JP2024039290A - SiC接合基板、SiC複合基板、SiC接合基板の製造方法およびSiC単結晶の成膜方法 - Google Patents

SiC接合基板、SiC複合基板、SiC接合基板の製造方法およびSiC単結晶の成膜方法 Download PDF

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Jiro Okada
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Abstract

【課題】 多結晶SiC基板と単結晶SiC基板を接合し、その後、単結晶SiC面にCVD法により単結晶SiC膜を成膜した場合における単結晶SiC膜の表面粗さのばらつきを抑制し、SiC接合基板の生産性を向上させることのできるSiC接合基板、SiC複合基板、SiC接合基板の製造方法およびSiC単結晶の成膜方法を提供する。【解決手段】 水素イオン注入層形成工程と、活性化工程と、常温接合工程と、剥離工程と、研磨工程と、加熱工程と、を含むSiC接合基板の製造方法であって、研磨工程は、剥離工程後に露出したSiC単結晶薄膜の表面を表面粗さSaが0.15nm以下となるように研磨する工程であり、加熱工程は、研磨工程後にSiC接合基板を加熱して、当該SiC接合基板の温度を1600℃~1700℃で1~24時間保持する工程である。【選択図】 図1

Description

本発明は、SiC接合基板、SiC複合基板、SiC接合基板の製造方法およびSiC単結晶の成膜方法に関する。
炭化シリコン(SiC)は、2.2~3.3eVの広い禁制帯幅を有するワイドバンドギャップ半導体であり、その優れた物理的、化学的特性から、耐環境性半導体材料として研究開発が行われている。特に近年、SiCは、高耐圧・高出力電子デバイス、高周波電子デバイス、青色から紫外にかけての短波長光デバイス向けの材料として注目されており、研究開発は盛んになっている。ところが、SiCは、良質な大口径単結晶の製造が難しく、これまでSiCデバイスの実用化を妨げてきた。
これらの問題点を解決するために、SiC単結晶基板を種結晶として用いて昇華再結晶を行う改良型のレーリー法が開発されてきた。この改良レーリー法を用いれば、SiC単結晶の結晶多形(4H-SiC、6H-SiC、15R-SiC等)や、形状、キャリア型、及び濃度を制御しながらSiC単結晶を成長させることができる。この改良レーリー法の最適化によって、結晶欠陥密度は大きく減少し、SiC単結晶基板上へショットキーダイオード(SBD)や電界効果トランジスタ(MOSFET)などの電子デバイスを形成することが実現されるようになってきた。
しかしながら、SiC単結晶基板を種結晶とする改良型のレーリー法では単結晶SiC結晶成長速度が低いこと、およびSiC単結晶インゴットを主として切断及び研磨からなる工程を経てウエハ状に加工する際の加工費用が高いことに起因して、単結晶SiC基板の製造コストは高い。この製造コストの高さも、SiCデバイスの実用化を妨げている要因であり、半導体デバイス用途、とくに高耐圧・高出力電子素子用途のSiC基板を安価に提供できる技術の開発が強く望まれていた。
そこで、デバイス形成層部のみ品質の良い単結晶SiCを用いて、それを支持基板(デバイス製造工程に耐えうる強度・耐熱性・清浄度を持つ材料:例えば、多結晶SiC)に、接合界面における酸化膜の形成を伴わない接合手法にて固定することにより、低コスト(支持基板部)と高品質(SiC単結晶部)を兼ね備えた半導体基板を製造する技術が提供されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2015-15401号公報
多結晶SiC基板は、例えばカーボンなどで形成された下地基材上に化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によってSiCを成長させた後に下地基材を除去する手法、あるいはSiC微結晶粉末を、焼結助剤などを用いて加圧成形した後、SiCの昇華温度以下の温度に加熱して微結晶が互いに凝着する手法を用いて形成される。前者は不純物濃度が著しく低く、空孔が無い緻密な基板であるが、後者では空孔が残存してしまう。よって、半導体用の接合基板に用いる多結晶SiC基板としては、前者が望ましい。
ところで特許文献1のような単結晶SiCと支持基板を貼り合わせた基板では、その後、単結晶SiC面に、電子デバイスに用いることの出来る結晶欠陥の少ない高品質な単結晶SiC膜(エピタキシャル成長膜)をCVD法等により形成している。単結晶SiC基板の単結晶SiC面は、化学的機械研磨(CMP(Chemical Mechanical Polishing))等の加工方法により、例えば、表面粗さSaが0.1nm程度の平滑面となるように高精度に仕上げられている。そして、この平滑面上に、CVD法により単結晶SiC膜(エピタキシャル成長膜)を成膜する。単結晶SiC膜の表面粗さは、一般的にその下地層である単結晶SiC面の表面粗さに倣うとされている。しかしながら、エピタキシャル成長させて形成した単結晶SiC膜の表面粗さに、ばらつきが生じることがある。電子デバイスに用いる単結晶SiC膜の表面粗さSaは、例えば、0.3nm以下であることが好ましい。単結晶SiC膜の表面粗さSaが0.3nmを超えると、目視や表面検査装置にて明らかな面荒れが確認され、外観上の不具合が生じる。また単結晶SiC膜の表面粗さSaが0.6nm以上となると、いわゆるステップバンチングが多数確認されるようになる。また、このような面荒れは、これを起点とする電気短絡が発生することがあり、後のデバイス工程における歩留まりを悪化させる懸念がある。
そこで、本発明は、多結晶SiC基板と単結晶SiC基板を接合し、その後、単結晶SiC面にCVD法により単結晶SiC膜を成膜した場合における単結晶SiC膜(以下、「SiC単結晶成長膜」とする場合がある)の表面粗さのばらつきを抑制し、SiC接合基板の生産性を向上させることのできるSiC接合基板、SiC複合基板、SiC接合基板の製造方法およびSiC単結晶の成膜方法を提供するものである。
上記の課題を解決するため、本発明のSiC接合基板の製造方法は、SiC単結晶基板の表面粗さSaが0.15nm以下の第1接合対象面に対して水素イオンを注入し、前記SiC単結晶基板の内部に水素イオン注入層を形成する水素イオン注入層形成工程と、前記第1接合対象面と、SiC多結晶基板の表面粗さSaが0.5nm以下の第2接合対象面に高速原子ビームを照射して、これらの接合対象面を活性化させる活性化工程と、前記活性化工程後、前記第1接合対象面と前記第2接合対象面を常温接合により、共有結合して直接接合する常温接合工程と、前記常温接合工程後、前記SiC単結晶基板と前記SiC多結晶基板との接合物を900℃~1100℃に加熱して、前記SiC単結晶基板を前記水素イオン注入層に沿って剥離することで、前記SiC多結晶基板にSiC単結晶薄膜を転写してSiC接合基板を得る剥離工程と、前記剥離工程後に露出した前記SiC単結晶薄膜の表面を、表面粗さSaが0.15nm以下となるように研磨する研磨工程と、前記研磨工程後、前記SiC接合基板を加熱して、当該SiC接合基板の温度を1600℃~1700℃で1~24時間保持する加熱工程と、を含むSiC接合基板の製造方法である。
また、上記の課題を解決するために、本発明のSiC単結晶の成膜方法は、本発明のSiC接合基板の製造方法により製造した前記SiC接合基板における、前記加熱工程後の前記SiC単結晶薄膜の表面に、化学蒸着によりSiC単結晶成長膜を成膜する成膜工程を含むSiC単結晶の成膜方法である。
また、上記の課題を解決するために、本発明のSiC接合基板は、本発明のSiC接合基板の製造方法により製造したSiC接合基板である。
また、上記の課題を解決するために、本発明のSiC複合基板は、本発明のSiC単結晶の成膜方法により製造したSiC複合基板であって、順に、前記SiC接合基板と、前記SiC単結晶成長膜を備える。
本発明であれば、多結晶SiC基板と単結晶SiC基板を接合し、その後、単結晶SiC面にCVD法により単結晶SiC膜を成膜した場合における単結晶SiC膜の表面粗さのばらつきを抑制し、SiC接合基板の生産性を向上させることのできるSiC接合基板、SiC複合基板、SiC接合基板の製造方法およびSiC単結晶の成膜方法を提供することができる。
本発明のSiC接合基板の製造方法の一例を示すフロー図である。 本発明のSiC単結晶の成膜方法の一例を示すフロー図である。 本発明における水素イオン注入層形成工程(S1)の一例を示す図である。 本発明における活性化工程(S2)の一例を示す図である。 本発明における常温接合工程(S3)の一例を示す図である。 本発明における剥離工程(S4)の一例を示す図である。 本発明のSiC接合基板の斜視概略図である。 本発明のSiC複合基板の斜視概略図である。
以下に本開示の実施形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。
[SiC接合基板の製造方法]
本発明のSiC接合基板の製造方法では、まず、表面粗さSaが0.15nm以下の第1接合対象面110を備えるSiC単結晶基板100と、表面粗さSaが0.5nm以下の第2接合対象面210を備えるSiC多結晶基板200を接合する。そして、SiC多結晶基板200にSiC単結晶薄膜130を転写して得られるSiC接合基板400の表面140を、表面粗さSaが0.15nm以下となるように研磨し、その後SiC接合基板400を加熱処理する。
このように、第1接合対象面110、第2接合対象面210、表面140の表面粗さSaを制御し、その後SiC接合基板400を加熱処理することで、表面140にCVD法によりSiC単結晶成長膜500を成膜した場合におけるSiC単結晶成長膜500の表面粗さのばらつきを抑制することができ、特に、SiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さを0.3nm以下に制御することができる。
〈SiC単結晶基板100〉
SiC単結晶基板100としては、例えば昇華法によって作製された、4H-SiC単結晶基板を用いることができる。また、改良型のレーリー法で作製された単結晶SiCや、CVD法を用いて成膜した単結晶SiCを基板として用いてもよい。また、3C-SiC単結晶基板、6H-SiC単結晶基板を用いてもよい。SiC単結晶基板100の形状は、例えばオリエンテーションフラットを備える略円盤状であり、直径が4~8インチの基板を用いることができる。なお、形状は円盤状(ウエハ状)に限定されず、多角形状であってもよい。
また、SiC単結晶基板100の厚みが薄くなると、SiC単結晶基板100の反りが大きくなっていき、SiC単結晶基板100の搬送等に不具合が発生するおそれがある。そのため、SiC単結晶基板100の厚みを、反りが許容できる300μm以上とすることが好ましい。なお、SiC単結晶基板100の初期の厚みは、一般的には300μm~600μmである。
なお、SiC単結晶基板100は、水素イオン注入層形成工程の前に、予め側面の角の面取り、両面ラッピング、ポリッシング、洗浄等を行い、SiC単結晶基板100の表面の加工変質層やウネリを無くしたものを用いることが好ましい。
特に、後述する常温接合工程によって、第1接合対象面110とSiC多結晶基板200の第2接合対象面210とが接合するのであるが、常温接合工程後において第1接合対象面110と第2接合対象面210との間に隙間等の欠陥が生じないことが好ましい。そこで、CMP等の研磨方法により、第1接合対象面110の表面粗さSaを0.15nm以下とし、第1接合対象面110をできるだけ平滑面としておくことが良い。より好ましくは、第1接合対象面110の表面粗さSaを0.10nm以下とする。なお、表面粗さSaの下限値は特に限定されず、0nmであることが理想であるが、白色干渉計の測定限界を考慮すると、第1接合対象面110の表面粗さSaの下限値は0.01nmである。
ここで、SiC単結晶基板100は単結晶であることから、言い換えれば同一方位を向いた一つの大きな結晶粒であるため、CMPによって単結晶SiC基板の第1接合対象面を、SiC多結晶基板の第2接合対象面210と比べて均一に研磨でき、より平滑な面を作ることができる。
〈SiC多結晶基板200〉
SiC多結晶基板200は、SiC単結晶基板100を支持する支持基板であり、デバイスの製造工程に耐えうる強度・耐熱性・清浄度を持つ材料として、多結晶SiCを支持基板として用いる。
SiC単結晶基板100との熱膨張差や耐熱性、高剛性、繰り返し使用するための耐久性等を考慮して、SiC多結晶基板200としては、例えば化学的気相蒸着法によりSiC多結晶を成膜して得た、3C-SiC多結晶基板を用いることができる。また、4H-SiC多結晶基板、6H-SiC多結晶基板を用いることや、3C-SiC結晶、4H-SiC結晶、6H-SiC結晶の混合物で構成されている基板を用いても良い。SiC多結晶基板200の形状は、SiC単結晶基板100とほぼ同形状であってよく、例えばオリエンテーションフラットを備える略円盤状であり、直径が4~8インチの基板を用いることができる。なお、形状は円盤状に限定されず、多角形状であってもよい。
そして、SiC多結晶基板200の厚みは、SiC接合基板400の支持基板として一般的な厚みであればよく、例えば300μm~500μmである。
なお、SiC多結晶基板200は、SiC単結晶基板100と接合される前に、予め側面の角の面取り、両面ラッピング、ポリッシング、洗浄等を行い、SiC多結晶基板200の表面の加工変質層やウネリを無くしたものを用いることが好ましい。
特に、後述する常温接合工程後において、第1接合対象面110と第2接合対象面210との間に隙間等の欠陥が生じないことが好ましい。そのため、第2接合対象面210の表面粗さSaを0.50nm以下とし、第2接合対象面210をできるだけ平滑面としておくことが良い。より好ましくは、第2接合対象面210の表面粗さSaを0.30nm以下とする。なお、表面粗さSaの下限値は特に限定されず、0nmであることが理想であるが、多結晶SiC基板200の結晶粒サイズ、結晶構造、配向等の物性に起因する平滑性の限界を考慮すると、第2接合対象面210の表面粗さSaの下限値は0.10nmである。
第2接合対象面210の表面粗さSaを0.50nm以下に制御することで、表面140にCVD法によりSiC単結晶成長膜500を成膜した場合におけるSiC単結晶成長膜500の表面粗さのばらつきを抑制することができ、特に、SiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さを0.3nm以下に制御することができる。
なお、第2接合対象面210の表面粗さSaを0.5nm以下にするためには、例えば、まず金属定盤とダイヤ微粒子粉の組み合わせにて高精度研削を行い、最後にCMPを行って表面状態を仕上げればよい。
本発明のSiC接合基板の製造方法が含む工程としては、図1の水素イオン注入層形成工程(S1)、活性化工程(S2)、常温接合工程(S3)、剥離工程(S4)、研磨工程(S5)および加熱工程(S6)が挙げられる。
〈水素イオン注入層形成工程(S1)〉
水素イオン注入層形成工程は、SiC単結晶基板100の表面粗さSaが0.15nm以下の第1接合対象面110に対して水素イオンを注入し、SiC単結晶基板100の内部に水素イオン注入層120を形成する工程である。
SiC単結晶基板100に水素イオンを注入すると、水素イオンは入射エネルギーに応じた深さまで到達し、高濃度に分布する。これにより、図3のSiC単結晶基板100の側面模式図に示すように、第1接合対象面110から所定深さに、点線で示す水素イオン注入層120が形成される。例えば、第1接合対象面110から深さ0.6μm~1.0μm程度の位置に、水素イオン注入層120が形成される。
〈活性化工程(S2)〉
活性化工程は、第1接合対象面110と、SiC多結晶基板200の表面粗さSaが0.5nm以下の第2接合対象面210に高速原子ビームを照射して、これらの接合対象面を活性化させる工程である。
図4に示すように、SiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200を静電チャックにより吸引し、チャンバー300内にセットする。次に、静電チャックを移動させてSiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200との相対位置の位置合わせを行う。位置合わせは、後述する常温接合工程で両基板が正しい位置関係で接触できるように行われる。次に、チャンバー300内を真空状態にする。チャンバー300内の真空度は、例えば、1×10-4~1×10-7Pa程度であってもよい。
次に、SiC単結晶基板100の第1接合対象面110およびSiC多結晶基板200の第2接合対象面210にファースト・アトミック・ビームガン(FABガン)310を用いて、高速原子ビームとしてアルゴン(Ar)の中性元素ビーム320を照射する。アルゴン(Ar)の中性元素ビーム320は、第1接合対象面110の全面および第2接合対象面210の全面に均一に照射される。FABガン310を用いて原子または分子を基板の表面に衝突させることで、スパッタリング現象により基板の表面の酸化物や吸着層を除去することができるため、第1接合対象面110および第2接合対象面210の酸化膜や吸着層を除去して結合手を表出させることができる。この状態を活性状態と呼ぶ。また、中性元素ビーム320の照射は真空中での処理であるため、第1接合対象面110および第2接合対象面210は、酸化等されず活性状態を保持することができる。
〈常温接合工程(S3)〉
常温接合工程は、前記活性化工程後、前記第1接合対象面110と前記第2接合対象面210を常温接合により、共有結合して直接接合する工程である。
直接接合には、基板を1100℃で2時間等の条件で曝す接合方法や2000℃以上の温度で溶着する接合方法等、基板に熱を加えて接合する方法が用いられることが多いが、熱を加える方法では、生産効率が悪く、加熱時の各々の基板位置を高精度で貼合わせすることが難しい。また、加熱温度が2000℃を超えるとSiC中のシリコンが抜けて気孔となり、導電性を悪化させる。本発明では、SiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200との接合方法を常温接合とすることで、生産性を向上させ、導電性を維持して、SiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200の貼り合せの位置を高精度に貼り合せることが可能となる。
接合工程は、活性化工程後に続いて直ちに行うことのできる工程であり、チャンバー300内において静電チャックを移動させることにより、SiC単結晶基板100の第1接合対象面110とSiC多結晶基板200の第2接合対象面210を、真空状態で接触させ加圧密着させる。活性状態の第1接合対象面110と第2接合対象面210に存在する結合手同士が結びつき、SiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200とが接合した構造が形成される(図5)。なお、常温とは、20℃~30℃である。
〈剥離工程(S4)〉
剥離工程は、前記常温接合工程後、SiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200との接合物を900℃~1100℃に加熱して、SiC単結晶基板100を水素イオン注入層120に沿って剥離することで、SiC多結晶基板200にSiC単結晶薄膜130を転写してSiC接合基板400を得る工程である。
剥離工程では、SiC単結晶基板100に熱が加わることによって、水素イオン注入層120に微小気泡層が形成され、その微小気泡層を剥離面としてSiC多結晶基板200に厚さが0.5~1.0μm程度のSiC単結晶薄膜130が転写され、SiC接合基板400となる。
具体的には、互いに接合されたSiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200を800℃~1100℃程度に加熱する。大気中で加熱処理すると剥離面の表面荒れが生じるおそれがあるため、アルゴン(Ar)や窒素(N)等の不活性ガス、真空の少なくとも何れか1つの雰囲気で上記接合物を加熱し、剥離させることが好ましい。剥離は、ラピッド・サーマル・アニーリング(RTA)や、ファーネス炉を用いて実行されてもよい。これにより、SiC単結晶基板100を、水素イオン注入層120で分離させることができる。図6に、剥離後のSiC接合基板400の側面模式図を示す。
〈研磨工程(S5)〉
研磨工程は、剥離工程後に露出したSiC単結晶薄膜130の表面140を、表面粗さSaが0.15nm以下となるように研磨する工程である。表面140を、表面粗さSaが0.15nm以下となる平滑な面としてから後述する加熱工程を施すことで、表面140にCVD法によりSiC単結晶成長膜500を成膜した場合におけるSiC単結晶成長膜500の表面粗さのばらつきを抑制することができ、特に、SiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さを0.3nm以下に制御することができる。
より好ましくは、表面140の表面粗さSaを0.10nm以下とする。なお、表面粗さSaの下限値は特に限定されず、0nmであることが理想であるが、白色干渉計の測定限界を考慮すると、表面140の表面粗さSaの下限値は0.01nmである。
表面140の研磨は、研削や研磨する機械研磨等によって行ってもよいし、CMP法によって行ってもよい。
〈加熱工程(S6)〉
加熱工程は、前記研磨工程後、SiC接合基板400を加熱して、当該SiC接合基板400の温度を1600℃~1700℃で1~24時間保持する工程である。
SiC単結晶薄膜130とSiC多結晶基板200が接合した状態で、上記の条件でSiC接合基板400を加熱処理することで、第1接合対象面110の表面粗さSaと第2接合対象面210の表面粗さSaとの表面粗さの差により発生した応力が緩和され、化学蒸着により成膜するSiC単結晶成長膜500における転位の発生を抑制できるものと推測する。そして、この転位の発生の抑制により、SiC単結晶成長膜500の表面粗さのばらつきを抑制することができ、特に、SiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さを0.3nm以下に制御することができるものと考えられる。
加熱工程では、SiC接合基板400の温度を1600℃~1700℃に保持する。SiC接合基板400を加熱する加熱手段の制御の容易性の観点から、この温度範囲の中央値である1650℃に保持することが好ましい。SiC接合基板400の温度を1600℃未満に保持した場合では、SiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さのばらつきを抑制する効果はわずかであり、その結果として表面510の表面粗さが0.3nmより大きくなる場合があり、表面粗さのばらつきを抑制する効果が不十分である。
また、SiC接合基板400の温度を、1700℃を超える温度に保持する場合においては、加熱処理によるSiC多結晶基板200の変質が確認される場合がある。特に、SiC接合基板400の温度を1800℃程度の水準に保持する場合に、この変質が顕著に表れて、SiC接合基板400の表層に数μm~数十μmのクレーター状の気孔やくぼみが形成される場合がある。このような気孔等が形成されると、外観上の不具合があるほか、その気孔等においてSiC複合基板600の抵抗率の低下が起き、その結果として後工程でデバイスを形成するうえで電流異常などの不具合を発生させるおそれがある。
SiC接合基板400の温度を1600℃~1700℃で保持する時間は、1~24時間である。保持時間が1時間未満の場合では、SiC単結晶成長膜500の表面粗さのばらつきを抑制する効果はわずかであり、その結果として表面510の表面粗さが0.3nmより大きくなる場合があり、表面粗さのばらつきを抑制する効果が不十分である。一方で、保持時間が24時間を超える場合では、保持時間が2~4時間の場合と同等の効果が得られたが、それ以上に効果が増大することは無く、保持時間が長くなることによる製造コスト上のデメリットが大きくなる場合がある。よって、保持時間は1~24時間とし、本発明の効果と製造コストの両方を考慮すると、より好ましくは保持時間を2~4時間、さらに好ましくは保持時間を3時間とする。
大気中で加熱処理すると、表面140やSiC多結晶基板200の表面に荒れが生じるおそれがあり、表面粗さSaが大きくなってしまう場合があるため、加熱処理の雰囲気は、アルゴン(Ar)や窒素(N)等の不活性ガス、真空の少なくとも何れか1つの雰囲気とすることが好ましい。加熱処理は、雰囲気制御加熱炉等を用いて実行されてもよい。
加熱工程を行わない場合には、表面510の表面粗さSaは、常温接合工程前のSiC多結晶基板200の第2接合対象面210の表面粗さSaより大きくなってしまう。そのため、製造ロットが同じで製造条件が同じあっても、表面510の表面粗さSaが0.3nmを超えるSiC複合基板600が出来上がる場合があり、このような基板が出来てしまうことが、表面510の表面粗さSaが0.3nm以下のSiC複合基板600の生産性を低下させる要因であった。
ただし、加熱工程を行うことで、いずれのSiC単結晶成長膜500であっても、表面510の表面粗さSaは、常温接合工程前のSiC多結晶基板200の第2接合対象面210の表面粗さSaより小さくなる。例えば、常温接合工程前のSiC多結晶基板200の表面粗さSaが0.25nm以上のSiC接合基板400であれば、加熱工程を実施することで、いずれのSiC単結晶成長膜500であっても、表面510の表面粗さSaが0.25nm以下に改善される。そのため、加熱工程を行うことにより、表面510の表面粗さSaが0.3nm以下のSiC複合基板600を製造することのできるSiC接合基板400の生産性を向上させることが可能となる。
[SiC単結晶の成膜方法]
次に、本発明のSiC単結晶の成膜方法について説明する。当該方法は、図2の成膜工程(S7)を含む。
〈成膜方法(S7)〉
成膜方法は、本発明のSiC接合基板400の製造方法により製造したSiC接合基板400における、加熱工程後のSiC単結晶薄膜130の表面140に、化学蒸着によりSiC単結晶成長膜500を成膜する工程である。
加熱工程後に、CVD法等を用いて化学蒸着によって表面140にSiCをエピタキシャル成長させて得られるSiC単結晶成長膜500は、半導体回路を形成することのできる結晶欠陥の少ない高品質の膜となる。SiC単結晶成長膜500の厚さは、通常は10μm~30μmである。特に、製造したいずれのSiC複合基板600においても、SiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さが0.3nm以下にできるため、本発明のSiC単結晶の成膜方法であれば、半導体回路の形成に用いることのできるSiC複合基板を、高い歩留まりで生産することができる。
なお、本発明のSiC単結晶の成膜方法は、本発明のSiC接合基板400の製造方法により製造したSiC接合基板400を用いることが重要であり、化学蒸着による成膜条件は特に限定されず、SiC単結晶をエピタキシャル成長させる一般的なCVD法の成膜条件を採用することができる。
[SiC接合基板]
次に、本発明のSiC接合基板400について説明する。SiC接合基板400は、本発明のSiC接合基板400の製造方法により製造した基板である。
ここで、特許請求の範囲の記載において、本発明のSiC接合基板400の発明は、その製造方法の発明を引用することから、「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当すると解されるおそれがあり、特許請求の範囲の記載要件を満たさないと認定されるおそれがあるため、当該要件を満たすことを、以下、説明する。
本発明のSiC接合基板400の発明は、「(1)表面粗さSaが0.15nm以下の第1接合対象面110を備えるSiC単結晶基板100と、表面粗さSaが0.5nm以下の第2接合対象面210を備えるSiC多結晶基板200を接合する。(2)そして、SiC多結晶基板200にSiC単結晶薄膜130を転写して得られるSiC接合基板400の表面140を、表面粗さSaが0.15nm以下となるように研磨し、(3)その後、SiC接合基板400を1600~1700℃で1~24時間保持するように加熱処理した」基板であることを特徴とするものである。
前記(1)~(3)の特徴は、SiC接合基板400の構造又は特性を直接特定する特徴ではなく、そのような特徴ではないことの理由としては、(1)~(3)の特徴を備える基板であることを、出願時においてSiC接合基板400の構造又は特性を解析することで特定することが技術的に不可能であることが挙げられる。
例えば、第2接合対象面210の表面粗さSaが0.5nm以下のSiC多結晶基板200は、活性化工程、常温接合工程、加熱工程等の処理を得てSiC接合基板400を構成することとなる。ただし、SiC接合基板400の状態で、第2接合対象面210の表面粗さSaを高精度で測定することは、現状の分析手法では不可能である。また、SiC接合基板400の状態で第2接合対象面210の表面粗さSaを正確に測定できたとしても、活性化工程、常温接合工程、加熱工程等の処理がされる前の第2接合対象面210の表面粗さSaが、0.5nm以下であることを証明したことにはならない。
そのため、(1)の特徴はSiC接合基板400の構造又は特性を解析しても特定できない。(2)、(3)の特徴についても同様である。よって、本発明のSiC接合基板400の発明には、「不可能・非実際的事情」が存在することから、特許請求の範囲において本発明のSiC接合基板400の発明を記載した請求項は、特許請求の範囲の記載要件を満たすものである。
[SiC複合基板]
次に、本発明のSiC複合基板600について説明する。SiC複合基板600は、本発明のSiC単結晶の成膜方法により製造した基板である。
図8に示すように、SiC複合基板600は、SiC接合基板400と、SiC単結晶成長膜500を備える。SiC多結晶基板200とSiC単結晶薄膜130を備えるSiC接合基板400のSiC単結晶薄膜130に、エピタキシャル成長したSiC単結晶成長膜500が形成されたものである。
ここで、特許請求の範囲の記載において、本発明のSiC複合基板600の発明は、SiC接合基板400の製造方法の発明およびSiC単結晶の成膜方法の発明を引用することから、「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当すると解されるおそれがあり、特許請求の範囲の記載要件を満たさないと認定されるおそれがあるため、当該要件を満たすことを、以下、説明する。
本発明のSiC複合基板600の発明は、「(1)表面粗さSaが0.15nm以下の第1接合対象面110を備えるSiC単結晶基板100と、表面粗さSaが0.5nm以下の第2接合対象面210を備えるSiC多結晶基板200を接合する。(2)そして、SiC多結晶基板200にSiC単結晶薄膜130を転写して得られるSiC接合基板400の表面140を、表面粗さSaが0.15nm以下となるように研磨し、(3)その後、SiC接合基板400を1600~1700℃で1~24時間保持するように加熱処理したSiC接合基板400における、(4)加熱工程後のSiC単結晶薄膜130の表面140に、化学蒸着によりSiC単結晶成長膜500を成膜して得られる」基板であることを特徴とするものである。
前記(1)~(4)の特徴は、SiC複合基板600の構造又は特性を直接特定する特徴ではなく、そのような特徴ではないことの理由としては、(1)~(4)の特徴を備える基板であることを、出願時においてSiC複合基板600の構造又は特性を解析することで特定することが技術的に不可能であることが挙げられる。
重複するが、例えば、第2接合対象面210の表面粗さSaが0.5nm以下のSiC多結晶基板200は、活性化工程、常温接合工程、加熱工程等の処理を得てSiC複合基板600を構成することとなる。ただし、SiC複合基板600の状態で、第2接合対象面210の表面粗さSaを高精度で測定することは、現状の分析手法では不可能である。また、SiC複合基板600の状態で第2接合対象面210の表面粗さSaを正確に測定できたとしても、活性化工程、常温接合工程、加熱工程等の処理がされる前の第2接合対象面210の表面粗さSaが、0.5nm以下であることを証明したことにはならない。
そのため、(1)の特徴はSiC複合基板600の構造又は特性を解析しても特定できない。(2)~(4)の特徴についても同様である。よって、本発明のSiC複合基板600の発明には、「不可能・非実際的事情」が存在することから、特許請求の範囲において本発明のSiC複合基板600の発明を記載した請求項は、特許請求の範囲の記載要件を満たすものである。
以下に、本発明の実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(表面粗さSaの測定)
以下の例における第1接合対象面110、第2接合対象面210、表面140、表面510の表面粗さSaの測定は、白色干渉計(AMETEK社製Zygo Nexview)を用いた。表面粗さSaの測定結果を表1に示す。
[実施例1]
〈SiC接合基板400の製造〉
(SiC単結晶基板100)
SiC単結晶基板100として、改良型のレーリー法で作製した厚さが350μm、直径6インチ(約150mm)の、主面方位が<0001>である4Hポリタイプの円盤状の基板を用いた。第1接合対象面110は、CMP研磨によって表面粗さSaが0.1nmとなるように平滑に仕上げた。その後、第1接合対象面110の表面粗さSaを測定した。
(SiC多結晶基板200)
多結晶SiC基板200は、カーボンなどで形成された下地基材上に化学気相成長法によってSiCを成長させた後に下地基材を除去する方法で作製された、厚さが350μm、直径6インチ(約150mm)の円盤状の基板を用いた。第2接合対象面210は、表面粗さSaが0.5nm以下になるように、金属定盤とダイヤ微粒子粉の組み合わせにて高精度研削を行い、最後にCMP研磨にて表面状態を平滑に仕上げた。その後、第2接合対象面210の表面粗さSaを測定した。
(水素イオン注入層形成工程)
SiC単結晶基板100の第1接合対象面110に対して水素イオンを注入し、第1接合対象面110から深さ1.0μmの位置に、水素イオン注入層120を形成した。
(活性化工程)
SiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200を静電チャックにより吸引し、チャンバー400内にセットした。次に、静電チャックを移動させて、常温接合工程で両基板が正しい位置関係で接触できるように、SiC単結晶基板100とSiC多結晶基板200との相対位置の位置合わせを行った。次に、チャンバー400内を2×10-6Paの真空状態にした。
次に、SiC単結晶基板100の第1接合対象面110およびSiC多結晶基板200の第2接合対象面210にFABガン310を用いて、アルゴンの中性原子ビーム320を、第1接合対象面110の全面および第2接合対象面210の全面に均一に照射し、第1接合対象面110および第2接合対象面210の酸化膜や吸着層を除去して結合手を表出させ、活性状態とした。
(常温接合工程)
常温において真空状態を維持したままで、チャンバー300内で静電チャックを移動させることにより、SiC単結晶基板100の第1接合対象面110とSiC多結晶基板200の第2接合対象面210を、チャンバー300内において真空状態で接触させて共有結合によって直接接合し、接合基板を得た。
(剥離工程)
ファーネス炉を用いて、アルゴンガスを充満させた不活性雰囲気下において接合基板を1000℃に加熱して水素イオン注入層120に微小気泡層を形成し、SiC単結晶基板100を微小気泡層で分離して、1.0μmの厚さの薄板状のSiC単結晶薄膜130をSiC多結晶基板200に転写した。
(研磨工程)
剥離工程によって露出した表面140を、CMP研磨にて平滑となるように加工し、その後、表面140の表面粗さSaを測定した。
(加熱工程)
雰囲気制御加熱炉を用い、アルゴンガスを充満させた不活性雰囲気下にて、研磨工程後の接合基板を加熱し、接合基板の温度を1650℃で3時間保持して、SiC接合基板400を得た。
〈SiC複合基板600の製造〉
上記の方法で製造したSiC接合基板400を使用し、以下の成膜工程を含むSiC単結晶の成膜方法によりSiC複合基板600を製造した。
(成膜工程)
化学気相成長法を用いて、SiC単結晶薄膜130の表面140に厚さ20μmのSiC単結晶成長膜500を成膜し、表面510の表面粗さSaを測定した。
[実施例2]
加熱工程における接合基板の温度を1600℃、保持時間を2時間に変更した他は、実施例1と同様にSiC接合基板400およびSiC複合基板600を製造した。表面粗さSaの測定結果を表1に示す。
[実施例3]
加熱工程における接合基板の温度を1700℃、保持時間を4時間に変更した他は、実施例1と同様にSiC接合基板400およびSiC複合基板600を製造した。表面粗さSaの測定結果を表1に示す。
[実施例4、5]
実施例4、5は、実施例1と同一条件でSiC接合基板400およびSiC複合基板600を製造した。ただし、実施例4、5は、第2接合対象面210の表面粗さSaが0.5nm以下になるように、実施例1と同一条件で高精度研削、CMP研磨を行ったものの、第2接合対象面210の表面粗さSaがバラついてしまった例である。表面粗さSaの測定結果を表1に示す。
[比較例1~8]
比較例1~8は、加熱工程を行わなかった他は、実施例1と同一条件でSiC接合基板およびSiC複合基板を製造した。ただし、比較例1~8は、第2接合対象面210の表面粗さSaが0.5nm以下になるように、実施例1と同一条件で高精度研削、CMP研磨を行ったものの、第2接合対象面210の表面粗さSa0.180nm~0.290nmまでバラついてしまった例である。表面粗さSaの測定結果を表1に示す。
表1から判るように、SiC多結晶基板200の第2接合対象面210の表面粗さSaは、同一条件で高精度研削、CMP研磨を行ったものの、0.150nm~0.300nm程度ばらつきが生じることがわかる。一方で、SiC単結晶薄膜130の表面140は、CPM法により高精度に加工されており、第2接合対象面210と比べて表面粗さSaのばらつきは認められなかった。
比較例1~8の結果より、SiC単結晶薄膜130の表面140の表面粗さSa0.1nmでばらつきがないとしても、SiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さSaはSiC多結晶基板200の第2接合対象面210の表面粗さSaの影響を受ける結果となった。傾向としては、表面510の表面粗さSaは第2接合対象面210の表面粗さSaと同等か、または、より大きくなる傾向にあった。
多結晶SiCは、様々な方位を向いた小さな結晶粒の集合体であるため、CMPした際の研磨対象面の研磨速度は各結晶粒によって異なることから、各結晶粒によって摩耗量が異なっており、結果として研磨対象面は粒界に沿って無数の凹凸が発生しやすく表面粗さの小さい研磨面を得ることが単結晶SiC基板と比べて難しい。今回の実施例1~5、比較例1~8では、同一成膜条件で作成したSiC多結晶基板200を使用したものの、全く同じ組成や構成を有する多結晶SiCの基板ではないことから、たとえ同一の手法で第2接合対象面210を研削、研磨したとしても、第2接合対象面210の表面粗さSaは、0.15nm~0.300nmの範囲でバラつきを生じてしまう結果となった。そして、比較例7、8の場合のように、第2接合対象面210の表面粗さSaが0.25nmを超えると、エピタキシャル成長させたSiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さが0.30nmを超えるため、加熱工程を行わない比較例7、8のSiC接合基板400は、SiC単結晶成長膜500を成膜させても電子デバイスの製造に使用できないことが確認された。
これに対し、実施例1~5の結果は、比較例1~8と同様にSiC多結晶基板200の第2接合対象面210の表面粗さSaに0.150nm~0.300nm程度のばらつきはあるものの、SiC単結晶成長膜500の表面510の表面粗さSaは、第2接合対象面210の表面粗さSaより小さくなる傾向が認められ、加熱工程による効果が確認された。また、実施例1~5の全てにおいて、表面510の表面粗さSaが0.3nm以下となったことから、いずれのSiC複合基板600も電子デバイスの製造に使用できることがわかった。
以上より、従来手法に基づく比較例1~8の場合には、SiC多結晶基板200の第2接合対象面210の表面粗さSaが不可避的にばらつくことに起因して、電子デバイスの製造に使用できないSiC接合基板400が製造されてしまうため、電子デバイスの製造に使用できるSiC接合基板400の歩留まりが低下し、生産性が低下することを確認した。その一方で、本発明に基づく実施例1~5の場合には、第2接合対象面210の表面粗さSaが不可避的にばらつくとしても、そのばらつきが0.150nm~0.300nm程度であれば、加熱工程を採用することで、電子デバイスの製造に使用できるSiC接合基板400の歩留まりを上げることができ、生産性が従来よりも上がることを確認した。なお、第2接合対象面210の表面粗さSaが0.5nm以下であれば、加熱工程の採用により電子デバイスの製造に使用できるSiC接合基板400の歩留まりを上げることができる。
以上より、本発明であれば、多結晶SiC基板と単結晶SiC基板を接合し、その後、単結晶SiC面にCVD法により単結晶SiC膜を成膜した場合における単結晶SiC膜の表面粗さのばらつきを抑制し、SiC接合基板の生産性を向上させることができるため、産業上有用である。
100:SiC単結晶基板、110:第1接合対象面、120:水素イオン注入層、130:SiC単結晶薄膜、140:表面、200:SiC多結晶基板、210:第2接合対象面、300:チャンバー、310:FABガン、320:中性元素ビーム、400:SiC接合基板、500:SiC単結晶成長膜、510:表面、600:SiC複合基板

Claims (4)

  1. SiC単結晶基板の表面粗さSaが0.15nm以下の第1接合対象面に対して水素イオンを注入し、前記SiC単結晶基板の内部に水素イオン注入層を形成する水素イオン注入層形成工程と、
    前記第1接合対象面と、SiC多結晶基板の表面粗さSaが0.5nm以下の第2接合対象面に高速原子ビームを照射して、これらの接合対象面を活性化させる活性化工程と、
    前記活性化工程後、前記第1接合対象面と前記第2接合対象面を常温接合により、共有結合して直接接合する常温接合工程と、
    前記常温接合工程後、前記SiC単結晶基板と前記SiC多結晶基板との接合物を900℃~1100℃に加熱して、前記SiC単結晶基板を前記水素イオン注入層に沿って剥離することで、前記SiC多結晶基板にSiC単結晶薄膜を転写してSiC接合基板を得る剥離工程と、
    前記剥離工程後に露出した前記SiC単結晶薄膜の表面を、表面粗さSaが0.15nm以下となるように研磨する研磨工程と、
    前記研磨工程後、前記SiC接合基板を加熱して、当該SiC接合基板の温度を1600℃~1700℃で1~24時間保持する加熱工程と、を含むSiC接合基板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の方法により製造した前記SiC接合基板における、前記加熱工程後の前記SiC単結晶薄膜の表面に、化学蒸着によりSiC単結晶成長膜を成膜する成膜工程を含む、SiC単結晶の成膜方法。
  3. 請求項1に記載の方法により製造したSiC接合基板。
  4. 請求項2に記載の方法により製造したSiC複合基板であって、
    順に、前記SiC接合基板と、前記SiC単結晶成長膜を備える、SiC複合基板。
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