JP2024005444A - トランスジェニック非ヒト動物、発光検出方法、補助剤のスクリーニング方法及び医薬のスクリーニング方法 - Google Patents

トランスジェニック非ヒト動物、発光検出方法、補助剤のスクリーニング方法及び医薬のスクリーニング方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2024005444A
JP2024005444A JP2022105625A JP2022105625A JP2024005444A JP 2024005444 A JP2024005444 A JP 2024005444A JP 2022105625 A JP2022105625 A JP 2022105625A JP 2022105625 A JP2022105625 A JP 2022105625A JP 2024005444 A JP2024005444 A JP 2024005444A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
human animal
transgenic non
modified luciferase
luciferase
amino acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022105625A
Other languages
English (en)
Inventor
邦和 丹治
Kunikazu Tanji
孝一 若林
Koichi Wakabayashi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hirosaki University NUC
Original Assignee
Hirosaki University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hirosaki University NUC filed Critical Hirosaki University NUC
Priority to JP2022105625A priority Critical patent/JP2024005444A/ja
Publication of JP2024005444A publication Critical patent/JP2024005444A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、改変型ルシフェラーゼを長期間に亘って安定的に発現できる非ヒト動物を産生し、生体内深部から発光シグナルを長期間に亘って安定的に検出できる非侵襲性イメージングシステムを構築することを課題とする。【解決手段】本発明は、改変型ルシフェラーゼ遺伝子を導入した、トランスジェニック非ヒト動物であって、改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、野生型D-ルシフェラーゼよりも高い発光強度で発光基質を発光させる改変型ルシフェラーゼを発現する、トランスジェニック非ヒト動物に関する。【選択図】図3

Description

本発明は、トランスジェニック非ヒト動物、発光検出方法、補助剤のスクリーニング方法及び医薬のスクリーニング方法に関する。
生物発光として知られているホタルの発光は、ホタルルシフェリン(D-ルシフェリン)を発光基質とし、ホタルルシフェラーゼを触媒とした反応によるものである。具体的には、アデノシン三リン酸(ATP)及びマグネシウムイオン(Mg2+)の存在化で、発光基質であるD-ルシフェリンが、ルシフェラーゼによって発光体であるオキシルシフェリンに変換されることで発光が生じる。
近年、生物学および医学の研究において、生命現象を分子レベルで動的に捉える必要性が高まってきている。例えば、細胞内のシグナル伝達や遺伝子発現といった細胞の機能を調べるために、蛍光色素や蛍光タンパク質といった蛍光プローブが用いられている。また、上述したホタルの発光系もライフサイエンス、バイオテクノロジー、医学及び薬学など様々な分野において注目され応用されている。
例えば、特許文献1には、D-ルシフェリンとは異なる発光波長を有する発光基質(例えばアカルミネ)に対する基質特異性が向上した改変型ルシフェラーゼが開示されている。また、特許文献2には、高い強度でルシフェリンを発光させる変異型ルシフェラーゼが開示されている。
非特許文献1には、ホタルの発光系を利用した生体内発光イメージングシステムが開示されている。非特許文献1では、改変型ルシフェラーゼ遺伝子であるAkaluc遺伝子を生体内で発現させ、基質であるAkalumineを生体内に投与することで、動物の生体内深部からの発光シグナルを検出しており、発光シグナルを従来に比べ100~1,000倍の強さで検出できる非侵襲性イメージングシステムの構築が検討されている。
国際公開第2018/038248号 特開2012-235756号公報
Iwano et al., Science 359,935-939(2018)
非特許文献1には、動物の生体内深部からの発光シグナルを検出できる非侵襲性イメージングシステムが開示されているが、ここでは、ウイルスを用いてAkaluc遺伝子を導入しているため、生体内におけるAkaluc(改変型ルシフェラーゼ)の発現は一過性のものとなる。このため、動物の生体内においてAkalucが発現する期間は長くても数ヶ月程度であり、生命現象を長期間に亘って観察することが困難であった。すなわち、非特許文献1では、Akalucを長期間に亘って安定的に発現させることが難しいという課題があった。
そこで本発明者らは、改変型ルシフェラーゼを長期間に亘って安定的に発現できる非ヒト動物を産生し、生体内深部から発光シグナルを長期間に亘って安定的に検出できる非侵襲性イメージングシステムを構築することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、改変型ルシフェラーゼ遺伝子を導入した、トランスジェニック非ヒト動物を産生することで、改変型ルシフェラーゼを長期間に亘って安定的に発現する動物を産生することに成功した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 改変型ルシフェラーゼ遺伝子を導入した、トランスジェニック非ヒト動物であって、
改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、野生型D-ルシフェラーゼよりも高い発光強度で発光基質を発光させる改変型ルシフェラーゼを発現する、トランスジェニック非ヒト動物。
[2] 改変型ルシフェラーゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、[1]に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[3] 改変型ルシフェラーゼは、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、T39A、E48Q、I51V、K68R、L86S、Q134R、I136V、Q147R、G175S、N229Y、I231N、F294C、F295L、N308S、H310R、H332R、S347N、I349V、L350M、D357R、A361S、D377V、S456G、N463Y、K524R、L526S、I540T及びG545Dよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸置換を含む、[1]又は[2]に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[4] 改変型ルシフェラーゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくともS347N及びN229Yよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸置換を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[5] 改変型ルシフェラーゼは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する、[1]~[4]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[6] 改変型ルシフェラーゼは、人工酵素Akalucである、[1]~[5]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[7] 改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、脳神経細胞内での選択的発現を促すプロモーターに連結されている、[1]~[6]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[8] プロモーターが、Thy1プロモーター、シナプシン-Iプロモーター、シヌクレイン1プロモーター又はカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIIα(CAMKIIα)プロモーターである、[7]に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[9] 改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、配列番号2に示される塩基配列を有し、改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、Thy1プロモーターに連結されている、[1]~[8]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[10] トランスジェニック非ヒト動物がマウスである、[1]~[9]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質を投与し、発現した改変型ルシフェラーゼと発光基質とを反応させる工程を含む、発光検出方法。
[12] トランスジェニック非ヒト動物の脳において改変型ルシフェラーゼと発光基質とを反応させる工程を含む、[11]に記載の発光検出方法。
[13] さらに補助剤を投与する工程を含む、[11]に記載の発光検出方法。
[14] [1]~[10]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質と補助剤を投与する工程と、発光検出工程と、を含む、補助剤のスクリーニング方法。
[15] [1]~[10]のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質を結合した医薬を投与する工程と、発光検出工程と、を含む、医薬のスクリーニング方法。
また、本発明は以下の構成を有するものであってもよい。
[A] [1]~[10]のいずれかに記載されたトランスジェニック非ヒト動物に由来する組織。
[B] [1]~[10]のいずれかに記載されたトランスジェニック非ヒト動物を産生する方法であって、ES細胞に、Thy1プロモーターと改変型ルシフェラーゼ遺伝子を有するターゲティングベクターを導入しキメラ非ヒト動物を作製する工程を含む方法。
本発明によれば、改変型ルシフェラーゼを長期間に亘って安定的に発現する非ヒト動物を得ることができる。また、本発明によれば、当該動物の生体内深部から発光シグナルを長期間に亘って安定して検出することができる非侵襲性イメージングシステムを構築することができる。
図1は、トランスジェニック非ヒト動物の作製に使用した発現ベクターの設計図である。Thy1プロモーターにVenus-Akaluc遺伝子が連結されているため、哺乳類動物の脳神経細胞でVenus-Akalucが発現する。XhoIで酵素処理をした後に目的遺伝子を入れ込み、線状化はApaIxEcoRIで行った。 図2は、トランスジェニックマウスの尾から抽出したDNAを用いてPCRを行った選別結果である。+がトランスジェニックマウス(Vintraマウス)、-が通常のマウスである。 図3は、溶解したアカルミネTM n塩酸塩 1000倍希釈(3 μM)10 μLを、トランスジェニックマウス(Vintraマウス)に経鼻投与した(上段)、もしくは100 μLを腹腔内投与(下段)した結果である。上段では、経鼻投与後、Vintraマウスの鼻先が発光し、15分後脳内にも弱いシグナルが観察された。下段では同溶液を100 μL腹腔内投与後10分で脳内にも強いシグナルが観察された。 図4は、所定濃度で溶解したアカルミネTM n塩酸塩 5 μLを、トランスジェニックマウス(Vintraマウス)および通常のマウスに経鼻投与した結果である。写真と発光イメージを重ね合わせて表示した。Vintraマウス(+)では鼻先が発光しているのに対して、通常のマウス(-)では変化が認められなかった。 図5は、所定濃度で溶解したアカルミネTM n塩酸塩 5 μLを、トランスジェニックマウス(Vintraマウス)および通常のマウスに経鼻投与し、継時変化を観察した結果である。0分では1000倍希釈(3 μM)、25分では500倍希釈(6 μM)、また50分では100倍希釈(30 μM)のAkalucを経鼻投与(矢印)した。Vintraマウス(+)では鼻先が発光(0分、25分、50分)しているのが観察された。また60分、65分、70分ではVintraマウス(+)の赤丸で囲った頭蓋部分で発光シグナルが観察された。各パネルの右下の数値は撮影開始からの時間(分)であり、0分での発光強度を1とした。 図6は、図5の発光シグナルを定量化したグラフである。頭蓋部分に相当する(赤丸)発光強度がVintraマウス(太線)ではアカルミネTM n塩酸塩濃度に応じて高くなった。経鼻投与後10分程度で脳内で発光シグナルが認められた。通常のマウス(細線)ではこのような変化は認められなかった。 図7は、発光シグナルとアカルミネTM n塩酸塩投与量との相関関係を示したグラフである。アカルミネTM n塩酸塩の経鼻投与量に比例して発光強度が大きくなることが確認された。 図8は、補助剤として二糖を混合したときのアカルミネTM n塩酸塩脳送達への影響を示した結果である。Vintraマウス(+)では経鼻投与(0分、20分、50分)したときに鼻先が発光しているのに対して、通常のマウス(-)ではこのような発光は認められなかった。0分ではアカルミネTM n塩酸塩単独、20分ではアカルミネTM n塩酸塩+マルトース、50分ではアカルミネTM n塩酸塩+トレハロースを合計5 μL経鼻投与した。アカルミネTM n塩酸塩は15 μM、マルトースとトレハロースは50 mMで投与した。各パネルの右下の数値は撮影開始からの時間(分)であり、0分での発光強度を1とした。 図9は、図8の発光シグナルを定量化したグラフである。頭蓋部分に相当する(赤丸)発光強度がVintraマウス(太線)ではアカルミネTM n塩酸塩単独のとき(約1.5倍)よりもマルトースを加えると約2.0倍程度までアカルミネTM n塩酸塩が脳送達されることがわかる。さらにトレハロースを加えると3.5倍程度まで脳送達される効率があがる。通常のマウス(細線)ではこのような変化は認められなかった。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、アミノ酸配列における20種類のアミノ酸残基は、一文字略記で表現することがある。その場合、グリシン(Gly)はG、アラニン(Ala)はA、バリン(Val)はV、ロイシン(Leu)はL、イソロイシン(Ile)はI、フェニルアラニン(Phe)はF、チロシン(Tyr)はY、トリプトファン(Trp)はW、セリン(Ser)はS、スレオニン(Thr)はT、システイン(Cys)はC、メチオニン(Met)はM、アスパラギン酸(Asp)はD、グルタミン酸(Glu)はE、アスパラギン(Asn)はN、グルタミン(Gln)はQ、リジン(Lys)はK、アルギニン(Arg)はR、ヒスチジン(His)はH、プロリン(Pro)はPである。また、本明細書において、表示するアミノ酸配列は、左端がN末端、右端がC末端である。
(トランスジェニック非ヒト動物)
本発明は、改変型ルシフェラーゼ遺伝子を導入した、トランスジェニック非ヒト動物に関する。本発明において、改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、野生型D-ルシフェラーゼよりも高い発光強度で発光基質を発光させる改変型ルシフェラーゼを発現する。本明細書において、発光基質とは改変型ルシフェラーゼによる酵素反応によって発光現象を示す基質をいう。発光反応における発光色は発光基質に依存する。発光基質がD-ルシフェリンの場合、発光ピークは約560nmとなり、アカルミネTMの場合、発光ピークは675nmとなる。
ルシフェラーゼは、発光基質が光を放つ化学反応(発光反応)を触媒する作用を有する酸化還元酵素である。発光基質としては、国際公開第2018/038248号の段落0108に記載された発光基質を例示することができる。例えば、ホタルルシフェリン(D-ルシフェリン)、アカルミネTM、アカルミネ-OH、6-アカルミネ、O-アカルミネ、モノエンNMe2、モノエンNH2、モノエンOH、ビフェニル等を挙げることができる。アデノシン三リン酸(ATP)及びマグネシウムイオン(Mg2+)の存在化で、発光基質が、ルシフェラーゼによって発光体に変換されることで発光が生じる。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物においては、改変型ルシフェラーゼ遺伝子がゲノムに挿入されているため、当該トランスジェニック非ヒト動物は改変型ルシフェラーゼを長期間に亘って安定的に発現することができる。そして、改変型ルシフェラーゼは、野生型D-ルシフェラーゼよりも高い発光強度で発光基質を発光させることができる。このため、改変型ルシフェラーゼが発現したトランスジェニック非ヒト動物において、生体内深部からも発光シグナルを検出することが可能となる。例えば、頭蓋骨に覆われた脳内からの発光シグナルを検出することもできる。また、本発明においては、改変型ルシフェラーゼ遺伝子がゲノムに挿入されているため、長期間に亘って安定的に、改変型ルシフェラーゼを発現することができる。このため、長期間に亘って安定して発光シグナルを検出することが可能となる。本発明のトランスジェニック非ヒト動物を用いることで、長期間に亘ってリアルタイムな可視化が可能となる非侵襲性イメージングシステムを構築することができる。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物においては、改変型ルシフェラーゼ遺伝子が生殖細胞系にも導入されるため、改変型ルシフェラーゼ遺伝子は次世代にも受け継がれる。このため、次世代の非ヒト動物においても、改変型ルシフェラーゼとルシフェラーゼの発光基質による発光シグナルを検出することができ、世代を超えた非侵襲性イメージングシステムの構築が可能となる。
本発明の実施形態では、改変型ルシフェラーゼを脳内において発現させる。そして、ルシフェラーゼの発光基質を経鼻投与等によって投与し、脳内に到達させることにより、改変型ルシフェラーゼと発光基質が反応することで得られる発光シグナルを脳内から検出することができる。このように、本発明のトランスジェニック非ヒト動物を用いることで、脳内からの発光シグナルをリアルタイムで検出することが可能となるため、本発明におけるトランスジェニック非ヒト動物は、脳内可視化非ヒト動物やリアルタイム脳内可視化非ヒト動物と呼ぶこともできる。
認知症や脳疾患等を治療するために、抗体医薬等が用いられており、様々な医薬の開発が進められている。しかし、脳には、血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)と呼ばれる脳バリアが存在しており、投与薬のうち極僅か(1%以下)しか脳へ到達しない場合がある。このため、脳バリアを透過しやすい薬剤の開発や、薬剤を経鼻投与することで、効率よく投与薬を脳へ届けることが検討されている。本発明の一実施形態では、改変型ルシフェラーゼを脳内において発現させることができるため、ルシフェラーゼの発光基質を薬剤に連結して投与したり、これらを経鼻投与して、脳からの発光シグナルを検出することで、目的の薬剤が脳に送達されたか否かを検出することができる。また、本発明のトランスジェニック非ヒト動物を用いると、リアルタイムで脳からの発光シグナルを検出することが可能となるため、脳からの発光シグナルが得られるまでの時間や、発光シグナルが得られる場所、発光シグナルの強度を測定することで、薬剤の送達場所や送達時間、送達量を検出することも可能となる。
本発明の他の実施形態においては、改変型ルシフェラーゼを、脳において発現させることが好ましいが、脳以外の臓器(例えば、心臓、肺、肝臓、胃、腎臓等)においても発現させることができる。例えば、改変型ルシフェラーゼ遺伝子に、各臓器で発現を促進するプロモーターを連結することで、脳以外の臓器においても改変型ルシフェラーゼを発現させることができる。一方で、改変型ルシフェラーゼ遺伝子に、脳特異的な発現を促すプロモーターを連結することで、脳特異的に改変型ルシフェラーゼを発現するトランスジェニック非ヒト動物を得ることができる。また、多臓器における発現を促すプロモーターを用いることで、全身において改変型ルシフェラーゼを発現するトランスジェニック非ヒト動物を得ることもできる。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、ヒツジ、ウシ及びウマ等のヒトを除く哺乳類動物が挙げられ、中でも、マウス、ラット及びモルモット等の齧歯類(ネズミ目)動物が好ましく、より好ましくはマウスである。
<改変型ルシフェラーゼ遺伝子/改変型ルシフェラーゼ>
本発明のトランスジェニック非ヒト動物においては、野生型D-ルシフェラーゼよりも高い発光強度で発光基質を発光させる改変型ルシフェラーゼが発現している。改変型ルシフェラーゼは、野生型D-ルシフェラーゼと比較してアミノ酸配列に変異を有している。本明細書において、変異とは、置換、欠失又は挿入を指す。本発明において、変異は、置換又は欠失であることが好ましく、より好ましくは置換である。
改変型ルシフェラーゼは、配列番号1(Common eastern firefly由来の野生型D-ルシフェラーゼ)に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むものであることが好ましい。改変型ルシフェラーゼと野生型D-ルシフェラーゼのアミノ酸の配列同一性は85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、アミノ酸の配列同一性は、当業者に周知の方法、配列解析ソフトウェア等を使用して求めることができる。例えば、BLASTアルゴリズムのblastpプログラムやFASTAアルゴリズムのfastaプログラムが挙げられる。ここでのアミノ酸配列の配列同一性は、野生型D-ルシフェラーゼのアミノ酸配列に対して改変型ルシフェラーゼのアミノ酸配列を比較し、同一部位に同一のアミノ酸が出現する頻度を%で表示した値である。
改変型ルシフェラーゼにおいては、野生型D-ルシフェラーゼと比較して、発光基質であるアカルミネに対する基質特異性が向上している。発光基質に対する基質特異性は、後述するように、発光基質の発光強度の強弱により判定することができる。
改変型ルシフェラーゼが発光基質を発光させる発光強度は、野生型D-ルシフェラーゼが発光基質(アカルミネ)を発光させる発光強度の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましく、100倍以上であることが一層好ましく、500倍以上であることがより一層好ましく、1000倍以上であることが特に好ましい。改変型ルシフェラーゼが発光基質を発光させる発光強度の上限値は特に限定されるものではなく、上限値は100万倍程度であってもよい。発光強度を測定する際には、例えば、対象のルシフェラーゼを発光基質と反応させた際の最大発光波長における発光強度を測定する。そして、1分間測定した発光強度の積算値を算出することで比較データとすることができる。
改変型ルシフェラーゼは、配列番号1に記載の野生型D-ルシフェラーゼのアミノ酸配列において、T39A、E48Q、I51V、K68R、L86S、Q134R、I136V、Q147R、G175S、N229Y、I231N、F294C、F295L、N308S、H310R、H332R、S347N、I349V、L350M、D357R、A361S、D377V、S456G、N463Y、K524R、L526S、I540T及びG545Dよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸置換を含むものであることが好ましい。本明細書においては、アミノ酸置換を、置換前のアミノ酸残基を表す一文字略記、アミノ酸置換が生じるアミノ酸残基の位置(特定のアミノ酸配列におけるN末端側からの位置)を表す数字、及び置換後のアミノ酸残基を表す一文字略記の組合せで表現する。例えば、39位のトレオニンがアラニンに置換されるのであれば「T39A」と表現される。
中でも、改変型ルシフェラーゼは、少なくともS347N及びN229Yよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸置換を含むことが好ましい。また、改変型ルシフェラーゼは、T39A、E48Q、I51V、K68R、L86S、Q134R、I136V、Q147R、G175S、N229Y、I231N、F294C、F295L、N308S、H310R、H332R、S347N、I349V、L350M、D357R、A361S、D377V、S456G、N463Y、K524R、L526S、I540T及びG545Dにアミノ酸置換を含むことが好ましい。
改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、配列番号2に示される塩基配列を有することが好ましく、改変型ルシフェラーゼは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するものであることが好ましい。すなわち、改変型ルシフェラーゼは、人工酵素Akalucであることが好ましい。
改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、脳神経細胞内での選択的発現を促すプロモーターに連結されていることが好ましい。脳神経細胞内での選択的発現を促すプロモーターとしては、Thy1プロモーター、シナプシン-Iプロモーター、シヌクレイン1プロモーター、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIIα(CAMKIIα)プロモーター等を挙げることができる。中でも、脳神経細胞内での選択的発現を促すプロモーターは、Thy1プロモーターであることが特に好ましい。
<トランスジェニック非ヒト動物の作製方法>
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、公知の作出方法で作製することができる。例えば、胚性幹細胞(ES細胞)にDNAを導入した後にキメラを作製する方法、受精卵前核へマイクロインジェクションによりDNAを導入した後にキメラを作製する方法等を用いることができる。以下では、胚性幹細胞(ES細胞)にDNAを導入した後にキメラを作製する方法について説明する。
(i)ES細胞に導入するターゲティングベクターの構築
予め改変型ルシフェラーゼ遺伝子が挿入されたプラスミドベクター(例えば、pcDNA3 Venus-Akaluc(理研BRCから譲渡))からPCR等の方法により改変型ルシフェラーゼ遺伝子(Venus-Akaluc部分)を取得する。
次いで、改変型ルシフェラーゼ遺伝子を挿入したターゲティングベクターを得る。ターゲティングベクターを構築する際には、組織特異的プラスミドを選択してもよい。例えば、脳神経細胞内での選択的発現を促すプロモーターを連結した組織特異的プラスミドを用いてもよい。脳神経細胞内での選択的発現を促すプロモーターとしては、Thy1プロモーター、シナプシン-Iプロモーター、シヌクレイン1プロモーター、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIIα(CAMKIIα)プロモーター等を挙げることができる。中でも、脳神経細胞内での選択的発現を促すプロモーターはThy1プロモーターであることが特に好ましい。
改変型ルシフェラーゼ遺伝子を挿入したターゲティングベクターは、例えば、以下のフラグメントを連結した構成を有していてもよい。
フラグメント1)脳神経細胞で目的タンパク質の発現するThy1プロモーター
フラグメント2)改変型ルシフェラーゼをコードする遺伝子Venus-Akaluc cDNA
フラグメント3)プラスミドに組み込まれた遺伝子の有無を判定できるpUC18配列
フラグメント4)アンピシリン(amp)耐性遺伝子(ポジティブ選択用)
(ii)ES細胞へのターゲティングベクターの導入
ターゲティングベクターは、必要に応じて精製したものを用いることが好ましい。例えば、ターゲティングベクターを適当な制限酵素により直鎖化したものを分離し用いてもよい。ターゲティングベクターを非ヒト動物のES細胞に導入する際には、ES細胞にターゲティングベクターをエレクトロポレーションにより導入する。次いで、ターゲティングベクターが導入されたES細胞をマウス胚盤胞にマイクロインジェクションする。この際、少なくとも1個、通常は約10~15個のES細胞を胚盤胞の胞胚腔にインジェクトすることが好ましい。マイクロインジェクション後の胚を、仮親となる偽妊娠雌マウスの子宮に移植する。移植後の雌マウスを通常の飼育条件下で飼育し、仔マウス(キメラマウス)を出産させる。
仮親が産んだキメラマウス(創始マウス)を野生型マウスと交配させることで、改変型ルシフェラーゼを発現するトランスジェニックマウス(ヘテロ接合マウス(+/-))が得られる。さらに、このヘテロ接合マウス(+/-)同士を交配させることにより、ホモ遺伝子型マウス(+/+)を得てもよい。
トランスジェニック非ヒト動物の選別は、改変型ルシフェラーゼ遺伝子が、得られた産仔の染色体DNAに組み込まれているか否かを検出することにより行うことができる。当該検出は常法にしたがって行うことができ、例えば、産仔の尾片からDNA抽出した後、PCR法又はサザンブロット法等により、生殖細胞系列伝播を確認することができる。
<発光検出方法>
本発明は、上述したトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質を投与し、発現した改変型ルシフェラーゼと発光基質とを反応させる工程を含む、発光検出方法に関するものであってもよい。本発明の発光検出方法では、発光基質は経鼻投与されることが好ましい。
本発明の一実施形態のトランスジェニック非ヒト動物においては、改変型ルシフェラーゼを脳内において発現させることができる。この場合、本発明の発光検出方法は、トランスジェニック非ヒト動物の脳において発現した改変型ルシフェラーゼと、発光基質とを脳内において反応させる工程を含むことが好ましい。すなわち、本発明は、トランスジェニック非ヒト動物の脳において発現した改変型ルシフェラーゼと、発光基質とを脳内において反応させる工程を含む、脳内発光検出方法に関するものであってもよい。当該発光検出方法を用いることにより、脳からの発光シグナルを検出することができ、発光基質が脳に送達されたか否かを検出することができる。これにより、発光基質の投与方法(例えば、経鼻投与や経口投与、腹腔投与等)の違いによる送達効率等を調べることが可能となる。また、ルシフェラーゼの発光基質を薬剤に連結して投与した場合には、薬剤の送達状況をリアルタイムで検出することも可能となる。
本発明の発光検出方法を用いることにより、トランスジェニック非ヒト動物の生存を維持したまま、リアルタイムで発光を検出することができる。このため、ルシフェラーゼが脳などの所定の臓器に到達するまでの時間を測定することもできる。また、発光部位や発光強度を検出することで、薬剤の送達場所や送達量を検出することも可能となる。
本発明の発光検出方法の一実施形態では、さらに補助剤を投与する工程を含んでもよい。本明細書において、補助剤とは、発光基質や発光基質に連結した医薬が脳内に到達することを促進する剤をいう。具体的には、補助剤を用いることで、発光基質や発光基質に連結した医薬の到達量が、補助剤を用いなかった場合と比較して、1.2倍以上となることが好ましく、1.5倍以上となることがより好ましく、2.0倍以上となることがさらに好ましい。本発明の発光検出方法の一実施形態では、発光基質や発光基質に連結した医薬と共に補助剤を投与することで、発光基質や発光基質に連結した医薬をより効率よく脳内に送達することができる。補助剤としては、例えば、単糖や二糖、オリゴ糖、多糖(例えば、プルラン)といった糖質、脂質、リン脂質化合物、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、DNA化合物等を挙げることができる。
糖質としては、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース等のような単糖;マルトース、ラクトース、シュクロース、トレハロース、セルビオース等の二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、プルラン、澱粉、セルロース等の多糖;マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトール等のアルジトールを挙げることができる。本発明においては、補助剤として、例えば、マルトース、ラクトース、シュクロース、トレハロース、セルビオース等の二糖を用いることが好ましく、マルトース及びトレハロースから選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、トレハロースを用いることがさらに好ましい。
脂質としては、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、コレステリル-3β-N-(ジメチルアミノエチル)カルバメート(DC-chol)、ヘプタデカン-9-イル-8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタン酸エステル(SM-102)といった正電荷脂質;コレステロール、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG2000)、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリンといった中性脂質;ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンといった負電荷脂質を挙げることができる。
<スクリーニング方法>
本発明は、上述したトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質と補助剤を投与する工程と、発光検出工程と、を含む、補助剤のスクリーニング方法に関するものであってもよい。本発明の補助剤のスクリーニング方法では、発光基質や発光基質に連結した医薬をより効率よく脳内に送達するための補助剤をスクリーニングすることができる。これにより、医薬品の開発時等に適切な補助剤を低コストで選別することが可能となる。
また、本発明は、上述したトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質を結合した医薬を投与する工程と、発光検出工程と、を含む、医薬のスクリーニング方法に関するものであってもよい。本発明の医薬のスクリーニング方法では、脳内の分子や組織を標的とする医薬にルシフェラーゼの発光基質を結合して投与することで、医薬が脳内に到達したか否か、また、その到達量を解析することできる。これにより、脳内に到達可能な医薬を選別したり、当該医薬の投与量等を分析することが可能となる。なお、当該医薬は抗体を主成分とする医薬であることが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例)
(トランスジェニックマウスの作製)
<発現ベクターの構築>
Friedrich Miescher Institute, Basel, Switzerlandから譲渡された発現ベクターpThy1.2を、Journal of Neuroscience Methods 71 (1) 3-9 1997に記載の制限酵素で切断して使用した。
目的タンパク質(Akaluc)をコードするプラスミド遺伝子pcDNA3 Venus-Akaluc(非特許分文献1、理研BRCから譲渡)から、以下2つのプライマーセットを用いてVenus-Akaluc部分をPCRで増幅した。
Forward: 5’-cctagaggatctcgagatggtgagcaagggcgag-3’(配列番号5)
Reverse: 5’-gaggaaggacctcgagttacacggcgatcttgcc-3’ (配列番号6)
増幅した部分の大きさは、2376bpであり、最後の3bpが終始コドンであった。発現するタンパク質は791アミノ酸であった。
PCRで増幅したVenus-Akaluc部分のcDNAを発現ベクター内のXhoIサイトに挿入した(図1)。作製した発現ベクターの確認はシークエンスにより行った。このようにして、発現ベクターを構築した。なお、発現ベクターの構成は以下のとおりである。
1)脳神経細胞で目的タンパク質の発現するThy1プロモーター(配列番号4) 4113bp
2)発現目的のタンパク質をコードする遺伝子Venus-Akaluc cDNA 2376bp
3)プラスミドに組み込まれた遺伝子の有無を判定できるpUC18配列 2369bp
4)アンピシリン(amp)耐性遺伝子(ポジティブ選択用) 861bp
<トランスジェニックマウスの作製>
上記で得られた発現ベクターをApaIとEcoRIの酵素処理によって線状化し、100ng/μL濃度となるようにTE(10mM Tris-HCl pH8.0、1mM EDTA・Na2)に溶解した。次いで、Gene Pulser(0.4cm電極距離で800Vと3mF Bio-Rad)によってES細胞にエレクトロポレーションを行った。
マウス胚盤胞株129由来のE14細胞をES細胞系として用いた(Hooper et al.,Nature 326, 292-295 1987)。細胞培養と細胞への打ち込みは、Itohara et al.,Cell 72, 337-348 199に従って行った。キメラマウスの作製は、Nature 309, 255-256, 1984に記載された方法に準じて行った。交配後3.5日のC57BL/6J胚盤胞に、ES細胞をマイクロインジェクションした。注入後、胚を、偽妊娠ICRマウスの子宮に移した。得られたキメラマウスについて目視により毛色を確認後、C57BL/6Jマウスと更に交雑させ、ヘテロ接合マウス(トランスジェニックマウス)を作製した。なお、本明細書では、上記手順で得られたトランスジェニックマウスを、脳内可視化マウス(visible intrabrain mouse、以下Vintraマウス)と呼ぶこともある。
トランスジェニックマウスの遺伝子型は、尾から調製したゲノムDNAのPCR解析によって決定した。解析には、以下2つのプライマーセットを用いた。
Forward: 5’-cctagaggatctcgagatggtgagcaagggcgag-3’ (配列番号7)
Reverse: 5’-ctggctgacctgtagctttcc -3’ (配列番号8)
PCR産物の大きさは230bpであった(図2)。
<解析>
得られたトランスジェニックマウスを、温度約25℃、12時間/12時間の明暗サイクル、自由飲水、自由摂食の条件下で飼育し、系統を維持した。その後、生理食塩水中にアカルミネTM n塩酸塩(10 mg、018-26703、富士フイルム和光純薬(株))を3~100μMの各濃度となるように溶解し、ルシフェラーゼの発光基質溶液を作製した。その後、各濃度の溶解液10μLをマイクロピペットを用いてマウスに経鼻投与した。また上記溶解液100μLをマウスに腹腔内投与した。
上記溶解液を投与したマウスについて、IVIS(Lumina XRMS SeriesIII、パーキンエルマー社製)を用いてin vivo観察を行った。観察中はイソフルランガス2%を使用し、マウスを維持した。発光測定は、脳領域のtotal flux強度(一秒あたりのフォトン数)を指標にして行った。露光時間は60秒、カメラの絞りは1で撮影を行った。撮影は5分ごとに約1~2時間行った。
図3では、溶解したアカルミネTM n塩酸塩 1000倍希釈(3 μM)10 μLを、トランスジェニックマウス(Vintraマウス)に経鼻投与(上段)した結果を示す。図3では、写真と発光イメージを重ね合わせて表示しており、経鼻投与後、Vintraマウスの鼻先が発光し、15分後脳内にも弱いシグナルが観察された(上段 最右図)。下段では、溶解したアカルミネTM n塩酸塩 1000倍希釈(3 μM)100 μL腹腔内投与した結果を示している。腹腔内投与後10分で脳内にも強いシグナルが観察された。
アカルミネTM n塩酸塩を与えた直後から、Vintraマウス(+)では鼻先に発光が認められた。一方、通常のマウス(Vintraマウス(-))では同様の操作を行っても発光は観察されなかった(図4)。
次にアカルミネTM n塩酸塩の濃度における脳送達の効果を検討した(図5)。まず、アカルミネTM n塩酸塩を3μM、6μM、30μMの濃度で溶解した。Vintraマウス(+)および通常のマウス(Vintraマウス(-))に、測定開始から0分経過時に3μM濃度のアカルミネTM n塩酸塩溶液を5μL経鼻投与し、25分経過時に6μM濃度のアカルミネTM n塩酸塩溶液を5μL経鼻投与し、50分経過時に30μM濃度のアカルミネTM n塩酸塩溶液を5μL経鼻投与した。図4に示されているように、0分、25分、50分経過時のVintraマウス(+)では鼻先がアカルミネTM n塩酸塩に応じて発光していることが観察された。特に30μM濃度のアカルミネTM n塩酸塩溶液を経鼻投与したVintraマウス(+)では、60分、65分、70分経過時に赤丸で囲った頭蓋部分で発光シグナルが観察された。そして、これらの結果から経鼻投与後10分程度で脳内に送達されることが示唆された。
以上の結果をもとに、定量評価を行った。頭蓋部分に相当する(赤丸)部分の発光強度はVintraマウス(+)(太線)ではアカルミネTM n塩酸塩濃度に応じて高くなった(図6)。特に最高濃度の30μMのアカルミネTM n塩酸塩溶液を投与した場合、3μMのアカルミネTM n塩酸塩溶液を投与した場合に比べ約8倍のアカルミネTM n塩酸塩が脳内へ送達された。このように、Akalucの経鼻投与量に比例して発光強度が大きくなることが確認された(図7)。一方、通常のマウス(Vintraマウス(-))(細線)ではこのような変化は認められなかった。なお、データは平均±標準偏差で表し、2群間の解析には Student t 検定、3群間以上の解析には ANOVA検定を用い、有意水準は p< 0.05 とした。
<補助剤の検討>
上記の可視化定量システムを利用して、天然糖質のうち二糖類である、麦芽糖(マルトース)もしくはトレハロースをアカルミネTM n塩酸塩と混合したとき、アカルミネTM n塩酸塩の脳送達への影響を検討した。まず、アカルミネTM n塩酸塩が15μMの溶液と、アカルミネTM n塩酸塩が15μM、マルトースが50mMの濃度となる混合溶液1と、アカルミネTM n塩酸塩が15μM、トレハロースが50mMの濃度となる混合溶液2を作製した。Vintraマウス(+)および通常のマウス(Vintraマウス(-))に、測定開始から0分経過時に15μM濃度のアカルミネTM n塩酸塩溶液を5μL経鼻投与し、20分経過時に混合溶液1(アカルミネTM n塩酸塩15μM+マルトース50mM)を5μL経鼻投与し、50分経過時に混合溶液2(アカルミネTM n塩酸塩15μM+トレハロース50mM)を5μL経鼻投与した。図8に示されているように、0分、20分、50分経過時のVintraマウス(+)では鼻先が発光していることが観察され、10分程度経過時には、経過時に赤丸で囲った頭蓋部分で発光シグナルが観察された。なお、通常のマウス(Vintraマウス(-))では発光が確認されなかった。
以上の結果をもとに、定量評価を行った。頭蓋部分に相当する(赤丸)部分の発光強度は、Vintraマウス(+)(太線)ではアカルミネTM n塩酸塩単独のときよりもマルトースを加えた場合において約2.0倍程度高まった。また、Vintraマウス(+)(太線)ではアカルミネTM n塩酸塩単独のときよりもトレハロースを加えた場合において約3.5倍程度高まった(図9)。これらの結果から、マルトースやトレハロースを加えると、アカルミネTM n塩酸塩が脳に送達されやすくなることが示唆された。なお、通常のマウス(細線)ではこのような変化は認められなかった。

Claims (15)

  1. 改変型ルシフェラーゼ遺伝子を導入した、トランスジェニック非ヒト動物であって、
    前記改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、野生型D-ルシフェラーゼよりも高い発光強度で発光基質を発光させる改変型ルシフェラーゼを発現する、トランスジェニック非ヒト動物。
  2. 前記改変型ルシフェラーゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  3. 前記改変型ルシフェラーゼは、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、T39A、E48Q、I51V、K68R、L86S、Q134R、I136V、Q147R、G175S、N229Y、I231N、F294C、F295L、N308S、H310R、H332R、S347N、I349V、L350M、D357R、A361S、D377V、S456G、N463Y、K524R、L526S、I540T及びG545Dよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸置換を含む、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  4. 前記改変型ルシフェラーゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくともS347N及びN229Yよりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸置換を含む、請求項3に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  5. 前記改変型ルシフェラーゼは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  6. 前記改変型ルシフェラーゼは、人工酵素Akalucである、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  7. 前記改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、脳神経細胞内での選択的発現を促すプロモーターに連結されている、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  8. 前記プロモーターが、Thy1プロモーター、シナプシン-Iプロモーター、シヌクレイン1プロモーター又はカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIIα(CAMKIIα)プロモーターである、請求項7に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  9. 前記改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、配列番号2に示される塩基配列を有し、前記改変型ルシフェラーゼ遺伝子は、Thy1プロモーターに連結されている、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  10. トランスジェニック非ヒト動物がマウスである、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質を投与し、発現した改変型ルシフェラーゼと前記発光基質とを反応させる工程を含む、発光検出方法。
  12. 前記トランスジェニック非ヒト動物の脳において前記改変型ルシフェラーゼと前記発光基質とを反応させる工程を含む、請求項11に記載の発光検出方法。
  13. さらに補助剤を投与する工程を含む、請求項11に記載の発光検出方法。
  14. 請求項1~10のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質と補助剤を投与する工程と、発光検出工程と、を含む、補助剤のスクリーニング方法。
  15. 請求項1~10のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物に、ルシフェラーゼの発光基質を結合した医薬を投与する工程と、発光検出工程と、を含む、医薬のスクリーニング方法。
JP2022105625A 2022-06-30 2022-06-30 トランスジェニック非ヒト動物、発光検出方法、補助剤のスクリーニング方法及び医薬のスクリーニング方法 Pending JP2024005444A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022105625A JP2024005444A (ja) 2022-06-30 2022-06-30 トランスジェニック非ヒト動物、発光検出方法、補助剤のスクリーニング方法及び医薬のスクリーニング方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022105625A JP2024005444A (ja) 2022-06-30 2022-06-30 トランスジェニック非ヒト動物、発光検出方法、補助剤のスクリーニング方法及び医薬のスクリーニング方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024005444A true JP2024005444A (ja) 2024-01-17

Family

ID=89539832

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022105625A Pending JP2024005444A (ja) 2022-06-30 2022-06-30 トランスジェニック非ヒト動物、発光検出方法、補助剤のスクリーニング方法及び医薬のスクリーニング方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024005444A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN107205368A (zh) 具有人源化分化簇47基因的非人动物
ES2908669T3 (es) Animales no humanos que tienen un gen ANGPTL8 modificado genéticamente
JP2021169461A (ja) 寿命に関する動物モデル並びに寿命を延ばす及び腫瘍化を阻害する関連方法
US7030291B2 (en) CYT28 serpentine receptor disruptions, compositions and methods relating thereto
US20200359610A1 (en) Humanized transgenic animal
EP2621268B1 (en) Model for muscle atrophy
US5589392A (en) Nucleic acid construct encoding a nuclear transport peptide operatively linked to an inducible promoter
JP2024005444A (ja) トランスジェニック非ヒト動物、発光検出方法、補助剤のスクリーニング方法及び医薬のスクリーニング方法
JP2011206055A (ja) テトラサイクリン系抗生物質によるタンパク質分解制御法
US11882816B2 (en) Genetically engineered non-human mammal, construction method therefor and use thereof
US7041869B2 (en) Transgenic luciferase mouse
US20060206950A1 (en) In vivo imaging of e2f-fegulated bioluminescent proteins
WO2009070636A2 (en) Engineered cells, imaging reporter gene/probe systems, and methods of imaging
TWI664290B (zh) 非肥胖型糖尿病鼠及其應用
JP2019092417A (ja) 遺伝子改変非ヒト動物及びその使用
KR102296075B1 (ko) epcam 유전자 변이 제브라피쉬 및 이의 용도
WO2023026961A1 (ja) 脂質異常症モデル動物
JP5240756B2 (ja) 軟骨疾患のモデル非ヒト動物
US7329795B2 (en) Model animals non-responsive to mycobacterial-origin lipoprotein/lipopeptide
Singeorzan DIPLOMARBEIT/DIPLOMA THESIS
Albayrak DIPLOMARBEIT/DIPLOMA THESIS
EP1699289B1 (en) Non-human mammal comprising a modified serca2 gene and methods, cells, genes, and vectors thereof
JP2023006214A (ja) Timothy症候群のモデル動物
CN117356520A (zh) 自发银屑病及银屑病性关节炎动物模型的构建及应用
JP2001069871A (ja) ヒスタミン欠如動物