JP2024056636A - 繊維強化樹脂シート、繊維強化複合材及び成形体 - Google Patents

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【課題】強度や透明性等の物性に優れるともに、樹脂廃棄物の削減に寄与することができる環境にやさしい繊維強化樹脂シート、その繊維強化樹脂シートを用いた繊維強化複合材、及びその繊維強化複合材を用いた成形体を提供すること。【解決手段】熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂1と前記マトリックス樹脂1を含浸させた強化繊維2・2…とを備える繊維強化樹脂シート100において、前記マトリックス樹脂1には、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有する樹脂が用いられている構成とした。【選択図】 図1

Description

本発明は、強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シート、それを用いた繊維強化複合材及び成形体に関するものである。
繊維強化樹脂は一般的な樹脂と比較して同等の軽量性を備える一方、繊維方向に対しては金属材料に匹敵する引張り強さや曲げ強さを有するものがある。このような優れた特徴から、燃費向上を目的として自動車の構造部品に用いられたり、携帯性の向上や運送費の削減を目的として家電やパソコンに用いられたりする他、性能の向上を目的としてスポーツ用品にも用いられている。
特に、強化繊維に含浸させるマトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いたものは、熱硬化性樹脂を用いたものと比較して弾性や耐衝撃性に優れ、冷却により短時間で固化できるため、物性面や経済的観点からも有用である。
一方、昨今、持続可能な社会を目指すため、製造業においては石油由来の樹脂の使用量を削減することが求められている。上述した自動車や家電等には、構造部品や筐体に多くの樹脂が使用されている。一般的には、製品それ自体に用いられている樹脂を削減することが考えられるが、製造の過程においても、2020年には日本だけでも約60万トンの樹脂廃棄物が生じている。これらの樹脂廃棄物は、産業廃棄物として焼却や埋め立てがなされるため、温室効果ガスの排出量増加の要因となる。
樹脂廃棄物の処理に関しては、従来から再生利用(いわゆるマテリアルリサイクル)が行われている。樹脂の再生利用は、樹脂廃棄物を樹脂ごとに選別し、不純物を除去した後、粉砕・洗浄したもの(フレーク)や、フレークを造粒機で溶融し粒状(ペレット)にしたもの(以下、「リサイクル樹脂」という)を、再度原料として用いる。リサイクル樹脂を製品に用いることで、焼却や埋め立て処分される樹脂の量を削減することができる。
しかし、リサイクル樹脂は、製品の製造工程において、少なくとも1回、成形機によってガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴をもっている。樹脂が溶融固化を繰り返すと、分子切断のような一次構造や高次構造の物理的な劣化が生じる。また、樹脂の多くは炭素を骨格とする有機物であり、温度の上昇によりカルボニル基等が形成されて元の分子構造が変化するため、化学的にも劣化し得る。特に前者の物理的な劣化による物性への影響は大きく、リサイクル樹脂の物性は、販売時の状態(以下、「バージン樹脂」という)の物性よりも著しく劣っているものも存在する。
リサイクル樹脂の物性を考慮した繊維強化樹脂の技術開発については、従来、リサイクル樹脂に対して、3.0mmから50mmの長さの強化繊維樹脂ペレット及びバージン樹脂を、強化繊維の含有量が0.5重量%から50重量%となるように添加する技術が開発されている(特許文献1参照)。これにより、「リサイクル樹脂を使用して、成形物の衝撃強さを大きく低下させることなく、機械的特性を回復させることが可能となり、プラスチックのリサイクル活動が推進される」効果があるとされている。
また、同様に繊維長や含有率の割合を特定の範囲としたり(特許文献2参照)、繊維の断面形状を扁平としたりすることで(特許文献3参照)、リサイクル樹脂を配合させた場合であっても、機械的な強度等に優れた繊維強化樹脂の成形体とする技術も開発されている。
特開平11-166054号 特開2005-324733号 特開2015-147428号
しかし、上述の従来技術は、いずれもリサイクル樹脂を配合することで低下する物性を、強化繊維によって補うための、強化繊維の選択に関する最適化の技術である。すなわち、配合するリサイクル樹脂それ自体は、前述のように物理的な劣化によって物性が低下している前提となっている。そのため、リサイクル樹脂の配合割合をあまり高くすることができないという問題がある。
一方、繊維強化樹脂による成形体の成形方法は、ペレットを用いた射出成形や押出成形以外にも、繊維束を開繊した連続繊維に樹脂を含浸させてシート状とし、そのシートを複数枚重ねてプリプレグとした後、プリプレグを所定の形状に圧縮成形する方法もある。
しかし、上述の従来技術は、繊維強化樹脂のペレットを射出成形や押出成形によって成形することを前提としており、プリプレグを圧縮成形する成形方法には適用できないという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、強度や透明性等の物性に優れるともに、樹脂廃棄物の削減に寄与することができる環境にやさしい繊維強化樹脂シート、その繊維強化樹脂シートを用いた繊維強化複合材、及びその繊維強化複合材を用いた成形体を提供することを目的とする。
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明の繊維強化樹脂シートは、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂と前記マトリックス樹脂を含浸させた強化繊維とを備えることを基本的な構成としている。
本発明の繊維強化樹脂成形体には、少なくとも前記マトリックス樹脂と前記強化樹脂とを備えていればよく、充填材等のその他の部材が含まれていてもよい。また、ここにいう強化繊維には機械的な強度を強化する性質に加え、例えば温度特性を向上させたり、吸音性を有したりするもの等、繊維強化樹脂成形体として他の物理的な特性を付与し得る性質を有する繊維も含まれる。さらに、強化繊維に対するマトリックス樹脂の含浸の態様については、強化繊維にマトリックス樹脂が完全に含浸した完全含浸のほか、一部または全体に未含浸部分を含むものも含まれる。
ここで、前記マトリックス樹脂には、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有するとともに劣化の進行が緩慢である樹脂が用いられている。
一般的に、熱可塑性樹脂は、樹脂それ自体を製造する際に、ガラス転移温度を超える温度に加熱して溶融させ、冷却固化して得られた塊をペレット等の供給可能な形態に加工してバージン樹脂として販売する。樹脂製品の製造者は、販売されたバージン樹脂としてのペレット等を、成形機によって再度ガラス転移温度を超える温度に加熱して溶融固化させて成形する。本発明における成形機とは、前述のように、原料となる樹脂を製品化のためにガラス転移温度を超える温度に加熱して溶融させ、冷却固化させる成形機を指し、原料となる樹脂それ自体を製造する際に用いられる加工機は含まない。
前述のように、バージン樹脂を加熱して成形した後、さらに加熱を繰り返した場合の熱可塑性樹脂の劣化には、化学的な劣化と物理的な劣化が考えられるところ、劣化の進行が緩慢である樹脂とは、カルボニル基等の官能基の形成が進行しておらず、分子切断等の物理的な劣化が、樹脂それ自体の物性に影響を与えていない状態の樹脂をいう。
このように、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有するとともに劣化の進行が緩慢である樹脂をマトリックス樹脂に用いることで、強度等の物性をバージン樹脂同等に維持することができるとともに、焼却や埋め立て処理されてしまう廃棄樹脂を削減することができる。
前述の課題を解決するために本発明が採用した手段としては、上記手段に加え、前記マトリックス樹脂を曲げ強さが50MPa以上のものとすることも可能である。
熱可塑性樹脂の多くは、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱されて熱履歴加わると、分子切断等の物理的な劣化が進行する。この劣化は、熱履歴の蓄積回数に応じて顕著に進行し、曲げ強さ等の強度の低下を引き起こす。そこで、熱履歴が加わった樹脂であっても、曲げ強さが50MPa以上のものを採用することで、本発明の繊維強化樹脂シートを用いて製造された製品は、十分な強度を確保することができる。
また、前記マトリックス樹脂を3mm厚における全光線透過率が85%以上となるようにすることも可能である。
上述のように、熱可塑性樹脂が熱履歴により劣化すると、化学的な劣化も生じる。化学的な劣化により生じたカルボニル基等は発色団とよばれ、黄変の要因となる。黄変が生じると、特定の波長の光を吸収してしまうため、全光線透過率が低下する。そこで、熱履歴が加わった樹脂であっても、3mm厚における全光線透過率が85%以上のものを採用することで、本発明の繊維強化樹脂シートを用いて製造された製品は、十分な透明性を確保することができる。
上記手段を採用する場合には、さらに、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有する樹脂のみによって構成することもできる。
マトリックス樹脂にバージン樹脂を含まないことで、新たな樹脂の使用量を削減し、ひいては樹脂全体の生産量を低下させることができる。また、焼却や埋め立て処理されてしまう廃棄樹脂の削減に、より寄与することができる。
繊維強化樹脂シートを上述の何れかの構成とする場合においては、前記強化繊維には炭素繊維を用い、繊維体積含有率を40%以上となるように構成することもできる。
繊維強化樹脂シート中の炭素繊維の繊維体積含有率を40%以上とすることで、繊維強化樹脂シートに他の樹脂層を積層してプリプレグとした場合であっても、プリプレグ全体として十分な繊維体積含有率を確保することができ、強度に優れた製品とすることができる。
また、前記マトリックス樹脂には難燃剤と含浸性を向上させる添加剤の何れか一方、または両方が含まれている構成とすることも可能である。
難燃剤を含む場合には、繊維強化樹脂シートに難燃性を付与することができ、異常時に発熱や発火が懸念される製品に用いた場合であっても、発火や延焼を防止することができる。含浸性を向上させる添加剤を含む場合には、強化繊維にマトリックス樹脂が十分に含浸され、繊維強化樹脂シート全体として物性が均一になる。
ところで、上述の繊維強化樹脂シートを複数積層して熱圧縮することで、各層のマトリックス樹脂同士が溶融結合した繊維強化複合材とすることができ、立体的な成形をするためのプリプレグとして用いることができる。このとき、各層の繊維強化樹脂シート中の強化繊維の方向が異なる方向となるように積層することで、物性が擬似等方性を有する繊維強化複合材とすることができる。
また、上述の繊維強化樹脂シートを短冊状に切断してチョップ材とし、複数のチョップ材を繊維方向がランダムな方向となるように積層して熱圧縮することで、各層のマトリックス樹脂同士が溶融結合した繊維強化複合材とすることができ、立体的な成形をするためのプリプレグとして用いることができる。複数のチョップ材を繊維方向がランダムな方向となるように積層していることにより、物性が擬似等方性を有する繊維強化複合材とすることができる。
上記のような構成の繊維強化複合体においては、繊維体積含有率が20重量%以上となるように構成する。繊維体積含有率が20%以上であることにより、繊維強化複合体を立体的に圧縮成形した成形体において、優れた強度とすることができる。
前述のように、本発明の繊維強化樹脂シートでは、マトリックス樹脂に、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有するとともに劣化の進行が緩慢である樹脂が用いられていることにより、機械的な強度を維持することが可能である一方で、焼却や埋め立て処分される樹脂廃棄物を削減することができる。そのため、強度や透明性等の物性に優れるともに、樹脂廃棄物の削減に寄与することができる繊維強化樹脂シートとすることができるという効果がある。
本発明の繊維強化樹脂シートを表す部分平面図及び断面図である。 本発明の繊維強化樹脂シートの製造方法を表す説明図である 本発明の繊維強化複合体の構成及び製造方法を表す説明図である。 本発明の繊維強化複合体の他の構成及び製造方法を表す説明図である。 本発明の成形体を表す平面図及び部分断面図である。
本発明を実施するための形態について、図1から図4に基づいて以下に説明する。
なお、図は説明のために模式的に記載されており、寸法や形状は実際とは異なる。
本発明の実施の形態の一例である繊維強化樹脂シート100は、図1に示すように、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂 1と、マトリックス樹脂1を含浸させた強化繊維2・2…とを備える。
繊維強化樹脂シート100の厚み方向の構成は、図1の断面図に示すように、マトリックス樹脂1を強化繊維2・2…の束が挟み込んでいるような構成を採用することができる。これ以外にも、マトリックス樹脂1の何れか一方側にのみ強化繊維2・2…の束が配置されているような構成や、強化繊維2・2…の束をマトリックス樹脂1・1が挟み込んでいるような構成とすることもできる。
また、図1の形態では、強化繊維2・2…の一部にマトリックス樹脂1が含浸していない未含浸部分21・21’が形成されている。図1の形態では、未含浸部分21は強化繊維2・2…が存在せずマトリックス樹脂1のみの部分が厚みのほぼ中央の領域に存在する。また、他の未含浸部分21’としてマトリックス樹脂1が存在せず強化繊維2・2…のみが存在する部分が表裏面の領域に存在する。なお、未含浸部分21と他の未含浸部分21’との間の領域は、マトリックス樹脂1が強化繊維2・2…に含浸した状態となっている。
未含浸部分21・21’を設けることで、強化繊維2・2…の存在しないマトリックス樹脂1のみの部分の存在によって繊維強化樹脂シート100が柔軟性を備えるとともに、繊維方向に容易に裂けることのない強度を備えることができる。
ここで、図1の形態では、マトリックス樹脂1に、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有するとともに劣化の進行が緩慢である樹脂(以下、「低劣化リサイクル樹脂」という)を用いている。
具体的には、熱可塑性樹脂を成形して製品を製造する工場等において、成形機によって少なくとも1回加熱溶融した履歴を持つ樹脂であり、その樹脂を回収・選別し、不純物を除去した後、フレークやペレットにしたものを再度原料として用いている。一例としては、射出成形のパージによって発生した樹脂の塊や、切り離されたランナーやスプルーの他、押出成形における成形開始時の寸法不安定品、真空成形における打ち抜き端材等が挙げられる。また、その他にも、製品として市場に流通したものであって、廃棄後に回収されて樹脂ごとに分別されたものであってもよい。
一般的にリサイクル樹脂は、成形機による加熱溶融が複数回行われているため、加熱回数に応じて物理的な劣化や化学的な劣化が進行している。これらの劣化は、樹脂それ自体の物性を低下させる要因となる。しかし、本発明の低劣化リサイクル樹脂は、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有する樹脂であっても、これら劣化が生じていないか、生じていたとしても劣化の進行が緩慢である樹脂である。これにより、機械的な強度や光学的な特性等、バージン樹脂の物性と略同等の物性を備えたマトリックス樹脂1とすることができる。
本発明のマトリックス樹脂1には、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルコポリマー、またはこれらのアロイ等が挙げられる。
また、これらの樹脂のうち、低劣化リサイクル樹脂とバージン樹脂とを混合して用いても良いし、低劣化リサイクル樹脂のみを用いてもよい。
さらに、難燃性を付与する難燃剤や、強化繊維2への含浸性を向上させる添加剤、紫外線吸収剤等の、種々の添加材を配合するようにしてもよい。
本発明の強化繊維2には、炭素繊維を用いるのが好ましく、強度が高いPAN(ポリアクリロニトリル)系の炭素繊維を用いることが、より好ましい。その他にも、アラミド繊維、ナイロン繊維、高強度ポリエステル繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維、バサルト繊維等の各種の無機繊維または有機繊維を用いることができる。
また、繊維強化樹脂シート100における強化繊維2・2…の繊維体積含有率は20%以上80%以下となるように調整されている。繊維体積含有率の下限は好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。一方、繊維体積含有率の上限は好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。
繊維体積含有率が20%を下回ると強化繊維2・2…による強度の向上があまり期待できず、80%を超えるとマトリックス樹脂1の割合が相対的に減少し柔軟性が低下する。
次に、本発明の繊維強化樹脂シート100を製造する方法について、図2に基づいて説明する。
繊維強化樹脂シート100の製造方法は、まず、図2(a)に示すように、開繊装置Aにより、強化繊維2・2…の繊維束Bを薄層開繊した繊維束B’を得る。次に、図2(b)に示すように、シート製造装置Sにより、マトリックス樹脂1となる低劣化リサイクル樹脂を含む熱可塑性の樹脂フィルムFの両側に、開繊した繊維束B’を配置した状態で、加熱してローラR・R…で挟み込む。
薄層開繊の方法としては、その一例として、図2(a)に示す特殊な開繊装置Aを用いて開繊させることができる。この開繊装置Aでは、搬送される繊維束B中に流体を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊する。また、開繊の際には、搬送される繊維束Bに対して接触部材A1を接触させる工程を有する。接触の際、搬送方向と傾斜する方向に回動させて繊維束の一部を押し込んで緊張状態とした後、緊張状態の繊維束Bから接触部材A1を離間させて繊維束Bを一時的に弛緩状態とする。
弛緩状態にあるときに繊維束B中に流体を通過させるようにすることで、薄層となるように開繊させることが可能となる。また、緊張と弛緩の発生においては、搬送方向と傾斜する方向に接触部材A1を回動させることで、繊維束Bに与えるダメージを小さくすることができる。
薄層開繊について詳述すると、厚さ方向に並ぶ強化繊維2・2…の数が平均10本以下と少なくなる。例えば、炭素繊維束12Kを幅20mmに開繊した場合は幅方向に約2,000~2,500本程度並び、厚さ方向には約4~6本程度、幅40mmに開繊した場合は幅方向に約5,000~5,500本程度並び、厚さ方向には約2~3本程度並んでいると考えられる。さらに、炭素繊維束50Kを幅42mmに開繊した場合は、厚さ方向に約8~10本程度並んでいると考えられる。
低劣化リサイクル樹脂を含む樹脂フィルムFの厚さの下限は特に限定されないが、好ましくは5um以上にすることによって、フィルム成形時においてフィルムの形態を良好に維持し易い。また、樹脂フィルムFの厚さの上限は、好ましくは50um以下、より好ましくは45um以下、さらに好ましくは40um以下、よりさらに好ましくは30um以下である。
樹脂フィルムFの厚さを50um以下とすることによって、当該熱可塑性樹脂フィルムに開繊した複数の強化繊維2・2…が積層した繊維強化樹脂シート100それ自体も、より薄く構成することができる。
上述の繊維強化樹脂シート100は、それ自体を加工して製品化するには厚みが薄いため、一般的には繊維強化樹脂シート100を複数枚積層して繊維強化複合体を製造し、当該繊維強化複合体をプリプレグとして成形することで製品とする。
本発明の繊維強化複合体200とその製造方法について、図3及び図4に基づいて説明する。
第一の例である図3の形態では、複数の繊維強化樹脂シート100・100…を積層して繊維強化複合材200を成形する。まず、複数の繊維強化樹脂シート100・100…を、各々の繊維方向が異なる方向となるように積層する。積層枚数は適宜変更可能であるが、0.1~数mm程度の厚みとなるように積層することができる。
図3の形態では、各繊維強化樹脂シート100・100…における繊維方向の角度が互いに45度ずれるように積層されているが、角度や隣接する繊維強化シート100・100ごとの角度差は適宜選択することができる。
次に、複数の繊維強化樹脂シート100・100…を積層させたあと、厚み方向に加圧及び加熱することにより、各繊維強化樹脂シート100・100…のマトリックス樹脂1・1…を互いに熱融着させる。これにより、複数の繊維強化樹脂シート100・100…が一体に積層された板状の繊維強化複合材200とすることができる。
ところで、本発明では、他の方法により繊維強化複合体201を製造することもできる。第二の例である図4の形態では、繊維強化樹脂シート100・100…を短冊状に切断して得られた複数のチョップ材210・210…を、全体が均一な厚みとなるように複数積層して繊維強化複合材201を成形する。まず、複数のチョップ材210・210…を稼働しているコンベア上に連続的に落下させて積層させる。このとき、落下によるばらつきにより繊維方向が二次元方向にランダムとなるように配向する。これにより、成形後に得られる繊維強化複合材201の物性が擬似等方性を有するようになる。
次に、複数のチョップ材210・210…を積層させたあと、厚み方向に加圧及び加熱することにより、各チョップ材210・210…のマトリックス樹脂1・1…を互いに熱融着させる。これにより、複数のチョップ材210・210…が一体に積層された板状の繊維強化複合材201とすることができる。
本発明の繊維強化複合材200・201は、全体として強化繊維2・2…の繊維体積含有率の下限が20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらにより好ましくは50%以上である。一方、繊維体積含有率の上限は好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。
繊維体積含有率が20%を下回ると強化繊維2・2…による強度の向上があまり期待できず、80%を超えるとマトリックス樹脂1の割合が相対的に減少し柔軟性が低下する。
なお、上記製造方法および積層構成は一例であり、繊維強化樹脂シート100を用いたプリプレグとしての繊維強化複合材であれば、他の構成や製造方法によるものであってもよい。例えば、マトリックス樹脂が異なる2種類以上のチョップ材を混合して用い、それらチョップ材を互いに熱融着させることが挙げられる。また、強化繊維2・2…を含まない非強化樹脂の層や、金属層を設ける構成としてもよい。
上述のようにして得られた繊維強化複合体は、種々の加工方法によって成形体に成形される。例えば、図5に示す成形体300は、自動車のセンターピラーの構造部品であり、所定の肉厚を有した立体的な形状を呈している。図5(a)の形態では、成形体300全体が、繊維強化複合体200による層から構成されている。また、図5(a)の形態では、他の非強化樹脂からなる基材310の表面全体に繊維強化複合体200による層が積層一体化されている。
上記構成の成形体300は、図示しない単発のプレス金型を用いてプレス成形することにより得ることができる。また、プレス成形した成形体を、射出成形用の金型にインサートとして、他の熱可塑性樹脂と一体成形することもできる。
次に、低劣化リサイクル樹脂を用いた本発明の繊維強化樹脂シートについて、実施例を示す。
『実施例1~実施例3』
本実施例では、マトリックス樹脂に低劣化リサイクル樹脂であるポリカーボネートを100%用い、強化繊維にはPAN系の炭素繊維を用いた。炭素繊維は、単糸直径約7um、集束本数約12,000本(炭素繊維束12K、開繊後の目付け約36g/m2)であり、強化繊維樹脂シートとしての繊維体積含有率は約50%である。
実施例1では、強化繊維樹脂シートの繊維方向が0度、45度、90度、135度の4方向の各シートを、図3に示した方法により積層して成形している。
実施例2では、実施例1と同じ枚数の強化繊維樹脂シートを、繊維方向が全て0度として、図3に示した方法により積層して成形している。
実施例3では、強化繊維樹脂シートを幅5mm、長さ20mmの短冊状に裁断し、図4に示した方法により積層して、平均厚さ0.5mmとなるようにシート成形したものを重ねて試験体を作製した。
実施例1~実施例3に用いた低劣化リサイクル樹脂は、表1に示すように、流動性等の物性が異なる2種類の樹脂を用いているが、同程度の流動性である一般的なバージン樹脂の比較例1及び比較例2と比べて、強度や光学的特性等の物性が同等のものとなっている。換言すると、劣化の進行が緩慢なリサイクル樹脂であるといえる。
Figure 2024056636000002
上記の繊維強化複合体を、所定の形状の成形体に成形したところ、外観上の不具合等なく、成形性は良好であった。
また、実施例1~実施例3の繊維強化複合体について、曲げ試験(JIS K 7074)及び引張り試験(JIS K 7165)を行ったところ、表2に示すように実用上十分な値となった。なお、各試験は試験回数を5回とし、表中の値はその平均値である。
Figure 2024056636000003
『実施例4~実施例6』
別の実施例では、マトリックス樹脂に低劣化リサイクル樹脂であるポリエーテルイミドを100%用い、強化繊維にはPAN系の炭素繊維を用いた。炭素繊維は、単糸直径約7um、集束本数約12,000本(炭素繊維束12K、開繊後の目付け約36g/m2)であり、強化繊維樹脂シートとしての繊維体積含有率は約50%である。
実施例4では、強化繊維樹脂シートの繊維方向が0度、45度、90度、135度の4方向の各シートを、図3に示した方法により積層して成形している。
実施例5では、実施例1と同じ枚数の強化繊維樹脂シートを、繊維方向が全て0度として、図3に示した方法により積層して成形している。
実施例6では、強化繊維樹脂シートを幅5mm、長さ20mmの短冊状に裁断し、図4に示した方法により積層して、平均厚さ0.5mmとなるようにシート成形したものを重ねて試験体を作製した。
実施例4~実施例6に用いた低劣化リサイクル樹脂は、表3に示すように、一般的なバージン樹脂の比較例3と比べて、強度等の物性が同等かそれ以上のものとなっている。換言すると、劣化の進行が緩慢なリサイクル樹脂であるといえる。
Figure 2024056636000004
上記の繊維強化複合体を、所定の形状の成形体に成形したところ、外観上の不具合等なく、成形性は良好であった。
また、実施例4~実施例6の繊維強化複合体について、曲げ試験(JIS K 7074)及び引張り試験(JIS K 7165)を行ったところ、表4に示すように実用上十分な値となった。なお、各試験は試験回数を5回とし、表中の値はその平均値である。
Figure 2024056636000005
『実施例7~8』
別の実施例では、マトリックス樹脂に低劣化リサイクル樹脂であるポリアミド9Tを100%用い、強化繊維にはPAN系の炭素繊維を用いた。炭素繊維は、単糸直径約7um、集束本数約12,000本(炭素繊維束12K、開繊後の目付け約36g/m2)であり、強化繊維樹脂シートとしてs繊維体積含有率は約50%である。
実施例7では、強化繊維樹脂シートの繊維方向が0度、45度、90度、135度の4方向の各シートを、図3に示した方法により積層して成形している。
実施例8では、実施例1と同じ枚数の強化繊維樹脂シートを、繊維方向が全て0度として、図3に示した方法により積層して成形している。
実施例7~実施例8に用いた低劣化リサイクル樹脂は、表5に示すように、一般的なバージン樹脂の比較例4と比べて、強度等の物性が同等かそれ以上のものとなっている。換言すると、劣化の進行が緩慢なリサイクル樹脂であるといえる。
Figure 2024056636000006
上記の繊維強化複合体を、所定の形状の成形体に成形したところ、外観上の不具合等なく、成形性は良好であった。
また、実施例7~実施例8の繊維強化複合体について、曲げ試験(JIS K 7074)及び引張り試験(JIS K 7165)を行ったところ、表6に示すように実用上十分な値となった。なお、各試験は試験回数を5回とし、表中の値はその平均値である。
Figure 2024056636000007
以上のように、本発明の繊維強化樹脂シート、それを用いた繊維強化複合体、及びこれらを用いた成形体は、軽量であるとともに優れた強度を有することから、家電製品やパソコンの筐体の他、自動車の内部構造部品、スポーツ用品等、様々な製品に応用することができる。
また、使用している樹脂は、本来廃棄されて焼却や埋め立て処分されるものを再生利用している。そのため、焼却による温室効果ガスの排出量を削減することができるとともに、新たなバージン樹脂の使用量を削減できるため、持続可能な社会の実現に寄与することができる。
100 繊維強化樹脂シート
1 マトリックス樹脂
2 強化繊維
21 未含浸部分
200,201 繊維強化複合体
210 チョップ材
300 成形体
310 基材
A 開繊装置
A1 接触部材
B 繊維束
F 樹脂フィルム
R ローラ
S シート製造装置

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂と前記マトリックス樹脂を含浸させた強化繊維とを備える繊維強化樹脂シートにおいて、
    前記マトリックス樹脂には、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有するとともに劣化の進行が緩慢である樹脂が用いられていることを特徴とする、繊維強化樹脂シート。
  2. 前記マトリックス樹脂は曲げ強さが50MPa以上であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
  3. 前記マトリックス樹脂は3mm厚における全光線透過率が85%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化樹脂シート。
  4. 前記マトリックス樹脂は、成形機によりガラス転移温度を超える温度に加熱された履歴を有する樹脂のみによって構成されていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の繊維強化樹脂シート。
  5. 前記強化繊維には炭素繊維が用いられ、繊維体積含有率が40%以上であることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の繊維強化樹脂シート。
  6. 前記マトリックス樹脂には難燃剤と含浸性を向上させる添加剤の何れか一方、または両方が含まれていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の繊維強化樹脂シート。
  7. 請求項1から3の何れか1項に記載の繊維強化樹脂シートが複数積層されてなる繊維強化複合材、または前記繊維強化樹脂シートから切り出された複数のチョップ材が厚み方向に積層されてなる繊維強化複合材において、
    繊維体積含有率が20%以上であることを特徴とする、繊維強化複合材。
  8. 請求項7に記載の繊維強化複合材を用いて圧縮成形された成形体。
JP2023171235A 2022-10-11 2023-10-02 繊維強化樹脂シート、繊維強化複合材及び成形体 Pending JP2024056636A (ja)

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