JP2024024789A - 熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー及び成形品 - Google Patents

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浩司 西口
Koji Nishiguchi
純一 星野
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Abstract

【課題】成形性と機械特性に優れ、高い透明性による優れた意匠性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを提供する。【解決手段】2官能の芳香族イソシアネート化合物由来の構造単位(I)、数平均分子量が300未満の2官能の脂肪族アルコール由来の構造単位(II)及び水酸基価から求めた数平均分子量が1000~5000のポリカーボネートジオール由来の構造単位(III)を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。構造単位(III)は、側鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位(A)と直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位(B)を3:97~35:65(モル比)で含む。構造単位(III)の含有割合は構造単位(I)~(III)の総モル量に対して5~45モル%である。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー及び成形品に関する。
詳しくは、本発明は、各種用途において求められる高い機械特性及び成形性を有し、更には高い透明性による優れた意匠性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー、及び該熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを成形してなる成形品に関する。
熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー(以下、「TPU」と称する。)は、鎖延長剤となる短鎖ジオールとジイソシアネートの反応によって形成されたハードセグメントと、ポリオールとジイソシアネートの反応によって形成されたソフトセグメントから構成されるブロックコポリマーである。
TPUを含む樹脂組成物中では、この2つのセグメントはお互いに相溶せずにミクロ相分離した状態で存在し、水素結合を主とする分子間凝集力により結晶相を形成するハードセグメントから形成されたドメインと、ソフトセグメントから形成されたドメイン主体の弱い分子間力(ファンデルワールス力)によって、運動性の高いマトリックスからなる高次構造を形成している。
熱可塑性樹脂には、
1)ゴムの様な架橋構造を有さないため、公知の溶融成形法を用いて成形加工できる。
2)得られた成形体において、幅広い硬度や弾性が得られる。
3)自己補強性があり着色が容易である。
4)リサイクルが可能である。
といった性能が要求されるが、単に熱可塑性を有するのみの熱可塑性ポリウレタン樹脂は、上述した4つの性能をバランス良く満たさない。
TPUは、他の熱可塑性樹脂(TPE)、例えばポリエステル系(TPEE)、ポリアミド系(TPAE)、スチレン系(SBC)、オレフィン系(TPO)、塩ビ系(TPVC)と比較して、優れた機械強度、弾性特性、耐摩耗性、耐油性等の特性を持つ。このため、TPUから押出成形により製造されるフィルム、シート、チューブ、パイプ等の成形品や、射出成形等により得られる種々の成形品は、様々な用途に用いられている。例えば、押出成形品の用途では、耐圧ホース及び消防ホース、搬送用ベルト及び丸ベルト、キーボード、ホットメルトフィルム、遮水シート、エアーベルト、救命具等が挙げられる。射出成形品の用途では、キャスター、ギア、電気プラグ、スノーチェーン、スポーツシューズ、時計バンド、電子端末の保護カバー、ウエラブルデバイスの部材等が挙げられる。
TPUは、一般的にジイソシアネート化合物、短鎖ジオール、及び長鎖ジオールを反応して得られる。TPUの中でも、イソシアネート化合物として芳香族系の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、鎖延長剤として1,4-ブタンジオール(1,4BG)を原料として用いたTPUが、最も広く使用されている。
長鎖ジオールにはポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、ポリカーボネート系ジオールがある。ポリエステル系ジオールは、得られたTPUの機械強度、耐摩耗性に優れるが、耐加水分解性に劣る。ポリエーテル系ジオールは、得られたTPUの耐加水分解性、低温柔軟性、抗菌性に優れるが、耐熱性、耐薬品性、耐候性が劣る。ポリカーボネート系ジオールは、得られたTPUの耐加水分解性、耐熱性、耐候性は優れるが、ジオールの粘度が高く使いにくい欠点を持つ。
よって、TPUに要求される特性によって、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、及びポリカーボネート系ジオールの中から、好適な長鎖ジオールが適宜選択される。例えば、耐久性がより要求される用途では、ポリカーボネート系ジオールが用いられる。しかしながら、1,6-ヘキサンジオールからなるホモポリカーボネートジオールを構造単位として有するTPUは、結晶性が高く機械特性に優れるものの、白濁し透明性が不十分である。
TPUは、自動車のインパネや自動車外装表面などの基材保護を目的としたフィルム、医療向けカテーテルやチューブ、衣料向けポリウレタン弾性繊維、スポーツシューズ等の靴底やミッドソール並びにスマートフォンなど電子端末の保護カバー、ウエラブルデバイスの部材等にも用いられる。
これらの用途においては、TPUに、射出成形法、押出成形法、溶融紡糸等のような公知の溶融成形法を用いたときの成形性に優れることが要求されている。また、基材保護を目的としたフィルム、医療向けチューブ等、衣料向けポリウレタン弾性繊維、スポーツシューズ等の部材、並びに電子端末の保護カバー、ウエラブルデバイスの部材の用途においては、TPUに、機械特性に優れることや、高い透明性による優れた意匠性を有することが要求されている。
特許文献1には、脂環族又は脂環族ジイソシアネート、高分子量ジオール、及び脂環式ジオールより得られた、機械的強度及び透明性に優れると共に、耐候性も優れるTPUが提案されている。
特許文献2では、ネオペンチルグリコールに由来したポリカーボネートジオールをベースとしたポリウレタンにより、人工皮革用途での風合いが良くなり柔軟で高耐熱性を有し、また本ポリウレタンを使用して製造した塗料はソフトタッチ性が高まり操作性が良くなるとされている。
特開2000-178340号公報 特開2015-166466号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示されているTPUは、溶融成形法時の成形性、機械特性、及び透明性の3つの要求特性全てを良好に満足するものではなかった。
本発明は、これらの問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、成形性と機械特性に優れ、更に高い透明性による優れた意匠性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため検討を重ねた結果、特定の共重合ポリカーボネートジオール、特定のポリイソシアネート及び特定の脂肪族アルコールを特定の比率で用いた熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーが、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造単位(I)、数平均分子量が300未満の2官能の脂肪族アルコールに由来する構造単位(II)、及び水酸基価から求めた数平均分子量が1000以上5000以下であるポリカーボネートジオールに由来する構造単位(III)を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーであって、
前記構造単位(III)が、下記式(A)で表される繰り返し単位(A)及び下記式(B)で表される繰り返し単位(B)を、(A):(B)=3:97~35:65のモル比の範囲内で含み、
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー中の前記構造単位(III)の含有割合が、前記構造単位(I)、前記構造単位(II)及び前記構造単位(III)の総モル量100モル%に対して、5モル%以上45モル%以下であり、
前記2官能脂肪族アルコールの水酸基当量と前記ポリカーボネートジオールの水酸基当量の総和に対する、前記2官能芳香族イソシアネート化合物のイソシアネート基当量の当量比率が0.98以上1.20以下の範囲内となる条件で、前記2官能脂肪族アルコール、前記ポリカーボネートジオール及び前記2官能芳香族イソシアネート化合物を反応させて得られる、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
Figure 2024024789000001
[上記式(A)は、側鎖脂肪族炭素水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはハロゲン原子、又はこれらの原子を含む置換基を有してもよい。]
Figure 2024024789000002
[上記式(B)は、直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。Rは、炭素数3又は4の直鎖脂肪族炭化水素基を表す。]
[2] 前記繰り返し単位(A)が、ネオペンチルグリコールと炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を有する、[1]に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
[3] 前記構造単位(III)において、前記繰り返し単位(A)及び前記繰り返し単位(B)のモル比が、(A):(B)=4:96~29:71の範囲内である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
[4] JIS K7361-1に準拠して測定した全光線透過率が85%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
[5] ISO 037-02に準拠して測定した引張強さが55MPa以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
[6] 成形サイクル70秒以下で射出成形することが可能な、[1]~[5]のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
[7] 前記直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物が1,4-ブタンジオールである、[1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
[8] 前記2官能の芳香族イソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、及び3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれかにに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
[9] 前記2官能の脂肪族アルコールが、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[8]のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを含む、成形品。
本発明によれば、高い機械特性と成形性を有し、更には高い透明性による優れた意匠性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー及びその成形品が提供される。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、高い機械特性及び成形性を有し、更には高い透明性による優れた意匠性を有するので、フィルム、チューブ、弾性繊維、電子端末機器の保護カバー、及びウエラブルデバイス等の部材に好適に使用できる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において、「構造単位」とは、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造に用いる原料化合物が重合することにより形成された、前記原料化合物に由来する単位であって、得られた重合体において任意の連結基に挟まれた部分構造を示す。重合体の末端部分で一方が連結基であり、もう一方が重合反応性基である部分構造も含む。構造単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、得られた重合体を処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。
本明細書において、「繰り返し単位」とは、「構造単位」と同義である。
本明細書において、「~」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有割合を示す。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー]
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、後述する2官能の芳香族イソシアネート化合物(以下、単に「2官能芳香族イソシアネート化合物」という。)に由来する構造単位(I)、後述する数平均分子量が300未満の2官能の脂肪族アルコール(以下、単に「2官能脂肪族アルコール」という。)に由来する構造単位(II)、及び、後述する、水酸基価から求めた数平均分子量が1000以上5000以下であるポリカーボネートジオール(以下、単に「ポリカーボネートジオール」という。)に由来する構造単位(III)を有する重合体である。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前記構造単位(I)を含むことにより、機械物性及び成形性が良好となる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前記構造単位(II)を含むことにより、機械物性が良好となる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前記構造単位(III)を含むことにより、機械特性及び成形性が良好となり、更には高い透明性による優れた意匠性を有する。
更に、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前記構造単位(III)が、下記式(A)で表される繰り返し単位(A)及び下記式(B)で表される繰り返し単位(B)を、(A):(B)=3:97~35:65のモル比の範囲内で含む。
Figure 2024024789000003
[上記式(A)は、側鎖型脂肪族炭素水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはハロゲン原子、又はこれらの原子を含む置換基を有してもよい。]
Figure 2024024789000004
[上記式(B)は、直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。Rは、炭素数3又は4の直鎖脂肪族炭化水素基を表す。]
更に、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前記構造単位(III)の含有割合が、前記構造単位(I)、前記構造単位(II)及び前記構造単位(III)の総モル量100モル%に対して、5モル%以上45モル%以下の範囲である。
更に、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前記2官能脂肪族アルコールの水酸基当量と前記ポリカーボネートジオールの水酸基当量の総和に対する、前記2官能芳香族イソシアネート化合物のイソシアネート基当量の当量比率が0.98以上1.20以下となる条件で、前記2官能脂肪族アルコール、前記ポリカーボネートジオール及び前記2官能芳香族イソシアネート化合物を反応させて得られる。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの原料化合物]
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造に用いる原料化合物について、以下に説明する。
<原料イソシアネート化合物>
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造に用いる原料化合物としてのイソシアネート化合物は、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの前記構造単位(I)を形成するための原料化合物として、後述する2官能芳香族イソシアネート化合物を必須成分として含む。
<2官能芳香族イソシアネート化合物>
本発明における2官能芳香族イソシアネート化合物は、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの前記構造単位(I)を形成するための原料化合物である。すなわち、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの構造単位(I)は、該2官能芳香族イソシアネート化合物に由来する構造単位を含む。
本発明における2官能芳香族イソシアネート化合物としては、具体的には、1分子中にイソシアネート基を2個含有する、2官能の芳香族イソシアネート化合物であり、公知の芳香族ポリイソシアネート化合物を使用できる。
本発明における2官能芳香族イソシアネート化合物としては、より具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、耐久性及び工業的に安価に多量に入手が可能な点で、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートが好ましく、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
本発明における2官能芳香族イソシアネート化合物としては、上述した芳香族ジイソシアネートの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
原料イソシアネート化合物としては、上記の2官能芳香族イソシアネート化合物の他2官能の脂肪族(脂環構造を有するものを含む)イソシアネート化合物を用いてもよい。2官能の脂肪族イソシアネート化合物を併用する場合、2官能の脂肪族イソシアネート化合物の含有割合は、原料化合物として使用されるイソシアネート化合物の総モル量を100モル%として、好ましくは10モル%以下、好ましくは5モル%以下、更に好ましくは2モル%以下である。原料イソシアネート化合物中の2官能の脂肪族イソシアネート化合物の含有割合が10モル%を超えると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの機械物性が低下する。
原料イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を1個含有するモノイソシアネート化合物を、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性が大きく変わらない範囲で併用することが可能である。イソシアノート基を1個含有するモノイソシアネート化合物を併用する場合、その含有割合は、原料化合物として使用されるイソシアネート化合物の総モル量を100モル%として、5モル%以下が好ましく、より好ましくは3モル%以下であり、更に好ましくは1モル%以下である。イソシアネート基を1個含有するモノイソシアネート化合物の含有割合が5モル%を超えると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの分子量が低下し、耐薬品性等の耐久性が低下する。
原料イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を3個以上含有するイソシアネート化合物も、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性が大きく変わらない範囲で併用することは可能である。イソシアネート基を3個以上含有するイソシアネート化合物を併用する場合、その含有割合は、原料化合物として使用されるイソシアネート化合物の総モル量を100モル%として、3モル%以下が好ましく、より好ましくは1モル%以下であり、更に好ましくは0.5モル%以下である。イソシアネート基を3個以上含有するイソシアネート化合物の含有割合が3モル%を超えると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーにおいて、架橋構造が導入されることにより、溶融特性が低下して成形特性が損なわれたり、あるいは、原料化合物を重合するときにゲル化反応が起き重合できなくなるおそれがある。
<原料脂肪族アルコール>
原料化合物としての脂肪族アルコールは、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの合成において鎖延長剤として作用し、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量のポリオールから選ばれる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造に用いる原料化合物としての脂肪族アルコールは、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの構造単位(II)を形成するための原料化合物として、後述する数平均分子量が300未満の2官能脂肪族アルコール(以下、「本発明における2官能脂肪族アルコール」と称する。)を必須成分として含む。
<2官能脂肪族アルコール>
本発明における2官能脂肪族アルコールは、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの前記構造単位(II)を形成するための原料化合物である。すなわち、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの構造単位(II)は、該2官能脂肪族アルコールに由来する構造単位を含む。
本発明における2官能脂肪族アルコールは、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する、低分子量のポリオールから選ぶことができる。
本発明における2官能脂肪族アルコールとしては、具体的には、各種公知の、官能基が水酸基のみであり、水酸基価から求めた数平均分子量が300未満の2官能の脂肪族アルコールを用いることができる。
本発明における2官能脂肪族アルコールとして、より具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類等が挙げられる。
本発明における2官能脂肪族アルコールとしては、上述したジオール類の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明における2官能脂肪族アルコールとして、これらのジオール類等の内から2種以上のジオール類を併用する場合においても、前記2官能脂肪族アルコールの含有割合は、原料化合物として使用される脂肪族アルコールの総モル量を100モル%として、70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは98モル%以上とすることが好ましい。原料脂肪族アルコール中の前記2官能脂肪族アルコールの含有割合が70モル%未満では、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの機械物性が低下することもある。
上記の2官能脂肪族アルコールの中でも、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーにおいて、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離性が優れることにより機械特性と成形性が優れる点や、2官能脂肪族アルコールを工業的に安価に多量に入手が可能な点で、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の炭素数12以下の直鎖脂肪族ジオールが好ましく、中でも1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
このような観点から、上記のような炭素数12以下の直鎖脂肪族ジオールの含有割合を、原料化合物として使用される脂肪族アルコールの総モル量を100モル%として、90モル%以上用いることが好ましい。
鎖延長剤として側鎖を有するジオールを用いると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーのハードセグメントの凝集力が低下して、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの機械物性等の諸物性が低下することがある。このため、本発明では直鎖脂肪族ジオールを好ましく用いる。これらの直鎖脂肪族ジオール類の中では物性のバランスの点で1,4-ブタンジオールが最も好ましい。
鎖延長剤としての脂肪族アルコールは、水酸基を1個含有する脂肪族モノアルコール化合物を、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性が大きく変わらない範囲で併用することが可能である。水酸基を1個含有する脂肪族モノオール化合物を併用する場合、その含有割合は、原料化合物として使用される脂肪族アルコールの総モル量を100モル%として、5モル%以下が好ましく、より好ましくは3モル%以下であり、更に好ましくは1モル%以下である。脂肪族モノオール化合物の含有割合が5モル%を超えると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの分子量が低下し、耐薬品性等の耐久性が低下する。
鎖延長剤としての脂肪族アルコールは、水酸基を3個以上含有するグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール化合物を、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性が大きく変わらない範囲で併用することが可能である。水酸基を3個以上含有する脂肪族多価アルコール化合物を併用する場合、その含有割合は、原料化合物として使用される脂肪族アルコールの総モル量を100モル%として、3モル%以下が好ましく、より好ましくは1モル%以下であり、更に好ましくは0.5モル%以下である。水酸基を3個以上含有する脂肪族多価アルコールの含有割合が3モル%を超えると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーにおいて、架橋構造が導入されることにより、溶融特性が低下して成形特性が損なわれたり、あるいは、原料化合物を重合するときにゲル化反応が起き重合できなくなるおそれがある。
更に、鎖延長剤として、官能基が水酸基のみであり、水酸基価から求めた数平均分子量が300未満の脂肪族アルコールと共に、芳香族基を有する芳香族アルコール、あるいは水酸基以外の活性水素化合物、例えばアミノ基、カルボキシル基等を含む化合物を、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性が大きく変わらない範囲で併用することが可能である。これらを併用する場合、その含有割合は、原料化合物として使用される脂肪族アルコールと芳香族アルコール及び/又は水酸基以外の活性水素化合物との合計の総モル量を100モル%として、5モル%以下が好ましく、更に好ましくは3モル%以下であり、最も好ましくは1モル%以下である。これらの脂肪族アルコール以外の化合物の含有割合が5モル%を超えると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの耐候性、色相、耐加水分解性等の耐久性が低下する。
<水酸基価から求めた数平均分子量が1000以上、5000以下であるポリカーボネートジオール>
水酸基価から求めた数平均分子量が1000以上、5000以下であるポリカーボネートジオールは、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの前記構造単位(III)を形成するための原料化合物である。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの原料化合物として用いられる、水酸基価から求めた数平均分子量が1000以上、5000以下であるポリカーボネートジオールは、共重合型ポリカーボネートジオールであり、下記式(A)で表される分岐状の繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(A)」と称する。)と下記式(B)で表される直鎖状の繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(B)」と称する。)を有するものである(以下、本発明におけるポリカーボネートジオールを「共重合ポリカーボネートジオール」と称する。)。
Figure 2024024789000005
[上記式(A)は、側鎖脂肪族炭素水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはハロゲン原子、又はこれらの原子を含む置換基を有してもよい。]
Figure 2024024789000006
[上記式(B)は、直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。Rは、炭素数3又は4の直鎖脂肪族炭化水素を表す。]
熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの原料化合物として、前記繰り返し単位(A)及び前記繰り返し単位(B)を有する特定の共重合ポリカーボネートジオールを用い、この共重合ポリカーボネートジオールと、特定のイソシアネート化合物として上述した本発明における2官能芳香族イソシアネート化合物、及び、特定の脂肪族アルコール(鎖延長剤)として上述した本発明における2官能脂肪族アルコールの含有割合が特定の組成比である本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー及びその成形品は、各種用途において求められる高い機械特性及び成形性を有し、更には高い透明性による優れた意匠性を有する。
本発明における共重合ポリカーボネートジオールにおいて、前記繰り返し単位(B)を形成する原料ジオールとして、炭素数3又は4の直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物を用いることができる。
本発明における共重合ポリカーボネートジオールにおいて、前記繰り返し単位(B)を形成する直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物の炭素数は、好ましくは4である。前記繰り返し単位(B)は、1,3-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種に由来することが、工業的入手性、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを用いた成形品の物性が優れるなどの観点から好ましく、1,4-ブタンジオールに由来することがより好ましい。
前記繰り返し単位(A)は、側鎖脂肪族炭素水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表し、R、Rはそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはハロゲン原子、又はこれらの原子を含む置換基を有してもよい。
前記繰り返し単位(A)を形成する原料化合物として、具体的には、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチルプロパンオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジプロピル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等が例示される。
前記繰り返し単位(A)において、分岐鎖であるRとRが共に大きいほど、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの耐薬品性が低下したり、ガラス転移温度が高くなることに起因して柔軟性が低下したり、また結晶化速度が遅くなることに起因して生産性の一つの尺度である脱型性が低下する傾向がある。更にこれを用いた成形品の応力緩和性が大きくなり過ぎる傾向がある。これらの観点から、R及びRが共にメチル基であることが最も好ましい。従って、前記繰り返し単位(A)を形成する原料化合物として、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオールが最も好ましい。
本発明における共重合ポリカーボネートジオールにおいて、前記繰り返し単位(A)には2種以上の原料化合物に由来する繰り返し単位が含まれていてもよい。前記共重合ポリカーボネートジオールにおいて、前記繰り返し単位(B)には2種以上の原料化合物に由来する繰り返し単位が含まれていてもよい。
本発明における共重合ポリカーボネートジオールには、本発明の効果を損なわない範囲において、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)以外の繰り返し単位が、該共重合ポリカーボネートジオール中の全繰り返し単位の総モル量を100モル%として、20モル%以下含まれていてもよい。
共重合ポリカーボネートジオールに含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の割合はモル比で3:97~35:65、即ち、(A):(B)=3:97~35:65の範囲内である(以下、このモル比を「繰り返し単位(A):(B)」と記載する。)である。繰り返し単位(A):(B)が上記範囲を外れて繰り返し単位(A)が少なく、繰り返し単位(B)が多いと、ポリカーボネートジオールは結晶性を伴うようになり、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーが白濁し透明性が低下する傾向がある。一方、繰り返し単位(A):(B)が上記範囲を外れて繰り返し単位(A)が多く、繰り返し単位(B)が少ないと、溶融状態からの固化速度が低下して生産性が低下したり、ポリカーボネートジオールが低反応性となるため、例えばワンショット法で得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーでは白濁し透明性が低下する傾向がある。
共重合ポリカーボネートジオールの繰り返し単位(A):(B)の好ましい範囲は、後述の本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性の項に記載する通りである。
共重合ポリカーボネートジオールの繰り返し単位(A):(B)の具体的な測定方法は、後述の実施例の項において詳細に説明する。
共重合ポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量は1000以上5000以下であることで、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの機械特性が良好となる。数平均分子量が1000未満では得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーのガラス転移温度が高くなり、得られる成形品の柔軟性が失われる。数平均分子量が5000を超えると、共重合ポリカーボネートジオールの粘度が高くなり、作業性や歩留まりが低下する。共重合ポリカーボネートジオールの数平均分子量は1300以上4000以下が好ましく、1500以上3000以下がより好ましい。
共重合ポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量(Mn)の具体的な測定方法は、後述の実施例の項において詳細に説明する。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの原料化合物としての共重合ポリカーボネートジオールは、1種のみを用いてもよく、繰り返し単位やそのモル比、物性等の異なるものを2種以上用いてもよい。
<共重合ポリカーボネートジオールの製造方法>
本発明における共重合ポリカーボネートジオールは、繰り返し単位(B)を導入するための炭素数3又4の直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物、具体的には、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、好ましくは1,4-ブタンジオールと、繰り返し単位(A)を導入するためのネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチルプロパンオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジプロピル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、好ましくはネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール等の側鎖脂肪族炭素水素系ジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上とを、前述の好適な繰り返し単位(A):(B)の範囲内となるように原料ジヒドロキシ化合物として用い、これらのジヒドロキシ化合物と炭酸エステルであるカーボネート化合物とを、触媒の存在下に常法に従って重合反応させることにより製造することができる。
本発明における共重合ポリカーボネートジオールの製造に使用可能なカーボネート化合物としては、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されるものではなく、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、又はアルキレンカーボネートが挙げられる。これらは1種であっても複数種であってもよい。これらのカーボネート化合物の中でも、反応性の観点からジアリールカーボネートが好ましい。
カーボネート化合物として、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、ジフェニルカーボネートが好ましい。
共重合ポリカーボネートジオールを製造する場合には、重合を促進するために、必要に応じて公知のエステル交換触媒を用いることができる。エステル交換触媒としては、一般にエステル交換能があるとされている化合物であれば制限なく用いることができる。
エステル交換触媒として、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の長周期型周期表(以下、単に「周期表」と記載する。)第1族金属(水素を除く)の化合物;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表第2族金属の化合物;チタン、ジルコニウム等の周期表第4族金属の化合物;ハフニウム等の周期表第5族金属の化合物;コバルト等の周期表第9族金属の化合物;亜鉛等の周期表第12族金属の化合物;アルミニウム等の周期表第13族金属の化合物;ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表第14族金属の化合物;アンチモン、ビスマス等の周期表第15族金属の化合物;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等ランタナイド系金属の化合物等が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、エステル交換反応速度を高める観点から、周期表第1族金属(水素を除く)の化合物、周期表第2族金属の化合物、周期表第4族金属の化合物、周期表第5族金属の化合物、周期表第9族金属の化合物、周期表第12族金属の化合物、周期表第13族金属の化合物、周期表第14族金属の化合物が好ましく、周期表第1族金属(水素を除く)の化合物、周期表第2族金属の化合物がより好ましく、周期表第2族金属の化合物が更に好ましい。周期表第1族金属(水素を除く)の化合物の中でも、リチウム、カリウム、ナトリウムの化合物が好ましく、リチウム、ナトリウムの化合物がより好ましく、ナトリウムの化合物が更に好ましい。周期表第2族金属の化合物の中でも、マグネシウム、カルシウム、バリウムの化合物が好ましく、カルシウム、マグネシウムの化合物がより好ましく、マグネシウムの化合物が更に好ましい。
これらの金属化合物は主に、水酸化物や塩等として使用される。塩として使用される場合の塩の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩;酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等のカルボン酸塩;炭酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸塩;リン酸塩やリン酸水素塩、リン酸二水素塩等のリン含有の塩;アセチルアセトナート塩;等が挙げられる。触媒金属は、更にメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドとして用いることもできる。
上述したエステル交換触媒の中でも、好ましくは、周期表第2族金属から選ばれた少なくとも1種の金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシドが用いられ、より好ましくは周期表第2族金属の酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、更に好ましくはマグネシウム、カルシウムの酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、特に好ましくはマグネシウム、カルシウムの酢酸塩が用いられ、最も好ましくは酢酸マグネシウムが用いられる。
本発明における共重合ポリカーボネートジオールの製造において、カーボネート化合物の使用量は、特に限定されるものではなく、通常、原料ジヒドロキシ化合物の合計量1モルに対するモル比率の下限は、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.60以上である。一方、前記モル比率の上限は、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.98以下、更に好ましくは0.97以下である。カーボネート化合物の使用量が上記上限を超えると、得られる共重合ポリカーボネートジオールの末端基が水酸基でないものの割合が増加したり、分子量が所定の範囲とならない場合がある。一方、カーボネート化合物の使用量が前記下限未満では、共重合ポリカーボネートジオールが所定の分子量となるまで重合が進行しない場合がある。
共重合ポリカーボネートジオールを製造するにあたって、前述のエステル交換触媒を用いる場合、その使用量は、特に制限されるものではなく、得られるポリカーボネートジオール中に残存しても性能に影響の生じない量であることが好ましい。
エステル交換触媒の使用量の上限は、原料ジヒドロキシ化合物の質量に対する金属の質量比として、500質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましく、50質量ppm以下が更に好ましく、10質量ppm以下が特に好ましい。一方、エステル交換触媒の使用量の下限は、十分な重合活性が得られる量として、0.01質量ppm以上が好ましく、0.1質量ppm以上がより好ましく、1質量ppm以上が更に好ましい。
エステル交換反応の際の反応温度は、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用することができる。通常反応温度の下限は70℃が好ましく、100℃がより好ましく、130℃が更に好ましい。反応温度の上限は、通常250℃が好ましく、230℃がより好ましく、200℃が更に好ましい。反応温度を上記上限以下とすることにより、得られる共重合ポリカーボネートジオールが着色したり、エーテル構造が生成するなどの品質上の問題が生じるのを防ぐことができる。
本発明における共重合ポリカーボネートジオールの製造において、エステル交換反応の全工程を通して、反応温度の上限は、180℃以下とすることが好ましく、170℃以下とすることがより好ましく、160℃以下とすることが更に好ましい。エステル交換反応の全工程を通じて反応温度の上限を180℃以下とすることにより、得られた共重合ポリカーボネートジオール又はこの共重合ポリカーボネートジオールを用いた熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーが着色し易くなるのを防ぐことができる。
エステル交換反応は常圧で行なうこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であるため、生成する軽沸成分を系外に留去することでエステル交換反応を生成系に偏らせることができる。従って、通常、反応後半には、減圧条件を採用して軽沸成分を留去しながら反応することが好ましい。或いは、エステル交換反応の途中から徐々に反応系内の圧力を下げて、生成する軽沸成分を留去しながら反応させることも可能である。特にエステル交換反応の終期において、反応系内の減圧度を高めて反応させることにより、副生したモノアルコール、フェノール類及び環状カーボネートなどを留去できるので好ましい。この際の反応終了時の反応圧力の上限は、10kPa以下が好ましく、5kPa以下がより好ましく、1kPa以下が更に好ましい。軽沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ、窒素、アルゴン及びヘリウムなどの不活性ガスを流通しながら該反応を行うこともできる。
エステル交換反応の際に、低沸のカーボネート化合物やジヒドロキシ化合物を使用する場合は、反応初期はカーボネート化合物やジヒドロキシ化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させることで、反応初期の未反応のカーボネート化合物の留去を防ぐことができる。
更に、これら原料の留去を防ぐ目的で、反応器に還流管をつけて、カーボネート化合物とジヒドロキシ化合物を還流させながら反応を行うことも可能である。この場合、仕込んだ原料が失われず試剤の量比を正確に合わせることができる。
重合反応は、バッチ式又は連続式で行うことができるが、製品の安定性等から連続式で行うことが好ましい。重合反応に使用する装置は、槽型、管型及び塔型のいずれの形式であってもよく、各種の攪拌翼を具備した公知の重合槽等を使用することができる。装置昇温中の雰囲気は特に制限はないが、製品の品質の観点から、窒素ガス等の不活性ガス中、常圧または減圧下で行うのが好ましい。
重合反応は、生成する共重合ポリカーボネートジオールの分子量を測定しながら、目的の分子量となったところで終了する。重合に必要な反応時間は、使用するジヒドロキシ化合物、カーボネート化合物、及び触媒の使用の有無及び種類により大きく異なるので、一概に規定することは出来ないが、通常50時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましく、10時間以下が更に好ましい。
重合反応の際に触媒を用いた場合、通常得られた共重合ポリカーボネートジオールには触媒が残存し、残存する触媒により、ポリウレタン化反応の制御が出来なくなる場合がある。この残存する触媒の影響を抑制するために、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルのリン系化合物等の触媒失活剤を添加し、エステル交換触媒を不活性化することが好ましい。更には触媒失活剤添加後、後述のように加熱処理等により、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
エステル交換触媒の不活性化に使用されるリン系化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸などの無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記リン系化合物の使用量は、特に限定はされるものではなく、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルであればよい。リン系化合物の使用量の上限は、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して、好ましくは5モル以下、より好ましくは2モル以下である。一方、リン系化合物の使用量の下限は好ましくは0.8モル以上、より好ましくは1.0モル以上である。これより少ない量のリン系化合物を使用した場合は、反応生成物中のエステル交換触媒の不活性化が十分でなく、得られる共重合ポリカーボネートジオールを熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造用原料として使用する時、該共重合ポリカーボネートジオールのイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができない場合がある。また、この範囲を超えるリン系化合物を使用すると、得られる共重合ポリカーボネートジオールが着色してしまう可能性がある。
リン系化合物を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行うことができるが、加熱処理するとより効率的である。この加熱処理の温度の上限は、特に限定はされるものではなく、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下、特に好ましくは100℃以下である。一方、前記加熱処理の温度の下限は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上である。これより低い温度の場合は、エステル交換触媒の不活性化に時間がかかり効率的でなく、不活性化の程度も不十分な場合がある。180℃を超える温度では、得られる共重合ポリカーボネートジオールが着色することがある。
リン系化合物と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常1~5時間である。
共重合ポリカーボネートジオールに残存する触媒量は、ポリウレタン化反応の制御の観点から金属換算量で100質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下がより好ましい。共重合ポリカーボネートジオールに残存する触媒量は、必要な触媒量として金属換算量で0.01質量ppm以上、特に0.1質量ppm以上、とりわけ5質量ppm以上が好ましい。
反応生成物は、該生成物中のポリマー末端に水酸基を有さない不純物、フェノール類、原料ジヒドロキシ化合物、カーボネート化合物、副生する軽沸の環状カーボネート及び添加した触媒などを除去する目的で精製してもよい。
精製は、軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用できる。蒸留の具体的な方法としては、減圧蒸留、水蒸気蒸留及び薄膜蒸留など特にその形態に制限はなく、任意の方法を採用することが可能であるが、中でも薄膜蒸留が効果的である。
薄膜蒸留条件としては特に制限はないが、薄膜蒸留時の温度の上限は、250℃以下が好ましく、200℃以下が好ましい。一方、薄膜蒸留時の温度の下限は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。薄膜蒸留時の温度の下限を上記の値とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分となる。薄膜蒸留時の温度の上限を250℃以下とすることにより、薄膜蒸留後に得られる共重合ポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
薄膜蒸留時の圧力の上限は、500Pa以下が好ましく、150Pa以下がより好ましく、70Pa以下が更に好ましく、60Pa以下が特に好ましい。薄膜蒸留時の圧力を上記上限以下とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分に得られる。
薄膜蒸留直前の共重合ポリカーボネートジオールの保温の温度の上限は、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。この保温の温度を上記上限以下とすることにより、薄膜蒸留後に得られる共重合ポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。一方、前記温度の下限は、80℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。薄膜蒸留直前の共重合ポリカーボネートジオールの保温の温度を上記下限以上とすることにより、薄膜蒸留直前の共重合ポリカーボネートジオールの流動性の低下を防ぐことができる。
生成した共重合ポリカーボネートジオールから、水溶性の不純物を除くために、共重合ポリカーボネートジオールを水、アルカリ性水、酸性水及びキレート剤溶解溶液などで洗浄してもよい。その場合、水に溶解させる化合物は任意に選択できる。
原料として例えばジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートを使用した場合、共重合ポリカーボネートジオールの製造中にフェノール類が副生する。フェノール類は一官能性化合物なので、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを製造する際の阻害因子となる可能性がある上、フェノール類によって形成されたウレタン結合は、その結合力が弱いために、その後の工程等で熱によって解離してしまい、イソシアネートやフェノール類が再生されて不具合を起こす可能性がある。また、フェノール類は刺激性物質でもあるため、共重合ポリカーボネートジオール中のフェノール類の残存量は、より少ない方が好ましい。共重合ポリカーボネートジオール中のフェノール類の残存量は、具体的には共重合ポリカーボネートジオールに対する質量比として、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。共重合ポリカーボネートジオール中のフェノール類を低減するためには、前述するように共重合ポリカーボネートジオールの重合反応の圧力を絶対圧力として1kPa以下の高真空としたり、共重合ポリカーボネートジオールの重合反応後に薄膜蒸留等を行うことが有効である。
共重合ポリカーボネートジオール中には、製造時の原料として使用したカーボネート化合物が残存することがある。共重合ポリカーボネートジオール中のカーボネート化合物の残存量は、特に限定されるものではないが、少ないほど好ましく、カーボネート化合物の残存量の上限は、共重合ポリカーボネートジオールに対する質量比として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。共重合ポリカーボネートジオールのカーボネート化合物含有量が多すぎると、ポリウレタン化の際の反応を阻害する場合がある。一方、カーボネート化合物の残存量の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは、カーボネート化合物を含まないこと(0質量%)である。
共重合ポリカーボネートジオールには、製造時に使用したジヒドロキシ化合物が残存する場合がある。共重合ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量は、特に限定されるものではないが、少ないほど好ましく、ジヒドロキシ化合物の残存量の上限は、共重合ポリカーボネートジオールに対する質量比として、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。共重合ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量が多すぎると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーにおいて、ソフトセグメント部位の分子長が短すぎるため、所望の物性が得られない場合がある。
共重合ポリカーボネートジオール中には、製造の際に副生した環状のカーボネート(環状オリゴマー)を含有する場合がある。例えば繰り返し単位(A)の原料ジヒドロキシ化合物として2,2-ジアルキル-1,3-プロパンジオールを用いた場合、5,5-ジアルキル-1,3-ジオキサン-2-オン、若しくは、更にこれらの化合物が2分子ないしそれ以上から形成された環状カーボネートなどが生成して、共重合ポリカーボネートジオール中に含まれる場合がある。より具体的には、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールを用いた場合、5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、若しくは、更にこれらの化合物が2分子ないしそれ以上から形成された環状カーボネートが生成して共重合ポリカーボネートジオール中に含まれる場合がある。これらの環状カーボネートは、ポリウレタン化反応においては副反応をもたらす可能性があり、また濁りの原因となるため、共重合ポリカーボネートジオールの重合反応の圧力を絶対圧力として1kPa以下の高真空にしたり、共重合ポリカーボネートジオールの合成後に薄膜蒸留等を行ったりしてできる限り除去しておくことが好ましい。共重合ポリカーボネートジオール中に含まれる5,5-ジアルキル-1,3-ジオキサン-3-オン等の環状カーボネートの含有量の上限は、限定されないが、共重合ポリカーボネートジオールに対する質量比として、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは、環状カーボネートを含まないこと(0質量%)である。
<共重合ポリカーボネートジオール以外のポリオール>
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを製造するためのポリウレタン形成反応においては、必要に応じて、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性に影響の無い範囲で、上記の共重合ポリカーボネートジオール以外のポリオールを併用してもよい。
共重合ポリカーボネートジオール以外のポリオールとしては、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、公知のポリオール、例えばポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレンエーテルグリコール、共重合ポリカーボネートジオール以外のポリカーボネートポリオールが挙げられる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等の脂肪族二塩基酸や無水フタル酸等の芳香族二塩基酸と脂肪族グリコールを脱水縮合して得られるものが例示される。
前記ポリアルキレンポリオールエーテルグリコールとしては、例えば、酸化エチレンや酸化プロピレンを付加重合して得られるポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、並びにテトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)が例示される。その他にも、ポリオレフィン系ポリオール等、全ての公知のポリオールが併用可能である。
上述した共重合ポリカーボネートジオール以外のポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルポリオール及びポリカプロラクトンポリオールは、過剰に使用すると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの耐加水分解性等の耐久性を低下させるおそれがある。また、ポリアルキレンエーテルグリコールは、過剰に使用すると、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの耐候性や耐薬品性の耐久性を低下させるおそれがある。このため、これらのポリオールを用いる場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性に影響のない範囲で併用する。
このような観点から、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造に用いる共重合ポリカーボネートジオールと共重合ポリカーボネートジオール以外のポリオールとの合計100モル%に対する共重合ポリカーボネートジオールの含有割合は、通常80モル%以上であり、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、最も好ましくは98~100モル%である。共重合ポリカーボネートジオールの含有割合が少ないと、本発明の特長である、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー成形品の機械特性や優れた透明性を損なう可能性がある。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造方法]
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前述の2官能芳香族イソシアネート化合物と、鎖延長剤としての数平均分子量が300未満の2官能脂肪族アルコールと、水酸基価から求めた数平均分子量が1000以上5000以下である共重合ポリカーボネートジオールとを、所定の割合で用いること以外は、一般的に実験的ないし工業的に用いられる通常のポリウレタン化反応により製造することができる。
<一段法(ワンショット法)>
共重合ポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物及び鎖延長剤を100℃から220℃の範囲で一度に反応させることにより、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを効率よく製造することができる。一段法による工業的な製造方法として、特開2004-182980号公報他に記載されている公知の方法が適用できる。
<二段法(プレポリマー法)>
共重合ポリカーボネートジオールと過剰のイソシアネート化合物とを予め反応させることで末端にイソシアネート基を有するプレポリマーとイソシアネート化合物の混合体を製造し、その後鎖延長剤を反応させる二段法も、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーに適用することができる。
<触媒>
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを製造する際に、ウレタン化反応のために触媒を使用してもよい。ウレタン化反応触媒としては、例えば、有機スズ系化合物、有機亜鉛系化合物、有機ビスマス系化合物、有機チタン系化合物、有機ジルコニウム系化合物、アミン系化合物等を挙げることができる。ウレタン化反応触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタン化反応触媒を使用する場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの質量に対して、0.1~100質量ppmとなるように調整することが推奨される。0.1質量ppm以上のウレタン化反応触媒を使用すれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを成形した後も、当初の分子量が充分に高い水準で維持され、成形物でも、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー本来の物性が効果的に発揮されやすくなる。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの物性]
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前述の2官能芳香族イソシアネート化合物、水酸基価から求めた数平均分子量が300未満の2官能脂肪族アルコール、及び水酸基価から求めた数平均分子量が1000以上5000以下である共重合ポリカーボネートジオールを反応して得られ、下記(1)~(3)を満たす。
(1)前記構造単位(III)において、下記式(A)で表される繰り返し単位(A)及び下記式(B)で表される繰り返し単位(B)を、繰り返し単位(A):(B)=3:97~35:65のモル比の範囲内で含む。
Figure 2024024789000007
[上記式(A)は、側鎖脂肪族炭素水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはハロゲン原子、又はこれらの原子を含む置換基を有してもよい。]
Figure 2024024789000008
[上記式(B)は、直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。Rは、炭素数3又は4の直鎖脂肪族炭化水素を表す。]
(2)熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー中の前記構造単位(III)の含有割合が、前記構造単位(I)、前記構造単位(II)及び前記構造単位(III)の総モル量100モル%に対して、5モル%以上45モル%以下。
(3)前記2官能脂肪族アルコールの水酸基当量と前記ポリカーボネートジオールの水酸基当量の総和に対する、前記2官能芳香族イソシアネート化合物のイソシアネート基当量の当量比率(以下、「NCO/OH当量比率」と記載する。)が0.98以上1.20以下となる条件で、前記2官能脂肪族アルコール、前記ポリカーボネートジオール及び前記2官能芳香族イソシアネート化合物を反応させて得られる。
<繰り返し単位(A):(B)>
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前記繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)を、繰り返し単位(A):繰り返し単位(B)=3:97~35:65のモル比の範囲内で含む。
繰り返し単位(A):(B)が3:97未満の場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、機械特性が不十分である。一方、繰り返し単位(A):(B)が35:65を超える熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、成形性と透明性が不十分になる。繰り返し単位(A):(B)の下限は4:96以上が好ましく、8:92以上がより好ましく、12:88以上が更に好ましい。また、繰り返し単位(A):(B)の上限は32:68以下が好ましく、29:71以下がより好ましく、27:73以下が更に好ましい。
<構造単位(III)の含有割合>
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー中の前記構造単位(III)の含有割合は、前記構造単位(I)、前記構造単位(II)及び前記構造単位(III)の総モル量100モル%に対して、5モル%以上45モル%以下の範囲内である。
前記構造単位(III)の含有割合が5モル%未満の場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、機械物性が不十分となる。一方、前記構造単位(III)の含有割合が45ol%を超える熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、成形性や透明性が不十分になることがある。前記構造単位(III)の含有割合の下限は8モル%以上が好ましく、11モル%以上がより好ましい。また、前記構造単位(III)の含有割合の上限は35モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましい。
<NCO/OH当量比率>
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、前記2官能脂肪族アルコールの水酸基当量と前記共重合ポリカーボネートジオールの水酸基当量の総和に対する、前記2官能芳香族イソシアネート化合物のイソシアネート基当量の当量比率が0.98以上1.20以下の範囲内となる条件で、前記2官能脂肪族アルコール、前記ポリカーボネートジオール及び前記2官能芳香族イソシアネート化合物を反応させて得られる。
前記共重合ポリカーボネートジオールの水酸基当量は、本発明における共重合ポリカーボネートジオール中の水酸基1個あたりの化学式量である。
前記2官能脂肪族アルコールの水酸基当量は、本発明における2官能脂肪族アルコール中の水酸基1個あたりの化学式量である。
また、イソシアネート当量は、本発明における2官能芳香族イソシアネート化合物中のイソシアネート基1個あたりの化学式量である。
NCO/OH当量比率が0.98未満の場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、引張強さや耐熱性等の諸物性が不十分である。一方、NCO/OH当量比率が1.20を超える熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、アロファネート結合等による副反応により化学架橋を形成したり、未反応のイソシアネート基が空気中の水分と反応してアミノ基になる割合が多くなるため、溶融特性が低下し成形性が悪化、ゲルに起因するフィッシュアイや黄変化、また機械強度の伸度等も不十分になることがある。NCO/OH当量比率の下限は0.99以上が好ましく、1.00以上がより好ましい。また、NCO/OH当量比率の上限は1.10以下が好ましく、1.05以下がより好ましい。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーのNCO/OH当量比率は、重合時の各成分の質量比の他に、通常400MHz以上のNMR(核磁気共鳴)装置を用いて測定できる。
<分子量>
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの分子量は、製造される本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの用途に応じて適宜調整され、特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として5万~50万が好ましく、10万~30万がより好ましい。重量平均分子量(Mw)が上記下限よりも小さいと十分な強度や硬度、耐久性が得られない場合があり、上記上限よりも大きいと成形性、加工性などハンドリング性を損なう傾向がある。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの分子量分布(Mw/Mn)は1.5~3.5が好ましく、更に好ましくは1.7~3.0であり、最も好ましいのは1.8~2.5である。分子量分布が3.5を超えると成形性が不十分となる。分子量分布を1.5未満にするには特別な精製処理をする必要があり経済性に問題がある。分子量分布もGPCで測定することができる。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物]
熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーには、その製造時又は製造後に、必要に応じて、酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、反応調節剤、可塑剤、離型剤、補強剤、充填剤(無機充填剤・有機充填剤)、安定剤、着色剤(顔料・染料)、難燃性向上剤、光安定剤等の添加剤を任意成分を添加することで、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物として使用することができる。
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、他の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー、塩化ビニル系、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリジオレフィン系、ポリエステル系、アミド系、シリコン系等の他の熱可塑性エラストマーをコンパウンドした、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物として使用することもできる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを含むことで、機械特性と成形性に優れ、更には高い透明性による優れた意匠性を有することから、これらの特性が要求される各種用途に使用することができる。
熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物中の本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの含有割合は、前記組成物の総質量100%に対して、80質量%以上であること好ましい。本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの含有割合が80質量%以上であれば、得られる成形品の機械特性と成形性、透明性が良好となる。熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物中の本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの含有割合は90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物は、例えば、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー及び上述した前記添加剤や他の熱可塑性エラストマーを所定の配合割合で混合し、公知の溶融混練手段を用いて、該混合物を溶融混練した後、得られた溶融混練物をペレタイザー等の公知の切断・粉砕装置を用いて、例えばペレットの形態で取得することができる。公知の溶融混練手段としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いることができる。或いは又、前記混合物を直接成形品の製造原料として用いることもできる。
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー又は上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物を含む、成形品である。
或いは又、本発明の成形品は、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー又は上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物を成形してなる、前記特徴を有する成形品である。
本発明の成形品の形態としては、特に限定されないが、例えば、ペレット、フィルム、シート、又は本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー又は上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物からなる層を有する積層フィルム等のような、公知の樹脂成形体を挙げることができる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー又は上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物の成形方法は特に限定されるものではなく、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている各種の成形方法を使用することができる。例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、インフレーション成形法、流延成形、ロール加工などの公知の成形法を採用することができ、樹脂板、フィルム、シート、チューブ、ホース、ベルト、ロール、合成皮革、靴底、自動車部品、エスカレーターハンドレール、道路標識部材、繊維等の種々の形状の成形品を製造できる。
[用途]
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー及びその成形品の用途としては、具体的には、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器、産業用ロボット等におけるチューブやホース類、スパイラルチューブ、消防ホース等が挙げられる。また、丸ベルト、Vべルト、平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器、印刷機械等に用いられる。また、履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、電子デバイスの保護カバー、時計バンドやウエラブルデバイスの部材等に使用できる。更に自動車部品としては、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品、タイヤチェーン代替品等に使用できる。また、キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品、接着剤等に使用できる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー又は上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー組成物は、オレイン酸等に対する耐薬品性など各種耐久性に加え透明性に非常に優れており、射出成形時性も優れているため、特にスポーツ用品、レジャー用品、電子デバイスの保護カバー、時計バンドやウエラブルデバイスの部材等に好適である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
[共重合ポリカーボネートジオールの評価方法]
合成例1~8において製造した共重合ポリカーボネートジオールを、以下の方法に従い評価した。
<共重合ポリカーボネートジオールの水酸基価及び数平均分子量>
JIS K1557-1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にてポリカーボネートジオールの水酸基価を測定した。また、水酸基価から、下記式(1)により数平均分子量を求めた。
数平均分子量=2×56.1/(水酸基価×10-3) …(1)
<繰り返し単位(A):(B)>
共重合ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H-NMR(型番:AL-400、日本電子株式会社製)を測定し、各成分のシグナル位置より、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)のモル比(繰り返し単位(A):(B))を求めた。
<熱特性>
共重合ポリカーボネートジオールの熱特性の指標として、示差走査熱量(DSC)測定を用いて、以下の方法で、吸熱ピークの有無の観察及び吸熱ピークが観察された場合はその温度(融点)と融解エンタルピーΔHを評価した。
標準サンプルにアルミナを使用し、速度±10℃/分、窒素雰囲気下にて室温から180℃まで昇温した後、-100℃まで降温し、1分保持した。その後、再び180℃まで昇温した際の熱特性を評価した。0~100℃の間において、共重合ポリカーボネートジオールの融解に伴う吸熱ピークの有無、及び、融解エンタルピーΔH(単位:J/g)を測定し、以下の判定基準に従って判定した。
(判定基準)
〇:吸熱ピークが観察されなかった、又は、吸熱ピークが観測されたが融解エンタルピーが5.0J/g以下であった。
×:吸熱ピークが観測され、融解エンタルピーが5.0J/gを超えた。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの評価方法]
実施例及び比較例で製造した熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを、以下の方法に従い評価した。
<射出成形性>
熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの成形性の指標として、J110AD-110H(日本製鋼所製)を用いて、射出成形を実施して、サイクルタイムを評価した。尚、ノズル温度は235℃、射出圧は90MPa、スクリュー回転数は80rpmとした。また、射出成形に使用した金型のサイズは、縦120mm×横120mm×厚さ2mmであり、金型温度は40℃とした。材質毎に冷却時間を調整することで、形状、外観が最適な成形体を得た。またこの際のサイクルタイムを測定し、以下の判定基準に従って判定した。
(判定基準)
〇:サイクルタイムが70秒以内
×:サイクルタイムが70秒より長かった
<引張強さ>
熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの機械特性を以下の方法で評価した。
厚さ2mmの熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーのシートを、打ち抜き機を用いてダンベル状3号形に打抜いた。引張試験機(AGS-10kNX、島津製作所製)及び伸び計(DSES-1000、島津製作所製)を使用し、ISO 037-02に準拠して、標線間距離20mm、引張速度200mm/min、n=3の条件で引張試験を行った。破断した際の応力の中央値をそれぞれ引張強さとした。
<透明性>
熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの透明性を以下の方法で評価した。
JIS K7361-1に基づき、2mm厚の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーのシートにおける全光線透過率を測定し、以下の判定基準に従って判定した。
(判定基準)
〇:全光線透過率が85%以上
×:全光線透過率が85%未満
〔ポリカーボネートジオールの合成と評価〕
[合成例1:PCD5の合成]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、繰り返し単位(A)の原料化合物として1,4-ブタンジオール(1,4BG) 1101.8g、繰り返し単位(B)の原料化合物としてネオペンチルグリコール(NPG) 279.5g、カーボネート化合物としてジフェニルカーボネート(DPC) 2918.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液 7.6mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:64mg)を入れ、窒素ガス置換した。フラスコの内容物を攪拌しながら、該内容物の温度が160℃となるまで加熱昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、2分間かけてセパラブルフラスコ内の圧力を24kPaまで下げた後、生成したフェノールを系外へ除去しながら90分間反応させた。次いで、セパラブルフラスコ内の圧力を9.3kPaまで90分間かけて下げ、更に0.4kPaまで30分間かけて下げて反応を続けた後に、該内容物の温度を170℃となるまで昇温して、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら60分間反応させて、1538.4gのポリカーボネートジオール含有組成物を得た。
得られたポリカーボネートジオール含有組成物1421.8gに0.85質量%リン酸水溶液:2.6gを加えて酢酸マグネシウムを失活させて、約14g/分の流量で薄膜蒸留装置に送液し、薄膜蒸留(温度:180℃、圧力:53~67Pa)を行った。薄膜蒸留装置としては、直径50mm、高さ200mm、面積0.0314mの内部コンデンサー、ジャケット付きの柴田科学株式会社製、分子蒸留装置MS-300特型を使用した。
薄膜蒸留で得られたポリカーボネートジオール中のフェノール類の含有量は100質量ppm以下であった。また、マグネシウムの含有量は100質量ppm以下であった。
得られたポリカーボネートジオールを「PCD5」と称する。このPCD5の評価結果を表1に示した。なお、フェノール類の含有量はガスクロマトグラフィーを用いて測定した。マグネシウムの含有量は、中和還元滴定法を用いて測定した。
[合成例2:PCD7の合成]
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、繰り返し単位(A)の原料化合物として1,4-ブタンジオール(1,4-BG) 679.4g、繰り返し単位(B)の原料化合物としてネオペンチルグリコール(NPG) 629.6g、カーボネート化合物としてジフェニルカーボネート(DPC) 2691.0g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液 6.9mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:58mg)を入れ、窒素ガス置換した。次いで、合成例11と同様の条件で反応をおこない、1368.2gの共重合ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。
得られた共重合ポリカーボネートジオール含有組成物1261.0gに0.85質量%リン酸水溶液:2.3gを加えて酢酸マグネシウムを失活させて、約16g/分の流量で薄膜蒸留装置に送液し、薄膜蒸留(温度:190℃、圧力:53~67Pa)を行った。薄膜蒸留装置としては、直径50mm、高さ200mm、面積0.0314mの内部コンデンサー、ジャケット付きの柴田科学株式会社製、分子蒸留装置MS-300特型を使用した。
薄膜蒸留で得られた共重合ポリカーボネートジオールのフェノール類の含有量は100質量ppm以下であった。また、マグネシウムの含有量は100質量ppm以下であった。
得られた共重合ポリカーボネートジオールを「PCD7」と称する。このPCD7の評価結果を表1に示した。
[合成例3:PCD1の合成]
1,4BG、NPG、DPCを所定のモル比となる様に仕込み、それ以外は合成例1の操作を基に共重合ポリカーボネートジオール含有組成物を製造し、薄膜蒸留により各種共重合ポリカーボネートジオールを得た。製造された共重合ポリカーボネートジオールを「PCD1」と称する。このPCD1の評価結果を表1に示した。
[合成例4:PCD2の合成]
1,4BG、NPG、DPCを所定のモル比となる様に仕込み、それ以外は合成例1の操作を基に共重合ポリカーボネートジオール含有組成物を製造し、薄膜蒸留により各種共重合ポリカーボネートジオールを得た。製造された共重合ポリカーボネートジオールを「PCD2」と称する。このPCD2の評価結果を表1に示した。
[合成例5:PCD3の合成]
1,4BG、NPG、DPCを所定のモル比となる様に仕込み、それ以外は合成例1の操作を基に共重合ポリカーボネートジオール含有組成物を製造し、薄膜蒸留により各種共重合ポリカーボネートジオールを得た。製造された共重合ポリカーボネートジオールを「PCD3」と称する。このPCD3の評価結果を表1に示した。
[合成例6:PCD4の合成]
1,4BG、NPG、DPCを所定のモル比となる様に仕込み、それ以外は合成例1の操作を基に共重合ポリカーボネートジオール含有組成物を製造し、薄膜蒸留により各種共重合ポリカーボネートジオールを得た。製造された共重合ポリカーボネートジオールを「PCD4」と称する。このPCD4の評価結果を表1に示した。
[合成例7:PCD6の合成]
1,4BG、NPG、DPCを所定のモル比となる様に仕込み、それ以外は合成例1の操作を基に共重合ポリカーボネートジオール含有組成物を製造し、薄膜蒸留により各種共重合ポリカーボネートジオールを得た。製造された共重合ポリカーボネートジオールを「PCD6」と称する。このPCD6の評価結果を表1に示した。
[合成例8:PCD8の合成]
1,4BG、NPG、DPCを所定のモル比となる様に仕込み、それ以外は合成例1の操作を基に共重合ポリカーボネートジオール含有組成物を製造し、薄膜蒸留により各種共重合ポリカーボネートジオールを得た。製造された共重合ポリカーボネートジオールを「PCD8」と称する。このPCD8の評価結果を表1に示した。
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの製造と評価〕
[実施例1]
熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを、以下の手順に従い、ワンショット法にて合成した。
1Lブリキ缶に、合成例4で製造したポリカーボネートジオール(PCD2)を投入し、スリーワンモーターを用いて攪拌しながら、該ポリカーボネートジオールの温度が100℃となるように加熱した。次いで、攪拌しながら、2官能脂肪族アルコールとして、1,4-BG(三菱ケミカル東ソー株式会社製)を所定量加え、均一に撹拌混合した。得られた混合液に、2官能芳香族イソシアネート化合物として、70℃で融解した4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:モノメリックMDI(ミリオネートMT)、東ソー株式会社製)を加えながら、均一に撹拌混合した。得られた混合液を、表面温度を100℃に制御したホットプレート上の金型に流し込み30分硬化させた。注型重合で得られた硬化物を更に100℃で15時間熱処理して重合を完了し、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの硬化物を得た。
尚、注型重合に供した原料の組成比は、[MDI]:[1,4-BG]:[PCD2]=3.50:2.33:1.00(モル比)に設定した。この組成比から計算される、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー中の構造単位(III)の含有割合は、14.7モル%にとなる。また、2官能脂肪族アルコールの水酸基当量とポリカーボネートジオールの水酸基当量の総和に対する、2官能芳香族イソシアネート化合物のイソシアネート基当量のNCO/OH当量比率は1.05に設定した([MDI]/([1,4-BG]+[PCD2])=1.05)。
得られた硬化物を粉砕機により粉砕しフレークを得た。次いで、得られたフレークを、80℃で12時間乾燥させた後、射出成形機へ投入し、縦120mm×横120mm×厚さ2mmの成形シートを得た。得られた成形シートを、100℃で24時間熱処理し、これを評価用の試験サンプルとした。この試験サンプルの評価結果を表1に示した。
[実施例2~5、比較例1~3]
共重合ポリカーボネートジオールの種類を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の手順により熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを製造し、評価用の試験サンプルを得た。試験サンプルの評価結果を表1に示した。
Figure 2024024789000009
実施例1~5において使用したPCD2~PCD6は、吸熱ピークが観察されなかった、又は、吸熱ピークが観測されたが融解エンタルピーが5.0J/g以下であったことから、非晶性又は低結晶性であった。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーは、射出成形性に優れると共に、得られた成形シートは機械特性と透明性に優れていた。
比較例1において使用したPCD1は、融解エンタルピーが大きく、高い結晶性を有していた。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーのシートは、機械特性が不十分であった。
比較例2及び3において使用したPCD7及びPCD8は、非晶性を有していた。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーのシートは透明性と成形性が不十分であり白濁した。これはPCD7及びPCD8は、ネオペンチルグリコールの共重合比率が高濃度のためポリオールとして反応性が低く、得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーの高次構造が異なる状態となったためと推察される。

Claims (10)

  1. 2官能の芳香族イソシアネート化合物に由来する構造単位(I)、数平均分子量が300未満の2官能の脂肪族アルコールに由来する構造単位(II)、及び水酸基価から求めた数平均分子量が1000以上5000以下であるポリカーボネートジオールに由来する構造単位(III)を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーであって、
    前記構造単位(III)が、下記式(A)で表される繰り返し単位(A)及び下記式(B)で表される繰り返し単位(B)を、(A):(B)=3:97~35:65のモル比の範囲内で含み、
    前記熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー中の前記構造単位(III)の含有割合が、前記構造単位(I)、前記構造単位(II)及び前記構造単位(III)の総モル量100モル%に対して、5モル%以上45モル%以下であり、
    前記2官能脂肪族アルコールの水酸基当量と前記ポリカーボネートジオールの水酸基当量の総和に対する、前記2官能芳香族イソシアネート化合物のイソシアネート基当量の当量比率が0.98以上1.20以下の範囲内となる条件で、前記2官能脂肪族アルコール、前記ポリカーボネートジオール及び前記2官能芳香族イソシアネート化合物を反応させて得られる、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
    Figure 2024024789000010
    [上記式(A)は、側鎖脂肪族炭素水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、若しくはハロゲン原子、又はこれらの原子を含む置換基を有してもよい。]
    Figure 2024024789000011
    [上記式(B)は、直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を表す。Rは、炭素数3又は4の直鎖脂肪族炭化水素基を表す。]
  2. 前記繰り返し単位(A)が、ネオペンチルグリコールと炭酸エステルとのエステル交換反応生成物に由来する構造単位を有する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
  3. 前記構造単位(III)において、前記繰り返し単位(A)及び前記繰り返し単位(B)のモル比が、(A):(B)=4:96~29:71の範囲内である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
  4. JIS K7361-1に準拠して測定した全光線透過率が85%以上である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
  5. ISO 037-02に準拠して測定した引張強さが55MPa以上である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
  6. 成形サイクル70秒以下で射出成形することが可能な、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
  7. 前記直鎖脂肪族炭化水素系ジヒドロキシ化合物が1,4-ブタンジオールである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
  8. 前記2官能の芳香族イソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、及び3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
  9. 前記2官能脂肪族アルコールが、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマーを含む、成形品。
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