JP2024038822A - ポリアリールエーテルケトン樹脂、該樹脂を含む組成物、成形体、該樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリアリールエーテルケトン樹脂、該樹脂を含む組成物、成形体、該樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な成形性と結晶性を有し、生産性に優れたポリアリールエーテルケトン樹脂を提供する。【解決手段】芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)と2,5-フランジカルボン酸に由来する構成単位(A2)とを有する繰り返し単位(A)と、芳香族ジオールに由来する構成単位(B1)と芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B2)とを有する繰り返し単位(B)とを有し、少なくとも(B1)と(B2)のいずれかは、それぞれ(A1)および(A2)と相異なる構成単位であることを特徴とする、ポリアリールエーテルケトン樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、フランジカルボン酸に由来する構成単位を有し、成形性と結晶性に優れたポリアリールエーテルケトン樹脂、該樹脂を含む組成物、成形体、該樹脂の製造方法に関する。
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、力学特性、電気特性に優れ、エンジニアリングプラスチックとして航空、電子情報、インプラント等多くの技術分野に広く応用される。現在これらの用途には主にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂が使われている。例えば、特許文献1では、優れた熱物性及び機械物性を有するPEEK樹脂が開示されている。しかしながら、PEEK樹脂は他の熱可塑性樹脂と比較して融点が高い傾向にある。その高い融点により、射出成形や押出成形等、PEEKを溶融状態にせしめて加工する際の加工温度が高くなるという課題がある(特許文献2参照)。そのため、加工に用いることのできる成型機に制約が生じる。
この課題を解決するために、従来PEEK樹脂の重合に用いられてきたヒドロキノンと、特定の芳香族ジオールを共重合することで融点を下げたポリアリールエーテルケトン樹脂が提案されている。例えば、特許文献3では、共重合成分として4,4’-ジヒドロキシビフェニルを用いることで、従来のPEEK樹脂と比較して融点の低い結晶性ポリアリールエーテルケトン樹脂が得られたことが報告されている。しかし、このPAEK樹脂は、共重合成分の添加により、従来のPEEK樹脂と比較して結晶性、即ち示差走査熱量計の昇温過程における融解エンタルピーの値が低下することが報告されている(特許文献4参照)。
一方、骨格をポリエーテルケトンケトン(PEKK)とし、テレフタル酸に由来するジケトン骨格の一部をイソフタル酸に由来する骨格として融点を下げる方法が開示されている(特許文献5参照)。しかしながら、イソフタル酸に由来する骨格の割合の増加に伴い結晶性が低下し、高温下における弾性率などの力学物性が損なわれるため、PEEK樹脂の抱える課題の完全な解決には至っていなかった。
また、屈曲構造を有するフランジカルボン酸(FDCA)に由来する骨格を用いることで融点を下げたポリアリールエーテルケトン樹脂が提案されている。例えば、非特許文献1ではFDCAの誘導体化と芳香族求核置換反応により、FDCAに由来する骨格を有するポリアリールエーテルケトン樹脂を開示している。一部の骨格では融点が300℃未満になるものもあり、これは既存のPEEK樹脂の融点(343℃)より顕著に低く、成形性が改善されている。しかしながら、結晶性においては十分とはいえず、成形性と結晶性の両立において改善の余地があった。
米国特許第4320224号明細書 特開2021-50314号公報 国際公開WO2014/207458明細書 欧州特許第3783047号明細書 欧州特許第3783047号明細書
Y. Kanetaka; S. Yamazaki; K. Kunio, Polymer Chemistry, 2016, 54, 3094-3101. ‘‘Preparation of Poly(ether ketone)s Derived from 2,5-Furandicarboxylic Acid via Nucleophilic Aromatic Substitution Polymerization.’’
このように従来のPAEK樹脂は、その融点が高いことから、成形性や生産性の観点から改善が必要である一方、共重合成分の導入により融点を低下せしめた場合には、同時に結晶性等が損なわれることから、これらの物性を両立することが極めて困難であった。本発明者らは屈曲構造を有するフランジカルボン酸(FDCA)に由来する骨格を用い、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂の検討を行ったところ、PEEK樹脂と比較して、融点は低下したが、同時に結晶性(即ち、示差走査熱量計の昇温過程における融解エンタルピーが小さい)に劣ることが判明した。このような樹脂は、フィルム、複合材等の成形品にした場合にも、成形体全体の分子状態が均一にならず十分な樹脂物性が発揮されにくいことや、高温領域において急激に力学物性が低下しやすい傾向にあること等、結晶性に起因した問題が起こる。また、結晶性に劣る樹脂の結晶化度を高めるため、成形プロセスにおける結晶化時間を長く確保すると、溶融樹脂を冷却する工程が長大となるなど、高コストで非効率なプロセスとなり、成形性・生産性に劣る樹脂となる。
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、良好な成形性と結晶性を有し、生産性に優れたポリアリールエーテルケトン樹脂を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。この結果、FDCAに由来する構造単位を含み、二種類以上の繰り返し単位を有することで、良好な結晶性と成形性を有し、生産性に優れたポリアリールエーテルケトン樹脂を得ることができ、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[12]に存する。
[1] 芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)と2,5-フランジカルボン酸に由来する構成単位(A2)とを有する繰り返し単位(A)と、芳香族ジオールに由来する構成単位(B1)と芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B2)とを有する繰り返し単位(B)とを有し、少なくとも(B1)と(B2)のいずれかは、それぞれ(A1)および(A2)と相異なる構成単位であることを特徴とする、ポリアリールエーテルケトン樹脂。
[2] 前記繰り返し単位(A)が下記式(1)で表される、[1]に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
Figure 2024038822000001
(但し、Ar1は二価の芳香族基、mは正の整数である。)
[3] 前記繰り返し単位(B)が下記式(2)で表される、[1]又は[2]に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
Figure 2024038822000002
(但し、Ar2は二価の芳香族基、nは正の整数である。)
[4] 樹脂中、繰り返し単位(A)を0.1~30モル%または70~99.9モル%含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
[5] 前記繰り返し単位(A)において、Arに含まれる炭素数が4~30である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
[6] 前記繰り返し単位(B)において、Arに含まれる炭素数が4~30である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
[7] 前記繰り返し単位(A)において、Arが置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、もしくは下式(3)
Figure 2024038822000003
(ただしXは任意の二価の連結基)
である、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
[8] 前記繰り返し単位(B)において、Arが置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、もしくは下式(4)
Figure 2024038822000004
(ただしXは任意の二価の連結基)
である、[1]~[7]のいずれか1項に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
[9] [1]~[8]に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂を含む組成物。
[10] [1]~[9]に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂を含む成形体。
[11] 前記成形体がフィルムである、[10]に記載の成形体。
[12] ビスフルオロベンゾイルフランを原料に使うことを特徴とする、[1]~[8]のいずれか1項に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂の製造方法。
本発明によれば、バイオマス由来の原料を使用可能で、良好な成形性および結晶性を有し、生産性に優れたポリアリールエーテルケトン樹脂を得ることができる。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。なお、本発明において、「芳香族」は、「複素芳香族」を包含し、主鎖または側鎖中に一部に芳香環を構成しない炭素、水素、ヘテロ原子からなる結合もしくは置換基を含んでいてもよい。
[ポリアリールエーテルケトン樹脂]
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂(以下、「本発明のPAEK樹脂」または単に「本発明の樹脂」と称す場合がある。)は、芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)と2,5-フランジカルボン酸に由来する構成単位(A2)とを有する繰り返し単位(A)と、芳香族ジオールに由来する構成単位(B1)と芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B2)とを有する繰り返し単位(B)とを有し、少なくとも(B1)と(B2)のいずれかは、それぞれ(A1)および(A2)と相異なる構成単位である。
また、PAEKは広義のPAEKであって、分子骨格中にエーテル結合とカルボニル結合をそれぞれ少なくとも1つ有していればよい。すなわち、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)などを包含する。中でも樹脂の繰り返し単位中にエーテル結合を2つ以上含む樹脂種が好ましく、特にポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)類が好ましい。
<繰り返し単位(A)>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂中の繰り返し単位(A)には、芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)(以下、「芳香族ジオール単位(A1)」と称す場合がある。)と2,5-フランジカルボン酸に由来する構成単位(A2)(以下、「2,5-フランジカルボン酸単位(A2)」と称す場合がある。)を含む。
(芳香族ジオールに由来する構成単位(A1))
芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)は、フェノール性ヒドロキシ基を二つ有する化合物に由来する構成単位のことを指す。芳香環を構成しない炭素、水素、ヘテロ原子からなる結合もしくは置換基を含んでもよい。芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)に用いることができる芳香族ジオールとしては、後掲の芳香族ジオールが挙げられる。
芳香族ジオールに由来する構成単位は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。本発明の芳香族ジオールに由来する構成単位の割合は、樹脂の耐熱性、力学特性の観点では多いことが好ましい。具体的には、これらの構成単位の合計が、繰り返し単位(A)中、ジオールに由来する全構成単位に対して、51モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。また、上限は、100モル%である。
(その他のジオールに由来する構成単位)
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂中のジオールに由来する構成単位には、芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)以外の構成単位(以下、「その他のジオールに由来する構成単位」と称す場合がある。)を含んでいてもよい。その他のジオールに由来する構成単位としては、脂肪族ジオールに由来する構成単位、脂肪族性水酸基と芳香族性水酸基を一つずつ有するジオールに由来する構成単位が挙げられる。本発明のその他のジオールに由来する構成単位は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。本発明のその他のジオールに由来する構成単位の割合は、樹脂の耐熱性、力学特性の観点では少ないことが好ましい。具体的には、これらの構成単位の合計が、ジオールに由来する全構成単位に対して、49モル%以下であり、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、特に好ましくは10モル%以下である。また、下限は、0モル%である。
(2,5-フランジカルボン酸に由来する構成単位(A2))
2,5-フランジカルボン酸単位(A2)の割合は、ポリアリールエーテルケトン樹脂の耐熱性、結晶性、力学特性、成形性等の観点から、多いことが好ましく、2,5-フランジカルボン酸単位を主たるジカルボン酸単位として有することがより好ましい。具体的には、繰り返し単位(A)中、全ジカルボン酸単位に対して、51モル%以上であり、より好ましくは55モル%以上であり、さらに好ましくは60モル%以上であり、特に好ましくは65モル%以上であり、殊更好ましくは70モル%以上であり、とりわけ好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは90モル%以上である。また、上限は100モル%である。
(バイオマス由来の成分)
ポリアリールエーテルケトン樹脂を構成する単位は、環境負荷低減の観点からバイオマスに由来する単位であることが好ましい。なかでも、2,5-フランジカルボン酸に由来する単位(A2)は、バイオマス由来の2,5-フランジカルボン酸に由来する単位であることが好ましい。
(繰り返し単位(A)の具体的構造例)
繰り返し単位(A)は下記式(1)で表される構造単位であることが好ましい。
Figure 2024038822000005
(但し、Ar1は二価の芳香族炭化水素基、mは正の整数である。)
繰り返し単位(A)において、Arに含まれる炭素数は4~30であることが好ましく、炭素数4~25であることがより好ましく、炭素数4~20であることがさらに好ましく、炭素数4~18であることが特に好ましく、炭素数4~15であることが最も好ましい。
繰り返し単位(A)において、Arが置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、もしくは下式(3)であることが好ましい。
Figure 2024038822000006
(ただしXは任意の二価の連結基)
Arが有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ビニル基、アリル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基等の炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等のエーテル結合を含む置換基、アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル基を含む置換基、アセトキシ基のエステル結合を含む置換基、アセトアミド基、ベンズアミド基等のアミド基を含む置換基、ニトロ基、アミノ基、アルデヒド基、シアノ基、塩素、臭素、ヨウ素、パーフルオロメチル基等のパーフルオロアルキル基を挙げることができる。
二価の連結基であるXとしては、例えば、エーテル、カルボニル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ビス(フルオロメチル)メチレン基、エチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルメチレン基、メチレン基、スルホニル基、シクロへキシリデン基、シクロへキシレン基および以下に示す連結基を挙げることができる。
Figure 2024038822000007
Figure 2024038822000008
Figure 2024038822000009
Figure 2024038822000010
繰り返し単位(A)の具体的な構造を以下に例示する。
Figure 2024038822000011
Figure 2024038822000012
Figure 2024038822000013
Figure 2024038822000014
Figure 2024038822000015
Figure 2024038822000016
<繰り返し単位(B)>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂中の繰り返し単位(B)は、芳香族ジオールに由来する構成単位(B1)(以下、「芳香族ジオール単位(B1)」と称す場合がある。)と芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B2)(以下、「芳香族ジカルボン酸単位(B2)」と称す場合がある。)を含む。上述の繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とは、少なくとも(B1)と(B2)のいずれかは、それぞれ(A1)および(A2)と相異なる構成単位であるという関係にある。
(芳香族ジオールに由来する構造単位(B1))
上述の芳香族ジオールに由来する構造単位(A1)を芳香族ジオールに由来する構造単位(B1)でも使用することができる。また、芳香族ジオール以外のその他のジオールに由来する構成単位についても、上記と同様である。
(芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位(B2))
芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位は、芳香環に直結したカルボキシル基を二つ有する化合物に由来する構成単位のことを指す。芳香環を構成しない炭素、水素、ヘテロ原子からなる結合もしくは置換基を含んでもよい。
芳香族ジカルボン酸に由来する単位の割合は、ポリアリールエーテルケトン樹脂の耐熱性、結晶性、力学特性、成形性等の観点から多いことが好ましい。具体的には、全ジカルボン酸単位に対して、51モル%以上であり、より好ましくは55モル%以上であり、さらに好ましくは60モル%以上であり、特に好ましくは65モル%以上であり、殊更好ましくは70モル%以上であり、とりわけ好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは90モル%以上である。また、上限は100モル%である。
芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B2)に用いる芳香族ジカルボン酸は、後掲の芳香族ジカルボン酸を用いることができる。ただし、芳香族ジオールに由来する構造単位(A1)と芳香族ジオールに由来する構造単位(B1)が同一である場合に限り、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B2)には、2,5-フランジカルボン酸に由来する構成単位は含まない。
(バイオマス由来の成分)
上記したように、ポリアリールエーテルケトン樹脂を構成する単位は、環境負荷低減の観点からバイオマスに由来する単位であることが好ましいが、なかでも、構造単位(B2)として2,5-フランジカルボン酸に由来する単位を用いる場合、該単位は、バイオマス由来の2,5-フランジカルボン酸に由来する単位であることが好ましい。
(繰り返し単位(B)の具体的構造例)
繰り返し単位(B)は下記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
Figure 2024038822000017
(但し、Ar2は二価の芳香族炭化水素基、nは正の整数である。)
繰り返し単位(B)において、Arに含まれる炭素数は4~30であることが好ましく、炭素数4~25であることがより好ましく、炭素数4~20であることがさらに好ましく、炭素数4~18であることが特に好ましく、炭素数4~15であることが最も好ましい。であることがより好ましい。
繰り返し単位(B)において、Arが置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、もしくは下式(4)であることが好ましい。
Figure 2024038822000018
(ただしXは任意の二価の連結基)
Arが有していてもよい置換基は、Arが有していてもよい置換基と同様ものが挙げられる。
二価の連結基であるXとしては、例えば、エーテル、カルボニル基、ジメチルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフルオロメチルメチレン基、エチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルメチレン基、メチレン基、スルホニル基、シクロへキシレン基および以下に示す連結基を挙げることができる。
Figure 2024038822000019
Figure 2024038822000020
Figure 2024038822000021
Figure 2024038822000022
繰り返し単位(B)の具体的な構造を以下に例示する。
Figure 2024038822000023
Figure 2024038822000024
Figure 2024038822000025
Figure 2024038822000026
Figure 2024038822000027
Figure 2024038822000028
Figure 2024038822000029
また、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)において、mとnは正の整数であれば特に制限はない。mとnの和は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることが特に好ましく、30以上であることが最も好ましい。また、mとnの和は10000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることが特に好ましく、300以下であることが殊更に好ましく、200以下であることが最も好ましい。上述の好ましいmとnの和の範囲とすることにより、ポリアリールエーテルケトン樹脂が適度な溶融粘度を有し、成形性に優れ、機械強度の高い成形品を製造することができる。また、結晶性に優れ、耐熱性に優れた成形品を製造することができる。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂において、上記した繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)を含む全繰り返し単位を基準として、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)のうち多いほうを70モル%以上含むことが好ましく、75モル%以上含むことがより好ましく、80%以上含むことが特に好ましく、83%以上含むことが殊更に好ましく、85%以上含むことが最も好ましい。また、上記した繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)を含む全繰り返し単位を基準として、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)のうち多いほうを通常99.9モル%以下含み、99モル%以下含むことが好ましく、98モル%以下含むことがより好ましく、97モル%以下含むことがさらに好ましく、96モル%以下含むことが殊更に好ましく、95モル%以下含むことが最も好ましい。上記範囲とすることで、ポリアリールエーテルケトン樹脂の結晶性が向上する。
<芳香族ジオールに由来する構成単位(構成単位(A1)、構成単位(B1))>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂中に2種類以上の芳香族ジオールを併用する場合、任意の割合で組み合わせて用いることができるが、樹脂の融点、ガラス転移温度、ならびに結晶化度が高められやすい点からは、特定の成分を多く含有することが好ましく、また、樹脂融点が低く成形が容易であるという点からは、特定の成分に偏らない方が好ましい。従って、具体的には、芳香族ジオールに由来する構成単位のうち最も構成割合が多い構成単位の下限は、芳香族ジオールに由来する全構成単位の合計に対して51モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上であり、殊更に好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは95モル%以上である。またその上限は、芳香族ジオールに由来する全構成単位の合計に対して100モル%以下であり、好ましくは98モル%以下であり、より好ましくは95モル%以下であり、特に好ましくは93モル%以下であり、殊更好ましくは91モル%以下であり、最も好ましくは90モル%以下である。
<その他のジカルボン酸に由来する構成単位>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂は、繰り返し単位(A)または繰り返し単位(B)中、上述の2,5-フランジカルボン酸単位や芳香族ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸に由来する構成単位(以下、「その他のジカルボン酸に由来する構成単位」と称す場合がある。)を有していてもよい。その他のジカルボン酸単位としては、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂の特性を阻害しない限り限定されるものではなく、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位ならびに脂肪族カルボキシル基と芳香族カルボキシル基の両方を有するものが挙げられる。本発明のその他のジカルボン酸に由来する構成単位は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。本発明のその他のジカルボン酸に由来する構成単位の割合は、樹脂の耐熱性、力学特性の観点では少ないことが好ましい。具体的には、これらの構成単位の合計が、繰り返し単位(A)または繰り返し単位(B)中、全ジカルボン酸単位に対して、49モル%以下であり、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、特に好ましくは10モル%以下である。また、下限は、0モル%である。
<その他の単位>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂は、上述の2,5-フランジカルボン酸に由来する単位(A2)、芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)、芳香族ジオールに由来する構造単位(B1)及び芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B2)以外の構成単位(以下、単に「その他の単位」と称す場合がある。)を有していてもよい。また、その他の単位を有する場合、1種類のみでも、2種類以上の単位を有していてもよい。その他の単位としては水酸基またはカルボキシル基をいずれか1つだけ有する構成単位、ならびに水酸基および/またはカルボキシル基を任意の組み合わせで3つ以上有する構成単位が挙げられる。その他の単位を構成する化合物の具体例としては、フェノール、メタノール、エタノール、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、トリメチロールエタン、1,3,5-トリカルボキシベンゼン等が挙げられる。これらの成分は分子量や物性を制御する目的で少量用いることができ、また、実用上十分な分子量を有する樹脂を得られやすいことや、過剰な架橋構造の形成や異物発生等のトラブルを防ぐ観点からは、必要最低限の量に留めることが好ましい。具体的には、これらの構成単位の合計が、ポリアリールエーテルケトン樹脂の全構成単位に対して、49モル%以下であり、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下、とりわけ好ましくは2モル%以下、殊更好ましくは1モル%以下、特に殊更好ましくは0.8モル%以下、最も好ましくは0.5モル%以下である。また、下限は、0モル%である。
<金属成分>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂は、上記バイオマス由来の成分に含まれる金属不純物や重合反応に用いる塩基に由来する金属成分を含有する。この場合、バイオマス原料由来の金属不純物としてはNa、K等のアルカリ金属やMg、Ca等のアルカリ土類金属が挙げられる。これらの成分は、樹脂の色調が良好になりやすいことや、反応中の副反応を抑制しやすい点からは少ないことが好ましい。具体的には、アルカリ金属の量は、1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、250ppm以下であることが特に好ましく、200ppm以下であることが最も好ましい。また、アルカリ土類金属の量は、1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、250ppm以下であることが特に好ましく、200ppm以下であることが最も好ましい。
[ポリアリールエーテルケトン樹脂の製造方法]
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂は、各構成単位が上述の割合や組成となるように、原料や添加剤を選択すれば、公知のポリアリールエーテルケトン樹脂の製造方法により製造することができる。例えば、ジカルボン酸の酸クロリド化と、それに続く芳香族化合物とのFriedel-Craftsアシル化反応を経て重縮合反応させる方法、またはジカルボン酸の酸クロリド化とそれに続く芳香族ハライドとのFriedel-Craftsアシル化反応によりジハロ化合物を合成した後、塩基存在下でジオールとの求核置換反応を経て重縮合反応させることにより製造する方法のいずれの方法によっても製造することができる。
中でも、Friedel-Craftsアシル化反応においては複数の位置異性体が生成することが知られており、これを混合物のまま樹脂の合成に用いると、得られる樹脂は熱物性に劣るものとなってしまう懸念がある。また、Friedel-Craftsアシル化反応では、触媒として塩化アルミニウムを基質に対して等モル以上用いるため、この残渣である水酸化アルミニウムが大量に副生することが知られており、これを抱き込んだまま樹脂化してしまうと、その除去に大きなコストと労力を要し、その生産性が著しく低下する。これに対して、Friedel-Craftsアシル化反応を行った直後の低分子量中間体の段階で適切な精製を行うことにより、異性体の取り込みによる樹脂物性の悪化、ならびに触媒残渣の除去を、より容易かつ効率的に行うことができることから、製造方法としては芳香族求核置換反応によるものがより好ましい。
芳香族求核置換反応により本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂を製造する場合、ジオールとジカルボン酸に由来する単位及び塩基を用いて、オリゴマー化反応を行った後、高温での重縮合反応を行うといった溶液重合の一般的な方法で製造することができる。以下では芳香族求核置換反応による合成方法について詳しく述べるが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、他の製造方法で合成してもよい。
ポリアリールエーテルケトン樹脂に含まれる各構成単位の割合は、原料の仕込みモル比を調整することによって、任意の割合に調節することができる。
<芳香族ジオール>
芳香族ジオールに由来する構成単位となる原料としては、特に限定されないが、炭素数4~30の芳香族ジオールが好ましく、炭素数4~25の芳香族ジオールがより好ましく、炭素数4~20の芳香族ジオールがさらに好ましく、炭素数4~18の芳香族ジオールが特に好ましく、炭素数4~15の芳香族ジオールが最も好ましい。
具体的にはヒドロキノン(HQ)、レゾルシノール、カテコール等の置換ベンゼン誘導体;4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’―ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル誘導体;4,4’―ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、2,2’―ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’―ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;4,4’―ジヒドロキシビフェニル、2,2’―ジヒドロキシビフェニル、2,4’―ジヒドロキシビフェニル等のビフェニル誘導体;1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレンなどのナフタレン誘導体;ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等のビスフェノール類;等が挙げられ、水酸基以外の任意の官能基をさらに有していてもよい。中でも置換ベンゼン誘導体、ジフェニルエーテル誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ビフェニル誘導体、ナフタレン誘導体、ビスフェノールSが好ましい。特にヒドロキノン、4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル(DHDPE)、4,4’―ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’―ジヒドロキシビフェニル、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールSが好ましい。芳香族ジオール単位の原料は、1種類でも、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
<2,5-ビス(フルオロベンゾイル)フラン(BFBF)>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂においては、2,5-フランジカルボン酸に由来する構成単位を導入する方法としては、バイオマス由来の2,5-フランジカルボン酸を用いるだけでなく、2,5-ビス(フルオロベンゾイル)フラン(以下、「BFBF」と称す場合がある。)を用いることができる。BFBFは公知の製造方法によって製造できる。例えば、2,5-フランジカルボン酸を適切な塩素化剤により2,5-フランジカルボン酸ジクロリドとし、Lewis酸を触媒としたフルオロベンゼンとのFriedel-Craftsアシル化反応に供することによりBFBFを製造することができる。この方法で製造されたBFBFには、カルボニル基に対する二つのフッ素の置換位置が2,2’位、2,4’位、4,4’位である三つの位置異性体が存在し、通常、反応生成物はこれらの混合物として得られる。得られたBFBFは位置異性体の混合物のまま重合に用いることもできるが、樹脂の耐熱性、力学特性の観点から、4,4’位のものを重合に用いることが好ましい。位置異性体から4,4’位の成分を単離する方法は、公知の方法を任意に用いることができるが、中でも再結晶精製などを行うことが好ましい。
<その他の芳香族ジカルボン酸>
上記BFBF以外のその他の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位となる原料としては、特に限定されないが、炭素数4~30の芳香族ジカルボン酸が好ましく、炭素数4~25の芳香族ジカルボン酸がより好ましく、炭素数4~20の芳香族ジカルボン酸がさらに好ましく、炭素数4~18の芳香族ジカルボン酸が特に好ましく、炭素数4~15の芳香族ジカルボン酸が最も好ましい。
その他の芳香族ジカルボン酸単位に由来する構成単位となる原料としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の置換ベンゼン誘導体;チオフェンジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸などの置換複素環誘導体;4,4’―ジカルボキシジフェニルエーテル、2,2’―ジカルボキシジフェニルエーテル、2,4’―ジカルボキシジフェニルエーテルなどのジフェニルエーテル誘導体;4,4’―ジカルボキシジフェニルエーテル、2,2’―ジカルボキシベンゾフェノン、2,4’―ジカルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;4,4’―ジカルボキシビフェニル、2,2’―ジカルボキシビフェニル、2,4’―ジカルボキシビフェニル等のビフェニル誘導体;1,2―ジカルボキシナフタレン、1,3-ジカルボキシナフタレン、1,4-ジカルボキシナフタレン、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、1,8-ジカルボキシナフタレン、2,3-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレン、2,7-ジカルボキシナフタレン等のナフタレン誘導体;等が挙げられ、カルボキシ基以外の任意の官能基をさらに有していてもよい。中でも樹脂の融点、ガラス転移温度、ならびに結晶化度が高められやすい点からは、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’―ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’―ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’―ジカルボキシビフェニル、2,6-ジカルボキシナフタレン、2,7-ジカルボキシナフタレンが好ましい。その他の芳香族ジカルボン酸単位の原料は、1種類でも、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のその他の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位の割合は、樹脂の耐熱性、力学特性の観点では少ないことが好ましい。具体的には、これらの構成単位の合計が、繰り返し単位(A)または繰り返し単位(B)中、全ジカルボン酸単位に対して、49モル%以下であり、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、特に好ましくは10モル%以下である。また、下限は、0モル%である。
<原料仕込みモル比>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂の製造において、重合に使用するモノマーの仕込みモル比は、本発明のポリアリールエーテルケトンが製造できれば特に限定されない。ジカルボン酸の誘導体に対するジオールのモル比は、高重合度の重合物を得るという観点から、通常0.90以上であり、好ましくは0.95以上であり、より好ましくは0.97以上であり、さらに好ましくは0.99以上である。また、通常1.10以下であり、好ましくは1.05以下、より好ましくは1.03以下、さらに好ましくは1.01以下である。
<塩基>
芳香族求核置換反応により本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂を製造する場合、通常塩基の存在下で重合反応を行う。塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸水素塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。これらの中でも、取り扱いの容易さ・反応性の観点から炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが特に好ましい。塩基は1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。反応に関与する全てのヒドロキシ基をアルカリ金属塩にする観点から、ヒドロキシ基に対するアルカリ金属のモル比は、通常1.00当量以上であり、好ましくは1.01当量以上であり、より好ましくは1.02当量以上であり、さらに好ましくは1.03当量以上であり、最も好ましくは1.05当量以上である。また、樹脂の品質や電気的特性の観点から、通常2.00当量以下であり、好ましくは1.50当量以下であり、より好ましくは1.30当量以下であり、さらに好ましくは1.20当量以下であり、最も好ましくは1.10当量以下である。
<溶媒>
芳香族求核置換反応により本発明を実施する場合、非プロトン性極性溶媒中で反応させることが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、具体的にはN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素等のアミド基含有化合物;ジメチルスルホン、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジベンゾチオフェン―5,5’―ジオキシド、4-フェニルスルホニルビフェニル等のスルホニル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルフィニル基含有化合物;ベンゾニトリル等のニトリル基含有化合物;ジフェニルエーテル等のエーテル結合含有化合物;ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン基含有化合物;クロロベンゼン等の塩素含有化合物;等が挙げられる。沸点が高く高温での反応が可能であること、モノマーに対する溶解性が高いことからスルホニル基を有するものが好ましく、中でもジフェニルスルホンを用いることが特に好ましい。溶媒は、1種類でも、2種類以上の溶媒を併用してもよい。溶媒の量は、少なすぎるとポリマーが十分に溶解せず反応に要する時間が長大化することから、モノマーの総量1モルに対して0.1L以上であることが好ましく、より好ましくは0.15L以上、さらに好ましくは0.2L以上、特に好ましくは0.25L以上である。溶媒量の上限に特に制限はないが、溶媒の使用量を多くすると経済性が悪化することや、反応系中における反応に寄与する官能基の濃度が減少し、反応に要する時間が長大化することから、モノマーの総量1モルに対して10L以下であることが好ましく、より好ましくは5L以下、さらに好ましくは3L以下、特に好ましくは2L以下、殊更に好ましくは1.5L以下、最も好ましくは1L以下である。
上記の溶媒に加えて、モノマーの昇華を抑制するため、高沸点溶媒を用いてもよい。高沸点溶媒としては、トリグライム、テトラグライム等のアルキルエーテルが挙げられる。
<重縮合反応工程>
芳香族求核置換反応により本発明を実施する場合、通常比較的低温で重縮合を行った後、比較的高温で重縮合を行う。
比較的低温での重縮合における温度、時間、圧力等の条件は、従来公知のポリアリールエーテルケトン製造法の範囲を採用できる。反応温度は、反応基質、反応生成物、並びに塩基の溶解性を高めるとともに、反応速度を速めることができるという点では高温であることが好ましく、具体的には150℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上、特に好ましくは190℃以上である。また一方で、モノマーの昇華や熱分解等の副反応を抑制するという点からは低いことが好ましく、具体的には250℃以下であることが好ましく、より好ましくは230℃以下、さらに好ましくは220℃以下、特に好ましくは210℃以下である。反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。反応時間は、重縮合を十分に進行させるという観点からは長時間であることが好ましく、具体的には通常10分以上であり、好ましくは20分以上であり、より好ましくは30分以上であり、さらに好ましくは45分以上であり、最も好ましくは1時間以上である。また、熱分解等の副反応を抑制するという観点からは短いことが好ましく、具体的には通常5時間以下であり、好ましくは4時間以下であり、より好ましくは3時間以下であり、さらに好ましくは2時間30分以下であり、最も好ましくは2時間以下である。反応圧力は、重合反応に伴い生成する水の反応系外への排出を促し、解重合等の副反応を抑制する観点からは低圧であることが好ましく、反応基質および中間体の揮発を抑制し反応系中の官能基のモルバランスが保たれることで、高重合度の重合物が得られやすいという観点からは高圧であることが好ましい。具体的には常圧であることが好ましい。
比較的高温での重縮合における温度、時間、圧力等の条件は、従来公知のポリアリールエーテルケトン製造法の条件を採用できる。反応温度は、反応基質、反応生成物、並びに塩基の溶解性を高めるとともに、反応速度を速めることができるという点で、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上、特に好ましくは260℃以上である。また一方で、熱分解等の副反応を抑制するという点から、反応温度は400℃以下であることが好ましく、より好ましくは380℃以下、さらに好ましくは350℃以下、特に好ましくは320℃以下である。反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。反応時間は、重縮合を十分に進行させ高分子量体を得るという観点からは長時間であることが好ましく、具体的には通常10分以上であり、好ましくは20分以上であり、より好ましくは30分以上であり、さらに好ましくは45分以上であり、最も好ましくは1時間以上である。また、熱分解等の副反応を抑制するという観点からは短いことが好ましく、具体的には通常20時間以下であり、好ましくは15時間以下であり、より好ましくは10時間以下であり、さらに好ましくは5時間以下であり、殊更に好ましくは4時間以下であり、とりわけ好ましくは3時間以下であり、最も好ましくは2時間以下である。反応圧力は、重合反応に伴い生成する水の反応系外への排出を促し、解重合等の副反応を抑制する観点からは低圧であることが好ましく、反応基質および中間体の揮発を抑制し反応系中の官能基のモルバランスが保たれることで、高重合度の重合物が得られやすいことや、溶媒の反応系外への留出が抑制され、反応の終盤まで反応液の流動性が保たれやすいことから高圧であることが好ましい。具体的には常圧であることが好ましい。
通常、重縮合反応工程を終了した後は、固体状態で重合生成物を反応容器から取り出し、粉砕した後、有機溶媒で懸濁洗浄し、固体成分を濾取することで目的の樹脂を得る。洗浄に用いる有機溶媒としては任意の極性溶媒を用いることができ、例えば、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;ならびに、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;等が挙げられる。回収した固体成分を水により洗浄し、濾過により固体成分を回収することで、ポリアリールエーテルケトン樹脂を得る。
<反応装置>
芳香族求核置換反応により本発明を実施する場合、上述の反応を行う反応装置としては、または公知の縦型または横型撹拌槽型反応器を用いることができる。オリゴマー化反応工程及び重縮合反応工程の2段階の工程を行う場合、全工程を1つの反応装置を用いて行っても複数の反応装置を用いて行ってもよい。反応槽が備える攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、ディスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
洗浄に用いる装置としては、公知の装置を任意に使用することができる。公知の装置としては、例えば、密閉容器内部の水平ろ板にろ材を取り付けた単板加圧ろ過機(ヌッチェフィルター)等が知られている。
[ポリアリールエーテルケトン樹脂の物性]
<還元粘度(RV)>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂の還元粘度は、通常0.5dL/g以上である。また、好ましくは0.6dL/g以上であり、より好ましくは0.7dL/g以上であり、さらに好ましくは0.8dL/g以上であり、特に好ましくは0.9dL/g以上である。また、一方で、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂の還元粘度は、通常3.5dL/g以下であり、好ましくは3.0dL/g以下であり、より好ましくは2.5dL/g以下であり、さらに好ましくは2.0dL/g以下であり、特に好ましくは、1.9dL/g以下であり、殊更に好ましくは1.8dL/g以下であり、とりわけ好ましくは1.7dL/g以下であり、最も好ましくは1.6dL/g以下である。上述の好ましい還元粘度とすることにより、ポリアリールエーテルケトン樹脂が適度な溶融粘度を有し、成形性に優れ、機械強度の高い成形品を製造することができる。また、結晶性に優れ、耐熱性に優れた成形品を製造することができる。本発明において、還元粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
<融点(Tm)>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂の融点は、耐熱性や機械物性を損なわない限り特に制限はない。しかしながら、成形性・生産性に優れることから、通常200℃以上であり、好ましくは210℃以上であり、より好ましくは220℃以上であり、さらに好ましくは230℃以上であり、特に好ましくは240℃以上であり、最も好ましくは250℃以上である。また、通常400℃以下であり、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは320℃以下であり、さらに好ましくは310℃以下であり、特に好ましくは300℃以下であり、殊更に好ましくは290℃以下である。ポリアリールエーテルケトン樹脂の融点の測定方法は、任意の方法を用いることができ、本発明においては、後述する実施例に記載の方法により測定する。融点は、示差熱分析法等の熱分析法等でも測定することができる他、簡易的には、目視法(JIS K6220)で測定することもできる。
<ガラス転移点(Tg)>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂のガラス転移点は、耐熱性や機械物性を損なわない限り特に制限はない。しかしながら、耐熱性に特に優れ、エンジニアリングプラスチック用途へ適用できることから、通常110℃以上であり、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、さらに好ましくは135℃以上であり、特に好ましくは140℃以上である。また、通常200℃以下であり、好ましくは190℃以下であり、より好ましくは180℃以下であり、さらに好ましくは170℃以下であり、特に好ましくは160℃以下である。ポリアリールエーテルケトン樹脂のガラス転移点の測定方法は、任意の方法を用いることができ、本発明においては、後述する実施例に記載の方法により測定する。ガラス転移点は、示差熱分析法等の熱分析法等で測定することができる。
<融解エンタルピー(ΔHm)>
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂の結晶性は、融解エンタルピーによって評価することができる。同一の測定条件で観測された融解エンタルピーが大きいほど、結晶性が高いことがわかる。本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂の融解エンタルピーは、後述する実施例に記載の方法で測定した場合において、24J/g以上であることが好ましく、25/g以上であることがより好ましく、26J/g以上であることがさらに好ましく、27J/g以上であることが特に好ましく、28J/g以上であることが殊更に好ましく、30J/g以上であることが最も好ましい。なお、融解エンタルピーの上限には特に制限はない。
[組成物]
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂には、用途や要求性能等に応じて、更に、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂以外の樹脂や添加剤等を混合し、組成物として使用することができる。組成物に使用される本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂以外の樹脂や添加剤等の成分としては、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
これらの成分の含有量は、特に制限はなく、その添加剤を含有することによる効果が得られやすい点では多いことが好ましい。また、一方で、添加剤が高分散しやすく、成形性や機械物性などに優れる点、及び工程全体の負荷を低減できる点では少ないことが好ましい。
また、これらの成分は、環境負荷軽減の観点から、バイオマス(植物原料)由来の単位であることが好ましい。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂以外の樹脂等としてはポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、LCP(液晶ポリマー)、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。添加剤としては、熱安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、核剤、無機フィラー、着色剤、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤、改質剤、架橋剤等を含有させてもよい。また添加剤等としては、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
[成形体]
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂ならびに本発明の組成物は、用途や要求性能等に応じて、射出成形や押出成形等の溶融成形法、もしくは適切な良溶媒を用い溶液として取り扱う方法により成形し、成形体として用いることができる。成形体の形状ならびに用途としては、具体的にはフィルム、繊維、パイプ、ロッド、リング、ギア、ベアリング、コーティング材、生体内インプラント材料が挙げられる。またその形態としては、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂もしくは本発明の組成物のみで成型体を構成してもよいが、その特性を発揮し得る限り、他の材料と任意の形状で組み合わせ、例として積層体等として用いることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
各物性及び評価項目の測定方法は、次の通りである。
<ポリアリールエーテルケトン樹脂の組成>
ポリアリールエーテルケトン樹脂の組成は、ブルカー社製の核磁気共鳴スペクトル装置「AVANCENEO 400」を用いて、H-NMRスペクトルを測定し、各構成単位に対応するシグナルの積分値の比率から求めた。例えば、ヒドロキノン単位と4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン単位と2,5-フランジカルボン酸単位から構成されるポリアリールエーテルケトン樹脂であれば、8.01ppmと7.59ppmに現れるシグナルの積分比からヒドロキノン単位/4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン単位/フランジカルボン酸のモル比を決定した。
<還元粘度(RV)(dL/g)>
ウベローデ型粘度計を使用して、次の要領で求めた。すなわち、濃硫酸(>95%)を溶媒として使用し、25℃において、濃度0.1g/dLのポリアリールエーテルケトン試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(1)より求めた。
RV=ηsp/C …(1)
式(1)中、ηsp=η/η-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cは試料溶液の濃度(g/dL)である。
<ポリアリールエーテルケトン樹脂の融点(Tm)(℃)>
ポリアリールエーテルケトン樹脂について、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、30℃から360℃へ10℃/分の速度で昇温した後、360℃から30℃まで10℃/分の速度で冷却し、更に30℃から360℃まで10℃/分で昇温することにより行う。この際、2回目の昇温過程における吸熱ピーク温度を読み取り、ポリアリールエーテルケトン樹脂の融点とした。
<ポリアリールエーテルケトン樹脂のガラス転移点(Tg)(℃)>
測定は、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、30℃から360℃へ10℃/分の速度で昇温した後、360℃から30℃まで10℃/分の速度で冷却し、更に30℃から360℃まで10℃/分で昇温することにより行う。この際、2回目の昇温過程におけるDSC曲線の最初の変曲点における接線と、変曲点以前のベースラインとの交点の温度を読み取り、ポリアリールエーテルケトン樹脂のガラス転移点とした。
<融解エンタルピー(ΔHm)(J/g)>
測定は、示差走査熱量計「DSC7020」(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、30℃から360℃へ10℃/分の速度で昇温した後、360℃から30℃まで10℃/分の速度で冷却し、更に30℃から360℃まで10℃/分で昇温することにより行う。この際、2回目の昇温過程における試料の融解に対応する吸熱ピークの面積を融解エンタルピー(ΔHm)とし、結晶性の指標とした。
[実施例1]
攪拌翼、窒素導入口兼減圧口、加熱装置を備えた反応容器に、ビスフルオロベンゾイルフラン(BFBF)22.7質量部、ヒドロキノン(HQ)0.80質量部、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)14.0質量部、炭酸カリウム10.1質量部、ジフェニルスルホン87.0質量部、トリグライム4.8質量部を仕込んだ。ここで、BFBF/HQ/DHBPのモル比は、100/10/90である。反応容器の内容物を攪拌しながら、容器内に窒素ガスを導入し、減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。次に、系内を攪拌しながら200℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。その後、5分かけて280℃まで昇温し、この温度で1時間重縮合を継続した。反応容器から重合生成物を取り出して金槌で粉砕し粉末状とした後、常温のアセトン784質量部で15分間固液抽出による洗浄を行い、固体成分を回収した。同様の条件でもう一度アセトンによる洗浄を行った。続いて60℃の水1000質量部で15分間固液抽出による洗浄を行い、固体成分を回収した。同様の条件でもう一度水による洗浄を行った。その後、120℃のN-メチル-2-ピロリドン309質量部で30分間固液抽出による洗浄を行い、固体成分を回収した。ろ取した固体成分を真空乾燥器を用いて120℃で6時間真空乾燥することで、目的のポリアリールエーテルケトン樹脂を得た。H-NMRスペクトルからポリアリールエーテルケトン樹脂が下記繰り返し単位からなることを確認した。H-NMRスペクトルから決定した2,5-フランジカルボン酸/HQ/DHBPに由来する構成単位のモル比は100/11/89であった。
Figure 2024038822000030
また、得られた樹脂について、上記した各評価を実施した。結果を表1に示した。
このポリアリールエーテルケトン樹脂は融点+20℃以上の温度で熱プレス機を用いて溶融成型した後冷却プレス機を用いて冷却することにより十分な強度を有するフィルムに成形することができた。
[実施例2]
実施例1において、DHBPの代わりに4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(DHDPE)を用いて、実施例1と同様の反応容器に、BFBF/HQ/DHBPEの仕込み時のモル比が、100/90/10となるようにして各成分を仕込み、同様に反応させて、目的のポリアリールエーテルケトン樹脂を得た。
得られた樹脂の各構成単位のモル比は表1の通りである。
[比較例1]
実施例1と同様の反応容器に、HQとBFBFとを等モルで仕込んで、280℃での加熱時間を2時間とした以外は実施例1と同様に反応させて、目的のポリアリールエーテルケトン樹脂を得た。
得られた樹脂の各構成単位のモル比は表1の通りである。
[比較例2]
実施例1と同様の反応容器に、DHBPとBFBFとを等モルで仕込んで、同様に反応させて、目的のポリアリールエーテルケトン樹脂を得た。
得られた樹脂の各構成単位のモル比は表1の通りである。
Figure 2024038822000031
FDCA:2,5-フランジカルボン酸
HQ:ヒドロキノン
DHBP:4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン
DHDPE:4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル
BFBF:4,4’-ビスフルオロベンゾイルフラン
表1において、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂(実施例1,2)は、フランジカルボン酸に由来する単位と1種類の芳香族ジオール単位からなるポリアリールエーテルケトン樹脂(比較例1,2)と比較して結晶性が向上していることが確認できる。また、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂(実施例1,2)は、フランジカルボン酸に由来する単位と1種類のジオール単位からなるポリアリールエーテルケトン樹脂(比較例1,2)と同等か、それよりやや低い融点を有し、従来のPAEK樹脂と同程度の成形性を有していることが確認できる。
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂は、結晶性が向上したことにより、ガラス転移点前後における力学物性の低下が小さいフィルムを得られることが示された。

Claims (12)

  1. 芳香族ジオールに由来する構成単位(A1)と2,5-フランジカルボン酸に由来する構成単位(A2)とを有する繰り返し単位(A)と、芳香族ジオールに由来する構成単位(B1)と芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位(B2)とを有する繰り返し単位(B)とを有し、少なくとも(B1)と(B2)のいずれかは、それぞれ(A1)および(A2)と相異なる構成単位であることを特徴とする、ポリアリールエーテルケトン樹脂。
  2. 前記繰り返し単位(A)が下記式(1)で表される、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
    Figure 2024038822000032
    (但し、Ar1は二価の芳香族基、mは正の整数である。)
  3. 前記繰り返し単位(B)が下記式(2)で表される、請求項1又は2に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
    Figure 2024038822000033
    (但し、Ar2は二価の芳香族基、nは正の整数である。)
  4. 樹脂中、繰り返し単位(A)を0.1~30モル%または70~99.9モル%含む、請求項1又は2に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
  5. 前記繰り返し単位(A)において、Arに含まれる炭素数が4~30である、請求項2に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
  6. 前記繰り返し単位(B)において、Arに含まれる炭素数が4~30である、請求項3に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
  7. 前記繰り返し単位(A)において、Arが置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、もしくは下式(3)
    Figure 2024038822000034
    (ただしXは任意の二価の連結基)
    である、請求項2に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
  8. 前記繰り返し単位(B)において、Arが置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、もしくは下式(4)
    Figure 2024038822000035
    (ただしXは任意の二価の連結基)
    である、請求項3に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂。
  9. 請求項1又は2に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂を含む組成物。
  10. 請求項1又は2に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂を含む成形体。
  11. 前記成形体がフィルムである、請求項10に記載の成形体。
  12. ビスフルオロベンゾイルフランを原料に使うことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂の製造方法。
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