JP2024017984A - 粉末冶金用鉄基混合粉、鉄基焼結体、および焼結機械部品 - Google Patents

粉末冶金用鉄基混合粉、鉄基焼結体、および焼結機械部品 Download PDF

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尚史 ▲高▼取
Hisafumi Takatori
良輔 松岡
Ryosuke Matsuoka
葉菜子 島本
Hanako SHIMAMOTO
康佑 芦塚
Kosuke Ashizuka
繁 宇波
Shigeru Unami
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Abstract

【課題】優れた圧縮性と抜出性を兼ね備えた粉末冶金用鉄基混合粉を提供する。【解決手段】鉄基粉末、合金用粉末、潤滑剤、および微粒子物質を含有する粉末冶金用鉄基混合粉であって、前記微粒子物質の比表面積が6m2/g以上であり、前記微粒子物質の含有量が、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対して0.01~1.0質量部である、粉末冶金用鉄基混合粉。【選択図】なし

Description

本発明は、粉末冶金用鉄基混合粉に関し、特に、優れた圧縮性と抜出性を兼ね備える粉末冶金用鉄基混合粉に関する。また、本発明は、前記粉末冶金用鉄基混合粉を原料とする鉄基焼結体および前記鉄基焼結体を用いた焼結機械部品に関する。
粉末冶金では、主原料となる鉄基粉末に、合金用粉末や潤滑剤などの成分を必要に応じて混合した混合粉(以下、「粉末冶金用混合粉」または単に「混合粉」という)が用いられる。前記合金用粉末としては、例えば、銅粉、黒鉛粉、リン化鉄粉などが用いられている。また、前記潤滑剤としては、例えば、脂肪酸や金属石鹸などが広く用いられている。
このような粉末冶金用混合粉には、流動性、圧縮性、抜出性など、様々な特性に優れることが求められる。そして、一般的には、潤滑剤がこれらの特性の改善を担っている。
例えば、潤滑剤は、混合粉に含まれる粒子間の摩擦を低減する作用を有している。前記効果により、成形時に粒子の再配列が促進され、その結果、混合粉を高い密度まで圧縮することが可能となる。
また、潤滑剤は、金型内で圧縮成形された混合粉(圧粉体)を金型から取り出す(抜出す)際にも潤滑作用を発揮する。一般的に、圧粉体の金型からの抜出しは、パンチによって押し出すことによって行われるが、その際、圧粉体と金型表面との摩擦により大きな摩擦抵抗が生じる。しかし、潤滑剤を添加することにより圧粉体と金型表面との摩擦が低減され、小さい抜出力で圧粉体を抜出すことができる。
このように、粉末冶金用混合粉の分野においては、潤滑剤を用いることによって混合粉の性能向上が図られてきた。しかし、粉末冶金用混合粉にはさらなる性能向上が求められており、そのために様々な新しい技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、潤滑剤を内包した金属炭酸塩多孔質粒子を添加することにより、混合粉の流動性や抜出し性を改善する技術が提案されている。
特開2010-059517号公報
特許文献1に記載されているような従来の技術によれば、混合粉の圧縮性と抜出性に一定の改善が見られるが、さらなる性能の向上が求められている。
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、さらに優れた圧縮性と抜出性を兼ね備えた粉末冶金用鉄基混合粉を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
1.鉄基粉末、合金用粉末、潤滑剤、および微粒子物質を含有する粉末冶金用鉄基混合粉であって、
前記微粒子物質の比表面積が6m/g以上であり、
前記微粒子物質の含有量が、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対して0.01~1.0質量部である、粉末冶金用鉄基混合粉。
2.前記微粒子物質の少なくとも一部が、前記鉄基粉末の表面に直接付着している、上記1に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
3.前記鉄基粉末が、還元鉄基粉末およびアトマイズ鉄基粉末の少なくとも一方である、上記1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
4.前記微粒子物質が、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルク、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデン、黒鉛、およびカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1つである、上記1~3のいずれか1つに記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
5.前記微粒子物質の含有量が、前記粉末冶金用鉄基混合粉100質量部に対して0.01質量部以上0.05質量部未満である、上記1~4のいずれか1つに記載に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
6.上記1~5のいずれか1つに記載の粉末冶金用鉄基混合粉を原料とする鉄基焼結体。
7.上記6に記載の鉄基焼結体を用いた焼結機械部品。
本発明によれば、さらに優れた圧縮性と抜出性を兼ね備えた粉末冶金用鉄基混合粉を提供することができる。
以下、本発明を実施する方法について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施形態の例を示すものであって、本発明はこれに限定されない。
[粉末冶金用鉄基混合粉]
本発明の粉末冶金用鉄基混合粉は、鉄基粉末、合金用粉末、潤滑剤、および微粒子物質を必須成分として含有する。ここで、粉末冶金用鉄基混合粉とは、全体に対するFeの割合が50質量%以上である粉末冶金用混合粉を指すものとする。
[鉄基粉末]
前記鉄基粉末としては、特に限定されることなく任意の鉄基粉末を用いることができる。前記鉄基粉末の例としては、鉄粉や合金鋼粉が挙げられる。前記合金鋼粉としては、例えば、合金元素を溶製時に予め合金化した予合金鋼粉(完全合金化鋼粉)、鉄粉に合金元素を部分拡散させて合金化した部分拡散合金化鋼粉、予合金化鋼粉にさらに合金元素を部分拡散させたハイブリッド鋼粉からなる群より選択される1または2以上を用いることができる。前記合金元素としては、例えば、C、Cu、Ni、Mo、Mn、Cr、V、およびSiからなる群より選択される1または2以上を用いることができる。なお、ここで「鉄基粉末」とは、Feを50質量%以上含む金属粉末を指す。また、「鉄粉」とは、Feおよび不可避不純物からなる粉末を指し、本技術分野においては一般的に「純鉄粉」と称される。
前記鉄基粉末は、任意の方法で製造することができる。例えば、前記鉄基粉末は、還元鉄基粉末、アトマイズ鉄基粉末、またはそれらの混合物であってよい。還元鉄基粉末は、酸化鉄を還元して製造される鉄基粉末である。アトマイズ鉄基粉末は、アトマイズ法によって製造される鉄基粉末である。また、還元鉄基粉末またはアトマイズ鉄基粉末の表面に合金元素を拡散付着させた粉末を、前記鉄基粉末として用いることもできる。
粉末冶金用混合粉の全質量に対する鉄基粉末の質量の割合は、特に限定されないが、86質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。
前記鉄基粉末の平均粒径は、とくに限定されず、任意の粒径であってよい。しかし、鉄基粉末の粒径が過度に小さいと発塵しやすくなるため、取り扱いが困難となる。そこで、取り扱いやすさの観点からは、前記鉄基粉末の平均粒径は1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。一方、鉄基粉末の粒径が過度に大きいと、焼結体の強度に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、焼結体の強度向上の観点からは、前記鉄基粉末の平均粒径は200μm以下であることが好ましい。ここで、前記鉄基粉末の平均粒径は、重量基準の粒度分布におけるメジアン径D50とする。前記粒度分布はふるい分け試験で測定するものとする。
[合金用粉末]
合金用粉末を含有する混合粉を焼結すると、合金元素が鉄に固溶して合金化する。そのため、合金用粉末を用いることにより、最終的に得られる焼結体の強度を向上させることができる。
前記合金用粉末としては、特に限定されることなく、合金成分となり得る粉末であれば任意のものを用いることができる。前記合金用粉末としては、例えば、C、Cu、Ni、Mo、Mn、Cr、V、及びSiからなる群より選択される1または2以上の粉末を用いることができる。Cを合金成分として用いる場合、前記合金用粉末として黒鉛粉を用いることが好ましい。
なお、前記合金用粉末の粒子サイズは特に限定されず、任意のサイズの粉末を用いることができる。しかし、合金用粉末の粒径が過度に小さいと、混合粉中で合金用粉末が凝集するなど、取り扱いに支障が出るおそれがある。そこで、取り扱いやすさの観点からは、前記合金用粉末の平均粒径は1μm以上であることが好ましい。一方、前記合金用粉末の粒径が過度に大きいと、焼結体の強度に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、焼結体の強度向上の観点からは、前記平均粒径は100μm以下であることが好ましい。ここで、前記合金用粉末の平均粒径は、体積基準の粒度分布におけるメジアン径D50とする。前記粒度分布はレーザー回折・散乱式粒度分布計により測定するものとする。
合金用粉末は、上述したように合金成分として機能するものであり、後述する微粒子物質とは添加する目的が異なる。そのため、微粒子物質のように比表面積を6m/g以上とする必要は無く、したがって、前記合金用粉末の比表面積は6m/g未満であってよい。
[潤滑材]
前記潤滑剤としては、特に限定されることなく任意のものを用いることができる。前記潤滑剤としては、例えば、金属石鹸、ビスアミド、脂肪酸アミド、脂肪酸、液状潤滑剤、熱可塑性樹脂からなる群より選択される1または2以上を用いることが好ましい。
前記金属石鹸の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸リチウム等が挙げられる。前記、ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。前記脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸モノアミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。前記脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸等が挙げられる。前記液状潤滑剤としては、例えば、リン酸エステル、ポリオールエステル、鉱油、ポリグリコール等が挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリアセタール等が挙げられる。
前記潤滑剤の含有量は特に限定されないが、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対して、0.5~1.5質量部とすることが好ましい。
前記潤滑剤の、混合粉中における存在状態は特に限定されない。例えば、前記潤滑剤は、遊離潤滑剤および結合潤滑剤の一方または両方であってよい。ここで、遊離潤滑剤とは、鉄基粉末など他の成分の粒子と結合せず、遊離した状態で混合粉中に存在する潤滑剤である。また、結合潤滑剤とは、鉄基粉末の表面に付着した状態で存在する潤滑剤である。潤滑剤の少なくとも一部が結合潤滑剤として存在する場合、当該結合潤滑剤を介して合金用粉末を鉄基粉末の表面に固着することができる。その結果、混合粉中における成分の偏析を抑制することができる。
[微粒子物質]
本発明では、粉末冶金用混合粉の圧縮性および抜出性をさらに向上させるために微粒子物質を添加する。前記効果を得るためには、前記微粒子物質の比表面積が6m/g以上である必要がある。その理由は明らかではないが、比表面積が6m/g以上であるような非常に微細な粒子が鉄基粉末の表面に分散した状態で付着することにより、鉄基粉末同士や鉄基粉末と金型表面との摩擦が低減されるものと考えられる。
なお、粒子サイズの限定には、メジアン径D50が用いられることが一般的である。しかし、粒子が極めて微細である場合、一次粒子が凝集して擬似的な粒子(二次粒子)を形成するため、一般的な測定によって得られるメジアン径は、この二次粒子の粒径となる。しかし、本発明者らの検討によると、混合粉に成形のための圧縮力が作用した状態における圧縮性や、圧粉体の抜出性は、二次粒子のサイズよりも一次粒子のサイズの影響を大きく受ける。そのため、本発明では、一次粒子のサイズの指標となるパラメータとして、微粒子物質の比表面積を上記の通り限定する。すなわち、比表面積が高いほど、微粒子物質の一次粒子が微細であることを意味している。
一方、圧縮性および抜出性の観点からは、前記比表面積が高いほどよいため、該比表面積の上限は特に限定されない。しかし、過度に一次粒子を微細化しても効果が飽和することに加え、微粒子物質の取り扱いが困難となる場合がある。そのため、前記比表面積は、1000m/g以下とすることが好ましく、700m/g以下とすることがより好ましい。なお、前記比表面積としては、窒素ガスを用いたガス吸着法によって測定されるBET比表面積を用いる。
上述したように、本発明における微粒子物質は、微細な粒子が鉄基粉末の表面に付着することによる物理的な作用を利用して圧縮性と抜出性を向上させている。そのため、前記微粒子物質としては、比表面積が6m/g以上である粒子であれば、材質を問わず任意の粒子を用いることができる。
したがって、前記微粒子物質は、無機材料および有機材料の一方または両方からなる微粒子であってよい。なお、前記微粒子物質は、合金用金属元素を供給することを目的とするものではない。したがって、前記微粒子物質は、非金属質材料からなる粒子であってよい。ここで、非金属質材料とは、金属質材料(金属および合金)以外の材料を意味し、金属化合物は非金属質材料に包含される。
前記無機材料としては、例えば、黒鉛、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、酸化チタン、カーボンブラック、炭酸カルシウム、ケイ酸塩化合物などが挙げられる。前記窒化ホウ素としては、六方晶窒化ホウ素を用いることが好ましい。前記ケイ酸塩化合物としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびフィロケイ酸塩(層状ケイ酸塩)を用いることが好ましい。前記フィロケイ酸塩としては、例えば、タルク、マイカ(雲母)、バーミキュライト、カオリンなどが挙げられる。これらの無機材料のうち、黒鉛、フッ化黒鉛、六方晶窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フィロケイ酸塩は、層状構造を有していることから、摩擦を低減する効果に優れるものと考えられる。
また、前記有機材料としては、例えば、各種の有機樹脂やメラミンシアヌレートが挙げられる。前記有機樹脂としては、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)が挙げられる。また、メラミンシアヌレートは、黒鉛などと同様の層状構造を有しているため、やはり摩擦を低減する効果に優れるものと考えられる。
本発明の一実施形態においては、前記微粒子物質として、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルク、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデン、黒鉛、およびカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1つを用いることができる。
前記微粒子物質の含有量は、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対して0.01~1.0質量部とする。前記含有量が0.01質量部未満であると、所望の圧縮性および抜出力を得ることができない。一方、前記含有量が1.0質量部より多いと、かえって圧粉密度が低下し、その結果、最終的に得られる焼結体の強度も低下する。これは、微粒子物質による圧縮性向上効果が飽和するとともに、微粒子物質の増加にともない鉄基粉末の割合が相対的に低下したためであると考えられる。
また、前記微粒子物質として、焼結工程で脱ロウしない物質を使用する場合、該微粒子物質が焼結特性に悪影響を与える。そのため、微粒子物質が脱ロウしない場合であっても圧粉体と焼結体の特性をより高い水準で両立させるという観点からは、前記微粒子物質の含有量を、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対して0.01質量部以上0.05質量部未満とすることが好ましい。
上記微粒子物質は、特に限定されることなく、任意の状態で混合粉中に存在していてよいが、前記微粒子物質の少なくとも一部が、前記鉄基粉末の表面に直接付着していることが好ましい。微粒子物質が鉄基粉末の表面に直接付着していることにより、鉄基粉末同士や鉄基粉末と金型との間の摩擦を低減する効果をさらに高めることができる。なお、微粒子物質が鉄基粉末の表面に直接付着するとは、鉄基粉末と微粒子物質との間に潤滑剤が存在しない状態で、該微粒子物質が鉄基粉末の表面に付着していることをいう。言い換えると、微粒子物質の少なくとも一部が、前記潤滑剤を介さずに前記鉄基粉末の表面に直接付着していることが好ましい。
[混合粉の製造方法]
本発明の混合粉は、特に限定されず、任意の方法で製造することができる。本発明の一実施形態においては、上記各成分を、混合機を用いて混合することにより粉末冶金用鉄基混合粉末とすることができる。各成分の添加と混合は、1回で行うこともできるが、2回以上に分けて行うこともできる。
潤滑剤を鉄基粉末の表面に付着させて結合潤滑剤とするためには、例えば、混合の際に潤滑剤の融点以上に加熱しつつ撹拌し、次いで、混合しながら徐々に冷却すればよい。これにより、鉄基粉末の表面が、溶融した潤滑剤によって被覆される。合金用粉末および切削性改善剤を使用する場合には、結合潤滑剤として用いる潤滑剤と同時に添加することが好ましい。それにより、鉄基粉末の表面に付着した結合潤滑剤を介して、合金用粉末、切削性改善剤などの成分が鉄基粉末の表面に固着される。一方、遊離潤滑剤は、上述したように結合潤滑剤を鉄基粉末の表面に固着させた後に、別途添加、混合すればよい。遊離潤滑剤の添加と混合は、既に固着している結合潤滑剤が溶融しないよう、結合潤滑剤の融点より低い温度で実施する。微粒子物質は、結合潤滑剤と同時に添加してもよく、遊離潤滑剤と同時に添加してもよく、遊離潤滑剤と別に添加してもよい。
また、上述したように、本発明の粉末冶金用鉄基混合粉においては、微粒子物質の少なくとも一部が鉄基粉末の表面に直接付着していることが好ましい。微粒子物質の少なくとも一部を鉄基粉末の表面に直接付着させるためには、鉄基粉末、潤滑剤、および微粒子物質を、混合しながら前記潤滑剤の融点以上の温度まで昇温すればよい。前記昇温の初期段階では、まだ温度が低く、潤滑剤は溶融していない。そのため、鉄基粉末の表面に微粒子物質が直接付着することができる。この際、微粒子物質が二次粒子(凝集粒子)である場合には、混合機内で鉄基粉末などと攪拌されることにより、一部が一次粒子に解砕され、該一次粒子が鉄基粉末の表面に付着するものと考えられる。その後、潤滑剤の融点以上の温度に到達すると、溶融した潤滑剤により前記微粒子物質が付着した鉄基粉末の表面に、さらに潤滑剤が付着する。その結果、微粒子物質の少なくとも一部が、潤滑剤を介さずに鉄基粉末の表面に直接付着した状態となる。
なお、上記のプロセスにおいて、合金用粉末は、任意のタイミングで混合することができる。例えば、鉄基粉末、潤滑剤、および微粒子物質を混合する際に、一緒に合金用粉末を混合してもよい。また、鉄基粉末、潤滑剤、および微粒子物質を上記の手順で混合し、冷却した後に合金用粉末を混合してもよい。
前記混合機としては、特に制限はなく、任意のものを使用できるが、加熱装置を備えた混合機を用いることが好ましい。加熱が容易であるという観点からは、高速底部撹拌式混合機、傾斜回転パン型混合機、回転クワ型混合機、及び円錐遊星スクリュー形混合機からなる群より選択される1または2以上を用いることが好ましい。
[鉄基焼結体]
本発明の一実施形態における鉄基焼結体は、上記粉末冶金用鉄基混合粉を原料とする鉄基焼結体である。また、本発明の一実施形態における焼結機械部品は、前記鉄基焼結体を用いた焼結機械部品である。前記鉄基焼結体の製造方法はとくに限定されないが、通常は、前記粉末冶金用鉄基混合粉を加圧成形して成形体とし、前記成形体を焼結することにより製造することができる。以下、各工程について説明する。
(加圧成形)
まず、上記粉末冶金用鉄基混合粉を所望の形状に加圧成形して成形体とする。前記加圧成形に際しては、前記粉末冶金用鉄基混合粉に、任意に副原料、潤滑剤、切削性改善用粉末等を配合してもよい。前記加圧成形の方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができ、例えば、混合粉を金型内に充填して、加圧成形する方法が挙げられる。加圧成形の圧力は、特に限定されないが、例えば、400MPa以上1000MPa以下とすることができる。
(焼結)
焼結の方法は、特に限定されず、任意の方法で行うことができる。焼結温度は、十分に焼結を進行させる点から、1100℃以上とすることができ、1120℃以上とすることが好ましい。一方、焼結温度が高いほど焼結体中の合金元素の分布が均一となるため、焼結温度の上限は特に限定されないが、製造コストの抑制の点から、焼結温度は1250℃以下が好ましく、1180℃以下がより好ましい。
以下の手順で粉末冶金用鉄基混合粉を調製し、得られた粉末冶金用鉄基混合粉の特性と、該粉末冶金用鉄基混合粉を用いて作製した圧粉体および焼結体の特性を評価した。
まず、鉄基粉末、合金用粉末、微粒子物質、および潤滑剤を混合しながら、前記潤滑剤の融点以上の温度まで加熱した。前記鉄基粉末としては、アトマイズ鉄粉(JFEスチール(株)製、JIP-301A)を使用した。前記合金用粉末としては、電解銅粉と、比表面積2.3m/gの天然黒鉛粉を使用した。鉄基粉末、合金用粉末、および微粒子物質の含有量は次の通りとした。
・鉄基粉末:97.2質量%
・電解銅粉:2.0質量%
・天然黒鉛粉:0.8質量%
ここで、前記含有量は、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計質量に対する割合である。
前記微粒子物質としては、表1に記載したものを、表1に示す含有量で使用した。表1に示した微粒子物質の含有量は、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対する量である。ただし、比較のために一部の実施例(比較例No.1)では微粒子物質を添加しなかった。
また、前記潤滑剤としては、ステアリン酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドを使用した。前記潤滑剤の含有量は、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対し、ステアリン酸アミド:0.1質量部、エチレンビスステアリン酸アミド:0.1質量部とした。
上記混合の後、次に添加する遊離潤滑剤の融点以下の温度まで冷却し、さらに、遊離潤滑剤としてテアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、およびステアリン酸亜鉛を添加した。前記遊離潤滑剤の含有量は、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対し、ステアリン酸アミド:0.25質量部、エチレンビスステアリン酸アミド:0.25質量部、ステアリン酸亜鉛:0.1質量部とした。なお、比較のため一部の実施例(Nо.14)では、加熱混合前に微粒子物質を添加することに代えて、冷却後に遊離潤滑剤と共に微粒子物質を添加した。
以上の手順により、粉末冶金用鉄基混合粉を得た。なお、得られた粉末冶金用鉄基混合粉を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、比較例No.14を除く粉末冶金用鉄基混合粉においては、一部の微粒子物質が鉄基粉末の表面に直接付着していた。比較例No.14の粉末冶金用鉄基混合粉では、冷却後に微粒子物質を添加したため、前記微粒子物質は鉄基粉末の表面に直接付着せず、鉄基粉末の表面の付着した潤滑剤の表面に付着していた。
(圧粉密度、抜出力)
以上の手順で得た粉末冶金用鉄基混合粉のそれぞれを用いて圧粉体を作成し、該圧粉体の密度(圧粉密度)および該圧粉体を金型から抜き出す際の抜出力を測定した。前記圧粉体の作成は、直径25mmの金型に粉末冶金用鉄基混合粉を55g充填し、室温で加圧成形することによって行った。前記加圧成形時の圧力は、686MPaとした。得られた円柱状の圧粉体の寸法と重量から圧粉密度を求めた。測定結果を表1に示す。
(圧環強度)
また、上記粉末冶金用鉄基混合粉のそれぞれを用いて鉄基焼結体を作成し、該鉄基焼結体の強度を測定した。具体的には、まず、外径38mm×内径14mmの環状金型に前記混合粉を充填し、成形圧力:686MPaで高さ10mmとなるように成形し、環状の圧粉体を得た。前記圧粉体を、ベルト幅6インチのメッシュベルト炉で1130℃のRXガス雰囲気中で焼結して環状の鉄基焼結体を得た。得られた鉄基焼結体の強度(圧環強度)を、JIS Z 2507-2000に従って測定した。測定結果を表1に併記する。
表1に示した結果から分かるように、本発明の条件を満たす粉末冶金用鉄基混合粉は、優れた圧縮性と抜出性を兼ね備えていた。これに対して、本発明の条件を満たさない粉末冶金用鉄基混合粉は、圧縮性および抜出性の少なくとも1つが劣っていた。
Figure 2024017984000001

Claims (7)

  1. 鉄基粉末、合金用粉末、潤滑剤、および微粒子物質を含有する粉末冶金用鉄基混合粉であって、
    前記微粒子物質の比表面積が6m/g以上であり、
    前記微粒子物質の含有量が、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対して0.01~1.0質量部である、粉末冶金用鉄基混合粉。
  2. 前記微粒子物質の少なくとも一部が、前記鉄基粉末の表面に直接付着している、請求項1に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
  3. 前記鉄基粉末が、還元鉄基粉末およびアトマイズ鉄基粉末の少なくとも一方である、請求項1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
  4. 前記微粒子物質が、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルク、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデン、黒鉛、およびカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
  5. 前記微粒子物質の含有量が、前記鉄基粉末および前記合金用粉末の合計100質量部に対して0.01質量部以上0.05質量部未満である、請求項1または2に記載に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
  6. 請求項1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉を原料とする鉄基焼結体。
  7. 請求項6に記載の鉄基焼結体を用いた焼結機械部品。
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