JP2024007384A - 接着剤組成物及び接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗工する前の溶液状態では溶液安定性に優れ、さらに接着剤とした際には優れた接着性と湿熱耐久性及び長期耐熱性が得られる接着剤組成物を提供する。【解決手段】多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、上記ポリエステル系樹脂(A)が下記の構成要件(1)~(6)を全て満たす。(1)芳香族多価カルボン酸(a1-1)由来の構造部位が、(a1)由来の構造部位全体の50モル%以上。(2)主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造部位が、(a2)由来の構造部位全体の10モル%以上。(3)(A)のエステル結合濃度が、7ミリモル/g以上。(4)(A)の酸価が、6mgKOH/g以上。(5)(a1)が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を含む。(6)(A)における(a1-2)由来の構造部位が、酸無水物基数が2以上の多価カルボン酸由来の構造部位よりも多い。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化されてなる接着剤に関し、さらに詳しくは、高接着性と湿熱耐久性、長期耐熱性、溶液安定性を両立することができる接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤に関する。
従来、ポリエステル系樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐久性、機械的強度に優れているため、フィルムやペットボトル、繊維、トナー、電機部品、接着剤、粘着剤等、幅広い用途で用いられている。また、ポリエステル系樹脂は、そのポリマー構造ゆえに極性が高いことから、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エポキシ樹脂等の極性ポリマー、及び銅、アルミニウム等の金属材料に対して優れた接着性を発現することが知られている。
この特性を利用し、金属とプラスチックの積層体を作製するための接着剤、例えば、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板(以下、両者とまとめてFPCということがある。)等を作製するための接着剤としての使用が検討されている。
フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板は、プリント基板の一種であり、薄い銅箔と絶縁フィルム(プラスチックフィルム)を貼り合されている。FPCは、柔軟性があり、繰り返し変形させることが可能であり、変形させてもプリント基板としての性能を維持することができる。
FPCは薄く、折り畳みや可動部での使用に適しており、近年のスマートフォン、テレビ、ノートパソコン等あらゆる電子機器のさらなる小型化、軽量化、薄型化に合わせて、需要が高まっている。
さらに、最近の伝送信号の高速化にあわせて、伝送信号の高周波化に伴い、低誘電率及び低誘電正接といった低誘電特性が求められるようになっている。
例えば、鉛フリーの半田付けにおいても耐熱性に優れ、且つ基材との接着性等に優れた接着剤としてポリエステルポリオールとテトラカルボン酸二無水物を反応させることにより得られる酸変性ポリエステル系樹脂とエポキシ樹脂からなる接着剤(例えば、特許文献1)や、数平均分子量が異なる2種のポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールを含有する接着剤(例えば、特許文献2)が提案されている。
他にも低吸湿性、湿熱耐久性や接着性に優れる接着剤が得られる接着剤組成物として、ポリエステル系樹脂のエステル結合濃度を低くしながらもガラス転移温度(Tg)は高くし、さらに酸価を所定値以上にしたポリエステル系樹脂を用いた接着剤組成物(例えば特許文献3)や、ポリエステル系樹脂の共重合性モノマーとして芳香族カルボン酸類を所定量用い、さらに酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類を用いたポリエステル系樹脂を用いた接着剤組成物(例えば特許文献4)が提案されている。
特開2006-137793号公報 国際公開第2018/105543号 特開2021-066865号公報 特開2021-134344号公報
しかしながら、近年では電子部材に対する信頼性の観点から、接着剤にはより高い接着性が求められるようになってきている。
また、各種特性を向上させるために接着剤にフィラーを含有させることが一般的であるものの、フィラーを含有させると接着性が悪化する傾向にあり、よりたくさんのフィラーを配合することができる高接着力の樹脂材料が求められている。
加えて、近年自動車においては、限られたスペースによりたくさんの電子機器・電子部品を搭載するようになってきており、FPC等の電子部材はより過酷な環境下に長期にわたって置かれるようになってきていることから、接着剤にはより高い耐久性、特には長期耐熱性が求められるようになってきている。
上記特許文献1~4の開示技術では、フィラーを含有した際の接着力や長期耐熱性については考慮されておらず、さらなる接着力と長期耐熱性の向上が求められている。
一般的には、接着力を向上させるためには樹脂の極性基濃度、つまりはポリエステル系樹脂のエステル結合濃度を上げることが必要であると考えられるものの、エステル結合濃度を上げると吸湿性が高くなり湿熱耐久性が悪化したり、エステル結合由来の凝集力が高まり樹脂が溶剤溶液中で凝集し、溶液安定性が悪化する等の問題があった。
また、溶液安定性を改善するためには、側鎖を有するモノマーをポリエステル系樹脂中に導入することが一般的であるが、側鎖を有するモノマーの種類や含有量によっては長期耐熱性が悪化する傾向があった。
また、無水ピロメリット酸等のテトラカルボン酸二無水物を使用した鎖延長反応で樹脂側鎖にカルボキシ基を導入すると、側鎖のカルボキシ基間の立体的・静電的要因により溶液安定性は確保できるものの、架橋剤で架橋させた際の架橋点間分子量が小さくなるため架橋体の粘性が失われ、結果として接着性が悪化するといった問題があり、溶液安定性と高接着性、湿熱耐久性及び長期耐熱性を両立させることは困難であった。
そこで、本発明は、塗工する前の溶液状態では溶液安定性に優れ、さらに接着剤とした際には優れた接着性と湿熱耐久性及び長期耐熱性が得られる接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤の提供を目的とする。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を要旨とする。
[1]多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、上記ポリエステル系樹脂(A)が下記の構成要件(1)~(6)を全て満たす接着剤組成物。
(1)芳香族多価カルボン酸(a1-1)由来の構造部位が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体の50モル%以上。
(2)主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造部位が、多価アルコール類(a2)由来の構造部位全体の10モル%以上。
(3)上記ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度が、7ミリモル/g以上。
(4)上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価が、6mgKOH/g以上。
(5)上記多価カルボン酸類(a1)が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を含む。
(6)上記ポリエステル系樹脂(A)における酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位が、酸無水物基数が2以上の多価カルボン酸由来の構造部位よりも多い。
[2]上記主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)が、直鎖脂肪族ジオールである[1]記載の接着剤組成物。
[3]上記主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)が、1,6-ヘキサンジオールである[1]又は[2]記載の接着剤組成物。
[4]上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が、-5℃以上である[1]~[3]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[5]上記ポリエステル系樹脂(A)の多価アルコール類(a2)由来の構造部位として、分岐構造を有するジオール類由来の構造部位を有する[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[6]上記側分岐構造を有するジオール類が、3級炭素原子を有さない[5]に記載の接着剤組成物。
[7]上記ポリエステル系樹脂(A)が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位を有する解重合物であるポリエステル系樹脂である[1]~[6]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[8]上記ポリエステル系樹脂(A)が、非結晶性である[1]~[7]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[9]さらに、硬化剤(B)を含有する[1]~[8]いずれかに記載の接着剤組成物。
[10]上記硬化剤(B)が、ポリエポキシ系化合物(B-1)を含有する[9]に記載の接着剤組成物。
[11]上記硬化剤(B)が、グリシジルエーテル型ポリエポキシ系化合物を含有する[9]又は[10]記載の接着剤組成物。
[12][1]~[11]のいずれかに記載の接着剤組成物が、硬化されてなる接着剤。
[13]電子材料部材の貼り合せに用いられる[12]に記載の接着剤。
[14]上記電子材料部材が、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及びボンディングシートから選ばれる少なくとも1種である[13]に記載の接着剤。
本発明によれば、塗工する前の溶液状態では溶液安定性に優れ、さらに接着剤とした際には優れた接着性と湿熱耐久性及び長期耐熱性が得られる接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤を提供する。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、化合物名の後に付された「類」は当該化合物に加え、当該化合物の誘導体をも包括する概念である。例えば、「カルボン酸類」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
また、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」又は「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、本発明において「X以上」(Xは任意の数字)又は「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」又は「Y未満であることが好ましい」旨の意も包含する。
さらに、本発明において、「x及び/又はy(x,yは任意の構成又は成分)」とは、xのみ、yのみ、x及びy、という3通りの組合せを意味するものである。
本発明の接着剤組成物は、多価カルボン酸類由来の構造部位と多価アルコール類由来の構造部位を含むポリエステル系樹脂を少なくとも含有する。まず、ポリエステル系樹脂について説明する。
<ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有し、下記の構成要件(1)~(6)を全て満たすものである。
(1)芳香族多価カルボン酸(a1-1)由来の構造部位が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体の50モル%以上。
(2)主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造部位が、多価アルコール類(a2)由来の構造部位全体の10モル%以上。
(3)上記ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度が、7ミリモル/g以上。
(4)上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価が、6mgKOH/g以上。
(5)多価カルボン酸類(a1)が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を含む。
(6)ポリエステル系樹脂(A)における酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位が、酸無水物基数が2以上の多価カルボン酸由来の構造部位よりも多い。
ここでポリエステル系樹脂(A)における酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位が、酸無水物基数が2以上の多価カルボン酸由来の構造部位よりも多いというのは、ポリエステル系樹脂(A)における各構造部位のモル比の割合を意味する。
〔多価カルボン酸類(a1)〕
多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位における多価カルボン酸としては、例えば、後述する芳香族多価カルボン酸(a1-1);後述する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸(a1-2);1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等の脂環族多価カルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボン酸類は1種又は2種以上を用いることができる。
芳香族多価カルボン酸類(a1-1)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、オルソフタル酸等の単環式芳香族多価カルボン酸類;ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の多環式芳香族多価カルボン酸類;多環式芳香族多価カルボン酸類の中では、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の縮合多環式芳香族多価カルボン酸類やその誘導体(芳香族ジカルボン酸類)が挙げられる。また、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族オキシカルボン酸類等を挙げることができる。さらに、ポリエステル系樹脂に分岐骨格や酸価を付与する目的で導入される3官能以上の芳香族カルボン酸類も上記の芳香族多価カルボン酸類に含まれる。3官能以上の芳香族多価カルボン酸類としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物等が挙げられる。
これらのうちでも誘電特性の観点からは、多環式芳香族多価カルボン酸類が好ましく、なかでも縮合多環式芳香族多価カルボン酸類がより好ましく、縮合多環式芳香族多価カルボン酸類のなかでも、ナフタレンジカルボン酸ジメチルがさらに好ましい。
また、接着性の観点からは、単環式芳香族多価カルボン酸類が好ましく、なかでもテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチルがより好ましい。
また、結晶性を下げて溶剤溶解後の安定性を確保するためには、複数種の多価カルボン酸類を使用することが好ましい。
多価カルボン酸類(a1)全体に対する芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量は、50モル%以上であり、好ましくは75モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%である。芳香族多価カルボン酸類の含有量が上記の範囲内であると誘電特性に優れ、さらに接着性、湿熱耐久性、長期耐熱性も両立できる。逆に少なすぎると、接着性や湿熱耐久性、長期耐熱性が不十分となったり、タック性が強くなる傾向があり、低誘電正接に関しても劣る傾向がある。
多価カルボン酸類全体に対する芳香族多価カルボン酸類の含有量(モル%)は下記式から求められる。
芳香族多価カルボン酸類の含有量(モル%)=(芳香族多価カルボン酸類(モル)/多価カルボン酸類(モル))×100
また、ポリエステル系樹脂全体に対する芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量は20~70質量%であることが好ましく、より好ましくは30~67質量%、さらに好ましくは40~65質量%、特に好ましくは50~62質量%である。芳香族多価カルボン酸類の含有量が上記の範囲内であると、誘電特性に優れ、さらに接着性と湿熱耐久性、長期耐熱性も両立できる。逆に少なすぎると、接着性や湿熱耐久性、長期耐熱性が不十分となったり、タック性が強くなる傾向があり、多すぎると初期接着性が不十分となる傾向がある。
ポリエステル系樹脂(A)は酸価を付与するために多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位として、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位を含有する。上記酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位におけるカルボキシ基の価数は、好ましくは3~6価であり、より好ましくは3~4価である。かかる酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位を構成する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)としては、例えば、上記の3価以上の芳香族多価カルボン酸類のうち酸無水物基数が0又は1であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリメリット酸無水物、トリメリット酸類、トリメシン酸類等が挙げられる。また、上記以外の酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)としては、例えば、水添トリメリット酸無水物が挙げられる。これらのなかでも、酸無水物基数が1であるものが好ましく、トリメリット酸無水物由来の構造部位が特に好ましい。
上記脂環族多価カルボン酸類由来の構造部位を構成する脂環族多価カルボン酸類としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類等が挙げられる。
上記脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位を構成する脂肪族多価カルボン酸類としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の直鎖脂肪族カルボン酸類、ダイマー酸類等の分岐脂肪族多価カルボン酸類が挙げられる。なかでも、長期耐熱性の観点から、直鎖脂肪族カルボン酸類が好ましい。
ポリエステル系樹脂(A)に上記脂環族多価カルボン酸類由来の構造部位、脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位が含まれる場合は、湿熱耐久性及び長期耐熱性の観点から、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位において、上記脂環族多価カルボン酸類由来の構造部位、脂肪族多価カルボン酸類由来の構造部位の合計の含有量が、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。下限値は通常0モル%である。
なお、ポリエステル系樹脂(A)には、スルホテレフタル酸由来の構造部位へ、5-スルホイソフタル酸類由来の構造部位、4-スルホフタル酸類由来の構造部位、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸類由来の構造部位、5(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸類由来の構造部位等のスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸由来の構造部位、及びそれらの金属塩やアンモニウム塩等のスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸塩由来の構造部位が含まれていてもよいが、ポリエステル系樹脂(A)の吸湿性の点や他樹脂との相溶性、溶剤溶解性の点から、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体に対する含有量が10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下、特に好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下であり、最も好ましくは0モル%である。
〔多価アルコール類(a2)由来の構造部位〕
本発明においては、多価アルコール類(a2)由来の構造部位として、主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造部位を含有するものである。
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)においては、溶液安定性及び接着性の観点から、多価アルコール類(a2)由来の構造部位における主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造部位の含有量は、10モル%以上であり、好ましくは20~75モル%、より好ましくは25~70モル%、さらに好ましくは30~65モル%、特に好ましくは35~60モル%である。主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造部位の含有量が上記の範囲内であると溶液安定性及び接着性に優れ、多すぎると接着性に劣ったり、タック性が強くなる傾向があり、逆に少なすぎると溶液安定性及び接着性に劣る傾向がある。
主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)としては、例えば、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の直鎖脂肪族ジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ポリジエンジオール、ダイマージオール等の分岐構造を有する脂肪族ジオールが挙げらる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。なかでも長期耐熱性の観点から直鎖脂肪族ジオールが好ましく、さらにはエステル結合濃度及び芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量を高めて接着性及び長期耐熱性をさらに高められる点から、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールがより好ましく、より安価で入手が容易な点で1,6-ヘキサンジオールがさらに好ましい。
また、本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)を構成する構造部位として分岐構造を有する化合物を用いることが好ましい。
上記分岐構造は、多価カルボン酸、多価アルコール、いずれに有してもよいが、安価で入手が容易な点から分岐構造を有するジオール類を用いることが好ましい。分岐構造を有する(a2-1)以外のジオール類としては、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,3-ブチレングリコール、ビスフェノール骨格含有モノマー等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。
また、主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール類に分岐構造を有するジオールを用いることもできる。主鎖の炭素数が5以上の分岐構造を有する脂肪族ジオールとしては、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ポリジエンジオール、ダイマージオール等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。これらのなかでも、長期耐熱性の観点から、3級炭素原子を含有しないジオールが好ましく、エステル結合濃度及び芳香族多価カルボン酸類(a1-1)由来の構造部位の含有量を高めて接着性、及び長期耐熱性をさらに高められる点から、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールがより好ましく、ネオペンチルグリコールが特に好ましい。
上記ポリジエンジオール類由来の構造部位を構成するポリジエンジオール類としては、誘電特性に優れる点から、4~9の炭素を有する共役ジエンから形成されたポリジエンジオール及び/又は4~9の炭素を有する共役ジエンから形成されるポリジエンジオールの水添物であることが好ましく、例えば、両末端が水酸基のポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリヘキサジエンジオール等や、それらの水素添加物が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。なかでもポリエステル系樹脂(A)の製造時におけるゲル化抑制の点から、水添ポリブタジエンジオールが好ましい。
また、上記ポリジエンジオール類の数平均分子量は、誘電特性及びポリエステルとの相溶性に優れる点から、500~10000であることが好ましく、600~5000であることがより好ましく、700~2800であることがさらに好ましく、800~1800であることが特に好ましい。
上記ダイマージオール類由来の構造部位を構成するダイマージオール類としては、例えば、平均炭素数10~26(好ましくは12~24、より好ましくは14~22)の不飽和脂肪酸類二量体のダイマー酸類から誘導されるジオールが挙げられる。具体的には、例えば、オレイン酸類やリノール酸類、リノレン酸類、エルカ酸類等の不飽和脂肪酸類から誘導されるジオールが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。
多価アルコール類(a2)由来の構造部位として主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造部位以外の構成部位としては、例えば、ビスフェノール骨格含有モノマー、主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール以外の脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価アルコール等由来の構造部位が挙げられる。
上記ビスフェノール骨格含有モノマー由来の構造部位を構成するビスフェノール骨格含有モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールAP、ビスフェノールBP、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールフルオレン等やこれらの水添物、及びビスフェノール類の水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを1~数モル付加して得られるエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等のグリコール類が挙げられる。
上記主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)以外の脂肪族多価アルコール由来の構造部位を構成する脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の脂肪族多価アルコール等が挙げられる。
上記脂環族多価アルコール由来の構造部位を構成する脂環族多価アルコールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール等が挙げられる。
上記芳香族多価アルコール由来の構造部位を構成する芳香族多価アルコールとしては、上記ビスフェノール骨格含有モノマーを除くものであり、例えば、パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール、1,4-フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂(A)にダイマージオール類由来の構造部位、ビスフェノール骨格含有モノマー由来の構造部位、主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール以外の脂肪族多価アルコール由来の構造部位、脂環族多価アルコール由来の構造部位、芳香族多価アルコール由来の構造部位が含まれる場合は、多価アルコール類(a2)由来の構造部位における、ダイマージオール類由来の構造部位、ビスフェノール骨格含有モノマー由来の構造部位、主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール以外の脂肪族多価アルコール由来の構造部位、脂環族多価アルコール由来の構造部位、芳香族多価アルコール由来の構造部位の合計の含有量は、通常90モル%以下であり、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下、特に好ましくは70モル%以下である。下限値は通常0モル%である。
また、ポリエステル系樹脂(A)に主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール以外の脂肪族多価アルコール由来の構造部位が含まれる場合は、多価アルコール類(a2)由来の構造部位における、脂肪族多価アルコール由来の構造部位の含有量は、通常90モル%以下であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下、特に好ましくは35モル%以下である。下限値は通常0モル%である。
本発明で使用されるポリエステル系樹脂(A)は、分岐骨格を導入する目的で、3価以上の芳香族多価カルボン酸類由来の構造部位、及び3価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造部位からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造部位を有すること、すなわち、ポリエステル系樹脂(A)の共重合成分として、上記3価以上の芳香族多価カルボン酸類、及び3価以上の脂肪族多価アルコールからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでいてもよい。特に、後述する硬化剤(B)と反応させて架橋構造を形成する場合、分岐骨格を導入することによって、樹脂の反応点が増え、架橋密度が高い、強度な接着剤層を得ることができる。なかでも、汎用性の点でトリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、トリメリット酸の少なくともいずれか一つが含まれることが好ましい。なお、後述する解重合反応で酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を用いる場合は、解重合反応で用いる多価カルボン酸類とは別に、3価以上の芳香族多価カルボン酸類を用いてもよい。
ポリエステル系樹脂(A)に分岐骨格を導入する目的で3価以上の芳香族多価カルボン酸類、及び3価以上の脂肪族多価アルコールからなる群から選ばれる少なくとも一つを使用する場合は、多価カルボン酸類(a1)全体に対する3価以上の芳香族多価カルボン酸類の含有量、又は多価アルコール類(a2)全体に対する3価以上の多価アルコールの含有量(ただし、解重合反応で使用する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を除く)は、それぞれ好ましくは0.1~5モル%、より好ましくは0.2~3モル%、さらに好ましくは0.3~2モル%の範囲である。両方又はいずれか一方の含有量が多すぎると、接着剤の塗布により形成された塗膜の破断点伸度等の力学物性が低下することとなり接着力が低下する傾向があり、また重合中にゲル化を起こす傾向もある。
接着剤とした際に優れた接着性と湿熱耐久性及び長期耐熱性が得られる点から、前記ポリエステル系樹脂(A)が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位を有する解重合物であるポリエステル系樹脂であることが好ましい。
さらに、本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)には、オキシカルボン酸化合物由来の構造部位が含まれていてもよい。
上記オキシカルボン酸化合物とは、分子構造中に水酸基とカルボキシ基を有する化合物である。
上記オキシカルボン酸化合物由来の構造部位を構成するオキシカルボン酸化合物としては、例えば、5-ヒドロキシイソフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上が含まれていてもよい。
〔ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-5~60℃であることが好ましく、より好ましくは0~55℃、特に好ましくは5~50℃、さらに好ましくは10~45℃、殊に好ましくは15~40℃、最も好ましくは20~35℃である。ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、接着性や誘電特性に劣ったり、タック性が強くなる傾向があり、ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、接着性が不十分になる傾向がある。
上記ガラス転移温度(Tg)の測定方法は以下のとおりである。
ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計を用いて測定することにより求めることができる。なお、測定条件は、測定温度範囲-90~100℃、温度上昇速度10℃/分である。
〔ポリエステル系樹脂(A)の酸価〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の酸価は6mgKOH/g以上であり、より好ましくは7~40mgKOH/g、特に好ましくは8~30mgKOH/g、さらに好ましくは9~20mgKOH/gである。
酸価が上記の範囲内であると、後述するエポキシ等の硬化剤(B)で硬化させた際の架橋度が適度となり、接着性、半田耐熱性、低吸湿性、湿熱耐久性、長期耐熱性、低誘電特性のバランスに優れる。酸価が低すぎると、接着剤組成物にポリエポキシ系化合物等の硬化剤(B)を含有させた場合、硬化剤(B)との架橋点が不足し架橋度が低くなることから、半田耐熱性が不十分となる。また、酸価が高すぎると、低吸湿性や湿熱耐久性が低下したり、硬化剤(B)との架橋点が過剰になり架橋度が高くなりすぎて長期耐熱性が低下したり、硬化時に多量の硬化剤(B)を必要とすることから、近年要求されることが多くなった低誘電特性が得にくい傾向がある。
酸価の定義や測定方法については以下のとおりである。
酸価(mgKOH/g)は、ポリエステル系樹脂(A)1gをトルエン/メタノールの混合溶剤(例えば、体積比でトルエン/メタノール=9/1)30gに溶解し、JIS K 0070に基づき中和滴定により求めることができる。
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、樹脂中におけるカルボキシ基の含有量に起因するものである。
本発明で使用するポリエステル系樹脂(A)における酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位が、酸無水物基数が2以上の多価カルボン酸由来の構造部位よりも多いことで本発明の接着剤組成物の接着力を向上できる。
即ち、本発明の接着剤組成物の接着力を向上できる点から、ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、主として酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸に由来することが好ましい。
主として酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸に由来するとは、ポリエステル系樹脂(A)における酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸の使用量>ポリエステル系樹脂(A)における酸無水物基数が2以上の多価カルボン酸の使用量となることを意味する。
酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸由来の酸価を主とするためには、例えば、酸無水物基数が2以上の多価カルボン酸の含有量を、多価カルボン酸類(a1)全体に対して、10モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは8モル%以下、さらに好ましくは6モル%以下、特に好ましくは4モル%以下、殊に好ましくは3モル%以下、最も好ましくは2モル%以下である。下限値は通常0モル%である。
また、ポリエステル系樹脂(A)全体に対しては、5モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは4モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下、特に好ましくは2モル%以下、殊に好ましくは1.5モル%以下、最も好ましくは1モル%以下である。下限値は通常0モル%である。
即ち、多価カルボン酸類が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を含み、ポリエステル系樹脂(A)が、主として酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位を有することでポリエステル系樹脂(A)は、酸価を生じる。
〔ポリエステル系樹脂(A)の水酸基価〕
また、上記ポリスエテル系樹脂(A)の水酸基価は50mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下、特に好ましくは5mgKOH/g以下、最も好ましくは3mgKOH/g以下である。下限値は通常0モル%である。上記水酸基価が高すぎると、誘電特性、特には誘電正接が劣る傾向がある。
上記ポリエステル系樹脂(A)の水酸基価は、JIS K 0070に基づき中和滴定により求められる値を意味する。
〔ポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度〕
上記ポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度は、7ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは7.5~10ミリモル/g、さらに好ましくは8~9ミリモル/gである。上記エステル基濃度が小さすぎるとポリエステル系樹脂(A)の極性や凝集力が下がるために、接着性や長期耐熱性に劣る傾向があり、高すぎると低吸湿性や湿熱耐久性、誘電特性に悪影響を及ぼす傾向がある。
上記エステル基濃度(ミリモル/g)とは、ポリエステル系樹脂(A)1g中のエステル基のモル数のことであり、例えば、仕込み量からの計算値で求められる。上記計算値は、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)の仕込みモル数の少ない方のモル数を出来上がりの全体質量で割った値であり、計算式の例を以下の式(1)及び式(2)に示す。
なお、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)の各仕込み量が同モル量の場合には、以下式(1)及び式(2)のどちらの計算式を用いてもよい。
また、モノマーとして、カルボン酸と水酸基を両方持ったものを使ったり、カプロラクトン等からポリエステルを調製する場合等は、適宜計算方法を変えることとなる。
<多価カルボン酸類(a1)が多価アルコール類(a2)より少ない場合>
[式(1)]
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(A1/α1×m1+A2/α2×m2+A3/α3×m3・・・)/Z〕×1000
A:多価カルボン酸類(a1)の仕込み量(g)
α:多価カルボン酸類(a1)の分子量
m:多価カルボン酸類(a1)の1分子あたりのカルボキシ基の数
Z:出来上がり質量(g)
<多価アルコール類(a2)が多価カルボン酸類(a1)より少ない場合>
[式(2)]
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(B1/β1×n1+B2/β2×n2+B3/β3×n3・・・)/Z〕×1000
B:多価アルコール類(a2)の仕込み量(g)
β:多価アルコール類(a2)の分子量
n:多価アルコール類(a2)の1分子あたりの水酸基の数
Z:出来上がり質量(g)
また、上記エステル基濃度は、NMR等を用いて公知の方法で測定することもできる。
例えば、ポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度や組成及び組成比の決定は共鳴周波数400MHzの1H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)、13C-NMR測定(カーボン型核磁気共鳴分光測定)にて行うことができる。
なお、本発明におけるエステル基濃度は、上記式(1)及び式(2)で得られた値を意味する。
また、ポリエステル系樹脂(A)が有するエステル基や反応性官能基以外のその他極性基濃度は、低吸湿性や湿熱耐久性、長期耐熱性、誘電特性の点から低い方が好ましい。
その他極性基としては、例えば、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、カーボネート基等が挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂(A)のアミド基、イミド基の濃度は、低吸湿性や湿熱耐久性、誘電特性の点からそれらの合計が3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、さらに好ましくは1ミリモル/g以下、特に好ましくは0.5ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.2ミリモル/g以下である。下限値は通常0ミリモル/gである。
上記ポリエステル系樹脂(A)のウレタン基、ウレア基の濃度は、低吸湿性や湿熱耐久性、長期耐熱性、誘電特性の点からそれらの合計が3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、さらに好ましくは1ミリモル/g以下、特に好ましくは0.5ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.2ミリモル/g以下である。下限値は通常0ミリモル/gである。
上記エーテル基としては、例えば、アルキルエーテル基やフェニルエーテル基等が挙げられ、低吸湿性や湿熱耐久性、長期耐熱性、誘電特性の点から特にアルキルエーテル基の濃度を低くすることが好ましい。
上記ポリエステル系樹脂(A)のアルキルエーテル基の濃度としては、3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、さらに好ましくは1.5ミリモル/g以下、特に好ましくは1ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.5ミリモル/g以下である。下限値は通常0ミリモル/gである。
また、上記ポリエステル系樹脂(A)のフェニルエーテル基の濃度としては、5ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは4ミリモル/g以下、さらに好ましくは3ミリモル/g以下、特に好ましくは2.5ミリモル/g以下である。下限値は通常0ミリモル/gである。
上記ポリエステル系樹脂(A)のカーボネート基の濃度としては、低吸湿性や湿熱耐久性、誘電特性の点から3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、さらに好ましくは1ミリモル/g以下、特に好ましくは0.5ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.2ミリモル/g以下である。下限値は通常0モル%である。
〔ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、5000~300000が好ましく、より好ましくは10000~200000、さらに好ましくは15000~150000、特に好ましくは20000~100000であり、最も好ましくは25000~50000である。
重量平均分子量(Mw)が低すぎると、接着性、低吸湿性、湿熱耐久性、半田耐熱性、低誘電特性が不十分となる傾向がある。また、重量平均分子量(Mw)が高すぎると、接着力や長期耐熱性が不十分となったり、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られ難くなる傾向がある。
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)のピークトップ分子量(Mp)は、5000~150000が好ましく、より好ましくは10000~100000、さらに好ましくは15000~80000、特に好ましくは20000~50000である。
ピークトップ分子量(Mp)が低すぎると、接着性、低吸湿性、湿熱耐久性、半田耐熱性、低誘電特性が不十分となる傾向がある。また、ピークトップ分子量(Mp)が高すぎると、接着力や長期耐熱性が不十分となったり、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られ難くなる傾向がある。
重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)の測定方法は以下のとおりである。
重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)は、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本を直列にして測定し、標準ポリスチレン分子量換算により求める。
〔ポリエステル系樹脂(A)の吸水率(質量%)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の吸水率は、2.5質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。なお、下限は通常0質量%である。
吸水率が高すぎると湿熱耐久性、絶縁信頼性が低下したり、誘電特性が劣る傾向がある。
上記吸水率の測定方法は以下のとおりである。
ポリエステル系樹脂(A)溶液(後述する硬化剤(B)を含まない)を離型フィルム上にアプリケーターで塗布、120℃で10分間乾燥し、ポリエステル系樹脂(A)層の乾燥膜厚が65μmのシートを作製する。このシートを7.5cm×11cmのサイズに切り出し、シートのポリエステル系樹脂(A)層面を、予め質量を測定したガラス板上にラミネートした後、離型フィルムを剥がす。このポリエステル系樹脂(A)層を6枚積層することで、ガラス板上に厚み390μmのポリエステル系樹脂層(A)を有する試験板を得、その質量を測定する。
このようにして得られる試験板を23℃の精製水に24時間浸漬させた後、取り出して表面の水気をふき取り、その質量を測定した後、70℃で2時間乾燥させ、乾燥後の試験板の質量を測定する。これらの各工程において測定した質量から、下記式3に従って吸水率(質量%)を算出する。
[式(3)]
吸水率(質量%)=(c-d)/(b-a)×100
a:ガラス板単独の質量
b:初期の試験板の質量
c:精製水から取り出して水気をふき取った直後の試験板の質量
d:70℃で2時間乾燥させた後の試験板の質量
〔ポリエステル系樹脂(A)の誘電特性〕
(誘電率(Dk))
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の温度23℃、相対湿度50%RH環境下での周波数10GHzにおける誘電率は、3.0以下が好ましく、より好ましくは2.9以下、さらに好ましくは2.8以下、特に好ましくは2.75以下である。上記誘電率が高すぎると伝送速度が劣ったり伝送損失が大きくなる傾向がある。下限値は通常1である。
(誘電正接(Df))
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の温度23℃、相対湿度50%RH環境下での周波数10GHzにおける誘電正接は、0.02以下が好ましく、より好ましくは0.015以下、さらに好ましくは0.01以下、特に好ましくは0.009以下、より特に好ましくは0.008以下、殊に好ましくは0.0075以下、最も好ましくは0.007以下である。上記誘電正接が高すぎると伝送損失が大きくなる傾向がある。下限値は通常0である。
上記誘電率及び誘電正接の測定方法は、ネットワークアナライザを用いた空洞共振器摂動法により求めることができる。なお、ポリエステル系樹脂(A)の粘着性が強く単独での測定サンプルの作製が困難な場合は、フィルムにサンドした状態で測定し、フィルム分を差し引くことでポリエステル系樹脂(A)単独の誘電特性を算出することもできる。
本発明における誘電率及び誘電正接は、ネットワークアナライザを用いた空洞共振器摂動法により求めた値を意味する。
〔ポリエステル系樹脂(A)のプローブタック(N)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)のプローブタックは、3N以下が好ましく、より好ましくは1N以下、さらに好ましくは0.5N以下、特に好ましくは0.2N以下である。なお、下限値は通常0Nである。
プローブタックが高すぎると、粘着性が強く、接着シートとした際のハンドリング性やリワーク性に劣ったり、フレキシブルプリント配線板の加工プロセスにおいて不具合が生じる傾向がある。
上記プローブタックの測定方法は以下のとおりである。
ポリエステル系樹脂(A)溶液(後述する硬化剤(B)を含まない)を厚み38μmのPETフィルム(東レ社製、「ルミラーT60」)上にアプリケーターで塗布、120℃で5分間乾燥し、ポリエステル系樹脂(A)層の乾燥膜厚が25μmのシートを作製する。
次いで、上記シートを12mm×12mmの大きさに裁断し、23℃、50%RHの環境下で、プローブタックテスター(テスター産業社製、TE-6001)を用いてプローブ径5mmΦ、押し込み速度10mm/sec、引き上げ速度10mm/sec、加圧時間5秒、貼付圧力1000gf/cm2で測定することにより求めることができる。
また、本発明においては、ポリエステル系樹脂(A)が、非結晶性のポリエステル系樹脂であることが溶剤溶解性及びその溶液安定性の点で好ましい。
結晶性であると溶剤溶解性やその溶液安定性が不十分となる傾向がある。
非結晶性とは、示差走査熱量計により確認することができ、例えば、測定温度範囲-90~400℃、温度上昇速度10℃/分で測定した際に結晶融解による吸熱ピークが観測されないものを意味する。なお、測定温度範囲や昇温速度はサンプルに応じて適宜変更することができる。
〔ポリエステル系樹脂(A)の製造〕
本発明のポリエステル系樹脂(A)は、上記多価カルボン酸類(a1)と上記多価アルコール類(a2)を原料とし、触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造することができる。すなわち、上記ポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)とを重縮合反応して得られるため、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有することとなる。上記重縮合反応に際しては、まずエステル化反応、又はエステル交換反応が行われた後、重縮合反応が行われる。なお、高分子量にする必要がない場合には、エステル化反応、又はエステル交換反応のみで製造することもある。
上記多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)の配合割合としては、多価カルボン酸類(a1)1当量あたり、多価アルコール類(a2)が1~3当量であることが好ましく、より好ましくは1.1~2.2当量であり、さらに好ましくは1.2~1.7当量である。多価アルコール類(a2)の配合割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
[エステル化反応、又はエステル交換反応〕
エステル化反応、又はエステル交換反応においては、通常、触媒が用いられ、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒等の触媒や、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等の触媒を挙げることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒活性の高さと得られる反応物の色相とのバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛が好ましい。
上記触媒の配合量は、全共重合成分(質量基準)に対して1~10000ppmであることが好ましく、より好ましくは10~5000ppm、さらに好ましくは20~3000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
エステル化反応、又はエステル交換反応時の反応温度については、200~300℃が好ましく、より好ましくは210~280℃、さらに好ましくは220~270℃である。上記反応温度が低すぎると反応が十分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧であるが、加圧反応をすることで、反応温度を上げて効率的に反応を進めることも好ましい。
上記エステル化反応、又はエステル交換反応が行われた後に行われる重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応、又はエステル交換反応で用いるものと同様の触媒をさらに同程度の量を配合し、反応温度を好ましくは220~280℃、より好ましくは230~270℃として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。かかる反応温度が低すぎると反応が十分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
また、側鎖にカルボキシ基を有するポリエステル系樹脂を得るに際しては、多価カルボン酸無水物を除く多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)とを共重合して得られる水酸基含有プレポリマーに、多価カルボン酸無水物を反応させる方法が生産性の点で好ましい。
多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)とのエステル化反応における温度は、通常180~280℃であり、反応時間は通常60分~8時間である。
重縮合における温度は、通常200~280℃であり、反応時間は通常20分~4時間である。また、重縮合は減圧下で行うことが好ましい。
また、ポリエステル系樹脂(A)は、上記とは別の周知の方法、例えば、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)とを、必要に応じて触媒の存在下で、エステル化反応に付してプレポリマーを得た後、重縮合を行い、さらに解重合を行うことにより製造することができる。
解重合は、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を用いることが接着力の点から好ましい。酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)としては、上記多価カルボン酸類(a1)で説明したものを用いることができる。なかでも、好ましくは、分子量低下を抑制できる点から酸無水物基数が1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)であり、より好ましくはトリメリット酸無水物、水添トリメリット酸無水物であり、さらに好ましくは低誘電正接の点からトリメリット酸無水物である。
解重合における温度は、通常200~260℃であり、反応時間は通常10分~3時間である。
解重合の際、多価カルボン酸類(a1)全体を100モル%としたとき、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を、20モル%を超えて用いると、樹脂の分子量が大きく低下することがある。従って、多価カルボン酸類(a1)全体を100モル%としたとき、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を20モル%以下用いて解重合を行うことが好ましく、より好ましくは1.5~15モル%、さらに好ましくは2~10モル%、特に好ましくは2.5~5モル%である。
かくして、従来に比べて、高接着性であり、溶液安定性及び湿熱耐久性、長期耐熱性に優れたポリエステル系樹脂(A)を得ることができる。
そして、従来に比べて高接着性であるポリエステル系樹脂(A)は、機能性を付与するフィラー等を従来品に比べて多量に添加しても十分な接着力を維持できる点から、電子材料部材の貼り合わせ等に用いる接着剤の原料として非常に有用であり、また長期耐熱性にも優れるため、自動車用途向けに特に好適となる。
また、本発明においては、ポリエステル系樹脂(A)が非ハロゲン系の有機溶剤に可溶であることが下記の接着剤組成物とする点から好ましい。上記有機溶剤に対する溶解性が不十分であると、接着剤組成物の調製が困難となる傾向がある。
上記非ハロゲン系の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ソルベッソ等の芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル等エステル系溶剤、セロソルブアセテート、メトキシアセテート等のアセテート系溶剤、又はそれら溶剤の2種類以上の混合物を挙げることができる。
〔硬化剤(B)〕
本発明の接着剤組成物は、硬化剤(B)をさらに含有することが好ましい。硬化剤(B)を含有させることにより、ポリエステル系樹脂(A)の官能基と硬化剤(B)の官能基とが反応し、硬化して、接着力や耐熱性、耐久性に優れた接着剤を得ることができる。また、多官能アクリレートのように、硬化剤同士が反応し、ポリエステル系樹脂(A)との絡み合いを作ることで、疑似架橋する場合もある。
上記硬化剤(B)としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリエポキシ系化合物(B-1)、多官能(メタ)アクリル系モノマーや多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方と反応する官能基を有する化合物が好ましく、半田耐熱性及び長期耐熱性の点でポリエポキシ系化合物(B-1)であることがより好ましい。
上記ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系硬化剤、1,3-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系硬化剤、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等のジフェニルメタン系硬化剤、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系硬化剤等の芳香族系イソシアネート系硬化剤;イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート系硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート系硬化剤;上記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。なお、上記ポリイソシアネート系化合物は、フェノール、ラクタム等でイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらのポリイソシアネート系化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。なかでも、相溶性の観点から、脂環族系イソシアネート系硬化剤や脂肪族系イソシアネート系硬化剤が好ましく、とりわけ、脂環族イソシアネート系硬化剤が好ましく、さらには、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体やアダクト体が好ましい。
水酸基に対するイソシアネート基の当量(官能基モル比)は、0.2~5が好ましく、より好ましくは0.3~3、さらに好ましくは0.5~2、特に好ましくは1.0~1.6である。
上記当量が大きすぎると、接着力や接着シートの経時安定性が不十分となったりする傾向がある。また、小さすぎると、湿熱耐久性、半田耐熱性が不十分となったり、誘電特性に劣る傾向がある。
上記ポリエポキシ系化合物(B-1)としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の2官能グリシジルエーテルタイプ;フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテルタイプ;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルタイプ;トリグリシジルイソシアヌレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族又は脂肪族エポキサイド等が挙げられる。これらのポリエポキシ系化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、反応性の点からはグリシジルエーテル型及びグリシジルエステル型が好ましく、湿熱耐久性の観点からはグリシジルエーテルタイプが好ましく、半田耐熱性の観点からは多官能タイプが好ましい。
また、ポリエポキシ系化合物(B-1)のエポキシ当量は500g/eq以下であることが好ましく、より好ましくは350g/eq以下、さらに好ましくは250g/eq以下、特に好ましくは200g/eq以下である。ポリエポキシ系化合物のエポキシ当量が大きすぎると架橋後の架橋密度が低くなるため半田耐熱性に劣ったり、架橋密度を稼ぐために多量のポリエポキシ系化合物を添加する必要があるため誘電特性に劣る傾向がある。
さらに、ポリエポキシ系化合物(B-1)として、窒素原子を含有するポリエポキシ系化合物(窒素原子を有するポリエポキシ系化合物)を含有すると、接着剤層の硬化時間を短縮することができ、好ましい。
窒素原子を有するポリエポキシ系化合物(B-1)としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等のグリシジルアミン系化合物等が挙げられる。
本発明の接着剤組成物がポリエポキシ系化合物(B-1)を含有し、さらに、ポリエポキシ系化合物(B-1)がこれら窒素原子を有するポリエポキシ系化合物を含有する場合、上記窒素原子を有するポリエポキシ系化合物の含有量は、ポリエポキシ系化合物(B-1)全体に対して50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
また、上記窒素原子を有するポリエポキシ系化合物(B-1)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
上記窒素原子を有するポリエポキシ系化合物の含有量が多すぎると、接着剤の剛直性が過度に高くなり、接着性及び長期耐熱性が低下したり、吸湿性及び接着剤系中の塩基性が高くなり湿熱耐久性が低下する傾向にあり、また、接着シートとした際には接着シート保存中に架橋反応が進み易く、シートライフが低下する傾向にある。
カルボキシ基に対するエポキシ基の当量(官能基モル比)は、0.5~10が好ましく、より好ましくは0.8~5、特に好ましくは0.9~3、さらに好ましくは1~2.5である。
当該当量が大きすぎると、接着力や低吸湿性、絶縁信頼性が不十分となったり、誘電特性が劣ったりする傾向がある。また、小さすぎると、湿熱耐久性、半田耐熱性が不十分となる傾向がある。
カルボキシ基(COOH)に対するエポキシ基の当量(官能基モル比)は、ポリエステル系樹脂(A)の酸価と、配合したポリエポキシ系化合物のエポキシ当量(g/eq)から、下記式(4)により求められる。
[式(4)]
COOHに対するエポキシの当量=(a÷WPE)/(AV÷56.1÷1000×b)
a:配合に用いたポリエポキシ系化合物の質量(g)
WPE:ポリエポキシ系化合物のエポキシ当量(g/eq)
AV:ポリエステル系樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)
b:配合に用いたポリエステル系樹脂(A)の質量(g)
〔接着剤組成物〕
本発明の接着剤組成物は、ポリエステル系樹脂(A)、さらに必要に応じて硬化剤(B)やその他成分を含有する。
本発明の接着剤組成物において、ポリエステル系樹脂(A)の含有量は、固形分全体に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。なお、通常上限値は99質量%以下である。
上記の含有量の範囲であると、塗工する前の溶液状態では溶液安定性に優れ、さらに接着剤とした際には優れた接着性と湿熱耐久性及び長期耐熱性が得られる接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤を提供することができるという本発明の効果がより得やすくなる。
本発明の接着剤組成物が硬化剤(B)を含有する場合、硬化剤(B)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは0.5~15質量部、特に好ましくは1~10質量部である。硬化剤(B)の含有量が少なすぎると半田耐熱性や接着力、湿熱耐久性、長期耐熱性が不十分となる傾向があり、多すぎると接着力や低吸湿性、絶縁信頼性が不十分となったり、誘電特性が劣ったりする傾向がある。
〔その他成分〕
本発明の接着剤組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、ポリエステル系樹脂(A)、硬化剤(B)以外のその他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、例えば、無機フィラー、シランカップリング剤等のカップリング剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、フラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、レベリング剤、触媒等が挙げられる。
本発明の接着剤組成物がその他成分を含有する場合、その他成分の含有量は、固形分全体に対して、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは0.05~60質量%、さらに好ましくは0.1~50質量%、特に好ましくは0.2~40質量%である。
本発明の接着剤組成物は、例えば、上記ポリエステル系樹脂(A)、及び必要な任意成分を準備し、ポリエステル系樹脂(A)の製造時に配合し分散させる、もしくは有機溶剤で溶解させたポリエステル系樹脂(A)の溶液に配合しミキシングローラー等を用いて分散させることにより、得ることができる。
また、本発明の接着剤組成物には、接着剤組成物の粘度を適度に調整し、塗膜を形成する際の取り扱いを容易にするために、溶剤を配合してもよい。溶剤は、接着剤組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられる。上記に挙げた溶剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
<接着剤>
本発明の接着剤組成物は、硬化することができる。
本発明における「硬化」とは熱及び/又は光等により接着剤組成物を意図的に架橋させることを意味し、その架橋の程度は所望の物性、用途により制御することができる。
架橋の程度は接着剤のゲル分率によって確認することができ、好ましくはゲル分率が30質量以上%、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量以上%、最も好ましくは60質量%以上である。ゲル分率が低すぎると半田耐熱性や湿熱耐久性が不十分となる傾向があり、高すぎると接着力が不十分となる傾向がある。上限値は通常100質量%である
なお、上記ゲル分率は、硬化度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、PETフィルム等)に接着剤層が形成されてなる接着シート(離型シートを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、メチルエチルケトン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の接着剤成分の質量に対する、浸漬後の金網中に残存した不溶解の接着剤成分の質量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の質量は差し引いておく。
本発明の接着剤組成物を硬化又は半硬化させる際の接着剤組成物の硬化方法としては、接着剤組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常80~200℃で1分~10時間の加熱条件が挙げられる。
硬化剤を用いて本発明の接着剤組成物を硬化するに際しては触媒を用いてもよい。
上記触媒としては、例えば、2-メチルイミダゾールや1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;トリエチルアミンやトリエチレンジアミン、N’-メチル-N-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等の三級アミン類;及びこれらの三級アミン類をフェノールやオクチル酸、四級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物;トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートやジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート等のカチオン触媒;トリフェニルフォスフィン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。これらのうち、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7や1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等の三級アミン類;及びこれらの三級アミン類をフェノールやオクチル酸、四級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物が、熱硬化性及び半田耐熱性、金属への接着性、配合後の保存安定性の点で好ましい。
その際の配合量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.01~1質量部であることが好ましい。この範囲であればポリエステル系樹脂(A)と硬化剤(B)との反応に対する触媒効果が一段と増し、強固な接着性能を得ることができる。
〔用途〕
本発明の接着剤は、接着性、半田耐熱性、湿熱耐久性、長期耐熱性に優れることから、樹脂や金属等の各種材料からなる基材の接着に有効であり、特に、金属層とプラスチック層との積層板を作製するための接着剤、例えば、電子材料部材に用いられる接着剤に好適である。
本発明における「電子材料部材」としては、例えば、フィルム、銅箔、フレキシブルプリント銅張積層板、カバーレイ、ボンディングシート等が挙げられる。
電子材料部材の貼り合せにより作製されるものとしては、例えば、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等のフレキシブル積層板が挙げられる。フレキシブル積層板としては、例えば、「可撓性を有するフレキシブル基板/接着剤層/銅やアルミニウム、これらの合金等からなる導電性金属層」を順次積層した積層体が挙げられ、接着剤層を構成する接着剤として本発明の接着剤を用いることができる。なお、フレキシブル積層板は、上記の各種層以外に、他の絶縁層、他の接着剤層、他の導電性金属層をさらに含んでいてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
<実施例1>
〔ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)としてテレフタル酸(a1-1)105.8部(0.64モル)、イソフタル酸(a1-1)245.0部(1.47モル)、無水トリメリット酸(a1-2)2.0部(0.01モル)、多価アルコール類(a2)としてエチレングリコール52.7部(0.85モル)、1,6-ヘキサンジオール(a2-1)188.1部(1.59モル)、ネオペンチルグリコール44.2部(0.42モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、内温が265℃となるまで2.5時間かけて昇温し、265℃で1.5時間、エステル化反応を行った。
次いで、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を追加し、系内を2.5hPaまで減圧し、2時間かけて重合反応を行った。
その後、内温を230℃まで下げ、無水トリメリット酸(a1-2)12.2部(0.064モル)を添加し230℃で1時間解重合反応を行い、非結晶のポリエステル系樹脂(A-1)を得た。
<実施例2及び比較例1,2>
〔ポリエステル系樹脂(A-2)、(A’-1)、(A’-2)の製造〕
樹脂組成を後記の表1に記載のとおりになるように変更した以外はポリエステル系樹脂(A-1)と同様にしてポリエステル系樹脂(A-2)、(A’-1)、(A’-2)を得た。
<比較例3>
〔ポリエステル系樹脂(A’-3)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a1)としてテレフタル酸(a1-1)174.6部(1.05モル)、イソフタル酸(a1-1)130.0部(0.78モル)、水添ダイマー酸232.1部(0.40モル)、多価アルコール類(a2)としてエチレングリコール90.2部(1.45モル)、ネオペンチルグリコール97.8部(0.94モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、内温が260℃となるまで2.5時間かけて昇温し、260℃で1.5時間、エステル化反応を行った。
次いで、内温を170℃まで下げ、無水ピロメリット酸25.4部(0.116モル)を添加し170℃で2時間付加反応を行い、ポリエステル系樹脂(A’-3)を得た。
得られたポリエステル系樹脂の樹脂組成(成分由来の構造部位)を下記の表1に示す。
下記の表1で記載する組成は、出来上がりの組成比(樹脂組成比)であり、得られたポリエステル系樹脂の各構成モノマー量の相対比(モル比)である。なお、表1中、各略称は以下のとおりである。
「TPA」:テレフタル酸(a1-1)
「IPA」:イソフタル酸(a1-1)
「TMAn」:無水トリメリット酸(a1-1/a1-2)
「P1010」:水添ダイマー酸(Pripol1010 クローダ社製、分子量577)
「PMAn」:無水ピロメリット酸(a1-1)
「EG」:エチレングリコール
「2MPG」:2-メチル-1,3-プロパンジオール
「NPG」:ネオペンチルグリコール
「BPE-20」:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE-20(三洋化成工業社製))
「1,4BG」:1,4-ブタンジオール
「1,6HG」:1,6-ヘキサンジオール(a2-1)
「P2033」:水添ダイマージオール(Pripol2033 クローダ社製、分子量538)(a2-1)
また、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(℃)、酸価(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)、エステル結合濃度(ミリモル/g)、多価カルボン酸類(a1)中の芳香族多価カルボン酸(a1-1)含有量(モル%)、多価アルコール類(a2)中の主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)含有量(モル%)について、本明細書の記載に従って測定を行った。また、下記の溶液安定性についても評価を行った。これらのポリエステル系樹脂の諸物性を下記の表2に示す。
〔溶液安定性評価〕
上記で得られたポリエステル系樹脂にトルエン/メチルエチルケトン=1/2(質量比)混合溶媒を投入し、樹脂が完全に溶解するまで撹拌しながら90℃に加温し、固形分濃度55%のポリエステル系樹脂溶液を調製した。その後、ポリエステル系樹脂溶液を室温(23℃)にて静置し、外観変化の有無を評価した。
(評価基準)
〇:静置後1カ月を超えて経過しても外観変化が生じなかった。
×:静置後1カ月以内に固化、濁り、あるいは沈殿物の発生等の外観変化が生じた。
Figure 2024007384000001
Figure 2024007384000002
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)として、以下のものを用意した。
(B-1):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「YDPN-638」)(エポキシ当量:177g/eq)
(B-2):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER154」)(エポキシ当量:177g/eq)
(B-3):テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(三菱ケミカル社製「jER604」(エポキシ当量:120g/eq)
(B-4):N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(三菱ガス化学社製「Tetrad-X」(エポキシ当量:98g/eq)
上記で得られたポリエステル系樹脂及び硬化剤(B)を用いて、下記のとおり接着剤組成物を製造した。
<実施例3>
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-2)をトルエン/メチルエチルケトン=1/2(質量比)混合溶媒で固形分濃度55%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-2)溶液(固形分として100部)に対し、硬化剤(B-2)(固形分)を8.5部、(B-3)(固形分)を0.5部配合し、さらにトルエンで全体の固形分50%になるように希釈、撹拌、混合することにより、接着剤組成物を得た。
<比較例4,5>
実施例3において、後記の表3に示すとおりの各成分となるように変更した以外は実施例3と同様にして、接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物について、下記の評価を行った。評価結果を後記の表3に示す。
〔ゲル分率〕
上記で調製した接着剤組成物を離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)に塗布した後、120℃で5分間乾燥し、乾燥膜厚50μmの接着剤層を形成した。その後、かかる接着剤層に、離型処理されたPETフィルムを貼着してその表面を保護し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることで接着シートを得た。
上記で得られた接着シートを4cm×4cmサイズに切り出した。片側の離型フィルムを剥がしたのち、200メッシュのSUS製金網で包み、メチルエチルケトン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の接着剤質量に対する金網中に残存した不溶解の接着剤成分の質量百分率をゲル分率とした。
〔接着力(剥離強度)(PI/接着剤層/Cu)〕
上記で調製した接着剤組成物を厚み50μmのポリイミドフィルム「カプトン200H」(東レ・デュポン社製)にアプリケーターで塗布した後、120℃で5分間乾燥し、乾燥膜厚25μmの接着層を形成した。次に厚み30μmの圧延銅箔(アズワン社製)を上記接着層付きポリイミドフィルムの接着層面とラミネート(ラミネート条件:170℃、0.2MPa、送り速度1.5m/min)し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることで積層体を得た。
上記で得られた積層体を1cm幅に切り出したものを試験片とした。両面テープを用いて試験片を厚み2mmのガラス板に固定し、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で剥離試験機を用いて、試験片の引張剥離強度を測定した(剥離速度:50mm/min、剥離角度:180°)。また、上記試験片を85℃×85%RHの環境下に500時間及び1000時間静置した後の接着力についても同様に引張剥離強度を測定し、下記基準に従って評価した。
◎:接着力が16N/cm以上又は材料破壊
〇:接着力が13N/cm以上 16N/cm未満
△:接着力が10N/cm以上 13N/cm未満
×:接着力が10N/cm未満
Figure 2024007384000003
<実施例4,比較例6>
実施例3において、後記の表4に示すとおりの各成分となるように変更した以外は実施例3と同様にして、接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物について、下記の評価を行った。評価結果を後記の表4に示す。
〔接着力(剥離強度)(PI/接着剤層/Cu)〕
上記で調製した接着剤組成物を厚み50μmのポリイミドフィルム「カプトン200EN」(東レ・デュポン社製)にアプリケーターで塗布した後、120℃で5分間乾燥し、乾燥膜厚25μmの接着層を形成した。次に厚み18μmの低粗度無粗化電解銅箔「CF-T9DA-SV」(福田金属箔紛工業社製)のM面を上記接着層付きポリイミドフィルムの接着層面とラミネート(ラミネート条件:170℃、0.2MPa、送り速度1.5m/min)し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることで積層体を得た。
上記で得られた積層体を1cm幅に切り出したものを試験片とした。両面テープを用いて試験片を厚み2mmのガラス板に固定し、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で剥離試験機を用いて、試験片の引張剥離強度を測定した(剥離速度:50mm/min、剥離角度:180°)。また、上記試験片を150℃の環境下に1000時間静置した後の接着力についても同様に引張剥離強度を測定し、下記基準に従って評価した。
◎:接着力が16N/cm以上又は材料破壊
〇:接着力が13N/cm以上 16N/cm未満
△:接着力が10N/cm以上 13N/cm未満
×:接着力が10N/cm未満
〔ゲル分率〕
実施例3記載の方法と同様の方法にしてゲル分率を測定した。
Figure 2024007384000004
上記表の結果より、本発明の要件をすべて満たす実施例1,2のポリエステル系樹脂はエステル結合濃度が高いながらも溶液安定性に優れ、それを用いた実施例3,4の接着剤組成物は接着性に非常に優れており、また湿熱耐久性及び長期耐熱性にも優れるものであった。一方、エステル結合濃度が高く、本発明の構成要件(2)を満たさない比較例1のポリエステル系樹脂は、エステル結合由来の凝集力が高すぎるため溶液安定性に劣るものであった。また、本発明の構成要件(3)の規定を満たさない比較例2のポリエステル系樹脂は溶液安定性には優れるものの、それを用いた比較例4,6の接着剤組成物は接着性にやや劣り、長期耐熱性にも劣るものであった。さらに、エステル結合濃度は高いが本発明の構成要件(6)を満たさない比較例3のポリエステル系樹脂は、溶液安定性には優れるものの、エステル結合濃度が高いにも関わらずそれを用いた比較例5の接着剤組成物は接着性に劣り、また湿熱耐久性にも劣るものであった。
上記実施例の接着剤組成物は、フレキシブル銅張積層板などの電子材料部材の貼り合わせる際の接着剤としても優れており、接着性、湿熱耐久性及び長期耐熱性に優れるものである。
本発明の接着剤組成物は、ポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であり、塗工する前の溶液状態では溶液安定性に優れ、さらに接着剤とした際には優れた接着性と湿熱耐久性、長期耐熱性及び半田耐熱性が得られる接着剤組成物である。そのため金属とプラスチックの積層板を作製するための接着剤、例えば、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等のフレキシブル積層板等に用いられる接着剤として有効である。

Claims (14)

  1. 多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位及び多価アルコール類(a2)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、上記ポリエステル系樹脂(A)が下記の構成要件(1)~(6)を全て満たす接着剤組成物。
    (1)芳香族多価カルボン酸(a1-1)由来の構造部位が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位全体の50モル%以上。
    (2)主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造部位が、多価アルコール類(a2)由来の構造部位全体の10モル%以上。
    (3)上記ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度が、7ミリモル/g以上。
    (4)上記ポリエステル系樹脂(A)の酸価が、6mgKOH/g以上。
    (5)上記多価カルボン酸類(a1)が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)を含む。
    (6)上記ポリエステル系樹脂(A)における酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-2)由来の構造部位が、酸無水物基数が2以上の多価カルボン酸由来の構造部位よりも多い。
  2. 上記主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)が、直鎖脂肪族ジオールである請求項1記載の接着剤組成物。
  3. 上記主鎖の炭素数が5以上の脂肪族ジオール(a2-1)が、1,6-ヘキサンジオールである請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  4. 上記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が、-5℃以上である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  5. 上記ポリエステル系樹脂(A)の多価アルコール類(a2)由来の構造部位として、分岐構造を有するジオール類由来の構造部位を有する請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  6. 上記分岐構造を有するジオール類が、3級炭素原子を有さない請求項5記載の接着剤組成物。
  7. 上記ポリエステル系樹脂(A)が、多価カルボン酸類(a1)由来の構造部位を有する解重合物であるポリエステル系樹脂である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  8. 上記ポリエステル系樹脂(A)が、非結晶性である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  9. さらに、硬化剤(B)を含有する請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  10. 上記硬化剤(B)が、ポリエポキシ系化合物(B-1)を含有する請求項9記載の接着剤組成物。
  11. 上記硬化剤(B)が、グリシジルエーテル型ポリエポキシ系化合物を含有する請求項9記載の接着剤組成物。
  12. 請求項1又は2に記載の接着剤組成物が、硬化されてなる接着剤。
  13. 電子材料部材の貼り合せに用いられる請求項12記載の接着剤。
  14. 上記電子材料部材が、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及びボンディングシートから選ばれる少なくとも1種である請求項13記載の接着剤。
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