JP2023547507A - 標的細胞限定的で共刺激性の二重特異性かつ2価の抗cd28抗体 - Google Patents

標的細胞限定的で共刺激性の二重特異性かつ2価の抗cd28抗体 Download PDF

Info

Publication number
JP2023547507A
JP2023547507A JP2023526882A JP2023526882A JP2023547507A JP 2023547507 A JP2023547507 A JP 2023547507A JP 2023526882 A JP2023526882 A JP 2023526882A JP 2023526882 A JP2023526882 A JP 2023526882A JP 2023547507 A JP2023547507 A JP 2023547507A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
binding
antigen
antibody
binding molecule
cell
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2023526882A
Other languages
English (en)
Inventor
ザリー,ヘルムート
ユング,グントラム
プフリューグラー,マルティン
ツェクリ,ラティファ
マンツ,ティモ
Original Assignee
ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム スチフトゥング デス エッフェントリヒェン レヒツ
エーベルハルト カールス ウニベルジテート テュービンゲン
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム スチフトゥング デス エッフェントリヒェン レヒツ, エーベルハルト カールス ウニベルジテート テュービンゲン filed Critical ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム スチフトゥング デス エッフェントリヒェン レヒツ
Publication of JP2023547507A publication Critical patent/JP2023547507A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/46Hybrid immunoglobulins
    • C07K16/468Immunoglobulins having two or more different antigen binding sites, e.g. multifunctional antibodies
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/2803Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against the immunoglobulin superfamily
    • C07K16/2818Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against the immunoglobulin superfamily against CD28 or CD152
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/28Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • C07K16/2896Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against receptors, cell surface antigens or cell surface determinants against molecules with a "CD"-designation, not provided for elsewhere
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/505Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising antibodies
    • A61K2039/507Comprising a combination of two or more separate antibodies
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/30Immunoglobulins specific features characterized by aspects of specificity or valency
    • C07K2317/31Immunoglobulins specific features characterized by aspects of specificity or valency multispecific
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/30Immunoglobulins specific features characterized by aspects of specificity or valency
    • C07K2317/35Valency
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/54F(ab')2
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/55Fab or Fab'
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/60Immunoglobulins specific features characterized by non-natural combinations of immunoglobulin fragments
    • C07K2317/62Immunoglobulins specific features characterized by non-natural combinations of immunoglobulin fragments comprising only variable region components
    • C07K2317/622Single chain antibody (scFv)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/70Immunoglobulins specific features characterized by effect upon binding to a cell or to an antigen
    • C07K2317/73Inducing cell death, e.g. apoptosis, necrosis or inhibition of cell proliferation

Abstract

本発明は、2価でありかつ2つのCD28結合部位と少なくとも1つの標的結合部位とを含む、新規二重特異性抗CD28抗体フォーマットを提供する。本発明の二重特異性抗CD28抗体は、その厳密に標的細胞に限定された共刺激活性のために驚くほど有利である。本発明の二重特異性CD28抗体は、単独で、またはCD3/T細胞受容体シグナルを誘導するさらなる二重特異性抗体と組み合わせて、疾患の処置への使用のために提供される。【選択図】図11

Description

本発明は、2価でありかつ2つのCD28結合部位と少なくとも1つの標的結合部位とを含む、新規二重特異性抗CD28抗体フォーマットを提供するものである。本発明の二重特異性抗CD28抗体は、その厳密に標的細胞に限定された共刺激活性のために驚くほど有利である。本発明の二重特異性CD28抗体は、単独で、またはCD3/T細胞受容体シグナルを誘導するさらなる二重特異性抗体と組み合わせて、疾患の処置への使用のために提供される。
説明
T細胞の活性化は、抗原特異的な免疫応答の開始のための中心である。過去数十年のうちに、このプロセスを形成する数多くのT細胞表面受容体が同定されている。最も重要なのは、抗原特異的T細胞受容体(TCR)/CD3複合体である。該TCRによる、MHC分子により提示される抗原ペプチドの結合時に、該複合体の該CD3部分を介したシグナル(「シグナル1」とも称される)がT細胞活性化を開始する[1]。重要なことに、有効かつ持続的な応答のためには、CD28、4-1BBまたはOx40などの受容体を介した追加の共刺激性シグナル(「第2シグナル」)が必要である[2、3]。事実、かかるシグナルの非存在下では、単独のTCR/CD3刺激は最終的にT細胞の非応答性または細胞死すら招く可能性があり、またそれ故に、共刺激性シグナルは効果的なT細胞応答のための主要な必要条件であるように思われる[4、5]。
T細胞活性化に関与する表面受容体の同定は、腫瘍細胞に対してT細胞を動員することを目的とする2つの機能的に非常に類似した戦略、すなわち、
・CAR T細胞に、腫瘍関連抗原(TAA)に結合する抗体部分と、CD3分子の細胞内シグナル伝達モチーフとを含むキメラ受容体をトランスフェクトする戦略[7]
・同様に、TAAならびにCD3分子に結合する二重特異性抗体(bsAb)(本明細書中ではbsAbCD3と表記する)を構築する戦略[8]
の基礎である[6]。
いずれのタイプの試薬も、T細胞の抗原特異性に関わらず該T細胞を腫瘍細胞に再指向させる能力があり、また80年代後半には既に提案されている[9~13]。CD19を指向する抗体部分を備えたそれらは、今日ではB細胞由来の白血病およびリンパ腫の処置としてしっかりと確立されている。しかし、両試薬タイプは、重大な副作用、すなわち、しばしば重度でありかつ用量制限を要するサイトカイン放出症候群をもたらす過度の全身性のT細胞活性化[14]もまた共有している。とはいえ、「第1世代」のCAR T細胞はCD3由来のシグナル伝達モチーフのみを含有しており治療有効性が限定的であった、という注目すべき相違点も存在する。「第2世代」のCAR構築物に共刺激性分子CD28および/または4-1BB由来の追加モチーフを備え付けた場合のみ、それらは永続的な治療効果を発揮する能力があった[15]。注目すべきことに、二重特異性抗体とTAA×CD3およびTAA×CD28との組み合わせによる適用が80年代後半に既に提案されている[16]が、ドイツ規制当局の承認を得る段階まで発展しなかった。これはかかる手法を実現するために必要とされる相当な技術的努力のためだけではなく、2006年のいわゆるTegenero事件の悪影響も原因となっており、その際、6人の健常ボランティアがスーパーアゴニストCD28抗体の注入中に重篤なサイトカイン放出症候群を呈し、参加者全員に緊急の集中治療が必要となった[17]。このことは、臨床応用時の許容できない副作用を回避するためには、T細胞刺激抗体のアゴニスト活性が標的細胞に限定されるべきであること、つまり、各標的抗原への結合に依存すべきであることを劇的に例示している。実際に、これは(i)標的細胞によるものではなくむしろFcR発現細胞によるT細胞活性化を阻止するために適切なFc除去(Fc-depleted)抗体フォーマットを選択すること、ならびに(ii)刺激抗体の親和性および/または結合価の慎重な設計により達成しうる。
組換え抗体技術は、二機能性および多機能性抗体ベースの分子の構築用の複数のフォーマットを提供する[18]。基準bsAbであるブリナツモマブは、グリシンセリンリンカーにより融合された2つの一本鎖抗体からなる、いわゆる二重特異性T細胞誘導(BiTE)フォーマットのCD19×CD3特異性を示す抗体である。このフォーマットは、そのFc部分の欠損およびその一価でかつやや低い親和性を有するCD3結合部により、標的細胞への限定を維持している。しかし、BiTE分子は、約1時間という相応に短い血清半減期をもたらす低分子量を有する。これは煩雑な連続注入レジメンを必要とする。CH2ドメイン中の選択した変異によりFcを減弱化した全長IgGベースのフォーマットは、かなり長い半減期という利点を提供するが、特にそのT細胞刺激部分が2価でありかつCD3よりむしろCD28を指向するのであれば、慎重な設計を必要とする。これは一般に、2価形態のCD3抗体はT細胞を活性化しないからである[19]。それらは、例えばFcR発現細胞への結合による固定化を必要とする。対照的に、CD28抗体は可溶性2価抗体として効率的な共刺激を伝達しうる[20]。従って、原則として、2価CD28結合部を含有するTAA×CD28抗体を用いて標的細胞に限定された活性を得ることは困難であるように思われる。
本出願において、本発明は、これらの試薬の臨床適用中の全身性T細胞活性化を回避するために完全に標的細胞に限定された2価CD28結合部を有する二重特異性TAA×CD28抗体について説明するものである。
たとえ標的細胞への限定が達成されたとしても、選択される標的抗原が(ほぼ全ての場合に)正常で健常な組織上で発現される限り、特異性の課題が残る。これはT細胞の望ましくない「off-tumor on target」活性化をもたらす。この課題は、正常なB細胞上および脳の壁細胞上に発現される抗原であるCD19を標的とするBsAbCD3であるブリナツモマブの周知の副作用により例示されている[21]。これは特に脳組織における全身性T細胞活性化と、それに伴う用量制限副作用をもたらす。本明細書中で例示したこの特異性の課題に取り組むために、本発明者らは、本出願に関して、腫瘍細胞上ならびに腫瘍血管系上に発現されるTAAであるB7H3を指向するTAA×TCR/CD3bsAbと共に組み合わせた標的細胞限定BiCoの使用もまた提案する。これらのbsAbCD3は、単独では弱い、副次的細胞***促進性の(submitogenic)T細胞活性化を誘導するのみであり、従って該BiCoの存在に大きく依存する。あるいは、副次的細胞***促進性のCD3刺激は、適切な低用量の細胞***促進性bsAbCD3により達成されるかもしれない。いずれにせよ、前記2つの成分が2つの異なる標的抗原を指向するのであれば、かかるbsAbの組み合わせの特異性は、それらの活性が2つの異なる標的抗原の同時存在に依存することから、大きく増大するであろう。
まとめると、腫瘍血管系上に提示されるかかる腫瘍関連抗原を標的化することで達成されうる、腫瘍塊の効率的なターゲティングを可能にするさらなる治療選択肢が必要とされている。従って、本発明は、がん性疾患の処置に使用できる抗体を同定しようと努めるものである。
本発明の簡単な説明
全般的に、かつ簡単な説明として、本発明の主な態様は以下のように記載することができる。
第1態様では、本発明は、対象における疾患の処置への使用のための、少なくとも2つの第1抗原結合部位と少なくとも1つの第2抗原結合部位とを含む、少なくとも二重特異性である結合分子であって、ここで
・該少なくとも2つの第1抗原結合部位は、T細胞特異的表面糖タンパク質CD28のエピトープに特異的に結合する能力があり、かつ
・該少なくとも1つの第2抗原結合部位は、該対象において該疾患に関連する細胞上または細胞内で発現される抗原標的タンパク質のエピトープに結合する能力があり、
ここで該処置は該対象への該結合分子の投与を含む、
該結合分子に関するものである。
代替的な態様では、本発明はまた、少なくとも配列RNYVTGFDY(配列番号16)、またはこの配列と比較すると3、2以下、好ましくは1以下のアミノ酸変異を伴う配列を有する重鎖相補性決定領域(CDR)3、および配列HQYLSSYT(配列番号20)、またはこの配列と比較すると3、2以下、好ましくは1以下のアミノ酸変異を伴う配列を有する軽鎖CDR3、を含むエンドグリン結合分子にも関するものである。
第2態様では、本発明は、前記第1態様のいずれか1つの結合分子、または該結合分子の抗原結合フラグメントもしくはモノマー、例えば重鎖もしくは軽鎖をコードする配列を含む単離された核酸に関するものである。
第3態様では、本発明は、前記第2態様の核酸と、(宿主)細胞における前記コード化結合分子、または該結合分子の成分(例えば抗体の重鎖もしくは軽鎖)の発現を可能にする1以上の追加の配列特徴とを含む核酸構築物(NAC)に関するものである。
第4態様では、本発明は、前記第2または第3態様による核酸またはNACを含む組換え宿主細胞に関するものである。
第5態様では、本発明は、(i)前記第1態様の結合分子、または(ii)前記第2もしくは第3態様の核酸もしくはNAC、または(iii)前記第4態様による組換え宿主細胞、ならびに製薬上許容可能な担体、安定剤および/または賦形剤を含む医薬組成物に関するものである。
第6態様では、本発明は、パッケージまたは医薬組成物のキットであって、該キットが別々の容器に(i)前述の態様のいずれか1つに列挙した単離された結合分子、該単離された結合分子をコードする単離された核酸、および/またはかかる核酸もしくは単離された結合分子を含む組換え宿主細胞、ならびに(ii)前述の態様のいずれか1つに列挙した単離されたさらなる結合分子、該単離されたさらなる結合分子をコードする単離された核酸、および/またはかかる核酸または単離されたさらなる結合分子を含む組換え宿主細胞、を含む該パッケージまたは医薬組成物のキットに関するものである。
第7態様では、本発明は、医薬への使用のための成分であって、ここで該成分が(i)前記第1態様の結合分子、または(ii)前記第2もしくは第3態様の核酸もしくはNAC、または(iii)前記第4態様による組換え宿主細胞、および(iv)前記第5もしくは第6態様による医薬組成物もしくはキット、からなるリストより選択される、該医薬への使用のための成分に関するものである。
本発明の詳細な説明
以下に、本発明の要素を記載する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらはさらなる実施形態を創出するために任意の様式および任意の数で組み合わせうることを理解されたい。様々に記載された実施例および好適な実施形態は、本発明を明確に記載された実施形態のみに限定するものと解釈してはならない。本記載は、明確に記載された実施形態のうちの2つ以上を組み合わせるか、または明確に記載された実施形態のうちの1つ以上を任意の数の開示された要素および/もしくは好適な要素と組み合わせる実施形態を支持かつ包含するものと理解されたい。さらに、本出願におけるあらゆる記載された要素の任意の並べ替えおよび組み合わせは、文脈上他を意味しない限り、本願の記載により開示されているとみなすべきである。
第1態様では、本発明は、少なくとも2つの第1抗原結合部位と少なくとも1つの第2抗原結合部位とを含む、少なくとも二重特異性である結合分子であって、ここで
・該少なくとも2つの第1抗原結合部位は、T細胞特異的表面糖タンパク質CD28のエピトープに特異的に結合する能力があり、かつ
・該少なくとも1つの第2抗原結合部位は、疾患に関連する細胞上または細胞内で発現される抗原標的タンパク質のエピトープに結合する能力がある、
該結合分子に関するものである。
本発明の結合分子は、好ましくは対象における疾患の処置への使用のためのものであり、ここで該処置は、該対象への該結合分子の投与を含む。
幾つかの特定の実施形態では、前記少なくとも2つの第1抗原結合部位および/または前記少なくとも1つの第2抗原結合部位は抗体または抗体様分子に由来するものであり、かつここで、該少なくとも2つの第1抗原結合部位は各々がF(ab’)またはFabではない抗体の抗原結合フラグメントとして提供され、また好ましくは一本鎖構築物であり、最も好ましくは一本鎖Fv(scFv)である。
本発明の幾つかの実施形態では、前記結合分子は、抗原標的タンパク質を発現する第2細胞の非存在下でCD28陽性免疫細胞(例えばT細胞)である第1細胞と接触させる場合、CD28シグナル伝達を誘導せず、また好ましくは該免疫細胞(T細胞)を活性化しない。
本発明の幾つかの好適な実施形態では、前記抗原標的タンパク質は、増殖性疾患に関連する細胞上に発現されるタンパク質、寄生生物、ウイルスまたは細菌などの病原性生物に関連するタンパク質または他の分子から選択される。例えば、該抗原標的タンパク質をエンドグリン、CD105、PSMA、FLT3、B7H3、またはFABから選択してもよい。
幾つかの実施形態では、前記少なくとも2つの第1抗原結合部位の各々が、直接、例えば共有結合的または非共有結合的に、前記少なくとも1つの第2抗原結合部位と連結されていてもよい。
前記結合分子の好適な実施形態は、少なくとも2つの第2抗原結合部位を含む。
本発明のある好適な実施形態では、本明細書中に開示した結合分子は、正確に2つ、および2つ以下の第1抗原結合部位と、正確に1つまたは2つ、および1つまたは2つ以下の第2抗原結合部位を含む。
本発明の他の好適な実施形態は前記第1態様の結合分子に関するものであり、ここで前記少なくとも2つの第1抗原結合部位はCD28上の同一エピトープに結合し、好ましくはここで前記少なくとも2つの抗原結合部位は同一である。
幾つかの実施形態では、前記少なくとも2つの第1抗原結合部位のうちの少なくとも1つと前記少なくとも1つの第2抗原結合部位とが、好ましくはIgGの、1つ以上の抗体由来ヒト定常ドメインを含むタンパク質リンカーにより互いに結合していること、例えばそれらがヒトIgG由来のヒンジ、CH1、CH2および/またはCH3を介して結合していることが好ましい場合がある。
本発明の好適な実施形態では、前記少なくとも2つの第1抗原結合部位は抗体重鎖配列および抗体軽鎖配列(好ましくは少なくともCDR1~CDR3)を含み、各々が配列番号2、3、4、もしくは5に示す抗体配列中に含まれるC末端結合部位(scFv)(または配列番号7/8および9に示す抗体配列中に含まれるN末端結合部位)に由来するものであり、かつ該C末端結合部位(または該N末端結合部位)と同一の抗原に競合的に結合する。
好適な実施形態では、本発明は、結合分子であって、ここで前記少なくとも1つの第2抗原結合部位が抗体重鎖配列および抗体軽鎖配列を含み、各々が配列番号1および2/3からなる抗体中に含まれるN末端結合部位(または配列番号7/8および9に示す抗体配列中に含まれるC末端結合部位)に由来するものであり、かつ該N末端結合部位(または該C末端結合部位)と同一の抗原(エピトープ)に競合的に結合する、該結合分子に関するものである。
本発明の好適な実施形態では、前記結合分子は免疫細胞および疾患に関連する細胞に特異的に結合し、好ましくはここで、該免疫細胞は細胞媒介性免疫応答、例えば細胞傷害性免疫応答またはヘルパー細胞媒介性免疫応答に関与する免疫細胞である。かかる免疫細胞は細胞傷害性細胞またはヘルパー細胞、例えばCD28およびCD3(およびTCR)を発現する細胞であり、かつ好ましくはT細胞である。
本発明の二重特異性抗体に使用され、かつCD28への結合を媒介する抗体可変重および軽鎖配列は、好ましくは、幾つかの実施形態ではCD28抗体クローンhu9.3.8.V1に由来するものである。特に好適なのは、図12または配列番号24に示す重および軽鎖配列中にアミノ酸の改変を有する、かかる抗CD28 scFv構築物である。好ましくは、本発明に関して使用される抗CD28 scFvは、配列番号24と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むべきであり、好ましくはここで、かかる抗CD28 scFv、または配列バリアントは、少なくとも配列番号24に示す位置3にアミノ酸Qを含み、かつ配列番号24に示す位置16にアミノ酸Qを含み、かつ配列番号24に示す位置64にアミノ酸Qを含み、かつ配列番号24に示す位置67にアミノ酸Fを含み、かつ配列番号24に示す位置160にアミノ酸Tを含む。
本発明のある特定の代替的な態様において、同様に提供されるのは、その重および軽鎖配列(リンカーを除く)中に配列番号24に示す配列に対して少なくとも90%の配列同一性、好ましくは95%の配列同一性、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD28 scFvであり、場合によってはここで該リンカーの配列は可変長の4GSリンカーであってもよく、好ましくはここで、かかる抗CD28 scFvは配列番号24に示す配列を有する。
本発明による医学的利用のためには、対象は、好ましくはCD3/TCRシグナル伝達が処置により、または抗原タンパク質などの疾患関連抗原に応答して内因的に活性化されることを特徴とする。この関連で、該処置は、疾患に関連する細胞に対する免疫細胞の刺激および/または活性化、例えばT細胞の活性化および/または刺激をさらに含むことが好ましい。
さらなる1実施形態では、本発明の結合分子であって、ここで該結合分子が同数の第1および第2抗原結合部位を含み、かつここで該少なくとも2つの第1抗原結合部位の一方が該少なくとも2つの第2抗原結合部位の一方の軽鎖(または代替的に重鎖)に末端で(ペプチド結合を介して)連結されており、かつここで該少なくとも2つの第1抗原結合部位の他方が該少なくとも2つの第2抗原結合部位の他方の軽鎖(または代替的に重鎖)に末端で(ペプチド結合を介して)連結されている、該結合分子が好適である。この実施形態において、末端で連結されているとは、本明細書中の他の箇所に記載したような直接的な、またはペプチドリンカー配列を介したアミノ酸鎖への連結を指すものとする。
本発明の結合分子は、さらなる好適な実施形態では、2つの抗体重鎖配列と、2つの抗体軽鎖配列とを含み、かつここで
・前記少なくとも2つの第1抗原結合部位の一方が該2つの抗体軽鎖配列の一方のC末端に共有結合的に連結されており、かつ該少なくとも2つの第1抗原結合部位の他方が該2つの抗体軽鎖配列の他方のC末端に共有結合的に連結されているか、または
・該少なくとも2つの第1抗原結合部位の一方が該2つの抗体重鎖配列の一方のC末端に共有結合的に連結されており、かつ該少なくとも2つの第1抗原結合部位の他方が該2つの抗体重鎖配列の他方のC末端に共有結合的に連結されている。
本発明は、IgGベースの抗原結合部位と、(よりフレキシブルな)scFv抗CD28結合部位とを含む、新規CD28二重特異性抗体フォーマットを提供するものである。この関連で、好適な実施形態における本発明は、結合分子であって、ここでその複数の結合部位がペプチドリンカーなしで、または5個以下のアミノ酸を有する短いペプチドリンカーにより、または少なくとも6個、好ましくは最大50個のアミノ酸を有する長いペプチドリンカーを介して連結されており、ここでさらに好ましくは該ペプチドリンカーが(GGGGS)リンカーであり、かつnが2以上、例えばn=2~40、2~30、または2~20である、該結合分子に関するものである。
本発明のさらなる1実施形態では、前記リンカーは、n=3~6、好ましくは4である上記式の配列と、該配列の末端に追加の-GGS-とを有していてもよい。
従って、本発明の結合分子であって、ここで前記少なくとも1つの第2抗原結合部位がFab、F(ab’)、または最も好ましくはIgGを含む、該結合分子が好適である。
本発明の別の特定の実施形態では、CD28を指向する前記結合分子の使用は、非活性化T細胞においてCD3/TCRシグナル伝達軸の活性化を媒介するさらなる結合分子と組み合わせて使用される。従って、好適な処置は、(i)二重特異性であり、かつCD3および/もしくはT細胞受容体(TCR)への結合を介するなどしてT細胞に特異的に結合(およびT細胞を活性化)する能力があるさらなる結合分子、またはT細胞活性化のためのシグナルを提供もしくは増強する能力がある任意の他の試薬、例えば(ii)キメラ抗原受容体(CAR)などの抗原受容体(該受容体は抗原標的タンパク質に特異的に結合する能力がある)を発現する遺伝子改変免疫細胞(異種もしくは自己T細胞)、または(iii)感染因子もしくはがん細胞由来の抗原構造(TAAもしくはTSA)を提供するワクチンまたは(iv)チェックポイント分子、例えばPD1、PDL1、CTLA4などを介して抑制性「第2シグナル」を遮断する試薬、の連続または同時投与を含む。かかる試薬はチェックポイント阻害剤と称される。
かかるさらなる結合分子は、少なくとも二重特異性であり、かつ少なくとも1つの第3抗原結合部位と少なくとも1つの第4抗原結合部位とを含み、ここで
・該少なくとも1つの第3抗原結合部位は、CD3および/またはT細胞受容体(TCR)(CD3/TCR)に特異的に結合する能力があり、かつ
・該少なくとも1つの第4抗原結合部位は、対象において疾患に関連する細胞上または細胞内で発現されるさらなる抗原標的タンパク質のエピトープに特異的に結合する能力がある。
前記結合分子と前記さらなる結合分子とを組み合わせた使用を目的とする本発明との関連において、前記抗原標的タンパク質および前記さらなる抗原標的タンパク質は、(i)同一であるか、または(ii)異なりはするが互いに空間的に密に近接している、例えば疾患に関連する同一細胞上に発現されるかもしくは同一疾患組織に位置する、例えば同一腫瘍環境で発現される。この実施形態では、両結合分子に対する2つの異なる抗原タンパク質の選択によって、処置の際のより厳密な標的細胞への限定とT細胞活性化のより厳格な調節が可能になるため、選択肢(ii)が好適である。
本発明の化合物/組成物および方法により処置する疾患は、好ましくは増殖性疾患、好ましくはがんなどのがん疾患、例えば肺がん、乳がん、大腸がん、胃がん、肝細胞がん、膵臓がん、卵巣がん、黒色腫、骨髄腫、腎臓がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、膀胱がんまたは前立腺がんから選択される増殖性疾患、特に黒色腫、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、膀胱がん(例えば尿路上皮がん)、腎臓がん(例えば腎細胞がん)、頭頸部がん(例えば該頭頸部の扁平上皮がん)およびホジキンリンパ腫からなるリストより選択される増殖性疾患である。好ましくは、該増殖性疾患は黒色腫、または肺がん(例えば非小細胞肺がん)、好ましくは標的抗原タンパク質の発現に関して陽性のがんである。
CD28を標的とする抗原結合タンパク質を含む結合分子
本明細書中で使用する「抗原結合タンパク質」(「ABP」)は、本発明の結合分子の1以上の結合部位が、標的抗原により提示されるかまたは標的抗原上に存在する1以上のエピトープなどの標的抗原に特異的に結合するタンパク質によって提供されることを意味する。本発明のABPの1つの中心抗原(central antigen)は、CD28またはそのオルソログ(もしくはパラログ)もしくは他のバリアントであり、また該ABPは、場合によっては該CD28またはバリアントの1以上のドメインに結合できる(例えば、エピトープは、該CD28またはバリアントの1以上の細胞外ドメインにより提示されうるか、または該細胞外ドメイン上に存在しうる)。典型的には、抗原結合タンパク質は抗体(またはそのフラグメント)であるが、抗原結合タンパク質の他の形態もまた本発明により想定される。例えば、該ABPは、例えばコンビナトリアルタンパク質設計の方法(GebauerおよびSkerra,2009;Curr Opin Chem Biol,13:245)を利用することで、結合機能を備えたものなどの、小さく強固な非免疫グロブリン「足場(scaffolds)」に由来する別の(非抗体)受容体タンパク質としてもよい。かかる非抗体ABPの特定の例としては、プロテインAのZドメインに基づくアフィボディ分子(Nygren,2008;FEBS J 275:2668)、γ-Bクリスタリンおよび/またはユビキチンに基づくアフィリン(Ebersbachら、2007;J Mo Biol,372:172)、シスタチンに基づくアフィマー(Johnsonら、2012;Anal Chem 84:6553)、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidcaldarius)由来のSac7dに基づくアフィチン(Krehenbrinkら、2008;J Mol Biol 383:1058)、三重らせんコイルドコイルに基づくアルファボディ(Desmetら、2014;Nature Comms 5:5237)、リポカリンに基づくアンチカリン(Skerra,2008;FEBS J 275:2677)、様々な膜受容体のAドメインに基づくアビマー(Silvermanら、2005;Nat Biotechnol 23:1556)、アンキリンリピートモチーフに基づくDARPin(Strumppら、2008;Drug Discov Today,13:695)、FynのSH3ドメインに基づくフィノマー(Grabulovskiら、2007;J Biol Chem 282:3196)、様々なプロテアーゼインヒビターのクニッツドメインに基づくクニッツドメインペプチド(Nixonら、Curr opin Drug Discov Devel,9:261)ならびにフィブロネクチンの10番目のIII型ドメインに基づくセンチリンおよびモノボディ(Diemら、2014;Protein Eng Des Sel 27:419 doi:10.1093/protein/gzu016;KoideおよびKoide,2007;Methods Mol Biol 352:95)、が挙げられる。
用語「エピトープ」には、抗体などの抗原結合タンパク質により結合される能力がある任意の決定基が含まれる。エピトープとは、抗原を標的とする抗原結合タンパク質により結合されるその抗原の領域であり、また該抗原がタンパク質である場合には、該抗原結合タンパク質に(例えば、該タンパク質の抗原結合ドメインを介して)結合する特定のアミノ酸を含む。エピトープ決定基はアミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基(surface groupings)を含む可能性があり、また固有の三次元構造特性、および/または固有の電荷特性を有する可能性がある。一般に、特定の標的抗原に特異的な抗原結合タンパク質は、タンパク質および/または高分子の複合混合物中の該標的抗原上のエピトープを選択的に認識する。
抗原結合タンパク質は、該抗原結合タンパク質がある抗原(例えばCD28、CD3、エンドグリンなど、例えばヒトCD28)に、該抗原結合タンパク質が2つ目の抗原に結合するよりも選択的に(例えば、より強くまたはより広範囲に)結合する場合、「特異的」である。ABPとの関連において本明細書中で使用する用語「特異的に結合する(specifically binds)」(または「特異的に結合する(binds specifically)」など)は、該ABPが所望の抗原に、他のタンパク質(または他の分子)に結合するよりも選択的に結合すること、例えば、他の免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー遺伝子の1以上と比較して選択的に結合することを意味する。従って、好ましくは、ある抗原(例えばCD28)への該ABPの結合親和性は、他の標的(例えば、マウスもしくはヒトFcドメイン、またはストレプトアビジンなどの非関連タンパク質)へのその親和性と比較して、少なくとも2倍、5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、少なくとも2000倍、少なくとも5000倍、少なくとも10000倍、少なくとも10倍またはさらに少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも2倍である。
用語「同一性」は、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列間の、該配列をアラインメントして比較することにより決定した関係を指す。「同一性パーセント」は、比較する分子中のアミノ酸間またはヌクレオチド間の同一残基の割合を意味しており、また比較している分子の最小限のサイズに基づいて算出される。これらの計算のために、アラインメント中のギャップ(存在するならば)を特定の数理モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)で処理することが好ましい。アラインメントした核酸またはポリペプチドの同一性を算出するために使用できる方法としては、Computational Molecular Biology,(Lesk,A.M.,編),1988,New York:Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,編),1993,New York:Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,およびGriffin,H.G.,編),1994,New Jersey:Humana Press;von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press;Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.およびDevereux,J.,編),1991,New York:M.Stockton Press;ならびにCarilloら、1988,SIAM J.Applied Math.48:1073に記載されたものが挙げられる。
同一性パーセントを算出する際は、比較する配列は典型的には、該配列間に最大の一致が得られる形でアラインメントする。同一性パーセントを決定するために使用できるコンピュータープログラムの1例はGCGプログラムパッケージであり、これにはGAPが含まれる(Devereuxら、1984,Nucl.Acid Res.12:387;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI)。該コンピューターアルゴリズムGAPを使用することにより、配列同一性パーセントを決定する2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドをアラインメントする。該配列を、それらの各アミノ酸またはヌクレオチドの最適な一致のためにアラインメントする(該アルゴリズムによって決定される「一致スパン(matched span)」)。ギャップ開始ペナルティ(平均対角線の3倍として算出され、該「平均対角線」は使用する比較行列の対角線の平均値であり、該「対角線」は特定の比較行列により各々の完全なアミノ酸一致に割り当てられるスコアまたは数である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常は該ギャップ開始ペナルティの1/10倍である)、ならびにPAM250またはBLOSUM62などの比較行列を、該アルゴリズムと併せて使用する。
標準的な比較行列(PAM250比較行列についてはDayhoffら、1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352、BLOSUM62比較行列についてはHenikoffら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915-10919を参照のこと)が前記アルゴリズムに使用されていてもよい。
前記GAPプログラムを使用してポリペプチドまたはヌクレオチド配列の同一性パーセントを決定する際に用いることができるパラメータの例は、(i)アルゴリズム:Needlemanら、1970,J.Mol.Biol.48:443-453、(ii)比較行列:Henikoffら、1992,上掲のBLOSUM62、(iii)ギャップペナルティ:12(ただし終了ギャップに対するペナルティはない)、(iv)ギャップ長ペナルティ:4、(v)類似性の閾値:0である。
タンパク質または核酸と、ヒトCD28もしくは本発明の結合分子との間(またはヒトCD28と本発明の結合分子との間)の類似性を決定する好適な方法は、上掲のUniprotで支援されるBlastサーチ(例えば、http://www.uniprot.org/uniprot)により提供されている方法、特にアミノ酸同一性に関しては、次のパラメータ、すなわちプログラム:blastp、行列:blosum62、閾値:10、フィルタ処理:false、ギャップあり:true、報告される最大ヒット数:250を使用する方法である。
2つのアミノ酸配列をアラインメントするための、ある特定のアラインメントスキームは、それら2つの配列の短い領域のみの一致を生じる場合があり、またこの小さなアラインメントされた領域は、その2つの全長配列間には有意な関係がないにもかかわらず、非常に高い配列同一性を有する場合がある。従って、選択したアラインメント方法(GAPプログラム)は、必要があれば、標的ポリペプチドまたはその領域の少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50または他の数の連続したアミノ酸に及ぶアラインメントが生じるように調整することができる。
特定の実施形態では、本発明のABPは少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、例えば抗体由来(特にヒト抗体由来)のものを好ましく含みうるし、また特定の実施形態では、該ABPは、本明細書中の表1に記載したCDR配列に対して少なくとも80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性(好ましくは、少なくとも90%の配列同一性)を示すアミノ酸配列を有するCDRか、または配列番号1~11に示される抗体の配列に含まれるCDR配列と比較して3もしくは2つ以下、好ましくは1つ以下のアミノ酸の置換、欠失もしくは挿入を有するCDRを含みうる。
用語「相補性決定領域」(または「CDR」または「超可変領域」)は、本明細書中で使用する場合、概して抗体の軽または重鎖の可変領域中に見出される超可変領域または相補性決定領域(CDR)のうちの1以上を指す。例えば、「IMGT」,Lefrancら、2003,Dev Comp Immunol 27:55、HoneggerおよびPluckthun,2001,J Mol Biol 309:657、AbhinandanおよびMartin,2008,Mol Immunol 45:3832、Kabat,ら(1987):Sequences of Proteins of Immunological Interest National Institutes of Health,Bethesda,Mdを参照のこと。これらの表現には、Kabatら(1983)Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept of Health and Human Servicesにより定義された超可変領域、または抗体の3次元構造中の超可変ループ(ChothiaおよびLesk,1987;J Mol Biol 196:901)が含まれる。各鎖中の該CDRはフレームワーク領域によって近接して保持されており、また他方の鎖由来のCDRと共に、抗原結合部位の形成に寄与している。該CDR内には、抗体-抗原相互作用において該CDRにより使用される重要な接触残基である、選択性決定領域(SDR)と記載されている選択アミノ酸が存在する(Kashmiri,2005;Methods 36:25)。
本発明のABPは、代替的に、またはCDR3配列だけでなく、少なくとも1つのCDR1、および/または少なくとも1つのCDR2(例えば、抗体由来、特にヒト抗体由来のもの)を含んでいてもよい。好ましくは、本発明のABPは少なくとも1つのかかるCDR3、ならびに少なくとも1つのかかるCDR1および少なくとも1つのかかるCDR2を含み、より好ましくはかかるCDRの各々が、表1に示す対応する(重および軽鎖)CDR1、CDR2およびCDR3配列から選択される配列に対して少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するか、または配列番号1~12で示される配列のいずれかに含まれる(重および軽鎖)CDR1、CDR2およびCDR3配列から選択される配列と比較して3もしくは2つ以下、好ましくは1つ以下のアミノ酸の置換、欠失もしくは挿入を有する。
特定の実施形態では、本発明のABPは、抗体またはその抗原結合フラグメントでありうる。
本明細書中で使用する場合、用語「抗体」は、そのエピトープへの結合を可能にする任意の免疫グロブリン(Ig)として最も広義に理解されうる。従って抗体はABPの一種である。全長「抗体」または「免疫グロブリン」は一般に、2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される、約150kDaのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有結合性ジスルフィド結合により重鎖に連結されているが、ジスルフィド結合の数は重鎖の様々な免疫グロブリンアイソタイプ間で異なる。各重および軽鎖は、規則的に間隔の空いた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、アミノ末端可変ドメイン(VH)とそれに続く3つのカルボキシ末端定常ドメイン(CH)を有する。各軽鎖は、可変N末端ドメイン(VL)および単一のC末端定常ドメイン(CL)を有する。該VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に並ぶ、3つのCDRと4つのFRからなる。重および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有している。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)を含む細胞または因子および古典的補体系の第1成分(C1q)への免疫グロブリンの結合を媒介しうる。他の形態の抗体としては重鎖抗体が挙げられ、これは2つの重鎖のみからなり、かつ抗体に通常見出される2つの軽鎖を欠損したものである。重鎖抗体としては、ラクダ科の動物、例えばヒトコブラクダ、ラクダ、ラマおよびアルパカのhcIgG(IgG様)抗体、ならびに軟骨魚類(例えばサメ)のIgNAR抗体が挙げられる。またさらに他の形態の抗体としては、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである、単一ドメイン抗体(sdAb、開発企業であるAblynxにはナノボディと呼ばれている)が挙げられる。単一ドメイン抗体は、典型的には重鎖抗体から作製されるが、従来の抗体から得てもよい。
抗体(またはそのフラグメントを単離できるもの)としては、例えば、キメラ、ヒト化、(完全)ヒト、または二重もしくは多重抗原もしくはエピトープ特異性を示すハイブリッド抗体、抗体フラグメントおよび抗体サブフラグメント、例えば、Fab、Fab’またはF(ab’)2フラグメント、一本鎖抗体(scFv)および同類のもの(後述)、例えば任意の免疫グロブリンのハイブリッドフラグメントまたは複合体を形成するために特定の抗原に結合することにより抗体のように作用する任意の天然、合成もしくは遺伝子操作されたタンパク質を挙げることができる。
従って、ある特定の実施形態では、本発明のABPは抗体重鎖、もしくはその抗原結合フラグメント、および/または抗体軽鎖、もしくはその抗原結合フラグメントを含みうる。
さらなる実施形態では、本発明のABPは、抗体重鎖可変領域、もしくはその抗原結合フラグメント、および/または抗体軽鎖可変領域、もしくはその抗原結合フラグメントを含む可能性があり、またさらに別の実施形態では、本発明のABPは、抗体重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに/または抗体軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可能性がある。
本発明は、「二重特異性」または「二機能性」である結合分子に関し、好ましくは、2つの異なるエピトープ/抗原結合ドメイン(または「部位」)を有し、従って、2つの異なる標的エピトープに対する結合特異性を有するABPである結合分子に関する。これらの2つのエピトープは、同じ抗原のエピトープであってもよいし、本発明において好ましくは、異なる抗原、例えば異なる抗原であるエンドグリンおよびCD3/TCRのエピトープであってもよい。
「二重特異性ABP」は、重鎖と軽鎖、または主鎖とより短い/より小さい鎖との第1ペアにより定義される、2つ以上の結合アームのうちの1つで1つの抗原またはエピトープを結合し、かつ重鎖と軽鎖、または主鎖とより小さい鎖との第2ペアにより定義される第2アーム上に異なる抗原またはエピトープを結合するABPであってもよい。二重特異性ABPのかかる実施形態は、特異性とCDR配列の両方の点で2つの別個の抗原結合アームを有する。典型的には、二重特異性ABPはそれが結合する各抗原に対して1価である、すなわち、該各抗原またはエピトープに1つのアームだけで結合する。しかし、二重特異性抗体は二量体化または多量体化することも可能であり、このことは、本発明との関連においては好適である。例えば、本明細書中に記載した二量体IgGscフォーマットでは、抗体は各抗原に対して2つの結合部位を有していてもよい(図3A~F)。二重特異性抗体はハイブリッドABPであってもよく、これは第1軽鎖可変領域および第1重鎖可変領域により定義される第1結合領域と、第2軽鎖可変領域および第2重鎖可変領域により定義される第2結合領域とを有していてもよい。これらの結合領域のうちの一方が重鎖/軽鎖ペアにより定義されうることは、本発明により想定される。本発明との関連において、前記二重特異性ABPは、主鎖およびより小さな鎖の可変領域により定義される第1結合部位と、該ABPの主鎖に含まれるscFvフラグメントの可変領域により定義される第2の異なる結合部位とを有していてもよい。本発明との関連において、二重特異性結合分子は、主鎖およびより小さい鎖の可変領域によって定義される第2の抗原結合部位と、結合分子の主鎖に含まれる、scFvフラグメントの可変領域によって定義される第1の異なる結合部位とを有し得る。
二重特異性ABPを作製する方法、例えば2つの異なるモノクローナル抗体の化学的コンジュゲーションまたは例えば、同様に2つの抗体フラグメントの(例えば、2つのFabフラグメントの)化学的コンジュゲーションは、当分野で公知である。あるいは、二重特異性ABPを、親抗体を産生するハイブリドーマの融合によるものである、クアドローマ技術により作製する。HおよびL鎖のランダムな組み合わせにより、10種の異なる抗体構造物の潜在的混合物が産生され、そのうちの1種のみが所望の結合特異性を有する。
本発明の二重特異性ABPは、各標的に関してモノクローナル抗体(mAb)として機能しうる。幾つかの実施形態では、該抗体はキメラ、ヒト化または完全ヒト抗体である。二重特異性ABPは、例えば二重特異性タンデム一本鎖Fv、二重特異性Fab2、または二重特異性ダイアボディであってもよい。
本発明のABPに含まれるドメインを基に、本発明の二重特異性ABPは、一般にヒンジ領域、CH2ドメインおよび一本鎖Fvフラグメントを含みうる、Fabフラグメントを含んでいてもよい。かかる二重特異性ABPは「Fabsc」ABPと称されており、国際特許出願WO2013/092001に初めて記載された。より具体的には、本明細書中で使用する「Fabsc」フォーマットのABPは、典型的には、Fabフラグメントを有する本発明の二重特異性ABPを指し、該Fabフラグメントは一般にヒンジ領域を含み、該ヒンジ領域はCH2ドメインのN末端に結合している該FabフラグメントのC末端にあり、該CH2ドメインのC末端が今度はscFvフラグメントのN末端に結合している。かかる「Fabsc」はCH3ドメインを含まないか、または本質的には含まない。これに関連して、「含まない」または「本質的には含まない」は、該ABPが完全長CH3ドメインを含まないことを意味する。それは好ましくは、該ABPが該CH3ドメインの10以下、好ましくは5以下、好ましくは3またはさらに少ないアミノ酸を含むことを意味する。
ColomaおよびMorrisonの刊行物(Nat Biotechnol 15:159-63,1997)によれば、本発明の二重特異性ABPは、一般に、ヒンジ領域、CH2ドメイン、一般にCH2ドメインのC末端側に配置されるCH3ドメイン、および単鎖Fvフラグメントを包含する、Fabフラグメントを有し得る。かかる分子は、本明細書中では「IgGsc」フォーマットABPとも称され、これはFabフラグメントを有する本発明の二重特異性ABPを意味しており、該Fabフラグメントは一般にヒンジ領域を含み、該ヒンジ領域は典型的にはCH2ドメインのN末端に結合している該FabフラグメントのC末端にあり、該CH2ドメインのC末端は今度は典型的にはCH3ドメインのN末端に結合しており、該CH3ドメインのC末端は今度は典型的にはscFvフラグメントのN末端に結合している。IgGscフォーマットABPの例示的例を図3に示す。かかる二重特異性ABPフォーマットは、本発明との関連において好適である。
さらに、または代替的に、本発明の「IgGsc」ABPは、「Fc減弱化」CH2ドメイン(ヒンジ領域を含む)を同様に有していてもよい。この「Fc減弱化」は、Fc受容体への結合を媒介できる、該CH2ドメイン中の選択したアミノ酸残基のうちの少なくとも1つを欠失および/または置換(変異)させることにより達成される。例示的実施形態では、Fc受容体への結合を媒介可能でありかつ欠損しているかまたは変異している該ヒンジ領域または該CH2ドメインの少なくとも1つのアミノ酸残基は、配列位置228、230、231、232、233、234、235、236、237、238、265、297、327、および330(EU-インデックスによる配列位置のナンバリング)からなる群より選択される。例示的具体例では、かかるFc減弱化ABPは、アミノ酸228の欠失、アミノ酸229の欠失、アミノ酸230の欠失、アミノ酸231の欠失、アミノ酸232の欠失、アミノ酸233の欠失、置換Glu233→Pro、置換Leu234→Val、アミノ酸234の欠失、置換Leu235→Ala、アミノ酸235の欠失、アミノ酸236の欠失、アミノ酸237の欠失、アミノ酸238の欠失、置換Asp265→Gly、置換Asn297→Gln、置換Ala327→Gln、および置換Ala330→Ser(EU-インデックスによる配列位置のナンバリング、これに関しては、例えば、国際特許出願WO2013/092001の図1Oおよび図1Pも参照のこと)からなる群より選択される少なくとも1つの変異を含有していてもよい。T細胞を、例えば腫瘍細胞に対して活性化する二重特異性抗体の場合、T細胞の望ましくないオフターゲット活性化をもたらしうるFc受容体担持細胞への該抗体の結合を阻止するには、Fc減弱化が望ましい場合がある。
本発明の好ましい一実施形態では、CD28共刺激抗体は、いわゆるLALA Fc変異体とYTE変異体を組み合わせることによって、Fcがサイレント化され、ハーフタイムが最適化される。いずれの修飾も当技術分野でよく知られており、例えば、Saunders KO, Conceptual Approaches to Modulating Antibody Effector Functions and Circulation Half-Life. Front Immunol. 2019;10:1296.2019年6月7日発行、doi:10.3389/fimmu.2019.01296(その全体が本明細書に組み込まる)で詳細に説明されている。一般に、変異はヒトの CH ドメインで発見される。YTEは、Met252Tyr/Ser254Thr/Thr256Gluの変異によって特徴付けられる(Dall’acqua WF, Woods RM, Ward ES, Palaszynski SR, Patel NK, Brewah YA, et al., Increasing the affinity of a human IgG1 for the neonatal Fc receptor: biological consequences. J Immunol. (2002) 169:5171-80. 10.4049/jimmunol.169.9.5171も参照のこと)。LALA修飾はLeu234Ala/Leu235Alaである(Hezareh M, Hessell AJ, Jensen RC, van de Winkel JG, Parren PW. Effector function activities of a panel of mutants of a broadly neutralizing antibody against human immunodeficiency virus type 1. J Virol. 2001;75(24):12161-12168. doi:10.1128/JVI.75.24.12161-12168.2001も参照のこと)。
したがって、好ましい実施形態において、本発明のABPは、LALAおよびYTE修飾の両方の組み合わせを含み、したがって、配列番号12および13に示されるCHドメインの配列を含む。
本発明のCD28共刺激抗体のIgGscフォーマットは、一般に知られている小サイズのscFvのみに基づくBiTE抗体などの二重特異性抗体とは異なり、半減期が短いためCD28の使用にはあまり好ましくないことが示されており、一般的に多量体化能力が観察されているため、驚くほど効果的である。後者は制御が複雑であり、おそらく超アゴニスト作用を誘発するリスクを抱える。一方、CD28のIgGベースのフォーマットは、細胞の制限を不可能にする超アゴニスト活性を有する。本明細書では、CD28結合部位がIgGsc内のscFvとして提供される場合、CD28二重特異性フォーマットとしてIgGscを使用することを提案する。IgGScの使用は、標的細胞に限定された方法でT細胞を活性化するのに驚くほど効果的であったが、依然として共刺激のみであり、超アゴニスト作用は見られなかった。
前記抗体フォーマットIgGscは、N末端標的化部分がそれぞれ「生理的」Fab領域またはFab2領域から構成されており、それによって分子のこの部分の一本鎖成分の使用を回避するという共通点を有する。これらのフォーマットを標的細胞に限定されたT細胞活性化のために使用する場合、Fc受容体(FcR)媒介性活性化を阻止するために(希望する場合、または必要に応じて)Fc受容体(FcR)結合の減弱化を利用してもよい。これは例えば、上記、さらには国際特許出願WO2013/092001およびArmourら Eur J Immunol 1999;29:2613に記載の、分子のCH2ドメインへの定義済みかつ周知の変異の導入により達成できる。従って、本発明のIgGsc ABPもまた、CH2ドメイン(ヒンジ領域を含む)を有していてもよく、ここでFc受容体への結合を媒介できる該ヒンジ領域または該CH2ドメインの少なくとも1つのアミノ酸残基が欠損しているかまたは変異している。先に説明した通り、該CH2およびヒンジ領域中のこの残基は、それぞれ、配列位置228、230、231、232、233、234、235、236、237、238、265、297、327、および330(EU-インデックスによる配列位置のナンバリング)からなる群より選択してもよい。しかし、該IgGsc分子中のCH3ドメインの存在により、2つの個々の分子が該CH3ドメインを介して(自然発生的に)ホモ二量体化し、4価分子を形成する(これに関しては、図1Bを再度参照のこと)。従って、前記ヒンジ領域の配列位置226および/または配列位置229のシステイン残基を欠失または変異させる必要がない。従って、本発明のかかる四量体IgGsc ABPは、Kabatのナンバリング[EU-インデックス]による、各ヒンジドメインの1つの配列位置226および/または配列位置229にシステイン残基を有していてもよい。
好ましい実施形態では、本発明は、以下のABPである、単離された結合分子に関する:
・配列番号4もしくは5に示される2つの抗体重鎖配列、またはこれらの配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有する配列、及び配列番号6に示される2つの抗体軽鎖配列、またはこの配列に対して少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有する配列を含み、各場合において、独立して、場合により、これらの配列と比較して、10、9以下、好ましくは8、7、6、5、4、3または2以下、好ましくは1以下のアミノ酸の置換、挿入または欠失を有する。 またはこれらの配列と比較した欠失を含むABP、または
・配列番号1に示される2つの抗体重鎖配列、またはこれらの配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有する配列、及び配列番号2もしくは3に示される2つの抗体軽鎖配列、またはこの配列に対して少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有する配列を含み、各場合において、独立して、場合により、これらの配列と比較して、10、9以下、好ましくは8、7、6、5、4、3または2以下、好ましくは1以下のアミノ酸の置換、挿入または欠失を有する。 またはこれらの配列と比較した欠失を含むABP、または
・配列番号7もしくは8に示される2つの抗体重鎖配列、またはこれらの配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有する配列、及び配列番号9に示される2つの抗体軽鎖配列、またはこの配列に対して少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有する配列を含み、各場合において、独立して、場合により、これらの配列と比較して、10、9以下、好ましくは8、7、6、5、4、3または2以下、好ましくは1以下のアミノ酸の置換、挿入または欠失を有する。 またはこれらの配列と比較した欠失を含むABP。
代替的な態様では、本発明は、エンドグリンに特異的に結合するABPである単離された結合分子に関し、前記ABPは:
・配列番号1に示される2つの抗体重鎖配列、またはこれらの配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有する配列、及び配列番号6に示される2つの抗体軽鎖配列、またはこの配列に対して少なくとも80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも90%)の配列同一性を有する配列を含み、各場合において、独立して、場合により、これらの配列と比較して、10、9以下、好ましくは8、7、6、5、4、3または2以下、好ましくは1以下のアミノ酸の置換、挿入または欠失を有する。 またはこれらの配列と比較した欠失を含む。
上記ABPベースの結合分子の好ましい実施形態において、CDR領域は、参照する配列番号の対応するCDR配列と同一である。
二重特異性ABPの開示と同様に、本発明はさらに、標的細胞上の抗原に対しても同様に、T細胞またはNK細胞などの免疫細胞上の別の受容体に特異的に結合する抗原結合部位を有する追加の(さらなる)結合分子の使用を提案する。免疫細胞上に存在するこの受容体は、免疫細胞を活性化することができる、または免疫細胞の免疫応答を刺激することができる受容体であり得る。誘発された免疫応答は、好ましくは細胞傷害性免疫応答であり得る。そのような適切な受容体は、例えば、CD3、抗原特異的T細胞受容体(TCR)、CD16、NKG2D、Ox40、4-1 BB、CD2、CD5、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)およびCD95であり得る。特に好ましくは、第2の結合部がCD3、TCRまたはCD16に結合するABPである。
タンパク質、例えばABP(その1例は抗体でありうる)との関連において本明細書中で使用する用語「単離された」は、その治療的、診断的、予防的、研究的または他の用途の妨げになるであろうタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の混在物から精製されているタンパク質を指す。本発明による単離されたABPは、組換え、合成または改変(非天然)ABPであってもよい。核酸または細胞との関連において本明細書中で使用する用語「単離された」は、その治療的、診断的、予防的、研究的または他の用途の妨げになるであろうDNA、RNA、タンパク質もしくはポリペプチドまたは他の混在物(例えば他の細胞)から精製されている核酸または細胞を指すか、あるいは該用語は組換え、合成または改変(非天然)核酸を指す。好ましくは、単離されたABPまたは核酸または細胞は実質的に純粋である。この関連で、「組換え」タンパク質または核酸は、組換え技術を利用して作製されたものである。組換え核酸およびタンパク質の製造のための方法および技術は当分野で周知である。
結合分子、例えばABP(その1例は抗体でありうる)との関連において本明細書中で使用する用語「単離された」は、その治療的、診断的、予防的、研究的または他の用途の妨げになるであろうタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の混在物から精製されているタンパク質を指す。本発明による単離されたABPは、組換え、合成または改変(非天然)ABPであってもよい。核酸または細胞との関連において本明細書中で使用する用語「単離された」は、その治療的、診断的、予防的、研究的または他の用途の妨げになるであろうDNA、RNA、タンパク質もしくはポリペプチドまたは他の混在物(例えば他の細胞)から精製されている核酸または細胞を指すか、あるいは該用語は組換え、合成または改変(非天然)核酸を指す。好ましくは、単離されたABPまたは核酸または細胞は実質的に純粋である。この関連で、「組換え」タンパク質または核酸は、組換え技術を利用して作製されたものである。組換え核酸およびタンパク質の製造のための方法および技術は当分野で周知である。
ある実施形態では、本発明のABPがポリクローナル抗体(混合物)であるか、または前記抗原結合フラグメントがポリクローナル抗体(混合物)のフラグメントである。
本発明の全ABPの代替的かつ好適な実施形態では、該ABPが抗体またはその抗原結合フラグメントであり、かつ該抗体がモノクローナル抗体であるか、またはここで該抗原結合フラグメントがモノクローナル抗体のフラグメントである。
本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、そのアミノ酸配列に基づいて実質的に同一の抗体の集団から取得される抗体を指す。モノクローナル抗体は典型的には高度に特異的である。さらに、典型的には抗原の種々の決定基(例えばエピトープ)に対する種々の抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的に、各mAbは典型的には抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、mAbは、それらが他の免疫グロブリンによる汚染のない細胞培養(ハイブリドーマ、組換え細胞など)により合成可能であるという点で有利である。mAbは、本明細書中では、例えばキメラの、ヒト化した、またはヒトの抗体または抗体フラグメントを含む。
本発明によるモノクローナル抗体は、当業者に周知の方法により調製してもよい。例えば、マウス、ラットまたはウサギを、アジュバントと共に目的の抗原で免疫してもよい。ある特定の間隔で数回の免疫を行った動物から脾細胞をプールとして採取し、併せて試験用血液採取(test bleeds)を血清抗体価について評価するために実施する。調製した脾細胞は、融合実験で直ちに使用するか、または今後の融合の際に使用するために液体窒素中で保存する。次に融合実験をStewartおよびFuller,J.Immunol.Methods 1989,123:45-53の手順に従って実施する。ハイブリッドを増殖させているウェルから得た上清を、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によりmAb分泌型に関してスクリーニングする。ELISA陽性培養物を限界希釈または蛍光活性化セルソーティングのいずれかによりクローン化することで、典型的には単一コロニーから樹立したハイブリドーマが得られる。抗体フラグメントまたはサブフラグメントを含む抗体の、特定抗原に結合する能力は、当分野で公知の結合アッセイにより、例えば、目的の抗原を結合パートナーとして使用して、判定することができる。
さらなる好適な実施形態では、本発明のABPは抗体またはその抗原結合フラグメントであり、ここで該抗体はヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラヒト抗体であるか、またはここで該抗原結合フラグメントはヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラヒト抗体のフラグメントである。
ヒト抗体もまたin vitro法により誘導することができる。適切な例としてはファージディスプレイ法(CAT、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Yumab、Symphogen、Alexion、Affimed)などが挙げられるが、これらに限定されない。ファージディスプレイ法では、単一FabまたはFv抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドを、ファージ粒子の表面上に発現させる(例えば、Hoogenboomら、J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marksら、J Mol Biol 222:581(1991)、米国特許第5,885,793号を参照のこと)。ファージは、標的に対する親和性を有するそれらの抗体フラグメントを同定するために「スクリーニング」される。従って、かかる過程の一部は、繊維状バクテリオファージの表面における抗体フラグメントレパートリーの提示と、その後の標的へのその結合によるファージの選択を通じて免疫選択を模倣している。一部のかかる手順では、高親和性の機能性中和抗体フラグメントが単離される。従って、ヒト抗体遺伝子の完全なレパートリーを、末梢血リンパ球から自然に再配列したヒトV遺伝子をクローン化することにより(例えば、Mullinaxら、Proc Natl Acad Sci(USA),87:8095-8099(1990)を参照のこと)、またはヒト抗体配列を用いて完全合成もしくは半合成ファージディスプレイライブラリを作製することにより(Knappikら2000;J Mol Biol 296:57、de Kruifら、1995;J Mol Biol 248):97を参照のこと)、創出してもよい。
本明細書中に記載した抗体は、選択的に、XenoMouse(登録商標)技術の利用を通じて調製してもよい。かかるマウスはヒトの免疫グロブリン分子および抗体を産生する能力があり、かつマウスの免疫グロブリン分子および抗体の産生が欠損している。特に、マウスおよび抗体のトランスジェニック作製の好適な実施形態は、米国特許出願第08/759,620号(1996年12月3日出願)ならびに国際特許出願WO98/24893(1998年6月11日公開)およびWO00/76310(2000年12月21日公開)に開示されている。Mendezら、Nature Genetics,15:146-156(1997)も参照のこと。かかる技術の利用を通じて、様々な抗原に対する完全ヒトモノクローナル抗体が作製されている。本質的には、XenoMouse(登録商標)系のマウスを目的の抗原、例えばCD28、エンドグリン等で免疫し、リンパ細胞(例えば、B細胞)を過免疫マウスから回収してから、その回収したリンパ球を骨髄性の細胞系と融合することにより、不死ハイブリドーマ細胞系を調製する。これらのハイブリドーマ細胞系をスクリーニングし選別することにより、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を同定する。他の「ヒト化」マウス、例えば、Medarex-HuMabマウス、Kymab-Kymouse、Regeneron-Velocimmuneマウス、Kirin-TCマウス、Trianni-Trianniマウス、OmniAb-OmniMouse、Harbour Antibodies-H2L2マウス、Merus-MeMoマウスも市販されている。「ヒト化」した他の種、すなわちラット:OmniAb-OmniRat、OMT-UniRat.Chicken:OmniAb-OmniChickenも利用可能である。
本発明による用語「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列(ただし典型的には、まだ少なくとも一部)を含有する、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、もしくは抗体の他の抗原結合性部分配列)を指す。大抵の場合、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、該レシピエント抗体のCDR残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種免疫グロブリン(ドナー抗体)からのCDR残基で置き換えられている。そのため、該抗体またはそのフラグメントのフレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列でありうる。一部の例では、特異性または親和性を増大させるために、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を対応する非ヒト残基で置き換える必要がある。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入したCDRまたはフレームワーク配列中にも見出されない残基を含みうる。これらの改変は、抗体性能をさらに改善して最大化するために行われる。一般に、該ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的には少なくとも2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、該可変ドメイン中の全てまたは実質的に全てのCDR領域は非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、かつ全てまたは実質的に全てのフレームワーク領域はヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である。該ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれも含み、該(例えばヒト)免疫グロブリン定常領域を(例えば突然変異または糖鎖工学により)改変することで、かかる領域の1以上の性質を最適化する、および/または(例えば治療用)抗体の機能を改善する、例えばFcエフェクター機能を向上もしくは低下させる、または血清中半減期を延長することができる。例示的なかかるFc改変(例えば、Fc操作またはFc増強)は本明細書中の他の箇所に記載する。
本発明による用語「キメラ抗体」は、その軽および/または重鎖遺伝子が、マウスおよびヒトなどの異なる種の対応配列と同一であるかまたは相同である免疫グロブリン可変および定常領域から、典型的には遺伝子操作により構築された抗体を指す。あるいは、可変領域遺伝子は特定の抗体クラスまたはサブクラスに由来するが、その鎖の残部は同じであるかまたは異なる種の別の抗体クラスまたはサブクラスに由来する。これはかかる抗体のフラグメントにも当てはまる。例えば、典型的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体からの可変または抗原結合ドメインと、ヒト抗体からの定常またはエフェクタードメインとからなるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種を使用してもよい。
かかる実施形態の詳細においては、本発明のABPは抗体の抗原結合ドメインを含み、ここで該抗原結合ドメインはヒト抗体の抗原結合ドメインである。好ましくは、ABPは抗体またはその抗原結合フラグメントの抗原結合ドメインを含み、該抗原結合ドメインはヒト抗原結合ドメインであり、(ii)該抗体はモノクローナル抗体であり、すなわちここで該抗原結合フラグメントはモノクローナル抗体のフラグメントであり、また(iii)該抗体はヒト抗体またはヒト化抗体であり、すなわちここで該抗原結合フラグメントはヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラヒト抗体のフラグメントである。
ヒト抗体の軽鎖は一般にカッパおよびラムダ軽鎖として分類され、またこれらの各々が1つの可変領域と1つの定常ドメインを含有する。重鎖は典型的にはミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロン鎖として分類され、またこれらが抗体のアイソタイプをそれぞれIgM。IgD、IgG、IgA、およびIgEと定義付けている。ヒトIgGには、限定するものではないが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む幾つかのサブタイプがある。ヒトIgMのサブタイプとしては、IgM、およびIgM2が挙げられる。ヒトIgAのサブタイプとしてはIgA1およびIgA2が挙げられる。ヒトの場合、該IgAおよび該IgDのアイソタイプは4つの重鎖と4つの軽鎖を含有しており、該IgGおよび該IgEのアイソタイプは2つの重鎖と2つの軽鎖を含有しており、また該IgMのアイソタイプは10または12の重鎖と10または12の軽鎖を含有している。本発明による抗体は、IgG、IgE、IgD、IgA、またはIgM免疫グロブリンでありうる。
幾つかの実施形態では、本発明のABPはIgG抗体またはそのフラグメントである。幾つかの実施形態では、本発明のABPはIgE抗体またはそのフラグメントである。幾つかの実施形態では、本発明のABPはIgD抗体またはそのフラグメントである。幾つかの実施形態では、本発明のABPはIgA抗体またはそのフラグメントである。幾つかの実施形態では、本発明のABPはIgM抗体またはそのフラグメントである。好ましくは、本発明のABPは、IgG免疫グロブリンまたはそのフラグメント、例えば、ヒト、ヒト由来のIgG免疫グロブリン、またはウサギもしくはラット由来のIgG、および/またはIgG2免疫グロブリン、あるいはそのフラグメントであるか、それらを含むかまたはそれらに由来する。本発明のABPがラット由来のIgGであるか、それを含むかまたはそれに由来するならば、その際は好ましくは、該ABPはラットIgG2aまたはIgG2b免疫グロブリンであるか、それを含むかまたはそれに由来する。本発明のABPがヒト由来のIgGであるか、それを含むかまたはそれに由来するならば、その際はより好ましくは、本発明のABPはヒトIgG1、IgG2またはIgG4であるか、それを含むかまたはそれに由来するものであり、最も好ましくは、本発明のABPはヒトIgG1またはIgG2であるか、それらを含むかまたはそれらに由来する。
従って、本発明の特定の実施形態では、ABPは抗体であり、ここで該抗体はIgG、IgE、IgD、IgA、またはIgM免疫グロブリン、好ましくはIgG免疫グロブリンである。
本発明のABPは、免疫グロブリン定常領域(典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域)の少なくとも一部を含む場合、かかる領域の1以上の性質を最適化するため、および/または(例えば治療用)抗体の機能を改善するため、例えばFcエフェクター機能を向上もしくは低下させるかまたは血清中半減期を延長するために(例えば、例として糖鎖工学または突然変異により)改変された、かかる(例えばヒト)免疫グロブリン定常領域を有していてもよい。
本発明のABP、特に本発明の方法において有用な該ABPには、エンドグリン発現細胞の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する抗体が含まれる。抗エンドグリン抗体のADCCは、低レベルのフコースを有するかまたはフコースが欠損した抗体を使用することにより改善できる。フコースが欠損した抗体は、特に低用量の抗体で、増強されたADCC(抗体依存性細胞傷害)活性と関連付けられている(Shields et ah,2002,J.Biol.Chem.277:26733-26740、Shinkawa et ah,2003,J.Biol.Chem.278:3466)。
フコースを欠いた抗体またはフコースレベルが低下した抗体を調製する方法として、ラットのミエローマYB2/0細胞(ATCC CRL1662)の増殖が挙げられる。YB2/0細胞は、ポリペプチドのフコシル化に必要な酵素(α1,6-フコシルトランフェラーゼ)をコードする、低レベルのFUT8 mRNAを発現する。
あるいは、かかる抗体の発現の最中に、ツニカマイシン(N-グリコシド結合型糖鎖の前駆体であるコアオリゴ糖の形成の第1段階であるGlcNAc-P-P-Dolの形成を選択的に阻害する)、カスタノスペルミンおよびW-メチル-1-デオキシノジリマイシン(グリコシダーゼIの阻害物質である)、キフネンシン(マンノシダーゼIの阻害物質である)、ブロモコンズリトール(グリコシダーゼIIの阻害物質である)、1-デオキシノジリマイシンおよび1,4-ジオキシ-1,4-イミノ-D-マンニトール(マンノシダーゼIの阻害物質である)、スワインソニン(マンノシダーゼIIの阻害物質である)、スワインソニン(マンノシダーゼIIの阻害物質である)などを含む、糖鎖の修飾に関する酵素に対する阻害物質を使用してもよい。グリコシルトランスフェラーゼに特異的な阻害物質の例としては、N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼV(GnTV)に対する基質のデオキシ誘導体などが挙げられる。同様に、1-デオキシノジリマイシンは複合型糖鎖の合成を阻害しかつ高マンノース型および混成型糖鎖の割当て量を増大させることが知られている(Glycobiology series 2-Destiny of Sugar Chain in Cell,Katsutaka Nagai,Senichiro HakomoriおよびAkira Kobataにより編集,1993)。
これらのデータを基に、様々な病状において利用しうるFcγRに関連する具体的な特性を示す治療用モノクローナル抗体を選別する目的で、IgGのグリコシル化パターンを操作するため、幾つかの細胞系が遺伝子操作され、フコースを含有しないかまたは低レベルのフコースを含有する抗体が作製されている(Moriら、2004;Yamane-Ohnukiら、2004)。
UmanaらおよびDavisらにより、増加した量の二分岐(bisected)複合オリゴ糖(二分岐(bisecting)A/-アセチルグルコサミン、GlcNAC)を含有するよう操作されたIgG1抗体が、その親対応物と比較して強力なADCCの誘発を可能にすることが示された(Umanaら、1999、Daviesら、2001)。第2に、ヒトIgG1 N-結合型オリゴ糖上のフコースの欠損がFCGRIII結合およびADCCを改善することが示された。
GLYCART BIOTECHNOLOGY AG(Zurich,CH)により、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系において前記N-結合型オリゴ糖への前記二分岐GlcNac残基の付加を触媒するN-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)が明示されており、また作製したIgG1抗体のより強いADCCが示されている(WO99/54342、WO03/01 1878、WO2005/044859)。
WO20070166306は、(i)抗CD19抗体に対するcDNAおよび(ii)前記GnTIII酵素に対するcDNAをトランスフェクトした哺乳動物ヒト293T胎児腎臓細胞において産生された60%のN-アセチルグルコサミン二分岐オリゴ糖および10%の非フコシル化N-アセチルグルコサミン二分岐オリゴ糖を含有する抗体抗CD19の改変に関連している。
YB2/0細胞(Shinkawaら、2003、Siberilら、2006)またはCHO-Lec13(Shieldsら、2002)で産生させた、野生型CHO細胞で産生された同じIgG1と比較して低フコース含有量を示すかまたはフコースが欠損した組換えヒトIgG1は、細胞性細胞傷害を誘発する能力の増強を示した。対照的に、ガラクトースとADCCとの間に相関関係は認められず、また二分岐GlcNACの含有量のみがADCCにわずかに影響を及ぼした(Shinkawaら、2003)。
前記抗体の前記Fc部分からフコースを除去するかまたは置き換えることにより、協和発酵工業(東京、日本)はFc結合を増強してADCCを改善し、結果としてMAbの有効性を改善した(US6,946,292)。この低フコシル化IgGの改善されたFcγRIIIA依存性エフェクター機能は、FcγRIII対立遺伝子型とは無関係であることが示されている(Niwaら、2005)。さらに、IgGが高フコシル化IgGと比較して少ない含有量のフコースを有する場合、効率的なADCCを誘導するために必要とされる抗原密度は低いことが最近になって示された(Niwaら、2005)。
Laboratoire Frangais du Fractionnement et des Biotechnologies(LFB)(フランス)により、高ADCCを示す抗体を得るためにはMAbオリゴ糖中のFuc/Gal比は等しいかまたは0.6未満であるべきということが示された(FR2 861 080)。
Cardarelliら(2019)は、α1,6-フコシルトランフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が欠損したMs-704PF CHO細胞において抗CD19抗体を作製しており、この論文中では該抗体の非フコシル化は酵素欠損細胞系の操作を必要とする。この論文ではアミノ酸変異は考慮されていない。
Herbstらは、フコシルトランフェラーゼ-欠損プロデューサーCHO細胞系で発現させたヒト化IgG1 MAb MEDI-551を作製した。この論文ではアミノ酸変異は考慮されていない(Herbstら、2010)。S.Siberilらは、ラットのミエローマYB2/0細胞系を使用することにより、フコース含有量が少ないMAb抗RhDを作製した。野生型CHOで産生されたMAbが高いフコース含有量(81%)を示す一方で、YB2/0細胞で産生された同じMAbはより低いフコース含有量(32%)を示した。この論文ではアミノ酸変異は考慮されていない(Siberilら、2006)。
従って、本発明のABPは、上記のかかる糖鎖工学(例えば脱フコシル化)アプローチ/抗体の特徴の1以上を有するように調製してもよく、かつ/または有していてもよい。
本発明のABPに関するADDC活性を増大させるための代替法には、かかるABPのFc部分の突然変異、特にFcγR受容体に対する抗体親和性を増大させる突然変異が含まれる。
従って、上記の本発明のABPのいずれかを、種々のアイソタイプまたは変異アイソタイプを用いて作製することにより、種々のFcγ受容体への結合の程度を制御することができる。Fc領域を欠く抗体(例えば、Fabフラグメント)は、種々のFcγ受容体への結合を欠く。アイソタイプの選択もまた、種々のFcγ受容体への結合に影響を及ぼす。3つの異なるFcγ受容体、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIに対する様々なヒトIgGアイソタイプの各親和性が決定されている(RavetchおよびKinet,Annu.Rev.Immunol.9,457(1991)を参照のこと)。FcγRIは、単量体型のIgGに結合する高親和性受容体であり、後者2つは多量体型のIgGにのみ結合する低親和性受容体である。一般に、IgG1およびIgG3は共に3つの受容体全てに対して有意な結合活性を有し、IgG4はFcγRIに対して、またIgG2はIIaLRと呼ばれる1種類のFcγRIIのみに対して有意な結合活性を有する(Parrenら、J.Immunol.148,695(1992)を参照のこと)。従って、ヒトアイソタイプIgG1は、通常はFcγ受容体へのより強い結合が望ましい場合に選択され、またIgG2は通常はより弱い結合のために選択される。
増大したFcγR結合と変異型Fcとの相関関係は、標的化細胞傷害細胞ベースアッセイ(Shields et ah,2001,J.Biol.Chem.276:6591-6604、Presta et ah,2002,Biochem Soc.Trans.30:487-490)を利用して実証されている。特定のFc領域変異を通じてADCC活性を増大させるための方法には、234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330および332からなる群より選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むFcバリアントが含まれ、ここで該Fc領域中の残基のナンバリングは、Kabat(Kabat et ah,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health,Bethesda,Md.1987))に記載されたEUインデックスのものである。
ある特定の具体的な実施形態では、前記Fcバリアントは、L234D、L234E、L234N、L234Q、L234T、L234H、L234Y、L234I、L234V、L234F、L235D、L235S、L235N、L235Q、L235T、L235H、L235Y、L235I、L235V、L235F、S239D、S239E、S239N、S239Q、S239F、S239T、S239H、S239Y、V240I、V240A、V240T、V240M、F241W、F241L、F241Y、F241E、F241R、F243W、F243L、F243Y、F243R、F243Q、P244H、P245A、P247V、P247G、V262I、V262A、V262T、V262E、V263I、V263A、V263T、V263M、V264L、V264I、V264W、V264T、V264R、V264F、V264M、V264Y、V264E、D265G、D265N、D265Q、D265Y、D265F、D265V、D265I、D265L、D265H、D265T、V266I、V266A、V266T、V266M、S267Q、S267L、E269H、E269Y、E269F、E269R、Y296E、Y296Q、Y296D、Y296N、Y296S、Y296T、Y296L、Y296I、Y296H、N297S、N297D、N297E、A298H、T299I、T299L、T299A、T299S、T299V、T299H、T299F、T299E、W313F、N325Q、N325L、N325I、N325D、N325E、N325A、N325T、N325V、N325H、A327N、A327L、L328M、L328D、L328E、L328N、L328Q、L328F、L328I、L328V、L328T、L328H、L328A、P329F、A330L、A330Y、A330V、A330I、A330F、A330R、A330H、I332D、I332E、I332N、I332Q、I332T、I332H、I332YおよびI332Aからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含み、ここで該Fc領域中の残基のナンバリングはKabatに記載されたEUインデックスのものである。
またFcバリアントは、V264L、V264I、F241W、F241L、F243W、F243L、F241L/F243L/V262I/V264I、F241W/F243W、F241W/F243W/V262A/V264A、F241L/V262I、F243L/V264I、F243L/V262I/V264W、F241Y/F243Y/V262T/V264T、F241E/F243R/V262E/V264R、F241E/F243Q/V262T/V264E、F241R/F243Q/V262T/V264R、F241E/F243Y/V262T/V264R、L328M、L328E、L328F、I332E、L3238M/I332E、P244H、P245A、P247V、W313F、P244H/P245A/P247V、P247G、V264I/I332E、F241E/F243R/V262E/V264R/I332E、F241E/F243Q/V262T/264E/I332E、F241R/F243Q/V262T/V264R/I332E、F241E/F243Y/V262T/V264R/I332E、S298A/I332E、S239E/I332E、S239Q/I332E、S239E、D265G、D265N、S239E/D265G、S239E/D265N、S239E/D265Q、Y296E、Y296Q、T299I、A327N、S267Q/A327S、S267L/A327S、A327L、P329F、A330L、A330Y、I332D、N297S、N297D、N297S/I332E、N297D/I332E、N297E/I332E、D265Y/N297D/I332E、D265Y/N297D/T299L/I332E、D265F/N297E/I332E、L328I/I332E、L328Q/I332E、I332N、I332Q、V264T、V264F、V240I、V263I、V266I、T299A、T299S、T299V、N325Q、N325L、N325I、S239D、S239N、S239F、S239D/I332D、S239D/I332E、S239D/I332N、S239D/I332Q、S239E/I332D、S239E/I332N、S239E/I332Q、S239N/I332D、S239N/I332E、S239N/I332N、S239N/I332Q、S239Q/I332D、S239Q/I332N、S239Q/I332Q、Y296D、Y296N、F241Y/F243Y/V262T/V264T/N297D/I332E、A330Y/I332E、V264I/A330Y/I332E、A330L/I332E、V264I/A330L/I332E、L234D、L234E、L234N、L234Q、L234T、L234H、L234Y、L234I、L234V、L234F、L235D、L235S、L235N、L235Q、L235T、L235H、L235Y、L235I、L235V、L235F、S239T、S239H、S239Y、V240A、V240T、V240M、V263A、V263T、V263M、V264M、V264Y、V266A、V266T、V266M、E269H、E269Y、E269F、E269R、Y296S、Y296T、Y296L、Y296I、A298H、T299H、A330V、A330I、A330F、A330R、A330H、N325D、N325E、N325A、N325T、N325V、N325H、L328D/I332E、L328E/I332E、L328N/I332E、L328Q/I332E、L328V/I332E、L328T/I332E、L328H/I332E、L328I/I332E、L328A、I332T、I332H、I332Y、I332A、S239E/V264I/I332E、S239Q/V264I/I332E、S239E/V264I/A330Y/I332E、S239E/V264I/S298A/A330Y/I332E、S239D/N297D/I332E、S239E/N297D/I332E、S239D/D265V/N297D/I332E、S239D/D265I/N297D/I332E、S239D/D265L/N297D/I332E、S239D/D265F/N297D/I332E、S239D/D265Y/N297D/I332E、S239D/D265H/N297D/I332E、S239D/D265T/N297D/I332E、V264E/N297D/I332E、Y296D/N297D/I332E、Y296E/N297D/I332E、Y296N/N297D/I332E、Y296Q/N297D/I332E、Y296H/N297D/I332E、Y296T/N297D/I332E、N297D/T299V/I332E、N297D/T299I/I332E、N297D/T299L/I332E、N297D/T299F/I332E、N297D/T299H/I332E、N297D/T299E/I332E、N297D/A330Y/I332E、N297D/S298A/A330Y/I332E、S239D/A330Y/I332E、S239N/A330Y/I332E、S239D/A330L/I332E、S239N/A330L/I332E、V264I/S298A/I332E、S239D/S298A/I332E、S239N/S298A/I332E、S239D/V264I/I332E、S239D/V264I/S298A/I332E、およびS239D/264I/A330L/I332Eからなる群より選択することも可能であり、ここで該Fc領域中の残基のナンバリングはKabatに記載されたEUインデックスのものである。本明細書中に参照により組み込まれるWO2004029207も参照のこと。
特定の実施形態では、ヒンジリンク領域中の部位上の、該部位に隣接する、または該部位に近接する変異(例えば、残基234、235、236および/または237を別の残基に置き換える変異)は、Fcγ受容体、特にFcγRI受容体に対する親和性を低減するために、前記アイソタイプの全てにおいて作製することができる(例えば、US6624821を参照のこと)。場合によっては、234位、236位および/または237位をアラニンと置換し、かつ235位をグルタミン酸と置換する(例えばUS5624821を参照のこと)。236位はヒトIgG2アイソタイプでは欠損している。ヒトIgG2の234位、235位および237位に対するアミノ酸の例示的セグメントは、Ala Ala Gly、Val Ala Ala、Ala Ala Ala、Val Glu Ala、およびAla Glu Alaである。変異の好適な組み合わせは、ヒトアイソタイプIgG1の場合はL234A、L235EおよびG237Aであるか、またはL234A、L235A、およびG237Aである。本発明の特に好適なABPは、ヒトアイソタイプIgGと、Fc領域のこれら3つの変異のうちの1つとを有する抗体である。Fcγ受容体への結合を減少させる他の置換は、(特にマウスIgG1における)E233P変異および(特にマウスIgG2aにおける)D265Aである。Fcおよび/またはC1q結合を低減する変異および変異の組み合わせの他の例は、(特にマウスIgG1における)E318A/K320A/R322A、(特にマウスIgG2aにおける)L235A/E318A/K320A/K322Aである。同様に、ヒトIgG4中の残基241(Ser)を、例えばプロリンと置き換えることにより、Fc結合を破壊することができる。
エフェクター活性をモジュレートするために、定常領域にさらなる変異を作製することができる。例えば、IgG1またはIgG2aの定常領域にA330S、P331S、または両方の変異を生じさせることができる。IgG4の場合は、E233P、F234VおよびL235Aの変異、ならびにG236欠失、またはこれらの任意の組み合わせを作製することができる。IgG4には、S228PおよびL235Eの一方または両方の変異を保有させることもできる。エフェクター機能をモジュレートするための破壊された定常領域配列の使用については、例えばWO2006118,959およびWO2006036291にさらに記載されている。
エフェクター活性をモジュレートするために、ヒトIgGの定常領域にさらなる変異を作製することができる(例えば、WO200603291を参照のこと)。これらの変異には、ヒトIgG1に対する次の置換、すなわち(i)A327G、A330S、P331S、(ii)E233P、L234V、L235A、G236欠失、(iii)E233P、L234V、L235A、(iv)E233P、L234V、L235A、G236欠失、A327G、A330S、P331S、ならびに(v)E233P、L234V、L235A、A327G、A330S、P331S、または特に、(vi)(例えば、ヒトIgG1に対する)L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sが含まれ、ここでFc領域中の残基のナンバリングはKabatに記載されたEUインデックスのものである。本明細書中に参照により組み込まれるWO2004029207も参照のこと。
前記FcRに対する抗体の親和性は、重鎖定常領域のある特定の残基を変異させることにより変更できる。例えば、ヒトIgG1のグリコシル化部位の破壊により、該抗体のFcR結合、ひいてはそのエフェクター機能を低減することができる(例えばWO2006036291を参照のこと)。トリペプチド配列NXSおよびNXT(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸)は、該N残基のグリコシル化の際の酵素認識部位である。該トリペプチドアミノ酸のいずれかの破壊、特にIgGのCH2領域での破壊は、その部位でのグリコシル化を阻止する。例えば、ヒトIgG1のN297の変異は、グリコシル化を阻止し、かつこの抗体へのFcR結合を低減する。
Fc受容体結合の好適な増強は、本明細書中では通常「SDIE」(変異S239D/I332Eを意味する)と称される、ヒトIgG1のFcドメイン変異体を導入することにより達成できる。
ADCCおよびCDCの活性化は治療用抗体にとって望ましいことが多いが、エフェクター機能を活性化できない本発明のABP(例えば、寛容なモジュレーター(agnostic modulator)である本発明のABP)が好適な場合がある。これらの目的のためにIgG4が一般に使用されてきたが、これはFabアーム交換を経るこのサブクラスの特有の性能(in vivoではIgG4間で重鎖が入れ替わる可能性がある)のために近年は支持されていない。従って、Fc操作アプローチを同様に使用することにより、FcドメインとFcγ受容体およびC1qとの重要な相互作用部位を決定し、その後例えば本発明のABPのFcにおいてこれらの位置を変異させて、結合を低減または消失させることができる。アラニンスキャニングを通じて、DuncanおよびWinter(1998;Nature 332:738)は、Fcドメインのヒンジ部と上部CH2にわたる領域へのC1qの結合部位を初めて特定した。Genmab社の研究者らは、変異体K322A、L234AおよびL235Aを同定しており、これらは組み合わせると、FcγRおよびC1q結合をほぼ完全に消失させるのに十分なものである(Hezarehら、2001;J Virol 75:12161)。同様の方法で、MedImmune社は後に、非常に類似した効果を有する一連の3つの変異、L234F/L235E/P331S(TMと称される)を同定した(Oganesyanら、2008;Acta Crystallographica 64:700)。代替アプローチは、最適なFcR相互作用に必要であることが知られている、Fcドメインのアスパラギン297に対するグリコシル化の修飾である。FcRへの結合の喪失は、N297点突然変異(Taoら、1989;J Immunol 143:2595)、酵素的に脱グリコシル化したFcドメイン(Mimuraら、2001;J Biol Chem 276:45539)、グリコシル化阻害物質の存在下で組換えにより発現させた抗体(Walkerら、1989;Biochem J 259:347)および細菌でのFcドメインの発現(Mazorら2007;Nat Biotechnol 25:563)において観察されている。従って、本発明は、かかる技術または変異を利用してエフェクター機能を低減させたABPの実施形態も含む。
IgGは本来、およそ21日という典型的な半減期を与えるFcRn媒介性リサイクリングにより(例えばヒト)血清中に長期間にわたり存続する。こうした事情にもかかわらず、該FcRnとのFcドメインのpH依存性相互作用を操作することにより、pH7.4では最小限の結合を保持しつつpH6.0での親和性を増大させるための数多くの試みが為されている。PDL BioPharma社の研究者らは、アカゲザルにおいてIgGの半減期のおよそ2倍の増大をもたらす変異T250Q/M428Lを同定し(Hintoら、2004;J Biol Chem 279:6213)、カニクイザルにおいてIgGの半減期のおよそ4倍の増大をもたらす変異M252Y/S254T/T256E(YTEと称される)を同定した(Dall’Acqua,ら2006;J Biol Chem 281:23514)。本発明のABPはPEG化されていてもよい。PEG化、すなわち合成ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)との化学結合は、持続性作用を発揮する生物製剤の開発のための、一般に認められた技術として登場し、今日までに約10種の臨床的に承認されたタンパク質薬およびペプチド薬が存在する(Jevsevarら、2010;Biotechnol J 5:113)。本発明のABPは、薬剤的に活性なタンパク質の血漿中半減期を延長するためのPEG化の生物学的代替法である、PAS化を施してもよい(Schlapschyら、2013;Protein Eng Des Sel 26:489;XL-protein GmbH,Germany)。従って、本発明は、かかる技術または変異を利用して(特にヒト血清における)血清中半減期を延長したABPの実施形態も含む。
「Fabフラグメント」は、軽鎖の隣接する定常領域と重鎖の第1定常ドメイン(CH1)により結び付けられた、重鎖および軽鎖の各々の1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインからなる。これらは従来の抗体から、例えばパパインによるプロテアーゼ消化により形成してもよいが、同様のFabフラグメントを遺伝子操作により作製してもよい。Fabフラグメントには、Fab’、Fabおよび「Fab-SH」(少なくとも1つの遊離スルフヒドリル基を含有するFabフラグメント)が含まれる。
Fab’フラグメントは、それらが抗体ヒンジ領域からの1以上のシステインを含む重鎖の第1定常ドメインのカルボキシ末端に追加の残基を含有する点でFabフラグメントと異なる。Fab’フラグメントには、「Fab’-SH」(少なくとも1つの遊離スルフヒドリル基を含有するFab’フラグメント)が含まれる。
さらに、抗体フラグメントには、2つの軽鎖と、CH1およびCH2ドメイン間の定常領域の一部(「ヒンジ領域」)を含有する2つの重鎖とを含有し、鎖間ジスルフィド結合がこれら2つの重鎖間で形成されるような、F(ab’)2フラグメントが含まれる。従って、F(ab’)2フラグメントは、それら2つの重鎖間のジスルフィド結合により結び付けられた2つのFab’フラグメントからなる。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジ領域より下で切断する酵素による(例えばペプシンによる)タンパク質切断により、または遺伝子操作により、従来の抗体から調製してもよい。
「Fv領域」は、重および軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域が欠如している。「一本鎖抗体」または「scFv」は、重および軽鎖可変領域がフレキシブルリンカーにより連結されて単一ポリペプチド鎖を形成し、該鎖が抗原結合領域を形成する、Fv分子である。
「Fc領域」は、抗体のCH2およびCH3ドメインを含む2つの重鎖フラグメントを含む。かかる2つの重鎖フラグメントは、2つ以上のジスルフィド結合、および該CH3ドメインの疎水性相互作用により結び付けられている。
好適な実施形態では、本発明のABPは、抗体またはそのフラグメントのフレームワーク配列の少なくとも一部がヒトコンセンサスフレームワーク配列である、例えば、ヒト生殖細胞系コード化フレームワーク配列を含む、該抗体である。
幾つかの実施形態では、本発明のABPは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増大させるために改変または操作されている。ここで当業者には理解されるように、本発明のかかるABPは、CTLのような免疫細胞に対する細胞抵抗性に関連する疾患または障害(例えば、CD28陽性がん)の治療において特に有用である。これは、該ADCCの機序(免疫系のエフェクター細胞が、その膜表面抗原に特異的抗体が結合した標的細胞を積極的に溶解することによる細胞媒介性免疫防御)がCTLのような免疫細胞に対する抵抗性を有する細胞に関して増強され、該免疫系のエフェクター細胞による接着の増大、および/または該免疫系のエフェクター細胞によるかかる細胞の溶解の増大をもたらすことによる。
本明細書中で使用する場合、「治療」は疾患、障害、または状態を処置することと同義であり、これには該疾患、障害、もしくは状態の症状を低減すること、該疾患、障害、もしくは状態の進行を阻止すること、該疾患、障害、もしくは状態の軽減をもたらすこと、および/または該疾患、障害、もしくは状態を治癒させることが含まれる。
本発明のABPを改変または操作することによりADCCを増大させるための様々な技術が公知であり(Satohら、2006;Expert Opin Biol Ther 6:1161;WO2009/135181)、従ってかかる実施形態は、本発明のABPが脱フコシル化(GlycArt Biotechnology)されうる、例えば、抗体を内在性FUT8遺伝子がノックアウトされているCHO細胞において産生させる実施形態、または該ABPが「糖操作抗体」(Seattle Genetics)でありうる、例えばフコース類似体を抗体発現CHO細胞に添加してフコシル化の有意な低下を生じさせる実施形態を含む。本発明のABPに適用しうる他の脱フコシル化アプローチは、本明細書中の他の箇所に記載されている。
本発明のABPを改変または操作することによりADCCを増大させるための他の技術としては、(例えば、本明細書中の他の箇所により詳細に記載した)該ABPのFc部分の突然変異、特にヒトFcの残基234、235、236および/もしくは237、ならびに/または残基330、331のうちの1以上をそのように変異させる突然変異が挙げられ、ここで該Fc領域中の該残基のかかるナンバリングはKabat(Kabat et ah,Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institute of Health,Bethesda,Md.1987)に記載されたEUインデックスのものである。
従って、ある特定の実施形態では、本発明のABPは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を増大させるために改変または操作されており、好ましくはここで、該ABPを脱フコシル化する、ならびに/または該ABPのFcを変異させる(例えばその際、Fcを次の残基変化、すなわちL234A、L235E、G237A、A330Sおよび/もしくはP331Sのうちの1以上を利用して変異させる)。代替的実施形態では、本発明のABPは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を低減するために改変または操作されている。
他のある特定の実施形態では、本発明のABPは、特にヒト血清における、血清中半減期を延長するために改変されている。例えば、本発明のABPはPEG化および/もしくはPAS化されていてもよく、またはT250Q/M428LもしくはM252Y/S254T/T256E改変を持つFc領域を有する。
本発明のABPは、単一特異性(すなわち、ただ1つの抗原に結合する抗原結合ドメインを持つ)であっても、または多重特異性(すなわち、異なる抗原に結合する2つ以上の異なる抗原結合ドメインを持つ)であってもよい。例えば、「二重特異性(bi-specific)」、「二特異性(dual-specific)」または「二機能性(bi-functional)」ABPまたは抗体は、それぞれ、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッドのABPまたは抗体である。二重特異性抗原結合タンパク質および抗体は、多重特異性抗原結合タンパク質抗体の1種であり、限定するものではないが、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結(例えば、SongsivilaiおよびLachmann,1990、Kostelnyら、1992を参照のこと)を含む様々な方法により作製することができる。二重特異性抗原結合タンパク質または抗体の前記2つの結合部位は、同一または異なるタンパク質標的上に存在しうる、2つの異なるエピトープに結合する。
従って、ある特定の実施形態では、本発明のABPは少なくとも2つの抗原結合ドメインを含む多重特異性抗体であり、ここで各抗原結合ドメインは異なる抗原エピトープに特異的に結合する。
本発明のABPの好適なバリアントは、CD28に対する抗体の抗原結合領域と、エンドグリン等の抗原性タンパク質に関連する疾患を標的とする第2抗原結合領域とを含む、二重特異性のものに関する。好ましくは、抗CD28結合部位は、scFv構築物である。本発明のある好適な構築物は、本明細書中では7C4と指定する抗体の2つの抗原結合ドメインと、2つの抗CD3結合ドメイン、例えば前述のUCHT1 scFv構築物とを含む。
好適な実施形態では、本発明のABPは少なくとも1つの抗体定常ドメインを含むことが可能であり、特にここで、少なくとも1つの抗体定常ドメインはCH1、CH2、もしくはCH3ドメイン、またはその組み合わせである。
さらなるかかる実施形態では、抗体定常ドメインを有する本発明のABPは、例えばFc領域とFc受容体(免疫エフェクター細胞上のFc受容体(例えばSaxenaおよびWu,2016;Front Immunol 7:580)との相互作用を増大させるために、変異させた該Fc領域を含む。その例および実施形態は本明細書中の他の箇所に記載されている。
他の実施形態では、本発明のABPは、エフェクター基および/または標識基を含んでいてもよい。
用語「エフェクター基」は、任意の基、特に細胞傷害性物質として働く、抗原結合タンパク質などの別の分子に結合した基を意味する。適切なエフェクター基としての例は、放射性同位体または放射性核種である。他の適切なエフェクター基としては、毒素、治療基、または化学療法基が挙げられる。適切なエフェクター基の例としては、カリケアマイシン、アウリスタチン、ゲルダナマイシン、α-アマニチン、ピロロベンゾジアゼピンおよびマイタンシンが挙げられる。
用語「標識」または「標識基」は、任意の検出可能な標識を指す。一般に、標識はそれらを検出するアッセイに応じて、様々なクラス、すなわちa)放射性同位体もしくは重同位体でありうる同位体標識、b)磁気標識(例えば、磁性粒子)、c)酸化還元活性部分、d)光学色素;酵素基(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、e)ビオチン化基、およびf)二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)に分類される。
代替的な態様では、本発明は、配列RNYVTGFDY(配列番号16)、またはこの配列と比較して、3、2以下、好ましくは1以下のアミノ酸変異を有する配列を有する重鎖相補性決定領域(CDR)3と、配列HQYLSSYT(配列番号20)、またはこの配列と比較して3、2以下、好ましくは1以下のアミノ酸変異を有する配列を有する軽鎖CDR3を少なくとも含む、エンドグリン結合分子にも関する。
さらなる一態様では、エンドグリン結合分子はABPであり、少なくとも1つ、好ましくは2つの抗体重鎖配列、および、少なくとも1つ、好ましくは2つの抗体軽鎖配列を含み、少なくとも1つ、好ましくは2つの抗体重鎖配列は、配列SYWMH(配列番号14)を有するHCDR1、配列NIYPGSTFYDEKFKG(配列番号15)を有するHCDR2、および配列RNYVTGFDY(配列番号16)を有するHCDR3を含む、 および/または、少なくとも1つ、好ましくは2つの抗体軽鎖配列は、配列KSSQSVLYSSNQKNYLA(配列番号18)を有するLCDR1、および配列WASTRES(配列番号19)を有するLCDR2、および配列QYLSSYT(配列番号20)を有するLCDR3を含む。場合により、各配列は、示された配列と比較して、アミノ酸の付加、欠失、挿入、または置換等の、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下のアミノ酸変異を有する。
本態様のさらなる実施形態では、エンドグリン抗体は、IgG等の単一特異性ABPであってもよく、または、本明細書に開示される発明の他の態様との関連で、腫瘍関連抗原への結合を媒介する二重特異性分子の「第2の結合部位」として使用されてもよい。
好ましくは、エンドグリン結合分子はABPであり、重鎖配列は配列番号17に示される抗体重鎖可変領域を含み、場合により、各配列は、示された配列と比較して、10、9、8、7、6、5、4、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下のアミノ酸の付加、欠失、挿入、置換等のアミノ酸変異を有し、および/または、軽鎖配列は配列番号21に示される抗体重鎖可変領域を含み、場合により、各配列は、示された配列と比較して、10、9、8、7、6、5、4、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下のアミノ酸の付加、欠失、挿入、置換等のアミノ酸変異を有する。
さらに代替的な態様は、本発明の抗エンドグリンABPをコードする核酸配列、本発明の抗エンドグリンABPの重鎖および/または軽鎖配列の発現のためのベクターに関する。 このようなコードする核酸配列の例を、配列番号22および23に示す。
簡潔にするために、抗体に関する上記の一般的な説明は繰り返さないが、同様に適用されることを理解されたい。
第2態様では、本発明は、本発明の結合分子、または、重鎖もしくは軽鎖。結合分子、第1態様のいずれか1つ等の抗原結合フラグメントもしくはモノマー、または、本発明による二重特異性ABPをコードする配列を含む、単離された核酸に関する。
例えば、本発明の核酸によりコードされる成分は、本発明の抗体の1つの鎖の全部または一部であってもよいし、または該成分は前記結合分子のscFvであってもよい。かかる核酸によりコードされる成分は、本発明の抗体の鎖の一方または他方の全部または一部であってもよく、例えば、かかる核酸によりコードされる該成分は本発明の結合分子であってもよい。本発明の核酸は同様に、本発明の結合分子のフラグメント、誘導体、変異体、またはバリアントをコードしていてもよく、かつ/または、ポリヌクレオチド、および前述のものの相補的配列の発現を阻害するための、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、アンチセンスもしくは抑制性核酸(例えば、RNAi/siRNA/shRNAもしくはgRNA分子)を同定するか、解析するか、変異させるかもしくは増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーもしくはシークエンシングプライマーとしての使用に適切および/もしくは十分なポリヌクレオチドである成分であってもよい。
本発明の特定の実施形態では、本発明の核酸は、各場合に表1に示すような、重もしくは軽鎖CDR、重および/もしくは軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3の組み合わせまたは重もしくは軽鎖可変ドメインをコードする配列を有する核酸、またはその機能的断片を含む。他の実施形態では、本発明の核酸は、本明細書中に開示したCDRのいずれか、好ましくは表1の配列中のCDR3をコードする配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%(好ましくは少なくとも75%)の配列同一性を有する(または50、40、30、20、15、10もしくは5以下、好ましくは3、2もしくは1つ以下の塩基の置換、挿入もしくは欠失を有する)核酸配列を含む。
本発明による核酸は、場合によっては自然状態では結合していないポリヌクレオチドに結合している、mRNA、cDNA、合成起源、もしくはゲノム由来のDNAもしくはRNA、またはその幾つかの組み合わせであってもよい。幾つかの実施形態では、かかる核酸は、1以上の(例えば、配列中の特定のヌクレオチドの2、3、4、5、6、7、8、9、10個もしくは20個より多い、特に1~約5個、もしくは好ましくは全例の)非天然(例えば合成)ヌクレオチドを含んでいてもよく、かつ/またはかかる核酸は、標識基もしくはエフェクター基、例えば、本明細書中の他の箇所に記載した標識基もしくはエフェクター基などの別の化学的部分を含んでいてもよい(例えば該化学的部分に結合している)。
ある実施形態では、本発明の核酸は単離されていてもよいし、または実質的に純粋であってもよい。別の実施形態では、本発明の核酸は、組換え、合成および/または改変型であるか、または任意の他の形で非天然であってもよい。例えば、本発明の核酸は、ヒト核酸などの自然の産物と比較して少なくとも1つの核酸置換(または欠失)改変(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多くのかかる改変、特に1~約5のかかる改変、好ましくは2または3のかかる改変)を含有していてもよい。
前記核酸は、任意の適切な長さ、例えば約10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000またはそれ以上のヌクレオチド長でありうる。例えば、siRNA核酸は、好ましくは、約15~約25塩基対の長さ(好ましくは約19~約21塩基対の長さ)であってもよく、shRNA核酸は、好ましくは、20~30塩基対のステム、少なくとも4ヌクレオチドのループ、および3’末端にジヌクレオチドオーバーハングを含んでいてもよく、マイクロRNAは、好ましくは、約22塩基対の長さであってもよく、本発明のABPまたはその成分(例えば、重もしくは軽鎖またはIgG抗体)をコードするmRNAまたはDNA配列は、好ましくは、約500~1,500ヌクレオチドであってもよい。より好ましくは、哺乳動物の抗体の軽鎖をコードする核酸は約630~約650ヌクレオチドであってもよく、また哺乳動物の抗体の重鎖をコードする核酸は約1,300~約1,650ヌクレオチドであってもよい。核酸は1以上の追加の配列、例えば、調節配列を含みうるか、および/またはより大きな核酸の一部でありうる。該核酸は一本鎖または二本鎖でありうるし、またRNAおよび/またはDNAヌクレオチド、ならびにその人工バリアント(例えば、ペプチド核酸)を含みうる。
本発明の核酸の配列中に、突然変異により変化を導入することができる。かかる変化は、それらの性質およびコドン内の位置に応じて、それがコードするポリペプチド(例えば、抗原結合タンパク質)のアミノ酸配列に変化をもたらすことができる。突然変異は当分野で公知の任意の技術を利用して導入することができる。
ある実施形態では、1以上の特定のアミノ酸残基を、例えば、部位特異的突然変異誘発プロトコルを利用して変化させてもよい。別の実施形態では、1以上のランダムに選択した残基を、例えば、ランダム突然変異誘発プロトコルを利用して変化させてもよい。どんな方法で作製するにせよ、変異ポリペプチドを発現させて、所望の特性についてスクリーニングすることができる。変異は、核酸がコードするポリペプチドの生物学的活性を有意に変更することなく該核酸中に導入することができる。例えば、非必須アミノ酸残基でのアミノ酸置換をもたらすヌクレオチド置換を生じさせることができる。
本発明の核酸の配列に(例えば突然変異により)加えてもよい他の変化は、そのコード化ポリペプチドのアミノ酸配列を変更しなくてもよいが、該コード化ポリペプチドの発現のその安定性および/または有効性に変化をもたらしてもよい。例えば、コドン最適化により、所与のポリペプチド配列の発現を、そのヌクレオチドが発現される種に見出される、所与のアミノ酸に対してより多くみられるコドンを利用して改善してもよい。コドン最適化の方法、および代替法(例えば、CpGおよびG/C含量の最適化)は、例えば、Hassら、1996(Current Biology 6:315)、WO1996/09378、WO2006/015789およびWO2002/98443)に記載されている。
第3態様では、本発明は、前記第3態様の核酸と、細胞における前記コードされた結合分子(もしくはさらなる結合分子)、または該結合分子(もしくはさらなる結合分子)の成分(例えば抗体の重鎖もしくは軽鎖)の発現を可能にする1以上の追加の配列特徴とを含む核酸構築物(NAC)に関する。
かかるNACは、細胞における(例えば宿主細胞における)前記コードされた結合分子または該結合分子の成分(例えば抗原結合部位)の発現を可能にする1以上の追加の特徴を含みうる。本発明のNACの例としては、限定するものではないが、プラスミドベクター、ウイルスベクター、mRNA、非エピソーマル哺乳動物ベクターおよび発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターが挙げられる。本発明の核酸構築物は、本発明の核酸を、宿主細胞などの細胞における該核酸の発現に適した形態で含みうる(下記参照)。本発明の核酸構築物は、典型的には、組換え核酸であり、かつ/または単離されていてもよく、かつ/または実質的に純粋であってもよい。組換え核酸は、特にそれらが異なる種および/または合成法、in-vitro法もしくは突然変異誘発法から得られる部分を含む場合、典型的には非天然である。
幾つかの実施形態では、本発明のNACは1以上の構築物を含み、該構築物のいずれかは、重または軽抗体鎖のいずれかをコードする核酸を含む。幾つかの実施形態では、本発明のNACは2つの構築物を含み、両構築物からの発現により完全な抗体分子が生成されうるように、その一方は重抗体鎖をコードする核酸を含み、他方は軽抗体鎖をコードする核酸を含む。幾つかの実施形態では、本発明のNACは、完全な抗体分子が1つの構築物から発現されうるように、重および軽抗体鎖の両方をコードする核酸を含む構築物を含む。他の実施形態では、本発明のNACは、(例えば、そのコードされた結合部位がscFvまたは単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ抗体)である場合)本発明のABPを形成するには十分である一本鎖をコードする単一構築物を含みうる。
幾つかの実施形態では、本発明のNACは定常領域の全てまたは一部をコードする配列を含み、重鎖および/または軽鎖の全体または一部を発現させることができる。
本発明によるNACは、本発明の結合分子をコードするオープンリーディングフレームを、例えば該結合分子の発現、ならびに好ましくはmRNAの安定性および/または該結合分子の発現の増強を可能にする上流ならびに下流要素(例えば、5’および/もしくは3’UTRならびに/またはポリAストレッチ)と共に含むmRNA分子を含んでいてもよい(または該mRNA分子から構成されていてもよい)。細胞内に導入してポリヌクレオチドを発現させるためのNACとしてのmRNAの使用については、例えば、Zangiら Nat.Biotechnol.vol.31,898-907(2013)、Sahinら(2014)Nature Reviews Drug Discovery 13:759およびThessらによるMol.Ther.vol.23 no.9,1456-1464(2015)に記載されている。本発明のmRNA NACに含まれていてもよい特定のUTRとしては、TOP遺伝子の5’UTR(WO2013/143699)、および/またはヒストンステムループ(WO2013/120629)が挙げられる。本発明のmRNA NACは、5’キャップ、例えばm7G(5’)ppp、(5’(A,G(5’)ppp(5’)AもしくはG(5’)ppp(5’)Gおよび/または天然に存在するヌクレオチドの類似体である少なくとも1つのヌクレオチド、例えばホスホロチオエート、ホスホロアミデート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホネート、7-デアザ-グアノシン、5-メチルシトシンもしくはイノシンを含む1以上の化学修飾(EP1 685 844)をさらに含んでいてもよい。
本発明のNAC、例えばDNAベース、レトロウイルスベースおよびmRNAベースのNACを、免疫系の疾患を処置または予防するための遺伝子治療的方法(後述の処置の方法を参照のこと)に使用してもよく、それによって本発明のABPをコードする発現可能な配列を含むNACを細胞または生物に(例えばトランスフェクションにより)投与する。特に、抗体の発現のためのmRNA治療の利用は、WO2008/083949より公知である。
好ましくは、第2および第3態様に関連して、核酸は、表1の配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする配列を含み得る。
第4態様では、本発明は、前記第3または第4態様による核酸またはNACを含む組換え宿主細胞に関する。好ましくは、かかる細胞は、該NACによりコードされる前記結合分子(またはその成分)を発現する能力がある。例えば、本発明の結合分子が2つの別々のポリペプチド鎖(例えばIgGの重および軽鎖)を含むのであれば、その際本発明の細胞は、かかる結合分子の重鎖をコードする(かつ発現できる)第1のNACならびにかかる結合分子の軽鎖をコードする(かつ発現できる)第2のNACを含んでいてもよいし、あるいは、該細胞はかかる結合分子の両鎖をコードする単一のNACを含んでいてもよい。これらの方法で、かかる本発明の細胞は、本発明の機能性(例えば結合性および/または抑制性)結合分子を発現することができるであろう。本発明の(宿主)細胞は、本明細書中の他の箇所に記載した哺乳動物、原核生物または真核生物の宿主細胞のうちの1つであってもよく、特にその場合、該細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
かかる態様のある特定の実施形態では、前記(宿主)細胞はヒト細胞であり、特に該細胞は特定の個人から採取したヒト細胞(例えば自家ヒト細胞)であってもよい。かかる実施形態では、かかるヒト細胞を、本発明のNACを導入するためにin-vitroで増殖させる、および/または操作することができる。特定の個人から得た操作済みヒト細胞の有用性は、例えば治療に使用するために、かかる操作済みヒト細胞の集団をヒト対象に再導入することを含む、本発明の結合分子を産生することでありうる。かかる使用の一部においては、該操作済みヒト細胞を、該細胞を最初に採取した同一ヒト個体に(例えば、自家ヒト細胞として)導入してもよい。
かかる操作の対象となるヒト細胞は、体内の任意の生殖細胞または体細胞型でありうる。例えば、ドナー細胞は、線維芽細胞、B細胞、T細胞、樹状細胞、ケラチノサイト、脂肪細胞、上皮細胞、表皮細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、心臓細胞、食道細胞、筋細胞、メラニン細胞、造血細胞、マクロファージ、単球、および単核細胞からなる群より選択される生殖細胞または体細胞でありうる。該ドナー細胞は、体内の任意の臓器または組織から取得することが可能であり、例えば、該ドナー細胞は、肝臓、胃、腸、肺、膵臓、角膜、皮膚、胆のう、卵巣、精巣、腎臓、心臓、膀胱、および尿道からなる群より選択される臓器からの細胞でありうる。
第5態様では、本発明は、(i)前記第1態様の結合分子、または(ii)前記第2もしくは第3態様の核酸もしくはNAC、または(iii)前記第4態様による組換え宿主細胞、ならびに製薬上許容可能な担体、安定剤および/または賦形剤、を含む医薬組成物に関する。
第6態様では、本発明は、パッケージまたは医薬組成物のキットであって、該キットが別々の容器に(i)前述の態様のいずれか1つに列挙した単離された結合分子、該単離された結合分子をコードする単離された核酸、および/またはかかる核酸もしくは単離された結合分子を含む組換え宿主細胞、ならびに(ii)前述の態様のいずれか1つに列挙した単離されたさらなる結合分子、該単離されたさらなる結合分子をコードする単離された核酸、および/またはかかる核酸または単離されたさらなる結合分子を含む組換え宿主細胞、を含む該パッケージまたは医薬組成物のキットに関するものである。
治療に使用するために、本発明の結合分子、核酸またはNAC(または細胞、例えば宿主細胞)を、動物またはヒトへの投与を容易にするのに適した医薬組成物に製剤化してもよい。用語「医薬組成物」は、製薬用途のための治療活性物質(例えば本発明のABP)を含む物質の混合物を意味する。
例として、本発明の医薬組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分、例えば約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%、好ましくは約1%~約20%、約10%~50%または約40%~90%の活性成分を含みうる。
本明細書中で使用する場合、「製薬上許容可能な」賦形剤、安定化剤または担体という言葉は、薬剤投与に適合する、任意かつ全ての溶媒、可溶化剤、充填剤、安定化剤、結合剤、吸収剤、基剤、緩衝剤、滑沢剤、徐放性ビヒクル、希釈剤、乳化剤、湿潤剤、分散媒、コーティング、抗菌剤または抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むものとする。薬剤的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当分野では周知である。いかなる従来の媒体または薬剤も該活性化合物と適合しない場合を除いては、組成物におけるその使用が想定される。補助的な薬剤もまた該組成物中に組み込むことができる。
本発明の(または本発明と共に使用するための)医薬組成物は、典型的には、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、経口、非経口例えば、髄腔内、動脈内、静脈内、皮内、皮下、経口、経皮(局所)および経粘膜投与が挙げられる。
幾つかの実施形態では、結合分子またはNACを含む前記医薬組成物は、10~1000mgの単位用量形態である。幾つかの実施形態では、結合分子またはNACを含む該医薬組成物は、10~200mgの単位用量形態である。幾つかの実施形態では、結合分子を含む該医薬組成物は200~400mgの単位用量形態である。幾つかの実施形態では、結合分子またはNACを含む該医薬組成物は400~600mgの単位用量形態である。幾つかの実施形態では、結合分子またはNACを含む該医薬組成物は600~800mgの単位用量形態である。幾つかの実施形態では、結合分子またはNACを含む該医薬組成物は800~100mgの単位用量形態である。
結合分子またはNACを含む医薬組成物のための例示的な単位用量形態は、錠剤、カプセル剤(例えば粉剤、顆粒剤、マイクロタブレットもしくはマイクロペレットとして)、懸濁剤または使い捨ての充填済みシリンジである。ある特定の実施形態では、単一用量投与単位を作製するためのキットが提供される。該キットは、乾燥させた活性成分を有する第1容器と、水性製剤を有する第2容器の両方を含みうる。あるいは、該キットは、シングルチャンバー型およびマルチチャンバー型の充填済みシリンジを含有しうる。
かかる活性成分の毒性および治療効力(例えば有効性)は、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50比として表すことができる。大きい治療指数を示す活性物質が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を使用してもよいが、非罹患(uninfected)細胞への潜在的損傷を最小限に抑え、またそれによって副作用を低減するために、罹患組織の部位にかかる化合物を標的化させる送達系を設計するよう注意を払うべきである。
本明細書中に提供する処置の医学的利用および方法の全ての態様および実施形態によれば、結合分子またはNACによる処置を必要とする対象に少なくとも1回投与する有効量は、典型的には、1回投与当たり約0.01mg/kg~約100mg/kg、例えば1回投与当たり約1mg/kg~約10mg/kgである。幾つかの実施形態では、ABPまたはNACの該対象に少なくとも1回投与する該有効量は、1回投与当たり約0.01mg/kg~約0.1mg/kg、1回投与当たり約0.1mg/kg~約1mg/kg、1回投与当たり約1mg/kg~約5mg/kg、1回投与当たり約5mg/kg~約10mg/kg、1回投与当たり約10mg/kg~約50mg/kg、または1回投与当たり約50mg/kg~約100mg/kgである。
疾患の予防または処置のための、結合分子もしくはNAC(またはそれらからなる医薬組成物)の適当な投与量は、処置する疾患の種類、疾患の重症度および経過、結合分子もしくはNACおよび/または医薬組成物を予防目的で投与するのかまたは治療目的で投与するのか、以前の治療、患者の病歴、年齢、体格/体重ならびに結合分子もしくはNACおよび/または医薬組成物への応答、さらには主治医の判断によって決まる。該結合分子もしくはNACおよび/または医薬組成物は、1度に、または一連の処置にわたり適宜患者に投与される。かかる結合分子もしくはNACおよび/または医薬組成物を一連の処置にわたり投与する場合、所与の処置過程のための投与の総回数は、合計で約2、3、4、5、6、7、8、9、10回または約10回より多くの処置で構成されていてもよい。例えば、処置を1日1回(または1日に2、3もしくは4回)1週間、1ヶ月間、またはさらには数ヶ月間施してもよい。ある特定の実施形態では、該処置過程を無期限に続けてもよい。
第6態様では、本発明は医薬に使用するための成分に関するものであり、ここで該成分は、(i)前記第1態様の結合分子もしくは二重特異性ABP、または(ii)前記第2もしくは第3態様の核酸もしくはNAC、または(iii)前記第4態様による組換え宿主細胞および(iv)前記第5態様による医薬組成物、からなるリストより選択される。
関連のある態様では、本発明は、その必要がある哺乳動物対象において疾患、障害、または状態を処置または予防する方法であって、上記のモジュレーティング化合物の有効量を少なくとも1回該対象に投与すること、または、および特に先に記載した前記結合分子、前記NAC、前記(宿主)細胞、または前記医薬組成物の有効量を少なくとも1回該対象に投与することを含む該方法にも関する。
別の関連のある態様では、本発明は、医薬品の製造のため、特に哺乳動物対象における疾患、障害、または状態の処置のための、特に該疾患、障害、または状態が本明細書中に記載したものである場合の、上記の本発明の生成物、または上記モジュレーティング化合物(特に本発明の結合分子)の使用にも関する。
本発明における用語「処置(treatment)」は、疾患(または障害または状態)に対する治療、例えば治療的処置、ならびに予防的または抑制的手段を含むことを意味する。従って、例えば、疾患の発症前の本発明による化合物の投与の成功は、該疾患の処置につながる。「処置」は、疾患(またはその症状)を改善または根絶するための、該疾患の出現後の本発明の化合物の投与もまた包含する。発症後および臨床症状後の本発明のCD28結合分子の投与は、臨床症状の軽減の可能性および恐らくは疾患の改善と併せて、該疾患の処置も含む。「処置の必要がある」ものには、疾患、障害、または状態を既に有する対象(例えば、ヒト対象)、ならびに疾患、障害、または状態を有する傾向があるかまたは有する疑いがあるもの、例えば疾患、障害、または状態を予防すべきものが含まれる。
これらの態様の特定の実施形態では、前記モジュレーティング化合物は上記のもの、および/または本発明の結合分子、NAC、(宿主)細胞、医薬組成物もしくはキット、特に本発明の結合分子である。
本明細書中の他の箇所に記載した他の態様では、哺乳動物対象において疾患、障害、もしくは状態を検出および/または診断するための方法が提供される。
ある特定の実施形態では、前記疾患、障害、または状態は病的免疫応答を特徴とする。
別の特定の実施形態では、前記疾患、障害、または状態は、特に前記生成物がモジュレーティング化合物(例えば、本発明の結合分子、核酸、NACまたは組換え宿主細胞、特に本発明の結合分子)の場合、増殖性疾患(またはかかる障害もしくは疾患に関連する状態)である。
「増殖性疾患」は、細胞の異常増殖を特徴とする障害を指す。増殖性疾患は、細胞成長の速度に関する制限を意味するのではなく、単に成長および細胞***に影響を及ぼす正常な制御の喪失を示している。従って、幾つかの実施形態では、増殖性疾患の細胞は、正常細胞と同じ細胞***速度を有しうるが、かかる成長を制限するシグナルには応答しない。組織または細胞の異常な成長である新生物または腫瘍は、「増殖性疾患」の範囲内にある。がんは当分野で理解されており、周辺組織に浸潤する、および/または新たな定着部位に転移する能力を有する細胞の増殖を特徴とする様々な悪性新生物のいずれかを含む。増殖性疾患としては、がん、粥状硬化症、関節リウマチ、特発性肺線維症および肝臓の硬変症が挙げられる。非がん性増殖性疾患としては、皮膚における細胞の過剰増殖、例えば、乾癬およびその様々な臨床型、ライター症候群、毛孔性紅色粃糠疹、ならびに角化の障害の過剰増殖性変異型(例えば、光線性角化症、老人性角化症)、強皮症なども挙げられる。
より特定の実施形態では、前記増殖性疾患は、がんまたは腫瘍、特に固形腫瘍(またはかかるがんもしくは腫瘍に関連する状態)である。かかる増殖性疾患としては、限定するものではないが、頭頸部がん、扁平上皮がん、多発性骨髄腫、孤立性形質細胞腫、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、胚細胞腫瘍、肝芽腫、肝細胞がん、黒色腫、腎横紋筋肉腫様腫瘍、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、任意の血液悪性腫瘍(例えば、慢性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病、肥満細胞性白血病、肥満細胞性新生物、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群(seary syndrome)、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、慢性骨髄増殖性疾患、骨髄線維症、骨髄化生、全身性肥満細胞症)、ならびに中枢神経系腫瘍(例えば、脳がん、膠芽腫、非膠芽腫脳がん、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍、髄芽腫、星細胞腫、退形成性星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫および脈絡叢乳頭腫)、骨髄増殖性疾患(例えば、真性赤血球増加症、血小板血症、特発性骨髄線維症)、軟部組織肉腫、甲状腺がん、子宮内膜がん、カルチノイドがん、または肝がんが挙げられる。
ある好適な実施形態では、本発明の様々な態様は、例えば、がん腫(例えば、乳がん、前立腺がん、胃がん、肺がん、大腸および/もしくは結腸がん、肝細胞がん、黒色腫)、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫および菌状息肉症)、白血病、肉腫、中皮腫、脳がん(例えば神経膠腫)、胚細胞腫(例えば、精巣がんおよび卵巣がん)、絨毛がん、腎がん、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、または胃がんを含むがこれらに限定されないかかる増殖性疾患を検出/診断、予防および/または処置するために使用する本発明の結合分子に関する。
従って、好適な実施形態では、本発明による結合分子またはNACは、がん、例えば、副腎腫瘍、AIDS関連がん、胞巣状軟部肉腫、星細胞系腫瘍、膀胱がん、骨がん、脳および脊髄のがん、転移性脳腫瘍、乳がん、頸動脈球腫瘍、子宮頸がん、軟骨肉腫、脊索腫、色素嫌性腎細胞がん、明細胞がん、結腸がん、大腸がん、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、ユーイング腫瘍、骨外性粘液型軟骨肉腫、骨性線維形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、骨の線維性異形成症、胆のうまたは胆管がん、胃がん、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、頭頸部がん、肝細胞がん、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎がん、白血病、脂肪腫/良性脂肪腫性腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝がん、リンパ腫、肺がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌腺腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、甲状腺乳頭がん、副甲状腺腫瘍、小児がん、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺がん、後部ブドウ膜黒色腫、稀な血液障害、転移性腎がん、横紋筋肉腫様腫瘍、横紋筋肉腫(rhabdomysarcoma)、肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、胃がん、滑膜肉腫、精巣がん、胸腺がん、胸腺腫、転移性甲状腺がん、ならびに子宮がんの細胞からなる群より選択されるがん細胞の存在を特徴とするがんの予防および/または処置に使用するためのものである。
他の方法では、前記モジュレーティング(例えば抑制)化合物(例えば、本発明のものなどの結合分子)を、異なる抗増殖治療、特に異なる抗がん治療と組み合わせて使用してもよく、特にここで、その異なる抗増殖治療は免疫療法、特に免疫チェックポイント分子に対するリガンドを用いる免疫療法である。従って、前記組成物は、その必要がある対象における増殖性疾患の処置に使用するためのものでありうるし、ここで該対象には免疫療法による共処置、特に免疫チェックポイント分子に対するリガンドとの共治療(例えば併用処置)を行う。
かかる実施形態では、前記リガンドは、免疫(抑制性)チェックポイント分子に結合するものである。例えば、かかるチェックポイント分子は、A2AR、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1(もしくはそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2のうちの1つ)、TIM-3(もしくはそのリガンドであるガレクチン-9)、TIGIT、または例えばFLT3、PSMAもしくは他の腫瘍関連標的をターゲティングする抗原結合分子からなる群より選択されるものであってもよい。特定のかかる実施形態では、該リガンドは、CTLA-4、PD-1およびPD-L1から選択されるチェックポイント分子に結合する。他のより具体的な実施形態では、該リガンドは、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、BGB-A317、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブからなる群より選択される抗体、特に、イピリムマブ(YERVOY)、ニボルマブ(OPDIVO)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA)およびアテゾリズマブ(TECENTRIQ)からなる群より選択される抗体である。
本発明の治療における方法また使用(例えば、本発明のABPに関与するもの)を、かかる他の手法のいずれか(例えば、免疫(抑制性)チェックポイント分子に結合するリガンドなどの、別の作用物質またはがん免疫療法)と共に併用処置に利用する場合、併用処置レジメンであるかかる方法または使用は、かかる曝露/投与が同時である実施形態を含んでいてもよい。代替的実施形態、特に本発明のABPをかかる他の手法の前に投与するそれらの実施形態では、かかる投与は連続的であってもよい。例えば、本発明のかかる化合物を、他の手法の約14日以内(例えば他の手法の前)、例えば他の手法の約10日、7日、5日、2日または1日以内(例えば他の手法の前)に連続的に投与してもよく、さらに例えばここで、本発明の化合物を、他の手法の約48時間、24時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分、15分または5分以内(例えば他の手法の前)に連続的に投与してもよい。
さらなる態様では、本発明は、対象における増殖性疾患の予防および/または処置のための方法であって、処置を必要とする対象への、本明細書に列挙した成分の治療上有効な量の投与を含み、かつここで該増殖性疾患が該増殖性疾患に関連する細胞における抗原性タンパク質の発現を特徴とする、該方法に関する。好ましい実施形態では、および本明細書の他の箇所で開示されるように、かかる処置は、さらなる結合分子の追加投与を含む。
上記の通り、ある態様では、上記ABPを発現する能力がある細胞、例えば(組換え)宿主細胞またはハイブリドーマが本明細書中に提供される。代替的な態様では、上記のABPまたはABPの成分をコードする少なくとも1つのNACを含む細胞が本明細書中に提供される。本発明の細胞は、本発明のABPおよび/またはNACを作製するために、本明細書中に提供する方法において使用することができる。
従って、別の態様では、本発明は、第1態様の結合分子を発現する能力がある組換え細胞系を作製する方法であって、
・適切な宿主細胞を用意するステップ、
・本発明の結合分子をコードするコード配列を含む少なくとも1つの遺伝子構築物を提供するステップ、
・かかる適切な宿主細胞に、該遺伝子構築物を導入するステップ、および
・場合によっては、該結合分子の発現を可能にする条件下でかかる適切な宿主細胞により該遺伝子構築物を発現させるステップ
を含む該方法に関する。
さらに別の態様では、例えば前記結合分子の発現を可能にする条件下で本発明の1以上の細胞を培養することを含む、上記のように該結合分子を作製する方法が本明細書中に提供される。
幾つかのさらなる態様および実施形態では、本発明は以下の項目に関するものであり、該項目は他の本明細書中に開示および記載した態様および実施形態、ならびに実施例を考慮して解釈されるものとする:
項目1.対象における疾患の処置への使用のための、少なくとも2つの第1抗原結合部位と少なくとも1つの第2抗原結合部位とを含む、少なくとも二重特異性である結合分子であって、ここで
(i)該少なくとも2つの第1抗原結合部位は、T細胞特異的表面糖タンパク質CD28のエピトープに特異的に結合する能力があり、かつ
(ii)該少なくとも1つの第2抗原結合部位は、該対象において該疾患に関連する細胞上または細胞内で発現される抗原標的タンパク質のエピトープに結合する能力があり、
ここで該処置が該対象への該結合分子の投与を含む、該結合分子。
項目2.前記少なくとも2つの第1抗原結合部位および/または前記少なくとも1つの第2抗原結合部位が抗体または抗体様分子に由来するものであり、かつここで該少なくとも2つの第1抗原結合部位が各々、F(ab’)またはFabではなく、かつ好ましくは一本鎖構築物である抗体の抗原結合フラグメントとして、最も好ましくは一本鎖Fv(scFv)として提供される、項目1の使用のための結合分子。
項目3.前記結合分子が、前記抗原標的タンパク質を発現する第2細胞の非存在下でCD28陽性免疫細胞(例えばT細胞)である第1細胞と接触させた場合に、CD28シグナル伝達を誘導せず、かつ好ましくは該免疫細胞(T細胞)を活性化しない、項目1または2の使用のための結合分子。
項目4.前記抗原標的タンパク質が、増殖性疾患に関連する細胞上に発現されるタンパク質、寄生生物、ウイルスまたは細菌などの病原性生物に関連するタンパク質または他の分子から選択される、項目1~3のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目5.前記抗原標的タンパク質がエンドグリンである、項目1~4のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目6.前記少なくとも2つの第1抗原結合部位の各々が、共有結合的または非共有結合的のように直接、前記少なくとも1つの第2抗原結合部位と連結されている、項目1~5のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目7.少なくとも2つの第2抗原結合部位を含む、項目1~6のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目8.前記少なくとも2つの第1抗原結合部位がCD28上の同一エピトープに結合し、好ましくはここで該少なくとも2つの抗原結合部位が同一である、項目1~7のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目9.前記少なくとも2つの第1抗原結合部位のうちの少なくとも1つと前記少なくとも1つの第2抗原結合部位とが、好ましくはIgGの、1つ以上の抗体由来ヒト定常ドメインを含むタンパク質リンカーにより互いに結合している、例えばそれらがヒトIgG由来のCH1、CH2および/またはCH3を介して結合している、項目1~8のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目10.前記少なくとも2つの第1抗原結合部位が抗体重鎖配列および抗体軽鎖配列(好ましくは少なくともCDR1~CDR3)を含み、各々が配列番号2、3、4、5、7、8または9に示す抗体配列中に含まれるC末端結合部位に由来するものであり、かつ該C末端結合部位と同一の抗原に競合的に結合する、項目1~9のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目11.前記少なくとも1つの第2抗原結合部位が抗体重鎖配列および抗体軽鎖配列を含み、各々が配列番号1および2からなる抗体中に含まれるN末端結合部位に由来するものであり、かつ該N末端結合部位と同一の抗原に競合的に結合する、項目1~10のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目12.前記結合分子が免疫細胞および疾患に関連する細胞に特異的に結合し、好ましくはここで該免疫細胞が細胞傷害性免疫応答またはヘルパー細胞媒介性免疫応答などの細胞媒介性免疫応答に関与する免疫細胞である、項目1~11のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目13.前記免疫細胞が好ましくは細胞傷害性細胞またはCD28およびCD3(およびTCR)等のヘルパー細胞を発現する細胞であり、かつ好ましくはT細胞である、項目1~12のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目14.前記対象が、CD3/TCRシグナル伝達が処置により、または抗原タンパク質などの疾患関連抗原に応答して内因的に活性化されることを特徴とする、項目1~13のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目15.前記処置が疾患に関連する細胞に対する免疫細胞の刺激および/または活性化、例えばT細胞の活性化および/または刺激をさらに含む、項目1~14のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目16.2つの抗体重鎖配列と、2つの抗体軽鎖配列とを含み、かつここで
(i)前記少なくとも2つの第1抗原結合部位の一方が該2つの抗体軽鎖配列の一方のC末端に共有結合的に連結されており、かつ該少なくとも2つの第1抗原結合部位の他方が該2つの抗体軽鎖配列の他方のC末端に共有結合的に連結されているか、または
(ii)該少なくとも2つの第1抗原結合部位の一方が該2つの抗体重鎖配列の一方のC末端に共有結合的に連結されており、かつ該少なくとも2つの第1抗原結合部位の他方が該2つの抗体重鎖配列の他方のC末端に共有結合的に連結されている、
項目1~15のいずれか1つの使用のための結合分子。
項目17.前記結合部位がペプチドリンカーなしで、または以下のアミノ酸を有する短いペプチドリンカーにより、または少なくとも6個、好ましくは最大50個のアミノ酸を有する長いペプチドリンカーを介して連結され、ここでさらに好ましくは該ペプチドリンカーが(GGGGS)リンカーであり、かつnが2以上である、項目16の使用のための結合分子。
項目18.前記少なくとも1つの第2抗原結合部位がFab、F(ab’)、または最も好ましくはIgGを含む、前述の項目のうちのいずれか1つの使用のための結合分子。
項目19.前記処置が、(i)二重特異性であり、かつCD3および/もしくはT細胞受容体(TCR)への結合を介するなどしてT細胞に特異的に結合(およびT細胞を活性化)する能力があるさらなる結合分子、またはT細胞活性化のためのシグナルを提供もしくは増強する能力がある任意の他の試薬、例えば(ii)キメラ抗原受容体(CAR)などの抗原受容体(該受容体は抗原標的タンパク質に特異的に結合する能力がある)を発現する遺伝子改変免疫細胞(異種もしくは自己T細胞)または(iii)感染因子もしくはがん細胞由来の抗原構造(TAAもしくはTSA)を提供するワクチンまたは(iv)PD1などのチェックポイント分子を介して抑制性「第2シグナル」を遮断する試薬、の連続または同時投与を含む、項目1~18のいずれか1つの項目の使用のための結合分子。かかる試薬はチェックポイント遮断剤と称される。
項目20.前記さらなる結合分子が少なくとも二重特異性であり、かつ少なくとも1つの第3抗原結合部位と少なくとも1つの第4抗原結合部位とを含み、ここで
(i)該少なくとも1つの第3抗原結合部位は、CD3および/またはT細胞受容体(TCR)(CD3/TCR)に特異的に結合する能力があり、かつ
(ii)該少なくとも1つの第4抗原結合部位は、前記対象において前記疾患に関連する細胞上または細胞内で発現されるさらなる抗原標的タンパク質のエピトープに特異的に結合する能力がある、
項目19の使用のための結合分子。
項目21.前記抗原標的タンパク質および前記さらなる抗原標的タンパク質が(i)同一であるか、または(ii)異なりはするが互いに空間的に密に近接している、例えば疾患に関連する同一細胞上に発現されるかもしくは同一疾患組織に位置する、例えば同一腫瘍環境で発現される、項目17の使用のための結合分子。
項目22.前記疾患が、好ましくはがんなどのがん疾患、例えば肺がん、乳がん、大腸がん、胃がん、肝細胞がん、膵臓がん、卵巣がん、黒色腫、骨髄腫、腎臓がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、膀胱がんまたは前立腺がんから選択される増殖性疾患であって、特に黒色腫、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、膀胱がん(例えば尿路上皮がん)、腎臓がん(例えば腎細胞がん)、頭頸部がん(例えば該頭頸部の扁平上皮がん)およびホジキンリンパ腫からなるリストより選択される増殖性疾患である、項目1~18のいずれか1つに記載の使用のための結合分子。好ましくは、該増殖性疾患は黒色腫、または肺がん(例えば非小細胞肺がん)、好ましくは前記標的抗原タンパク質の発現に関して陽性のがんである。
項目23.単離された結合分子であって、該単離された結合分子が前述の項目のうちのいずれか1つに列挙した結合分子である、該単離された結合分子。
項目24.項目23の単離された結合分子をコードする単離された核酸。
項目25.項目23の単離された結合分子または項目24による単離された核酸を含む、組換え宿主細胞。
項目26.項目23の単離された結合分子、項目24の単離された核酸、項目25の組換え宿主細胞を、製薬上許容可能な担体および/または賦形剤と共に含む、医薬組成物。
項目27.項目19または20に列挙した、単離されたさらなる結合分子をさらに含む、項目26の医薬組成物。
項目28.パッケージまたは医薬組成物のキットであって、該キットが別々の容器に(i)前述の項目のうちのいずれか1つに列挙した単離された結合分子、該単離された結合分子をコードする単離された核酸、および/またはかかる核酸または単離された結合分子を含む組換え宿主細胞、ならびに(ii)前述の項目のうちのいずれか1つに列挙した単離されたさらなる結合分子、該単離されたさらなる結合分子をコードする単離された核酸、および/またはかかる核酸または単離されたさらなる結合分子を含む組換え宿主細胞、を含む、該キット。
本明細書中で使用する「[本]発明の」、「本発明による(in accordance with the invention)」、「本発明による(according to the invention)」などの用語は、本明細書中に記載した、および/または項目別に示した本発明の全ての態様および実施形態を指すものとする。
本明細書中で使用する場合、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる」の両方を包含するものと解釈され、それらの意味は共に、具体的に意図され、従って個別に開示された本発明による実施形態である。本明細書中で使用する場合、「および/または」は、2つの特定の特徴または成分の各々の、他方と併せた、または他方なしの具体的な開示とみなされる。例えば、「Aおよび/またはB」は、まるで各々が本明細書中に個別に記載されているかのような、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBの各々の具体的な開示とみなされる。本発明との関連において、用語「約」および「およそ」は、当該特徴の技術的効果をさらに確実なものにすると当業者には理解される、精度の間隔(interval of accuracy)を意味する。該用語は典型的には、示された数値からの±20%、±15%、±10%、および例えば±5%の偏差を示す。通常の技術を有する者には理解されるように、所与の技術的効果に関する数値の具体的なかかる偏差は、該技術的効果の性質によって決まる。例えば、天然の、または生物学的な技術的効果は、一般に、人工的または工学的な技術的効果に関するものより大きなかかる偏差を有する場合がある。通常の技術を有する者には理解されるように、所与の技術的効果に関する数値の具体的なかかる偏差は、該技術的効果の性質によって決まる。例えば、天然の、または生物学的な技術的効果は、一般に、人工的または工学的な技術的効果に関するものより大きなかかる偏差を有する場合がある。単数名詞に言及する際に不定冠詞または定冠詞、例えば「a」、「an」または「the」が使用されている場合、他のものが具体的に記載されていない限り、これはその名詞の複数形を含む。
特定の問題または環境への本発明の教示内容の適用、ならびに本発明のバリエーションまたはそれに対する追加の特徴(例えば、さらなる態様および実施形態)の包含は、本明細書中に含まれる教示内容を考慮すれば、当分野の通常の技術を有する者の能力の範囲内であることは理解されよう。
文脈上他を指示しない限り、上記の特徴の説明および定義は、本発明のいかなる特定の態様または実施形態にも限定されず、記載した全ての態様および実施形態に等しく適用される。
本明細書中で引用した全ての参考文献、特許、および刊行物は、その全内容が参照により本明細書中に組み込まれるものとする。
図面および配列の簡単な説明
図面は以下の内容を示すものである。
図1は、異なる細胞系におけるB7H3発現およびエンドグリン発現の定量化を示す図である。図示した細胞U937、HT-29およびHEK293T(DSMZ、Braunschweig、Germany)をエンドグリン抗体mKro-22と共にインキュベートしてから、QIFIKITアッセイ系を使用したフローサイトメトリーにより解析した(ND:不検出)。 図2は、新たに開発したエンドグリン抗体のパネルからの高親和性結合物質の選択を示す図である。種々の抗体の親和性は、フローサイトメトリー(A)およびBiacore解析(B)により測定した。 図2-1の続きである。 図3は、本出願において使用した二重特異性抗体バリアントを示す図であり、(A)はT細胞活性化のための減弱化された第1シグナルを与えるB7H3×TCR/CD3特異性を有するIgGscフォーマットのbsAb(bsAbCD3)を示す図であり(B~E)はIgGscフォーマットの二重特異性エンドグリン×CD28抗体のバリアント(BiCo)を示す図である。一本鎖部分を、種々の長さのリンカーを使用して図に示す通りにIgG抗体の重鎖および軽鎖に融合させた。該BiCoバリアントをHc-L(B)、Hc+L(C)、Lc-L(D)およびLc+L(E)と指定し、(F)はC末端側の一本鎖部分ではなくむしろN末端側のFab2部分としてそのCD28結合部を含有するBiCoバリアントを示す図である。さらなる情報については配列表を参照されたい。 図4は、ヒトCD4+およびCD8+T細胞上に発現されたCD28への、前記の種々のBiCoバリアントの結合を示す図である。該バリアントの正常ヒトT細胞への結合は、各構築物とのPBMCのインキュベーションとそれに続くフローサイトメトリーによる解析後に測定した。 図5は、高および低エンドグリン発現を呈するU937およびHT-29標的細胞に対する前記BiCoバリアントの共刺激活性をそれぞれ示す図である。単球除去(Monocyte depleted)PBMCを、放射線を照射した標的細胞ならびに二重特異性B7H3×CD3構築物および4種のBiCoバリアントのうちの1種と共に(A)および(F)の左上およびX軸にそれぞれ示した指示濃度でインキュベートした。3日間のインキュベーションの後、3Hチミジンの取込みを測定することでT細胞増殖を評価した。EおよびJには、各標的細胞の非存在下での対照実験が示されている。これらの実験におけるbsAbCD3およびBiCoの濃度は、それぞれ1μg/mLおよび2μg/mLとした。 図5-1の続きである。 図6は、高エンドグリン発現および検出不可能なエンドグリン発現を示すU937およびHEK293標的細胞に対する前記BiCoバリアントの共刺激活性をそれぞれ示す図である。実験条件は、一定濃度の前記bsAbCD3および前記BiCo(それぞれ0,2μg/mLおよび0,4μg/mL)を使用したことを除き、図5のものと同一とした。 図7は、前記BiCoバリアントおよびその構築の際に使用した単一特異性の2価CD28抗体の共刺激活性を示す図である。実験条件は図5のものと同一とした。抗体濃度は、前記bsAbCD3については0.2μg/mL、また全ての他の抗体については1.0μg/mLとした。 図8は、免疫不全マウスモデルにおけるBiCo1(Lc+Lバリアント)によるbsAbCD3の抗腫瘍活性の増強を示す図である。3×10個のHT-29結腸がん細胞をNSGマウスにi.v.注射した。6時間後、ヒトPBMC(2×10個)を単独で、または2nMのbsAbCD3、50nMのBiCo-1もしくは50nMのBiCo-ctr(単独で、または図に示す通りに組み合わせて)と共に静脈内に投与した。抗体による処置を4日目に繰り返した。8日目にマウスを犠牲にし、肺内のヒトPBMCおよび腫瘍細胞を酵素消化後にフローサイトメトリーにより定量化した。左パネルは肺内のがん細胞%を示し、右パネルはエフェクター細胞の増殖を示している。統計的分析はMann Whitney検定を利用して実施した(**p<0.01、***p<0.001)。BiCo-ctrはLc+Lフォーマットの非関連標的特異性(PSMA×CD28)を有するBiCoである。 図9は、本発明のさらなる二重特異性抗体(「BiCo-2」)の結果を示す図であり、パネルAは本発明の二重特異性抗体両方の構成を表しており、パネルBは、PSMA×CD3特異性を有する二重特異性抗体であるCC-1の様々な濃度(左側)と組み合わせた、B7H3×CD28特異性を有するBiCo(BiCo-2、X軸)の様々な濃度によるT細胞増殖を表している。該図面の右パネルは、BiCo-2を対照BiCo(PSMA結合部を非関連標的抗原(MOPC)を指向する抗体に置き換えたもの)に置き換えた同一の実験設定を利用したデータを提示したものである。異なる健常ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)を用いた3回の実験のうちの代表的な1例を示す。 図9-1の続きである。 図10は、本発明のさらなる二重特異性抗体(「BiCo-3」)の結果を示す図であり、パネルAは本発明の二重特異性抗体両方の構成を図式的に表したものであり、該図面のパネルBは、(i)ヒトFAP(hFAPトランスフェクト化Sp2/0細胞)もしくはPSMA(LNCaP細胞)を発現する2つの異なる標的細胞、「Sp2/0hFAP」と指定した設定、または(ii)PSMA発現細胞およびコーティングした組換えFAPタンパク質(「hFAP」)の存在下で、FAP×CD28特異性を有する一定濃度の2種のBiCoバリアント(BiCo-3、0.1μg/mL=0.5nM)およびPSMA×CD3特異性を有する低濃度の二重特異性抗体(CC-1、1ng/mL=0.005nM)により誘導されたT細胞増殖を表したものである。「mFAP」と表記されたバーは被覆マウスFAPタンパク質の存在下での結果を表している。2つのBiCoバリアントを使用しており、1つはヒトFAPとの排他的反応性を発揮する抗体(「Sibro×9.3-8」)を含み、また1つはヒトおよびマウスFAPに対する反応性を発揮する抗体(「MFP5×9.3-8」)を含むことに留意されたい。該図面のパネルCでは、汎(pan)クローン性T細胞刺激因子PHAを用いるものを含めた、抗体の非存在下での様々な対照環境を検討している。 図10-1の続きである。 図11は、二重特異性共刺激性抗体フォーマットの比較を示す図である。パネルAはこれらの実験に使用した構築物を表しており、パネルBは、B7H3を発現する(ただしエンドグリンは発現しない)LNCaP細胞、B7H3×CD3特異性を有する二重特異性抗体(bsAb)(CC-3)およびエンドグリン×CD28特異性を有する様々なbsAbの存在下でのT細胞増殖を示している。Eng×CD28 Lc+Lは、例えば、図8に示した実験において使用し、かつBiCo-1と指定したBiCo分子を指す。これらの分子に共通するのは、CD28抗体がC末端側の2価一本鎖部分として含有されているということである。CD28×EngLc+LおよびCD28×EngHc+Lは、N末端側の2価CD28抗体の軽鎖または重鎖に融合させたエンドグリン結合単一C末端2価一本鎖部分である、逆の配置を有する分子を指す(パネルA中の逆位BiCo-1(BiCo-1 inverted))。パネルCには、ポリクローナルT細胞マイトジェンPHAを含むものを含めて評価した、抗体の非存在下での様々な対照環境が示されている。 図11-1の続きである。 図12は、本発明の改善されたhu9.3.8.V1 CD28抗体構築物の配列および表示された位置の変異を示す図である。 図13は、本発明のBiCo構築物の最適化を示す図である。CD28 scFvの配列バリアントをタンパク質凝集について試験した。(i)FcR結合の減弱化および血清半減期の延長をもたらす新規Fc改変(LALA-YTE)ならびに(ii)凝集傾向および生成率を改善するための前記CD28抗体のVHおよびVLドメイン中の5つの改変を含有する、オリジナルのBiCo-1分子の改良版であるBiCo-1opt(=バリアント1)の特徴付けを示している。 図14は、前記の旧型のBiCo1分子と、前記の最適化バリアント1との共刺激活性の比較を示す図である。
配列を以下に示す:
表1:本発明の抗体の配列:
Figure 2023547507000002
Figure 2023547507000003
Figure 2023547507000004
Figure 2023547507000005
Figure 2023547507000006
Figure 2023547507000007
表2:エンドグリン抗体の配列:
Figure 2023547507000008
Figure 2023547507000009
本発明のある特定の態様および実施形態を、次に、例を挙げかつ本明細書中に記載した説明、図面および表を参照して例示する。本発明の方法、使用および他の態様のかかる具体例は単に代表的なものであって、本発明の範囲をかかる代表例のみに限定するとみなすべきではない。
実施例を以下に示す。
実施例1:CD28およびエンドグリンへの結合特異性を有する二重特異性共刺激性(「BiCo」)抗体
本発明のために使用したIgGベースの分子は、部分的に、一本鎖部分が正常なIgG抗体重鎖のC末端の後に融合されている、ColomaおよびMorrisonにより記載された構築物(IgGscフォーマット)を基にしている[22]。さらに、本発明者らは、2つの一本鎖を軽鎖のC末端に融合させた構築物を使用した。本発明者らはさらに、その融合部位に短いリンカーおよび長いリンカーを付加することで、CD28結合部分の多様な親和性を可能にした(図3を参照されたい)。
1例として、図3に示す共刺激性構築物中のTAA抗体は、がん関連線維芽細胞上ならびに一部の白血病細胞上および、最も重要なことには、多くの固形腫瘍の血管系で発現される、エンドグリン(CD105)に対するものである[23]。この試薬はその優れた親和性に基づいて新たに作製した抗体のパネルから選択した(図2)。使用したエンドグリンクローンを配列決定し、該配列を表2に示した。該クローンは、改善された結合親和性を特徴とする。
前記BiCoを、T細胞活性化のための減弱化「第1シグナル」を与えるTCR/CD3複合体の特定のエピトープに対するB7H3×TCR/CD3 bsAb(bsAbCD3)と組み合わせて評価した。これは大きくCD28に依存する活性化をもたらし、またその結果として、上記の組み合わせの特異性の増大をもたらした。
前記抗体を、ヒト単球除去PBMC(末梢血単核細胞)培養物と、エンドグリンの(i)高い、または(ii)低い、または(iii)検出不可能な発現を呈した放射線照射腫瘍標的細胞との共培養物において試験した。単球除去PBMCは、活性化された単球系統の細胞上に発現されるエンドグリンへの前記BiCoバリアントの結合を阻止するために使用した。
1回目の実験において、全BiCoバリアントが、標的細胞に限定した形でPBMC培養物中のT細胞のbsAbCD3誘導性の活性化を大幅に増強したことが示された。やや高い抗体濃度における標的細胞への限定が、(i)標的細胞の非存在下、またはより一層具体的には(ii)該BiCoの標的抗原であるエンドグリンを欠くが該bsAbCD3の標的抗原であるB7H3は発現する標的細胞の存在下、での活性の欠損により実証された。重要なことに、これらの実験において前記2つのbsAbの併用のみがT細胞活性化を効果的に誘導することが明確に実証され、従ってT細胞活性化は、この実証された標的細胞への限定によれば、2つの標的抗原の存在に依存している。前記bsAbCD3も前記BiCoのいずれも、単独では活性を発揮しなかった。
2回目の実験においては、標的細胞の存在下で非発現標的抗原(フィブロネクチンのエクストラドメインB、EDB)を指向するBiCo分子は共刺激活性を呈示しないことも示されている。逆に、単一特異性の2価CD28抗体(前記BiCo構築物中にC末端一本鎖部分として存在)は、該標的細胞上のいずれか特定の抗原の発現にかかわらず顕著な共刺激活性を発揮する。
従って、上記で実証された標的細胞への限定は予想外である。これは、CD28結合部をC末端一本鎖部分ではなくむしろN末端Fab2部分として含有する、特定のエンドグリンターゲティングBiCoバリアントであるHc+Lの非限定共刺激活性により最も顕著に例証される(図3Fおよび7を参照されたい)。
最後に、前記BiCoバリアントLc+Lが、ヒトPBMCを養子移入した免疫不全マウスにおいてbsAbCD3の抗腫瘍活性を大幅に増強することが実証された(図8)。
実施例2:CD28およびB7H3への結合特異性を有する二重特異性共刺激性(「BiCo-2」)抗体
BiCo-2抗体の構成を図9Aに示す。該BiCo-2構築物のB7H3への結合機能性は、WO2021/099347(その全内容が参照により本明細書中に組み込まれるものとする)に開示されている抗体クローン7C4に由来するものである。二重特異性CC-1構築物はWO/2017/121905(その全内容が参照により本明細書中に組み込まれるものとする)に記載されている。
単球除去PBMC(2×10個/ウェル)を、96ウェル組織培養プレート中で標的抗原PSMAおよびB7H3を発現する放射線照射LNCaP前立腺がん細胞(0,5×10個/ウェル)ならびに指示抗体濃度と共にインキュベートした。2日後に3Hチミジン(0.5μCi/ウェル)を添加し、さらに20時間後に該プレートから採取し、細胞に取り込まれた放射能をMicro Betaシンチレーションカウンターを使用して測定した。
興味深いことに、前記BiCo-2構築物はCC-1により誘導されるT細胞増殖をかなり増強するが、非関連標的抗原を指向する以外は同一の対照抗体は増強しない。該BiCo-2の効果は低いCC-1濃度(1ng/mL)で最も顕著であり、その際、増殖はBiCo-1にほぼ完全に依存している。より高いCC-1濃度では、有意なT細胞増殖がCC-1のみにより誘導される。
実施例3:CD28および線維芽細胞活性化タンパク質(FAB)への結合特異性を有するさらなる二重特異性共刺激性(「BiCo-3」)抗体
BiCo-3抗体の構成を図10Aに示す。該BiCo-3構築物のFABへの結合機能性は、hFABに対する抗体クローンSibro×9.3-8およびmFABに対するMFP5×9.3-に由来するものである。二重特異性CC-1構築物は、WO/2017/121905(その全内容が参照により本明細書中に組み込まれるものとする)に記載されている。
ヒト単球除去PBMC(10個/ウェル)を、0.1μg/mLのFAP×CD28バリアントおよび1ng/mLのPSMA×CD3抗体と共に、ヒトFAPをトランスフェクトした放射線照射Sp2/0細胞(0.5×10個/ウェル)およびPSMAを発現する放射線照射ヒトLNCaP細胞(0.5×10個/ウェル)を合わせてインキュベートした。あるいは、放射線照射LNCaP細胞のみを、1μg/mLの組換えヒトまたはマウスFAPで予めコーティングしたウェルに使用した。2日後に3Hチミジン(0.5μCi/ウェル)を添加し、さらに20時間後にプレートから採取し、細胞に取り込まれた放射能をMicro Betaシンチレーションカウンターを使用して測定した。結果を図10BおよびCに示す。
結果は、FAP×CD28特異性を有するBiCo分子の添加が、たとえ異なる標的抗原が別々の細胞上に、またはコーティングされたタンパク質として提示されるとしても、低濃度のCC-1により誘導されるT細胞増殖を顕著かつ特異的に増強することを示している。
実施例4:標的細胞への限定は、1つの二重特異性共刺激性抗体構築物中にF(ab)標的細胞特異的抗体と組み合わせたscFv抗CD28を有する構築物によってのみ可能である
単球除去PBMC(10個/ウェル)を、96ウェル組織培養プレート中で放射線照射LNCaP細胞(0.5×10個/ウェル)、CC-3(10ng/mL)および指示濃度の二重特異性共刺激物質と共にインキュベートした。2日後に3Hチミジン(0.5μCi/ウェル)を添加し、さらに20時間後に該プレートから採取し、細胞に取り込まれた放射能をMicro Betaシンチレーションカウンターを使用して測定した。結果を図11に示す。
天然のN末端CD28結合部を有する逆位分子は、それらが結合しうるエンドグリンが存在しないにもかかわらず、CC-3と合わせると著明な共刺激を発揮する。BiCo-1の場合、このタイプの非特異的かつ望ましくない共刺激ははるかに目立たず、非常に高い抗体濃度でのみ検出される。この結果は、本明細書中に開示したこのBiCo構成が他の既知二重特異性フォーマットより有利であることを示している。
実施例5:BiCo-1配列の最適化
図12に列挙したCD28 scFv(重軽鎖配列)に対する配列改変を導入し、CHO細胞にその各構築物をトランスフェクトし、さらにタンパク質を、Superdex S200カラムを使用してプロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した(AおよびB)。Cではオリジナルのタンパク質および改変タンパク質の凝集塊%および生成速度を比較した。
図13の結果は、最適化された分子がより低い凝集傾向と改善された生成率を示すことを示している。
前記の新規BiCoバリアントを前記オリジナル分子と比較するために、単球除去PBMCを、B7H3およびエンドグリンを発現する放射線照射U937細胞、二重特異性B7H3×CD3抗体ならびにエンドグリン×CD28特異性を有するBiCo-1抗体の旧型(old)および最適化バリアント(v1=HV)と共にインキュベートした。2日後に3Hチミジン(0.5μCi/ウェル)を添加し、さらに20時間後にプレートから採取し、細胞に取り込まれた放射能をMicro Betaシンチレーションカウンターを使用して測定した。
図14に示す結果は、前記の2つのBiCo-1バリアントにより誘導されたT細胞増殖は識別不能であったことを示している。従って該配列バリアントは、同等の生物学的活性を有するが凝集しにくい。
参考文献
以下に参考文献を示す:
Figure 2023547507000010
Figure 2023547507000011

Claims (30)

  1. 対象における疾患の処置への使用のための、少なくとも2つの第1抗原結合部位と少なくとも1つの第2抗原結合部位とを含む、少なくとも二重特異性である結合分子であって、ここで
    (i)該少なくとも2つの第1抗原結合部位は、T細胞特異的表面糖タンパク質CD28のエピトープに特異的に結合する能力があり、かつ各々が抗体の抗原結合フラグメントとして提供されかつFab、F(ab’)2またはIgGではなく、および
    (ii)該少なくとも1つの第2抗原結合部位は、該対象において該疾患に関連する細胞上または細胞内で発現される抗原標的タンパク質のエピトープに結合する能力があり、かつここで該少なくとも1つの第2抗原結合部位が抗体または抗体様分子に由来するものであり、かつFab、F(ab’)2またはIgGを含み、
    ここで該処置が該対象への該結合分子の投与を含む、該結合分子。
  2. 前記少なくとも2つの第1抗原結合部位が各々一本鎖Fv(scFv)として提供される、請求項1記載の使用のための結合分子。
  3. 前記結合分子が、前記抗原標的タンパク質を発現する第2細胞の非存在下でCD28陽性免疫細胞(例えばT細胞)である第1細胞と接触した場合に、CD28シグナル伝達を誘導しない、請求項1または2記載の使用のための結合分子。
  4. 前記抗原標的タンパク質が、増殖性疾患に関連する細胞上に発現されるタンパク質、病原性生物に関連するタンパク質または他の分子から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  5. 前記抗原標的タンパク質がエンドグリン、FABまたはB7H2である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  6. 前記少なくとも2つの第1抗原結合部位の各々が、前記少なくとも1つの第2抗原結合部位と直接連結されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  7. 前記結合分子が同数の第1および第2抗原結合部位を含み、かつここで少なくとも2つの第1抗原結合部位の一方が、少なくとも2つの第2抗原結合部位の一方の軽鎖(または代替的に重鎖)に末端で(ペプチド結合を介して)連結されており、かつここで、該少なくとも2つの第1抗原結合部位の他方が、該少なくとも2つの第2抗原結合部位の他方の軽鎖(または代替的に重鎖)に末端で(ペプチド結合を介して)連結されている、請求項6記載の使用のための結合分子。
  8. 少なくとも2つの第2抗原結合部位を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  9. 前記結合分子が正確に2つ、および2つ以下の第1抗原結合部位と、正確に1つまたは2つ、および1つまたは2つ以下の第2抗原結合部位とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  10. 前記少なくとも2つの第1抗原結合部位がCD28上の同一エピトープに結合する、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  11. 前記少なくとも2つの第1抗原結合部位のうちの少なくとも1つと、前記少なくとも1つの第2抗原結合部位とが、1つ以上の抗体由来ヒト定常ドメインを含むタンパク質リンカーにより互いに結合している、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  12. 前記少なくとも2つの第1抗原結合部位が抗体重鎖配列および抗体軽鎖配列を含み、各々が配列番号2、3、4、5、7、8または9に示す抗体配列中に含まれるC末端結合部位に由来するものであり、かつ該C末端結合部位と同一の抗原に競合的に結合する、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  13. 前記少なくとも1つの第2抗原結合部位が抗体重鎖配列および抗体軽鎖配列を含み、各々が配列番号1および2からなる抗体中に含まれるN末端結合部位に由来するものであり、かつ該N末端結合部位と同一の抗原に競合的に結合する、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  14. 前記結合分子が免疫細胞および前記疾患に関連する細胞に特異的に結合し、ここで該免疫細胞が細胞媒介性免疫応答に関与する免疫細胞である、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  15. 前記免疫細胞がCD28およびCD3およびTCRを発現する細胞である、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  16. 前記対象が、CD3/TCRシグナル伝達が処置により、または疾患関連抗原に応答して内因的に活性化されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  17. 前記処置が、前記疾患に関連する細胞に対する免疫細胞の刺激および/または活性化をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  18. 2つの抗体重鎖配列と、2つの抗体軽鎖配列とを含み、かつここで
    (i)前記少なくとも2つの第1抗原結合部位の一方が該2つの抗体軽鎖配列の一方のC末端に共有結合的に連結されており、かつ該少なくとも2つの第1抗原結合部位の他方が該2つの抗体軽鎖配列の他方のC末端に共有結合的に連結されているか、または
    (ii)該少なくとも2つの第1抗原結合部位の一方が該2つの抗体重鎖配列の一方のC末端に共有結合的に連結されており、かつ該少なくとも2つの第1抗原結合部位の他方が該2つの抗体重鎖配列の他方のC末端に共有結合的に連結されている、
    請求項1~17のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  19. 前記結合部位がペプチドリンカーなしで、または5個以下のアミノ酸を有する短いペプチドリンカーにより、または少なくとも6個、好ましくは最大50個のアミノ酸を有する長いペプチドリンカーを介して連結され、ここでさらに好ましくは該ペプチドリンカーが(GGGGS)リンカーであり、かつnが2以上である、請求項18記載の使用のための結合分子。
  20. 前記処置が、(i)二重特異性であり、かつCD3および/もしくはT細胞受容体(TCR)への結合を介するなどしてT細胞に特異的に結合し該T細胞を活性化する能力があるさらなる結合分子、またはT細胞活性化のためのシグナルを提供もしくは増強する能力がある任意の他の試薬、例えば(ii)キメラ抗原受容体(CAR)などの抗原受容体(該受容体は前記抗原標的タンパク質に特異的に結合する能力がある)を発現する遺伝子改変免疫細胞(異種もしくは自己T細胞)、または(iii)感染因子もしくはがん細胞由来の抗原構造(TAAもしくはTSA)を提供するワクチン、または(iv)PD1などのチェックポイント分子を介して抑制性「第2シグナル」を遮断する試薬、の連続または同時投与を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  21. 前記さらなる結合分子が少なくとも二重特異性であり、かつ少なくとも1つの第3抗原結合部位と少なくとも1つの第4抗原結合部位とを含み、ここで
    (i)該少なくとも1つの第3抗原結合部位は、CD3および/またはT細胞受容体(TCR)(CD3/TCR)に特異的に結合する能力があり、かつ
    (ii)該少なくとも1つの第4抗原結合部位は、前記対象において前記疾患に関連する細胞上または細胞内で発現されるさらなる抗原標的タンパク質のエピトープに特異的に結合する能力がある、
    請求項20記載の使用のための結合分子。
  22. 前記抗原標的タンパク質および前記さらなる抗原標的タンパク質が(i)同一であるか、または(ii)異なりはするが互いに空間的に密に近接している、例えば前記疾患に関連する同一細胞上に発現されるかもしくは同一疾患組織に位置する、例えば同一腫瘍環境で発現される、請求項21記載の使用のための結合分子。
  23. 前記疾患が、好ましくはがん(例えば肺がん、乳がん、大腸がん、胃がん、肝細胞がん、膵臓がん、卵巣がん、黒色腫、骨髄腫、腎臓がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、膀胱がんまたは前立腺がん)などのがん疾患から選択される増殖性疾患であって、特に黒色腫、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、膀胱がん(例えば尿路上皮がん)、腎臓がん(例えば腎細胞がん)、頭頸部がん(例えば該頭頸部の扁平上皮がん)およびホジキンリンパ腫からなるリストより選択される増殖性疾患であり、好ましくは、該増殖性疾患は黒色腫、または肺がん(例えば非小細胞肺がん)、好ましくは前記標的抗原タンパク質の発現に関して陽性のがんである、請求項1~22のいずれか1項に記載の使用のための結合分子。
  24. 単離された結合分子であって、該単離された結合分子が、請求項1~23のいずれか1項に記載の結合分子である、該単離された結合分子。
  25. 請求項24記載の単離された結合分子をコードする、単離された核酸。
  26. 請求項24記載の単離された結合分子または請求項25記載の単離された核酸を含む、組換え宿主細胞。
  27. 請求項24記載の単離された結合分子、請求項25記載の単離された核酸、請求項26記載の組換え宿主細胞を、製薬上許容可能な担体および/または賦形剤と共に含む、医薬組成物。
  28. 請求項20または21記載の単離されたさらなる結合分子をさらに含む、請求項27記載の医薬組成物。
  29. パッケージまたは医薬組成物のキットであって、該キットが別々の容器に(i)請求項1~28のいずれか1項に記載の単離された結合分子、該単離された結合分子をコードする単離された核酸、および/またはかかる核酸もしくは単離された結合分子を含む組換え宿主細胞、ならびに(ii)請求項1~28のいずれか1項に記載の単離されたさらなる結合分子、該単離されたさらなる結合分子をコードする単離された核酸、および/またはかかる核酸もしくは単離されたさらなる結合分子を含む組換え宿主細胞、を含む、該キット。
  30. 医薬への使用のための化合物または組成物であって、該化合物または組成物が、請求項1~29のいずれか1項に記載の結合分子、請求項1~29のいずれか1項に記載の単離された核酸、請求項1~29のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞、請求項1~29のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項1~29のいずれか1項に記載のキットを含む、該化合物または該組成物。
JP2023526882A 2020-11-03 2021-11-03 標的細胞限定的で共刺激性の二重特異性かつ2価の抗cd28抗体 Pending JP2023547507A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP20205442 2020-11-03
EP20205442.5 2020-11-03
PCT/EP2021/080564 WO2022096536A1 (en) 2020-11-03 2021-11-03 Target-cell restricted, costimulatory, bispecific and bivalent anti-cd28 antibodies

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023547507A true JP2023547507A (ja) 2023-11-10

Family

ID=73059571

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023526882A Pending JP2023547507A (ja) 2020-11-03 2021-11-03 標的細胞限定的で共刺激性の二重特異性かつ2価の抗cd28抗体

Country Status (8)

Country Link
US (1) US20230406961A1 (ja)
EP (1) EP4240762A1 (ja)
JP (1) JP2023547507A (ja)
KR (1) KR20230098317A (ja)
CN (1) CN116635425A (ja)
AU (1) AU2021374803A1 (ja)
CA (1) CA3173151A1 (ja)
WO (1) WO2022096536A1 (ja)

Family Cites Families (31)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR86108E (fr) 1964-06-29 1965-12-17 Véhicule automobile, notamment char de combat, ambulance, véhicule de commando
WO1988007089A1 (en) 1987-03-18 1988-09-22 Medical Research Council Altered antibodies
ES2227512T3 (es) 1991-12-02 2005-04-01 Medical Research Council Produccion de anticuerpos contra auto-antigenos a partir de repertorios de segmentos de anticuerpos fijados en un fago.
US5786464C1 (en) 1994-09-19 2012-04-24 Gen Hospital Corp Overexpression of mammalian and viral proteins
EP1500329B1 (en) 1996-12-03 2012-03-21 Amgen Fremont Inc. Human antibodies that specifically bind human TNF alpha
PT1071700E (pt) 1998-04-20 2010-04-23 Glycart Biotechnology Ag Modificação por glicosilação de anticorpos para melhorar a citotoxicidade celular dependente de anticorpos
ATE490518T1 (de) 1999-02-05 2010-12-15 Samsung Electronics Co Ltd Verfahren und vorrichtung zum wiederauffinden von texturbildern
US6833268B1 (en) 1999-06-10 2004-12-21 Abgenix, Inc. Transgenic animals for producing specific isotypes of human antibodies via non-cognate switch regions
EP2305699B1 (de) 2001-06-05 2014-08-13 CureVac GmbH Stabilisierte mRNA mit erhöhtem G/C-Gehalt und optimierter Codon Usage für die Impfung gegen Schlafkrankheit, Leishmaniose und Toxoplasmose
CN1555411A (zh) 2001-08-03 2004-12-15 ���迨�����\���ɷݹ�˾ 抗体-依赖性细胞毒性增大的抗体糖基化变体
US7230167B2 (en) 2001-08-31 2007-06-12 Syngenta Participations Ag Modified Cry3A toxins and nucleic acid sequences coding therefor
DE10229872A1 (de) 2002-07-03 2004-01-29 Curevac Gmbh Immunstimulation durch chemisch modifizierte RNA
DK2345671T3 (en) 2002-09-27 2016-02-15 Xencor Inc Optimized Fc variants and methods for their formation
RS55723B1 (sr) 2003-11-05 2017-07-31 Roche Glycart Ag Molekuli koji se vezuju za antigen sa povećanim afinitetom vezivanja za fc receptor i efektornom funkcijom
FR2871633A1 (fr) 2004-06-10 2005-12-16 France Telecom Procede de reduction du bruit de phase lors de la reception d'un signal ofdm, recepteur, programme et support
MX2007000998A (es) 2004-07-30 2007-07-11 Rinat Neuroscience Corp Anticuerpos dirigidos peptido beta-amiloide y procedimientos que usan los mismos.
MX2007001292A (es) 2004-08-03 2007-07-04 Geneart Ag Metodo para modular la expresion genica al alterar el contendido de cpg.
MY148086A (en) 2005-04-29 2013-02-28 Rinat Neuroscience Corp Antibodies directed against amyloid-beta peptide and methods using same
WO2007016306A2 (en) 2005-08-01 2007-02-08 Psivida Inc. HMGCoA REDUCTASE INHIBITOR CODRUGS AND USES THEREOF
DE102007001370A1 (de) 2007-01-09 2008-07-10 Curevac Gmbh RNA-kodierte Antikörper
EP2282773B1 (en) 2008-05-02 2014-01-15 Seattle Genetics, Inc. Methods and compositions for making antibodies and antibody derivatives with reduced core fucosylation
LT2794658T (lt) 2011-12-19 2017-05-10 Synimmune Gmbh Bispecifinė antikūno molekulė
WO2013120497A1 (en) 2012-02-15 2013-08-22 Curevac Gmbh Nucleic acid comprising or coding for a histone stem-loop and a poly(a) sequence or a polyadenylation signal for increasing the expression of an encoded therapeutic protein
ES2654205T3 (es) 2012-03-27 2018-02-12 Curevac Ag Moléculas artificiales de ácido nucleico para la expresión mejorada de proteínas o péptidos
WO2014165818A2 (en) * 2013-04-05 2014-10-09 T Cell Therapeutics, Inc. Compositions and methods for preventing and treating prostate cancer
CN107223135B (zh) * 2015-03-16 2021-11-02 亥姆霍兹慕尼黑中心-德国环境健康研究中心(Gmbh) 用于治疗hbv感染和相关病症的三特异性结合分子
KR102426765B1 (ko) * 2016-04-22 2022-07-29 엘리게이터 바이오사이언스 에이비 Cd137에 대한 신규한 이중특이성 폴리펩타이드
MA52970A (fr) * 2018-06-21 2021-04-28 Regeneron Pharma Anticorps anti-psma x anti-cd28 bispécifiques et leurs utilisations
CA3124168A1 (en) * 2018-12-19 2020-06-25 Regeneron Pharmaceuticals, Inc. Bispecific anti-cd28 x anti-cd22 antibodies and uses thereof
AU2019410073A1 (en) * 2018-12-21 2021-06-10 F. Hoffmann-La Roche Ag Tumor-targeted agonistic CD28 antigen binding molecules
BR112021018442A2 (pt) * 2019-03-22 2022-01-11 Regeneron Pharma Anticorpos multiespecíficos egfr x cd28

Also Published As

Publication number Publication date
CA3173151A1 (en) 2022-05-12
EP4240762A1 (en) 2023-09-13
AU2021374803A1 (en) 2023-06-22
KR20230098317A (ko) 2023-07-03
WO2022096536A1 (en) 2022-05-12
CN116635425A (zh) 2023-08-22
US20230406961A1 (en) 2023-12-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11858991B2 (en) LAG-3-binding molecules and methods of use thereof
US11623959B2 (en) PD-1-binding molecules and methods of use thereof
EP3148580B1 (en) Tri-specific binding molecules that specifically bind to multiple cancer antigens and methods of use thereof
US9751942B2 (en) Anti-LAMP5 antibody and utilization thereof
US20230007977A1 (en) Antibodies targeting, and other modulators of, the cd276 antigen, and uses thereof
EA034757B1 (ru) Антитела против антигена 2 дендритных клеток крови и их применение
US20220372138A1 (en) Antibodies binding igc2 of igsf11 (vsig3) and uses thereof
EP3508499A1 (en) Antibodies targeting, and other modulators of, an immunoglobulin gene associated with resistance against anti-tumour immune responses, and uses thereof
US20230406961A1 (en) Target-cell restricted, costimulatory, bispecific and bivalent anti-cd28 antibodies
US20240010720A1 (en) Antibodies binding igv of igsf11 (vsig3) and uses thereof

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230704

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7426

Effective date: 20231024

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20231024