JP2024064267A - 水性塗料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗工前後で基材の外観が変わりにくく、耐候性および密着性に優れる水性塗料を提供する。【解決手段】水性塗料は、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、シリコーン系樹脂エマルジョンと、ノニオン系界面活性剤とを含み、ノニオン系界面活性剤として、HLB値が11未満である低HLB界面活性剤およびHLB値が11以上である高HLB界面活性剤を含み、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、シリコーン系樹脂エマルジョンとの質量比が、80:20~40:60の範囲内であり、低HLB界面活性剤のHLB値が4以上11未満であり、高HLB界面活性剤のHLB値が11以上13未満である。【選択図】図1

Description

本発明は、水性塗料およびその製造方法に関し、特に、木材に塗工される水性塗料およびその製造方法に関する。
従来、建材用の塗料として、有機溶媒を含む有機系塗料が多く用いられていたが、環境対応や塗工作業者の安全面への観点から、水を溶媒として使用する水性塗料(水系塗料)が広く用いられつつある。建材用の塗料には、耐候性などの保護機能とともに意匠性も求められる。建材用の塗料は、大別して艶ありと艶なしの2種類がある。艶なし塗料には、シリカ、タルク、架橋不飽和ポリエステルなどの艶消し剤が使用されることが多く、塗膜は半透明や不透明な膜となる。
建材として木材が用いられる場合、木材の素材感や色合い(木質感)に優れたものが求められることが多い。そのため、木材用塗料の場合、塗工前の木質感を低下させにくいことが求められる。木材などの建材用の塗料としては、例えば、以下の特許文献がある。
特許文献1には、スルホン化変性ポリビニルアルコールの存在下、重合性不飽和単量体を乳化重合して得られる水性エマルジョンであって、重合性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸エステルを含む水性エマルジョンを含む水性塗料が記載されている。この水性塗料は、基材への浸透性および耐候性に優れる旨が記載されている。
また、他の技術として、特許文献2には、ヒドロキシル基含有重合性単量体を2~15質量%含有する(メタ)アクリル系単量体を重合してなる(メタ)アクリル系重合体エマルジョン、シリコーン樹脂水分散体、およびHLBが16~20である高HLB界面活性剤を含む水系塗料組成物が記載されている。この水系塗料組成物は、貯蔵安定性に優れ、かつ、低光沢で撥水性、耐水性などが良好な塗膜を形成可能である旨が記載されている。
特開2011-126998号公報 特開2011-213941号公報
特許文献1には、アクリル系樹脂エマルジョンのアクリル樹脂構造中にシロキサン結合を形成するトリメトキシシラン部位を導入すると耐候性の向上に寄与しうる旨の記載がある。
ここで、シリコーン系樹脂におけるシロキサン結合は、ガラスや石英などの無機物と同じ構造で、有機ポリマーの主鎖であるC-C結合やC-O結合よりも結合エネルギーが非常に大きい。そのため、一般的に、アクリル系樹脂とシリコーン系樹脂では、シリコーン系樹脂の方が化学的に安定しており、耐候性などに優れるといわれている。
しかし、特許文献1でのトリメトキシシラン部位の導入量はわずかであり、当該部位の導入の有無による耐候性向上効果は比較的小さく、試験条件によっては耐候性が不十分となると考えられる。また、アクリル系樹脂は、シリコーン系樹脂と比べ通気性(透湿性)に劣るので、高湿度条件下で使用された場合などに密着性も不十分となるおそれがある。
特許文献2では、(メタ)アクリル系重合体エマルジョンとシリコーン樹脂水分散体とが同程度の質量比で配合された、シロキサン結合の比率が高い組成が開示されている。
一般的に、アクリル系樹脂とシリコーン系樹脂は、それぞれの溶解度パラメータ(Solubility Parameter、以下「SP値」ともいう)が乖離しているため、相溶性に優れず、単純に混合しても相分離しやすい。また、各エマルジョンの混合液を塗膜化する場合、各樹脂は水中で粒子状態で存在し、塗工後の乾燥時には、粒子同士が融着により造膜される。そのため、アクリル系樹脂エマルジョンとシリコーン系樹脂エマルジョンとを単純に配合した混合液を用いて塗膜にした場合、樹脂の相分離に起因する海島構造や表面荒れなどが起こりやすく、塗膜の白濁化(不透明化や半透明化)などが起こりやすいと考えられる。
特許文献2には、単独では透明な塗膜を形成する(メタ)アクリル系重合体エマルジョンにシリコーン樹脂水分散体を混合すると半透明な塗膜が得られる旨が記載されている。上述のように、建材(特に外壁用)には艶なしにするために半透明な塗膜が好ましい場合もあるが、例えば、木材などの基材に適用する場合、塗工前後で基材の外観が変わりにくい(基材の素材感を低下させにくい)ことが求められる。
本発明は、塗工前後で基材の外観が変わりにくく、耐候性および密着性に優れる水性塗料を提供することを目的としたものである。
本発明の水性塗料は、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、シリコーン系樹脂エマルジョンと、ノニオン系界面活性剤とを含み、上記ノニオン系界面活性剤として、HLB値が11未満である低HLB界面活性剤およびHLB値が11以上である高HLB界面活性剤を含み、上記(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、上記シリコーン系樹脂エマルジョンとの質量比が、80:20~40:60の範囲内であることを特徴とする。
なお、本明細書において、HLB値は、グリフィンの式(HLB値=20×(分子中における親水基の質量比))で算出した値である。
上記低HLB界面活性剤のHLB値が4以上11未満であり、上記高HLB界面活性剤のHLB値が11以上13未満であることを特徴とする。
上記水性塗料が溶剤を含み、上記溶剤のFedors法によって計算されるSP値が8(cal/cm0.5以上13(cal/cm0.5以下であることを特徴とする。
上記溶剤が、エタノールであることを特徴とする。
上記水性塗料が、紫外線吸収剤と、防カビ剤とを含み、木材に塗工されることを特徴とする。
本発明の製造方法は、上述の水性塗料の製造方法であって、上記(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと上記低HLB界面活性剤とを混合する工程と、上記シリコーン系樹脂エマルジョンと上記高HLB界面活性剤とを混合する工程と、上記(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと上記低HLB界面活性剤の混合液に、上記シリコーン系樹脂エマルジョンと上記高HLB界面活性剤の混合液を加えて混合する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の水性塗料は、ノニオン系界面活性剤として、HLB値が11未満である低HLB界面活性剤およびHLB値が11以上である高HLB界面活性剤を含み、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、シリコーン系樹脂エマルジョンとの質量比が、80:20~40:60の範囲内であるので、塗膜中にシロキサン結合が多く含まれるとともに、塗膜の通気性に優れ、耐候性および密着性に優れる。また、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとシリコーン系樹脂エマルジョンとの相溶性に優れるため、塗膜が半透明化しにくく、塗工前後で基材の外観が変わりにくい。
低HLB界面活性剤のHLB値が4以上11未満であり、高HLB界面活性剤のHLB値が11以上13未満であるので、異種エマルジョン粒子同士の親和性がより高まると考えられ、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとシリコーン系樹脂エマルジョンとの相溶性により優れる。その結果、塗工前後で基材の外観がさらに変わりにくい。
水性塗料が溶剤を含み、溶剤のFedors法によって計算されるSP値が8(cal/cm0.5以上13(cal/cm0.5以下であるので、水性塗料が基材表面の微細な溝に浸透しやすくアンカー効果が発現しやすい。その結果、密着性により優れる。
溶剤が、エタノールであるので、基材への浸透性にさらに優れる。
水性塗料が、紫外線吸収剤と、防カビ剤とを含み、木材に塗工されるので、耐候性により優れるとともに、防カビ性にも優れる。また、塗工前後で基材の外観が変わりにくいため、木材の木質感が保持されやすい。
本発明の製造方法は、上述の水性塗料の製造方法であって、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと低HLB界面活性剤とを混合する工程と、シリコーン系樹脂エマルジョンと高HLB界面活性剤とを混合する工程と、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと低HLB界面活性剤の混合液に、シリコーン系樹脂エマルジョンと高HLB界面活性剤の混合液を加えて混合する工程と、を含むので、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとシリコーン系樹脂エマルジョンのそれぞれが、適切な界面活性剤で安定化される。その結果、本製造方法で得られた水性塗料は相溶性に優れるため、塗膜が半透明化しにくく、塗工前後で基材の外観が変わりにくい。
本発明の水性塗料の製造方法の一例を示す工程図である。
本発明の水性塗料を構成する成分について、以下に説明する。本発明の水性塗料は、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、シリコーン系樹脂エマルジョンと、ノニオン系界面活性剤と、水とを含む。また、本発明の水性塗料は、ノニオン系界面活性剤として、HLB値が11未満である低HLB界面活性剤およびHLB値が11以上である高HLB界面活性剤を含む。なお、本明細書において、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂を総称して「(メタ)アクリル系樹脂」という。
(1)(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン
本発明の水性塗料において、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンには、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸を乳化重合してなるエマルジョンが包含される。また、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンには、予め重合された(メタ)アクリル系樹脂を乳化分散させたエマルジョンであってもよい。重合に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどを挙げられる。アルキル基およびシクロアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基などの分枝を有しても良く、また、例えば、水酸基、アミノ基、アミド基などの置換基を有しても良い。これら(メタ)アクリル酸エステル類は、単独または組み合わせて用いることができる。
本発明の水性塗料は、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとして、少なくとも1種の(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンを含む。(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンは、熱または光により架橋する硬化性のエマルジョンであってもよいし、架橋性を有しない非硬化性のエマルジョンであってもよい。(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとしては、例えば、DIC株式会社製、ボンコートAB-886などが挙げられる。
水性塗料に配合される(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンは、1種類であってもよいし、複数種類が併用されてもよい。(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンは、固形分として、水性塗料中の固形分全量に対して、例えば、5~80質量%含まれるように配合できる。(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンの配合量は、塗工前後での基材の外観保持の観点から、10~60質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
(2)シリコーン系樹脂エマルジョン
本発明の水性塗料において、シリコーン系樹脂エマルジョンには、オルガノポリシロキサンを乳化剤の存在下で水性媒体中に乳化分散させてなる乳化組成物が包含される。
シリコーン系樹脂エマルジョンを構成するオルガノポリシロキサンは、有機基が結合したケイ素(Si)と酸素(O)とが化学結合で交互に連結した構造の樹脂であり、一般にシリコーンレジン、シルセスキオキサン、シリコーンオイルなどである。
上記オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジプロピルポリシロキサン、ジブチルポリシロキサン、ジイソプロピルポリシロキサン、ジヘキシルポリシロキサン、ジオクチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、メチルプロピルポリシロキサン、ブチルメチルポリシロキサン、イソプロピルメチルポリシロキサン、ヘキシルメチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、エチルプロピルポリシロキサン、ブチルオクチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどが挙げられる。また、オルガノポリシロキサンは、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、アクリル基などの反応性有機基を有する変性ポリシロキサンであってもよい。なお、オルガノポリシロキサンは、塗膜中のシロキサン結合の比率を高める観点から、反応性有機基を有しないことが好ましい。これらのオルガノポリシロキサンは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の水性塗料は、シリコーン系樹脂エマルジョンとして、少なくとも1種のシリコーン系樹脂エマルジョンを含む。シリコーン系樹脂エマルジョンは、熱または光により架橋する硬化性のエマルジョンであってもよいし、架橋性を有しない非硬化性のエマルジョンであってもよい。シリコーン系樹脂エマルジョンとしては、例えば、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、BS45などが挙げられる。
水性塗料に配合されるシリコーン系樹脂エマルジョンは、1種類であってもよいし、複数種類が併用されてもよい。シリコーン系樹脂エマルジョンは、固形分として、水性塗料中の固形分全量に対して、例えば、5~40質量%含まれるように配合できる。シリコーン系樹脂エマルジョンの配合量は、耐候性および密着性の観点から、10~30質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。
上述した(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとシリコーン系樹脂エマルジョンの製造には、例えば、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などを使用できる。アニオン系界面活性剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの脂肪酸塩や、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基または硫酸エステル基と重合性の不飽和二重結合を分子中に有するいわゆる反応性乳化剤などを使用できる。また、ノニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、または上述の骨格と重合性の不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤などを使用できる。さらに、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、(変性)ポリビニルアルコールなどが使用できる。これらの乳化剤は、単独で用いても良いし、数種類を組み合わせて用いても良い。
本発明の水性塗料は、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、シリコーン系樹脂エマルジョンの質量比が、固形分として、80:20~40:60の範囲内である。これにより、塗工前後で基材の外観が変わりにくいことと、耐候性および密着性に優れることを両立できる。本発明の水性塗料は、特に、塗工前後での基材の外観を保持する観点から、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンが、固形分として、シリコーン系樹脂エマルジョンよりも多く含まれることが好ましい。
(3)ノニオン系界面活性剤
本発明の水性塗料は、ノニオン系界面活性剤として、HLB値が11未満である低HLB界面活性剤およびHLB値が11以上である高HLB界面活性剤を含む。低HLB界面活性剤は、HLB値が4以上11未満であることが好ましく、6以上10.5未満であることがより好ましい。低HLB界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製、エマルゲンなどが挙げられる。また、高HLB界面活性剤は、HLB値が11以上13未満であることが好ましく、11.5以上12.5未満であることがより好ましい。高HLB界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製、エマルゲンなどが挙げられる。
低HLB界面活性剤のHLB値が4以上11未満であり、高HLB界面活性剤のHLB値が11以上13未満である場合、塗膜が特に白濁化しにくい。これは、上記のような2種の界面活性剤を含むことで、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン粒子とシリコーン系樹脂エマルジョン粒子との親和性が向上し、ミクロ相分離状態が安定化されるためであると考えられる。
(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン100質量部に対する低HLB界面活性剤の量は、例えば、0.1~5.0質量部であり、シリコーン系樹脂エマルジョン100質量部に対する高HLB界面活性剤の量は、例えば、0.1~5.0質量部とできる。(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとシリコーン系樹脂エマルジョンとの相分離を抑制するとともに、塗膜の強度や耐候性を低下させないために、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン100質量部に対する低HLB界面活性剤の量は0.1~3.0質量部であり、シリコーン系樹脂エマルジョン100質量部に対する高HLB界面活性剤の量は0.1~3.0質量部であることが好ましい。なお、上記配合比は固形分としての値である。
(4)溶剤
環境対応や塗工作業者の安全面への観点からは、水性塗料は溶剤を含まないことが好ましい。一方で、外観や密着性の観点からは、水性塗料は、Fedors法によって計算されるSP値が8(cal/cm0.5以上13(cal/cm0.5以下の溶剤を含むことが好ましい。該SP値が8(cal/cm0.5以上13(cal/cm0.5以下の溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、ブタノール、イソプロピルアルコール、エタノールなどを挙げることができる。
ここで、溶剤は、水性塗料中に多く含まれる場合、基材への塗布性に大きく影響を与える。基材上に塗布された水性塗料が基材表面に濡れ拡がりやすく、微細な溝の間に浸透しやすいほど、水性塗料は塗布の前後で基材の外観を変えにくく、良好な密着性を発現しやすい。水性塗料は、外観、密着性に加え、塗布時の乾燥性(作業性)や安全性の観点から、溶剤としてエタノールを含むことが特に好ましい。
(5)添加剤
水性塗料は、例えば、増粘剤、成膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、密着助剤、浸透剤などを任意に含んでもよい。特に、木材塗工用に用いる場合、木材は無機材料に比べて紫外線による褪色やカビの発生が起こりやすいので、紫外線吸収剤と、防カビ剤とを含むことが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの紫外線吸収剤を使用できる。紫外線吸収剤としては、例えば、BASFジャパン株式会社製のTINUVIN384、TINUVIN400、TINUVIN571、TINUVIN900、TINUVIN1130などが挙げられる。紫外線吸収剤は、光安定剤(例えば、BASFジャパン株式会社製のTINUVIN123、TINUVIN770など)とともに用いることが好ましい。
防カビ剤としては、例えば、トリアジン系、モルホリン系、チアゾリン系、ヨード系、芳香族アミン系などの防カビ剤を使用できる。防カビ剤としては、例えば、アークサーダジャパン株式会社製のPROXEL KL2、ソージャパン株式会社製のACTICIDELG、ACTICIDEMBSなどが挙げられる。
密着助剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などの密着助剤を使用できる。密着性および塗料の貯蔵安定性の観点から、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKBM-403、KBM-503、KBM-803、KBM-903などが挙げられる。
ここで、木材は油分を含むとともに、微細な多孔質構造を有しているため、水性塗料を塗布してもはじきやすい。例えば、木材上での水接触角は約80°であるのに対し、油の接触角は30°程度である。その結果、表面への濡れ性に優れない場合、密着不良が起こるおそれがある。そのため、水性塗料は、木材への濡れ性を向上させる浸透剤を含むことがより好ましい。
浸透剤としては、例えば、花王株式会社製のエマルゲン1108(HLB値13.5)などのポリオキシエチレンアルキルエーテル、花王株式会社製のペレックス OT-Pなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどの界面活性剤を使用できる。浸透剤としてノニオン系界面活性剤を用いる場合、HLB値が13以上15未満のノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。浸透剤は、密着性の観点から、SP値が8(cal/cm0.5以上13(cal/cm0.5以下の溶剤とともに併用することが好ましく、特にエタノールと併用することが好ましい。
次に、上述した水性塗料の製造方法について図1を用いて説明する。図1は、本発明の水性塗料の製造方法の一例を示す工程図である。図1に示すように、本発明の水性塗料の製造方法は、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと低HLB界面活性剤とを混合する工程S1と、シリコーン系樹脂エマルジョンと高HLB界面活性剤とを混合する工程S2と、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと低HLB界面活性剤の混合液に、シリコーン系樹脂エマルジョンと高HLB界面活性剤の混合液を加えて混合する工程S3と、を含む。本発明の水性塗料の製造方法は、工程S3と同時に、または、その後の工程で、溶剤や添加剤などさらに混合することができる。
(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンおよびシリコーン系樹脂エマルジョンは、市販の樹脂エマルジョンを使用してもよいし、乳化重合や水中分散処理を予め行って準備してもよい。
工程S1~S3で原料を混合する際は、一般的な撹拌装置を用いることができる。撹拌装置としては、例えば、プロペラミキサー、タービンミキサー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、超音波処理装置などを用いることができる。
以下、本発明の水性塗料についてさらに具体的に説明する。ただし、これらの参考例や実施例は本発明の一部の実施形態を示すものである。
参考例1~7
以下に示す各原料を所定の質量比で配合し、撹拌機を用いて60分間混合して水性塗料を調製した。
(A)(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと低HLB界面活性剤の混合物
(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンであるDIC株式会社製のボンコートAB-886(固形分約50質量%)100質量部に対して、低HLB界面活性剤として花王株式会社製のエマルゲン408を0.5質量部加え、撹拌機により30分間混合して準備した。
(B)シリコーン系樹脂エマルジョンと高HLB界面活性剤の混合物
シリコーン系樹脂エマルジョンである旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のBS45(固形分約50質量%)100質量部に対して、高HLB界面活性剤として花王株式会社製のエマルゲン108を0.5質量部加え、撹拌機により30分間混合して準備した。
(C)エタノール
得られた水性塗料について、約15cm角の木材の基板に塗工し、外観および密着性の評価を行った。水性塗料は、23℃×65RH%の環境下、約6μmの厚みとなるように刷毛で塗工した。その後10日間養生して試験片を作成し、各種評価を行った。各水性塗料の組成および評価結果を表1に示す。なお、表における各原料の数値は、組成全体に対する質量%を意味する。
<外観>
養生後の試験片について、目視で塗膜表面の外観評価を行った。評価基準を以下に示す。
○:塗工後の基材の外観にほぼ変化が見られない
△:塗工後の塗膜に一部白濁化などが見られ、基材の外観が少し変化
×:塗工後の塗膜全面に白濁化などが見られ、基材の外観が大きく変化
<密着性>
養生後の試験片について、クロスカット試験により密着性評価を行った。具体的には、5×5mmのマスが10個になるようにカッターを用いて塗膜をクロスカットし、ニチバン製セロハンテープを貼り、剥がした際に基材上に残った(密着し続けた)マスの数を数えた。密着試験後に基材上に残ったマスの数が7以上の場合、良好な密着性であると判断した。
Figure 2024064267000002
バインダー成分である樹脂エマルジョンが(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンのみの場合は密着性に優れず(参考例1)、シリコーン系樹脂エマルジョンを配合することで密着性が向上することが分かった(参考例2~7)。参考例1では密着試験前の段階で塗膜の膨れが観察されたのに対し、参考例2~7では膨れが観察されなかったことから、通気性に優れるシリコーン系樹脂を含むことで密着性が向上したと考えられる。また、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンに対して、シリコーン系樹脂エマルジョンを2倍量配合(質量比で33:67)すると外観が白濁化したことから、シリコーン系樹脂エマルジョンの比率を多くしすぎると外観が悪化することがわかった(参考例5)。
参考例1~7の塗膜について、別途硬度評価(鉛筆硬度試験 JIS K 5600-5-4に準拠)を行ったところ、参考例1の塗膜の硬度は2Bであったのに対し、参考例2~7の塗膜の硬度はB-Fであった。ここで、通常、低Tgの樹脂は低硬度の塗膜となりやすく、高Tgの樹脂は高硬度の塗膜となりやすい。本参考例で用いた(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとシリコーン系樹脂エマルジョンは同程度のTgであるが、それらを混合することにより硬度が1ランク以上向上することがわかった。
参考例8~13
上述した原料(A)~(C)に加え、以下に示す各原料を所定の質量比で配合し、撹拌機を用いて60分間混合して水性塗料を調製した。
(D)シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM403)
(E)浸透剤1(花王株式会社製、エマルゲン1108)
(F)浸透剤2(花王株式会社製、ペレックスOT-P)
得られた水性塗料について、上述の試験片作成方法と同様に試験片を作成し、外観および密着性を評価した。各水性塗料の組成および評価結果を表2に示す。
Figure 2024064267000003
シランカップリング剤を3.0質量%配合した水性塗料は、いずれも特に優れた密着性を示した(参考例9~13)。また、濡れ性向上のために浸透剤を配合しても外観が良好であることが確認された(参考例10~13)。
実施例1~6、比較例1
上述した原料(A)~(F)に加え、以下に示す原料を所定の質量比で配合し、撹拌機を用いて60分間撹拌混合して水性塗料を調製した。
(G)紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、Tinuvin400およびTinuvin123)
(H)防カビ剤(アークサーダジャパン株式会社製、Proxel XL2)
得られた水性塗料について、上述の試験片作成方法と同様に試験片を作成し、外観および密着性を評価するとともに、耐候性およびカビ抵抗性(防カビ性)についても評価した。各水性塗料の組成および評価結果を表3に示す。
<耐候性>
養生後の試験片について、スガ試験機株式会社製のサンシャインウェザーメーターを用いて光照射を400時間行った。光照射の開始から100時間ごとに試験片を取り出して、目視で塗工表面の外観変化を確認した。外観変化が見られなかった最大の時間を耐候性として評価した。なお、400時間の光照射後でも外観変化が見られなかったものは「400<」と記載した。
<カビ抵抗性>
養生後の試験片について、JIS Z 2911に基づいて、28℃の高湿度下で4週間培養後、試料表面のカビ抵抗性を評価した。評価基準を以下に示す。
0:試料表面にカビの発育が見られない
1:試料表面のカビの発育が1/3を超えない
2:試料表面のカビの発育が1/3を超える
Figure 2024064267000004
(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンとシリコーン系樹脂エマルジョンとを含む実施例1~6は、100時間以上の良好な耐候性を示した。一方、樹脂バインダーとしてシリコーン系樹脂エマルジョンを含まず、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンのみを含む比較例1は、100時間未満で外観変化が起こり、耐候性に優れないことが確認された。また、紫外線吸収剤を5.0質量%配合した水性塗料はいずれも、400時間以上の光照射でも外観変化が見られず、特に優れた耐候性を示した(実施例3~6)。なお、防カビ剤の配合については、3.0質量%以上の場合にカビ抵抗性の向上が確認された(実施例5)。防カビ剤を5.0質量%含む実施例6はカビ抵抗性が0であり、特に優れた防カビ性が確認された。
次に、実施例1~3の水性塗料を用いて、塗工膜厚の違いがカビ抵抗性へ与える影響について評価した。実施例1は塗布量50g/m(厚み約6μm狙い)、実施例2は塗布量100g/m(厚み約12μm狙い)、実施例3は塗布量200g/m(厚み約24μm狙い)として、塗布量以外は上述の試験片作成方法と同様に試験片を作成し、外観、密着性、耐候性、およびカビ抵抗性について評価した。各水性塗料の組成および評価結果を表4に示す。
Figure 2024064267000005
約24μmの厚みになるように塗工した実施例3は、防カビ剤を含まないにもかかわらずカビ抵抗性が0であり、優れた防カビ性を示した。これは、塗膜が厚くなることで木材の表面凹凸を完全に覆うことができ、木材内部への水分やカビの侵入を抑制したことによると考えられる。なお、塗膜の厚みを約6μmから約24μmまで厚くしても、外観、密着性ともに良好であった。
本発明の水性塗料は、塗工前後で基材の外観が変わりにくく、耐候性および密着性に優れるので、塗工前の素材感や色合いを大きく変えないことが求められる基材用の水性塗料として広く用いることができる。

Claims (6)

  1. (メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、シリコーン系樹脂エマルジョンと、ノニオン系界面活性剤とを含む水性塗料であって、
    前記ノニオン系界面活性剤として、HLB値が11未満である低HLB界面活性剤およびHLB値が11以上である高HLB界面活性剤を含み、
    前記(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと、前記シリコーン系樹脂エマルジョンとの質量比が、80:20~40:60の範囲内であることを特徴とする水性塗料。
  2. 前記低HLB界面活性剤のHLB値が4以上11未満であり、
    前記高HLB界面活性剤のHLB値が11以上13未満であることを特徴とする請求項1記載の水性塗料。
  3. 前記水性塗料が溶剤を含み、
    前記溶剤のFedors法によって計算される溶解度パラメータが8(cal/cm0.5以上13(cal/cm0.5以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水性塗料。
  4. 前記溶剤が、エタノールであることを特徴とする請求項3記載の水性塗料。
  5. 前記水性塗料が、紫外線吸収剤と、防カビ剤とを含み、木材に塗工されることを特徴とする請求項4記載の水性塗料。
  6. 請求項1または請求項2記載の水性塗料の製造方法であって、
    前記(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと前記低HLB界面活性剤とを混合する工程と、
    前記シリコーン系樹脂エマルジョンと前記高HLB界面活性剤とを混合する工程と、
    前記(メタ)アクリル系樹脂エマルジョンと前記低HLB界面活性剤の混合液に、前記シリコーン系樹脂エマルジョンと前記高HLB界面活性剤の混合液を加えて混合する工程と、
    を含むことを特徴とする水性塗料の製造方法。
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