JP2024005743A - 摺動部材 - Google Patents

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彰 寶田
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Abstract

【課題】炭素繊維による優れた機械強度を維持しつつ、特に耐衝撃性および耐摩耗性を高いレベルで両立することができる、摺動部材を提供する。【解決手段】ポリアミド樹脂(A)と、熱可塑性フッ素樹脂(B)と、炭素繊維(C)とを含む、樹脂組成物からなる摺動部材であって、前記ポリアミド樹脂(A)の融点mp1と前記熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点mp2との差mp1-mp2が-20℃<mp1-mp2<85℃であり、前記摺動部材の表面粗さRaが0.4μm~1.1μmである、摺動部材。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物からなる、摺動部材に関する。
一般にポリアミド樹脂は優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性を有することから、電気・電子部品や自動車部品へ用いられている。種々の用途のなかでも、ポリアミド樹脂は静音性や自己潤滑性に優れることから、ギヤ(歯車)やベアリングテーナーなどの摺動部材用途へ広く用いられている。近年、摺動部材用途では、生産設備の自動化に伴って、軽量化や機械特性の向上、より高速領域での摺動性が求められている。
ところで、摺動部材を構成する樹脂組成物において、強度等の機械物性を向上させる方法としてはガラス繊維や炭素繊維を配合する方法が知られており、また、摩擦係数や耐摩耗性などの摺動性を向上させる方法としてはポリ四フッ化エチレン樹脂を配合する方法が知られている(例えば、特許文献1~4等)。
特開昭58-179262号公報 特開昭61-190553号公報 特開昭62-185747号公報 特開平1-259059号公報
しかしながら、特許文献1~4のような方法によっても、なお十分に摺動性を向上させることが難しいという問題がある。特に、炭素繊維を含有する樹脂組成物の成形部材は表面粗さが粗くなることが多く、摺動部材用途に使用すると摩耗が大きくなるという問題がある。また、ポリ四フッ化エチレン樹脂を含有する樹脂組成物の成形部材は表面硬度が低く、炭素鋼などの硬質金属と摺動させると激しく摩耗してしまうという問題がある。
本発明はかかる問題を解決し、炭素繊維による優れた機械強度を維持しつつ、特に耐衝撃性および耐摩耗性を高いレベルで両立することができる、摺動部材を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する摺動部材を提供する。
項1 ポリアミド樹脂(A)と、熱可塑性フッ素樹脂(B)と、炭素繊維(C)とを含む、樹脂組成物からなる摺動部材であって、前記ポリアミド樹脂(A)の融点mp1と前記熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点mp2との差mp1-mp2が-20℃<mp1-mp2<85℃であり、前記摺動部材の表面粗さRaが0.4μm~1.1μmである、摺動部材。
項2 前記熱可塑性フッ素樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)値が、0.1g/10min~50g/10minである、項1に記載の摺動部材。
項3 前記熱可塑性フッ素樹脂(B)が、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体である、項1または項2に記載の摺動部材。
項4 前記ポリアミド樹脂(A)の融点が、150℃以上である、項1~項3のいずれかに記載の摺動部材。
項5 前記炭素繊維(C)の含有量が、前記樹脂組成物全量100質量%中において10質量%~50質量%である、項1~項4のいずれかに記載の摺動部材。
項6 前記摺動部材が歯車用である、項1~項5のいずれかに記載の摺動部材。
項7 前記摺動部材が軸受用である、項1~項5のいずれかに記載の摺動部材。
本発明によれば、炭素繊維による優れた機械強度を維持しつつ、特に耐衝撃性および耐摩耗性を高いレベルで両立することができる、摺動部材を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明の摺動部材は、樹脂組成物からなる摺動部材である。上記摺動部材は、樹脂組成物の成形体であることが望ましい。上記樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、熱可塑性フッ素樹脂(B)と、炭素繊維(C)とを含む。上記ポリアミド樹脂(A)の融点mp1と上記熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点mp2との差mp1-mp2が-20℃<mp1-mp2<85℃である。上記摺動部材の表面粗さRaは、0.4μm~1.1μmである。なお、上記摺動部材の表面粗さRaは、算術平均粗さであり、例えば、ワンショット3D形状測定機にて測定することができる。
本発明の摺動部材は、ポリアミド樹脂(A)と、熱可塑性フッ素樹脂(B)と、炭素繊維(C)とを含む樹脂組成物からなり、上記ポリアミド樹脂(A)の融点mp1と上記熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点mp2との差mp1-mp2および上記摺動部材の表面粗さRaが上記特定の範囲にあるので、上記樹脂組成物の成形性が向上し、熱可塑性フッ素樹脂(B)および炭素繊維(C)による耐摩耗性の低下を抑制しつつ、炭素繊維(C)による優れた機械強度を維持することができ、特に耐摩耗性と耐衝撃性とを高いレベルで両立することができる。
本発明においては、上記ポリアミド樹脂(A)の融点mp1と上記熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点mp2との差mp1-mp2が、-20℃<mp1-mp2<85℃であり、好ましくは-15℃<mp1-mp2<83℃であり、より好ましくは-10℃<mp1-mp2<50℃であり、さらに好ましくは-5℃<mp1-mp2<40℃であり、特に好ましくは0℃<mp1-mp2<40℃であり、最も好ましくは0℃<mp1-mp2<30℃である。
本発明においては、摺動部材の表面粗さRaが、0.4μm~1.1μmであり、より好ましくは0.6μm~1.0μmである。また、摺動部材の表面粗さRzが、好ましくは1.0μm~3.6μmであり、より好ましくは2.0μm~3.0μmである。この場合、特に熱可塑性フッ素樹脂(B)および炭素繊維(C)による耐摩耗性の低下をより一層抑制することができる。なお、上記摺動部材の表面粗さRzは、最大高さであり、例えば、ワンショット3D形状測定機にて測定することができる。
本発明においては、摺動部材のロックウェル硬度HRMが、好ましくは93.2を超え106未満であり、より好ましくは93.3~105.8である。上記摺動部材のロックウェル硬度HRMは、例えば、JIS K 7202-2に準拠して測定することができる。
本発明においては、熱可塑性フッ素樹脂(B)のMFR値が、0.1g/10min~50g/10minであることが好ましい。この場合、樹脂組成物の成形性をより一層高めることができる。
本発明においては、熱可塑性フッ素樹脂(B)が、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体であることが好ましい。この場合、摺動部材の耐摩耗性と耐衝撃性とをより高いレベルで両立することができる。
本発明においては、ポリアミド樹脂(A)の融点は、150℃以上であることが好ましい。この場合、摺動部材の耐熱性をより一層高めることができる。
本発明においては、炭素繊維(C)の含有量が、樹脂組成物全量100質量%中において10質量%~50質量%であることが好ましい。この場合、摺動部材の機械強度をより効果的に向上させることができる。
また、本発明においては、樹脂組成物全量100質量%中において、ポリアミド樹脂(A)の含有量が、20質量%~88質量%であることが好ましく、33質量%~74質量%であることがより好ましく、44質量%~64質量%であることがさらに好ましい。この場合、摺動部材の耐熱性をより一層高めることができる。
本発明の摺動部材は、炭素繊維による優れた機械強度を維持しつつ、特に耐衝撃性および耐摩耗性を高いレベルで両立することができるので、歯車や軸受け等の高負荷な部位で使用される摺動部材として好適に使用することができる。
本発明の摺動部材の各構成要素等について以下に説明する。
<樹脂組成物>
本発明に用いる樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、熱可塑性フッ素樹脂(B)と、炭素繊維(C)とを含有し、必要に応じてその他添加剤を含有していてもよい。
(ポリアミド樹脂(A))
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、主鎖中にアミド結合(-NH-C(=O)-)を有する重合体であり、後述のアミノカルボン酸、ジアミン、ジカルボン酸等のモノマー成分に由来する構成単位を含む重合体である。ポリアミド樹脂(A)は、1種の構成単位からなるものでも、複数種の構成単位からなるものであってもよい。1種の構成単位からなるものとしては、例えば、アミノカルボン酸の重合体が挙げられる。複数種の構成単位からなるものとしては、ジアミンとジカルボン酸との共重合体、ジアミンとジカルボン酸とアミノカルボン酸との共重合体等が挙げられる。
ポリアミド樹脂(A)が、複数種の構成単位からなる共重合体の場合には、共重合比率、共重合形態等は、任意に選択することができる。共重合形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等の炭素数5~20の脂肪族ω-アミノカルボン酸;p-アミノ安息香酸、p-アミノメチル安息香酸等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。また、アミノカルボン酸としては、脂肪族ω-アミノカルボン酸に対応する環状のラクタムを用いてもよい。これらは単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、3-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-エチルテトラメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ピペラジン等の脂環族ジアミン;p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシレンジアミン、o-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。これらは単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。
ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2-メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。これらは単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。
ポリアミド樹脂(A)の具体例として、例えば、ポリアミド6(6-アミノカプロン酸の重合体)、ポリアミド66(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体)、ポリアミド11(11-アミノウンデカン酸の重合体)、ポリアミド12(12-アミノドデカン酸の重合体)、ポリアミド46(テトラメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体)、ポリアミド6/66共重合体(6-アミノカプロン酸とヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体)、ポリアミド6/12共重合体(6-アミノカプロン酸と12-アミノドデカン酸との共重合体)等の脂肪族ポリアミド樹脂;ポリアミドMXD6(m-キシレンジアミンとアジピン酸との共重合体)、ポリアミド6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との共重合体)、ポリアミド9T(1,9-ジアミノノナンとテレフタル酸との共重合体)、ポリアミド10T(1,10-ジアミノデカンとテレフタル酸との共重合体)、ポリアミド6T/66共重合体(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とアジピン酸との共重合体)等の半芳香族ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。
本発明において、半芳香族ポリアミド樹脂とは、ポリアミド樹脂(A)の構成単位として、脂肪族モノマーに由来する構成単位と芳香族モノマーに由来する構成単位とを含むポリアミド樹脂を意味する。脂肪族モノマーとしては、上述のモノマー成分のなかで、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、脂肪族ω-アミノカルボン酸、脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。芳香族モノマーとしては、上述のモノマー成分のなかで、芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸等が挙げられる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、変形、変色等を抑制する観点から、融点が150℃以上であることが好ましい。また、押出、成形等の溶融加工でのポリアミド樹脂(A)の熱分解を抑制する観点から、ポリアミド樹脂(A)の融点が350℃以下であることが好ましく、330℃以下であることがより好ましい。ポリアミド樹脂(A)の融点は、好ましくは150℃~330℃であり、より好ましくは200℃~320℃である。本明細書において、融点は、JIS-K7121に準じて測定することができる。
ポリアミド樹脂(A)の形状は、溶融混練が可能であれば特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、ペレット状のいずれも使用することができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物全量100質量%中において、20質量%~88質量%であることが好ましく、33質量%~74質量%であることがより好ましく、40質量%~64質量%であることがさらに好ましい。
(熱可塑性フッ素樹脂(B))
本発明に用いる熱可塑性フッ素樹脂(B)は、熱可塑性樹脂に耐衝撃性を付与する役割を主に果たす成分である。
本発明に用いる熱可塑性フッ素樹脂(B)は、引張伸びが450%未満であることが好ましい。熱可塑性フッ素樹脂(B)の引張伸びが450%未満である場合、耐衝撃性により一層優れた樹脂組成物を得ることができる。熱可塑性フッ素樹脂(B)の引張伸びの下限値は、例えば、100%とすることができる。また、熱可塑性フッ素樹脂(B)の引張伸びは、ASTM D638に準じて測定される値である。
熱可塑性フッ素樹脂(B)としては、ポリアミド樹脂(A)の融点の30℃~40℃高い温度、荷重49Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)値が0.1g/10min以上であることが好ましく、3g/10min以上であることがより好ましく、5g/10min以上であることがさらに好ましく、50g/10min以下であることが好ましく、40g/10min以下であることがより好ましく、30g/10min以下であることがさらに好ましく、20g/10min以下であることが特に好ましく、10g/10min以下であることが最も好ましい。熱可塑性フッ素樹脂(B)のMFR値が上記下限値以上である場合、樹脂組成物の成形性をより一層向上させることができる。なお、熱可塑性フッ素樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)値は、例えば、JIS K 7210(ISO1133)に準拠して測定することができる。
本発明に用いる熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点は、150℃~315℃であることが好ましい。熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点は、好ましくは200℃~300℃であり、より好ましくは230℃~280℃である。また、熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点は、ポリアミド樹脂(A)より低いことが好ましい。
このような熱可塑性フッ素樹脂(B)としては、例えば、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FPE)、クロロトリフルオロエチレン単独重合体(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ビニリデンフルオライド単独重合体(PVDF)などが挙げられる。これらの熱可塑性フッ素樹脂は化学的に変性されていてもよい。変性の種類としては、酸変性されていても、エポキシ変性されていてもよいし、あるいはその他の化学的変性がされていてもよい。
これらのなかでも、摺動部材の引張伸びや引張応力をより一層高める観点から、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体(THV)又はテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)であることが好ましい。
これらの熱可塑性フッ素樹脂(B)は、単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。
本発明で用いる熱可塑性フッ素樹脂(B)の含有量は、樹脂組成物全量100質量%中において、5質量%~30質量%であることが好ましく、5質量%~25質量%であることがより好ましく、10質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
(炭素繊維(C))
本発明で用いる炭素繊維(C)は、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、炭化水素による気相成長系炭素繊維、黒鉛繊維などを用いることができる。これらの炭素繊維は、単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。また、炭素繊維(C)としては、PAN系炭素繊維であることが好ましい。
本発明で用いる炭素繊維(C)の平均繊維長は、好ましくは0.1mm~10mmであり、より好ましくは1mm~8mmであり、さらに好ましくは4mm~7mmである。炭素繊維(C)は、収束剤等で凝集した繊維状補強材の束となっているものも用いることができるが、炭素繊維(C)の平均繊維径は、好ましくは0.5μm~30μmであり、より好ましくは1μm~20μmであり、さらに好ましくは3μm~15μmである。また、炭素繊維(C)の平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは20以上であり、特に好ましくは50以上であり、好ましくは1200以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは950以下、特に好ましくは900以下である。炭素繊維(C)として、このような短繊維(チョップドファイバー)を用いることにより、成形性と機械特性とのバランスにより優れた樹脂組成物とすることができる。
本発明で用いる炭素繊維(C)の含有量は、樹脂組成物全量100質量%中において、10質量%~50質量%であることが好ましく、20質量%~40質量%であることがより好ましく、25質量%~35質量%であることがさらに好ましい。
(その他添加剤)
本発明で用いる樹脂組成物には、その好ましい物性を損なわない範囲で、通常、樹脂組成物に配合される各種その他添加剤を配合することができる。その他の添加剤として、例えば、雲母、マイカ、セリサイト、イライト、タルク、カオリナイト、モンモリナイト、ベーマイト、スメクタイト、バーミキュライト、二酸化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸リチウムカリウム、ベーマイト等の板状充填材;ガラス繊維、ガラスミルド繊維、ワラストナイト繊維、チタン酸カリウム繊維、アラミド繊維等の上記炭素繊維以外の繊維状補強材;ポリテトラフルオロエチレン樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、グラファイト、二硫化モリブテン、二硫化タングステン、窒化ホウ素等の固体潤滑剤;飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス等の離型剤;カーボンブラック、酸化チタン等の顔料および染料等の着色剤;臭素系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等の難燃剤;ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物、シアノアクリレート系化合物等の紫外線吸収剤;フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、カルボジイミド化合物系加水分解防止剤等の熱安定剤;黒鉛粉末、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の熱伝導剤;ポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート等の帯電防止剤が挙げられる。これらは、単独で使用することができ、又は2種以上を併用することができる。
本発明で用いる樹脂組成物がその他添加剤を含む場合、その配合量は、本発明の樹脂組成物の好ましい物性を損なわない範囲であれば特に制限されない。その他添加剤の含有量は、例えば、樹脂組成物全量100質量%中において、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明に用いる樹脂組成物は、ポリアミド樹脂と、熱可塑性フッ素樹脂と、炭素繊維と、必要に応じてその他の添加剤とを、混合および加熱することによって製造できる。混合および加熱の方法は、溶融混練であることが望ましい。
溶融混練には、例えば、二軸押出機等の公知の溶融混練装置を使用することができる。具体的には、(1)混合機(タンブラー、ヘンシェルミキサー等)で各成分を予備混合して、溶融混練装置で溶融混練し、ペレット化手段(ペレタイザー等)でペレット化する方法;(2)所望する成分のマスターバッチを調整し、必要により他の成分を混合して溶融混練装置で溶融混練してペレット化する方法;(3)各成分を溶融混練装置に供給してペレット化する方法等により製造することができる。
溶融混練における加工温度は、ポリアミド樹脂が溶融し得る温度であれば特に限定されない。通常、溶融混練に用いる溶融混練装置のシリンダ温度をこの範囲に調整する。かくして、所望の効果を発揮する樹脂組成物が製造される。
<摺動部材の製造方法および用途>
本発明で用いる樹脂組成物は、目的とする摺動部材の種類、用途、形状等に応じて、射出成形、インサート成形、圧縮成形、ブロー成形、インフレーション成形等の公知の樹脂成形方法により、各種成形体とすることができる。また、上記の成形方法を組み合わせた成形方法を採用することができる。
上述の樹脂組成物の製造方法および成形方法を採用し、上記ポリアミド樹脂(A)の融点mp1と上記熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点mp2との差mp1-mp2を-20℃<mp1-mp2<85℃とし、摺動部材の表面粗さRaを0.4μm~1.1μmとすることで、上記樹脂組成物の成形性が向上し、熱可塑性フッ素樹脂(B)と炭素繊維(C)による耐摩耗性の低下を抑制しつつ、炭素繊維(C)による優れた機械強度を維持することができ、特に耐摩耗性と耐衝撃性とを高いレベルで両立することができる、本発明の摺動部材が製造される。
なお、摺動部材の表面粗さRaは、樹脂組成物中におけるポリアミド樹脂(A)、熱可塑性フッ素樹脂(B)、および炭素繊維(C)それぞれの含有量や、熱可塑性フッ素樹脂(B)のMFR値、炭素繊維(C)の平均繊維長および/または平均繊維径等により調整することができる。
本発明の摺動部材は、炭素繊維による優れた機械強度を維持しつつ、特に耐衝撃性および耐摩耗性を高いレベルで両立することができるので、自動車部品、電気電子部品、パワーモーラー部品、歯車、軸受(ベアリングリテーナー)等に好適に用いることができる。
自動車部品用途では、電動パーキングブレーキ用ギア等で好適に用いることできる。電気電子部品用途では、洗濯機、電気自動車等の減速機用ギア、掃除機、ロボットなどの筐体等で好適に用いることできる。
以下に実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。なお、融点の測定に際しては、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製、品番「DSC7000X」)を用いて、JIS K 7121に準じて測定試料となる各原材料5mgについて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで各測定試料の予想される融点以上の温度まで加熱したときの融解ピークを測定し、これを融点とした。なお、本実施例および比較例で使用した原材料は、具体的には以下の通りである。
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド66:DuPont社製、商品名「ザイテル103HSL」、融点264℃
<熱可塑性フッ素樹脂>
テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE):MFR値5.6g/10min(JIS K7210(ISO1133)(297℃、荷重49N)に準拠して測定)、融点:242℃
ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE):3M社製、商品名「ダイニオンTF9205」、平均粒子径8μm、融点:325℃
<炭素繊維>
炭素繊維:PAN系炭素繊維、ZOLTEK社製、商品名「Panex35-83」、平均繊維長6mm、平均繊維径7μm
<実施例1~実施例3および比較例1~比較例3>
表1に示す配合割合で、二軸押出機を用いて溶融混練し、それぞれペレットを製造した。なお、実施例1~実施例3および比較例1~比較例3における二軸押出機のシリンダ温度は290℃であった。
得られたペレットを、射出成形機にて、JIS試験片に成形し、摺動部材を得て評価サンプルとした。なお、実施例1~実施例3および比較例1~比較例3における射出成形機のシリンダ温度は310℃とし、金型温度は110℃とした。
<評価>
実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3で得られた評価サンプルについて、以下の評価を行った。
(表面粗さ)
得られた評価サンプルについて、表面粗さRa(算術平均粗さ)及び表面粗さRz(最大高さ)を、ワンショット3D形状測定機(KEYENCE社製、型番「VR-3000」)にて測定倍率80倍、評価長さ4mm、基準長さ(カットオフ値λc)0.8mmの条件で測定した。
(ロックウェル硬度)
得られた評価サンプルについて、ロックウェル硬度HRMを、JIS K7202-2に準じて測定した。
(引張強さおよび引張破断伸び)
得られた評価サンプルについて、引張強さおよび引張破断伸びを、JIS K7162に準じて測定した。
(曲げ強さ、曲げ弾性率、および曲げたわみ)
得られた評価サンプルについて、曲げ強さ、曲げ弾性率、および曲げたわみ(曲げ降伏たわみ及び曲げ破断たわみ)を、JIS K7271に準じ、オートグラフAG-5000(島津製作所社製)にて支点間距離60mmの3点曲げ試験により測定した。
(ノッチ付きアイゾット(IZOD)衝撃値)
得られた評価サンプルについて、IZOD衝撃値を、JIS K7110に準じ、1号試験片で測定した。
(摩擦摩耗試験)
得られた評価サンプルについて、動摩擦係数(μk)、比摩耗量、および相手材比摩耗量を、JIS K7218に準じ、下記条件で測定した。
対炭素鋼S45C、P:1.0MPa、V:0.3m/s、走行距離:10km、温度:室温
結果を下記の表1に示す。
Figure 2024005743000001
表1から明らかなように、ポリアミド樹脂と、熱可塑性フッ素樹脂と、炭素繊維とを含む、樹脂組成物からなり、ポリアミド樹脂と熱可塑性フッ素樹脂の融点差が22℃であり、表面粗さRaが0.4μm~1.1μmである、実施例1~3の摺動部材は、炭素繊維による優れた機械強度を維持しつつ、特に耐衝撃性および耐摩耗性を高いレベルで両立できていることがわかる(引張強さ:211MPa以上、曲げ強さ:309MPa以上、IZOD衝撃値:95J/m以上、比摩耗量:0.04mm/kgf/km以下)。
一方、炭素繊維を含有せず、表面粗さRaが0.4より小さい比較例1では、引張強さや曲げ強さなどの機械強度が著しく低下していることがわかる(引張強さ:69MPa、曲げ強さ:97MPa)。また、熱可塑性フッ素樹脂を含有せず、表面粗さRaが1.1μmより大きい比較例2や、ポリアミド樹脂と熱可塑性フッ素樹脂の融点差が-50℃より小さい比較例3では、耐衝撃性および耐摩耗性を高いレベルで両立できていないことがわかる(IZOD衝撃値:85J/m、比摩耗量:0.09mm/kgf/km以上)。

Claims (7)

  1. ポリアミド樹脂(A)と、熱可塑性フッ素樹脂(B)と、炭素繊維(C)とを含む、樹脂組成物からなる摺動部材であって、
    前記ポリアミド樹脂(A)の融点mp1と前記熱可塑性フッ素樹脂(B)の融点mp2との差mp1-mp2が-20℃<mp1-mp2<85℃であり、
    前記摺動部材の表面粗さRaが0.4μm~1.1μmである、摺動部材。
  2. 前記熱可塑性フッ素樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)値が、0.1g/10min~50g/10minである、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記熱可塑性フッ素樹脂(B)が、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体である、請求項1または請求項2に記載の摺動部材。
  4. 前記ポリアミド樹脂(A)の融点が、150℃以上である、請求項1または請求項2に記載の摺動部材。
  5. 前記炭素繊維(C)の含有量が、前記樹脂組成物全量100質量%中において10質量%~50質量%である、請求項1または請求項2に記載の摺動部材。
  6. 前記摺動部材が歯車用である、請求項1または請求項2に記載の摺動部材。
  7. 前記摺動部材が軸受用である、請求項1または請求項2に記載の摺動部材。
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