較すると、アルデヒド基ブロック剤が樹脂組成物に含まれることで物性低下を抑制することができる。
実施例4及び7を比較すると、実施例7はセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度は小さいものの樹脂組成物の物性は低い傾向である。実施例7は単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度Aがかなり大きく、ポリアセタール樹脂の分解に寄与すると考えられるセルロース微細繊維のアルデヒド基が高密度であるため、全体のアルデヒド基濃度が小さくても樹脂組成物の物性低下とホルムアルデヒド放出量増加の傾向が確認される。
実施例4及び8を比較すると、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度は同等であるものの、実施例8の樹脂組成物は明確に黄変が著しくハロゲン含有率Hが多いことによりセルロース微細繊維の熱劣化が進行したと推定され、樹脂組成物の物性低下の傾向が確認される。
実施例9~13及び実施例14~16はセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が小さいため、総じて樹脂物性に優れるものの、ポリアセタール樹脂のオキシメチレン単位数に対するオキシエチレン単位数の比であるエチレン比Rと、ポリエチレングリコールのオキシエチレン繰り返し単位数nの関係が下記式
(R+0.5)/0.015 ≦ n ≦ (R+10)/0.015
を充足する方(実施例9~11、及び14)が樹脂組成物の物性に優れる。
実施例17は実施例14と比較し、セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度は十分に小さい。しかし、単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度Aが小さすぎ、ホルムアルデヒド放出量は小さいものの、セルロース微細繊維とポリアセタール樹脂との結合量が少なすぎると推測され、樹脂組成物は物性低下する傾向である。
実施例1,7,17についてはセルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が小さいため、総じて樹脂物性に優れるものの、単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度Aとセルロース微細繊維ハロゲン含有率Hの以下の関係を満たさず、ギア耐久時間が他の実施例よりも低下する傾向である。
50 ≦ H/A ≦ 1000
実施例1はホルムアルデヒド放出量が小さく、各種機械物性に優れるものの、ギア耐久性が悪い傾向である。これはH/Aが1000を超えることでポリアセタール樹脂は高分子量化し機械物性が向上した一方で、界面強化がなされず長期物性であるギア耐久時間が悪化したと推定される。実施例17は実施例1と比較し単位面積当たりのセルロース微細繊維アルデヒド基濃度Aが大きいことにより機械物性が低いことに加え、H/Aが1000を超えることで長期物性が悪化したと推定される。実施例7はH/Aが50未満で界面強化されることで実施例1及び17よりも長期物性は優れるが、低分子量化による機械物性の低下とホルムアルデヒド放出量が増加の傾向にある。
本発明の一態様が提供する、ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを含む組成物は、広範な用途、特に高温環境下に置かれる高負荷の用途に好適に適用され得る。

Claims (20)

  1. ポリアセタール樹脂とセルロース微細繊維とを含む樹脂組成物であって、
    前記セルロース微細繊維のアルデヒド基濃度が0.5μmol/g~50μmol/gであり、
    前記セルロース微細繊維のカルボキシ基濃度が200μmol/g以下であり、
    前記セルロース微細繊維の数平均繊維径が1000nm以下である、樹脂組成物。
  2. アルデヒド基ブロック剤を更に含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記アルデヒド基ブロック剤が、アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、尿素誘導体、ヒドラジド化合物、アクリルアミド重合体、及びポリアミドからなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記セルロース微細繊維の重量平均分子量が100000以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. 前記セルロース微細繊維のMw/Mnが6.0以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  6. 前記セルロース微細繊維中のアルカリ可溶分含有率が10質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  7. 前記セルロース微細繊維の熱分解開始温度TDが200℃以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  8. 前記セルロース微細繊維のハロゲン含有率Hが500質量ppm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  9. 前記セルロース微細繊維が、エステル化された化学修飾セルロース微細繊維である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  10. 前記エステル化がアセチル化である、請求項9に記載の樹脂組成物。
  11. 前記セルロース微細繊維の単位面積あたりのアルデヒド基濃度Aと、前記ポリアセタール樹脂におけるオキシメチレン単位の繰り返し数nに対するオキシエチレン単位の繰り返し数mの比(R=m/n)とが、以下の関係
    10((R-5)/3) ≦ A ≦ 10((R+3)/10)
    を満たす、請求項1に記載の樹脂組成物。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
    セルロース繊維原料を液体媒体中で液温85℃以下にて解繊してセルロース微細繊維スラリーを得る解繊工程、
    前記セルロース微細繊維スラリーを乾燥させてセルロース微細繊維乾燥体を得る乾燥工程、及び
    ポリアセタール樹脂と前記セルロース微細繊維乾燥体とを混合する混合工程、
    を含む、方法。
  13. 前記解繊工程で生成したセルロース微細繊維スラリー中のセルロース微細繊維が、アルデヒド基濃度0.5μmol/g~50μmol/g、及びカルボキシ基濃度200μmol/g以下を有する、請求項12に記載の方法。
  14. 請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
  15. 異形押出成形体である、請求項14に記載の成形体。
  16. 異形押出成形体の製造方法であって、
    請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を異形押出する工程を含む、方法。
  17. 請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物で構成されている、3Dプリント用造形材料。
  18. フィラメント又は粉体の形態を有する、請求項17に記載の3Dプリント用造形材料。
  19. 請求項17に記載の3Dプリント用造形材料を3Dプリンターにより造形してなる、造形物。
  20. 造形物の製造方法であって、
    請求項17に記載の3Dプリント用造形材料を3Dプリンターにより造形する工程を含む、方法。
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